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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】低放出注入マスク及び基板アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/266 20060101AFI20240823BHJP
   H01J 37/317 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
H01L21/265 M
H01J37/317 B
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022503776
(86)(22)【出願日】2020-06-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-29
(86)【国際出願番号】 US2020039168
(87)【国際公開番号】W WO2021021344
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-06-19
(31)【優先権主張番号】16/522,982
(32)【優先日】2019-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シンクレア, フランク
(72)【発明者】
【氏名】ブレイク, ジュリアン ジー.
【審査官】正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0235864(US,A1)
【文献】特表2004-513495(JP,A)
【文献】米国特許第06608315(US,B1)
【文献】特開2018-206505(JP,A)
【文献】特開2002-217123(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0043968(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/266
H01J 37/317
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板アセンブリであって、
基板ベースと、
前記基板ベース上に配置された低放出注入マスクであって、前記低放出注入マスクが、炭素含有材料を含み、前記炭素含有材料が、12C炭素同位体前駆体から形成された、同位体精製された炭素を含む、低放出注入マスクと
を含む、基板アセンブリ。
【請求項2】
前記低放出注入マスクが、0.5%未満の13C炭素同位体濃度を特徴とする、請求項1に記載の基板アセンブリ。
【請求項3】
前記低放出注入マスクが、0.1%未満の13C炭素同位体濃度を特徴とする、請求項1に記載の基板アセンブリ。
【請求項4】
前記低放出注入マスクが、同位体精製された12Cで形成された外層と、同位体的に不純な炭素で形成された、前記外層の下にある下部層とを含む、請求項1に記載の基板アセンブリ。
【請求項5】
前記低放出注入マスクが、少なくとも10μmの厚さを有する、請求項1に記載の基板アセンブリ。
【請求項6】
前記外層が、少なくとも10μmの厚さを有する、請求項4に記載の基板アセンブリ。
【請求項7】
前記低放出注入マスクが、フォトレジスト材料又はハードマスク材料を含む、請求項1に記載の基板アセンブリ。
【請求項8】
低放出注入マスクであって、10μm以上の厚さの層を有するフォトレジスト層を含み、前記フォトレジスト層が、12C炭素同位体前駆体から形成された、同位体精製された炭素を含む、低放出注入マスク。
【請求項9】
前記フォトレジスト層が、0.5%未満の13C炭素同位体濃度を特徴とする、請求項8に記載の低放出注入マスク。
【請求項10】
前記フォトレジスト層が、0.1%未満の13C炭素同位体濃度を特徴とする、請求項8に記載の低放出注入マスク。
【請求項11】
前記フォトレジスト層が、同位体精製された12Cで形成された外層と、同位体的に不純な炭素で形成された、前記外層の下にある下部層とを含む、請求項8に記載の低放出注入マスク。
【請求項12】
基板を注入する方法であって、
前記基板上に低放出注入マスクを提供することであって、前記低放出注入マスクが、同位体精製された12C材料を含み、前記注入マスクが、開放領域とマスク領域とを含み、第1の厚さを有する、低放出注入マスクを提供することと、
イオン種を注入エネルギーで前記基板に向けることと、
を含み、
前記イオン種が、前記開放領域で前記基板内に注入され、前記マスク領域では前記基板内に注入されず、
前記イオン種が、前記第1の厚さを有するとともに同位体的に不純な炭素材料を含む通常の注入マスク内に注入されるとき、前記低放出注入マスクが、第2の中性子収量よりも低い第1の中性子収量を生成する、
方法。
【請求項13】
前記低放出注入マスクが、0.5%未満の13C炭素同位体濃度を特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記低放出注入マスクが、0.1%未満の13C炭素同位体濃度を特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記低放出注入マスクが、同位体精製された12Cで形成された外層と、同位体的に不純な炭素で形成された、前記外層の下にある下部層とを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記低放出注入マスクが、フォトレジスト材料又はハードマスク材料を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記注入エネルギーが、100keVと10MeVの間である、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記注入エネルギーが約1MeVである、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記注入が、前記イオン種を、イオンビームとして、イオン注入装置のビームラインに沿って高イオンエネルギーに加速することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記イオン注入装置が、線形加速器又はタンデム加速器を含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は、概して、イオン注入、より詳細には、高エネルギーイオン注入用の注入マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]イオン注入は、衝突によってドーパント又は不純物を基板に導入する処理である。イオン注入システムは、イオン源及び一連のビームライン構成要素を含み得る。イオン源は、イオンが生成されるチャンバを含み得る。イオン源はまた、電源及びチャンバの近くに配置された抽出電極アセンブリも含み得る。ビームライン構成要素は、例えば、質量分析器、第1の加速又は減速段、コリメータ、及び第2の加速又は減速段を含み得る。光線を操作するための一連の光学レンズのように、ビームライン構成要素は、特定の種、形状、エネルギー、及び/又は他の性質を有するイオン又はイオンビームをフィルタし、集束させ、かつ操作することが可能である。イオンビームは、ビームライン構成要素を通過し、プラテン又はクランプ上に取り付けられた基板に向かって方向付けられ得る。
【0003】
[0003]約1MeV以上のイオンエネルギーを生成することができる注入装置は、高エネルギーイオン注入装置、又は高エネルギーイオン注入システムと称されることが多い。高エネルギーイオン注入装置の1つのタイプは、いわゆるタンデム加速アーキテクチャを採用しており、イオンは、第1のカラムを通って高エネルギーまで加速され、電荷交換を受けて極性を変化させ、次いで第2のエネルギーまで加速され、第2のカラムにおいて第1のエネルギーの約2倍になる。別のタイプの高エネルギーイオン注入装置は、線形加速器、すなわちリニアック(LINAC)と呼ばれ、チューブとして配置された一連の電極がイオンビームを伝導し、かつ、一連のチューブに沿ってますます高いエネルギーにまで加速し、電極が高周波でRF電圧信号を受信する。
【0004】
[0004]高エネルギーイオンがワークピース(「基板」とも呼ばれる)に衝突すると、イオンの注入に加えて、二次イオン、電子、及び中性子などの核粒子を含むさまざまな核種がワークピースから放出され得る。多くの場合、パターン化された注入が実施され、注入されない基板のそれらの領域がマスクされる。例示的なマスク材料には、有機ベースのフォトレジストなどのフォトレジスト、カーボンSiO2、SiCを含むハードマスク材料、又は他の材料が含まれる。一般的なマスク材料のほとんどには、かなりの量の炭素(C)が含まれている。元素状炭素は、12C同位体が主体であり、およそ1.1%の割合の13C同位体が天然に存在し、微量の14C同位体も存在する。13C同位体は、十分にエネルギーの高いイオンで攻撃されると、核反応によって変換され、中性子放出メカニズムを介して放射性崩壊を引き起こす場合がある。
【0005】
[0005]炭素ベースの(有機)フォトレジスト、SiC、炭素マスク材料などのマスク材料は、天然に存在する1.1%の割合と同様の割合で13C同位体を組み込む傾向がある。したがって、既知の炭素ベースのマスク材料は、高エネルギーイオンで攻撃されたとき、特にイオンエネルギーが1MeVを超える場合、及びイオンエネルギーが2~3MeVを超える可能性が高い場合に、中性子放出の影響を受けやすくなる。
【0006】
[0006]このような放射性プロセスで放出される中性子を吸収するためには、基板を収容する注入チャンバを含むイオン注入装置に設置するために、「高密度ポリエチレン」又は「ホウ化ポリエチレンシールド」などの非常に厚い被覆が必要になる場合がある。さらに、中性子放出はしばらく持続する可能性があり、イオン注入後に基板を取り扱う前に長い「冷却」期間が必要になる。
【0007】
[0007]これらの留意事項及び他の留意事項に関連して、本開示が提供される。
【発明の概要】
【0008】
[0008]一実施形態では、基板アセンブリは、基板ベースと、基板ベース上に配置された低放出注入マスクとを含んでもよく、低放出注入マスクは、炭素含有材料を含み、炭素含有材料は、12C炭素同位体前駆体から形成された、同位体精製された炭素を含む。
【0009】
[0009]さらなる実施形態では、低放出注入マスクは、10μm以上の厚さの層を有するフォトレジスト層を含んでもよく、ここで、フォトレジスト層は、12C炭素同位体前駆体から形成された、同位体精製された炭素を含む。
【0010】
[0010]さらなる実施形態では、基板を注入する方法は、基板上に低放出注入マスクを提供することを含んでもよく、低放出注入マスクは、同位体精製された12C材料を含み、注入マスクは、開放領域とマスク領域とを含み、第1の厚さを有する。この方法は、注入エネルギーで基板にイオン種を向けることを含んでもよく、ここで、イオン種は、開放領域の基板に注入され、マスク領域の基板には注入されない。このように、低放出注入マスクは、イオン種が、第1の厚さを有するとともに同位体的に不純な炭素材料を含む通常の注入マスクに注入されるときの第2の中性子収率より低い第1の中性子収率を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】[0011]本開示の実施形態による、低中性子放出のための例示的な基板配置を示す。
図2】[0012]本開示のさらなる実施形態による、低中性子放出のための例示的な基板配置を示す。
図3】[0013]本開示のさらなる実施形態による、低中性子放出のための別の基板配置を示す。
図4】[0014]本開示のさらなる実施形態による、例示的なイオン注入装置の配置を示す。
図5】[0015]本開示のいくつかの実施形態による、例示的なプロセスフローを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0016]図面は、必ずしも縮尺どおりではない。図面は、単なる表現であり、本開示の特定のパラメータを表すことを意図しない。図面は、本開示の例示的な実施形態を示すことを意図しており、したがって、範囲を限定するものと見なされない。図面では、同様の番号が同様の要素を表す。
【0013】
[0017]ここで、本開示による装置、システム及び方法を、システム及び方法の実施形態が示される添付の図面を参照しながら、以下により十分に説明する。システム及び方法は、多くの異なる形態で具現化されてよく、本明細書に記載される実施形態に限定されるものとみなされない。その代わりに、上記実施形態は、本開示が一貫しておりかつ完全となるように提供され、当業者にシステム及び方法の範囲を完全に伝える。
【0014】
[0018]便宜上及び明確にするために、「最上部(top)」、「底部(bottom)」、「上方(upper)」、「下方(lower)」、「垂直方向(vertical)」、「水平方向(horizontal)」、「横方向(lateral)」、及び「縦方向(longitudinal)」といった用語は、本明細書では、図に見られるように、これらの構成要素及びこれらを構成する部分の相対的な配置及び配向を説明するために使用される。専門用語には、具体的に言及された単語、その派生語、及び、同様の重要度の単語が含まれる。
【0015】
[0019]本明細書で使用されているように、「a」又は「an」という単語に続いて、単数形で列挙される要素又は動作は、同様に複数の要素又は動作を含む可能性があるものとして、理解される。さらに、本開示の「一実施形態(one embodiment)」への言及は、列挙された特徴も組み込む追加的な実施形態の存在を除外するものとして解釈されることを意図しない。
【0016】
[0020]本明細書では、高エネルギー注入に曝露されたときに低中性子放出を示す改善されたマスク材料及び基板アセンブリのための手法が提供される。さまざまな実施形態では、同位体精製された12C材料から形成された炭素ベースのマスク層を用いるマスク材料及び基板アセンブリが提供される。本明細書で使用される場合、「同位体精製された12C材料」という用語は、総炭素濃度に応じた13Cの濃度(13C/(13C+12C))が、0.5%未満、例えば0.1%未満である炭素含有材料を指すことがある。いくつかの場合、同位体精製された12C層は、測定不能な13Cを含み得るか、又は100万分の1(ppm)未満の13Cを含み得る。特に、1.1%の自然比よりも大幅に低い13C濃度では、中性子放出が比例して減少するため、「同位体精製された12C」と表現される場合がある。
【0017】
[0021]本発明の発明者は、高エネルギー注入に曝露されたときに12Cと13Cの両方を含む多くの材料が中性子放出を示し得るが、中性子放出断面積は、異なる材料ごとに異なるエネルギー依存性を示すことを、実現した。特に、本実施形態は、MeV範囲における12Cと13Cとの間の中性子放出の異なるエネルギー依存性を利用している。
【0018】
[0022]一例として、正の水素イオン(陽子)に曝露された13Cからの中性子放出の断面積は、2MeV未満の陽子エネルギーで10マイクロバーン未満であると推定される。2.5MeVを超える陽子エネルギーでは、中性子放出の断面積が急速に増加し、3MeVから10MeVの範囲のイオンエネルギーでは50~100ミリバーンの範囲に達し、最大25MeVのイオンエネルギーで5ミリバーンを超えるレベルに留まる。同様に、ヘリウムイオンの場合、500keV未満のエネルギーでの13Cの中性子放出断面積は1マイクロバーン未満であるが、1MeVを超えると急速に増加して1ミリバーン以上のレベルに達し、特に、例えば2MeVと25MeVの間のイオンエネルギーでは数十ミリバーンから数百ミリバーンのレベルに達する。
【0019】
[0023]対照的に、正の水素イオン(陽子)に曝露された12Cからの中性子放出の断面積は、2MeV未満の陽子エネルギーで5マイクロバーン未満であると推定される。正の水素イオン(陽子)に曝露された12Cからの中性子放出の断面積は、イオンエネルギーが15MeVを超えるまでミリバーンの範囲に増加せず、20MeVから100MeVの範囲のイオンエネルギーで50~100ミリバーンの間のレベルに達する。同様に、ヘリウムイオンの場合、10MeV未満のエネルギーでの12Cの中性子放出断面積は1マイクロバーン未満であるが、11MeVを超えると急速に増加して、例えば11MeVと25MeVの間では、およそ10ミリバーンのレベルに達する。
【0020】
[0024]特に、1MeVから10MeV程度のイオンエネルギー範囲は、1つの商用実装を挙げれば、シリコンウエハに水素を注入するための多くの注入手順の特徴である。したがって、同位体精製された12Cで形成されたマスキング材料を提供することにより、陽子注入の場合は1MeVから約15MeV、ヘリウム注入の場合は最大約10MeVなどのMeV範囲で実行されるイオン注入プロセスを、はるかに少ない中性子の収率で安全に実行することができる。
【0021】
[0025]本開示のさまざまな実施形態によれば、フォトレジスト材料は、有機(炭素含有)材料を使用して調製することができ、ここで、炭素含有材料は、同位体精製された12C炭素含有化学物質で形成され得る。それ以外の場合、フォトレジスト材料は、フォトレジスト材料が既知のフォトレジスト材料と化学的に同じであり、フォトレジスト中の炭素が12Cの同位体のみを含むという点で異なるように、既知のプロセスを使用して調製され得る(もしあれば、微量、例えば1ppm未満の14C又は13Cを無視する)。さまざまな実施形態によれば、同位体精製された12Cフォトレジスト材料は、その後、既知の手順に従って注入マスクとして基板に適用され得る。
【0022】
[0026]本開示の他の実施形態によれば、炭素含有ハードマスク層は、基板上に形成することができ、ここで、炭素含有ハードマスク層は、同位体精製された12C炭素で形成され得る。ハードマスク層が化学気相堆積によって堆積されるいくつかの実施形態では、同位体精製された12C前駆体ガスは、12CH12等のハードマスク層を堆積するために使用することができ、ここで、上付き文字「12」は、記載される化学式を有する所与の化学物質又は物質を表し、ここで、所与の化学物質又は物質中の炭素材料は、炭素の12C同位体のみを含有する(もしあれば、微量、例えば1ppm未満の14C又は13Cを無視する)。このように、Si12C、12C、Si12CNなどのような同位体精製された12C含有ハードマスク層は、既知のCVD法によって堆積され得る。
【0023】
[0027]他の実施形態では、ハードマスク層は、同位体精製された12C炭素で形成された固体ターゲットを使用して、スパッタリング、蒸発などを含む物理的気相堆積によって堆積され得る。このように、SiC、C、SiCNなどのようなハードマスク層は、既知のPVD法によって堆積され得る。
【0024】
[0028]同位体精製された12Cハードマスク層は、既知の手順に従ってパターン化されてハードマスクを形成し得る。
【0025】
[0029]図1は、本開示の実施形態による、低中性子放出のための例示的な基板配置を示す。基板配置100が示されており、ここで、基板102は、注入マスク104を支持する。注入マスク104は、基板102に注入されるイオンの注入パターンを画定するために使用される。このように、イオンビーム106として概して示されるイオンが基板配置100に衝突するとき、部分104A、部分104B、部分104Cとして示される注入マスク104の異なる部分は、イオンビーム106が、異なる部分に直接隣接する領域で基板102に衝突するのを遮断する。イオンビーム106は、マスク材料が存在しない開放領域110で基板102に注入される。本開示の実施形態によれば、注入マスク104は、上記のような、同位体精製された12C材料で形成された、炭素含有層であり得る。さまざまな実施形態によれば、注入マスク104は、所与のマスク厚さで形成されており、ここで、マスク厚さは、矢印の範囲によって示唆されるように、イオンビーム106のイオンが注入マスク104を完全に通過して基板102に衝突するのを防ぐのに十分である。注入マスク104の厚さは、基板102に注入するイオンエネルギー及びイオン種に従って設定され得る。注入手順において使用するための注入マスク104の例示的な厚さは、数マイクロメートルから数百マイクロメートル(μm)の間であり得る。ここで、イオンエネルギーは、1MeVから10MeVの範囲に設定され、イオン種は、陽子又はヘリウムである。実施形態は、この状況に限定されない。いくつかの実施形態では、注入マスク104は、フォトレジストマスク、ステンシルマスク、又はハードマスクであり得る。いくつかの実施形態では、注入マスク104は単一層で形成され得る。ここで、この層は同位体精製された12C材料で形成されている。
【0026】
[0030]特に、さまざまな使用シナリオでは、基板配置100は、高エネルギー注入装置、例えば、タンデムイオン注入装置又は線形加速器(LINAC)注入装置などの高エネルギー注入装置に展開されてもよく、ここで、イオンビーム106のイオンは、MeVの範囲のエネルギーで基板に衝突し得る。例えば、イオンビーム106のイオンエネルギーは、さまざまな非制限的な実施形態では1MeVから10MeVであり得る。注入マスク104に衝突するとき、イオンビーム106のイオンによって生成された中性子の収率は、注入マスク104の炭素種において13Cが存在しないことにより、抑制され得る。特に、1-10MeVの正の水素イオン(陽子)又は1-10MeVのヘリウムイオンでは、注入マスク104による中性子放出は、注入マスク104と同じ化学組成を有する既知のマスクに関して抑制され得る。ここで、既知のマスクでは、13C同位体が、炭素種に約1.1%の天然存在比で存在する。
【0027】
[0031]図2は、本開示の実施形態による、低中性子放出のための別の例示的な基板配置を示す。基板配置200が示されており、ここで、基板102は、注入マスク204を支持する。図1で示すように、注入マスク204は、基板102に注入されるイオンの注入パターンを画定するために使用される。このように、イオンビーム206として概して示されるイオンが基板配置200に衝突するとき、部分204A、部分204B、部分204Cとして示される注入マスク204の異なる部分は、イオンビーム206が、異なる部分に直接隣接する領域で基板102に衝突するのを遮断する。
【0028】
[0032]本開示の実施形態によれば、注入マスク204は、概して上記のような、同位体精製された12C材料で形成された、少なくとも一つの炭素含有層を含む、複数の層で形成され得る。図2で示されるように、注入マスク204は、上部層208として示される外層と、下部層210とを含む二つの層を含み得る。上部層208は、周囲との上部インターフェース208を有し、ここで、イオンビーム206は、上部層208に注入される。このように、上部層208は、同位体精製された12C材料で形成された、炭素含有層であり得る。注入マスク104と同様に、上部層208の厚さは、上部層208内にイオンビーム206を含むように、イオンビーム206のイオン種及びイオンエネルギーに従って設定され得る。このやり方では、下部層210は、上部層208とは異なる材料で形成され得る。例えば、注入マスク204は、2つの炭素含有フォトレジスト層のセットなどの化学的に均質な層のセットであり得、上部層208及び下部層210は同じ化学組成を有する。下部層210が、13Cと12Cの比率が1.1%の天然存在比と同様であるか又は同じである炭素種で形成されているという点で、下部層210は、上部層208と異なっていてもよい。このように、下部層210は、1MeVから10MeVの範囲のエネルギーを有する陽子又はヘリウムなどのイオンの照射をうけたとき、上部層208の中性子放出よりもはるかに多くの中性子放出を示し得る。注入マスク204における下部層210の使用は、マスクのほんの一部が同位体精製された12Cから形成された比較的高価な層で形成される、比較的厚いマスクを提供することを容易にする。言い換えれば、同位体精製された12Cマスク材料は非常に高価である場合があるため、マスクの上部だけで同位体精製された12Cを使用することによりコストを節約でき、マスクの下部は化学的に同一の材料でできているが、13Cの天然に存在する同位体組成を有する。そのような配置は、最小の追加コストでマスクの中性子放出を低減しながら、マスクの両方の層を同じプロセスでリソグラフィーで一緒に処理(曝露、現像、ハードベークなど)できるという利点を有する。
【0029】
[0033]特に、上部層208の厚さは、目標の注入エネルギーに対して、イオンビーム206のイオンの一部が上部層208を完全に横断して下部層210に浸透し、イオンビーム206のイオンが基板102(206A)に浸透しないような厚さであり得る。上部層208の厚さはまた、目標の注入エネルギーについて、イオンビーム206のイオンのエネルギーが、陽子イオンビームの場合は2.5MeV未満など、13Cからかなりの量の中性子を生成するための閾値エネルギー未満になるように調整され得る。言い換えれば、上部層208を完全に貫通する任意のイオンのエネルギーは、中性子を生成することができないほど十分に低減されるため、上部層208が十分な厚さで存在することにより、かなりの量の13Cを含む同位体的に不純な炭素から下部層210を形成することが可能になる。
【0030】
[0034]図3は、本開示の実施形態による、低中性子放出のための別の例示的な基板配置を示す。基板配置300が示されており、ここで、基板102は、注入マスク304を支持する。図1及び図2で示すように、注入マスク304は、基板102に注入されるイオンの注入パターンを画定するために使用される。このように、イオンビーム306として概して示されるイオンが基板に衝突するとき、部分304A、部分304B、部分304Cとして示される注入マスク304の異なる部分は、イオンビーム306が、異なる部分に直接隣接する領域で基板102に衝突するのを遮断する。
【0031】
[0035]本開示の実施形態によれば、注入マスク204は、上記のような、同位体精製された12C材料で形成された、少なくとも一つの炭素含有層を含む、複数の層で形成され得る。図3で示されるように、注入マスク304は、上部層308と下部層310とを含む二つの層を含み得る。上部層308は、周囲との上部インターフェース308を有し、ここで、イオンビーム306は、上部層208に注入される。このように、上部層308は、同位体精製された12C材料で形成された、炭素含有層であり得る。上部層208と同様に、上部層308の厚さは、上部層308内にイオンビーム306を含むように、又はイオンビーム306を十分に減速して、下部層310に衝突したときでさえ、イオンビーム306が中性子を生成できないように、イオンビーム306のイオン種及びイオンエネルギーに従って設定され得る。このやり方では、下部層310は、上部層308とは異なる材料で形成され得る。特に、いくつかの実施形態では、下部層310は、上部層308とは異なる材料及び/又は異なるプロセスで形成され得る。例えば、下部層310はハードマスク材料であり得る一方、上部層308はフォトレジスト材料であり得る。
【0032】
[0036]図4は、本開示の実施形態によって配置されたイオン注入システム400を示す。イオン注入システム400は、イオン源404と、イオンビーム412を生成することができる抽出アセンブリ406を含み得る。イオン注入システム400は、イオンビーム412を偏向及びフィルタリングすることによって質量分析ビームを提供するための、質量分析器408を含む既知の構成要素をさらに含み得る。図4に示すように、イオン注入システム400は、高エネルギー加速構成要素410を含み得る。高エネルギー加速構成要素410は、既知のタンデム加速器又は既知の線形加速器を表す場合があり、高エネルギー加速構成要素410は、イオンビーム412を1MeV以上、例えば最大10MeV、又はいくつかの実施形態では最大20MeVのイオンエネルギーに加速することができる。イオン注入システム400は、コリメータ414(この構成要素は修正用磁石を含み得る)、末端ステーション422をさらに含んでもよく、末端ステーション422内には基板アセンブリ416が配置されている。基板アセンブリ416は、基板418上に配置された低放出注入マスク420を含む基板418として示される。低放出注入マスク420は、概して上記の実施形態のいずれかによる炭素含有マスクとして配置され、低放出注入マスク420の少なくとも上部層は、同位体精製された12C材料で形成される。
【0033】
[0037]工程中、イオンビーム412が、1MeVから10MeVなどのエネルギーで基板アセンブリ416に衝突すると、基板アセンブリ416からの中性子放出は、注入マスクが1.1%13Cの範囲の天然に存在する画分など、実質的な13C画分を有する炭素を含む既知の配置と比較して、抑制される。
【0034】
[0038]図5は、本開示のいくつかの実施形態による例示的なプロセスフロー500を示す。ブロック502では、高エネルギーイオン注入装置の注入チャンバ内に基板が提供される。ブロック504では、低放出注入マスクが、基板上に提供される。さまざまな実施形態では、低放出注入マスクには、上記のように、同位体精製された12Cから形成された炭素含有層が含まれる。いくつかの実施形態では、低放出注入マスクは、単一層である一方、他の実施形態では、多層を含み得る。
【0035】
[0039]ブロック506では、高エネルギーイオン注入装置内でイオンビームが生成され、イオンビームは、ビームラインに沿って高イオンエネルギーに加速される。高イオンエネルギーは、さまざまな非制限的な実施形態では、1MeV超、3MeV超、5MeV超、最大10MeVの範囲であり得る。一例として、イオン注入装置は、水素イオン、ヘリウムイオン、又はその他イオンを加速するために配置されたタンデム加速器であり得る。実施形態は、この状況に限定されない。さらなる実施形態では、イオン注入装置は、1MeVから10MeVの範囲にイオンエネルギーにイオンを加速することができる線形加速器であり得る。このように、タンデム加速器又は線形加速器を通じた加速の後、イオンビームは、1MeVから10MeVの範囲の高エネルギーでビームラインの下流部分に現れる場合がある。
【0036】
[0040]ブロック508では、高エネルギーイオンは基板に向けられ、高エネルギーイオンは低放出注入マスクの開放領域で基板に注入され、高エネルギーイオンは低放出注入マスクに捕捉される。したがって、注入プロセス中、低注入マスクと化学的に類似した既知の注入マスクが使用されるシナリオと比較して、中性子収量は抑制される場合があり、既知の注入マスクは、1.1原子%の範囲など、13Cが豊富に存在し得る同位体的に不純な炭素から形成される。
【0037】
[0041]上記に鑑みて、本明細書に開示される実施形態によって、少なくとも以下の利点が達成される。第1の利点としては、同位体精製された12C含有低放出注入マスクを基板上に提供することにより、中性子放出は、およそ1MeVと10MeVなどの間などのMeV範囲のエネルギーでのイオン注入中に低減され得る。第2の利点としては、高エネルギー注入後の基板の取り扱いは、注入後の「冷却」期間を回避することができるため、改善され得る。ここで、高エネルギー注入後に生成される13C同位体の約1%の割合で形成された炭素含有マスクへの放出など、注入後の中性子放出が回避され得る。
【0038】
[0042]本開示の特定の実施形態が本明細書に記載されてきたが、当該技術分野が許容する限り範囲が広く本明細書が同様に解されるため、本開示はこれらに限定されない。したがって、上記の説明は、限定として解釈されるべきではない。当業者は、本明細書に添付された特許請求の範囲及び思想の範囲内での他の変更を想定するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5