(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】被加工物の加工方法
(51)【国際特許分類】
B24B 41/06 20120101AFI20240826BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
B24B41/06 Z
B24B27/06 J
(21)【出願番号】P 2020132224
(22)【出願日】2020-08-04
【審査請求日】2023-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】村田 洋介
(72)【発明者】
【氏名】大野 勝利
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-303338(JP,A)
【文献】特開2019-212817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 27/06
H01L 21/78
B24B 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂でなる被加工物を加工する被加工物の加工方法であって、
融点が該フッ素樹脂の融点よりも低い熱圧着シートを該被加工物に接触させ、該熱圧着シートを加熱することにより、該被加工物に該熱圧着シートを貼着する貼着ステップと、
該被加工物の該熱圧着シートが貼着された面側を切削装置のチャックテーブルによって保持し、該切削装置に装着された切削ブレードによって該被加工物を切削する加工ステップと、を含むことを特徴とする被加工物の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素樹脂でなる被加工物の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素樹脂は、耐熱性、耐薬品性、機械的強度、絶縁性等において優れた特性を示し、半導体、車両、産業機器、建築、化学工業、家電製品等の様々な分野において幅広く活用されている。例えば半導体分野においては、半導体製造装置の配管、バルブ、ポンプ、シール材等にフッ素樹脂が用いられている。
【0003】
近年では、フッ素樹脂の優れた特性を活かして、各種の電子機器に組み込まれるデバイスにフッ素樹脂を利用する試みもなされている。例えば特許文献1には、LED(Light Emitting Diode)が実装される基板の表面をフッ素樹脂で覆う手法が開示されている。また、特許文献2には、LEDから発せられた光を反射させる反射面をフッ素樹脂で被覆する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-235016号公報
【文献】特開2005-19488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フッ素樹脂を製品のパーツとして使用したりデバイスに組み込んだりする場合には、フッ素樹脂でなる部材を所望の形状に加工する必要がある。例えば、フッ素樹脂を板状に成形した後、板状のフッ素樹脂を切削装置によって切削することにより、所定の形状及び寸法を有するフッ素樹脂製のチップ(個片)が得られる。切削装置は、被加工物を保持するチャックテーブルと、被加工物を切削する切削ユニットとを備える。そして、切削ユニットには、チャックテーブルによって保持された被加工物に切り込んで被加工物を切削する環状の切削ブレードが装着される。
【0006】
一般的に、切削装置によって切削される被加工物にはダイシングテープと称されるテープが貼着され、被加工物はテープを介してチャックテーブルによって保持される。そして、切削ブレードを回転させ、テープに至る切り込み深さで被加工物に切り込ませると、被加工物が切断されて複数のチップに分割される。
【0007】
しかしながら、板状のフッ素樹脂にはテープの粘着剤が接着しにくく、テープが極めて貼着されにくい。すなわち、板状のフッ素樹脂をテープに強固に固定することは難しい。そのため、板状のフッ素樹脂を切削装置のチャックテーブルによって適切に保持できず、切削装置による板状のフッ素樹脂の加工は困難であるという問題がある。また、仮にチャックテーブルによる板状のフッ素樹脂の保持が不十分な状態で切削加工を強行すると、回転する切削ブレードが板状のフッ素樹脂に接触した際に、板状のフッ素樹脂の位置ずれや飛散が生じる。そのため、板状のフッ素樹脂を適切に加工できず、加工不良が発生しやすい。
【0008】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、フッ素樹脂でなる被加工物を切削装置によって適切に加工することを可能とする被加工物の加工方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、フッ素樹脂でなる被加工物を加工する被加工物の加工方法であって、融点が該フッ素樹脂の融点よりも低い熱圧着シートを該被加工物に接触させ、該熱圧着シートを加熱することにより、該被加工物に該熱圧着シートを貼着する貼着ステップと、該被加工物の該熱圧着シートが貼着された面側を切削装置のチャックテーブルによって保持し、該切削装置に装着された切削ブレードによって該被加工物を切削する加工ステップと、を含む被加工物の加工方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様に係る被加工物の加工方法では、フッ素樹脂でなる被加工物に熱圧着シートを熱圧着によって貼着した後、熱圧着シートを介して被加工物をチャックテーブルによって保持し、切削ブレードによって被加工物を切削する。これにより、従来のダイシングテープの貼着が困難であるフッ素樹脂製の被加工物を、切削装置によって適切に保持して切削できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図2(A)は被加工物及び熱圧着シートを示す斜視図であり、
図2(B)は熱圧着シートが配置された被加工物を示す斜視図である。
【
図3】加熱される熱圧着シートを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本実施形態を説明する。まず、本実施形態に係る被加工物の加工方法によって加工可能な被加工物の構成例について説明する。
図1は、被加工物11を示す斜視図である。
【0013】
被加工物11は、フッ素樹脂でなる板状の部材である。例えば、被加工物11は直方体状に形成され、互いに概ね平行な表面(第1面)11a及び裏面(第2面)11bを備える。ただし、被加工物11の形状及び寸法に制限はない。例えば、被加工物11は円盤状であってもよい。また、被加工物11は、折り曲げや巻き取りが可能なシートであってもよい。
【0014】
被加工物11は、フッ素樹脂を板状に成形することによって形成される。例えば被加工物11は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)等でなる。ただし、フッ素樹脂の種類に制限はない。
【0015】
被加工物11を後述の切削装置10(
図4参照)によって切削することにより、所望の形状及び寸法のチップ(個片)が得られる。例えば、互いに交差するように格子状に配列された複数の分割予定ライン(ストリート)に沿って被加工物11を分割すると、被加工物11が個片化され、複数の直方体状のチップが製造される。
【0016】
切削装置10で被加工物11を切削する際には、まず、被加工物11に熱圧着シートを貼着する(貼着ステップ)。
図2(A)は、被加工物11及び熱圧着シート13を示す斜視図である。以下では一例として、被加工物11の裏面11b側に熱圧着シート13が貼着される場合について説明する。
【0017】
熱圧着シート13は、熱圧着により被加工物11に貼着可能なシートである。具体的には、熱圧着シート13は、被加工物11を構成するフッ素樹脂の融点よりも融点が低い樹脂でなり、粘着剤(粘着層、糊層)を含まない柔軟なシートである。例えば熱圧着シート13として、ポリオレフィン(PO)系シート、又は、ポリエステル(PE)系シートが用いられる。
【0018】
ポリオレフィン系シートは、アルケンをモノマーとして合成されるポリマーでなるシートである。ポリオレフィン系シートの例としては、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシート、ポリスチレンシート等が挙げられる。また、プロピレンとエチレンとのコポリマーでなるシートや、オレフィン系エラストマーでなるシートを用いることもできる。
【0019】
ポリエステル系シートは、ジカルボン酸(2つのカルボキシル基を有する化合物)と、ジオール(2つのヒドロキシル基を有する化合物)と、をモノマーとして合成されるポリマーでなるシートである。ポリエステル系シートの例としては、ポリエチレンテレフタレートシート、ポリエチレンナフタレートシート等が挙げられる。また、ポリトリメチレンテレフタレートシート、ポリブチレンテレフタレートシート、又はポリブチレンナフタレートを用いることもできる。
【0020】
熱圧着シート13は、被加工物11の熱圧着シート13が貼着される面(裏面11b)の全体を覆うことが可能な大きさ及び形状に形成される。例えば熱圧着シート13は、被加工物11の裏面11bの対角線よりも直径が大きい円形に形成される。そして、熱圧着シート13は、被加工物11の裏面11bの全体を覆うように配置され、被加工物11の裏面11b側に接触する。
図2(B)は、熱圧着シート13が配置された被加工物11を示す斜視図である。
【0021】
次に、熱圧着シート13を加熱する。
図3は、加熱される熱圧着シート13を示す斜視図である。例えば被加工物11は、裏面11b側(熱圧着シート13側)が上方に露出するように支持される。そして、被加工物11及び熱圧着シート13の上方に、熱圧着シート13を加熱する熱源2が配置される。
【0022】
熱源2としては、例えばヒートガンが用いられる。ヒートガンは、電熱線等の熱源(発熱機構)と、ファン等の送風機構とを備え、空気を加熱して噴射する。ヒートガンから熱圧着シート13に温風を吹き付けることにより、熱圧着シート13が加熱される。
【0023】
ただし、熱圧着シート13の加熱方法に制限はない。例えば、熱源2として赤外線ランプを用いてもよい。この場合には、赤外線ランプから熱圧着シート13に赤外線を照射することにより、熱圧着シート13が加熱される。
【0024】
また、熱圧着シート13の加熱は、所定の温度に加熱された部材で熱圧着シート13を被加工物11側に押圧することによって実施してもよい。例えば、内部に熱源を備えるローラー(ヒートローラー)が用いられる。この場合には、所定の温度に加熱されたローラーを熱圧着シート13に接触させ、熱圧着シート13上で転動させる。これにより、熱圧着シート13が加熱されながら被加工物11に押し付けられる。
【0025】
また、内部に熱源を備える板状の押圧部材(プレート)を用いてもよい。この場合には、所定の温度に加熱された押圧部材を熱圧着シート13に押し付ける。これにより、熱圧着シート13が加熱されながら被加工物11に押し付けられる。
【0026】
熱圧着シート13は、熱圧着シート13の温度が熱圧着シート13の軟化点以上、且つ、熱圧着シート13の融点以下となるように加熱される。これにより、熱圧着シート13が被加工物11の裏面11b側に熱圧着され、被加工物11に貼着される。
【0027】
ただし、熱圧着シート13は明確な軟化点を有しないことがある。この場合、例えば熱圧着シート13は、熱圧着シート13の温度が熱圧着シート13の融点よりも所定の温度(例えば20℃)低い温度以上、且つ、熱圧着シート13の融点以下となるように加熱される。
【0028】
例えば、熱圧着シート13がポリエチレンシートである場合、加熱温度は120℃以上140℃以下に設定できる。また、熱圧着シート13がポリプロピレンシートである場合、加熱温度は160℃以上180℃以下に設定できる。また、熱圧着シート13がポリスチレンシートである場合、加熱温度は220℃以上240℃以下に設定できる。また、熱圧着シート13がポリエチレンテレフタレートシートである場合、加熱温度は250℃以上270℃以下に設定できる。また、熱圧着シート13がポリエチレンナフタレートシートである場合、加熱温度は160℃以上180℃以下に設定できる。
【0029】
ここで、フッ素樹脂でなる被加工物11には、樹脂でなるシート状の基材上に粘着剤(粘着層、糊層)が設けられた従来のテープ(ダイシングテープ)が極めて貼着されにくい。これは、フッ素樹脂はぬれ性(接触角)が極めて高く、テープの粘着剤がフッ素樹脂に接着しにくいことに起因すると推察される。
【0030】
一方、上記のように、フッ素樹脂でなる被加工物11に熱圧着シート13を熱圧着させると、被加工物11の裏面11b側が加熱によって軟化した熱圧着シート13に埋まった状態となり、熱圧着シート13が被加工物11の裏面11b側の形状に沿って変形する。その結果、熱圧着シート13が被加工物11の裏面11b側に密着し、被加工物11に強固に固着する。これにより、従来のダイシングテープを貼着することが困難であるフッ素樹脂でなる被加工物11に対して、ダイシングテープに代わる熱圧着シート13を確実に貼着することができる。
【0031】
次に、熱圧着シート13が貼着された被加工物11を加工する(加工ステップ)。加工ステップでは、切削ブレードによって被加工物11を加工する切削装置によって被加工物11を切削する。
図4は、切削装置10を示す斜視図である。なお、
図4において、X軸方向(加工送り方向、第1水平方向)とY軸方向(割り出し送り方向、第2水平方向)とは、互いに垂直な方向である。また、Z軸方向(鉛直方向、上下方向、高さ方向)は、X軸方向及びY軸方向と垂直な方向である。
【0032】
切削装置10は、被加工物11を保持するチャックテーブル(保持テーブル)12を備える。チャックテーブル12の上面は、X軸方向及びY軸方向と概ね平行な平坦面であり、被加工物11を保持する円形の保持面を構成している。保持面は、チャックテーブル12の内部に形成された流路(不図示)、バルブ(不図示)等を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。
【0033】
チャックテーブル12には、ボールねじ式の移動機構等によって構成される移動ユニット(不図示)と、モータ等によって構成される回転駆動源(不図示)とが接続されている。移動ユニットは、チャックテーブル12をX軸方向に沿って移動させる。また、回転駆動源は、チャックテーブル12をZ軸方向に概ね平行な回転軸の周りで回転させる。
【0034】
チャックテーブル12の上方には、被加工物11を切削する切削ユニット14が配置されている。切削ユニット14は、円筒状のハウジング16を備える。また、ハウジング16には、Y軸方向と概ね平行に配置された円筒状のスピンドル(不図示)が収容されている。スピンドルの先端部(一端部)は、ハウジング16の外部に露出している。
【0035】
スピンドルの先端部には、環状の切削ブレード18が装着される。また、スピンドルの基端部(他端部)には、モータ等の回転駆動源が接続されている。切削ブレード18は、回転駆動源からスピンドルを介して伝達される動力によって、Y軸方向と概ね平行な回転軸の周りを回転する。
【0036】
切削ブレード18としては、例えばハブタイプの切削ブレード(ハブブレード)が用いられる。ハブブレードは、金属等でなる環状の基台と、基台の外周縁に沿って形成された環状の切刃とが一体となって構成される。また、ハブタイプの切削ブレードの切刃は、ダイヤモンド等でなる砥粒がニッケルめっき層等の結合材によって固定された電鋳砥石によって構成される。
【0037】
一方、切削ブレード18として、ワッシャータイプの切削ブレード(ワッシャーブレード)を用いることもできる。ワッシャーブレードは、砥粒が金属、セラミックス、樹脂等でなる結合材によって固定された環状の切刃によって構成される。
【0038】
スピンドルの先端部に装着された切削ブレード18は、ハウジング16に固定されたブレードカバー20に覆われる。ブレードカバー20は、純水等の液体(切削液)が供給されるチューブ(不図示)に接続される一対の接続部22と、接続部22に接続され、切削ブレード18の下端部の表裏面側にそれぞれ配置される一対のノズル24とを備える。一対のノズル24にはそれぞれ、切削ブレード18に向かって開口する供給口(不図示)が形成されている。
【0039】
チューブから接続部22に切削液が供給されると、一対のノズル24の供給口から切削ブレード18の表面及び裏面に向かって切削液が供給される。この切削液によって、チャックテーブル12によって保持された被加工物11と切削ブレード18とが冷却されるとともに、切削加工によって生じた屑(切削屑)が洗い流される。
【0040】
切削ユニット14には、ボールねじ式の移動機構等によって構成される移動ユニット(不図示)が接続されている。この移動ユニットは、切削ユニット14をY軸方向に沿って移動させるとともに、Z軸方向に沿って昇降させる。これにより、切削ブレード18のY軸方向及びZ軸方向における位置が制御される。
【0041】
切削装置10を用いて被加工物11を加工する際は、まず、切削装置10のチャックテーブル12によって被加工物11を保持する。具体的には、被加工物11は、表面11a側が上方に露出し、裏面11b側(熱圧着シート13側)がチャックテーブル12の保持面に対向するように、チャックテーブル12上に配置される。この状態で、チャックテーブル12の保持面に吸引源の負圧を作用させると、被加工物11の裏面11b側に貼着された熱圧着シート13がチャックテーブル12によって吸引される。これにより、被加工物11の熱圧着シート13が貼着された面側(裏面11b側)が、熱圧着シート13を介してチャックテーブル12によって吸引保持される。
【0042】
次に、切削ブレード18で被加工物11を切削する。具体的には、まず、チャックテーブル12を回転させて、被加工物11の一辺(一側面)の長さ方向をX軸方向に合わせる。また、切削ブレード18が被加工物11の側方に配置されるように、チャックテーブル12及び切削ユニット14の位置を調整する。さらに、切削ブレード18の下端が、熱圧着シート13の上面(被加工物11の裏面11b)より下方で、且つ、熱圧着シート13の下面(チャックテーブル12の保持面)よりも上方に配置されるように、切削ユニット14の高さを調整する。
【0043】
そして、切削ブレード18を回転させながら、チャックテーブル12をX軸方向に沿って移動させ、被加工物11と切削ブレード18とを相対的に移動させる(加工送り)。これにより、切削ブレード18は、熱圧着シート13に至る切り込み深さで被加工物11に切り込み、被加工物11を切削する。その結果、被加工物11及び熱圧着シート13には線状のカーフ(切り口)15が形成され、被加工物11がカーフ15に沿って分割される。
【0044】
次に、切削ユニット14をY軸方向に所定量移動させ(割り出し送り)、同様に被加工物11を切削する。この作業を繰り返すと、被加工物11及び熱圧着シート13には、互いに概ね平行な複数のカーフ15が、第1の方向に沿って形成される(
図4参照)。
【0045】
次に、チャックテーブル12を90°回転させ、被加工物11の他の一辺(他の一側面)の長さ方向をX軸方向に合わせる。そして、上記の被加工物11を切削する手順を繰り返す。その結果、被加工物11及び熱圧着シート13には、互いに概ね平行な複数のカーフ15が、第1の方向と垂直な第2の方向に沿って形成される。
【0046】
上記のように被加工物11を切削すると、被加工物11に複数のカーフ15が格子状に形成され、被加工物11が複数の直方体状のチップ(個片)に分割される。このチップは、例えば製品のパーツとして使用される。
【0047】
上記の加工ステップにおいて、被加工物11は、熱圧着シート13に強固に固定された状態に維持されている。そのため、回転する切削ブレード18が被加工物11に接触しても、被加工物11の位置ずれやチップの飛散が生じることはない。これにより、被加工物11に対して適切な切削加工を施すことができる。
【0048】
以上の通り、本実施形態に係る被加工物の加工方法では、フッ素樹脂でなる被加工物11に熱圧着シート13を熱圧着によって貼着した後、熱圧着シート13を介して被加工物11をチャックテーブル12によって保持し、切削ブレード18によって被加工物11を切削する。これにより、従来のダイシングテープの貼着が困難であるフッ素樹脂製の被加工物11を、切削装置10によって適切に保持して切削できる。
【0049】
なお、上記の実施形態においては、被加工物11を格子状に切削する例について説明したが、被加工物11の切削方法に制限はない。例えば、切削ブレード18を被加工物11に切り込ませた状態でチャックテーブル12を回転させることにより、被加工物11を環状に切削することもできる。また、切削ブレード18を熱圧着シート13に至らない深さで被加工物11に切り込ませることにより、被加工物11に溝(凹部)を形成することもできる。被加工物11の切削方法を適宜選択することにより、被加工物11を所望の寸法及び形状に加工できる。
【0050】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0051】
11 被加工物
11a 表面(第1面)
11b 裏面(第2面)
13 熱圧着シート
15 カーフ(切り口)
2 熱源
10 切削装置
12 チャックテーブル(保持テーブル)
14 切削ユニット
16 ハウジング
18 切削ブレード
20 ブレードカバー
22 接続部
24 ノズル