(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、パターン硬化膜の製造方法、硬化膜、層間絶縁膜、カバーコート層、表面保護膜及び電子部品
(51)【国際特許分類】
G03F 7/027 20060101AFI20240827BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20240827BHJP
C08F 290/14 20060101ALI20240827BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
G03F7/027 514
G03F7/004 501
C08F290/14
G03F7/20 501
G03F7/20 521
(21)【出願番号】P 2020074913
(22)【出願日】2020-04-20
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】398008295
【氏名又は名称】HDマイクロシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 篤太郎
(72)【発明者】
【氏名】朝田 皓
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-056934(JP,A)
【文献】国際公開第2020/071204(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/071201(WO,A1)
【文献】特開2012-181281(JP,A)
【文献】特開平08-286374(JP,A)
【文献】特開2014-164050(JP,A)
【文献】特開2015-141352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
C08F 290/14
G03F 7/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重合性の不飽和結合を有するポリイミド前駆体、
(B)脂肪族環状骨格を有する重合性モノマー、
(C)光重合開始剤、及び
(D)テトラゾール及びテトラゾール誘導体からなる群から選択される1以上の化合物
を含有
し、
前記(D)成分が、下記式(11)~(13)で表される化合物からなる群から選択される2以上の化合物を含む、感光性樹脂組成物。
【化22】
(式(11)中、R
11
は、炭素数1~4の脂肪族炭化水素基である。)
【請求項2】
前記(A)成分が、下記式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体である請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【化23】
(式(1)中、X
1は4価の芳香族基である。Y
1は2価の芳香族基である。R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、下記式(2)で表される基又は炭素数1~4の脂肪族炭化水素基であり、R
1及びR
2の少なくとも一方は下記式(2)で表される基である。-COOR
1基と-CO-基とは、互いにオルト位置にあり、-COOR
2基と-CONH-基とは、互いにオルト位置にある。)
【化24】
(式(2)中、R
3~R
5は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3の脂肪族炭化水素基であり、mは1~10の整数である。)
【請求項3】
前記(D)成分が、前記式(11)で表される化合物を含み、さらに、前記式(12)及び(13)で表される化合物からなる群から選択される1以上の化合物を含む請求項
1又は
2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、(F)熱重合開始剤を含む請求項1~
3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、
前記感光性樹脂膜をパターン露光して、樹脂膜を得る工程と、
前記パターン露光後の樹脂膜を、有機溶剤を用いて、現像し、パターン樹脂膜を得る工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程と、を含むパターン硬化膜の製造方法。
【請求項6】
前記加熱処理の温度が200℃以下である請求項
5に記載のパターン硬化膜の製造方法。
【請求項7】
請求項1~
4のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を硬化した硬化膜。
【請求項8】
パターン硬化膜である請求項
7に記載の硬化膜。
【請求項9】
請求項
7又は
8に記載の硬化膜を用いて作製された層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜。
【請求項10】
請求項
9に記載の層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜を含む電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、パターン硬化膜の製造方法、硬化膜、層間絶縁膜、カバーコート層、表面保護膜及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子の表面保護膜及び層間絶縁膜には、優れた耐熱性と電気特性、機械特性等を併せ持つポリイミドやポリベンゾオキサゾールが用いられている。近年、これらの樹脂自身に感光特性を付与した感光性樹脂組成物が用いられており、これを用いるとパターン硬化膜の製造工程が簡略化でき、煩雑な製造工程を短縮できる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
近年、コンピュータの高性能化を支えてきたトランジスタの微細化はスケーリング則の限界に直面しており、さらなる高性能化や高速化のために半導体素子を3次元的に積層する積層デバイス構造が注目を集めている(例えば、非特許文献1参照)。積層デバイス構造の中でも、マルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ(Multi-die Fanout Wafer Level Packaging)は、1つのパッケージの中に複数のダイを一括封止して製造するパッケージであり、従来から提案されているファンアウトウエハレベルパッケージ(1つのパッケージの中に1つのダイを封止して製造する)よりも低コスト化及び高性能化が期待できるため注目を集めている。
【0004】
マルチダイファンアウトウエハレベルパッケージの作製においては、高性能なダイの保護や耐熱性の低い封止材を保護し、歩留まりを向上させる観点から、低温硬化性が強く求められている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-265520号公報
【文献】国際公開第2008/111470号
【非特許文献】
【0006】
【文献】「半導体技術年鑑2013 パッケージング/実装編」、株式会社日経BP、2012年12月、p.41-50
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
硬化膜を例えば再配線層に用いる場合、微細なパターニングを行うために高解像度であることに加え、高い接着性が必要となる。しかしながら、従来の樹脂組成物では、十分な接着性を有する硬化膜を得ることができなかった。
本発明の目的は、硬化温度が200℃以下であっても、高温条件での保存後に高い接着性を有する硬化膜を形成可能な感光性樹脂組成物、それを用いたパターン硬化膜の製造方法、硬化膜、層間絶縁膜、カバーコート層、表面保護膜及び電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記問題に鑑みて鋭意検討を重ねた結果、特定のポリイミド前駆体、脂肪族環状骨格を有する重合性モノマー及び光重合開始剤に、テトラゾール及びテトラゾール誘導体からなる群から選択される1以上の化合物を組み合わせることで、硬化温度が200℃以下であっても、高温条件での保存後に高い接着性を有する硬化膜を形成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明によれば、以下の感光性樹脂組成物等が提供される。
1.(A)重合性の不飽和結合を有するポリイミド前駆体、
(B)脂肪族環状骨格を有する重合性モノマー、
(C)光重合開始剤、及び
(D)テトラゾール及びテトラゾール誘導体からなる群から選択される1以上の化合物
を含有する感光性樹脂組成物。
2.前記(A)成分が、下記式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体である1に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、X
1は4価の芳香族基である。Y
1は2価の芳香族基である。R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、下記式(2)で表される基又は炭素数1~4の脂肪族炭化水素基であり、R
1及びR
2の少なくとも一方は下記式(2)で表される基である。-COOR
1基と-CO-基とは、互いにオルト位置にあり、-COOR
2基と-CONH-基とは、互いにオルト位置にある。)
【化2】
(式(2)中、R
3~R
5は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3の脂肪族炭化水素基であり、mは1~10の整数である。)
3.前記(D)成分が、下記式(11)~(13)で表される化合物からなる群から選択される1以上の化合物を含む1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【化3】
(式(11)中、R
11は、炭素数1~4の脂肪族炭化水素基である。)
4.前記(D)成分が、前記式(11)~(13)で表される化合物からなる群から選択される2以上の化合物を含む3に記載の感光性樹脂組成物。
5.前記(D)成分が、前記式(11)で表される化合物を含み、さらに、前記式(12)及び(13)で表される化合物からなる群から選択される1以上の化合物を含む3又は4に記載の感光性樹脂組成物。
6.さらに、(F)熱重合開始剤を含む1~5のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
7.1~6のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、
前記感光性樹脂膜をパターン露光して、樹脂膜を得る工程と、
前記パターン露光後の樹脂膜を、有機溶剤を用いて、現像し、パターン樹脂膜を得る工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程と、を含むパターン硬化膜の製造方法。
8.前記加熱処理の温度が200℃以下である7に記載のパターン硬化膜の製造方法。
9.1~6のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を硬化した硬化膜。
10.パターン硬化膜である9に記載の硬化膜。
11.9又は10に記載の硬化膜を用いて作製された層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜。
12.11に記載の層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜を含む電子部品。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、硬化温度が200℃以下であっても、高温条件での保存後に高い接着性を有する硬化膜を形成可能な感光性樹脂組成物、それを用いたパターン硬化膜の製造方法、硬化膜、層間絶縁膜、カバーコート層、表面保護膜及び電子部品が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電子部品の製造工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の感光性樹脂組成物、パターン硬化膜の製造方法、硬化膜、層間絶縁膜、カバーコート層、表面保護膜及び電子部品の実施の形態を詳細に説明する。尚、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0013】
本明細書において「A又はB」とは、AとBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。本明細書において、例示材料は特に断らない限り単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本明細書における「(メタ)アクリル基」とは、「アクリル基」及び「メタクリル基」を意味する。
【0014】
[感光性樹脂組成物]
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)重合性の不飽和結合を有するポリイミド前駆体(以下、「(A)成分」ともいう。)、(B)脂肪族環状骨格を有する重合性モノマー(以下、「(B)成分」ともいう。)、(C)光重合開始剤(以下、「(C)成分」ともいう。)、及び(D)テトラゾール及びテトラゾール誘導体からなる群から選択される1以上の化合物(以下、「(D)成分」ともいう。)を含有する。本発明の感光性樹脂組成物は、好ましくはネガ型感光性樹脂組成物である。
【0015】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記の成分を含有することにより優れた感光特性を示す。また、200℃以下で硬化を行っても、特に銅に対して、高温硬化で得られる硬化膜と同等の接着性を示す硬化膜を形成できる。また、高温多湿条件での耐久性試験及び空気中での高温放置試験後も高接着性を示し、外観変化が少ない硬化膜を形成できる。
以下、各成分について説明する。
【0016】
((A)成分:重合性の不飽和結合を有するポリイミド前駆体)
(A)成分は、重合性の不飽和結合を有するポリイミド前駆体であれば特に限定されないが、パターン露光時の光源にi線を用いた場合の透過率が高く、200℃以下の低温硬化時にも高い硬化膜特性を示すポリイミド前駆体が好ましい。
重合性の不飽和結合としては、炭素原子間の二重結合等が挙げられる。
【0017】
(A)成分は、好ましくは下記式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体である。これにより、i線の透過率が高く、200℃以下の低温で硬化を行った場合であっても良好な硬化膜を形成できる。
【化4】
(式(1)中、X
1は4価の芳香族基である。Y
1は2価の芳香族基である。R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、下記式(2)で表される基又は炭素数1~4の脂肪族炭化水素基であり、R
1及びR
2の少なくとも一方は下記式(2)で表される基である。-COOR
1基と-CO-基とは、互いにオルト位置にあり、-COOR
2基と-CONH-基とは、互いにオルト位置にある。)
【化5】
(式(2)中、R
3~R
5は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3の脂肪族炭化水素基であり、mは1~10(好ましくは2~5の整数、より好ましくは2又は3)の整数である。)
【0018】
X1の4価の芳香族基は、芳香族炭化水素構造を含む4価の基(炭素数は例えば6~20)であってもよく、芳香族複素環構造を含む4価の基(原子数は例えば5~20)であってもよい。X1は芳香族炭化水素構造を含む4価の基が好ましい。
【0019】
X
1の芳香族炭化水素構造を含む4価の基としては、例えば以下に示す基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化6】
(式中、Z
1及びZ
2は、それぞれ独立に、各々が結合するベンゼン環と共役しない2価の基又は単結合である。Z
3は、エーテル結合(-O-)又はスルフィド結合(-S-)である。)
【0020】
Z1及びZ2の2価の基は、-O-、-S-、メチレン基、ビス(トリフルオロメチル)メチレン基、又はジフルオロメチレン基であることが好ましく、-O-がより好ましい。
Z3は、-O-が好ましい。
【0021】
Y1の2価の芳香族基は、2価の芳香族炭化水素基(炭素数は例えば6~20)であってもよく、2価の芳香族複素環基(原子数は例えば5~20)であってもよい。Y1は2価の芳香族炭化水素基が好ましい。
【0022】
Y
1の2価の芳香族炭化水素基としては、例えば下記式(23)で表される基が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【化7】
(式(21)中、R
21~R
28は、それぞれ独立に、水素原子、1価の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を有する1価の有機基である。)
【0023】
R21~R28の1価の脂肪族炭化水素基(好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~6)としてはメチル基が好ましい。
【0024】
R21~R28のハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)を有する1価の有機基は、ハロゲン原子を有する1価の脂肪族炭化水素基(好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~6)が好ましく、トリフルオロメチル基がより好ましい。
【0025】
式(21)において、例えば、R22及びR23が1価の脂肪族炭化水素基(例えばメチル基)であって、かつR21及びR24~R28が水素原子であってもよい。
【0026】
式(1)のR1及びR2の炭素数1~4(好ましくは1又は2)の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、2-プロピル基、n-ブチル基等が挙げられる。
【0027】
式(1)において、R1及びR2の少なくとも一方が式(2)で表される1価の基であり、好ましくはR1及びR2の両方が式(2)で表される基である。
【0028】
式(2)のR3~R5の炭素数1~3(好ましくは1又は2)の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、2-プロピル基等が挙げられる。メチル基が好ましい。
【0029】
式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体は、例えば、下記式(22)で表されるテトラカルボン酸二無水物と、下記式(23)で表されるジアミノ化合物とを、N-メチル-2-ピロリドン(以下「NMP」という。)等の有機溶剤中にて反応させてポリアミド酸を製造し、下記式(24)で表される化合物を加え、有機溶剤中で反応させて全体的又は部分的にエステル基を導入することで製造することができる。
【化8】
(式(22)中、X
1は式(1)で定義した通りである。式(23)中、Y
1は式(1)で定義した通りである。式(24)中、R
3~R
5及びmは式(2)で定義した通りである。)
【0030】
式(22)で表されるテトラカルボン酸二無水物及び式(23)で表されるジアミノ化合物は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0031】
式(1)で表される構造単位の含有量は、(A)成分の全構造単位に対して、50モル%以上であることが好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましい。上限は特に限定されず、100モル%でもよい。
【0032】
(A)成分は、式(1)で表される構造単位以外の構造単位を有してもよい。式(1)で表される構造単位以外の構造単位としては、下記式(31)で表される構造単位等が挙げられる。
【化9】
(式(31)中、X
2は4価の芳香族基である。Y
2は2価の芳香族基である。R
31及びR
32は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~4の脂肪族炭化水素基である。-COOR
32基と-CONH-基とは、互いにオルト位置にあり、-COOR
31基と-CO-基とは、互いにオルト位置にある。)
【0033】
式(31)のX2の4価の芳香族基としては、式(1)のX1の4価の芳香族基と同じ基が挙げられる。Y2の2価の芳香族基としては、式(1)のY1の2価の芳香族基と同じ基が挙げられる。R31及びR32の炭素数1~4の脂肪族炭化水素基としては、式(1)のR1及びR2の炭素数1~4の脂肪族炭化水素基と同じ基が挙げられる。
【0034】
式(1)で表される構造単位以外の構造単位の含有量は、(A)成分の全構造単位に対して50モル%未満であることが好ましい。
式(1)で表される構造単位以外の構造単位は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0035】
(A)成分において、ポリイミド前駆体中の全カルボキシ基及び全カルボキシエステルに対して、式(2)で表される基でエステル化されたカルボキシ基の割合が、50モル%以上であることが好ましく、60~100モル%がより好ましく、70~90モル%がより好ましい。
【0036】
(A)成分の分子量に特に制限はないが、数平均分子量で10,000~200,000であることが好ましい。
数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法によって測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて換算することによって求める。具体的には実施例に記載の方法により測定する。
【0037】
((B)成分:脂肪族環状骨格を有する重合性モノマー)
本発明の感光性樹脂組成物は、(B)成分を含むことにより、得られる硬化膜に疎水性を付与でき、高温多湿条件下での硬化膜と基板間の接着性低下を抑制できる。
【0038】
脂肪族環状骨格の環形成炭素数は、好ましくは4~15であり、より好ましくは5~12である。
【0039】
(B)成分は、重合性の不飽和二重結合含有基を有することが好ましく、架橋密度及び光感度の向上、現像後のパターンの膨潤の抑制のため、重合性の不飽和二重結合含有基を2つ又は3つ有することが好ましい。
(B)成分は、光重合開始剤により重合可能な(メタ)アクリル基を有する化合物であることが好ましい。
【0040】
(B)成分としては、例えば下記式(41)~(44)で表される化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化10】
(式(41)~(44)中、R
41~R
44は、それぞれ独立に、炭素数1~4の脂肪族炭化水素基又は下記式(45)で表される基である。
aは1~10の整数であり、少なくとも1つ(好ましくは2つ又は3つ)のR
41は下記式(45)で表される基である。
bは1~12の整数であり、少なくとも1つ(好ましくは2つ又は3つ)のR
42は下記式(45)で表される基である。
cは1~16の整数であり、少なくとも1つ(好ましくは2つ又は3つ)のR
43は下記式(45)で表される基である。
dは1~16の整数であり、少なくとも1つ(好ましくは2つ)のR
44は下記式(45)で表される基である。
式(43)においてR
43は脂肪族環状骨格の全ての置換位置に結合可能であり、式(44)においてR
44は脂肪族環状骨格の全ての置換位置に結合可能である。)
【化11】
(式(45)中、R
45~R
47は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3の脂肪族炭化水素基である。lは0~10の整数(好ましくは0、1又は2)である。)
【0041】
式(41)~(44)のR41~R44の炭素数1~4の脂肪族炭化水素基としては、式(1)のR1及びR2の炭素数1~4の脂肪族炭化水素基と同じ基が挙げられる。
【0042】
式(45)のR45~R47の炭素数1~3の脂肪族炭化水素基としては、式(2)のR3~R5の炭素数1~3の脂肪族炭化水素基と同じ基が挙げられる。
【0043】
(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、1~50質量部が好ましく、硬化膜の疎水性向上の観点から、より好ましくは5~50質量部であり、さらに好ましくは5~30質量部である。上記範囲内である場合、実用的なレリ-フパターンが得られやすく、未露光部の現像後残滓を抑制しやすい。
【0044】
((C)成分:光重合開始剤)
(C)成分としては、例えば、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン等のベンゾフェノン誘導体;2,2’-ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン誘導体;チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン等のチオキサントン誘導体;ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジル-β-メトキシエチルアセタール等のベンジル誘導体;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等のベンゾイン誘導体;1-フェニル-1,2-ブタンジオン-2-(O-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-ベンゾイル)オキシム、1,3-ジフェニルプロパントリオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-3-エトキシプロパントリオン-2-(o-ベンゾイル)オキシム、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、下記式で表される化合物等のオキシムエステル類等が好ましく挙げられるが、これらに限定されるものではない。光感度の点で、オキシムエステル類が好ましい。
【化12】
【0045】
(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、より好ましくは0.1~10質量部であり、さらに好ましくは0.1~8質量部である。上記範囲内の場合、光架橋が膜厚方向で均一となりやすく、実用的なレリ-フパターンを得やすくなる。
【0046】
((D)成分:テトラゾール及びテトラゾール誘導体からなる群から選択される1以上の化合物)
本発明の感光性樹脂組成物は、(D)成分を含むことにより高温条件での保存後であっても、接着性に優れる硬化物を形成できる。また、(B)成分と(D)成分とを組み合わせて用いることにより、200℃以下の低温硬化時における接着性をさらに向上し、硬化膜の外観変化を抑制することができる。
【0047】
(D)成分としては、例えば下記式(11)~(13)で表される化合物が挙げられる。
【化13】
(式(11)中、R
11は、炭素数1~4の脂肪族炭化水素基である。)
【0048】
式(11)のR11の炭素数1~4の脂肪族炭化水素基としては、式(1)のR1及びR2の炭素数1~4の脂肪族炭化水素基と同じ基が挙げられる。
【0049】
(D)成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。例えば、上記式(11)~(13)で表される化合物からなる群から選択される2以上の化合物を用いてもよい。
【0050】
(D)成分は、好ましくは上記式(11)で表される化合物を含み、より好ましくは、式(11)で表される化合物に加えて、さらに上記式(12)及び(13)で表される化合物からなる群から選択される1以上の化合物を含む。このようにすることで、硬化膜の外観変化をより抑制することが可能となる。
【0051】
(D)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.01~50質量部が好ましく、0.1~20質量部がより好ましく、現像時の残渣発生の観点から0.1~10質量部がさらに好ましい。
【0052】
((E)成分:溶剤)
本発明の感光性樹脂組成物は、通常、(E)溶剤(以下、「(E)成分」ともいう。)を含む。
溶剤としては、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、KJCMPA-100(KJケミカルズ株式会社製、製品名)、N-ジメチルモルホリン等の有機溶剤等が挙げられる。
溶剤の含有量は、特に限定されないが、通常、(A)成分100質量部に対して、50~1000質量部である。
【0053】
((F)成分:熱重合開始剤)
本発明の感光性樹脂組成物は、さらに、(F)熱重合開始剤(以下、「(F)成分」ともいう。)を含んでもよい。
(F)成分としては、感光性樹脂膜の成膜時に溶剤を除去するための加熱(乾燥)では分解せず、硬化時の加熱により分解してラジカルを発生し、(B)成分同士、又は(A)成分及び(B)成分の重合反応を促進する化合物が好ましい。そのため、(F)成分は、分解点が110℃以上200℃以下の化合物が好ましく、より低温で重合反応を促進する観点から、110℃以上175℃以下の化合物がより好ましい。
(F)成分としては、ビス(1-フェニル-1-メチルエチル)ペルオキシド等が挙げられる。
【0054】
(F)成分を含有する場合、(F)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.5~20質量部が好ましく、良好な耐フラックス性の確保のために1~20質量部がより好ましく、乾燥時の分解による溶解性低下抑制の観点から1~10質量部がさらに好ましい。
【0055】
(他の成分)
本発明の感光性樹脂組成物は、上記成分以外に、カップリング剤、界面活性剤又はレベリング剤、及び重合禁止剤等を含有してもよい。
【0056】
(カップリング剤)
カップリング剤は、通常、現像後の加熱処理において、(A)成分と反応して架橋するか、又は加熱処理する工程においてカップリング剤自身が重合する。これにより、得られる硬化膜と基板との接着性をより向上させることができる。
【0057】
カップリング剤としてはシランカップリング剤が好ましい。
好ましいシランカップリング剤としては、ウレア結合(-NH-CO-NH-)を有する化合物が挙げられる。これにより、200℃以下の低温下で硬化を行った場合も基板との接着性をさらに高めることができる。
低温での硬化を行った際の接着性の発現に優れる点で、下記式(51)で表される化合物がより好ましい。
【化14】
(式(51)中、R
51及びR
52は、それぞれ独立に、炭素数1~5のアルキル基である。jは1~10の整数であり、kは1~3の整数である。)
【0058】
式(51)で表される化合物の具体例としては、ウレイドメチルトリメトキシシラン、ウレイドメチルトリエトキシシラン、2-ウレイドエチルトリメトキシシラン、2-ウレイドエチルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、4-ウレイドブチルトリメトキシシラン、4-ウレイドブチルトリエトキシシラン等が挙げられ、好ましくは3-ウレイドプロピルトリエトキシシランである。
【0059】
シランカップリング剤として、ヒドロキシ基又はグリシジル基を有するシランカップリング剤を用いてもよい。ヒドロキシ基又はグリシジル基を有するシランカップリング剤、及び分子内にウレア結合を有するシランカップリング剤を併用すると、さらに低温硬化時の硬化膜の基板への接着性を向上することができる。
【0060】
ヒドロキシ基又はグリシジル基を有するシランカップリング剤としては、メチルフェニルシランジオール、エチルフェニルシランジオール、n-プロピルフェニルシランジオール、イソプロピルフェニルシランジオール、n-ブチルフェニルシランジオール、イソブチルフェニルシランジオール、tert-ブチルフェニルシランジオール、ジフェニルシランジオール、エチルメチルフェニルシラノール、n-プロピルメチルフェニルシラノール、イソプロピルメチルフェニルシラノール、n-ブチルメチルフェニルシラノール、イソブチルメチルフェニルシラノール、tert-ブチルメチルフェニルシラノール、エチルn-プロピルフェニルシラノール、エチルイソプロピルフェニルシラノール、n-ブチルエチルフェニルシラノール、イソブチルエチルフェニルシラノール、tert-ブチルエチルフェニルシラノール、メチルジフェニルシラノール、エチルジフェニルシラノール、n-プロピルジフェニルシラノール、イソプロピルジフェニルシラノール、n-ブチルジフェニルシラノール、イソブチルジフェニルシラノール、tert-ブチルジフェニルシラノール、フェニルシラントリオール、1,4-ビス(トリヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(メチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(エチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(プロピルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(ブチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(ジメチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(ジエチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(ジプロピルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(ジブチルヒドロキシシリル)ベンゼン、及び下記式(52)で表わされる化合物等が挙げられる。中でも、特に、基板との接着性をより向上させるため、式(52)で表される化合物が好ましい。
【0061】
【化15】
(式(52)中、R
53はヒドロキシ基又はグリシジル基を有する1価の有機基であり、R
54及びR
55は、それぞれ独立に、炭素数1~5のアルキル基である。oは1~10の整数であり、pは1~3の整数である。)
【0062】
式(52)で表される化合物としては、ヒドロキシメチルトリメトキシシラン、ヒドロキシメチルトリエトキシシラン、2-ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2-ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、4-ヒドロキシブチルトリメトキシシラン、4-ヒドロキシブチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、2-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、4-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、4-グリシドキシブチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0063】
ヒドロキシ基又はグリシジル基を有するシランカップリング剤は、さらに、窒素原子を含むことが好ましく、アミノ基又はアミド結合を有するシランカップリング剤が好ましい。
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、ビス(2-ヒドロキシメチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシメチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(2-グリシドキシメチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(2-グリシドキシメチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0064】
アミド結合を有するシランカップリング剤としては、下記式(53)で表される化合物等が挙げられる。
R56-(CH2)q-CO-NH-(CH2)r-Si(OR57)3 (53)
(式(53)中、R56はヒドロキシ基又はグリシジル基であり、q及びrは、それぞれ独立に、1~3の整数であり、R57はメチル基、エチル基又はプロピル基である。)
【0065】
シランカップリング剤を用いる場合、シランカップリング剤の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましく、0.3~10質量部がさらに好ましい。
【0066】
(界面活性剤又はレベリング剤)
界面活性剤又はレベリング剤を含むことで、塗布性(例えばストリエーション(膜厚のムラ)の抑制)及び現像性を向上させることができる。
【0067】
界面活性剤又はレベリング剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル等が挙げられ、市販品としては、商品名「メガファックスF171」、「F173」、「R-08」(以上、DIC株式会社製)、商品名「フロラードFC430」、「FC431」(以上、スリーエム ジャパン株式会社製)、商品名「オルガノシロキサンポリマーKP341」、「KBM303」、「KBM403」、「KBM803」(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0068】
界面活性剤又はレベリング剤を含む場合、界面活性剤又はレベリング剤の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.01~10質量部が好ましく、0.05~5質量部がより好ましく、0.05~3質量部がさらに好ましい。
【0069】
防錆剤を用いる場合、防錆剤の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.01~10質量部が好ましく、0.1~5質量部がより好ましく、0.5~3質量部がさらに好ましい。
【0070】
(重合禁止剤)
重合禁止剤を含有することで、良好な保存安定性を確保することができる。
重合禁止剤としては、ラジカル重合禁止剤、ラジカル重合抑制剤等が挙げられる。
【0071】
重合禁止剤としては、例えば、p-メトキシフェノール、ジフェニル-p-ベンゾキノン、ベンゾキノン、ハイドロキノン、ピロガロール、フェノチアジン、レゾルシノール、オルトジニトロベンゼン、パラジニトロベンゼン、メタジニトロベンゼン、フェナントラキノン、N-フェニル-2-ナフチルアミン、クペロン、2,5-トルキノン、タンニン酸、パラベンジルアミノフェノール、ニトロソアミン類等が挙げられる。
【0072】
重合禁止剤を含有する場合、重合禁止剤の含有量としては、感光性樹脂組成物の保存安定性及び得られる硬化膜の耐熱性の観点から、(A)成分100質量部に対して、0.01~30質量部が好ましく、0.01~10質量部がより好ましく、0.05~5質量部がさらに好ましい。
【0073】
本発明の感光性樹脂組成物は、溶剤を除いて、本質的に、(A)~(D)成分、及び任意に(F)成分、カップリング剤、界面活性剤、レベリング剤、重合禁止剤からなっており、本発明の効果を損なわない範囲で他に不可避不純物を含んでもよい。
本発明の感光性樹脂組成物の、例えば、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、98質量%以上、99質量%以上、99.5質量%以上、99.9質量%以上又は100質量%が、溶剤を除いて、
(A)~(D)成分、
(A)~(D)成分及び(F)成分、又は
(A)~(D)成分、及び任意に(F)成分、カップリング剤、界面活性剤、レベリング剤、重合禁止剤からなっていてもよい。
【0074】
[硬化膜]
本発明の硬化膜は、上述の感光性樹脂組成物の硬化することで得ることができる。本発明の硬化膜は、パターン硬化膜として用いてもよく、パターンがない硬化膜として用いてもよい。本発明の硬化膜の膜厚は、5~20μmが好ましい。
【0075】
[パターン硬化膜の製造方法]
本発明のパターン硬化膜の製造方法では、上述の感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、感光性樹脂膜をパターン露光して、樹脂膜を得る工程と、パターン露光後の樹脂膜を、有機溶剤を用いて現像し、パターン樹脂膜を得る工程と、パターン樹脂膜を加熱処理する工程と、を含む。これにより、パターン硬化膜を得ることができる。
【0076】
パターンがない硬化膜を製造する方法は、例えば、上述の感光性樹脂膜を形成する工程と加熱処理する工程とを備える。さらに、露光する工程を備えてもよい。
【0077】
基板としては、ガラス基板、Si基板(シリコンウエハ)等の半導体基板、TiO2基板、SiO2基板等の金属酸化物絶縁体基板、窒化ケイ素基板、銅基板、銅合金基板等が挙げられる。
【0078】
塗布方法に特に制限はないが、スピナー等を用いて行うことができる。
【0079】
乾燥は、ホットプレート、オーブン等を用いて行うことができる。
乾燥温度は90~150℃が好ましく、溶解コントラスト確保の観点から、(A)成分と(D)成分の反応を抑制するために90~120℃がより好ましい。
乾燥時間は、30秒間~5分間が好ましい。
乾燥は、2回以上行ってもよい。
これにより、上述の感光性樹脂組成物を膜状に形成した感光性樹脂膜を得ることができる。
【0080】
感光性樹脂膜の膜厚は、5~100μmが好ましく、8~50μmがより好ましく、10~30μmがさらに好ましい。
【0081】
パターン露光は、例えばフォトマスクを介して所定のパターンに露光する。
照射する活性光線は、i線等の紫外線、可視光線、放射線等が挙げられるが、i線であることが好ましい。
露光装置としては、平行露光機、投影露光機、ステッパ、スキャナ露光機等を用いることができる。
【0082】
現像することで、パターン形成された樹脂膜(パターン樹脂膜)を得ることができる。一般的に、ネガ型感光性樹脂組成物を用いた場合には、未露光部を現像液で除去する。
現像液として用いる有機溶剤は、感光性樹脂膜の良溶媒を単独で、又は良溶媒と貧溶媒を適宜混合して用いることができる。
良溶媒としては、N-メチルピロリドン、N-アセチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ガンマブチロラクトン、α-アセチル-ガンマブチロラクトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
貧溶媒としては、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル及び水等が挙げられる。
【0083】
現像液に界面活性剤を添加してもよい。添加量としては、現像液100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましく、0.1~5質量部がより好ましい。
【0084】
現像時間は、例えば感光性樹脂膜を浸漬して完全に溶解するまでの時間の2倍とすることができる。
現像時間は、用いる(A)成分によっても異なるが、10秒間~15分間が好ましく、10秒間~5分間より好ましく、生産性の観点からは、20秒間~5分間がさらに好ましい。
【0085】
現像後、リンス液により洗浄を行ってもよい。
リンス液としては、蒸留水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、トルエン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル等を単独又は適宜混合して用いてもよく、また段階的に組み合わせて用いてもよい。
【0086】
パターン樹脂膜を加熱処理することにより、パターン硬化膜を得ることができる。
(A)成分のポリイミド前駆体が、加熱処理工程によって、脱水閉環反応を起こし、対応するポリイミドとなってもよい。
【0087】
加熱処理の温度は、250℃以下が好ましく、120~250℃がより好ましく、200℃以下又は160~200℃がさらに好ましい。
上記範囲内であることにより、基板やデバイスへのダメージを小さく抑えることができ、デバイスを歩留り良く生産することが可能となり、プロセスの省エネルギー化を実現することができる。
【0088】
加熱処理の時間は、5時間以下が好ましく、30分間~3時間がより好ましい。上記範囲内であることにより、架橋反応又は脱水閉環反応を充分に進行することができる。
加熱処理の雰囲気は大気中であっても、窒素等の不活性雰囲気中であってもよいが、パターン樹脂膜の酸化を防ぐことができる観点から、窒素雰囲気下が好ましい。
【0089】
加熱処理に用いられる装置としては、石英チューブ炉、ホットプレート、ラピッドサーマルアニール、縦型拡散炉、赤外線硬化炉、電子線硬化炉、マイクロ波硬化炉等が挙げられる。
【0090】
[層間絶縁膜、カバーコート層、表面保護膜、電子部品]
本発明の硬化膜は、パッシベーション膜、バッファーコート膜、層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜等として用いることができる。
上記パッシベーション膜、バッファーコート膜、層間絶縁膜、カバーコート層及び表面保護膜等からなる群から選択される1以上を用いて、信頼性の高い、半導体装置、多層配線板、各種電子デバイス等の電子部品などを製造することができる。
【0091】
本発明の電子部品である半導体装置の製造工程の一例を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電子部品である多層配線構造の半導体装置の製造工程図である。
図1において、回路素子を有するSi基板等の半導体基板1は、回路素子の所定部分を除いてシリコン酸化膜等の保護膜2などで被覆され、露出した回路素子上に第1導体層3が形成される。その後、前記半導体基板1上に層間絶縁膜4が形成される。
【0092】
次に、塩化ゴム系、フェノールノボラック系等の感光樹脂層5が、層間絶縁膜4上に形成され、公知の写真食刻技術によって所定部分の層間絶縁膜4が露出するように窓6Aが設けられる。
【0093】
窓6Aが露出した層間絶縁膜4は、選択的にエッチングされ、窓6Bが設けられる。
次いで、窓6Bから露出した第1導体層3を腐食することなく、感光樹脂層5を腐食するようなエッチング溶液を用いて感光樹脂層5が除去される。
【0094】
さらに公知の写真食刻技術を用いて、第2導体層7を形成し、第1導体層3との電気的接続を行う。
3層以上の多層配線構造を形成する場合には、上述の工程を繰り返して行い、各層を形成することができる。
【0095】
次に、上述の感光性樹脂組成物を用いて、パターン露光により窓6Cを開口し、表面保護膜8を形成する。表面保護膜8は、第2導体層7を外部からの応力、α線等から保護するものであり、得られる半導体装置は信頼性に優れる。
尚、前記例において、層間絶縁膜を本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成することも可能である。
【実施例】
【0096】
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明についてさらに具体的に説明する。尚、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0097】
合成例1(ポリマーIの合成)
3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(ODPA)7.07gと2,2’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジアミン(DMAP)4.12gとをN-メチルピロリドン(NMP)30gに溶解し、30℃で4時間、その後室温下で一晩撹拌し、ポリアミド酸を得た。そこに水冷下で無水トリフルオロ酢酸を9.45g加え、45℃で3時間攪拌し、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)7.08gを加えた。この反応液を蒸留水に滴下し、沈殿物をろ別して集め、減圧乾燥することによってポリイミド前駆体を得た(以下、ポリマーIとする)。
ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法を用いて、標準ポリスチレン換算により、以下の条件で、数平均分子量を求めた。ポリマーIの数平均分子量は40,000であった。
【0098】
0.5mgのポリマーIに対して溶剤[テトラヒドロフラン(THF)/ジメチルホルムアミド(DMF)=1/1(容積比)]1mLの溶液を用いて測定した。
【0099】
測定装置:検出器 株式会社日立製作所製L4000UV
ポンプ:株式会社日立製作所製L6000
株式会社島津製作所製C-R4A Chromatopac
測定条件:カラムGelpack GL-S300MDT-5×2本
溶離液:THF/DMF=1/1(容積比)
LiBr(0.03mol/L)、H3PO4(0.06mol/L)
流速:1.0mL/min、検出器:UV270nm
【0100】
また、ポリマーIのエステル化率(ODPAのカルボキシ基のHEMAとの反応率)を、以下の条件でNMR測定を行い、算出した。エステル化率は、全カルボキシ基に対し80%であった(残り20%はカルボキシ基)。
測定機器:ブルカー・バイオスピン社製 AV400M
磁場強度:400MHz
基準物質:テトラメチルシラン(TMS)
溶媒:ジメチルスルホキシド(DMSO)
【0101】
実施例1~7及び比較例1~2
[感光性樹脂組成物の調製]
表1に示した成分及び配合量にて、実施例1~7及び比較例1~2の感光性樹脂組成物を調製した。表1の配合量は、100質量部のポリマーIに対する、(B)~(E)成分の質量部である。
用いた各成分は以下の通りである。
【0102】
((A)成分:重合性の不飽和結合を有するポリイミド前駆体)
ポリマーI:合成例1で得られたポリマーI
【0103】
((B)成分:脂肪族環状骨格を有する重合性モノマー)
B1:A-DCP(新中村化学工業株式会社製、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、下記式で表される化合物)
【化16】
【0104】
((B’)成分)
B’1:A-TMMT(新中村化学工業株式会社製、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、下記式で表される化合物)
【化17】
尚、(B’)成分とは、本発明で用いる(B)成分とは異なる成分を意味する。
【0105】
((C)成分:光重合開始剤)
C1:PDO(ランブソン社製、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシム、下記式で表される化合物)
【化18】
【0106】
((D)成分:テトラゾール及びテトラゾール誘導体からなる群から選択される1以上)
D1:5-メチルテトラゾール(東京化成工業株式会社製、下記式で表される化合物)
D2:5-アミノテトラゾール(東京化成工業株式会社製、下記式で表される化合物)
D3:テトラゾール(東京化成工業株式会社製、下記式で表される化合物)
【化19】
【0107】
((D’)成分)
D’1:ベンゾトリアゾール(東京化成工業株式会社製、下記式で表される化合物)
【化20】
尚、(D’)成分とは、本発明で用いる(D)成分とは異なる成分を意味する。
【0108】
((E)成分:溶媒)
E1:N-メチルピロリドン
E2:KJCMPA-100(KJケミカルズ株式会社製、下記式で表される化合物)
【化21】
【0109】
[感光性樹脂組成物の評価]
得られた感光性樹脂組成物について以下の各評価を行った。結果を表1に示す。
【0110】
(感度)
感光性樹脂組成物を、塗布装置「Act8」(東京エレクトロン株式会社製)を用いて、シリコンウエハ上にスピンコートし、100℃で2分間乾燥後、110℃で2分間乾燥して乾燥膜厚が12μmの感光性樹脂膜を形成した。得られた感光性樹脂膜をシクロペンタノンに浸漬して完全に溶解するまでの時間の2倍を現像時間として設定した。
上記と同様に感光性樹脂膜を作製し、得られた感光性樹脂膜に、i線ステッパ「FPA-3000iW」(キヤノン株式会社製)を用いて、100~1100mJ/cm2のi線を、100mJ/cm2刻みの照射量で、所定のパターンに照射して、露光を行った。露光後の樹脂膜を、「Act8」(東京エレクトロン株式会社製)により、シクロペンタノンを用いて上記現像時間でパドル現像した後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)でリンス洗浄を行い、パターン樹脂膜を得た。
下記式で算出される残膜率(FR)が80%になるのに必要な露光量を感度と設定した。感度の数値(必要な露光量)が小さいほど、高感度な材料となる。
FR(%)=現像後の膜厚/露光前の膜厚×100
【0111】
(解像度)
フォトマスクをラインアンドスペース用フォトマスクとし、表1に記載の露光量とした以外は、(感度)と同じ方法でパターン樹脂膜を得た。得られたパターン樹脂膜を観察し、はがれ及び残渣なくパターニングできている最小のラインの線幅を解像度とした。表1中、「※」はパターンを形成できなかったことを示す。
【0112】
(接着性)
感光性樹脂組成物を、「Act8」(東京エレクトロン株式会社製)を用いて、Cuめっきウエハ上にスピンコートし、100℃で2分間乾燥後、110℃で2分間乾燥して感光性樹脂膜を形成した。得られた感光性樹脂膜にプロキシミティ露光機(ズース・マイクロテック社製「マスクアライナーMA8」)を用いて500mJ/cm2の露光を行った。
露光後の樹脂膜について、縦型拡散炉μ-TF(光洋サーモシステム株式会社製)を用いて、窒素雰囲気下、173℃で1時間加熱し、硬化膜(硬化後膜厚10μm)を得た。
【0113】
得られた硬化膜を、飽和型プレッシャークッカ装置(株式会社平山製作所製)に配置し、温度121℃、相対湿度100%の条件で、168時間処理した(PCT:Pressure Cooker Storage Test)。また、上記と同じ方法で得た他の硬化膜を、150℃のオーブン中で空気雰囲気下168時間保持した(HTS:High Temperature Storage Test)。
【0114】
上記処理後に各硬化膜を取り出し、アルミニウム製スタッドの先端にあるエポキシ樹脂層を硬化膜表面に固定して、120℃のオーブン中で1時間加熱してエポキシ樹脂層と硬化膜を接着した。そして、薄膜密着強度測定装置ロミュラス(QUAD Group社製)を用いて、5kg/分で荷重を増加させ垂直方向にスタッドを引張り、剥離時の剥離状態を観察し、以下の基準で評価した。
【0115】
○:凝集破壊した(硬化膜とCuめっきウエハとの間での剥離は生じなかった)。
△:剥離強度500kg/cm2以上で、硬化膜とCuめっきウエハとの間で剥離が生じた。
×:剥離強度500kg/cm2未満で、硬化膜とCuめっきウエハとの間で剥離が生じた。
凝集破壊の場合、硬化膜の凝集破壊強さよりも、硬化膜とCuめっきウエハの接着強さが強いことを示す。
【0116】
(外観変化)
(接着性)評価において、PCT処理前後及びHTS処理前後における、硬化膜の外観及びCuめっきウエハの外観を目視で確認し、以下の基準で評価した。
○:処理前後で、硬化膜及びCuめっきのいずれにも変色がなかった。
△:処理前後で、Cuめっきが変色した。
×:処理前後で、硬化膜及びCuめっきの両方に変色があった。
【0117】
【0118】
表1より、本発明の感光性樹脂組成物を用いて得られた硬化膜は、高温条件での保存後に高い接着性を有することが分かる。また、当該感光性樹脂組成物は感度と解像度に優れ、得られた硬化膜は外観変化が少ないことも分かる。
一方、特定の(D)成分を用いない比較例1~2で得られた硬化膜は、高温条件保存後の接着性が低いことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の感光性樹脂組成物は、層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜等に用いることができ、本発明の層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜は、電子部品等に用いることができる。
【符号の説明】
【0120】
1 半導体基板
2 保護膜
3 第1導体層
4 層間絶縁膜
5 感光樹脂層
6A、6B、6C 窓
7 第2導体層
8 表面保護膜