(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】縦型熱処理炉用熱処理ボートおよび半導体ウェーハの熱処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/324 20060101AFI20240827BHJP
H01L 21/22 20060101ALI20240827BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H01L21/324 Q
H01L21/22 511G
H01L21/68 N
(21)【出願番号】P 2020213693
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2022-12-23
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【氏名又は名称】川原 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 康佑
(72)【発明者】
【氏名】行本 靖史
(72)【発明者】
【氏名】草場 辰己
(72)【発明者】
【氏名】清水 昭彦
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-200271(JP,A)
【文献】特開2004-014985(JP,A)
【文献】特開2000-232151(JP,A)
【文献】特開2000-100739(JP,A)
【文献】特開2018-137318(JP,A)
【文献】特開2002-324830(JP,A)
【文献】特開2004-363273(JP,A)
【文献】特開2009-076621(JP,A)
【文献】特開2004-304075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/324
H01L 21/22
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の支柱と、該複数本の支柱の各々に接続され、半導体ウェーハの裏面を支持する1つ以上の支持部とを備える縦型熱処理炉用熱処理ボートにおいて、
前記複数本の支柱の
全ての支柱の各々について、前記熱処理ボートの中心軸を含むとともに前記支柱に接する2つの面に挟まれた領域を第1の領域とし、前記第1の領域以外の領域を第2の領域としたとき、前記支柱に接続させた
全ての支持部が前記第2の領域のみにおいて前記半導体ウェーハの裏面を支持するように構成されており、
前記複数本の支柱は、前記縦型熱処理ボートの中心軸を含むとともにウェーハ充填方向に垂直な面に対して、ウェーハ充填手前側に配置された2本の第1の支柱と、ウェーハ充填奥側に配置された1本以上の第2の支柱とからなり、上面視にて、前記2本の第1の支柱の各々に接続された支持部におけるウェーハ支持領域が、前記縦型熱処理用熱処理ボートの中心軸に対して、前記1本以上の第2の支柱のいずれかに接続された支持部におけるウェーハ支持領域の点対称な位置に配置されており、
前記
複数本の支柱の
全てに接続された
全ての支持部は、前記半導体ウェーハの外周より内側、かつデバイス加工領域の外側のみで前記半導体ウェーハの裏面を支持するように配置されていることを特徴とする縦型熱処理炉用熱処理ボート。
【請求項2】
前記縦型熱処理炉用熱処理ボートがシリコン、炭化シリコンまたは二酸化シリコンで構成されている、請求項
1に記載の縦型熱処理炉用熱処理ボート。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の縦型熱処理炉用熱処理ボートの前記支持部上に熱処理対象の半導体ウェーハを載置して前記半導体ウェーハに対して熱処理を施すことを特徴とする半導体ウェーハの熱処理方法。
【請求項4】
前記半導体ウェーハはシリコンウェーハである、請求項
3に記載の半導体ウェーハの熱処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦型熱処理炉用熱処理ボートおよび半導体ウェーハの熱処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの基板であるシリコンウェーハなどの半導体ウェーハを製造するプロセスでは、ウェーハは様々な熱処理工程を経る。また、半導体デバイスの製造プロセスにおいて、半導体デバイスの基板である半導体ウェーハに対して、酸化、拡散、成膜などの工程において、高温の熱処理を繰り返し施す。こうした熱処理を行う炉としては、熱処理対象の半導体ウェーハをその面内方向が水平となるように垂直方向に複数枚並べて熱処理を行う縦型熱処理炉と、半導体ウェーハをその面内方向が垂直となるように水平方向に複数枚並べて熱処理を行う横型熱処理炉とが存在する。中でも、縦型熱処理炉は、設置スペースが小さく、大口径の半導体基板を多量に熱処理するのに適しているため、半導体ウェーハの各種熱処理に一般的に用いられている。
【0003】
縦型熱処理炉は、複数の支柱と、該複数の支柱の各々に接続された1つ以上の支持部とを備える熱処理ボートと、該熱処理ボートの周囲に配置されたヒーターとを備える。こうした縦型熱処理炉に熱処理対象の半導体ウェーハを導入して熱処理ボートの支持部に半導体ウェーハを載置し、ヒーターにより半導体ウェーハを加熱することによって半導体ウェーハに対して熱処理を施す。
【0004】
上記縦型熱処理炉を用いて半導体ウェーハに対して熱処理を行う際に、半導体ウェーハ面内に温度分布の不均一が生じると熱応力が発生し、半導体ウェーハにスリップ転位が発生しうる。スリップ転位は、半導体デバイスにおけるリーク電流の増加や半導体ウェーハの平坦性を悪化させる原因となるため、熱処理中に半導体ウェーハにスリップ転位が発生するのを抑制することが肝要である。
【0005】
そこでこれまで、熱処理中に半導体ウェーハにスリップ転位が発生するのを抑制する様々な熱処理ボートが提案されている。例えば、特許文献1には、複数の支柱と、各支柱に着脱可能に装着され、被処理物を水平に支持する支持部とを備え、スリップ転位や汚染の発生を効果的に防止できる熱処理ボートが記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、熱処理ボートの位置と半導体ウェーハの載置位置との相対位置と、スリップ転位の発生量との関係を求め、求めた関係に基づいて、熱処理ボートの位置と半導体ウェーハの載置位置との相対位置の初期位置を設定し、該設定した初期位置から基準値内になるように半導体ウェーハを熱処理ボートに載置して熱処理を行うことによって、スリップの発生を安定して抑制することができる方法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2004-241545号公報
【文献】特開2013-110364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らが検討した結果、特許文献1に記載された熱処理ボートおよび特許文献2に記載された方法に用いる熱処理ボートを用いて半導体ウェーハに熱処理を施すと、スリップ転位の発生を十分に抑制できないことが判明した。
【0009】
そこで、本発明の目的は、半導体ウェーハに対して熱処理を施す際に、従来よりも半導体ウェーハにスリップ転位が発生するのを抑制することができる縦型熱処理炉用熱処理ボートおよび半導体ウェーハの熱処理方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明は、以下の通りである。
【0011】
[1]複数本の支柱と、該複数本の支柱の各々に接続され、前記半導体ウェーハの裏面を支持する1つ以上の支持部とを備える縦型熱処理炉用熱処理ボートにおいて、
前記複数本の支柱のうちの少なくとも1本の支柱の各々について、前記熱処理ボートの中心軸を含むとともに前記支柱に接する2つの面に挟まれた領域を第1の領域とし、前記第1の領域以外の領域を第2の領域としたとき、前記支柱に接続させた支持部が前記第2の領域において前記半導体ウェーハの裏面を支持するように構成されていることを特徴とする縦型熱処理炉用熱処理ボート。
【0012】
[2]前記複数本の支柱は、前記縦型熱処理ボートの中心軸を含むとともにウェーハ充填方向に垂直な面に対して、ウェーハ充填手前側に配置された2本の第1の支柱と、ウェーハ充填奥側に配置された1本以上の第2の支柱とからなり、
上面視にて、前記2本の第1の支柱の各々に接続された支持部におけるウェーハ支持領域が、前記縦型熱処理用熱処理ボートの中心軸に対して、前記1本以上の第2の支柱のいずれかに接続された支持部におけるウェーハ支持領域の点対称な位置に配置されている、前記[1]に記載の縦型熱処理炉用熱処理ボート。
【0013】
[3]前記少なくとも1本の支柱の各々に接続された支持部は、前記半導体ウェーハの外周より内側、かつデバイス加工領域の外側で前記半導体ウェーハの裏面を支持するように配置されている、前記[1]または[2]に記載の縦型熱処理炉用熱処理ボート。
【0014】
[4]前記複数本の支柱の全てに接続された支持部が、前記第2の領域において前記半導体ウェーハの裏面を支持するように構成されている、前記[1]~[3]のいずれか一項に記載の縦型熱処理炉用熱処理ボート。
【0015】
[5]前記縦型熱処理炉用熱処理ボートがシリコン、炭化シリコンまたは二酸化シリコンで構成されている、前記[1]~[4]のいずれか一項に記載の縦型熱処理炉用熱処理ボート。
【0016】
[6]前記[1]~[5]のいずれか一項に記載の縦型熱処理炉用熱処理ボートの前記支持部上に熱処理対象の半導体ウェーハを載置して前記半導体ウェーハに対して熱処理を施すことを特徴とする半導体ウェーハの熱処理方法。
【0017】
[7]前記半導体ウェーハはシリコンウェーハである、前記[6]に記載の半導体ウェーハの熱処理方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、半導体ウェーハに対して熱処理を施す際に、従来よりも半導体ウェーハにスリップ転位が発生するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】検討した熱処理ボートの構成を示す図であり、(a)は全体図、(b)は上面図、(c)は(a)におけるX-X断面図である。
【
図2】第1の支柱および支持部の詳細を示す図であり、(a)は全体図、(b)は上面図である。
【
図3】第2の支柱および支持部の詳細を示す図であり、(a)は全体図、(b)は上面図である。
【
図4】スリップ転位が発生したシリコンウェーハのX線観察像の一例である。
【
図5】本発明による熱処理ボートにおいて、半導体ウェーハの裏面を支持する位置を説明する図である。
【
図6】支持部における半導体ウェーハの支持領域を説明する図である。
【
図7】本発明において半導体ウェーハをよりバランスよく支持する方法を説明する図である。
【
図8】(a)は発明例1において使用した熱処理ボートの支持部、(b)は熱処理ボートの上面図である。
【
図9】(a)は発明例2において使用した熱処理ボートの支持部、(b)は熱処理ボートの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(熱処理ボート)
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明による熱処理ボートは、複数本の支柱と、該複数本の支柱の各々に接続され、半導体ウェーハの裏面を支持する1つ以上の支持部とを備える縦型熱処理炉用熱処理ボートである。ここで、上記複数本の支柱のうちの少なくとも1本の支柱の各々について、熱処理ボートの中心軸を含むとともに支柱に接する2つの面に挟まれた領域を第1の領域とし、第1の領域以外の領域を第2の領域としたとき、支柱に接続させた支持部が第2の領域において半導体ウェーハの裏面を支持するように構成されていることを特徴とする。
【0021】
上述のように、縦型熱処理炉において従来の熱処理ボートを使用して半導体ウェーハに対して熱処理を施すと、依然としてスリップが発生することが判明した。本発明者らは、熱処理中に半導体ウェーハにおいてスリップ転位が発生するのを抑制できる熱処理ボートを検討する中で、
図1に示したような構造を有する熱処理ボートを検討した。
【0022】
図1(a)に示した熱処理ボート100は、2本の第1の支柱11および2本の第2の支柱12を備え、第1の支柱11および第2の支柱12の各々には、熱処理対象の半導体ウェーハWの裏面を支持する複数の支持部11a、12aが接続されている。
図1(b)に示すように、第1の支柱11は、半導体ウェーハWの充填の妨げとならないように、縦型熱処理ボート100の中心軸Oを含むとともにウェーハ充填方向に垂直な面Pに対して、ウェーハ充填手前側に2本配置された支柱であり、第2の支柱12は、ウェーハ充填奥側に配置された支柱である。
図1(c)は、支持部11aが半導体ウェーハWの裏面を支持する様子を示している。なお、同一の半導体ウェーハWを支持する支持部11a、12aの半導体ウェーハWと接触する表面の高さ位置は、全て略同一(すなわち、略面一)に構成されている。
【0023】
図2は、第1の支柱11および支持部11aの詳細を示す図であり、(a)は全体図、(b)は上面図である。なお、
図2(b)において、Lwは半導体ウェーハWの外周を示している。
図2(a)に示すように、第1の支柱11に接続された支持部11aは、半導体ウェーハWが支持部11a上に載置された際に、第1の支柱11から半導体ウェーハWの外周Lwに沿って延びる形状を有しており、
図2(b)に示した領域(ウェーハ支持領域)Acにおいて、半導体ウェーハWの裏面と面接触するように構成されている。
【0024】
また、
図3は、第2の支柱12および支持部12aの詳細を示す図であり、(a)は全体図、(b)は上面図である。なお、
図3(b)において、Lwは半導体ウェーハWの外周を示している。
図3(a)に示すように、第2の支柱12に接続された支持部12aは、特許文献1および2に記載された熱処理ボートと同様に、半導体ウェーハWが支持部12a上に載置された際に、第2の支柱12から支持部12aに載置される半導体ウェーハWの中心方向に延びる形状を有しており、
図3(b)に示したウェーハ支持領域Acにおいて、半導体ウェーハWの裏面と面接触するように構成されている。
【0025】
なお、上記熱処理ボート100熱処理対象の半導体ウェーハWを支持部11a、12a上に載置した際に第1の支柱11側に半導体ウェーハWの重量がより多く掛かるため、半導体ウェーハWが第1の支柱11側にわずかにウェーハの重心が傾斜して載置されることになる。また、
図1(a)に示すように、熱処理ボート100の周囲には、半導体ウェーハWを加熱するヒーター13が配置されているが、
図1(a)に示したヒーター13は、シミュレーションのために使用した簡易的にモデル化したものであり、実際のものとは異なる。
【0026】
本発明者らは、
図1に示した熱処理ボート100を縦型熱処理炉内に導入し、複数枚のシリコンウェーハに対して熱処理を施した。その結果、幾つかのシリコンウェーハの外周部に形成された傷からスリップ転位が発生し、そのいずれにおいても、第1の支柱11付近に位置する傷からスリップ転位が発生した。
【0027】
図4は、スリップ転位が発生したシリコンウェーハのX線観察像の一例を示している。
図4に示したシリコンウェーハにおいては、矢印で示すように、シリコンウェーハの外周部に、支持部11aとの接触によって形成されたと考えられる傷が形成されている。そして、第1の支柱11に最も近い位置の傷のみから、スリップ転位が発生している。
【0028】
なお、図には示さないが、第2の支柱12については、シリコンウェーハの外周部に第2の支柱12の支持部12aとの接触により形成されたと考えられる傷があるが、この傷からスリップ転位は発生しなかった。
【0029】
本発明者らは、上記の結果を受けて、スリップ転位が第1の支柱11の近くに位置する傷のみから発生する原因を究明すべく、シミュレーションによって熱処理中のシリコンウェーハの伝熱解析を行った。その結果、第1の支柱11から離れたシリコンウェーハの領域(例えば、支持部11aの先端部分)の熱応力は比較的小さいのに対して、ヒーター13からの熱が第1の支柱11によって遮られるシリコンウェーハの領域の熱応力が大きいことが判明した。また、支持部12aには支持部11aほど熱応力が掛かっていないことが確認された。
【0030】
上記第1の支柱11の陰となる領域において熱応力が大きくなる理由としては、第1の支柱11によってヒーター13からの熱が妨げられる第1の支柱11の陰となる領域と、妨げられない領域との境界付近で、シリコンウェーハの温度変化が大きくなるためと考えられる。
【0031】
本発明者らは、上記伝熱解析の結果を受けて、熱処理中に半導体ウェーハWにスリップ転位が発生するのを抑制できる熱処理ボートの形状について鋭意検討した。縦型熱処理炉において使用する熱処理ボートの構造として、ヒーター13からの熱を妨げる第1の支柱11、12を除去することは困難である。そこで、本発明者らは、
図1に示したような第1の支柱11、12を有し、第1の支柱11、12に支持部11a、12aが接続された熱処理ボート100において、スリップ転位の発生を抑制することができる熱処理ボートの形状について鋭意検討した。その結果、ヒーター13からの熱が第1の支柱11の陰になる領域(第1の領域)以外の領域(第2の領域)で、支持部11aが半導体ウェーハWの裏面を支持するように構成することが極めて有効であることを見出し、本発明を完成させたのである。
【0032】
なお、本発明において、上記「ヒーター13からの熱が第1の支柱11の陰になる領域(第1の領域)」とは、
図5に示すように、熱処理ボードを上面視した際に、熱処理ボート100の中心軸Oを含むとともに第1の支柱11(第2の支柱12)に接する2つの面P1、P2に挟まれた領域(第1の領域)A1を意味している。
【0033】
図5において、支持部11aが領域(第1の領域)A1以外の領域(第2の領域)A2で支持部11aが半導体ウェーハWの裏面を支持することによって、熱処理中に半導体ウェーハWの外周部に形成された傷からスリップ転位が発生するのを抑制することができる。
【0034】
図6は、支持部11aによる半導体ウェーハWの支持方法を説明する図である。
図6(a)は、第1の支柱11付近の傷からスリップ転位が発生した第1の支柱11を示しており、
図2に示したものと同様のものである。
図6(a)に示した支持部11aは、第1の支柱11の陰となる第1の領域A1においても、半導体ウェーハWの裏面を支持し、支持部11aと半導体ウェーハWとがウェーハ支持領域Acにおいて面接触する。これに対して、
図6(b)に示した支持部21aにおいては、第1の支柱21の陰となる部分が大きく除去されている。これにより、第1の支持部21aは、第1の領域A1において半導体ウェーハWの裏面を支持せず、支持部21aと半導体ウェーハWとは、第2の領域A2のみにあるウェーハ支持領域Acにおいて面接触する。こうして、熱処理中に支持部21aと半導体ウェーハWにおける熱応力の大きな領域との接触を回避することができ、熱処理中に半導体ウェーハWの外周部に形成された傷からスリップ転位が発生するのを抑制することができる。
【0035】
なお、2本の第1の支柱21の各々に接続された支持部21aにおけるウェーハ支持領域Acが、縦型熱処理用熱処理ボート100の中心軸Oに対して、1本以上の第2の支柱12のいずれかに接続された支持部12aにおけるウェーハ支持領域Acの点対称な位置に配置されていることが好ましい。これにより、半導体ウェーハWの荷重を支持部21a、12aにバランスよく分散させて特定の支持部21a、12aに大きな荷重が負荷されるのを抑制して、スリップ転位が発生するのをさらに抑制することができる。なお、「支持部21aにおけるウェーハ支持領域Acが、縦型熱処理用熱処理ボート100の中心軸Oに対して、1本以上の第2の支柱12のいずれかに接続された支持部12aにおけるウェーハ支持領域Acの点対称な位置に配置されている」とは、
図7に示すように、上面視にて、支持部21aにおけるウェーハ支持領域Acを熱処理ボート100の中心軸Oの周りに180度回転させた際に、第2の支柱12のいずれかの支持部12aにおけるウェーハ支持領域Acと少なくとも一部が重複することを意味している。換言すれば、第1の支持部21aのウェーハ支持領域Acのある点および中心軸Oを通る直線が、第2の支柱12のいずれかの支持部12aにおけるウェーハ支持領域Acを通ることを意味している。
【0036】
また、少なくとも1つの支柱21、12の各々に接続された支持部21a、12aは、半導体ウェーハWの外周より内側、かつデバイス加工領域の外側で半導体ウェーハWの裏面を支持するように配置されていることが好ましい。デバイス形成工程においては、RTA、FLAなどの高速に昇降温させる熱処理を行うが、デバイス加工領域の裏面に傷が存在する場合には、スリップ転位が発生するおそれがある。支持部21a、12aが、半導体ウェーハのW外周より内側、かつデバイス加工領域の外側で半導体ウェーハWの裏面を支持することにより、デバイス加工領域の裏面に傷が形成されるのを防止して、スリップ転位が発生するのを防止することができ、歩留まりを向上させることができる。
【0037】
なお、支持する半導体ウェーハWの直径が、例えば450mmのような場合には、ウェーハの重量が増すため、直径が300mmの場合よりも支持部21a、12aへの負荷が大きくなる。このような場合には、全ての第1の支柱21、12の支持部21a、12aが、第1の支柱21、12の陰となる第1の領域A1以外の第2の領域A2において半導体ウェーハWの裏面を支持するように構成することが好ましい。これにより、半導体ウェーハWと支持部21a、12aとの接触によって形成された傷からスリップ転位が発生するのを抑制することができる。
【0038】
また、半導体ウェーハWの直径は、特に限定されず、例えば150mm以上、300mm以上とすることができ、具体的には150mm、200mm、300mm、450mmなどとすることができる。熱処理ボート1の各構成は、半導体ウェーハWの直径に応じた寸法で構成することができる。
【0039】
第1の支柱21、12および支持部21a、12aは、シリコン、炭化シリコンまたは酸化シリコンで構成することができる。
【0040】
(半導体ウェーハの熱処理方法)
次に、本発明による半導体ウェーハの熱処理方法について説明する。本発明による半導体ウェーハの熱処理方法は、上述した本発明による熱処理ボートの支持部上に熱処理対象の半導体ウェーハを載置して上記半導体ウェーハに対して熱処理を施すことを特徴とする。
【0041】
上述のように、本発明による熱処理ボート1においては、第1の支柱21の支持部21aは、第1の支柱21の陰となる第1の領域A1以外の第2の領域A2において、熱処理対象の半導体ウェーハWの裏面を支持する。そのため、上記熱処理ボート1を縦型熱処理炉内に設置し、第1の支柱21、12の支持部21a、12a上に熱処理対象の半導体ウェーハWを載置して熱処理することにより、熱処理中に半導体ウェーハWの外周部に形成された傷からスリップ転位が発生するのを抑制することができる。
【0042】
上記熱処理対象の半導体ウェーハは、特に限定されないが、シリコンウェーハの場合に熱処理を好適に行うことができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は実施例に限定されない。
【0044】
(発明例1)
図8(a)に示した支持部21aを有する熱処理ボートを用いてシリコンウェーハ(直径:200mm)に対して熱処理を施した。
図8(a)に示した支持部21aは、
図2に示した支持部11aに類似した構造を有しているが、第2の領域A2に存在するウェーハ支持領域Acのみにてシリコンウェーハの裏面を支持するように構成されている。また、
図8(b)に示すように、第1の支柱21の各々に接続された支持部21aにおけるウェーハ支持領域Acが、縦型熱処理用熱処理ボート1の中心軸Oに対して、第2の支柱12のいずれかに接続された支持部12aにおけるウェーハ支持領域Acの点対称な位置に配置されている。こうした熱処理ボートの支持部21a、12a上にシリコンウェーハを載置し、110枚のシリコンウェーハに対して熱処理を施した。具体的には、700℃の縦型熱処理炉に投入し、5℃/分の昇温速度で1100℃まで昇温し、60分間保持した。その後、2.5℃/分の降温速度で700℃まで降温し、炉内から取り出した。その結果、シリコンウェーハにスリップ転位は発生しなかった。シミュレーションによる電熱計算を行ったところ、支持部とシリコンウェーハとの接触領域における接触点の中でミーゼス応力の最大値は1.22MPaであり、平均値は1.16MPaとなった。
【0045】
(発明例2)
発明例1と同様に、シリコンウェーハに対して熱処理を施した。ただし、熱処理ボートとしては、
図9(a)に示すような支持部21aを有するものを用いた。
図9(a)に示した支持部21aは、
図8(a)に示したものよりも、シリコンウェーハのより中心側の部分、具体的には、シリコンウェーハの外周から20~30mmの部分を支持するように構成されている。また、
図9(b)に示すように、第1の支柱21の各々に接続された支持部21aにおけるウェーハ支持領域Acが、縦型熱処理用熱処理ボート1の中心軸Oに対して、第2の支柱12のいずれかに接続された支持部12aにおけるウェーハ支持領域Acの点対称な位置に配置されている。その他の条件は、発明例1と全て同じである。その結果、シリコンウェーハにスリップ転位は発生しなかった。シミュレーションによる電熱計算を行ったところ、支持部とシリコンウェーハとの接触領域における接触点の中でミーゼス応力の最大値は1.09MPaであり、平均値は0.98MPaとなった。
【0046】
(比較例)
発明例1と同様に、シリコンウェーハに対して熱処理を施した。ただし、熱処理ボートとしては、
図1~3に示した熱処理ボート100を用いた。
図1~3に示した熱処理ボート100では、第1の支柱11の陰になる第1の領域A1においてもシリコンウェーハを支持する。その他の条件は、発明例1と全て同じである。その結果、第1の支柱11の陰になる第1の領域A1における傷からスリップ転位が発生した。シミュレーションによる電熱計算を行ったところ、支持部11aとシリコンウェーハとの接触領域における接触点の中でミーゼス応力の最大値は1.35MPaであり、平均値は1.23MPaとなった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、半導体ウェーハに対して熱処理を施す際に、従来よりも半導体ウェーハにスリップ転位が発生するのを抑制することができるため、半導体産業において有用である。
【符号の説明】
【0048】
1,100 熱処理ボート
11,21 第1の支柱
12 第2の支柱
11a,12a,21a 支持部
13 ヒーター
A1 第1の領域
A2 第2の領域
Ac ウェーハ支持領域
P、P1、P2 面
Lw 半導体ウェーハの外周
O 熱処理ボートの中心軸
W 半導体ウェーハ