(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】3,7-ジメチルアルカン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 1/32 20060101AFI20240826BHJP
C07C 9/22 20060101ALI20240826BHJP
C07C 17/263 20060101ALI20240826BHJP
C07C 19/01 20060101ALI20240826BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240826BHJP
【FI】
C07C1/32
C07C9/22
C07C17/263
C07C19/01
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2021191182
(22)【出願日】2021-11-25
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【氏名又は名称】加藤 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【氏名又は名称】河村 英文
(72)【発明者】
【氏名】三宅 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 武
(72)【発明者】
【氏名】金生 剛
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-84447(JP,A)
【文献】特開昭63-255238(JP,A)
【文献】特開2005-272407(JP,A)
【文献】特開平8-34752(JP,A)
【文献】米国特許第4853217(US,A)
【文献】特開昭63-135339(JP,A)
【文献】Journal of Chemical Ecology,2020年08月08日,Vol.46,p.820-829
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07B 31/00- 61/00
C07B 63/00- 63/04
C07C 1/00-409/44
C07F 1/00- 5/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】
(式中、M
1はLi、MgZ
1、CuZ
1又はCuLiZ
1を表し、ここで、Z
1はハロゲン原子又は2,6-ジメチルオクチル基を表す。)
で表される2,6-ジメチルオクチル求核試薬と、下記一般式(2):
【化2】
(式中、X
1はハロゲン原子又はp-トルエンスルホネート基を表し、nは5又は6を表す。)
で表されるアルキル求電子試薬とのカップリング反応により、下記式(3):
【化3】
(式中、nは上記で定義した通りである。)
で表される3,7-ジメチルアルカン化合物を得る工程
を少なくとも含む、3,7-ジメチルアルカン化合物(3)の製造方法。
【請求項2】
下記一般式(4):
【化4】
(式中、M
2はLi、MgZ
2、CuZ
2又はCuLiZ
2を表し、ここで、Z
2はハロゲン原子又は3-メチルペンチル基を表す。)
で表される3-メチルペンチル求核試薬と、下記一般式(5):
【化5】
(式中、X
2及びX
3は互いに同じであっても異なっていてもよいハロゲン原子を表す。)
で表される1,3-ジハロ-2-メチルプロパン化合物とのカップリング反応により、下記式(6):
【化6】
(式中、X
4はハロゲン原子を表す。)
で表される1-ハロ-2,6-ジメチルオクタン化合物を得る工程と、
前記1-ハロ-2,6-ジメチルオクタン化合物(6)から前記2,6-ジメチルオクチル求核試薬(1)を調製する工程と
を更に含む、請求項1に記載の3,7-ジメチルアルカン化合物(3)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3,7-ジメチルアルカン化合物の製造方法に関する。本発明はより具体的には、3,7-ジメチルアルカン化合物のうち、ポプラ(Populus spp.)等の害虫であるポプラシロハモグリ(学名:Leucoptera sinuella)の性フェロモン物質である3,7-ジメチルペンタデカン及び3,7-ジメチルテトラデカンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポプラシロハモグリは、木材等の原料であるポプラ及びヤナギ(Salix spp.)の重要害虫である。ポプラシロハモグリの幼虫が、葉の中を掘り進めながら食害するため宿主は光合成ができなくなる。さらに、成長した幼虫は近くのリンゴ及びオレンジ等の果樹へ移動する。ポプラシロハモグリは検疫対象害虫であるため、近年チリから輸出される果物が輸出先で受け入れ拒否される事態も頻発している。また、殺虫剤を用いた従来型の防除方法、及び環境を考慮した生物学的防除方法のどちらも開発されていないため、性フェロモンを用いた交信かく乱による防除が防除方法の一つとして期待されている(下記の非特許文献1)。
【0003】
ポプラシロハモグリの性フェロモン物質は、3,7-ジメチルペンタデカンと3,7-ジメチルテトラデカンと7-メチルペンタデカンとの95:2:3(重量比)の混合物であることが明らかとなっている(非特許文献1)。
【0004】
3,7-ジメチルペンタデカンの合成方法としては例えば、全6工程で製造する下記の方法が報告されている(非特許文献1)。シトロネロールの水酸基をピリジンの存在下、p-トルエンスルホニル=クロリドでトシル化してシトロネリル=トシレートを合成し、そして、得られたシトロネリル=トシレートを水素化アルミニウムリチウムで還元して、2,6-ジメチル-2-オクテンを合成する。続いて、得られた2,6-ジメチル-2-オクテンを、ジクロロメタン及びtert-ブチル=ヒドロペルオキシドの存在下、二酸化セレンで酸化して2,6-ジメチル-2-オクテン-1-オールを合成する。得られた2,6-ジメチル-2-オクテン-1-オールをジクロロメタン溶液中、ニクロム酸ピリジニウム(PDC)で酸化して、2,6-ジメチル-2-オクテナールを合成する。次に、ヘプチルトリフェニルホスホニウム=ブロミド及びn-ブチルリチウムから調製されるトリフェニルホスホニウム=ヘプチリドと、上記2,6-ジメチル-2-オクテナールとのウィッティヒ反応(Wittig反応)により、3,7-ジメチル-6,8-ペンタデカジエンを合成する。さらに、得られた3,7-ジメチル-6,8-ペンタデカジエンをパラジウム炭素触媒で水素添加して、目的化合物である3,7-ジメチルペンタデカンを合成する。
【0005】
3,7-ジメチルテトラデカンの合成方法としては例えば、全6工程で製造する下記の方法が報告されている(非特許文献1)。上記3,7-ジメチルペンタデカンの合成方法において説明した方法に従って、2,6-ジメチル-2-オクテナールを合成する。次に、ヘキシルトリフェニルホスホニウム=ブロミド及びn-ブチルリチウムから調製されるトリフェニルホスホニウム=ヘキシリドと、上記2,6-ジメチル-2-オクテナールとのウィッティヒ反応により、3,7-ジメチル-6,8-テトラデカジエンを合成する。さらに、得られた3,7-ジメチル-6,8-テトラデカジエンをパラジウム炭素触媒で水素添加して、目的化合物である3,7-ジメチルテトラデカンを合成する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Jan Bergmann et al.,J.Chem.Ecol.,2020,46(9),820-829.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非特許文献1における3,7-ジメチルペンタデカン及び3,7-ジメチルテトラデカンのいずれの合成方法においても、環境毒性の極めて高い二酸化セレン及びPDC並びにジクロロメタンを用いているため、グリーンケミストリーの観点から望ましくなくない。さらに、高純度では爆発性を有するtert-ブチル=ヒドロペルオキシド、及び発火性のあるn-ブチルリチウム及びパラジウム炭素を用いているため工業化が難しい。
【0008】
加えて、非特許文献1の合成方法にて製造された3,7-ジメチルペンタデカンには不純物として3,7-ジメチルテトラデカンが1.7%及びn-テトラデカンが1.3%含まれており、3,7-ジメチルペンタデカンの純度は95%と高くない。主要不純物である炭素数16の3,7-ジメチルテトラデカンと炭素数14のn-テトラデカンの極性は、目的化合物である炭素数17の3,7-ジメチルペンタデカンの極性と近いためカラムクロマトによる分離精製が難しく、また、炭素数16の3,7-ジメチルテトラデカンと炭素数17の3,7-ジメチルペンタデカンは、それらの分子量が互いに近く、且つ沸点が互いに近いため蒸留による分離精製も難しい。それ故に、非特許文献1の製造方法では、高純度の3,7-ジメチルペンタデカンを製造することが困難である。
【0009】
同様に、非特許文献1の合成方法にて製造された3,7-ジメチルテトラデカンには不純物として3,7-ジメチルトリデカンが1.3%、n-ドデカンが1.1%含まれており、3,7-ジメチルテトラデカンの純度は96%と高くない。主要不純物である炭素数15の3,7-ジメチルトリデカンと炭素数12のn-ドデカンは、それらの極性が目的化合物である炭素数16の3,7-ジメチルテトラデカンの極性と近いためカラムクロマトによる分離精製が難しく、また、炭素数15の3,7-ジメチルトリデカンと目的化合物である炭素数16の3,7-ジメチルテトラデカンは、それらの分子量が互いに近く。また沸点が互いに近いため蒸留による分離精製も難しい。それ故に、非特許文献1の製造方法では、高純度の3,7-ジメチルテトラデカンを製造することが困難である。
【0010】
また、非特許文献1における3,7-ジメチルペンタデカン及び3,7-ジメチルテトラデカンいずれも総反応工程が6工程であり、その工程数が長い。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、経済的且つ効率的な3,7-ジメチルペンタデカン及び3,7-ジメチルテトラデカンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、安価且つ大量に製造することができる1-ハロ-2,6-ジメチルオクタン化合物から簡便に調製が可能である2,6-ジメチルオクチル求核試薬と、安価且つ工業的に入手することができるアルキル求電子試薬とのカップリング反応により、経済的且つ効率的に3,7-ジメチルペンタデカン及び3,7-ジメチルテトラデカンを高純度で製造できることを見出し、本発明を為すに至った。
【0013】
本発明の一つの態様によれば、下記一般式(1):
【化1】
(式中、M
1はLi、MgZ
1、CuZ
1又はCuLiZ
1を表し、ここで、Z
1はハロゲン原子又は2,6-ジメチルオクチル基を表す。)
で表される2,6-ジメチルオクチル求核試薬と、下記一般式(2):
【化2】
(式中、X
1はハロゲン原子又はp-トルエンスルホネート基を表し、nは5又は6を表す。)
で表されるアルキル求電子試薬とのカップリング反応により、下記式(3):
【化3】
(式中、nは上記で定義した通りである。)
で表される3,7-ジメチルアルカン化合物を得る工程
を少なくとも含む、3,7-ジメチルアルカン化合物(3)の製造方法が提供される。
【0014】
また、本発明の他の態様によれば、下記一般式(4):
【化4】
(式中、M
2はLi、MgZ
2、CuZ
2又はCuLiZ
2を表し、ここで、Z
2はハロゲン原子又は3-メチルペンチル基を表す。)
で表される3-メチルペンチル求核試薬と、下記一般式(5):
【化5】
(式中、X
2及びX
3は互いに同じであっても異なっていてもよいハロゲン原子を表す。)
で表される1,3-ジハロ-2-メチルプロパン化合物とのカップリング反応により、下記式(6):
【化6】
(式中、X
4はハロゲン原子を表す。)
で表される1-ハロ-2,6-ジメチルオクタン化合物を得る工程と、
上記1-ハロ-2,6-ジメチルオクタン化合物(6)から上記2,6-ジメチルオクチル求核試薬(1)を調製する工程と
を更に含む、3,7-ジメチルアルカン化合物(3)の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、環境負荷が少なく、経済的且つ効率的に3,7-ジメチルペンタデカン及び3,7-ジメチルテトラデカンを製造することができる。
【0016】
また、3,7-ジメチルペンタデカンを製造する際に副生する不純物が炭素数14のテトラデカンと炭素数20の3,7,10,14-テトラメチルヘキサデカンであるため、該不純物と目的物である炭素数17の3,7-ジメチルペンタデカンとの沸点差を確保することができる。従って、上記目的物は、蒸留精製により上記不純物と容易に分離精製することが可能であり、高純度の3,7-ジメチルペンタデカンを製造することができる。
【0017】
同様に、3,7-ジメチルテトラデカンを製造する際に副生する不純物が炭素数12のドデカンと炭素数20の3,7,10,14-テトラメチルヘキサデカンであるため、該不純物と目的物である炭素数16の3,7-ジメチルテトラデカンとの沸点差を確保することができる。従って、上記目的物は、蒸留精製により上記不純物と容易に分離精製することが可能であり、高純度の3,7-ジメチルテトラデカンを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
I.本発明の目的化合物である、下記一般式(3)で表される3,7-ジメチルアルカン化合物は、下記の化学反応式で示される製造方法に従って調製される。当該製造方法は、下記一般式(1)で表される2,6-ジメチルオクチル求核試薬と、下記一般式(2)で表されるアルキル求電子試薬とのカップリング反応により、3,7-ジメチルアルカン化合物(3)を得る工程を少なくとも含む。
【0019】
【0020】
まず、上記の2,6-ジメチルオクチル求核試薬(1)について、以下に説明する。
上記一般式(1)におけるM1は、Li、MgZ1、CuZ1又はCuLiZ1を表し、ここで、Z1はハロゲン原子又は2,6-ジメチルオクチル基を表す。ハロゲン原子Z1としては、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
2,6-ジメチルオクチル求核試薬(1)の具体例としては、2,6-ジメチルオクチルリチウム;2,6-ジメチルオクチルマグネシウム=クロリド、2,6-ジメチルオクチルマグネシウム=ブロミド及び2,6-ジメチルオクチルマグネシウム=ヨージド等の2,6-ジメチルオクチルマグネシウム=ハライド試薬(グリニャール試薬);ビス[2,6-ジメチルオクチル]キュープレート;並びに、リチウム=ビス[2,6-ジメチルオクチル]キュープレート等のギルマン(Gilman)試薬等が挙げられ、調製のしやすさ(汎用性)の観点から、2,6-ジメチルオクチルマグネシウム=ハライド試薬が好ましい。
2,6-ジメチルオクチル求核試薬(1)は、1種類又は2種類以上を使用してもよい。また、2,6-ジメチルオクチル求核試薬(1)は、市販されているものであってもよく、また独自に合成したものであってもよい。
【0021】
次に、上記のアルキル求電子試薬(2)について、以下に説明する。
上記一般式(2)におけるX1は、ハロゲン原子又はp-トルエンスルホネート基(CH3-C6H6-SO2-O(TsO)基)を表す。ハロゲン原子X1としては、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられ、臭素原子及びヨウ素原子が特に好ましい。
上記一般式(2)におけるnは、5又は6を表す。
アルキル求電子試薬(2)の具体例としては、1-クロロヘキサン、1-ブロモヘキサン及び1-ヨードヘキサン等の1-ハロヘキサン化合物(n=5);ヘキシル=p-トルエンスルホネート(n=5);並びに、1-クロロヘプタン、1-ブロモヘプタン及び1-ヨードヘプタン等の1-ハロヘプタン化合物(n=6);ヘプチル=p-トルエンスルホネート(n=6)が挙げられ、調製のしやすさ(汎用性)の観点から、1-ハロヘキサン化合物(n=5)及び1-ハロヘプタン化合物(n=6)が好ましい。
アルキル求電子試薬(2)は、1種類又は2種類以上を使用してもよい。また、アルキル求電子試薬(2)は、市販されているものであってもよく、また独自に合成したものであってもよい。
【0022】
次に、2,6-ジメチルオクチル求核試薬(1)とアルキル求電子試薬(2)とのカップリング反応について、以下に説明する。
該カップリング反応において、2,6-ジメチルオクチル求核試薬(1)の使用量は、アルキル求電子試薬(2)1molに対して、経済性の観点から、好ましくは0.8~1.2molである。
【0023】
該カップリング反応には、必要に応じて溶媒を用いてもよい。該溶媒としては、トルエン、キシレン及びヘキサン等の炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、4-メチルテトラヒドロピラン及びジエチル=エーテル等のエーテル系溶媒;並びに、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチル=スルホキシド、γ-ブチロラクトン及びアセトニトリル等の極性溶媒等が挙げられるが、反応性の観点から、トルエン、テトラヒドロフラン、4-メチルテトラヒドロピラン及びアセトニトリルが好ましく、テトラヒドロフラン及び4-メチルテトラヒドロピランがより好ましい。
該溶媒は、1種類又は2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該溶媒の使用量は、2,6-ジメチルオクチル求核試薬(1)1molに対して、反応性の観点から、好ましくは30~5000g、より好ましくは50~3000gである。
【0024】
該カップリング反応には、必要に応じて触媒を用いてもよい。該触媒としては、塩化第一銅、臭化第一銅及びヨウ化第一銅等の一価のハロゲン化銅;並びに、塩化第二銅、臭化第二銅及びヨウ化第二銅等の二価のハロゲン化銅が挙げられ、反応性の観点から、一価のハロゲン化銅が好ましく、ヨウ化第一銅がより好ましい。
該触媒は、1種類又は2種類以上を使用してもよい。また、該触媒は、市販されているものを用いることができる。
該触媒の使用量は、2,6-ジメチルオクチル求核試薬(1)1molに対して、反応速度及び/又は後処理の観点から、好ましくは0.0003~0.300mol、より好ましくは0.001~0.100molである。
該触媒を用いる場合は、必要に応じて補触媒を用いてもよい。該補触媒としては、亜リン酸トリエチル等の炭素数3~9の亜リン酸トリアルキル化合物及びトリフェニルホスフィン等の炭素数18~21のトリアリールホスフィン化合物等のリン化合物等が挙げられるが、反応性の観点から、亜リン酸トリアルキル化合物が好ましい。
該補触媒は、1種類又は2種類以上を使用してもよい。また、該補触媒は、市販されているものを用いることができる。
該補触媒の使用量は、2,6-ジメチルオクチル求核試薬(1)1molに対して、反応性の観点から、好ましくは0.001~0.500mol、より好ましくは0.005~0.200molである。
該カップリング反応に触媒を用いる場合は、必要に応じてハロゲン化リチウムを添加してもよい。ハロゲン化リチウムとしては、塩化リチウム、臭化リチウム及びヨウ化リチウムが挙げられ、反応性の観点から、塩化リチウムが好ましい。
該カップリング反応におけるハロゲン化リチウムの使用量は、反応性の観点から、アルキル求電子試薬(2)1molに対して、好ましくは0.005~0.250molである。
【0025】
該カップリング反応における反応温度は、用いる2,6-ジメチルオクチル求核試薬(1)によって異なるが、反応性の観点から、好ましくは-78~70℃、より好ましくは-20~25℃である。
該カップリング反応における反応時間は、用いる溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、反応性の観点から、好ましくは1~95時間である。
【0026】
次に、上記の3,7-ジメチルアルカン化合物(3)について、以下に説明する。
上記一般式(3)におけるnは、上記一般式(2)で定義した通りである。
3,7-ジメチルアルカン化合物(3)の具体例としては、3,7-ジメチルペンタデカン(3:n=6)及び3,7-ジメチルテトラデカン(3:n=5)が挙げられる。
本発明の目的化合物である3,7-ジメチルペンタデカン(3:n=6)を製造するカップリング反応の本工程においては、炭素数14のテトラデカンと、炭素数20の3,7,10,14-テトラメチルヘキサデカンが不純物として副生する。しかしながら、該不純物と目的物である炭素数17の3,7-ジメチルペンタデカン(3:n=6)との沸点差を十分に確保することができる。従って、上記目的物は、蒸留精製により上記不純物と容易に分離精製することが可能であり、高純度の3,7-ジメチルペンタデカン(3:n=6)を製造することができる。
同様に、本発明の目的化合物である3,7-ジメチルテトラデカン(3:n=5)を製造するカップリング反応の本工程においては、炭素数12のドデカンと、炭素数20の3,7,10,14-テトラメチルヘキサデカンが不純物として副生する。しかしながら、該不純物と目的物である炭素数16の3,7-ジメチルテトラデカン(3:n=5)との沸点差を十分に確保することができる。従って、上記目的物は、蒸留精製により上記不純物と容易に分離精製することが可能であり、高純度の3,7-ジメチルテトラデカン(3:n=5)を製造することができる。
【0027】
II.以下に、上記の2,6-ジメチルオクチル求核試薬(1)の製造方法について説明する。
2,6-ジメチルオクチル求核試薬(1)は、常法に従い、又は下記で説明する方法に従って調製することができる。
【0028】
例えば、2,6-ジメチルオクチル求核試薬(1)として、2,6-ジメチルオクチルマグネシウム=ハライド試薬(1:M1=MgZ1)の場合の製造方法について、以下に説明する。2,6-ジメチルオクチルマグネシウム=ハライド試薬(1:M1=MgZ1)は、例えば、下記の化学反応式で示される通り、下記一般式(6)で表される上記の1-ハロ-2,6-ジメチルオクタン化合物を溶媒中、マグネシウムと反応させることにより調製することができる。
【0029】
【0030】
2,6-ジメチルオクチルマグネシウム=ハライド試薬(1:M1=MgZ1)はグリニャール試薬である。ここで、Z1はX4と同じであり、ハロゲン原子を表す。ハロゲン原子X4としては、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
【0031】
まず、上記1-ハロ-2,6-ジメチルオクタン化合物(6)について、以下に説明する。
上記一般式(6)におけるX4は、ハロゲン原子を表す。ハロゲン原子X4としては、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
1-ハロ-2,6-ジメチルオクタン化合物(6)の具体例としては、1-クロロ-2,6-ジメチルオクタン、1-ブロモ-2,6-ジメチルオクタン及び1-ヨード-2,6-ジメチルオクタン等が挙げられる。
1-ハロ-2,6-ジメチルオクタン化合物(6)は、1種類又は2種類以上を使用してもよい。また、1-ハロ-2,6-ジメチルオクタン化合物(6)は、市販されているものであってもよく、また独自に合成したものであってもよい。
【0032】
マグネシウムの使用量は、1-ハロ-2,6-ジメチルオクタン化合物(6)1molに対して、反応完結の観点から、好ましくは1.0~2.0グラム原子である。
上記溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチル=エーテル及び4-メチルテトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒;並びに、トルエン、キシレン及びヘキサン等の炭化水素系溶媒等が挙げられるが、上記グリニャール試薬生成の反応速度の観点から、テトラヒドロフラン、ジエチル=エーテル及び4-メチルテトラヒドロピラン等のエーテル類が好ましく、テトラヒドロフラン及び4-メチルテトラヒドロピランがより好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該溶媒の使用量は、1-ハロ-2,6-ジメチルオクタン化合物(6)1molに対して、反応性の観点から、好ましくは30~5000g、より好ましくは50~3000gである。
反応温度は、用いる溶媒により異なるが、反応性の観点から、好ましくは30~120℃である。
反応時間は、用いる溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、反応性の観点から、好ましくは1~90時間である。
【0033】
III.以下に、上記の1-ハロ-2,6-ジメチルオクタン化合物(6)の製造方法について説明する。
1-ハロ-2,6-ジメチルオクタン化合物(6)は例えば、下記の化学反応式で示される通り、下記一般式(4)で表される3-メチルペンチル求核試薬と、下記一般式(5)で表される1,3-ジハロ-2-メチルプロパン化合物とのカップリング反応により調製することができる。
【0034】
【0035】
次に、上記の1,3-ジハロ-2-メチルプロパン化合物(5)について、以下に説明する。
上記一般式(5)におけるX2及びX3は互いに同じであっても異なっていてもよいハロゲン原子を表す。ハロゲン原子X2及びX3としては、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
X2及びX3の組み合わせとしては、塩素原子と塩素原子、臭素原子と塩素原子、塩素原子とヨウ素原子、臭素原子と臭素原子、臭素原子とヨウ素原子、及びヨウ素原子とヨウ素原子等が挙げられる。
1,3-ジハロ-2-メチルプロパン化合物(5)の具体例としては、1,3-ジクロロ-2-メチルプロパン、1,3-ジブロモ-2-メチルプロパン、1,3-ジヨード-2-メチルプロパン、1-ブロモ-3-クロロ-2-メチルプロパン、1-クロロ-3-ヨード-2-メチルプロパン及び1-ブロモ-3-ヨード-2-メチルプロパン等が挙げられ、収率の観点から1-ブロモ-3-クロロ-2-メチルプロパン、1-クロロ-3-ヨード-2-メチルプロパン及び1-ブロモ-3-ヨード-2-メチルプロパンが特に好ましい。
1,3-ジハロ-2-メチルプロパン化合物(5)は、1種類又は2種類以上を使用してもよい。また、1,3-ジハロ-2-メチルプロパン化合物(5)は、市販されているものであってもよく、また独自に合成したものであってもよい。
【0036】
1,3-ジハロ-2-メチルプロパン化合物(5)は、例えば、2-メチル-1,3-プロパンジオールのハロゲン化で合成することができる。
【0037】
次に、3-メチルペンチル求核試薬(4)と、1,3-ジハロ-2-メチルプロパン化合物(5)とのカップリング反応について、以下に説明する。
該カップリング反応において、3-メチルペンチル求核試薬(4)の使用量は、1,3-ジハロ-2-メチルプロパン化合物(5)1molに対して、経済性の観点から、好ましくは0.8~1.4molである。
【0038】
該カップリング反応には、必要に応じて溶媒を用いてもよい。該溶媒としては、トルエン、キシレン及びヘキサン等の炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、4-メチルテトラヒドロピラン及びジエチル=エーテル等のエーテル系溶媒;並びに、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチル=スルホキシド、γ-ブチロラクトン及びアセトニトリル等の極性溶媒等が挙げられるが、反応性の観点から、トルエン、テトラヒドロフラン、4-メチルテトラヒドロピラン及びアセトニトリルが好ましく、テトラヒドロフラン及び4-メチルテトラヒドロピランがより好ましい。
該溶媒は、1種類又は2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該溶媒の使用量は、1,3-ジハロ-2-メチルプロパン化合物(5)1molに対して、反応性の観点から、好ましくは30~5000g、より好ましくは50~3000gである。
【0039】
該カップリング反応には、必要に応じて触媒を用いてもよい。該触媒としては、塩化第一銅、臭化第一銅及びヨウ化第一銅等の一価のハロゲン化銅;並びに、塩化第二銅、臭化第二銅及びヨウ化第二銅等の二価のハロゲン化銅が挙げられ、反応性の観点から、一価のハロゲン化銅が好ましく、ヨウ化第一銅がより好ましい。
該触媒は、1種類又は2種類以上を使用してもよい。また、該触媒は、市販されているものを用いることができる。
該触媒の使用量は、1,3-ジハロ-2-メチルプロパン化合物(5)1molに対して、反応速度及び/又は後処理の観点から、好ましくは0.0003~0.3mol、より好ましくは0.001~0.1molである。
該触媒を用いる場合は、必要に応じて補触媒を用いてもよい。該補触媒としては、亜リン酸トリエチル等の炭素数3~9の亜リン酸トリアルキル化合物及びトリフェニルホスフィン等の炭素数18~21のトリアリールホスフィン化合物等のリン化合物等が挙げられるが、反応性の観点から、亜リン酸トリアルキル化合物が好ましい。
該補触媒は、1種類又は2種類以上を使用してもよい。また、該補触媒は、市販されているものを用いることができる。
該補触媒の使用量は、1,3-ジハロ-2-メチルプロパン化合物(5)1molに対して、反応性の観点から、好ましくは0.001~0.500mol、より好ましくは0.005~0.100molである。
該カップリング反応に触媒を用いる場合は、必要に応じてハロゲン化リチウムを添加してもよい。ハロゲン化リチウムとしては、塩化リチウム、臭化リチウム及びヨウ化リチウム等が挙げられ、反応性の観点から、塩化リチウムが好ましい。
該カップリング反応におけるハロゲン化リチウムの使用量は、反応性の観点から、1,3-ジハロ-2-メチルプロパン化合物(5)1molに対して、好ましくは0.005~0.250molである。
【0040】
該カップリング反応における反応温度は、用いる3-メチルペンチル求核試薬(4)によって異なるが、反応性の観点から、好ましくは-78~70℃、より好ましくは-20~35℃である。
該カップリング反応における反応時間は、用いる溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、反応性の観点から、好ましくは0.5~90時間である。
【0041】
上記一般式(5)におけるX2及びX3が互いに異なる場合は、後述する触媒又は反応温度を適宜選択することにより、反応性の高いハロゲン原子の方を優先的に反応させながらカップリング反応を行うことができる。例えば、互いに異なるX2及びX3の組み合わせが塩素原子と臭素原子である又は塩素原子とヨウ素原子である1,3-ジハロ-2-メチルプロパン化合物(5)を用いれば、1-ハロ-2,6-ジメチルオクタン化合物(6)におけるX4を塩素原子とすることができる。また、互いに異なるX2及びX3の組み合わせが臭素原子とヨウ素原子である1,3-ジハロ-2-メチルプロパン化合物(5)を用いれば、1-ハロ-2,6-ジメチルオクタン化合物(6)におけるX4を臭素原子とすることができる。
【0042】
IV.以下に、上記の3-メチルペンチル求核試薬(4)の製造方法について説明する。
3-メチルペンチル求核試薬(4)は、常法に従い、又は下記で説明する方法に従って調製することができる。
【0043】
例えば、3-メチルペンチル求核試薬(4)として、3-メチルペンチルマグネシウム=ハライド試薬(4:M2=MgZ2)の場合の製造方法について、以下に説明する。3-メチルペンチルマグネシウム=ハライド試薬(4:M2=MgZ2)は、例えば、下記の化学反応式で示される通り、下記一般式(7)で表される1-ハロ-3-メチルペンタン化合物を溶媒中、マグネシウムと反応させることにより調製することができる。
【0044】
【0045】
3-メチルペンチルマグネシウム=ハライド試薬(4:M2=MgZ2)はグリニャール試薬である。ここで、Z2はX5と同じであり、ハロゲン原子を表す。ハロゲン原子X5としては、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
【0046】
まず、上記1-ハロ-3-メチルペンタン化合物(7)について、以下に説明する。
上記一般式(7)におけるX5は、上記一般式(4:M2=MgZ2)で定義した通りである。
1-ハロ-3-メチルペンタン化合物(7)の具体例としては、1-クロロ-3-メチルペンタン、1-ブロモ-3-メチルペンタン及び1-ヨード-3-メチルペンタン等が挙げられる。
1-ハロ-3-メチルペンタン化合物(7)は、1種類又は2種類以上を使用してもよい。また、1-ハロ-3-メチルペンタン化合物(7)は、市販されているものであってもよく、また独自に合成したものであってもよい。
【0047】
マグネシウムの使用量は、1-ハロ-3-メチルペンタン化合物(7)1molに対して、反応完結の観点から、好ましくは1.0~2.0グラム原子である。
上記溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチル=エーテル及び4-メチルテトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒;並びに、トルエン、キシレン及びヘキサン等の炭化水素系溶媒等が挙げられるが、上記グリニャール試薬生成の反応速度の観点から、テトラヒドロフラン、ジエチル=エーテル及び4-メチルテトラヒドロピラン等のエーテル類が好ましく、テトラヒドロフラン及び4-メチルテトラヒドロピランがより好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該溶媒の使用量は、1-ハロ-3-メチルペンタン化合物(7)1molに対して、反応性の観点から、好ましくは30~5000g、より好ましくは50~3000gである。
【0048】
反応温度は、用いる溶媒により異なるが、反応性の観点から、好ましくは30~120℃である。
反応時間は、用いる溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、反応性の観点から、好ましくは1~90時間である。
【0049】
V.以下に、上記の1-ハロ-3-メチルペンタン化合物(7)の製造方法について説明する。
1-ハロ-3-メチルペンタン化合物(7)は、常法に従い、又は下記で説明する方法に従って調製することができる。
【0050】
1-ハロ-3-メチルペンタン化合物(7)は例えば、下記の化学反応式で示される通り、下記式(8)で表される3-メチル-1-ペンタノールをハロゲン化することにより調製することができる。
【0051】
【0052】
上記ハロゲン化反応は、例えば、p-トルエンスルホニル=ハライド化合物を用いて、3-メチル-1-ペンタノール(8)の水酸基をトシル化し、その後にリチウム=ハライド化合物を用いてハロゲン化する方法、又はハロゲン化剤を用いて、3-メチル-1-ペンタノール(8)の水酸基を直接ハロゲン化する方法によって行われることができる。
【0053】
上記p-トルエンスルホニル=ハライド化合物としては、p-トルエンスルホニル=クロリド、p-トルエンスルホニル=ブロミド及びp-トルエンスルホニル=ヨージドが挙げられる。
【0054】
上記リチウム=ハライド化合物としては、塩化リチウム、臭化リチウム及びヨウ化リチウム等が挙げられる。
【0055】
上記ハロゲン化剤としては、塩素、臭素及びヨウ素等のハロゲン;塩化水素、臭化水素及びヨウ化水素等のハロゲン化水素化合物;メタンスルホニル=クロリド、メタンスルホニル=ブロミド及びメタンスルホニル=ヨージド等のメタンスルホニル=ハライド化合物;ベンゼンスルホニル=クロリド、ベンゼンスルホニル=ブロミド及びベンゼンスルホニル=ヨージド等のベンゼンスルホニル=ハライド化合物;p-トルエンスルホニル=クロリド、p-トルエンスルホニル=ブロミド及びp-トルエンスルホニル=ヨージド等のp-トルエンスルホニル=ハライド化合物;三塩化リン、五塩化リン及び三臭化リン等のハロゲン化リン化合物;四塩化炭素、四臭化炭素及び四ヨウ化炭素等の四ハロゲン化炭素化合物;トリメチルシリル=クロリド、トリメチルシリル=ブロミド、トリメチルシリル=ヨージド、トリエチルシリル=クロリド、トリエチルシリル=ブロミド、トリエチルシリル=ヨージド、トリイソプロピルシリル=クロリド、トリイソプロピルシリル=ブロミド、トリイソプロピルシリル=ヨージド、tert-ブチルジメチルシリル=クロリド、tert-ブチルジメチルシリル=ブロミド及びtert-ブチルジメチルシリル=ヨージド等のアルキルシリル=ハライド化合物;オキサリル=クロリド、オキサリル=ブロミド及びオキサリル=ヨージド等のオキサリル=ハライド化合物;N-クロロスクシンイミド、N-ブロモスクシンイミド及びN-ヨードスクシンイミド等のN-ハロスクシンイミド化合物;並びに、塩化チオニル等が挙げられるが、副反応抑制の観点から、塩化チオニル、メタンスルホニル=ハライド化合物、ベンゼンスルホニル=ハライド化合物及びp-トルエンスルホニル=ハライド化合物が好ましく、メタンスルホニル=ハライド化合物が特に好ましい。
該ハロゲン化剤は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該ハロゲン化剤は、市販されているものを用いることができる。
該ハロゲン化剤の使用量は、3-メチル-1-ペンタノール(8)1molに対して、好ましくは0.8~5.0mol、より好ましくは1.0~2.5molである。
【0056】
該ハロゲン化反応には、必要に応じて、塩基を用いてもよい。
該塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウム等の水酸化物類;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウム等の炭酸塩類;トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、ピペリジン、ピロリジン、ピリジン、ルチジン、4-ジメチルアミノピリジン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン及び1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)等のアミン類;並びに、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン及びトリトリルホスフィン等のホスフィン類等を挙げることができる。
該ハロゲン化剤としてメタンスルホニル=ハライド化合物、ベンゼンスルホニル=ハライド化合物及びp-トルエンスルホニル=ハライド化合物等を用いる場合は、塩基としてアミン類を用いることが好ましく、ピリジン、ルチジン及び4-ジメチルアミノピリジン等のピリジン類を用いることがより好ましい。
該塩基は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該塩基は、市販されているものを用いることができる。
該塩基の使用量は、収率及び経済性の観点から、3-メチル-1-ペンタノール(8)1molに対して、好ましくは0~8.0mol、より好ましくは0~3.0molである。
【0057】
該ハロゲン化反応には、必要に応じて、金属塩を添加してもよい。
該金属塩としては、塩化リチウム、臭化リチウム及びヨウ化リチウム等のリチウム塩;塩化ナトリウム、臭化ナトリウム及びヨウ化ナトリウム等のナトリウム塩;塩化カリウム、臭化カリウム及びヨウ化カリウム等のカリウム塩、塩化カルシウム、臭化カルシウム及びヨウ化カルシウム等のカルシウム塩;並びに、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム及びヨウ化マグネシウム等のマグネシウム塩が挙げられる。
該金属塩は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該金属塩は、市販されているものを用いることができる。
該金属塩の使用量は、3-メチル-1-ペンタノール(8)1molに対して、反応性の観点から、好ましくは0~30.0mol、より好ましくは0~5.0molである。
該金属塩を添加することにより、反応系中のハロゲン化物濃度を高めて反応性を上げることができるが、経済性及び/又は環境適合性を加味すると金属塩を用いずに反応することが好ましい。
【0058】
該ハロゲン化反応には、必要に応じて、溶媒を用いてもよい。
該溶媒としては、一般的な溶媒、例えば、ジエチル=エーテル、ジブチル=エーテル、4-メチルテトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン(THF)、シクロペンチル=メチル=エーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル類;ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びクメン等の炭化水素類;トリクロロエチレン、ジクロロメタン及びクロロホルム等の塩素系溶媒類;ジメチル=スルホキシド、γ-ブチロラクトン(GBL)、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)及びヘキサメチルホスホリック=トリアミド(HMPA)等の非プロトン性極性溶媒類;アセトニトリル及びプロピオニトリル等のニトリル類;並びに、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル及び酢酸n-ブチル等のエステル類が挙げられるが、反応性の観点から、4-メチルテトラヒドロピラン、ジクロロメタン、クロロホルム、γ-ブチロラクトン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド及びアセトニトリルが好ましく、安全性の観点からγ-ブチロラクトン及びアセトニトリルが特に好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該溶媒の使用量は、3-メチル-1-ペンタノール(8)1molに対して、好ましくは0~3000g、より好ましくは0~800gである。
該溶媒を用いることによって原料仕込み量が減り、生産性が低下するため、上記の溶媒を用いずに反応を行ってもよく、上記塩基を溶媒として反応を行ってもよい。
【0059】
該ハロゲン化反応における反応温度は、用いるp-トルエンスルホニル=ハライド化合物又はハロゲン化剤により異なるが、反応性の観点から、好ましくは-15~180℃、より好ましくは-5~100℃である。
該ハロゲン化反応における反応時間は、用いるp-トルエンスルホニル=ハライド化合物又はハロゲン化剤及び/又は反応スケールにより異なるが、反応性の観点から、好ましくは0.5~100時間である。
【0060】
VI.以下に、上記の3-メチル-1-ペンタノール(8)の製造方法について説明する。
3-メチル-1-ペンタノール(8)は、常法に従い、又は下記で説明する方法に従って調製することができる。
【0061】
3-メチル-1-ペンタノール(8)は例えば、下記の化学反応式で示される通り、下記一般式(9)で表される2-ハロブタン化合物(9)の、グリニャール試薬調製(反応)によってsec-ブチルマグネシウム=ハライド化合物(10)(グリニャール試薬である)を調製し、そして、得られたsec-ブチルマグネシウム=ハライド化合物(10)を、エチレン=オキシドと反応させる増炭反応により合成することができる。
【0062】
【0063】
上記一般式(9)及び上記一般式(10)におけるX6は、ハロゲン原子を表す。ハロゲン原子X6としては、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
【0064】
まず、2-ハロブタン化合物(9)について、以下に説明する。
2-ハロブタン化合物(9)の具体例としては、2-クロロブタン、2-ブロモブタン及び2-ヨードブタン等が挙げられる。
マグネシウムによる変換反応において用いるマグネシウムの使用量は、反応完結の観点から、2-ハロブタン化合物(9)1molに対して、好ましくは1.0~2.0グラム原子である。
2-ハロブタン化合物(9)は、1種類又は2種類以上を使用してもよい。また、2-ハロブタン化合物(9)は、市販されているものであってもよく、また独自に合成したものであってもよい。
【0065】
次に、上記マグネシウムによる変換反応について、以下に説明する。
マグネシウムの使用量は、2-ハロブタン化合物(9)1molに対して、反応完結の観点から、好ましくは1.0~2.0グラム原子である。
マグネシウムによる変換反応において用いる溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチル=エーテル及び4-メチルテトラヒドロピラン等のエーテル類;並びに、トルエン、キシレン及びヘキサン等の炭化水素類等が挙げられるが、上記グリニャール試薬生成の反応速度の観点から、テトラヒドロフラン、ジエチル=エーテル及び4-メチルテトラヒドロピラン等のエーテル類が好ましく、テトラヒドロフラン、4-メチルテトラヒドロピランがより好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該溶媒の使用量は、2-ハロブタン化合物(9)1molに対して、反応性の観点から、好ましくは30~5000g、より好ましくは50g~3000gである。
【0066】
マグネシウムによる上記変換反応における反応温度は、用いる溶媒により異なるが、反応性の観点から、好ましくは0~120℃である。
マグネシウムによる上記変換反応における反応時間は、用いる溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、反応性の観点から、好ましくは0.5~100時間である。
【0067】
次に、sec-ブチルマグネシウム=ハライド化合物(10)について、以下に説明する。
sec-ブチルマグネシウム=ハライド化合物(10)の具体例としては、sec-ブチルマグネシウム=クロリド、sec-ブチルマグネシウム=ブロミド及びsec-ブチルマグネシウム=ヨージドが挙げられる。
【0068】
次に、上記増炭反応について、以下に説明する。
該増炭反応に用いるエチレン=オキシドの使用量は、2-ハロブタン化合物(9)1molに対して、反応性の観点から、好ましくは1.0~10.0mol、より好ましくは1.0~3.0molである。
【0069】
該増炭反応には、必要に応じて溶媒を用いてもよい。該溶媒としては、一般的な溶媒、例えば、ジエチル=エーテル、ジブチル=エーテル、4-メチルテトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン(THF)、シクロペンチル=メチル=エーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル類;ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びクメン等の炭化水素類;トリクロロエチレン、ジクロロメタン及びクロロホルム等の塩素系溶媒類;ジメチル=スルホキシド、γ-ブチロラクトン(GBL)、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド及びヘキサメチルホスホリック=トリアミド等の非プロトン性極性溶媒類;並びに、アセトニトリル及びプロピオニトリル等のニトリル類が挙げられるが、反応性の観点から、ジエチル=エーテル、テトラヒドロフラン及び4-メチルテトラヒドロピラン等のエーテル類が好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該溶媒の使用量は、2-ハロブタン化合物(9)1molに対して、反応性の観点から、好ましくは30~5000g、より好ましくは100~2000gである。
【0070】
該増炭反応には、必要に応じて触媒を用いてもよい。該触媒としては、塩化第一銅、臭化第一銅及びヨウ化第一銅等の一価のハロゲン化銅、塩化第二銅、臭化第二銅及びヨウ化第二銅等の二価のハロゲン化銅が挙げられ、反応性の観点から、一価のハロゲン化銅が好ましく、塩化第一銅がより好ましい。
該触媒は、1種類又は2種類以上を使用してもよい。また、該触媒は、市販されているものを用いることができる。
該触媒の使用量は、2-ハロブタン化合物(9)1molに対して、反応速度及び/又は後処理の観点から、好ましくは0.0003~0.300mol、より好ましくは0.0006~0.100molである。
【0071】
[実施例]
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
なお、以下において、「純度」は、特に明記しない限り、ガスクロマトグラフィー(GC)分析によって得られた面積百分率を示し、「生成比」はGC分析によって得られた面積百分率の相対比を示す。また、「収率」はGC分析によって得られた面積百分率を基に算出した。
各実施例において、反応のモニタリング及び収率の算出は、次のGC条件に従って行った。
GC条件:GC:島津製作所 キャピラリガスクロマトグラフ GC-2014,カラム:DB-5,0.25μmx0.25mmφx30m,キャリアーガス:He(1.55mL/分)、検出器:FID,カラム温度:150℃ 5℃/分昇温 230℃。
【0072】
収率は、原料及び生成物の純度(%GC)を考慮して、以下の式に従い計算した。
収率(%)={[(反応によって得られた生成物の重量×%GC)/生成物の分子量]
÷[(反応における出発原料の重量×%GC)/出発原料の分子量]}×100
なお、THFはテトラヒドロフラン、GBLはγ-ブチロラクトン、Etはエチル基、及びTsはトシル基を表す。
【0073】
[実施例1]
1-クロロ-3-メチルペンタン(7)の原料である3-メチル-1-ペンタノール(8)の製造
【0074】
【0075】
室温で、反応器にマグネシウム(114.82g、4.73グラム原子)及びテトラヒドロフラン(1350g)を加えて、60~65℃にて19分間撹拌した。次に、該反応器に2-クロロブタン(9:X6=Cl)(416.57g、4.50mol)を60~75℃にて滴下した。滴下終了後、75~80℃にて2時間撹拌することにより、sec-ブチルマグネシウム=クロリド(10:X6=Cl)を調製した。
続いて、内温を0~10℃に冷却後、塩化第一銅(0.94g、0.009mol)を加えて7分間撹拌し、攪拌終了後、0~10℃にて、エチレン=オキシドを滴下した。滴下終了後、0~10℃にて1時間撹拌した。次に、反応液に酢酸水溶液(酢酸(562.50g)及び水(1687.50g)を加えて分液し、水層を除去した。そして、有機層を減圧下濃縮し、残留物を減圧蒸留することにより、3-メチル-1-ペンタノール(8)(404.11g、3.86mol、純度97.54%)が収率85.73%で得られた。
【0076】
上記で得られた3-メチル-1-ペンタノール(8)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕1H-NMR(500MHz,CDCl3):δ=0.86(6H,t-like、J=7.3Hz),1.11-1.21(1H,m),1.30-1.40(2H,m),1.41-1.52(1H,o-like),1.55-1.63(1H,m),1.95(1H,br.s),3.84(2H,t,J=5.0Hz);13C-NMR(500MHz,CDCl3):δ=11.2,19.1,29.5,31.0,39.4,61.1
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 101(M+-1),84,69,56,41,29
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):ν=3333,2962,2929,2876,1463,1379,1059,1031
【0077】
[実施例2]
1-クロロ-3-メチルペンタン(7:X5=Cl)の製造
【0078】
【0079】
室温で、反応器に、実施例1で製造された3-メチル-1-ペンタノール(8)(296.85g、2.83mol、純度97.54%)、ピリジン(336.25g、4.25mol)及びγ-ブチロラクトン(425.10g)を加えて、40℃にて15分間撹拌した。
続いて、40~60℃にて、メタンスルホニル=クロリド(389.56g、3.40mol)を滴下した。滴下終了後、60~65℃に昇温し、7.5時間撹拌した。撹拌終了後、水(708.50g)とヘキサン(425.10g)を加えて分液し、そして水層を除去して、有機層を得た。得られた有機層を酢酸水溶液(酢酸(29.83g)及び水(372.89g))で洗浄し、引き続き、炭酸水素ナトリウム水溶液(炭酸水素ナトリウム(14.92g)、水(372.89g))で洗浄し、そして、得られた有機層を減圧下濃縮し、残留物を減圧蒸留することにより、1-クロロ-3-メチルペンタン(7:X5=Cl)(291.29g、2.41mol、純度100%、b.p.=104.3~105.0℃/53.3kPa(400.0mmHg))が収率85.20%で得られた。
【0080】
上記で得られた1-クロロ-3-メチルペンタン(7:X5=Cl)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕1H-NMR(500MHz,CDCl3):δ=0.88(3H,t,J=6.5Hz),0.89(3H,t,J=7.3Hz),1.18(1H,sep-like,J=7.3Hz),1.32-1.41(1H,m),1.53-1.63(2H,m),1.75-1.84(1H,sext-like,J=8.1Hz),3.50-3.61(2H,m);13C-NMR(500MHz,CDCl3):δ=11.1,18.5,29.1,31.9,39.4,43.4
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 120(M+),84,69,57,41,29
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):ν=2963,2930,2876,1463,1380,1290,724,658
【0081】
[実施例3]
1-クロロ-2,6-ジメチルオクタン(6:X4=Cl)の製造
【0082】
【0083】
室温で、反応器にマグネシウム(89.30g、3.67グラム原子)及びテトラヒドロフラン(1050g)を加えて、60~65℃にて12分間撹拌した。次に、該反応器に実施例2と同様の製造方法にて製造された1-クロロ-3-メチルペンタン(7:X5=Cl)(422.89g、3.50mol、純度:99.83%)を60~75℃にて滴下した。滴下終了後、75~80℃にて2時間撹拌することにより、3-メチルペンチルマグネシウム=クロリド(4:M2=MgCl)を調製した。
続いて、別の反応器にヨウ化第一銅(6.67g、0.035mol)、亜リン酸トリエチル(13.96g、0.084mol)、テトラヒドロフラン(350g)及び1-ブロモ-3-クロロ-2-メチルプロパン(5:X2=Br、X3=Cl)(558.10g、3.25mol)を加えて、0~15℃にて、上記調製した3-メチルペンチルマグネシウム=クロリド(4:M2=MgCl)を滴下した。滴下終了後、10~20℃にて3時間撹拌した。次に、反応液に塩化アンモニウム水溶液(塩化アンモニウム(35.00g)及び水(964.25g))及び20質量%塩酸(33.50g)を加えて分液し、そして、得られた有機層をそのまま減圧蒸留することにより、1-クロロ-2,6-ジメチルオクタン(6:X4=Cl)(538.88g、2.89mol、純度94.78%、b.p.=116.1~117.2℃/5.3kPa(40.0mmHg))が収率88.77%で得られた。得られた1-クロロ-2,6-ジメチルオクタン(6:X4=Cl)には、炭素数12の3,8-ジメチルデカンが5.22%GC含まれていた。
【0084】
上記で得られた1-クロロ-2,6-ジメチルオクタン(6:X4=Cl)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕1H-NMR(500MHz,CDCl3):δ=0.83‐0.88(6H,m),1.00(3H,dd,J=7.7Hz,1.2Hz),1.14-1.50(9H,m),1.76-1.86(1H,o-like,J=6.5Hz),3.40(1H,ddd,J=10.7Hz,6.5Hz,0.8Hz),3.48(1H,ddd,J=10.7Hz,5.4Hz,1.9Hz);13C-NMR(500MHz,CDCl3):δ=11.4,17.7,17.8,19.1,19.2,24.26,24.28,29.4,29.5,34.25,34.31,35.5,36.6,36.7,51.26,51.31
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 176(M+),147,111,69,57,41,29
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):ν=2961,2929,2874,1462,1379,730
【0085】
[実施例4]
3,7-ジメチルペンタデカン(3:n=6)の製造
【0086】
【0087】
室温で、反応器にマグネシウム(38.27g、1.58グラム原子)及びテトラヒドロフラン(450g)を加えて、60~65℃にて10分間撹拌した。次に、該反応器に実施例3で製造した1-クロロ-2,6-ジメチルオクタン(6:X4=Cl)(279.70g、1.50mol、純度:94.78%)を60~75℃にて滴下した。滴下終了後、75~80℃にて2時間撹拌することにより、2,6-ジメチルオクチルマグネシウム=クロリド(1:M1=MgCl)を調製した。
続いて、別の反応器に塩化第一銅(1.68g、0.017mol)、亜リン酸トリエチル(16.82g、0.10mol)、塩化リチウム(1.16g、0.027mol)、テトラヒドロフラン(150g)及び1-ブロモヘプタン(2:X1=Br、n=6)(268.65g、1.50mol)を加えて、0~15℃にて、上記調製した2,6-ジメチルオクチルマグネシウム=クロリド(1:M1=MgCl)を滴下した。滴下終了後、10~20℃にて1.5時間撹拌した。次に、反応液に塩化アンモニウム水溶液(塩化アンモニウム(15.0g)及び水(413.25g))及び20質量%塩酸(24.36g)を加えて分液し、そして、得られた有機層をそのまま減圧蒸留することにより、3,7-ジメチルペンタデカン(3:n=6)(329.42g、1.36mol、純度99.57%、b.p.=125.3~131.5℃/0.4kPa(3.0mmHg))が収率90.90%で得られた。得られた3,7-ジメチルペンタデカン(3:n=6)には、炭素数20の3,7,10,14-テトラメチルヘキサデカンが0.43%含まれていたが、炭素数14のテトラデカン及び炭素数12の3,8-ジメチルデカンはGCで検出されなかった。
反応終了時の有機層(蒸留前の粗生成物)をガスクロマトグラフィーで分析すると、目的物である3,7-ジメチルペンタデカン(3:n=6)が47.20%、上記のテトラデカンが0.23%、上記の3,8-ジメチルデカンが1.58%、及び上記の3,7,10,14-テトラメチルイコサンが0.39%含まれていた。この粗生成物を減圧蒸留することにより、減圧蒸留初期の段階においては炭素数14のテトラデカンと炭素数12の3,8-ジメチルデカンが留出し、そして、減圧蒸留中期の段階においては炭素数17の3,7-ジメチルペンタデカン(3:n=6)が留出することによって、高純度の3,7-ジメチルペンタデカン(3:n=6)を製造できた。なお、炭素数20の3,7,10,14-テトラメチルヘキサデカンは蒸留の後半に濃縮されて留出した。
【0088】
上記で得られた3,7-ジメチルペンタデカン(3:n=6)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕1H-NMR(500MHz,CDCl3):δ=0.80-0.95(m,12H),1.0-1.45(m,24H);13C-NMR(500MHz,CDCl3):δ=11.40,11.43,14.12,19.21,19.26,19.70,19.76,22.71,24.51,27.11,29.38,29.48,29.59,29.71,30.05,31.95,32.7
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 240(M+),211,183,140,127,113,97,85,71,57,43,29
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):ν=2958,2925,2872,2855,1463,1377
【0089】
[実施例5]
3,7-ジメチルテトラデカン(3:n=5)の製造
【0090】
【0091】
室温で、反応器にマグネシウム(25.52g、1.05グラム原子)及びテトラヒドロフラン(300g)を加えて、60~65℃にて14分間撹拌した。次に、該反応器に実施例3で製造した1-クロロ-2,6-ジメチルオクタン(6:X4=Cl)(186.46g、1.00mol、純度:94.78%)を60~75℃にて滴下した。滴下終了後、75~80℃にて2時間撹拌することにより、2,6-ジメチルオクチルマグネシウム=クロリド(1:M1=MgCl)を調製した。
続いて、別の反応器に塩化第一銅(1.12g、0.011mol)、亜リン酸トリエチル(11.22g、0.068mol)、塩化リチウム(0.78g、0.018mol)、テトラヒドロフラン(100g)及び1-ブロモヘキサン(2:X1=Br、n=5)(165.07g、1.00mol)を加えて、0~15℃にて、上記調製した2,6-ジメチルオクチルマグネシウム=クロリド(1:M1=MgCl)を滴下した。滴下終了後、10~20℃にて2時間撹拌した。次に、反応液に塩化アンモニウム水溶液(塩化アンモニウム(10.0g)及び水(275.50g))及び20質量%塩酸(9.57g)を加えて分液し、そして、得られた有機層をそのまま減圧蒸留することにより、3,7-ジメチルテトラデカン(3:n=5)(226.85g、1.00mol、純度99.82%、b.p.=127.7~127.8℃/0.4kPa(3.0mmHg))が収率100%で得られた。得られた3,7-ジメチルテトラデカン(3:n=5)には、炭素数20の3,7,10,14-テトラメチルヘキサデカン、並びに炭素数12のドデカン及び炭素数12の3,8-ジメチルデカンはGCで検出されなかった。
反応終了時の有機層(蒸留前の粗生成物)をガスクロマトグラフィーで分析すると、目的物である3,7-ジメチルテトラデカン(3:n=5)が42.15%、上記のドデカンが0.29%、上記の3,8-ジメチルデカンが1.49%、及び上記の3,7,10,14-テトラメチルヘキサデカンが0.46%含まれていた。この粗生成物を減圧蒸留することにより、減圧蒸留初期の段階においては炭素数12のドデカンと炭素数12の3,8-ジメチルデカンが留出し、そして、減圧蒸留中期の段階においては炭素数16の3,7-ジメチルテトラデカン(3:n=5)が留出することによって、高純度の3,7-ジメチルテトラデカン(3:n=5)を製造できた。なお、炭素数20の3,7,10,14-テトラメチルヘキサデカンは留出しなかった。
【0092】
上記で得られた3,7-ジメチルテトラデカン(3:n=5)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕1H-NMR(500MHz,CDCl3):δ=0.82-0.95(m,12H,1.0-1.45(22H);13C-NMR(500MHz,CDCl3):δ=11.43,14.12,19.21,19.26,19.76,22.72,24.51,27.12,29.42,29.49,29.59,30.01,31.95,32.78,32.80,34.43,36.9
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 226(M+),197,169,126,97,85,71,57,43,29
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):ν=2958,2925,2872,2855,1463,1377
【0093】
[実施例6]
3,7-ジメチルペンタデカン(3:n=6)の製造
【0094】
【0095】
室温で、反応器にマグネシウム(2.49g、0.10グラム原子)及びテトラヒドロフラン(29.26g)を加えて、60~65℃にて36分間撹拌した。次に、該反応器に実施例3で製造した1-クロロ-2,6-ジメチルオクタン(6:X4=Cl)(18.18g、0.098mol、純度:94.78%)を60~75℃にて滴下した。滴下終了後、75~80℃にて2時間撹拌することにより、2,6-ジメチルオクチルマグネシウム=クロリド(1:M1=MgCl)を調製した。
続いて、別の反応器に塩化第一銅(0.11g、0.0011mol)、亜リン酸トリエチル(1.09g、0.0066mol)、塩化リチウム(0.076g、0.0018mol)、テトラヒドロフラン(9.75g)及びヘキシル=p-トルエンスルホネート(2:X1=OTs、n=6)(25.00g、0.098mol)を加えて、0~15℃にて、上記調製した2,6-ジメチルオクチルマグネシウム=クロリド(1:M1=MgCl)を滴下した。滴下終了後、10~20℃にて1.5時間撹拌した。次に、反応液に塩化アンモニウム水溶液(塩化アンモニウム(0.98g)及び水(26.87g))及び20質量%塩酸(0.93g)を加えて、ろ過後に分液し、そして、得られた有機層をそのまま減圧蒸留することにより、3,7-ジメチルペンタデカン(3:n=6)(20.32g、0.089mol、純度99.33%、b.p.=125.3~131.5℃/0.4kPa(3.0mmHg))が収率91.40%で得られた。得られた3,7-ジメチルペンタデカン(3:n=6)には、炭素数20の3,7,10,14-テトラメチルヘキサデカンが0.42%含まれていたが、炭素数14のテトラデカン及び炭素数12の3,8-ジメチルデカンはGCで検出されなかった。
反応終了時の有機層(蒸留前の粗生成物)をガスクロマトグラフィーで分析すると、目的物である3,7-ジメチルペンタデカン(3:n=6)が46.20%、上記のテトラデカンが0.33%、上記の3,8-ジメチルデカンが1.78%、及び上記の3,7,10,14-テトラメチルイコサンが0.40%含まれていた。この粗生成物を減圧蒸留することにより、減圧蒸留初期の段階においては炭素数14のテトラデカンと炭素数12の3,8-ジメチルデカンが留出し、そして、減圧蒸留中期の段階においては炭素数17の3,7-ジメチルペンタデカン(3:n=6)が留出することによって、高純度の3,7-ジメチルペンタデカン(3:n=6)を製造できた。なお、炭素数20の3,7,10,14-テトラメチルヘキサデカンは蒸留の後半に濃縮されて留出した。
【0096】
上記で得られた3,7-ジメチルペンタデカン(3:n=6)の各種スペクトルデータは、実施例4で得られた各種スペクトルデータと同じであった。