(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】シェーディング補正装置、読取装置、画像形成装置、及び方法
(51)【国際特許分類】
H04N 1/191 20060101AFI20240827BHJP
H04N 1/028 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H04N1/191
H04N1/028 Z
(21)【出願番号】P 2020108225
(22)【出願日】2020-06-23
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】西後 淳貴
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-039416(JP,A)
【文献】特開2014-175919(JP,A)
【文献】特開2018-006890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/191
H04N 1/028
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃度基準部材の読み取り結果であるシェーディングデータの周期的な成分を抽出する第1の抽出部と、
前記シェーディングデータとは異なるタイミングで前記濃度基準部材を読み取った読み取り結果の周期的な成分を抽出する第2の抽出部と、
前記第1の抽出部が抽出した周期的な成分である第1の周期成分と前記第2の抽出部が抽出した周期的な成分である第2の周期成分とに対して基準レベルとの交点を算出する交点算出部と、
前記第1の周期成分に対して算出された交点と前記第2の周期成分に対して算出された交点との差から複数の位置の位相シフト量を算出する位相シフト量算出部と、
前記位相シフト量算出部が算出した前記複数の位置の位相シフト量に基づいて前記第1の周期成分をシフトする位相シフト部と、
前記位相シフト部による位相シフト後の周期成分と前記シェーディングデータにおいて前記第1の周期成分を平滑化した成分とを有するシェーディングデータを生成する生成部と、
前記生成部が生成したシェーディングデータによりシェーディング補正を行う補正部と、
を有するシェーディング補正装置。
【請求項2】
前記位相シフト量算出部は、前記複数の位置の前記位相シフト量を、複数の位相シフト量を求めるパラメータ値を使用して算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載のシェーディング補正装置。
【請求項3】
前記第1の抽出部および前記第2の抽出部は、
前記濃度基準部材の読み取り結果である前記シェーディングデータに対し前記第1の周期成分を平滑化する平滑化部と、
前記シェーディングデータから前記平滑化部による平滑化後のデータを減算する減算部と、を有し、
前記減算部からの減算後の出力を前記第1の周期成分として出力する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のシェーディング補正装置。
【請求項4】
前記第1の抽出部が抽出した前記第1の周期成分と前記第2の抽出部が抽出した前記第2の周期成分とに基づいて異常個所を検知する検知部をさらに有し、
前記生成部は、前記位相シフト部による位相シフト後の周期成分として、前記検知部が検知した異常個所に対応する画素の前記第1の周期成分を前記位相シフト後の周期成分に置き換えた周期成分によりシェーディングデータを生成する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のうちの何れか一項に記載のシェーディング補正装置。
【請求項5】
前記位相シフト量算出部は、前記第1の周期成分において画素の境界に対して境界処理を行って複数の位置の位相シフト量を算出する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のうちの何れか一項に記載のシェーディング補正装置。
【請求項6】
前
記検知部がごみが存在すると検知したブロックの位相シフト量を決定する決定部をさらに有し、
前記位相シフト量算出部は、前記決定部が決定したブロックの位相シフト量を補間する、
ことを特徴とする請求項4に記載のシェーディング補正装置。
【請求項7】
前記濃度基準部材の読み取り結果である前記シェーディングデータと、前記シェーディングデータとは異なるタイミングで前記濃度基準部材を読み取った読み取り結果との出力比率を算出する出力比率算出部をさらに有し、
前記生成部は前記出力比率に基づいてシェーディングデータを生成する、
ことを特徴とする請求項4に記載のシェーディング補正装置。
【請求項8】
前記交点算出部は、前記第1の抽出部が抽出した周期的な成分である第1の周期成分と前記第2の抽出部が抽出した周期的な成分である第2の周期成分のそれぞれにおいて、前記周期的な成分の正負が反転する位置の2画素の値で直線近似した直線との交点を算出する、
ことを特徴とする請求項1乃至7のうちの何れか一項に記載のシェーディング補正装置。
【請求項9】
複数の画素を有し、前記複数の画素から入力される読取信号をシェーディングデータによりシェーディング補正する読取装置であって、
濃度基準部材の読み取り結果である前記シェーディングデータの周期的な成分を抽出する第1の抽出部と、
前記シェーディングデータとは異なるタイミングで前記濃度基準部材を読み取った読み取り結果の周期的な成分を抽出する第2の抽出部と、
前記第1の抽出部が抽出した周期的な成分である第1の周期成分と前記第2の抽出部が抽出した周期的な成分である第2の周期成分とに対して基準レベルとの交点を算出する交点算出部と、
前記第1の周期成分に対して算出された交点と前記第2の周期成分に対して算出された交点との差から複数の位置の位相シフト量を算出する位相シフト量算出部と、
前記位相シフト量算出部が算出した前記複数の位置の位相シフト量に基づいて前記第1の周期成分をシフトする位相シフト部と、
前記位相シフト部による位相シフト後の周期成分と前記シェーディングデータにおいて前記第1の周期成分を平滑化した成分とを有するシェーディングデータを生成する生成部と、
前記生成部が生成したシェーディングデータによりシェーディング補正を行う補正部と、
を有することを特徴とする読取装置。
【請求項10】
読取対象から画像を読み取る読取部と、
前記読取部が読み取った読取画像に対しシェーディング補正を行う処理部と、
シェーディング補正後の画像を媒体に形成する画像形成部と、
を有し、
前記処理部は、
濃度基準部材の読み取り結果であるシェーディングデータの周期的な成分を抽出する第1の抽出部と、
前記シェーディングデータとは異なるタイミングで前記濃度基準部材を読み取った読み取り結果の周期的な成分を抽出する第2の抽出部と、
前記第1の抽出部が抽出した周期的な成分である第1の周期成分と前記第2の抽出部が抽出した周期的な成分である第2の周期成分とに対して基準レベルとの交点を算出する交点算出部と、
前記第1の周期成分に対して算出された交点と前記第2の周期成分に対して算出された交点との差から複数の位置の位相シフト量を算出する位相シフト量算出部と、
前記位相シフト量算出部が算出した前記複数の位置の位相シフト量に基づいて前記第1の周期成分をシフトする位相シフト部と、
前記位相シフト部による位相シフト後の周期成分と前記シェーディングデータにおいて前記第1の周期成分を平滑化した成分とを有するシェーディングデータを生成する生成部と、
前記生成部が生成したシェーディングデータによりシェーディング補正を行う補正部と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
シェーディング補正装置でシェーディング補正する方法であって、
前記シェーディング補正装置は濃度基準部材の読み取り結果を記憶する記憶手段を有し、
前記濃度基準部材の読み取り結果であるシェーディングデータの周期的な成分を抽出する第1の抽出ステップと、
前記シェーディングデータとは異なるタイミングで前記濃度基準部材を読み取った読み取り結果の周期的な成分を抽出する第2の抽出ステップと、
前記第1の抽出ステップで抽出した周期的な成分である第1の周期成分と前記第2の抽出ステップで抽出した周期的な成分である第2の周期成分とに対して基準レベルとの交点を算出する交点算出ステップと、
前記第1の周期成分に対して算出された交点と前記第2の周期成分に対して算出された交点との差から複数の位置の位相シフト量を算出する位相シフト量算出ステップと、
前記位相シフト量算出ステップが算出した前記複数の位置の位相シフト量に基づいて前記第1の周期成分をシフトする位相シフトステップと、
前記位相シフトステップによる位相シフト後の周期成分と前記シェーディングデータにおいて前記第1の周期成分を平滑化した成分とを有するシェーディングデータを生成する生成ステップと、
前記生成ステップが生成したシェーディングデータによりシェーディング補正を行う補正ステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シェーディング補正装置、読取装置、画像形成装置、及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像読取装置において、読み取り光学系の主走査位置毎の光量分布のばらつき、およびセンサチップ画素毎の感度のばらつきを補正するために、シェーディング補正が行われている。具体的には、白色の濃度基準部材の製造過程での読み取り結果(シェーディングデータ)と原稿読取直前での読み取り結果との比較から入力データのシェーディング補正が行われる。
【0003】
CIS(Contact Image Sensor)のように複数の屈折率分布型レンズを配列して原稿を読み取る画像読取装置では、イメージセンサからの出力に屈折率分布レンズのレンズピッチに由来する周期成分が含まれる。製造過程と原稿読取直前とでは温度環境が異なるため、製造過程と原稿読取直前のものとで得られる周期成分に位相のズレが生じる。従来において、この位相のズレは、先ず製造過程で得たシェーディングデータの周期成分を複数の異なるシフト量でずらし、生成したそれぞれの位相の周期成分を原稿読取直前の読み取り結果とブロック毎に比較する。そして位相差が小さくなるようにシェーディングデータを生成するという補正を行う(特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来のシェーディングデータの補正技術では、精度よく位相ズレを補正しようとすると回路の規模が大きくなってしまという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、回路の規模を小さくすることができるシェーディング補正装置、読取装置、画像形成装置、及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のシェーディング補正装置は、第1の抽出部と、第2の抽出部と、交点算出部と、位相シフト量算出部と、位相シフト部と、生成部と、補正部と、を有し、第1の抽出部は、濃度基準部材の読み取り結果であるシェーディングデータの周期的な成分を抽出し、第2の抽出部は、前記シェーディングデータとは異なるタイミングで前記濃度基準部材を読み取った読み取り結果の周期的な成分を抽出し、交点算出部は、前記第1の抽出部が抽出した周期的な成分である第1の周期成分と前記第2の抽出部が抽出した周期的な成分である第2の周期成分とに対して基準レベルとの交点を算出し、位相シフト量算出部は、前記第1の周期成分に対して算出された交点と前記第2の周期成分に対して算出された交点との差から複数の位置の位相シフト量を算出し、位相シフト部は、前記位相シフト量算出部が算出した前記複数の位置の位相シフト量に基づいて前記第1の周期成分をシフトし、生成部は、前記位相シフト部による位相シフト後の周期成分と前記シェーディングデータにおいて前記第1の周期成分を平滑化した成分とを有するシェーディングデータを生成し、補正部は、前記生成部が生成したシェーディングデータによりシェーディング補正を行う。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、位相ズレを補正する回路の規模を小さくすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態にかかる読取装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、読取モジュールの回路ブロック構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、位相ズレを補正する白補正部の機能ブロック構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の周期成分抽出部の機能ブロック構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1の周期成分抽出部の処理を模式的に示した図である。
【
図6】
図6は、第1の基準レベル交点算出部と第2の基準レベル交点算出部とによる交点算出の処理の説明図である。
【
図7】
図7は、検出した位相差の主走査分布と、主走査分布を32段階の位相シフト量として離散化した場合の結果の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、周期成分の位相シフトを示す図である。
【
図9】
図9は、キュービック補正演算における注目画素及びその周辺画素の関係を表す図である。
【
図10】
図10は、1画素間隔を32分割した場合におけるシフト量dの補正パラメータの一例を示す図である。
【
図11】
図11は、補正データ生成部の機能ブロック構成の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、第1の実施の形態の変形例1にかかる白補正部の機能ブロック構成の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、ごみの位置の値の置換を説明するための図である。
【
図14】
図14は、第1の実施の形態の変形例2にかかる位相シフト量決定処理の一例を示す図である。
【
図16】
図16は、位相差の主走査分布のデータに対して多項式でフィッティングした場合の一例を示す図である。
【
図17】
図17は、位相シフト量の補間を説明するための図である。
【
図18】
図18は、第1の実施の形態の変形例6にかかる白補正部の機能ブロック構成の一例を示す図である。
【
図20】
図20は、第2の実施の形態にかかるMFPの全体構成の一例を示す図である。
【
図21】
図21は、MFPに構成されているADFの一例を示す図である。
【
図22】
図22は、MFPの制御ブロックの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、シェーディング補正装置、読取装置、画像形成装置、及び方法の実施の形態について詳細に説明する。
【0010】
画像等の読取装置において、読み取り光学系の主走査位置毎の光量分布のばらつき、およびセンサチップ画素毎の感度のばらつきを補正するために、シェーディング補正が行われる。具体的には、所定の白色を有する濃度基準部材である白板の読み取り結果(シェーディングデータ)を「SD」、入力データを「Din」とし、以下の式Aの演算を行うことで、入力データに対してシェーディング補正を施した結果である「Dout」を得る。
【0011】
Dout=Din/SD・・・(A)
【0012】
ここで、シェーディング補正に用いるシェーディングデータの生成時に、白板に汚れが付着していると、汚れが付着している箇所のシェーディングデータの値は、正確なシェーディング補正が困難な値となる。これは、例えばライン状のイメージセンサ等の読み取り光学系の主走査方向(画素が並べられている方向)に沿って、白板に付着している汚れが付着している箇所に対応する画素の画素データが正確にシェーディング補正されないことを意味している。このため、主走査方向に対して2次元方向に直交する副走査方向に読み取り光学系を走査して生成される1枚の画像上に、白板に汚れが付着していた箇所に対応するスジ状のノイズが現れる不都合を生ずる。
【0013】
具体的には、白板に黒い汚れが付着していた場合、黒い汚れにより、読み取り光が吸収され、また、乱反射することで、黒い汚れの付着箇所に対応する画素に対する入射光が、他の箇所よりも少なくなり、生成されるシェーディングデータの値に落ち込みが生ずる。この落ち込みが生じたシェーディングデータをシェーディング補正に用いると、上述の式Aの分母の値が小さくなるため、シェーディング補正結果が大きな値となり、白スジが発生する(シェーディング補正不足)。同様に、白板に白い汚れが付着していた場合、白い汚れにより、読み取り光の反射量が多くなる。このため、白い汚れの付着箇所に対応する画素に対する入射光が、他の箇所よりも多くなり、生成されるシェーディングデータの値が大きな値となる。この大きな値となったシェーディングデータをシェーディング補正に用いると、上述の式Aの分母の値が大きくなるため、シェーディング補正結果が小さな値となり、黒スジが発生する(シェーディング補正過多)。
【0014】
以下では、製造過程で白板を読み取った読み取り結果(シェーディングデータ)を原稿の読取直前に白板を読み取った読み取り結果で補正する場合の好適な実施例を示す。
【0015】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態では、シェーディング補正装置の利用形態をより理解しやすくするために、シェーディング補正装置を読取装置へ適用した例を示す。読取装置は光学レンズとイメージセンサとを備え、イメージセンサが読取対象から読み取った信号(読取信号または読取画像)を画像処理等する装置である。
【0016】
図1は、第1の実施の形態にかかる読取装置の構成の一例を示す図である。読取装置の一例として、等倍方式で読み取るCIS(Contact Image Sensor)の読取モジュールの構成の一例を示している。
図1(a)は、読取モジュールの分解斜視図である。
図1(b)は、読取モジュールの拡大図である。また、
図1(c)には、読取モジュールからの主走査方向における信号出力レベルの一例を示している。
【0017】
図1に示す読取モジュールは、導光体1と、光源部2と、イメージセンサ3と、屈折率分布レンズである複数のロッドレンズ4aからなるロッドレンズアレイ4とを含む。光源部2は、LED(Light Emitting Diode)、蛍光灯、又は冷陰極管などである。導光体1と光源部2は原稿の主走査方向や濃度基準部材である白板に光を照射する照射部を構成する。イメージセンサ3は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の集積回路に設けられており、イメージセンサ3の複数の画素(光電変換素子)3aにより原稿の主走査方向や白板を読み取る。白板には、一例として読取箇所を変えるなどの移動機構を備えない固定の白板(以下、「固定白板」と呼ぶ)を使用している。
【0018】
照射部は光源部2から発光された光を導光体1を介して原稿の主走査方向や固定白板に照射する。原稿の主走査方向や固定白板からの反射光は、ロッドレンズアレイ4の各ロッドレンズ4aを介してイメージセンサ3上の各画素3aで読み取られる。イメージセンサ3には、対応するロッドレンズ4aから出力されてくる光が入射し、
図1(c)に示すようにロッドレンズ4aの中心付近では出力が高く、ロッドレンズ4aの端部においては出力が低下する。従って、イメージセンサ3の各画素3aにおける出力はロッドレンズ4aのレンズピッチで周期的に変動する成分を含む。次に集積回路などに設けられている回路ブロックの構成について説明する。
【0019】
図2は、読取モジュールの回路ブロック構成の一例を示す図である。
図2に示すように、読取モジュール5は、主走査方向に並ぶ複数の画素3a、各画素3aにそれぞれ接続された複数のアンプ回路202、各アンプ回路202にそれぞれ接続された複数のA/D変換部203を有する。A/D変換部203の出力信号(読取信号または読取画像)は、黒補正部204と白補正部205とに入力されてシェーディング補正が行われる。シェーディング補正が行われた後、画像処理部206によりライン間補正処理等が施され、フレームメモリ207に一時記憶される。その後、出力制御回路208とI/F回路209とを介して画像データとして外部に出力される。各部は、コントローラ11からのタイミング信号に基づいて動作する。黒補正部204は、A/D変換部203の出力信号に含まれる黒レベルオフセット成分を除去する。
【0020】
白補正部205は、黒補正部204で黒レベルオフセット成分を除去した後の出力信号に対して白補正処理を施す。白補正処理では主に光源部2のムラおよび各画素3aの不均一な感度による画像データへの悪影響を除去する。
【0021】
白補正部205についてさらに詳しく説明する。白補正処理では、まず、製造工程にて予め読み取った清浄な固定白板の読み取り結果であるシェーディングデータ(第1の白基準データまたは白データとも言う)をメモリに記憶する。そして、読取装置に装着されている固定白板を原稿の読み取り直前に読み取り、その読み取り結果(第2の白基準データまたは白データとも言う)を第1の白基準データと比較して白補正を行う。なお、固定白板の読み取りのタイミングは一例であり、製造過程と原稿の読取直前とに限定するものではない。第1の白基準データは清浄な固定白板から読み取られたものであれば製造過程で読み取られたものでなくてもよい。また、第2の白基準データは、第1の白基準データとは異なるタイミングで読み取られた結果であれば、原稿の読取直前以外のタイミングでもよい。
【0022】
ただし、いずれもタイミングにしても、第1の白基準データの読み取りのタイミングと第2の白基準データの読み取りのタイミングとでは、製品が使用される場所による温度環境や、多くの原稿を連続的に読み取る連続スキャンなどにより、周囲の温度が異なる。ロッドレンズ4aと、イメージセンサ3が設けられている集積回路とでは熱の膨張率が異なるため、異なる熱膨張率によりイメージセンサ3の各画素3aに入射する光に位相のズレが生じ、そのままでは第1の白基準データと第2の白基準データとの対応関係が成立しない。そこで本実施の形態にかかる読取装置では、原稿読取直前の温度環境の場合と位相が合うように、シェーディングデータである第1の白基準データの位相ズレを補正する。
【0023】
図3は、位相ズレを補正する白補正部205の機能ブロック構成の一例を示す図である。
図3に示す白補正部205は、第1の記憶部301、第2の記憶部302、第1の周期成分抽出部303、第2の周期成分抽出部304、第1の基準レベル交点算出部305、第2の基準レベル交点算出部306、位相差算出部307、位相シフト部308、補正データ生成部309、および、シェーディング補正部310を含む。
【0024】
ここで、第1の周期成分抽出部303は「第1の抽出部」に相当する。第2の周期成分抽出部304は「第2の抽出部」に相当する。第1の基準レベル交点算出部305と第2の基準レベル交点算出部306は「交点算出部」に相当する。位相差算出部307は「位相シフト量算出部」に相当する。位相シフト部308は「位相シフト部」に相当する。補正データ生成部309は「生成部」に相当する。シェーディング補正部310は「補正部」に相当する。
【0025】
第1の記憶部301は、第1の白基準データを記憶する。第2の記憶部302は、第2の白基準データを記憶する。
【0026】
第1の周期成分抽出部303は、第1の記憶部301に記憶されている第1の白基準データからロッドレンズ4aの配列に由来する周期的な成分(第1の周期成分)を抽出して出力する。第2の周期成分抽出部304は、第2の記憶部302に記憶されている第2の白基準データからロッドレンズ4aの配列に由来する周期的な成分(第2の周期成分)を抽出して出力する。
【0027】
第1の基準レベル交点算出部305は、第1の周期成分と所定の基準レベルとの交点(第1の交点)を算出する。第2の基準レベル交点算出部306は、第2の周期成分と所定の基準レベルとの交点(第2の交点)を算出する。
【0028】
位相差算出部307は、第1の交点と第2の交点との差分から第1の周期成分と第2の周期成分との位相差を算出する。
【0029】
位相シフト部308は、算出された位相差に応じて第1の白基準データの周期成分をシフトさせる。
【0030】
補正データ生成部309は、位相シフト後の周期成分と、第1の白基準データから周期成分を除去した後のデータとを合成することにより、第1の白基準データの位相を補正した補正データ(シェーディングデータ)を生成する。
【0031】
シェーディング補正部310は、補正データ生成部309で生成された補正データによりシェーディング補正を行う。
【0032】
具体的に、第1の周期成分抽出部303、第2の周期成分抽出部304、第1の基準レベル交点算出部305、第2の基準レベル交点算出部306、位相差算出部307、位相シフト部308、補正データ生成部309、および、シェーディング補正部310の構成について一例を挙げて説明する。
【0033】
図4は、第1の周期成分抽出部303の機能ブロック構成の一例を示す図である。
図5は、第1の周期成分抽出部303の処理を模式的に示した図である。
図4に示すように、第1の周期成分抽出部303は平滑化部331と減算部332とにより構成する。
図4に示す平滑化部331と減算部332とを
図5を参照しながら詳しく説明する。
【0034】
図5(a)に示すように、第1の白基準データは画素3aが配列されている主走査方向において、ロッドレンズ配列に由来する周期成分と読取装置の光学系の特性で決まる成分(緩やかに変更する成分)とが合成された波形データを有している。第1の周期成分抽出部303は平滑化部331が第1の白基準データのロッドレンズ配列に由来する周期成分を平滑化して出力する。例えば平滑化部331は移動平均を用いて周期成分を平滑化し、
図5(b)に示すように周期成分が除去されたデータを出力する。減算部332は第1の白基準データと平滑化後のデータとの差をとり、
図5(c)に示すように周期成分を出力する。
【0035】
なお、周期成分を抽出する構成はこれに限らない。また、緩やかな成分の変動が均一な状態になっていれば、抽出後の周期成分がオフセット成分をもつように抽出を行ってもよい。
【0036】
第2の周期成分抽出部304は第1の周期成分抽出部303と同様の構成である。従って、第2の周期成分抽出部304の説明については繰り返しの説明になるため省略する。
第1の周期成分抽出部303から出力された第1の周期成分は第1の基準レベル交点算出部305に入力され、第2の周期成分抽出部304から出力された第2の周期成分は第2の基準レベル交点算出部306に入力される。
【0037】
第1の基準レベル交点算出部305は、第1の周期成分の出力レベルが基準レベルである所定の出力レベルと交わる交点(第1の交点)を算出する。第2の基準レベル交点算出部306は、第2の周期成分と所定の基準レベルとの交点(第2の交点)を算出する。
【0038】
図6は、第1の基準レベル交点算出部305と第2の基準レベル交点算出部306とによる交点算出の処理の説明図である。
図6(a)に第1の周期成分と第2の周期成分の主走査方向のある位置における位相ズレを示している。
図6(b)に位相ズレの近似計算のための説明図を示している。
【0039】
図6(a)に示されるように、第1の周期成分と第2の周期成分は共に、主走査方向に正弦波の波形で示すことができる。第1の基準レベル交点算出部305と第2の基準レベル交点算出部306は、この正弦波の波形と所定の出力レベルとの交点を含む画素間を
図6(b)に示されるように直線で近似し、近似した直線と基準レベルとの交点を算出する。この例では、出力レベルつまり光量レベルが0となる線を基準レベルとしている。そこで、出力レベルの正負が反転する位置の2画素(n画素とn+1画素)に着目し、この画素間の正弦波形を直線で近似する。そして、近似した直線と基準レベル(光量レベルが0の直線)との交点を求める。
【0040】
具体的に、第1の周期成分において、画素nにおける明度レベルをY1n、画素n+1における明度レベルをY1n+1としたとき、光量レベルが0となる点の画素X1は次式(1)で求める。
【0041】
X1=(n×Y1n+1 - (n+1)×Y1n)/(Y1n+1 - Y1n)
・・・(1)
【0042】
同様に、第2の周期成分において、画素nにおける明度レベルをY2n、画素n+1における明度レベルをY2n+1としたとき、光量レベルが0となる点の画素X2は次式(2)で求める。
【0043】
X2=(n×Y2n+1 - (n+1)×Y2n)/(Y2n+1 - Y2n)
・・・(2)
【0044】
続いて、位相差算出部307では、第1の交点と第2の交点との差から第1の周期成分と第2の周期成分との位相差を算出する。具体的に、位相差算出部307は、式(1)と式(2)より得た第1の周期成分と第2の周期成分とを次式(3)に当て嵌め、位相差ΔXを求める。
【0045】
ΔX=X1-X2 ・・・(3)
【0046】
また、位相差算出部307は、算出した位相差ΔXを多段階の所定の位相シフト量に当て嵌めて離散化する。例えば32段階の位相シフト量を使用する場合には「-15/32画素、-14/32画素、・・・、15/32画素、16/32画素」に離散化する。
【0047】
図7は、検出した位相差の主走査分布と、主走査分布を32段階の位相シフト量で離散化した場合の結果を示す図である。位相シフト部308は、位相差算出部307が離散化した結果で第1の周期成分をシフトする。
【0048】
図8は、周期成分の位相シフトの様子を示す図である。位相算出部307により位相差dを算出し、位相シフト部308で第1の白基準データの周期成分をdだけ左にシフトしている。1画素未満の位相シフト計算にはキュービック補正演算を用いる。
【0049】
図9は、キュービック補正演算における注目画素及びその周辺画素の関係を表す図である。キュービック補正演算は、主走査方向のn画素目を注目画素とし、その前後の4画素のデータを用いて、注目画素がシフト量dだけシフトした位置の値(画素データ)を算出するものである。
【0050】
位相シフト部308は、注目画素を主走査の左方向に遅らせる演算と、右方向に進ませる演算の2種類の演算のいずれかを選択して行う。シフト量dは値によって補正パラメータの値が異なる。ここでは一例として1画素間隔を32分割した値とする。
【0051】
図10は、1画素間隔を32分割した場合におけるシフト量dの補正パラメータ値の一例を示している。
【0052】
n画素目を左方向にシフト量dだけ遅らせた位置の値は、n画素目の値をX´(n)とした場合、次式で算出される。
【0053】
X´(n)=W1×X(n-1)+W2×X(n)+W3×X(n+1)+W4×X(n+2) ・・・(4)
【0054】
また、n画素目を右方向にシフト量dだけ進ませた位置の値は、n画素目の値をX´(n)とした場合、次式で算出される。
【0055】
X´(n)=W1×X(n-2)+W2×X(n-1)+W3×X(n)+W4×X(n+1) ・・・(5)
【0056】
このようにして位相シフト部308は第1の周期成分を位相シフトする。
【0057】
補正データ生成部309は、第1の白基準データを平滑化させた成分と、位相シフト部308からの出力データ(第1の白基準データを位相シフトさせた周期成分)とを加算し、補正白データ(補正後のシェーディングデータに相当する)を得る。
【0058】
図11は、補正データ生成部309の機能ブロック構成の一例を示す図である。
図11に示すように、補正データ生成部309は移動平均処理部341と加算部342とにより構成する。移動平均処理部341は移動平均を用いて第1の白基準データの周期成分を平滑化する。加算部342は移動平均処理部341が出力する平滑化後のデータと、位相シフト部308からの出力データとを加算し、補正白データである加算後のデータを出力する。なお、補正白データを生成する構成は、これに限らず適宜設計してよい。
【0059】
シェーディング補正部310は、入力画像データに対して、補正データ生成部309から得られた補正白データをシェーディングデータとしてシェーディング補正を行う。
【0060】
以上のように、本実施の形態では、原稿読取直前に読み取った固定白板のデータ(第2の白基準データ)から周期成分の位相のズレを検出して位相ズレを補正する。このため、第1の白基準データと第2の白基準データを読み取るときとの周囲の温度の違いにより周期成分に位相ズレが生じていても白補正を精度よく行うことが可能になる。また、周期成分と基準レベルとの交点から位相差を算出し、1画素内については所定のシフト量でシフトを行うため、回路規模の増大を抑えて回路規模を小さくすることができる。
【0061】
また、
図4に示すように第1の周期成分抽出部303を平滑化部331と減算部332とにより構成することにより平滑化データを減算するようにした場合には、装置の特性に依らず基準明度レベルを0として周期成分の交点の算出を行うことができる。
【0062】
本実施の形態で説明した回路ブロックのうちの黒補正部204を含む後段の機能については、ハードウェアで実現してもよいし、それらのうちの一部またはすべてをソフトウェアで実現してもよい。例えばCPU(Central Processing Unit)がハードディスクドライブ装置、ROM(Read Only Memory)またはRAM(Random Access Memory)等の記憶されている対応プログラムを実行することでソフトウェア的に実現する。
【0063】
また、それらの対応プログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)などのコンピュータ装置で読み取り可能な記録媒体に記録して提供してもよい。また、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)、ブルーレイディスク(登録商標)、半導体メモリなどのコンピュータ装置で読み取り可能な記録媒体に記録して提供してもよい。また、インターネットなどのネットワーク経由でインストールするかたちで提供してもよい。また、機器内のROM等に予め組み込んで提供してもよい。
【0064】
また、本実施の形態では読取装置の例について説明したが、シェーディング補正を行う機能を有するシェーディング補正装置を単体で提供し、読取装置や他の装置と組み合わせて利用させてもよい。例えば、
図3に示す第1の記憶部301、第2の記憶部302、第1の周期成分抽出部303、第2の周期成分抽出部304、第1の基準レベル交点算出部305、第2の基準レベル交点算出部306、位相差算出部307、位相シフト部308、補正データ生成部309、および、シェーディング補正部310のうちの一部またはすべてをシェーディング補正装置として提供し、読取装置や画像形成装置に装着させてもよい。
【0065】
(第1の実施の形態の変形例1)
第1の実施の形態の変形例1として、ごみの位置の値を置換する場合について示す。
図12は、第1の実施の形態の変形例1にかかる白補正部の機能ブロック構成の一例を示す図である。
図13は、ごみの位置の値の置換を説明するための図である。
図12に示す白補正部401は、第1の実施の形態にかかる白補正部205の構成(
図3参照)においてさらにごみ検知部411と位相シフト量決定部412とを備えている。
【0066】
ごみ検知部411は、第1の記憶部301の第1の白基準データと第2の記憶部302の第2の白基準データとの比が所定の閾値内にあるか否かでデータの異常を判定し、データに異常がある主走査位置をごみの位置として出力する(
図13(c))。
【0067】
位相シフト量決定部412は、ごみが存在する位置の位相シフト量から、該当主走査位置における、第1の白基準データと第2の白基準データの位相シフト量を決定し、位相シフト部308へ出力する。
【0068】
位相シフト部308は、ごみが存在する位置の位相を補正して補正データ生成部309へ出力する。
【0069】
図13(a)と
図13(b)に示すように、第2の白基準データのうちのごみを検知した一部のみに対し、第1の白基準データの平滑化成分と位相シフト後の周期成分とを合成して補正を行う。
【0070】
変形例1では、主走査全域を位相シフトの補正対象にするのではなく、第2の白基準データに異常が存在する箇所だけを第1の白基準データで置き換える。これにより補正のロバスト性を向上させることができる。
【0071】
(第1の実施の形態の変形例2)
第1の実施の形態の変形例2として、検出精度を向上させるための例を示す。位相差算出部307で算出した位相差の主走査分布は、センサ境界における局所的な変動や、固定白板上の微細なごみなどによるノイズを多分に含んでいる。そのため、そのまま所定の位相シフト量に離散化すると、誤差が大きくなってしまう可能性がある。そこで、境界処理を行うことが考えられる。変形例2では、境界処理の一例として、ブロック毎に平均化する境界処理の例を示す。具体的に、変形例2において位相シフト量決定部412は、まず位相差の主走査成分を所定数の画素毎のブロックに分割して平均化することでノイズを平滑化する。そして、位相シフト量決定部412は、平均化後の値に基づき離散化する。
【0072】
図14は、第1の実施の形態の変形例2にかかる位相シフト量決定処理の一例を示す図である。
図14(a)は、検出した位相差の主走査分布である。
図14(b)は、位相シフト量決定部412が、64画素を1つのブロックとして、位相差の主走査分布を分割して平均化した場合の分布である。
図14(c)は、位相シフト量決定部412が平均化後の値に基づき離散化した場合の結果である。
【0073】
(第1の実施の形態の変形例3)
第1の実施の形態の変形例3として、境界処理の他の例を示す。位相差は主走査方向に対して曲線状に分布するが、読取モジュールが複数のセンサを基板上に実装している特性上、センサの境界で周期成分に局所的な変動が生じるために、周期成分の位相差もセンサの境界毎に局所的な変化が生じる場合がある。変形例3では、局所的な変化が生じる主走査方向の画素領域のみ処理の対象外とすることで局所的な変化の影響を回避する。
【0074】
図15は、位相差の主走査分布を示す図である。
図15において点線で示す境界がセンサの境界に相当する箇所で、位相差において局所的な変化が生じる可能性がある。
図15に示す例では432画素毎にセンサの境界が存在する。この局所的な変化が生じる主走査方向の画素領域は、読取モジュールの特性によって特定できる。よって、位相差算出部307が離散化処理を実施する前に、局所的な変化が生じる主走査方向の画素領域のみ処理の対象外とする。これにより局所的な変化の影響を回避し、より精度向上を図ることができる。
【0075】
(第1の実施の形態の変形例4)
第1の実施の形態の変形例4として、境界処理の他の例を示す。位相差の未処理データは、センサ境界における局所的な変動や、固定白板上の微細なごみなどによるノイズを多分に含んでいる。そこで、位相差の主走査分布のデータに対して、多項式でフィッティングし、その式から離散化処理を実施する。
【0076】
図16は、位相差の主走査分布のデータに対して多項式でフィッティングした場合の一例を示す図である。
図16では、3次関数曲線に最小二乗近似を行ったものを実線で表している。このように多項式フィッティングを行うことでノイズによる局所的な変化の影響を回避することができる。
【0077】
(第1の実施の形態の変形例5)
第1の実施の形態の変形例5として、ごみの検出精度向上のための例を示す。位相シフト量決定部412(
図12参照)は、ごみ検知部411(
図12参照)でごみが存在していると判定されたブロックの位相シフト量を、位相差算出部307の出力から抜き出して出力する。ここで、その該当ブロックの位相差算出部307の出力結果にごみの影響が含まれている場合、実際の位相シフト量からずれた値が出力される可能性が考えられる。変形例5では、該当箇所の前後の位相シフト量から、ごみが存在するブロックの位相シフト量を補間する。
【0078】
図17は、位相シフト量の補間を説明するための図である。
図17(a)のように、ずれ量が求められたとして、異常画素が存在するブロックが、ブロック2とブロック3とブロック5と判定されたとする。このとき、ブロック2とブロック3とブロック5のずれ量はごみの影響を受けていると考えられるため、その前後の画素から補間する。具体的には
図17(b)に示すように、ブロック2とブロック3のずれ量はブロック1とブロック4の結果から、ブロック5のずれ量はブロック4とブロック5の結果から線形補間する。
【0079】
(第1の実施の形態の変形例6)
第1の白基準データと第2の白基準データとでは、取得環境温度差や光源特性の変化などから周期成分の振幅や全体の光量レベルに差が生じ、補正に誤差が生じる可能性がある。変形例6では、この誤差を補正するための例を示す。
【0080】
図18は、第1の実施の形態の変形例6にかかる白補正部の機能ブロック構成の一例を示す図である。
図18に示す白補正部501は、第1の実施の形態の変形例1にかかる白補正部401の構成(
図12参照)においてさらに出力比率算出部511を備える。
【0081】
図19は、出力比率算出部511の説明図である。第1の白基準データと第2の白基準データとで、取得環境温度差や光源特性の変化などから光量レベル差があると、補正に誤差が生じてしまう可能性がある。この誤差の補正のため、第1の白基準データと第2の白基準データの比を考える。第1の白基準データにごみが含まれている場合、比を取ると
図19(c)のように、ごみが含まれている部分が周辺と比べて値が小さくなる。ノイズの成分を除くため、移動平均を掛けたのち、該当箇所を線形に補間することを行う。この補間した値を補正比率として、前述した補正白データに対して乗算する。これにより、第1の白基準データと第2の白基準データに光量レベル差があっても補正が可能となる。
【0082】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態として画像形成装置における構成の一例について説明する。ここでは画像読取部と画像形成部とを備える画像形成装置の一例としてMFPの構成について説明する。
【0083】
図20は、第2の実施の形態にかかるMFPの全体構成の一例を示す図である。
図21は、MFPに構成されている自動原稿搬送機構(ADF:Auto Document Feeder)の一例を示す図である。
図20および
図21には、MFPの内部構成が分かるように外部保護カバーを外した状態のものを示している。
図22は、MFPの制御ブロックの構成の一例を示す図である。
【0084】
図20に示すMFPは、画像読取部10と、給紙部20と、画像形成部30とを備えている。給紙部20は、用紙サイズの異なる記録紙を収納する給紙カセット21,22を有している。また、給紙部20は、給紙カセット21,22に収納された記録紙を画像形成部30の画像形成位置まで搬送する各種ローラを備えた給紙機構23を有している。
【0085】
画像形成部30は、露光装置31と、感光体ドラム32と、現像装置33と、転写ベルト34と、定着装置35とを備えている。画像形成部30は、画像読取部10で読み取られた原稿の画像データに基づいて、露光装置31により感光体ドラム32を露光して感光体ドラム32に潜像を形成する。また、画像形成部30は、現像装置33により、感光体ドラム32に異なる色のトナーを供給して現像する。そして、画像形成部30は、転写ベルト34により、感光体ドラム32に現像された像を給紙部20から供給された記録紙に転写した後、定着装置35により記録紙に転写されたトナー画像のトナーを溶融して、記録紙にカラー画像を定着させる。
【0086】
画像読取部10は、ADFを含む。ADFは、セットされた読取原稿を自動搬送し、所定の位置で原稿画像の読み取りを行う。
図21に示すADFは、原稿セット部A、分離給送部B、レジスト部C、ターン部D、第1読取搬送部E、第2読取搬送部F、排紙部G、および、スタック部Hを有する。原稿セット部Aは、読取原稿束をセットする。分離給送部Bは、セットされた原稿束から一枚毎に原稿を分離して給送する。レジスト部Cは、給送された原稿を一次突当整合する働きと、整合後の原稿を引き出し搬送する働きを有する。ターン部Dは、搬送される原稿をターンさせて、原稿面を読取り側(下方)に向けて搬送する。第1読取搬送部Eは、原稿の表面画像を、コンタクトガラスの下方より読取を行わせる。第2読取搬送部Fは、読取後の原稿の裏面画像を読み取る。排紙部Gは、表裏の読取が完了した原稿を機外に排出する。スタック部Hは、読取完了後の原稿を積載保持する。
【0087】
読み取りを行う原稿束130は、可動原稿テーブル131を含む原稿テーブル132上に、原稿面を上向きの状態でセットする。さらに、原稿束130の幅方向を、図示しないサイドガイドによって、搬送方向と直行する方向に位置決めする。原稿のセットは、セットフィラー133、原稿セットセンサ100により検知され、I/F114により本体制御部122に送信される。
【0088】
さらに、原稿テーブル面に設けられた原稿長さ検知センサ134または135(反射型センサ、または、原稿1枚も検知可能なアクチュエータータイプのセンサが用いられる)により、原稿の搬送方向長さの概略が判定される。
【0089】
可動原稿テーブル131は、底板上昇モータ112により、
図21中矢印で示すa方向およびb方向に動作可能(上下動可能)な構成となっている。可動原稿テーブル131は、原稿のセットを、セットフィラー133および原稿セットセンサ100で検知すると、底板上昇モータ112を正転させて原稿束130の最上面がピックアップローラ148と接触するように可動原稿テーブル131を上昇させる。ピックアップローラ148は、ピックアップモータ108を駆動源とするカム機構により、
図21中矢印で示すc方向およびd方向に動作する。また、ピックアップローラ148は、可動原稿テーブル131が上昇し、可動原稿テーブル131上の原稿上面により押されてc方向に上がり、給紙適正位置センサ102により上限を検知可能となっている。
【0090】
操作部121よりプリントキーが押下され、本体制御部122からI/F114を介してコントローラ11に原稿給紙信号が送信されると、ピックアップローラ148が、給紙モータ109の正転により回転駆動され、原稿テーブル132上の数枚(理想的には1枚)の原稿をピックアップする。回転方向は、最上位の原稿を給紙口に搬送する方向である。
【0091】
給紙ベルト136は、給紙モータ109の正転により給紙方向に駆動される。リバースローラ137は、給紙モータ109の正転により、給紙方向と逆方向に回転駆動され、最上位の原稿とその下の原稿を分離して、最上位の原稿のみを給紙する構成となっている。さらに詳しく説明すると、リバースローラ137は、給紙ベルト136と所定圧で接する。リバースローラ137は、給紙ベルト136と直接接している際、または原稿1枚を介して接している状態では、給紙ベルト136の回転につられて反時計方向に回転する。また、リバースローラ137は、給紙ベルト136とリバースローラ137との間に、2枚以上の原稿が侵入した時は、連れ回り力がトルクリミッターのトルクよりも低くなるように設定されている。この場合、リバースローラ137は、本来の駆動方向である時計回り方向に回転し、余分な原稿を押し戻す働きをする。これにより、原稿の重送を防止できる。
【0092】
給紙ベルト136とリバースローラ137との作用により、1枚に分離された原稿は、給紙ベルト136によって更に送られ、突き当てセンサ105によって先端が検知され更に進んで停止しているプルアウトローラ138に突き当たる。その後、原稿は、突き当てセンサ105の検知から所定量定められた距離分、搬送され、プルアウトローラ138に所定量撓みを持って押し当てられる。この状態で、給紙モータ109が停止され、給紙ベルト136の駆動が停止する。この時、ピックアップモータ108を回転させ、ピックアップローラ148を原稿上面から退避させ、原稿を給紙ベルト136の搬送力のみで送る。これにより、原稿の先端部は、プルアウトローラ138の上下ローラ対のニップに進入し、先端部の整合(スキュー補正)が行われる。
【0093】
プルアウトローラ138は、スキュー補正機能を有する。また、プルアウトローラ138は、分離後にスキュー補正された原稿を中間ローラ139まで搬送するためのローラで、給紙モータ109の逆転により駆動される。またこの時(給紙モータ109逆転時)、プルアウトローラ138と中間ローラ139は駆動されるが、ピックアップローラ148と給紙ベルト136は駆動されない。
【0094】
原稿幅センサ104は、奥行き方向に複数個並べられ、プルアウトローラ138により搬送された原稿の搬送方向に直行する幅方向のサイズを検知する。また、原稿の搬送方向の長さは、原稿の先端および後端を突き当てセンサ105で読み取ることで生成されるモータパルスを用いて検知される。
【0095】
プルアウトローラ138および中間ローラ139の駆動により、レジスト部Cからターン部Dに原稿が搬送される際には、レジスト部Cでの搬送速度が、第1読取搬送部Eでの搬送速度よりも高速に設定される。これにより、原稿を読み取り部へ送り込む処理時間の短縮化が図られている。原稿の先端が読取入口センサ103により検出されると、読取入口ローラ140の上下ローラ対のニップに原稿先端が進入する前に、原稿搬送速度を、読取搬送速度と同速にするために減速を開始する。これと同時に、読取モータ110を正転駆動し、読取入口ローラ140、読取出口ローラ141、およびCIS出口ローラ142を駆動する。レジストセンサ107で原稿の先端が検知されると、所定の搬送距離をかけて減速し、読取位置143の手前で一時停止すると共に、本体制御部122にI/F114を介してレジスト停止信号を送信する。
【0096】
続いて、本体制御部122より読取り開始信号を受信すると、レジスト停止していた原稿は、読取位置143に原稿先端が到達するまでに所定の搬送速度に立ち上がるように増速されて搬送される。読取モータ110のパルスカウントにより検出された原稿先端が読取部に到達するタイミングで、本体制御部122に対して第1面の副走査方向有効画像領域を示すゲート信号が、第1読取部を原稿後端が抜けるまで送信される。
【0097】
片面原稿読取りの場合には、第1読取搬送部Eを通過した原稿は第2読取部113を経て排紙部Gへ搬送される。この際、排紙センサ106により原稿の先端が検知されると、排紙モータ111が正転駆動され、排紙ローラ144が、反時計回り方向に回転する。また、排紙センサ106による原稿の先端検知からの排紙モータパルスカウントにより、原稿後端が排紙ローラ144の上下ローラ対のニップから抜ける直前に、排紙モータ駆動速度が減速される。これにより、排紙トレイ145上に排出される原稿が、排紙トレイ145から飛び出る不都合を防止している。
【0098】
両面原稿読取りの場合には、排紙センサ106にて原稿先端を検知してから読取モータ110のパルスカウントにより第2読取部113に原稿先端が到達するタイミングで、第2読取部113に対してコントローラ11から副走査方向の有効画像領域を示すゲート信号が第2読取部113を原稿後端が抜けるまで送信される。第2読取ローラ146は、第2読取部113における原稿の浮きを抑える。第2読取部113の対向する位置にはシェーディングデータを取得するための白板(濃度基準部材)が固定されている。
【0099】
なお、記憶部101にはシェーディング補正を行うためのプログラムが記憶されている。
【0100】
第2読取部113は設置スペースがないためにCISの構成となっている。第2の実施の形態では、第2読取部113が
図1~
図3に示す読取モジュールの構成を備えている。なお、読取モジュールの構成や白補正の構成については繰り返しとなるため説明を省略する。
【0101】
以上、本発明の実施の形態及び変形例を説明したが、実施の形態及び変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施の形態及び変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施の形態及び変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0102】
1 導光体
2 光源部
3 イメージセンサ
3a 画素(光電変換素子)
4 ロッドレンズアレイ
4a ロッドレンズ
5 読取モジュール
11 コントローラ
202 アンプ回路
203 A/D変換部
204 黒補正部
205 白補正部
206 画像処理部
207 フレームメモリ
208 出力制御回路
209 I/F回路
301 第1の記憶部
302 第2の記憶部
303 第1の周期成分抽出部
304 第2の周期成分抽出部
305 第1の基準レベル交点算出部
306 第2の基準レベル交点算出部
307 位相差算出部
308 位相シフト部
309 補正データ生成部
310 シェーディング補正部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0103】