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特許7542909細胞培養用マイクロキャリア、その製造方法およびこれを用いた細胞培養組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】細胞培養用マイクロキャリア、その製造方法およびこれを用いた細胞培養組成物
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20240826BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20240826BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240826BHJP
   C08F 289/00 20060101ALI20240826BHJP
   C08F 12/08 20060101ALI20240826BHJP
   C12N 5/071 20100101ALN20240826BHJP
【FI】
C12M3/00 A
C08J3/12 Z
C12M1/00 C
C08F289/00
C08F12/08
C12N5/071
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022578724
(86)(22)【出願日】2021-09-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-20
(86)【国際出願番号】 KR2021011985
(87)【国際公開番号】W WO2022059980
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2022-12-19
(31)【優先権主張番号】10-2020-0118533
(32)【優先日】2020-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0117811
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】イェジ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ミンチェ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ソン・キム
【審査官】天野 皓己
(56)【参考文献】
【文献】特表平10-501173(JP,A)
【文献】特開平02-016972(JP,A)
【文献】特表2013-504669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 3/00 - 3/10
C08J 3/12
C12M 1/00
C08F 289/00
C08F 12/08
C12N 5/071
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数12以上の炭化水素オイル及び前記炭化水素オイルから誘導された空隙のうちの少なくとも一つ以上を含むポリスチレン系粒子を含み、
前記ポリスチレン系粒子は、炭素数12以上の炭化水素オイル、またはこれから誘導された空隙のうちの少なくとも一つ以上が内部に分散したポリスチレン系高分子を含み、
前記ポリスチレン系高分子は、スチレン単量体1重量部;およびエチレン系不飽和架橋剤0.033重量部超3重量部未満;の反応結果物を含み、
前記ポリスチレン系粒子の見かけ密度が0.95g/cm以上1.00g/cm未満である、細胞培養用マイクロキャリア。
【請求項2】
下記数式1による損傷および破壊なく完全な球形粒子比率が90%超100%以下である、請求項1に記載の細胞培養用マイクロキャリア:
[数式1]
損傷および破壊なく完全な球形粒子比率(%)=(損傷および破壊なく完全な球形を有するポリスチレン系粒子の個数/全体ポリスチレン系粒子の個数)×100。
【請求項3】
前記ポリスチレン系粒子の下記数式2による空隙率が0%以上8%未満である、請求項1に記載の細胞培養用マイクロキャリア:
[数式2]
空隙率(%)=[1-(ポリスチレン系粒子の見かけ密度/ポリスチレン系粒子の真密度)]×100。
【請求項4】
前記炭化水素オイルの密度が0.75g/cm以上0.80g/cm以下である、請求項1に記載の細胞培養用マイクロキャリア。
【請求項5】
前記炭化水素オイルは、炭素数12以上50以下の直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素化合物を含む、請求項1に記載の細胞培養用マイクロキャリア。
【請求項6】
前記ポリスチレン系粒子の平均直径が50μm以上400μm以下である、請求項1に記載の細胞培養用マイクロキャリア。
【請求項7】
前記炭化水素オイルは、ポリスチレン系粒子の重量を基準にして30重量%以下で含有される、請求項1に記載の細胞培養用マイクロキャリア。
【請求項8】
前記ポリスチレン系粒子の全体表面積を基準にして、前記ポリスチレン系粒子表面に存在するマイクロポアと接触する前記ポリスチレン系粒子の表面積の比率が0.01%未満である、請求項1に記載の細胞培養用マイクロキャリア。
【請求項9】
前記空隙の直径が0.1μm~5μmである、請求項1に記載の細胞培養用マイクロキャリア。
【請求項10】
前記ポリスチレン系粒子表面に、プライマー高分子層、細胞付着誘導層、またはこれらの組み合わせ層がさらに含まれる、請求項1に記載の細胞培養用マイクロキャリア。
【請求項11】
炭素数12以上の炭化水素オイル存在下で、スチレン単量体が含有された単量体組成物の懸濁重合反応を行う段階、ならびに
見かけ密度が0.95g/cm 以上1.00g/cm 未満であるポリスチレン系粒子を含む細胞培養用マイクロキャリアを回収する段階
を含み、
前記単量体組成物の重量を基準にして、前記炭化水素オイルの含量が10重量%以上30重量%以下であり、
前記単量体組成物は、スチレン単量体1重量部およびエチレン系不飽和架橋剤0.033重量部超3重量部未満が混合されたものである、見かけ密度が0.95g/cm 以上1.00g/cm 未満であるポリスチレン系粒子を含む細胞培養用マイクロキャリア製造方法。
【請求項12】
前記単量体組成物の懸濁重合反応は、
前記単量体組成物を水系分散液に混合し、せん断力を加えて前記単量体組成物を水系分散液に液滴形態に均質化する段階;および
前記均質化された単量体組成物を300rpm以上1000rpm以下の攪拌速度で懸濁重合する段階;を含む、請求項11に記載の細胞培養用マイクロキャリア製造方法。
【請求項13】
細胞および請求項1の細胞培養用マイクロキャリアを含む、細胞培養組成物。
【請求項14】
前記細胞は、線維芽細胞、上皮細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、肝細胞、臍帯血細胞、間葉系幹細胞、CHO細胞、腎細胞からなる群より選択された1種以上の細胞を含む、請求項13に記載の細胞培養組成物。
【請求項15】
前記細胞培養用マイクロキャリアと前記細胞の見かけ密度差が0.02g/cm以上0.20g/cm以下である、請求項13に記載の細胞培養組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は2020年9月15日付韓国特許出願第10-2020-0118533号および2021年9月3日付韓国特許出願第10-2021-0117811号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、細胞培養用マイクロキャリア、その製造方法およびこれを用いた細胞培養組成物に関するものである。
【背景技術】
【0003】
バイオ医薬品および再生医療分野が拡張されるにつれて、細胞、組織、微生物などを効率的に生産することができる細胞大量培養技術に対する要求が増大している。
【0004】
付着性を有する細胞は3Dバイオリアクター(bioreactor)内でマイクロキャリアを用いて培養される。バイオリアクター内に細胞、培養液およびマイクロキャリアを入れ、培養液を攪拌して細胞およびマイクロキャリアを接触させることによって、細胞をマイクロキャリアの表面に付着させて培養できるようになる。この時に使用するマイクロキャリアは細胞が付着して増殖可能な高い表面積比率(surface area/volume)を提供するため、細胞の大量培養に適する。
【0005】
現在商業的に用いられるマイクロキャリアは密度が約1.1~1.3g/cmであり、細胞の密度は約1.2g/cm程度である。この場合、バイオリアクター内培養初期細胞を付着するには有利であるが、培養後細胞分離回収時遠心分離が難しく、マイクロキャリアと細胞の大きさに基づいたフィルタリング方法を使用しなければならない。しかし、このような場合、フィルターが詰まるか工程時間が長くかかり、細胞の物理的損傷および汚染が発生しやすく、細胞の損失が発生することがあるという問題がある。
【0006】
このような問題を解決するために、密度が1.0g/cmより低いか、1.3g/cmより高い材料の特性を用いてマイクロキャリアを製造したが、この場合、実現可能な密度の範囲が制約的であり、損傷および破壊なく完全な球形を有するマイクロキャリアの収率を十分に確保しにくいという短所がある。
【0007】
したがって、損傷および破壊なく完全な球形を有するマイクロキャリアの収率が十分に確保されながらも、細胞培養後マイクロキャリアと細胞の分離回収時により容易に分離可能な新たなマイクロキャリアの開発が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、損傷および破壊なく完全な球形を有するマイクロキャリアの収率が十分に確保されながらも、細胞培養後マイクロキャリアと細胞の分離回収時、より容易に分離可能な細胞培養用マイクロキャリアを提供するためのものである。
【0009】
また、本発明は、前記細胞培養用マイクロキャリアの製造方法を提供するためのものである。
【0010】
また、本発明は、前記細胞培養用マイクロキャリアを用いた細胞培養組成物を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本明細書では、炭素数12以上の炭化水素オイル、またはこれから誘導された空隙のうちの少なくとも一つ以上を含むポリスチレン系粒子を含む細胞培養用マイクロキャリアを提供する。
【0012】
本明細書ではまた、炭素数12以上の炭化水素オイル存在下で、スチレン単量体が含有された単量体組成物の懸濁重合反応を行う段階を含む細胞培養用マイクロキャリア製造方法が提供される。
【0013】
本明細書ではまた、細胞および前記細胞培養用マイクロキャリアを含む細胞培養組成物が提供される。
【0014】
以下、発明の具体的な実施形態による細胞培養用マイクロキャリア、その製造方法およびこれを用いた細胞培養組成物についてより詳細に説明する。
【0015】
本明細書で明示的な言及がない限り、専門用語は単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。
【0016】
本明細書で使用される単数形態は、文言がこれと明確に反対の意味を示さない限り複数形態も含む。
【0017】
本明細書で使用される‘含む’の意味は特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外するものではない。
【0018】
そして、本明細書で‘第1’および‘第2’のように序数を含む用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的で使用され、前記序数によって限定されない。例えば、本発明の権利範囲内で第1構成要素は第2構成要素にも命名することができ、同様に第2構成要素は第1構成要素に命名することができる。
【0019】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0020】
1.細胞培養用マイクロキャリア
発明の一実施形態によれば、炭素数12以上の炭化水素オイル、またはこれから誘導された空隙のうちの少なくとも一つ以上を含むポリスチレン系粒子を含む、細胞培養用マイクロキャリアを提供することができる。
【0021】
本発明者らは、前記一実施形態の細胞培養用マイクロキャリアの場合、ポリスチレン系粒子内部に炭素数12以上の炭化水素オイル、またはこれから誘導された空隙のうちの少なくとも一つ以上が含まれて、細胞培養用マイクロキャリアの密度を低めることができるだけでなく、損傷および破壊なく完全な球形粒子比率が顕著に高まって均質な球形形状のマイクロキャリアを高い収率で確保することができるという点を、実験を通じて確認して発明を完成した。
【0022】
具体的に、前記細胞培養用マイクロキャリアは、炭素数12以上の炭化水素オイル、またはこれから誘導された空隙のうちの少なくとも一つ以上を含むポリスチレン系粒子を含むことができる。即ち、前記ポリスチレン系粒子は、炭素数12以上の炭化水素オイル1種、炭素数12以上の炭化水素オイルから誘導された空隙1種、あるいはこれら2種の混合物を含むことができる。
【0023】
前記ポリスチレン系粒子が炭素数12以上の炭化水素オイルから誘導された空隙1種を含むか、あるいは炭素数12以上の炭化水素オイルおよび炭素数12以上の炭化水素オイルから誘導された空隙を全て含む場合、前記ポリスチレン系粒子は多孔性ポリスチレン系粒子に該当し得る。
【0024】
前記ポリスチレン系粒子は後述の他の実施形態の製造方法のように炭化水素オイル存在下で懸濁重合によってポリスチレン粒子合成を行って炭化水素オイルがポリスチレン粒子内部に閉じ込められた状態で継続して残留するか、高速の懸濁重合攪拌条件によって閉じ込められていた炭化水素オイルの一部あるいは全体が抜け出してポリスチレン粒子内部に空隙が形成されることになる。
【0025】
前記空隙とはポリスチレン系粒子内部の空の空間を意味し、気孔、ホロー(hollow)、孔、ボイド(void)などのような意味として使用することができる。
【0026】
前記空隙は炭素数12以上の炭化水素オイルから誘導されたものであってもよい。具体的に、前記空隙は、炭素数12以上の炭化水素オイルが懸濁重合途中にポリスチレンと相分離されながら形成された空間に該当する。
【0027】
したがって、前記ポリスチレン系粒子が炭素数12以上の炭化水素オイル1種のみを含むことは重合過程で炭化水素オイルが完全に相分離されたが重合および洗浄工程中に粒子外部に消失しないのを意味し、前記ポリスチレン系粒子が炭素数12以上の炭化水素オイルから誘導された空隙1種のみを含むことは重合過程で炭化水素オイルが完全に相分離されて重合および洗浄工程中に粒子外部に消失した状態を意味する。また、前記ポリスチレン系粒子が炭素数12以上の炭化水素オイルおよび炭素数12以上の炭化水素オイルから誘導された空隙を全て含むことは炭化水素オイルが重合過程で一部相分離されて消失し一部は残留する状態を意味する。
【0028】
本発明者らは、前記空隙が炭素数12以上の炭化水素オイルから誘導されたことを立証するために、前記一実施形態から得られた細胞培養用マイクロキャリアに対する成分分析時、炭素数12以上の炭化水素オイルが検出されることを確認した。具体的に、前記一実施形態から得られた細胞培養用マイクロキャリアを凍結粉砕しクロロホルム(Chloroform)に溶かして未反応残留化合物を抽出し、GC/FID(ガスクロマトグラフィー-炎イオン化検出器)を通じて細部成分を定性、定量分析し、その結果、オイルまたはこれに由来した成分が検出された。これによって前記空隙内部に炭素数12以上の炭化水素オイルまたはこれに由来した成分が残留したことを確認することができた。
【0029】
具体的に、前記空隙の直径は0.1μm~5μmであってもよい。より具体的に、前記空隙の直径は0.1μm以上、または1μm以上であってもよく、5μm以下、または3μm以下であってもよく、0.1μm~10μm、または0.1μm~5μm、または1μm~5μm、または1μm~4μmであってもよい。
【0030】
前述のように、前記空隙は炭素数12以上の炭化水素オイルから誘導されたものであることにより、前記空隙の直径は0.1μm~5μmであって小さい大きさの空隙を実現することができ、これによりマイクロキャリアの密度を容易に調節することができる。
【0031】
従来ポリスチレン粒子の密度を低めるためにポリスチレン重合過程中に低沸点の発泡剤を投入した後、追加発泡工程を通じて発泡スチレンを製造してきたが、このような場合、数十μm大きさの大きい空隙が形成されて、マイクロキャリアの密度調節が難しいという限界がある。
【0032】
前記炭化水素オイルの炭素数は、12以上、または12以上50以下、または12以上16以下であってもよい。前記炭化水素オイルの炭素数が12未満で過度に減少するようになると、懸濁重合中に炭化水素オイルとポリスチレンの相分離速度の減少によって粒子表面が均一でなく凹んだ形状の粒子が複数製造されるという限界がある。
【0033】
具体的に、前記炭化水素オイルは、炭素数12以上50以下の直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素化合物を含むことができる。前記炭素数12以上50以下の直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素化合物は単独または混合して使用することができ、前記炭素数12以上50以下の直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素化合物の例としては炭素数12以上16以下のノルマルアルカン、炭素数12以上16以下のイソアルカン、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0034】
より具体的に、前記炭化水素オイルとしては炭素数12のドデカン、炭素数16のヘキサデカン、またはIsopar M(炭素数12以上14以下のイソアルカンと炭素数13以上16以下のイソアルカンの混合物)を使用することができる。
【0035】
前記炭化水素オイルは、スチレンモノマーを含む分散相組成物全体重量(100%重量)を基準にして30重量%以下、または10重量%以上30重量%以下で含むことができる。具体的に、前記炭化水素オイルの含量下限は10重量%以上、または11重量%以上、または12重量%以上、または13重量%以上、または14重量%以上であり、その上限は例えば、30重量%以下、または25重量%以下、または20重量%以下であってもよい。前記炭化水素オイルの含量が前記含量範囲未満で使用される場合、低密度特性のキャリア粒子を確保しにくく、前記含量範囲を過度に超過する場合、ポリスチレン系粒子の形状が球形を有しにくくなって製造される粒子の均一性が減少する。
【0036】
前記炭化水素オイルの密度は0.75g/cm以上0.80g/cm以下、または0.75g/cm以上0.791g/cm以下であってもよい。前記炭化水素オイルの密度が前述の範囲であって非常に低いため、これによってポリスチレン系粒子の密度を顕著に低くすることができる。
【0037】
但し、前記炭化水素オイルの密度が0.75g/cm未満に過度に減少すると、懸濁重合中に炭化水素オイルとポリスチレンの相分離速度の減少によって粒子表面が均一でなく凹んだ形状の粒子が複数製造されるという限界がある。
【0038】
具体的に、前記ポリスチレン系粒子の見かけ密度が0.95g/cm以上1.00g/cm未満であってもよい。前述の低密度範囲を有することによって、細胞培養後マイクロキャリアと細胞を分離回収時、重力による沈降速度差を通じて細胞とマイクロキャリアを容易に分離することができる。
【0039】
前記マイクロキャリアの密度が1g/cmを超過する場合、細胞とマイクロキャリアの密度差が少なく培養後細胞分離回収時に遠心分離が難しいことがあり、0.95g/cm未満の場合、培養初期にマイクロキャリアが培養液表面のみで浮遊して細胞を付着しにくい問題が発生することがある。
【0040】
前記細胞は付着性動物細胞にその例が大きく限定されるものではないが、例えば、線維芽細胞(fibroblasts)、上皮細胞(epithelial cell)、骨芽細胞(osteoblast)、軟骨細胞(chondrocyte)、肝細胞、ヒト由来臍帯血細胞、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell)、CHO(Chinese hamster ovary)細胞、腎細胞(HEK293、BHK21、MDCK、vero cellなど)、またはこれらの2種以上混合物であってもよい。
【0041】
前記細胞の密度は1.02g/cm以上1.1g/cm未満であってもよい。
【0042】
また、前記細胞培養用マイクロキャリアと前記細胞の密度差が0.02g/cm以上0.20g/cm以下であってもよい。前記細胞培養用マイクロキャリアと前記細胞の密度差が0.02g/cm以上0.20g/cm以下を満足することによって、細胞培養後マイクロキャリアと細胞を分離回収時、重力による沈降速度差を通じて細胞とマイクロキャリアを容易に分離することができる。
【0043】
前記ポリスチレン系粒子は、炭素数12以上の炭化水素オイル、またはこれから誘導された空隙のうちの少なくとも一つ以上が内部に分散したポリスチレン系高分子を含むことができる。
【0044】
即ち、前記ポリスチレン系粒子は、ポリスチレン系高分子マトリックスと、前記ポリスチレン系高分子マトリックス内部に分散した炭素数12以上の炭化水素オイル、またはこれから誘導された空隙のうちの少なくとも一つ以上を含むことができる。
【0045】
前記ポリスチレン系高分子は、スチレン単量体1重量部;およびエチレン系不飽和架橋剤0.033重量部超3重量部未満、または0.1以上1以下、または0.33以上1以下;の反応結果物を含むことができる。スチレン単量体1重量部に対して、エチレン系不飽和架橋剤0.033重量部未満に過度に減少する場合、前記ポリスチレン系高分子の架橋密度が減少することによって粒子の形態が球形を安定的に維持しにくくポリスチレン系粒子の全体的な密度が目標にした水準まで低くなりにくいという限界がある。
【0046】
反面、スチレン単量体1重量部に対して、エチレン系不飽和架橋剤3重量部以上に過度に増加する場合、粒子の形態が球形を安定的に維持しにくいという限界がある。
【0047】
前記エチレン系不飽和架橋剤の例としてはジビニルベンゼンが挙げられる。
【0048】
前記ポリスチレン系粒子の全体表面積を基準にして、前記ポリスチレン系粒子表面に存在するマイクロポアと接触する前記ポリスチレン系粒子の表面積の比率が0.01%未満であってもよい。前記ポリスチレン系粒子の全体表面積はポリスチレン系粒子の最外殻で空気中に露出された表面積の合計を意味し、前記ポリスチレン系粒子表面に存在するマイクロポアと接触する前記ポリスチレン系粒子の表面積は前記ポリスチレン系粒子表面に存在するマイクロポアがポリスチレン系粒子の最外殻表面と接触する表面積の合計を意味する。また、前記マイクロポアは、最大直径がマイクロメートルサイズである空隙であって、例えば、1μm以上500μm以下の最大直径を有する空隙を意味する。
【0049】
より具体的に、前記ポリスチレン系粒子の全体表面積を基準にして、前記ポリスチレン系粒子表面に存在するマイクロポアと接触する前記ポリスチレン系粒子の表面積の比率は下記数式3を通じて求めることができる。
[数式3]
前記ポリスチレン系粒子の全体表面積を基準にして、前記ポリスチレン系粒子表面に存在するマイクロポアと接触する前記ポリスチレン系粒子の表面積の比率(%)=[(前記ポリスチレン系粒子表面に存在するマイクロポアと接触する前記ポリスチレン系粒子の表面積)/(前記ポリスチレン系粒子の全体表面積)]×100
【0050】
前記ポリスチレン系粒子の全体表面積を基準にして、前記ポリスチレン系粒子表面に存在するマイクロポアと接触する前記ポリスチレン系粒子の表面積の比率が0.01%未満であるということは、前記ポリスチレン系粒子の表面に存在するマイクロ大きさのポアがまったくないか、殆どないとみることができる程度に極めて少ないということを意味する。即ち、前記ポリスチレン系粒子表面にはマイクロポアが存在しないことがある。
【0051】
従来ポリスチレン粒子の密度を低くするために発泡剤を投入して発泡スチレンを製造してきたが、この場合、ポリスチレン粒子の直径範囲と密度範囲の分布が過度に広くなることによって細胞培養用マイクロキャリアとして適用可能な範囲の収率を確保することが困難であった。
【0052】
反面、前記ポリスチレン系粒子は前記ポリスチレン系粒子の全体表面積を基準にして、前記ポリスチレン系粒子表面に存在するマイクロポアと接触する前記ポリスチレン系粒子の表面積の比率が0.01%未満であるので、従来の発泡スチレンと異なり発泡剤による発泡工程が全く行われず、ポリスチレン粒子の直径範囲と密度範囲の分布をより精密に調節することができるという長所がある。
【0053】
前記ポリスチレン系粒子の平均直径が50μm以上400μm以下、または60μm以上390μm以下であってもよい。前記ポリスチレン系粒子の平均直径が前述の範囲を満足する場合、細胞付着および培養性能に優れる。一方、前記ポリスチレン系粒子の平均直径が50μm未満である場合、細胞培養の可能な表面積が小さくて培養効率が低くなるという問題が発生する恐れがあり、400μm超の場合、付着細胞間相互作用が低下し、培養器内細胞密度が低くなり、細胞培養効率が低まるという問題が発生することがある。
【0054】
前記ポリスチレン系粒子の直径は前記ポリスチレン系粒子の重心点を通過する直線がポリスチレン系粒子の最外殻表面と接する二つの地点間の距離を意味し、前記ポリスチレン系粒子の平均直径は光学顕微鏡を通じて前記細胞培養用マイクロキャリアに含まれる全体ポリスチレン系粒子の直径を確認して求めることができる。また、前記ポリスチレン系粒子の平均粒径は前記ポリスチレン系粒子の製造過程で得られる全体ポリスチレン系粒子の直径やこれらの平均直径を通じても確認可能である。
【0055】
前記ポリスチレン系粒子は50μm以上400μm以下、または60μm以上390μm以下の平均直径を有する個別粒子の群(group)であってもよく、このような群(group)に含まれる個別微粒子は平均的に50μm以上400μm以下、または60μm以上390μm以下の直径を有することができる。より具体的に、前記群(group)に含まれる個別微粒子の95%、または99%が50μm以上400μm以下、または60μm以上390μm以下の直径を有することができる。
【0056】
前記ポリスチレン系粒子表面に、プライマー高分子層、細胞付着誘導層、またはこれらの組み合わせ層がさらに含まれてもよい。即ち、前記ポリスチレン系粒子表面に、プライマー高分子層1種、細胞付着誘導層1種、またはプライマー高分子層1種と細胞付着誘導層1種の混合層がさらに含まれてもよい。プライマー高分子層1種と細胞付着誘導層1種の混合層でこれらの積層順序は特に限定されず、プライマー高分子層上に細胞付着誘導層が積層された構造、あるいは細胞付着誘導層上にプライマー高分子層が積層された構造を全て適用可能である。
【0057】
一方、前記プライマー高分子層は官能基がないポリスチレン系粒子表面に機能性高分子を導入することができる粘着層役割を果たし、これによってマイクロキャリア表面に細胞付着のための高分子層が効果的に導入され培養中にも安定的に維持されるようになる。
【0058】
前記プライマー高分子層はその例が大きく限定されることはないが、水相接着を誘導することができるカテコール誘導体としてL-ジヒドロキシフェニルアラニン(L-DOPA)、ドーパミン(dopamine)、ポリドーパミン、ノルエピネフリン(norepinephrine)、エピネフリン(epinephrine)、エピガロカテキン(epigallocatechin)およびこれらの誘導体からなる群より選択されるいずれか一つ以上を含むことができる。
【0059】
一方、前記細胞付着誘導層は細胞付着性物質から構成され、これらは細胞の膜貫通蛋白質(transmembrane protein)が結合できる場所を提供する役割を果たし、付着性細胞が安定的に付着、spreadingおよび培養されるようになる。
【0060】
前記細胞付着誘導層を形成する高分子はその例が大きく限定されるのではないが、ゼラチン、コラーゲン、フィブロネクチン(fibronectin)キトサン、ポリドーパミン、ポリL-リシン、ビトロネクチン(vitronectin)、RGDを含むペプチド、RGDを含むアクリル系高分子、リグニン(lignin)、陽イオン性デキストランおよびこれらの誘導体からなる群より選択されるいずれか一つ以上を含むことができる。
【0061】
一例として、前記マイクロキャリアはポリスチレン系粒子の表面に形成されるプライマー高分子層を含み、マイクロキャリアの表面を親水性に改質することを通じて水分散され、前記プライマー高分子層表面に細胞付着誘導層を導入して培養液内でマイクロキャリアの浮遊度を調節することができ、細胞を安定的に付着培養する効果を有することができる。
【0062】
一方、前記ポリスチレン系粒子の半径とプライマー高分子層の厚さの比率は1:0.00001~1:0.01、または1:0.0001~1:0.001であってもよい。
【0063】
ポリスチレン系粒子の半径と表面コーティング層の厚さの比率が1:0.00001未満である場合、ポリスチレン系粒子に対比してプライマー高分子層が過度に薄く、マイクロキャリア表面が親水性に改質する効果が微小であり、1:0.01を超過する場合、ポリスチレン系粒子に対比してプライマー高分子層が厚くなり、細胞培養時、細胞とマイクロキャリアの付着度が減少する恐れがある。
【0064】
一方、前記細胞培養用マイクロキャリアは、下記数式1による損傷および破壊なく完全な球形粒子比率が90%超100%以下、または92%以上100%以下、または95%以上100%以下、または96%以上99%以下であってもよい。
[数式1]
損傷および破壊なく完全な球形粒子比率(%)=(損傷および破壊なく完全な球形を有するポリスチレン系粒子の個数/全体ポリスチレン系粒子の個数)×100。
【0065】
前記数式1による損傷および破壊なく完全な球形粒子比率は前記一実施形態の細胞培養用マイクロキャリアに対して、全体粒子のうちの損傷および破壊なく完全な球形を有する粒子の個数をSEMを通じて測定し、全体粒子に対する損傷および破壊なく完全な球形粒子の個数のパーセント比率を計算して求めることができる。
【0066】
即ち、前記細胞培養用マイクロキャリアは複数のポリスチレン系粒子を含有することができ、このような複数のポリスチレン系粒子のうちの損傷および破壊なく完全な球形の形状を有するかどうかはSEMを通じて肉眼で判別することができる。
【0067】
前記数式1による損傷および破壊なく完全な球形粒子比率が90%以下に減少すると、粒子表面が均一でなく凹んだ不定形粒子の数が増加し細胞培養液内に不定形粒子が浮遊して培養中の細胞に物理的衝撃を加えて細胞培養が不可能である程度に細胞培養効率が低くなる問題点が発生する恐れがある。
【0068】
また、前記細胞培養用マイクロキャリアは、下記数式2による空隙率が0%以上8%未満、または1%以上8%未満、または2%以上8%未満、または3%以上8%未満、または3.9%以上7.5%以下、または6.5%以上7.5%以下であってもよい。
[数式2]
空隙率(%)=[1-(ポリスチレン系粒子の見かけ密度/ポリスチレン系粒子の真密度)]×100。
前記見かけ密度は粒子と粒子間空隙が含まれている実際粒子体積を用いて求めた密度であり、真密度は空隙を除いた粒子材料のみの体積を用いて求めた密度である。
【0069】
前記数式2による空隙率で、ポリスチレン系粒子の見かけ密度は密度が0.95g/cmであるエタノール水溶液と、密度が1g/cmである水にそれぞれ添加して粒子が浮遊または沈降するか確認して測定することができ、真密度はHe pycnometryを用いて測定することができる。
【0070】
前記数式2による空隙率が0%であるということは、重合過程で炭化水素オイルが相分離されず重合中に消失して前記ポリスチレン系粒子が炭素数12以上の炭化水素オイル1種を含まない状態を意味する。そして、前記数式2による空隙率が0%超8%未満であるということは、炭化水素オイルが重合過程で相分離された後に重合および洗浄過程で消失するか一部は残留して、前記ポリスチレン系粒子が炭素数12以上の炭化水素オイルおよび炭素数12以上の炭化水素オイルから誘導された空隙を全て含む状態を意味する。
【0071】
前記数式2による空隙率が8%以上などに過度に増加すると、ポリスチレン系粒子の密度が過度に減少しながら、培養初期にマイクロキャリアが培養液表面のみで浮遊して細胞を付着しにくいという問題が発生することがある。
【0072】
2.細胞培養用マイクロキャリア製造方法
発明の他の実施形態によれば、炭素数12以上の炭化水素オイル存在下で、スチレン単量体が含有された単量体組成物の懸濁重合反応を行う段階を含む、細胞培養用マイクロキャリア製造方法を提供することができる。
【0073】
前記炭化水素オイル、スチレン単量体に関する内容は前記一実施形態で詳述した内容を全て含む。
【0074】
前記単量体組成物は、スチレン単量体1重量部およびエチレン系不飽和架橋剤0.033重量部超3重量部未満が混合されたものであってもよい。具体的に、スチレン単量体1重量部に対して、エチレン系不飽和架橋剤0.033重量部未満に過度に減少する場合、前記ポリスチレン系高分子の架橋密度が減少するにつれて炭化水素オイルによって生成された空隙が安定的に製造されにくくポリスチレン系粒子の密度を十分に低下させにくく、粒子の形態が損傷および破壊なく完全な球形を維持しにくい限界がある。
【0075】
反面、スチレン単量体1重量部に対して、エチレン系不飽和架橋剤3重量部以上に過度に増加する場合、前記ポリスチレン系高分子の架橋密度が増加しながら、ポリスチレン系粒子の全体的な密度が目標にした水準まで低まりにくい限界がある。
【0076】
また、前記単量体組成物の重量を基準にして、前記炭化水素オイルの含量が10重量%以上30重量%以下、または14重量%以上20重量%以下であってもよい。前記炭化水素オイルの含量が過度に減少する場合、炭化水素オイルが重合中に相分離される量が少なくてポリスチレン系粒子の密度が十分に低下しにくい。また、前記炭化水素オイルの含量が過度に増加する場合、ポリスチレン系粒子の形状が球形を有しにくくなって、製造される粒子の均一性が減少するようになる。
【0077】
より具体的に、前記単量体組成物の懸濁重合反応は、前記単量体組成物を水系分散液に混合し、せん断力を加えて前記単量体組成物を水系分散液に液滴形態に均質化する段階;および前記均質化された単量体組成物を300rpm以上1000rpm以下の攪拌速度で懸濁重合する段階を含むことができる。
【0078】
前記均質化された単量体組成物を300rpm以上1000rpm以下、または400rpm以上800rpm以下の攪拌速度で懸濁重合する段階でポリスチレンと炭化水素オイルの粒子構造形成中にポリスチレンと炭化水素オイルの相分離によって内部空隙を形成しながら細胞培養用マイクロキャリアの密度をより低くすることができると共に、損傷および破壊なく完全な球形粒子比率の高い細胞培養用マイクロキャリア製造が可能である。
【0079】
前記均質化された単量体組成物を300rpm以上1000rpm以下、または400rpm以上800rpm以下の攪拌速度で懸濁重合する段階で前記懸濁重合条件の例が大きく限定されることはないが、例えば、50℃以上100℃温度で3時間以上18時間以下で行うことができる。
【0080】
一方、前記細胞培養用マイクロキャリア製造方法は、前記懸濁重合反応を行う段階以後に、懸濁重合反応結果物を洗浄する段階および乾燥する段階をさらに含むことができる。
【0081】
具体的に、前記懸濁重合反応結果物を洗浄する段階は、懸濁重合反応結果物を50μm以上100μm以下のふるい(sieve)にかけた後、エタノール100%に5~7回常温攪拌する段階を含むことができる。
【0082】
前記懸濁重合反応結果物を乾燥する段階は、真空オーブンに入れて常温で真空乾燥する段階を含む。但し、これに限定されるのではなく、通常使用されることが知られた乾燥方法を格別な制限なく使用することができる。
【0083】
一方、前記他の実施形態の細胞培養用マイクロキャリアの製造方法は、前記懸濁重合反応を行う段階以後に、前記懸濁重合反応結果物の表面にプライマー高分子層、細胞付着誘導層、またはこれらの組み合わせ層を塗布する段階をさらに含むことができる。
【0084】
前記プライマー高分子層、細胞付着誘導層に関する内容は前記一実施形態で詳述した内容を全て含む。
【0085】
3.細胞培養組成物
発明のまた他の実施形態によれば、細胞および前記一実施形態の細胞培養用マイクロキャリアを含む細胞培養組成物を提供することができる。前記細胞培養用マイクロキャリアに関する内容は前記一実施形態で詳述した内容を全て含む。
【0086】
前記細胞は付着性動物細胞にその例が大きく限定されることはないが、例えば、線維芽細胞(fibroblasts)、上皮細胞(epithelial cell)、骨芽細胞(osteoblast)、軟骨細胞(chondrocyte)、肝細胞、ヒト由来臍帯血細胞、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell)、CHO(Chinese hamster ovary)細胞、腎細胞(HEK293、BHK21、MDCK、vero cellなど)、またはこれらの2種以上混合物であってもよい。
【0087】
前記細胞の密度は1.02g/cm以上1.1g/cm未満であってもよい。
【0088】
また、前記細胞培養用マイクロキャリアと前記細胞の密度差が0.02g/cm以上0.20g/cm以下であってもよい。前記細胞培養用マイクロキャリアと前記細胞の密度差が0.02g/cm以上0.20g/cm以下を満足することによって、細胞培養後マイクロキャリアと細胞を分離回収時、重力による沈降速度差を通じて細胞とマイクロキャリアを容易に分離することができる。
【0089】
前記細胞培養組成物は、培地溶液をさらに含むことができる。前記培地溶液は血しょうやリンパ液のような体液に基づいた生体の条件に近い栄養分とpH、温度、浸透圧などの環境条件を十分に満足させるための各種添加剤を含むことができ、これは細胞培養関連技術分野で広く知られた多様な物質を制限なく使用することができる。
【0090】
一例として、前記一実施形態の細胞培養用マイクロキャリアは、培地溶液より小さい密度を有し、培地溶液内に注入され攪拌条件下で培地溶液内部で浮遊するようになる。その後、低密度のマイクロキャリアの表面に付着される細胞の数が増加するにつれて、細胞が付着されたマイクロキャリア(以下、‘マイクロキャリア-細胞結合体’という)の密度は次第に増加して培地溶液内で次第に沈むようになる。
【0091】
よって、細胞が付着されたマイクロキャリア(マイクロキャリア-細胞結合体)を細胞脱着酵素添加処理後、遠心分離を通じて分離して、マイクロキャリア-細胞結合体から細胞を分離させることによって培養された細胞を容易に確保することができる。
【発明の効果】
【0092】
本発明によれば、損傷および破壊なく完全な球形を有するマイクロキャリアの収率が十分に確保されながらも、細胞培養後マイクロキャリアと細胞の分離回収時、より容易に分離することができる細胞培養用マイクロキャリア、その製造方法およびこれを用いる細胞培養方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
図1】実施例1から得られた細胞培養用マイクロキャリアのSEMイメージを示したものである。
図2】参考例1から得られた細胞培養用マイクロキャリアのSEMイメージを示したものである。
図3】参考例5から得られた細胞培養用マイクロキャリアのSEMイメージを示したものである。
図4】実施例2から得られた細胞培養用マイクロキャリアの粒子断面形状SEMイメージを示したものである。
図5】比較例1から得られた細胞培養用マイクロキャリアの粒子断面形状SEMイメージを示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0094】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。但し、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるのではない。
【実施例
【0095】
<実施例:細胞培養用マイクロキャリアの製造>
実施例1
水250gにポリビニルアルコール2.5gを混合して水系分散液を製造した後、常温で20分間攪拌した。
【0096】
下記表1に記載された含量比率で単量体であるスチレンと架橋剤であるジビニルベンゼンと下記表1に記載されたオイル(投入量:総合計基準オイル添加量)の合計25gを混合して十分に溶かし、前記混合物にbenzoyl peroxide開始剤(Sigma Aldrich)2.06重量%、tert-butyl peroxybenzoate開始剤(Sigma Aldrich)0.3125重量%(開始剤投入量:単量体、架橋剤、オイルの総合計基準)を添加して5分間追加的に攪拌することによって単量体組成物を製造した。
【0097】
そして、前記水系分散液に前記単量体組成物を添加し、800rpmの速度で前記水系分散液および単量体組成物にせん断力を加えて前記単量体組成物を水系分散液に微細な液滴形態に分散させて均質化した。
【0098】
前記均質化された混合物を下記表1に記載された攪拌速度で攪拌しながら90℃で6時間窒素パージ下で反応させてポリスチレン粒子を製造し、エタノールに洗浄された粒子を常温乾燥して回収した。
【0099】
乾燥後回収された粒子をdopamine hydrochlorideが1mg/mLで溶解されたtris buffer(pH8.0)に浸漬して攪拌下で常温で2時間コーティングした。過量のコーティング物質をエタノール(ethanol)で洗浄後、粒子を70μmのふるい(sieve)にかけた後、常温乾燥し、乾燥された粒子を細胞培養用マイクロキャリアとして使用した。
【0100】
実施例2~実施例8
下記表1に記載された通り、スチレンとジビニルベンゼン重量比率、オイル、または攪拌速度を異なるものにして使用したことを除いては前記実施例1と同様な方法で細胞培養用マイクロキャリアを製造した。
【0101】
<比較例:細胞培養用マイクロキャリアの製造>
比較例1~比較例3
下記表1に記載された通り、スチレンとジビニルベンゼン重量比率、オイル、攪拌速度を異なるものにして使用したことを除いては前記実施例1と同様な方法で細胞培養用マイクロキャリアを製造した。
【0102】
<参考例:細胞培養用マイクロキャリアの製造>
参考例1~参考例8
下記表1に記載された通り、スチレンとジビニルベンゼン重量比率、オイルを異なるものにして使用したことを除いては前記実施例1と同様な方法で細胞培養用マイクロキャリアを製造した。
【0103】
【表1】
【0104】
<実験例:細胞培養用マイクロキャリアの物性測定>
前記実施例および比較例から得られた細胞培養用マイクロキャリアに対して、下記方法で物性を測定し、その結果を表2に示した。
【0105】
1.粒子大きさ
前記実施例および比較例から得られた細胞培養用マイクロキャリアに対して、光学顕微鏡を通じて100個の粒子直径を測定し、これらの算術平均値を求めた。
【0106】
2.粒子見かけ密度
前記実施例および比較例から得られた細胞培養用マイクロキャリアに対して、乾燥過程が完了した条件の試料を準備し、前記試料を常温(25℃)および常圧(1atm)条件で、密度が0.95g/cm、0.97g/cm、0.98g/cmまたは0.995g/cmであるエタノール水溶液と、密度が1g/cmである蒸留水(DIW)にそれぞれ添加して粒子が浮遊または沈降するか確認して以下の基準下で見かけ密度を評価した。
1)密度が0.95g/cmであるエタノール水溶液で浮遊:0.95g/cm未満
2)密度が1g/cmである蒸留水(DIW)で沈降:1g/cm
3)密度が0.95g/cmであるエタノール水溶液で沈降し、密度が1g/cmである蒸留水(DIW)で浮遊:0.95g/cm以上1g/cm未満
4)密度が0.95g/cmであるエタノール水溶液で沈降し、密度が0.97g/cmであるエタノール水溶液で浮遊:0.95g/cm以上0.97g/cm未満
5)密度が0.98g/cmであるエタノール水溶液で沈降し、密度が0.995g/cmであるエタノール水溶液で浮遊:0.98g/cm以上0.995g/cm未満
【0107】
3.損傷および破壊なく完全な球形粒子比率
前記実施例および比較例から得られた細胞培養用マイクロキャリアを用いて、乾燥過程が完了した条件の試料を準備し、前記試料中の全体粒子のうちの球形を有する粒子(壊れていない完全な球形粒子)の個数をSEMを通じて測定し、以下の数式1によって球形粒子の個数パーセント比率を測定した。
[数式1]
損傷および破壊なく完全な球形粒子比率(%)=(損傷および破壊なく完全な球形を有する粒子の個数/全体粒子の個数)×100。
【0108】
4.粒子内部空隙率(Porosity)
前記実施例および比較例から得られた細胞培養用マイクロキャリアを用いて、乾燥過程が完了した条件の試料を準備し、前記試料でHe pycnometryで真密度を測定し、以下の数式2によって空隙率を測定した。
[数式2]
空隙率(%)=[1-(見かけ密度/真密度)]×100
【0109】
5.粒子内部構造および空隙直径
(1)粒子内部構造
前記実施例および比較例から得られた細胞培養用マイクロキャリアに対して、SEMを通じて粒子内部構造を確認した。具体的に、粒子をエポキシにembeddingした後、イオンミリング(ion milling)を通じて断面を製造した後、粒子断面の形状をSEMを通じて確認した。
【0110】
(2)空隙直径
粒子をエポキシにembeddingした後、イオンミリング(ion milling)を通じて断面を製造した後、粒子断面の形状をSEMで確認して粒子内部空隙のうちの最小直径と最大直径を求めた。
【0111】
6.マイクロキャリアの回収効率評価
前記実施例および比較例から得られた細胞培養用マイクロキャリアをdopamine hydrochlorideが1mg/mLで溶解されたtris buffer(pH8.0)に浸漬して攪拌下で常温で2時間コーティングした。過量のコーティング物質をエタノール(ethanol)で洗浄後、粒子を70μmのふるい(sieve)にかけた後、常温乾燥した。
【0112】
100mL vertical wheel bioreactor(PBS社)に間葉系幹細胞(密度:1.05g/cm)を含む培養液を満たして、ポリドーパミン(Polydopamine)がコーティングされた細胞培養用マイクロキャリアを培養液に注入して攪拌した。常温で14日間培養した後、0.25%トリプシン(trypsin)処理後に培養液を遠心分離して上清液に浮遊するマイクロキャリアを回収し、これを乾燥後に重量を測定して回収効率を評価した。
【0113】
7.空隙成分分析
前記実施例および比較例から得られた細胞培養用マイクロキャリアに対して、内部空隙に含有された成分を分析するために、細胞培養用マイクロキャリアを凍結粉砕してクロロホルム(Chloroform)に溶かして未反応残留化合物を抽出し、GC/FID(ガスクロマトグラフィー-水素炎イオン化検出器)を通じて細部成分を定性、定量分析した。
【0114】
具体的に、クロロホルムとメタノールを1:2体積比で混合した溶媒に濃度別にスチレン(1/4000mg/mL~1mg/mL)、ジビニルベンゼン(1/10000mg/mL~1mg/mL)、Isopar M(1/400mg/mL~10mg/mL)の標準試料を製造した。GC/FID機器に1uLの標準試料を注入して検量線を作成した。表1の試料から抽出した未反応残留化合物溶液を1uL注入し検量線を用いて含量を計算した。GC/FID測定は内径0.53mm、長さ30m、フィルム厚さ5μmのRtx(スチレン、Isopar M)またはwax(ジビニルベンゼン)上のカラムを使用し、初期オーブン温度50℃で開始して10℃/min速度で250℃まで昇温した。移動相気体は15mL/minのヘリウム気体を使用した。
【0115】
この時、オイルまたはこれに由来した成分が検出される場合を“O”、オイルまたはこれに由来した成分が検出されない場合を“X”で表示した。
【0116】
【表2】
【0117】
上記表2に示されているように、実施例の細胞培養用マイクロキャリアは粒子内部が3.9%以上7.5%以下の空隙率を示して多孔性構造を有し0.95g/cm以上1g/cm未満の低密度を満足しながらも、損傷および破壊なく完全な球形粒子比率が99%であって非常に高くて大多数の粒子が均質に球形形状を有することができた。また、実施例の細胞培養用マイクロキャリアは細胞培養条件でキャリア培養が効果的に行われ、培養後マイクロキャリアの回収効率も90%であって高いということを確認することができた。反面、比較例1の細胞培養用マイクロキャリアは粒子内部空隙率が0%であって気孔のない非多孔性構造であって、1g/cm超で密度が増加して細胞培養および脱着後、遠心分離を通じて細胞とマイクロキャリアを分離することができない問題があった。また、比較例2、3の細胞培養用マイクロキャリアは粒子の密度が0.95g/cm未満であって過度に低く、攪拌条件下で粒子が培養液表面で浮遊されて細胞付着性が減少して細胞培養が不可能であるという問題があった。また、比較例2、3の細胞培養用マイクロキャリアは損傷および破壊なく完全な球形粒子比率が90%と測定され、粒子表面が均一でなく凹んだ形状の粒子が実施例に比べて多量発生しながら細胞培養が不可能な程度に細胞培養効率が低まる問題があった。
【0118】
一方、参考例1~5の細胞培養用マイクロキャリアは損傷および破壊なく完全な球形粒子比率が0%以上70%以下であって実施例に比べて低く、粒子の形状が相対的に実施例に比べて不均一になるという限界があった。また、参考例6~8の細胞培養用マイクロキャリアは、細胞培養時、見かけ密度が1g/cm超であって高く、培養中低速攪拌過程で沈殿が発生するか、非球形粒子によって培養液の懸濁度が高まり、以後物理的衝撃によって細胞培養が不可能な程度に細胞培養効率が低まる問題があった。
図1
図2
図3
図4
図5