(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】リキッドインキ組成物、及び該リキッドインキ組成物を用いた印刷物並びに積層体
(51)【国際特許分類】
C09D 11/02 20140101AFI20240827BHJP
【FI】
C09D11/02
(21)【出願番号】P 2020209104
(22)【出願日】2020-12-17
【審査請求日】2023-08-08
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】浅見 朋美
(72)【発明者】
【氏名】片山 悠
(72)【発明者】
【氏名】清水 健太
(72)【発明者】
【氏名】茂呂居 直
【審査官】井上 莉子
(56)【参考文献】
【文献】特許第6631964(JP,B2)
【文献】特許第6090521(JP,B2)
【文献】特開2014-062138(JP,A)
【文献】特開2016-125008(JP,A)
【文献】特開2020-002185(JP,A)
【文献】特開2019-099761(JP,A)
【文献】特開2018-127545(JP,A)
【文献】特開2009-249388(JP,A)
【文献】特開2005-113133(JP,A)
【文献】特開2010-248466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン樹脂(A)とポリビニルブチラール樹脂(B)と有機溶剤(E)を含有し、
前記ポリウレタン樹脂(A)がポリエステルポリオール(A-1)及びポリエーテルポリオール(A-2)を反応原料とし、前記ポリエステルポリオール(A-1)及びポリエーテルポリオール(A-2)の総質量においてポリエステルポリオール(A-1)の質量割合が多く、
塩化ビニル共重合樹脂を含有せず、
前記有機溶剤がケトン系溶剤を含有しないことを特徴とするリキッドインキ組成物。
但し、前記ポリウレタン樹脂(A)は、反応原料として分子内に水酸基を1つ有するヒドロキシルジアルキルアミン化合物を用いたものを除く。
また、前記ポリウレタン樹脂(A)として、酸価15~70mgKOH/g、かつ、水酸基価1~35mgKOH/gであるポリウレタン樹脂を除く。
【請求項2】
前記ポリエーテルポリオール(A-2)はポリエチレングリコール及び/又はポリプロピレングリコールである、請求項1に記載のリキッドインキ組成物。
【請求項3】
前記ポリエステルポリオール(A-1)が数平均分子量500~8000である請求項1又は2に記載のリキッドインキ組成物。
【請求項4】
前記ポリエーテルポリオール(A-2)が数平均分子量100~3500である請求項1~3の何れか一項に記載のリキッドインキ組成物。
【請求項5】
前記ポリエステルポリオール(A-1)及びポリエーテルポリオール(A-2)の質量割合が、55:45~99:1の範囲である、請求項1~4の何れか一項に記載のリキッドインキ組成物。
【請求項6】
前記ポリビニルブチラール樹脂(B)が、数平均分子量5000~60000であり、ガラス転移点が50~120℃であり、水酸基量が10~30質量%の範囲にある請求項1~5のいずれか一項に記載のリキッドインキ組成物。
【請求項7】
前記ポリビニルブチラール樹脂(B)を、リキッドインキ組成物100質量%に対して0.1~5.0質量%含有する、請求項1~6の何れか一項に記載のリキッドインキ組成物。
【請求項8】
更に、マレイン酸樹脂、繊維素系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂から選ばれる少なくとも1つ以上の樹脂を含有する請求項1~7のいずれか一項に記載のリキッドインキ組成物。
【請求項9】
更に、着色剤(D)を含有する請求項1~8のいずれか一項に記載のリキッドインキ組成物。
【請求項10】
請求項1~
9の何れか1項に記載のリキッドインキ組成物を印刷してなる印刷物。
【請求項11】
請求項1~
9の何れか一つに記載のリキッドインキ組成物を印刷してなる印刷層を有するラミネート積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟包装用ラミネートグラビアインキやフレキソインキとして使用可能なリキッドインキ組成物、及び該リキッドインキ組成物を用いた印刷物並びに積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
グラビアインキ、フレキソインキは、被印刷体に美粧性、機能性を付与させる目的で広く用いられている。グラビア、フレキソ印刷された被印刷体が、包装材料の中でも特に食品包材として用いられる場合、ラミネート加工が施されるのが一般的である。この場合、内容物の種類や使用目的に応じて様々な被印刷体やラミネート加工が利用される。
【0003】
従来、この様なラミネート加工物には、ポリウレタン樹脂及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂(以下、「PVC」という)をバインダーとした印刷インキが広く用いられてきた。これらの樹脂は、優れた分散性と高い皮膜物性を両立しうるバインダーの組み合わせであり、良好な印刷適性と、ラミネート用インキに求められる基材への接着性、ラミネート強度及びボイルレトルト性等の諸物性を達成するために必要不可欠なインキ原料である。
【0004】
近年では、印刷時の作業衛生性と包装材料の有害性の両面から、トルエン等の芳香族溶剤やメチルエチルケトン等のケトン系溶剤の使用が制限されつつある。例えば、特許文献1には、ポリプロピレングリコール含有ポリウレタン樹脂及び水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂を必須成分として含有する軟包装用ノントルラミネートインキ組成物が記載されている。
【0005】
更に、特に食品包材を取り巻く法規制は世界的に厳しくなってきており、近年パッケージに使用される成分及びその食品へのマイグレーションの規制等の厳格化が進みつつある。また、近年脱プラスチックの動きも加速しており、パッケージのリサイクル性の需要が高まっている。パッケージ用等のインキ製品開発においては、今後、人体および環境への安全性が担保された材料を用いてインキ及びパッケージ構成材料を設計する必要がある。
【0006】
このような動向の中、PVCが以下の課題を有することから、パッケージのリサイクルを阻害する物質として懸念されている。第一として、ケミカルリサイクルに係る課題である。一般廃棄物として排出されるプラスチックごみには様々なプラスチック類が含まれポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン等の塩素系樹脂も含まれる。これらの塩素系樹脂はリサイクルの熱分解工程で塩化水素が脱離し塩酸が発生することにより、機器や配管の腐食原因となる。第二として、サーマルリサイクルに係る課題である。廃棄物を焼却した際に生じるエネルギーを再利用する手法において、焼却する際に塩素系樹脂を含んでいるとダイオキシン等の環境ホルモンが排出されることが問題となる。そのため、PVCを始めとする塩素系材料を使用せずに、ラミネート用インキに求められる諸物性を有するインキの開発が望まれている。
【0007】
一方で、近年の包装基材の多様化に伴い、装飾あるいは表面保護の為に用いられる印刷インキは、高度な性能と各種フィルムに対する適応性が要求されるようになっている。従って、分散性、流動性、印刷適性等のインキとしての基本的な特性に加えて、各種基材への密着性、ラミネート強度、及びレトルト適性の向上を兼備しつつ、バインダーとして塩素系樹脂フリーを実現することによる環境対応力の向上を実現することは決して容易でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、分散性、流動性、印刷適性等のインキとしての基本的な特性に加えて、基材に対する優れた密着性、ラミネート強度、及び耐レトルト性を兼備しつつ、塩素系樹脂を含有しない環境対応型のリキッドインキ組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記した課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、リキッドインキ組成物において、特定のポリウレタン樹脂と、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)を組み合わせることが課題解決に有効であることを見出した。
【0011】
即ち、本発明は、ポリウレタン樹脂(A)とポリビニルブチラール樹脂(B)を含有し、ポリウレタン樹脂(A)がポリエステルポリオール(A-1)及びポリエーテルポリオール(A-2)を反応原料とし、ポリエステルポリオール(A-1)及びポリエーテルポリオール(A-2)の総質量においてポリエステルポリオール(A-1)の質量割合が多いリキッドインキ組成物に関する。
【0012】
更に、本発明は、該リキッドインキ組成物を印刷してなる印刷物に関する。
【0013】
更に、本発明は、該リキッドインキ組成物を印刷してなる印刷層を有するラミネート積層体に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、分散性、流動性、印刷適性等のインキとしての基本的な特性に加えて、基材に対する優れた密着性、ラミネート強度、及び耐レトルト性を兼備しつつ、塩素系樹脂を含有しない環境対応型のリキッドインキ組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明について詳細に説明する。
(言葉の定義)
本発明においてリキッドインキ組成物とは、グラビアインキまたはフレキソインキ等の、印刷版を使用する印刷方法に適用されるリキッド状の印刷用インキを指し、好ましくはグラビアインキまたはフレキソインキである。また本発明のリキッドインキは活性エネルギー硬化性の成分を含んでおらず、即ち活性エネルギー線非反応性のリキッドインキである。
なお以下の説明で用いる「インキ」とは全て「印刷インキ」を示す。また「部」とは全て「質量部」を示し、「インキ全量」とは、有機溶剤等の揮発性成分をすべて含んだインキの全量を示し、「インキ固形分全量」とは、揮発性成分を含まない、不揮発性成分のみの全量を示す。
【0016】
本発明のリキッドインキ組成物は、ポリウレタン樹脂(A)とポリビニルブチラール樹脂(B)を少なくとも含有する。
【0017】
(ポリウレタン樹脂(A))
ポリウレタン樹脂(A)は、ポリエステルポリオール(A-1)及びポリエーテルポリオール(A-2)を反応原料とし、前記ポリエステルポリオール(A-1)及びポリエーテルポリオール(A-2)の総質量においてポリエステルポリオール(A-1)の質量割合が多いものである。すなわち、ポリウレタン樹脂(A)のポリオール構造において、ポリエステルポリオール(A-1)の質量割合をポリエステルポリオール(A-1)が多くなるように調整することにより、耐ボイル性、耐レトルト性、ラミネート強度を向上させることができる。また、ポリエーテルポリオール(A-2)を含有することによりインキの分散性や流動性を向上させることができ、また、密着性向上の効果も得られる。
ポリオール構造におけるポリエステルポリオール(A-1)及びポリエーテルポリオール(A-2)の質量割合は、具体的には55:45~99:1の範囲であることが好ましく、60:40~98:2の範囲であることがより好ましく、70:30~97:3の範囲であることが更に好ましい。
ポリエステルポリオール(A-1)及びポリエーテルポリオール(A-2)の質量割合が55:45~99:1の範囲内であれば、ラミネート強度、密着性及びインキの分散性に優れたインキを得られる。
【0018】
ポリエステルポリオール(A-1)は、低分子ポリオールと多価カルボン酸あるいはこれらの無水物とを脱水縮合または重合させて得られるポリエステルポリオールであることが好ましい。ポリエステルポリオール(A-1)は、エステル基を導入して凝集エネルギーを高める事で、ラミネート強度をより一層高めることができる。
【0019】
低分子ポリオールとしては、ポリエステルポリオールの製造に一般的に用いられる各種公知の水酸基を2個以上有する化合物を用いることができ、1種または2種以上を併用してもよい。具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等のグリコール;2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2-イソプロピル-1,4-ブタンジオール、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、3,5-ヘプタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等の分岐構造を有するグリコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどを用いることができる。
【0020】
多価カルボン酸あるいはこれらの無水物としては、ポリエステルポリオールの製造に一般的に用いられる各種公知の多価カルボン酸を用いることができ、1種または2種以上を併用してもよい。具体的には、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸及びこれらの酸の無水物等の炭素数が6以下かつカルボキシル基を2つ以上有するポリカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸及びこれらの酸の無水物等の芳香族ジカルボン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、トリメリット酸及びその無水物等のトリカルボン酸、ベンゼンテトラカルボン酸、ベンゼンペンタカルボン酸、ベンゼンヘキサカルボン酸及びこれらの酸の無水物等を用いることができる。
【0021】
また、ポリエステルポリオール(A-1)は、環状エステル化合物、例えばポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール類のような、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知のポリエステルポリオールを用いてもよく、1種または2種以上を併用してもよい。
【0022】
前記ポリエステルポリオールの数平均分子量としては、500~8,000の範囲であることが好ましく、800~7,000の範囲であることがより好ましく、900~6,000の範囲であることが更に好ましい。
尚、本発明において、数平均及び重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した値を示す。
【0023】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0024】
〔標準ポリスチレン〕
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0025】
ポリエーテルポリオール(A-2)としては、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知のポリエーテルポリオールを用いることができ、1種または2種以上を併用してもよい。例えば、酸化メチレン、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフランなどの重合体または共重合体のポリエーテルポリオール類が挙げられる。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど公知汎用のものでよい。ポリエーテルポリオールを含有することにより、特に高機能バリアーフィルム上での密着性が大幅に向上し、結果として耐ブロッキング性、ラミネート強度が優れるようになる。
ポリエーテルポリオール(A-2)は、数平均分子量が100~3500ものであることが好ましい。前記ポリエーテルポリオールの数平均分子量が100より小さいと、ポリウレタン樹脂(A)の皮膜が硬くなる傾向にありポリエステルフィルムへの接着性が低下する。数平均分子量が3500より大きい場合、ポリウレタン樹脂の皮膜が脆弱になる傾向にありインキ皮膜の耐ブロッキング性が低下する。
ポリエーテルポリオールは、ポリウレタン樹脂に対して1~40質量%の範囲で含有することが好ましい。ポリウレタン樹脂(A)100質量部に対してポリエーテルポリオールが1質量部未満であると、該ポリウレタン樹脂(A)のケトン、エステル、アルコール系溶剤への溶解性が低下し、高機能バリアーフィルム上での密着性が低下する傾向となる。またインキ皮膜の該溶剤への再溶解性が低下し、印刷物の調子再現性が低下する傾向となる。また50質量部を超えると、インキ皮膜が過剰に柔らかくなり、耐ブロッキングが劣る傾向と成り易い。
【0026】
その他、本発明のリキッドインキ組成物で使用するポリウレタン樹脂(A)に必要に応じて使用される併用ポリオールとしては、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知のポリオールを用いることができ、1種または2種以上を併用してもよい。例えば、エチレングリコール、1,2―プロパンジオール、1,3―プロパンジオール、2メチル-1,3プロパンジオール、2エチル-2ブチル-1,3プロパンジオール、1,3―ブタンジオール、1,4―ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3-メチル-1,5ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4-ブチンジオール、1,4―ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、ソルビトール、ペンタエスリトールなどの飽和または不飽和の低分子ポリオール類(1);前記低分子ポリオール類などと、例えばジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、ホスゲン等との反応によって得られるポリカーボネートポリオール類(2);ポリブタジエングリコール類(3);ビスフェノールAに酸化エチレンまたは酸化プロピレンを付加して得られるグリコール類(4);1分子中に1個以上のヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロプル、アクリルヒドロキシブチル等、或いはこれらの対応するメタクリル酸誘導体等と、例えばアクリル酸、メタクリル酸又はそのエステルとを共重合することによって得られるアクリルポリオール(4)などが挙げられる。
【0027】
なお、上述した併用ポリオールとしてポリエステルポリオール及び/又はポリエーテルポリオールを含む場合は、併用ポリオールに含まれるポリエステルポリオール及び/又はポリエーテルポリオールの含有量も、ポリウレタン樹脂(A)のポリオール構造におけるポリエステルポリオール及び/又はポリエーテルポリオール質量にそれぞれ含まれる。
【0028】
本発明のリキッドインキ組成物におけるポリウレタン樹脂(A)に使用されるジイソシアネート化合物としては、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知の芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。例えば、1,5―ナフチレンジイソシアネート、4,4’―ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’―ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’―ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3―フェニレンジイソシアネート、1,4―フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン―1,4―ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4―トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサン―1,4―ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジメリールジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン―4,4’―ジイソシアネート、1,3―ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、mーテトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ビス-クロロメチル-ジフェニルメタン-ジイソシアネート、2,6-ジイソシアネート-ベンジルクロライドやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等があげられる。これらのジイソシアネート化合物は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0029】
本発明のリキッドインキ組成物におけるポリウレタン樹脂(A)に使用される鎖伸長剤としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン―4,4’―ジアミンなどの他、2―ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2―ヒドロキシエチルプロピルジアミン、2―ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ―2―ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ―2―ヒドロキシエチレンジアミン、ジ―2―ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2―ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ―2―ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ―2―ヒドロキシプロピルエチレンジアミンなど分子内に水酸基を有するアミン類も用いることが出来る。これらの鎖伸長剤は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
また、反応停止を目的とした末端封鎖剤として、一価の活性水素化合物を用いることもできる。かかる化合物としてはたとえば、ジーnーブチルアミン等のジアルキルアミン類やエタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類があげられる。更に、特にポリウレタン樹脂中にカルボキシル基を導入したいときには、グリシン、L-アラニン等のアミノ酸を反応停止剤として用いることができる。これらの末端封鎖剤は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0030】
本発明のリキッドインキ組成物におけるポリウレタン樹脂(A)は、例えば、ポリプロピレングリコールおよび併用ポリオールとジイソシアネート化合物とをイソシアネート基が過剰となる割合で反応させ、末端イソシアネート基のプレポリマーを得、得られるプレポリマーを、適当な溶剤中、すなわち、ノントルエン系グラビアインキ用の溶剤として通常用いられる、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノールなどのアルコール系溶剤;メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶剤;あるいはこれらの混合溶剤の中で、鎖伸長剤および(または)末端封鎖剤と反応させる二段法、あるいはポリプロピレングリコールおよび併用ポリオール、ジイソシアネート化合物、鎖伸長剤および(または)末端封鎖剤を上記のうち適切な溶剤中で一度に反応させる一段法により製造される。これらの方法のなかでも、均一なポリウレタン樹脂を得るには、二段法によることが好ましい。また、ポリウレタン樹脂を二段法で製造する場合、鎖伸長剤および(または)末端封鎖剤のアミノ基の合計(当量比)が1/0.9~1.3の割合になるように反応させることが好ましい。イソシアネート基とアミノ基との当量比が1/1.3より小さいときは、鎖伸長剤および(または)末端封鎖剤が未反応のまま残存し、ポリウレタン樹脂が黄変したり、印刷後臭気が発生したりする場合がある。
【0031】
このようにして得られるポリウレタン樹脂(A)の重量平均分子量は、15,000~100,000の範囲内とすることが好ましく、より好ましくは15,000~80,000の範囲である。ポリウレタン樹脂の重量平均分子量が15,000未満の場合には、得られるインキの組成物の耐ブロッキング性、印刷被膜の強度や耐油性などが低くなる傾向があり、100,000を超える場合には、得られるインキ組成物の粘度が高くなり、印刷被膜の光沢が低くなる傾向がある。
本発明のリキッドインキ組成物で使用するポリウレタン樹脂(A)のインキにおける含有量(ポリウレタン樹脂(A)の固形分含有量)は、インキの被印刷体への接着性を十分にする観点からインキの総質量に対して4質量%以上、適度なインキ粘度やインキ製造時・印刷時の作業効率の観点から25質量%以下が好ましく、更には6~15質量%の範囲が好ましい。また、インキ中の固形分質量比では、下限値が5質量%であることが好ましく、10質量%であることがより好ましく、15質量%であることがより好ましく、20質量%であることが更に好ましい。また、インキ中の固形分重量比の上限値は95質量%であることが好ましく、90質量%であることがより好ましく、80質量%であることがより好ましく、75質量%であることが更に好ましい。
【0032】
(ポリビニルブチラール樹脂(B))
本発明のリキッドインキ組成は、ポリビニルブチラール樹脂(B)を含有することにより、分散性を向上させることができる。また、ウレタン樹脂(A)と組み合わせて用いることにより、密着性、ラミネート強度、及び耐レトルト性をより向上させることができる。ポリビニルブチラール樹脂(B)は、構成元素が炭素原子、水素原子、酸素原子のみであるため、ビニルブチラール樹脂(B)を用いたパッケージ等の製品のライフサイクルにおいて環境汚染のリスクを低減できる。
【0033】
ポリビニルブチラール樹脂(B)としては、特に限定なく公知のものを使用することができる。一般的には、ポリビニルアルコールにブチルアルデヒドを公知の反応によりアセタール化することにより得られた反応物を使用することができる。
ポリビニルブチラール樹脂(B)の重量平均分子量は、5000~60000であることが好ましく、6000~50000であることがより好ましく、7000~40000であることが更に好ましい。ポリビニルブチラール樹脂(B)の重量平均分子量を上記範囲にすることにより、流動性と分散性のバランスに優れたインキを得ることができる。
【0034】
ポリビニルブチラール樹脂(B)のガラス転移温度(以下Tgと称する場合がある)は、50℃~120℃の範囲であることが好ましく、中でも55℃~115℃の範囲が好ましく、60~110℃の範囲がより好ましい。本発明においてガラス転移温度は、示差走査熱量計による測定により得られるものである。
【0035】
ポリビニルブチラール樹脂(B)の水酸基量は10~30質量%の範囲にあることが好ましく、15~25質量%であることがより好ましい。ポリビニルブチラール樹脂(B)の水酸基量を上記範囲にすることにより、流動性と分散性のバランスに優れたインキを得ることができる。
また、ポリビニルブチラール樹脂(B)のアセチル基量は8質量%10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下8質量%であることがより好ましい。ポリビニルブチラール樹脂(B)のアセチル基量を上記範囲にすることにより、流動性と分散性のバランスに優れたインキを得ることができる。
【0036】
ポリビニルブチラール樹脂(B)含有量(ポリビニルブチラール樹脂(B)の固形分含有量)は、インキ100質量%に対して0.1~5質量%含有することが好ましく、より好ましくは0.1~4.0質量%であり、最も好ましくは0.2~3.0質量%である。ポリビニルブチラール樹脂(B)の総計を0.1質量%以上添加する事でインキ皮膜の密着性、転移性を保持する傾向にあり、総計を5質量%以下とする事でインキのラミネート強度、ボイル・レトルト耐性を保持する事ができる。また、インキ中の固形分重量比では、下限値が0.1質量%であることが好ましく、より好ましくは0.2質量%であり、最も好ましくは0.3質量%である。また、インキ中の固形分重量比の上限値は16質量%であることが好ましく、より好ましくは13質量%であり、最も好ましくは10質量%である。
本発明の効果を得るために、バインダー樹脂の総質量に対してポリウレタン樹脂(A)とポリビニルブチラール樹脂(B)の総質量は80質量%以上であることが好ましく、より好ましくは85質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上であり、更に好ましくは95質量%以上である。
【0037】
(その他のバインダー樹脂)
本発明の印刷用リキッドインキは、バインダー樹脂として、ポリウレタン樹脂(A)とポリビニルブチラール樹脂(B)を使用する以外に、リキッドインキ技術分野において併用可能なバインダー樹脂を含有することができる。併用可能なバインダー樹脂としては、環境負荷低減の観点から塩素系の成分を含有しない樹脂であることが好ましく、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、石油樹脂、繊維素系樹脂、ポリウレタン樹脂(A)以外のウレタン樹脂などを挙げることができる。中でも、ロジン変性マレイン酸樹脂、繊維素系樹脂、ポリエステル樹脂又はアクリル樹脂を含有することが好ましい。
併用樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。併用樹脂の含有量は、インキの総質量に対して0.1~25質量%が好ましく、更に好ましくは2~15質量%である。
【0038】
(繊維素系樹脂)
繊維素系樹脂としては、例えばセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートその他のセルロースエステル樹脂、ニトロセルロース(硝化綿ともいう)、ヒドロキシアルキルセルロース、およびカルボキシアルキルセルロース等が挙げられる。セルロースエステル樹脂はアルキル基を有することが好ましく、当該アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、更にアルキル基が置換基を有していてもよい。
セルロース系樹脂としては、上記のうちセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、およびニトロセルロースが好ましい。分子量としては重量平均分子量で5,000~200,000のものが好ましく、10,000~50,000が更に好ましい。また、ガラス転移温度が120℃~180℃であるものが好ましい。本発明のポリウレタン樹脂(A)の併用では、耐ブロッキング性、耐擦傷性その他のインキ被膜物性が向上することが期待できる。
ニトロセルロース(硝化綿)は、天然セルロースと硝酸とを反応させて、天然セルロース中の無水グルコピラノース基の6員環中の3個の水酸基を、硝酸基に置換した硝酸エステルとして得られるものが好ましい。
【0039】
(着色剤)
本発明のリキッドインキ組成物で使用する着色剤としては、着色顔料、白色顔料いずれの顔料でもよい。これら顔料を添加しなければオーバーコートニス用途として使用する事もできる。
着色剤としては顔料が好ましく、一般のインキ、塗料、及び記録剤などに使用されている無機顔料、有機顔料を挙げることができる。有機顔料としては、溶性アゾ系、不溶性アゾ系、アゾ系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラキノン系、アンサンスロン系、ジアンスラキノニル系、アンスラピリミジン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、フラバンスロン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系、インダンスロン系、カーボンブラック系などの顔料が挙げられる。
また、例えば、カーミン6B、レーキレッドC、パーマネントレッド2B、ジスアゾイエロー、ピラゾロンオレンジ、カーミンFB、クロモフタルイエロー、クロモフタルレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンレッド、インダンスロンブルー、ピリミジンイエロー、チオインジゴボルドー、チオインジゴマゼンタ、ペリレンレッド、ペリノンオレンジ、イソインドリノンイエロー、アニリンブラック、ジケトピロロピロールレッド、昼光蛍光顔料等が挙げられる。また未酸性処理顔料、酸性処理顔料のいずれも使用することができる。以下に有機顔料として好ましいものの具体的な例を挙げる。
【0040】
黒色顔料としては、例えばC.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7、C.I.ピグメントブラック9、C.I.ピグメントブラック20等が挙げられる。
【0041】
藍色顔料としては、例えばC.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:5、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー17:1、C.I.ピグメントブルー22、C.I.ピグメントブルー24:1、C.I.ピグメントブルー25、C.I.ピグメントブルー26、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー61、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントブルー63、C.I.ピグメントブルー64、C.I.ピグメントブルー75、C.I.ピグメントブルー79、C.I.ピグメントブルー80などが挙げられる。
【0042】
緑色顔料としては、例えばC.I.ピグメントグリーン1、C.I.ピグメントグリーン4、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン8、C.I.ピグメントグリーン10、C.I.ピグメントグリーン36などが挙げられる。
【0043】
赤色顔料としては、例えばC.I.ピグメントレッド1、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド4、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド8、C.I.ピグメントレッド9、C.I.ピグメントレッド10、C.I.ピグメントレッド11、C.I.ピグメントレッド12、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド17、C.I.ピグメントレッド18、C.I.ピグメントレッド19、C.I.ピグメントレッド20、C.I.ピグメントレッド21、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド23、C.I.ピグメントレッド31、C.I.ピグメントレッド32、C.I.ピグメントレッド38、C.I.ピグメントレッド41、C.I.ピグメントレッド43、C.I.ピグメントレッド46、C.I.ピグメントレッド48、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド48:4、C.I.ピグメントレッド48:5、C.I.ピグメントレッド48:6、C.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド49:1、C.I.ピグメントレッド49:2、C.I.ピグメントレッド49:3、C.I.ピグメントレッド52、C.I.ピグメントレッド52:1、C.I.ピグメントレッド52:2、C.I.ピグメントレッド53、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド53:2、C.I.ピグメントレッド53:3、C.I.ピグメントレッド54、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド58、C.I.ピグメントレッド58:1、C.I.ピグメントレッド58:2、C.I.ピグメントレッド58:3、C.I.ピグメントレッド58:4、C.I.ピグメントレッド60:1、C.I.ピグメントレッド63、C.I.ピグメントレッド63:1、C.I.ピグメントレッド63:2、C.I.ピグメントレッド63:3、C.I.ピグメントレッド64:1、C.I.ピグメントレッド68、C.I.ピグメントレッド68、C.I.ピグメントレッド81:1、C.I.ピグメントレッド83、C.I.ピグメントレッド88、C.I.ピグメントレッド89、C.I.ピグメントレッド95、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントレッド114、C.I.ピグメントレッド119、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド136、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド147、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド164、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド169、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド171、C.I.ピグメントレッド172、C.I.ピグメントレッド175、C.I.ピグメントレッド176、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド179、C.I.ピグメントレッド180、C.I.ピグメントレッド181、C.I.ピグメントレッド182、C.I.ピグメントレッド183、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド187、C.I.ピグメントレッド188、C.I.ピグメントレッド190、C.I.ピグメントレッド192、C.I.ピグメントレッド193、C.I.ピグメントレッド194、C.I.ピグメントレッド200、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド206、C.I.ピグメントレッド207、C.I.ピグメントレッド208、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド210、C.I.ピグメントレッド211、C.I.ピグメントレッド213、C.I.ピグメントレッド214、C.I.ピグメントレッド216、C.I.ピグメントレッド215、C.I.ピグメントレッド216、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド221、C.I.ピグメントレッド223、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド226、C.I.ピグメントレッド237、C.I.ピグメントレッド238、C.I.ピグメントレッド239、C.I.ピグメントレッド240、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド245、C.I.ピグメントレッド247、C.I.ピグメントレッド248、C.I.ピグメントレッド251、C.I.ピグメントレッド253、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド256、C.I.ピグメントレッド257、C.I.ピグメントレッド258、C.I.ピグメントレッド260、C.I.ピグメントレッド262、C.I.ピグメントレッド263、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド266、C.I.ピグメントレッド268、C.I.ピグメントレッド269、C.I.ピグメントレッド270、C.I.ピグメントレッド271、C.I.ピグメントレッド272、C.I.ピグメントレッド279、などが挙げられる。
【0044】
紫色顔料としては、例えばC.I.ピグメントバイオレット1、C.I.ピグメントバイオレット2、C.I.ピグメントバイオレット3、C.I.ピグメントバイオレット3:1、C.I.ピグメントバイオレット3:3、C.I.ピグメントバイオレット5:1、C.I.ピグメントバイオレット13、C.I.ピグメントバイオレット19(γ型、β型)、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット25、C.I.ピグメントバイオレット27、C.I.ピグメントバイオレット29、C.I.ピグメントバイオレット31、C.I.ピグメントバイオレット32、C.I.ピグメントバイオレット36、C.I.ピグメントバイオレット37、C.I.ピグメントバイオレット38、C.I.ピグメントバイオレット42、C.I.ピグメントバイオレット50、などが挙げられる。
【0045】
黄色顔料としては、例えばC.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー24、C.I.ピグメントイエロー42、C.I.ピグメントイエロー55、C.I.ピグメントイエロー62、C.I.ピグメントイエロー65、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー86、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー117、C.I.ピグメントイエロー120、ピグメントイエロー125、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー137、C.I.ピグメント、イエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー148、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー153、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー168、C.I.ピグメントイエロー174、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185およびC.I.ピグメントイエロー213等が挙げられる。
【0046】
橙色顔料としては、例えばC.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ37、C.I.ピグメントオオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ51、C.I.ピグメントレンジ55、C.I.ピグメントオレンジ59、C.I.ピグメントオレンジ61、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントオレンジ71、又はC.I.ピグメントオレンジ74などが挙げられる。
【0047】
茶色顔料としては、例えばC.I.ピグメントブラウン23、C.I.ピグメントブラウン25、又はC.I.ピグメントブラウン26などが挙げられる。
【0048】
中でも、好ましい顔料として、黒色顔料としてC.I.ピグメントブラック7、藍色顔料としてC.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、緑色顔料としてC.I.ピグメントグリーン7、赤色顔料としてC.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド166、紫色顔料としてC.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット37、黄色顔料としてC.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー139、橙色顔料としてC.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ64、等が挙げられ、これらの群から選ばれる少なくとも一種または二種以上を使用することが好ましい。
【0049】
無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、リトボン、アンチモンホワイト、石膏などの白色無機顔料が挙げられる。無機顔料の中では酸化チタンの使用が特に好ましい。酸化チタンは白色を呈し、着色力、隠ぺい力、耐薬品性、耐候性の点から好ましく、印刷性能の観点から該酸化チタンはシリカおよび/またはアルミナ処理を施されているものが好ましい。
【0050】
白色以外の無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、アルミニウム粒子、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、ジルコンが挙げられ、アルミニウムは粉末またはペースト状であるが、取扱い性および安全性の面からペースト状で使用するのが好ましく、リーフィングまたはノンリーフィングを使用するかは輝度感および濃度の点から適宜選択される。
【0051】
前記顔料は、リキッドインキ組成物の濃度・着色力を確保するのに充分な量、すなわちインキ総質量に対して1~60質量%、インキ中の固形分重量比では10~90質量%の割合で含まれることが好ましい。また、着色剤は単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0052】
本発明では更に必要に応じて、併用樹脂、体質顔料、顔料分散剤、レベリング剤、消泡剤、ワックス、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤なども含むこともできる。
【0053】
前記顔料を有機溶剤に安定に分散させるには、前記樹脂単独でも分散可能であるが、さらに顔料を安定に分散するため分散剤を併用することもできる。分散剤としては、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両イオン性などの界面活性剤を使用することができる。例えばポリエチレンイミンにポリエステル付加させた櫛型構造高分子化合物、あるいはα-オレフィンマレイン酸重合物のアルキルアミン誘導体などが挙げられる。具体的にはソルスパーズシリーズ(ZENECA)、アジスパーシリーズ(味の素)、ホモゲノールシリーズ(花王)などを挙げることができる。またBYKシリーズ(ビックケミー)、EFKAシリーズ(EFKA)なども適宜使用できる。分散剤は、インキの保存安定性の観点からインキの総質量に対して0.05質量%以上、ラミネート適性の観点から5質量%以下でインキ中に含まれることが好ましく、さらに好ましくは、0.1~2質量%の範囲である。
【0054】
(有機溶剤)
本発明のリキッドインキ組成物で使用する有機溶剤としては、各種有機溶剤を使用することができ、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤、n-プロパノール、イノプロパノール、n-ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤があげられ、これらを単独または2種以上の混合物で用いることができる。近年、作業環境の観点から、トルエン、キシレンといった芳香族系溶剤やケトン系溶剤を用いないことがより好ましい。
【0055】
本発明のリキッドインキ組成物には、揮発性成分として前記有機溶剤と共に、水を含有させてもよい。水の含有量はインキ組成物全量の10質量%未満であることが好ましい。水の添加により、インキの乾燥性を制御する事ができ、特にグラビア印刷では、その特徴であるインキ転移量の少ないグラデーション部をきれいに再現することができる。更に、インキ組成物全量の1~5質量%の範囲であることが、印刷適性が良好となることから、特に好ましい。
また、このような水の添加により、使用有機溶剤成分を低減させることも可能である。水は有機溶剤に予め添加して含水の有機溶媒としてもよいし、別途特定量の水を添加してもよい。
本発明のリキッドインキ組成物は、イソシアネート硬化剤等の硬化剤を使用しない1液タイプ、硬化剤を使用する2液タイプのいずれにおいても、インキの分散性、流動性に優れるリキッドインキ組成物を得られる。
【0056】
本発明のリキッドインキ組成物は、樹脂、顔料などを有機溶剤中に溶解及び/又は分散することにより製造することができる。具体的には、顔料をポリウレタン樹脂により有機溶剤に分散させた顔料分散体を製造し、得られた顔料分散体に、必要に応じて他の化合物などを配合することによりインキを製造することができる。
【0057】
顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度などを適宜調節することにより、調整することができる。分散機としては、一般に使用される、例えば、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。
インキ中に気泡や予期せずに粗大粒子などが含まれる場合は、印刷物品質を低下させるため、濾過などにより取り除くことが好ましい。濾過器は従来公知のものを使用することができる。
【0058】
前記方法で製造されたインキ粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から10mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から1000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。尚、上記粘度はトキメック社製B型粘度計で25℃において測定された粘度である。
インキの粘度は、使用される原材料の種類や量、例えばポリウレタン樹脂、着色剤、有機溶剤などを適宜選択することにより調整することができる。また、インキ中の顔料の粒度および粒度分布を調節することによりインキの粘度を調整することもできる。
【0059】
本発明のリキッドインキ組成物の色相としては、使用する顔料の種類に応じて、プロセス基本色として黄、紅、藍、墨、白の5色があり、プロセスガマット外色として赤(橙)、草(緑)、紫の3色がある。更に透明黄、牡丹、朱、茶、金、銀、パール、色濃度調整用のほぼ透明なメジウム(必要に応じて体質顔料を含む)などがベース色として準備される。ボイルレトルト用インキには顔料のマイグレーション性、耐熱性を考慮して適宜選定される。各色相のベースインキは、グラビア印刷、又はフレキソ印刷に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独でまたは混合されて各印刷ユニットに供給される。
【0060】
本発明のリキッドインキ組成物を印刷してなる印刷物としては、汎用フィルムから各種高機能フィルムまで、多種多様化する各種フィルムに対し有用である。利用可能なプラスチックフィルムとしては、特に限定は無く、例えば、Ny6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂、ポリエチレンフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリ乳酸等のポリヒドロキシカルボン酸、ポリ(エチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート)等の脂肪族ポリエステル系樹脂に代表される生分解性樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂またはそれらの混合物等の熱可塑性樹脂よりなるフィルム、表面に無機や有機のバリアコート材が塗布された種々高機能フィルム、及びこれらの積層体が挙げられるが、中でも、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンからなるフィルムが好適に使用できる。
これらのフィルムは、未延伸フィルムでも延伸フィルムでも良く、その製法も限定されるものではない。また、基材フィルムの厚さも特に限定されるものではないが、通常は1~500μmの範囲であればよい。
また、フィルムの印刷面には、コロナ放電処理がされていれば更に基材密着性を向上させる事ができ好ましい。また、シリカ、アルミナ等が蒸着されていてもよい。
また印刷方法としては、グラビア印刷、フレキソ印刷などの既知の版を使用する印刷方式で印刷できるが、特にグラビア印刷方式で印刷することが好ましい。グラビア印刷に用いられるシリンダーは、彫刻タイプ、腐食タイプ等公知のものが用いられる。本発明のリキッドインキ組成物を印刷してなる印刷層を有するラミネート積層体としても有用である。
【実施例】
【0061】
本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。以下、「部」及び「%」は、いずれも質量基準によるものとする。
なお、本発明におけるGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による重量平均分子量(ポリスチレン換算)の測定は東ソー(株)社製HLC8220システムを用い以下の条件で行った。
分離カラム:東ソー(株)製TSKgelGMHHR-Nを4本使用。カラム温度:40℃。移動層:和光純薬工業(株)製テトラヒドロフラン。流速:1.0ml/分。試料濃度:1.0重量%。試料注入量:100マイクロリットル。検出器:示差屈折計。
粘度はトキメック社製B型粘度計で25℃において測定した。
【0062】
(合成例1:ポリウレタン樹脂溶液P1)
攪拌機、温度計、環流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、ネオペンチルグリコールアジペートジオール233.38部(水酸基価:37.4mgKOH/g)とポリエチレングリコール190.95部(水酸基価:112.2mgKOH/g)およびイソホロンジイソシアネート89.49部を仕込み、窒素気流下に90℃で10時間反応させ、イソシアネート基含有率2.09質量%のウレタンプレポリマーを製造した後、これに酢酸エチル128.15部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、イソホロンジアミン23.87部、シクロヘキシルアミン0.30部、酢酸エチル750.3部およびイソプロピルアルコール376.6部からなる混合物に、前記ウレタンプレポリマー溶液を添加し、45℃で5時間攪拌反応させて、ポリウレタン樹脂溶液P1を得た。得られたポリウレタン樹脂溶液P1は、樹脂固形分濃度30.3質量%、樹脂固形分のMwは54,000であった。
【0063】
(合成例2:ポリウレタン樹脂溶液P2)
攪拌機、温度計、環流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、ネオペンチルグリコールアジペートジオール233.38部(水酸基価:37.4mgKOH/g)とポリエチレングリコール2.36部(水酸基価:280.5mgKOH/g)およびイソホロンジイソシアネート31.58部を仕込み、窒素気流下に90℃で10時間反応させ、イソシアネート基含有率1.77質量%のウレタンプレポリマーを製造した後、これに酢酸エチル66.8部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、イソホロンジアミン10.59部、シクロヘキシルアミン0.28部、酢酸エチル387.6部およびイソプロピルアルコール194.7部からなる混合物に、前記ウレタンプレポリマー溶液を添加し、45℃で5時間攪拌反応させて、ポリウレタン樹脂溶液P2を得た。得られたポリウレタン樹脂溶液P2は、樹脂固形分濃度30.3質量%、樹脂固形分のMwは58,000であった。
【0064】
(合成例3:ポリウレタン樹脂溶液P3)
攪拌機、温度計、環流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、ネオペンチルグリコールアジペートジオール233.38部(水酸基価:37.4mgKOH/g)とポリエチレングリコール7.22部(水酸基価:280.5mgKOH/g)およびイソホロンジイソシアネート60.19部を仕込み、窒素気流下に90℃で10時間反応させ、イソシアネート基含有率4.80質量%のウレタンプレポリマーを製造した後、これに酢酸エチル75.2部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、イソホロンジアミン30.40部、シクロヘキシルアミン0.28部、酢酸エチル466.2部およびイソプロピルアルコール232.0部からなる混合物に、前記ウレタンプレポリマー溶液を添加し、45℃で5時間攪拌反応させて、ポリウレタン樹脂溶液P3を得た。得られたポリウレタン樹脂溶液P3は、樹脂固形分濃度30.4質量%、樹脂固形分のMwは62,000であった。
【0065】
(合成例4:ポリウレタン樹脂溶液P4)
攪拌機、温度計、環流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、ネオペンチルグリコールアジペートジオール233.38部(水酸基価:37.4mgKOH/g)とポリエチレングリコール41.18部(水酸基価:280.5mgKOH/g)およびイソホロンジイソシアネート60.19部を仕込み、窒素気流下に90℃で10時間反応させ、イソシアネート基含有率2.17質量%のウレタンプレポリマーを製造した後、これに酢酸エチル83.7部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、イソホロンジアミン15.99部、シクロヘキシルアミン0.32部、酢酸エチル489.7部およびイソプロピルアルコール245.7部からなる混合物に、前記ウレタンプレポリマー溶液を添加し、45℃で5時間攪拌反応させて、ポリウレタン樹脂溶液P4を得た。得られたポリウレタン樹脂溶液P4は、樹脂固形分濃度30.3質量%、樹脂固形分のMwは60,000であった。
【0066】
(比較合成例1:ポリウレタン樹脂溶液P5)
攪拌機、温度計、環流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、ポリエチレングリコール240.65部(水酸基価:56.1mgKOH/g)およびイソホロンジイソシアネート40.07部を仕込み、窒素気流下に90℃で10時間反応させ、イソシアネート基含有率1.72質量%のウレタンプレポリマーを製造した後、これに酢酸エチル70.2部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、イソホロンジアミン10.65部、シクロヘキシルアミン0.22部、酢酸エチル406.1部およびイソプロピルアルコール204.1部からなる混合物に、前記ウレタンプレポリマー溶液を添加し、45℃で5時間攪拌反応させて、ポリウレタン樹脂溶液P5を得た。得られたポリウレタン樹脂溶液P5は、樹脂固形分濃度30.2質量%、樹脂固形分のMwは65,000であった。
【0067】
(比較合成例2:ポリウレタン樹脂溶液P6)
攪拌機、温度計、環流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、ネオペンチルグリコールアジペートジオール240.65部(水酸基価:36.1mgKOH/g)およびイソホロンジイソシアネート40.07部を仕込み、窒素気流下に90℃で10時間反応させ、イソシアネート基含有率1.72質量%のウレタンプレポリマーを製造した後、これに酢酸エチル70.2部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、イソホロンジアミン10.87部、シクロヘキシルアミン0.22部、酢酸エチル406.4部およびイソプロピルアルコール204.3部からなる混合物に、前記ウレタンプレポリマー溶液を添加し、45℃で5時間攪拌反応させて、ポリウレタン樹脂溶液P6を得た。得られたポリウレタン樹脂溶液P6は、樹脂固形分濃度30.1質量%、樹脂固形分のMwは58,000であった。
【0068】
(比較合成例3:ポリウレタン樹脂溶液P7)
攪拌機、温度計、環流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、ネオペンチルグリコールアジペートジオール120.3部(水酸基価:56.1mgKOH/g)とポリエチレングリコール120.3部(水酸基価:112.2mgKOH/g)およびイソホロンジイソシアネート60.09部を仕込み、窒素気流下に90℃で10時間反応させ、イソシアネート基含有率2.41質量%のウレタンプレポリマーを製造した後、これに酢酸エチル75.2部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、イソホロンジアミン15.73部、シクロヘキシルアミン0.29部、酢酸エチル442.1部およびイソプロピルアルコール221.7部からなる混合物に、前記ウレタンプレポリマー溶液を添加し、45℃で5時間攪拌反応させて、ポリウレタン樹脂溶液P7を得た。得られたポリウレタン樹脂溶液P7は、樹脂固形分濃度30.5質量%、樹脂固形分のMwは62,000であった。
【0069】
(ポリビニルブチラール樹脂溶液B1の調整)
ポリビニルアルコールにブチルアルデヒドを反応させることにより得られたポリビニルブチラール樹脂(重量平均分子量10000、水酸基量15質量%、ガラス転移点60℃、アセチル基量8質量%)を、イソプロピルアルコールで10%溶液とし、これをポリビニルブチラール樹脂溶液B1とした。
【0070】
(ポリビニルブチラール樹脂溶液B2の調整)
ポリビニルアルコールにブチルアルデヒドを反応させることにより得られたポリビニルブチラール樹脂(重量平均分子量20000、水酸基量20質量%、ガラス転移点70℃、アセチル基量4質量%)を、イソプロピルアルコールで10%溶液とし、これをポリビニルブチラール樹脂B2とした。
【0071】
(セルロースアセテートプロピオネート樹脂溶液Caの調整)
セルロースアセテートプロピオネートCAP482-0.5(Eastman Chemical社製)20部に、イソプロピルアルコール/酢酸エチル/酢酸ノルマルプロピル/メチルシクロヘキサン(重量比で25/25/13/10の比率)の混合液を80部加え、充分混合して樹脂固形分濃度20質量%のセルロースエステル樹脂溶液Caを作製した。
【0072】
(マレイン酸樹脂溶液Mの調整)
巴工業株式会社製の「SMA 3000P」を、IPA 25%、酢酸エチル 25%、SMA 3000P 50%の配合で固形分50%溶液として十分撹拌し、マレイン酸樹脂溶液Mを作成した。
【0073】
(塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂溶液の調整)
水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(樹脂モノマー組成が重量%で塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコール=92/3/5、水酸基価(mgKOH)=64)を酢酸エチルで10%溶液とし、これを塩酢ビ樹脂溶液Vとした。
【0074】
(実施例1)
ポリウレタン樹脂溶液P1(固形分30%)を30部、ポリビニルブチラール樹脂B1(固形分10%)25部、マレイン酸樹脂溶液M(固形分50%)1部、セルロースアセテートプロピオネート樹脂溶液Ca(固形分20%)3部、フタロシアニン系青色顔料(FASTGEN Blue LA5380:DIC(株)社製)10部、酢酸エチル31部の計100部からなる混合物をダイノーミル(ウィリー・エ・バッコーフェノン社製)を用いて混練し、本発明のリキッドインキを作製した。
【0075】
(実施例2~10、及び比較例1~7)
実施例2~10、比較例1~7についても表1~3に示す配合にて、実施例1と同様の手順にてリキッドインキを製造した。
【0076】
得られたリキッドインキについて、下記の試験方法にて評価を行った。
【0077】
(カラーベース流動性)
実施例及び比較例に記載のインキの粘度をB型粘度計にて6rpmと60rpmの回転数で測定した。6rpmで測定した粘度を60rpmで測定した粘度で割り、TI値を求めた。TI値が3.0未満であれば実用上使用可能である。
○:TI値が1.5未満
△:TI値が1.5以上~3.0未満
×:TI値が3.0以上
【0078】
(粘度)
実施例及び比較例に記載のインキの粘度をザーンカップ#4(離合社製)で測定した。粘度が30秒以下であれば実用上使用可能である。
【0079】
(保存安定性)
実施例及び比較例に記載のインキを25℃で1週間静置したのち、分離と沈殿の具合を評価した。
<分離>外観評価
〇: まったく分離がみられない。
△: やや上層に分離がみられる。目安としては分離層の厚さが5mm以下。
×: 上層に明らかな分離がみられる。目安としては分離層の厚さが5mm以上。
<沈殿>スパチュラでインキを保存した容器の底をゆっくりとかく。
〇: まったく沈殿がみられない。
△: 底に僅かに沈殿がみられる。(スパチュラの先端に沈殿物が僅かに確認される)
×: 底に多くの沈殿がみられる。(スパチュラで沈殿物が多くかきとれる)
【0080】
(色相)
実施例及び比較例に記載のインキをバーコーター#4(RDS社)を用いてPETフィルムに塗工し、色相を目視判定した。なお、PETフィルムは東洋紡(株)製のE5100(12μm)を用い、標準インキはフィナートR507原色藍(DIC社)とした。
〇: 標準インキと同等の色相を有する。
△: 標準インキよりも色相がやや劣る。
×: 標準インキよりも色相が大幅に劣る。
【0081】
(密着性)
実施例及び比較例に記載のインキの粘度を酢酸エチルでザーンカップ#3(離合社製)で16秒(25℃)に調整し、版深35μmグラビア版を備えたグラビア校正機により、OPP、PET、NY、透明蒸着フィルムの各種フィルムで作製した印刷物を1日放置後、印刷面にセロハンテープ(ニチバン製12mm幅)を貼り付け、これを急速に剥がしたときの印刷皮膜の外観の状態を次の3段階で目視判定した。
なお、OPPフィルムは東洋紡(株)製のP2161(20μm)であり、PETフィルムは東洋紡(株)製のE5100(12μm)であり、NYフィルムはユニチカ(株)製のON-RT(15μm)、透明蒸着フィルムは大日本印刷(株)製 アルミナ蒸着透明PETフィルム IB-PET-PUB(12μm)用いた。
○:印刷皮膜が全く剥がれなかった。
△:印刷皮膜の50~80%がフィルムに残った。
×:印刷皮膜の50%以下がフィルムに残った。
【0082】
(耐ボイル性)
上記密着性の評価と同様に、片面にコロナ処理を施したNyフィルムの処理面に印刷を行った。作成したNyフィルムの印刷物にウレタン系のドライラミネート接着剤ディックドライLX-500/KW-75(DIC製)にてドライラミネート機(DICエンジニアリング製)によって、直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPEフィルム:三井化学東セロ社製 TUX-HC 厚さ60μm)を積層し、40℃で3日間エージング施し、ラミネート物を得た。得られたラミネート物を120mm×120mmの大きさのパウチに製袋し、内容物として、食酢、サラダ油、ミートソースを重量比で1:1:1に配合した疑似食品70gを充填密封した。作成したパウチを98℃、60分間のボイル処理をした後、内容物を取り出してパウチを水洗した後、袋を15mm幅に切り出し、引っ張り速度300mm/分でT型剥離試験を行った。
作製した積層体は基材のNyフィルム側から、Ny基材(F)/印刷インキ層(I
)/接着層(Ad)/LLDPEフィルムの順となる。数値は大きい程、強度が高い。
尚、表中の評価結果の略語は次の通りである。
F Cut:FILM CUTの略語であり、測定中にラミネート物が剥離する前
にフィルムが破断していることを表す。ラミネート強度がフィルム強度を上回
るほど高く、優れていることを示す。
I/AL:印刷インキ層(I)とアルミ箔(AL)間の接着層(Ad1)にて、示す測定値で剥離した。
F/I :PET基材(F)/印刷インキ層(I)間にて、示す測定値で剥離した。
また、得られたボイル処理後のパウチの外観を評価した。
〇: デラミネーションやブリスターが全くみられない。
△: パウチの一部に、僅かなデラミネーションやブリスターがみられる。
×: パウチの全体に、明らかなデラミネーションやブリスターがみられる。
【0083】
(耐レトルト性)
上記密着性の評価と同様に、片面にコロナ処理を施したPETフィルムの処理面に印刷を行った。作成した二軸延伸ポリエステルフィルムの印刷物にウレタン系のドライラミネート接着剤ディックドライLX-703VL/KR-90(DIC製)にてドライラミネート機(DICエンジニアリング製)によって、アルミ箔、及び無延伸ポリプロピレンフィルム(以下、R-CPP:東レ合成フィルム社製 ZK-75 50μm)を積層し、40℃で3日間エージング施し、ラミネート物を得た。得られたラミネート物を120mm×120mmの大きさのパウチに製袋し、内容物として、食酢、サラダ油、ミートソースを重量比で1:1:1に配合した疑似食品70gを充填密封した。作成したパウチを135℃、30分間の蒸気レトルト殺菌処理をした後、内容物を取り出してパウチを水洗した後、袋を15mm幅に切り出し、引っ張り速度300mm/分でT型剥離試験を行った。
作製した積層体は基材のPETフィルム側から、PET基材(F)/印刷インキ層(I
)/接着層(Ad1)/アルミ箔(AL)/接着剤(Ad2)/R-CPPフィルムの順となる。二軸延伸ポリエステルフィルム(PETフィルム:東洋紡績株式会社製 E-5100 厚さ12μm)を使用した。数値は大きい程、強度が高い。
尚、表中の評価結果の略語は次の通りである。
F Cut:FILM CUTの略語であり、測定中にラミネート物が剥離する前
にフィルムが破断していることを表す。ラミネート強度がフィルム強度を上回
るほど高く、優れていることを示す。
I/AL:印刷インキ層(I)とアルミ箔(AL)間の接着層(Ad1)にて、示す
測定値で剥離した。
F/I :PET基材(F)/印刷インキ層(I)間にて、示す測定値で剥離した。
また、得られたレトルト処理後のパウチの外観を評価した。
〇: デラミネーションやブリスターが全くみられない。
△: パウチの一部に、僅かなデラミネーションやブリスターがみられる。
×: パウチの全体に、明らかなデラミネーションやブリスターがみられる。
【0084】
結果を以下の表に示す。なお、比較例4、5は粘度、色相、保存安定性が実用範囲外であり、テープ密着性、耐ボイル性、耐レトルト性は評価不可であった。
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
FASTGEN Blue LA5380:B15:3
SYMULER RED 4580:R146
SYMULER FAST RED 4136F:R213
SYMULER FAST YELLOW 4619:Y83
FASTOGEN SUPER VIOLET RSP:V23
【0089】
表より、実施例1~15は、流動性、保存安定性、密着性、耐ボイル性及び耐レトルト性のいずれの評価においても優れた結果が得られ、塩素系樹脂を用いずに、各種性能バランスに優れたインキを得られることがわかった。
一方、ポリウレタン樹脂P5~P7を用いた比較例1~3は、ラミネート強度や、分散性が劣ったりする結果となった。比較例1及び2と、比較例6及び7より、ポリウレタン樹脂P5~P7とポリビニルブチラール樹脂を組み合わせた場合にラミネート強度や分散性の低下が大きくなるが、実施例より特定のポリウレタン樹脂(P1~P4)とポリビニルブチラール樹脂の組み合わせにより、優れた効果が得られることがわかった。