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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】粒子の連結態様の評価方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20240827BHJP
   G01N 23/046 20180101ALI20240827BHJP
   G01N 23/203 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
G06T7/00 600
G01N23/046
G01N23/203
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020173416
(22)【出願日】2020-10-14
(65)【公開番号】P2021157763
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-06-19
(31)【優先権主張番号】P 2020056946
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】岡田 治朗
【審査官】▲広▼島 明芳
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-116903(JP,A)
【文献】特開2014-168763(JP,A)
【文献】国際公開第2010/084675(WO,A1)
【文献】特開2006-038784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00 - 7/90
G01N 23/046
G01N 23/203
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子の連結態様を評価する方法であって、
粒子同士が連結して成る連結粒子を含有する固化物の観察像を二値化した二値化像を得る二値化工程と、
二値化像において、粒子像以外の部分により、粒子像の外縁を所定の画素数分浸食する浸食工程と、
前記浸食工程後の各二値化像において粒子像以外の部分により包囲されたクラスターを一つのクラスターと認定するクラスタリング工程と、
前記クラスタリング工程により認定されたクラスターの体積から、固化物内の粒子同士の連結態様を評価する評価工程と、を有する、粒子の連結態様の評価方法。
【請求項2】
前記浸食工程における所定の画素数を決定すべく、
前記二値化工程により得られる各二値化像に対し、粒子像以外の部分により、粒子像の外縁を画素数n(nは自然数)分浸食する事前浸食工程と、
前記事前浸食工程後の各二値化像において粒子像以外の部分により包囲されたクラスターを一つのクラスターと認定する事前クラスタリング工程と、を一組とし、nに所定値k(kは自然数)を足したうえでこの一組の工程を繰り返し行うことにより得られるクラスターの体積と浸食画素数との関係に基づき、所定の画素数を決定する浸食画素数決定工程を、前記浸食工程の前に行う、請求項1に記載の粒子の連結態様の評価方法。
【請求項3】
nとkは1である、請求項2に記載の粒子の連結態様の評価方法。
【請求項4】
前記浸食画素数決定工程におけるクラスターの体積と浸食画素数との関係は、(最大のクラスター体積)/(全てのクラスターの体積)または(任意の数のクラスターの体積平均値)/(全てのクラスターの体積)またはその両方で表される連結度と浸食画素数との関係であり、
前記浸食画素数決定工程においては、該関係において浸食画素数の増加に伴って連結度が最も減少したときの浸食画素数を、前記浸食工程において浸食させる際の所定の画素数とする、請求項2または3に記載の粒子の連結態様の評価方法。
【請求項5】
前記評価工程においては、(最大のクラスター体積)/(全てのクラスターの体積)または(任意の数のクラスターの体積平均値)/(全てのクラスターの体積)またはその両方で表される連結度と、固化物内の粒子の量との関係から、固化物内の粒子同士の連結態様を評価する、請求項1~4のいずれかに記載の粒子の連結態様の評価方法。
【請求項6】
固化物の観察像は、固化物に対する集束イオンビーム加工観察装置(FIB)を用いた断面加工および走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた像観察で得られる2次元観察像を深さ方向ごとに取得することにより得られる3次元観察像、または、固化物に対する透過型電子顕微鏡(TEM)のトモグラフィー法により得られる3次元観察像である、請求項1~5のいずれかに記載の粒子の連結態様の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子の連結態様の評価方法に属する。
【背景技術】
【0002】
粒子の連結態様の評価方法として、例えば、特許文献1に記載のように、走査型電子顕微鏡(SEM)による写真の画像処理が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-7633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
SEM写真の画像解析においては、連結態様を規定するパラメータを設定し、画像を詳細に解析することが必要である。
【0005】
本発明の課題は、粒子の連結態様をより正確に評価する手法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、
粒子の連結態様を評価する方法であって、
粒子同士が連結して成る連結粒子を含有する固化物の観察像を二値化した二値化像を得る二値化工程と、
二値化像において、粒子像以外の部分により、粒子像の外縁を所定の画素数分浸食する浸食工程と、
前記浸食工程後の各二値化像において粒子像以外の部分により包囲されたクラスターを一つのクラスターと認定するクラスタリング工程と、
前記クラスタリング工程により認定されたクラスターの体積から、固化物内の粒子同士の連結態様を評価する評価工程と、を有する、粒子の連結態様の評価方法である。
【0007】
本発明の第2の態様は、
前記浸食工程における所定の画素数を決定すべく、
前記二値化工程により得られる各二値化像に対し、粒子像以外の部分により、粒子像の外縁を画素数n(nは自然数)分浸食する事前浸食工程と、
前記事前浸食工程後の各二値化像において粒子像以外の部分により包囲されたクラスターを一つのクラスターと認定する事前クラスタリング工程と、を一組とし、nに所定値k(kは自然数)を足したうえでこの一組の工程を繰り返し行うことにより得られるクラスターの体積と浸食画素数との関係に基づき、所定の画素数を決定する浸食画素数決定工程を、前記浸食工程の前に行う、第1の態様に記載の粒子の連結態様の評価方法である。
【0008】
本発明の第3の態様は、
nとkは1である、第2の態様に記載の粒子の連結態様の評価方法である。
【0009】
本発明の第4の態様は、
前記浸食画素数決定工程におけるクラスターの体積と浸食画素数との関係は、(最大のクラスター体積)/(全てのクラスターの体積)または(任意の数のクラスターの体積平均値)/(全てのクラスターの体積)またはその両方で表される連結度と浸食画素数との関係であり、
前記浸食画素数決定工程においては、該関係において浸食画素数の増加に伴って連結度が最も減少したときの浸食画素数を、前記浸食工程において浸食させる際の所定の画素数とする、第2または第3の態様に記載の粒子の連結態様の評価方法である。
【0010】
本発明の第5の態様は、
前記評価工程においては、(最大のクラスター体積)/(全てのクラスターの体積)または(任意の数のクラスターの体積平均値)/(全てのクラスターの体積)またはその両方で表される連結度と、固化物内の粒子の量との関係から、固化物内の粒子同士の連結態様を評価する、第1~第4のいずれかの態様に記載の粒子の連結態様の評価方法である。
【0011】
本発明の第6の態様は、
固化物の観察像は、固化物に対する集束イオンビーム加工観察装置(FIB)を用いた断面加工および走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた像観察で得られる2次元観察像を深さ方向ごとに取得することにより得られる3次元観察像、または、固化物に対する透過型電子顕微鏡(TEM)のトモグラフィー法により得られる3次元観察像である、第1~第5の態様のいずれか記載の粒子の連結態様の評価方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、粒子の連結態様をより正確に評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、二値化工程の一例を示す模式図である。
図2図2は、浸食工程の一例であって、粒子同士が分離した状態の場合(左)、連結面積が小さい場合(真ん中)、連結面積が大きい場合(右)を示す模式図(イメージ)である。
図3図3は、浸食工程の一例であって、粒子同士が分離した状態の場合(左)、連結面積が小さい場合(真ん中)、連結面積が大きい場合(右)を示す模式図である。
図4図4は、クラスタリング工程の一例を示す模式図である。
図5図5は、3次元構築像の一例である。
図6図6は、二値化工程後の3次元構築像の一例である。
図7図7は、クラスタリング工程(または最初の事前クラスタリング工程)後の3次元構築像の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施形態について説明する。「~」は所定数値以上且つ所定数値以下を指す。
【0015】
本実施形態は、粒子同士の連結態様を評価する方法に係る。本実施形態では、粒子同士が連結して成る連結粒子を含有する固化物が形成される場合を例示する。
【0016】
粒子は一種の組成からなるものであってもよいし、複数種類の組成からなるものであってもよい。
【0017】
[観察像の取得]
まず、解析に用いる観察像を取得する。観察は、目的とする導電粒子のサイズや予想される接触面積を鑑み、適切な空間分解能を有する評価装置・観察条件を選択して実施する。
【0018】
粒子の平均粒子径(例えばレーザ回折式粒度分布測定装置で算出)は、例えば数nm~数100nmであってもよい。粒子同士が連結して成る連結粒子の平均粒子径は、例えば数100nm~数100μmであってもよい。
【0019】
観察は、対象となる固化物(「試料」とも言う。)のサイズや予想されるプローブとの接触面積を鑑み、適切な空間分解能を有する評価装置・観察条件を選択して実施する。例えば、数10nm~数100μmの粒子に対しては走査型電子顕微鏡(以下SEMと略す)、数nm~数100nmの粒子に対しては透過型電子顕微鏡(以下TEMと略す)などを用いた像観察が可能である。なお、走査透過型電子顕微鏡(STEM)は両タイプに属するものとする。
【0020】
観察像は2次元観察像の他に3次元観察像を用いることができる。粒子間の連結部(具体的には連結ネットワーク)は3次元的に形成されることから、材料物性をより詳細に理解するうえでは3次元観察像を用いて観察することが望ましい。
【0021】
3次元観察像は、SEMの場合は、集束イオンビーム加工観察装置(FIB)が付属したSEM装置にて、一定の加工幅での断面加工とSEM観察を繰り返すことにより得た(すなわち深さ方向ごとに得た)2次元観察像のセットから、画像解析ソフトを用いて3次元構築像を得ることができる。
【0022】
また、TEMトモグラフィー法により、傾斜角度を変えて撮影した2次元観察像を3次元構築することで3次元観察像を得ることも可能である。
【0023】
前処理後の試料として、SEMの場合は、FIBあるいはクロスセクションポリッシャー、研磨などによって断面加工した試料を用いてもよい。TEMの場合は、分散法、転写法やFIB加工などによって作製した試料を用いてもよい。
【0024】
観察対象となる粒子のサイズ等に応じて画像取得条件を適時変更してもよい。例えば、SEM観察においては一般に以下のような考え方で各測定パラメータの変更を加えてもよい。
【0025】
<加速電圧>
加速電圧が高いほど、試料の最表面から深い部分の情報が観察像に混在する。つまり、観察像が2次元画像であるにもかかわらず、奥行き方向の情報(断面に埋もれている粒子の情報など)も観察像に混在してしまう。そのため、必要な空間分解能が担保できる範囲内でなるべく低加速電圧の条件を用いるのが好ましい。
【0026】
<電流>
一般に、低い電流値(小さなアパーチャーサイズ)の方が、空間分解能が高くなる。その一方、輝度が下がり、信号量が低下してノイズが多くなり画質が劣化する。そのため、空間分解能と画質のバランスがとれる条件を選択するのが好ましい。
【0027】
<作動距離>
SEM観察において作動距離が短くなるとレンズの収差が小さくなり、解像度が高くなる。特に、低加速電圧条件での観察時は作動距離を短くする方が、空間分解能が高くなり、好ましい。
【0028】
<観察像における倍率、画素数>
倍率は高いほど空間分解能が高くなるが一方で、観察できる範囲・粒子数は減るので、観察に必要とされる粒子のn数と空間分解能を鑑み、バランスの取れる条件を選択する。
【0029】
画素数は多いほど画像の解像度が高くなるが、一方で画像取得時間が長くなるなどの背反もあるので、必要とする画像解像度に応じて適切な値を選択する。
【0030】
1画素(以後2次元の場合はPixel(ピクセル)、3次元の場合はVoxel(ボクセル)と表記する)のサイズは後程画像解析する際の各種処理の最小単位となる。画像解析において、どの程度の分解能での処理が必要かを念頭に置いて、倍率および画素数(ひいては1画素がどの程度の実空間での寸法を有するか)を決定する。
【0031】
<1掃引あたりのビーム滞留時間(Dwell Time)>
滞留時間は長いほど、信号量が多くなりノイズが減って画質が良くなるが一方で観察時間が長くなる背反があるので、必要な範囲で適切な条件を選択する。
【0032】
<検出器>
試料への電子線入射によって発生する電子には大きく分けて二次電子(非弾性散乱電子)と反射電子(弾性散乱電子)が存在する。SEMでは一般に様々な検出器・検出条件を調整することで、観察像における二次電子と反射電子の信号割合を調整して、目的とする観察像を得ている。画像解析を実施する場合、多くの場合は組成によるコントラストによって物質を切り分ける。また、画像解析においては試料の断面加工時などに生じる試料の凹凸由来のコントラストは障害となるので、エッジ効果によって凹凸由来のコントラストが強く出る二次電子像は望ましくない。したがって、画像解析を実施する際の観察像は反射電子から構成される反射電子像であることが望ましい。
【0033】
なお、TEMの場合は高加速電圧であるほど空間分解能が増加するが、試料によっては電子線照射によってダメージが入ることがあるので、そのような試料を扱う場合、加速電圧や電流値を小さくするなどの変更を加えてもよい。
【0034】
[画像解析]
<3次元構築>
上記[観察像の取得]にて述べた手法にて3次元像を構築してもよい。一般に、3次元構築像の軸は、2次元観察像の水平方向をX軸、垂直方向をY軸、そして、SEMを採用する場合はFIB断面加工方向をZ軸として規定する。
【0035】
2次元観察像は観察時のステージドリフトなどの影響を受けて、X、Y位置がわずかにずれている場合が多いので、重ねあわせる際は隣り合う画像間で最小二乗フィッティングを実施して、X、Y位置合わせを実施してもよい。
【0036】
また、TEMの場合は、トモグラフィー法により3次元像を構築してもよい。具体的には、傾斜角度を変えて撮影した2次元観察像を得ておく。その際、Auナノパウダーなどを事前に試料に添加しておく。そして、試料内にマーキングの位置情報を仕込む。この試料内の位置情報元に、SEMと同じく最小二乗フィッティングによって位置合わせを実施して3次元像を構築してもよい。
【0037】
<画素サイズ等価化工程>
後述の二値化工程の前に、試料の観察像に対し、観察像を得るために使用された電子顕微鏡の電子線の、固化物に対する入射角を加味してX軸、Y軸またはX軸、Y軸、Z軸の画素サイズを等価にする画素サイズ等価化工程を行ってもよい。
【0038】
<ノイズ除去工程>
画素サイズが等価化された観察像(以降、「画像」とも称する。)に含まれるノイズは後の二値化処理において、障害となることがある。そのため、必要に応じてノイズ除去工程を行ってもよい。ノイズ除去工程の具体的な手法としては、一般的な画像処理技術において採用される公知のノイズ除去技術を採用しても構わない。
【0039】
<二値化工程>
図1は、二値化工程の一例を示す模式図である。
【0040】
本実施形態では、解析対象とする物質は金属化合物粒子を含有する固形物である。
【0041】
本工程においては、サイズ等価化工程後の試料の観察像を二値化した二値化像を得る。具体的には、二値化処理により解析対象とする物質とそれ以外の物質を切り分ける。
【0042】
二値化処理とは、例えば、モノクロ画像の各画素に対して白黒の強弱(Glay Scale)の値の範囲を設定して、物質を切り分ける処理である。
【0043】
二値化処理の代わりに三値化処理、四値化処理等を行っても構わない。三値化処理の場合、導電粒子と認識した領域、ガラスからなる絶縁体領域、同じくガラスからなるが半導体領域にて物質を切り分ける処理を行ってもよい。その場合であっても、三値化処理後の画像に対し、解析対象とする物質すなわち導電粒子と認識した領域と、それ以外の領域との二種類に分け、後の工程を行うのがよい。最初から二値化処理を行うことも、三値化処理等を行った後にこのように領域を二種類に分けることも、本発明の二値化工程に含まれる。
【0044】
<浸食工程>
図2は、浸食工程の一例であって、粒子同士が分離した状態の場合(左)、連結面積が小さい場合(真ん中)、連結面積が大きい場合(右)を示す模式図(イメージ)である。図2は、二値化後であっても状況を分かりやすくするために三値で表現しているイメージ図である。
図3は、浸食工程の一例であって、粒子同士が分離した状態の場合(左)、連結面積が小さい場合(真ん中)、連結面積が大きい場合(右)を示す模式図である。
【0045】
本工程においては、各二値化像において、粒子像以外の部分により、粒子像の外縁を、所定の画素数分浸食する。この「浸食」とは、粒子像を島、それ以外の部分の像を海としたときの海島構造における海の部分の画素の膨張処理である。言い方を変えると、粒子像である島の部分の画素の縮小処理である。
【0046】
本工程により、実際は連結していないまたは連結しているにしても連結面積が極めて小さく本来は連結しているとは言い難い粒子が、評価対象となる連結粒子から一気に除外される。この設定により、中途半端な連結粒子を排除でき、確かな連結粒子のみを評価対象に設定できる。
【0047】
なお、上記所定の画素数の決定方法は、一連の作業内容を説明した後に言及する。
【0048】
本工程の具体的な手法としては、二値化画像の平滑化および/または孤立点の除去(穴埋め)を意図する処理であるところの公知のモフォロジー処理を一部利用して、本工程を実現可能である。
【0049】
<クラスタリング工程>
図4は、クラスタリング工程の一例を示す模式図である。
【0050】
本工程においては、浸食工程後の各二値化像において粒子像以外の部分により包囲されたクラスターを一つのクラスターと認定する。クラスタリング工程の具体的な手法には限定は無く、例えば図4に示すように、画素同士が接していない部分で囲まれたものを一つのクラスター(一つの連結粒子または一つの粒子)とするクラスタリングを行う。また、各クラスターをナンバリングにより後々で区別可能としてもよい。
【0051】
<評価工程>
本工程においては、クラスタリング工程により認定されたクラスターの体積から、固化物内の粒子同士の連結態様を評価する。
【0052】
本工程では連結度を算出してもよい。具体的に言うと、評価工程では、連結度として、(最大のクラスター体積)/(全てのクラスターの体積)または(任意の数のクラスターの体積平均値)/(全てのクラスターの体積)の値を算出するのが好ましい。もちろん、この両方の値を算出してもよい。以降、この連結度は百分率(%)で記載する(×100の記載は省略する)。
【0053】
(最大のクラスター体積)/(全てのクラスターの体積)は以下のように算出するのが好ましい。浸食工程後の二値化像に対してクラスタリング工程を実施することにより認定されたクラスターのうち最大の体積を有するものを選択し、その最大クラスターのボクセルサイズの値を得る。そして、全ての粒子の体積をボクセルサイズの値として得る。なお、ボクセルサイズの代わりに、3次元観察像の基となった各2次元観察像に対して最大連結粒子のピクセルサイズの値を得、その値を合算してもよい。そのため、本明細書における連結体積は連結面積と言い換え可能である。
【0054】
(任意の数のクラスターの体積平均値)/(全てのクラスターの体積)における任意の数の粒子の体積平均値は、以下のように測定するのが好ましい。浸食工程後の二値化像に対してクラスタリング工程を実施することにより認定された連結粒子のうち、例えば体積が大きい順に上位25個の連結粒子のボクセルサイズの平均値を得る。なお、ボクセルサイズの代わりに、3次元観察像における体積上位25個の連結粒子の各2次元観察像に対して該連結粒子のピクセルサイズの値を得、その値の平均値を得てもよい。
【0055】
なお、上記クラスターに係る実空間での寸法の値は、上記[観察像の取得]<観察像における倍率、画素数>で述べた「1画素がどの程度の実空間での寸法を有するか」の情報から得られる。それに伴い、(最大のクラスター体積)(任意の数のクラスターの体積平均値)(全てのクラスターの体積)としては、ピクセルやボクセル以外にも、実空間での寸法(例えばnm)を使用してもよい。上記連結度は、ピクセルやボクセルを使用して算出されたものも含むし、実空間での寸法を使用して算出されたものも含む。
【0056】
評価工程においては、上記連結度と、粒子の量から、固化物内の粒子同士の連結態様を評価するのが好ましい。
【0057】
本明細書では粒子の量として固形物の体積に対する粒子の体積分率(vol%、体積%)を使用しているが、本発明はこれに限定されず、質量%等を採用しても構わない。これらを含めて「固形物内の粒子の量」と称する。
【0058】
なお、本発明の技術的範囲は本実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0059】
例えば、浸食工程における所定の画素数を決定すべく、所定の画素数を決定する浸食画素数決定工程を、浸食工程の前に行うのが好ましい。
【0060】
浸食画素数決定工程は以下の構成を有する。「二値化工程により得られる各二値化像に対し、粒子像以外の部分により、粒子像の外縁を画素数n(nは自然数)分浸食する事前浸食工程と、
前記事前浸食工程後の各二値化像において粒子像以外の部分により包囲されたクラスターを一つのクラスターと認定する事前クラスタリング工程と、を一組とし、nに所定値k(kは自然数)を足したうえでこの一組の工程を繰り返し行うことにより得られるクラスターの体積と浸食画素数との関係に基づき、所定の画素数を決定する。」
【0061】
該一組の工程は、最適な浸食画素数を探索するために繰り返される。事前浸食工程にて浸食画素数を変化させ、その都度、事前クラスタリング工程を行い、連結度を算出し、これをプロット化する。このプロットが、上記「連結度と浸食画素数との関係」の一例である。
【0062】
そして、このプロットにおいて、浸食画素数の増加に伴って連結度が最も減少したときの浸食画素数を、上記浸食工程において浸食させる際の「所定の画素数」としてもよい。
【0063】
その理由は、以下の通りである。浸食画素数の増加に伴って連結度が最も減少したときの浸食画素数は、実際は連結していないまたは連結しているにしても連結面積が極めて小さく本来は連結しているとは言い難い粒子が、評価対象となる連結粒子から一気に除外されるために必要な画素数を意味する。つまり、このときの浸食画素数を採用することにより、中途半端な連結粒子を排除でき、確かな連結粒子のみを評価対象に設定できる。
【0064】
「浸食画素数の増加に伴って連結度が最も減少したときの浸食画素数」の探索の手法には限定は無い。例えば、予めnの上限を決めておき、上記一組の工程にて得られた連結度のうち最も減少したときの浸食画素数を所定の画素数に決定してもよいし、同じく予めnの上限を決めておき、連結度の減少の閾値を決めておいて該閾値を超えたときの最小の浸食画素数を所定の画素数に決定してもよい。この閾値としては、例えば、連結度が(最大のクラスター体積)/(全てのクラスターの体積)の場合、(最大のクラスター体積)/(全てのクラスターの体積)が50%以上減少する場合が挙げられる。連結度が(体積が大きい順から上位25個のクラスターの体積平均値)/(全てのクラスターの体積)の場合、(体積が大きい順から上位25個のクラスターの体積平均値)/(全てのクラスターの体積)が1%以上減少する場合が挙げられる。
【0065】
なお、「所定の画素数」は、粒子の種類、観察の際の倍率等により変動するため、2ピクセルには限定されない。但し、過度に高い値を設定すると、確かな連結粒子も評価対象から除外されるため好ましくない。具体的な数値で言うと、1~5ピクセル(またはボクセル)であるのが好ましい。
【0066】
浸食画素数nはピクセル単位でもよいし、ボクセル単位でもよい。ピクセル単位の場合、3次元観察像の基となった各2次元観察像に対して浸食画素数nピクセル分、浸食処理を行う。その後、各2次元観察像における連結粒子のピクセルサイズを合算することにより、連結粒子の体積が求まる。本明細書では浸食画素数の単位がピクセルの場合を主に例示する。
【0067】
なお、nとkの値には限定は無い。例えば、連結面積が極めて小さいわけではないものの通常の連結面積に比べて小さいものを評価対象から除外することが分かっている場合はnを大きい値に設定し、そこから所定の画素数の探索を開始してもよい。また、kを1に設定して1ピクセルごとに連結度を得ていくのが正確ではあるが時間を要する。時間の短縮のためにkを2以上の値に設定してもよい。但し、正確に最適な浸食画素数を得るためには、nとkとを1に設定するのが好ましい。
【0068】
事前浸食工程の具体的な作業内容は上記浸食工程と同様とすればよい。また、事前クラスタリング工程の具体的な作業内容は上記クラスタリング工程と同様とすればよい。
【0069】
その一方、本実施形態は、粒子同士の連結態様を評価する方法に係る。
【0070】
上記各工程における画像処理は公知のソフトウェアを使用することにより実現可能である。その一例がAVIZO(日本エフイー・アイ株式会社製の画像解析ソフト)である。但し、本発明はこのソフトウェアを使用する場合に限定されず、例えば上記[画像解析]に係る各工程を複数の別のソフトウェアに担当させてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7