(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】トナー、トナー収容容器、現像剤、現像装置、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 9/097 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
G03G9/097 374
G03G9/097 375
G03G9/097 365
(21)【出願番号】P 2020084473
(22)【出願日】2020-05-13
【審査請求日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2019091192
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】中島 久志
(72)【発明者】
【氏名】金子 晃大
(72)【発明者】
【氏名】山内 祥敬
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 克宣
(72)【発明者】
【氏名】朱 氷
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-141957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均円相当径が5nm以上15nm以下であるSi含有粒子を表面に有するチタン酸ストロンチウム微粉体を外添剤として有
し、
前記Si含有粒子がケイ酸ナトリウムであることを特徴とするトナー。
【請求項2】
前記チタン酸ストロンチウム微粉体の、一次粒子の数平均円相当径が20nm以上40nm以下であり、BET比表面積が50m
2/g以上である、請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記チタン酸ストロンチウム微粉体における、Tiに対するSiのモル比(Si/Ti)が、1.0以上10.0以下である、請求項1から2のいずれかに記載のトナー。
【請求項4】
前記トナーがエステルワックスを含むワックスを含有し、前記トナーの断面における前記ワックスの円相当径が、0.1μm以上0.5μm以下である、請求項1から3のいずれかに記載のトナー。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれかに記載のトナーを容器に収容してなることを特徴とするトナー収容容器。
【請求項6】
請求項1から
4のいずれかに記載のトナーと、キャリアとを有することを特徴とする現像剤。
【請求項7】
請求項
6に記載の現像剤と、前記現像剤を担持搬送する現像剤担持体とを有することを特徴とする現像装置。
【請求項8】
静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体に形成された静電潜像を請求項
6に記載の現像剤により現像する現像手段とを有することを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項9】
静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体に形成された静電潜像を請求項
6に記載の現像剤により現像する現像手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー、トナー収容容器、現像剤、現像装置、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成方法は、潜像担持体である感光体の表面に放電によって電荷を与える帯電工程と、帯電した感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光工程と、感光体表面に形成された静電潜像にトナーを供給して現像する現像工程と、感光体表面のトナー像を記録媒体上に転写する転写工程と、記録媒体上のトナー像を定着する定着工程とを含んでいる。
【0003】
このような画像形成方法において、幅広い転写電圧条件で環境によらず長期にわたり、感光体から転写材に転写された前記トナーが前記感光体に再び戻ることがなく、高い画像濃度が得られるトナー用外添剤として前記チタン酸ストロンチウム微粉体を用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、粒子径が小さいトナーにチタン酸ストロンチウム微粉体をトナー用外添剤として用い、高精細化を達成するとともに、画質低下、トナー成分の固着、トナーの飛散、凝集ノイズ及び感光体への傷を防ぐことができる電子写真用トナーが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、分散性、環境特性、及び流動性が良好なトナー用外添剤として、疎水性二酸化チタンの代替物となり得るチタン酸ストロンチウム系微細粒子及びその製造方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、低温低湿環境(温度10℃、湿度15%RH)下での経時におけるかぶり画像の発生を防止し、優れた画像濃度を実現できるトナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段としての本発明のトナーは、数平均円相当径が5nm以上15nm以下であるSi含有粒子を表面に有するチタン酸ストロンチウム微粉体を外添剤として有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、低温低湿環境(温度10℃、湿度15%RH)下での経時におけるかぶり画像の発生を防止し、優れた画像濃度を実現でき、感光体の摩耗を抑制できるトナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本願実施例で製造したチタン酸ストロンチウム微粉体Aを外添したトナーの写真である。
【
図2】
図2は、FTIR-ATR法により求めたトナーに含まれる樹脂の特徴的なスペクトルを示すチャートである。
【
図3a】
図3aは、本発明のトナー収容容器の一例を示す平面図である。
【
図3b】
図3bは、本発明のトナー収容容器の一例を示す側面図である。
【
図4】
図4は、本発明の現像装置の一例を示す概略図である。
【
図5】
図5は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。
【
図6】
図6は、本発明のプロセスカートリッジを有する画像形成装置の一例を示す概略図である。
【
図7】
図7は、ローラ帯電を行う帯電装置を有する画像形成装置の一例を示す概略図である。
【
図8】
図8は、ブラシ帯電を行う帯電装置を有する画像形成装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(トナー)
本発明のトナーは、数平均円相当径が5nm以上15nm以下であるSi含有粒子を表面に有するチタン酸ストロンチウム微粉体を外添剤として、トナー母体粒子の表面に有し、更に必要に応じてその他の粒子を有する。
図1は、本願実施例で製造したチタン酸ストロンチウム微粉体Aを外添したトナーの写真である。
【0009】
従来のトナーにおいては、外添剤として、分散性、環境特性、及び流動性が良好であるチタン酸ストロンチウム微粉体を用いた場合においても、トナーの特性値への影響、経時におけるかぶり画像の発生による画像品質への影響、感光体の摩耗への影響、及び前記トナーを有する画像形成装置により形成される画像の品質に対する影響については検討されていない。このため、トナーの帯電立ち上がり性が低下しやすい低温低湿環境(温度10℃、湿度15%RH)下での経時におけるかぶり画像の発生を防止し、優れた画像濃度を実現でき、感光体の摩耗を抑制することができないという問題がある。
【0010】
本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、数平均円相当径が5nm以上15nm以下であるSi含有粒子を表面に有するチタン酸ストロンチウム微粉体をトナーの外添剤として用いると、外添剤であるチタン酸ストロンチウム微粉体の負帯電性が向上し、弱帯電又は正帯電性のトナーが減少するため、トナーの帯電立ち上がり性が良好となる。これにより、トナーの帯電立ち上がり性が低下しやすい低温低湿環境(温度10℃、湿度15%RH)下での経時におけるかぶり画像の発生を防止し、優れた画像濃度を実現できる。
【0011】
<Si含有粒子>
前記Si含有粒子としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、シリカなどが挙げられる。
前記Si含有粒子としては、前記チタン酸ストロンチウム微粉体の表面に存在している。
前記Si含有粒子の前記チタン酸ストロンチウム微粉体の表面における存在は、SEM-EDS(エネルギー分散形X線分析装置-走査型電子顕微鏡)測定により確認することができる。
【0012】
前記Si含有粒子の数平均円相当径としては、5nm以上15nm以下であり、7nm以上13nm以下が好ましく、8nm以上10nm以下がより好ましい。前記数平均円相当径が5nm以上であると、トナー中のチタン酸ストロンチウム微粉体の分散性とトナーの帯電立ち上がり性とが向上し、かぶり画像の発生を防止することができる。前記数平均円相当径が15nm以下であると、チタン酸ストロンチウム微粉体の表面からSi含有粒子が離脱しにくくなり、経時におけるキャリアへのスペント(固着)を防ぐことができ、トナーとキャリアとの摩擦を軽減することで、帯電立ち上がり性が向上し、低温低湿環境(温度10℃、湿度15%RH)下での経時におけるかぶり画像の発生を防止することができる。
前記Si含有粒子の数平均円相当径は、例えば、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)を用いて、観察されるトナー画像からSi含有粒子を任意に130個抽出し、画像処理ソフトを用いて二値化して円相当径を算出後、抽出したSi含有粒子130個の円相当径を平均することにより、Si含有粒子の数平均円相当径を求めることができる。
【0013】
<チタン酸ストロンチウム微粉体>
前記チタン酸ストロンチウム微粉体としては、数平均円相当径が5nm以上15nm以下である前記Si含有粒子を表面に有する。
本発明者らは、チタン酸ストロンチウムに着目し、トナー用外添剤として分散性に優れ、負帯電性が良好な流動化剤として最適な粒径及び粒子の形状とする手法について検討した結果、常温湿式法によるチタン酸ストロンチウム微粉体の合成反応において、第3成分としてSiを添加することで、数平均円相当径が5nm以上15nm以下であるSi含有粒子を表面に有し、分散性、流動性及び負帯電性が良好であるチタン酸ストロンチウム微粉体が得られることを見出した。
【0014】
前記チタン酸ストロンチウム微粉体の形状としては、粒子状であることが好ましい。前記粒子の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、球状、針状、非球形状などが挙げられる。
前記チタン酸ストロンチウム微粉体の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単一の粒子で形成された構造でも、球状粒子が数個凝集した構造であってもよい。
【0015】
前記チタン酸ストロンチウム微粉体の一次粒子の数平均円相当径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20nm以上40nm以下が好ましい。前記数平均円相当径が、20nm以上であると、チタン酸ストロンチウム微粉体の表面のSi含有粒子の含有量が増加することで、トナーの帯電立ち上がり性が向上し、低温低湿環境(温度10℃、湿度15%RH)下での経時におけるかぶり画像の発生を防止することができる。前記数平均円相当径が、40nm以下であると、チタン酸ストロンチウム微粉体の研磨性が低下し、経時におけるキャリア表面の摩耗を防止することができるため、トナーの帯電立ち上がり性が向上し、低温低湿環境(温度10℃、湿度15%RH)下での経時におけるかぶり画像の発生を防止することができる。
前記チタン酸ストロンチウム微粉体の一次粒子の数平均円相当径の測定方法としては、例えば、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)を用いて、観察されるトナー画像からチタン酸ストロンチウム微粉体の一次粒子を任意に130個抽出し、画像処理ソフトを用いて二値化して円相当径を算出後、抽出したチタン酸ストロンチウム微粉体の一次粒子130個の円相当径を平均することにより、チタン酸ストロンチウム微粉体の一次粒子の数平均円相当径を求めることができる。
【0016】
前記チタン酸ストロンチウム微粉体における、Tiに対するSiのモル比(Si/Ti)としては、1.0以上10.0以下が好ましく、2.0以上9.0以下がより好ましく、3.0以上7.0以下がさらに好ましく、4.0以上6.0以下が特に好ましい。前記モル比が1.0以上であると、トナーの帯電立ち上がり性が向上し、かぶり画像の発生を防止することができる。前記モル比が10.0以下であると、チタン酸ストロンチウム微粉体の表面からSi含有粒子が、離脱しにくくなり、経時でのキャリアへのスペント(固着)を抑制し、トナーの帯電立ち上がり性が向上し、かぶり画像の発生を防止することができる。
前記モル比(Si/Ti)は、例えば、SEM-EDSのX線分析を用いて、炭素のピーク強度を基準とし、チタン酸ストロンチウム微粉体における、Tiのピーク強度に対するSiのピーク強度の比率から測定することができる。
【0017】
前記チタン酸ストロンチウム微粉体のBET比表面積としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50m2/g以上が好ましい。前記BET比表面積が50m2/g以上であると、前記チタン酸ストロンチウム微粉体の研磨性が低下し、経時におけるキャリア表面の摩耗を低減することができるため、トナーの帯電立ち上がり性が向上し、かぶり画像の発生を防止することができる。
前記BET比表面積は、例えば、MICROMETORICS INSTRUMENT CO.製ジェミニ2375を用いて測定することができる。
【0018】
前記チタン酸ストロンチウム微粉体の含有量としては、トナー母体粒子100質量部に対して、0.4質量部以上4.0質量部以下が好ましく、1.0質量部以上2.2質量部以下がより好ましい。前記含有量が0.4質量部以上であると、トナーの流動性及び凝集性を十分に向上させることができ、ハーフ画像の画質が向上し、トナーの凝集による画像の白抜けを防止することができる。前記含有量が4.0質量部以下であると、トナーの定着下限温度が上昇し、低温定着性が良好となる。
【0019】
前記チタン酸ストロンチウム微粉体の製造方法としては、例えば、常温湿式法などが挙げられる。
前記常温湿式法としては、Tiの供給源としてチタン化合物の加水分解生成物である鉱酸解膠品と、Srの供給源として水溶性化合物とを混合して混合液を得た後、前記混合液に、アルカリ水溶液を50℃以上沸点以下で添加しながら反応させることで、前記チタン酸ストロンチウム微粉体を合成する。
前記鉱酸解膠品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタチタン酸などが挙げられる。
前記水溶性化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩化ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、水酸化ストロンチウムなどが挙げられる。
前記アルカリ水溶液としては、苛性アルカリであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0020】
前記チタン酸ストロンチウム微粉体の表面にSi含有粒子を配する方法としては、前記常温湿式法によるチタン酸ストロンチウム微粉体の製造において、鉱酸解膠品と水溶性化合物とを混合し、更にSi含有粒子用材料を混合することで、Si含有粒子をチタン酸ストロンチウム微粉体の表面に配することができる。
前記Si含有粒子用材料としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、シリカなどが挙げられる。
【0021】
-その他の粒子-
前記その他の粒子としては、前記チタン酸ストロンチウム微粉体以外の無機粒子であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリカ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、アルミナ、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても良い。
前記無機粒子としては、表面の疎水性を上げ、高湿度下における流動性や帯電性の低下を防止するために、表面処理剤を用いて表面処理を施してもよい。
前記表面処理剤としては、例えば、アルキルシランカップリング剤、フッ素含有シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0022】
前記その他の粒子の含有量としては、トナー母体粒子100質量部に対して、0.4質量部以上4.0質量部以下が好ましく、1.0質量部以上2.2質量部以下がより好ましい。前記含有量が0.4質量部以上であると、トナーの流動性及び凝集性を十分に向上させることができ、ハーフ画像の画質が向上し、トナーの凝集による画像の白抜けの問題が生じない。前記添加量が4.0質量部以下であると、定着下限温度が上昇し、低温定着性が良好となる。
【0023】
<トナー母体粒子>
前記トナー母体粒子としては、樹脂、離型剤、及びワックス分散剤を含有することが好ましく、更に必要に応じて、その他の成分を含有してなる。
【0024】
トナー母体粒子の体積平均粒径(Dv)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3.0μm以上8.0μm以下が好ましい。前記体積平均粒径(Dv)が、3.0μmであると、一成分現像剤を用いる場合では、現像ローラやブレードなどの部材へのトナーの融着を防ぐことができ、二成分現像剤を用いる場合では、キャリア表面へのトナーの融着によるキャリアの帯電能力の低下を防ぐことができる。また、前記体積平均粒径(Dv)が8.0μm以下であると、高解像度で高画質の画像を得ることができる。
【0025】
トナー母体粒子の粒径分布としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5.0μm以下である粒子が、20個数%以上40個数%以下が好ましい。
【0026】
トナー母体粒子の形状としては、粒子状であることが好ましい。前記粒子の形状としては、例えば、球状、針状、球状粒子が数個合一して得られる非球形状などが挙げられる。
前記トナー母体粒子の円形度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.92以上0.98以下が好ましい。
【0027】
トナー母体粒子の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単一構造、コア-シェル構造などが挙げられる。
【0028】
-樹脂-
前記樹脂としては、縮重合反応又は付加重合反応によって得られる樹脂であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル・ポリアミド樹脂等の縮重合反応により得られる樹脂、スチレン-アクリル樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂等の付加重合反応により得られる樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記ポリエステル樹脂は、多価ヒドロキシ化合物と多塩基酸との縮重合によって得られる樹脂である。
前記多価ヒドロキシ化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン等の2つのヒドロキシル基を含有する脂環式化合物、ビスフェノールA等の2価フェノール化合物などが挙げられる。なお、多価ヒドロキシ化合物には、ヒドロキシル基を3個以上含む化合物も含まれる。
前記多塩基酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、マロン酸等の2価カルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチレンカルボキシプロパン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸等の3価以上の多価カルボン酸などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ポリアミド樹脂、ポリエステル・ポリアミド樹脂のアミド成分を形成するモノマーとしては、例えば、エチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、フェニレンジアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン、6-アミノカプロン酸、ε-カプロラクタム等のアミノカルボン酸などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記縮重合反応により得られる樹脂のガラス転移温度(Tg)としては、耐熱保存性の点から、55℃以上が好ましく、57℃以上がより好ましい。
前記付加重合反応で得られる樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ラジカル重合によるビニル系樹脂などが挙げられる。
前記付加重合反応で得られる樹脂の原料モノマーとしては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-エチルスチレン、ビニルナフタレン;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のエチレン系不飽和モノオレフィン類;塩化ビニル、臭化ビニル、酢酸ビニル、ぎ酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸アミル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のエチレン性モノカルボン酸又はそのエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のエチレン性モノカルボン酸置換体;マレイン酸ジメチル等のエチレン性ジカルボン酸又はその置換体;ビニルメチルケトン等のビニルケトン類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記付加重合反応で得られる樹脂の原料モノマーには、必要に応じて架橋剤を添加することができる。
前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、フタル酸ジアリルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記架橋剤の含有量としては、原料モノマー100質量部に対して、0.05質量部以上15質量部以下が好ましく、0.1質量部以上10質量部以下がより好ましい。架橋剤の含有量が0.05質量部以上であると、架橋剤の添加効果が得られる。架橋剤の含有量が15質量部以下であると、熱による溶融が容易となり、熱を用いて定着する際にトナーの定着が良好となる。
付加重合系樹脂の原料モノマーを重合させる際には、重合開始剤を使用することが好ましい。前記重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系又はジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド等の過酸化物重合開始剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記重合開始剤の含有量としては、原料モノマー100質量部に対して、0.05質量部以上15質量部以下が好ましく、0.5質量部以上10質量部以下がより好ましい。
【0029】
縮重合反応又は付加重合反応によって得られる樹脂は、反応原料等の違いによって、非線状の構造を有する非線状樹脂となる場合と、線状の構造を有する線状樹脂となる場合がある。非線状樹脂とは、実質的な架橋構造を有する樹脂を意味し、線状樹脂とは、架橋構造を実質的に有しない樹脂を意味する。
本発明においては、非線状樹脂と線状樹脂の両方を使用することができる。
【0030】
本発明においては、縮重合系樹脂と付加重合系樹脂とが化学的に結合されたハイブリッド樹脂を得るため、両樹脂のモノマーのいずれとも反応し得る両反応性化合物を用いて重合させることが好ましい。
このような両反応性化合物としては、例えば、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸ジメチルなどが挙げられる。
前記両反応性化合物の含有量としては、付加重合系樹脂の原料モノマー100質量部に対して、1質量部以上25質量部以下が好ましく、2質量部以上10質量部以下がより好ましい。前記含有量が1質量部以上であると、着色剤や帯電制御剤の分散が良好となり、高い画像品質が得られる。前記含有量が25質量部以下であると、樹脂がゲル化しないという利点がある。
上記ハイブリッド樹脂は、縮重合反応又は付加重合反応の進行及び完了を同時にする必要はなく、それぞれの反応温度、及び時間を選択して、独立に反応の進行及び完了をすることができる。例えば、反応容器中にポリエステル樹脂の縮重合系原料モノマーの混合物中に、ビニル系樹脂の付加重合系原料モノマー、及び重合開始剤からなる混合物を滴下してあらかじめ混合し、ラジカル反応によりビニル系樹脂からなる重合反応を完了させ、次に、反応温度を上昇させることにより縮重合反応によりポリエステル樹脂からなる縮重合反応を完了させる方法などが挙げられる。
上記方法によれば、反応容器中で独立した2つの反応を並行して進行させることができ、2種類の樹脂を効果的に分散させることが可能となる。
前記樹脂としては、トナーの性能を損なわない範囲で、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、石油系樹脂、水素添加された石油系樹脂などを含有してもよい。
【0031】
-離型剤-
前記離型剤としては、ワックスが好ましく、エステルワックスがより好ましく、合成モノエステルワックスが更に好ましい。前記ワックスとしては、例えば、長鎖直鎖飽和脂肪酸と長鎖直鎖飽和アルコールから合成されるエステルワックスなどが挙げられる。長鎖直鎖飽和脂肪酸は一般式CnH2n+1COOHで表わされ、n=5~28程度のものが好ましく用いられる。また長鎖直鎖飽和アルコールはCnH2n+1OHで表わされn=5~28程度のものが好ましく用いられる。
前記長鎖直鎖飽和脂肪酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、テトラデカン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラモン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸などが挙げられる。
前記長鎖直鎖飽和アルコールとしては、例えば、アミルアルコール、ヘキシールアルコール、ヘプチールアルコール、オクチルアルコール、カプリルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、セリルアルコール、ヘプタデカンノオールなどが挙げられる。これらは、低級アルキル基、アミノ基、ハロゲンなどの置換基を有していてもよい。
【0032】
前記ワックスとしては、例えば、カルボニル基を有するワックス、ポリオレフィンワックス、長鎖炭化水素などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、カルボニル基を有するワックスが好ましい。
【0033】
カルボニル基を有するワックスとしては、例えば、ポリアルカン酸エステル、ポリアルカノールエステル、ポリアルカン酸アミド、ポリアルキルアミド、ジアルキルケトンなどが挙げられる。これらの中でも、ポリアルカン酸エステルが好ましい。
ポリアルカン酸エステルとしては、例えば、カルナウバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18-オクタデカンジオールジステアレートなどが挙げられる。
ポリアルカノールエステルとしては、例えば、トリメリット酸トリステアリル、マレイン酸ジステアリルなどが挙げられる。
ポリアルカン酸アミドとしては、例えば、ジベヘニルアミドなどが挙げられる。
ポリアルキルアミドとしては、例えば、トリメリット酸トリステアリルアミドなどが挙げられる。
ジアルキルケトンとしては、例えば、ジステアリルケトンなどが挙げられる。
ポリオレフィンワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどが挙げられる。
長鎖炭化水素としては、例えば、パラフィンワックス、サゾールワックスなどが挙げられる。
【0034】
前記エステルワックスとしては、本発明のトナーの断面における前記ワックスの円相当径が、0.1μm以上0.5μm以下が好ましい。前記ワックスの円相当径が、0.1μm以上であると、定着時にワックスが表面に染み出しやすくなるため、定着可能な温度の上限(定着上限温度)が高くなり、耐高温オフセット性が向上し、かぶり画像の発生を抑制することができる。前記ワックスの円相当径が、0.5μm以下であると、トナーの保存性、感光体などへの耐フィルミング性が向上し、かぶり画像の発生を防止することができ、また、感光体の摩耗を抑制することができる。
トナーの断面におけるワックスの円相当径は、トナー断面をルテニウム染色し、SEM観察したトナー断面の画像から測定することができる。
【0035】
FT-IR(フーリエ変換赤外線分光分析測定装置)を使用しATR法(全反射法)で測定した、前記離型剤に由来すると考えられる特徴的なピークの最大高さ(W)と、前記樹脂に由来すると考えられる特徴的なピークの高さ(R)とのピーク強度比(W/R)は、0.05以上0.14以下が好ましい。前記ピーク強度比が0.05以上であると、感光体の摩耗を抑制することができる。前記ピーク強度比が0.14以上であると、かぶり画像の発生を防止することができる。
トナー中に2種以上の樹脂が含まれ、2種以上のピークが検出される場合は、スペクトルのベースラインから最も高いピークの吸光度をRとした。例えば、トナー中にポリエステル樹脂(784cm
-1~889cm
-1に観測されるピーク、
図2参照)とスチレン-アクリル共重合樹脂(670cm
-1~714cm
-1に観測されるピーク)が含まれ、784cm
-1~889cm
-1に観測されるピークの吸光度が高い場合は、784cm
-1~889cm
-1に観測されるピークの吸光度をRとした。
【0036】
前記離型剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー100質量部に対して、0.5質量部以上20質量部以下が好ましく、2質量部以上10質量部以下がより好ましい。前記含有量が0.5質量部以上であると、定着時の耐高温オフセット性、及び低温定着性が良好である。前記含有量が20質量部以下であると、耐熱保存性が良好となり、高画質の画像が得られる。
【0037】
-ワックス分散剤-
前記ワックス分散剤としては、モノマーとして、スチレン、アクリル酸及びアクリル酸誘導体の少なくともいずれかを含む付加重合系樹脂と、ポリエステル樹脂とが結合してなるハイブリッド樹脂であることが好ましい。前記トナーがワックス分散剤を含有することにより、前記離型剤の分散効果が得られ、製造方法に左右されることなく安定的に耐熱保存性の向上が期待できる。また、前記離型剤の分散効果により感光体のフィルミング現象を抑制できる。
前記ハイブリッド樹脂は、ポリエステル樹脂に比べて、一般的な離型剤との相溶性が良いために、前記離型剤の分散状態は小さくなりやすい。また、前記ハイブリッド樹脂は内部凝集力が弱く、前記ポリエステル樹脂に比べると粉砕性に優れる。このため、前記離型剤の分散状態が同等での、前記ポリエステル樹脂より、前記離型剤と前記樹脂の界面が粉砕面となる確率が低く、前記トナーの粒子表面の離型剤の局在を抑えることができ、前記トナーの耐熱保存性を高めることができる。
前記ハイブリッド樹脂は、ポリエステル樹脂の熱的特性に近いものとしやすく、ポリエステル樹脂が持つ低温定着性と内部凝集力を大きく崩すものではない。
前記ワックス分散剤の含有量としては、トナー100質量部に対して、8質量部以上が好ましい。前記含有量が8質量部未満であると、離型剤の分散性が低く、耐フィルミング性は向上するが、定着時のワックスの表面への染み出しが悪くなり、低温定着性、耐ホットオフセット性が低下する。
【0038】
-その他の成分-
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、着色剤、帯電制御剤、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、磁性材料などが挙げられる。
--着色剤--
前記着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、ニグロシン系染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボンなどが挙げられる。
前記着色剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー100質量部に対して、1質量部以上15質量部以下が好ましく、3質量部以上10質量部以下がより好ましい。
【0039】
--帯電制御剤--
前記帯電制御剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩などが挙げられる。
前記帯電制御剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、0.2質量部以上5質量部以下がより好ましい。前記含有量が0.1質量部以上であると、帯電立ち上り性が向上する。前記含有量が10質量部以下であると、トナーの帯電性が適正であり、帯電制御剤の効果が良好であり、現像ローラとの静電的吸引力が適切であり、現像剤の流動性が良好となり、優れた画像濃度が得られる。これらの帯電制御剤はマスターバッチ、樹脂とともに溶融混練した後溶解分散させることもできるし、有機溶剤に直接溶解、分散する際に加えてもよいし、トナー表面にトナー粒子作製後、固定化させてもよい。
【0040】
--流動性向上剤--
前記流動性向上剤としては、表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動性や帯電性の悪化を防止可能なものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが挙げられる。前記シリカ、前記酸化チタンは、このような流動性向上剤により表面処理を行い、疎水性シリカ、疎水性酸化チタンとして使用するのが特に好ましい。
【0041】
--クリーニング性向上剤--
前記クリーニング性向上剤としては、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するために前記トナーに添加されるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート粒子、ポリスチレン粒子等のソープフリー乳化重合により製造されたポリマー粒子などが挙げられる。前記ポリマー粒子は、比較的粒度分布が狭いものが好ましく、体積平均粒径が0.01μm以上1μm以下のものが好適である。
【0042】
--磁性材料--
前記磁性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鉄粉、マグネタイト、フェライトなどが挙げられる。これらの中でも、色調の点で白色のものが好ましい。
【0043】
<トナーの製造方法>
本発明のトナーの製造方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粉砕法、重合法などが挙げられる。
前記粉砕法としては、樹脂、着色剤、離型剤、及び必要に応じてその他の成分を、ミキサー等を用いて混合し、熱ロール、エクストルーダー等の混練機を用い混練した後、冷却固化し、これをジェットミル等の粉砕機で粉砕し、その後、分級して、トナー母体粒子が得られる。得られたトナー母体粒子と無機粒子を混合することにより、トナーが製造される。
前記重合法としては、例えば、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合などが挙げられる。
【0044】
(トナー収容容器)
本発明のトナー収容容器とは、トナーを収容した容器をいう。
前記トナー収容容器としては、例えば、ボトル、前記ボトルを備えたユニットなどが挙げられる。前記ボトルとしては、その他の付属品を有することができる。
本発明のトナー収容容器を、画像形成装置に装着して画像形成することで、低温低湿環境(温度10℃、湿度15%RH)下での経時におけるかぶり画像の発生を防止し、優れた画像濃度を実現でき、感光体の摩耗を抑制できる、本発明のトナーの特徴を活かした画像形成を行うことができる。
図3(a)は、粉体汲み上げ部304Eを備えた本発明のトナー収容容器33の一例を示す平面図であり、
図3(b)は、粉体汲み上げ部304Eを備えた本発明のトナー収容容器33の一例を示す側面図である。
【0045】
(現像剤)
本発明の現像剤は、本発明のトナーと、キャリアとを含む。
前記キャリアとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と、芯材を被覆する樹脂層とを有するものが好ましい。
【0046】
前記芯材の材料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、50emu/g以上90emu/g以下のマンガン-ストロンチウム(Mn-Sr)系材料、マンガン-マグネシウム(Mn-Mg)系材料などが好ましく、画像濃度の確保の点では、鉄粉(100emu/g以上)、マグネタイト(75emu/g以上120emu/g以下)などの高磁化材料が好ましい。また、トナーが穂立ち状態となっている感光体への当りを弱くでき高画質化に有利である点で、銅-ジンク(Cu-Zn)系(30emu/g~80emu/g)などの弱磁化材料が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよい、2種以上を併用してもよい。
【0047】
前記芯材の粒径としては、平均粒径(体積平均粒径(D50))で、10μm以上200μm以下が好ましく、40μm以上100μm以下がより好ましい。
【0048】
前記樹脂層の材料としては、特に制限はなく、公知の樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノ系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ弗化ビニル樹脂、ポリ弗化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、弗化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、弗化ビニリデンと弗化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンと弗化ビニリデンと非弗化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー、シリコーン樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
前記アミノ系樹脂としては、例えば、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。前記ポリビニル系樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂などが挙げられる。前記ポリスチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂、スチレン-アクリル共重合樹脂などが挙げられる。前記ハロゲン化オレフィン樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。前記ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂などが挙げられる。
【0050】
前記樹脂層には、必要に応じて導電粉などを含有させてもよい。前記導電粉としては、例えば、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛などが挙げられる。これらの導電粉の平均粒径としては、1μm以下が好ましい。前記平均粒径が1μm以下であると、電気抵抗の制御が容易に行うことができる。
【0051】
前記樹脂層は、例えば、前記シリコーン樹脂などを溶剤に溶解させて塗布溶液を調製した後、公知の塗布方法により塗布溶液を芯材の表面に均一に塗布し、乾燥した後、焼付を行うことにより形成することができる。前記塗布方法としては、例えば、浸漬法、スプレー法、ハケ塗り法などが挙げられる。
前記溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、セルソルブチルアセテートなどが挙げられる。
前記焼付としては、特に制限はなく、外部加熱方式でのよいし、内部加熱方式でのよく、例えば、固定式電気炉、流動式電気炉、ロータリー式電気炉、バーナー炉等を用いる方法、マイクロウエーブを用いる方法などが挙げられる。
【0052】
前記樹脂層の前記キャリアにおける含有量としては、0.01質量%以上5.0質量%以下が好ましい。前記含有量が0.01質量%以上であると、芯材の表面に均一な樹脂層を形成することができる。前記含有量が5.0質量%以下であると、樹脂層の厚さが適正であるため、均一なキャリア粒子が得られる。
【0053】
前記キャリアの前記現像剤における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、90質量%以上98質量%以下が好ましく、93質量%以上97質量%以下がより好ましい。
前記現像剤の前記トナーと前記キャリアとの混合割合は、前記キャリア100質量部に対して前記トナー1質量部以上10.0質量部以下が好ましい。
【0054】
本発明の現像剤は、本発明の前記トナーを含有しているので、低温低湿環境(温度10℃、湿度15%RH)下における経時でのかぶり画像の発生を防止でき、優れた画像濃度を実現でき、感光体の摩耗を抑制できる。
本発明の現像剤は、各種電子写真法による画像形成に好適に用いることができ、以下の本発明の現像装置、プロセスカートリッジ、画像形成装置に好適に用いることができる。
【0055】
(現像装置)
本発明の現像装置は、現像剤と、前記現像剤を担持搬送する現像剤担持体とを有する装置である。
前記現像剤としては、本発明の現像剤を用いる。
【0056】
図4では、本発明の現像装置50の一例について、詳しく説明する。なお、ここではイエローに対応した作像部46Yを例に挙げて説明を行うが、他色の作像部46(M,C,K)においても同様の構成及び動作を行う。
【0057】
現像装置50Yは、
図4に示すように、現像剤担持体としての現像ローラ51Y、現像剤規制板としてのドクタブレード52Y、二つの現像剤搬送スクリュ55Y、及び、トナー濃度検知センサ56Y等で構成されている。現像ローラ51Yは、感光体41Yに対向し、ドクタブレード52Yは、現像ローラ51Yに対向する。二つの現像剤搬送スクリュ55Yは、二つの現像剤収容部(53Y,54Y)内に配設されている。現像ローラ51Yは、内部に固設されたマグネットローラ、及び、マグネットローラの周囲を回転するスリーブ等で構成されている。第一現像剤収容部53Y及び第二現像剤収容部54Y内には、キャリアとトナーとからなる二成分の現像剤Gが収容されている。第二現像剤収容部54Yは、その上方に形成された開口を介してトナー落下搬送経路64Yに連通している。トナー濃度検知センサ56Yは、第二現像剤収容部54Y内の現像剤G中のトナー濃度を検知する。
【0058】
現像装置50Y内の現像剤Gは、二つの現像剤搬送スクリュ55Yによって、攪拌されながら、第一現像剤収容部53Yと第二現像剤収容部54Yとの間を循環する。 第一現像剤収容部53Y内の現像剤Gは、現像剤搬送スクリュ55Yの一方に搬送されながら現像ローラ51Y内のマグネットローラにより形成される磁界によって現像ローラ51Yのスリーブ表面上に供給されて担持される。現像ローラ51Yのスリーブは、
図4に矢印で示すように反時計回り方向に回転駆動し、現像ローラ51Y上に担持された現像剤Gは、スリーブの回転にともない現像ローラ51Y上を移動する。このとき、現像剤G中のトナーは、現像剤G中のキャリアとの摩擦帯電によりキャリアとは逆極性の電位に帯電して静電的にキャリアに吸着し、現像ローラ51Y上に形成された磁界によって引き寄せられるキャリアとともに現像ローラ51Y上に担持される。
【0059】
現像ローラ51Y上に担持された現像剤Gは、
図4中の矢印方向に搬送されて、ドクタブレード52Yと現像ローラ51Yとが対向するドクタ部に達する。現像ローラ51Y上の現像剤Gは、ドクタ部を通過する際にその量が規制されて適量化され、その後、感光体41Yとの対向位置である現像領域まで搬送される。現像領域では、現像ローラ51Yと感光体41Yとの間に形成された現像電界によって感光体41Y上に形成された潜像に現像剤G中のトナーが吸着される。現像領域を通過した現像ローラ51Yの表面上に残った現像剤Gは、スリーブの回転に伴い第1現像剤収容部53Yの上方に達して、この位置で現像ローラ51Yから離脱される。
【0060】
現像装置50Y内の現像剤Gは、トナー濃度が所定の範囲内になるように調整される。詳しくは、現像装置50Y内の現像剤Gに含まれるトナーの現像による消費量に応じて、トナー容器32Yに収容されているトナーが、後述するトナー補給装置60Yを介して第二現像剤収容部54Y内に補給される。第二現像剤収容部54Y内に補給されたトナーは、二つの現像剤搬送スクリュ55Yによって、現像剤Gとともに混合、攪拌されながら、第一現像剤収容部53Yと第二現像剤収容部54Yとの間を循環する。
【0061】
(プロセスカートリッジ及び画像形成装置)
本発明のプロセスカートリッジは、静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体に形成された静電潜像を現像剤により現像する現像手段とを有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段を有してなる。
本発明の画像形成装置は、静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体に形成された静電潜像を現像剤により現像する現像手段とを有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段を有してなる。
前記静電潜像担持体としては、公知の感光体などが挙げられる。
前記現像剤としては、本発明の現像剤を用いる。
前記現像手段としては、本発明の前記現像装置を用いる。
前記プロセスカートリッジは、各種の電子写真方式の画像形成装置に着脱可能に備えさせることができ、本発明の画像形成装置に着脱可能に備えることが好ましい。
前記プロセスカートリッジのその他の手段としては、帯電手段、露光手段、クリーニング手段などが挙げられる。
前記画像形成装置のその他の手段としては、例えば、帯電手段、露光手段、除電手段、転写手段、定着手段、クリーニング手段、リサイクル手段、制御手段などが挙げられる。
【0062】
図5は、本発明が適用された画像形成装置としての電子写真方式でタンデム型のカラー複写機(以下、「複写機500」という)の一例の概略図である。複写機500は、モノクロ複写機であってもよい。画像形成装置としては、複写機ではなく、プリンタ、ファクシミリ、これら複数の機能を備えた複合機であってもよい。複写機500は、複写機装置本体(以下、「プリンタ部100」という)、給紙テーブル(以下、「給紙部200」という)及びプリンタ部100上に取り付ける原稿読取部(以下、「スキャナ部400」という)から主に構成されている。
【0063】
プリンタ部100の上部に設けられた粉体容器収納部としてのトナー容器収納部70には、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した四つの粉体収容容器としてのトナー容器32(Y,M,C,K)が着脱自在(交換自在)に設置されている。 トナー容器収納部70の下方には中間転写ユニット85が配設されている。
【0064】
中間転写ユニット85は、中間転写体としての中間転写ベルト48、四つの一次転写バイアスローラ49(Y,M,C,K)、二次転写バックアップローラ82、複数のローラ、及び、中間転写クリーニング装置等を備えている。中間転写ベルト48は、複数のローラによって張架、支持されるとともに、これら複数のローラの一つである二次転写バックアップローラ82の回転駆動によって
図5中の矢印方向に無端移動する。
【0065】
プリンタ部100には、中間転写ベルト48に対向するように、各色に対応した四つの作像部46(Y,M,C,K)が並設されている。四つのトナー容器32(Y,M,C,K)の下方には、それぞれの色のトナー容器に対応した四つの粉体補給(供給)装置としてのトナー補給装置60(Y,M,C,K)が配設されている。そして、トナー容器32(Y,M,C,K)に収容された粉体の現像剤であるトナーは、それぞれに対応するトナー補給装置60(Y,M,C,K)によって、各色に対応した作像部46(Y,M,C,K)が備える現像装置内に供給(補給)される。本実施形態においては、四つの作像部46(Y,M,C,K)によって画像形成部が構成されている。
【0066】
図5に示すように、プリンタ部100は、四つの作像部46の下方に潜像形成手段である露光装置47を備えている。露光装置47は、スキャナ部400で読み込んだ原稿画像の画像情報に基づいて、後述する像担持体としての感光体41(Y,M,C,K)の表面を露光走査し、各感光体の表面に静電潜像を形成する。画像情報はスキャナ部400からの読み込みではなく、複写機500に接続されたパーソナルコンピュータ等の外部装置から入力される画像情報であってもよい。
本実施形態において、露光装置47には、レーザーダイオードを用いたレーザービームスキャナ方式を用いているが、露光手段としてはLEDアレイを用いるものなど他の構成でも良い。
【0067】
図4は、イエローに対応した作像部46Yの概略構成を示す模式図である。
作像部46Yは、ドラム状の感光体41Yを備える。作像部46Yは、帯電手段である帯電ローラ44Y、現像手段である現像装置50Y、感光体クリーニング装置42Y、除電装置等を感光体41Yの周囲に配設した構成である。そして、感光体41Y上で、作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、クリーニング工程)が行われることで、感光体41Y上にイエローのトナー像が形成される。
【0068】
なお、他の三つの作像部46(M,C,K)も、使用されるトナーの色が異なる点以外は、イエローに対応した作像部46Yとほぼ同様の構成となっていて、各感光体41(M,C,K)上にそれぞれの色のトナーに対応したトナー像が形成される。以下、他の三つの作像部46(M,C,K)の説明を適宜に省略して、イエローに対応した作像部46Yのみの説明を行うことにする。
【0069】
感光体41Yは、駆動モータによって
図4中の時計回り方向に回転駆動される。感光体41Yは、帯電ローラ44Yと対向する位置で、感光体41Yの表面が一様に帯電される(帯電工程)。その後、感光体41Yの表面は、露光装置47から発せられたレーザ光Lの照射位置に達して、この位置での露光走査によってイエローに対応した静電潜像が形成される(露光工程)。その後、感光体41Yの表面は、現像装置50Yとの対向位置に達して、この位置で静電潜像がイエローのトナーで現像されて、イエローのトナー像が形成される(現像工程)。
【0070】
中間転写ユニット85の四つの一次転写バイアスローラ49(Y,M,C,K)は、それぞれ、中間転写ベルト48を感光体41(Y,M,C,K)との間に挟み込んで一次転写ニップをそれぞれ形成している。一次転写バイアスローラ49(Y,M,C,K)には、トナーの極性とは逆の転写バイアスがそれぞれ印加される。
【0071】
現像工程でトナー像が形成された感光体41Yの表面は、中間転写ベルト48を挟んで一次転写バイアスローラ49Yと対向する一次転写ニップに達して、この一次転写ニップで感光体41Y上のトナー像が中間転写ベルト48上に転写される(一次転写工程)。このとき、感光体41Y上には、僅かながら未転写トナーが残存する。一次転写ニップでトナー像を中間転写ベルト48に転写した感光体41Yの表面は、感光体クリーニング装置42Yとの対向位置に達する。感光体41Y上に残存した未転写トナーは、この対向位置で感光体クリーニング装置42Yが備えるクリーニングブレード42aによって機械的に回収される(クリーニング工程)。最後に、感光体41Yの表面は、除電装置との対向位置に達して、この位置で感光体41Y上の残留電位が除去される。こうして、感光体41Y上で行われる一連の作像プロセスが終了する。
【0072】
このような作像プロセスは、他の作像部46(M,C,K)でも、イエローの作像部46Yと同様に行われる。すなわち、作像部46(M,C,K)の下方に配設された露光装置47から、画像情報に基づいたレーザ光Lが、各作像部46(M,C,K)の感光体41(M,C,K)上に向けて照射される。詳しくは、露光装置47は、光源からレーザ光Lを発し、そのレーザ光Lを回転駆動されたポリゴンミラーで走査しながら、複数の光学素子を介して各感光体41(M,C,K)上に照射する。その後、現像工程を経て各感光体41(M,C,K)上に形成した各色のトナー像を、中間転写ベルト48上に転写する。
【0073】
このとき、中間転写ベルト48は、
図5中の矢印方向に走行して、各一次転写バイアスローラ49(Y,M,C,K)の一次転写ニップを順次通過する。これにより、各感光体41(Y,M,C,K)上の各色のトナー像が、中間転写ベルト48上に重ねて一次転写され、中間転写ベルト48上にカラートナー像が形成される。
【0074】
各色のトナー像が重ねて転写され、カラートナー像が形成された中間転写ベルト48は、二次転写ローラ89との対向位置に達する。この位置では、二次転写バックアップローラ82が、二次転写ローラ89との間に中間転写ベルト48を挟み込んで二次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト48上に形成されたカラートナー像は、二次転写ニップの位置に搬送された転写紙等の記録媒体P上に、例えば二次転写バックアップローラ82に印加される転写バイアスの作用によって転写される。このとき、中間転写ベルト48には、記録媒体Pに転写されなかった未転写トナーが残存する。二次転写ニップを通過した中間転写ベルト48は、中間転写クリーニング装置の位置に達し、その表面上の未転写トナーが回収され、中間転写ベルト48上で行われる一連の転写プロセスが終了する。
【0075】
本発明のトナーは、プロセスカートリッジを有する画像形成装置に装填して画像形成を行う場合も優れた効果を奏する。即ち、本発明のトナーを用いることにより、画質の優れたプロセスカートリッジを提供することができる。
【0076】
図6は、本発明のプロセスカートリッジの一例を示す概略図である、この
図6のプロセスカートリッジ1は、静電潜像担持体2と、帯電手段3と、現像手段4と、クリーニング手段5とを有する。
【0077】
プロセスカートリッジを有する画像形成装置において、静電潜像担持体2が所定の周速度で回転駆動される。
静電潜像担持体2は回転過程において、帯電手段3によりその周面に正又は負の所定電位の均一帯電を受け、次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光等の露光手段からの画像露光光を受け、こうして静電潜像担持体2の周面に静電潜像が順次形成され、形成された静電潜像は、次いで、現像手段4によりトナーで現像され、現像されたトナー像は、給紙部から静電潜像担持体と転写手段との間に静電潜像担持体の回転と同期されて給送された記録媒体に、転写手段により順次転写されていく。
像転写を受けた記録媒体は静電潜像担持体の表面から分離されて定着手段へ導入されて像定着され、複写物(コピー)として装置外へプリントアウトされる。
転写後の静電潜像担持体の表面は、クリーニング手段5によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、更に除電された後、繰り返し画像形成に使用される。
本発明のトナーを接触式の帯電装置を有する画像形成装置に用いて画像形成を行う場合も優れた効果を奏する。即ち、本発明のトナーを用いることにより、オゾンが低減された帯電装置を採用する画像形成装置を提供することができる。
【0078】
ここで、
図7は、ローラ帯電を行う帯電装置を有する画像形成装置の一例を示す概略図である。
被帯電体及び像担持体としてのドラム状の静電潜像担持体10は
図7中矢印方向に所定の速度(プロセススピード)で回転駆動される。
静電潜像担持体10に接触させた帯電部材である帯電ローラ11は芯金12とこの芯金12の外周に同心一体にローラ上に形成した導電ゴム層13を基本構成とし、芯金12の両端を不図示の軸受け部材等で回転自由に保持させると供に、不図示の加圧手段によって感光ドラムに所定の加圧力で押圧させており、
図7の場合は、帯電ローラ11は静電潜像担持体10の回転駆動に従動して回転する。
帯電ローラ11は、直径9mmの芯金上に100,000Ω・cm程度の中抵抗ゴム層を被膜して直径16mmに形成されている。
図7に示すように、帯電ローラ11の芯金12と電源14とは電気的に接続されており、電源14により帯電ローラ11に対して所定のバイアスが印加される。これにより、静電潜像担持体10の周面が所定の極性、電位に一様に帯電処理される。
【0079】
また、
図8は、ブラシ帯電を行う帯電装置を有する画像形成装置の一例を示す概略図である。
被帯電体、及び像担持体としてのドラム状の静電潜像担持体20は、
図7中矢印の方向に所定の速度(プロセススピード)で回転駆動される。
静電潜像担持体20に対して、ファーブラシローラ21が、ブラシ部23の弾性に抗して所定の押圧力をもって所定のニップ幅で接触させてある。
【0080】
接触帯電部材としてのファーブラシローラ21は、電極を兼ねる直径6mmの金属製の芯金22に、ブラシ部23としてユニチカ株式会社製の導電性レーヨン繊維REC-Bをパイル地にしたテープをスパイラル状に巻き付けて、外径14mm、長手長さ250mmのロールブラシとしたものである。
ブラシ部23のブラシは300デニール/50フィラメント、1平方ミリメートル当たり155本の密度である。
このロールブラシを内径が12mmのパイプ内に一方向に回転させながらさし込み、ブラシと、パイプが同心となるように設定し、高温多湿雰囲気中に放置してクセ付けで斜毛させた。
ファーブラシローラ21の抵抗値は印加電圧100Vにおいて1×105Ωである。
この抵抗値は、金属製の直径(φ)30mmのドラムにファーブラシローラ21をニップ幅3mmで当接させ、100Vの電圧を印加したときに流れる電流から換算した。
【0081】
ファーブラシ帯電器の抵抗値は、被帯電体である静電潜像担持体20上にピンホール等の低耐圧欠陥部が生じた場合にもこの部分に過大なリーク電流が流れ込んで帯電ニップ部が帯電不良になる画像不良を防止するために104Ω以上が好ましくり、静電潜像担持体の表面に十分に電荷を注入させるために107Ω以下であることがより好ましい。
また、ブラシの材質としては、ユニチカ株式会社製のREC-B以外にも、REC-C、REC-M1、REC-M10、東レ株式会社製のSA-7、日本蚕毛株式会社製のサンダーロン、カネボウ株式会社製のベルトロン、株式会社クラレ製のクラカーボ、レーヨンにカーボンを分散したもの、三菱レーヨン株式会社製のローバルなどが挙げられる。
ブラシは1本が3デニール~10デニールで、10フィラメント/束~100フィラメント/束、80本/mm2~600本/mm2の密度が好ましい。毛足は1mm~10mmが好ましい。
【0082】
ファーブラシローラ21は、静電潜像担持体20の回転方向と逆方向(カウンター)に所定の周速度(表面の速度)をもって回転駆動され、静電潜像担持体の表面に対して速度差を持って接触する。そして、このファーブラシローラ21に電源24から所定の帯電電圧が印加されることで、静電潜像担持体の表面が所定の極性・電位に一様に接触帯電処理される。
ファーブラシローラ21による静電潜像担持体20の接触帯電は直接注入帯電が支配的となって行われ、静電潜像担持体の表面はファーブラシローラ21に対する印加帯電電圧とほぼ等しい電位に帯電される。
【0083】
磁気ブラシ帯電の場合も上記ファーブラシ帯電の場合と同様にして、静電潜像担持体20に対して磁気ブラシによって構成されるファーブラシローラ21が、ブラシ部23の弾性に抗して所定の押圧力をもって所定のニップ幅で接触させる。
接触帯電部材としての磁気ブラシとしては、平均粒径25μmのZn-Cuフェライト粒子と、平均粒径10μmのZn-Cuフェライト粒子を、1:0.05の質量比で混合して、それぞれの平均粒径の位置にピークを有する平均粒径25μmのフェライト粒子を、中抵抗樹脂層でコートした磁性粒子を用いた。
接触帯電部材は、上述で作製された被覆磁性粒子、及びこれを支持させるための非磁性の導電スリーブ、これに内包されるマグネットロールによって構成され、上記被覆磁性粒子を導電スリーブ上に、厚さ1mmでコートして、静電潜像担持体20との間に幅約5mmの帯電ニップを形成した。
また、被覆磁性粒子を保持した導電スリーブと静電潜像担持体との間隙は、約500μmとした。
更に、マグネットロールはスリーブ表面が、静電潜像担持体の表面の周速に対して、その2倍の早さで逆方向に摺擦するように、回転され、静電潜像担持体と磁気ブラシとが均一に接触するようにした。
【実施例】
【0084】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0085】
(非線状ポリエステル樹脂Aの合成)
フマル酸9.0mol、無水トリメリット酸3.5mol、ビスフェノールA(2,2)プロピレンオキサイド5.5mol、及びビスフェノールA(2,2)エチレンオキサイド3.5molをステンレス撹拌棒、流下式コンデンサー、窒素ガス導入管、及び温度計を装備したフラスコに入れ、窒素ガス気流下にて230℃で撹拌しながら縮重合反応を行い、非線状ポリエステル樹脂Aを得た。
【0086】
前記非線状ポリエステル樹脂Aの、軟化温度、ガラス転移温度、及び重量平均分子量は、以下のようにして測定した結果、軟化温度(Tm)は145.1℃、ガラス転移温度(Tg)は61.5℃、重量平均分子量(Mw)は82,000であった。
【0087】
<軟化温度(Tm)>
高化式フローテスター(CFT-500D、株式会社島津製作所製)を用いて、JIS K72101に基づき、1cm3の非線状ポリエステル樹脂Aを6℃/minの昇温速度で加熱しながら、プランジャーにより20kg/cm2の荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルを押し出して、プランジャー降下量-温度曲線を描き、その曲線の高さ(最大値)をhとするとき、h/2に対応する温度(非線状ポリエステル樹脂Aの半分が流出した温度)を軟化温度(Tm)(℃)とした。
【0088】
<ガラス転移温度(Tg)>
ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC-60、株式会社島津製作所製)を用いて、JIS K7121-1987に基づき、非線状ポリエステル樹脂Aを10℃/分で室温(25℃)から200℃まで昇温した後、10℃/分の降温速度で室温まで冷却した後、10℃/分の昇温速度で測定した際に、ガラス転移温度以下のベースラインとガラス転移温度以上のベースラインの高さの差をhとするとき、h/2に対応する温度をガラス転移温度(Tg)(℃)とした。
【0089】
<重量平均分子量(Mw)>
GPC測定装置(HLC-8220GPC、東ソー株式会社製)、及びカラム(TSKgel SuperHZM-H 15cm 3連、東ソー株式会社製)を用いて、重量平均分子量を測定した。40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定させた後、1mL/minの流速で50μL~200μLのテトラヒドロフラン(THF)溶液をカラムに注入し、非線状ポリエステル樹脂Aの重量平均分子量を測定した。このとき、数種の単分散ポリスチレン標準試料を用いて作成した検量線の対数値とカウント数との関係から、樹脂の重量平均分子量(Mw)を算出した。検出器としては、RI(屈折率)検出器を用いた。
なお、単分散ポリスチレン標準試料としては、重量平均分子量が6×102、2.1×103、4×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106の試料(Pressure Chemical社製又は東ソー株式会社製)を用いた。
【0090】
(線状ポリエステル樹脂Bの合成)
テレフタル酸7.0mol、無水トリメリット酸2.5mol、ビスフェノールA(2,2)プロピレンオキサイド5.5mol、及びビスフェノールA(2,2)エチレンオキサイド3.5molをステンレス撹拌棒、流下式コンデンサー、窒素ガス導入管、及び温度計を装備したフラスコに入れ、窒素ガス気流下にて230℃で撹拌しながら縮重合反応を行い、線状ポリエステル樹脂Bを得た。
得られた線状ポリエステル樹脂Bの、樹脂の軟化温度、ガラス転移温度、及び重量平均分子量を非線状ポリエステル樹脂Aと同様の方法で測定した結果、軟化温度(Tm)は102.8℃、ガラス転移温度(Tg)は61.2℃、重量平均分子量(Mw)は8,000であった。
【0091】
(ワックス分散剤の合成)
下記一般式(1)で表されるポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「BPA-PO」と称することがある)が45mol%、セバシン酸が30mol%の比率で配合された単量体4,000g、及び酸化ジブチル錫5gを、蒸留塔を有する5リットルのオートクレーブに入れ、窒素ガス気流下にて230℃で6時間縮重合させた後、160℃まで冷却した。その後、スチレン15mol%、アクリル酸10mol%、及びジ-tert-ブチルベルオキシド25gの混合液を160℃で1時間撹拌しながら添加し、160℃で1時間付加重合反応を行った。その後、180℃で縮重合反応を行った。
【化1】
【0092】
(チタン酸ストロンチウム微粉体Aの製造)
硫酸法で得られたメタチタン酸を脱鉄漂白処理した後、メタチタン酸320gに対して、pHが9.0となるように5N水酸化ナトリウム水溶液を加え、脱硫処理を行った。その後、pH6.2となるように2N塩酸を加え、ろ過水洗を行い、洗浄済みケーキを得た。得られた洗浄済みケーキに水を加え、TiO2の含有量が2.1mol/Lのスラリーを得た後、pHが1.4となるように2N塩酸を加え、解膠処理を行い、解膠含水酸化チタンスラリー(TiO2:1.88mol)を得た。
得られた解膠含水酸化チタンスラリーに、Tiモル比が1.25となるように塩化ストロンチウム溶液2.35mol添加し、その後、Tiモル比が5となるように、ケイ酸ナトリウムを0.15mol添加し、TiO2濃度を0.94mol/Lに調整した。次に、90℃で加熱処理した後、10N水酸化ナトリウム水溶液560mLを1時間かけて添加し、95℃で1時間撹拌し、スラリーを得た。
得られたスラリーを50℃まで冷却し、pH5.0となるまで2N塩酸を加え1時間撹拌した。得られた沈殿をデカンテーション洗浄し、ろ過による分離後、120℃の大気中で10時間乾燥して、チタン酸ストロンチウム微粉体Aを得た。
得られたチタン酸ストロンチウム微粉体AをSEM-EDSのX線分析を用いて分析したところ、Si含有粒子としてケイ酸ナトリウムが前記チタン酸ストロンチウム微粉体Aの表面に存在しており、前記チタン酸ストロンチウム微粉体Aの内部にもSiが存在していた。
【0093】
(チタン酸ストロンチウム微粉体Bの製造)
前記「チタン酸ストロンチウム微粉体Aの製造」において、ケイ酸ナトリウムの添加量を0.15molから0.29molに変更した以外は、前記「チタン酸ストロンチウム微粉体Aの製造」と同様にして、チタン酸ストロンチウム微粉体Bを得た。
得られたチタン酸ストロンチウム微粉体BをSEM-EDSのX線分析を用いて分析したところ、Si含有粒子としてケイ酸ナトリウムが前記チタン酸ストロンチウム微粉体Bの表面に存在しており、前記チタン酸ストロンチウム微粉体Bの内部にもSiが存在していた。
【0094】
(チタン酸ストロンチウム微粉体Cの製造)
前記「チタン酸ストロンチウム微粉体Aの製造」において、ケイ酸ナトリウムの添加量を0.15molから0.03molに変更した以外は、前記「チタン酸ストロンチウム微粉体Aの製造」と同様にして、チタン酸ストロンチウム微粉体Cを得た。
得られたチタン酸ストロンチウム微粉体CをSEM-EDSのX線分析を用いて分析したところ、Si含有粒子としてケイ酸ナトリウムが前記チタン酸ストロンチウム微粉体Cの表面に存在しており、前記チタン酸ストロンチウム微粉体Cの内部にもSiが存在していた。
【0095】
(チタン酸ストロンチウム微粉体Dの製造)
前記「チタン酸ストロンチウム微粉体Aの製造」において、10N水酸化ナトリウム水溶液560mLを18時間かけて添加した以外は、前記「チタン酸ストロンチウム微粉体Aの製造」と同様にして、チタン酸ストロンチウム微粉体Dを得た。
得られたチタン酸ストロンチウム微粉体DをSEM-EDSのX線分析を用いて分析したところ、Si含有粒子としてケイ酸ナトリウムが前記チタン酸ストロンチウム微粉体Dの表面に存在しており、前記チタン酸ストロンチウム微粉体Dの内部にもSiが存在していた。
【0096】
(チタン酸ストロンチウム微粉体Eの製造)
前記「チタン酸ストロンチウム微粉体Aの製造」において、加熱処理を90℃から95℃に変更し、10N水酸化ナトリウム水溶液560mLを30分かけて添加した以外は、前記「チタン酸ストロンチウム微粉体Aの製造」と同様にして、チタン酸ストロンチウム微粉体Eを得た。
得られたチタン酸ストロンチウム微粉体EをSEM-EDSのX線分析を用いて分析したところ、Si含有粒子としてケイ酸ナトリウムが前記チタン酸ストロンチウム微粉体Eの表面に存在しており、前記チタン酸ストロンチウム微粉体Eの内部にもSiが存在していた。
【0097】
(チタン酸ストロンチウム微粉体Fの製造)
前記「チタン酸ストロンチウム微粉体Aの製造」において、ケイ酸ナトリウムの添加量を0.15molから0.33molに変更した以外は、前記「チタン酸ストロンチウム微粉体Aの製造」と同様にして、チタン酸ストロンチウム微粉体Fを得た。
得られたチタン酸ストロンチウム微粉体FをSEM-EDSのX線分析を用いて分析したところ、Si含有粒子としてケイ酸ナトリウムが前記チタン酸ストロンチウム微粉体Fの表面に存在しており、前記チタン酸ストロンチウム微粉体Fの内部にもSiが存在していた。
【0098】
(チタン酸ストロンチウム微粉体Gの製造)
前記「チタン酸ストロンチウム微粉体Aの製造」において、ケイ酸ナトリウムの添加量を0.15molから0.04molに変更し、加熱処理を90℃から80℃に変更した以外は、前記「チタン酸ストロンチウム微粉体Aの製造」と同様にして、チタン酸ストロンチウム微粉体Gを得た。
得られたチタン酸ストロンチウム微粉体GをSEM-EDSのX線分析を用いて分析したところ、Si含有粒子としてケイ酸ナトリウムが前記チタン酸ストロンチウム微粉体Gの表面に存在しており、前記チタン酸ストロンチウム微粉体Gの内部にもSiが存在していた。
【0099】
(チタン酸ストロンチウム微粉体Hの製造)
前記「チタン酸ストロンチウム微粉体Aの製造」において、ケイ酸ナトリウムの添加量を0.15molから0.27molに変更し、加熱処理を90℃から95℃に変更した以外は、前記「チタン酸ストロンチウム微粉体Aの製造」と同様にして、チタン酸ストロンチウム微粉体Hを得た。
得られたチタン酸ストロンチウム微粉体HをSEM-EDSのX線分析を用いて分析したところ、Si含有粒子としてケイ酸ナトリウムが前記チタン酸ストロンチウム微粉体Hの表面に存在しており、前記チタン酸ストロンチウム微粉体Hの内部にもSiが存在していた。
【0100】
(実施例1)
[トナー処方]
・非線状ポリエステル樹脂A: 42質量部
・線状ポリエステル樹脂B: 45質量部
・ワックス分散剤: 13質量部
・カーボンブラック: 10質量部
・カルナウバワックス(東亜化成社製WA-03): 3質量部
上記トナー処方を、ヘンシェルミキサーを用いて撹拌混合した後、ロールミル混練機を用いて125℃~130℃で40分間加熱した後、室温(25℃)まで冷却して混練物を得た。得られた混練物をジェットミルで粉砕分級し、体積平均粒径が7.0μmであり、かつ粒径が5.0μm以下である粒子が35個数%の粒径分布を有するトナー母体粒子を得た。
次に、前記トナー母体粒子100質量部に対して、シリカ(HDK-2000、クラリアント株式会社製)1.0質量部、及び前記チタン酸ストロンチウム微粉体A0.7質量部を添加し、ヘンシェルミキサーを用いて下記混合条件にて混合した後、篩を用いて粒径が35μm以上の粒子を除去し、トナーAを得た。
-混合条件-
・周波数:80Hz
・時間:10min
【0101】
(実施例2)
実施例1において、前記チタン酸ストロンチウム微粉体Aを前記チタン酸ストロンチウム微粉体Bに変更した以外は、実施例1と同様にして、トナーBを得た。
【0102】
(実施例3)
実施例1において、前記チタン酸ストロンチウム微粉体Aを前記チタン酸ストロンチウム微粉体Cに変更した以外は、実施例1と同様にして、トナーCを得た。
【0103】
(実施例4)
実施例1において、前記チタン酸ストロンチウム微粉体Aを前記チタン酸ストロンチウム微粉体Dに変更した以外は、実施例1と同様にして、トナーDを得た。
【0104】
(実施例5)
実施例1において、前記チタン酸ストロンチウム微粉体Aを前記チタン酸ストロンチウム微粉体Eに変更した以外は、実施例1と同様にして、トナーEを得た。
【0105】
(実施例6)
実施例1において、前記チタン酸ストロンチウム微粉体Aを前記チタン酸ストロンチウム微粉体Fに変更した以外は、実施例1と同様にして、トナーFを得た。
【0106】
(実施例7)
実施例1において、ワックス分散剤の含有量を13質量部から7質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、トナーGを得た。
【0107】
(実施例8)
実施例1において、ロールミル混練機をオープンロール型混錬機(日本コークス工業社製:ニーデックスMOS-100型)に変更した以外は、実施例1と同様にして、トナーHを得た。
【0108】
(実施例9)
実施例1において、前記カルナウバワックスの含有量を3質量部から2.2質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、トナーIを得た。
【0109】
(実施例10)
実施例1において、前記カルナウバワックスの含有量を3質量部から5.4質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、トナーJを得た。
【0110】
(比較例1)
実施例1において、前記チタン酸ストロンチウム微粉体Aを前記チタン酸ストロンチウム微粉体Gに変更した以外は、実施例1と同様にして、トナーKを得た。
【0111】
(比較例2)
実施例1において、前記チタン酸ストロンチウム微粉体Aを前記チタン酸ストロンチウム微粉体Hに変更した以外は、実施例1と同様にして、トナーLを得た。
【0112】
(比較例3)
実施例1において、前記チタン酸ストロンチウム微粉体AをSW-100(チタン工業社製、チタン酸ストロンチウム微粉体I)に変更した以外は、実施例1と同様にして、トナーMを得た。
【0113】
得られた各トナーについて、以下のようにして、諸特性を測定した。結果を表1に示す。
【0114】
<チタン酸ストロンチウム微粉体の一次粒子の数平均円相当径、及びSi含有粒子の数平均円相当径の測定>
走査型電子顕微鏡(SU8200シリーズ、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、各トナーA~Nのトナー画像を得た。得られたトナー画像を、画像処理ソフトA像君(旭化成エンジニアリング株式会社)を用いて、二値化し、円相当径を算出した。
上記算出は、画像処理ソフトA像君の粒子解析モードで得られた「円相当径2」から体積を算出し、下記式(1)に基づき、数平均円相当径を算出した。
数平均円相当径(nm)=[各測定粒子の(円相当径×体積)の和]/各測定粒子の体積の和]・・・式(1)
以下に本解析の解析条件の詳細を記載する。
2値化方法(閾値):手動設定(目視)
範囲指定:有
外縁補正:無
穴埋め:有
収縮分離:無
トナーが重なっている画像の場合は、上記において閾値を手動で設定し、トナー表面の凹凸と外添剤とを区別する。また、二値化する際に、同一画像上でのコントラストの変化が激しい場合は、解析範囲を1粒子付近に指定し、1粒子中とその周辺領域に絞って観察して閾値を設定した。
【0115】
<ワックスの円相当径の測定>
走査型電子顕微鏡(SEM(cold)日立SU8230、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、エポキシ樹脂に各トナーを包埋し、ミクロトームを用いてトナー断面を切り出し、ルテニウム染色を行った。トナー断面を5,000倍率で観察し、画像解析ソフトA像くんを用いて得られた反射電子画像を縮尺単位μmで入力し、ルテニウム染色部分の粒子解析(2値化)を行い、円相当径を算出した。前記トナーの断面は、断面がトナーの中心を通らなくてもよい。
【0116】
<ピーク強度比(W/R)の測定方法>
トナー2.0gに1tを60秒間荷重し、直径20mmのペレットを加圧成型して平滑面を作製した後、FT-IR(フーリエ変換赤外線分光分析測定装置、Avatar370、ThermoElectron社製)を用いて、ATR法(全反射法)測定により得られる吸光度スペクトルを得た。離型剤(ワックス)のアルキル鎖C-Hの伸縮を由来とする吸光度スペクトルのピークの吸光度をWとし、樹脂の吸光度スペクトルのピークの吸光度をRとし、ピーク強度比(W/R)を算出した。
トナー中に2種以上の樹脂が含まれ、2種以上のピークが検出される場合は、スペクトルのベースラインから最も高いピークの吸光度をRとした。例えば、トナー中にポリエステル樹脂(784cm
-1~889cm
-1に観測されるピーク、
図2参照)とスチレン-アクリル共重合樹脂(670cm
-1~714cm
-1に観測されるピーク)が含まれ、784cm
-1~889cm
-1に観測されるピークの吸光度が高い場合は、784cm
-1~889cm
-1に観測されるピークの吸光度をRとした。
【0117】
<チタン酸ストロンチウム微粉体における、Tiに対するSiのモル比(Si/Ti)の測定方法>
SEM-EDSのX線分析を用いて、炭素のピーク強度を基準とし、チタン酸ストロンチウム微粉体における、Tiのピーク強度に対するSiのピーク強度の比から、チタン酸ストロンチウム微粉体における、Tiに対するSiのモル比(Si/Ti)を測定した。
【0118】
<BET比表面積の測定方法>
MICROMETORICS INSTRUMENT CO.製ジェミニ2375を用いて、相対圧0.02以上1.00以下の範囲で、相対圧を徐々に高めながら窒素ガスの吸着量を40サンプル測定し、前記サンプルの窒素吸着等温線を作製した。前記40サンプルの結果をBETプロットし、重量当りのBET比表面積(m2/g)を求めた。
【0119】
<評価>
得られたトナーA~Nの各5質量%と、シリコーン樹脂を被覆した平均粒径が40μmのマンガンマグネシウムフェライトキャリア95質量%とを混合して得られた現像剤を用いて、以下のようにして、かぶり、感光体摩耗及び画像濃度の評価を行った。
【0120】
<かぶりの評価>
前記トナーA~Nと前記キャリアとを用いて、複写機(imagioMF7070、株式会社リコー製)の改造機にて現像を行い、低温低湿環境(温度10℃、湿度15%RH)下で、5,000枚/日で、画像面積5%の画像を形成した。1枚目及び100,000枚目に画像面積5%の画像を形成後、白ベタ及び黒ベタ画像をA3サイズ紙(銘柄:RICOH MyPaper)に各3枚印字した。1枚目及び100,000枚目に得られた白ベタ画像上のかぶりを目視で観察し、1枚目に得られた白ベタ画像に対する、100,000枚目に得られた白ベタ画像を下記かぶりの評価基準に基づき評価した。結果を表1に示した。
[かぶりの評価基準]
◎:かぶりが全くなく、大変良好
○:かぶりがほとんどなく、良好
×:かぶりがあり、不良
【0121】
<感光体摩耗の評価>
マイクロスコープ(VHX-6000、キーエンス社製)を用いて、3D画像連結から、3Dデータを取得し、100,000枚の画像の形成前と後における、感光体表面全面の凹凸(感光体摩耗量)を測定し、下記感光体摩耗の評価基準に基づき評価した。結果を表1に示した。
前記感光体摩耗量とは、画像形成前と比較して画像形成後に消失した感光体の厚さを意味している。
[感光体摩耗の評価基準]
◎:感光体摩耗量が2μm以下
○:感光体摩耗量が2μm超3μm未満
×:感光体摩耗量が3μm以上
【0122】
【0123】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 数平均円相当径が5nm以上15nm以下であるSi含有粒子を表面に有するチタン酸ストロンチウム微粉体を外添剤として有することを特徴とするトナーである。
<2> 前記チタン酸ストロンチウム微粉体の、一次粒子の数平均円相当径が20nm以上40nm以下であり、BET比表面積が50m2/g以上である、前記<1>に記載のトナーである。
<3> 前記チタン酸ストロンチウム微粉体における、Tiに対するSiのモル比(Si/Ti)が、1.0以上10.0以下である、前記<1>から<2>のいずれかに記載のトナーである。
<4> 前記チタン酸ストロンチウム微粉体における、Tiに対するSiのモル比(Si/Ti)が、2.0以上9.0以下である、前記<1>から<3>のいずれかに記載のトナーである。
<5> 前記トナーがエステルワックスを含有し、前記トナーの断面におけるワックスの円相当径が、0.1μm以上0.5μm以下である、前記<1>から<4>のいずれかに記載のトナーである。
<6> 前記トナーが樹脂を含有し、FT-IR(フーリエ変換赤外線分光分析測定装置)を使用しATR法(全反射法)で測定した、前記ワックスの特徴的なピークの最大高さをWとし、前記樹脂の特徴的なピークの最大高さをRとしたとき、ピーク強度比(W/R)が、0.05以上0.14以下である、前記<5>に記載のトナー。
<7> 前記<1>から<6>のいずれかに記載のトナーを容器に収容してなることを特徴とするトナー収容容器である。
<8> 前記<1>から<6>のいずれかに記載のトナーと、キャリアとを有することを特徴とする現像剤である。
<9> 前記<8>に記載の現像剤と、前記現像剤を担持搬送する現像剤担持体とを有することを特徴とする現像装置である。
<10> 静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体に形成された静電潜像を前記<8>に記載の現像剤により現像する現像手段とを有することを特徴とするプロセスカートリッジである。
<11> 静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体に形成された静電潜像を前記<8>に記載の現像剤により現像する現像手段とを有することを特徴とする画像形成装置である。
【0124】
前記<1>から<6>のいずれかに記載のトナー、前記<7>に記載のトナー収容容器、前記<8>に記載の現像剤、前記<9>に記載の現像装置、前記<10>に記載のプロセスカートリッジ、前記<11>に記載の画像形成装置によると、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0125】
1 プロセスカートリッジ
2 静電潜像担持体
3 帯電手段
4 現像手段
5 クリーニング手段
10 静電潜像担持体
11 帯電ローラ
12 芯金
13 導電ゴム層
14 電源
20 静電潜像担持体
21 ファーブラシローラ
22 芯金
23 ブラシ部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0126】
【文献】特許第4979517号公報
【文献】特許第5248511号公報
【文献】特開2018-20919号公報