(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】後処理装置
(51)【国際特許分類】
B65H 37/04 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
B65H37/04 Z
(21)【出願番号】P 2020110653
(22)【出願日】2020-06-26
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100186853
【氏名又は名称】宗像 孝志
(72)【発明者】
【氏名】宮地 雄司
(72)【発明者】
【氏名】南 和正
(72)【発明者】
【氏名】杉江 直紀
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-168435(JP,A)
【文献】特開2004-010197(JP,A)
【文献】特開2020-026111(JP,A)
【文献】特開2018-167937(JP,A)
【文献】特開2018-052641(JP,A)
【文献】特開2012-025499(JP,A)
【文献】特開2017-222458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 37/00-37/06
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成後のシートに所定の後処理を行う後処理装置であって、
前記後処理に用いられるツールを複数備え、前記シートに対する後処理位置に前記ツールを移動させ、当該後処理に用いる前記ツールを前記後処理位置に対し選択的に切り替えるツール移動切替部を備え、
前記ツール移動切替部は、
前記ツールを前記後処理位置に移動させる移動手段と、
前記ツールの移動方向と直交する方向の軸において前記ツールを回転移動させるツール位置回転手段と、
前記軸の周方向において前記ツールを前記後処理位置に対し選択的に切り替えるツール切替手段と、を有
し、
前記ツール移動切替部は、前記移動手段における移動範囲内における初期位置と、前記ツール切替手段によって前記ツールが選択的に切替られる切替位置とを有し、
前記ツール位置回転手段における前記ツールの回転移動は、前記初期位置と前記切替位置の間で行われる、
ことを特徴とする後処理装置。
【請求項2】
画像形成後のシートに所定の後処理を行う後処理装置であって、
前記後処理に用いられるツールを複数備え、前記シートに対する後処理位置に前記ツールを移動させ、当該後処理に用いる前記ツールを前記後処理位置に対し選択的に切り替えるツール移動切替部を備え、
前記ツール移動切替部は、
前記ツールを前記後処理位置に移動させる移動手段と、
前記ツールの移動方向と直交する方向の軸において前記ツールを回転移動させるツール位置回転手段と、
前記軸の周方向において前記ツールを前記後処理位置に対し選択的に切り替えるツール切替手段と、を有し、
前記ツール移動切替部は、前記ツール切替手段を前記移動手段における移動範囲の両端に有し、
前記ツールを切り替えるときに前記ツール位置回転手段の位置が近い方の前記ツール切替手段に移動する、
ことを特徴とする後処理装置。
【請求項3】
前記移動手段は、アクチュエータと駆動伝達部材とを有し、
前記ツール位置回転手段は、前記駆動伝達部材に保持された歯車付きの支持部材であり、
前記ツール切替手段は、前記支持部材が備える歯車に対して噛み合う爪部材である、請求項1
又は2に記載の後処理装置。
【請求項4】
前記移動手段は、移動駆動源を有し、
前記ツール位置回転手段は、前記移動駆動源に保持された歯車付きの支持部材であり、
前記ツール切替手段は、前記支持部材が備える歯車に対して噛み合う爪部材であり、
前記移動駆動源は、前記支持部材を前記爪部材に噛み合わせながら移動して前記ツールを切り替える、請求項1
又は2に記載の後処理装置。
【請求項5】
前記支持部材と前記爪部材の相対的な位置は、前記移動手段における移動方向において可変可能である、請求項
3又は
4に記載の後処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像が形成されたシート状の媒体に対して所定の後処理を行う後処理装置が知られている。後処理装置が実行する後処理として、複数枚のシートの端部を整合させたシート束を金属針などの綴じ部材を用いて綴じる針有り綴じ処理、綴じ部材を用いずに綴じる針無し綴じ処理、又はシート束に穴を開けるパンチ処理などが知られている。
【0003】
上記に列挙した各後処理は、それぞれ異なる処理機構(ツール)により実行される。したがって、複数の後処理に対応する後処理装置の場合、複数のツールを装置内に備えることになるので、装置の小型化には不適となる。また、所定の後処理を実行するときに用いられるツールをシート束に対して使用可能な状態になるように切り替える(交換する)必要があるが、これを手作業で行うと後処理の効率が低下する。そこで、使用条件に基づいてツールを効率的に交換できる構成が望ましい。
【0004】
後処理装置とは異なるが、工作機械に関し、ツールを付け替える作業時間を短縮する目的で、主軸に装着されたツールと交換用ツールとの間で交換可能な技術が開示されている(特許文献1を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている技術では、交換用ツールが置かれている場所まで移動しなければ、ツールを交換することができず、ツール交換までの移動(往復動作)に時間を要する。したがって、特許文献1に開示の技術を複数のツールを備える後処理装置に適用しても、複数の後処理を効率的に実行するには課題がある。
【0006】
また、複数のツールを備えることで大型になりやすい点に関しては、従来技術を適用しても解消することは困難である。したがって、複数の後処理を実行可能な後処理装置において、後処理の効率を向上させ、小型化にも寄与できるものが望ましい。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、複数の後処理を実行かつ小型であり、後処理に用いられるツールの交換時間を削減できるシート処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術的課題を解決するため、本発明の一態様は、画像形成後のシートに所定の後処理を行う後処理装置であって、前記後処理に用いられるツールを複数備え、前記シートに対する後処理位置に前記ツールを移動させ、当該後処理に用いる前記ツールを前記後処理位置に対し選択的に切り替えるツール移動切替部を備え、前記ツール移動切替部は、前記ツールを前記後処理位置に移動させる移動手段と、前記ツールの移動方向と直交する方向の軸において前記ツールを回転移動させるツール位置回転手段と、前記軸の周方向において前記ツールを前記後処理位置に対し選択的に切り替えるツール切替手段と、を有し、前記ツール移動切替部は、前記移動手段における移動範囲内における初期位置と、前記ツール切替手段によって前記ツールが選択的に切替られる切替位置とを有し、前記ツール位置回転手段における前記ツールの回転移動は、前記初期位置と前記切替位置の間で行われる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、小型であり、後処理に用いられるツールの交換時間を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る後処理装置を含む画像形成システムの概略図。
【
図2】本発明に係る後処理装置の実施形態としてのシート処理装置の要部を示す構成図。
【
図3】上記シート処理装置が備える針有り綴じユニットの例を示す図。
【
図4】上記シート処理装置が備える針無し綴じルユニットの例を示す図。
【
図5】上記針無し綴じユニットが備える綴じ歯を例示する図。
【
図6】上記シート処理装置が備える穴開けユニットの例を示す図。
【
図7】上記シート処理装置が備える移動切替機構の構成例を示す図。
【
図8】上記シート処理装置が備える移動切替機構の詳細な構成例を示す図。
【
図9】上記シート処理装置が備える移動切替機構の別の構成例を示す図。
【
図10】上記シート処理装置が備える移動切替機構のさらに別の構成例を示す図。
【
図11】上記シート処理装置が備える移動切替機構のさらに別の構成例を示す図。
【
図12】上記シート処理装置が備える制御構成の例を示すブロック図。
【
図13】上記シート処理装置において実行される後処理の例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る後処理装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る後処理装置としてのシート処理装置2を含む画像形成システムの構成例である。当該画像形成システムは、画像形成装置本体1及びシート処理装置2から構成されている。
【0012】
シート処理装置2は、画像形成装置本体1の側面に連結されていて、画像形成装置本体1から排出されるシート状の媒体であって、画像形成処理により画像が形成済みのシートPを受け入れて、シートPに対して所定の後処理を実行して排出する機能を備える。
【0013】
なお、シート処理装置2において実行される後処理の種類及び内容は、画像形成装置本体1から通知される情報に基づいて選択されてもよいし、ユーザがシート処理装置2に予め設定してもよい。
【0014】
なお、画像形成装置本体1は、シート状の媒体を画像形成処理の実行制御に応じて供給するシート供給部と、供給された媒体に対して画像を形成する画像形成部と、媒体を画像形成部に搬送しシート処理装置2に搬出させる搬送部と、を有する。画像形成部は、光書込制御を利用した電子写真方式でもよいし、液体インクを媒体に吐出して画像を形成させるインクジェット方式でもよい。
【0015】
[シート処理装置2の構成]
図2は、本発明に係る後処理装置の実施形態としてのシート処理装置2の全体像を例示する。
図2に示すようにシート処理装置2は、画像形成装置本体1から排出されてきた画像形成済みの媒体としてのシートPを搬送する複数の搬送路を備えている。
【0016】
シート処理装置2は、画像形成装置本体1から排出されてきたシートPを受け入れる第一搬送路210と、第一搬送路210から分岐する2つの経路、すなわちプルーフトレイ221へ向かう第二搬送路220と、シフト処理や端綴じ処理などの後処理を行う第三搬送路230と、折り処理を行う第四搬送路240と、を有する。
【0017】
第一搬送路210には入口ローラ211と、入口センサ212が配置されていて、シートPがシート処理装置2の内部へ搬入されたことを検知するように構成されている。入口ローラ211の下流(搬送方向下流)には、搬送ローラ前としての第一搬送ローラ213が配置され、第一搬送路210の終端部の分岐部に位置する第一分岐爪214が回動することにより、シートPの搬送方向を第二搬送路220又は第三搬送路230へと仕分ける。
【0018】
第一搬送路210には、入口ローラ211と第一搬送ローラ213の間に、搬送されてきたシートPに対して穴開け処理を行う穿孔装置250が配置されている。
【0019】
第三搬送路230には、搬送ローラ後としての第二搬送ローラ216が配置され、これを経て端綴じ部260へとシートPが搬送される。また、第三搬送路230には、第二搬送ローラ216よりも上流側に第二分岐爪215が配置されている。第二分岐爪215が回動することにより、シートPの搬送方向を第四搬送路240へと仕分ける。
【0020】
端綴じ部260には、ステイプルトレイ263が配置されている。ステイプルトレイ263に搬送されてきたシートPは、端部を整合するための整合部材のひとつである叩きコロ265の振り子運動によってシートPに当接し、ステイプルトレイ263の上でさらに搬送下流へと導く。これによって、シートPは、もうひとつの整合部材としての戻しコロ266により後端フェンス262に後端を突き当てられる。その結果、シートPの搬送方向の位置が整合されてステイプルトレイ263積載される。
【0021】
また、このステイプルトレイ263には、シートPが搬送されてきた方向と直交する方向に進退して、ステイプルトレイ263に積載されたシートPの幅方向の位置を整合させるジョガーフェンス264が備えられている。
【0022】
シートPの搬送方向の端部と、搬送方向と直交する方向の端部の、それぞれの位置を整合させる二つの動作を行うことで、ステイプルトレイ263に搬送されてきたシートPによるシート束Pbが形成される。
【0023】
シート処理装置2の動作モードが、シート束Pbの端部を綴じる端綴じ処理を行う動作モード(端綴じモード)のときは、端綴じステイプラユニット261は、端部が整合されたシート束Pb面に沿う方向であり、かつシートPの搬送方向との直交方向に移動し、シート束Pbの端部(下縁部)の適所において綴じ処理を実行する。綴じ処理が終了したシート束Pbは、放出爪267によってシートPが搬送されて来た方向と逆方向にある排出ローラ217と従動ローラ218に向けて放出され、これらローラにより上縁部が挟持されて排出トレイ219へと排出される。
【0024】
[ステイプラユニット261の詳細]
次に、後処理に使用されるツールの一例として、綴じ処理に用いられる綴じ手段としてのするステイプラユニット261について、
図3を用いて説明する。
図3に示すように、ステイプラユニット261は、セレクタギヤ2612にステイプラ2611を搭載して構成される。セレクタギヤ2612にはブラケット2613が固定され、ステイプラ2611及びステイプラ2611に固定されたステイプラブランケット2614と一体となったステイプラユニット261がブラケット2613に搭載されている。
【0025】
なお、セレクタギヤ2612とブラケット2613が一体であっても構成上の問題はないが、ブラケット2613はステイプラブランケット2614と着脱を繰り返す部材であるため、繰り返しの強度が要求される。本実施形態では、ギヤ部を樹脂とし、ブラケット2613を金属とする。この方が、コスト的にメリットがあるからである。しかし、機械強度及びコストを満たすのであれば樹脂一体あるいは金属一体でも良い。
【0026】
ステイプラブランケット2614も同様でステイプラ2611と一体であっても構成上の問題はないが、強度が要求される部材であるため、金属部品(ギヤは樹脂)となっている。
【0027】
図3において、ステイプラユニット261は、シート処理装置2の内部に設けられているフレーム構造において支持されるガイドシャフト2618に対して移動自在に装着されている。ステイプラ2611の支持台となるスライダ2615が、ガイドシャフト2618に対して移動自在装着されている。また、ステイプラ2611は、セレクタギヤ2612と一体となって、スライダ2615上の軸を支点に前後の斜め綴じ位置まで回転するように保持されている。
【0028】
ステイプラ2611は回転の駆動部を持たず突き当て部2616を突き当てて回転させる方式であるため、ステイプラ2611の下に回転するギヤ2617及びセレクタギヤ2612が配置される。セレクタギヤ2612と締結されているステイプラユニット261の回転角度は、奥側、手前側とも45°で全体として90°の回転角度となる。
【0029】
続いて、ステイプラ2611と同様に、シート束Pbの端部を綴じる綴じ手段としての針無し綴じユニット2611aの移動機構及び綴じ機構について
図4を用いて説明する。
図4(a)に示すように、シート処理装置2が備える針無し綴じユニット2611aは、ステイプルトレイ263に載置されているシート束Pbの幅方向の全領域に対して、移動可能に構成されている。
【0030】
針無し綴じユニット2611aは、シート束Pbの幅方向に沿って配設されたガイドシャフト2618によって安定して案内されることで、幅方向に往復移動可能となっている。なお、針無し綴じユニット2611aの往復移動は、針無し綴じユニット2611aを移動させる駆動源としてのユニット移動モータ2619によって、ユニット移動ベルト2620が回動することで行われる。
【0031】
なお、針無し綴じユニット2611aは、
図5に例示するような綴じ歯2621を備える。
図5は、綴じ歯2621の側面図である。綴じ歯2621は、上綴じ歯2621aと下綴じ歯2621bによって構成されている。
図5(a)に示す状態は、綴じ歯2621が綴じ動作をする前の状態を例示している。
図5(a)は、シート束Pbが上綴じ歯2621aと下綴じ歯2621bの間に置かれた状態を示している。
【0032】
図5(b)は、綴じ動作をしたときの綴じ歯2621の状態を例示している。上綴じ歯2621aと下綴じ歯2621bには、互いに噛み合うように凹凸歯が形成されている。上綴じ歯2621aと下綴じ歯2621bの間に綴じ対象のシート束Pbが置かれた状態で、両綴じ歯の隙間を閉じるように動作させ、上綴じ歯2621aと下綴じ歯2621bでシート束Pbを挟み込むように押圧する。このときの押圧力によって、シート束Pbに含まれるシートPのそれぞれの繊維が絡み合い、複数のシートP同士が圧着されてシート束Pbが綴じられる。
【0033】
[穿孔装置250の詳細]
次に、シート処理装置2において実行される後処理のうち、穴開け処理に用いられるツールとしての穿孔装置250について
図6を用いて説明する。
図6に示すように、穿孔装置250は、穿孔部251、ホッパー部252、横レジスト検知部253、レジスト移動部254を有する。穿孔部251は、穿孔手段としてのパンチ255が配置されており、穿孔部251に同じく配置されているパンチモータの駆動によりシートPから離間し、またはシートPに当接して貫通する。これによりパンチ255は、シートPにパンチ孔を形成することができる。
【0034】
レジスト移動部254は、穿孔部251(パンチ255)をシート搬送方向と直交する方向に移動させる。なお、この穿孔部251(パンチ255)の移動方向については、各ユニットの配置構成に依拠することから、シート幅方向に限られない。
【0035】
ホッパー部252は、穿孔により生ずるパンチくずを収納する部材であり、穿孔部251のパンチ255の下部に配置されている。横レジスト検知部253は、シートPの端部である側端(搬送方向に直交する方向における端部である端縁)を検知可能とする横レジ検知センサ257が配置されている。横レジスト検知部253には、横レジ検知センサ257をシート幅方向に移動させるための移動部も付設されている。
【0036】
[ツール移動切替部の第一実施形態]
次に、
図7を用いて本実施形態に係るシート処理装置2が備えるツール移動切替部について説明する。ツール移動切替部は、シート処理装置2において実行される複数の後処理に適用されるツールを選択的に切り替え、かつ、ツールを所定の位置に効率的に移動させる構成である。
図7は、ツール移動切替部としてのツールユニット270を例示する概略図である。
【0037】
ツールユニット270は、複数の後処理のそれぞれを実行するためのツールを複数備えている。
図7(a)においては、第一ツール2701と第二ツール2702を備えている。第一ツール2701は、例えばツールAとしての針有り綴じ手段であるステイプラ2611であり、第二ツール2702は、ツールBとしての針無し綴じツールである針無し綴じユニット2611aである。
【0038】
図7(a)に示すように、ツールユニット270は、移動手段を構成する駆動源としてアクチュエータ271及び駆動伝達部材としての駆動伝達ベルト272を備えている。ツールユニット270は、第一ツール2701と第二ツール2702を搭載するベースユニット275が、駆動伝達ベルト272によって移動範囲としての動作区間SC1から、移動範囲としての切替区間SC2に渡って移動可能に保持されている。移動範囲としての切替区間SC2に相当する区間には、ツール切替手段としての切替爪部材273が設置されている。なお、実施形態に係るツールユニット270は、移動可能な範囲の一部に切替区間SC2が備わっており、移動可能範囲における切替区間SC2以外の部分は、各ツールを使用する動作区間SC1に相当する。
【0039】
また、
図7(b)に示すように、ツールユニット270が備えるベースユニット275は、ツール位置回転手段としての回転支軸付アタッチメント274に回転可能に支持されている。回転支軸付アタッチメント274は、ベースユニット275を回転させるための回転軸に周囲に歯付ベルト276を備えている。すなわち、支持部材としての回転支軸付アタッチメント274は、歯車付きの部材である。ベースユニット275が回転することにより、ベースユニット275に搭載されているツール(ツール)が回転移動する。
【0040】
図7(a)に戻って、ツールユニット270の動作について説明する。アクチュエータ271の駆動力によって駆動伝達ベルト272が回動すると、駆動伝達ベルト272に保持されているベースユニット275が駆動伝達ベルト272の回動方向に移動する。ベースユニット275が切替位置としての切替区間SC2を通過するとき、ベースユニット275に備えられている歯付ベルト276が切替爪部材273と噛み合い、駆動伝達ベルト272の移動に応じて歯付ベルト276が回転する。
【0041】
歯付ベルト276が回転するとベースユニット275が回転するので、第一ツール2701と第二ツール2702のベースユニット275に対する周方向の位置が切り替わる。ツールユニット270は、異なるツールごとに初期位置(ホームポジション)が設定されていて、
図7のように切り替えしないとき(ツールAを使用するとき)のホームポジションである第一初期位置としてのHP1が設定されている。また、切り替えをするとき(ツールBを使用するとき)のホームポジションである第二初期位置としてのHP2が設定されている。ツールユニット270による切り替え動作は、HP1とHP2の間で行われる。
【0042】
例えば、
図7(a)に例示するように、HP1とHP2では、第一ツール2701と第二ツール2702の位置が180度異なる位置に切り替わる。HP1とHP2の間を移動するときに、ツールユニット270は、ツールの周方向における位置を切り替える。
【0043】
なお、ツールユニット270は、
図7(c)に例示するように、ベースユニット275に対して、四つのツールを搭載するように構成してもよい。この場合、歯付ベルト276の歯数を調整して、各ツールが90度ごとに位置を切り替えるように構成すればよい。
【0044】
またツールユニット270は、
図8に例示するように、第一ツール2701(ツールA)から第二ツール2702(ツールB)に、周方向の位置を切り替えて後処理位置に対する位置を切り替えるとき、ベースユニット275をカム溝2721に沿って移動させる。これによって、歯付ベルト276がカム溝2721に沿って移動する。このとき、例えば、
図8(a)に例示するように、HP1からHP2へと歯付ベルト276が移動する際には、切替爪部材273に歯付ベルト276が噛み合って、図示するように時計方向に歯付ベルト276が回転する。この歯付ベルト276の回転によってベースユニット275が180度回転する。これによって、第一ツール2701と第二ツール2702の周方向のおける位置が切り替えられる。
【0045】
また、
図8(b)に例示するように、ベースユニット275をHP2からHP1へ移動させるときは、歯付ベルト276はワンウェイクラッチ2761であるので回転しない構造になっている。したがって、歯付ベルト276に噛み合っていた切替爪部材273が歯付ベルト276の移動方向に押される状態になる。
【0046】
切替爪部材273は、弾性部材としてのスプリング2731によって、予め、HP1からHP2に向かう方向に付勢されていて、スプリング2731の付勢力は、ベースユニット275の移動によって切替爪部材273に加わる押圧力よりも弱い。したがって、歯付ベルト276がHP2からHP1へ移動するとき、すなわち、ベースユニット275がHP2からHP1へ移動するときには、スプリング2731が押されて縮むことになるので切替爪部材273が歯付ベルト276の移動方向に押される。
【0047】
カム溝2721は、HP1に相当する位置よりもHP2に相当する位置の方が、歯付ベルト276は切替爪部材273に接近するように形成されているので、HP2からHP1に向かって歯付ベルト276が移動したとき、ある程度の位置までは切替爪部材273を押しながら移動し、その所定の位置を超えたときには切替爪部材273を押す状態から開放される。これによって、
図8(c)に示すように切替爪部材273は元に位置に戻る。
【0048】
その後、第一ツール2701と第二ツール2702の位置を再度入れ替えるときには、
図8(a)と同様に、HP1からHP2に向けてベースユニット275を移動させればよい。
【0049】
以上説明した本実施形態に係るツール移動切替機構によれば、切替爪部材273とカム溝2721の設置位置を変更することで、後処理に用いられるツールを選択的に切り替える動作を行う領域を限定することなく、複数のツールをベースユニット275に組み合わせて搭載することで、後処理を実行するためのツールを自在に切り替え可能に配置することができる。
【0050】
[ツール移動切替部の第二実施形態]
次に、
図9を用いて本実施形態に係るシート処理装置2が備えるツール移動切替部の別の実施形態について説明する。
図9は、ツール移動切替部としてのツールユニット270aを例示する概略図である。
図9に示すように、ツールユニット270aにおいて、ツール切替手段としての切替爪部材273を、ツールユニット270が後処理を行う範囲である主走査範囲の両端にそれぞれ配置してもよい。
【0051】
この場合、ツールユニット270が後処理を行う範囲である主走査範囲の中心付近を含む動作区間SC1において、各切替爪部材273に近い位置に第一初期位置が設定される。また、各第一初期位置に隣接する位置であって動作区間SC1の両端部側に切替区間SC2をそれぞれ設定すればよい。そして、第一ツール2701と第二ツール2702の周方向の位置を切り替えるときには、ツールユニット270がある位置に、二つの切替区間SC2のうち近い方(移動距離が短い方)にベースユニット275を移動させればよい。
【0052】
ツールユニット270の位置に応じて、切替爪部材273に向かう移動方向を制御することによって、切替動作時のツールユニット270の移動時間を短縮させることができ、ツールの切替処理の効率を向上させることができる。
【0053】
[ツール移動切替機構の第三実施形態]
次に、
図10を用いて本実施形態に係るシート処理装置2が備えるツール移動切替部のさらに別の実施形態について説明する。
図10は、ツール移動切替部としてのツールユニット270bを例示する概略図である。本実施形態に係るツールユニット270bは、
図10(a)に例示するように、駆動伝達ベルト272にラック部2722を備える。また、
図10(b)に例示するように、ベースユニット275を自走可能にするための駆動源として、移動駆動源2751を備える。
【0054】
移動駆動源2751は、ベースユニット275を支持する構成として歯車2752を回転させる。歯車2752は、駆動伝達ベルト272が備えるラック部2722に噛み合うように配置されている。したがって、移動駆動源2751による駆動力を歯車2752に伝達することにより、ベースユニット275が主走査方向に移動する。そして、第一実施形態等と同様に、歯付ベルト276が切替爪部材273に噛み合って回動し、複数のツールの位置を周方向において切り替えることができる。
【0055】
[ツール移動切替機構の第四実施形態]
次に、
図11を用いて本実施形態に係るシート処理装置2が備えるツール移動切替部のさらに別の実施形態について説明する。
図11は、ツール移動切替部としてのツールユニット270cを例示する概略図である。
【0056】
ツールユニット270cは、第二実施形態として説明したツールユニット270aと同様に、ツール切替手段としての切替爪部材273を、ツールユニット270が後処理を行う範囲である主走査範囲の両端に備えている。ツールユニット270cは、第三実施形態と同様に自走可能な構成であって、駆動伝達ベルト272が備えるラック部2722に噛み合うように配置されている歯車2752に、移動駆動源2751からの駆動力を伝達することで、ベースユニット275が主走査方向に移動する。
【0057】
ベースユニット275が移動することで、歯付ベルト276が切替爪部材273に噛み合って回動し、複数のツールの位置を周方向の位置が切り替えられる。
【0058】
[後処理装置の制御構成]
次に、上記にて説明した各実施形態における制御を可能にする制御構成について
図12を用いて説明する。
図12は、シート処理装置2が備える制御部200の構成例を示すブロック図である。
【0059】
制御部200は、CPU201、I/Oインターフェイス202等を有するマイクロコンピュータを搭載した制御回路を備える。CPU201には、画像形成装置本体1のコントローラ100あるいは操作パネル101からの信号が通信インターフェイス102を介して入力される。CPU201は、入力された信号に基づいて所定の制御を実行する。
【0060】
更にCPU201は、モータドライバ203、ドライバ204、を介してDCソレノイド205及びDCモータ206、ステッピングモータ207を駆動制御すると共に、インターフェイスを介してセンサスイッチ208の情報を取得する。尚、I/Oインターフェイス202を介して動作制御されるステッピングモータ207や情報が取得されるセンサスイッチ208もある。更にステッピングモータ207の中には、PWMジェネレータ209により生成されたパルス信号に基づき駆動制御されるものもある。
【0061】
センサスイッチ208によってベースユニット275の位置及び移動量が検知される。CPU201は、この検知結果に基づいて、ベースユニット275の位置を判定することができる。したがって、制御部200によって、ツールユニット270等における、各ツールの位置を切り替え動作や、切り替え動作のためのベースユニット275の移動方向の制御が行われる。
【0062】
尚、これらの各制御は、制御部200内に備えられるROMなどの記憶部に格納されたプログラムコードを、CPU201が読み込んでRAMに展開し、当該RAMをワークエリア及びデータバッファとして使用しながらプログラムコードで定義されたプログラムに基づいて実行される。また制御部200内には、制御に使用するデータを記憶する不揮発性メモリも備えている。
【0063】
なお、上記の説明は、シート処理装置2が独自の制御部200を有する構成を例示したものであるが、画像形成装置本体1が備えるコントローラ100がシート処理装置2の制御を行う構成でも構わない。
【0064】
[ツール移動切替部の動作の流れ]
次に、シート処理装置2におけるツール移動切替部の動作の流れについて、
図13のフローチャートを参照しながら説明する。以下において説明する動作は、上述した制御部200において制御可能なものである。
【0065】
画像形成装置本体1において画像形成処理が開始され、画像が形成されるシートPの大きさ(用紙サイズ)や、後処理の態様(綴じタイプ)などの処理条件がシート処理装置2に通知されることで、以下の処理が開始される。
【0066】
まず、ツールユニット270の位置及び状態をセンサスイッチ208からの検知結果に基づいて把握する(S1301)。続いて、画像形成装置本体1から通知された処理条件に基づいて、ツールユニット270の移動量及び移動方向を規定するための移動パルスを確定する(S1302)。また、処理条件に基づいてツールの切り替え有無を判定する(S1303)。
【0067】
その判定結果と、S1302において確定された移動パルスに基づいてツールユニット270を移動させてツール待機させ(S1304)、シートPがステイプルトレイ263排出されるたびにシート束Pbの幅方向をジョガーフェンス264によりジョギングして、整合する(S1305)。
【0068】
これをシート束Pbの1部を構成する最終シートまで繰り返し(S1306)、シート束Pbの一部を構成する最終シートに対するジョギングが行われた後(S1307)、ツールユニット270による所定の後処理、例えばステイプラユニット261による綴じ処理を実行し(S1308)、処理が行われたシート束Pbの排出処理を行う(S1308)。
【0069】
このS1305からS1308までの処理を最終部まで繰り返し(S1309)、最終部への処理が終了した時点で、ツールユニット270をホームポジションに移動させ(S1310)、処理を終了する。
【0070】
以上のように、本実施形態に係るシート処理装置2によれば、シートPに対する後処理の条件及びツールユニット270の位置と状態に基づいて、ツールユニット270の移動方向及び移動量を確定し、最適なツールへの切り替えをツールの移動とともにできる。ツールの移動とツールの切り替えに要する駆動源を共通させることができるので、シート処理装置2の小型化にも寄与する。また、後処理位置へのツールの移動時に切り替えも行うことができるので、後処理の効率を向上できる。
【0071】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能である。そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1 :画像形成装置本体
2 :シート処理装置
200 :制御部
201 :CPU
202 :I/Oインターフェイス
203 :モータドライバ
204 :ドライバ
205 :DCソレノイド
206 :DCモータ
207 :ステッピングモータ
208 :センサスイッチ
209 :PWMジェネレータ
210 :第一搬送路
211 :入口ローラ
212 :入口センサ
213 :第一搬送ローラ
214 :第一分岐爪
215 :第二分岐爪
216 :第二搬送ローラ
217 :排出ローラ
218 :従動ローラ
219 :排出トレイ
220 :第二搬送路
221 :プルーフトレイ
230 :第三搬送路
240 :第四搬送路
250 :穿孔装置
251 :穿孔部
252 :ホッパー部
253 :横レジスト検知部
254 :レジスト移動部
255 :パンチ
257 :横レジ検知センサ
260 :部
261 :ステイプラユニット
262 :後端フェンス
263 :ステイプルトレイ
264 :ジョガーフェンス
265 :コロ
266 :戻しコロ
267 :放出爪
270 :ツールユニット
270a :ツールユニット
270b :ツールユニット
270c :ツールユニット
271 :アクチュエータ
272 :駆動伝達ベルト
273 :切替爪部材
274 :回転支軸付アタッチメント
275 :ベースユニット
276 :歯付ベルト
2611 :ステイプラ
2611a :ユニット
2612 :セレクタギヤ
2613 :ブラケット
2614 :ステイプラブランケット
2615 :スライダ
2616 :突き当て部
2617 :ギヤ
2618 :ガイドシャフト
2619 :ユニット移動モータ
2620 :ユニット移動ベルト
2621 :歯
2621a :歯
2621b :歯
2701 :第一ツール
2702 :第二ツール
2721 :カム溝
2722 :ラック部
2731 :スプリング
2751 :移動駆動源
2752 :歯車
2761 :ワンウェイクラッチ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0073】