(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】ゴム系熱可塑性基材を接着接合するための方法
(51)【国際特許分類】
C09J 201/10 20060101AFI20240826BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240826BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20240826BHJP
C09J 5/00 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
C09J201/10
C09J11/06
C09J11/08
C09J5/00
(21)【出願番号】P 2021547097
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 EP2020057707
(87)【国際公開番号】W WO2020188066
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-03-01
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100116975
【氏名又は名称】礒山 朝美
(72)【発明者】
【氏名】マルセル エルトリ
(72)【発明者】
【氏名】ローベルト ロスカンプ
(72)【発明者】
【氏名】ヘレナ ワリマン
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ フェー
(72)【発明者】
【氏名】ファビエン チョファト
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-534383(JP,A)
【文献】国際公開第2007/063983(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01544254(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、2つの基材Sを接着接合するための方法:
(a)前記2つの基材Sの少なくとも1つに湿気硬化型接着剤組成物Aを適用すること;
(b)適用した前記湿気硬化型接着剤組成物Aが前記2つの基材S間に中間層を形成するように前記2つの基材Sを一緒に接合し、それによって、前記基材Sが前記中間層によって直接結合するようにすること;及び
(c)湿気によって前記湿気硬化型接着剤組成物Aを硬化させること;
ここで、
前記基材Sの少なくとも1つは基材S1であり、前記基材S1が、
- 基材S1の総重量を基準として少なくとも40重量%の混合物E
を含み、前記混合物Eは、混合物Eの総重量を基準とした割合で下記からなり:
- 15~99重量%の少なくとも1種の熱可塑性ポリマーE1、
- 1~85重量%の、
熱可塑性エラストマーではない、少なくとも1種のエラストマーE2;かつ
前記湿気硬化型接着剤組成物Aは、下記を含むことを特徴とする:
-
前記組成物全体を基準として10~40重量%の、1~3個の加水分解性置換基を有する複数のシリル基を含有する
有機ポリマーである少なくとも1種のポリマーP
であって、この有機ポリマーが、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(メタ)アクリレート若しくはポリエーテル又はこれらのポリマーの混合形態からなる群から選択される、少なくとも1種のポリマーP
- 前記組成物全体を基準として10~40重量%の
、ヒドロキシル末端基を有するポリエーテルである、少なくとも1種の可塑剤ポリマーPL、
- 前記組成物全体を基準として0.1~5重量%の
、下記式(I)で表されるアルコキシシラン又は式(I)で表される前記アルコキシシランの縮合から得られるオリゴマーである、少なくとも1種
のアミノ官能性アルコキシシランAS1
:
【化1】
(式中、
R
2
は、1~6個の炭素原子を有する一価のアルキル基であり、
R
3
は、-C
p
H
2p
-NH
2
、-C
p
H
2p
-NH-R
5
、-C
p
H
2p
-NH-C
d
H
2d
-NH
2
、-C
p
H
2p
-NH-C
d
H
2d
-NH-C
e
H
2e
-NH
2
、-C
p
H
2p
-NH-C
d
H
2d
-NH-R
5
及び-C
p
H
2p
-NH-C
d
H
2d
-NH-C
e
H
2e
-NH-R
5
から選択される一価のアミノアルキル基であり、
R
4
は、1~12個の炭素原子を有する一価の直鎖、分岐又は環状のアルキル又はアラルキル基であり、
R
5
は、1~12個の炭素原子を有する一価の直鎖、分岐又は環状のアルキル又はアラルキル基であり、
添え字iは、0又は1の値の整数であり、
添え字kは、2又は3の値の整数であり、但し、i=1の場合にはk=2であり、
添え字pは、1~6の値の整数であり、
添え字d及びeは、独立に2~6の値の整数である)
- 前記組成物全体を基準として0.1~5重量%の
、下記式(Ib)で表されるアルコキシシラン又は式(Ib)で表される前記アルコキシシランの縮合から得られるオリゴマーである、少なくとも1種
のC3~C20アルキル官能性アルコキシシランAS2
:
【化2】
(式中、
R
2
は、1~6個の炭素原子を有する一価のアルキル基であり、
R
4
は、3~20個の炭素原子を有する一価の直鎖、分岐又は環状のアルキル又はアラキル基であり、
添え字kは、2又は3の値の整数である)。
【請求項2】
前記少なくとも1種のエラストマーE2は、ブチルゴム及びハロゲン化ブチルゴムからなる群から選択され、かつ/又は前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーE1は、少なくとも1種の熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(TPE-O)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記熱可塑性ポリマーE1及び前記エラストマーE2は、共連続相を形成する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記基材S1は、少なくとも0.1mmの厚さを有する膜又はシートである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(a)の前に化学反応性プライマー、炎、オキソフルオロ化、プラズマ又はコロナによる前処理によって、前記基材S1を前処理しない、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記湿気硬化型接着剤組成物Aは、前記可塑剤ポリマーPL以外のいかなるさらなる可塑剤も含有しない、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記湿気硬化型接着剤組成物Aは、前記組成物A全体を基準として10~30重量%の量で前記ポリマーPを含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記湿気硬化型接着剤組成物Aは、前記組成物A全体を基準として少なくとも0.5重量%の量で前記C3~C20アルキル官能性アルコキシシランAS2を含み、かつ/又は前記C3~C20アルキル官能性アルコキシシランAS2は、モノマー若しくはオリゴマーのC6~C8アルキル官能性アルコキシシランである、請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記湿気硬化型接着剤組成物Aは、2つの成分A1及びA2からなる二成分型組成物であり、前記第1の成分A1は、前記ポリマーPを含み、及び前記第2の成分A2は、水を含む、請求項1~
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記基材Sの第2の基材は、基材S2であり、前記基材S2は、ガラス、ガラスセラミック、コンクリート、モルタル、レンガ、タイル、石膏、天然石、金属及び合金、繊維製品、木材、木材-樹脂複合材料、樹脂-繊維製品複合材料、樹脂-ガラス繊維又は樹脂-炭素繊維複合材料、塩化ポリビニル(PVC)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリエステル、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、エポキシ樹脂、塗料
の層、ワニス
の層、コーティングされた基材、並びに瀝青からなる群から選択される、請求項1~
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
2つの基材Sを接着接合するための、下記を含む湿気硬化型接着剤組成物Aの使用:
-
前記組成物全体を基準として10~40重量%の、1~3個の加水分解性置換基を有する複数のシリル基を含有する
有機ポリマーである少なくとも1種のポリマーP
であって、この有機ポリマーが、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(メタ)アクリレート若しくはポリエーテル又はこれらのポリマーの混合形態からなる群から選択される、少なくとも1種のポリマーP
- 前記組成物全体を基準として10~40重量%の
、ヒドロキシル末端基を有するポリエーテルである、少なくとも1種の可塑剤ポリマーPL、
- 前記組成物全体を基準として0.1~5重量%の
、下記式(I)で表されるアルコキシシラン又は式(I)で表される前記アルコキシシランの縮合から得られるオリゴマーである、少なくとも1種
のアミノ官能性アルコキシシランAS1
:
【化3】
(式中、
R
2
は、1~6個の炭素原子を有する一価のアルキル基であり、
R
3
は、-C
p
H
2p
-NH
2
、-C
p
H
2p
-NH-R
5
、-C
p
H
2p
-NH-C
d
H
2d
-NH
2
、-C
p
H
2p
-NH-C
d
H
2d
-NH-C
e
H
2e
-NH
2
、-C
p
H
2p
-NH-C
d
H
2d
-NH-R
5
及び-C
p
H
2p
-NH-C
d
H
2d
-NH-C
e
H
2e
-NH-R
5
から選択される一価のアミノアルキル基であり、
R
4
は、1~12個の炭素原子を有する一価の直鎖、分岐又は環状のアルキル又はアラルキル基であり、
R
5
は、1~12個の炭素原子を有する一価の直鎖、分岐又は環状のアルキル又はアラルキル基であり、
添え字iは、0又は1の値の整数であり、
添え字kは、2又は3の値の整数であり、但し、i=1の場合にはk=2であり、
添え字pは、1~6の値の整数であり、
添え字d及びeは、独立に2~6の値の整数である)
- 前記組成物全体を基準として0.1~5重量%の
、下記式(Ib)で表されるアルコキシシラン又は式(Ib)で表される前記アルコキシシランの縮合から得られるオリゴマーである、少なくとも1種
のC3~C20アルキル官能性アルコキシシランAS2
:
【化4】
(式中、
R
2
は、1~6個の炭素原子を有する一価のアルキル基であり、
R
4
は、3~20個の炭素原子を有する一価の直鎖、分岐又は環状のアルキル又はアラキル基であり、
添え字kは、2又は3の値の整数である)
ここで、
前記基材Sの少なくとも1つは基材S1であり、前記基材S1は、
- 基材S1の総重量を基準として少なくとも40重量%の混合物E
を含み、前記混合物Eは、混合物Eの総重量を基準とした割合で下記からなる:
- 15~99重量%の少なくとも1種の熱可塑性ポリマーE1、
- 1~85重量%の
、熱可塑性エラストマーではない、少なくとも1種のエラストマーE2。
【請求項12】
以下を含むパーツキット:
(i)下記を含む湿気硬化型接着剤組成物A:
-
前記組成物全体を基準として10~40重量%の、1~3個の加水分解性置換基を有する複数のシリル基を含有する
有機ポリマーである少なくとも1種のポリマーP
であって、この有機ポリマーが、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(メタ)アクリレート若しくはポリエーテル又はこれらのポリマーの混合形態からなる群から選択される、少なくとも1種のポリマーP
- 前記組成物全体を基準として10~40重量%の
、ヒドロキシル末端基を有するポリエーテルである、少なくとも1種の可塑剤ポリマーPL、
- 前記組成物全体を基準として0.1~5重量%の
、下記式(I)で表されるアルコキシシラン又は式(I)で表される前記アルコキシシランの縮合から得られるオリゴマーである、少なくとも1種
のアミノ官能性アルコキシシランAS1
:
【化5】
(式中、
R
2
は、1~6個の炭素原子を有する一価のアルキル基であり、
R
3
は、-C
p
H
2p
-NH
2
、-C
p
H
2p
-NH-R
5
、-C
p
H
2p
-NH-C
d
H
2d
-NH
2
、-C
p
H
2p
-NH-C
d
H
2d
-NH-C
e
H
2e
-NH
2
、-C
p
H
2p
-NH-C
d
H
2d
-NH-R
5
及び-C
p
H
2p
-NH-C
d
H
2d
-NH-C
e
H
2e
-NH-R
5
から選択される一価のアミノアルキル基であり、
R
4
は、1~12個の炭素原子を有する一価の直鎖、分岐又は環状のアルキル又はアラルキル基であり、
R
5
は、1~12個の炭素原子を有する一価の直鎖、分岐又は環状のアルキル又はアラルキル基であり、
添え字iは、0又は1の値の整数であり、
添え字kは、2又は3の値の整数であり、但し、i=1の場合にはk=2であり、
添え字pは、1~6の値の整数であり、
添え字d及びeは、独立に2~6の値の整数である)
- 前記組成物全体を基準として0.1~5重量%の
、下記式(Ib)で表されるアルコキシシラン又は式(Ib)で表される前記アルコキシシランの縮合から得られるオリゴマーである、少なくとも1種
のC3~C20アルキル官能性アルコキシシランAS2
:
【化6】
(式中、
R
2
は、1~6個の炭素原子を有する一価のアルキル基であり、
R
4
は、3~20個の炭素原子を有する一価の直鎖、分岐又は環状のアルキル又はアラキル基であり、
添え字kは、2又は3の値の整数である);
及び
(ii)少なくとも2つの基材S、
ここで、前記基材Sの少なくとも1つは基材S1であり、前記基材S1は、
- 基材S1の総重量を基準として少なくとも40重量%の混合物E
を含み、前記混合物Eは、混合物Eの総重量を基準とした割合で下記からなる:
- 15~99重量%の少なくとも1種の熱可塑性ポリマーE1、
- 1~85重量%の
、熱可塑性エラストマーではない、少なくとも1種のエラストマーE2。
【請求項13】
請求項1~
10のいずれか一項に記載の方法によって得られる接着接合された基材S。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの基材を接着接合するための方法、2つの基材を接着接合するための接着剤組成物の使用、前記接着剤と2つの基材とを含むパーツキット及び接着接合された基材に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性材料製の膜及びシートは、現在の建築及び建設業界で重要な役割を果たしている。例えば、防水膜は、建設業界において、基礎、トンネルなどの地下表面又は屋根構造を水の浸透に対してシーリングするために使用される。更に、そのような膜は、窓及びファサードの断熱に広く使用されている。
【0003】
先行技術の防水膜又は窓及びファサードの断熱膜は、例えば、水密性を付与するためのポリマー系バリア層を含む多層システムである。バリア層で使用される典型的なポリマーとしては、可塑化ポリ塩化ビニル(p-PVC)などの熱可塑性プラスチック、熱可塑性エラストマー(TPE)及びエチレン-プロピレンジエンモノマー(EPDM)などのエラストマーが挙げられる。熱可塑性エラストマーは、熱可塑性とエラストマー性との両方の特性を有する材料の群である。
【0004】
熱可塑性オレフィン(TPO)と他の熱可塑性エラストマー(TPE)とから構成される膜は、通常、熱融着可能であり、EPDM膜よりも安価であるものの、剛性も高いため、屋根用途への適合性が低下する。可塑化PVCベースの膜は、TPOベースの膜よりも柔軟性を有しているものの、一部の用途における使用が制限される可能性がある環境に有害な可塑剤及び重金属添加剤(難燃剤など)も含む。
【0005】
これらの熱可塑性膜又は熱可塑性ポリオレフィン系ポリマー製の物品の1つの大きい制約は、接着接合により、すなわち接着剤を使用してそれらを接合することが非常に難しいことである。PVCベースの基材は、通常、現在の接着剤技術により接合できるため、PVCベースの基材は、若干例外的である。しかしながら、特に非脆性膜の形状では、屋根、窓又はファサードの断熱材に利用するために必要とされる柔らかさ及び弾性を示すために、PVC基材は、高度に可塑化される必要がある。そのような可塑剤は、可塑剤が移行又は劣化する際に膜特性が着実に劣化することに加えて、環境への悪影響又は可塑剤-基材移行作用などの問題を引き起こす傾向がある。更に、可塑剤は、接着剤中に移行するか、又はPVC表面と接着剤との間に適切な接着剤の力の発現を妨げる表面層を形成する場合があるため、接着特性に悪影響を及ぼす可能性もある。
【0006】
非ハロゲン化ポリオレフィン系材料(TPO又はPDMなど)は、多くの場合、可塑化を全く必要とせず、これらの問題を克服する。しかしながら、その低エネルギーの表面構造のため、これらは、通常、接着剤によって接合することが難しいことで知られている。これらは、熱融着又は機械的手法の使用により互いに接合することができるものの、コンクリート又は木材などの別の基材に直接接着する必要がある場合、広く入手可能な接着剤の性能に関する大きい問題が常に発生する。更に、機械的な連結の場合、例えば、水に対するものなどのシーリング効果は、多くの場合に不十分である。
【0007】
そのため、ポリオレフィン膜(又は他の形状の物体)への反応性接着剤の接着が課題であり、多くの場合、反応性プライマーを使用するか、又は火炎(「火炎処理」)、オキソフッ素化、プラズマ、コロナ若しくは同様の技術を使用するかのいずれかによる化学的改質によって膜を激しく前処理することが必要とされる。ポリオレフィン表面の化学的改質による接着を可能にする高反応性化合物を含むプライマーの使用は、屋根の断熱材などの大面積の用途で実行できないことが多い。これらの全ての場合において、表面改質は、ポリオレフィンに基づく膜又は他の方法で成形された物体を接着剤によって接合するための煩雑な追加の工程である。
【0008】
したがって、上述したような前処理工程を必要とすることなく、2つの基材であって、基材の少なくとも1つは、熱可塑性ポリマー及びエラストマーを含む基材、好ましくはポリオレフィンベースの基材である、2つの基材を接着接合する方法が依然として必要とされている。更に、特に熱可塑性基材中でも接着剤中でも移行性の可塑剤に依存する必要がない、毒性の低い低VOC接着剤を使用するそのような方法を採用することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、熱可塑性ポリマー及びエラストマーを含有する基材のための化学的前処理工程を必要としない、環境に優しい接着剤組成物によって2つの基材を接着接合する方法であって、これらの基材の少なくとも1つは、エラストマー含有熱可塑性ポリマーに基づくものである、方法を提供することである。
【0010】
更に、本発明の目的は、熱可塑性ポリマー及びエラストマーを含む基材と、接着剤とを使用して行うことができるそのような方法であって、基材及び接着剤の両方は、移行性の可塑剤を含まないように配合可能である、方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことに、熱可塑性ポリマー及びエラストマーを含む基材に関連して、シラン官能性ポリマー、アミノ官能性シラン、アルキル官能性シラン及び可塑剤ポリマーを含む湿気硬化型接着剤組成物を使用することにより、基材の化学的前処理を必要としない、前記基材を接着接合するための方法が実現可能であることが見出された。更に、この方法は、移行性の可塑剤を含まない接着剤及び基材を用いて行うことができる。
【0012】
本発明の主題は、請求項1に規定される方法である。
【0013】
この方法の利点の1つは、安価且つ環境に優しいが、接合が困難なゴム変性ポリオレフィン基材を用いて、これらの基材を化学的に改質する前処理なしで実行可能であることである。
【0014】
更なる利点は、基材及び接着剤の両方が低い毒性及び低VOCを示し、且つ移行性の可塑剤を含まないように配合できるという事実である。
【0015】
更に、熱融着と異なり、この方法は、このような熱可塑性ポリマー及びエラストマーを含む基材を、コンクリート、木材、ガラスなどのような建築業界で一般的な他の基剤に接着接合することができ、大面積の接着が可能であり、これらの基材の特別な前処理も不要である。
【0016】
本発明の別の態様は、別の独立請求項に示される。本発明の好ましい態様は、従属請求項に示される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の主題は、以下の工程を含む2つの基材Sを接着接合するための方法である:
(a)2つの基材Sの少なくとも1つに湿気硬化型接着剤組成物Aを適用すること;
(b)適用した湿気硬化型接着剤組成物Aが2つの基材S間に中間層を形成するように2つの基材Sを一緒に接合し、それによって、基材Sが中間層によって直接結合するようにすること;及び
(c)湿気によって湿気硬化型接着剤組成物Aを硬化させること;
ここで、
基材Sの少なくとも1つは基材S1であり、この基材S1が、
- 基材S1の総重量を基準として少なくとも40重量%の混合物E
を含み、この混合物Eは、混合物Eの総重量を基準とした割合で下記からなり:
- 15~99重量%の少なくとも1種の熱可塑性ポリマーE1、
- 1~85重量%の少なくとも1種のエラストマーE2;かつ
湿気硬化型接着剤組成物Aは、下記を含むことを特徴とする:
- シラン基を含有する少なくとも1種のポリマーP、
- 組成物全体を基準として10~40重量%の少なくとも1種の可塑剤ポリマーPL、
- 組成物全体を基準として0.1~5重量%の少なくとも1種のモノマー又はオリゴマーのアミノ官能性アルコキシシランAS1、
- 組成物全体を基準として0.1~5重量%の少なくとも1種のモノマー又はオリゴマーのC3~C20アルキル官能性アルコキシシランAS2。
【0018】
本明細書において、用語「シラン基」は、有機基又はオルガノシロキサン基に結合しており、ケイ素原子上に1~3個、特に2個又は3個の加水分解性置換基を有するシリル基を指す。特に有用な加水分解性置換基は、アルコキシ基である。これらのシラン基は、「アルコキシシラン基」とも呼ばれる。シラン基は、例えば、シラノールとしてなど、部分的又は完全に加水分解された形態であり得る。
【0019】
「ヒドロキシシラン」、「イソシアナトシラン」、「アミノシラン」及び「メルカプトシラン」は、それぞれシラン基に加えて有機基上に1個以上のヒドロキシル基、イソシアナト基、アミノ基又はメルカプト基を有するオルガノアルコキシシランを指す。
【0020】
「アミノ官能性化合物」は、アミノ基を含有する化合物を指す。
【0021】
「一級アミノ基」及び「一級アミン窒素」は、NH2基及び有機基に結合している窒素原子をそれぞれ指し、「二級アミノ基」及び「二級アミン窒素」は、NH基及び共に環の一部であり得る2個の有機基に結合している窒素原子をそれぞれ指し、「三級アミノ基」及び「三級アミン窒素」は、N基及び3個の有機基に結合している窒素原子をそれぞれ指し、これらの2つ又は3つが一緒になって1つ以上の環の一部であり得る。したがって、「一級アミノシラン」は、一級アミノ基を含むアミノシランであり、「二級アミノシラン」は、二級アミノ基を含むアミノシランである。後者は、一級及び二級のアミノ基の両方を有する化合物も包含する。
【0022】
「ポリオキシアルキレン基」は、エーテル基を含有し、且つ(O-R)型の3個以上の繰り返し単位を連続して含有する直鎖ヒドロカルビル基を指し、Rは、例えば、2個の活性水素原子を有するスターター分子上へのエチレンオキシド又は1,2-プロピレンオキシドの重付加からなどのアルキレン基である。
【0023】
ポリオール、ポリエーテル又はポリイソシアネートのような「ポリ」で始まる物質名は、正式には、1分子当たりでそれらの名称で存在する2個以上の官能基を含有する物質を指す。
【0024】
用語「有機ポリマー」は、化学的に均一であるが、重合度、モル質量及び鎖長に関して異なり、ポリマー主鎖中に多数の炭素原子を有する、ポリ反応(重合、重付加、重縮合)によって合成された高分子の集団及びそのような高分子の集団の反応生成物を包含する。ポリオルガノシロキサン骨格を有するポリマー(一般に「シリコーン」と呼ばれる)は、本明細書に関連して有機ポリマーではない。
【0025】
用語「シラン基を含有するポリエーテル」は、シラン基を含有し、ポリエーテル単位に加えて、ウレタン基、尿素基又はチオウレタン基も含有し得る有機ポリマーも包含する。シラン基を含有するそのようなポリエーテルは、「シラン基を含有するポリウレタン」と呼ばれる場合もある。
【0026】
「分子量」は、本明細書において、「基(ラジカル)」とも呼ばれる分子又は分子の一部のモル質量(1モル当たりのグラム)を意味すると理解される。「平均分子量」は、分子又は基のオリゴマー又はポリマー混合物の数平均Mnを意味し、これは、典型的には、標準としてのポリスチレンに対するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定されることが理解される。
【0027】
「保存安定性」又は「保存可能」は、物質又は組成物が、保存の結果として、その使用に適切な程度までその用途又は使用特性、特に粘度及び架橋速度において変化せずに長期間、典型的には少なくとも3ヶ月~最大で6ヶ月以上にわたって適切な容器中で室温において保存できる場合の物質又は組成物を指す。
【0028】
「室温」は、約23℃の温度を指す。
【0029】
各場合における本明細書中の式中の点線は、置換基と、対応する分子基との間の結合を表す。
【0030】
アミノ官能性アルコキシシランの窒素含有率は、ケルダール法又はデュマ法によって測定することができ、これらは、共に分析化学の分野の当業者に公知である。
【0031】
「熱可塑性ポリマー」という用語は、熱可塑性を有するポリマー系材料を指す。これは、これが加熱すると軟化して、最終的に溶融し、冷却すると固化してアモルファス又は半結晶構造を有する固体形態になることを意味する。熱可塑性ポリマーは、物理的特性をほとんど又はまったく変化させずに溶融及び再固化することができる。
【0032】
「熱可塑性エラストマー」(TPE)という用語は、熱可塑性ポリマーの力学的挙動及び熱可塑性の加工性に関してエラストマーのような特性を有するポリマー系材料を指す。したがって、「熱可塑性エラストマー」という用語は、融点(Tm)を超えると二次加工品に成形可能な熱可塑性を示し、特定の「設計温度範囲」にわたってエラストマー挙動を示すポリマー又はポリマーブレンドを指す。
【0033】
「熱可塑性オレフィン」(TPO)という用語は、オレフィンモノマー単位のみから構成される熱可塑性エラストマー(TPE)を指す。また、本明細書における「熱可塑性オレフィン」という用語は、「熱可塑性ポリオレフィン」及び「オレフィン性熱可塑性エラストマー」(TPE-O)という用語と交換可能に使用することができる。
【0034】
「エラストマー」という用語は、大きい変形から回復することができ、可溶性又は溶融性を有さず沸騰溶媒中に本質的に不溶性である(但し膨潤可能である)状態に変性可能であるか又は既にそのような状態である、任意の天然、合成若しくは変性された高分子量ポリマー又はポリマーの組み合わせを指す。本明細書において、「エラストマー」という用語は、「ゴム」という用語と交換可能に使用することができる。典型的なエラストマーは、外的に加えられた力により元の寸法の少なくとも200%まで伸長又は変形することができ、外的な力が開放された後に小さい永久歪み(典型的には約20%以下)のみ維持され、元の寸法を実質的に回復する。
【0035】
「ガラス転移温度」という用語は、その温度を超えるとポリマー成分が柔らかくしなやかになり、その温度を下回ると硬くガラス状になる、ISO 11357規格に従って示差走査熱量測定(DSC)法によって測定される温度を指す。測定は、摂氏2度/分の加熱速度を使用して、Mettler Toledo 822e装置を用いて行うことができる。Tg値は、DSCソフトウェアを使用して測定されたDSC曲線から決定することができる。
【0036】
「架橋された」という用語は、ポリマー鎖が機械的及び熱的に安定な複数の共有結合によって相互に結合されているポリマーマトリックスを意味する。物理的に架橋されたポリマーなどの他の可能な形態の架橋ポリマーは、本開示との関係において「架橋された」とみなされない。「硬化された」及び「加硫された」という用語は、「架橋された」という用語と交換可能に使用することができる。
【0037】
「架橋度」という用語は、沸騰キシレン中に不溶性である成分の割合を指す。不溶性成分のパーセント割合は、沸騰キシレン中で試験片を還流し、乾燥残留物を秤量し、試験組成物中に存在する他の可溶性成分及び不溶性成分について適切な補正をすることによって決定することができる。好ましくは、架橋度は、ISO 10147規格で定義された方法を使用することによって測定される。
【0038】
プロセス又はプロセスの工程を説明するために使用される際の「連続」という用語は、定常状態又は安定した反応条件が達成されている間に試薬及び反応生成物が連続的に供給及び除去される任意のプロセスを指す。
【0039】
組成物中の「少なくとも1つの成分Xの量又は含有量」、例えば「少なくとも1種の熱可塑性ポリマーの量」は、組成物中に含まれる全ての熱可塑性ポリマーの個々の量の合計を指す。例えば、組成物が20重量%の少なくとも1種の熱可塑性ポリマーを含む場合、組成物に含まれる全ての熱可塑性ポリマーの量の合計は、20重量%である。
【0040】
「溶融ブレンド」は、ブレンド成分の溶融加工によって得られる。「溶融加工」という用語は、本明細書では、少なくとも1つの溶融ポリマー成分を少なくとも1つの他の成分(別の溶融ポリマー成分又は触媒などの固体成分であり得る)とよく混合するプロセスを指す。「溶融加工」という用語は、「溶融混合」及び「溶融ブレンド」という用語と交換可能に使用することができる。
【0041】
本発明による方法は、湿気硬化型接着剤組成物Aを使用して2つの基材Sを接着接合する方法である。
【0042】
基材S
基材Sの少なくとも1つは、基材S1であり、前記基材S1は、基材S1の総重量を基準として少なくとも40重量%の混合物Eを含み、前記混合物Eは、
- 15~99重量%の少なくとも1種の熱可塑性ポリマーE1、
- 1~85重量%の少なくとも1種のエラストマーE2
からなり、前記割合は、混合物Eの総重量を基準とする。
【0043】
したがって、基材S1は、少なくとも40重量%の混合物Eを含む。混合物Eは、15~99重量%の少なくとも1種の熱可塑性ポリマーE1と、1~85重量%の少なくとも1種のエラストマーE2との混合物である。
【0044】
混合物E中に含まれる少なくとも1種の熱可塑性ポリマーE1及び少なくとも1種のエラストマーE2の量は、特に制限されない。
【0045】
少なくとも1種の熱可塑性ポリマーE1は、混合物E中において、混合物Eの総重量を基準として少なくとも25重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、最も好ましくは少なくとも65重量%の量で存在することが好ましい場合がある。特に基材S1が高い弾性を必要とする用途では、高い割合のエラストマーE2が好ましい場合がある。しかしながら、混合物E中のエラストマーE2の割合を増加させると、特にエラストマーE2が架橋されないか又は低い架橋度を有する場合、混合物E及び/又は基材S1の粘着性が増加する可能性がある。増加した粘着性を有する組成物を使用して製造された成形品は、ブロッキングの増加も示し、これは、切断、融着、積層及びロールからの巻き戻しなどの成形品の様々な後処理工程を煩雑にする。そのため、少なくとも1種のエラストマーE2は、混合物E中において、混合物Eの総重量を基準として75重量%以下、より好ましくは50重量%以下、更に好ましくは40重量%以下、最も好ましくは35重量%以下の量で存在することが好ましい場合がある。
【0046】
1つ以上の実施形態によれば、混合物Eは、
(a)25~99重量%、好ましくは35~98重量%、より好ましくは45~97重量%、更に好ましくは55~96重量%、最も好ましくは65~95重量%の少なくとも1種の熱可塑性ポリマーE1と、
(b)1~75重量%、好ましくは2~65重量%、より好ましくは3~55重量%、更に好ましくは4~45重量%、最も好ましくは5~35重量%の少なくとも1種のエラストマーE2と
からなり、前記割合は、混合物Eの総重量を基準とする。
【0047】
1つ以上の実施形態によれば、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーE1及び少なくとも1種のエラストマーE2は、共連続相として混合物E及び/又は基材S1中に存在する。「共連続」という表現は、各相が空間内で連続になるのに伴い、組成物中の分散ポリマー相と連続ポリマー相との区別が困難になることを意味すると理解される。
【0048】
また、第1の相が第2の相内に分散しているように見える領域が存在する場合もあり、その逆の場合もある。更に、各ポリマーは、連続構造の形態であり、これらの各ポリマーの構造は、互いに絡み合って共連続マクロ構造を形成する。これらの実施形態では、混合物Eに含まれる少なくとも1種のエラストマーE2は、低い架橋度、特にISO 10147規格で定義された方法を使用して測定される10.0重量%以下、より好ましくは5.0重量%以下、更に好ましくは2.5重量%以下、最も好ましくは1.5重量%以下の架橋度を有することが好ましい場合がある。更に、混合物E中に含まれる少なくとも1種のエラストマーE2は、非架橋エラストマーであることが好ましい場合がある。
【0049】
1つ以上の更なる実施形態によれば、少なくとも1種のエラストマーE2は、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーE1の連続相中に分散している粒子に基づく相として混合物E中に存在する。これらの実施形態では、組成物に含まれる少なくとも1種のエラストマーE2は、高い架橋度、特にISO 10147規格で定義された方法を使用して測定される少なくとも25重量%、好ましくは少なくとも50重量%、更に好ましくは少なくとも75重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%の架橋度を有することが好ましい場合がある。熱可塑性成分の連続相中に分散された架橋エラストマー成分の粒子を含む組成物は、典型的には動的加硫プロセスによって製造される。このような組成物は、熱可塑性加硫物(TPV)としても知られている。「動的加硫プロセス」という用語は、本明細書では、プラスチック成分への最小限の影響のみを与え、技術的に適合性のあるゴム成分及びプラスチック成分を含有するブレンドの溶融混合中にゴム成分を選択的に加硫するプロセスを指す。
【0050】
好ましくは、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーE1と少なくとも1種のエラストマーE2とは、相溶性である。「相溶性」のポリマー成分とは、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーE1と少なくとも1種のエラストマーE2とから構成されるブレンドの特性が個々のポリマー成分の特性より劣らないことを意味すると理解される。少なくとも1種の熱可塑性ポリマーE1と少なくとも1種のエラストマーE2とがある程度混和性であるが、必ずしも互いに完全に混和性である必要はないことも好ましい場合がある。「混和性」であるポリマー成分とは、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーE1と少なくとも1種のエラストマーE2とから構成されるポリマーブレンドが負のギブス自由エネルギー及び混合熱を有することを意味すると理解される。完全に混和性のポリマー成分からなるポリマーブレンドは、動的機械熱分析(DMTA)を使用して測定することができる単一のガラス転移点を有する傾向がある。ガラス転移点は、例えば、測定されたtanδ曲線(貯蔵弾性率と損失弾性率との比)のピークとして決定することができる。
【0051】
少なくとも1種の熱可塑性ポリマーE1のタイプは、特に限定されない。原則として、全ての熱可塑性ポリマーを熱可塑性ポリマーE1として使用することができる。
【0052】
好ましい熱可塑性ポリマーE1としては、ポリエチレン(PE)、特に低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)及び直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)並びに塩化ポリビニル(PVC)などのポリオレフィンが挙げられる。
【0053】
1つ以上の実施形態によれば、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーE1は、熱可塑性エラストマー(TPE)である。
【0054】
熱可塑性エラストマー(TPE)は、特定の温度範囲にわたってゴム弾性を示すものの、高温では熱可塑性プラスチックとして加工可能なポリマー系材料の群である。それらには、熱可塑性ポリマー成分とエラストマーポリマー成分とのコポリマー及びブレンドの分類が含まれる。典型的な熱可塑性エラストマーは、熱可塑性ポリマー成分とエラストマー成分とのブレンドである。熱可塑性エラストマーの成分は、反応器ブレンドとして形成することができ、その場合、熱可塑性ポリマー及びエラストマーは、異なる触媒を使用して単一の反応容器内で同時に製造されるか、又は成分が別々に製造されてから、引き続き高せん断混合技術を使用して溶融ブレンドされる物理的ブレンドとして製造される。熱可塑性エラストマーは、相分離したハード(結晶)セグメント及びソフト(アモルファス)セグメントを含む半結晶性のランダム又はブロックコポリマーから構成される単一のポリマー成分材料として供給することもできる。
【0055】
市販の熱可塑性エラストマーとしては、例えば、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、スチレンブロックコポリマー(TPS)、熱可塑性加硫物(TPV)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性コポリエステル(TPC)及び熱可塑性ポリアミド(TPA)が挙げられる。
【0056】
好ましくは、熱可塑性エラストマーである場合の少なくとも1種の熱可塑性ポリマーE1は、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)又はエチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、特に40%未満の酢酸ビニルモノマーを含むEVAである。熱可塑性ポリオレフィンは、オレフィン成分のみに基づいた熱可塑性エラストマーである。これらは、「熱可塑性オレフィン」又は「オレフィン性熱可塑性エラストマー」(TPE-O)としても知られている。市販の熱可塑性ポリオレフィンとしては、反応器ブレンド、物理的ブレンド及び単一ポリマー成分の材料、特にオレフィンモノマーのランダムコポリマー及びブロックコポリマーから構成されるものが挙げられる。ブレンドタイプのTPOは、典型的には、熱可塑性成分としてのポリプロピレン又はポリエチレンなどの少なくとも1種のポリオレフィンと、エラストマー成分としてのエチレンプロピレンゴム(EPR)又はエチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)などの少なくとも1種のオレフィンコポリマーエラストマー(OCE)とを含む。
【0057】
反応器ブレンドタイプのTPOとしては、異相コポリマー又は異相ランダムコポリマー及びインパクトコポリマー(ICP)として特徴付けられる市販製品も挙げられる。異相ランダムコポリマーは、典型的には、プロピレンランダムコポリマーとエチレンプロピレンゴム(EPR)との反応器ブレンドである。典型的なインパクトコポリマーは、ポリプロピレンマトリックスなどの半結晶性ホモポリマーマトリックスと、ホモポリマーマトリックス内に分散されているエチレン又はプロピレンコポリマー相などのエラストマー相とを含む。インパクトコポリマー中のエラストマー成分の量は、30重量%以下、特に20重量%以下など、通常、ホモポリマーマトリックスの量よりも大幅に少ない。エラストマー相をより多く含むインパクトコポリマータイプの製品は、典型的には、ソフトな「TPO」又は「反応器TPO」として特徴付けられる。
【0058】
少なくとも1種の熱可塑性ポリマーE1としての使用に適した反応器ブレンドタイプのTPOは、例えば、Lyondell BasellからHifax(登録商標)CA 10A、Hifax(登録商標)CA 12A及びHifax(登録商標)CA 212AなどのHifax(登録商標)の商品名並びにAdflex(登録商標)及びAdsyl(登録商標)の商品名で市販されている。異相ランダムプロピレンコポリマーとして特徴付けられる追加の適切な反応器ブレンドタイプのTPOは、例えば、Borealis PolymersからBorsoft(登録商標)SD233CFなどのBorsoft(登録商標)の商品名で市販されている。
【0059】
少なくとも1種の熱可塑性ポリマーE1として使用される適切な単一ポリマー成分TPOとしては、相分離したハード(結晶)セグメント及びソフト(アモルファス)セグメントを含むオレフィン性モノマーのランダムコポリマー及びブロックコポリマーが挙げられる。これらのタイプのTPOとしては、例えば、エチレン-α-オレフィンコポリマー及びプロピレン-α-オレフィンコポリマーが挙げられる。プロピレン-α-オレフィンコポリマーは、通常、プラストマー又はエラストマーとして特徴付けられる一方、エチレン-α-オレフィンコポリマーは、典型的には、ポリオレフィンプラストマー(POP)又はポリオレフィンエラストマー(POE)と呼ばれる。プラストマーとポリオレフィンエラストマーとの基本的な相違は、プラストマーがポリオレフィンエラストマーよりも若干低い弾性を有する傾向があることである。
【0060】
少なくとも1種の熱可塑性ポリマーE1として使用されるエチレン-α-オレフィンコポリマーに基づく適切なポリオレフィンプラストマー(POP)は、例えば、Dow ChemicalsからAffinity(登録商標)EG8100G、Affinity(登録商標)EG8200G、Affinity(登録商標)SL8110G、Affinity(登録商標)KC8852G、Affinity(登録商標)VP8770G及びAffinity(登録商標)PF1140GなどのAffinity(登録商標)の商品名並びにExxon MobilからExact(登録商標)3024、Exact(登録商標)3027、Exact(登録商標)3128、Exact(登録商標)3131、Exact(登録商標)4049、Exact(登録商標)4053、Exact(登録商標)5371及びExact(登録商標)8203などのExact(登録商標)の商品名で市販されている。
【0061】
少なくとも1種の熱可塑性ポリマーE1として使用されるエチレン-α-オレフィンランダムコポリマーに基づく適切なポリオレフィンエラストマー(POE)は、例えば、Dow ChemicalsからEngage(登録商標)7256、Engage(登録商標)7467、Engage(登録商標)7447、Engage(登録商標)8003、Engage(登録商標)8100、Engage(登録商標)8480、Engage(登録商標)8540、Engage(登録商標)8440、Engage(登録商標)8450、Engage(登録商標)8452、Engage(登録商標)8200及びEngage(登録商標)8414などのEngage(登録商標)の商品名で市販されている。
【0062】
少なくとも1種の熱可塑性ポリマーE1として使用されるエチレン-α-オレフィンブロックコポリマーに基づく適切なオレフィンブロックコポリマー(OBC)は、例えば、Dow ChemicalsからInfuse(登録商標)9100、Infuse(登録商標)9107、Infuse(登録商標)9500、Infuse(登録商標)9507及びInfuse(登録商標)9530などのInfuse(登録商標)の商品名で市販されている。
【0063】
少なくとも1種の熱可塑性ポリマーE1として使用されるプロピレン-エチレンコポリマーに基づく適切なプラストマーは、例えば、Dow ChemicalsからVersify(登録商標)2200、Versify(登録商標)3000、Versify(登録商標)3200及びVersify(登録商標)4200などのVersify(登録商標)の商品名で市販されている。
【0064】
少なくとも1種の熱可塑性ポリマーE1として使用されるプロピレン-エチレンコポリマーに基づく適切なエラストマーは、例えば、Dow ChemicalsからVersify(登録商標)2300、Versify(登録商標)340及びVersify(登録商標)4301などのVersify(登録商標)の商品名並びにExxon MobilからVistamaxx(登録商標)6102、Vistamaxx(登録商標)6202及びVistamaxx(登録商標)3000などのVistamaxx(登録商標)の商品名で市販されている。
【0065】
少なくとも1種の熱可塑性ポリマーE1は、いくつかの好ましい実施形態では、2種以上の熱可塑性ポリマー、特に2種以上の熱可塑性ポリオレフィン(TPO)の混合物である。そのような混合物により、機械的特性をよりバランスのとれた範囲にすることができ、また基材S1が処理し易くなる。
【0066】
好ましい実施形態では、熱可塑性ポリマーE1は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、エチレン-α-オレフィンランダムコポリマー、スチレンブロックコポリマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー又はこれらのポリマーの混合物から選択される。
【0067】
少なくとも1種のエラストマーE2は、好ましくは、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、エチレン-プロピレンジエンゴム(EPDM)、天然ゴム、クロロプレンゴム、合成1,4-シス-ポリイソプレン、ポリブタジエン、エチレン-プロピレンゴム、スチレン-ブタジエンコポリマー、イソプレン-ブタジエンコポリマー、スチレン-イソプレン-ブタジエンゴム、メチルメタクリレート-ブタジエンコポリマー、メチルメタクリレート-イソプレンコポリマー、アクリロニトリル-イソプレンコポリマー及びアクリロニトリル-ブタジエンコポリマーからなる群から選択される。
【0068】
好ましいエラストマーとしては、イソブチレンに基づくホモポリマー及びコポリマーが挙げられる。これらのポリマーは、イソブチレン由来の単位などのC4~C7のイソモノオレフィン由来の単位と、少なくとも1種の他の重合可能な単位とのランダムコポリマーとして説明することができる。
【0069】
少なくとも1種のエラストマーE2は、好ましくは、ブチルゴム及びハロゲン化ブチルゴムからなる群から、好ましくはハロゲン化ブチルゴムから選択される。「ブチルゴム」という用語は、本明細書では、大部分のC4~C7のモノオレフィンモノマー、好ましくはイソオレフィンモノマーと、少量(例えば、30重量%以下)のC4~C14マルチオレフィンモノマー、好ましくは共役ジオレフィンとを含むモノマー混合物由来のポリマーを意味する。
【0070】
好ましいC4~C7のモノオレフィンモノマーは、イソブチレン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、4-メチル-1-ペンテン及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0071】
好ましいC4~C14マルチオレフィンには、C4~C10共役ジオレフィンが含まれる。好ましいC4~C10の共役ジオレフィンは、イソプレン、ブタジエン、2,4-ジメチルブタジエン、ピペリレン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、2-ネオペンチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、2,5-ジメチル-2,4-ヘキサジエン、2-メチル-1,4-ペンタジエン、2-メチル-1,6-ヘプタジエン、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、1-ビニル-シクロヘキサジエン及びそれらの混合物を含む群から選択することができる。
【0072】
好ましいブチルゴムは、約80重量%~約99重量%のC4~C7モノオレフィンモノマーと、約1.0重量%~約20重量%のC4~C14マルチオレフィンモノマーとを含むモノマー混合物から誘導される。より好ましくは、モノマー混合物は、約85重量%~約99重量%のC4~C7モノオレフィンモノマーと、約1.0重量%~約10重量%のC4~C14マルチオレフィンモノマーとを含む。最も好ましくは、モノマー混合物は、約95重量%~約99重量%のC4~C7モノオレフィンモノマーと、約1.0重量%~約5.0重量%のC4~C14マルチオレフィンモノマーとを含む。
【0073】
最も好ましいブチルゴムは、約97重量%~約99.5重量%のイソブチレンと、約0.5重量%~約3重量%のイソプレンとを含むモノマー混合物から誘導される。
【0074】
「ハロゲン化ゴム」という用語は、本明細書では、少なくとも0.1モルパーセントのハロゲン含有量を有するゴムを指し、この中のハロゲンは、好ましくは、臭素、塩素及びヨウ素からなる群から選択される。好ましいハロゲン化ブチルゴムは、ブチルゴムの総重量を基準として10重量%以下、より好ましくは7.5重量%以下、最も好ましくは5.0重量%以下のハロゲン含有量を有し得る。
【0075】
1つ以上の実施形態によれば、少なくとも1種のエラストマーE2は、ブチルゴムの総重量を基準として0.1~10重量%、好ましくは0.5~7.5重量%、より好ましくは0.5~5.0重量%の範囲のハロゲン含有量を有するハロゲン化ブチルゴム、好ましくはブロモブチルゴム又はクロロブチルゴムである。1つ以上の更なる実施形態によれば、少なくとも1種のエラストマーは、0.1~5.0重量%、好ましくは0.1~3.5重量%、より好ましくは0.1~2.5重量%、最も好ましくは0.1~1.5重量%の範囲のハロゲン含有量を有するハロゲン化ブチルゴム、好ましくはブロモブチルゴム又はクロロブチルゴムである。
【0076】
本発明による方法の好ましい実施形態では、少なくとも1種のエラストマーE2は、ブチルゴム及びハロゲン化ブチルゴムからなる群から選択され、且つ/又は少なくとも1種の熱可塑性ポリマーE1は、少なくとも1種の熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(TPE-O)である。
【0077】
基材S1は、補助成分、例えばUV及び熱安定剤、UV吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、難燃剤、充填剤、染料、二酸化チタン及びカーボンブラックなどの顔料、艶消し剤、帯電防止剤、耐衝撃性改良剤、殺生物剤並びに加工助剤(潤滑剤、スリップ剤、帯電防止剤及びデネスト助剤等)を更に含み得る。補助成分の総量は、基材S1の総重量を基準として好ましくは55重量%以下、より好ましくは50重量%以下、最も好ましくは45重量%以下である。
【0078】
上で定義した基材S1は、好ましくは、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーE1と少なくとも1種のエラストマーE2とからなる混合物Eを含む開始ブレンドを溶融加工することを含むプロセスによって得られる。「溶融加工」という用語は、本開示では、少なくとも1種の溶融ポリマー成分が、別の溶融ポリマー成分又は固体成分(充填剤又は触媒など)であり得る少なくとも1種の他の成分とよく混合されるプロセスを指す。溶融加工された出発ブレンドは、そのまま使用することができるか、又は当業者に公知の任意の従来の技術、例えば押出、成形若しくはカレンダー加工技術を使用することによって成形品に更に加工することができる。好ましくは、基材S1は、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーE1と少なくとも1種のエラストマーE2とからなる混合物Eを含む開始ブレンドを溶融加工し、溶融加工した開始ブレンドを、押出機のダイを通して押し出すことによって得られる。
【0079】
溶融加工は、好ましくは、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーE1の融点よりも高い温度又は出発ブレンドが2種以上の熱可塑性ポリマーE1を含む場合には最も高い融点を有する熱可塑性ポリマーE1よりも高い温度で行われる。溶融加工は、ブラベンダー、バンバリー若しくはロールミキサーなどの任意の従来のミキサーを使用するバッチプロセスとして又は連続型ミキサー、好ましくは一軸若しくは二軸押出機などの押出機を使用する連続プロセスとして行うことができる。
【0080】
出発ブレンドは、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーE1及び少なくとも1種のエラストマーE2に加えて、少なくとも1種の触媒を含むことが好ましい場合がある。溶融加工工程中及び/又は後、ポリマー成分、特に少なくとも1種のエラストマーE2の鎖延長及び/又は架橋及び/又はカップリング反応を触媒するために、少なくとも1種の触媒が出発ブレンド中に存在し得る。
【0081】
少なくとも1種の触媒は、好ましくは、金属酸化物、脂肪酸の金属塩、ホウ酸の金属塩、硫黄、フェノール樹脂触媒、脂肪酸及びそれらの混合物からなる群から選択される。適切な金属酸化物触媒としては、例えば、ZnO、CaO、MgO、Al2O3、CrO3、FeO、Fe2O3、NiO及びそれらの混合物が挙げられる。適切な硫黄触媒としては、粉末硫黄、沈降硫黄、高分散硫黄、表面処理された硫黄、不溶性の硫黄、ジモルホリン二硫化物、アルキルフェノール二硫化物及びそれらの混合物が挙げられる。適切なフェノール樹脂触媒としては、アルキルフェノール樹脂の臭化物若しくは塩化第一スズ、クロロプレン又は別のハロゲン供与体とアルキルフェノール樹脂とを含有する混合触媒及びそれらの混合物が挙げられる。
【0082】
少なくとも1種の触媒は、使用される場合、出発ブレンドの総重量を基準として好ましくは10重量%以下、より好ましくは7.5重量%以下、最も好ましくは5.0重量%以下の量で出発ブレンド中に存在する。少なくとも1種の触媒は、出発ブレンドの総重量を基準として0.1~7.5重量%、より好ましくは0.1~5.0重量%、更に好ましくは0.1~2.5重量%、最も好ましくは0.25~2.0重量%の量で出発ブレンド中に存在することが好ましい場合がある。少なくとも1種の触媒の一部は、溶融加工及び成形工程中のポリマー成分の反応で消費されないことも可能である。したがって、少なくとも触媒が基材S1にも存在することが有利な場合がある。基材S1中の少なくとも1種の触媒の量は、好ましくは、出発ブレンド中よりも大幅に少ない。基材S1は、基材S1の総重量を基準として1.5重量%以下、より好ましくは1.0重量%以下、最も好ましくは0.5重量%以下の、金属酸化物、硫黄、フェノール樹脂触媒、脂肪酸及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の触媒を含むことが好ましい場合がある。
【0083】
少なくとも1種の触媒は、グアニジン化合物、アルデヒドアミン化合物、アルデヒドアンモニウム化合物、チアゾール化合物、スルホンアミド化合物、チオ尿素化合物、チウラム化合物、キサンタン化合物及びジチオカルバメート化合物からなる群から選択される少なくとも1種の促進剤と組み合わせて使用され得る。そのような促進剤は、開始ブレンド中に0.1~5.0phr(少なくとも1種のエラストマーE2の100重量部当たりの重量部)の総量で存在することができる。
【0084】
1つ以上の実施形態によれば、少なくとも1種の触媒は、ZnO、CaO、MgO、Al2O3、CrO3、FeO、Fe2O3、NiO及び少なくとも6個の炭素原子、好ましくは13個の炭素原子を有する脂肪酸の亜鉛塩及びホウ酸亜鉛からなる群から選択される。1つ以上の更なる実施形態によれば、少なくとも1種の触媒は、ZnO又はZnOと、CaO、MgO、Al2O3、CrO3、FeO、Fe2O3及びNiOからなる群から選択される別の金属酸化物又は少なくとも6個の炭素原子、好ましくは13個の炭素原子を有する脂肪酸の亜鉛塩又はホウ酸亜鉛との混合物である。
【0085】
出発ブレンド及び基材S1は、少なくとも1種の触媒及び/又は1種以上の脂肪酸と異なる脂肪酸の1種以上の金属塩を更に含み得る。好ましくは、脂肪酸の金属塩中の金属は、Zn、Ca、Mg、Al、Cr、Fe、Fe及びNiからなる群から選択される。好ましくは、脂肪酸は、少なくとも6個の炭素原子、より好ましくは少なくとも13個の炭素原子を有する。少なくとも6個の炭素原子、特に少なくとも13個の炭素原子を有する飽和脂肪酸が特に適切であることが見出された。
【0086】
E1とE2とを含む基材S1は、安定剤、特にUV安定剤及び好ましくは少なくとも1種のヒンダードアミン光安定剤(HALS)を更に含み得る。これらの化合物は、典型的には、光によるポリマーの分解に対する安定剤としてポリマーブレンドに添加される。少なくとも1種のヒンダードアミン光安定剤は、好ましくは、アルコキシアミンヒンダードアミン光安定剤(NOR-HALS)である。1つ以上の実施形態によれば、出発ブレンドは、ブレンドの総重量を基準として0.1~10.0重量%、好ましくは0.1~5.0重量%の少なくとも1種のアルコキシアミンヒンダードアミン光安定剤(NOR-HALS)を更に含む。
【0087】
E1とE2とを含む基材S1は、少なくとも1種の難燃剤を更に含み得る。これらは、特に基材S1がルーフィング用途で使用される場合、例えば本発明の組成物から構成される1つ以上の層を含むルーフィング膜を提供するために必要とされる。
【0088】
1つ以上の実施形態によれば、E1とE2とを含む基材S1は、基材S1の総重量を基準として1~50重量%、好ましくは5~40重量%の、水酸化マグネシウム、三水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、ポリリン酸アンモニウム並びにメラミン-、メラミン樹脂-、メラミン誘導体-、メラミン-ホルムアルデヒド-、シラン-、シロキサン-及びポリスチレンでコーティングされたポリリン酸アンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種の難燃剤を更に含む。
【0089】
E1とE2とを含む基材S1は、充填剤を更に含み得る。適切な充填剤としては、例えば、砂、花崗岩、炭酸カルシウム、粘土、膨張粘土、珪藻土、軽石、マイカ、カオリン、タルク、ドロマイト、ゾノトライト、パーライト、バーミキュライト、ウォラストナイト、バライト、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、アルミン酸カルシウム、シリカ、ヒュームドシリカ、溶融シリカ、エアロゲル、ガラスビーズ、中空ガラス球、セラミック球、ボーキサイト、粉砕コンクリート及びゼオライトなどの不活性無機充填剤が挙げられる。
【0090】
基材S1は、任意の形状であり得る。好ましくは、これは、膜又はシートである。好ましくは、そのような膜又はシートは、少なくとも0.1mm、好ましくは少なくとも1mm、より好ましくは少なくとも5mmの層厚さを有する。
【0091】
本発明の1つ以上の実施形態では、両方の基材Sが基材S1である。これらの実施形態では、本発明による方法は、例えば、感熱用途において熱融着の代わりに使用することができる。
【0092】
別の実施形態では、基材Sは、第1の基材S1に接着接合される第2の基材S2を含む。
【0093】
基材S2は、建設及び建築業界で一般的にみられる任意の基材であり得る。本発明による接着剤組成物Aは、通常、化学反応性の前処理を必要とすることなく、実質的に全てのそのような基材に硬化後に適切に接着することができる。
【0094】
適切な基材S2は、特に、
- ガラス、ガラスセラミック、コンクリート、モルタル、レンガ、タイル、石膏及び天然石(石灰岩、花崗岩又は大理石など);
- アルミニウム、鉄、鋼及び非鉄金属などの金属及び合金並びに亜鉛メッキ若しくはクロムメッキされた金属又は表面コーティングされた金属などの表面仕上げされた金属及び合金(Kynar(登録商標)又はDuranar(登録商標)で被覆されたアルミニウムなど);
- 革、繊維製品、紙、木材、樹脂(例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂又はエポキシ樹脂)と接着された木材系材料並びに樹脂-繊維製品複合材料及び他のポリマー複合材料;
- ポリ塩化ビニル(硬質及び軟質PVC)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリエステル、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、エポキシ樹脂、ポリウレタン(PUR)、ポリオキシメチレン(POM)、エチレン/プロピレン/ジエンターポリマー(EPDM)などのプラスチック並びに炭素繊維強化プラスチック(CFP)、ガラス繊維強化プラスチック(GFP)及びシート成形コンパウンド(SMC)などの繊維強化プラスチック(これらのプラスチックは、プラズマ、コロナ又は炎によって表面処理されたものであり得る);
- 粉体塗装金属又は合金などの被覆された基材;
- 塗料又はワニス、特に自動車上塗り材;
- 瀝青などの瀝青質基材、瀝青質の裏面を有するPEラミネート
である。
【0095】
基材S2は、好ましくは、ガラス、ガラスセラミック、コンクリート、モルタル、レンガ、タイル、石膏、天然石、金属及び合金、繊維製品、木材、木材-樹脂複合材料、樹脂-繊維製品複合材料、樹脂-ガラス又は炭素-繊維複合材料、塩化ポリビニル(PVC)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリエステル、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、エポキシ樹脂、塗料、ワニス、コーティングされた基材並びに瀝青からなるリストから選択される。
【0096】
必要に応じて、基材S1及び/又はS2は、組成物を塗布する前に、特に脱脂若しくはブラッシングなどの化学的及び/若しくは物理的な洗浄方法又は接着促進剤、接着促進剤溶液若しくはプライマーの塗布によって前処理することができる。
【0097】
通常、組成物を塗布する前に、特に化学反応性の方法によって表面を前処理する必要はない。組成物Aは、プライマー処理されておらず、前処理されておらず、且つ更に洗浄されていない多様な材料に対しても優れた接着プロファイルを示す。
【0098】
本発明による方法において、前記基材S1は、好ましくは、本発明による方法の工程a)前に化学反応性プライマー、炎、オキソフルオロ化、プラズマ又はコロナによる前処理によって前処理されない。
【0099】
しかしながら、接着剤組成物Aを塗布する前に、いずれかの基材Sを脱脂、洗浄又はブラッシングすることが有利な場合がある。これは、通常、基材が目に見えて汚れているか又はほこりが付着している場合にのみ必要とされるが、いずれにしても例えばプロセスオイル又は他の表面汚染物質を除去するために有利な場合がある。存在する可能性のあるあらゆる粒子状物質を機械的に除去した後、アルコール又は弱溶剤を使用して表面のグリースを除去することが推奨される。いくつかの基材Sでは、特に表面が非常に滑らかである場合、例えば金属ブラシを使用することによる機械的粗面化が有利であり得る。
【0100】
湿気硬化型接着剤組成物A
本発明による方法において使用される湿気硬化型接着剤組成物Aは、下記を含む:
- シラン基を含有する少なくとも1種のポリマーP、
- 組成物全体を基準として10~40重量%の少なくとも1種の可塑剤ポリマーPL、
- 組成物全体を基準として0.1~5重量%の少なくとも1種のモノマー又はオリゴマーのアミノ官能性アルコキシシランAS1、
- 組成物全体を基準として0~5重量%の少なくとも1種のモノマー又はオリゴマーのC1~C12アルキル官能性アルコキシシランAS2。
【0101】
湿気硬化型接着剤組成物Aは、組成物全体を基準として0.1~5重量%の少なくとも1種のモノマー又はオリゴマーのアミノ官能性アルコキシシランAS1を含む。
【0102】
好ましくは、組成物Aは、組成物全体を基準として0.2~2.5重量%のモノマー又はオリゴマーのアミノ官能性アルコキシシランAS1を含む。
【0103】
好ましい実施形態では、少なくとも1種のモノマー又はオリゴマーのアミノ官能性アルコキシシランAS1は、AS1の総重量を基準として4.5~14.5重量%、好ましくは5~10重量%の窒素含有量を有する。
【0104】
オリゴマーのアミノ官能性アルコキシシランAS1を含む同じ又は別の好ましい実施形態では、少なくとも1種のオリゴマーのアミノ官能性アルコキシシランAS1は、AS1の総重量を基準として15~20重量%の窒素含有量を有する。高い窒素含有率であること、特にオリゴマーのアミノ官能性アルコキシシランAS1の窒素含有率が高いことの1つの利点は、接着剤組成物を塗布した後の接着力の発現が速くなることである。
【0105】
シランAS1は、モノマー又はオリゴマーであり得る。AS1のオリゴマー形態は、モノマーのアミノ官能性アルコキシシランの部分加水分解及び縮合によって形成される直鎖、分岐又は環状のオリゴマーであり、いくつかの実施形態では、アルキルアルコキシシラン又はテトラアルコキシシランなど、アミノ官能性ではない他のアルコキシシランとの部分加水分解及び縮合によって形成される直鎖、分岐又は環状のオリゴマーである。
【0106】
オリゴマーのアルコキシシランAS1を使用することの1つの利点は、純粋なモノマーのシランと比較してより多くの量で使用した場合、より低いVOCレベルを達成できることである。
【0107】
シランAS1として又はオリゴマーのシランAS1の製造のための前駆体として適したモノマーのアミノ官能性アルコキシシランは、式(I)
【化1】
(式中、
R
2は、1~6個の炭素原子、好ましくは1個又は2個の炭素原子を有する一価のアルキル基、最も好ましくはメチル基であり、
R
3は、-C
pH
2p-NH
2、-C
pH
2p-NH-R
5、-C
pH
2p-NH-C
dH
2d-NH
2、-C
pH
2p-NH-C
dH
2d-NH-C
eH
2e-NH
2、-C
pH
2p-NH-C
dH
2d-NH-R
5及び-C
pH
2p-NH-C
dH
2d-NH-C
eH
2e-NH-R
5から選択される一価のアミノアルキル基であり、
R
4は、1~12個の炭素原子、好ましくは1~8個の炭素原子を有する一価の直鎖、分岐又は環状のアルキル又はアラルキル基、最も好ましくはメチル基であり、
R
5は、1~12個の炭素原子、好ましくは1~6個の炭素原子を有する一価の直鎖、分岐又は環状のアルキル又はアラルキル基であり、
添え字iは、0又は1、好ましくは0の値の整数であり、
添え字kは、2又は3の値の整数であり、但し、i=1の場合にはk=2であり、
添え字pは、1~6の値の整数であり、
添え字d及びeは、独立に2~6の値の整数である)
に示される。
【0108】
適切なオリゴマーのシランAS1は、式(II)及び(III)に示されており、式(II)は、直鎖オリゴマーを示し、式(III)は、環状オリゴマーを示す。オリゴマーの混合物の少なくとも一部で分岐オリゴマーを使用することもできる。
【0109】
オリゴマーのシランAS1としての使用に適した直鎖オリゴマーは、式(II)
【化2】
(式中、
R
1は、独立に、
- 1~6個の炭素原子、好ましくは1個又は2個の炭素原子を有するアルコキシ基、より好ましくはメトキシ基、
- 上で定義したR
3、又は
- 上で定義したR
4
を表し、
添え字nは、1~30の値の整数である)
に示される。
【0110】
オリゴマーのシランAS1としての使用に適した環状オリゴマーは、式(III)
【化3】
(式中、
R
1は、上と同じ意味を有し、及び
添え字jは、3~30の値の整数である)
に示される。
【0111】
好ましいモノマー又はオリゴマーのアミノ官能性アルコキシシランAS1としては、N-(n-ブチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチル-シラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N-(2-アミノエチル)-N’-[3-(トリメトキシシリル)-プロピル]エチレンジアミン及び上記アミノシラン、任意選択的にアルキルアルコキシシラン(特にメチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン及びオクチルトリメトキシシラン)と共にオリゴマー化された上記アミノシランの縮合から得られるオリゴマーが挙げられる。
【0112】
メトキシ基の代わりにエトキシを有するモノマー若しくはオリゴマー又はそれらの類似体も好ましい。
【0113】
最も好ましいモノマー又はオリゴマーのアミノ官能性アルコキシシランAS1としては、N-(n-ブチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン及びN-(n-ブチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランと上述したアルキルアルコキシシランとの縮合から得られるオリゴマーが挙げられる。これらのシランは、本発明による組成物中で使用される場合、組成物が硬化後に特に低い弾性率及び高いムーブメント追従性を有するという利点を有し、そのため、これらは、接着シーラントとして特に適している。
【0114】
好ましくは、前記モノマー又はオリゴマーのアミノ官能性アルコキシシランAS1は、DIN53015に従って20℃で測定される2~40mPa・sの粘度を有する。この粘度範囲は、特に優れた接着特性を可能にする。
【0115】
多くの適切なオリゴマーのアミノ官能性アルコキシシランAS1及びこれらを得るための合成経路は、国際公開第2014/079613号パンフレットに見ることができる。
【0116】
最も好ましいオリゴマーのアミノ官能性アルコキシシランAS1は、N-(n-ブチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランの縮合から得られるオリゴマーである。
【0117】
好ましくは、前記オリゴマーのアミノ官能性アルコキシシランAS1は、DIN53015に従って20℃で測定される1500~3500mPa・sの粘度を有する。この粘度範囲は、ポリマーPとの特に優れた混和性及び特に優れた接着特性を可能にする。
【0118】
好ましい実施形態では、前記モノマー又はオリゴマーのアミノ官能性アルコキシシランAS1は、二級アミノ基を含む。これらの実施形態は、組成物が硬化後に特に低い弾性率及び高い移動能力を有し、そのため、これらが本発明による方法における弾性接着剤として特に適しているという利点を有する。
【0119】
更に、組成物Aは、好ましくは、組成物A全体を基準として0.1~5重量%、好ましくは1~4重量%、特に2~3重量%の、少なくとも1種のモノマー又はオリゴマーのC3~C20アルキル官能性アルコキシシランAS2を含む。
【0120】
シランAS2として又はオリゴマーのシランAS2の製造前駆体として適したモノマーのC3~C20アルキル官能性アルコキシシランは、式(Ib)
【化4】
(式中、
R
2は、1~6個の炭素原子、好ましくは1個又は2個の炭素原子、最も好ましくはメチル基を有する一価のアルキル基であり、
R
4は、3~20個の炭素原子、好ましくは5~16個の炭素原子、より好ましくは6~12個の炭素原子、最も好ましくはオクチル又はイソオクチル基を有する一価の直鎖、分岐又は環状のアルキル又はアラキル基であり、
添え字kは、2又は3、好ましくは3の値の整数である)
で定義される。
【0121】
シランAS2のオリゴマー形態は、更に上記の式(II)及び(III)で表され、但し、R1は、独立に、
- 1~6個の炭素原子、好ましくは1個又は2個の炭素原子、より好ましくはメトキシ基を有するアルコキシ基、又は
- 式(Ib)について上で定義したR4を表し、
- 添え字nは、1~30の値の整数であり、
- 添え字jは、3~30の値の整数であることを条件とする。
【0122】
好ましい実施形態では、前記C3~C20アルキル官能性アルコキシシランAS2は、組成物A全体を基準として少なくとも0.5重量%の量で組成物A中に含まれ、且つ/又は前記C3~C20アルキル官能性アルコキシシランAS2は、モノマー若しくはオリゴマーのC6~C8アルキル官能性アルコキシシランである。
【0123】
更に、本発明による組成物Aには、シラン基を含有する少なくとも1種のポリマーPが必要とされる。
【0124】
シラン基を含有するポリマーPは、特に、以降でより具体的に記載されるように、シラン基を含有する有機ポリマーから選択される。
【0125】
シラン基を含有する有機ポリマーは、多くの基材に対する特に優れた接着特性を有し、特に安価であるという利点を有する。
【0126】
一般的に、組成物A中のポリマーPの量は、組成物A全体を基準として10~40重量%、好ましくは12~35重量%、特に15~30重量%であることが好ましい。この範囲は、組成物を高価にしすぎることなく優れた機械的特性を可能にする。
【0127】
好ましくは、シラン基を含有するポリマーPは、シラン基を含有する有機ポリマー、特にポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(メタ)アクリレート若しくはポリエーテル又はこれらのポリマーの混合形態であり、これらのそれぞれは、1個又は好ましくは2個以上のシラン基を有する。シラン基は、鎖のペンダント位置又は末端位置にあり得、炭素原子を介して有機ポリマーに結合している。
【0128】
より好ましくは、シラン基を含有する有機ポリマーは、シラン基を含有するポリオレフィン、若しくはシラン基を含有するポリ(メタ)アクリレート、若しくはシラン基を含有するポリウレタン、若しくはシラン基を含有するポリエーテル又はこれらのポリマーの混合形態である。
【0129】
最も好ましくは、シラン基を含有する有機ポリマーは、シラン基を含有するポリエーテル、若しくはシラン基を含有するポリウレタン、若しくはシラン基を含有するポリ(メタ)アクリレート又はこれらのポリマーの混合物である。
【0130】
シラン基を含有する有機ポリマー中に存在するシラン基は、好ましくは、アルコキシシラン基、特に式(VI)
【化5】
(式中、
R
14は、1~5個の炭素原子を有する直鎖又は分岐の一価ヒドロカルビル基、特にメチル又はエチル又はイソプロピルであり、
R
15は、1~8個の炭素原子を有する直鎖又は分岐の一価ヒドロカルビル基、特にメチル又はエチルであり、及び
xは、0又は1又は2、好ましくは0又は1、特に0の値である)
のアルコキシシラン基である。
【0131】
より好ましくは、R14は、メチル又はエチルである。
【0132】
特定の用途のために、基R14がエチル基である場合に生態学的及び毒物学的に無害なエタノールが組成物の硬化の過程で放出されるため、基R14がエチル基であることが好ましい。
【0133】
トリメトキシシラン基、ジメトキシメチルシラン基又はトリエトキシシラン基が特に好ましい。
【0134】
これに関連して、メトキシシラン基は、特に反応性が高い点で長所を有し、エトキシシラン基は、毒物学的に有利であり、特に保存安定性を有するという点で長所を有する。
【0135】
シラン基を含有する有機ポリマーは、1分子当たり平均で好ましくは1.3~4個、特に1.5~3個、より好ましくは1.7~2.8個のシラン基を有する。シラン基は、好ましくは、末端である。
【0136】
シラン基を含有する有機ポリマーは、好ましくは、1,000~30,000g/mol、特に2,000~20,000g/molの範囲の、GPCによりポリスチレン標準に対して決定される平均分子量を有する。シラン基を含有する有機ポリマーは、好ましくは、300~25,000g/eq、特に500~15,000g/eqのシラン当量を有する。
【0137】
シラン基を含有する有機ポリマーは、室温で固体又は液体であり得る。これは、好ましくは、室温で液体である。
【0138】
最も好ましくは、シラン基を含有する有機ポリマーは、室温で液体であるシラン基を含有する有機ポリマーであり、シラン基は、特にジアルコキシシラン基及び/又はトリアルコキシシラン基、より好ましくはトリメトキシシラン基又はトリエトキシシラン基である。
【0139】
シラン基を含有する有機ポリマーの調製プロセスは、当業者に公知である。
【0140】
好ましいプロセスでは、シラン基を含有する有機ポリマーは、任意選択的に例えばジイソシアネートなどを使用する鎖延長を伴い得る、アリル基を含有する有機ポリマーとヒドロシランとの反応から得られる。
【0141】
更なる好ましいプロセスでは、シラン基を含有するポリエーテルは、任意選択的に例えばジイソシアネートを使用する鎖延長を伴い得る、アルキレンオキシドとエポキシシランとの共重合から得られる。
【0142】
更なる好ましいプロセスでは、シラン基を含有する有機ポリマーは、任意選択的にジイソシアネートを使用する鎖延長を伴い得る、有機ポリオールとイソシアナトシランとの反応から得られる。
【0143】
更なる好ましいプロセスでは、シラン基を含有するポリエーテルは、イソシアネート基を含有する有機ポリマー、特にポリオールと化学量論量より過剰のポリイソシアネートとの反応からのNCO末端ウレタンポリマーと、アミノシラン、ヒドロキシシラン又はメルカプトシランとの反応から得られる。このプロセスからのシラン基を含有するポリエーテルが特に好ましい。このプロセスにより、商業的に入手しやすい多くの安価な出発物質を使用することができる。これにより、様々なポリマー特性、例えば大きい伸び、大きい強度、低い弾性率、低いガラス転移点又は高い耐候性を得ることができる。
【0144】
より好ましくは、シラン基を含有する有機ポリマーは、NCO末端ウレタンポリエーテルとアミノシラン又はヒドロキシシランとの反応から得られる。適切なNCO末端ウレタンポリマーは、ポリオール、特にポリエーテルポリオール、特にポリオキシアルキレンジオール又はポリオキシアルキレントリオール、好ましくはポリオキシプロピレンジオール又はポリオキシプロピレントリオールと、化学量論量より過剰のポリイソシアネート、特にジイソシアネートとの反応から得られる。ポリ(メタ)アクリレートポリオール、ポリ炭化水素ポリオール、特にポリブタジエンポリオール、ポリヒドロキシ官能性油脂、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール及びポリヒドロキシ官能性アクリロニトリル/ブタジエンコポリマーなどの他のポリオールも好適である。更に、ジオール、グリコール及び糖アルコールなどの少量の低分子量の二価又は多価アルコールが添加剤として使用され得る。
【0145】
好ましくは、ポリイソシアネートとポリオールとの間の反応は、任意選択的に適切な触媒の存在下において50℃~160℃の温度で水分を排除して行われ、ポリイソシアネートは、そのイソシアネート基がポリオールのヒドロキシル基に対して化学量論量より過剰に存在するように計量されて添加される。より具体的には、過剰のポリイソシアネートは、ポリマー全体を基準として0.1重量%~5重量%、好ましくは0.2重量%~4重量%、より好ましくは0.3重量%~3重量%のフリーのイソシアネート基成分が、全てのヒドロキシル基の反応後に得られるウレタンポリマー中に残るように選択される。
【0146】
好ましいジイソシアネートは、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI)、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(=イソホロンジイソシアネート又はIPDI)、トリレン2,4-及び2,6-ジイソシアネート、及びこれらの異性体の任意の所望の混合物(TDI)並びにジフェニルメタン4,4’-、2,4’-及び2,2’-ジイソシアネート、及びこれらの異性体の任意の所望の混合物(MDI)からなる群から選択される。IPDI又はTDIが特に好ましい。最も好ましいのは、IPDIである。これにより、特に良好な耐光性を有する、シラン基を含有するポリエーテルが得られる。
【0147】
ポリエーテルポリオールとして特に好適なものは、0.02meq/g未満、特に0.01meq/g未満の不飽和度を有し、平均分子量が400~25,000g/mol、特に1000~20,000g/molの範囲であるポリオキシアルキレンジオール又はポリオキシアルキレントリオールである。
【0148】
ポリエーテルポリオールと同様に、他のポリオール、特にポリアクリレートポリオール及び低分子量ジオール又はトリオールの一部を使用することもできる。
【0149】
NCO末端ウレタンポリエーテルとの反応のために好適なアミノシランは、一級及び二級のアミノシランである。3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、4-アミノブチルトリメトキシシラン、4-アミノ-3-メチルブチルトリメトキシシラン、4-アミノ-3,3-ジメチルブチルトリメトキシシラン、N-ブチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン並びに一級アミノシラン(3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン又はN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランなど)とマイケル受容体(アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸若しくはフマル酸のジエステル、シトラコン酸ジエステル又はイタコン酸ジエステルなど)とから形成された付加体、特にジメチル若しくはジエチルN-(3-トリメトキシシリルプロピル)アミノサクシネートが好ましい。ケイ素上のメトキシ基の代わりにエトキシ基又はイソプロポキシ基を有する上記のアミノシランの類似体も同様に好適である。
【0150】
NCO末端ウレタンポリエーテルとの反応のために好適なヒドロキシシランは、特にアミノシランをラクトン、又は環状カーボネート、又はラクチドに付加させることにより得ることができる。
【0151】
この目的に好適なアミノシランは、特に3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、4-アミノブチルトリメトキシシラン、4-アミノブチルトリエトキシシラン、4-アミノ-3-メチルブチルトリメトキシシラン、4-アミノ-3-メチルブチルトリエトキシシラン、4-アミノ-3,3-ジメチルブチルトリメトキシシラン、4-アミノ-3,3-ジメチルブチルトリエトキシシラン、2-アミノエチルトリメトキシシラン又は2-アミノエチルトリエトキシシランである。3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、4-アミノ-3,3-ジメチルブチルトリメトキシシラン又は4-アミノ-3,3-ジメチルブチルトリエトキシシランが特に好ましい。
【0152】
好適なラクトンは、特にγ-バレロラクトン、γ-オクタラクトン、δ-デカラクトン及びε-デカラクトン、特にγ-バレロラクトンである。
【0153】
好適な環状カーボネートは、特に4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-エチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン又は4-(フェノキシメチル)-1,3-ジオキソラン-2-オンである。
【0154】
好適なラクチドは、特に1,4-ジオキサン-2,5-ジオン(2-ヒドロキシ酢酸から形成されたラクチド、「グリコリド」とも呼ばれる)、3,6-ジメチル-1,4-ジオキサン-2,5-ジオン(乳酸から形成されたラクチド、「ラクチド」とも呼ばれる)及び3,6-ジフェニル-1,4-ジオキサン-2,5-ジオン(マンデル酸から形成されたラクチド)である。
【0155】
このようにして得られる好ましいヒドロキシシランは、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-2-ヒドロキシプロパンアミド、N-(3-トリメトキシシリルプロピル)-2-ヒドロキシプロパンアミド、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4-ヒドロキシペンタンアミド、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4-ヒドロキシオクタンアミド、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-5-ヒドロキシデカンアミド及びN-(3-トリエトキシシリルプロピル)-2-ヒドロキシプロピルカルバメートである。
【0156】
加えて、好適なヒドロキシシランは、アミノシランをエポキシドに付加させるか、又はアミンをエポキシシランに付加させることにより得ることができる。
【0157】
このようにして得られる好ましいヒドロキシシランは、2-モルホリノ-4(5)-(2-トリメトキシシリルエチル)シクロヘキサン-1-オール、2-モルホリノ-4(5)-(2-トリエトキシシリルエチル)シクロヘキサン-1-オール又は1-モルホリノ-3-(3-(トリエトキシシリル)プロポキシ)プロパン-2-オールである。
【0158】
シラン基を含有する更に好適なポリエーテルは、市販の製品であり、特に以下のものである:MS PolymerTM(株式会社カネカより;特にS203H、S303H、S227、S810、MA903及びS943製品);MS PolymerTM又はSilylTM(株式会社カネカより;特にSAT010、SAT030、SAT200、SAX350、SAX400、SAX725、MAX602、MAX450、MAX951製品);Excestar(登録商標)(旭硝子株式会社より;特にS2410、S2420、S3430、S3630製品);SPUR+*(Momentive Performance Materialsより;特に1010LM、1015LM、1050MM製品);VorasilTM(Dow Chemical Co.より;特に602及び604製品);Desmoseal(登録商標)(Bayer MaterialScience AGより;特にS XP2458、S XP2636、S XP2749、S XP2774及びS XP2821製品);TEGOPAC(登録商標)(Evonik Industries AGより;特にSeal100、Bond150、Bond250製品)、Polymer ST(Hanse Chemie AG/Evonik Industries AGより、特に47、48、61、61LV、77、80、81製品);Geniosil(登録商標)STP(Wacker Chemie AGより;特にE10、E15、E30、E35、WP1及びWP2製品)。
【0159】
シラン基を含有する特に好ましい有機ポリマーは、式(VII)
【化6】
(式中、
R
16は、1~12個の炭素原子を有し、且つ任意選択的に環状部位及び/又は芳香族部位と、任意選択的に1個以上のヘテロ原子、特に1個以上の窒素原子とを有し得る直鎖又は分岐の二価ヒドロカルビル基であり、
Tは、-O-、-S-、-N(R
17)-、-O-CO-N(R
17)-、-N(R
17)-CO-O-及び-N(R
17)-CO-N(R
17)-から選択される二価の基であり、R
17は、水素又は1~20個の炭素原子を有し、且つ任意選択的に環状部位を有し得、及び任意選択的にアルコキシシラン、エーテル若しくはカルボン酸エステル基を有し得る直鎖又は分岐のヒドロカルビル基であり、及び
R
14、R
15及びxは、既に示された定義を有する)
の末端基を有する。
【0160】
好ましくは、R16は、1,3-プロピレン又は1,4-ブチレンであり、ブチレンは、1個又は2個のメチル基で置換され得る。
【0161】
より好ましくは、R16は、1,3-プロピレンである。
【0162】
組成物は、組成物全体を基準として15~35重量%の少なくとも1種のポリマー可塑剤PLを更に含む。好ましくは、ポリマー可塑剤PLは、組成物全体を基準として20~30重量%の量で含まれる。
【0163】
本明細書における用語「ポリマー可塑剤」は、室温で液体であり、加水分解性シラン基を含有しないポリマー添加剤を意味する。フタル酸エステルなどの従来の可塑剤とは対照的に、ポリマー可塑剤は、通常、より大きい分子量を有する。
【0164】
好ましくは、ポリマー可塑剤PLは、500~12,000g/mol、特に1,000~10,000g/mol、より好ましくは2,500~5,000g/molの平均分子量Mnを有する。
【0165】
好適なポリマー可塑剤PLとしては、室温で液体である限り、ここに記載されている有機ポリマーPの製造に適しているものなどのポリオールが挙げられる。ポリマー可塑剤PLとして適した好ましいポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリ炭化水素ポリオール、ポリブタジエンポリオール及びポリ(メタ)アクリレートポリオールが挙げられる。特に好ましいものは、ポリエーテルポリオール、特にMnの平均分子量が500~12,000g/mol、特に1,000~10,000g/mol、より好ましくは2,500~5,000g/molのものである。
【0166】
そのようなポリオールは、有機ポリマーPとの組み合わせにおいて特に適している。
【0167】
ポリエーテルポリオールをポリマー可塑剤PLとして使用する主な利点は、特に迅速な接着の発現及び特に優れた接着特性である。
【0168】
本発明による方法の特に好ましい実施形態では、前記可塑剤ポリマーPLは、炭化水素、アルコキシ、ヒドロキシル又はアミノ基から独立して選択される末端基を有するポリエーテルである。最も好ましいものは、ポリエーテルポリオール、すなわちヒドロキシル末端基を有するものである。
【0169】
本発明による方法の同じ又は別の特に好ましい実施形態では、前記湿気硬化型接着剤組成物Aは、可塑剤ポリマーPL以外のいかなる更なる可塑剤も含有しない。特に、組成物は、最も好ましくは、可塑剤としていかなるフタル酸エステルも含まない。いかなる追加の可塑剤も含まないそのような組成物は、毒物学的及び環境的に有利であり、移行作用に関する問題をわずかにのみ有する。
【0170】
組成物Aは、特にシラン基の架橋のための触媒を更に含み得る。好適な更なる触媒は、特に金属化合物及び/又は塩基性窒素若しくはリン化合物である。
【0171】
好適な金属化合物は、特にスズ、チタン、ジルコニウム、アルミニウム又は亜鉛の化合物(特にジブチルスズ(IV)ジアセテート、ジブチルスズ(IV)ジラウレート、ジブチルスズ(IV)ジネデカノエート又はジブチルスズ(IV)ビス(アセチルアセトネート)及びジオクチルスズ(IV)ジラウレートなどの特にジオルガノスズ(IV)化合物)並びに特にアルコキシ、カルボキシレート、1,3-ジケトネート、1,3-ケトエステレート又は1,3-ケトアミデート配位子を有するチタン(IV)、又はジルコニウム(IV)、又はアルミニウム(III)、又は亜鉛(II)の錯体である。
【0172】
好適な塩基性窒素又はリン化合物は、特にイミダゾール、ピリジン、ホスファゼン塩基又は好ましくはアミン、ヘキサヒドロトリアジン、ビグアニド、グアニジン若しくは更なるアミジンである。
【0173】
加えて、組成物Aは、共触媒として酸、特にカルボン酸を含み得る。ギ酸、ラウリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、2-エチル-2,5-ジメチルカプロン酸、2-エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、天然油脂若しくはジ-及びポリカルボン酸(特にポリ(メタ)アクリル酸)の加水分解からの脂肪酸混合物などの脂肪族カルボン酸が好ましい。
【0174】
好ましい実施形態では、組成物Aは、有機スズ化合物を本質的に含まない。有機スズを含まない組成物は、健康の保護及び環境の保護の点で有利である。より詳細には、硬化性組成物のスズ含有率は、いくつかの好ましい実施形態では、0.1重量%未満、特に0.05重量%未満である。これらの実施形態は、潜在的に有害な有機スズ化合物が低水準であるため、消費者にとって特に有益である。
【0175】
一実施形態では、組成物Aは、記載されている触媒だけでなく、少なくとも1種の有機チタン酸塩も更に含む。記載されている触媒と有機チタン酸塩との組み合わせは、特に高い触媒活性を有する。これにより、比較的少ない使用量の有機チタン酸塩を用いて、このような組成物を迅速に硬化させることができる。
【0176】
好適な有機チタン酸塩は、特にチタン(IV)錯体である。
【0177】
組成物は、更なる構成成分、特に次の助剤及び添加剤を含み得る:
- 接着促進剤及び/又は架橋剤、特に追加的なアミノシラン、メルカプトシラン、エポキシシラン、(メタ)アクリロイルシラン、アンヒドリドシラン、カルバマトシラン、アルキルシラン又はイミノシラン、これらのシランのオリゴマー形態、エポキシシラン若しくは(メタ)アクリロシラン若しくはアンヒドリドシランと一級アミノシランとから形成された付加体、アミノ官能性アルキルシルセスキオキサン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン若しくは3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン又はこれらのシランのオリゴマー形態;
- 吸湿剤又は乾燥剤、特にテトラエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン又はシラン基へのα位に官能基を有するオルガノアルコキシシラン(特にN-(メチルジメトキシシリルメチル)-O-メチルカルバメート、(メタクリロイルオキシメチル)シラン、メトキシメチルシラン)、オルトギ酸エステル、酸化カルシウム又はモレキュラーシーブ、特にビニルトリメトキシシラン又はビニルトリエトキシシラン;
- 追加的な可塑剤、特に一官能性ポリシロキサン又は一官能性有機ポリマーの形態の反応性可塑剤、すなわち一端がシラン反応性のもの、フタレートなどのカルボン酸エステル(特にジオクチルフタレート、ビス(2-エチルヘキシル)フタレート、ビス(3-プロピルヘプチル)フタレート、ジイソノニルフタレート又はジイソデシルフタレート)、オルトシクロヘキサン-ジカルボン酸のジエステル(特にジイソノニル1,2-シクロヘキサンジカルボキシレート)、アジペート(特にジオクチルアジペート、ビス(2-エチルヘキシル)アジペート)、アゼレート(特にビス(2-エチルヘキシル)アゼレート)、セバケート(特にビス(2-エチルヘキシル)セバケート又はジイソノニルセバケート)、グリコールエーテル、グリコールエステル、有機リン酸エステル若しくはスルホン酸エステル、スルホンアミド、ポリブテン又は天然の油脂から誘導され、「バイオディーゼル」とも呼ばれる脂肪酸のメチル若しくはエチルエステル;
- 溶媒;
- 無機又は有機充填剤、特に任意選択的に脂肪酸(特にステアリン酸)で被覆され得る天然の、粉砕された又は沈降された炭酸カルシウム、バライト(重晶石)、タルク、石英粉、石英砂、ドロマイト、珪灰石、カオリン、焼成カオリン、マイカ(ケイ酸アルミニウムカリウム)、モレキュラーシーブ、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、熱分解法による微粉シリカなどのシリカ、工業的に製造されたカーボンブラック、黒鉛、金属粉末(アルミニウム、銅、鉄、銀又は鋼など)、PVC粉末又は中空球;
- 繊維、特にガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミック繊維又はポリマー繊維(ポリアミド繊維又はポリエチレン繊維など);
- 染料;
- 顔料、特に二酸化チタン又は酸化鉄;
- レオロジー調整剤;特に増粘剤又はチキソトロピー添加剤、特に層状ケイ酸塩(ベントナイトなど)、ヒマシ油の誘導体、水添ヒマシ油、ポリアミド、ポリウレタン、尿素化合物、ヒュームドシリカ、セルロースエーテル又は疎水性に変性されたポリオキシエチレン;
- 酸化、熱、光又は紫外線に対する安定剤;
- 天然樹脂、油脂(ロジン、シェラック、アマニ油、ヒマシ油又は大豆油など);
- 室温で好ましくは固体である非反応性ポリマー、特に不飽和モノマーのホモポリマー若しくはコポリマーなど、特にエチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、イソプレン、酢酸ビニル又はアルキル(メタ)アクリレートを含む群からのもの、特にポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリイソブチレン、エチレン-酢酸ビニルコポリマー(EVA)又はアタクチックポリ-α-オレフィン(APAO)など;
- 難燃性物質、特に前述した充填剤である水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウム又は特にトリエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、イソデシルジフェニルホスフェート、トリス(1,3-ジクロロ-2-プロピル)ホスフェート、トリス(2-クロロエチル)ホスフェート、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリス(クロロイソプロピル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、イソプロピル化トリフェニルホスフェート、異なる程度のイソプロピル化のモノ-、ビス-又はトリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)又はポリリン酸アンモニウムなどの特に有機リン酸エステル;
- 界面活性物質、特に湿潤剤、レベリング剤、脱気剤又は消泡剤;
- 殺生物剤、特に殺藻剤、殺菌剤又は真菌の増殖を阻害する物質;及び
硬化性組成物において一般的に使用されている他の物質。組成物中にこれらを混合する前に特定の成分に対して化学的乾燥又は物理的乾燥を行うことが望ましい場合がある。
【0178】
組成物Aは、好ましくは、組成物全体を基準として0.5~2.5重量%、好ましくは1~2重量%の少なくとも1種の吸湿剤又は乾燥剤、最も好ましくはビニルトリメトキシシランを含む。この範囲は、硬化後に製品を堅すぎる且つ/又は脆すぎるようにすることなく、最適な貯蔵安定性及びスキン形成時間を達成できるという利点を有する。
【0179】
好ましい実施形態では、組成物Aは、少なくとも1種の吸湿剤並びに少なくとも1種の接着促進剤及び/又は架橋剤を含む。
【0180】
組成物Aは、一成分型又は多成分型、特に二成分型組成物の形態を取り得る。
【0181】
本明細書において、「一成分型」は、組成物の全ての成分が同じ容器中の混合物中で保存され、水分、特に空気からの水分で硬化可能な組成物を指す。
【0182】
本明細書において、「二成分型」は、組成物の成分が別々の容器に保存された2つの異なる成分中に存在する組成物を指す。組成物の塗布の直前又は塗布中にのみ2つの成分が互いに混合され、混合された組成物は、任意選択的に水分の作用下で硬化する。
【0183】
したがって、本発明の1つ以上の実施形態では、組成物Aは、一成分型組成物である。
【0184】
別の実施形態では、湿気硬化型接着剤組成物Aは、2つの成分A1及びA2からなる二成分型組成物であり、第1の成分A1は、前記ポリマーPを含み、及び第2の成分A2は、水を含む。
【0185】
組成物がシラン基を含有する有機ポリマーを含む場合、組成物は、好ましくは、一成分型組成物である。
【0186】
任意の第2の成分又は任意選択的に更なる成分は、特にスタティックミキサー又はダイナミックミキサーを用いて、塗布前又は塗布時に第1の成分と混合される。
【0187】
湿気硬化型組成物Aは、特に周囲温度、好ましくは0℃~45℃、特に5℃~35℃の温度範囲内で塗布され、これらの条件下で硬化する。
【0188】
塗布時、シラン基の架橋反応は、適切な場合、水分の影響下で開始する。存在するシラン基は、存在するシラノール基と縮合してシロキサン基(Si-O-Si基)を与えることができる。存在するシラン基は、水分と接触して加水分解されてシラノール基(Si-OH基)も与え、その後の縮合反応によってシロキサン基(Si-O-Si基)を形成することができる。これらの反応の結果として、組成物は、最終的に硬化する。式(I)のアミジン又はその反応生成物は、この硬化を促進する。
【0189】
硬化のために水が必要とされる場合、これは、空気(空気湿度)由来であり得るか、又は他に組成物が、例えば、塗装(例えば、滑剤と共に)若しくは噴霧により含水成分と接触され得るか、又は水若しくは含水成分が、例えば、成分A2として上記で定義されるように、水を含むか若しくは水を放出する液体若しくはペーストの形態で塗布時に組成物に添加され得る。ペーストは、組成物自体がペーストの形態である場合に特に適している。
【0190】
空気湿度によって硬化させる場合、組成物は、外側から内側に硬化し、最初に組成物の表面にスキンを形成する。「スキン時間」又は「スキン形成時間」と呼ばれるものは、組成物の硬化速度の尺度である。硬化の速度は、通常、例えば水の利用可能性、温度などの様々な要因によって決定される。
【0191】
この種の湿気硬化型接着剤組成物Aは、典型的には、可塑剤、充填剤、接着促進剤及び/又は架橋剤及び乾燥剤並びに任意選択的に追加の補助剤及び添加剤を含む。
【0192】
本発明の方法における接着剤としての意図された用途のために、湿気硬化型接着剤組成物Aは、好ましくは、構造的に粘性のある特性を有するペースト状の稠度を有する。このようなペースト状の接着剤Aは、特に圧縮空気若しくは電池を用いて手動で操作される標準的なカートリッジから、又は任意選択的に塗布ロボットによって送液ポンプ若しくは押出機によりタンク若しくはペール缶から基材Sに塗布される。
【0193】
湿気硬化型接着剤組成物Aは、セルフレベリング特性を有する室温での液体稠度も有し得る。コーティングが直ちに流れ落ちずに垂直面への傾斜に塗布できるように、これは、わずかにチキソトロピー性を有し得る。この形態では、湿気硬化型接着剤組成物Aは、好ましくは、ローラー若しくはブラシを用いて又は例えばローラー、スクレーパー若しくはノッチ付きこてなどの手段による流し込み及び分配によって塗布される。
【0194】
本発明の別の態様は、2つの基材Sを接着接合するための、下記を含む湿気硬化型接着剤組成物Aの使用である:
- シラン基を含有する少なくとも1種のポリマーP、
- 組成物全体を基準として10~40重量%の少なくとも1種の可塑剤ポリマーPL、
- 組成物全体を基準として0.1~5重量%の少なくとも1種のモノマー又はオリゴマーのアミノ官能性アルコキシシランAS1、
- 組成物全体を基準として0.1~5重量%の少なくとも1種のモノマー又はオリゴマーのC3~C20アルキル官能性アルコキシシランAS2
ここで、
基材Sの少なくとも1つは、基材S1であり、この基材S1は、
- 基材S1の総重量を基準として少なくとも40重量%の混合物E
を含み、この混合物Eは、混合物Eの総重量を基準とした割合で下記からなる:
- 15~99重量%の少なくとも1種の熱可塑性ポリマーE1、
- 1~85重量%の少なくとも1種のエラストマーE2。
【0195】
全ての好ましい実施形態、制約及び利点は、本発明に従う本明細書で詳述した方法に適用されるものと同様に、上述した使用に適用される。
【0196】
本発明の別の態様は、以下を含むパーツキットである:
(i)下記を含む湿気硬化型接着剤組成物A:
- シラン基を含有する少なくとも1種のポリマーP、
- 組成物全体を基準として10~40重量%の少なくとも1種の可塑剤ポリマーPL、
- 組成物全体を基準として0.1~5重量%の少なくとも1種のモノマー又はオリゴマーのアミノ官能性アルコキシシランAS1、
- 組成物全体を基準として0.1~5重量%の少なくとも1種のモノマー又はオリゴマーのC3~C20アルキル官能性アルコキシシランAS2;
及び
(ii)少なくとも2つの基材S、
ここで、基材Sの少なくとも1つは基材S1であり、この基材S1は、
- 基材S1の総重量を基準として少なくとも40重量%の混合物E
を含み、この混合物Eは、混合物Eの総重量を基準とした割合で下記からなる:
- 15~99重量%の少なくとも1種の熱可塑性ポリマーE1、
- 1~85重量%の少なくとも1種のエラストマーE2。
【0197】
全ての好ましい実施形態、制約及び利点は、本発明に従う本明細書で詳述した方法に適用されるものと同様に、上述したパーツキットに適用される。
【0198】
本発明の別の態様は、本発明による方法によって得られる接着接合された基材Sである。
【0199】
全ての好ましい実施形態、制約及び利点は、本発明に従う本明細書で詳述した方法に適用されるものと同様に、上述した接着接合された基材Sにも適用される。
【実施例】
【0200】
記載した本発明を詳細に明らかにすることを意図した実施例を以降に提示する。本発明は、これらの記載された実施例に限定されないことが理解されるであろう。「標準気候条件」は、23±1℃の温度及び50±5%の相対湿度を指す。
【0201】
実施例の基材S1の作製
一連の実施例の基材S1を作製した。これらの実施例では、表1に示されている材料を使用した。
【0202】
実施例のシートは、二軸押出機(Berstorff GmbH)と、フラットダイと、一連の水冷カレンダーロールとから構成される実験室スケールの押出カレンダー装置を使用して製造した。押出温度及び圧力は、表2に示されている。
【0203】
【0204】
【0205】
実施例のシートの製造では、熱可塑性エラストマー及び非架橋エラストマーを押出機ホッパーに供給した。ブレンドは、押出機の4つのゾーンの最初のゾーンで溶融加工し、触媒とヒンダードアミン光安定剤(NOR-HALS)と難燃剤との混合物を含む添加剤パッケージは、押出機の2番目のゾーンの開始時、部分的に溶融加工されたブレンドに添加した。その後、溶融加工されたブレンドを、フラットダイを通して、約0.8mmの厚さを有する単層シートに押し出した。
【0206】
組成物の機械的特性を試験するために試験片を実施例のシートから切り取った。実施例のシートのブレンドの成分は、表2に示されている。
【0207】
更に、市販のPVCベースの基材(参照)を基材S1として使用した。参照PVCサンプル(「PVC-a」)は、Sarnafil(登録商標)G410-15 ELの商品名で市販されており、ポリ塩化ビニルベースの厚さ1.5mmの多層防水シートから構成されている。
【0208】
実施例の湿気硬化型接着剤組成物Aの調製
実施例の基材の湿気硬化型接着剤組成物Aを調製した(表4)。この実施例では、表3に示されている材料を使用した。
【0209】
【0210】
【0211】
シラン官能性ポリマーP(ポリマーSTP-1)の調製
水分を排除した状態で1000gのAcclaim(登録商標)12200ポリオール(低レベルの不飽和を有するポリオキシプロピレンジオール、Covestroより;OH価11.0mgKOH/g)、43.6gのイソホロンジイソシアネート(IPDI;Vestanat(登録商標)IPDI、Evonikより)、126.4gのジイソデシルフタレート(DIDP)及び0.12gのジブチルスズジラウレート(DBTDL)を連続的に撹拌しながら90℃に加熱し、滴定法により決定されるフリーのイソシアネート基の含有率が0.63重量%の安定な値に到達するまでこの温度で維持した。引き続き、63.0gのジエチルN-(3-トリメトキシシリルプロピル)-アミノサクシネート(3-アミノプロピルトリメトキシシランとマレイン酸ジエチルとの付加体;米国特許第5,364,955号明細書に従って製造)を混合し、FT-IR分光法によりフリーのイソシアネートが全く検出できなくなるまで混合物を90℃で撹拌した。シランの当量が約6880g/eq(使用量から計算)である、このようにして得たトリメトキシシラン基含有ポリエーテルを室温まで冷却し、水分を排除した状態で保存した。
【0212】
表4に詳述されている実施例の接着剤組成物Aを調製するために、ポリマーP、可塑剤、乾燥剤及びチキソトロピー添加剤を5分間にわたり十分に混合した。続いて、乾燥した充填剤を60℃で15分間混練しながら添加した。ヒーターのスイッチを切った状態でシランAS1及びAS2並びに触媒を添加し、続いて組成物を減圧下で10分間均一なペーストに処理した。その後、前記ペーストを、内側がコーティングされているアルミニウム製の塗布ピストンカートリッジに充填し、これを密閉し、試験プロトコルが採用されるまで少なくとも24時間にわたり標準気候条件下で保管した。
【0213】
更に、市販のポリウレタン系接着剤(参照)を湿気硬化型接着剤Aとして使用した。参照のPU接着剤(「PU-a」)は、Sarnacol(登録商標)2142S(Sika製)の商品名で市販されており、大面積の膜を接着するために特別に設計された一成分型湿気硬化型ポリウレタン接着剤からなる。
【0214】
基材Sと接着剤Aとの接着性能の比較
様々な基材と接着剤との対の接着性能を評価するために、一連の実験(Z1a~Z6a)を行った。結果を表5に示す。サンプルの準備、保管、試験を含む全ての手順は、標準気候条件下で行った。
【0215】
全てのサンプルは、歯付きのスパチュラを使用して接着剤Aを基材S2に塗布することによって準備した(基材1m2当たり400gの接着剤)。基材は、接着剤を塗布する直前にイソプロパノールで洗浄した。それぞれの実験において、3層の合板(「合板」)及び屋根瓦繊維セメント(「セメント」)の2つの異なる基材S2を使用した。接着剤を塗布した後、依然として湿っている状態の接着剤に基材S1(裏面)を直ちに貼り付けた(湿式積層法)。次いで、基材S1の膜シートを、5kgのローラーを使用して6回ローラーにかけた。標準気候条件下でのサンプルのコンディショニングは、ローラーの加重(5kg)下で2日間、その後、加重なしで5日間から構成された。7日後、「最初の」サンプルを測定した。他のサンプルは、表5に詳述されている期間(4~12週間)にわたり通常の気候下で保管した。
【0216】
各規定の保管時間後、基材S1を基材S2から垂直に引っ張ることによって剥離強度を決定した。剥離強度は、N/50mmで決定した。
【0217】
【0218】
破壊の評価では、各測定で得られた破壊を凝集破壊/接着破壊/基材破壊(c/a/s)のパーセント割合で評価した。凝集破壊は、接着剤の破壊を意味し、接着破壊は、跡が残らない基材S1からの接着剤の剥離を意味し、基材破壊は、基材S2の破壊(基材S2よりも強い接着剤)を意味する。
【0219】
接着剤Aと接触している基材Sの重量変化の比較
接着剤と接触している様々な基材の可塑剤の移行による重量変化を評価するために、一連の実験(Z1b~Z6b)を行った。結果を表6に示す。この試験では、10gの接着剤を18gの膜間で接触させて、10kgのローラーを使用して押し下げた。サンプルは、表6に示されている時間及び温度でコンディショニングした。サンプル膜の重量(質量)は、精密天びんを使用して測定した。表6の値は、基材サンプルの元の質量に対する%単位での質量変化である。質量の増加は、可塑剤が基材S1中に移行することを示す一方、質量の減少は、測定された基材から可塑剤が出て移行することを示す。
【0220】
【0221】
基材S1と接着剤Aとの接着性能の比較
様々な基材と接着剤との対の接着性能を評価するために、一連の実験(Z1c~Z4c)を行った。結果を表7に示す。サンプルの準備、保管及び試験を含む全ての手順は、標準気候条件下で行った。サンプル及び測定手順は、800g/m2の接着剤を使用したことを除いて、実験Z1a~Z6aで説明した手順と同一であった。
【0222】
【表7】
本開示は下記の態様を含む。
<態様1>
以下の工程を含む、2つの基材Sを接着接合するための方法:
(a)前記2つの基材Sの少なくとも1つに湿気硬化型接着剤組成物Aを適用すること;
(b)適用した前記湿気硬化型接着剤組成物Aが前記2つの基材S間に中間層を形成するように前記2つの基材Sを一緒に接合し、それによって、前記基材Sが前記中間層によって直接結合するようにすること;及び
(c)湿気によって前記湿気硬化型接着剤組成物Aを硬化させること;
ここで、
前記基材Sの少なくとも1つは基材S1であり、前記基材S1が、
- 基材S1の総重量を基準として少なくとも40重量%の混合物E
を含み、前記混合物Eは、混合物Eの総重量を基準とした割合で下記からなり:
- 15~99重量%の少なくとも1種の熱可塑性ポリマーE1、
- 1~85重量%の少なくとも1種のエラストマーE2;かつ
前記湿気硬化型接着剤組成物Aは、下記を含むことを特徴とする:
- シラン基を含有する少なくとも1種のポリマーP、
- 前記組成物全体を基準として10~40重量%の少なくとも1種の可塑剤ポリマーPL、
- 前記組成物全体を基準として0.1~5重量%の少なくとも1種のモノマー又はオリゴマーのアミノ官能性アルコキシシランAS1、
- 前記組成物全体を基準として0.1~5重量%の少なくとも1種のモノマー又はオリゴマーのC3~C20アルキル官能性アルコキシシランAS2。
<態様2>
前記少なくとも1種のエラストマーE2は、ブチルゴム及びハロゲン化ブチルゴムからなる群から選択され、かつ/又は前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーE1は、少なくとも1種の熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(TPE-O)である、態様1に記載の方法。
<態様3>
前記熱可塑性ポリマーE1及び前記エラストマーE2は、共連続相を形成する、態様1又は2に記載の方法。
<態様4>
前記基材S1は、少なくとも0.1mmの厚さを有する膜又はシートである、態様1~3のいずれか一項に記載の方法。
<態様5>
工程(a)の前に化学反応性プライマー、炎、オキソフルオロ化、プラズマ又はコロナによる前処理によって、前記基材S1を前処理しない、態様1~4のいずれか一項に記載の方法。
<態様6>
シラン基を含有する前記ポリマーPは、シラン基を含有する有機ポリマー、好ましくはポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(メタ)アクリレート、若しくはポリエーテル、又は前記ポリマーの混合形態である、態様1~5のいずれか一項に記載の方法。
<態様7>
前記可塑剤ポリマーPLは、炭化水素、アルコキシ、ヒドロキシル又はアミノ基から独立して選択される末端基を有するポリエーテルである、態様1~6のいずれか一項に記載の方法。
<態様8>
前記湿気硬化型接着剤組成物Aは、前記可塑剤ポリマーPL以外のいかなるさらなる可塑剤も含有しない、態様1~7のいずれか一項に記載の方法。
<態様9>
前記湿気硬化型接着剤組成物Aは、前記組成物A全体を基準として10~30重量%の量で前記ポリマーPを含む、態様1~8のいずれか一項に記載の方法。
<態様10>
前記湿気硬化型接着剤組成物Aは、前記組成物A全体を基準として少なくとも0.5重量%の量で前記C3~C20アルキル官能性アルコキシシランAS2を含み、かつ/又は前記C3~C20アルキル官能性アルコキシシランAS2は、モノマー若しくはオリゴマーのC6~C8アルキル官能性アルコキシシランである、態様1~9のいずれか一項に記載の方法。
<態様11>
前記湿気硬化型接着剤組成物Aは、2つの成分A1及びA2からなる二成分型組成物であり、前記第1の成分A1は、前記ポリマーPを含み、及び前記第2の成分A2は、水を含む、態様1~10のいずれか一項に記載の方法。
<態様12>
前記基材Sの第2の基材は、基材S2であり、前記基材S2は、ガラス、ガラスセラミック、コンクリート、モルタル、レンガ、タイル、石膏、天然石、金属及び合金、繊維製品、木材、木材-樹脂複合材料、樹脂-繊維製品複合材料、樹脂-ガラス繊維又は樹脂-炭素繊維複合材料、塩化ポリビニル(PVC)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリエステル、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、エポキシ樹脂、塗料、ワニス、コーティングされた基材、並びに瀝青からなる群から選択される、態様1~11のいずれか一項に記載の方法。
<態様13>
2つの基材Sを接着接合するための、下記を含む湿気硬化型接着剤組成物Aの使用:
- シラン基を含有する少なくとも1種のポリマーP、
- 前記組成物全体を基準として10~40重量%の少なくとも1種の可塑剤ポリマーPL、
- 前記組成物全体を基準として0.1~5重量%の少なくとも1種のモノマー又はオリゴマーのアミノ官能性アルコキシシランAS1、
- 前記組成物全体を基準として0.1~5重量%の少なくとも1種のモノマー又はオリゴマーのC3~C20アルキル官能性アルコキシシランAS2、
ここで、
前記基材Sの少なくとも1つは基材S1であり、前記基材S1は、
- 基材S1の総重量を基準として少なくとも40重量%の混合物E
を含み、前記混合物Eは、混合物Eの総重量を基準とした割合で下記からなる:
- 15~99重量%の少なくとも1種の熱可塑性ポリマーE1、
- 1~85重量%の少なくとも1種のエラストマーE2。
<態様14>
以下を含むパーツキット:
(i)下記を含む湿気硬化型接着剤組成物A:
- シラン基を含有する少なくとも1種のポリマーP、
- 前記組成物全体を基準として10~40重量%の少なくとも1種の可塑剤ポリマーPL、
- 前記組成物全体を基準として0.1~5重量%の少なくとも1種のモノマー又はオリゴマーのアミノ官能性アルコキシシランAS1、
- 前記組成物全体を基準として0.1~5重量%の少なくとも1種のモノマー又はオリゴマーのC3~C20アルキル官能性アルコキシシランAS2;
及び
(ii)少なくとも2つの基材S、
ここで、前記基材Sの少なくとも1つは基材S1であり、前記基材S1は、
- 基材S1の総重量を基準として少なくとも40重量%の混合物E
を含み、前記混合物Eは、混合物Eの総重量を基準とした割合で下記からなる:
- 15~99重量%の少なくとも1種の熱可塑性ポリマーE1、
- 1~85重量%の少なくとも1種のエラストマーE2。
<態様15>
態様1~12のいずれか一項に記載の方法によって得られる接着接合された基材S。