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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】マンホール蓋用栓体
(51)【国際特許分類】
   E03F 5/10 20060101AFI20240826BHJP
【FI】
E03F5/10 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021084448
(22)【出願日】2021-05-19
(65)【公開番号】P2022117913
(43)【公開日】2022-08-12
【審査請求日】2023-11-14
(31)【優先権主張番号】P 2021014531
(32)【優先日】2021-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000227593
【氏名又は名称】日之出水道機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100164471
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100176728
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】西本 和弘
(72)【発明者】
【氏名】玉松 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】岡村 陽介
(72)【発明者】
【氏名】堀ノ内 卓
(72)【発明者】
【氏名】吉田 武司
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 尚也
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-050142(JP,U)
【文献】実開平08-000121(JP,U)
【文献】特開2013-177791(JP,A)
【文献】特開平08-260495(JP,A)
【文献】特開2004-011244(JP,A)
【文献】実開平03-069046(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第02128344(EP,A1)
【文献】実開昭63-041652(JP,U)
【文献】実開昭63-045858(JP,U)
【文献】特開2002-180490(JP,A)
【文献】実開昭58-160949(JP,U)
【文献】実開昭58-038883(JP,U)
【文献】登録実用新案第3058923(JP,U)
【文献】米国特許第04305679(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 1/00-11/00
E02D 29/045-37/00
B65D 90/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホール蓋に設けられた袋状の凹所に装着されるマンホール蓋用栓体であって、
下面から上方に向けて凹む空洞部を備え
前記空洞部の体積は、前記袋状の凹所と前記マンホール蓋用栓体との隙間に侵入した水の凍結によって増加する体積以上であり、
前記袋状の凹所は、上方に向けて開口する開口部を有し、前記開口部と対向する側の底壁には他の開口が設けられていない、マンホール蓋用栓体。
【請求項2】
前記マンホール蓋の中心軸線に直交する直線に沿う方向を径方向として、略上下方向に延びる本体部と、前記本体部の下部から前記径方向に略水平に延びる突出部とを有し、
前記空洞部は、前記本体部及び前記突出部の少なくとも一方に設けられている、請求項に記載のマンホール蓋用栓体。
【請求項3】
前記空洞部は、該空洞部の上端部から下方に延びる隔壁により複数の空洞領域に分割されている、請求項1又は2に記載のマンホール蓋用栓体。
【請求項4】
前記複数の空洞領域は、前記本体部及び前記突出部にそれぞれ形成されている、請求項に従属する場合の請求項に記載のマンホール蓋用栓体。
【請求項5】
前記本体部及び前記突出部の少なくとも一方の側面には、更に側方に開口する側部空洞部が設けられている、請求項又はに記載のマンホール蓋用栓体。
【請求項6】
前記本体部の側面には、略水平方向に延びる横溝が設けられている、請求項及びのいずれか一項に記載のマンホール蓋用栓体。
【請求項7】
前記本体部の前記径方向端部には、上面から下面よりも上方の高さ位置まで下方に向かって延びる切り欠き部が設けられている、請求項及びのいずれか一項に記載のマンホール蓋用栓体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、マンホール蓋に設けられた凹所に装着するマンホール蓋用栓体に関する。
【背景技術】
【0002】
マンホール蓋は、先端がT字状又はフック状に形成されたマンホールキーを使って容易に開閉できるように、水平方向凹所(図8参照)を備えた袋状の凹所を備えたものが多く用いられている。
【0003】
しかし、マンホール蓋に袋状の凹所を設けると、土砂等が一度この凹所内に流入すると排出されずに固まってしまい、マンホールキーが凹所に入らずマンホール蓋の開閉に支障をきたすことがあった。そこで、従来は、袋状の凹所に例えばゴム製の栓体を装着することで土砂等が袋状の凹所内に侵入することを抑制していた(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】″豊山町型下水道用マンホール鉄蓋仕様書″、[online]、平成22年、[令和3年1月7日検索]、インターネット〈URL:https://www.town.toyoyama.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/001/400/siyousyo.pdf〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、マンホール蓋の凹所に栓体を装着すると、雨が降った場合には、雨が栓体と凹所との隙間に侵入し溜まってしまうことがある。この観点からは、栓体と凹所との隙間は小さいことが好ましいが、栓体を凹所に装着するためには栓体よりも凹所の寸法を多少大きくする必要があるため、僅かな隙間は許容せざるを得なかった。
【0006】
夜間に気温が氷点下まで下がる寒冷地においては、栓体と凹所との隙間に侵入した雨水が凍結し、凍結した氷が膨張して栓体を押し上げる。この氷の膨張によって栓体が上方に浮き上がり、凹所から外れることがあった。栓体が外れた凹所には土砂等が溜まりマンホールキーを挿入することができず、マンホール蓋の開閉に支障が生じることがあったため、この点において改善の余地があった。
【0007】
従って、かかる点に鑑みてなされた本開示の目的は、マンホール蓋との隙間に侵入する雨水等の凍結による浮き上がりを抑制した、マンホール蓋用栓体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本開示に係るマンホール蓋用栓体は、
マンホール蓋に設けられた袋状の凹所に装着されるマンホール蓋用栓体であって、
下面から上方に向けて凹む空洞部を備え
前記空洞部の体積は、前記袋状の凹所と前記マンホール蓋用栓体との隙間に侵入した水の凍結によって増加する体積以上であり、
前記袋状の凹所は、上方に向けて開口する開口部を有し、前記開口部と対向する側の底壁には他の開口が設けられていないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、マンホール蓋との隙間に侵入する雨水等の凍結による浮き上がりを抑制した、マンホール蓋用栓体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態に係るマンホール蓋用栓体の斜視図である。
図2】本開示の一実施形態に係るマンホール蓋用栓体の正面図である。
図3】本開示の一実施形態に係るマンホール蓋用栓体の底面図である。
図4】本開示の一実施形態に係るマンホール蓋用栓体の右側面図である。
図5】本開示の一実施形態に係るマンホール蓋用栓体の左側面図である。
図6図4におけるA-A断面による断面図である。
図7】本開示の一実施形態に係るマンホール蓋用栓体を装着するマンホール蓋の平面図である。
図8】本開示の一実施形態に係るマンホール蓋用栓体をマンホール蓋に装着している状態を示す断面図(略図)である。
図9】マンホール蓋用栓体における空洞部の有無による浮き上がり量を比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一実施形態に係るマンホール蓋用栓体100について、図面を参照して説明する。
【0012】
なお、本実施形態において、マンホール蓋用栓体100の上方向は、図2における上方向であり、下方向とは、図2における下方向である。また、径方向とは、本実施形態に係るマンホール蓋用栓体100を装着する図7に示すマンホール蓋200の中心軸線Oに直交する直線に沿う方向であり、径方向外側は当該直線に沿ってマンホール蓋200の中心軸線Oから離れる方向、径方向内側は当該直線に沿ってマンホール蓋200の中心軸線Oに向かう方向である。そして、図2における左方向が径方向外側方向であり、図2における右方向が径方向内側方向である。また、図2における紙面に垂直方向(図4における左右方向)がマンホール蓋用栓体100及びマンホール蓋200の周方向となる。なお、符号Cは、マンホール蓋用栓体100の中心軸線を示している。
【0013】
本実施形態に係るマンホール蓋用栓体100は、略上下方向に延びる本体部10と、本体部10の下部から略水平方向(径方向内側方向)に延びる突出部20とを備えている。
【0014】
本体部10の底部には、本体部下面11(下面)から上方に向けて凹む本体空洞部11a(空洞部)(図3,5,6参照)が設けられている。また、突出部20の底部には、突出部下面21(下面)から上方に向けて凹む突出部空洞部21a(空洞部)(図3,6参照)が設けられている。
【0015】
本実施形態では、本体部下面11は、図2に示すように、径方向外側方向(図2の左方向)に向かって上方に傾斜する傾斜面として形成されている。この構成によって、図8に示すように、マンホール蓋200の袋状の凹所201にマンホール蓋用栓体100を装着する際に、マンホール蓋用栓体100がマンホール蓋200から径方向外側にはみ出すことがなくスムーズに装着することができる。
【0016】
また、本実施形態では、図1及び図2に示すように、突出部側面23(突出部20における周方向の側面)にも、突出部空洞部23a(側部空洞部)が形成されている。
【0017】
本体空洞部11a及び突出部空洞部21a,23aは、後述するように、マンホール蓋用栓体100とマンホール蓋200の袋状の凹所201との隙間に侵入した雨水等が寒冷地において凍結し膨張した場合に、膨張した雨水等がこの空洞部に入り込むことによって、マンホール蓋用栓体100の浮き上がりを抑制する機能を果たしている。
【0018】
本実施形態において、マンホール蓋用栓体100の下面に設けられた空洞部(本体空洞部11a及び突出部空洞部21a)は、本体部隔壁11c及び突出部隔壁21c(図3参照)により2つの空洞領域に分割されている。このように、空洞部を隔壁(本体部隔壁11c及び突出部隔壁21c)によって複数の空洞領域に分割することによって、膨張した雨水等を空洞部に侵入させてマンホール蓋用栓体100の浮き上がりを抑制しつつ、マンホール蓋用栓体100の剛性を確保することができる。
【0019】
本実施形態では、空洞部(本体空洞部11a及び突出部空洞部21a)は、マンホール蓋用栓体100の下面から上方に向けて凹んでいるため、空洞部内は空気で満たされており、凍結していない状態の雨水等が空洞部に侵入することはない。また、空洞部の体積は、袋状の凹所201とマンホール蓋用栓体100との隙間に侵入した水の凍結によって増加する体積と同じ又はそれ以上となるように構成されている。このような構成によって、袋状の凹所201とマンホール蓋用栓体100との隙間に侵入した雨水等の凍結によって膨張した氷は、全て空洞部に入り込むことができる。従って、袋状の凹所201とマンホール蓋用栓体100との隙間に侵入した雨水等の凍結によってマンホール蓋用栓体100が上方に持ち上げられることがない。
【0020】
なお、突出部空洞部21aと突出部空洞部23aの間に設けられた突出部隔壁21c,23c(図2及び図3参照)についても、マンホール蓋用栓体100の剛性を確保することに寄与していると考えられる。
【0021】
本体部10の上部には、周方向に拡幅された頂部15が設けられている。この頂部15の平面視における形状を、マンホール蓋200の凹所201の開口部203a(図7及び図8参照)の形状に対応させている。この構成によって、マンホール蓋用栓体100をマンホール蓋200の袋状の凹所201に装着したときに、袋状の凹所201の開口部203aが僅かな隙間を残してマンホール蓋用栓体100の頂部15により閉塞される。
【0022】
頂部15を含む本体部10の周方向の側面(本体部側面13)には、略水平方向に延びる襞状の横溝13a,15aが設けられている。マンホール蓋用栓体100とマンホール蓋200の袋状の凹所201との間に入り込んだ雨水等がこの横溝13a,15a内で凍結することによって、マンホール蓋用栓体100と氷とが一体化して、マンホール蓋200の袋状の凹所201との摩擦力を向上させ、マンホール蓋用栓体100の浮き上がりを抑制することができる。
【0023】
本実施形態では、図1及び図2に示すように、頂部15における径方向内側の側面にも襞状の横溝15aを設けている。この構成によって、頂部15と袋状の凹所201の開口部203aとの間の摩擦力を更に向上させてマンホール蓋用栓体100の浮き上がりを効果的に抑制することができる。
【0024】
なお、マンホール蓋用栓体100の周方向側面には、襞状の横溝13a,15aに代えて、又は襞状の横溝13a,15aとともに、周方向に突出する突起部を設けてもよい。この突起部がマンホール蓋200の袋状の凹所201の側面に当接して袋状の凹所201との摩擦力を向上させるため、マンホール蓋用栓体100の浮き上がりを抑制することができる。
【0025】
頂部15における径方向両端部には、図1及び図6等に示すように、頂部上面15bから下面(本体部下面11及び突出部下面21)よりも上方の高さ位置まで下方に向かって延びる切り欠き部17a,17bが設けられている。作業者が、マンホール蓋200からマンホール蓋用栓体100を取り外す際に、この切り欠き部17a,17bにバール等を挿入することによって容易に上方に引き抜くことができる。
【0026】
本実施形態では、切り欠き部17a,17bは、マンホール蓋用栓体100の下面に達しておらず(図6参照)、マンホール内と連通していない。従って、この切り欠き部17a,17bを通じて土砂等がマンホール内に入り込むことを抑制することができる。
【0027】
なお、本体部10及び突出部20の材料には、例えば天然ゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、プロピレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム等のゴム材料を用いることができる。また、本体部10及び突出部20の材料は、ゴム部材に限定されず、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等の熱可塑性エラストマー又は合成樹脂等であってもよく、これらを積層するなど組み合わせて使用してもよい。本体部10及び突出部20の材料は、同質材料でもよいし、異なる材料を用いてもよく、同質材料とした場合は一体形成としてもよい。
【0028】
以上の構成を有するマンホール蓋用栓体100は、図7に示すマンホール蓋200において、マンホール蓋200の中心軸線Oに関して対向する2か所に配置された袋状の凹所201に装着される。
【0029】
図8は、本実施形態に係るマンホール蓋用栓体100をマンホール蓋200の袋状の凹所201に装着している状態を示している。なお、図8では、横溝13a,15aなどの細部は省略して描かれている。マンホール蓋200に設けられた袋状の凹所201は、図8に示すように、マンホール蓋200の上面に開口し、略上下方向に延びる上下方向凹所203と、上下方向凹所203の下部から略水平方向(径方向内側方向)に延びる水平方向凹所205とを有している。本実施形態では、上下方向凹所203は、マンホール蓋200の上面に設けられた開口部203aから下方に延びており、下端部にはマンホール蓋用栓体100の傾斜する本体部下面11に対応する傾斜面203bが設けられている。また、上下方向凹所203の下部から径方向内側方向(図8の右方向)に向かって水平方向凹所205が形成されている。これによって、マンホール蓋200の袋状の凹所201は、図8の断面図に示すフック状の形状を有しており、この径方向内側方向に延びる水平方向凹所205に、マンホールキー先端のT字型又はフック型の係合部が入り込むことができる。そして、作業者がマンホールキーを軸線周りに回転させることによって、T字型又はフック型の係合部が図8の紙面に垂直方向に方向づけられ、当該方向における袋状の凹所201の上面に係合させることができる。作業者はその状態からマンホールキーを上方に引き上げてマンホール蓋200をマンホールから取り外すことができる。
【0030】
作業者は、マンホール蓋用栓体100の突出部20の径方向内側端が下方に方向づけられるように傾けてから突出部20を開口部203aに挿入し、次いでマンホール蓋用栓体100を、開口部203aの径方向内側端近傍を支点として図8の反時計回りに回転させる。これによって、マンホール蓋用栓体100の突出部20は、水平方向凹所205内を径方向内側方向に入り込み、図8に示すように、マンホール蓋用栓体100はフック状かつ袋状の凹所201内に装着される。マンホール蓋用栓体100の頂部上面15bがマンホール蓋200の上面と略同一面になるように装着されたとき、マンホール蓋用栓体100の本体部下面11が傾斜面203bに近接し、本体部10は、上下方向凹所203内にほぼ隙間なく配置される。また、突出部下面21が水平方向凹所205の下面に近接し、水平方向凹所205内における突出部20の上方には、僅かにスペースが空いた状態となる。このように、マンホール蓋用栓体100の形状を袋状の凹所201の形状に近似させることによって、マンホール蓋用栓体100を袋状の凹所201内に装着したときの隙間が極力小さくなるように構成している。
【0031】
空洞部(本体空洞部11a及び突出部空洞部21a)内は、雨水等が侵入していない初期状態において空気で満たされている。そして、マンホール蓋用栓体100が凹所201内に完全に装着された状態で、マンホール蓋用栓体100と凹所201との隙間内に雨水等が侵入しても、空洞部はマンホール蓋用栓体100の下面から上方に向けて凹んでいるため、雨水等が空洞部に侵入することはない。そして、マンホール蓋用栓体100と凹所201との隙間の雨水等が凍結すると、雨水等の体積の増加に伴って上記隙間から押し出された氷は空洞部内に入り込むが、本実施形態では、空洞部の体積(本体空洞部11aと突出部空洞部21aを合わせた体積)は、袋状の凹所201とマンホール蓋用栓体100との隙間に侵入した水の凍結によって増加する体積以上となるように構成されている。従って、雨水等の膨張によって増加した体積分の氷は、全て空洞部内に入り込むことができる。よって、雨水等が凍結しても、膨張した氷が隙間を押し広げることがないので、マンホール蓋用栓体100の浮き上がりを効果的に抑制することができる。
【0032】
また、本実施形態では、図1及び図2に示すように、突出部20の周方向側面(突出部側面23)にも、突出部空洞部23a(側部空洞部)が設けられている。この構成によって、マンホール蓋用栓体100と凹所201との隙間内の雨水等が凍結すると、この突出部空洞部23a内にも入り込むことができるので、マンホール蓋用栓体100の浮き上がりをより効果的に抑制することができる。
【0033】
また、本実施形態では、本体部10の周方向の本体部側面13(側面)には、略水平方向に延びる襞状の横溝13a,15aを設けている。マンホール蓋用栓体100とマンホール蓋200の袋状の凹所201との間に入り込んだ雨水等がこの横溝13a,15a内で凍結することによって、マンホール蓋用栓体100と氷が一体化して、マンホール蓋200の袋状の凹所201との摩擦力を向上させ、マンホール蓋用栓体100の浮き上がりを効果的に抑制することができる。
【0034】
以上述べたように、本実施形態は、マンホール蓋200に設けられた袋状の凹所201に装着されるマンホール蓋用栓体100であって、下面(本体部下面11及び突出部下面21)から上方に向けて凹む空洞部を備えるように構成した。このような構成の採用によって、雨水等が凍結していないときは空洞部内は空気で満たされているため、マンホール蓋用栓体100と凹所201との隙間内の雨水等が凍結すると、雨水等の体積の増加に伴って上記隙間から押し出された氷は空洞部内に入り込むことができる。よって、雨水等が凍結しても、膨張した氷が隙間を押し広げることを抑制することができるので、マンホール蓋用栓体100の浮き上がりを抑制することができる。
【0035】
また、本実施形態では、空洞部の体積は、袋状の凹所201とマンホール蓋用栓体100との隙間に侵入した水の凍結によって増加する体積以上であるように構成した。このような構成の採用によって、マンホール蓋用栓体100と凹所201との隙間内の雨水等が凍結すると、雨水等の体積の増加に伴って上記隙間から押し出された氷は全て空洞部内に入り込むことができる。よって、雨水等が凍結しても、膨張した氷が隙間を押し広げることを効果的に抑制することができるので、マンホール蓋用栓体100の浮き上がりを効果的に抑制することができる。
【0036】
また、本実施形態では、マンホール蓋用栓体100は、略上下方向に延びる本体部10と、本体部10の下部から略水平方向に延びる突出部20とを有し、空洞部は、本体部10及び突出部20に設けられるように構成した。このような構成の採用によって、マンホール蓋用栓体100がフック状かつ袋状の凹所201の形状に対応した本体部10及び突出部20を備えているので、マンホール蓋用栓体100と袋状の凹所201との隙間に入り込む雨水等の体積を抑制して、雨水等が凍結したときのマンホール蓋用栓体100の浮き上がりを効果的に抑制することができる。
【0037】
また、本実施形態では、空洞部は、隔壁(本体部隔壁11c及び突出部隔壁21c)により複数の空洞領域(本体空洞部11a及び突出部空洞部21a)に分割されるように構成した。このような構成の採用によって、膨張した雨水等を空洞部に侵入させてマンホール蓋用栓体100の浮き上がりを抑制しつつ、マンホール蓋用栓体100の剛性を確保することができる。
【0038】
また、本実施形態では、複数の空洞領域は、本体部10及び突出部20にそれぞれ形成されるように構成した。このような構成の採用によって、空洞部をマンホール蓋用栓体100内に偏りなく配置することができるので、隙間に入った雨水等が凍結しても、膨張した氷が隙間を押し広げることを効果的に抑制することができ、マンホール蓋用栓体100の浮き上がりを効果的に抑制することができる。
【0039】
また、本実施形態では、突出部20の側面には、更に側部空洞部(突出部空洞部23a)が設けられるように構成した。このような構成の採用によって、マンホール蓋用栓体100と凹所201との隙間内の雨水等が凍結すると、氷が空洞部(本体空洞部11a及び突出部空洞部21a)に加えてこの側部空洞部内にも入り込むことができるので、マンホール蓋用栓体100の浮き上がりをより効果的に抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態では、本体部10の側面(本体部側面13)には、略水平方向に延びる横溝13a,15aが設けられるように構成した。このような構成の採用によって、マンホール蓋用栓体100とマンホール蓋200の袋状の凹所201との隙間に入り込んだ雨水等がこの横溝13a,15a内で凍結することによって、マンホール蓋用栓体100と氷が一体化して、マンホール蓋200の袋状の凹所201との摩擦力を向上させることができる。従って、マンホール蓋用栓体100の浮き上がりを効果的に抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態では、本体部10の径方向端部には、上面(頂部上面15b)から下面よりも上方の高さ位置まで下方に向かって延びる切り欠き部17a,17bが設けられるように構成した。このような構成の採用によって、マンホール蓋200からマンホール蓋用栓体100を取り外す際に、この切り欠き部17a,17bにバール等を挿入することによって容易に上方に引き抜くことができる。また、切り欠き部17a,17bは、マンホール蓋用栓体100の下面に達しておらず(図6参照)、マンホール内と連通していないため、この切り欠き部17a,17bを通じて土砂等がマンホール内に入り込むことを抑制することができる。
【0042】
本開示を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部に含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0043】
例えば、本実施形態では、空洞部は、本体部10及び突出部20の下面(本体部下面11及び突出部下面21)にそれぞれ設けるように構成したが、この態様には限定されない。空洞部は、本体部10及び突出部20の少なくともいずれか一方に設けていればよい。
【0044】
また、本実施形態では、空洞部は、隔壁によって2つの空洞領域に分割されるように構成したが、この態様には限定されない。空洞部は、隔壁によって3つ以上の空洞領域に分割されてもよい。また、空洞部は、隔壁によって分割されない構成としてもよい。
【0045】
また、本実施形態では、突出部20の側面(突出部側面23)に側部空洞部(突出部空洞部23a)を設けるように構成したが、この態様には限定されない。側部空洞部は、突出部20の側面に加えて本体部10の側面に設けてもよいし、本体部10の側面にのみ設けてもよい。また、側部空洞部を設けない構成としてもよい。
【0046】
また、本実施形態では、本体部10における周方向側面のほぼ全領域に横溝13a,15aを設けるように構成したが、この態様には限定されない。横溝13a,15aは、周方向側面の一部にのみ設けてもよいし、横溝13a,15aを設けない構成としてもよい。
【0047】
また、本実施形態では、本体部10の頂部15の径方向端部に切り欠き部17a,17bを設けるように構成したが、この態様には限定されない。切り欠き部17a,17bは、頂部15の径方向端部以外の領域に設けてもよいし、切り欠き部17a,17bを設けない構成としてもよい。また、切り欠き部17a,17bがマンホール蓋用栓体100の下面に達するように構成してもよい。
【実施例
【0048】
図1から図6に示す本実施形態に係るマンホール蓋用栓体100(実施例)と、マンホール蓋用栓体において空洞部(本体空洞部11a及び突出部空洞部21a,23a)を設けない栓体(比較例)について、栓体と袋状の凹所201の隙間に入った雨水が凍結したときの栓体の浮き上がり量を測定した。
【0049】
計測は、マンホール蓋200の上面に対する栓体の頂部上面の高さを岩手県盛岡市内において2020年2月24日から1週間おきに4週間にわたって測定した。
【0050】
図9は、空洞部有り(実施例)と空洞部無し(比較例)のそれぞれについて、横軸に栓体をマンホール蓋200に設置(装着)してからの経過時間、縦軸にマンホール蓋200の上面に対する栓体の頂部上面の高さ[mm]をプロットしている。
【0051】
比較例においては、栓体を設置してから2週間後に約2mmの浮き上がりが観測された。そして、栓体を設置してから3週間後に浮き上がり量が約11mmへと増加している。栓体を設置してから2週間後に、栓体と袋状の凹所201の隙間の雨水等の一部が凍結して栓体を約2mm浮き上がらせ、3週間後には、隙間の雨水等の大部分が凍結して栓体を約11mm浮き上がらせたと考えられる。なお、栓体の横溝13a,15aと袋状の凹所201の間には摩擦力が作用するため、栓体の浮き上がりは不可逆変化となる(隙間の氷が溶けても栓体は下方に移動しない)。従って、図9における栓体の浮き上がり量は時間の経過とともに増加し、隙間の雨水等の大部分が凍結した3週間後以降は浮き上がり量に変化が見られないと考えられる。
【0052】
一方、実施例においては、栓体を設置してから4週間後まで、栓体の浮き上がりは観測されなかった。栓体と袋状の凹所201の隙間の雨水等が凍結して膨張しても、膨張した氷は空洞部(本体空洞部11a及び突出部空洞部21a,23a)に入り込むため、栓体を押し上げることがなく、栓体の浮き上がりを抑制できていると考えられる。
【符号の説明】
【0053】
10 本体部
11 本体部下面(下面)
11a 本体空洞部(空洞部)
11c 本体部隔壁(隔壁)
13 本体部側面(側面)
13a 横溝
15 頂部
15a 横溝
15b 頂部上面
17a,17b 切り欠き部
20 突出部
21 突出部下面(下面)
21a 突出部空洞部(空洞部)
21c 突出部隔壁(隔壁)
23 突出部側面(側面)
23a 突出部空洞部(側部空洞部)
23c 突出部隔壁(隔壁)
100 マンホール蓋用栓体
200 マンホール蓋
201 袋状の凹所
203 上下方向凹所
203a 開口部
203b 傾斜面
205 水平方向凹所
C 栓体の中心軸線
O マンホール蓋の中心軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9