IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京エレクトロン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-回転機構および基板処理装置 図1
  • 特許-回転機構および基板処理装置 図2
  • 特許-回転機構および基板処理装置 図3
  • 特許-回転機構および基板処理装置 図4
  • 特許-回転機構および基板処理装置 図5
  • 特許-回転機構および基板処理装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】回転機構および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240823BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20240823BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20240823BHJP
   H02K 5/10 20060101ALI20240823BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20240823BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
H01L21/68 N
F16F15/08 E
H02K7/14 Z
H02K5/10 Z
H01L21/302 101G
H01L21/31 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020156680
(22)【出願日】2020-09-17
(65)【公開番号】P2022050211
(43)【公開日】2022-03-30
【審査請求日】2023-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 淳
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-251875(JP,A)
【文献】実開平02-093545(JP,U)
【文献】特開2004-289000(JP,A)
【文献】特開平05-149383(JP,A)
【文献】特開2001-037151(JP,A)
【文献】特開2014-134281(JP,A)
【文献】特開平02-085711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
F16F 15/08
H02K 7/14
H02K 5/10
H01L 21/3065
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転部および第1固定部を有する被回転体と、
複数に分割され、それぞれ前記被回転体の前記第1固定部に固定され、前記第1回転部の回転方向に対して剛性を有し、前記回転方向に対する軸方向に対して可撓性を有する平板と、
前記被回転体の前記第1回転部に同軸で固定された第2回転部、および前記平板に固定された第2固定部を有するモータと、
を有する回転機構。
【請求項2】
第1回転部および第1固定部を有する被回転体と、
前記被回転体の前記第1固定部に固定され、前記第1回転部の回転方向に対して剛性を有し、前記回転方向に対する軸方向に対して可撓性を有する平板と、
前記被回転体の前記第1回転部に同軸で固定された第2回転部、および前記平板に複数個所で柱状部品を介して固定された第2固定部を有するモータと、
を有する回転機構。
【請求項3】
前記被回転体は、磁性流体シールであり、
前記モータは、ダイレクトドライブモータである、
請求項1又は2に記載の回転機構。
【請求項4】
前記平板は、厚さが0.5~2.0mmである
請求項1~3の何れか1つに記載の回転機構。
【請求項5】
前記平板は、ヤング率が70~200GPaの材料により形成された
請求項1~4の何れか1つに記載の回転機構。
【請求項6】
前記柱状部品と前記平板の間、および前記柱状部品と前記第2固定部の間の少なくとも一方には、フローティングジョイントおよびゴムブッシュの少なくとも一方が設けられた
請求項に記載の回転機構。
【請求項7】
前記モータの前記第2固定部は、前記平板に複数個所で柱状部品を介して固定された
請求項に記載の回転機構。
【請求項8】
前記平板は、複数に分割され、それぞれ前記被回転体の前記第1固定部に固定された
請求項に記載の回転機構。
【請求項9】
第1回転部および第1固定部を有する被回転体と、
前記被回転体の前記第1固定部に固定され、前記第1回転部の回転方向に対して剛性を有し、前記回転方向に対する軸方向に対して可撓性を有する平板と、
前記被回転体の前記第1回転部に同軸で固定された第2回転部、および前記平板に固定された第2固定部を有するモータと、
基板処理の対象とされた基板が載置され、前記第1回転部に対して固定され前記第1回転部により回転するステージと、
を有する基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転機構および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、回転体の回転軸とモータのシャフトをカップリング(軸継手)によって直結する構造を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-46009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、カップリングを用いることなく、第1回転部と第2回転部の取付誤差を許容して第1回転部と第2回転部を接続する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による回転機構は、被回転体と、平板と、モータとを有する。被回転体は、第1回転部および第1固定部を有する。平板は、被回転体の第1固定部に固定され、第1回転部の回転方向に対して剛性を有し、回転方向に対する軸方向に対して可撓性を有する。モータは、被回転体の第1回転部に同軸で固定された第2回転部、および平板に固定された第2固定部を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、カップリングを用いることなく、第1回転部と第2回転部の取付誤差を許容して第1回転部と第2回転部を接続できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る基板処理装置の概略構成の一例を示す断面図である。
図2図2は、実施形態に係る回転機構の構成の一例を示す断面図である。
図3図3は、実施形態に係る回転機構の構成の一例を概略的に示す斜視図である。
図4図4は、実施形態に係る回転機構の取り付け手順を説明する図である。
図5図5は、他の実施形態に係る回転機構の構成の一例を概略的に示す断面図である。
図6図6は、他の実施形態に係る回転機構の構成の一例を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本願の開示する回転機構および基板処理装置の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の実施形態により、開示する回転機構および基板処理装置が限定されるものではない。
【0009】
従来、回転体のロータ(第1回転部)とモータのシャフト(第2回転部)を接続する場合、芯ズレ(変位)などの取付誤差を吸収するため、ロータとシャフトがカップリングを介して接続される。しかしながら、カップリングを介して接続することで接続部分の厚さが厚くなる。また、カップリングを介することで、応答性が低下する。
【0010】
そこで、カップリングを用いることなく、第1回転部と第2回転部の取付誤差を許容して第1回転部と第2回転部を接続する技術が期待されている。
【0011】
[実施形態]
[基板処理装置100の構成]
実施形態について説明する。最初に、実施形態に係る基板処理装置100について説明する。以下では、基板処理装置100を、成膜を行う装置とした場合を例に説明する。図1は、実施形態に係る基板処理装置100の概略構成の一例を示す断面図である。
【0012】
基板処理装置100は、1つの実施形態において、基板Wに対して、基板処理としてプラズマCVD処理を行なう装置である。図1に示す基板処理装置100は、処理容器1を有している。処理容器1は、円筒状とされ、例えば表面に陽極酸化被膜が形成されたアルミニウム、ニッケル等の金属により構成されている。処理容器1は、電気的に接地電位とされている。処理容器1は、気密に構成され、内部を真空雰囲気に維持可能とされている。処理容器1は、内部にステージ2が設けられている。処理容器1は、下側の底面となる底部1bに開口部1cが形成されている。開口部1cは、ステージ2の下方となる位置に形成されている。
【0013】
ステージ2は、扁平な円柱状に形成されている。ステージ2の上面には、半導体ウエハ等の基板処理の対象とされた基板Wが載置される。ステージ2は、載置された基板Wを略水平に支持する。ステージ2は、例えばアルミニウム、ニッケル等の金属もしくは、金属メッシュ電極を埋め込んだ窒化アルミ(AlN)により構成され、下部電極としても機能する。ステージ2は、支持部材4により下方から支持されている。支持部材4は、円筒状に形成され、鉛直下方に延伸し、処理容器1の底部1bの開口部1cまで到達している。底部1bの開口部1cは、支持部材4の直径よりも大きい直径で形成されている。支持部材4周面と開口部1cの周面の間には、隙間が設けられている。支持部材4の下端部には、回転機構6が設けられている。
【0014】
回転機構6は、処理容器1の外部から開口部1cを覆うように配置され、開口部1cを外側から封止する。回転機構6は、支持部材4を支持する。また、回転機構6は、回転可能とされ、支持部材4を回転させる。ステージ2は、支持部材4の回転に応じて回転する。回転機構6の詳細の構成は、後述する。
【0015】
ステージ2には、ヒータ5が内蔵されており、ステージ2に載置される基板Wをヒータ5によって所定の温度に加熱することができる。ステージ2は、冷媒を流通させるための流路(図示せず)が内部に形成され、処理容器1の外部に設けられたチラーユニットによって温度制御された冷媒が流路内に循環供給されてもよい。ヒータ5による加熱と、チラーユニットから供給された冷媒による冷却とにより、ステージ2は、基板Wを所定の温度に制御してもよい。なお、ヒータ5を搭載せず、チラーユニットから供給される冷媒および/または熱媒のみでステージ2の温度制御を行ってもよい。
【0016】
なお、ステージ2には、電極が埋め込まれていてもよい。この電極に供給された直流電圧によって発生した静電気力により、ステージ2は、上面に載置された基板Wを吸着させることができる。また、ステージ2には、処理容器1の外部に設けられた図示しない搬送機構との間で基板Wを受け渡すための昇降ピン(図示せず)が設けられている。
【0017】
ステージ2の上方であって処理容器1の内側面には、略円盤状に形成されたシャワーヘッド16が設けられている。シャワーヘッド16は、セラミックス等の絶縁部材17を介して、ステージ2の上部に支持されている。これにより、処理容器1とシャワーヘッド16とは、電気的に絶縁されている。シャワーヘッド16は、例えばアルミニウム、ニッケル等の導電性の金属により形成されている。
【0018】
シャワーヘッド16は、天板部材16aと、シャワープレート16bとを有する。天板部材16aは、処理容器1内を上側から塞ぐように設けられている。シャワープレート16bは、天板部材16aの下方に、ステージ2に対向するように設けられている。天板部材16aには、ガス拡散空間16cが形成されている。天板部材16aとシャワープレート16bは、ガス拡散空間16cに向けて開口する多数のガス吐出孔16dが分散して形成されている。
【0019】
天板部材16aには、ガス拡散空間16cへ各種のガスを導入するためのガス導入口16eが形成されている。ガス導入口16eには、ガス供給路15aが接続されている。ガス供給路15aには、ガス供給部15が接続されている。
【0020】
ガス供給部15は、成膜に用いる各種のガスのガス供給源にそれぞれ接続されたガス供給ラインを有している。各ガス供給ラインは、成膜のプロセスに対応して適宜分岐し、開閉バルブなどのバルブや、マスフローコントローラなどの流量制御器など、ガスの流量を制御する制御機器が設けられている。ガス供給部15は、各ガス供給ラインに設けられた開閉バルブや流量制御器などの制御機器を制御することにより、各種のガスの流量の制御が可能とされている。
【0021】
ガス供給部15は、ガス供給路15aに成膜に用いる各種のガスを供給する。例えば、ガス供給部15は、成膜の原料ガスをガス供給路15aに供給する。また、ガス供給部15は、パージガスや原料ガスと反応する反応ガスをガス供給路15aに供給する。ガス供給路15aに供給されたガスは、ガス拡散空間16cで拡散されて各ガス吐出孔16dから吐出される。
【0022】
シャワープレート16bの下面とステージ2の上面とによって囲まれた空間は、成膜処理が行われる処理空間をなす。また、シャワープレート16bは、支持部材4および処理容器1を介して接地されたステージ2と対になり、処理空間に容量結合プラズマ(CCP)を形成するための電極板として構成されている。シャワーヘッド16には、整合器11を介して高周波電源10が接続されており、高周波電源10からシャワーヘッド16を介して処理空間に供給されたガスに高周波電力(RF電力)が供給されることで、上記のCCPが形成される。なお、高周波電源10は、シャワーヘッド16に接続される代わりにステージ2に接続され、シャワーヘッド16が接地されるようにしてもよい。
【0023】
処理容器1の底部には、排気口71が形成されている。排気口71には、排気管72を介して排気装置73が接続されている。排気装置73は、真空ポンプや圧力調整バルブを有しており、真空ポンプや圧力調整バルブを作動させることにより処理容器1内を所定の真空度まで減圧することができるようになっている。
【0024】
処理容器1の側壁には、基板Wを搬入出するための搬入出口1aが設けられている。搬入出口1aには、当該搬入出口1aを開閉するゲートバルブGが設けられている。
【0025】
上記のように構成された基板処理装置100は、制御部60によって、その動作が統括的に制御される。制御部60には、ユーザインターフェース61と、記憶部62とが接続されている。
【0026】
ユーザインターフェース61は、工程管理者が基板処理装置100を管理するためにコマンドの入力操作を行うキーボード等の操作部や、基板処理装置100の稼動状況を可視化して表示するディスプレイ等の表示部から構成されている。ユーザインターフェース61は、各種の動作を受け付ける。例えば、ユーザインターフェース61は、プラズマ処理の開始を指示する所定操作を受け付ける。
【0027】
記憶部62には、基板処理装置100で実行される各種処理を制御部60の制御にて実現するためのプログラム(ソフトウエア)や、処理条件、プロセスパラメータ等のデータが格納されている。なお、プログラムやデータは、コンピュータで読み取り可能なコンピュータ記録媒体(例えば、ハードディスク、CD、フレキシブルディスク、半導体メモリ等)などに格納された状態のものを利用してもよい。或いは、プログラムやデータは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可能である。
【0028】
制御部60は、例えば、プロセッサ、メモリ等を備えるコンピュータである。制御部60は、ユーザインターフェース61からの指示等に基づいてプログラムやデータを記憶部62から読み出して基板処理装置100の各部を制御することで、後述する制御方法の各処理を実行する。
【0029】
[回転機構6の構成]
図2は、実施形態に係る回転機構6の構成の一例を概略的に示す断面図である。図3は、実施形態に係る回転機構6の構成の一例を示す斜視図である。処理容器1の底部1bには、ステージ2を支持する支持部材4の位置に対応して開口部1cが形成されている。開口部1cには、ステージ2を下方から支持する支持部材4が挿入されている。支持部材4の下端部4aは、回転機構6により支持されている。
【0030】
回転機構6は、磁性流体シール20と、ダイレクトドライブモータ(以下、DDモータとも称する)30とを有する。
【0031】
磁性流体シール20は、回転軸21と、ケーシング22とを有する。磁性流体シール20は、本開示の被回転体の一例である。回転軸21は、本開示の第1回転部の一例である。ケーシング22は、本開示の第1固定部の一例である。
【0032】
回転軸21は、軸に沿って内部が中空な円筒状に形成されている。ケーシング22は、回転軸21の外形よりも内径が大きい円筒状に形成され、回転軸21の周囲を覆っている。ケーシング22は、内周面の下側に軸受23が設けられ、軸受23により回転軸21を回転可能に支持する。ケーシング22は、内周面の回転軸21の上側に円環状の永久磁石と磁性体によるシール部24が設けられ、シール部24によりケーシング22と回転軸21の間の隙間を気密に封止する。ケーシング22は、上下の両端に外側へ広がったフランジ22a、22bが形成されている。回転軸21は、下の端部に外側へ広がったフランジ21aが形成されている。
【0033】
磁性流体シール20は、上側のフランジ22aがOリングなどの封止部材を介して、処理容器1の底部1bの開口部1cの周囲となる下面に締結して気密に固定される。また、磁性流体シール20は、回転軸21が支持部材4の下端部4aに締結して固定される。支持部材4および回転軸21には、ステージ2に埋設されたヒータ5へ給電するための不図示の配線が設けられている。回転軸21は、中空とされた内部の下側の端部にハーメチックシール25が設けられ、ハーメチックシール25により下側の端部が気密に封止されている。ハーメチックシール25には、ヒータ5へ給電する配線と接続された不図示の電極が設けられている。磁性流体シール20は、ハーメチックシール25に設けられた電極を介してヒータ5へ給電する配線に電力供給可能とされている。
【0034】
DDモータ30は、回転ロータ31と、モータベース32とを有する。DDモータ30は、本開示のモータの一例である。回転ロータ31は、本開示の第2回転部の一例である。モータベース32は、本開示の第2固定部の一例である。DDモータ30は、平板状のモータベース32の一方の面に回転ロータ31が設けられており、制御部60からの制御に応じて回転ロータ31が回転する。DDモータ30は、一般的なサーボモータと比較して低速で高トルクを得ることができる。DDモータ30は、回転ロータ31およびモータベース32に、回転軸に沿って円形の貫通孔33が形成されている。
【0035】
ところで、従来、磁性流体シール20の回転軸21とDDモータ30の回転ロータ31を接続する場合、芯ズレ(変位)などの取付誤差を吸収するため、回転軸21と回転ロータ31は、カップリングを介して接続される。しかしながら、カップリングを介して接続することで回転軸21と回転ロータ31の接続部分が厚くなるため、省スペース化が難しくなる。また、カップリングを介することで、応答性が低下する。
【0036】
そこで、本実施形態では、回転軸21と回転ロータ31を以下のように接続する。
【0037】
本実施形態では、磁性流体シール20の回転軸21とDDモータ30の回転ロータ31を同軸で締結して固定する。また、磁性流体シール20のケーシング22とDDモータ30のモータベース32を平板40を介して固定する。
【0038】
磁性流体シール20のケーシング22には、平板40が固定される。実施形態では、ケーシング22のフランジ22bに複数個所で締結して平板40を固定する。
【0039】
また、DDモータ30のモータベース32は、複数個所で柱状部品42を介して平板40に固定される。実施形態では、回転ロータ31を囲むモータベース32の4か所で柱状部品42を設けて平板40に固定する。
【0040】
平板40は、回転ロータ31の回転方向に対して剛性を有し、回転ロータ31の回転方向に対する軸方向に対して可撓性を有する。例えば、平板40は、ヤング率が70~200GPaの材料により、厚さを0.5~2.0mmで形成する。例えば、平板40は、材料をステンレス又は表面をメッキした鉄とする場合、0.5~1.0mmの厚さに形成する。また、平板40は、材料をアルミニウムとする場合、1.0~2.0mmの厚さに形成する。
【0041】
このように形成された平板40は、薄い板であっても、DDモータ30の回転方向などの面内方向の外力については剛性が高くなる。これにより、平板40は、DDモータ30の回転ロータ31を回転させても、回転ロータ31の回転方向に対してモータベース32とケーシング22を固定できる。また、平板40は、面内方向と異なる角度(面に垂直な成分を含む場合)の外力には剛性が低くなる。これにより、磁性流体シール20の回転軸21とDDモータ30の回転ロータ31に芯ズレ(変位)などの取付誤差があっても、取付誤差によって生じる力に応じて平板40が軸方向に変形して、取付誤差を吸収できる。例えば、平板40は、数百μm程度の芯ズレを吸収できる。また、DDモータ30の回転ロータ31が回転した際の振動などの微小変位を平板40が軸方向に変形して柔軟に吸収することもできる。
【0042】
なお、平板40は、複数に分割され、それぞれDDモータ30のモータベース32に固定されていてもよい。実施形態に係る平板40は、図3に示すように、一方方向に沿って中央で2つの平板40a、40bに分割されている。平板40a、40bは、それぞれモータベース32に固定されている。平板40a、40bは、分割されたことにより、分割された一方方向の端部で軸方向に対する柔軟性が向上し、追従性を向上させることができる。平板40の分割数は、2分割に限らず、3分割以上であってもよい。また、平板40を分割する方向は、一方方向に限らず、一方方向に対する交差方向に分割してもよい。例えば、平板40を縦、横に格子状に4分割してもよい。
【0043】
また、平板40は、モータベース32に対して回転しないように固定できれば、何れの固定手法を用いてもよい。例えば、平板40は、モータベース32にネジ等の固定部材により複数個所で固定してもよい。また、平板40は、切り欠きなどの係合部を設け、モータベース32に係合部を係合させて固定してもよい。
【0044】
このように、実施形態に係る回転機構6は、カップリングを用いることなく、磁性流体シール20の回転軸21とDDモータ30の回転ロータ31の取付誤差を許容して回転軸21と回転ロータ31を接続できる。また、実施形態に係る回転機構6は、カップリングを用いないため、回転軸21と回転ロータ31の接続部分の厚さを薄くできる。また、実施形態に係る回転機構6は、回転軸21と回転ロータ31を直接固定するため、応答性よく接続できる。
【0045】
DDモータ30の貫通孔33には、スリップリング50が配置される。ステージ2に設けたヒータ5や電極には、スリップリング50を介して電力が供給される。例えば、スリップリング50は、回転部51と、固定部52とを有する。回転部51は、円柱状に形成され、先端に電極が形成されている。固定部52は、軸受53が設けられ、軸受53により回転部51を回転可能に支持する。回転部51は、貫通孔33を貫通して回転軸21に直接的または間接的に固定され、回転軸21と共に回転する。回転部51の先端の電極は、回転軸21のハーメチックシール25に設けられた電極と接触して導通する。回転部51は、固定部52と対向する外周面に、先端の電極と配線で接続されたリング状の電極が設けられている。固定部52は、回転部51と対向する内周面の、リング状の電極に対応した位置にブラシが設けられている。スリップリング50は、回転部51の外周面のリング状の電極と固定部52の内周面のブラシが接触することで、回転部51が回転しても回転部51と固定部52が導通する。固定部52には、ブラシと配線で接続された電極が外面に設けられ、当該電極にヒータ5へ給電する給電線が接続される。ヒータ5には、スリップリング50、磁性流体シール20の回転軸21、支持部材4を介して電力が供給される。
【0046】
[回転機構6の取り付け手順]
次に、実施形態に係る回転機構6を基板処理装置100に取り付ける取り付け手順について説明する。図4は、実施形態に係る回転機構6の取り付け手順を説明する図である。図4には、処理容器1の底部1b、磁性流体シール20、平板40およびDDモータ30が簡略的に示されている。
【0047】
回転機構6は、以下に示す(1)~(4)の順で処理容器1の底部1bに取り付ける。
【0048】
(1)磁性流体シール20の回転軸21とDDモータ30の回転ロータ31を同軸で締結して固定する。回転軸21と回転ロータ31を最初に取り付けることにより、回転軸21と回転ロータ31の位置を容易に合わせることができる。回転軸21と回転ロータ31を固定することにより、DDモータ30は、磁性流体シール20により支持される。
【0049】
(2)磁性流体シール20のケーシング22に平板40を複数個所で締結して固定する。
【0050】
(3)平板40の複数個所に柱状部品42を介してDDモータ30のモータベース32を固定する。
【0051】
(4)処理容器1の底部1bに磁性流体シール20のケーシング22を固定する。
【0052】
(1)~(4)の取り付け手順は、(2)、(3)において、回転機構6の磁性流体シール20、平板40およびDDモータ30を回転機構6としてユニット化した後、(4)において、ユニット化した回転機構6を処理容器1の底部1bに取り付ける。(2)、(3)の作業は処理容器1の下部以外の場所でも実施できるため、(1)~(4)の取り付け手順は、処理容器1の下部で実施する作業を減らすことができる。
【0053】
なお、上述した取り付け手順の(1)~(4)の順番は、一例であり、これに限定されるものではない。例えば、(2)と(3)の順番が入れ替わってもよい。また、(4)は(1)の前に実施してもよい。
【0054】
ここで、例えば、磁性流体シール20の回転軸21とDDモータ30の回転ロータ31の回転軸が一致するように高精度の芯出しを行い、取付誤差が無いように回転軸21と回転ロータ31を締結して固定することが考えられる。この場合、芯出しを行った後、磁性流体シール20のケーシング22とDDモータ30のモータベース32をズレが発生しないように剛性の高い結合部材を用いて固定する。しかし、高精度の芯出しには、調整治具や調整治具等を配置して作業する作業スペースが必要になり、回転機構6を処理容器1へ取り付けるまでの組立工数が増える。また、磁性流体シール20のケーシング22とDDモータ30のモータベース32を剛性の高い結合部材を用いて固定する必要があるため、簡単に脱着ができなくなる。
【0055】
これに対し、実施形態に係る回転機構6は、磁性流体シール20の回転軸21とDDモータ30の回転ロータ31の取付誤差を平板40により吸収できる。これにより、実施形態に係る回転機構6は、回転軸21と回転ロータ31の高精度の芯出しを行うことなく、回転軸21と回転ロータ31の取付誤差を許容して回転軸21と回転ロータ31を接続できる。これにより、実施形態に係る回転機構6は、組立工数を抑えることができる。また、実施形態に係る回転機構6は、簡単に脱着できる。
【0056】
[効果]
このように、実施形態に係る回転機構6は、磁性流体シール20(被回転体)と、平板40と、DDモータ30(モータ)とを有する。磁性流体シール20は、回転軸21(第1回転部)およびケーシング22(第1固定部)を有する。平板40は、磁性流体シール20のケーシング22に固定され、回転軸21の回転方向に対して剛性を有し、回転方向に対する軸方向に対して可撓性を有する。DDモータ30は、磁性流体シール20の回転軸21に同軸で固定された回転ロータ31(第2回転部)、および平板40に固定されたモータベース32(第2固定部)を有する。これにより、実施形態に係る回転機構6は、カップリングを用いることなく、回転軸21と回転ロータ31の取付誤差を許容して回転軸21と回転ロータ31を接続できる。これにより、実施形態に係る回転機構6は、回転軸21と回転ロータ31の接続部分の厚さを薄くできる。また、実施形態に係る回転機構6は、回転軸21と回転ロータ31を直接固定するため、応答性よく接続できる。
【0057】
また、平板40は、複数に分割され、それぞれ磁性流体シール20のケーシング22に固定される。これにより、平板40の柔軟性が向上し、追従性を向上させることができる。
【0058】
また、平板40は、厚さが0.5~2.0mmである。また、平板40は、ヤング率が70~200GPaの材料により形成される。これにより、平板40に、回転方向に対してモータベース32とケーシング22を固定できる剛性を持たせることができる。また、平板40に、取付誤差を吸収できる可撓性を持たせることができる。
【0059】
また、DDモータ30のモータベース32は、平板40に複数個所で柱状部品42を介して固定される。これにより、平板40から間隔を開けて平板40にモータベース32を固定できる。
【0060】
以上、実施形態について説明してきたが、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、請求の範囲およびその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0061】
例えば、上記実施形態では、回転機構6の被回転体を磁性流体シール20とし、モータをDDモータ30とした例を説明した。しかし、開示技術は、これに限定されるものではない。被回転体は、回転する回転部と、回転部を回転可能に保持する固定部を有するものであれば何れであってもよい。モータも、回転する回転部と、回転部を回転可能に保持する固定部を有するものであればどのようなモータであってもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、柱状部品42を介してモータベース32と平板40を固定する例を説明した。しかし、開示技術は、これに限定されるものではない。柱状部品42と平板40の間、および柱状部品42とモータベース32の間の少なくとも一方には、フローティングジョイントおよびゴムブッシュの少なくとも一方が設けられてもよい。
【0063】
図5は、他の実施形態に係る回転機構6の構成の一例を概略的に示す断面図である。図5は、柱状部品42の平板40側にゴムブッシュ43を設けた場合示している。ゴムブッシュ43は、柱状部品42のモータベース32側に設けてもよい。ゴムブッシュ43は、ゴムを含んで形成され、弾性を有する。回転機構6は、ゴムブッシュ43を設けることで、DDモータ30の回転軸方向に対する垂直方向の振動をゴムブッシュ43で吸収できる。また回転機構6は、DDモータ30の回転軸方向の振動を平板40で吸収できる。
【0064】
図6は、他の実施形態に係る回転機構6の構成の一例を概略的に示す断面図である。図6は、柱状部品42のモータベース32側にフローティングジョイント44を設けた場合示している。フローティングジョイント44は、柱状部品42の平板40側に設けてもよい。フローティングジョイント44は、ジョイント部分の角度を変えることができる。回転機構6は、フローティングジョイント44を設けることで、DDモータ30の回転軸方向に対する垂直方向の振動をフローティングジョイント44で吸収できる。また回転機構6は、DDモータ30の回転軸方向の振動を平板40で吸収できる。
【0065】
また、上記実施形態では、回転機構6を有する基板処理装置100を、基板処理としてプラズマCVD処理を行なう装置とした例を説明した。しかし、開示技術は、これに限定されるものではない。回転機構6を有する基板処理装置は、基板Wを載置したステージ2を回転させる装置であれば、何れであってもよい。例えば、プラズマエッチング等の他の基板処理を行う任意の装置に開示技術を適用してもよい。すなわち、開示技術は、任意の処理装置に採用され得る。例えば、基板処理装置100は、容量結合プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)タイプや、誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively-coupled plasma)タイプ、マイクロ波といった表面波によってガスを励起させるプラズマ処理装置のように、任意のタイプのプラズマ処理装置であってもよいし、プラズマを用いない処理装置であってもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 処理容器
1b 底部
1c 開口部
2 ステージ
4 支持部材
4a 下端部
6 回転機構
20 磁性流体シール
21 回転軸
21a フランジ
22 ケーシング
22a、22b フランジ
30 ダイレクトドライブモータ
31 回転ロータ
32 モータベース
33 貫通孔
40、40a、40b 平板
42 柱状部品
43 ゴムブッシュ
44 フローティングジョイント
50 スリップリング
100 基板処理装置
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6