(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】ポリアリーレンスルフィドの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 75/0259 20160101AFI20240826BHJP
C08G 75/0209 20160101ALI20240826BHJP
C08G 75/0281 20160101ALI20240826BHJP
【FI】
C08G75/0259
C08G75/0209
C08G75/0281
(21)【出願番号】P 2020561781
(86)(22)【出願日】2019-07-04
(86)【国際出願番号】 KR2019008212
(87)【国際公開番号】W WO2020009495
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2020-11-02
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-31
(31)【優先権主張番号】10-2018-0077926
(32)【優先日】2018-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0080238
(32)【優先日】2019-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジョンビン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ジン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ウンジュ・パク
(72)【発明者】
【氏名】サンファン・ジョ
【合議体】
【審判長】細井 龍史
【審判官】小出 直也
【審判官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/117426(WO,A2)
【文献】特開2003-246858(JP,A)
【文献】特開2003-268105(JP,A)
【文献】特開平6-157757(JP,A)
【文献】特開平8-183858(JP,A)
【文献】特開2008-260858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 75/00-75/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属の水硫化物およびアルカリ金属の水酸化物を、水およびアミド系化合物の混合溶媒中にてアルカリ金属の有機酸塩の存在下で脱水反応(dehydration)を行って、アルカリ金属の硫化物、および水とアミド系化合物の混合溶媒を含む硫黄供給源を製造する第1段階;および
前記硫黄供給源を含む反応器にジハロゲン化芳香族化合物およびアミド系化合物を添加し、重合反応させてポリアリーレンスルフィドを製造する第2段階;を含み、
前記第1段階において、脱水反応は、205℃~220℃の温度範囲で行い、
前記第2段階を進行させる前に、前記硫黄供給源を含む反応器の温度を150℃以上180℃未満に
設定する段階を含み、
前記脱水反応を行って外部に除去される脱水液において、水とアミド系化合物の混合溶媒を含む全体混合物の総体積を基準として、アミド系化合物は25%(v/v)~35%(v/v)で含まれ、
前記第2段階において、アミド系化合物は、前記アルカリ金属の水硫化物1当量を基準として1.65当量~2.0当量で添加し、前記第2段階の重合反応系内に存在するアミド系化合物に対する水のモル比は0.5~0.85である、ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
【請求項2】
前記第1段階におけるアミド系化合物は、前記アルカリ金属の水硫化物1当量を基準として1.0~2.0の当量で使用する、請求項1に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
【請求項3】
前記第1段階における水は、アミド系化合物1当量に対して1~8の当量比で使用される、請求項1又は2に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
【請求項4】
前記アルカリ金属の有機酸塩は、アルカリ金属の水硫化物1当量に対して0.01~1.0の当量比で使用される、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
【請求項5】
前記アルカリ金属の有機酸塩は、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、またはこれらの混合物を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
【請求項6】
前記ジハロゲン化芳香族化合物は、o-ジハロベンゼン、m-ジハロベンゼン、p-ジハロベンゼン、ジハロトルエン、ジハロナフタレン、ジハロビフェニル、ジハロ安息香酸、ジハロジフェニルエーテル、ジハロジフェニルスルホン、ジハロジフェニルスルホキシド、およびジハロジフェニルケトンからなる群より選択されるいずれか1つまたは2以上を含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
【請求項7】
前記ジハロゲン化芳香族化合物は、前記アルカリ金属の水硫化物1当量を基準として0.8~1.2の当量で使用される、請求項1~
6のいずれか一項に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
【請求項8】
前記第2段階において、重合反応は、200℃~300℃の温度範囲で行う、請求項1~
7のいずれか一項に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
【請求項9】
前記ポリアリーレンスルフィドは、80mol/mol%以上の収率で生成され、ASTM D 1238-10の方法により、5kg荷重の条件下で測定したメルトフローレート(MFR)が200g/10分~1000g/10分である、請求項1~
8のいずれか一項に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
【請求項10】
前記第2段階における重合反応後、反応混合物に硫黄1当量に対して、水を3~5の当量比で添加し冷却する段階をさらに含む、請求項1~
9のいずれか一項に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
【請求項11】
前記冷却する段階の後に、水およびアミド系化合物を用いて反応混合物を洗浄した後、乾燥する段階をさらに含む、請求項1
0に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2018年7月4日付の韓国特許出願第10-2018-0077926号および2019年7月3日付の韓国特許出願第10-2019-0080238号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、成形品への加工の際に、優れた強度、耐熱性、難燃性、および加工性を有するポリアリーレンスルフィドをより向上した収率で製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリフェニレンスルフィド(Polyphenylene sulfide;PPS)に代表されるポリアリーレンスルフィド(Polyarylene sulfide、PAS)は、優れた強度、耐熱性、難燃性および加工性によって、自動者、電気・電子製品、機械類などにおいて金属、特にアルミニウムや亜鉛のようなダイカスト(die casting)金属を代替する素材として幅広く使用されている。特に、PPS樹脂の場合、流動性が良いため、ガラス繊維などのフィラーや補強剤と混練してコンパウンドとして使用するのに有利である。
【0004】
一般に、PASは、N-メチルピロリドン(NMP)のようなアミド系化合物の存在下の重合条件で、硫黄供給源とジハロゲン化芳香族化合物を重合反応させて製造されており、選択的にアルカリ金属塩のような分子量改質剤がさらに使用されたりもする。
【0005】
このようなPASの用途拡大、特に溶融加工による成形品用途の普及に伴い、製品特性や成形性などに優れたPASとして、例えば、高重合度のPAS、具体的には、高溶融粘度のPASが要求されるようになった。また、PASの需要拡大に伴い、PASの製造時における収率向上も要求されている。一例として、特許第5623277号公報には、相分離重合工程後、重合反応系内の液相にジハロ芳香族化合物、トリハロ芳香族化合物などの芳香族化合物を加える工程、および前記液相を冷却する工程を備えることによって、溶融粘度を高水準に保持しつつ、高収率で粒状PASを得るPASの製造方法が記載されている。このように、PASの製造方法として、高重合度のPASを得る収率をより一層向上させる方法が要求されていた。
【0006】
したがって、アミド系化合物の存在下、硫黄供給源とジハロゲン化芳香族化合物を重合反応させるポリアリーレンスルフィドの製造方法において、高重合度のポリアリーレンスルフィドを高い収率で製造する方法に関する研究が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、脱水反応後の重合工程においてアミド系化合物の含有量を所定の範囲に最適化して追加投入して反応させることによって、優れた強度、耐熱性、難燃性、および加工性などを示すポリアリーレンスルフィドを優れた収率で製造する方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の一実施形態によれば、アルカリ金属の水硫化物およびアルカリ金属の水酸化物を、水およびアミド系化合物の混合溶媒中にてアルカリ金属の有機酸塩の存在下で脱水反応(dehydration)を行って、アルカリ金属の硫化物、および水とアミド系化合物の混合溶媒を含む硫黄供給源を製造する第1段階;および前記硫黄供給源を含む反応器にジハロゲン化芳香族化合物およびアミド系化合物を添加し、重合反応させてポリアリーレンスルフィドを製造する第2段階を含み、前記第2段階において、アミド系化合物は、前記アルカリ金属の水硫化物1当量を基準として1.0当量~2.0当量で添加し、前記第2段階の重合反応系内に存在するアミド系化合物に対する水のモル比は0.5~0.85である、ポリアリーレンスルフィドの製造方法が提供される。
【0010】
本発明において、前記ポリアリーレンスルフィドは、約80%以上の収率で生成され、ASTM D 1238-10の方法により、5kg荷重の条件下で測定したメルトフローレート(MFR)が200g/10分~1000g/10分であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
上述のように、本発明によれば、第2段階の重合工程においてアミド系化合物の含有量を最適化して追加的に投入することによって、優れた強度、耐熱性、難燃性、および加工性などを有するポリアリーレンスルフィドを高い収率で製造できるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態により実施例1のポリアリーレンスルフィドを製造する工程図を簡略に示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において、第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明するのに使用され、前記用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ使用される。
【0014】
また、本明細書で使用される用語は、単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明らかに異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、1つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を予め排除しないことが理解されなければならない。
【0015】
本発明は、多様な変更が加えられて様々な形態を有し得ることから、特定の実施例を例示して下記に詳細に説明する。しかし、これは、本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるあらゆる変更、均等物乃至代替物を含むことが理解されなければならない。
【0016】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0017】
発明の一実施形態によれば、硫黄供給源とジハロゲン化芳香族化合物を重合反応させるポリアリーレンスルフィドの製造方法において、第2段階の重合工程においてアミド系化合物の含有量およびモル比を最適化して追加的に投入することによって、高重合度のポリアリーレンスルフィドを高い収率で製造する方法が提供される。
【0018】
前記ポリアリーレンスルフィドの製造は、アルカリ金属の水硫化物およびアルカリ金属の水酸化物を、水およびアミド系化合物の混合溶媒中にてアルカリ金属の有機酸塩の存在下で脱水反応(dehydration)を行って、アルカリ金属の硫化物、および水とアミド系化合物の混合溶媒を含む硫黄供給源を製造する第1段階;および前記硫黄供給源を含む反応器にジハロゲン化芳香族化合物およびアミド系化合物を添加し、重合反応させてポリアリーレンスルフィドを製造する第2段階;を含む。
【0019】
ここで、本発明は、ポリアリーレンスルフィドを製造するために、アルカリ金属の水硫化物などを用いた脱水反応(dehydration)により製造された硫黄供給源とジハロゲン化芳香族化合物を反応させる重合反応において、前記アミド系化合物は、前記アルカリ金属の水硫化物1当量を基準として1.0当量~2.0当量で添加し、このようにアミド系化合物を追加投入した後に、第2段階の重合反応系内に存在するアミド系化合物に対する水のモル比が0.5~0.85に最適化されるようにすることを特徴とする。
【0020】
特に、本発明は、このようにアミド系化合物を所定の含有量範囲で投入することによって、最終的に生成されるポリアリーレンスルフィドの収率を顕著に高めることができる。また、最終ポリマー生成物の熱的物性も既存の製造と比較して同等以上を示すポリアリーレンスルフィドを容易に製造することができる。なお、本発明のポリアリーレンスルフィドの製造方法は、収率も向上して、最終生成物の生産量を増加させることができる。
【0021】
さらに、従来は、ポリアリーレンスルフィド樹脂を製造する際、分子量調節および収率の向上にどのような因子が影響を与えるかが正確に示されていないが、本発明者らは、多様な工程因子のうち分子量調節と収率に大きく影響を及ぼす主要因子に対する多様な実験を行って、本発明を完成するに至った。特に、本発明は、重合工程に投入されるアミド系化合物の含有量に応じて様々な反応因子がどのように変化するかを綿密に確認することによって、高重合度の高い分子量のポリアリーレンスルフィドを優れた収率で製造可能で、経済性を高められるという優れた効果を得た。
【0022】
まず、本発明の一実施形態による前記ポリアリーレンスルフィドの製造方法において、段階ごとに説明する。
【0023】
上述した第1段階は、硫黄供給源を準備する段階である。
【0024】
前記硫黄供給源は、アルカリ金属の水硫化物、およびアルカリ金属の水酸化物を、アルカリ金属の有機酸塩の存在下、水およびアミド系化合物の混合溶媒中にて脱水反応(dehydration)を行って製造されたものである。したがって、前記硫黄供給源は、アルカリ金属の水硫化物とアルカリ金属の水酸化物の反応によって生成されたアルカリ金属の硫化物と共に、脱水反応後に残留する水、アミド系化合物の混合溶媒を含むことができる。
【0025】
この後、本発明では、連続して前記硫黄供給源と、ジハロゲン化芳香族化合物およびアミド系化合物を用いて、重合により収率の優れたポリアリーレンスルフィドを製造する。
【0026】
前記アルカリ金属の硫化物は、反応時に使用されるアルカリ金属の水硫化物の種類に応じて決定可能であり、具体例としては、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、または硫化セシウムなどが挙げられ、これらのいずれか1つまたは2以上の混合物が含まれる。
【0027】
前記アルカリ金属の水硫化物とアルカリ金属の水酸化物の反応による硫黄供給源の製造時、使用可能なアルカリ金属の水硫化物は、具体例としては、硫化水素リチウム、硫化水素ナトリウム、硫化水素カリウム、硫化水素ルビジウム、または硫化水素セシウムなどが挙げられる。これらのいずれか1つまたは2以上の混合物が使用可能であり、これらの無水物または水和物も使用可能である。
【0028】
また、前記アルカリ金属の水酸化物の具体例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、または水酸化セシウムなどが挙げられ、これらのいずれか1つまたは2以上の混合物が使用できる。前記アルカリ金属の水酸化物は、アルカリ金属の水硫化物1当量に対して約0.90~約2.0の当量比、より具体的には約1.0~約1.5の当量比、さらにより具体的には約1.0~約1.1の当量比で使用できる。
【0029】
一方、本発明において、当量は、モル当量(eq/mol)を意味する。
【0030】
また、前記アルカリ金属の水硫化物とアルカリ金属の水酸化物の反応による硫黄供給源の製造時、重合助剤として、重合反応を促進させて短時間内にポリアリーレンスルフィドの重合度を高められるようにアルカリ金属の有機酸塩を共に投入する。前記アルカリ金属の有機酸塩は、具体的には、酢酸リチウム、または酢酸ナトリウムなどであってもよいし、これらのいずれか1つまたは2以上の混合物が使用できる。具体的には、前記アルカリ金属の有機酸塩は、ポリアリーレンスルフィドの重合度を増加させる側面から、アルカリ金属の水硫化物1当量に対して約0.01以上、または約0.05以上、または約0.1以上、または約0.18以上、または約0.23以上の当量比で使用できる。ただし、前記アルカリ金属の有機酸塩が触媒の役割を果たす重合助剤であるとの側面から、過剰使用時に製造コスト上昇の要因になることを考慮する時、好ましくは、約1.0以下、または約0.8以下、または約0.6以下、または約0.5以下、または約0.45以下の当量比で使用できる。
【0031】
前記アルカリ金属の水硫化物とアルカリ金属の水酸化物の反応は、水とアミド系化合物の混合溶媒中にて行われるが、この時、前記アミド系化合物の具体例としては、N,N-ジメチルホルムアミドまたはN,N-ジメチルアセトアミドなどのアミド化合物;N-メチル-2-ピロリドン(NMP)またはN-シクロヘキシル-2-ピロリドンなどのピロリドン化合物;N-メチル-ε-カプロラクタムなどのカプロラクタム化合物;1,3-ジアルキル-2-イミダゾリジノンなどのイミダゾリジノン化合物;テトラメチル尿素などの尿素化合物;またはヘキサメチルリン酸トリアミドなどのリン酸アミド化合物などが挙げられ、これらのいずれか1つまたは2以上の混合物が使用できる。なかでも、反応効率およびポリアリーレンスルフィド製造のための重合時、重合溶媒としての共溶媒効果を考慮する時、前記アミド系化合物は、より具体的には、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)であってもよい。
【0032】
前記第1段階において、アミド系化合物は、前記アルカリ金属の水硫化物1当量を基準として約1.0当量~約2.0当量、あるいは約1.3当量~2.0当量、あるいは約1.35当量~1.65当量で使用することができる。前記第1段階において、アミド系化合物の含有量は、脱水過程により形成された硫黄化合物との化合物形成を効果的に行われるようにし、これによって、後に進行する重合過程が効果的に行われるようにする側面から、上述のような範囲で使用することができる。
【0033】
また、前記第1段階において、水は、アミド系化合物1当量に対して約1~約8の当量比で使用可能であり、より具体的には約1.5~約5、さらにより具体的には約2.5~約4.5の当量比で使用可能である。
【0034】
一方、前記第1段階において、アルカリ金属の水硫化物およびアルカリ金属の水酸化物などを含む反応物は、脱水反応(dehydration)によりアルカリ金属の硫化物を生成させることができる。この時、前記脱水反応は、約130~約220℃の温度範囲で、約100rpm~約500rpmの速度で撹拌して行われる。より具体的には、約175℃~約215℃の温度範囲で約100rpm~約300rpmの速度で撹拌して行われる。この時、前記脱水反応の時間は、約30分から6時間以内、または約1時間から約3時間以内で行われる。
【0035】
このような脱水工程の間に、反応物中の水などの溶媒が蒸留などにより除去され、水と共にアミド系化合物の一部が排出され、また、硫黄供給源内に含まれている一部の硫黄が脱水工程の間の熱によって水と反応して硫化水素気体として揮散しうる。また、この時、前記硫化水素と同一モルのアルカリ金属の水酸化物が生成されうる。
【0036】
特に、前記第1段階における脱水反応を行う間に発生する脱水液、つまり、脱水工程を行って外部に除去される脱水液において、水とアミド系化合物の混合溶媒を含む全体混合物の総体積を基準として、アミド系化合物は約25%~約35%(v/v)、または約28%~約32%(v/v)で含まれる。
【0037】
一方、このようなアルカリ金属の水硫化物、アルカリ金属の水酸化物およびアルカリ金属塩の反応結果として、アルカリ金属の硫化物が水とアミド系化合物の混合溶媒中に固体状に析出され、反応系中には未反応のアルカリ金属の水硫化物が一部残留しうる。これにより、本発明によるポリアリーレンスルフィドの製造時、硫黄供給源として、前記アルカリ金属の水硫化物とアルカリ金属の水酸化物を反応させて製造した硫黄供給源が使用される場合、硫黄供給源のモル比は、反応結果として析出されたアルカリ金属の硫化物と、未反応のアルカリ金属水硫化物との総モル比を意味する。
【0038】
次に、前記の反応結果として生成されたアルカリ金属の硫化物を含む反応生成物中の水などの溶媒を除去するために、脱水工程が追加的に行われる。前記脱水工程は、この分野でよく知られた方法により行われることから、その条件が大きく制限されず、具体的な工程条件は前述した通りである。
【0039】
また、前記脱水工程の間に、硫黄供給源内、つまり、硫黄含有反応物として投入したアルカリ金属の水硫化物などと系内に残存する硫黄供給源内に含まれている硫黄が水と反応して硫化水素とアルカリ金属水酸化物が生成され、生成された硫化水素は揮散するため、脱水工程の間に系外に揮散する硫化水素によって、脱水工程後、系内に残存する硫黄供給源中の硫黄の量は減少しうる。一例として、アルカリ金属水硫化物を主成分とする硫黄供給源を用いる場合、脱水工程後、系内に残存する硫黄の量は、反応物として投入した硫黄供給源、つまり、硫黄含有反応物であるアルカリ金属の水硫化物に含まれている硫黄のモル量から系外に揮散した硫化水素のモル量を引いた値と同一である。これにより、系外に揮散した硫化水素の量から脱水工程後の系内に残存する硫黄供給源中に含まれている有効硫黄の量を定量することが必要である。具体的には、前記脱水工程は、有効硫黄1モルに対して、水が約1~約5のモル比、より具体的には約1.5~約4、さらにより具体的には約1.75~約3.5のモル比になるまで行われる。前記脱水工程によって硫黄供給源内の水分量が過度に減少する場合には、重合工程に先立ち、水を添加して水分量を調節することができる。
【0040】
これにより、前記のようなアルカリ金属の水硫化物とアルカリ金属の水酸化物の反応および脱水によって製造された硫黄供給源は、アルカリ金属の硫化物と共に、水およびアミド系化合物の混合溶媒を含むことができ、特に、前記水は、硫黄供給源内に含まれている硫黄1モルに対して、具体的には約1.75~約3.5のモル比で含まれる。また、前記硫黄供給源は、硫黄と水の反応によって生成されたアルカリ金属の水酸化物をさらに含んでもよい。
【0041】
一方、本発明の一実施形態により、第2段階は、前記硫黄供給源をジハロゲン化芳香族化合物と重合反応させてポリアリーレンスルフィドを製造する段階である。
【0042】
本発明は、前記硫黄供給源とジハロゲン化芳香族化合物を反応させる第2段階の重合反応においてアミド系化合物の含有量を最適化して追加的に投入することによって、高重合度のポリアリーレンスルフィドを高い収率で製造することを特徴とする。
【0043】
前記2段階の重合工程において、アミド系化合物は、前記硫黄供給源を含む反応器にジハロゲン化芳香族化合物と共に投入されるもので、前記アルカリ金属の水硫化物1当量を基準として約1.0当量~約2.0当量で投入されなければならない。前記含有量範囲内で投入される場合、製造されるポリアリーレンスルフィド内に存在する塩素含有量の増加に対する憂慮なく、優れた物性的特徴を有するポリアリーレンスルフィドを製造することができる。硫黄供給源とジハロゲン化芳香族化合物の添加量の制御による改善効果の優秀さを考慮する時、より具体的には、前記アミド系化合物は約1.2当量以上~2.0当量以下、あるいは約1.35当量超過~2.0当量、あるいは約1.4当量以上~約1.95当量以下、あるいは約1.65当量以上~約1.95当量以下で投入される。
【0044】
特に、前記第1段階で製造された硫黄供給源中に含まれているアミド系化合物が共溶媒として作用できるため、第2段階で添加されるアミド系化合物は、重合反応系内に存在するアミド系化合物に対する水(H2O)のモル比(水/アミド系化合物のモル比)が約0.5~約0.85となるようにする量で添加されなければならず、より具体的には、約0.5~約0.8のモル比、あるいは約0.55~約0.8のモル比、あるいは約0.58~約0.75のモル比となるようにする量で添加される。これは、第2段階の重合反応の進行時、系内に存在する最終アミド系化合物および水の含有量とモル比に相当するもので、第1段階の脱水反応により得られた硫黄供給源で残っているアミド系化合物と水の含有量に、第2段階で追加的に投入されるアミド系化合物の含有量を加えた総量に対する水の含有量とモル比とすることができる。
【0045】
ここで、前記第2段階の重合工程において追加的に投入されるアミド系化合物の含有量は、結局、最終重合反応系内のアミド系化合物に対する水(H2O)のモル比に影響を及ぼすことから重要である。したがって、前記第2段階で追加的に添加されるアミド系化合物の含有量が約1.0当量以上~約2.0当量以下、約1.2当量以上~2.0当量以下、あるいは約1.35当量超過~2.0当量、あるいは約1.4当量以上~約1.95当量以下、あるいは約1.65当量以上~約1.95当量以下となった時に、最適化されたアミド系化合物に対する水(H2O)のモル比である約0.5以上~約0.85以下、あるいは約0.5以上~約0.8以下のモル比、あるいは約0.55以上~約0.8以下、あるいは約0.58以上~約0.75以下のモル比を維持することによって、高い収率と共に高い分子量を示すことができる。
【0046】
上述のように、本発明の第2段階において、硫黄供給源とジハロゲン化芳香族化合物の重合反応は、非プロトン性極性有機溶媒として、高温でアルカリに対して安定したアミド系化合物の溶媒中にて行われる。前記アミド系化合物の具体例は先に説明した通りであり、例示された化合物の中でも、反応効率などを考慮する時、より具体的には、前記アミド系化合物は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)であってもよい。
【0047】
一方、前記ポリアリーレンスルフィドの製造のために使用可能なジハロゲン化芳香族化合物は、芳香族環における2つの水素がハロゲン原子で置換された化合物であって、具体例としては、o-ジハロベンゼン、m-ジハロベンゼン、p-ジハロベンゼン、ジハロトルエン、ジハロナフタレン、ジハロビフェニル、ジハロ安息香酸、ジハロジフェニルエーテル、ジハロジフェニルスルホン、ジハロジフェニルスルホキシド、またはジハロジフェニルケトンなどが挙げられ、これらのいずれか1つまたは2以上の混合物が使用できる。前記ジハロゲン化芳香族化合物において、ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素であってもよい。なかでも、ポリアリーレンスルフィド製造時の反応性および副反応生成の減少効果などを考慮する時、p-ジクロロベンゼン(p-DCB)が使用できる。
【0048】
前記ジハロゲン化芳香族化合物は、前記アルカリ金属の水硫化物1当量を基準として約0.8~約1.2の当量で投入される。前記含有量範囲内で投入される場合、製造されるポリアリーレンスルフィドの溶融粘度の低下およびポリアリーレンスルフィド内に存在する塩素含有量の増加に対する憂慮なく、優れた物性的特徴を有するポリアリーレンスルフィドを製造することができる。硫黄供給源とジハロゲン化芳香族化合物の添加量の制御による改善効果の優秀さを考慮する時、より具体的には、ジハロゲン化芳香族化合物は約0.9~1.1の当量で投入される。
【0049】
また、前記第2段階を進行させる前に、ジハロゲン化芳香族化合物の気化を防止するために、前記硫黄供給源を含む反応器の温度を約150℃以上から約200℃未満の温度に下降させる段階をさらに含んでもよい。
【0050】
さらに、前記重合反応時、分子量調節剤、架橋剤などの重合反応や分子量を調節するためのその他添加剤が、最終的に製造されるポリアリーレンスルフィドの物性および製造収率を低下させない範囲内の含有量でさらに添加されてもよい。
【0051】
前記硫黄供給源とジハロゲン化芳香族化合物の重合反応は、約200℃~約300℃で行われる。あるいは、前記温度範囲内で温度を変化させ、多段階で行われてもよい。具体的には、約200℃以上約250℃未満での1次重合反応後、連続して1次重合反応時の温度より高い温度で、具体的には、約250℃~約300℃で2次重合反応が行われる。
【0052】
前記重合反応の結果として生成された反応生成物は、水相と有機相に分離されており、この時、有機相中に重合反応物であるポリアリーレンスルフィドが溶解して含まれる。これにより、製造されたポリアリーレンスルフィドの析出および分離のための工程が選択的にさらに行われる。
【0053】
具体的には、前記ポリアリーレンスルフィドの析出は、硫黄1当量に対して、水を約3~5の当量比で反応混合物に添加し冷却することによって行われる。前記含有量範囲で水が添加される時、優れた効率でポリアリーレンスルフィドを析出することができる。
【0054】
この後、析出されたポリアリーレンスルフィドについては、通常の方法により、洗浄およびろ過乾燥工程が選択的にさらに行われる。
【0055】
前記ポリアリーレンスルフィドの具体的な製造方法は、後述する実施例を参照することができる。しかし、ポリアリーレンスルフィドの製造方法が本明細書に記述した内容に限定されるものではなく、前記製造方法は、本発明の属する技術分野で通常採用する段階を追加的に採用することができ、前記製造方法の段階は、通常変更可能な段階によって変更可能である。
【0056】
一方、上記のような本発明の一実施形態によるポリアリーレンスルフィドの製造方法によって、既存対比同等以上の熱的物性を示しながらも、収率の優れたポリアリーレンスルフィドを容易に製造することができる。
【0057】
具体的には、前記製造方法によって製造されるポリアリーレンスルフィドは、約83%以上、あるいは約84%以上、あるいは約84.5%以上の収率で生成され、ASTM D 1238-10の方法により、5kg荷重の条件下で測定したメルトフローレート(MFR)が約200~1000g/10分、あるいは約250~900g/10分、約280~800g/10分、約300~700g/10分であってもよい。特に、前記ポリアリーレンスルフィドを射出成形して使用するが、加工性向上の側面から、メルトフローレート(MFR)は上述した範囲に維持される。ここで、ポリアリーレンスルフィドの収率およびメルトフローレートに対する測定方法はこの技術分野でよく知られたところに従い、具体的には、後述する試験例1に記載したところを参照することができる。
【0058】
また、前記ポリアリーレンスルフィドは、約270℃~約300℃の溶融温度(Tm)、および約180℃~250℃の結晶化温度(Tc)を有することができる。ここで、前記ポリアリーレンスルフィドの融点(Tm)および結晶化温度(Tc)は、示差走査熱量分析(DSC:Differential Scanning Calorimeter)装置(TA instrument、TA Q2000)を用いて測定することができ、これに対する測定方法は、この技術分野でよく知られていることから、具体的な説明は省略する。
【0059】
一方、前記ポリアリーレンスルフィドは、約10000g/mol超過~約30000g/mol以下の重量平均分子量(Mw)を有するものであってもよい。ここで、前記ポリアリーレンスルフィドの重量平均分子量(Mw)は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができ、例えば、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)装置としてWaters PL-GPC220機器を用い、Polymer Laboratories PLgel MIX-B 300mmの長さのカラムを用いて測定することができ、これに対する測定方法は、この技術分野でよく知られていることから、具体的な説明は省略する。
【0060】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、これによって本発明の内容が限定されるものではない。
【実施例】
【0061】
実施例1
ポリフェニレンスルフィド(PPS)ポリマーを作るために、
図1のような方法により脱水反応(第1段階)および重合反応(第2段階)を行った。
【0062】
(1)脱水反応
1.00当量の硫化水素ナトリウム(NaSH)と1.05当量(eq)の水酸化ナトリウム(NaOH)を反応器内で混合して硫化ナトリウム(Na2S)を製造した。この時、0.44当量の酢酸ナトリウム(CH3COONa)粉末、1.65当量のN-メチル-2-ピロリドン(NMP)、および4.72当量の脱イオン水(DI water)を前記反応器に添加した。この時、固体試薬を先に入れて、NMP、DI waterの順に投入した。まず、反応器内を窒素雰囲気にした後、窒素ラインは除去した。ゆっくり脱水バルブを開けて昇温すれば、反応器の内部で脱水物が出始めるが、コンデンサ(condenser)を通過させて液化させた後に集める方式で脱水反応を行った。ここで、前記反応器を150rpmで撹拌しながら、205℃まで1時間加熱して脱水反応を行った。その後に、脱水バルブを閉じてヒータを切り、温度を180℃未満に下げて脱水反応を終了した。脱水反応後に得られた残存混合物を硫黄供給源として得た。脱水直後、NMP/Sのモル比は2.91と計算された。この時、前記脱水反応を行って外部に除去される脱水液中の測定したNMP濃度(v/v%)は、ガスクロマトグラフィーでの測定時に32.1%であった。
【0063】
(2)重合反応
前記脱水反応により得られた硫黄供給源を含む反応器の温度を再び180℃まで上昇させた後、1.65当量のNMPに溶かした1.04当量のパラ-ジクロロベンゼン(p-DCB)を定量ポンプを用いて前記反応器内に投入した。また、第2段階の重合反応でH2O/NMPのモル比は0.71と計算された。そして、投入が終わると、得られた混合溶液を230℃まで加熱して2時間反応させ、再び250℃まで20分間加熱して昇温した後、2時間さらに反応させた。反応終了後、前記反応器内に存在する硫黄1当量に対して3当量比の脱イオン水(DI water)を反応器内に添加し、十分に温度を下げた後、結果物を回収した。常温で冷却後、圧力が常圧と等しくなれば、反応器を開けて反応結果物としてPPSスラリーを得た。前記スラリーを脱イオン水とNMPとの混合液(混合体積比=1:1)、および脱イオン水を用いて順次に洗浄してからろ過し、次に、90℃で0.4%酢酸水溶液で洗浄してからろ過し、また、アセトンで50℃で洗浄してからろ過し、再び90℃で脱イオン水で3回、pHが7になるまで洗浄してからろ過する工程を行った。洗浄したポリフェニレンスルフィドは真空オーブンにて150℃、5時間乾燥した後に回収した。この時、回収したポリフェニレンスルフィドの収率は94.02%であった。
【0064】
実施例2
前記実施例1の(2)重合反応において、パラ-ジクロロベンゼン(p-DCB)と共に追加的に投入するNMPの含有量を1.95当量に変更したことを除けば、実施例1と同様の方法で第1段階の脱水反応と第2段階の重合反応を行ってポリフェニレンスルフィドを製造して回収した。
【0065】
この時、第1段階の脱水反応を行って外部に除去される脱水液中の測定したNMP濃度(v/v%)は、ガスクロマトグラフィーでの測定時に31.2%であった。また、第2段階の重合反応でH2O/NMPのモル比は0.59と計算された。最終的に、第2段階の重合反応を終えた後、回収したポリフェニレンスルフィドの収率は90.04%であった。
【0066】
実施例3
前記実施例1の(1)脱水反応において、酢酸ナトリウム(CH3COONa)粉末の含有量を0.3当量に変更したことを除けば、実施例1と同様の方法で第1段階の脱水反応と第2段階の重合反応を行ってポリフェニレンスルフィドを製造して回収した。
【0067】
この時、第1段階の脱水反応を行って外部に除去される脱水液中の測定したNMP濃度(v/v%)は、ガスクロマトグラフィーでの測定時に30.2%であった。これと共に、混合物内でのH2O/NMPのモル比は0.60と計算された。最終的に、第2段階の重合反応を終えた後、回収したポリフェニレンスルフィドの収率は89.51%であった。
【0068】
実施例4
前記実施例1の(1)脱水反応において、酢酸ナトリウム(CH3COONa)粉末の含有量を0.3当量に変更し、(2)重合反応において、パラ-ジクロロベンゼン(p-DCB)と共に追加的に投入するNMPの含有量を1.95当量に変更したことを除けば、実施例1と同様の方法で第1段階の脱水反応と第2段階の重合反応を行ってポリフェニレンスルフィドを製造して回収した。
【0069】
この時、第1段階の脱水反応を行って外部に除去される脱水液中の測定したNMP濃度(v/v%)は、ガスクロマトグラフィーでの測定時に31.5%であった。また、第2段階の重合反応でH2O/NMPのモル比は0.62と計算された。最終的に、第2段階の重合反応を終えた後、回収したポリフェニレンスルフィドの収率は90.25%であった。
【0070】
比較例1
前記実施例1の(2)重合反応において、パラ-ジクロロベンゼン(p-DCB)と共に追加的に投入するNMPの含有量を1.45当量に変更したことを除けば、実施例1と同様の方法で第1段階の脱水反応と第2段階の重合反応を行ってポリフェニレンスルフィドを製造して回収した。
【0071】
この時、第1段階の脱水反応を行って外部に除去される脱水液中の測定したNMP濃度(v/v%)は、ガスクロマトグラフィーでの測定時に31.4%であった。これと共に、第2段階の重合反応でNMP/Sのモル比は2.91と計算され、H2O/NMPのモル比は0.87と計算された。最終的に、第2段階の重合反応を終えた後、回収したポリフェニレンスルフィドの収率は92.24%であった。
【0072】
比較例2
前記実施例1の(1)脱水反応において、酢酸ナトリウム(CH3COONa)粉末の含有量を0.2当量に変更したことを除けば、実施例1と同様の方法で第1段階の脱水反応と第2段階の重合反応を行ってポリフェニレンスルフィドを製造して回収した。
【0073】
この時、第1段階の脱水反応を行って外部に除去される脱水液中の測定したNMP濃度(v/v%)は、ガスクロマトグラフィーでの測定時に23.7%であった。これと共に、第2段階の重合反応でNMP/Sのモル比は2.91と計算され、H2O/NMPのモル比は0.4と計算された。最終的に、第2段階の重合反応を終えた後、回収したポリフェニレンスルフィドの収率は82.2%であった。
【0074】
比較例3
前記比較例2の(2)重合反応において、パラ-ジクロロベンゼン(p-DCB)と共に追加的に投入するNMPの含有量を1.45当量に変更したことを除けば、実施例1と同様の方法で第1段階の脱水反応と第2段階の重合反応を行ってポリフェニレンスルフィドを製造して回収した。
【0075】
この時、第1段階の脱水反応を行って外部に除去される脱水液中の測定したNMP濃度(v/v%)は、ガスクロマトグラフィーでの測定時に34.31%であった。これと共に、第2段階の重合反応でNMP/Sのモル比は2.91と計算され、H2O/NMPのモル比は0.87と計算された。最終的に、第2段階の重合反応を終えた後、回収したポリフェニレンスルフィドの収率は78.8%であった。
【0076】
試験例1
実施例および比較例で製造したポリフェニレンスルフィドに対して下記の方法で物性を測定し、その結果を下記表1に示した。
【0077】
1)収率:乾燥したポリフェニレンスルフィド(PPS)の重量を電子秤で測定した後に、繰り返し単位(repeat unit)値(108.16g/mol)基準でモル数を計算した。これは、より少なく投入された硫化ナトリウムのモル数またはパラ-ジクロロベンゼンのモル数を基準として実際に回収したポリマーの収率(mol/mol%)を算出した。
【0078】
特に、より正確な収率測定のために、重合後に得られたポリフェニレンスルフィド(PPS)スラリーの洗浄のために、常温の水で希釈した後、単純に篩にかける過程を実施して、スラリー内に有機溶媒によく溶けた高温の水で溶解する物質を完全に除去しないまま収率を測定する従来の方式を適用せず、高温の洗浄水と高温の有機溶媒に少なくとも3回以上強く洗浄した後、1日間高温の真空オーブンにて乾燥した後、収率を測定した。
【0079】
2)メルトフローレート(MFR):ASTM D 1238-10の方法により、実施例および比較例により製造したポリフェニレンスルフィド樹脂のメルトフローレート(MFR、Melt Flow Rate)を測定した。
【0080】
この時、Gottfert MI-4装置を用いて、温度315℃および5kg荷重の条件下、各ポリフェニレンスルフィド樹脂をおいて溶融した物質を押出物の時間ごとの区画部分(timed segments)に対して重量を測定し、g/10分単位で押出速度を計算して算出した。
【0081】
ただし、比較例1および3のポリフェニレンスルフィド樹脂は、5kg荷重の条件でメルトフローレートが測定されず、つまり、分子量が非常に低くて荷重を減少させて2.16kg荷重の条件で測定した値を参照として示した。
【0082】
【0083】
まず、前記表1にて、脱水工程中の酢酸ナトリウム(NaOAc)の投入量とN-メチル-2-ピロリドン(NMP)の投入量、および重合工程におけるN-メチル-2-ピロリドン(NMP)の投入量は、いずれも硫黄供給源1当量を基準とするモル当量(eq)で表したものである。
【0084】
前記表1に示すように、重合段階においてアミド系化合物の含有量とモル比を最適化して投入することによって、最終ポリアリーレンスルフィドが高い分子量を有し、同時に高い収率で製造することができる。