(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】搬送装置、および分析システム
(51)【国際特許分類】
G01N 35/04 20060101AFI20240826BHJP
B65G 54/02 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
G01N35/04 G
B65G54/02
(21)【出願番号】P 2020100071
(22)【出願日】2020-06-09
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】小林 啓之
(72)【発明者】
【氏名】金子 悟
(72)【発明者】
【氏名】玉腰 武司
(72)【発明者】
【氏名】青山 康明
(72)【発明者】
【氏名】星 遼佑
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 洋
(72)【発明者】
【氏名】鬼澤 邦昭
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-153704(JP,A)
【文献】特許第5619195(JP,B2)
【文献】特許第4211133(JP,B2)
【文献】特開2002-078391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/04
B65G 54/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石または磁性体を有する搬送容器を搬送する搬送装置であって、
前記搬送容器を搬送するための推力を発生させる複数のコイルと、
前記複数のコイルの各々に電圧を印加するコイル駆動部と、
前記コイルに電圧パルスを印加した際の電流情報に基づいて前記搬送容器の位置を推定する演算部と、を備え、
前記演算部は、装置の電源起動時に、対象の前記コイルに正方向の電圧パルスおよび負方向の電圧パルスを印加して、各々のコイルに流れる電流情報から前記搬送容器の位置を検出
し、前記電圧パルスの正負を、前記磁石または磁性体の向きによって変更する
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送装置において、
前記演算部で用いる電流情報は、前記正方向の電圧パルスおよび前記負方向の電圧パルスを印加した時にコイルに流れる最大電流と最小電流との差分である電流変化量である
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
請求項2に記載の搬送装置において、
前記演算部は、前記電流変化量の大きさに基づき、前記搬送容器と前記コイルとの位置関係を座標系で出力する
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項4】
請求項1に記載の搬送装置において、
前記電圧パルスは、正方向の電圧パルスを複数回、および負方向の電圧パルスを複数回に分けて印加する
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項5】
請求項
4に記載の搬送装置において、
前記正方向の電圧パルスと前記負方向の電圧パルスとを同じ回数印加する
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項6】
請求項1に記載の搬送装置において、
前記電圧パルスは、前記搬送容器に対する推力が生じない大きさとする
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項7】
請求項1に記載の搬送装置において、
前記正方向の電圧パルスと前記負方向の電圧パルスとを印加する間隔を所定時間空ける
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項
7のいずれか1項に記載の搬送装置を備えたことを特徴とする分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば血液や尿などの生体試料(以下検体と記載)の分析を行う検体分析システムや、その分析に必要な前処理を行う検体前処理装置に好適な搬送装置、および分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
非常に柔軟であり高い搬送性能を与える、研究室試料配送システムおよび対応する動作方法の一例として、特許文献1には、いくつかの容器キャリアであって、各々が少なくとも1つの磁気的活性デバイス、好ましくは少なくとも1つの永久磁石を備え、試料容器を運ぶように適合された容器キャリアと、容器キャリアを運ぶように適合された搬送平面と、搬送平面の下方に静止して配置された幾つかの電磁アクチュエータであって、容器キャリアに磁力を印加することによって搬送平面の上で容器キャリアを移動させるように適合された電磁アクチュエータと、を備える、ことが記載されている。
【0003】
また、移送面上の位置が認識されうる検査室試料分配システムの一例として、特許文献2には、移送面と、複数の試料容器キャリアと、試料容器キャリアを移送面上で動かすように構成された駆動手段と、試料容器キャリアが対応する移送経路に沿って動くように、駆動手段を駆動することによって、試料容器キャリアの移送面上での動きを制御するように構成された制御装置とを備え、光学的に認識可能な複数の幾何学形状が、移送面に置かれ、それぞれの幾何学形状が、移送面上の専用のフィールドを表す、ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-227635号公報
【文献】特開2018-119962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
臨床検査のための検体処理装置では、血液,血漿,血清,尿、その他の体液等の検体(サンプル)に対し、指示された分析項目を検査する。これらの検体処理装置では、複数の機能の装置をつなげ、自動的に各工程を処理することができる。つまり、検査室の業務合理化のために、生化学や免疫など複数の分析分野の分析部を搬送ラインで接続し、1つの装置として運用している。
【0006】
従来の搬送ラインは主にベルト駆動方式がメインであり、搬送途中でなんらかの異常により搬送が停止してしまうと、それより下流側の装置に検体を供給できなくなる。
【0007】
また、医療の高度化および高齢化社会の進展により検体処理内容の多様化と検体数の増加が予想され、多様な検体をより速く運搬することが必要になる。
【0008】
そこで、検体処理装置の処理能力の向上のために必要な、検体の高速搬送や大量同時搬送および複数方向への搬送を実現するべく、電磁搬送方式の検討が行われている。
【0009】
電磁搬送方式の例としては、例えば、特許文献1には、いくつかの容器キャリアであって、各々が少なくとも1つの磁気的活性デバイス、好ましくは少なくとも1つの永久磁石を備え、試料容器を運ぶように適合された容器キャリアと、容器キャリアを運ぶように適合された搬送平面と、搬送平面の下方に静止して配置された幾つかの電磁アクチュエータであって、容器キャリアに磁力を印加することによって搬送平面の上で容器キャリアを移動させるように適合された電磁アクチュエータと、を備える、ことが記載されている。
【0010】
また検体の搬送方法の一例として、特許文献2には、検体に設置された永久磁石位置を検出する位置センサを有しており、位置センサが検知した位置情報に応じて搬送したい方向に対応する電磁アクチュエータを励磁することで検体搬送を行うことが記載されている。
【0011】
上記特許文献1に記載の技術では、検体搬送キャリアに設けられた磁気活性デバイスの位置を検出する容器キャリア検出デバイスが設けられている。
【0012】
また特許文献2においては、ラボラトリ試料分配システムが移送面を備えている。また、移送面の下方に複数の電磁アクチュエータが配置されている。さらに、複数の位置センサが移送面の上に分配される。位置センサはホールセンサとして具体化されている。
【0013】
しかしながら、上記した特許文献1や特許文献2のシステムでは容器キャリア検出デバイスが複数必要となり、高コスト化や検出デバイスの故障による信頼性低下が懸念される。
【0014】
また、何らかの異常が発生して容器キャリアが搬送経路外の電磁アクチュエータが配置されていない場所に逸脱した場合に、容器キャリアの有無を検出する必要があるが、その方法について特許文献1には開示されていない。これに対し、例えば、搬送平面上で電磁アクチュエータが配置されていない位置には、容器キャリアの位置検出用の専用デバイスを配置するなどの方法が考えられるが、専用デバイスの追加が更に必要となり、コスト増加につながる。
【0015】
これらの課題に対し、位置検出デバイスを用いないセンサレスの搬送装置を実現することが考えられるが、検出デバイス無しでどのようにして容器キャリアの位置を高精度に検出するかが課題となる。特に、再起動時や電源ON時など、搬送を開始・再開する際にどの位置に搬送容器が存在しているかを正確に把握しないことには搬送を安定かつ高精度に行うことは困難である。
【0016】
本発明は、位置センサレス化による低コスト化を実現しつつ、起動時における搬送の安定性をより高めた搬送装置、および分析システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、磁石または磁性体を有する搬送容器を搬送する搬送装置であって、前記搬送容器を搬送するための推力を発生させる複数のコイルと、前記複数のコイルの各々に電圧を印加するコイル駆動部と、前記コイルに電圧パルスを印加した際の電流情報に基づいて前記搬送容器の位置を推定する演算部と、を備え、前記演算部は、装置の電源起動時に、対象の前記コイルに正方向の電圧パルスおよび負方向の電圧パルスを印加して、各々のコイルに流れる電流情報から前記搬送容器の位置を検出し、前記電圧パルスの正負を、前記磁石または磁性体の向きによって変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、位置センサレス化による低コスト化を実現しつつ、起動時における搬送の安定性をより高めることができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】実施例の搬送装置の断面構成例の一部を示す模式図。
【
図3】実施例の搬送装置の演算部の機能ブロック図。
【
図4】搬送容器の位置に対する電流変化量特性を示す図。
【
図5】搬送容器の位置に対する電流変化量偏差(搬送容器有無の差)を示す図。
【
図6】実施例の搬送装置の上面図の位置座標説明図。
【
図7】実施例の搬送装置が搬送容器の位置を検出するためにコイルに印加する電圧波形(正パルス)とそれに対応する電流波形とを説明するための図。
【
図8】
図7とは異なるコイルに印加する電圧波形(正パルス)とそれに対応する電流波形とを説明するための図。
【
図9】実施例の搬送装置が搬送容器の位置を検出するためにコイルに印加する電圧波形(負パルス)とそれに対応する電流波形とを説明するための図。
【
図10】
図9とは異なるコイルに印加する電圧波形(負パルス)とそれに対応する電流波形とを説明するための図。
【
図11】実施例の搬送装置における、コイル直上に搬送容器がある場合の磁石磁束の変化の説明図。
【
図12】実施例の搬送装置における、コイル間に搬送容器がある場合の磁石磁束の変化の説明図。
【
図13】実施例の搬送装置における、搬送容器位置を検出する際に考慮すべき搬送容器の残存パターンの説明図。
【
図14】実施例の搬送装置における、搬送容器位置を検出する際に考慮すべき搬送容器の残存パターンの説明図。
【
図15】実施例の搬送装置における、搬送容器位置を検出する際に考慮すべき搬送容器の残存パターンの説明図。
【
図16】実施例の搬送装置における、搬送容器位置を検出する際に考慮すべき搬送容器の残存パターンの説明図。
【
図17】実施例の搬送装置における、搬送容器位置を検出する際に考慮すべき搬送容器の残存パターンの説明図。
【
図18】実施例の搬送装置における、コイルに時間間隔を空けて複数回印加する電圧波形(正パルス)とそれに対応する電流波形とを説明するための図。
【
図19】実施例の搬送装置における、検体位置推定演算部の処理を説明するフローチャート。
【
図20】実施例の分析システムの概略構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の搬送装置、および分析システムの実施例について
図1乃至
図20を用いて説明する。なお、本明細書で用いる図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一、または類似の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0021】
最初に本実施例の搬送装置の概略構成について
図1を用いて説明する。
図1は、2つのコイル25と永久磁石10が相対的に動作する本実施例の搬送装置の概略を模式的に示した図である。
【0022】
図1に示す搬送装置1は、永久磁石10を有する搬送容器20を目的位置へ搬送する装置であり、永久磁石10、円柱状のコア22とコアの外周側にまかれた巻線21とで構成されるコイル25、駆動回路50、電流検出部30、演算部40、電源55を備えている。
【0023】
図2は、
図1に示す搬送装置1の部分的断面構成例を示す模式図である。
図2に示す検体ホルダなどの搬送容器20は、検体を保持する検体容器の保持部と永久磁石10とが一体となるように構成される。搬送容器20は、搬送面15を介して、コイル25と対向して配置される。
【0024】
搬送容器20に設けられる永久磁石10には、例えば、ネオジムやフェライトなどの永久磁石が使用される。なお、本実施例1では、永久磁石10を使用して説明するが、永久磁石10の代わりに、その他の磁石や軟磁性体を使用することができる。また、永久磁石10と軟磁性体とを組み合わせて、使用することができる。
【0025】
通常、搬送装置1は、コイル25の巻線21に電流を流すことにより、コア22に電磁力を発生させ、搬送容器20に配置する永久磁石10が、複数のコイル25間(コイル25とコイル25との間)の上方で、かつ搬送面15上を滑るようにして相対的に移動するように制御し、搬送容器20を所望の位置まで搬送する。
【0026】
搬送装置1では、永久磁石10とコイル25との相対的な位置情報が必要となる。これは、コイル25の巻線21に電流を流すことによりコア22に発生させた電磁力を効率よく永久磁石10に作用させるためであり、また、永久磁石10を目的の方向に効率的に移動させるためである。
【0027】
例えば、永久磁石10が、2つのコイル25の一方の上方(直上)にある場合を想定する。永久磁石10の直下にあるコイル25aの巻線21aに電圧を印加しても、永久磁石10には、搬送方向への推力は発生しない。
【0028】
一方、永久磁石10が上方(直上)にない、すなわち永久磁石10の直下にないコイル25bの巻線21bに電圧を印加すると、永久磁石10をそのコイル25bに引き寄せる力が発生し、搬送方向への推力が発生する。
【0029】
つまり、所望のコイル25の巻線21に電圧を印加することによって、永久磁石10に効率よく搬送方向への力を発生させることができる。そして、電圧を印加するコイル25の巻線21を適切に選択することによって、搬送方向への力の向き(方向)を制御することができる。
【0030】
本発明では、装置再起動時に搬送容器20を動かさずに搬送容器20位置を検出することが望まれることから、永久磁石10がコイル25の直上に無い場合でも動かない程度の電流を印加することが望まれる。
【0031】
続いて位置センサを用いることなく搬送容器20位置を推定する方法について説明する。
図1の手前側のコイル25の上に永久磁石10があった場合、永久磁石10が作る磁束がコイル25に作用する。ここで、永久磁石10が近い側のコイル25と遠い側のコイル25とでは、作用する磁束の大きさが異なる。つまり、永久磁石10とコイル25の相対位置によってコイル25に作用する磁束の大きさが変わることになる。
【0032】
コア22は磁性体で構成されており、コア22を通る磁束は、磁束が大きくなると通りにくくなる、との性質がある。ここで、巻線21に電圧を印加して電流を流すと、その電流によって生じた磁束がコア22に発生する。したがって、コア22には、永久磁石10による磁束と巻線21に流した電流によって生じる磁束とが発生する。
【0033】
一般的に、巻線21に電流を流すとその周りに磁場が発生し、生じる磁束は流した電流値に比例する。この比例定数はインダクタンスとよばれる。しかし、コア22などの磁性体を有した回路では、コア22の飽和特性によりインダクタンスが変化する。
【0034】
コア22の飽和が発生すると、コア22に生じる磁束の大きさによってインダクタンスが変わる。つまり、永久磁石10の磁束の大きさによって巻線21のインダクタンスが変化する。これは、永久磁石10の位置によって巻線21のインダクタンスが変化することを意味する。
【0035】
巻線21に生じる電圧Vは、以下に示す
V=-dφ/dt (1)
で表される。ここで、φは磁束、tは時間である。電圧Vは単位時間当たりの磁束の変化量で表される。
【0036】
また、電流I、インダクタンスLとすると、以下に示す
dI/dt=(1/L)×(dφ/dt) (2)
との関係が成立する。これら式(1)および式(2)から
dI/dt=-V/L (3)
との関係が成立する。
【0037】
つまり、一定の電圧を巻線21に印加した場合、式(3)に示すようにインダクタンスLの大きさによって供給される電流Iの時間微分が変化する。これは、電圧を印加した場合に供給される電流の立ち上がり方が異なること意味する。
【0038】
従って、巻線21に電圧を印加した場合、巻線21に流れる電流とその流れ方を検出することで、インダクタンスLを演算で求めることができる。つまり、永久磁石10の位置によって変化する巻線21のインダクタンスLを検出すれば、そのインダクタンスに影響を与える永久磁石10の位置が求められることになる。
【0039】
そのために、コイル25のうち巻線21に駆動回路50を接続するとともに、巻線21に流れる電流値を検出する電流検出部30を設けて、演算部40においてコイル25a,25bに電圧パルス80,81を印加した際の電流情報に基づいて搬送容器20の位置を推定する。
【0040】
本実施例では、駆動回路50により巻線21に電圧を印加し、その電圧によって生じる電流値を電流検出部30で検出する。電流を検出する電流検出部30は、直列抵抗や、カレントトランスによるもの、ホール電流センサを用いたものなどが考えられるが、これらに限定するものではない。
【0041】
ここで、本発明では、液漏れを防止するために、位置検出のための電圧パルス印加により搬送容器20に対する推力が生じない大きさに制限することが望まれる。
【0042】
駆動回路50は電源55に接続されており、電源55から電流を受け取り、コイル25の巻線21に電流を供給することで複数のコイル25a,25bの各々に電圧を印加する。
【0043】
演算部40は、電流検出部30によって検出された電流値を基に、コイル25と永久磁石10との相対位置関係を演算して、搬送装置1内における永久磁石10の位置を推定する。また、演算部40は、この演算した永久磁石10の位置情報を用いて、駆動回路50から永久磁石10の駆動に必要な電流を供給するタイミングを決定し、適切なコイル25に電流を供給させる。
【0044】
本発明では、演算部40は、装置の電源起動時に、対象のコイル25a,25bに少なくとも1パルス分の正方向の電圧パルス80(
図7など参照)および少なくとも1パルス分の負方向の電圧パルス81(
図9等参照)を印加して、各々のコイル25a,25bに流れる電流情報から搬送容器20の位置を検出する。その詳細は後述する。
【0045】
なお、装置の電源起動時とは、分析システムを構成する搬送装置であれば、分析開始のための起動時や、不慮の停止からの再起動時等の各種の電源を起動した後である。
【0046】
このときの搬送容器20位置検出制御の一例を
図3のブロック線図に表す。
図3に示すように、演算部40のうち通電コイル決定部63で決定した順番に基づいて、デューティー設定部60で印加する電圧パルスの大きさやデューティ比を演算し、駆動回路50に出力する。また、通電コイル決定部63は、先んじて電圧パルス印加予定の駆動回路50に対して起動指令信号を出力する。
【0047】
ここで、位置検知時および通常搬送時における各コイル25への通電順序の情報が通電コイル決定部63に予め記憶されている。位置検出時の通電順序は、すべてのコイルに一斉に通電する形態や、搬送装置1の端に位置するコイル25から順に通電する形態等、特に限定されない。通常搬送時の通電順序は、例えば後述する
図20の制御用コンピュータ101からの搬送先の指示に基づいて決定された搬送路を実現する形態が考えられる。
【0048】
また、コイルに電圧パルスを出力した時の電流値を電流検出部30で検出して、電流変化量演算部61でコイルの電流変化量(dI/dt)を演算し、その値に応じて検体位置推定演算部62で搬送容器20の位置を推定する。推定結果を例えば搬送装置1の状態を管理している外部サーバ65等に送信する。なお、ここで述べた制御ブロックはマイクロコンピュータ等の演算装置で実現することができる。
【0049】
図4は、選択された最寄りのコイル25からの距離を横軸、搬送容器20が有る時と無い時の電流変化量を縦軸にしたグラフであり、
図5は横軸は
図4と同じコイル25からの距離、縦軸に搬送容器20有無の差異を取った特性である。このように、
図5の特性を用いることで、電流変化量に対応する、選択したコイル25からの距離を知ることができる。そこで、演算部40で用いる電流情報は、正方向の電圧パルス80および負方向の電圧パルス81を印加した時にコイル25a,25bに流れる最大電流と最小電流との差分である電流変化量とすることが望ましい。
【0050】
続いて、
図6は搬送装置の搬送面15を上面から見た時の全体図を示している。電流を印加して、電流変化量から搬送容器20位置を検出した後、外部サーバ65等に位置情報を通知する手段として一例として位置のXY座標を送信する。座標軸の設定は任意であるが、今回は左下のコイルを(0,0)とした。
【0051】
搬送面15の直下に配置されたコイル25に関して、1つのコイル25を励磁すると、そのコイル25の上下左右に隣接するコイル25上の搬送容器20が引き寄せされる。すなわち、複数載置された搬送容器20同士が衝突しやすくなることをより確実に防ぐために、コイル25を密に敷き詰めずに、
図6に示すように搬送経路は1列飛びおよび1行飛びの格子状に配置する方が望ましい。これにより、搬送経路外の領域ではコイル25を省略することができ、部品コストを削減したり、軽量化したりすることができる、との追加の効果も得られる。
【0052】
コイル25間の距離(コイル25の中心間の距離)をdとすると、搬送面15上での搬送容器20とコイル25との距離は、最大でdとなる(搬送容器20が搬送経路から外れてコア22が無い箇所に進入してしまったときの最大距離)。一方、搬送経路上では、搬送容器20とコイル25との距離は、最大でd/2となる。
【0053】
搬送装置1における、搬送容器20の位置を検出するためにコイルに印加する電圧波形と対応する電流波形について説明する。
図7乃至
図10は、搬送装置1が搬送容器20の位置を検出するためにコイルに印加する電圧波形とそれに対応する電流波形とを説明するための図である。
【0054】
電圧パルス80の大きさ(V)やパルス幅(T)は、コイル25に、どの程度の電圧を印加するかによって決定される。そして、搬送容器20の永久磁石10がコイル25に接近すると、コイル25の磁気飽和によって、
図7に示す電流波形70aから
図8に示す電流波形70bに変化する。
【0055】
これは負方向の電圧パルス81を印加する場合も同様であり、搬送容器20の永久磁石10がコイル25に接近すると、コイル25の磁気飽和によって、
図9に示す電流波形70cから
図10に示す電流波形70dに変化する。
【0056】
正パルスを印加した場合には、
図7に示すように、コイル25が搬送容器20の永久磁石10による影響を受けない場合は、電流変化量はI1となる。
【0057】
一方、
図8に示すように、例えば、コイル25の真上や近傍に永久磁石10がある場合などの、コイル25が搬送容器20の永久磁石10による影響を受ける場合は、電流変化量はI1より大きいI2となる。
【0058】
また、負パルスを印加した場合には、
図9に示すように、コイル25が搬送容器20の永久磁石10による影響を受けない場合は、電流変化量はI3となる。
【0059】
一方、
図10に示すように、例えば、コイル25の真上や近傍に永久磁石10がある場合などの、コイル25が搬送容器20の永久磁石10による影響を受ける場合は、電流変化量はI3より大きさの大きいI4となる。ただし、I3とI4はそれぞれ負の値である。
【0060】
続いて、正負の電圧パルスを用いることで搬送容器20位置の検出性能が高まることを
図11および
図12を用いて説明する。
図11および
図12は、搬送容器20と磁石との位置関係の違いによる磁石磁束の変化を説明した図である。
【0061】
図11に示しようにコイル25の直上に永久磁石10がある場合、磁石が作る磁束はコイル25aの上部から入って下部に抜けていく。上述した通り、本発明では、磁束を大きくすることで磁気飽和が発生してコイル25の電流変化量が変化することで搬送容器20の位置を検出する。このため、磁気飽和を増加させる方向、すなわち正の電圧パルスを印加して正電流を流すことで搬送容器20の位置検出精度を向上させる。
【0062】
次に、
図12に示すように搬送容器20位置がコイル25から離れた位置にあると、磁石が作る磁束はコイル25aの下部から入って上部に抜けていく。また、コイル25b側にも同様の磁束が発生する。このように、永久磁石10とコイル25が所定の距離だけ離れると、永久磁石10が作る磁束の向きが逆転する。このため、磁気飽和を造作させるためには、負の電圧パルスを印加して負電流を流して搬送容器20位置検出精度を向上させる必要がある。
【0063】
図11および
図12では、永久磁石10の上面側がS極、下面側がN極のケースを示しているが、SNの向きは逆転した場合でも考え方は同じである。ただし、SNの向きを逆転させる場合には、コイル25の直上で負の電圧パルスを、コイル25とコイル25間に搬送容器20がある時には正パルスを印加することが望ましい。すなわち、永久磁石10の向きとコイル25に印加する電圧パルスをセットで制御することで磁気飽和しやすくして、検出精度の更なる向上を図ることが望ましい。
【0064】
装置停止時に搬送容器20が残存しうるパターンを
図13乃至
図17に示す。簡単のために座標軸を(0,0)近辺に搬送容器20があると仮定した時の、各搬送容器20残存パターンに対する位置検出方法を説明する。具体的な搬送容器20位置検出方法の詳細の手順は後述する。
【0065】
図13はコイル25の1つのコイル25直上に搬送容器20が存在する場合で、この場合は座標(1,2)のコイル25を励磁した時の電流変化量で位置を検出する。
【0066】
図14はコイル25の2つのコイル25の間に搬送容器20が存在する場合で、この場合は座標(1,2)、(2,2)の2つのコイル25を励磁した時のそれぞれの電流変化量で位置を検出する。
【0067】
図15はコイル25の3つのコイル25から等距離に搬送容器20が存在する場合で、この場合は座標(0,0)、(0,1)、(1,0)の3つのコイル25を励磁した時のそれぞれの電流変化量で位置を検出する。
【0068】
図16は
図14に近いが、片方にコイル25が無い方向に搬送容器20が存在する場合で、この場合は座標(2,1)のコイル25を励磁した時の電流変化量で位置を検出する。このケースでは、
図14に示したケースと違い、搬送容器20近傍がコア22の無い箇所になるため、搬送容器20近傍で励磁可能なコイル25は1個しかなく、座標(2,1)のコイル25から見て
図16中左方向に搬送容器20が存在しているか右方向に搬送容器20が存在しているかを判別する必要がある。そこで、追加処理として、座標(2,1)コイルから見て4隅の座標(1,0)、(3,0)、(1,2)、(3,2)の4個のコイル25を励磁した時の電流変化量で位置を検出する。
図16では、座標(1,0)、(3,0)のコイル25を励磁した時の電流変化量から位置を特定する。
【0069】
図17はコイル25が無い位置に搬送容器20が存在する場合で、搬送容器20に近接する座標(0,1)、(1,0)、(1,2)、(2,1)の4個のコイル25を励磁した時のそれぞれの電流変化量から位置を検出する。
【0070】
そこで、本発明では、
図7乃至
図10で示した電圧パルス80,81を搬送面15上のすべてのコイル25、
図6であれば、座標(0,0)から座標(m,n)までの全コイルに順次印加して、それぞれの電流変化量から搬送容器20の位置を検出する。
【0071】
実際には、例えば
図13直上からわずかにずれた位置に搬送容器20が残存するケースも考えられるが、その場合には、ずれ具合に応じて上記5パターンのいずれかに分類して、電流変化量の大きさに基づき、搬送容器20とコイル25a,25bとの位置関係を座標系で出力する。
【0072】
正負の電圧パルスを出力する時の出力方法について
図18に示す。実際に電圧パルスを印加した場合、搬送容器20位置が同じでも常に同じ電流変化量を検出するわけではなく、電流変化量70e1,70e2,70e3のようにばらつきが存在する。
【0073】
ここで、本発明では、搬送容器20を動かさないために小さい電圧パルスで搬送容器20位置を検出することが望まれるが、電圧パルスが小さい場合は搬送容器20位置毎の電流変化量の違いが小さくなる。すなわち、位置検出しづらくなるため、上記したばらつきを抑制することで位置検出精度を高く担保することが望ましい、といえる。
【0074】
従って、ばらつきの度合いによっては、
図18に示すように同一のコイル25に対して正方向の電圧パルス80を複数回、および負方向の電圧パルス81を複数回に分けて印加して、平均化処理等を施すことでばらつきを低減する処理が望まれる。
【0075】
複数回印加する際に、正負の電圧パルスを印加する順序に特に限定はなく、正方向の電圧パルス80を連続して印加した後に負方向の電圧パルス81を連続して印加する形態でも、正方向の電圧パルス80と負方向の電圧パルス81を交互に複数回印加する形態でも、正方向の電圧パルス80を連続して印加した後に負方向の電圧パルス81を連続して印加し、さらにその後に正方向や負方向の電圧パルス80,81を印加する形態でもよい。
【0076】
また、印加する回数も少なくとも2回以上が望ましいが特に限定はない。但し、バラツキ抑制と位置検知の短時間化とのバランスを鑑みると、正方向の電圧パルス80と負方向の電圧パルス81とを同じ回数印加することが望ましい。
【0077】
更に、印加する電圧パルス80,81の間隔についても特に限定はないが、1パルス印加後、所定時間T1経過後に次のパルスを印加することが望ましい。
【0078】
次に、本実施例に係る起動時の搬送容器20の位置検出の流れについて
図19を参照して説明する。
図19は検体位置推定演算部62の搬送容器20位置毎の検出の手順を示すフローチャートである。
【0079】
図19に示すように、処理の開始(ステップS1000)後、搬送面15上の全コイル25に順次位置検出用の正電圧パルスをN回印加する(ステップS1001A)。その後、搬送面15上の全コイル25に順次位置検出用の負電圧パルスをN回印加する(ステップS1001B)。
【0080】
次いで、各コイル25毎に正負両パルスの印加時に検出した電流変化量の平均化処理を行う(ステップS1002)。ここまでが搬送容器20の位置検出を行うための前処理に相当する。
【0081】
次に、正電圧パルスを印加した時の電流変化量が所定の電流変化量|c1|以上であったか否かを判定する(ステップS1003)。
【0082】
電流変化量が|c1|以上であったと判定されたときは処理をステップS1004に進め、励磁コイル直上(
図13)に搬送容器20が存在すると判定(ステップS1004)し、判定処理を終了する(ステップS1014)。
【0083】
これに対して電流変化量が|c1|未満であったと判定されたときは、次いで隣接する2コイルが負電圧パルスを印加した時の電流変化量が両方とも|c2|以上であったか否かを判定する(ステップS1005)。
【0084】
電流変化量が|c2|以上であったと判定されたときは処理をステップS1006に進め、該当する2コイルの間(
図14)に搬送容器20が存在すると判定(ステップS1006)し、判定処理を終了する(ステップS1014)。
【0085】
これに対して電流変化量が|c2|未満であったと判定されたときは、次いで隣接する3コイルに負電圧パルスを印加した時の電流変化量が全て|c3|以上であったか否かを判定する(ステップS1007)。
【0086】
電流変化量が全て|c3|以上であったと判定されたときは処理をステップS1008に進め、該当する3コイルに近接する位置(
図15)に搬送容器20が存在すると判定(ステップS1008)し、判定処理を終了する(ステップS1014)。
【0087】
これに対して電流変化量のうち一つ以上が|c3|未満であったと判定されたときは、次いで正負両電圧パルスを印加した時の電流変化量が|c4|以上、かつ当該コイルの4隅のうちの2コイルに負の電圧パルスを印加した時の電流変化量の総和が|c5|以上であったか否かを判定する(ステップS1009)。
【0088】
ステップS1009における判定条件をすべて満たすと判定されたときは処理をステップS1010に進め、該当コイルからコア22の無い方向に向かってd/2離れた位置(
図16)に搬送容器20が存在すると判定(ステップS1010)し、判定処理を終了する(ステップS1014)。
【0089】
これに対してステップS1009における判定条件をすべて満たすと判定されなかったときは、次いでコア22の無い位置の最近接コイル4コイルのうち、3コイル以上で負の電圧パルスを印加した時の電流変化量が|c6|以上であったか否かを判定する(ステップS1011)。
【0090】
ステップS1011における判定条件をすべて満たすと判定されたときは処理をステップS1012に進め、コア22の無い位置(
図17)に搬送容器20が存在すると判定(ステップS1012)し、判定処理を終了する(ステップS1014)。
【0091】
これに対してステップS1011における判定条件をすべて満たすと判定されなかったときは、搬送容器20が存在しないと判定(ステップS1013)し、判定処理を終了する(ステップS1014)。
【0092】
上述した実施例の搬送装置が好適に適用される本発明の実施例の分析システムについて
図20を用いて説明する。
図20は本実施例の分析システムの概略構成例を示す図である。
【0093】
図20に示す分析システム100は、制御用コンピュータ101と、複数の分析装置102と、分析装置102間で搬送容器20を搬送する複数の搬送装置1と、を備える。
【0094】
分析装置102や搬送装置1の数は、分析対象の検体の種類や分析内容によって変わるものであり、1つ以上であればよい。
【0095】
また、分析システム100は、搬送容器20内の検体に対する前処理や後処理を実行する各種検体前処理・後処理部を設けることができる。検体前処理・後処理部の詳細な構成や数についても特に限定されず、公知の前処理装置の構成を1つ以上採用することができる。
【0096】
制御用コンピュータ101は、搬送容器20を搬送する搬送経路の指定や分析の順序など、システム全体の制御を行う。また、制御用コンピュータ101は、オペレータからの指示入力に応答して、指定された動作を行う。
【0097】
次に、本実施例の効果について説明する。
【0098】
上述した本実施例の分析システム100の搬送装置1では、搬送容器20を搬送するための推力を発生させる複数のコイル25a,25bと、複数のコイル25a,25bの各々に電圧を印加する駆動回路50と、コイル25a,25bに電圧パルス80,81を印加した際の電流情報に基づいて搬送容器20の位置を推定する演算部40と、を備え、演算部40は、装置の電源起動時に、対象のコイル25a,25bに正方向の電圧パルス80および負方向の電圧パルス81を印加して、各々のコイル25a,25bに流れる電流情報から搬送容器20の位置を検出する。
【0099】
このような構成によって、搬送対象の位置を検出するための専用のセンサを用いる必要のない、センサレスの搬送装置を実現することができる。また、停電等の予期せぬ事態で装置が停止した場合や分析業務開始などの起動時に高い精度で搬送対象の位置を特定できるため、滞りなく搬送容器20搬送を開始でき、安定した検体の搬送を実現することができる。
【0100】
また、演算部40で用いる電流情報は、正方向の電圧パルス80および負方向の電圧パルス81を印加した時にコイル25a,25bに流れる最大電流と最小電流との差分である電流変化量であるため、対象のコイル25から搬送容器20までの距離をより正確に推定でき、より安定したセンサレスの搬送装置1とすることができる。
【0101】
更に、電圧パルス80,81の正負を、永久磁石10の向きによって変更することで、搬送容器20に設けられる磁性体の状態に応じた位置推定を高い精度で実施可能となる。
【0102】
また、演算部40は、電流変化量の大きさに基づき、搬送容器20とコイル25a,25bとの位置関係を座標系で出力することにより、搬送容器20の位置推定がより容易に、かつ高い精度で実行することができる。
【0103】
ここで、搬送装置1の使用している際に、停電もしくは何らかの故障によって装置電源がシャットダウンされた後に再起動することが想定される。こうした再起動時には、搬送容器20が搬送面15上に残存しているが、このような状態でもスムーズに搬送を再開することが望ましい。特許文献1,2のように位置センサを有している構成では、位置を検出可能であるため、特段の課題は生じないが、本発明では電流情報に応じて搬送容器20位置を推定するため、位置推定用の電圧パルスをコイル25に印加することが必須となる。
【0104】
また、意図しないタイミングで電源がシャットダウンした場合、直後に搬送容器20がどこにあるか不明なため、コイル25に不用意に電流を印加した時に意図せぬ推力が発生してしまうことによって搬送容器20が意図せぬ方向へ搬送されてしまうこと、また搬送対象が検体などの液体であれば、予期せぬ液漏れが懸念される。
【0105】
したがって、電圧パルス80,81は、搬送容器20に対する推力が生じない大きさとすることで、搬送容器20の位置検出を行う際の電圧パルス80,81によって搬送容器20が意図せぬ方向へ移動してしまうことや液漏れ等の不都合が生じることを抑制でき、より高速でかつ確実な搬送容器20の搬送を実現できる。
【0106】
また、正方向の電圧パルス80と負方向の電圧パルス81とを印加する間隔を所定時間空けることにより、電圧パルス80,81が連続して印加されてしまうことによって意図せずに搬送容器20が動くことをより抑制することができる。
【0107】
また、電圧パルス80,81は、正方向の電圧パルス80を複数回、および負方向の電圧パルス81を複数回に分けて印加することにより、一回の電圧パルス印加時のばらつきを低減でき、より精度の高い位置推定が可能となる。
【0108】
更に、正方向の電圧パルス80と負方向の電圧パルス81とを同じ回数印加することで、位置推定のために必要以上の回数に渡って正方向の電圧パルス80および負方向の電圧パルス81を印加することを抑制しつつ、十分に位置推定の精度を高めることができるバランスのとれた電圧パルスの印加を実現できる。
【0109】
<その他>
なお、本発明は上記の実施例に限られず、種々の変形、応用が可能なものである。上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。
【符号の説明】
【0110】
1…搬送装置
10…永久磁石(磁性体)
15…搬送面
20…搬送容器
21,21a,21b…巻線
22,22a,22b…コア
25,25a,25b…コイル
30…電流検出部
40…演算部
50…駆動回路(コイル駆動部)
55…電源
60…デューティー設定部
61…電流変化量演算部
62…検体位置推定演算部
63…通電コイル決定部
65…外部サーバ
70a,70b,70c,70d…電流波形
70e1,70e2,70e3…電流変化量
80,81…位置検出用電圧パルス
100…分析システム
101…制御用コンピュータ
102…分析装置