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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】低温硬化可能なネガ型感光性組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/075 20060101AFI20240823BHJP
   G03F 7/40 20060101ALI20240823BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240823BHJP
   C08G 77/26 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
G03F7/075 521
G03F7/40 501
G03F7/20 501
C08G77/26
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021570958
(86)(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-21
(86)【国際出願番号】 EP2020070607
(87)【国際公開番号】W WO2021013859
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2019136943
(32)【優先日】2019-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100206265
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 逸子
(72)【発明者】
【氏名】横山 大志
(72)【発明者】
【氏名】能谷 敦子
(72)【発明者】
【氏名】リン、チョ-イン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ユン-チェン
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-504909(JP,A)
【文献】特開2011-022173(JP,A)
【文献】特開2010-139802(JP,A)
【文献】国際公開第2018/033552(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/075
G03F 7/40
G03F 7/20
C08G 77/26
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)式(Ia)で表される繰り返し単位を含んでなる、ポリシロキサンA、
【化1】
(式中、
Ia1は、炭素数1~5のアルキレン基であり、ここで前記アルキレン基中の-CH-が-O-によって置き換えられていてもよく、
Ia2は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~5のアルキル基、または炭素数1~5のアルキレン基であり、ここで、前記アルキル基および前記アルキレン基中の-CH-が-O-によって置き換えられていてもよく、ここで、RIa2がアルキレンの場合、窒素に結合していない結合手は、他の、式(Ia)で表される繰り返し単位に含まれるSiと結合される)、
(II)重合開始剤、
(III)(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上含む化合物、および
(IV)溶媒
を含んでなる、ネガ型感光性組成物。
【請求項2】
前記ポリシロキサンAが、式(Ib)で表される繰り返し単位をさらに含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【化2】
(式中、
Ibは、水素、C1~30の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基は、それぞれ、フッ素、ヒドロキシもしくはアルコキシで置換されていてもよく、かつ
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基中の-CH-が、-O-もしくは-CO-で置きかえられていてもよく、ただし、RIbはヒドロキシ、アルコキシではない)
【請求項3】
前記ポリシロキサンA中に含まれる式(Ia)のSi原子の数の合計が、前記ポリシロキサン中のSi原子数の総数を基準として、1~15%である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
アクリル樹脂および/または式(Ia)の繰り返し単位を含まないポリシロキサンBをさらに含んでなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
ポリシロキサンAの含有量が、前記組成物に含まれる全てのポリマーの総質量を基準として、20~100質量%である、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物を基板に塗布して塗膜を形成させ、塗膜を露光し、現像することを含んでなる、硬化膜の製造方法。
【請求項7】
現像後に、70~130℃の温度で加熱する工程をさらに含んでなる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の方法で形成された硬化膜。
【請求項9】
請求項8に記載の硬化膜を具備してなる、電子素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネガ型感光性組成物に関するものである。また、本発明はそれを用いた硬化膜の製造方法、それから形成された硬化膜、およびその硬化膜を具備してなる電子素子にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイ、発光ダイオード、太陽電池などの光学素子において、光利用効率の向上や省エネルギーを目的としたさまざまな提案がなされている。例えば、液晶ディスプレイにおいて、透明な平坦化膜を薄膜トランジスタ(以下、TFTということがある)素子上に被覆形成し、この平坦化膜上に画素電極を形成させることにより、表示装置の開口率を上げる方法が知られている。
【0003】
また、有機ELや液晶モジュールの上にタッチパネルを作成する構造が提案されている。さらには、ガラス基板の代わりにプラスチック基板を使ったフレキシブルディスプレイが注目されている。いずれの場合も素子の構成材料が熱劣化しないよう、素子上の被膜形成はより低温で行われることが望ましい。その他有機半導体、有機太陽電池などに被覆形成する場合も、環境に配慮しより低温で硬化できることが求められている。しかしながら、例えばタッチパネルの分野においてはパネルの信頼性試験として、高温高湿の条件下において一定時間一定電圧をかけ続けても正常に機能することを合格条件にしているため、通常のアクリルポリマーでは低温で硬化するものの、顧客が要求する耐性や特性を有しないものが多いことが知られている。
【0004】
ポリシロキサンは高温耐性があることで知られる。ポリシロキサンを含む組成物で塗膜を形成し、硬化させるときに、素子の構成材料によっては硬化温度を低くすることが求められる。一般に、高温高湿耐性の被膜を得るためには塗膜を高温で加熱し、ポリシロキサン中のシラノール基の縮合反応や、不飽和結合を有するポリマーの反応を速やかに進行させ完結させる必要がある。未反応の反応基が残っている場合に、素子の製造プロセスで使用する薬品に対して反応してしまうことが起こる。また、基板との密着性が悪くなることがある。薬品耐性を維持し、低温硬化が可能なさまざまなポリシロキサン組成物が提案されている(例えば、特許文献1)。薬品耐性を維持しつつ、さらに低温硬化が可能なポリシロキサンを含む組成物の開発がのぞまれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-173809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、耐薬品性に優れ、低温硬化が可能な、ネガ型感光性組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるネガ型感光性組成物は、
(I)式(Ia)で表される繰り返し単位を含んでなる、ポリシロキサンA、
【化1】
(式中、
Ia1は、炭素数1~5のアルキレン基であり、ここで前記アルキレン基中の-CH-が-O-によって置き換えられていてもよく、
Ia2は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~5のアルキル基、または炭素数1~5のアルキレン基であり、ここで、前記アルキル基および前記アルキレン基中の-CH-が-O-によって置き換えられていてもよく、ここで、RIa2がアルキレンの場合、窒素に結合していない結合手は、他の式(Ia)で表される繰り返し単位に含まれるSiと結合される)
(II)重合開始剤、
(III)(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上含む化合物、および
(IV)溶媒
を含んでなる。
【0008】
本発明による硬化膜の製造方法は、前記のネガ型感光性組成物を基板に塗布して塗膜を形成させ、塗膜を露光し、現像することを含んでなるものである。
【0009】
本発明による硬化膜は、上記に記載の方法により製造されたものである。
【0010】
本発明による電子素子は、上記の硬化膜を具備してなるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のネガ型感光性組成物は、一般的な熱硬化可能な感光性組成物に採用される温度域よりも低い温度で硬化させることができ、かつ高い耐薬品性を有する硬化膜を形成することができるものである。さらに、露光後の加熱過程を必要とせず、より安価に硬化膜またはパターンを製造することが可能である。そして、得られた硬化膜は平坦性、電気的絶縁特性も優れていることから、液晶表示素子や有機EL表示素子などのディスプレイのバックプレーンに使用される薄膜トランジスタ(TFT)基板用平坦化膜や半導体素子の層間絶縁膜をはじめ、固体撮像素子、反射防止フィルム、反射防止板、光学フィルター、高輝度発光ダイオード、タッチパネル、太陽電池などにおける絶縁膜や透明保護膜などの各種膜形成材料、さらには光導波路などの光学素子として好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本明細書において、特に限定されない限り、記号、単位、略号、用語は以下の意味を有するものとする。
本明細書において、特に限定されて言及されない限り、単数形は複数形を含み、「1つの」や「その」は「少なくとも1つ」を意味する。本明細書において、特に言及されない限り、ある概念の要素は複数種によって発現されることが可能であり、その量(例えば質量%やモル%)が記載された場合、その量はそれら複数種の和を意味する。「および/または」は、要素の全ての組み合わせを含み、また単体での使用も含む。
【0013】
本明細書において、~または-を用いて数値範囲を示した場合、これらは両方の端点を含み、単位は共通する。例えば、5~25モル%は、5モル%以上25モル%以下を意味する。
【0014】
本明細書において、炭化水素は、炭素および水素を含み、必要に応じて、酸素または窒素を含むものを意味する。炭化水素基は、1価または2価以上の、炭化水素を意味する。 本明細書において、脂肪族炭化水素は、直鎖状、分岐鎖状または環状の脂肪族炭化水素を意味し、脂肪族炭化水素基は、1価または2価以上の、脂肪族炭化水素を意味する。芳香族炭化水素は、必要に応じて脂肪族炭化水素基を置換基として有することも、脂環と縮合していていることもできる、芳香環を含む炭化水素を意味する。芳香族炭化水素基は、1価または2価以上の、芳香族炭化水素を意味する。また、芳香環とは、共役不飽和環構造を有する炭化水素を意味し、脂環とは、環構造を有するが共役不飽和環構造を含まない炭化水素を意味する。
【0015】
本明細書において、アルキルとは直鎖状または分岐鎖状飽和炭化水素から任意の水素をひとつ除去した基を意味し、直鎖状アルキルおよび分岐鎖状アルキルを包含し、シクロアルキルとは環状構造を含む飽和炭化水素から水素をひとつ除外した基を意味し、必要に応じて環状構造に直鎖状または分岐鎖状アルキルを側鎖として含む。
【0016】
本明細書においてアリールとは、芳香族炭化水素から任意の水素をひとつ除去した基を意味する。アルキレンとは、直鎖状または分岐鎖状飽和炭化水素から任意の水素を二つ除去した基を意味する。アリーレンとは、芳香族炭化水素から任意の水素を二つ除去した炭化水素基を意味する。
【0017】
本明細書において、「Cx~y」、「C~C」および「C」などの記載は、分子または置換基中の炭素の数を意味する。例えば、C1~6アルキルは、1以上6以下の炭素を有するアルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等)を意味する。また、本明細書でいうフルオロアルキルとは、アルキル中の1つ以上の水素がフッ素に置き換えられたものをいい、フルオロアリールとは、アリール中の1つ以上の水素がフッ素に置き換えられたものをいう。
【0018】
本明細書において、ポリマーが複数種類の繰り返し単位を有する場合、これらの繰り返し単位は共重合する。これら共重合は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合、またはこれらの混在のいずれかである。
本明細書において、%は質量%、比は質量比を表す。
【0019】
本明細書において、温度の単位は摂氏(Celsius)を使用する。例えば、20度とは摂氏20度を意味する。
本明細書において、ポリシロキサンとは、Si-O-Si結合(シロキサン結合)を主鎖とするポリマーのことをいう。また本明細書において、一般的なポリシロキサンとしては、式(RSiO1.5で表わされるシルセスキオキサンポリマーも含まれるものとする。
【0020】
<ネガ型感光性組成物>
本発明によるネガ型感光性組成物(以下、簡単に「組成物」ということがある)は、(I)特定の構造を有するポリシロキサン、(II)重合開始剤、(III)(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上含む化合物、および(IV)溶媒を含んでなる。以下、本発明による組成物に含まれる各成分について、詳細に説明する。
【0021】
(I)ポリシロキサンA
本発明に用いられるポリシロキサンAは、式(Ia)で表される繰り返し単位を含んでなる。
【化2】
式中、
Ia1は、炭素数1~5のアルキレン基であり、ここで前記アルキレン基中の-CH-が-O-によって置き換えられていてもよいが、好ましくは-O-によって置き換えられていないものであり、
Ia2は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~5のアルキル基、または炭素数1~5のアルキレン基であり、ここで、前記アルキル基および前記アルキレン基中の-CH-が-O-によって置き換えられていてもよいが、好ましくは-O-によって置き換えられていないものであり、ここで、RIa2がアルキレンの場合、窒素に結合していない結合手は、他の、式(Ia)で表される繰り返し単位に含まれるSiと結合される。
なお、前記アルキル基または前記アルキレン基が-O-を含む場合、炭素原子と酸素原子の総数が1~5である。
【0022】
Ia1としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基が挙げられ、好ましくはプロピレン基である。
【0023】
Ia2としては、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、メチレン基、エチレン基、プロピレン基が挙げられ、好ましくはプロピル基、プロピレン基である。
1つの繰り返し単位に含まれる2つのRIa2は、同一であっても異なっていてもよく、少なくとも1つが、アルキレン基であることが好ましい。言い換えれば、イソシアヌレート環が、2つのポリシロキサン鎖を架橋している構造を有していることが好ましい。より好ましくは、2つのRIa2がともにアルキレン基であり、よりさらに好ましくは、2つのRIa2がともにプロピレン基である。
【0024】
ポリシロキサンAは、式(Ib)で表される繰り返し単位をさらに含んでなることが好ましい。
【化3】
式中、
Ibは、水素、C1~30の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基は、それぞれ、フッ素、ヒドロキシもしくはアルコキシで置換されていてもよく、かつ
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基中の-CH-が、-O-もしくは-CO-で置きかえられていてもよく、ただし、RIbはヒドロキシ、アルコキシではない。
なお、ここで、上記した-CH-(メチレン基)は、末端のメチルも含むものとする。
また、上記の「フッ素、ヒドロキシもしくはアルコキシで置換されていてもよく」とは、脂肪族炭化水素基および芳香族炭化水素基中の炭素原子に直結する水素原子が、フッ素、ヒドロキシもしくはアルコキシで置き換えられていてもよいことを意味する。本明細書において、他の同様の記載においても同じである。
【0025】
Ibとしては、例えば、(i)メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、およびデシルなどのアルキル、(ii)フェニル、トリル、およびベンジルなどのアリール、(iii)トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロピルなどのフルオロアルキル、(iv)フルオロアリール、(v)シクロヘキシルなどのシクロアルキル、(vi)グリシジルなどのエポキシ構造、またはアクリロイル構造もしくはメタクリロイル構造を有する、酸素含有基が挙げられる。好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、フェニル、トリル、グリシジル、イソシアネートである。フルオロアルキルとしては、ペルフルオロアルキル、特にトリフルオロメチルやペンタフルオロエチルが好ましい。RIbがメチルである場合は、原料が入手し易く、硬化後の膜硬度が高く、高い薬品耐性を有するため好ましい。また、RIbがフェニルである場合は、当該ポリシロキサンの溶媒への溶解度を高め、硬化膜がひび割れにくくなるため、好ましい。
【0026】
本発明に用いられるポリシロキサンAは、式(Ic)で表される繰り返し単位を含んでいてもよい。
【化4】
式(Ic)で表される繰り返し単位は、配合比が高いと、組成物の感度低下や、溶媒や添加剤との相溶性の低下、膜応力が上昇するためクラックが発生しやすくなることがあるため、ポリシロキサンAの繰り返し単位の総数に対して40モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましい。
【0027】
本発明用いられるポリシロキサンAは、式(Id)で表される繰り返し単位を含んでいてもよい。
【化5】
式中、
Idは、それぞれ独立に、水素、C1~30の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基がフッ素、ヒドロキシもしくはアルコキシで置換されていてもよく、かつ
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基中の-CH-が、-O-もしくは-CO-で置きかえられていてもよく、ただしRIdはヒドロキシ、アルコキシではない。
【0028】
Idとしては、例えば、(i)メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、およびデシルなどのアルキル、(ii)フェニル、トリル、およびベンジルなどのアリール、(iii)トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロピルなどのフルオロアルキル、(iv)フルオロアリール、(v)シクロヘキシルなどのシクロアルキル、(vi)グリシジルなどのエポキシ構造、またはアクリロイル構造もしくはメタクリロイル構造を有する、酸素含有基が挙げられる。好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、フェニル、トリル、グリシジル、イソシアネートである。フルオロアルキルとしては、ペルフルオロアルキル、特にトリフルオロメチルやペンタフルオロエチルが好ましい。RIdがメチルである場合は、原料が入手し易く、硬化後の膜硬度が高く、高い薬品耐性を有するため好ましい。また、RIdがフェニルである場合は、当該ポリシロキサンの溶媒への溶解度を高め、硬化膜がひび割れにくくなるため、好ましい。
【0029】
上記式(Id)で表される繰り返し単位を有することによって、本発明に用いられるポリシロキサンは、部分的に直鎖構造とすることができる。ただし、耐熱性が下がるため、直鎖構造部分は少ないことが好ましい。具体的には、式(Id)で表される繰り返し単位は、ポリシロキサンの繰り返し単位の総数に対して30モル%以下であることが好ましく、より好ましくは10モル%以下である。式(Id)で表される繰り返し単位を全く含まないことも本発明の好適な一態様である。
【0030】
本発明に用いられるポリシロキサンAは、上記したような繰り返し単位やブロックが結合した構造を有するが、末端にシラノールを有することが好ましい。このようなシラノール基は、前記した繰り返し単位またはブロックの結合手に、-O0.5Hが結合したものである。
【0031】
ポリシロキサンA中に含まれる式(Ia)で表される繰り返し単位の数は、基板との密着性が上がる為、大きい方が好ましい。また、現像液に対する溶解性を制御する為には、小さい方が好ましい。具体的には、ポリシロキサンA中に含まれる式(Ia)のSi原子の数の合計が、ポリシロキサン中のSi原子数の総数を基準として、好ましくは1~15%であり、より好ましくは2~5%である。
【0032】
本発明に用いられるポリシロキサンAの質量平均分子量は、特に限定されない。
一方で、分子量が低い方が合成条件の限定が少なく、合成が容易であり、分子量が非常に高いポリシロキサンは合成が困難である。このような理由から、ポリシロキサンの質量平均分子量は、通常1,500~20,000であり、有機溶媒への溶解性、アルカリ現像液への溶解性の点から2,000~15,000であることが好ましい。ここで質量平均分子量とは、ポリスチレン換算質量平均分子量であり、ポリスチレンを基準としてゲル浸透クロマトグラフィーにより測定することができる。
【0033】
<ポリシロキサンAの合成方法>
本発明に用いられるポリシロキサンAの合成方法は特に限定されないが、例えば、以下の式(ia):
【化6】
(式中、
ia2は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~5のアルキル基、または-Ria1-Si-(ORia’であり、ここで、前記アルキル基中の-CH-が-O-によって置き換えられていてもよく、
ia1は、炭素数1~5のアルキレン基であり、ここで前記アルキレン基中の-CH-が-O-によって置き換えられていてもよく、かつ
ia’は、それぞれ独立に、直鎖または分岐の、C1~6アルキルである)で表されるシランモノマー
を必要に応じて、酸性触媒または塩基性触媒の存在下、加水分解し、重合させることによって得ることができる。
【0034】
好ましいRia1は、上記のRIa1において好ましいものとして挙げたものと同じである。
好ましいRia’は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、およびn-ブチルなどが挙げられる。式(ia)において、Ria’は複数含まれるが、それぞれのRia’は、同じであっても異なっていてもよい。
好ましいRia2は、上記のRIa2において好ましいものとして挙げたもの、ならびに上記Ria1として好ましいものとして挙げたものの中から選択することができる。
【0035】
式(ia)で表されるシランモノマーの具体例としては、例えば、トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、
トリス-(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(3-トリプロピオキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(3-トリメトキシシリルエチル)イソシアヌレート、トリス-(3-トリエトキシシリルエチル)イソシアヌレート、トリス-(3-トリプロピオキシシリルエチル)イソシアヌレート、トリス-(3-トリメトキシシリルメチル)イソシアヌレート、トリス-(3-トリエトキシシリルメチル)イソシアヌレート、
トリス-(3-トリプロピオキシシリルメチル)イソシアヌレート、ビス-(3-トリメトキシシリルプロピル)メチルイソシアヌレート、ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)メチルイソシアヌレート、ビス-(3-トリプロピオキシシリルプロピル)メチルイソシアヌレート、ビス-(3-トリメトキシシリルエチル)メチルイソシアヌレート、ビス-(3-トリエトキシシリルエチル)メチルイソシアヌレート、ビス-(3-トリプロピオキシシリルエチル)メチルイソシアヌレート、ビス-(3-トリメトキシシリルメチル)メチルイソシアヌレート、ビス-(3-トリエトキシシリルメチル)メチルイソシアヌレート、ビス-(3-トリプロピオキシシリルメチル)メチルイソシアヌレート、3-トリメトキシシリルプロピルジメチルイソシアヌレート、3-トリエトキシシリルプロピルジメチルイソシアヌレート、3-トリプロピオキシシリルプロピルジメチルイソシアヌレート、3-トリメトキシシリルエチルジメチルイソシアヌレート、3-トリエトキシシリルエチルジメチルイソシアヌレート、3-トリプロピオキシシリルエチルジメチルイソシアヌレート、3-トリメトキシシリルメチルジメチルイソシアヌレート、3-トリエトキシシリルメチルジメチルイソシアヌレート、3-トリプロピオキシシリルメチルジメチルイソシアヌレート、が挙げられる。その中でもトリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが好ましい。
【0036】
さらに、式(ib)で表されるシランモノマーを組み合わせることが好ましい。
ib-Si-(ORib’ (ib)
式中、
ibは、水素、C1~30の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基は、フッ素、ヒドロキシもしくはアルコキシで置換されていてもよく、かつ
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基中の-CH-が-O-もしくは-CO-で置きかえられていてもよく、ただし、Ribはヒドロキシ、アルコキシではなく、
ib’は、それぞれ独立に、直鎖または分岐の、C1~6アルキルである。
式(ib)で表されるシランモノマーは、2種類以上を組み合わせることも好ましい。
【0037】
好ましいRibは、上記のRIbにおいて好ましいものとして挙げたものと同じである。
好ましいRib’は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、およびn-ブチルなどが挙げられる。式(ib)において、Rib’は複数含まれるが、それぞれのRib’は、同じであっても異なっていてもよい。
【0038】
さらに以下の式(ic)で表されるシランモノマーを組み合わせてもよい。式(ic)で表されるシランモノマーを用いると、繰り返し単位(Ic)を含むポリシロキサンを得ることができる。
Si(ORic’ (ic)
式中、Ric’は、直鎖または分岐の、C1~6アルキルである 式(ic)において、好ましいRic’は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、およびn-ブチルなどが挙げられる。式(ic)において、Ric’は複数含まれるが、それぞれのRic’は、同じでも異なっていてもよい。
式(ic)で表されるシランモノマーの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn-ブトキシシラン、等が挙げられる。
【0039】
さらに、以下の式(id)で表されるシランモノマーを組み合わせてもよい。式(id)で表されるシランモノマーを用いると、繰り返し単位(Id)を含むポリシロキサンを得ることができる。
(Rid-Si-(ORid’ (id)
式中、
id’は、それぞれ独立に、直鎖または分岐の、C1~6アルキルであり、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、およびn-ブチルなどが挙げられる。Rid’は、1つのモノマーに複数含まれるが、それぞれのRid’は、同じでも異なっていてもよく、
idは、それぞれ独立に、水素、C1~30の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基がフッ素、ヒドロキシもしくはアルコキシで置換されていてもよく、かつ
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基中の-CH-が、-O-もしくは-CO-で置きかえられていてもよく、ただしRidはヒドロキシ、アルコキシではない。
好ましいRidは、上記RIdにおいて好ましいものとして挙げたものである。
【0040】
本発明の組成物は、ポリシロキサンAとは異なるポリマーをさらに含んでいてもよい。好ましくは、アクリル樹脂および/または式(Ia)の繰り返し単位を含まないポリシロキサンBを含んでなる。以後、ポリシロキサンA、アクリル樹脂、およびポリシロキサンBを合わせて、アルカリ可溶性樹脂ということがある。
【0041】
(アクリル樹脂)
本発明に用いられるアクリル樹脂は、一般的に用いられるアクリル樹脂、例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸アルキル、ポリメタクリル酸アルキルなどから選択することができるが、置換基として、アクリロイル基を含む繰り返し単位、カルボキシル基を含む繰り返し単位、アルコキシシリル基を含む繰り返し単位のうちの少なくとも1つを含んでなるアクリル樹脂が好ましく、アクリロイル基を含む繰り返し単位、カルボキシル基を含む繰り返し単位、およびアルコキシシリル基を含む繰り返し単位を含んでなるアクリル樹脂がより好ましい。
【0042】
カルボキシル基を含む繰り返し単位は、側鎖にカルボキシル基を含む繰り返し単位であれば特に限定されないが、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物またはこれらの混合物から誘導される繰り返し単位が好ましい。
【0043】
アルコキシシリル基を含む繰り返し単位は、側鎖にアルコキシシリル基を含む繰り返し単位であればよいが、以下の式(B)で表される単量体から誘導される繰り返し単位が好ましい。
-(CH-Si(OR(CH3-b (B)
式中、Xはビニル基、スチリル基または(メタ)アクリロイルオキシ基であり、Rはメチル基またはエチル基であり、aは0~3の整数、bは1~3の整数である。
【0044】
また、前記重合体には、水酸基含有不飽和単量体から誘導される、水酸基を含む繰り返し単位を含有することが好ましい。
【0045】
本発明によるアクリル樹脂の質量平均分子量は、特に限定されないが、1,000~40,000であることが好ましく、2,000~30,000であることがより好ましい。ここで、質量平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算質量平均分子量である。また、酸基の数は、低濃度アルカリ現像液で現像可能にし、かつ反応性と保存性を両立するという観点から、固形分酸価は通常40~190mgKOH/gであり、60~150mgKOH/gであることがより好ましい。
【0046】
(ポリシロキサンB)
ポリシロキサンBは、上記の式(Ia)で表される繰り返し単位を含まないポリシロキサンである。ポリシロキサンBは、上記の式(Ib)で表される繰り返し単位を含むことが好ましく、さらに式(Ic)で表される繰り返し単位を含むことも好ましい。さらに、その他の繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0047】
ポリシロキサンBの質量平均分子量は、特に限定されない。ただし、分子量が高い方が塗布性が改良される傾向がある。一方で、分子量が低い方が合成条件の限定が少なく、合成が容易であり、分子量が非常に高いポリシロキサンは合成が困難である。このような理由から、ポリシロキサンの質量平均分子量は、通常1,500~20,000であり、有機溶媒への溶解性、アルカリ現像液への溶解性の点から2,000~15,000であることが好ましい。ここで質量平均分子量とは、ポリスチレン換算質量平均分子量であり、ポリスチレンを基準としてゲル浸透クロマトグラフィーにより測定することができる。
【0048】
ポリシロキサンAの含有量は、組成物に含まれる全てのポリマーの総質量を基準として、20~100質量%であることが好ましく、50~100質量%であることがより好ましい。
【0049】
また、本発明に用いられるアルカリ可溶性樹脂を含む組成物は、基材上に塗布、像様露光、および現像を経て、硬化膜が形成される。このとき、露光された部分と未露光の部分とで溶解性に差異が発生することが必要であり、未露光部における塗膜は、現像液に対して一定以上の溶解性を有するべきである。例えば、プリベーク後の塗膜の2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム(以下、TMAHということがある)水溶液への溶解速度(以下、アルカリ溶解速度またはADRということがある。詳細後述)が50Å/秒以上であれば露光-現像によるパターンの形成が可能であると考えられる。しかし、形成される硬化膜の膜厚や現像条件によって要求される溶解性が異なるので、現像条件に応じたアルカリ可溶性樹脂を適切に選択すべきである。例えば、膜厚が0.1~100μm(1,000~1,000,000Å)であれば、2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度は50~20,000Å/秒が好ましく、さらに1,000~10,000Å/秒であることがより好ましい。
【0050】
本発明に用いられるアルカリ可溶性樹脂は、用途や要求特性に応じ、上記範囲の何れかのADRを有するアルカリ可溶性樹脂を選択すればよい。また、ADRの異なるポリシロキサンやアクリル樹脂を組合せて所望のADRを有する混合物にすることもできる。
【0051】
アルカリ溶解速度や質量平均分子量の異なるアルカリ可溶性樹脂は、触媒、反応温度、反応時間あるいは重合体を変更することで調製することができる。アルカリ溶解速度の異なるポリシロキサンやアクリル樹脂を組合せて用いることで、現像後の残存不溶物の低減、パターンだれの低減、パターン安定性などを改良することができる。
【0052】
このようなアルカリ可溶性樹脂は、例えば
(M)プリベーク後の膜が、2.38質量%TMAH水溶液に可溶であり、その溶解速度が200~3,000Å/秒であるポリシロキサンが挙げられる。
【0053】
また、必要に応じ
(L)プリベーク後の膜が、5質量%TMAH水溶液に可溶であり、その溶解速度が1,000Å/秒以下であるポリシロキサン、または
(H)プリベーク後の膜の、2.38質量%TMAH水溶液に対する溶解速度が4,000Å/秒以上であるポリシロキサンと
混合し、所望の溶解速度を有する組成物を得ることができる。
【0054】
[アルカリ溶解速度(ADR)の測定、算出法]
アルカリ可溶性樹脂のアルカリ溶解速度は、アルカリ溶液としてTMAH水溶液を用いて、次のようにして測定し、算出する。
【0055】
アルカリ可溶性樹脂をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に35質量%になるように希釈し、室温でスターラーで1時間撹拌させながら溶解する。温度23.0±0.5℃、湿度50±5.0%雰囲気下のクリーンルーム内で、調製したアルカリ可溶性樹脂溶液を4インチ、厚さ525μmのシリコンウエハ上にピペットを用い1ccシリコンウエハの中央部に滴下し、2±0.1μmの厚さになるようにスピンコーティングし、その後100℃のホットプレート上で90秒間加熱することにより溶媒を除去する。分光エリプソメーター(J.A.Woollam社)で、塗膜の膜厚測定を行う。
【0056】
次に、この膜を有するシリコンウエハを、23.0±0.1℃に調整された、所定濃度のTMAH水溶液100mlを入れた直径6インチのガラスシャーレ中に静かに浸漬後、静置して、塗膜が消失するまでの時間を測定した。溶解速度は、ウエハ端部から10mm内側の部分の膜が消失するまでの時間で除して求める。溶解速度が著しく遅い場合は、ウエハをTMAH水溶液に一定時間浸漬した後、200℃のホットプレート上で5分間加熱することにより溶解速度測定中に膜中に取り込まれた水分を除去した後、膜厚測定を行い、浸漬前後の膜厚変化量を浸漬時間で除することにより溶解速度を算出する。上記測定法を5回行い、得られた値の平均をアルカリ可溶性樹脂の溶解速度とする。
【0057】
(II)重合開始剤
本発明による組成物は重合開始剤を含んでなる。この重合開始剤は、放射線により酸、塩基またはラジカルを発生する重合開始剤と、熱により酸、塩基またはラジカルを発生する重合開始剤とがある。本発明においては、放射線照射直後から反応が開始され、放射線照射後、現像工程前に行われる再加熱の工程を省くことができるため、プロセスの短縮、コスト面において前者が好ましく、より好ましくは光ラジカル発生剤が好ましい。
【0058】
光ラジカル発生剤は、パターンの形状を強固にしたり、現像のコントラストをあげることにより解像度を改良することができる。本発明に用いられる光ラジカル発生剤は、放射線を照射するとラジカルを放出する光ラジカル発生剤である。ここで、放射線としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、電子線、α線、またはγ線等を挙げることができる。
【0059】
光ラジカル発生剤の添加量は、光ラジカル発生剤が分解して発生する活性物質の種類、発生量、要求される感度・露光部と未露光部との溶解コントラストにより最適量は異なるが、アルカリ可溶性樹脂の総質量を基準として、好ましくは0.001~30質量%であり、さらに好ましくは0.01~10質量%である。添加量が0.001質量%より少ないと、露光部と未露光部との溶解コントラストが低すぎて、添加効果を有さないことがある。一方、光ラジカル発生剤の添加量が30質量%より多い場合、形成される被膜にクラックが発生したり、光ラジカル発生剤の分解による着色が顕著になることがあるため、被膜の無色透明性が低下することがある。また、添加量が多くなると熱分解により硬化物の電気絶縁性の劣化やガス放出の原因となって、後工程の問題になることがある。さらに、被膜の、モノエタノールアミン等を主剤とするようなフォトレジスト剥離液に対する耐性が低下することがある。
【0060】
光ラジカル発生剤の例として、アゾ系、過酸化物系、アシルホスフィンオキサイド系、アルキルフェノン系、オキシムエステル系、チタノセン系開始剤が挙げられる。その中でもアルキルフェノン系、アシルホスフィンオキサイド系、オキシムエステル系開始剤が好ましく、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等が挙げられる。
【0061】
(III)(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上含む化合物
本発明による組成物は(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上含む化合物(以下、簡単のために(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物ということがある)を含んでなる。ここで、(メタ)アクリロイルオキシ基とは、アクリロイルオキシ基およびメタクリロイルオキシ基の総称である。この化合物は、アルカリ可溶性樹脂などと反応して架橋構造を形成することができる化合物である。ここで架橋構造を形成するために、反応性基であるアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を2つ以上含む化合物が必要であり、より高次の架橋構造を形成するために3つ以上のアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を含むことが好ましい。
【0062】
このような(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上含む化合物としては、(α)2つ以上の水酸基を有するポリオール化合物と、(β)2つ以上の(メタ)アクリル酸と、が反応したエステル類が好ましく用いられる。このポリオール化合物(α)としては、飽和または不飽和脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ヘテロ環炭化水素、1級、2級、または3級アミン、エーテルなどを基本骨格とし、置換基として2つ以上の水酸基を有する化合物が挙げられる。このポリオール化合物は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の置換基、例えばカルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、エーテル結合、チオール基、チオエーテル結合などを含んでいてもよい。
【0063】
好ましいポリオール化合物としては、アルキルポリオール、アリールポリオール、ポリアルカノールアミン、シアヌル酸、またはジペンタエリスリトールなどが挙げられる。ここで、ポリオール化合物(α)が3個以上の水酸基を有する場合、すべての水酸基がメタ(アクリル酸)と反応している必要は無く、部分的にエステル化されていてもよい。すなわち、このエステル類は未反応の水酸基を有していてもよい。このようなエステル類としては、トリス(2-アクリルオキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレートなどが挙げられる。これらのうち、反応性および架橋可能基の数の観点から、トリス(2-アクリルオキシエチル)イソシアヌレート、およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが好ましい。また、形成されるパターンの形状を調整するために、これらの化合物を2種類以上組み合わせることもできる。具体的には、(メタ)アクリロイルオキシ基を3つ含む化合物と(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ含む化合物を組み合わせることができる。
【0064】
このような化合物は、反応性の観点から相対的にアルカリ可溶性樹脂よりも小さい分子であることが好ましい。このために、分子量が2,000以下であることが好ましく、1,500以下であることが好ましい。
【0065】
この(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物の含有量は、用いられるポリマーや(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物の種類などに応じて調整されるが、樹脂との相溶性の観点から、アルカリ可溶性樹脂の総質量を基準として、3~50質量%であることが好ましい。また、膜べりを抑制する観点から、20~50質量%であることがより好ましい。また、これらの(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物は、単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
(IV)溶媒
本発明による組成物は溶媒を含んでなる。この溶媒は、アルカリ可溶性樹脂、重合開始剤、(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物、および必要に応じて添加される添加剤を均一に溶解または分散させるものであれば特に限定されない。本発明に用いることができる溶媒の例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのエチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのジエチレングリコールジアルキルエーテル類、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、PGMEA、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類、乳酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチルなどのエステル類、γ-ブチロラクトンなどの環状エステル類などが挙げられる。これらのうち、入手容易性、取扱容易性、およびポリマーの溶解性などの観点から、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類またはエステル類と、アルキル基の炭素数4または5の直鎖または分岐鎖を有するアルコール類とを用いることが好ましい。塗布性、貯蔵安定性の観点から、アルコールの溶媒比が5~80%であることが好ましい。
【0067】
本発明による組成物の溶媒含有率は、組成物を塗布する方法などに応じて任意に調整できる。例えば、スプレーコートによって組成物を塗布する場合は、組成物のうちの溶媒の割合が90質量%以上とすることもできる。また、大型基板の塗布で使用されるスリット塗布では通常60質量%以上、好ましくは70質量%以上である。本発明の組成物の特性は、溶媒の量により大きく変わるものではない。
【0068】
本発明による組成物は、前記した(I)~(IV)を必須とするものであるが、必要に応じて更なる化合物を組み合わせることができる。これらの組み合わせることができる材料について説明すると以下の通りである。なお、組成物全体にしめる(I)~(IV)以外の成分は、組成物の総質量を基準として、着色剤を添加する場合は50質量%以下が好ましく、より好ましくは30質量%以下、着色剤を添加しない場合は30質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以下である。
【0069】
本発明による組成物は、必要に応じて、その他の添加剤を含んでもよい。
このような添加剤としては、現像液溶解促進剤、スカム除去剤、密着増強剤、重合阻害剤、消泡剤、界面活性剤、増感剤などが挙げられる。
【0070】
現像液溶解促進剤、またはスカム除去剤は、形成される被膜の現像液に対する溶解性を調整し、また現像後に基板上にスカムが残留するのを防止する作用を有するものである。このような添加剤として、クラウンエーテルを用いることができる。クラウンエーテルとして、最も単純な構造を有するものは、一般式(-CH-CH-O-)で表されるものである。本発明において好ましいものは、これらのうち、nが4~7のものである。クラウンエーテルは、環を構成する原子総数をx、そのうちに含まれる酸素原子数をyとして、x-クラウン-y-エーテルと呼ばれることがある。本発明においては、x=12、15、18、または21、y=x/3であるクラウンエーテル、ならびにこれらのベンゾ縮合物およびシクロヘキシル縮合物からなる群から選択されるものが好ましい。より好ましいクラウンエーテルの具体例は、21-クラウン-7エーテル、18-クラウン-6-エーテル、15-クラウン-5-エーテル、12-クラウン-4-エーテル、ジベンゾ-21-クラウン-7-エーテル、ジベンゾ-18-クラウン-6-エーテル、ジベンゾ-15-クラウン-5-エーテル、ジベンゾ-12-クラウン-4-エーテル、ジシクロヘキシル-21-クラウン-7-エーテル、ジシクロヘキシル-18-クラウン-6-エーテル、ジシクロヘキシル-15-クラウン-5-エーテル、およびジシクロヘキシル-12-クラウン-4-エーテルである。本発明においては、これらのうち、18-クラウン-6-エーテル、15-クラウン-5-エーテルから選択されるものが最も好ましい。その含有量はアルカリ可溶性樹脂の総質量を基準として、0.05~15質量%が好ましく、さらに0.1~10質量%が好ましい。
【0071】
密着増強剤は、本発明による組成物を用いて硬化膜を形成させたときに、焼成後にかかる応力によりパターンが剥がれることを防ぐ効果を有する。密着増強剤としては、イミダゾール類やシランカップリング剤などが好ましく、イミダゾール類では、2-ヒドロキシベンゾイミダゾール、2-ヒドロキシエチルベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾール、2-ヒドロキシイミダゾール、イミダゾール、2-メルカプトイミダゾール、2-アミノイミダゾールが好ましく、2-ヒドロキシベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾール、2-ヒドロキシイミダゾール、イミダゾールが特に好ましく用いられる。
【0072】
シランカップリング剤は、公知のものが好適に使用され、エポキシシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、メルカプトシランカップリング剤等が例示され、具体的には、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等が好ましい。これらは単独または複数を組み合わせて使用することができ、その添加量はアルカリ可溶性樹脂の総質量を基準として、0.05~15質量%とすることが好ましい。
【0073】
また、シランカップリング剤として、酸基を有するシラン化合物、シロキサン化合物などを用いることもできる。酸基としては、カルボキシル基、酸無水物基、フェノール性水酸基などが挙げられる。カルボキシル基やフェノール性水酸基のような一塩基酸基を含む場合には、単一のケイ素含有化合物が複数の酸基を有することが好ましい。
【0074】
このようなシランカップリング剤の具体例としては、式(C):
Si(OR4-n (C)
で表わされる化合物、もしくはそれを繰り返し単位とした重合体が挙げられる。このとき、XまたはRが異なる繰り返し単位を複数組み合わせて用いることができる。
【0075】
式中、Rとしては、炭化水素基、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基などのアルキル基が挙げられる。一般式(C)において、Rは複数含まれるが、それぞれのRは、同じでも異なっていてもよい。
【0076】
Xとしては、ホスホニウム、ボレート、カルボキシル、フェノール、ペルオキシド、ニトロ、シアノ、スルホ、およびアルコール基等の酸基を持つもの、ならびに、これら酸基をアセチル、アリール、アミル、ベンジル、メトキシメチル、メシル、トリル、トリメトキシシリル、トリエトキシシリル、トリイソプロピルシリル、またはトリチル基等で保護されたもの、酸無水物基が挙げられる。
【0077】
これらのうち、Rとしてメチル基、Xとしてカルボン酸無水物基をもつもの、例えば酸無水物基含有シリコーンが好ましい。より具体的には下記式で表される化合物(X-12-967C(商品名、信越化学工業株式会社))や、それに相当する構造をシリコーン等のケイ素含有重合体の末端又は側鎖に含む重合体が好ましい。
【化7】
また、ジメチルシリコーンの末端部にチオール、ホスホニウム、ボレート、カルボキシル、フェノール、ペルオキシド、ニトロ、シアノ、およびスルホ基等の酸基を付与した化合物も好ましい。このような化合物としては下記式で表される化合物(X-22-2290ASおよびX-22-1821(いずれも商品名、信越化学工業株式会社))が挙げられる。
【化8】
【0078】
シランカップリング剤がシリコーン構造を含む場合、分子量が大きすぎると、組成物中に含まれるポリシロキサンとの相溶性が乏しくなり、現像液に対する溶解性が向上しない、膜内に反応性基が残り、後工程に耐えうる薬液耐性が保てない等の悪影響がある可能性がある。このため、シランカップリング剤の質量平均分子量は、5000以下であることが好ましく、4000以下であることがより好ましい。
【0079】
重合阻害剤としては、ニトロン、ニトロキシドラジカル、ヒドロキノン、カテコール、フェノチアジン、フェノキサジン、ヒンダードアミン及びこれらの誘導体の他、紫外線吸収剤を添加することが出来る。その中でもメチルヒドロキノン、カテコール、4-t-ブチルカテコール、3-メトキシカテコール、フェノチアジン、クロルプロマジン、フェノキサジン、ヒンダードアミンとして、TINUVIN 144、292、5100(BASF社)、紫外線吸収剤として、TINUVIN 326、328、384-2、400、477(BASF社)が好ましい。これらは単独または複数を組み合わせて使用することができ、その含有量はアルカリ可溶性樹脂の総質量を基準として、0.01~20質量%とすることが好ましい。
【0080】
消泡剤としては、アルコール(C18)、オレイン酸やステアリン酸等の高級脂肪酸、グリセリンモノラウリレート等の高級脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール(PEG)(Mn200~10,000)、ポリプロピレングリコール(PPG)(Mn200~10,000)等のポリエーテル、ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル等のシリコーン化合物、および下記に詳細を示す有機シロキサン系界面活性剤が挙げられる。これらは単独または複数を組み合わせて使用することができ、その含有量はアルカリ可溶性樹脂の総質量を基準として、0.1~3質量%とすることが好ましい。
【0081】
また、本発明による組成物には、必要に応じ界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤は、塗布特性、現像性等の向上を目的として添加される。本発明で使用することのできる界面活性剤としては、例えば非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
【0082】
非イオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類やポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレンポリオキシピロピレンブロックポリマー、アセチレンアルコール、アセチレングリコール、アセチレンアルコールのポリエトキシレート、アセチレングリコールのポリエトキシレートなどのアセチレングリコール誘導体、フッ素含有界面活性剤、例えばフロラード(商品名、住友スリーエム株式会社)、メガファック(商品名、DIC株式会社)、スルフロン(商品名、旭硝子株式会社)、または有機シロキサン界面活性剤、例えばKP341(商品名、信越化学工業株式会社)などが挙げられる。前記アセチレングリコールとしては、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0083】
またアニオン系界面活性剤としては、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸のアンモニウム塩または有機アミン塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸のアンモニウム塩または有機アミン塩、アルキルベンゼンスルホン酸のアンモニウム塩または有機アミン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸のアンモニウム塩または有機アミン塩、アルキル硫酸のアンモニウム塩または有機アミン塩などが挙げられる。
【0084】
さらに両性界面活性剤としては、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、ラウリル酸アミドプロピルヒドロキシスルホンベタインなどが挙げられる。
【0085】
これら界面活性剤は、単独でまたは2種以上混合して使用することができ、その含有量は、組成物の総質量を基準として、好ましくは0.005~1質量%、より好ましくは0.01~0.5質量%である。
【0086】
また、本発明による組成物には、必要に応じ増感剤を添加することができる。
本発明による組成物で好ましく用いられる増感剤としては、クマリン、ケトクマリンおよびそれらの誘導体、チオピリリウム塩、アセトフェノン類等、具体的には、p-ビス(o-メチルスチリル)ベンゼン、7-ジメチルアミノ-4-メチルキノロン-2、7-アミノ-4-メチルクマリン、4,6-ジメチル-7-エチルアミノクマリン、2-(p-ジメチルアミノスチリル)-ピリジルメチルヨージド、7-ジエチルアミノクマリン、7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン、2,3,5,6-1H,4H-テトラヒドロ-8-メチルキノリジノ-<9,9a,1-gh>クマリン、7-ジエチルアミノ-4-トリフルオロメチルクマリン、7-ジメチルアミノ-4-トリフルオロメチルクマリン、7-アミノ-4-トリフルオロメチルクマリン、2,3,5,6-1H,4H-テトラヒドロキノリジノ-<9,9a,1-gh>クマリン、7-エチルアミノ-6-メチル-4-トリフルオロメチルクマリン、7-エチルアミノ-4-トリフルオロメチルクマリン、2,3,5,6-1H,4H-テトラヒドロ-9-カルボエトキシキノリジノ-<9,9a,1-gh>クマリン、3-(2’-N-メチルベンズイミダゾリル)-7-N,N-ジエチルアミノクマリン、N-メチル-4-トリフルオロメチルピペリジノ-<3,2-g>クマリン、2-(p-ジメチルアミノスチリル)-ベンゾチアゾリルエチルヨージド、3-(2’-ベンズイミダゾリル)-7-N,N-ジエチルアミノクマリン、3-(2’-ベンゾチアゾリル)-7-N,N-ジエチルアミノクマリン、並びに下記化学式で表されるピリリウム塩およびチオピリリウム塩などの増感色素が挙げられる。増感色素の添加により、高圧水銀灯(360~430nm)などの安価な光源を用いたパターニングが可能となる。その含有量はアルカリ可溶性樹脂の総質量を基準として、好ましくは0.05~15質量%であり、より好ましくは0.1~10質量%である。
【化9】
【0087】
また、増感剤として、アントラセン骨格含有化合物を用いることもできる。具体的には、下記式で表される化合物が挙げられる。
【化10】
式中、R31はそれぞれ独立にアルキル基、アラルキル基、アリル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、グリシジル基、およびハロゲン化アルキル基からなる群から選択される置換基を示し、
32はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基、およびカルボアルコキシ基からなる群から選択される置換基を示し、
kはそれぞれ独立に0、1~4から選ばれる整数である。
【0088】
このようなアントラセン骨格を有する増感剤を使用する場合、その含有量はアルカリ可溶性樹脂の総質量を基準として、好ましくは0.01~5質量%である。
【0089】
また、本発明による組成物には、必要に応じ硬化剤を添加することができる。
硬化剤は、パターンの形状を強固にしたり、現像のコントラストをあげることにより解像度を改良することができる。本発明に用いられる硬化剤としては、放射線を照射すると分解して組成物を光硬化させる活性物質である酸を放出する光酸発生剤、塩基を放出する光塩基発生剤等があげられる。ここで、放射線としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、電子線、α線、またはγ線等を挙げることができる。
【0090】
硬化剤の含有量は、硬化剤が分解して発生する活性物質の種類、発生量、要求される感度・露光部と未露光部との溶解コントラストにより最適量は異なるが、アルカリ可溶性樹脂の総質量を基準として、好ましくは0.001~10質量%であり、さらに好ましくは0.01~5質量%である。
【0091】
<硬化膜の形成方法>
本発明による硬化膜の形成方法は、前記した組成物を基板に塗布して塗膜を形成させ、塗膜を露光し、現像することを含んでなるものである。硬化膜の形成方法を工程順に説明すると以下の通りである。
【0092】
(1)塗布工程
まず、前記した組成物を基板に塗布する。本発明における組成物の塗膜の形成は、感光性組成物の塗布方法として従来知られた任意の方法により行うことができる。具体的には、浸漬塗布、ロールコート、バーコート、刷毛塗り、スプレーコート、ドクターコート、フローコート、スピンコート、およびスリット塗布等から任意に選択することができる。また組成物を塗布する基材としては、シリコン基板、ガラス基板、樹脂フィルム等の適当な基材を用いることができる。これらの基材には、必要に応じて各種の半導体素子などが形成されていてもよい。基材がフィルムである場合には、グラビア塗布も利用可能である。所望により塗膜後に乾燥工程を別に設けることもできる。また、必要に応じて塗布工程を1回または2回以上繰り返して、形成される塗膜の膜厚を所望のものとすることができる。
【0093】
(2)プリベーク工程
組成物を塗布することにより、塗膜を形成させた後、その塗膜を乾燥させ、且つ塗膜中の溶媒残存量を減少させるため、その塗膜をプリベーク(前加熱処理)することが好ましい。プリベーク工程は、一般に50~150℃、好ましくは90~120℃の温度で、ホットプレートによる場合には10~300秒間、好ましくは30~120秒間、クリーンオーブンによる場合には1~30分間実施することができる。
【0094】
(3)露光工程
塗膜を形成させた後、その塗膜表面に光照射を行う。光照射に用いる光源は、パターン形成方法に従来使用されている任意のものを用いることができる。このような光源としては、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライド、キセノン等のランプやレーザーダイオード、LED等を挙げることができる。照射光としてはg線、h線、i線などの紫外線が通常用いられる。半導体のような超微細加工を除き、数μmから数十μmのパターニングでは360~430nmの光(高圧水銀灯)を使用することが一般的である。中でも、液晶表示装置の場合には430nmの光を使用することが多い。このような場合に、本発明による組成物に増感色素を組み合わせると有利であることは上述した通りである。照射光のエネルギーは、光源や塗膜の膜厚にもよるが、一般に5~2,000mJ/cm、好ましくは10~1,000mJ/cmとする。照射光エネルギーが5mJ/cmよりも低いと十分な解像度が得られないことがあり、反対に2,000mJ/cmよりも高いと、露光過多となり、ハレーションの発生を招く場合がある。
【0095】
光をパターン状に照射するためには一般的なフォトマスクを使用することができる。そのようなフォトマスクは周知のものから任意に選択することができる。照射の際の環境は、特に限定されないが、一般に周囲雰囲気(大気中)や窒素雰囲気とすればよい。また、基板表面全面に膜を形成する場合には、基板表面全面に光照射すればよい。本発明においては、パターン膜とは、このような基板表面全面に膜が形成された場合をも含むものである。
【0096】
(4)露光後加熱工程
露光後、重合開始剤により膜内のポリマー間反応を促進させるため、必要に応じて露光後加熱(Post Exposure Baking)を行うことができる。この加熱処理は、後述する加熱工程(6)とは異なり、塗膜を完全に硬化させるために行うものではなく、現像後に所望のパターンだけが基板上に残し、それ以外の部分が現像により除去することが可能となるように行うものである。したがって、本願発明において必須ではない。
【0097】
露光後加熱を行う場合、ホットプレート、オーブン、またはファーネス等を使用することができる。加熱温度は光照射によって発生した露光領域の酸、塩基またはラジカルが未露光領域まで拡散することは好ましくないため、過度に高くするべきではない。このような観点から露光後の加熱温度の範囲としては、40℃~150℃が好ましく、60℃~120℃が更に好ましい。組成物の硬化速度を制御するため、必要に応じて、段階的加熱を適用することもできる。また、加熱の際の雰囲気は特に限定されないが、組成物の硬化速度を制御することを目的として、窒素などの不活性ガス中、真空下、減圧下、酸素ガス中などから選択することができる。また、加熱時間は、ウエハ面内の温度履歴の均一性がより高く維持するために一定以上であることが好ましく、また発生した酸、塩基、またはラジカルの拡散を抑制するためには過度に長くないことが好ましい。このような観点から、加熱時間は20秒~500秒が好ましく、40秒~300秒がさらに好ましい。
【0098】
(5)現像工程
露光後、必要に応じて露光後加熱を行ったあと、塗膜を現像処理する。現像の際に用いられる現像液としては、従来、感光性組成物の現像に用いられている任意の現像液を用いることができる。本発明においてはアルカリ可溶性樹脂の溶解速度を特定するためにTMAH水溶液を用いるが、硬化膜を形成させるときに用いる現像液はこれに限定されない。好ましい現像液としては、水酸化テトラアルキルアンモニウム、コリン、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属メタ珪酸塩(水和物)、アルカリ金属燐酸塩(水和物)、アンモニア、アルキルアミン、アルカノールアミン、複素環式アミンなどのアルカリ性化合物の水溶液であるアルカリ現像液が挙げられ、特に好ましいアルカリ現像液は、TMAH水溶液、水酸化カリウム水溶液、または水酸化ナトリウム水溶液である。これらアルカリ現像液には、必要に応じ更にメタノール、エタノールなどの水溶性有機溶剤、あるいは界面活性剤が含まれていてもよい。現像方法も従来知られている方法から任意に選択することができる。具体的には、現像液への浸漬(ディップ)、パドル、シャワー、スリット、キャップコート、スプレーなどの方法挙げられる。この現像によって、パターンを得ることができる、現像液により現像が行われた後には、水洗がなされることが好ましい。
【0099】
(6)加熱工程
現像後、得られたパターン膜を加熱することにより硬化させる。加熱工程に使う加熱装置には、前記した露光後加熱に用いたものと同じものを用いることができる。この加熱工程における加熱温度としては、塗膜の硬化が行える温度であれば特に限定されず、任意に定めることができる。ただし、シラノール基が残存すると、硬化膜の薬品耐性が不十分となったり、硬化膜の誘電率が高くなることがある。このような観点から加熱温度は一般的には相対的に高い温度が選択される。一般的に硬化後の残膜率を高く保つために、硬化温度は350℃以下であることがより好ましく、250℃以下であることが特に好ましい。一方で、硬化反応を促進し、十分な硬化膜を得るために、硬化温度は70℃以上であることが好ましく、80℃以上がより好ましく、90℃以上が特に好ましい。しかしながら、本発明による組成物は、70~130℃、特に100℃以下の低温で硬化させた場合でも薬品耐性が十分保持される。また、加熱時間は特に限定されず、一般に10分~24時間、好ましくは30分~3時間とされる。なお、この加熱時間は、パターン膜の温度が所望の加熱温度に達してからの時間である。通常、加熱前の温度からパターン膜が所望の温度に達するまでには数分から数時間程度要する。
【0100】
こうして得られた硬化膜は、優れた透明性、耐薬品性、耐環境性等を達成することができる。例えば100℃で硬化させた膜の光透過率は95%以上であり比誘電率も4以下を達成することができる。その後、65℃、湿度90%の条件下1000時間経過後であっても比誘電率が維持される。このため、従来使用されていたアクリル系材料にはない光透過率、比誘電率、耐薬品性、耐環境性を有しており、フラットパネルディスプレー(FPD)など、前記したような各種素子の平坦化膜、低温ポリシリコン用層間絶縁膜あるいはICチップ用バッファーコート膜、透明保護膜などとして多方面で好適に利用することができる。
【0101】
以下に実施例、比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例、比較例により何ら限定されるものではない。
【0102】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)は、HLC-8220GPC型高速GPCシステム(商品名、東ソー株式会社)およびSuper Multipore HZ-N型GPCカラム(商品名、東ソー株式会社)2本を用いて測定した。測定は、単分散ポリスチレンを標準試料とし、テトラヒドロフランを展開溶媒として、流量0.6ミリリットル/分、カラム温度40℃の分析条件で行った。
【0103】
<合成例1:ポリシロキサンA:PSA-1の合成:Me:Ph:KBM-9659:H=50:40:9.5:5>
撹拌機、温度計、冷却管を備えた3Lのフラスコに、メチルトリメトキシシラン204g、フェニルトリメトキシシラン237g、およびKBM-9695(信越シリコーン社)185g、PGMEA1200g、トリメトキシヒドロシラン1.8gの混合溶液を調整した。その混合溶液に35%HCl水溶液6.6gを加え25℃にて3時間撹拌した。中和液にトルエン400ml、水600mlを添加し、2層に分離させ、水層を除去した。さらに300mlの水にて3回洗浄し、得られた有機層を減圧下濃縮することで溶媒を除去し、濃縮物に固形分濃度35質量%なるようにPGMEAを添加調整し、ポリシロキサンPSA-1溶液を得た。得られたポリシロキサンPSA-1のMw=12,000であった。
【0104】
<合成例2:ポリシロキサンA:PSA-2の合成>
Me:Ph:KBM-9659:H=50:20:19.5:5に変更した以外は合成例1と同様に、ポリシロキサンPSA-2溶液を得た。得られたポリシロキサンPSA-2のMw=16,400であった。
【0105】
<合成例3:ポリシロキサンA:PSA-3の合成>
Me:Ph:KBM-9659:H=50:45:4.5:5に変更した以外は合成例1と同様に、ポリシロキサンPSA-3溶液を得た。得られたポリシロキサンPSA-3のMw=8,200であった。
【0106】
<合成例4:ポリシロキサンB:PSB-1の合成>
撹拌機、温度計、冷却管を備えた2Lのフラスコに、25質量%TMAH水溶液49.0g、イソプロピルアルコール(IPA)600ml、水4.0gを仕込み、次いで滴下ロート中にメチルトリメトキシシラン68.0g、フェニルトリメトキシシラン79.2g、およびテトラメトキシシラン15.2gの混合溶液を調製した。その混合溶液を40℃にて滴下し、同温で2時間撹拌した後、10質量%HCl水溶液を加え中和した。中和液にトルエン400ml、水600mlを添加し、2層に分離させ、水層を除去した。さらに300mlの水にて3回洗浄し、得られた有機層を減圧下濃縮することで溶媒を除去し、濃縮物に固形分濃度35質量%なるようにPGMEAを添加調整し、ポリシロキサンPSB-1溶液を得た。得られたポリシロキサンPSB-1のMw=1,700であった。
【0107】
<合成例5:アクリル樹脂:AC-1の合成>
撹拌機、温度計、冷却管、窒素ガス導入管を備えた2Lフラスコに、ノルマルブタノール、PGMEA溶媒を仕込み、窒素ガス雰囲気下で、開始剤の10時間半減期温度を参考に、適正な温度まで昇温した。それとは別に、アクリル酸、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、メチルメタクリレートを10:20:20:50、AIBN:アゾビスイソブチロニトリル、PGMEAを混合した混合液を調整し、その混合液を前記溶媒中に4時間かけて滴下した。その後、3時間反応させてアクリル樹脂AC-1を得た。得られたアクリル樹脂AC-1のMw=8,700であった。
【0108】
<合成例6:アクリル樹脂:AC-2の合成>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えた2Lセパラブルフラスコに、500gのPGMEAを加え、95℃に昇温後、160gのメタクリル酸、100gのメチルメタクリレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(パーブチルO;日油株式会社)16.6gを3時間かけて滴下した。滴下後4時間室温にて攪拌させ、ポリマー溶液を合成した。このポリマー溶液に、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート160g、トリフェニルホスフィンを1.5g、1.0gのメチルハイドロキノンを加えて、窒素雰囲気下110℃で6時間反応させた。反応後、固形分が35重量%になるように、PGMEAを用いて希釈し、Mw11,000のアクリル樹脂を得た。
【0109】
<合成例7:その他ポリマー:P-1の合成>
2Lの四つ口フラスコに、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂235g(エポキシ当量235)とテトラメチルアンモニウムクロライド110mg、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール100mg、及びアクリル酸72.0gを加え、120℃で12時間加熱溶解した。次に、溶液が白濁した状態のまま徐々に昇温し、120℃に加熱して完全に溶解させて得られたビスフェノールフルオレン型エポキシアクリレート、アクリル酸、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、メチルメタクリレートを10:20:20:50、AIBN:アゾビスイソブチロニトリル、PGMEAを混合した混合液を調整し、その混合液を前記溶媒中に4時間かけて滴下した。その後、3時間反応させてポリマーP-1を得た。得られたポリマーP-1のMw=16,100であった。
【0110】
<実施例1>
合成例1で得られたポリシロキサンPSA-1を100質量部含む溶液に、重合開始剤としてBASF社「Irgacure OXE-02」を3.5質量部、(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業株式会社「A-DPH」)を16質量部およびε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート(新中村化学工業株式会社「A-9300-1CL」)を8.5質量部、ならびに界面活性剤として信越化学工業株式会社「AKS-10」を0.01質量部加え、PGMEAを加えて35%の溶液に調製した。
【0111】
<実施例2~19、比較例1~8>
実施例1に対して、表1および2に示す通りに組成を変更した組成物を調製した。表中の数値は、質量部を示す。
【表1】
【表2】
表中、
重合開始剤A:BASF社「Irgacure OXE-02」。
AM-1:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業株式会社「A-DPH」)。
AM-2:ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート(新中村化学工業株式会社「A-9300-1CL」)。
AM-3:ポリエチレングリコール♯200ジアクリレート(新中村化学工業株式会社「A-200」)。
AM-4:ポリエチレングリコール♯1000ジアクリレート(新中村化学工業株式会社「A-1000」)。
AM-5:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(新中村化学工業株式会社「A-DCP」)。f
AM-6:2,2ビス(4-(アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン(EO4モル)(新中村化学工業株式会社「A-BPE-4」)。
シランカップリング剤A:トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート。
シランカップリング剤B:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン。
界面活性剤A:信越化学工業株式会社「AKS-10」。
【0112】
得られた各組成物を、スピンコートにてITOまたはシリコンウエハ上に塗布し、塗布後ホットプレート上100℃で90秒間プリベークした。このとき、平均膜厚は、2~3μmであった。i線露光機を用いて露光し、2.38%TMAH水溶液を用いて、現像し、30秒間純水によるリンスを行った。リンス後、100℃または120℃で一時間加熱した。その後、剥離液TOK106(東京応化工業株式会社)に3分浸漬させ、浸漬後におけるパターン形状の変化を測定した。
A:浸漬前後で膜べり量が±10%以内であった
B:浸漬前後で膜べり量が10%超±20%以内であった
C:膜べり量が20%超、またはパターン剥がれが確認された