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特許7542399樹脂成形品の収縮挙動の予測方法、樹脂成形品の変形を予測する方法、樹脂成形品の離型不良要因の予測方法、樹脂成形品の脆弱部発生を予測する方法、樹脂成形品の成形条件の決定方法、樹脂成形品を成形する金型の設計方法、樹脂成形品の製造方法、プログラム、コンピュータ可読記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】樹脂成形品の収縮挙動の予測方法、樹脂成形品の変形を予測する方法、樹脂成形品の離型不良要因の予測方法、樹脂成形品の脆弱部発生を予測する方法、樹脂成形品の成形条件の決定方法、樹脂成形品を成形する金型の設計方法、樹脂成形品の製造方法、プログラム、コンピュータ可読記録媒体
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20240823BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/26
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020179713
(22)【出願日】2020-10-27
(65)【公開番号】P2022070578
(43)【公開日】2022-05-13
【審査請求日】2023-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】束田 拓平
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-181801(JP,A)
【文献】特開2016-051642(JP,A)
【文献】特開2010-042540(JP,A)
【文献】特開2002-234045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/76
B29C 45/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型内における樹脂成形品の収縮挙動を予測する方法であって、
金型から取り出した直後の前記樹脂成形品の寸法を基準として、金型から取り出してから冷却する過程の前記樹脂成形品の収縮率の温度依存性を取得する第1工程と、
金型寸法を基準として、冷却した後の前記樹脂成形品の収縮率を取得する第2工程と、
第1工程で取得した収縮率の温度依存性、及び、第2工程で取得した収縮率に基づいて、金型から取り出される前の前記樹脂成形品の収縮挙動を予測する第3工程と、
を備えた樹脂成形品の収縮挙動の予測方法。
【請求項2】
前記第3工程は、
前記樹脂成形品の解析モデルにおいて、前記第1工程で取得した収縮率の温度依存性、及び、前記第2工程で取得した収縮率が再現されるように、前記解析モデルで使用するパラメータ及び/又はプログラムを決定するステップと、
決定されたパラメータ及び/又はプログラムを前記解析モデルに適用することで、金型から取り出される前の前記樹脂成形品の収縮挙動を予測するステップと、を含む、
請求項1に記載された樹脂成形品の収縮挙動の予測方法。
【請求項3】
前記第3工程は、
前記第1工程で取得した、金型から取り出した直後の前記樹脂成形品の寸法を基準とした、冷却後の収縮率と、前記第2工程で取得した収縮率と、の差分を求めることで、金型内での前記樹脂成形品の収縮率を取得することを、射出後に金型内において前記樹脂成形品が冷却される型内冷却時間を異ならせて複数回行う第1ステップと、
前記複数回に亘って取得された金型内での前記樹脂成形品の収縮率に基づいて、金型から取り出される前の前記樹脂成形品の収縮挙動を予測する第2ステップと、を含む、
請求項1に記載された樹脂成形品の収縮挙動の予測方法。
【請求項4】
前記第3工程では、前記第1ステップ及び前記第2ステップを、2以上の異なる金型温度にて行う、
請求項1から3のいずれか一項に記載された樹脂成形品の収縮挙動の予測方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載された前記樹脂成形品の収縮挙動の予測方法によって予測された金型内における前記樹脂成形品の収縮挙動に基づいて、前記樹脂成形品の変形を予測する、樹脂成形品の変形を予測する方法。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載された前記樹脂成形品の収縮挙動の予測方法によって予測された金型内における前記樹脂成形品の収縮挙動に基づいて、前記樹脂成形品の離型不良要因を予測する、樹脂成形品の離型不良要因の予測方法。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか一項に記載された前記樹脂成形品の収縮挙動の予測方法によって予測された金型内における前記樹脂成形品の収縮挙動に基づいて、前記樹脂成形品の脆弱部発生を予測する、樹脂成形品の脆弱部発生を予測する方法。
【請求項8】
請求項1から4のいずれか一項に記載された前記樹脂成形品の収縮挙動の予測方法によって予測された金型内における前記樹脂成形品の収縮挙動に基づいて、前記樹脂成形品の成形条件を決定する、樹脂成形品の成形条件の決定方法。
【請求項9】
請求項1から4のいずれか一項に記載された前記樹脂成形品の収縮挙動の予測方法によって予測された金型内における前記樹脂成形品の収縮挙動に基づいて、前記樹脂成形を成形する金型を設計する、樹脂成形品を成形する金型の設計方法。
【請求項10】
請求項8に記載された成形条件の決定方法によって決定された成形条件に従って前記樹脂成形品を製造し、又は、請求項9に記載された金型の設計方法によって設計された金型を用いて前記樹脂成形品を製造する、樹脂成形品の製造方法。
【請求項11】
コンピュータに、金型内における樹脂成形品の収縮挙動を予測する方法を実行させるプログラムであって、
前記方法は、請求項1から4のいずれか一項に記載された方法である、プログラム。
【請求項12】
請求項11に記載されたプログラムが記録されたコンピュータ可読記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型内における樹脂成形品の収縮挙動を予測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形品は成形後に収縮するため、成形後の収縮を考慮して製品を設計、製造する必要がある。そのため、樹脂成形品の成形後の収縮率をシミュレーションで予測することが提案されてきた。
例えば特許文献1には、平板を実際に射出成形して収縮率を求める段階と、予測したい樹脂成形品のシミュレーションによる流動解析を行う段階と、平板から計測された収縮率と流動解析の結果における流動方向から、流動方向ベクトルのうち当該ベクトルの予測したい収縮率方向成分の収縮率を求める段階と、求めた収縮率から、全体の収縮率の予測値を求める段階と、を有する樹脂成形品の収縮率予測方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-103565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の樹脂成形品の収縮率の予測は、樹脂成形品が金型から取り出されてから時間が経過した後の最終的な収縮率(あるいは、樹脂成形品の特定の部位の最終的な収縮率)を予測する技術であって、金型内での樹脂成形品の収縮挙動を予測するものではない。
金型内での樹脂成形品の収縮挙動を把握することは、離型直前の金型への抱き付きの予測や、樹脂成形品の脆弱部の発生を予測する上で有効であるが、金型内での樹脂成形品の収縮挙動を直接測定することは困難であることから、金型内での樹脂成形品の収縮挙動を精度良く予測する方法が望まれる。
【0005】
そこで、本発明は、樹脂成形品の金型内での収縮挙動を精度良く予測できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の観点は、金型内における樹脂成形品の収縮挙動を予測する方法であって、金型から取り出した直後の前記樹脂成形品の寸法を基準として、金型から取り出してから冷却する過程の前記樹脂成形品の収縮率の温度依存性を取得する第1工程と、金型寸法を基準として、冷却した後の前記樹脂成形品の収縮率を取得する第2工程と、第1工程で取得した収縮率の温度依存性、及び、第2工程で取得した収縮率に基づいて、金型から取り出される前の前記樹脂成形品の収縮挙動を予測する第3工程と、を備えた樹脂成形品の収縮挙動の予測方法である。
【0007】
本発明の第2の観点は、上述した樹脂成形品の収縮挙動の予測方法によって予測された金型内における前記樹脂成形品の収縮挙動に基づいて、前記樹脂成形品の変形を予測する、樹脂成形品の変形を予測する方法である。
【0008】
本願発明の第3の観点は、上述した樹脂成形品の収縮挙動の予測方法によって予測された金型内における前記樹脂成形品の収縮挙動に基づいて、前記樹脂成形品の離型不良要因を予測する、樹脂成形品の離型不良要因の予測方法である。
【0009】
本発明の第4の観点は、上述した樹脂成形品の収縮挙動の予測方法によって予測された金型内における前記樹脂成形品の収縮挙動に基づいて、前記樹脂成形品の脆弱部発生を予測する、樹脂成形品の脆弱部発生を予測する方法である。
【0010】
本発明の第5の観点は、上述した樹脂成形品の収縮挙動の予測方法によって予測された金型内における前記樹脂成形品の収縮挙動に基づいて、前記樹脂成形品の成形条件を決定する、樹脂成形品の成形条件の決定方法である。
【0011】
本発明の第6の観点は、上述した樹脂成形品の収縮挙動の予測方法によって予測された金型内における前記樹脂成形品の収縮挙動に基づいて、前記樹脂成形を成形する金型を設計する、樹脂成形品を成形する金型の設計方法である。
【0012】
本発明の第7の観点は、上述した樹脂成形品の成形条件の決定方法によって決定された成形条件に従って前記樹脂成形品を製造し、又は、上述した金型の設計方法によって設計された金型を用いて前記樹脂成形品を製造する、樹脂成形品の製造方法である。
【0013】
本発明の第8の観点は、コンピュータに、金型内における樹脂成形品の収縮挙動を予測する方法を実行させるプログラムである。当該方法は、例えば第1の観点に係る樹脂成形品の収縮挙動の予測方法である。
【0014】
本発明の第9の観点は、上記プログラムが記録されたコンピュータ可読記録媒体である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、樹脂成形品の金型内での収縮挙動を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態に係る樹脂成形品の収縮挙動の予測方法を説明するための図である。
図2】一実施形態に係る樹脂成形品の収縮挙動の予測方法の各工程を示す図である。
図3】一実施形態に係る樹脂成形品の表面に模様が付されている状態を例示する図である。
図4】一実施形態に係る樹脂成形品の表面温度と収縮率の関係を取得するためのデータ取得装置の配置を示す図である。
図5】一実施形態に係る樹脂成形品に付された模様について、金型から取り出した直後と冷却後の違いを例示する図である。
図6】一実施形態に係る樹脂成形品の表面において金型から取り出してから冷却する過程での温度分布を例示する図である。
図7】一実施形態に係るデータ取得装置の内部構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る樹脂成形品の収縮挙動の予測方法が適用される樹脂成形品を成形するための樹脂材料は、特に限定されず従来公知の樹脂材料を用いることができる。また、複数の樹脂材料をブレンドした樹脂混合物も上記樹脂材料に含まれる。さらに、ある樹脂に対して他の樹脂、ガラス繊維や無機粉体などの充填剤、核剤、染料や顔料等の着色剤、酸化防止剤、安定剤、可塑剤、滑剤、離型剤及び難燃剤等の添加剤を添加して、所望の特性を付与した樹脂組成物も含まれる。
樹脂成形品の形状も特に限定されず、如何なる形状の樹脂成形品に対しても本発明を適用することができる。
【0018】
一実施形態に係る樹脂成形品の収縮挙動の予測方法は、金型から取り出された後の樹脂成形品の時刻の経過に応じた収縮率の測定値を基に、金型内における樹脂成形品の収縮挙動を予測するものである。図1は、この方法を模式的に説明するための図であり、横軸に時間又は樹脂成形品の温度をとり、縦軸に樹脂成形品の予測対象とする部位の寸法(成形品寸法)をとったものである。なお、図1において、A1,A2,A3,A4,An,Bは、図中で示す収縮量を基に換算した収縮率を意味する。
【0019】
金型内で溶融樹脂が射出・保圧、及び冷却されるとともに、樹脂の分子鎖や樹脂に配合された添加剤等の配向により樹脂成形品の収縮が始まるが、樹脂成形品が金型内にある限り(離型前;図1の時刻T1以前)、樹脂成形品の寸法を直接測定することは難しい。そこで、本実施形態の予測方法では、金型から取り出された後の収縮率の温度依存性と、冷却後の最終的な樹脂成形品の収縮率と、を取得し、取得したデータに基づいて、金型内における樹脂成形品の収縮挙動を予測する。
【0020】
先ず、金型から樹脂成形品が取り出された後(離型後;図1の時刻T1以降)、本実施形態の方法では、金型から取り出した直後の樹脂成形品の寸法を基準として、冷却する過程の樹脂成形品の収縮率(図1のA1,A2,A3,A4,…)を逐次測定する(第1工程)。これによって、金型から取り出した直後の樹脂成形品の寸法を基準とした、樹脂成形品の収縮率の温度依存性を取得する。
次に、金型寸法を基準とした、冷却した後の樹脂成形品の収縮率(図1のB)を測定する(第2工程)。この測定方法は、例えばISO294-4(JIS K7152-4)で規定される一般的な収縮率の測定方法である。
【0021】
測定された収縮率Bと、直近で第1工程において測定された収縮率Anとの差分(B-An)が、金型内での樹脂成形品の収縮率である。
【0022】
第1工程及び第2工程の測定によって、図1に示すように、離型後の樹脂成形品の収縮率の温度依存性を把握できるとともに、離型前に金型内で生じた収縮率をも把握することができる。
そこで、金型寸法を基準とした離型直後の収縮率(図1のT1での収縮率(B-An))、固化過程での収縮率、金型寸法を基準とした最終的な収縮率(図1の時刻T2での収縮率B)の一連の収縮挙動が再現できるようにCAE(Computer-aided Engineering)による樹脂成形品の構造解析及び/又は流動解析(本明細書中、これらを総称し「CAE解析」という)のモデルで使用するパラメータ及び/又はプログラムを決定(調整)する。そして、その調整がなされたCAE解析モデルを適用することで、離型前の樹脂成形品の収縮挙動を予測する(第3工程)。それによって、離型前の樹脂成形品の収縮挙動を精度良く予測することができる。
【0023】
(1)樹脂成形品の収縮挙動の予測方法
図2に、一実施形態に係る樹脂成形品の収縮挙動の予測方法の各工程を示す。以下、各工程について順に説明する。
一実施形態に係る樹脂成形品の収縮挙動の予測方法は、第1工程S1、第2工程S2、及び、第3工程S3を含む。以下、順に説明する。
【0024】
[第1工程S1]
図2の第1工程S1は、金型から取り出してから冷却する過程における樹脂成形品の表面温度と収縮率の関係(つまり、温度依存性)を示すデータを取得する工程である。
第1工程S1では、樹脂成形品を金型から取り出してから冷却する過程において、樹脂成形品の表面温度を測定しながら樹脂成形品の表面の所定の部位の変位量を測定し、所定の部位の変位量の測定値に基づいて、金型から取り出した直後の樹脂成形品の寸法を基準とした、樹脂成形品の収縮率を算出する。
樹脂成形品の表面温度は、サーモグラフィによって取得することができる。樹脂成形品の変位量の測定対象となる部位(測定対象部位)は、任意に定義することができる。
【0025】
測定対象部位は、例えば、樹脂成形品の外縁部分であってもよい。例えば、樹脂成形品の形状が矩形である場合には、樹脂成形品の縦及び/又は横の長さについて、金型から取り出した直後の値と冷却後の値との差分を測定対象部位の変位量とすることができる。
測定対象部位は、例えば、樹脂成形品の表面に平行に付された少なくとも2本の線を含む部位であってもよい。2本の線の間の距離の変化を測定対象部位の変位量とすることができる。少なくとも2本の線は、金型から取り出した直後の樹脂成形品にスプレーで塗布して形成してもよい。あるいは、樹脂成形品において成形された少なくとも2本の線を含む部位(例えば、樹脂成形品に形成された段差部分等)を測定対象部位としてもよい。金型から取り出した直後の2本の線の間の距離をXとし、変位量をΔxとすると、収縮率は(Δx/X)×100(%)により表される。
【0026】
好ましくは、樹脂成形品が金型から取り出してから冷却する過程において、樹脂成形品の測定対象部位の画像を逐次、CCDカメラ等の撮像手段によって取得し、取得した画像に基づいて測定対象部位の変位量を測定する。撮像手段の撮像タイミングをサーモグラフィによる樹脂成形品の表面温度の取得タイミングと同期させることで、表面温度と測定対象部位の変位量の関係を容易かつ正確に取得することができる。また、撮像手段の倍率を変更することで、僅かな変位量も容易かつ正確に測定することができる。
【0027】
好ましい実施形態では、金型から取り出した直後の樹脂成形品の表面に模様を付し、表面に付された模様から測定対象部位を特定し、測定対象部位の変位量を測定する。この測定方法によれば、樹脂成形品の表面の局所的な収縮率を測定することができるため、樹脂成形品の表面の収縮率分布を得ることができる。以下、この測定方法について、図3図6を参照して説明する。
この測定方法では、模様が付された樹脂成形品の表面を複数の領域に分割し、一領域を一図柄として各領域の図柄の変形から各領域間の変位量を測定し、この変位量に基づいて、樹脂成形品の収縮率を算出することができる。各領域において収縮率が算出されるため、この方法では、樹脂成形品を金型から取り出した後の各領域の変位量に基づいて樹脂成形品の収縮率の分布を測定することができる。
なお、樹脂成形品の表面に付す模様は限定しないが、例えば、斑点模様、筋状模様、マーブル模様、皮革状模様等が挙げられる。樹脂成形品の表面に付される模様は、樹脂成形品に成形されたもの(シボ)でもよいし、金型から取り出した直後(例えば5秒以内)にスプレーによりインク(例えば顔料インク)を噴霧することで形成してもよい。
【0028】
図3(a)には、模様の一例である斑点模様11が樹脂成形品1の表面1sに付される例が示される。図3(b)は、図3(a)の樹脂成形品1の表面1sが複数の領域Rに分割される例が示される。図3(c)の領域R1~R4は、図3(b)の一部を拡大して示す図である。樹脂成形品1の表面に付す模様を斑点模様11のように不規則な模様とすることで、模様を複数の領域Rに分割したときに各領域に含まれる図柄がすべて異なるようになるため、樹脂成形品1の収縮率の分布を算出するのに都合が良い。
【0029】
図4に、樹脂成形品1の表面温度と収縮率の関係を取得するためのデータ取得装置2の例示的な配置を示す。
データ取得装置2は、1対の左側カメラ21L及び右側カメラ21Rを含むステレオカメラ21と、サーモグラフィ23(赤外線センサ)と、制御装置25とを備える。
ステレオカメラ21の左側カメラ21L及び右側カメラ21Rは、金型から取り出してから冷却する過程において樹脂成形品1の表面1sの画像を逐次、取得する。左側カメラ21L及び右側カメラ21Rがそれぞれ異なる方向から樹脂成形品1の表面1sを撮像することで、左側カメラ21L及び右側カメラ21Rの視差を利用し、表面1sが平坦でない場合であっても表面1s上の測定対象部位の正確な変位量を得ることができる。
サーモグラフィ23は、ステレオカメラ21の撮像タイミングと同期して、樹脂成形品1の表面1sから放射される赤外線量を測定し、表面1sの温度分布画像を取得する。
制御装置25は、ステレオカメラ21、及び、サーモグラフィ23と接続され、樹脂成形品1の表面1sに設定された各領域の温度と樹脂成形品1の収縮率の関係を求めるように構成される。
なお、上記はあくまで一例であり、同様の機能を有する構成に適宜変更してもよい。例えば表面1sが平坦な場合はステレオカメラでなく単一のカメラを用いてもよい。また、ステレオカメラ21とサーモグラフィ23は同一の制御装置25でなく、それぞれ別の制御装置に接続してもよい。その場合は、別々に取得された表面温度と収縮率のデータを、タイミングが同期するように後で統合して、樹脂成形品1の表面温度と収縮率の関係を取得すればよい。
【0030】
図5は、斑点模様11に含まれる複数の領域の一部の領域に含まれる図柄について、金型から取り出した直後と冷却後の違い(つまり、収縮前後の違い)を例示する。図5において、金型から取り出した直後の領域R1~R4は、図3(c)と同じである。図5において、領域R1c~R4cは、金型から取り出した直後の領域R1~R4が冷却した後の収縮した領域を示している。
ここで、図5に示すように、隣接する領域(例えば、領域R2,R4)の図柄から測定対象部位(距離D1で規定される部位)が特定される。測定対象部位における金型から取り出した直後の距離をD1とし、収縮後の距離をD2とすると、変位量は(D1-D2)であり、収縮率は{(D1-D2)/D1}×100(%)である。他の隣接する領域における収縮率も同様に測定することで、樹脂成形品1の収縮率分布を算出することができる。なお、隣接する領域の図柄を基にした測定対象部位は、図5の例示に限定されず、任意に定義することができる。
【0031】
図6に、サーモグラフィ23によって取得される樹脂成形品1の表面1sの温度分布画像を、金型から取り出してから冷却する過程((a)→(b)→(c)→(d)の順)で例示している。サーモグラフィ23によって取得される温度分布画像に基づいて、金型から取り出してから冷却する過程の、樹脂成形品1の表面1sに設定される各領域における温度を取得することができる。
【0032】
制御装置25は、ステレオカメラ21の撮像タイミングと、サーモグラフィ23の赤外線量の測定タイミングと、が同期するように制御する。制御装置25はさらに、ステレオカメラ21から逐次出力される画像に基づいて、金型から取り出した直後の隣接領域間において予め定義された測定対象部位を基準として各領域の変位量を測定するとともに、サーモグラフィ23から逐次出力される温度分布画像に基づいて各領域の温度を取得する。
以上から、図3図6を参照して説明した測定方法によれば、金型から取り出した直後の樹脂成形品の寸法を基準として、金型から取り出してから冷却する過程の樹脂成形品1の表面温度と収縮率の関係(つまり、収縮率の温度依存性)を、樹脂成形品1の表面1sに設定された複数の領域の各々について取得することができる。
【0033】
[第2工程S2]
第2工程S2では、金型寸法を基準とした、冷却した後の樹脂成形品の収縮率(図1のB)を測定する(第2工程)。この測定方法は、前述したように、例えばISO294-4(JIS K7152-4)で規定される一般的な収縮率の測定方法である。第2工程は、3次元寸法測定器を用いて行うが、詳細な説明は省略する。
【0034】
第1工程と第2工程の切り替わりのタイミング(図1の時刻T2タイミング)は、様々な観点から設定することができる。樹脂成形品は常温まで冷却された後でも僅かに収縮が進行するため、一実施形態では、例えば離型後24時間等の比較的長い時間、第1工程を行い、その後に第2工程を行う。しかし、その場合、精度は担保されるものの、離型後比較的長い期間に亘って第1工程において逐次的に温度と樹脂成形品の寸法変化を測定する必要がある。
そこで、別の実施形態では、誤差を許容できる状況下において測定の効率化の観点から、離型後に樹脂成形品の温度変化が少なくなった場合(つまり、樹脂成形品の温度変化率が所定値以下となった場合)に、その後の収縮量は僅かであると判断して第1工程を終了し、第2工程に移行してもよい。例えば、限定するものではないが、樹脂成形品の温度変化率が0.1℃/10秒以下となったタイミングで第1工程を終了し、第2工程を実施してもよい。
【0035】
[第3工程S3]
第3工程では、金型寸法を基準とした離型直後の収縮率(図1のT1での収縮率(B-An))、冷却による樹脂の固化過程での収縮率、金型寸法を基準とした最終的な収縮率(図1の時刻T2での収縮率B)の一連の収縮挙動が再現できるように樹脂成形品のCAE解析モデルで使用するパラメータ及び/又はプログラムを決定(調整)する。そして、その調整がなされたCAE解析モデルを適用することで、離型前の樹脂成形品の収縮挙動を予測する。
【0036】
CAE解析の例として、樹脂成形品の構造解析モデルについては、例えばANSYS社のCAE解析ソフト「ANSYS Mechanical」が知られているため、以下ではこれをもとに第3工程を説明する。「ANSYS Mechanical」において、第1工程及び第2工程で得られたデータ、つまり、金型寸法を基準とした離型直後の収縮率、冷却による樹脂の固化過程での収縮率、金型寸法を基準とした最終的な収縮率の測定値を合わせ込むように、例えば弾性率、ポアソン比、線膨張係数といったパラメータを変更する。変更したパラメータを用いて金型内での樹脂成形品の構造解析を行うことで、離型後の収縮挙動に影響を及ぼす要因が、離型前の樹脂成形品の収縮挙動に反映される。そのため、PVT曲線に基づく従来の解析方法よりも、離型前の樹脂成形品の収縮挙動を精度良く予測することができる。
【0037】
(2)樹脂成形品の収縮挙動を予測する情報処理装置
図7は、上述した樹脂成形品の収縮挙動の予測方法を実行するためのデータ取得装置2のハードウェア構成を示すブロック図である。
図7に示すように、データ取得装置2の制御装置25は、CPU(Central Processing Unit)251、ROM(Read-only Memory)252、RAM(Random Access Memory)253、ストレージ254、及び、入出力(I/O)インタフェース255を備える。入出力インタフェース255は、ステレオカメラ21、及び、サーモグラフィ23と例えば有線で接続される。
ROM252には、構造解析プログラム等が記録される。CPU251は、必要に応じてROM252に記録されているプログラムをRAM253に展開して実行する。
【0038】
CPU251は、第1工程S1において、ステレオカメラ21及びサーモグラフィ23に対して同期したタイミングでデータ取得指令を送出し、ステレオカメラ21から画像のデータを逐次取得し、サーモグラフィ23から樹脂成形品1の温度分布画像のデータを逐次取得する。
CPU251は、第2工程において金型寸法を基準とした最終的な樹脂成形品の収縮率のデータを、図示しない3次元寸法測定器から入出力インタフェース255を介して取得する。
【0039】
図7に示すように、構造解析プログラムは、収縮率取得モジュール401、及び、収縮挙動予測モジュール402を含む。
【0040】
収縮率取得モジュール401は、以下の機能を備えたプログラムモジュールである。
(i)第1工程S1において取得された、ステレオカメラ21及びサーモグラフィ23からのデータに基づいて、離型直後の樹脂成形品の寸法を基準として、金型から取り出してから冷却する過程の樹脂成形品の収縮率の温度依存性のデータを取得する。
(ii)(i)で取得したデータと、第2工程S2において取得された、金型寸法を基準とした、最終的な樹脂成形品の収縮率のデータと、に基づいて、離型後の樹脂成形品の温度依存性(金型寸法を基準とした、冷却する過程での樹脂成形品と収縮率の関係)のデータを算出する。
【0041】
収縮挙動予測モジュール402は、以下の機能を備えたプログラムモジュールである。
(iii)収縮率取得モジュールで得られたデータ(離型後の樹脂成形品の温度依存性のデータ)が再現されるように、構造解析モデルに使用するパラメータ及び/又はプログラムを合わせ込む処理を行い、構造解析モデルに使用するパラメータ及び/又はプログラムを決定する。
(iv)(iii)で決定されたパラメータ及び/又はプログラムを適用した構造解析モデルを用いて、離型前の樹脂成形品の収縮挙動を予測する。
なお、予測の結果が得られる収縮挙動のデータの一例は、金型内の樹脂成形品の温度と収縮率の関係を示すデータである。
【0042】
次に、第3工程の別実施形態について説明する。別実施形態に係る第3工程では、構造解析モデルを使用せずに実測によって金型内における樹脂成形品の収縮挙動を推定する。
この別実施形態に係る第3工程は、以下の2つのステップを含む。
【0043】
(I)第1工程で取得した、金型から取り出した直後の樹脂成形品の寸法を基準とした、冷却後の収縮率と、第2工程で取得した収縮率と、の差分を求めることで、金型内での樹脂成形品の収縮率を取得することを、射出後に金型内において樹脂成形品が冷却される型内冷却時間を異ならせて複数回行う第1ステップと、
(II)上記複数回に亘って取得された金型内での樹脂成形品の収縮率に基づいて、金型から取り出される前の樹脂成形品の収縮挙動を予測する第2ステップ
【0044】
表1に示すデータは、特定の樹脂成形品に対する型内冷却時間が異なる場合の成形収縮率、型外収縮率、及び、型内収縮率の一例を示している。ここで、「成形収縮率」は、第2工程で得られる樹脂成形品の最終的な収縮率の測定値(図1のBに相当)を示し、「型外収縮率」は、第1工程で得られる、離型直後の樹脂成形品の寸法を基準とした樹脂成形品の収縮率の測定値(図1のAnに相当)を示す。「型外収縮率」は、成形収縮率から型外収縮率を差し引いた算出値(図1の(B-An)に相当)である。なお、表1の「射出時間」は保圧時間も含む。ここで、表内のFD及びTDは、樹脂成形品の寸法を測定する際の方向を表すものであり、FDは樹脂成形品の成形時に金型内へ射出された樹脂の流動方向に沿う方向を表し、TDは樹脂の流動方向に直交する方向を表す。厳密には成形品の構造やゲートの形状、数、及び配置により、流動方向及び流動直交方向は、成形品内の位置によって変化しうるため、単純な直線で表すことができない場合もあるが、当業者であれば、成形品全体を見て、総じてゲート側から流動末端側に向かう方向を流動方向(FD)、それに直交する方向を(TD)として、適宜把握することができる。
【0045】
【表1】
【0046】
表1では、異なる金型温度において、型内冷却時間が異なる場合(5秒と120秒)での成形収縮率、型外収縮率、及び、型内収縮率の値を示している。表1からわかるように、型内冷却時間の違いによって成形収縮率が大きく変動することがわかる。そこで、型内冷却時間を、例えば、5秒、10秒、…、115秒、120秒といった具合に変化させた複数の条件で成形収縮率及び型外収縮率を測定して、それぞれについて型内収縮率を算出することで、金型内における樹脂成形品の収縮挙動を予測することができる。
すなわち、型内冷却時間を、例えば、5秒、10秒、…、115秒、120秒といった具合に変化させたときの型内収縮率がわかれば、120秒間の金型冷却期間における金型内での連続的な収縮率の変化がわかることになるため、金型内での樹脂成形品の収縮挙動を予測することができる。
また、表1からわかるように、金型温度は、特に成形収縮率と型外収縮率に及ぼす影響が大きいため、2以上の異なる金型温度でデータを取得することが好ましい。
【0047】
(2)樹脂成形品の変形を予測する方法
一実施形態に係る樹脂成形品の変形を予測する方法は、上記樹脂成形品の収縮挙動の予測方法によって予測された金型内における樹脂成形品の収縮挙動に基づいて、樹脂成形品の変形を予測する方法である。
金型内における樹脂成形品の収縮挙動を予測できれば、精度の高い樹脂成形品の内部応力を算出することができるため、この内部応力を用いれば、樹脂成形品の変形を精度良く予測することができる。樹脂成形品の変形を予測するには、コンピュータによる解析を用いることが好ましく、例えば、CAE解析を用いることができる。
この変形の予測により、最終的な製品としての樹脂成形品の形状を精度良く予測することができるため、後述する成形条件や金型設計に反映させることで、製品の寸法精度を向上させることができる。また、この変形の予測は、樹脂成形品の反りなどのマクロ的な変形のみならず、ヒケと呼ばれる樹脂成形品表面の収縮による凹みといったセミマクロ~ミクロ的な変形も予測することができる。
【0048】
(3)樹脂成形品の離型不良要因を予測する方法
金型内における変形が予測できることの利点として特筆すべきは、金型キャビティ内の凸部(樹脂成形品としては穴や溝などの凹部となる箇所)における、当該金型凸部への樹脂の抱き付きや、金型表面に密接した樹脂表面でヒケが生じることにより当該金型表面と樹脂表面の間に生じる真空状態に起因する金型への樹脂の貼り付きといった、離型性を悪化させる要因(離型不良要因)の予測も可能となることである。この予測に基づき、後述する成形条件や金型設計に反映させることで、樹脂成形品の離型性という、従来は予測が困難であった問題への対策をとることが可能となる。
かかる観点から、一実施形態に係る樹脂成形品の離型不良要因を予測する方法は、上記樹脂成形品の収縮挙動の予測方法によって予測された金型内における樹脂成形品の収縮挙動に基づいて、樹脂成形品の離型不良要因を予測する方法である。
【0049】
(4)樹脂成形品の脆弱部発生を予測する方法
一実施形態に係る樹脂成形品の脆弱部発生を予測する方法は、上記樹脂成形品の収縮挙動の予測方法によって予測された金型内における樹脂成形品の収縮挙動に基づいて、樹脂成形品の脆弱部発生を予測する方法である。
金型内における樹脂成形品の収縮挙動を予測できれば、上述した離型性の予測に加え、樹脂成形品の内部の脆弱部の発生を予測することができる。収縮に起因する樹脂成形品に発生する脆弱部としては、例えばボイドを挙げることができる。ボイドの発生要因の一つとしては、樹脂充填前に金型内に存在していた空気や樹脂材料の熱分解物等に起因するガスの巻き込みが考えられるが、これらは金型への適切なガスベントの設置等による対応が可能である。一方、樹脂成形品の収縮が、樹脂成形品の表面に発生(ヒケが発生)するのでなく、樹脂成形品の内部に発生することで、樹脂成形品内に真空状態の空孔(真空ボイド)が生じる場合がある。このような樹脂成形品内の脆弱部は金型から取り出された樹脂成形品の外観からだけでは、その発生の有無を検出できないものの、製品使用時の破壊の起点になる等、樹脂成形品の強度低下をもたらしうるため、脆弱部の発生を予測できることは極めて有用である。金型内における樹脂成形品の収縮挙動を予測できることで、樹脂成形品の内部において脆弱部が発生しうる箇所を予測することができる。具体的には、樹脂成形品において収縮量が大きくなると推定される箇所を把握し、CAE解析(構造解析)による当該箇所の変形を加味して予測する。例えば、樹脂成形品の収縮量が大きいと予測される箇所において、樹脂材料自体の機械的特性や当該箇所の設計により、十分な剛性や形状的拘束状態が得られている場合、樹脂成形品の収縮は反りなどのマクロ的な変形やヒケなどのセミマクロ~ミクロ的な変形ではなく、樹脂成形品内部の収縮(真空ボイド)という形で脆弱部として発生することが予測できる。この予測に基づき、後述の成形条件や金型設計に反映させることで、樹脂成形品の脆弱部の発生という従来は予測が困難であった問題への対策をとることが可能となる。
【0050】
(5)樹脂成形品の成形条件の決定方法
一実施形態に係る樹脂成形品の成形条件の決定方法は、上記樹脂成形品の収縮挙動の予測方法によって予測された金型内における樹脂成形品の収縮挙動に基づいて、樹脂成形品の成形条件を決定する方法である。
すなわち、離型直前の時点での樹脂成形品の離型性の予測結果や、樹脂成形品の内部の脆弱部の発生の予測結果に基づいて、金型への抱き付きや貼り付きといった離型不良や脆弱部が発生しないように、例えば金型温度、保圧圧力、保圧時間等の、樹脂成形品の成形条件を決定することができる。
【0051】
(6)樹脂成形品を成形する金型の設計方法
一実施形態に係る樹脂成形品を成形する金型の設計方法は、上記樹脂成形品の収縮挙動の予測方法によって予測された金型内における前記樹脂成形品の収縮挙動に基づいて、樹脂成形を成形する金型を設計する方法である。
金型内における樹脂成形品の収縮挙動を予測できれば、例えば樹脂成形品の脆弱部発生を予測できるため、その予測結果に応じて、脆弱部が発生しないように、ゲート、ランナー、エアベント等の金型の設計に反映させることができる。
【0052】
(7)樹脂成形品の製造方法
一実施形態に係る樹脂成形品の製造方法は、上記成形条件の決定方法によって決定された成形条件に従って樹脂成形品を製造し、又は、上記金型の設計方法によって設計された金型を用いて樹脂成形品を製造する方法である。
【0053】
(8)プログラム及びコンピュータ可読記録媒体
一実施形態に係るプログラムは、コンピュータに、金型内における樹脂成形品の収縮挙動を予測する方法を実行させるプログラムであり、当該方法は、上記樹脂成形品の収縮挙動の予測方法である。また、一実施形態に係るコンピュータ可読記録媒体は、上記プログラムが記録されたものである。
一実施形態に係るプログラムは、図7に示したように、収縮率取得モジュール401と収縮挙動予測モジュール402を含むプログラムである。
【0054】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。また、上記の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1…樹脂成形品
1s…表面
11…斑点模様
R…領域
2…データ取得装置
21…ステレオカメラ
21L…左側カメラ
21R…右側カメラ
23…サーモグラフィ
25…制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7