(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】水質浄化シート及び当該シートを用いた水質浄化方法
(51)【国際特許分類】
B01J 20/28 20060101AFI20240827BHJP
C02F 1/28 20230101ALI20240827BHJP
B01J 20/04 20060101ALI20240827BHJP
C01F 11/18 20060101ALI20240827BHJP
C01F 5/06 20060101ALI20240827BHJP
C01F 5/24 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B01J20/28 Z
C02F1/28 A
C02F1/28 E
C02F1/28 B
B01J20/04 B
C01F11/18
C01F5/06
C01F5/24
(21)【出願番号】P 2020125765
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【氏名又は名称】杉村 純子
(72)【発明者】
【氏名】國西 健史
(72)【発明者】
【氏名】秋山 達志
(72)【発明者】
【氏名】林 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】下川 吉信
(72)【発明者】
【氏名】板谷 裕輝
(72)【発明者】
【氏名】中村 丞吾
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-237266(JP,A)
【文献】特開2016-190227(JP,A)
【文献】特開2018-038953(JP,A)
【文献】特許第6636215(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/28
B01J 20/30-20/34
C02F 1/28
C01F 1/00-17/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染物質を含有する残土、建設発生土、汚泥または排水に含まれる汚染物質を捕獲する水質浄化シートであって、該水質浄化シートは、
不織布と重金属を吸着する吸着材とからなり、不織布中に重金属を吸着する吸着材が分散して
直接担持されてなり、前記不織布は単位面積あたり10~650g/m
2で、前記吸着材はシートあたり10~5000g/m
2であり、吸着材担持不織布の各貫通孔の中で最も狭い部分の孔径が10nm(10
-8m)~100μm(10
-4m)であ
り、重金属を吸着する吸着材は、ドロマイト系化合物を含む吸着材である、吸着材を不織布中に分散して担持する不織布シートであることを特徴とする、水質浄化シート。
【請求項2】
請求項1記載の水質浄化シートにおいて、吸着材は、平均粒径が3~100μmの粉末状であ
ることを特徴とする、水質浄化シート。
【請求項3】
請求項2記載の水質浄化シートにおいて、吸着材は、さらに酸性硫酸塩を含むことを特徴とする、水質浄化シート。
【請求項4】
請求項2又は3記載の水質浄化シートにおいて、ドロマイト系化合物はCaMg(CO
3)
2、MgO、CaCO
3を含むことを特徴とする、水質浄化シート。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれかの項記載の水質浄化シートにおいて、水質浄化シートは、1シート以上からなることを特徴とする、水質浄化シート。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれかの項記載の水質浄化シートを、汚染物質を含有する残土、建設発生土、汚泥または排水に含まれる汚染物質汚と接触させて、汚染物質を捕獲することを特徴とする、水質浄化シートを用いた水質浄化方法。
【請求項7】
請求項6記載の水質浄化方法において、汚染物質を含有する残土、建設発生土、汚泥または排水中に含まれる汚染物質を予め凝集処理した後に、水質浄化シートと接触させることを特徴とする、水質浄化シートを用いた水質浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水質浄化シート及び当該シートを用いた水質浄化方法に関し、特に建築・土木工事で発生する掘削ずり等の掘り起こし残土や汚泥を通過した雨水や地下水及び工場等からの排液等の排水に含まれる重金属等の汚染物質を有効に捕獲することができ、軽量で施工性に優れるとともに耐久性に優れる、水質浄化シート及び当該シートを用いた水質浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル、ダム、造成などの建設・土木工事を実施する際には、掘削によって掘り起こし残土として、掘削ずりが発生する。
かかる掘削ずりには、自然由来または人工的な汚染物質が含まれることがあるため、汚染物質を含む掘削ずりを含む建設残土を用いて盛土や埋め立て等を行う場合には、これらの汚染物質に対する有効な除去処理が求められる。
【0003】
従来は、これらの汚染物質を含む建設残土や建設廃材の処理方法としては、掘削ずりや建設廃材を場外に搬出して処理する方法や不溶化処理方法が利用されてきた。
また、シートを製造して、かかるシート上に掘削ずりや建設廃材を積載し、汚染物質を吸着させる方法も提案されてきている。
【0004】
建造物が破壊されて生じるがれきなどの廃棄物は、一旦、屋外の所定の土地に仮置きされた後、処分されるが、当該廃棄物に重金属類などの環境汚染物質が含まれている場合があり、雨水により廃棄物に水が染み込むと、その水は環境汚染物質を取り込んだ後、汚染水となって廃棄物から染み出し、土壌を汚染する。
【0005】
また、電解めっき工場等から排出されるめっき排水等の排水には、重金属が含まれており、かかる工場排水等から重金属を除去しなければ、排水を放出することはできず、重金属を除去する技術は重要である。
【0006】
重金属を捕獲するために、例えば、国際公開公報WO2013/115033A1には、ゼオライト等の吸着材と有機バインダーとを混合して吸着シートを形成する場合に、吸着材であるゼオライトの細孔内に有機バインダーの側鎖等が吸着してしまい十分な吸着性能が得られないとの問題を解決するとともに、更に温度400~800℃で焼成して有機バインダーを除去できたとしてもその吸着性能は十分とはいえなかったとの問題を解決することを目的として、有機繊維に多孔性金属錯体を担持させたシート状の成形体とする発明が開示されている。
【0007】
特開2014-166621号公報には、汚染水から環境汚染物質を除去する機能を備え、汚染水による土壌汚染を効果的に防止できる環境汚染物質除去シートとして、ゼオライト吸着材を含む透水性層と、該透水性層の一方の面に積層した透水性調節層とを少なくとも有する環境汚染物質除去シートで、下記の方法で測定する200ml通水時間が10分以上である、環境汚染物質除去シートが開示されている。
200ml通水時間:A4サイズの環境汚染物質除去シートを市販の漏斗に透水性調節層が下になるように置き、中央部を押し込んで凹ませた状態で固定し、その上から200mlの水を注ぐ。水の全量が下に自重で落ちるまでの時間を測定し、200ml通水時間とした。
【0008】
また、工場等の排水から重金属を除去する技術として、例えば特開2017-80740号公報には、重金属、および前記重金属と配位結合して金属錯体を形成する化合物を少なくとも含む廃水を処理する装置であって、廃水中の前記金属錯体を形成する化合物を酸化処理する酸化処理手段と、酸化処理した廃水中の重金属を不溶化処理する不溶化処理手段と、不溶化処理した廃水を膜分離する膜分離手段とを備える廃水の処理装置が記載されており、膜分離手段としては、中空糸膜、チューブラ膜等が記載されている。
【0009】
さらに国際公開公報WO2013/031689A1には、放射性物質および/または重金属含有水にフミン質を混合した後、固液分離処理する放射性物質および/または重金属含有水の浄化方法であって、放射性物質および/または重金属含有水にフミン質を混合した後、固液分離処理する前に、凝集剤、吸着材からなる群から選ばれる少なくとも一つの添加剤を添加し、固液分離処理した後に、凝集剤、吸着材からなる群から選ばれる少なくとも一つの添加剤を添加し、次いで、第2の固液分離処理を行う、放射性物質および/または重金属含有水の浄化方法が開示されており、重金属等の浄化手段として半透ユニットやイオン交換樹脂を用いることが記載されている。
【0010】
しかし、従来の凝集沈殿法では、設置スペースが大きくなり、産業廃棄物が多量に出てしまう場合もあり、処理能力が十分ではなく、目詰まりしやすいといった問題がある。その結果、汚染物質が処理水側にリークしてしまうことも生じていた。また中空糸膜による方法は、濾過抵抗が高く、処理量にも上限があった。
そこで、建設・土木分野や、排水処理業界においては、有効に重金属等の汚染物質を除去することができる簡便な汚染物質を吸着できる部材が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】WO2013/115033A1
【文献】特開2014-166621号公報
【文献】特開2017-80740号公報
【文献】WO2013/031689A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、上記課題を解決し、建築・土木工事で発生する掘削ずり等の掘り起こし残土や汚泥等に含まれる重金属等が流出した雨水や浸出水、更には地下水や工場からの排液等の排水に含まれる重金属等の汚染物質を有効に捕獲することができ、軽量で施工性に優れるとともに耐久性に優れる、水質浄化シートを提供することである。
【0013】
また、本発明の他の目的は、上記本発明の水質浄化シートを用いて、効率よく建築・土木工事で発生する掘削ずり等の掘り起こし残土や汚泥等に含まれる重金属等が流出した雨水や浸出水、更には地下水や工場からの排液等の排水に含まれる重金属等の汚染物質を有効に捕獲することができる、水質浄化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、重金属等の汚染物質を吸着する吸着材が不織布に担持されている特定のシートとすることで上記課題が解決できることを見出し、本発明に至った。
(1)本発明の水質浄化シートは、汚染物質を含有する残土、建設発生土、汚泥または排水に含まれる汚染物質を捕獲する水質浄化シートであって、該水質浄化シートは、不織布と重金属を吸着する吸着材とからなり、不織布中に重金属を吸着する吸着材が分散して直接担持されてなり、前記不織布は単位面積あたり10~650g/m2で、前記吸着材はシートあたり10~5000g/m2であり、吸着材担持不織布の各貫通孔の中で最も狭い部分の孔径が10nm(10-8m)~100μm(10-4m)であり、重金属を吸着する吸着材は、ドロマイト系化合物を含む吸着材である、吸着材を不織布中に分散して担持する不織布シートであることを特徴とする、水質浄化シートである。
(2)好ましくは、上記(1)の水質浄化シートにおいて、吸着材は、平均粒径が3~100μmの粉末状であることを特徴とする、水質浄化シートである。
(3)さらに好ましくは、上記(2)の水質浄化シートにおいて、吸着材は、さらに酸性硫酸塩を含むことを特徴とする、水質浄化シートである。
(4)またさらに好ましくは、上記(2)又は(3)の水質浄化シートにおいて、ドロマイト系化合物はCaMg(CO3)2、MgO、CaCO3を含むことを特徴とする、水質浄化シートである。
(5)またさらに好ましくは、上記(1)乃至(4)のいずれかの水質浄化シートにおいて、水質浄化シートは、1シート以上からなることを特徴とする、水質浄化シートである。
【0015】
(6)本発明の汚水質浄化シートを用いた水質浄化方法は、上記(1)乃至(5)のいずれかの水質浄化シートを、汚染物質を含有する残土、建設発生土、汚泥または排水に含まれる汚染物質と接触させて、当該汚染物質を捕獲することを特徴とする、水質浄化シートを用いた水質浄化方法である。
(7)好ましくは、(6)の水質浄化方法において、汚染物質を含有する残土、建設発生土、汚泥または排水に含まれる汚染物質を予め凝集処理した後に、水質浄化シートと接触させることを特徴とする、水質浄化シートを用いた水質浄化方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の水質浄化シートは、従来の凝集沈殿とは異なり、設置スペースが広い大掛かりな装置とすることはなく、汚染物質を捕獲した本発明のシートはセメント工場での燃料として使用することができるため、産業廃棄物が多量に出ることもなく、また中空糸膜とは異なり濾過抵抗を問題にすることがなく、処理量を向上させることが可能であり、汚染物質を含有する残土、建設発生土、汚泥を通じた雨水または排水から浸出する汚染物質を効率よく捕獲して、周囲への汚染物質の流出を効果的に防止することができる。
また、本発明の水質浄化シートは軽量であるため、施工が容易であり、当該シート上に掘削ずり等の残土等を多量に積載しても、またその残土等の上部をブルドーザやトラック等の重機が通行してもシートが破れることなく、十分な耐久性を備えることができる。
さらに、使用後の本発明の水質浄化シートは、例えばセメント工場の燃料として利用することが可能である。
【0017】
また、本発明の水質浄化シートを、汚染物質を含有する残土、建設発生土、汚泥を通じた雨水または排水流路の下部やタンク内に設置することで、雨水等により汚染物質を含む残土等からの汚染水からの汚染物質を効果的に回収することができ、汚染物質の流出を効果的に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】本発明の水質浄化シートを模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の水質浄化シートの貫通孔の例を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の水質浄化シートを残土処理に用いる際の施工の一例を模式的に示す図である
【
図4】本発明の水質浄化シートを残土処理に用いる際の施工の他の一例を模式的に示す図である
【
図5】本発明の水質浄化シートを通水排水処理に用いる際の施工の一例を模式的に示す図である
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を以下の好適例により説明するが、これらに限定されるものではない。
本発明の水質浄化シートは、汚染物質を含有する残土、建設発生土、汚泥または排水に含まれる汚染物質を捕獲する水質浄化シートであって、該水質浄化シートは、不織布に重金属を吸着する吸着材が担持されてなり、前記不織布は単位面積あたり10~650g/m2で、前記吸着材はシートあたり10~5000g/m2であり、吸着材担持不織布の各貫通孔の中で最も狭い部分の孔径が10nm(10-8m)~100μm(10-4m)である、水質浄化シートである。
【0020】
本発明の水質浄化シートは、不織布に重金属を吸着する吸着材が担持されてなるものである。
図1Aは、汚染物質吸着材3が不織布2中に担持されている吸着材の分布の状態を模式的に示す図であり、
図1Bは、
図1A中のX部分を拡大して不織布繊維2とともに模式的に示した図である。
【0021】
本発明の水質浄化シート1を構成する不織布2は、吸着材3を担持した不織布の表と裏とを貫く各貫通孔の最も狭い部分の孔径が、10nm(10-8m)~100μm(10-4m)とすることができれば、その繊度、繊維長は特に限定されず、市場で入手できる任意の公知の不織布を用いることができる。
また、不織布2は、不織布を構成する通常の公知の任意の有機繊維を使用することができ、かかる有機繊維としては、例えば親水性有機繊維や疎水性有機繊維が挙げられ、好ましくは疎水性有機繊維からなることが長期に強度を保持して有効な耐久性を備える点から望ましい。
これらの不織布繊維としては、例えば、パルプ、古紙パルプ、リンター、麻、綿、ケナフ等から調製される天然セルロース繊維や、レーヨン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体などのポリオレフィン系繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド、ポリイミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、スチレン-エチレン共重合体、スチレン-アクリル共重合体、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール(PVA)等のポリビニルアルコール系樹脂等の繊維を例示することができる。
【0022】
不織布の製造方法は特に限定されず、通常の製造方法を適用して、本発明に用いる不織布を製造することができる。
不織布の一般的な製造工程としては、原料繊維からウェブを形成するウェブ形成工程と、ウェブ中の原料繊維を結合させる繊維結合工程とを有する方法があり、ウェブ形成工程としてエアレイド法が採用された不織布(エアレイド不織布)や、ウェブ形成工程としてカーディング法が採用された不織布がある。また、不織布の形態としては、例えばウェブ形成工程の違いに基いて、乾式不織布、湿式不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布などがあり、いずれのものも使用することが可能である。
【0023】
更に、不織布のウェブ繊維結合方法としては、公知の任意の方法を適用することができ、例えば、ケミカルボンド法(浸漬法・スプレー法)、サーマルボンド法、ニードルパンチ法、水流交絡法等を用いることができる。
【0024】
また、不織布の単位面積あたりの質量(目付)は、10~650g/m2であり、好ましくは10~600g/m2、より好ましくは200~600g/m2であることが望ましい。
目付がかかる範囲であると、軽量で施工性がよく、また、吸着材を担持した不織布の各貫通孔の中で最も狭い部分の孔径が上記特定の範囲であることとの相乗効果で汚染物質を良好に捕獲することができる。
【0025】
本発明の水質浄化シート1を構成する不織布2に担持される、重金属等の汚染物質を吸着する吸着材3としては、特に限定されず、公知の重金属等吸着材を用いることができる。
好ましくは、当該吸着材は、粉末状であることが、不織布繊維に広く分散されて担持されることができるため望ましい。また、粉末形態とすることで汚染水と速やかに反応することが可能であり、汚染物質である重金属等を効率的に吸着して捕獲することができる。
かかる粉末の平均粒径は、好ましくは3~100μm、より好ましくは30~100μmであることが、汚染水の透水性を良好に保持するために望ましい。
【0026】
また、重金属等を吸着できる吸着材3としては、公知の任意の吸着材を用いることができるが、特に、ドロマイト系化合物を含む吸着材が、汚染物質である重金属等を有効に捕獲して固定することができることから望ましい。
【0027】
ここで、汚染物質としての重金属等は、重金属やハロゲンを意味し、重金属としては、例えば、マンガン、クロム、銅、カドミウム、水銀、セレン、鉛、砒素、カドミウム等の1種若しくは2種以上のもので、かつ重金属単体及びその化合物が例示でき、またハロゲンとしてはフッ素、塩素等の単体及びその化合物が例示できる。さらにこれらに加え、重金属等には土壌汚染対策法に規定される第2種特定有害物質も含むものであり、例えばホウ素単体及びその化合物を例示することができる。
【0028】
汚染物質吸着材として好適に用いられるドロマイト系化合物は、MgO、CaMg(CO3)2及びCaCO3を必須含有成分とするものである。
当該成分を含有するドロマイト系化合物としては、例えば、MgO、CaCO3、CaMg(CO3)2を主成分とする半焼成ドロマイトが挙げられる。
前記ドロマイトは、市場で入手し得る任意のものを用いることができ、産地は問わない。
また、市場で入手し得る任意の半焼成ドロマイトや、市場で入手し得る任意のドロマイトを焼成して得られた半焼成ドロマイトを用いることができ、産地や原料ドロマイトの組成等は問わない。半焼成ドロマイトは、分解反応が完全に完了するまでドロマイトを焼成して得られるものではなく、MgO、CaMg(CO3)2及びCaCO3を必須成分として含むものである。
【0029】
ドロマイトは、石灰石CaCO3とマグネサイトMgCO3のモル比が1:1となる複塩構造を有しており、CO3
2-基を挟んでCa2+イオンとMg2+イオンが交互に層を成して、一般に、MgCO3の割合が10~45質量%のものをいう。ドロマイトは、国内に多量に存在しており、ドロマイトを使用した吸着材は、コストや環境負荷の点からも有利である。
【0030】
上記半焼成ドロマイトとしては、粉末X線回折によるリートベルト法を用いて解析したドロマイト焼成物中の残留CaMg(CO3)2相の含有量xが、0.4≦x≦35.4(質量%)となる半焼成ドロマイトを好適に用いることができる。
半焼成ドロマイト中に含まれるCaMg(CO3)2相を定量して、上記範囲内のCaMg(CO3)2相残留量の半焼成ドロマイトを好適に用いることで、原料となるドロマイト鉱石の産地による組成の相違や、焼成温度等の焼成条件の設定などに関係なく、ドロマイトが最大に優れた重金属等吸着性能を有することが更に可能となる。
【0031】
ドロマイトは焼成することで、CaMg(CO3)2→MgO+CaCO3+CO2で表わされる分解反応を示す。また、ドロマイトの焼成による上記熱分解により、細孔が形成されて重金属等捕獲性能を発揮しているものと考えられる。本発明においては、ドロマイトを焼成した半焼成ドロマイト中のドロマイト相(CaMg(CO3)2相)の残留量を粉末X線回折によるリートベルト法により解析して、残留CaMg(CO3)2相の含有量xが、0.4≦x≦35.4(質量%)が好ましく、より好ましくは1.8≦x≦17.4(質量%)とすることで、特に好適に、重金属等を、より良好に捕獲することを実現することが可能となる。
【0032】
例えば、かかる好適な半焼成ドロマイトは、粉末X線回折によるリートベルト法を用いて解析したドロマイト焼成物中の残留CaMg(CO3)2相の含有量xが、好ましくは0.4≦x≦35.4(質量%)、より好ましくは1.8≦x≦17.4(質量%)となるように焼成することで製造することができる。
ドロマイトを焼成する温度は、特に限定されず、通常ドロマイトを焼成して半焼成ドロマイトを製造する温度、例えば650~1000℃で焼成することができる。残留CaMg(CO3)2相の含有量が、0.4≦x≦35.4(質量%)となるように焼成することが望ましくその焼成時間も特に制限されるものではない。
【0033】
本発明に用いる吸着材中のMgO含有量は、好ましくは粉末X線回折によるリートベルト法を用いて解析した値で14~23質量%であり、さらに好適には14~21質量%である。
かかる吸着材中のMgOは、含有されるドロマイト系化合物由来のものであり、具体的には、ドロマイトを焼成して得られた半焼成ドロマイト等由来のものであり、更に好ましくは半焼成ドロマイト由来のものである。
MgO含有量が14質量%未満では、鉛やフッ素等に対する吸着能力が低下する場合があったり、23質量%を超えると、MgOのpHがアルカリ性であるため、汚染水中の汚染物質を吸着したあとの雨水等の水のpHが10以上のアルカリ性を示すこととなり、望ましくない。
【0034】
本発明に用いる吸着材に含まれるドロマイト系化合物は、必須含有成分MgO、CaMg(CO3)2、CaCO3が含まれるように1種類及び/又は2種類以上の材料を任意に混合することができる。
一例として21質量%のMgOを含有する半焼成ドロマイトを使用した場合においては、吸着材中の半焼成ドロマイト配合比を80~99質量%とすることにより、本発明に用いる吸着材中のMgOの含有量を16~21質量%とすることができるが、使用するドロマイト系材料に応じて、上記配合比率の制約を受けるものではない。
【0035】
更に、本発明に用いる吸着材には、望ましくは酸性硫酸塩を含む。
酸性硫酸塩としては、例えば、硫酸第一鉄、硫酸アルミニウム等が例示でき、好ましくは硫酸第一鉄を含有する。
酸性硫酸塩を含有することにより、硫酸第一鉄のようにその高い還元作用によって、砒素や六価クロム等の重金属等に対して、より有効に捕獲することができるとともに、酸性であるため、他のドロマイト系化合物中の含有材料の配合比率を調整することで、本発明に用いる吸着材を用いて処理した処理水を中性付近に保持することを可能とする。
【0036】
また、本発明に用いる吸着材に含まれる酸性硫酸塩は、ドロマイト系化合物及び酸性硫酸塩の合量中、内割で、酸性硫酸塩を好ましくは1~40質量%、より好ましくは14~30質量%の割合で含むことが望ましい。
【0037】
吸着材の一例としては、上記したように、ドロマイト系化合物、酸性硫酸塩を含み、ドロマイト系化合物及び酸性硫酸塩の合量中、酸性硫酸塩は1~40質量%の割合で含有され、且つ、吸着材中にMgOを14~23質量%含む吸着材が望ましい。
【0038】
また本発明に用いる吸着材を適用することで、汚染物質を吸着した後の雨水等の処理水を、中性付近に維持することが可能である。
【0039】
本発明の水質浄化シート中の前記吸着材の含量は、水質浄化シートあたり10~5000g/m2、好ましくは、50~3000g/m2である。
これにより、汚染物質を吸着する性能を有効に発揮することができるとともに、上記不織布に効果的に吸着材を担持させることが可能となる。
【0040】
上記不織布に、前記吸着材を担持する方法は、特に限定されず、公知の方法を適用することができ、例えば、上記した不織布のウェブ繊維結合方法としての、公知の任意の方法、例えば、ケミカルボンド法(浸漬法・スプレー法)、サーマルボンド法、ニードルパンチ法、水流交絡法等をおいて、使用する液体である水中に前記吸着材を分散させて、不織布中に吸着材を均一に担持させることが可能である。
【0041】
また、吸着材が担持された不織布の貫通孔4の状態の例を
図2(a)~(c)に示す。
本発明においては、吸着材担持不織布1の各貫通孔4の中でもっとも狭い部分の孔径5が、10nm(10
-8m)~100μm(10
-4m)、好ましくは100nm(10
-7m)~10μm(10
-5m)、より好ましくは1μm(10
-6m)~10μm(10
-5m)の範囲にある。即ち、吸着剤が担持された不織布に含まれる全貫通孔について、各貫通孔の最も狭い部分の孔径が上記範囲内に入っているものである。
ここで、貫通孔4の孔径は、例えば、直径2.5cmの円形サンプルを不織布からランダムに採取して、パーム・ポロメーター(PMI社製、細孔径分布測定器)を用いて測定することができ、本発明の水質浄化シートは、各貫通孔4の中で最も狭い部分の孔径5が、上記範囲内の孔径を有するものとする。
図2中の5で示す部分が、貫通孔4の中でもっと狭い部分の孔径を示すものであり、この孔径は、貫通孔を通過できる物の最大サイズでもある。
【0042】
汚染物質を含む汚染水が水質浄化シート上に滞留すると、汚染水が水質浄化シートと十分に接触することなく、当該シートの周囲にあふれてしまい、汚染物質を有効に除去することができなくなることが発生するが、吸着材担持不織布内の全ての貫通孔4において、各貫通孔のもっとも狭い部分の孔径5が上記範囲内に入ることにより、重金属等の汚染物質を有効に除去することができるとともに、建設・土木工事等から発生する掘り起こし残土等から浸出する汚染物質を含む汚染水や工場からの排水が水質浄化シートに滞留することなく通過でき、掘り起こし残土等に含まれる汚染物質を含む汚染水等と水質浄化シートとを効率的に接触させることができる。更に、汚染水や工場からの排水に含まれる重金属、更に必要に応じて前処理して生成された重金属水酸化物や重金属凝集体や汚染物質の懸濁物を有効に捕獲除去することが可能となる。
更に、汚染水が水質浄化シート中の汚染物質吸着材と十分に接触する時間なく直ちに通過してしまうと汚染物質を有効に吸着除去することができない場合があるが、本発明においては吸着材担持不織布内の全ての貫通孔4の中のもっとも狭い部分の孔径5が上記範囲内であることにより、有効に汚染物質を捕獲することが可能となる。
【0043】
上記したように、重金属には、重金属単体及びその化合物が例示でき、例えば重金属酸水酸化物や重金属酸化物や、重金属のキレート錯体も含まれ、汚染物質が含まれる残土、建設発生土、汚泥または排水に含まれる汚染物質が、例えば重金属水酸化物等の場合には、吸着材担持不織布1の貫通孔4の中でもっとも狭い部分の孔径5の多くが、上記範囲内の小さい数値を有する吸着材担持不織布を用いることが望ましく、また重金属酸化物等の場合には上記孔径範囲内の比較的大きい数値を有する吸着材担持不織布を用いることができる。
吸着材担持不織布1の各貫通孔4中のもっとも狭い部分の孔径の分布を測定して、汚染物質が有効に吸着できるように、残土、建設発生土、汚泥または排水に含まれる汚染物質の大きさに応じた吸着材担持不織布を選択して用いることが可能である。
【0044】
本発明の水質浄化シートは、建築・土木工事で発生する掘削ずり等の掘り起こし残土や汚泥や排水に適用して、含有される重金属等の汚染物質と、当該浄化シートとを接触させて、汚染物質を当該シート中に含まれる吸着材に吸着させて捕獲することにより除去することに利用される。
一例として、掘削ずりの残土を盛り土した場合を
図3にあげて説明する。
図3に示すように、掘削ずりの残土7を、盛土する際に、原地盤6と残土の盛土7の間に、本発明の水質浄化シート1を敷設する。これにより、雨水等により、盛土中に含まれる汚染物質が雨水等に溶け出し、この汚染水が下降して、下部に敷設されている本発明の水質浄化シート1を透過する際に、当該水質浄化シート中の吸着材に汚染水中の汚染物質が接触して、吸着除去されることが可能となる。
【0045】
また
図4は、仮設ヤードに適用する排水処理装置Aの一例の概略を示す図であり、掘削ずり等の残土の盛土7の下面に水質浄化シート1を敷設して、滲出水に含まれる重金属等を当該水質浄化シート1に吸着させる、
図4に示すように、掘削ずりの残土7を、盛土する際に、原地盤6と残土の盛土7の間に、水質浄化シート1を敷設する。雨水等により、盛土中に含まれる汚染物質が雨水等に溶け出し、この汚染水が下降して、下部に敷設されている浄化シート1を透過する際に、当該浄化シート1中の吸着材に汚染水中の汚染物質が接触して吸着除去されることとなる。
これにより、土壌中に汚染物質が地下水に浸出することを防止できるとともに、土壌8中の帯水層11に汚染物質が流入することを抑制することも可能となる。
【0046】
水質浄化シート1を敷設する際には、例えば、盛土7の下面より当該浄化シート1が広くなるように敷設することが望ましく、また当該シート1の大きさが盛土7の下面より小さい場合には、当該シート同士が一部重なるように複数シート敷設することが望ましい。例えば、シートの両端から5分の1以上を重ねて敷設し、重なった部分が保持できるように、例えば留め具で固定することがよい。
【0047】
必要に応じて、水質浄化シート1は、1シートであっても、2シート以上を積層して用いてもよく、さらに、必要に応じて、水質浄化シートを、不織布からなる保護シートで挟持して用いてもよい。
【0048】
また好ましくは、必要に応じて、水質浄化シート1の下部であって原地盤6の間に、遮水シート等の遮水構造物9を設置することも可能である。この場合には、水質浄化シート1で汚染物質が吸着除去された後の雨水等の処理水は、原地盤6に流入せず、当該遮水構造物9上に貯水されてしまうため、輸送手段等の適切な手段で処理水装置12に送水して凝集沈殿処理を実施したり、処理水装置12中にロール状やフィルター状の水質浄化シート1を投入する等して適切に水処理されることができる。
また、水質浄化シート1を利用せずに盛土7の下に直接、遮水シート等の遮水構造物9を設置して、滲出水を処理水装置12に送水して、上記と同様に水処理することもできる。
【0049】
更に好ましくは、必要に応じて盛土7をブルーシート等の遮水構造物10で覆うことが望ましく、これにより大雨等の場合に、盛土に雨水が過剰に浸水することを抑制することができるとともに、盛土の崩壊を防止することも可能となる。
また残土7の風等による飛散も抑制することができる。
【0050】
必要に応じて、土壌中の地下水の帯水層11に汚染物質が流入していないかを、上市されている任意のモニタリング装置13を用いてモニタリングして随時評価することが、環境汚染を防止する観点より望ましい。
【0051】
また
図5は、排水を通水させて当該排水を処理する他の排水処理装置Bの概略を示す図である。
例えば、通水路14に、水質浄化シート1で構成されるフィルター層を設けて、排水を一定の方向に流しながら当該排水中に含有される汚染物質を吸着するものである。
【0052】
図5に示すように、排水を通水させる装置内の通水路14に、排水(汚染水)を通水させるにあたり、水質浄化シート1を排水が通過できるように設置することで、当該浄化シート1を排水フィルターとして利用して、水質浄化シート中の吸着材に汚染水中の汚染物質が接触して吸着除去されることとなる。
また、排水の通水速度は、当該水質浄化シートに、排水中に含まれる汚染物質が十分に接触して吸着されるように、適宜調整する。
これにより、処理水中に汚染物質が含有されることを防止できるとともに、環境的に安全に処理水を流出することが可能となる。
【0053】
好ましくは、水質浄化シート1は、排水の流れにより移動しないように、即ちフィルターとしての機能が損なわれないように、水質浄化シートを枠に入れて固定設置されることが望ましい。
【0054】
更に、通水排水処理装置内の当該浄化シートを通過した処理水をモニタリングして処理水中の汚染物質含有濃度を評価することで、通水排水処理装置中の通水路14に設置した水質浄化シート1を交換することができる。これにより、当該排水装置を長期間にわたり利用して、排水処理を実施することが可能となる。
【0055】
他の例として、タンク等の排水貯水槽内に排水を貯水し、当該排水貯水槽内に水質浄化シートを少なくとも1枚浸漬するか、または水質浄化シートをロール状とし、当該水質浄化シートのロール体を少なくとも1体設置するか投入して一定時間保持し、貯蔵された排水中の汚染物質を当該浄化シートに吸着させて、排水を処理することも可能である。
かかる場合には、処理水に含まれる汚染物質濃度を評価することで、必要に応じて、設置または投入した水質浄化シートを交換することができる。
好ましくは、タンクに処理水が流出できる出口を設けて、出口濃度を評価することが、評価の容易性の点より好ましい。
【0056】
また、建築・土木工事で発生する掘削ずり等の掘り起こし残土や汚泥等に含まれる重金属等が流出した雨水や浸出水、更には地下水や工場からの排液等の排水中に含まれる汚染物質が重金属単体の場合には、予め凝集処理し、重金属酸化物、重金属水酸化物や凝集体を調製して水質浄化シートと接触させることも可能であり、凝集には、公知のキレート剤や高分子凝集剤を添加して水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等を添加することで重金属酸化物、重金属水酸化物や凝集体を調製することが可能であるが、これらの方法に限定されるものではない。
また、使用後の水質浄化シートは、例えばセメント工場の燃料として利用することが可能である。
【実施例】
【0057】
本発明を次の実施例及び比較例により説明する。
(実施例1~14、比較例1~6)
(ドロマイト系吸着材)
汚染物質吸着材として、ドロマイト系吸着材を以下の材料により調製した。
・半焼成ドロマイト(粉末):栃木県葛生産のドロマイトを焼成
・酸性硫酸塩:硫酸第一鉄一水和物粉末
【0058】
上記半焼成ドロマイト(粉末)について、粉末X線回折によるリートベルト法を用いて各成分の含有量を測定した。
その結果を表1に示す。
【0059】
【0060】
(吸着材)
上記各使用原材料である半焼成ドロマイトと硫酸第一鉄とを表2~4に記載の配合比(質量比)で混合して、各吸着材を調製した。
各実施例及び比較例に用いた吸着材の各平均粒径を、表2~4に示す。
【0061】
(不織布)
不織布として、ポリプロピレン繊維からなり、目付けが表2~4に示すものをそれぞれ不織布として用いた。なお、不織布としては同じ状態のものを用いたものであり、目付の相違は、厚みの相違に反映されている。
【0062】
上記不織布を、ケミカルボンド法にて製造する際に、バインダー液体に浸漬するが、当該バインダー液体内に上記吸着材を均一に含有させておき、かかる吸着材含有バインダー液体中に不織布を浸漬することで、不織布中に吸着材を均一に分散させて担持させ、各水質浄化シートを製造した。
各シート中の吸着材の担持量を、それぞれ下記表2~4に示す。
また、得られた各水質浄化シートの各貫通孔の中で最も狭い部分の孔径の範囲についての評価もそれぞれ下記表2~4に示す。
【0063】
なお、不織布の目付、吸着材の平均粒径、吸着材担持不織布の吸着剤の担持量及び各貫通孔の中で最も狭い部分の孔径の範囲は以下の方法により測定した値である。
・不織布の目付:JIS L 1913:2010一般不織布試験方法の6.2 単位面積当たりの質量(ISO法)に準拠した値である。
・吸着材の平均粒径:マイクロトラックMT3000II(日機装(株)製)にて測定した値である。
・吸着材の担持量:電子天秤にて、吸着材を担持させた不織布シートの質量から、不織布の質量を減じて、吸着材の担持量を計算した値である。
・吸着材不織布の各貫通孔の最も狭い部分の孔径:不織布から直径2.5cmの円形サンプルを採取して、パーム・ポロメーター(PMI社製、細孔径分布測定器)を用いて、当該不織布を表から裏に貫いている孔であって、その孔の中で最も狭い部分の孔径値を測定した値である(
図2参照)。
評価:各貫通孔の最も狭い部分の孔径の分布範囲が10nm(10
-8m)~100μm(10
-4m)・・・〇
各貫通孔の最も狭い部分の孔径の分布範囲が100μmより大きい孔径が存在する場合・・・・・・×(大)
各貫通孔の最も狭い部分の孔径の分布の範囲が10nmより小さい孔径が存在する場合・・・・・・×(小)
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
(試験例1~3)
上記実施例1~14及び比較例1~6の各水質浄化シートを、縦×横が30cm×25cmの各試験シートにして、下記の各試験を実施した。
(試験例1 砒素(As)吸着試験)
汚染物質として、重金属である砒素を用いた吸着試験を実施した。
具体的には、砒素(ひ素標準液(As-1000) 関東化学社製(株))を水に1mg/Lとなるように溶解させて、砒素水溶液を調製した。前記砒素水溶液100mlを、250mlのポリ容器に投入して、各試験シート30×25cm/枚を4分割して、投入した。
次いで、60分間、振とう後、ろ過して、残存溶液中の砒素濃度(mg/l)を測定した。
その結果を、上記表2~4に示す。
【0068】
(試験例2 施工性(曲げやすさ))
施工性は、曲げやすさ(伸び率(%))で評価した。
具体的には、各試験シートの縦方向の伸び率を、JIS L 1913:2010 一般不織布試験方法の「6.3 引張強さ及び伸び率 (ISO法)」に準拠して測定した。
その結果を、上記表2~3に示す。
なお、上記表2~3中の評価基準は以下のとおりである。
◎:100%以上
〇:80以上~100%未満
△:50以上~80%未満
×:50%未満
【0069】
(試験例3 耐久性1(引張強さ)
表2~3中の耐久性は、引張強さ(引張強力)で評価した。
具体的には、各試験シートの縦方向の引張強力(N/5cm)を、JIS L 1913:2010 一般不織布試験方法の「6.3 引張強さ及び伸び率 (ISO法)」に準拠して測定した。
その結果を、上記表2~3に示す。
なお、上記表2~3中の評価基準は以下のとおりである。
◎:1000(N/5cm)以上
〇:500以上~1000(N/5cm)未満
△:300以上~500(N/5cm)未満
×:300(N/5cm)未満
【0070】
(試験例4 耐久性2(粉漏れ))
表4中の耐久性は、粉漏れ評価した。
具体的には、各試験シートの表面に担持された吸着材粉の吹き出し状態を確認するとともに、手でシートを持って、3回叩き、吸着材粉のシートからの漏れ具合を目視で確認した。
その結果を、上記表4に示す。
なお、上記表4中の評価基準は以下のとおりである。
◎:吸着材粉の吹き出し、粉漏れ無し
〇:吸着材粉の吹き出しは無いが、若干の吸着材粉漏れ有り
△:若干の吸着材粉の吹き出し有り且つ若干の吸着材粉の漏れ有り
×:吸着材粉の吹き出し有り且つ吸着材粉の漏れ有り
【0071】
(試験例5 排水性)
表4中の排水性は、各試験シートに水を10ccスポイトで滴下し、滴下直後から120秒後の間の水の浸透状況を確認した。
その結果を、上記表4に示す。
なお、上記表4中の評価基準は以下のとおりである
◎:滴下直後10秒以内に10ccの水がすぐに浸透する
〇:滴下直後から11~60秒かけて水が徐々に浸透する
△:水が徐々に浸透するが、シート表面に水が残存している
×:水がシート上にほとんど残存しており浸透していない
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の水質浄化シートは、カラム等に充填することなくそのまま設置することで、建築・土木工事で発生する掘削ずり等の掘り起こし残土や汚泥を通過した雨水あるいは地下水または排水から発生する重金属等の汚染物質を効率よく捕獲でき、耐久性が良好であるため、例えば、トンネルやダム等の掘削工事や建設工事等によって大量に発生する重金属等が溶出する汚染土壌の掘削ずり等の処理や、工場からの排水処理に有効に適用することが可能となる。
【符号の説明】
【0073】
1・・・・・水質浄化シート
2・・・・・不織布繊維
3・・・・・吸着材
4・・・・・貫通孔
5・・・・・貫通孔の中で最も狭い部分の孔径
6・・・・・原地盤
7・・・・・残土(盛土)
8・・・・・土壌
9,10・・遮水構造物
11・・・・帯水層
12・・・・処理水装置
13・・・・モニタリング装置
14・・・・通水路
A・・・・・仮設ヤード排水処理装置
B・・・・・通水排水処理装置