(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】画像処理装置、読取装置、画像形成装置およびデータ処理方法
(51)【国際特許分類】
H04N 1/04 20060101AFI20240827BHJP
H04N 1/191 20060101ALI20240827BHJP
H04N 1/028 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H04N1/04 101
H04N1/191
H04N1/028 J
(21)【出願番号】P 2020157736
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2020053359
(32)【優先日】2020-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】池本 龍馬
【審査官】松永 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-204567(JP,A)
【文献】特開2010-245775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/04
H04N 1/191
H04N 1/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃度基準部材に2つ以上の光源から光を照射して得られる出荷時のシェーディングデータを保持する第1記憶手段と、
前記出荷時のシェーディングデータの取得時における、前記2つ以上の光源に対してそれぞれ個別の調整情報を保持する第2記憶手段と、
前記第2記憶手段に保持された前記調整情報に基づき、前記2つ以上の光源の光量を個別に調整可能な光量調整手段に前記2つ以上の光源の調整を行わせることで、前記第1記憶手段に保持された前記出荷時のシェーディングデータを取得した際の主走査分布に合わせるデータ処理手段と、
を備え
、
前記調整情報は、前記出荷時のシェーディングデータ取得時の前記光源の各点灯時間であり、
前記データ処理手段は、同色の光源の点灯時間の比率を維持し、各光源の調整を行う、
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
濃度基準部材に2つ以上の光源から光を照射して得られる出荷時のシェーディングデータを保持する第1記憶手段と、
前記出荷時のシェーディングデータの取得時における、前記2つ以上の光源に対してそれぞれ個別の調整情報を保持する第2記憶手段と、
前記第2記憶手段に保持された前記調整情報に基づき、前記2つ以上の光源の光量を個別に調整可能な光量調整手段に前記2つ以上の光源の調整を行わせることで、前記第1記憶手段に保持された前記出荷時のシェーディングデータを取得した際の主走査分布に合わせるデータ処理手段と、
を備え、
前記調整情報は、全ての前記光源について、1つずつの光源を前記濃度基準部材に照射して得られるデータの主走査領域における最大値であり、
前記データ処理手段は、同条件において取得されたデータを前記最大値と一致するように各光源の調整を行う、
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
濃度基準部材に2つ以上の光源から光を照射して得られる出荷時のシェーディングデータを保持する第1記憶手段と、
前記出荷時のシェーディングデータの取得時における、前記2つ以上の光源に対してそれぞれ個別の調整情報を保持する第2記憶手段と、
前記第2記憶手段に保持された前記調整情報に基づき、前記2つ以上の光源の光量を個別に調整可能な光量調整手段に前記2つ以上の光源の調整を行わせることで、前記第1記憶手段に保持された前記出荷時のシェーディングデータを取得した際の主走査分布に合わせるデータ処理手段と、
を備え、
前記調整情報は、全ての前記光源について、1つずつの光源を前記濃度基準部材に照射して得られるデータの主走査領域における最大値であり、
前記データ処理手段は、前記最大値の比率に合わせるように各光源の調整を行う、
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
濃度基準部材に2つ以上の光源から光を照射して得られる出荷時のシェーディングデータを保持する第1記憶手段と、
前記出荷時のシェーディングデータの取得時における、前記2つ以上の光源に対してそれぞれ個別の調整情報を保持する第2記憶手段と、
前記第2記憶手段に保持された前記調整情報に基づき、前記2つ以上の光源の光量を個別に調整可能な光量調整手段に前記2つ以上の光源の調整を行わせることで、前記第1記憶手段に保持された前記出荷時のシェーディングデータを取得した際の主走査分布に合わせるデータ処理手段と、
を備え、
前記調整情報は、全ての前記光源について、1つずつの光源を前記濃度基準部材に照射して得られるデータの所定の主走査範囲における平均値であり、
前記データ処理手段は、同条件において取得されたデータを各平均値と一致するように各光源の調整を行う、
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
濃度基準部材と、
前記濃度基準部材に光を照射する2つ以上の光源と、
前記濃度基準部材からの前記光を結像するレンズと、
前記レンズにより結像された光を電気信号に変換する複数の画素回路と、
前記光源の光量を個別に調整可能な光量調整手段と、
請求項1ないし
4の何れか一項に記載の画像処理装置と、
を備えることを特徴とする読取装置。
【請求項6】
請求項
5に記載の読取装置と、
画像形成部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
濃度基準部材に2つ以上の光源から光を照射して得られる出荷時のシェーディングデータを第1記憶手段に保持するステップと、
前記出荷時のシェーディングデータの取得時における、前記2つ以上の光源に対してそれぞれ個別の調整情報を第2記憶手段に保持するステップと、
前記第2記憶手段に保持された前記調整情報に基づき、前記2つ以上の光源の光量を個別に調整可能な光量調整手段に前記2つ以上の光源の調整を行わせることで、前記第1記憶手段に保持された前記出荷時のシェーディングデータを取得した際の主走査分布に合わせる
データ処理ステップと、
を含
み、
前記調整情報は、前記出荷時のシェーディングデータ取得時の前記光源の各点灯時間であり、
前記データ処理ステップは、同色の光源の点灯時間の比率を維持し、各光源の調整を行う、
ことを特徴とするデータ処理方法。
【請求項8】
濃度基準部材に2つ以上の光源から光を照射して得られる出荷時のシェーディングデータを第1記憶手段に保持するステップと、
前記出荷時のシェーディングデータの取得時における、前記2つ以上の光源に対してそれぞれ個別の調整情報を第2記憶手段に保持するステップと、
前記第2記憶手段に保持された前記調整情報に基づき、前記2つ以上の光源の光量を個別に調整可能な光量調整手段に前記2つ以上の光源の調整を行わせることで、前記第1記憶手段に保持された前記出荷時のシェーディングデータを取得した際の主走査分布に合わせるデータ処理ステップと、
を含み、
前記調整情報は、全ての前記光源について、1つずつの光源を前記濃度基準部材に照射して得られるデータの主走査領域における最大値であり、
前記データ処理ステップは、同条件において取得されたデータを前記最大値と一致するように各光源の調整を行う、
ことを特徴とするデータ処理方法。
【請求項9】
濃度基準部材に2つ以上の光源から光を照射して得られる出荷時のシェーディングデータを第1記憶手段に保持するステップと、
前記出荷時のシェーディングデータの取得時における、前記2つ以上の光源に対してそれぞれ個別の調整情報を第2記憶手段に保持するステップと、
前記第2記憶手段に保持された前記調整情報に基づき、前記2つ以上の光源の光量を個別に調整可能な光量調整手段に前記2つ以上の光源の調整を行わせることで、前記第1記憶手段に保持された前記出荷時のシェーディングデータを取得した際の主走査分布に合わせるデータ処理ステップと、
を含み、
前記調整情報は、全ての前記光源について、1つずつの光源を前記濃度基準部材に照射して得られるデータの主走査領域における最大値であり、
前記データ処理ステップは、前記最大値の比率に合わせるように各光源の調整を行う、
ことを特徴とするデータ処理方法。
【請求項10】
濃度基準部材に2つ以上の光源から光を照射して得られる出荷時のシェーディングデータを第1記憶手段に保持するステップと、
前記出荷時のシェーディングデータの取得時における、前記2つ以上の光源に対してそれぞれ個別の調整情報を第2記憶手段に保持するステップと、
前記第2記憶手段に保持された前記調整情報に基づき、前記2つ以上の光源の光量を個別に調整可能な光量調整手段に前記2つ以上の光源の調整を行わせることで、前記第1記憶手段に保持された前記出荷時のシェーディングデータを取得した際の主走査分布に合わせるデータ処理ステップと、
を含み、
前記調整情報は、全ての前記光源について、1つずつの光源を前記濃度基準部材に照射して得られるデータの所定の主走査範囲における平均値であり、
前記データ処理ステップは、同条件において取得されたデータを各平均値と一致するように各光源の調整を行う、
ことを特徴とするデータ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、読取装置、画像形成装置およびデータ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スキャン画像にて良好な画像を得るために、濃度基準部材を用いて濃度ムラのある画像からムラを除くシェーディング補正処理が行われている。
【0003】
一方、引用文献1には、濃度基準部材を設けることなく、生産工程にて取得された基準となるデータを不揮発性メモリに予め格納しておき、当該データをシェーディングデータとして利用して読取部の各色光源を個別に調整する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術によれば、2つ以上の光源を搭載した読取部において、生産工程にて取得されたシェーディングデータと比べて読取値の主走査分布に差異が生じてしまい、読取画像の色味に異常が生じたり、読取画像に縦スジが発生したりする、という問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、市場にてシェーディング後の読取画像に色味が生じたり、縦スジが発生したりすることを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、濃度基準部材に2つ以上の光源から光を照射して得られる出荷時のシェーディングデータを保持する第1記憶手段と、前記出荷時のシェーディングデータの取得時における、前記2つ以上の光源に対してそれぞれ個別の調整情報を保持する第2記憶手段と、前記第2記憶手段に保持された前記調整情報に基づき、前記2つ以上の光源の光量を個別に調整可能な光量調整手段に前記2つ以上の光源の調整を行わせることで、前記第1記憶手段に保持された前記出荷時のシェーディングデータを取得した際の主走査分布に合わせるデータ処理手段と、を備え、前記調整情報は、前記出荷時のシェーディングデータ取得時の前記光源の各点灯時間であり、前記データ処理手段は、同色の光源の点灯時間の比率を維持し、各光源の調整を行う、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、市場にてシェーディング後の読取画像に色味が生じたり、縦スジが発生したりすることを防止することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態にかかる画像形成装置の概略構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、ADFの構成を概略的に示す図である。
【
図3】
図3は、ADFのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、第2読取部を概略的に示す図である。
【
図5】
図5は、第2読取部および本体制御部の電気的接続を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、光源の点灯制御の一例を示すタイミングチャートである。
【
図7】
図7は、点灯時間の変化に対する読取値の変化についての説明図である。
【
図8】
図8は、各光源の光量バランスを考慮しない場合のシェーディング後画像への影響について説明する図である。
【
図9】
図9は、生産工程でのシェーディングデータの取得処理の流れを概略的に示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、シェーディングデータ取得時の各光源におけるR光源の点灯時間の比率の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、調整前と調整後の点灯時間の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、各光源の光量バランスを考慮した場合のシェーディング後画像を示す説明図である。
【
図13】
図13は、各光源の光量劣化の違いについて示す図である。
【
図14】
図14は、第2の実施の形態にかかる生産工程でのシェーディングデータのピーク値の一例を示す図である。
【
図15】
図15は、生産工程でのシェーディングデータの取得処理の流れを概略的に示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、光源のR光源における調整例を示す図である。
【
図17】
図17は、最大調整値時の劣化後の各光源の出力レベルについて示す図である。
【
図18】
図18は、第3の実施の形態にかかるシェーディングデータ取得時の各光源におけるR光源の読取ピーク値の比率の一例を示す図である。
【
図19】
図19は、調整前と調整後のピーク値の一例を示す図である。
【
図20】
図20は、光量が落ちた際の主走査分布変化について示す図である。
【
図21】
図21は、第4の実施の形態にかかる生産工程でのシェーディングデータの取得処理の流れを概略的に示すフローチャートである。
【
図22】
図22は、光源のR光源における調整例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、画像処理装置、読取装置、画像形成装置およびデータ処理方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態にかかる画像形成装置200の概略構成を模式的に示す断面図である。画像形成装置200は、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する複合機である。
【0011】
図1に示すように、画像形成装置200は、給紙部203、装置本体204、読取装置として機能するADF(Auto Document Feeder:自動原稿送り装置)202を備える。
【0012】
画像形成装置200は、装置本体204内に、画像形成部であるプロッタ220を備える。プロッタ220は、タンデム方式の作像部205と、作像部205に給紙部203から搬送路207を介して記録紙を供給するレジストローラ208と、光書き込み装置209と、定着部210と、両面トレイ211と、を備えている。
【0013】
作像部205には、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(キー・プレート(ブラック))の4色に対応して4本の感光体ドラム212が並設される。各感光体ドラム212の周りには、帯電器、現像器206、転写器、クリーナ及び除電器を含む作像要素が配置されている。
【0014】
また、転写器と感光体ドラム212との間には、両者のニップに挟持された状態で駆動ローラと従動ローラとの間に張架された中間転写ベルト213が配置されている。
【0015】
このように構成されたタンデム方式の画像形成装置200は、ADF202から送られた検知対象物である原稿を第1読取部20(
図2参照)または第2読取部25(
図2参照)で読み取った原稿画像に基づき、YMCKの色毎に各色に対応する感光体ドラム212に光書き込み装置209から光書き込みを行い、現像器206で各色のトナー毎に現像し、中間転写ベルト213上に例えばY,M,C,Kの順で1次転写する。そして、画像形成装置200は、1次転写により4色重畳されたフルカラーの画像を給紙部203から供給された記録紙に2次転写した後、定着部210で定着して排紙することによりフルカラーの画像を記録紙上に形成する。
【0016】
次に、ADF202について説明する。ここで、
図2はADFの構成を概略的に示す図、
図3はADFのハードウェア構成を示すブロック図である。
【0017】
図2及び
図3に示すように、ADF202は、原稿セット部Aと、分離給送部Bと、レジスト部Cと、ターン部Dと、第一読取搬送部Eと、第二読取搬送部Fと、排紙部Gと、スタック部Hと、駆動部101~105と、コントローラ部100とを備える。
【0018】
原稿セット部Aは、読取原稿束をセットする。分離給送部Bは、セットされた原稿束から一枚毎原稿を分離して給送する。レジスト部Cは、給送された原稿を一次突当整合する働きと、整合後の原稿を引き出し搬送する働きとを行う。
【0019】
ターン部Dは、搬送される原稿をターンさせて、原稿面を読取り側(下方)に向けて搬送する。第一読取搬送部Eは、原稿の表面画像を、コンタクトガラスの下方より読取を行わせる。第二読取搬送部Fは、読取後の原稿の裏面画像を読みとる。
【0020】
排紙部Gは、表裏の読取が完了した原稿を機外に排出する。スタック部Hは、読取完了後の原稿を積載保持する。
【0021】
コントローラ部100は、上述の一連の動作を制御する。以降においては、上述の一連の動作を詳細に説明する。
【0022】
図2および
図3に示すように、ADF202は、各種モータ101~105(ピックアップモータ101、給紙モータ102、読取モータ103、排紙モータ104、底板上昇モータ105)、原稿セットフィラー4、原稿セットセンサ5、給紙適正位置センサ8、突き当てセンサ11、原稿幅センサ13、読取入口センサ15、レジストセンサ17、排紙センサ24、原稿長さ検知センサ30,31を備える。駆動部である各種モータ101~105は、上述の原稿の搬送動作の駆動を行う。
【0023】
また、ADF202は、I/F107、操作部108(プリントキーなど)、本体制御部111を備える。
【0024】
原稿セット部Aは、可動原稿テーブル3を含む原稿テーブル2、原稿セットフィラー4、原稿セットセンサを備える。原稿セット部Aは、可動原稿テーブル3を含む原稿テーブル2上で、原稿面を上向きの状態で読取を行う原稿束1をセットする。更に、原稿セット部Aは、原稿束1の巾方向を図示しないサイドガイドによって搬送方向と直行する方向の位置決めを行う。原稿セット部Aは、原稿セットフィラー4、原稿セットセンサ5により原稿のセットを検知する。原稿セットフィラー4、原稿セットセンサ5は、検知信号をI/F107により本体制御部111に送信する。
【0025】
原稿セット部Aは、更に原稿テーブル2の上面に、原稿長さ検知センサ30又は31(反射型センサ又は、原稿1枚にても検知可能なアクチェーター・タイプのセンサ)を備える。原稿長さ検知センサ30又は31の検知により、原稿の搬送方向長さの概略が判定される(少なくとも同一原稿サイズの縦か横かを判断可能なセンサ配置が必要)。原稿長さ検知センサ30又は31は、検知信号をI/F107により本体制御部111に送信する。
【0026】
可動原稿テーブル3は、底板上昇モータ105により
図2に示すa,b方向に上下動可能である。コントローラ部100は、原稿がセットされたことを原稿セットフィラー4、原稿セットセンサ5により検知すると、底板上昇モータ105を正転させて原稿束1の最上面がピックアップローラ7と接触するように、可動原稿テーブル3を上昇させる。
【0027】
分離給送部Bは、ピックアップローラ7および給紙適正位置センサ8を備える。ピックアップローラ7は、ピックアップモータ101に接続されたカム機構によって、
図2に示すc,d方向に動作する。また、給紙適正位置センサ8は、上昇した可動テーブル3上の原稿上面により押されることにより、c方向に上昇した可動テーブル3の上限を検知可能である。
【0028】
操作部108よりプリントキーが押下され、本体制御部111からI/F107を介して原稿給紙信号が送信されると、コントローラ部100は、給紙モータ102を正転させてピックアップローラ7を回転駆動し、原稿テーブル2上の数枚(理想的には1枚)の原稿をピックアップする。回転方向は、最上位の原稿を給紙口に搬送する方向である。
【0029】
分離給送部Bは、給紙ベルト9を備える。コントローラ部100は、給紙モータ102の正転により、給紙ベルト9を給紙方向に駆動し、リバースローラ10を給紙と逆方向に回転駆動する。これにより、分離給送部Bは、最上位の原稿とその下の原稿を分離して、最上位の原稿のみを給紙できる構成となっている。
【0030】
より詳細には、リバースローラ10は、給紙ベルト9と所定圧で接し、給紙ベルト9との直接接している時、又は原稿1枚を介して接している状態では給紙ベルト9の回転につられて反時計方向につれ回りし、万が一原稿が2枚以上給紙ベルト9とリバースローラ10の間に侵入した時は連れ回り力がトルクリミッターのトルクよりも低くなるように設定されている。リバースローラ10は、本来の駆動方向である時計方向に回転し、余分な原稿を押し戻す働きをし、重送が防止される。
【0031】
レジスト部Cは、突き当てセンサ11とプルアウトローラ12と原稿幅センサ13とを備える。1枚に分離された原稿は、給紙ベルト9によって更に送られる。そして、突き当てセンサ11が原稿の先端を検知する。その後、原稿は更に進んで、停止しているプルアウトローラ12に突き当たる。
【0032】
コントローラ部100は、原稿を前出の突き当てセンサ11の検知から所定量定められた距離だけ送り、プルアウトローラ12に所定量撓みを持って押し当てられた状態で給紙モータ102を停止させ、給紙ベルト9の駆動を停止させる。この時、コントローラ部100は、ピックアップモータ101を回転させることでピックアップローラ7を原稿上面から退避させ、原稿を給紙ベルト9の搬送力のみで送る。これにより、原稿先端がプルアウトローラ12の上下ローラ対のニップに進入し、原稿先端の整合(スキュー補正)が行われる。
【0033】
プルアウトローラ12は、スキュー補正機能を有すると共に、分離後にスキュー補正された原稿を中間ローラ14まで搬送するためのローラであり、給紙モータ102の逆転により駆動される。またこの時(給紙モータ102逆転時)、コントローラ部100は、プルアウトローラ12と中間ローラ14を駆動するが、ピックアップローラ7と給紙ベルト9とについては駆動しない。
【0034】
原稿幅センサ13は、奥行き方向に複数個並べられる。原稿幅センサ13は、プルアウトローラ12により搬送された原稿の搬送方向に直行する幅方向のサイズを検知する。
【0035】
また、原稿の搬送方向の長さは、原稿の先端後端を突き当てセンサ11で読取る際のモータパルスから検知する。
【0036】
コントローラ部100は、プルアウトローラ12及び中間ローラ14の駆動によりレジスト部Cからターン部Dに原稿が搬送される際には、レジスト部Cでの搬送速度を読取搬送部Eでの搬送速度よりも高速に設定する。これにより、原稿を読取部へ送り込む処理時間の短縮が図られている。
【0037】
ターン部Dは、読取入口センサ15と、読取入口ローラ16と、レジストセンサ17とを備える。コントローラ部100は、原稿先端が読取入口センサ15により検出されると、読取入口ローラ16の上下ローラ対のニップに原稿先端が進入する前に、原稿搬送速度を読取搬送速度と同速にする為に減速を開始する。同時に、コントローラ部100は、読取モータ103を正転駆動して読取入口ローラ16を駆動するとともに、第二読取搬送部Fの読取出口ローラ23とCIS出口ローラ27とを駆動する。
【0038】
第一読取搬送部Eは、ローラ19と第1読取部20とを備える。コントローラ部100は、原稿の先端をレジストセンサ17にて検知すると、所定の搬送距離をかけて減速し、第1読取部20の手前で原稿を一時停止すると共に、本体制御部111にI/F107を介してレジスト停止信号を送信する。
【0039】
続いて、コントローラ部100は、本体制御部111より読取り開始信号を受信すると、レジスト停止していた原稿を、第1読取部20に原稿先端が到達するまでに所定の搬送速度に立ち上がるように増速して搬送する。
【0040】
コントローラ部100は、読取りモータ103のパルスカウントにより検出された原稿先端が第1読取部20に到達するタイミングで、本体制御部111に対して第1面の副走査方向有効画像領域を示すゲート信号を、第1読取部20を原稿後端が抜けるまで送信する。
【0041】
第二読取搬送部Fは、排紙センサ24と第2読取部25とを備える。コントローラ部100は、片面原稿読取の場合には、第一読取搬送部Eを通過した原稿を、第2読取部25を経て排紙部Gへと搬送する。
【0042】
排紙部Gは、排紙ローラ28と排紙トレイ29とを備える。コントローラ部100は、排紙センサ24により原稿の先端を検知すると、排紙モータ104を正転駆動して排紙ローラ28を反時計方向に回転させる。また、コントローラ部100は、排紙センサ24による原稿の先端検知からの排紙モータ104のパルスカウントにより、原稿後端が排紙ローラ28の上下ローラ対のニップから抜ける直前に排紙モータ104の駆動速度を減速させて、排紙トレイ29上に排出される原稿が飛び出さない様に制御する。
【0043】
コントローラ部100は、両面原稿読取りの場合には、排紙センサ24にて原稿先端を検知してから読取モータ103のパルスカウントにより第2読取部25に原稿先端が到達するタイミングで、第2読取部25に対して副走査方向の有効画像領域を示すゲート信号を、第2読取部25を原稿後端が抜けるまで送信する。
【0044】
第2読取部25に対向する濃度基準部材26は、第2読取部25における原稿の浮きを抑えると同時に、第2読取部25におけるシェーディングデータを取得する為の濃度基準部材を兼ねるものである。
【0045】
ただし、本実施形態の前提として、シェーディングデータは生産工程にて取得されて不揮発性メモリに保存される。そして、不揮発性メモリに保存されたシェーディングデータは、出荷後もシェーディングデータとして使用する構成を想定する。
【0046】
その技術背景として、濃度基準部材26に異物(紙粉、インクなど)が載っていると、シェーディングデータにスジが発生し、シェーディング補正後の画像にスジが発生してしまう。そのため、異物影響を緩和すべく、従来技術においては、濃度基準部材をローラ部材としたり、濃度基準部材を左右に稼働させる可動機構を備えたりするものがある。しかしながら、ローラ部材や可働機構を備えるにはコストがかかってしまう。また、コストを抑えるために、濃度基準部材を固定する場合もある。濃度基準部材を固定とする場合、コストは抑えられる反面、上記のように異物(紙粉、インクなど)への対応が必要となる。
【0047】
その1つの対応方法として、生産工程にて濃度基準部材に異物が乗っていない綺麗な状態で濃度基準部材のデータ(シェーディングデータ)を取得し、そのデータを不揮発性メモリに格納して、市場ではその格納されたデータをシェーディングデータとして使用する技術が知られている。
【0048】
次に、第2読取部25の構成について説明する。
【0049】
ここで、
図4は第2読取部25を概略的に示す図である。
図4(a)は第2読取部25の照射面を示し正面図、
図4(b)は第2読取部25の側面図を示す。
【0050】
図4に示すように、第2読取部25は、密着イメージセンサ(Contact Image Sensor:CIS)である。第2読取部25は、2つの光源(LED)251,252と、2本の導光体253,254とを備える。
【0051】
なお、本実施形態では、
図4に示すように、2本の導光体253,254に対して光源(LED)251,252が片側ずつに配置される構成で説明するが、これに限定されず、光源(LED)251,252を制御する系統が2系統以上あれば良い。例えば、導光体が1本で光源(LED)が両側に配置される構成でも、導光体が2本でそれぞれの導光体の両側に光源(LED)が配置される構成(光源(LED)の合計が4個)でもよく、また光源(LED)の制御が2系統以上であればLEDアレイの構成でも適用することができる。
【0052】
第2読取部25は、長手方向両端部に光源(LED)251,252を配置し、2本の導光体253,254を用いて主走査全体に光を照射する。このような構成によれば、LEDが1個しか搭載されていないCISモジュールと比べて、短時間に高光量の光が得られるため読取の高速化が可能である。
【0053】
なお、本実施形態においては、光源(LED)251,252は、それぞれRed光源、Green光源、Blue光源(以下、R光源、G光源、B光源)を備える。
【0054】
加えて、第2読取部25は、2本の導光体253,254の間に、ロッドレンズアレイ255を備える。また、第2読取部25は、光電変換素子(読取センサ)256を備える。ロッドレンズアレイ255は、光源(LED)251,252を点灯させて光が被写体に当たった際の拡散光を、光電変換素子(読取センサ)256に結像させる。光電変換素子(読取センサ)256は、光信号を電圧に変換する複数の画素回路である。
【0055】
次に、第2読取部25周りの回路構成について説明する。
【0056】
ここで、
図5は第2読取部25および本体制御部111の電気的接続を示すブロック図である。第2読取部25は、光源(LED)251,252および光電変換素子(読取センサ)256に加え、AFE(Analog Front End)257、第1光源駆動回路258、第2光源駆動回路259を備える。AFE257は、光電変換素子(読取センサ)256から出力されたアナログ信号を調整する。第1光源駆動回路258は、光源(LED)251を駆動する。第2光源駆動回路259は、光源(LED)252を駆動する。
【0057】
本体制御部111は、データ処理手段112を備える。また、本体制御部111は、第1記憶手段113と、第2記憶手段114とを接続する。データ処理手段112と第1記憶手段113と第2記憶手段114とは、画像処理装置を構成する。
【0058】
AFE257は、光電変換素子(読取センサ)256にて変換された電圧をA/D変換し、本体制御部111のデータ処理手段112に送信する。
【0059】
データ処理手段112は、暗時(光源(LED)251,252が点灯していない場合)の出力レベルを補正する黒レベル補正や、シェーディングデータを用いた白シェーディング補正などの画像処理を実施する。
【0060】
なお、白シェーディング補正に関しては、前述の通り、生産工程にて取得したシェーディングデータを不揮発性メモリに保存し、市場にてそのシェーディングデータを白シェーディング補正に使用する構成である。
【0061】
白シェーディング補正は、下記の式(1)にて表される。式(1)のDshが、生産工程にて取得されたシェーディングデータである。
Dout=Din/Dsh×Col×(2n-1) ・・・(1)
Dout:出力データ
Din:入力データ
Dsh:シェーディングデータ
Col:補正係数
n:ビット数
【0062】
第1記憶手段113は、生産工程で取得したシェーディングデータ(濃度基準部材26を読み取ったデータ)を保持する不揮発性メモリである。
【0063】
第2記憶手段114は、シェーディングデータを取得した際の各光源(LED)251,252の調整値(LED点灯時間およびLED電流値)を保持する不揮発性メモリである。
【0064】
なお、
図5に示すように、第2読取部25は、各光源(LED)251,252の光量(LED点灯時間およびLED電流値)を個別に調整可能な光量調整手段である駆動回路(第1光源駆動回路258、第2光源駆動回路259)を備える。
【0065】
次に、各光源(LED)251,252の点灯制御について説明する。
【0066】
ここで、
図6は光源の点灯制御の一例を示すタイミングチャートである。
図6に示すように、駆動回路(第1光源駆動回路258、第2光源駆動回路259)は、ライン同期信号を3分割して、各光源(LED)251,252のR光源とG光源とB光源とを点灯させる。各光源(LED)251,252について、Highの期間が点灯時間である。なお、各光源(LED)251,252の点灯時間は、個別に調整可能である。
【0067】
ここで、
図7は点灯時間の変化に対する読取値の変化についての説明図である。
図7(a)は、光源(LED)251,252のR光源の点灯時間が同一の場合のRedの読取主走査分布を表している。なお、ここでは、濃度基準部材26に照射した場合を想定する。
【0068】
図7(a)に示すように、光源(LED)251のR光源の点灯による読取値と、光源(LED)252のR光源の点灯による読取値との合成が、最終的なRedの読取主走査分布となる。読取の出力レベルは光電変換素子(読取センサ)の光量の蓄積量で決まるため、点灯時間が延びると当然出力レベルは上がることになる。
【0069】
図7(b)は、
図7(a)に対して、光源(LED)251のR光源の点灯時間のみを延ばした時の読取主走査分布を表している。
図7(b)に示すように、光源(LED)251のR光源による出力レベルが上がり、最終的なRedの読取主走査分布は
図7(a)と比べて変化することになる。
図7(b)においては、光源(LED)251のR光源の点灯時間を延ばすと主走査位置の先頭側(
図7(b)の左側)の光量が増して、先頭側の出力レベルが上がる。
【0070】
一般的に、環境の変化や経時劣化により光源(LED)の光量は落ちるため、濃度基準部材を読み取った際の読取レベルを所定の目標値とするために(特定原稿でレベル飽和しないおよびS/Nを確保するために)、従来においては、LED駆動条件(LED点灯時間およびLED電流値)の再調整およびゲインの調整を行っている。
【0071】
例えば、特開2019-53216号公報においては、ラインイメージセンサ対向に一部存在する濃度基準部材を読み取ったデータと、同じものを工程出荷時に読み取ったデータとを比較し、読取モジュールのゲイン調整を行い主走査一律で出力レベルを調整し、ラインイメージセンサの出力を見かけ上、生産工程時の光量分布と等しくする技術が開示されている。
【0072】
しかし、従来技術のようにゲインを調整して主走査一律で出力レベルを調整するだけでは、今回想定しているような光源を2つ以上搭載した読取モジュールに対しては、生産工程でシェーディングデータを取得した際の、2つ以上の光源(LED1/LED2/・・・)の光量の主走査バランスを考慮していないことからシェーディングデータの主走査分布が生産工程時と崩れてしまう。このような場合、シェーディング補正後の画像が色味掛かってしまったり、画像に縦スジが発生してしまったりする恐れがある。その点について、以下において説明する。
【0073】
ここで、
図8は各光源(LED)の光量バランスを考慮しない場合のシェーディング後画像への影響について説明する図である。
図8(a)は、生産工程にてシェーディングデータを取得した際のLED各色が発光した際の読取データの主走査分布を示している。
図8(a)においては、主走査位置P_mが、生産工程での読取データのピーク主走査位置であるとする。
【0074】
図8(b)は、例えば出荷後、前述した通り、環境の変化や経時劣化により出力レベルが変動し、濃度基準部材を読み取った際の読取レベルが目標値を満たさず再調整が必要となった場合に、各光源(LED)の光量の主走査バランスを考慮せずに調整(ゲイン調整も含む)されたことを示している。
図8(b)においては、生産工程で取得したシェーディングデータと比較するために、生産工程と同じように読取モジュールに対向した濃度基準部材を読み取ったデータ(シェーディングデータと等価のデータ)を取得した場合を想定している。なお、シェーディング補正に使用されるシェーディングデータはあくまで生産工程にて取得されたデータを使用するため、出荷後には記憶手段に保存されているシェーディングデータを更新することはない。
【0075】
図8(b)においては、光源(LED)のR光源の読取値の主走査分布が、生産工程にてシェーディングデータを取得した際の分布(
図8(a))とずれている。これは、各光源(LED)それぞれの発光による、光電変換素子(読取センサ)の光量の蓄積時間のバランスが生産工程時と合っていないことによる。すなわち、
図8に示すように、各光源(LED)の光量による出力レベルの分布が合っていないことによる。
【0076】
図8(c)は、上述の光量分布の状態で、均一濃度原稿(例えば白紙原稿)を取得した場合のシェーディング後の読取値(生産工程にて取得されたシェーディングデータを用いて式(1)に基づいて計算したデータ)の主走査分布を示したものである。
図8(c)に示すように、各光源(LED)のR光源のシェーディングデータの主走査分布が生産工程の分布とずれてしまっていることにより、シェーディング補正後の画像が均一濃度原稿であるにも関わらず、一部赤み掛かってしまうことになる。
【0077】
本実施形態では、上記の問題を鑑みて、各光源(LED)251,252の駆動条件の再調整を行う際に、各光源(LED)251,252のバランスを考慮して調整を行う。具体的な方法を以下に説明する。なお以下では、各光源(LED)251,252のLED点灯時間の調整を行う例を示しているが、光電変換素子(読取センサ)の光量蓄積時間は光源(LED)251,252のLED点灯時間とLED電流値で決まるため、LED電流値を調整の対象パラメータとしても良い。また以下では、各光源(LED)251,252それぞれにつき、R光源、G光源、B光源が搭載されている場合について示すが、白色LEDに対しても同様に適応可能である。
【0078】
[生産工程での点灯時間を用いた調整]
ここで、
図9は生産工程でのシェーディングデータの取得処理の流れを概略的に示すフローチャートである。なお、現在(出荷後)の光源(LED)251の点灯時間を各R光源、G光源、B光源に対して、R1、G1、B1と表現する。また、現在(出荷後)の光源(LED)252の点灯時間を各R光源、G光源、B光源に対して、R2、G2、B2と表現する。
【0079】
図9に示すように、まず、本体制御部111のデータ処理手段112は、生産工程において、2つの光源(LED)251,252を点灯して第2読取部25により濃度基準部材26を読み取ったシェーディングデータを、AFE257を介して取得する(ステップS1)。
【0080】
次いで、データ処理手段112は、生産工程で取得したシェーディングデータを、第1記憶手段113に保存する(ステップS2)。
【0081】
次に、本体制御部111のデータ処理手段112は、生産工程にてシェーディングデータを取得した際の光源(LED)251の点灯時間を、それぞれ“_k”を付加してR1_k、G1_k、B1_kとするとともに、光源(LED)252の点灯時間を、それぞれ“_k”を付加してR2_k、G2_k、B2_kとし、これらを第2記憶手段114に保存する(ステップS3)。
【0082】
続いて、出荷後における光源(LED)の駆動条件の再調整について説明する。
【0083】
光源(LED)251,252の駆動条件の再調整を行う際には、本体制御部111のデータ処理手段112は、下記に示す式(2)に従い、光源(LED)251,252の各色の点灯時間の比を求める計算を行う。
r_R=R2_k/R1_k
r_G=G2_k/G1_k
r_B=B2_k/B1_k
・・・(2)
【0084】
ここで、r_Rは生産工程での光源(LED)251のR光源と光源(LED)252のR光源の点灯時間の比率、r_Gは生産工程での光源(LED)251のG光源と光源(LED)252のG光源の点灯時間の比率、r_Bは生産工程での光源(LED)251のB光源と光源(LED)252のB光源の点灯時間の比率を表す。
【0085】
図10は、シェーディングデータ取得時の各光源におけるR光源の点灯時間の比率の一例を示す図である。
図10に示す例では、生産工程にてシェーディングデータを取得した際のR光源の点灯時間がそれぞれ、R1_k=30[μs]、R2_k=40[μs]であった場合を示す。この場合、シェーディングデータ取得時の光源(LED)251のR光源の点灯時間と光源(LED)252のR光源の点灯時間との比率r_Rは、r_R≒1.33となる。
【0086】
次いで、本体制御部111のデータ処理手段112は、下記に示す式(3)に従い、調整後の各LEDの点灯時間R1’,G1’,B1’,R2’,G2’,B2’を設定する。
R1’=R1+C R2’=R1’×r_R
G1’=G1+C G2’=G1’×r_G
B1’=B1+C B2’=B1’×r_B
・・・(3)
【0087】
ここで、Cは所定の値である。“点灯時間”∝“読取センサの出力レベル”と考え、目標値と読取値との差分から一度に目標値に設定されるように計算されても良いし、目標値までに数回に分けて調整されるように設定されても良い。例えば、出力レベルの目標許容範囲を一度で超えないような点灯時間幅で調整する。
【0088】
図11は、調整前と調整後の点灯時間の一例を示す図である。
図11に示す例では、光量調整時に、調整初期値をR1=10[μs]、R2=13.3[μs](=R1×1.33)として、R光源をR1’=32[μs]とした場合(C=22[μs]とした場合)、R2’は、R2’=32×1.33≒42.6[μs]となる。G光源、B光源に関しても計算方法は同様である。
【0089】
図12は、各光源(LED)251,252の光量バランスを考慮した場合のシェーディング後画像を示す説明図である。
図12(a)は、
図8(a)と同様に、生産工程にてシェーディングデータを取得した際のLED各色が発光した際の読取データの主走査分布を示している。
図12(a)においては、主走査位置P_mが、生産工程での読取データのピーク主走査位置であるとする。
【0090】
図12(b)は、例えば出荷後、前述した通り、環境の変化や経時劣化により出力レベルが変動し、濃度基準部材を読み取った際の読取レベルが目標値を満たさず再調整が必要となった場合に、各光源(LED)の光量の主走査バランスを考慮して調整(ゲイン調整も含む)されたことを示している。
図12(b)においては、生産工程にてシェーディングデータを取得した際の各光源(LED)251,252の点灯時間の比率(r_R、r_G、r_B)を維持するように調整されるため、生産工程にてシェーディングデータを取得した際の主走査分布(
図12(a))から大きく崩れることはなくなる。
【0091】
図12(c)は、上述の光量分布の状態で、均一濃度原稿(例えば白紙原稿)を取得した場合のシェーディング後の読取値(生産工程にて取得されたシェーディングデータを用いて式(1)に基づいて計算したデータ)の主走査分布を示したものである。
図12(c)に示すように、各光源(LED)251,252のR光源のシェーディングデータの主走査分布が生産工程の分布から大きく崩れることはなくなることにより、シェーディング補正後の画像に色味が発生することが無くなるレベルまで影響を抑えることができる。
【0092】
このように本実施形態によれば、出荷時にシェーディングデータ取得した際の点灯時間の比率に合わせて光量調整することで、市場にてシェーディング後の読取画像に色味が生じたり、縦スジが発生したりすることを防止することができる。
【0093】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0094】
第2の実施の形態は、生産工程でのシェーディングデータのピーク値を用いた調整を行う点が、第1の実施の形態と異なる。以下、第2の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0095】
第1の実施の形態で説明した調整方法は、各光源(LED)251,252の経時劣化量が殆ど変わらない場合に適応可能であり、コストを抑えようと安価なLEDを採用した場合、
図13に示すように、各光源(LED)251,252の経時劣化量が等しくならなくなることも想定される。そのため、第1の実施の形態で説明した調整方法のように、生産工程にてシェーディングデータを取得した際の各色LEDの点灯時間の比率を維持するように点灯時間を調整しても主走査分布が崩れる可能性はある。
【0096】
そこで、本実施形態の本体制御部111のデータ処理手段112は、生産工程にてシェーディングデータを取得した際の光源(LED)251の点灯時間(R1_k、G1_k、B1_k)で、光源(LED)251のR光源、G光源、B光源をそれぞれ個別に点灯させた場合の濃度基準部材26の読取値の最大値であるピークP_R1_k,P_G1_k,P_B1_kを第2記憶手段114に保持する。
【0097】
同様に、本体制御部111のデータ処理手段112は、生産工程にてシェーディングデータを取得した際の光源(LED)252の点灯時間(R2_k、G2_k、B2_k)で、光源(LED)252のR光源、G光源、B光源をそれぞれ個別に点灯させた場合の濃度基準部材26の読取値のピークP_R2_k,P_G2_k,P_B2_kを第2記憶手段114に保持する。
【0098】
ここで、
図14は第2の実施の形態にかかる生産工程でのシェーディングデータのピーク値の一例を示す図である。
図14に示す例は、光源(LED)251のR光源のみを点灯した場合における濃度基準部材26の読取値のピークP_R1_kを示したものである。
【0099】
ここで、
図15は生産工程でのシェーディングデータの取得処理の流れを概略的に示すフローチャートである。
【0100】
図15に示すように、まず、本体制御部111のデータ処理手段112は、生産工程において、2つの光源(LED)251,252を点灯して第2読取部25により濃度基準部材26を読み取ったシェーディングデータを、AFE257を介して取得する(ステップS11)。
【0101】
次いで、データ処理手段112は、生産工程で取得したシェーディングデータを、第1記憶手段113に保存する(ステップS12)。
【0102】
本体制御部111のデータ処理手段112は、R1_kの点灯時間で光源(LED)251のR光源を点灯させたときのピーク値P_R1_kを取得する(ステップS13)。
【0103】
本体制御部111のデータ処理手段112は、G1_kの点灯時間で光源(LED)251のG光源を点灯させたときのピーク値P_G1_kを取得する(ステップS14)。
【0104】
本体制御部111のデータ処理手段112は、B1_kの点灯時間で光源(LED)251のB光源を点灯させたときのピーク値P_B1_kを取得する(ステップS15)。
【0105】
本体制御部111のデータ処理手段112は、R2_kの点灯時間で光源(LED)252のR光源を点灯させたときのピーク値P_R2_kを取得する(ステップS16)。
【0106】
本体制御部111のデータ処理手段112は、G2_kの点灯時間で光源(LED)252のG光源を点灯させたときのピーク値P_G2_kを取得する(ステップS17)。
【0107】
本体制御部111のデータ処理手段112は、B2_kの点灯時間で光源(LED)252のB光源を点灯させたときのピーク値P_B2_kを取得する(ステップS18)。
【0108】
次に、本体制御部111のデータ処理手段112は、ステップS13~S18で取得した、生産工程にてシェーディングデータを取得した際の2つの光源(LED)251,252のR光源、G光源、B光源をそれぞれ個別に点灯させた場合の濃度基準部材26の読取値のピーク値(P_R1_k,P_G1_k,P_B1_k,P_R2_k,P_G2_k,P_B2_k)を第2記憶手段114に保存する(ステップS19)。
【0109】
続いて、出荷後における光源(LED)の駆動条件の再調整について説明する。
【0110】
[生産工程でのシェーディングデータのピーク値を用いた調整]
ここで、
図16は光源(LED)のR光源における調整例を示す図である。
図16に示すように、光源(LED)251,252の駆動条件の再調整を行う際には、本体制御部111のデータ処理手段112は、R光源の場合、光源(LED)251のR光源のみを点灯させたときの濃度基準部材26の読取値のピークを生産工程時のP_R1_kに、光源(LED)252のR光源をのみ点灯させたときの濃度基準部材26の読取値のピークを生産工程時のP_R2_kに一致するように調整する。他の色(G、B)についても、同様に調整する。なお、この場合の調整は、LED点灯時間でもLED電流値のどちらを用いるものでもよい。
【0111】
このように本実施形態によれば、各光源(LED)251,252の劣化量に差異があった場合でも、結果的に生産工程にてシェーディングデータを取得した際の光量の主走査分布を維持することができるようになるので、市場にてシェーディング後の読取画像に色味が生じたり、縦スジが発生したりすることを防止することができる。
【0112】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態について説明する。
【0113】
第3の実施の形態は、生産工程でのシェーディングデータのピーク値の比率を用いた調整を行う点が、第1の実施の形態および第2の実施の形態と異なる。以下、第3の実施の形態の説明では、第1の実施の形態および第2の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態および第2の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0114】
図17に示すように、各光源(LED)251,252の劣化量によっては光量が大きく減少してしまい、各光源(LED)251,252のLED点灯時間やLED電流値を最大にしても生産工程時と同様の読取値にならない場合も想定される。なお、
図17は、Redの例のみ示している。
【0115】
そこで、本実施形態の本体制御部111のデータ処理手段112は、第2の実施の形態と同様に、生産工程にてシェーディングデータを取得した際の濃度基準部材26の読取値のピーク値(P_R1_k,P_G1_k,P_B1_k,P_R2_k,P_G2_k,P_B2_k)を第2記憶手段114に保持する。
【0116】
続いて、出荷後における光源(LED)の駆動条件の再調整について説明する。
【0117】
[生産工程でのシェーディングデータのピーク値の比率を用いた調整]
出荷後、光量の再調整を行う際には、以下のように濃度基準部材26を読み取った時のピーク値を用いて調整する。なお、以下においては、R光源のみの計算を示すが、G光源、B光源の計算方法も同様である。
【0118】
本体制御部111のデータ処理手段112は、第2記憶手段114に保持されているピーク値を用いて、下記の示す式(4)もしくは式(4)’の計算を行う。なお、以下で場合分けを行う理由は、いかなるピーク値の大小の組み合わせでも計算できるようにし、S/Nを可能な限り上げた状態に調整するためである。
・P_R1_k ≧ P_R2_kの場合
r_PR= P_R2_k/P_R1_k
・・・(4)
・P_R1_k < P_R2_Kの場合
r_PR= P_R1_k/P_R2_k
・・・(4)’
【0119】
ここで、
図18は第3の実施の形態にかかるシェーディングデータ取得時の各光源(LED)251,252におけるR光源の読取ピーク値の比率の一例を示す図である。
図18に示す例では、生産工程にてシェーディングデータを取得した際のR光源の読取ピーク値がそれぞれ、P_R1_k=200[digit]、P_R2_k=180[digit]であった場合を示す。この場合、シェーディングデータ取得時の光源(LED)251のR光源の読取ピーク値と光源(LED)252のR光源の読取ピーク値との比率r_PRは、r_PR≒0.90となる。
【0120】
また、本体制御部111のデータ処理手段112は、出荷後に調整値最大としたときの光源(LED)251のR光源によるピーク値をP_R1、調整値最大としたときの光源(LED)252のR光源によるピーク値をP_R2と表現すると、調整後のピーク値P_R1’、P_R2’を、下記の式(5)もしくは式(5)’を用いて算出する。
・P_R1_k ≧ P_R2_kの場合
P_R1’=P_R1
P_R2’=P_R1’×r_PR
・・・(5)
・P_R1_k < P_R2_kの場合
P_R2’=P_R2
P_R1’=P_R2’×r_PR
・・・(5)’
【0121】
図19は、調整前と調整後のピーク値の一例を示す図である。
図19に示す例では、光量調整時に、調整値最大としたときの各光源(LED)251,252のR光源によるピーク値がそれぞれP_R1=150[digit]、P_R2=140[digit]であったとすると、光量調整後には、P_R1’=150[digit]、P_R2’=150×0.9=135[digit]となるように調整される。
【0122】
このように本実施形態によれば、光源の劣化により点灯時間を最大にしても読取値が出荷時のピーク値に達しない場合でも、光量を現在の最大まで上げつつ(S/Nを可能な限り上げた状態で)、生産工程にてシェーディングデータを取得した際の光量の主走査分布を維持することが可能となる(絶対値は生産工程時と一致しないが、分布を維持することは可能)ので、市場にてシェーディング後の読取画像に色味が生じたり、縦スジが発生したりすることを防止することができる。
【0123】
(第4の実施の形態)
次に、第4の実施の形態について説明する。
【0124】
第4の実施の形態は、生産工程でのシェーディングデータの平均値を用いた調整を行う点が、第1の実施の形態ないし第3の実施の形態と異なる。以下、第4の実施の形態の説明では、第1の実施の形態ないし第3の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態ないし第3の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0125】
図20に示すように、経時劣化(環境やメカ的変動)や濃度基準部材26に異物が載ってしまっている場合、濃度基準部材26を読み取った際の読取値の主走査分布が相似形にならない場合も考えられる。
【0126】
第2の実施の形態で説明した調整方法は、生産工程にてシェーディングデータを取得した際の光源(LED)251,252のLED点灯時間で、光源(LED)251,252の各色光源のみを点灯させた場合の濃度基準部材26の読取値のピークを第2記憶手段114に保存した。しかしながら、経時劣化(環境やメカ的変動)や濃度基準部材26に異物が載ってしまっている場合、ピーク値で合わせても生産工程にてシェーディングデータを取得した際の光量の主走査分布とずれてしまうおそれがある。
【0127】
そこで、本実施形態の本体制御部111のデータ処理手段112は、ピークで値ではなく、所定箇所(例えば主走査両側1000画素を除いた中央領域)の平均値(光源(LED)251,252のR光源、G光源、B光源を点灯させたときの平均値)を第2記憶手段114に保存するようにした。なお、所定箇所の範囲は、任意に設定可能とする。
【0128】
ここで、
図21は第4の実施の形態にかかる生産工程でのシェーディングデータの取得処理の流れを概略的に示すフローチャートである。
【0129】
図21に示すように、まず、本体制御部111のデータ処理手段112は、生産工程において、2つの光源(LED)251,252を点灯して第2読取部25により濃度基準部材26を読み取ったシェーディングデータを、AFE257を介して取得する(ステップS21)。
【0130】
次いで、データ処理手段112は、生産工程で取得したシェーディングデータを、第1記憶手段113に保存する(ステップS22)。
【0131】
本体制御部111のデータ処理手段112は、R1_kの点灯時間で光源(LED)251のR光源を点灯させたときの所定箇所の平均値Ave_R1_kを取得する(ステップS23)。
【0132】
本体制御部111のデータ処理手段112は、G1_kの点灯時間で光源(LED)251のG光源を点灯させたときの所定箇所の平均値Ave_G1_kを取得する(ステップS24)。
【0133】
本体制御部111のデータ処理手段112は、B1_kの点灯時間で光源(LED)251のB光源を点灯させたときの所定箇所の平均値Ave_B1_kを取得する(ステップS25)。
【0134】
本体制御部111のデータ処理手段112は、R2_kの点灯時間で光源(LED)252のR光源を点灯させたときの所定箇所の平均値Ave_R2_kを取得する(ステップS26)。
【0135】
本体制御部111のデータ処理手段112は、G2_kの点灯時間で光源(LED)252のG光源を点灯させたときの所定箇所の平均値Ave_G2_kを取得する(ステップS27)。
【0136】
本体制御部111のデータ処理手段112は、B2_kの点灯時間で光源(LED)252のB光源を点灯させたときの所定箇所の平均値Ave_B2_kを取得する(ステップS28)。
【0137】
次に、本体制御部111のデータ処理手段112は、ステップS23~S28で取得した、生産工程にてシェーディングデータを取得した際の2つの光源(LED)251,252のR光源、G光源、B光源をそれぞれ個別に点灯させた場合の濃度基準部材26の読取値の所定箇所の平均値(Ave_R1_k,Ave_G1_k,Ave_B1_k,Ave_R2_k,Ave_G2_k,Ave_B2_k)を第2記憶手段114に保存する(ステップS29)。
【0138】
続いて、出荷後における光源(LED)の駆動条件の再調整について説明する。
【0139】
[生産工程でのシェーディングデータの平均値を用いた調整]
ここで、
図22は、光源(LED)のR光源における調整例を示す図である。
図22に示すように、光源(LED)251,252の駆動条件の再調整を行う際には、本体制御部111のデータ処理手段112は、同じ主走査範囲の平均値Ave_R1を取得し、Ave_R_1k=Ave_R1となるように調整する。他の色(G、B)についても、同様に調整する。
【0140】
このように本実施形態によれば、経時劣化や濃度基準部材に異物が載っている影響で主走査分布が相似形でなくなった場合でも、生産工程にてシェーディングデータを取得した際の光量の主走査分布を維持することができるようになるので、市場にてシェーディング後の読取画像に色味が生じたり、縦スジが発生したりすることを防止することができる。
【0141】
なお、上記各実施の形態では、本発明の画像形成装置を、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する複合機に適用した例を挙げて説明するが、複写機、プリンタ、スキャナ装置、ファクシミリ装置等の画像形成装置であればいずれにも適用することができる。
【符号の説明】
【0142】
26 濃度基準部材
112 データ処理手段、画像処理装置
113 第1記憶手段、画像処理装置
114 第2記憶手段、画像処理装置
200 画像形成装置
202 読取装置
220 画像形成部
251,252 光源
255 レンズ
256 画素回路
258,259 光量調整手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0143】