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特許7543741リソグラフィー用塗布膜形成組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】リソグラフィー用塗布膜形成組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 47/016 20170101AFI20240827BHJP
   G03F 7/11 20060101ALI20240827BHJP
   B01J 39/05 20170101ALI20240827BHJP
   B01J 39/07 20170101ALI20240827BHJP
   B01J 39/20 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B01J47/016
G03F7/11 503
B01J39/05
B01J39/07
B01J39/20
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020119163
(22)【出願日】2020-07-10
(65)【公開番号】P2022015957
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2023-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】大矢 拓未
(72)【発明者】
【氏名】山口 大希
(72)【発明者】
【氏名】佐々 卓
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/058251(WO,A1)
【文献】特開平11-133619(JP,A)
【文献】国際公開第2019/131629(WO,A1)
【文献】特開2016-180055(JP,A)
【文献】国際公開第2019/123718(WO,A1)
【文献】特開2004-181351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 39/00-49/90
G03F 7/00- 7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィー用塗布膜形成組成物の製造工程で用いられるイオン交換樹脂であって、含水量が5重量%以下のイオン交換樹脂の製造方法であって、
含水量が40重量%以上のイオン交換樹脂前駆体への含有水分150ppm以下の有機溶剤を1回だけ通液する工程、及び通液工程終了後に系内に残存する有機溶剤を窒素ブローにより系外に排出する工程を含み、
脱水効率=(脱水率(%)/(上記イオン交換樹脂前駆体単位重量当たりの有機溶剤使用重量(kg/kg)×洗浄時間(h)))が5以上である、イオン交換樹脂の製造方法。
【請求項2】
上記通液工程における上記有機溶剤の通液速度が、イオン交換樹脂充填層体積に対する空間速度:3(h-1)以下で表される、請求項1に記載のイオン交換樹脂の製造方法。
【請求項3】
リソグラフィー用塗布膜形成組成物の製造工程で用いられるイオン交換樹脂であって、含水量が5重量%以下のイオン交換樹脂の製造方法であって、
含水量が40重量%以上のイオン交換樹脂前駆体への含有水分150ppm以下の有機溶剤の通液工程、及び通液工程終了後に系内に残存する有機溶剤を窒素ブローにより系外に排出する工程を含み、
脱水効率=(脱水率(%)/(上記イオン交換樹脂前駆体単位重量当たりの有機溶剤使用重量(kg/kg)×洗浄時間(h)))が5以上である製造方法で製造された含水量が5重量%以下のイオン交換樹脂を用いてリソグラフィー用塗布膜形成組成物前駆体にイオン交換処理を施す工程を含む、リソグラフィー用塗布膜形成組成物の製造方法。
【請求項4】
上記通液工程後のリソグラフィー用塗布膜形成組成物の含水量が、0.3重量%以下である、請求項3に記載のリソグラフィー用塗布膜形成組成物の製造方法。
【請求項5】
前記リソグラフィー用塗布膜形成組成物が、ポリマーを含む、請求項3又は4に記載のリソグラフィー用塗布膜形成組成物の製造方法。
【請求項6】
上記リソグラフィー用塗布膜形成組成物が、架橋性化合物、架橋触媒、及び界面活性剤からなる群より選択される少なくとも一種を更に含む、請求項3~5何れか1項に記載のリソグラフィー用塗布膜形成組成物の製造方法。
【請求項7】
上記リソグラフィー用塗布膜形成組成物が、レジスト下層膜形成組成物である、請求項3~6何れか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物の製造方法。
【請求項8】
リソグラフィー用塗布膜形成組成物の製造工程で用いられるイオン交換樹脂の洗浄方法であって、
上記イオン交換樹脂への含有水分150ppm以下の有機溶剤を1回だけ通液する工程、及び通液工程終了後に系内に残存する有機溶剤を窒素ブローにより系外に排出する工程を含み、
イオン交換樹脂の洗浄前後の(脱水率(%)/(上記イオン交換樹脂前駆体単位重量当たりの有機溶剤使用重量(kg/kg)×洗浄時間(h)))が5以上である、イオン交換樹脂の洗浄方法。
【請求項9】
リソグラフィー用塗布膜形成組成物の製造工程で用いられるイオン交換樹脂の洗浄方法であって、
上記イオン交換樹脂への含有水分150ppm以下の有機溶剤の通液工程、及び通液工程終了後に系内に残存する有機溶剤を窒素ブローにより系外に排出する工程を含み、
イオン交換樹脂の洗浄前後の(脱水率(%)/(上記イオン交換樹脂前駆体単位重量当たりの有機溶剤使用重量(kg/kg)×洗浄時間(h)))が5以上である、イオン交換樹脂の洗浄方法で洗浄したイオン交換樹脂を用いてリソグラフィー用塗布膜形成組成物前駆体にイオン交換処理を施す工程を含む、リソグラフィー用塗布膜形成組成物の製造方法。
【請求項10】
上記イオン交換処理を施す工程後のリソグラフィー用塗布膜形成組成物の含水量が0.3重量%以下である、請求項9に記載のリソグラフィー用塗布膜形成組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、半導体製造におけるリソグラフィー工程において用いられる、含有水分が低減されたリソグラフィー用塗布膜形成組成物(例えば、レジスト下層膜形成組成物)の製造方法、それを製造するための含水量が低減されたイオン交換樹脂の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
20nm以下の配線等を有する、最先端の半導体製造のリソグラフィー工程においては、半導体基板上の欠陥を防止するため、リソグラフィー用塗布膜形成組成物が含有する水分量の限りない低減が求められている。特許文献1には水分含有率を30%以下としたことを特徴とするイオン交換樹脂及びその精製方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-117781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リソグラフィー用塗布膜形成組成物の製造工程においては、金属不純物の低減を目的に、イオン交換樹脂を用いたイオン交換精製が行われる場合があるが、市販のイオン交換樹脂由来の水分が製品に混入し、最終製品の含有水分量が低減できないという問題があった。イオン交換樹脂由来の水分量を低減させるために、含有水分が少ない有機溶媒中に投入し溶媒置換を行う、いわゆるイオン交換樹脂のバッチ式の前処理も行われるが、この処理方法は、時間を要するため、リソグラフィー用塗布膜形成組成物の製造効率が低下する問題があった。
【0005】
本願では、上記問題を解決するための、半導体製造におけるリソグラフィー工程において用いられる、含有水分が低減されたリソグラフィー用塗布膜形成組成物の製造方法、それを製造するための含水量が低減されたイオン交換樹脂の洗浄方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下を包含する。
【0007】
[1] 含水量が5重量%以下のイオン交換樹脂の製造方法であって、
含水量が40重量%以上のイオン交換樹脂前駆体への含有水分150ppm以下の有機溶剤の通液工程を含み、
脱水効率=(脱水率(%)/(上記イオン交換樹脂前駆体単位重量当たりの有機溶剤使用重量(kg/kg)×洗浄時間(h)))が5以上である、含水量が5重量%以下のイオン交換樹脂の製造方法。
【0008】
[2] 上記通液工程における上記有機溶剤の通液速度が、イオン交換樹脂充填層体積に対する空間速度:3(h-1)以下で表される、[1]に記載の含水量が5重量%以下のイオン交換樹脂の製造方法。
【0009】
[3] [1]又は[2]に記載の製造方法で製造された含水量が5重量%以下のイオン交換樹脂を用いてリソグラフィー用塗布膜形成組成物前駆体にイオン交換処理を施す工程を含む、リソグラフィー用塗布膜形成組成物の製造方法。
【0010】
[4] 上記通液工程後のリソグラフィー用塗布膜形成組成物の含水量が、0.3重量%以下である、[3]に記載のリソグラフィー用塗布膜形成組成物の製造方法。
【0011】
[5] 前記リソグラフィー用塗布膜形成組成物が、ポリマーを含む、[3]又は[4]に記載のリソグラフィー用塗布膜形成組成物の製造方法。
【0012】
[6] 上記リソグラフィー用塗布膜形成組成物が、架橋性化合物、架橋触媒、及び界面活性剤からなる群より選択される少なくとも一種を更に含む、[3]~[5]何れか1項に記載のリソグラフィー用塗布膜形成組成物の製造方法。
【0013】
[7] 上記リソグラフィー用塗布膜形成組成物が、レジスト下層膜形成組成物である、[3]~[6]何れか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物の製造方法。
【0014】
[8] イオン交換樹脂の洗浄方法であって、
上記イオン交換樹脂への含有水分150ppm以下の有機溶剤の通液工程を含み、
イオン交換樹脂の洗浄前後の(脱水率(%)/(上記イオン交換樹脂前駆体単位重量当たりの有機溶剤使用重量(kg/kg)×洗浄時間(h)))が5以上である、イオン交換樹脂の洗浄方法。
【0015】
[9] [8]の方法で洗浄したイオン交換樹脂を用いてリソグラフィー用塗布膜形成組成物前駆体にイオン交換処理を施す工程を含む、リソグラフィー用塗布膜形成組成物の製造方法。
【0016】
[10] 上記イオン交換処理を施す工程後のリソグラフィー用塗布膜形成組成物の含水量が0.3重量%以下である、[9に記載のリソグラフィー用塗布膜形成組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<イオン交換樹脂の製造方法、イオン交換樹脂の洗浄方法>
本願は、含水量が5重量%以下のイオン交換樹脂の製造方法又は洗浄方法であって、
含水量が40重量%以上のイオン交換樹脂前駆体への含有水分150ppm以下の有機溶剤の通液工程を含み、
脱水効率=(脱水率(%)/(上記イオン交換樹脂前駆体単位重量当たりの有機溶剤使用重量(kg/kg)×洗浄時間(h)))が5以上である、含水量が5重量%以下のイオン交換樹脂の製造方法、である。
【0018】
通常、市販されているイオン交換樹脂は、最後に水による洗浄工程が施され、イオン交換樹脂製品全体に対し、40重量%以上の水分を含むことが一般的である。このイオン交換樹脂をそのままリソグラフィー用塗布膜形成組成物前駆体の精製工程で用いた場合、このイオン交換樹脂の含有水分からの持ち込みにより、リソグラフィー用塗布膜形成組成物最終製品として、例えば数%程度の水分を含有する。イオン交換樹脂由来の水分量を低減させるために、含有水分が少ない有機溶剤中に投入し溶媒置換を行う、いわゆるバッチ処理も行われるが、この処理方法は、時間を要する問題があった。
【0019】
本願のイオン交換樹脂の製造方法においては、含水量が40重量%以上のイオン交換樹脂前駆体への含有水分150ppm以下の有機溶剤の通液工程を含むことを特徴とする。
【0020】
上記有機溶剤の含有水分は少ない程好ましいが、150ppm以下であり、130ppm以下であり、100ppm以下であり、80ppm以下であり、70ppm以下であり、60ppm以下であり、50ppm以下であり、40ppm以下であり、30ppm以下であり、20ppm以下であり、10ppm以下であり、5ppm以下であり、3ppm以下であり、1ppm以下であり、検出限界以下であることが好ましい。
【0021】
上記有機溶剤中の含有水分は、例えばカールフィッシャー水分計により測定することができる。
【0022】
本願のイオン交換樹脂の製造方法は、バッチ式ではなく、本願の含水イオン交換樹脂(未処理)(すなわちイオン交換樹脂前駆体)をカラムに充填し、上記有機溶媒を通液することで、効率的に含有水分が低減された、具体的には含水量が5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、より好ましくは1重量%以下のイオン交換樹脂が製造できる。通液回数は通常1回で足りるが、必要により2回以上通液しても差し支えない。
【0023】
本願のイオン交換樹脂の製造方法は、以下の式で脱水効率が表され、この値が5以上であることを特徴とする。
【0024】
脱水効率=(脱水率(%)/(上記イオン交換樹脂前駆体単位重量当たりの有機溶剤使用重量(kg/kg)×洗浄時間(h)))
例えば、後述する実施例1では以下のように計算される。
【0025】
脱水効率=(94(%)/(8(kg/kg)×2(h))=5.875
【0026】
<イオン交換樹脂>
本願のイオン交換樹脂の一例としては、スチレン・ジビニルベンゼンの共重合体からなる多孔質担体の表面にイオン交換基を固定化させたものが挙げられる。樹脂のもつ固定交換基の種類によって強酸性、弱酸性などに分類される。強酸性のものとしては、スルホン基が挙げられる。弱酸性のものとしては、カルボキシル基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、亜砒酸基およびフェノキシド基が挙げられる。また、担体の物理的性質からゲル型、ゲル型樹脂体に細孔を形成させ、多孔質化した巨大網目(MR[Micro-Reticular])型等に分類される。脱水効率が5以上であり、含水量が5重量%以下のものであればイオン交換樹脂は特に限定はされず、市販されているものを用いることができる。
【0027】
<有機溶剤>
本発明に係る有機溶剤としては、イオン交換樹脂を通液工程にて洗浄できるものであれば特に制限なく使用することができるが、半導体リソグラフィー工程に一般的に使用される有機溶媒であることが好ましい。特に、本発明に係るリソグラフィー用塗布膜形成用組成物及びリソグラフィー用塗布膜形成組成物前駆体は均一な溶液状態で用いられるものであるため、その塗布性能を考慮すると、リソグラフィー工程に一般的に使用される有機溶媒を使用することが推奨される。
【0028】
前記有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、4-メチル-2-ペンタノール、2―ヒドロキシイソ酪酸メチル、2―ヒドロキシイソ酪酸エチル、エトキシ酢酸エチル、酢酸2-ヒドロキシエチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、2-ヘプタノン、メトキシシクロペンタン、アニソール、γ-ブチロラクトン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、及びN,N-ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール、テトラヒドロフラン及びジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトンが挙げられる。これらの溶剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
これらの溶媒の中でプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル、及びシクロヘキサノン等が好ましい。特にプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。
【0030】
上記通液工程における上記有機溶剤の通液速度が、イオン交換樹脂充填層体積に対する空間速度:3(h-1)以下で表されることが好ましい。
【0031】
上記空間速度は、以下の式で計算される。
【0032】
空間速度(h-1)=(洗浄液通液流量(L/h)/樹脂充填層体積(L))
例えば、後述する実施例1では以下のように計算される。
【0033】
空間速度=105(L/h)/35(L)=3(h-1
【0034】
<リソグラフィー用塗布膜形成組成物の製造方法>
本願のリソグラフィー用塗布膜形成組成物の製造方法は、上記方法で製造された含水量が5重量%以下のイオン交換樹脂中に、又は上記方法で洗浄されたリソグラフィー用塗布膜形成組成物前駆体を通液する工程を含む、リソグラフィー用塗布膜形成組成物の製造方法である。リソグラフィー用塗布膜形成組成物前駆体1kgに対して使用するイオン交換樹脂量は例えば0.1kg以下である。
【0035】
ここでいうリソグラフィー用塗布膜形成組成物前駆体とは、イオン交換樹脂処理前のリソグラフィー用塗布膜形成組成物である。
【0036】
<リソグラフィー用塗布膜形成組成物、及びその前駆体>
本願で使用されるリソグラフィー用塗布膜形成組成物、及びその前駆体は、例えば下記に記載されるフォトレジスト組成物、レジスト下層膜形成組成物(有機化合物及び/又は無機化合物含有)、半導体基板加工時に基板をエッチング薬液から保護するための保護膜形成組成物、自己組織化膜のための下層膜形成組成物、自己組織化膜のための上層膜形成組成物及びレジスト上層膜形成組成物等の上記に特定されるフィルターカートリッジ通液前の組成物であるが、これらに限定されない。
【0037】
リソグラフィー工程における露光波長としては、i線、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EUV(極端紫外線)またはEB(電子線)であってよい。
【0038】
その他に例えば、WO2014/115843号公報、WO2015/129486号公報等に記載のレジスト上層膜用のレジスト上層膜形成組成物、WO2013/146600号公報、WO2014/097993号公報等に記載のブロックコポリマーの自己組織化(DSA、Direct Self Assembly)技術を利用した自己組織化膜用の下層膜形成組成物、例えばWO2018/051907号公報に記載された前記自己組織化膜用の上層膜形成組成物、例えばWO2016/031563号公報に記載のパターン反転のための被覆用組成物であってよい。
【0039】
該前駆体としては、半導体ウエハーに好ましくはスピンコートで塗布、焼成工程を経て形成される、自体公知のフォトレジスト膜用のフォトレジスト組成物(ポジ型及びネガ型)、自体公知のレジスト下層膜用のレジスト下層膜形成組成物(有機化合物及び/又は、無機化合物含有)、自体公知の半導体基板をウエットエッチングする際に使用される自体公知の半導体基板保護膜用の保護膜形成組成物、自体公知のレジスト上層膜用のレジスト上層膜形成組成物、自体公知の自己組織化膜用の下層膜形成組成物、自体公知の自己組織化膜用の上層膜形成組成物が挙げられるが、好ましくは保護膜形成組成物又はレジスト下層膜形成組成物である。好ましくはレジスト下層膜形成組成物である。好ましくはArF、EUV又はEB用レジスト下層膜形成組成物である。好ましくは自己組織化膜の下層膜形成組成物である。好ましくは自己組織化膜の上層膜形成組成物である。好ましくはEUV用レジスト上層膜形成組成物である。好ましくはパターン反転のための被覆用組成物である。
【0040】
レジスト下層膜形成組成物としては、WO2009/096340号公報、特開2009-053704号公報、WO2010/147155号公報、WO2011/102470号公報、WO2013/047516号公報、WO2015/030060号公報、WO2018/052130号公報、WO2019/124474号公報、WO2019/124475号公報、WO2019/151471号公報、PCT/JP2019/042708、PCT/JP2020/001627、特願2019-088345等に記載された保護膜形成用組成物、レジスト下層形成用組成物及びシリコン含有レジスト下層膜形成組成物が挙げられる。
【0041】
本発明に係るリソグラフィー用塗布膜形成組成物及びリソグラフィー用塗布膜形成組成物前駆体の固形分は通常0.1乃至70質量%、好ましくは0.1乃至60質量%、好ましくは0.1乃至40質量%とする。固形分はリソグラフィー用塗布膜形成組成物及びその前駆体から溶媒を除いた全成分の含有割合である。固形分中におけるポリマーの割合は例えば、1乃至100質量%、2乃至100質量%、3乃至100質量%、4乃至100質量%、5乃至100質量%、10乃至100質量%、30乃至100質量%、50乃至100質量%、6乃至100質量%、1乃至99.9質量%、50乃至99.9質量%、50乃至95質量%、又は50乃至90質量%である。
【0042】
<ポリマー>
本願で使用されるリソグラフィー用塗布膜形成組成物及びその前駆体は好ましくは、重量平均分子量800以上のポリマー及び有機溶媒を含む。
【0043】
前記有機溶媒は、上述の<有機溶剤>と同じであるが、本発明に係るリソグラフィー用塗布膜形成用組成物及びリソグラフィー用塗布膜形成組成物前駆体は均一な溶液状態で用いられるものであるため、その塗布性能を考慮すると、リソグラフィー工程に一般的に使用される有機溶媒を使用することが推奨される。
【0044】
ポリマーの具体的構造の一例としては、下記式(01):
【化1】

〔上記式中、Xは下記式(02)、式(03)又は式(04):
【化2】

(上記式中、R~Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数2~6のアルケニル基、ベンジル基又はフェニル基を表し、前記フェニル基は、炭素原子数1~6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基及び炭素原子数1~6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基で置換されていてもよく、またRとR、RとRは互いに結合して炭素原子数3~6の環を形成していてもよい。)で表される基を表し、
~Aはそれぞれ独立に、水素原子、メチル基又はエチル基を表し、
はジスルフィド結合を含む2価の基を表し、好ましくはジスルフィド結合の両端に各々炭素原子数1~6のアルキレン基を含む2価の基を表し、
nは繰り返し単位構造の数であって、5ないし100の整数を表す。〕
で表される単位構造を有することが好ましい。
【0045】
本願のポリマーは、例えば国際公開第2009/096340号公報に記載のポリマーや、国際公開第2019/151471号公報に記載のジスルフィド結合を少なくとも1つ以上有する2官能以上の化合物と、3官能以上の化合物との反応生成物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
前記ポリマーが、ジスルフィド結合を少なくとも1つ以上有する2官能の化合物(A)と、上記化合物(A)と異なる2官能の化合物(B)との反応生成物である場合、前記ポリマー中の主鎖にジスルフィド結合が存在する。
【0047】
前記ポリマーは、下記式(1):
【化3】

(上記式(1)中、Rは炭素原子数0~1のアルキル基、nは繰り返し単位構造の数であって、0ないし1の整数を表し、mは0又は1の整数を表す。
【0048】
上記式(1)中、Zは下記式(2)、式(3)又は式(2-1)を表し、
【化4】

上記式(3)中、Xは下記式(4)、式(51)又は式(6)を表す。
【0049】
【化5】

上記式(1)中、R~R61(R、R、R、R51及びR61はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数3~6のアルケニル基、ベンジル基又はフェニル基を表し、前記フェニル基は、炭素原子数1~6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基及び炭素原子数1~6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基で置換されていてもよく、またRとR、RとRは互いに結合して炭素原子数3~6の環を形成していてもよい。)で表される基を表し、
~Aはそれぞれ独立に、水素原子、メチル基又はエチル基を表し、
はジスルフィド結合で中断されている炭素原子数1~10のアルキレン基を表し、
lは繰り返し単位構造の数であって、5ないし100の整数を表す。)
で表される繰り返し単位構造を有してもよい。
【0050】
はジスルフィド結合で中断されている炭素原子数2から6のアルキレン基であることが好ましい。
【0051】
上記「炭素原子数3~6の環」としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンタジエン及びシクロヘキサンが挙げられる。
【0052】
前記式(01)は下記式(5):
【化6】

〔上記式(5)中、Xは前記式(4)、式(51)又は式(6)で表される基を表し、R及びRはそれぞれ独立に炭素原子数1~3のアルキレン基又は直接結合を表し、
pは繰り返し単位構造の数であって、5ないし100の整数を表す。〕
で表されてもよい。
【0053】
本願のポリマーは下記(式P-6)~(式P-8)で表されることが好ましい。
【0054】
【化7】

【化8】

【化9】

前記ポリマーが、ジスルフィド結合を少なくとも1つ以上有する2官能以上の化合物(A)と、2官能以上の化合物(B)とを、自体公知の方法で反応させて合成した、反応生成物であることが好ましい。
【0055】
上記炭素原子数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基、1-メチル-シクロプロピル基、2-メチル-シクロプロピル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、シクロペンチル基、1-メチル-シクロブチル基、2-メチル-シクロブチル基、3-メチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロプロピル基、2,3-ジメチル-シクロプロピル基、1-エチル-シクロプロピル基、2-エチル-シクロプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基、1-エチル-2-メチル-n-プロピル基、シクロヘキシル基、1-メチル-シクロペンチル基、2-メチル-シクロペンチル基、3-メチル-シクロペンチル基、1-エチル-シクロブチル基、2-エチル-シクロブチル基、3-エチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロブチル基、1,3-ジメチル-シクロブチル基、2,2-ジメチル-シクロブチル基、2,3-ジメチル-シクロブチル基、2,4-ジメチル-シクロブチル基、3,3-ジメチル-シクロブチル基、1-n-プロピル-シクロプロピル基、2-n-プロピル-シクロプロピル基、1-i-プロピル-シクロプロピル基、2-i-プロピル-シクロプロピル基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピル基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピル基及び2-エチル-3-メチル-シクロプロピル基が挙げられる。
【0056】
上記炭素原子数2~6のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロぺニル基、ブテニル基、ヘキセニル基及びシクロヘキセニル基が挙げられる。
【0057】
炭素原子数1~6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、t-ブトキシ基、シクロペンチルオキシ基及びシクロヘキシルオキシ基が挙げられる。
【0058】
上記炭素原子数1~10のアルキルチオ基としては、エチルチオ基、ブチルチオ基、ヘキシルチオ基及びオクチルチオ基が挙げられる。
【0059】
上記炭素原子数1~6のアルキレン基としては、上記アルキル基に対応する2価の有機基であり、例えばメチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、シクロプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、s-ブチレン基、t-ブチレン基、シクロブチレン基、1-メチル-シクロプロピレン基、2-メチル-シクロプロピレン基、n-ペンチレン基、1-メチル-n-ブチレン基、2-メチル-n-ブチレン基、3-メチル-n-ブチレン基、1,1-ジメチル-n-プロピレン基、1,2-ジメチル-n-プロピレン基、2,2-ジメチル-n-プロピレン、1-エチル-n-プロピレン基、シクロペンチレン基、1-メチル-シクロブチレン基、2-メチル-シクロブチレン基、3-メチル-シクロブチレン基、1,2-ジメチル-シクロプロピレン基、2,3-ジメチル-シクロプロピレン基、1-エチル-シクロプロピレン基、2-エチル-シクロプロピレン基、n-ヘキシレン基、1-メチル-n-ペンチレン基、2-メチル-n-ペンチレン基、3-メチル-n-ペンチレン基、4-メチル-n-ペンチレン基、1,1-ジメチル-n-ブチレン基、1,2-ジメチル-n-ブチレン基、1,3-ジメチル-n-ブチレン基、2,2-ジメチル-n-ブチレン基、2,3-ジメチル-n-ブチレン基、3,3-ジメチル-n-ブチレン基、1-エチル-n-ブチレン基、2-エチル-n-ブチレン基、1,1,2-トリメチル-n-プロピレン基、1,2,2-トリメチル-n-プロピレン基、1-エチル-1-メチル-n-プロピレン基、1-エチル-2-メチル-n-プロピレン基、シクロヘキシレン基、1-メチル-シクロペンチレン基、2-メチル-シクロペンチレン基、3-メチル-シクロペンチレン基、1-エチル-シクロブチレン基、2-エチル-シクロブチレン基、3-エチル-シクロブチレン基、1,2-ジメチル-シクロブチレン基、1,3-ジメチル-シクロブチレン基、2,2-ジメチル-シクロブチレン基、2,3-ジメチル-シクロブチレン基、2,4-ジメチル-シクロブチレン基、3,3-ジメチル-シクロブチレン基、1-n-プロピル-シクロプロピレン基、2-n-プロピル-シクロプロピレン基、1-イソプロピル-シクロプロピレン基、2-イソプロピル-シクロプロピレン基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピレン基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピレン基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピレン基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピレン基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピレン基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピレン基及び2-エチル-3-メチル-シクロプロピレン基等が挙げられる。
【0060】
重量平均分子量が800以上であり、例えば800~100,000であり、又は1,500~50,000であり、又は2,000~30,000であり、又は3,000~20,000であるポリマーを使用することができる。
【0061】
重量平均分子量は、例えば以下の条件にて求めることができる。
【0062】
装置:東ソー株式会社製HLC-8320GPC
GPCカラム:Shodex〔登録商標〕・Asahipak〔登録商標〕(昭和電工(株))
カラム温度:40℃
流量:0.35mL/分
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
標準試料:ポリスチレン(東ソー株式会社)
本発明のリソグラフィー用塗布膜形成組成物及びその前駆体、リソグラフィー用塗布膜形成組成物が含有する各成分を、有機溶剤に溶解させることによって調製でき、均一な溶液状態で用いられる。この有機溶剤に関しては上述の通りである。
【0063】
<架橋性化合物>
本願で使用されるリソグラフィー用塗布膜形成組成物及びその前駆体は、架橋性化合物を含むことが好ましい。架橋化合物としては、メラミン系、置換尿素系、またはそれらのポリマー系等に加え、エポキシ系またはそれらのポリマー系及びブロックイソシアネート系またはそれらのポリマー系が挙げられる。好ましくは、少なくとも2個の架橋形成置換基を有する架橋化合物であり、メトキシメチル化グリコールウリル、ブトキシメチル化グリコールウリル、メトキシメチル化メラミン、ブトキシメチル化メラミン、メトキシメチル化ベンゾグワナミン、ブトキシメチル化ベンゾグワナミン、メトキシメチル化尿素、ブトキシメチル化尿素、メトキシメチル化チオ尿素、またはメトキシメチル化チオ尿素等の化合物である。具体例としてはテトラメトキシメチルグリコールウリルである。また、これらの化合物の縮合体も使用することができる。
【0064】
また、上記架橋性化合物としては耐熱性の高い架橋剤を用いることができる。耐熱性の高い架橋剤としては分子内に芳香族環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環)を有する架橋形成置換基を含有する化合物を用いることができる。
【0065】
この化合物は下記式(5-1)の部分構造を有する化合物や、下記式(5-2)の繰り返し単位を有するポリマー又はオリゴマーが挙げられる。
【0066】
【化10】

上記R11、R12、R13、及びR14は水素原子又は炭素数1乃至10のアルキル基であり、これらのアルキル基は上述の例示を用いることができる。
【0067】
m1は1≦m1≦6-m2、m2は1≦m2≦5、m3は1≦m3≦4-m2、m4は1≦m4≦3である。
【0068】
式(5-1)及び式(5-2)の化合物、ポリマー、オリゴマーは以下に例示される。
【0069】
【化11】

【化12】

上記化合物は旭有機材工業(株)、本州化学工業(株)の製品として入手することができる。例えば上記架橋剤の中で式(6-22)の化合物は旭有機材工業(株)、商品名TMOM-BPとして入手することができる。
【0070】
前記架橋剤としては、また、少なくとも二つのエポキシ基を有する化合物を用いることもできる。このような化合物として、例えば、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2-エポキシ-4-(エポキシエチル)シクロヘキサン、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、2,6-ジグリシジルフェニルグリシジルエーテル、1,1,3-トリス[p-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]プロパン、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、4,4’-メチレンビス(N,N-ジグリシジルアニリン)、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、ビスフェノール-A-ジグリシジルエーテル、(株)ダイセル製のエポリード(登録商標)GT-401、同GT-403、同GT-301、同GT-302、セロキサイド(登録商標)2021、同3000、三菱化学(株)製の1001、1002、1003、1004、1007、1009、1010、828、807、152、154、180S75、871、872、日本化薬(株)製のEPPN201、同202、EOCN-102、同103S、同104S、同1020、同1025、同1027、ナガセケムテックス(株)製のデナコール(登録商標)EX-252、同EX-611、同EX-612、同EX-614、同EX-622、同EX-411、同EX-512、同EX-522、同EX-421、同EX-313、同EX-314、同EX-321、BASFジャパン(株)製のCY175、CY177、CY179、CY182、CY184、CY192、DIC(株)製のエピクロン200、同400、同7015、同835LV、同850CRPを挙げることができる。
【0071】
前記少なくとも二つのエポキシ基を有する化合物としては、また、エポキシ基を有するポリマーを使用することもできる。前記ポリマーとしては、エポキシ基を有するポリマーであれば、特に制限なく使用することができる。このようなポリマーは、エポキシ基を有する付加重合性モノマーを用いた付加重合により製造することができ、又はヒドロキシ基を有する高分子化合物と、エピクロルヒドリン、グリシジルトシレート等のエポキシ基を有する化合物との反応により製造することができる。例えば、ポリグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート及びエチルメタクリレートの共重合体、グリシジルメタクリレートとスチレンと2-ヒドロキシエチルメタクリレートの共重合体等の付加重合ポリマー、エポキシノボラック等の縮重合ポリマーが挙げられる。前記ポリマーの重量平均分子量としては、例えば、300乃至200000である。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準試料としてポリスチレンを用いて得られる値である。
【0072】
前記少なくとも二つのエポキシ基を有する化合物としては、また、アミノ基を有するエポキシ樹脂を使用することもできる。このようなエポキシ樹脂として、例えば、YH-434、YH-434L(新日化エポキシ製造(株)(旧東都化成(株))製)が挙げられる。
【0073】
前記架橋剤としては、また、少なくとも2つのブロックイソシアネート基を有する化合物を使用することもできる。このような化合物として、例えば、三井化学(株)製のタケネート(登録商標)B-830、同B-870N、エボニック デグサ社製のVESTANAT(登録商標)-B1358/100が挙げられる。これらの架橋剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0074】
架橋化合物の添加量は、使用する塗布溶剤、使用する下地基板、要求される溶液粘度、要求される膜形状などにより変動するが、リソグラフィー用塗布膜形成用組成物及びリソグラフィー用塗布膜形成組成物及びその前駆体の全固形分に対して通常0.001乃至80重量%、好ましくは0.01乃至50重量%、さらに好ましくは0.1乃至40重量%である。これら架橋性化合物は自己縮合による架橋反応を起こすこともあるが、本発明の上記のポリマー中に架橋性置換基が存在する場合は、それらの架橋性置換基と架橋反応を起こすことができる。
【0075】
<架橋触媒>
本発明のリソグラフィー用塗布膜形成用組成物及びリソグラフィー用塗布膜形成組成物前駆体は、任意成分として、架橋反応を促進させるために、架橋触媒を含有することができる。当該架橋触媒としては、酸性化合物(架橋酸触媒)に加え、熱により酸又は塩基が発生する化合物を用いることができる。酸性化合物としては、スルホン酸化合物又はカルボン酸化合物を用いることができ、熱により酸が発生する化合物としては、熱酸発生剤を用いることができる。これらの中でも架橋酸触媒を用いることが好ましい。
【0076】
スルホン酸化合物又はカルボン酸化合物として、例えば、アンモニウムトリフルオロ酢酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ピリジニウムトリフルオロメタンスルホナート、ピリジニウム-p-トルエンスルホネート、ピリジニウム-4-ヒドロキシベンゼンスルホナート、サリチル酸、カンファースルホン酸、5-スルホサリチル酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ピリジニウム-4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、1-ナフタレンスルホン酸、4-ニトロベンゼンスルホン酸、クエン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸が挙げられる。
【0077】
熱酸発生剤として、例えば、K-PURE〔登録商標〕CXC-1612、同CXC-1614、同TAG-2172、同TAG-2179、同TAG-2678、同TAG2689(以上、King Industries社製)、及びSI-45、SI-60、SI-80、SI-100、SI-110、SI-150(以上、三新化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0078】
これらの架橋触媒は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0079】
前記リソグラフィー用塗布膜形成組成物及びその前駆体が架橋触媒を含む場合、その含有量は、リソグラフィー用塗布膜形成組成物及びその前駆体の全固形分に対して、通常0.0001乃至20重量%、好ましくは0.01乃至15重量%、さらに好ましくは0.1乃至10質量%である。
【0080】
<界面活性剤>
本発明で用いられるリソグラフィー用塗布膜形成組成物及びその前駆体は、任意成分として、半導体基板に対する塗布性を向上させるために界面活性剤を含有することができる。前記界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、エフトップ〔登録商標〕EF301、同EF303、同EF352(三菱マテリアル電子化成株式会社製)、メガファック〔登録商標〕F171、同F173、同R-30、同R-30N、同R-40、同R-40-LM(DIC株式会社製)、フロラードFC430、同FC431(住友スリーエム株式会社製)、アサヒガード〔登録商標〕AG710、サーフロン〔登録商標〕S-382、同SC101、同SC102、同SC103、同SC104、同SC105、同SC106(旭硝子株式会社製)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業株式会社製)を挙げることができる。これらの界面活性剤は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。前記リソグラフィー用塗布膜形成組成物及びその前駆体が界面活性剤を含む場合、その含有量は、リソグラフィー用塗布膜形成組成物及びその前駆体の全固形分に対して、通常0.0001乃至10重量%、好ましくは0.01乃至5重量%である。
【0081】
<その他の成分>
本発明のリソグラフィー用塗布膜形成組成物及びその前駆体には、吸光剤、レオロジー調整剤、接着補助剤などを添加することができる。レオロジー調整剤は、リソグラフィー用塗布膜形成組成物及びその前駆体の流動性を向上させるのに有効である。接着補助剤は、半導体基板またはレジストと下層膜の密着性を向上させるのに有効である。
【0082】
上記通液工程後のリソグラフィー用塗布膜形成組成物の含水量が、0.3重量%以下である。リソグラフィー用塗布膜形成組成物の含水量は、低い程好ましく、0.2重量%以下であり、0.15重量%以下であり、0.1重量%以下であり、0.05重量%以下であり、検出限界以下であることが好ましい。
【0083】
リソグラフィー用塗布膜形成組成物の含水量は、例えばカールフィッシャー水分計により測定することができる。
【実施例
【0084】
次に実施例を挙げ本発明の内容を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0085】
<イオン交換樹脂含水量の分析条件>
後述する例に示すイオン交換樹脂の含水量は、カールフィッシャー水分計による測定結果であり、測定条件等は次のとおりである。
【0086】
装置:電量法 カールフィッシャ-水分計 CA-200(株式会社 三菱化学アナリステック)
気化装置: 水分気化装置 VA-200(株式会社 三菱化学アナリステック)
<略号の説明>
(有機溶媒)
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
実施例で使用したPGMEの含有水分量実績値:50~150ppm
<イオン交換樹脂の洗浄>
【0087】
[実施例1]
室町ケミカル株式会社製のゲル型構造を有する強酸性陽イオン交換樹脂Muromac XSC-1115-H(商品名)を内容績50Lのカラムに湿潤状態で35L充填し、PGMEをカラム上部から通液した。なお、通液速度はカラム内の樹脂充填層体積に対して空間速度(SV[h-1]:Space velocity)が3となるように調整し、操作は常温にて実施した。また、PGMEの通液総量は湿潤基準の充填樹脂重量に対して8倍量とした。通液終了後、系内に残存したPGMEを窒素ブローにより系外に排出し、得られたイオン交換樹脂の水分を測定した結果を表1に示す。
【0088】
[比較例1]
実施例1と同様の樹脂にバッチ式の洗浄を施した。内容量10Lの容器に湿潤重量基準で1kgのイオン交換樹脂を充填し、充填樹脂重量に対して1倍重量のPGMEを容器に投入して攪拌した。なお、攪拌時間は4時間とし、操作は常温にて実施した。攪拌終了後にデカンテーションにより洗浄液を容器外に排出した。上記の作業を計3回実施し、得られたイオン交換樹脂の水分量を測定した結果を表2に示す。ただし、2回目の操作のみ攪拌時間を8時間以上とした。
【0089】
[比較例2]
実施例1と同様の樹脂にバッチ式の洗浄を施した。内容量10Lの容器に湿潤重量基準で1kgのイオン交換樹脂を充填し、充填樹脂重量に対して2倍重量のPGMEを容器に投入して攪拌した。なお、攪拌時間は2時間とし、操作は常温にて実施した。攪拌終了後にデカンテーションにより洗浄液を容器外に排出した。上記の作業を計5回実施し、得られたイオン交換樹脂の水分量を測定した結果を表3に示す。ただし、3回目の操作のみ攪拌時間を8時間以上とした。
【0090】
[実施例2]
オルガノ株式会社製のMR型構造を有する強酸性陽イオン交換樹脂AMBERLYST 15JWET(商品名)を実施例1と同様の手順にて洗浄し、得られたイオン交換樹脂の水分を測定した結果を表1に示す。
【0091】
[比較例3]
実施例2と同様の樹脂に比較例2と同様の洗浄を施し、得られたイオン交換樹脂の水分量を測定した結果を表2に示す。
【0092】
[比較例4]
実施例2と同様の樹脂に比較例3と同様の洗浄を施し、得られたイオン交換樹脂の水分量を測定した結果を表3に示す。
【0093】
[実施例3]
オルガノ株式会社製のゲル型構造を有する強塩基性陰イオン交換樹脂AMBERJET ESG4002(OH)(商品名)を実施例1と同様の手順にて洗浄し、得られたイオン交換樹脂の水分を測定した結果を表1に示す。
【0094】
[比較例5]
実施例3と同様の樹脂に比較例1と同様の洗浄を施し、得られたイオン交換樹脂の水分量を測定した結果を表2に示す。
【0095】
[比較例6]
実施例3と同様の樹脂に比較例3と同様の洗浄を施し、得られたイオン交換樹脂の水分量を測定した結果を表3に示す
【表1】

【表2】

【表3】

表1、2および3に示すように実施例1~3の通液式洗浄を用いた場合はイオン交換樹脂の水分を効率的に低減できたのに対して、比較例1~6のバッチ式を用いた場合は洗浄効率が悪く、水分の残留量も多くなることから実用的でないことが示された。バッチ式洗浄では、デカンテーションにより洗浄液を系外に排出するために容器内に含水率の高い洗浄液が残留するのに対して、通液式洗浄では常に新品の洗浄液が樹脂層に供給されるため、洗浄効率が高いものと推測される。
【0096】
<合成例1>
モノアリルジグリシジルイソシアヌル酸(四国化成工業(株)製)800g、3,3’-ジチオジプロピオン酸(堺化学工業(株)製、商品名:DTDPA)608g、及び触媒として第4級ホスホニウム塩であるトリフェニルモノエチルホスホニウムブロミド53gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル2191gに溶解させ、加熱後120℃に保ちながら窒素雰囲気下で4時間撹拌した。得られた反応生成物を、プロピレングリコールモノメチルエーテル3652gにて希釈したワニス溶液のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は約7800であった。この反応生成物は、下記式(A-1)で表される構造単位を有する高分子化合物を含む。
【0097】
【化13】
【0098】
<調製例1>
前記合成例1で得た高分子化合物715gを含む溶液3575gに、テトラメトキシメチルグリコールウリル[POWDERLINK(登録商標)1174、日本サイテックインダストリーズ(株)製]179g、4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸(PSA)18g、ビスフェノールS11g、界面活性剤(R-30N、DIC(株))7g、プロピレングリコールモノメチルエーテル86.3kg、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート9.9kgを加え、レジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0099】
<イオン交換処理溶液の水分分析条件>
後述する例に示すイオン交換処理溶液の含水量は、カールフィッシャー水分計による測定結果であり、測定条件等は次のとおりである。
【0100】
装置:電量法 カールフィッシャ-水分計 CA-200(株式会社 三菱化学アナリステック)
【0101】
[実施例4]
前記調製例1で得たレジスト下層膜形成組成物500gに対して、実施例1にて得られたイオン交換樹脂を25g添加し、室温で2時間撹拌後、デカンテーションにより樹脂を除去し、処理溶液(精製溶液)を得た。得られた被処理液の水分を測定した結果を表4に示す。
【0102】
[比較例7]
実施例4と同様の操作を、比較例1にて得られたイオン交換樹脂を用いて実施し、得られた被処理液の水分を測定した結果を表4に示す。
【0103】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0104】
本願の方法によれば、含有水分が低減されたリソグラフィー用塗布膜形成組成物の製造方法、それを製造するための含水量が低減されたイオン交換樹脂の洗浄方法を提供できる。