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特許7543912ラテックス、ラテックス組成物、成形体、およびフォームラバー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】ラテックス、ラテックス組成物、成形体、およびフォームラバー
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/02 20060101AFI20240827BHJP
   C08J 9/30 20060101ALI20240827BHJP
   C08L 23/22 20060101ALI20240827BHJP
   C08L 9/04 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C08J3/02 CEQ
C08J9/30
C08L23/22
C08L9/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020563283
(86)(22)【出願日】2019-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2019050504
(87)【国際公開番号】W WO2020138030
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2018242964
(32)【優先日】2018-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷山 友哉
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/145009(WO,A1)
【文献】特開平06-073220(JP,A)
【文献】特開2006-206677(JP,A)
【文献】特開2006-137859(JP,A)
【文献】特開2000-308519(JP,A)
【文献】特表2004-524407(JP,A)
【文献】特開2005-257727(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105440354(CN,A)
【文献】堀田 透,ブレンドゴム配合設計の実際,日本ゴム協会誌,2014, Vol. 87, No.11,460-464,https://doi.org/10.2324/gomu.87.460
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/02
C08J 9/30
C08L 23/22
C08L 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブチルゴム、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体、アニオン性乳化剤および水を含み、前記ブチルゴムと前記ニトリル基含有共役ジエン系共重合体の重量比が85:15~10:90であるラテックスであって、
前記ブチルゴム中における、イソブチレン単位の含有割合が95モル%以上であり、
前記ニトリル基含有共役ジエン系共重合体中における、エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合が5~80重量%である
ラテックス
【請求項2】
前記ブチルゴムのムーニー粘度(ML1+8、125℃)が20~70である請求項1に記載のラテックス。
【請求項3】
請求項1または2に記載のラテックスと、架橋剤とを含有するラテックス組成物。
【請求項4】
架橋促進剤をさらに含有する請求項に記載のラテックス組成物。
【請求項5】
気泡安定剤をさらに含有する請求項またはに記載のラテックス組成物。
【請求項6】
請求項1または2に記載のラテックス、または請求項のいずれかに記載のラテックス組成物を用いて得られる成形体。
【請求項7】
請求項1または2に記載のラテックス、または請求項のいずれかに記載のラテックス組成物を用いて得られるフォームラバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル化に要する時間が短く、かつ、耐油性に優れた成形体を与えることのできるラテックス、ならびに、これを用いてなるラテックス組成物、成形体、およびフォームラバーに関する。
【背景技術】
【0002】
重合体ゴムラテックスを用いて製造されたフォームラバー(ゴム発泡体)は、マットレス、化粧用スポンジ(パフ)、ロール、衝撃吸収剤等として種々の用途に使用されている。フォームラバーの用途のなかで、特にパフには、化粧料に対する良好な耐油性を有し、かつ、化粧料の取り込みが容易で、化粧料の肌へののり(付着性)が良好なスポンジが求められている。
【0003】
このようなゴム発泡体を得るための重合体ラテックスとして、耐油性が良好であるという観点より、従来から、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴム(NBR)ラテックスが用いられている(たとえば、特許文献1参照)。一方で、化粧料中には種々の成分が含まれているところ、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴムラテックスを用いて得られるゴム発泡体は、化粧料として用いられる成分の種類によっては、耐油性が十分でない場合があり、より具体的には、パラメトキシケイ皮酸オクチル等の紫外線吸収剤等に対して耐油性が十分でなく、そのため、このような成分に対し耐油性を示す重合体ラテックスが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-32942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、ゲル化に要する時間が短く、かつ、耐油性に優れた成形体を与えることのできるラテックス、ならびに、これを用いてなるラテックス組成物、成形体、およびフォームラバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ブチルゴム、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体、および水を含み、前記ブチルゴムと前記ニトリル基含有共役ジエン系共重合体の重量比が適切に調整されたラテックスによれば、ゲル化に要する時間が短く、かつ、耐油性に優れた成形体を与えることのできることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0007】
すなわち、本発明によれば、ブチルゴム、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体、および水を含み、前記ブチルゴムと前記ニトリル基含有共役ジエン系共重合体の重量比が85:15~10:90であるラテックスが提供される。
【0008】
本発明のラテックスは、アニオン性乳化剤をさらに含有することが好ましい。
前記ブチルゴム中における、イソブチレン単位の含有割合が95モル%以上であることが好ましい。
前記ブチルゴムのムーニー粘度(ML1+8、125℃)が20~70であることが好ましい。
前記ニトリル基含有共役ジエン系共重合体中における、エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合が5~80重量%であることが好ましい。
【0009】
また、本発明によれば、上記のラテックスと、架橋剤とを含有するラテックス組成物が提供される。
【0010】
本発明のラテックス組成物は、架橋促進剤をさらに含有することが好ましい。
本発明のラテックス組成物は、気泡安定剤をさらに含有することが好ましい。
【0011】
また、本発明によれば、上記のラテックス、または上記のラテックス組成物を用いて得られる成形体が提供される。
さらに、本発明によれば、上記のラテックス、または上記のラテックス組成物を用いて得られるフォームラバーが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ゲル化に要する時間が短く、かつ、耐油性に優れた成形体を与えることのできるラテックス、ならびに、これを用いてなるラテックス組成物、成形体、およびフォームラバーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<ラテックス>
本発明のラテックスは、ブチルゴム、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体、および水を含む。
【0014】
本発明で用いられるブチルゴムは、イソブチレン(イソブテン)由来の繰り返し単位を有する重合体からなるゴムであり、より具体的には、イソブチレンと少量のイソプレンとの共重合体からなるゴム(イソブチレン-イソプレンゴム)である。また、ブチルゴムとしては、イソブチレンと少量のイソプレンとの共重合体の一部をハロゲン化してなるハロゲン化ブチルゴムであってもよい。
【0015】
ブチルゴム中における、イソブチレン単位の含有割合は、特に限定されないが、好ましくは95モル%以上、100モル%未満であり、より好ましくは97~99.9モル%である。また、ブチルゴム中における、イソプレン単位の含有割合(不飽和度)は、特に限定されないが、好ましくは0モル%超、5モル%以下、より好ましくは0.1~3モル%である。イソブチレン単位およびイソプレン単位の含有割合を上記範囲とすることにより、得られる成形体の耐油性をより適切に高めることができる。
【0016】
ブチルゴムとしては、ムーニー粘度(ML1+8、125℃)が20~70の範囲にあるものが好ましく、より好ましくは20~65、さらに好ましくは25~60である。ブチルゴムとして、ムーニー粘度が上記範囲にあるものを使用することにより、ラテックスを用いてフォームラバーなどの成形体を製造する場合に、成形時の収縮を抑制できる。
【0017】
本発明のラテックス中のブチルゴムからなるゴム粒子の体積累積粒径d50(体積基準の粒子径分布において累積体積が50%となる粒子径)は、好ましくは100~5,000nm、より好ましくは150~4,000nm、さらに好ましくは250~3,000nm、特に好ましくは500~2,000nmである。ブチルゴムからなるゴム粒子の体積累積粒径d50を、上記範囲とすることにより、ラテックスの保存安定性をより適切に高めることができる。なお、ブチルゴムからなるゴム粒子の体積累積粒径d50は、たとえば、後述するブチルゴムのラテックスの製造において、使用するアニオン性乳化剤の種類や使用量、乳化時における乳化条件等により制御することができる。
【0018】
本発明で用いられるニトリル基含有共役ジエン系共重合体は、共役ジエン単量体と、エチレン性不飽和ニトリル単量体とを共重合してなる共重合体であり、これらに加えて、必要に応じて用いられる、これらと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体を共重合してなる共重合体であってもよい。
【0019】
エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、ニトリル基を含有するエチレン性不飽和単量体であれば特に限定されないが、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、α-シアノエチルアクリロニトリルなどが挙げられる。なかでも、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルがより好ましい。これらのエチレン性不飽和ニトリル単量体は、単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。
【0020】
ニトリル基含有共役ジエン系共重合体中における、エチレン性不飽和ニトリル単量体により形成されるエチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合は、好ましくは5~80重量%であり、より好ましくは15~70重量%、さらに好ましくは20~60重量%であり、特に好ましくは31~60重量%である。エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合を上記範囲とすることにより、ゲル化に要する時間をより短くすることができる。また、ラテックスを用いてフォームラバーなどの成形体を製造する場合に、成形時の収縮を抑制できる。
【0021】
共役ジエン単量体としては、たとえば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンおよびクロロプレンなどが挙げられる。これらのなかでも、1,3-ブタジエン、イソプレンが好ましい。これらの共役ジエン単量体は、単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。
【0022】
ニトリル基含有共役ジエン系共重合体中における、共役ジエン単量体により形成される共役ジエン単量体単位の含有割合は、好ましくは20~95重量%であり、より好ましくは30~85重量%、さらに好ましくは40~80重量%であり、特に好ましくは40~69重量%である。共役ジエン単量体単位の含有割合を上記範囲とすることにより、ゲル化に要する時間をより短くすることができる。また、ラテックスを用いてフォームラバーなどの成形体を製造する場合に、成形時の収縮を抑制できる。
【0023】
また、ゲル化に要する時間をより短くすることができ、さらには、ラテックスを用いてフォームラバーなどの成形体を製造する場合に、成形時の収縮を抑制できるという観点より、1,3-ブタジエンおよびイソプレンの両方を使用することが好ましく、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体中における、1,3-ブタジエン単位およびイソプレン単位の比率を、1,3-ブタジエン単位/イソプレン単位の比で5/5~9/1の範囲とすることが好ましい。
【0024】
共役ジエン単量体およびエチレン性不飽和ニトリル単量体と共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体としては、たとえば、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノまたはジメチル、フマル酸モノまたはジエチル、フマル酸モノまたはジ-n-ブチル、イタコン酸モノまたはジ-n-ブチル等のエチレン性不飽和カルボン酸のモノまたはジアルキルエステル;メトキシアクリレート、エトキシアクリレート、メトキシエトキシエチルアクリレート等のエチレン性不飽和カルボン酸のアルコキシアルキルエステル;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル酸アミド及びその誘導体;ジメチルアミノメチルアクリレート、ジエチルアミノメチルアクリレート等のアミノ基を有するアクリレート;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン等の芳香族ビニル単量体;エチレン、プロピレン等のα-オレフィン;ジシクロペンタジエン、ビニルノルボルネン等の非共役ジエン単量体などを挙げることができる。これらの単量体は、単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。ニトリル基含有共役ジエン系共重合体中における、その他のエチレン性不飽和単量体により形成されるその他の単量体単位の含有割合は、好ましくは40重量%以下であり、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下である。その他の単量体単位の含有割合を上記範囲とすることにより、ゲル化に要する時間をより短くすることができる。また、ラテックスを用いてフォームラバーなどの成形体を製造する場合に、成形時の収縮を抑制できる。
【0025】
本発明のラテックス中のニトリル基含有共役ジエン系共重合体からなるゴム粒子の体積累積粒径d50(体積基準の粒子径分布において累積体積が50%となる粒子径)は、好ましくは420~1500nm、より好ましくは460~1250nm、さらに好ましくは500~1000nmである。ニトリル基含有共役ジエン系共重合体からなるゴム粒子の体積累積粒径d50を、上記範囲とすることにより、ラテックスの保存安定性をより適切に高めることができる。
【0026】
本発明のラテックス中における、ブチルゴムとニトリル基含有共役ジエン系共重合体との含有割合は、(ブチルゴム:ニトリル基含有共役ジエン系共重合体)の重量比で、85:15~10:90であり、85:15~20:80であることが好ましく、80:20~30:70であることがさらに好ましい。ブチルゴムが多すぎると、ゲル化に長時間を要してしまう。また、ラテックスを用いてフォームラバーなどの成形体を製造する場合には、成形時に大きく収縮してしまう。一方、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体が多すぎると、得られる成形体の耐油性が十分でない。
【0027】
本発明のラテックス中における、ブチルゴムとニトリル基含有共役ジエン系共重合体との合計の含有割合(固形分濃度)は、好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは55~70重量%、さらに好ましくは60~70重量%である。ブチルゴムおよびニトリル基含有共役ジエン系共重合体の合計の含有割合を上記範囲とすることにより、ゲル化に要する時間をより短くすることができる。また、ラテックスを用いてフォームラバーなどの成形体を製造する場合に、成形時の収縮を抑制できる。
【0028】
また、本発明のラテックスは、アニオン性乳化剤を含有することが好ましい。アニオン性乳化剤としては、特に限定されないが、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、リノレン酸ナトリウム等の脂肪酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、デシルベンゼンスルホン酸カリウム、セチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、セチルベンゼンスルホン酸カリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸カリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸カリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;ラウリルリン酸ナトリウム、ラウリルリン酸カリウム等のモノアルキルリン酸塩;ロジン酸ナトリウム、ロジン酸カリウム等のロジン酸塩;等が挙げられる。これらの中でも、得られるラテックスの保存安定性をより高めることができるという点より、炭素数6~30の脂肪酸塩(すなわち、環構造を有さない鎖状炭化水素のカルボン酸塩)が好ましく、炭素数10~24の脂肪酸塩が好ましく、炭素数13~21の脂肪酸塩がより好ましく、オレイン酸カリウムが特に好ましい。なお、アニオン性乳化剤は、本発明のラテックス中において、ブチルゴムおよびニトリル基含有共役ジエン系共重合体を乳化分散させる作用に加えて、フォームラバーなどの成形体を製造する際に、起泡剤としても作用する。本発明のラテックスは、アニオン性乳化剤を含有することにより、ラテックスのゲル化に要する時間をより短くすることができる。また、ラテックスを用いてフォームラバーなどの成形体を製造する場合に、成形時の収縮を抑制できる。
【0029】
また、乳化剤として、アニオン性乳化剤以外の乳化剤、たとえば、カチオン性乳化剤やノニオン性乳化剤を併用してもよい。この場合においては、得られるラテックスのゲル化に要する時間をより短くすることができ、さらには、ラテックスを用いてフォームラバーなどの成形体を製造する場合に、成形時の収縮を抑制できることから、用いる乳化剤中における、アニオン性乳化剤の含有割合を5重量%以上とすることが好ましく、7重量%以上とすることがより好ましく、10重量%以上とすることが特に好ましく、乳化剤として、実質的にアニオン性乳化剤のみからなるものを用いることが好ましい。
【0030】
本発明のラテックス中における、アニオン性乳化剤の含有量は、ブチルゴムおよびニトリル基含有共役ジエン系共重合体の合計100重量部に対して、好ましくは2~10重量部である。アニオン性乳化剤の含有量を上記範囲とすることにより、ゲル化に要する時間をより短くすることができる。また、ラテックスを用いてフォームラバーなどの成形体を製造する場合に、成形時の収縮を一層抑制できる。
【0031】
<ラテックスの製造方法>
本発明のラテックスは、たとえば、ブチルゴムのラテックスと、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体のラテックスとをブレンドすることで製造することができる。
【0032】
ブチルゴムの製造方法としては、特に限定されないが、たとえば、触媒として塩化アルミニウムを使用し、塩化メチレン中で、-100~-90℃にて、イソブチレンおよびイソプレンをスラリー重合する方法などが挙げられる。また、ブチルゴムが、ハロゲン化ブチルゴムである場合には、ハロゲン化剤として臭素(Br)または塩素(Cl)を使用して、ヘキサン中で、4~60℃にて、スラリー重合により得られたブチルゴムをハロゲン化する方法等により製造することができる。
【0033】
ラテックスの製造のために用いるブチルゴムのラテックスは、たとえば、ブチルゴムが溶媒に溶解してなるブチルゴム溶液を、アニオン性乳化剤の存在下、水と混合することで、乳化液を得る工程と、得られた乳化液から溶媒を除去する工程とを経て製造することができる。
【0034】
ブチルゴム溶液としては、スラリー重合により得られた重合溶液をそのまま用いてもよいし、あるいは、スラリー重合により得られた重合溶液から固形のブチルゴムを取り出した後、再度、溶媒に溶解させることにより得られたものを用いてもよい。この際に用いる溶媒としては、特に限定されないが、ヘキサン、イソヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、キシレン、トルエン、ベンゼン、超臨界状態にある二酸化炭素が好適に挙げられ、これらの中でも、本発明のラテックスをより適切に得ることができるという観点より、シクロヘキサンが好ましい。
【0035】
ブチルゴム溶液を、アニオン性乳化剤の存在下、水と混合することにより乳化させ、乳化液を得る方法としては、特に限定されないが、ブチルゴム溶液と、アニオン性乳化剤を含有する水溶液とを混合する方法や、ブチルゴム溶液にアニオン性乳化剤を含有させ、これを水と混合する方法や、ブチルゴム溶液にアニオン性乳化剤を含有させたものと、アニオン性乳化剤を含有する水溶液とを混合する方法などが挙げられる。これらを混合し、乳化する際には、乳化装置を用いることができ、乳化装置としては、乳化機または分散機として一般に市販されているものを制限なく用いることができる。
【0036】
乳化装置としては、たとえば、商品名「ホモジナイザー」(IKA社製)、商品名「ポリトロン」(キネマティカ社製)、商品名「TKオートホモミキサー」(特殊機化工業社製)等のバッチ式乳化機;商品名「TKパイプラインホモミキサー」(特殊機化工業社製)、商品名「コロイドミル」(神鋼パンテック社製)、商品名「スラッシャー」(日本コークス工業社製)、商品名「トリゴナル湿式微粉砕機」(三井三池化工機社製)、商品名「キャビトロン」(ユーロテック社製)、商品名「マイルダー」(太平洋機工社製)、商品名「ファインフローミル」(太平洋機工社製)等の連続式乳化機;商品名「マイクロフルイダイザー」(みずほ工業社製)、商品名「ナノマイザー」(ナノマイザー社製)、商品名「APVガウリン」(ガウリン社製)等の高圧乳化機;商品名「膜乳化機」(冷化工業社製)等の膜乳化機;商品名「バイブロミキサー」(冷化工業社製)等の振動式乳化機;商品名「超音波ホモジナイザー」(ブランソン社製)等の超音波乳化機;等が挙げられる。なお、乳化操作の条件は、特に限定されず、所望の分散状態になるように、処理温度、処理時間などを適宜選定すればよい。
【0037】
ブチルゴム溶液から乳化液を得るために用いるアニオン性乳化剤としては、ラテックスに含有させ得るアニオン性乳化剤として上述したものを用いることができる。
【0038】
次いで、得られた乳化液について、溶媒を除去する操作を行うことにより、ブチルゴムのラテックスを得ることができる。乳化液から溶媒を除去する方法としては、得られるブチルゴムのラテックス中における、溶媒の含有量を500重量ppm以下とすることができるような方法であれば、特に限定されないが、たとえば、減圧蒸留、常圧蒸留、水蒸気蒸留、遠心分離等の方法を採用することができる。
【0039】
減圧蒸留は、乳化液を、好ましくは500~900hPaの減圧下にて、加温することにより行うことができる。減圧蒸留における温度は、用いる溶媒の種類に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは50~90℃である。
【0040】
遠心分離は、たとえば、連続遠心分離機などの遠心分離装置を用いて、遠心力を、好ましくは100~10,000Gの範囲内、より好ましくは2,000~8,000Gの範囲内として行うことができる。また、連続遠心分離機を用いる場合には、遠心分離機に送り込む流速を、好ましくは500~1700Kg/hr、遠心分離機の背圧(ゲージ圧)を、好ましくは0.03~1.6MPaの条件にて実施することが好ましい。遠心分離操作により、遠心分離後の軽液として、ブチルゴムのラテックスを得ることができる。
【0041】
また、溶媒を除去することにより得られたブチルゴムのラテックスについて、必要に応じて、濃縮処理を行い、固形分濃度を調整してもよい。濃縮処理は、たとえば、減圧により、水を一部蒸発させる方法や、遠心分離による方法などが挙げられる。
【0042】
ラテックスの製造のために用いるブチルゴムのラテックス中における、ブチルゴムの含有割合(固形分濃度)は、好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは55~70重量%、さらに好ましくは60~70重量%である。
【0043】
ブチルゴムのラテックス中における、アニオン性乳化剤の含有量は、ブチルゴム100重量部に対して、好ましくは2~10重量部である。
【0044】
ラテックスの製造のために用いるニトリル基含有共役ジエン系共重合体のラテックスは、たとえば、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体を構成する単量体の混合物を、乳化重合法により共重合する工程を経て製造することができる。
【0045】
乳化重合法としては、従来公知の方法を採用することができる。たとえば、単量体混合物を乳化重合する際には、通常用いられる、乳化剤(界面活性剤)、重合開始剤、キレート剤、酸素補足剤、分子量調整剤等の重合副資材を使用することができる。これら重合副資材の添加方法は特に限定されず、初期一括添加法、分割添加法、連続添加法などいずれの方法でもよい。
【0046】
乳化剤としては、特に限定されないが、たとえば、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤などが挙げられるが、アニオン性乳化剤が好ましい。アニオン性乳化剤としては、ラテックスに含有させ得るアニオン性乳化剤として上述したものを用いることができる。乳化剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、好ましくは0.5~5重量部である。
【0047】
重合開始剤としては、特に限定されないが、たとえば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-α-クミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物;などを挙げることができる。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、好ましくは0.01~10重量部、より好ましくは0.01~2重量部である。
【0048】
また、過酸化物開始剤は還元剤との組み合わせで、レドックス系重合開始剤として使用することができる。この還元剤としては、特に限定されないが、硫酸第一鉄、ナフテン酸第一銅等の還元状態にある金属イオンを含有する化合物;メタンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸化合物;ジメチルアニリン等のアミン化合物;などが挙げられる。これらの還元剤は単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。還元剤の使用量は、過酸化物100重量部に対して3~1000重量部であることが好ましい。
【0049】
分子量調整剤としては、たとえば、n-ヘキシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、t-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-ステアリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン;ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等のキサントゲン化合物;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系化合物;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物;アリルアルコール等のアリル化合物;ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物;α-ベンジルオキシスチレン、α-ベンジルオキシアクリロニトリル、α-ベンジルオキシアクリルアミド、トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタン、アクロレイン、メタアクロレイン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2-エチルヘキシルチオグリコレート、α-メチルスチレンダイマー、ターピノレンなどが挙げられる。これらの分子量調整剤は、それぞれ単独で、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。分子量調整剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対し、好ましくは0.1~3重量部、より好ましくは0.2~2重量部、特に好ましくは0.3~1.5重量部である。
【0050】
乳化重合する際に使用する水の量は、使用する全単量体100重量部に対して、80~600重量部が好ましく、100~300重量部が特に好ましい。
【0051】
乳化重合反応は、連続式、回分式のいずれでもよく、重合時間等も特に限定されない。単量体の添加方法としては、たとえば、反応容器に使用する単量体を一括して添加する方法、重合の進行に従って連続的または断続的に添加する方法、単量体の一部を添加して特定の転化率まで反応させ、その後、残りの単量体を連続的または断続的に添加して重合する方法等が挙げられ、いずれの方法を採用してもよい。単量体を混合して連続的または断続的に添加する場合、混合物の組成は、一定としても、あるいは変化させてもよい。また、各単量体は、使用する各種単量体を予め混合してから反応容器に添加しても、あるいは別々に反応容器に添加してもよい。重合反応を開始した後に、単量体の一部を反応容器に添加して重合を継続する方法を用いる場合には、たとえば、エチレン性不飽和ニトリル単量体および共役ジエン単量体の一部を反応容器に添加して、重合反応を開始した後、反応容器内の重合反応率が20~65%である間に、共役ジエン単量体の残部を一括または分割して反応容器に添加し、さらに重合反応を継続する方法が挙げられる。この際においては、重合反応を開始した後に添加する共役ジエン単量体の割合は、重合に用いる共役ジエン単量体全量の20~60重量%とすることが好ましい。
【0052】
さらに、乳化重合を行う際には、必要に応じて、キレート剤、分散剤、pH調整剤、脱酸素剤、粒子径調整剤等の重合副資材を用いることができ、これらは種類、使用量とも特に限定されない。
【0053】
以上のように単量体混合物を乳化重合し、所定の重合転化率に達した時点で、重合系を冷却したり、重合停止剤を添加したりして、重合反応を停止する。重合を停止する際の重合転化率は、特に限定されないが、好ましくは90重量%以上である。この重合転化率が低すぎると生産性が低下する傾向にある。重合温度は、特に限定されないが、好ましくは0~50℃、より好ましくは2~35℃である。
【0054】
重合停止剤としては、特に限定されないが、たとえば、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミン硫酸塩、ジエチルヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ハイドロキノン誘導体、カテコール誘導体、ならびに、ヒドロキシジメチルベンゼンチオカルボン酸、ヒドロキシジエチルベンゼンジチオカルボン酸、ヒドロキシジブチルベンゼンジチオカルボン酸などの芳香族ヒドロキシジチオカルボン酸およびこれらのアルカリ金属塩などが挙げられる。重合停止剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、好ましくは0.05~2重量部である。
【0055】
以上のようにして重合反応を行い、乳化液を得ることができる。なお、重合反応を停止して乳化液を得た後には、必要に応じて乳化液から未反応単量体を除去してもよい。
【0056】
重合反応を停止した後、さらに、得られた乳化液に含まれるニトリル基含有共役ジエン系共重合体の粒子の体積累積粒径を調整することにより、体積累積粒径d50を、上記の範囲に調整可能である。
【0057】
体積累積粒径の調整を行う方法としては、(i)乳化液中の粒子同士を合一させることで肥大化させる、粒径肥大化処理を施す方法、(ii)乳化液に含まれる粒子を凝固させて凝固物を得た後、凝固物を有機溶媒に溶解させて溶液を得て、次いで、乳化剤の存在下に、得られた溶液を水中で乳化し、必要により有機溶媒を除去する方法、(iii)体積累積粒径の異なる2以上の乳化液を混合する方法、などが挙げられる。
【0058】
(i)の方法において、粒径肥大化処理の方法としては、特に限定されないが、たとえば、(1)重合終了後、乳化液に対して、1,3-ブタジエン等の共役ジエン化合物やトルエン等を溶剤として加え、強攪拌する方法、(2)カルボキシル基含有重合体ラテックス等の粒径肥大化剤を乳化液に添加して、強攪拌する方法などが挙げられる。
【0059】
上記(1)の方法で粒径肥大化処理を行う場合には、溶剤の添加量は、乳化液中のニトリル基含有共役ジエン系共重合体100重量部に対して、好ましくは30~300重量部である。また、上記(1)の方法で粒径肥大化処理を行う場合には、攪拌の条件としては、特に限定されないが、たとえば、パドル型攪拌翼等の攪拌装置を用いて、回転速度を、好ましくは50~2,500rpmとし、攪拌時間を、好ましくは0.5~12.0時間とする方法が挙げられる。
【0060】
また、粒径肥大化処理を行う際には、攪拌に伴う発泡を抑制するという観点より、乳化液に消泡剤を添加し、消泡剤の存在下で、粒径肥大化処理を行うことが好ましい。
【0061】
(ii)の方法において、乳化液に含まれる粒子を凝固させる方法としては、たとえば、乳化液と水溶性の有機溶媒とを混合する方法、乳化液と酸とを混合する方法、乳化液と塩とを混合する方法が挙げられる。
【0062】
水溶性の有機溶媒としては、ラテックス中の重合体が溶解しない溶媒を選択することがより好ましい。このようは有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール等が挙げられる。酸としては、酢酸、蟻酸、リン酸、塩酸等が挙げられる。塩としては、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸アルミニウム、塩化カリウム等が挙げられる。
【0063】
(ii)の方法で用いる有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキセン等の脂環族炭化水素溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、二塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルヘキシルケトン、ジイソブチルケトン、ブチルアルデヒド、プロピルアセテート、ブチルアセテート、アミルアセテート等のケトン系溶媒;エチルプロピオネート、エチルイソブチレート、ブチルブチレート等のエステル系溶媒;ジメチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;等を挙げることができる。
【0064】
(ii)の方法において、乳化剤の存在下に、得られた溶液を水中で乳化させるために、乳化装置を用いることができる。また、乳化剤の添加方法は、特に限定されず、予め溶液に添加しても、乳化操作を行っている最中に、溶液に添加してもよく、一括添加しても、分割添加してもよい。乳化装置としては、例えば、ブチルゴム溶液を乳化させるために用いる乳化装置として上述したものを、同様に用いることができる。
【0065】
(ii)の方法で用いる乳化剤としては、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤などが挙げられるが、アニオン性乳化剤が好ましい。アニオン性乳化剤としては、ラテックスに含有させ得るアニオン性乳化剤として上述したものを用いることができる。乳化剤の使用量は、粒子100重量部に対して、好ましくは0.5~50重量部であり、より好ましくは0.5~30重量部、さらに好ましくは5~25重量部である。乳化剤の使用量を適切に調整することにより、体積累積粒径を所望の範囲に調整することができる。
【0066】
(ii)の方法において、有機溶媒を除去する方法としては、たとえば、減圧蒸留、常圧蒸留、水蒸気蒸留、遠心分離等の方法が挙げられる。
【0067】
(iii)の方法においては、所望の体積累積粒径になるように2以上の乳化液を混合すればよく、混合方法は特に限定されない。乳化液の組み合わせも限定されず、たとえば、(i)の方法により得られた体積累積粒径の異なる2つの乳化液を混合してもよいし、(ii)の方法により得られた体積累積粒径の異なる2つの乳化液を混合してもよい。また、重合により得られた乳化液と、(i)および/または(ii)の方法により得られた乳化液とを公知の方法で混合してもよいし、(i)の方法により得られた乳化液と、(ii)の方法により得られた乳化液とを混合してもよい。
【0068】
ラテックスの製造のために用いるニトリル基含有共役ジエン系共重合体のラテックス中における、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体の含有割合(固形分濃度)は、好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは55~70重量%、さらに好ましくは60~70重量%である。
【0069】
ニトリル基含有共役ジエン系共重合体のラテックス中における、アニオン性乳化剤の含有量は、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体100重量部に対して、好ましくは2~10重量部である。
【0070】
ブチルゴムのラテックスと、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体のラテックスとをブレンドすることにより得られたラテックスについて、必要に応じて、濃縮処理を行い、固形分濃度を調整してもよい。濃縮処理は、たとえば、減圧により、水を一部蒸発させる方法や、遠心分離による方法などが挙げられる。
【0071】
本発明のラテックスは、ゲル化に要する時間が短いものであるため、短時間での成形が可能であり、これにより短時間で所望の成形体を得ることができるものである。さらに、本発明のラテックスは、ゲル化に要する時間が短いものであるため、高い発泡倍率でのゲル化が可能であり、本発明のラテックスを用いてフォームラバーを製造する場合には、柔軟性に優れたフォームラバーを、高い生産性にて得ることができるものである。そのため、本発明のラテックスは、フォームラバー用途として好適である。
【0072】
<ラテックス組成物>
本発明のラテックス組成物は、上述した本発明のラテックスと、架橋剤とを含有する。
【0073】
架橋剤としては、たとえば、粉末硫黄、硫黄華、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄等の硫黄;塩化硫黄、二塩化硫黄、モルホリン・ジスルフィド、アルキルフェノール・ジスルフィド、N,N’-ジチオ-ビス(ヘキサヒドロ-2H-アゼピノン-2)、含りんポリスルフィド、高分子多硫化物、2-(4’-モルホリノ・ジチオ)ベンゾチアゾール等の硫黄含有化合物が挙げられる。これらのなかでも、硫黄が好ましく使用できる。架橋剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0074】
架橋剤の含有量は、特に限定されないが、ブチルゴムおよびニトリル基含有共役ジエン系共重合体の合計100重量部に対して、好ましくは0.1~15重量部、より好ましくは0.2~8重量部である。架橋剤の含有量を上記範囲とすることにより、得られるフォームラバーなどの成形体の強度をより高めることができる。
【0075】
また、本発明のラテックス組成物は、架橋促進剤を含有することが好ましい。
架橋促進剤としては、フォームラバーなどの、ラテックス組成物を用いて得られる成形体の製造において通常用いられるものが使用でき、たとえば、ジエチルジチオカルバミン酸、ジブチルジチオカルバミン酸、ジ-2-エチルヘキシルジチオカルバミン酸、ジシクロヘキシルジチオカルバミン酸、ジフェニルジチオカルバミン酸、ジベンジルジチオカルバミン酸などのジチオカルバミン酸類およびそれらの亜鉛塩などのジチオカルバミン酸系架橋促進剤;2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール亜鉛、2-メルカプトチアゾリン、ジベンゾチアジル・ジスルフィド、2-(2,4-ジニトロフェニルチオ)ベンゾチアゾール、2-(N,N-ジエチルチオ・カルバイルチオ)ベンゾチアゾール、2-(2,6-ジメチル-4-モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、2-(4′-モルホリノ・ジチオ)ベンゾチアゾールなどのチアゾール系架橋促進剤;TMTD(テトラメチルチウラムジスルフィド)、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド等のチウラム系化合物;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系架橋促進剤;などが挙げられる。架橋促進剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0076】
架橋促進剤の含有量は、ブチルゴムおよびニトリル基含有共役ジエン系共重合体の合計100重量部に対して、好ましくは0.1~15重量部であり、より好ましくは0.2~10重量部である。架橋促進剤の含有量を上記範囲とすることにより、得られるフォームラバーなどの成形体の強度をより高めることができる。
【0077】
また、本発明のラテックス組成物は、架橋助剤を含有することが好ましい。
架橋助剤としては、フォームラバーなどの、ラテックス組成物を用いて得られる成形体の製造において通常用いられるものが使用でき、たとえば、酸化亜鉛、ステアリン酸およびその亜鉛塩等が挙げられる。
【0078】
架橋助剤の含有量は、ブチルゴムおよびニトリル基含有共役ジエン系共重合体の合計100重量部に対して、好ましくは0.5~10重量部、より好ましくは0.5~8重量部である。架橋助剤の含有量を上記範囲とすることにより、乳化安定性を良好なものとしながら、得られるフォームラバーなどの成形体の強度をより高めることができる。
【0079】
さらに、本発明のラテックス組成物は、気泡安定剤をさらに含有することが好ましい。気泡安定剤を含有させることにより、本発明のラテックスを、フォームラバー用途に用いた場合に、得られるフォームラバーに含まれる気泡を微細で均一なものとすることができ、これにより、柔軟性および強度の向上が可能となる。
【0080】
気泡安定剤としては、たとえば、塩化エチルなどの塩化アルキルを、ホルムアルデヒドおよびアンモニアと反応させて得られる、塩化アルキル・ホルムアルデヒド・アンモニア反応生成物が挙げられる。塩化アルキル・ホルムアルデヒド・アンモニア反応生成物としては、アルキルの炭素数が4以下であるものが好ましく、その具体例としては、エチルクロリド・ホルムアルデヒド・アンモニア反応生成物が挙げられる。また、アルキル第四級アンモニウムクロリド、好ましくは、アルキルの炭素数が4以下のアルキル第四級アンモニウムクロリド;アルキルアリールスルホン酸塩、好ましくは、アルキルの炭素数が4以下のアルキルアリールスルホン酸塩;および高級脂肪酸アンモニウム、好ましくはアルキルの炭素数が4以下の高級脂肪酸アンモニウム;ヘキサフルオロケイ酸塩;なども、気泡安定剤として使用できる。これらのなかでも、その添加効果が高いという観点より、塩化アルキル・ホルムアルデヒド・アンモニア反応生成物が好ましく、アルキルの炭素数が4以下の塩化アルキル・ホルムアルデヒド・アンモニア反応生成物がより好ましく、エチルクロリド・ホルムアルデヒド・アンモニア反応生成物が特に好ましい。エチルクロリド・ホルムアルデヒド・アンモニア反応生成物としては、商品名「トリメンベース」(Crompton Corp社製)などの市販品を用いることができる。
【0081】
気泡安定剤の含有量は、ブチルゴムおよびニトリル基含有共役ジエン系共重合体の合計100重量部に対して、好ましくは0.4~10重量部、より好ましくは0.4~6重量部である。気泡安定剤の含有量を上記範囲とすることにより、得られるフォームラバーなどの成形体に含まれる気泡を微細で均一なものとすることができ、柔軟性および強度をより向上させることができる。
【0082】
また、本発明のラテックス組成物には、さらに、老化防止剤、着色剤等、あるいは、上記の各種配合剤をラテックス中に安定して分散させるための分散剤(たとえば、NASF(ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩)等)、増粘剤(たとえば、ポリアクリル酸およびそのナトリウム塩、アルギン酸ソーダ、ポリビニルアルコール等)、起泡剤としての界面活性剤(たとえば、オレイン酸カリウム等の脂肪族アルカリ石けん、ドデシル硫酸ナトリウム等の高級アルコールの硫酸塩等)を、必要に応じて配合することができる。
【0083】
本発明のラテックス組成物を調製する方法としては、特に限定されないが、たとえば、上述したようにしてラテックスを得た後、ボールミル、ニーダー、ディスパー等の分散機を用いて、ラテックスに、必要に応じて配合される各種配合剤を混合する方法や、上記の分散機を用いて、ラテックス以外の配合成分の水性分散液を調製した後、該水性分散液を、ラテックスに混合する方法などが挙げられる。
【0084】
<成形体>
本発明の成形体は、上述したラテックスまたはラテックス組成物を用いて得られる。
【0085】
本発明の成形体としては、特に限定されないが、ラテックス(ラテックス組成物)を基材上に塗布する方法などにより膜状に成形することにより得られる膜状成形体や、ラテックス(ラテックス組成物)をディップ成形することにより得られるディップ成形体、あるいは、ラテックス(ラテックス組成物)を凝固させ、得られた凝固後のゴムを所望の形状に成形してなる各種成形体などが挙げられるが、本発明においては、フォームラバーであることが好ましい。以下、本発明の成形体が、フォームラバーである場合を例示して説明を行うが、本発明の成形体は、フォームラバーに特に限定されるものではない。
【0086】
本発明の成形体は、上述したラテックスまたはラテックス組成物を用いて得られる。具体的には、本発明のフォームラバーは、上述したラテックスまたはラテックス組成物を、所望の発泡倍率で発泡および凝固させることにより得ることができる。
【0087】
発泡には通常空気が用いられるが、炭酸アンモニウム、重炭酸ソーダ等の炭酸塩;アゾジカルボン酸アミド、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ベンゼンスルフォニルヒドラジド等のガス発生物質を使用することもできる。空気を用いる場合には、ラテックス(ラテックス組成物)を攪拌し、空気を巻き込むことで泡立てることができる。この際、たとえば、スタンドミキサー、オークス発泡機、超音波発泡機等を用いることができる。
【0088】
ラテックス(ラテックス組成物)を発泡させた後、発泡状態を固定化するために、発泡させたラテックス(ラテックス組成物)を、凝固させる。凝固方法は、ラテックスをゲル化し、固化させることができる方法であればよく、従来公知の方法を用いることができるが、たとえば、ヘキサフルオロ珪酸ナトリウム(珪フッ化ナトリウム)、ヘキサフルオロ珪酸カリウム(珪フッ化カリウム)、チタン珪フッ化ソーダ等のフッ化珪素化合物などの常温凝固剤を、発泡させたラテックス(ラテックス組成物)に添加するダンロップ法(常温凝固法);オルガノポリシロキサン、ポリビニルメチルエーテル、硫酸亜鉛アンモニウム錯塩などの感熱凝固剤を、発泡させたラテックス(ラテックス組成物)に添加する感熱凝固法;冷凍凝固法等が使用される。常温凝固剤、感熱凝固剤などの凝固剤の使用量は、特に限定されないが、ブチルゴムおよびニトリル基含有共役ジエン系共重合体の合計100重量部に対して、好ましくは0.5~10重量部、より好ましくは0.5~8である。
【0089】
そして、発泡させたラテックス(ラテックス組成物)について、凝固剤を添加した後、所望の形状の型に移し、凝固を行うことで、フォームラバーを得ることができる。また、凝固を行った後に、ラテックス(ラテックス組成物)を架橋させるために、加熱してもよい。架橋の条件は、好ましくは100~160℃の温度で、好ましくは15~120分の加熱処理を施す条件とすることができる。
【0090】
得られたフォームラバーについては、型から取り出した後、洗浄することが好ましい。洗浄の方法としては、特に限定されないが、たとえば、洗濯機等を用い、20~70℃程度の水で、5~15分程度攪拌して洗浄する方法が挙げられる。洗浄後、水切りをし、フォームラバーの風合いを損なわないように30~90℃程度の温度で乾燥することが好ましい。このようにして得られたフォームラバーは、たとえば、所定の厚さにスライスし、所定形状に切断した後、側面を回転砥石等で研磨することによって、パフ(化粧用スポンジ)等として用いることができる。
【0091】
本発明のラテックス(ラテックス組成物)を用いて得られるフォームラバーは、マットレス、パフ(化粧用スポンジ)、ロール、衝撃吸収剤等の各種用途に好適に用いることができる。特に、本発明のラテックス(ラテックス組成物)を用いて得られるフォームラバーは、化粧料として用いられる複数の成分に対する耐油性、特に、化粧料の成分として用いられる、パラフィン、および紫外線吸収剤(たとえば、パラメトキシケイ皮酸オクチル(4-メトキシけい皮酸2-エチルヘキシル)等)に対する耐油性に優れることから、液体化粧料などを含浸させるパフ(化粧用スポンジ)として好適に用いることができる。
【実施例
【0092】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。以下において、特記しない限り「部」は重量基準である。なお、試験、評価は以下によった。
【0093】
<エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合>
JIS K6384に従い、ケルダール法により、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体中の窒素含量を測定することにより算出した。
【0094】
<固形分濃度>
アルミ皿(重量:X1)に試料2gを精秤し(重量:X2)、これを105℃の熱風乾燥器内で2時間乾燥させた。次いで、デシケーター内で冷却した後、アルミ皿ごと重量を測定し(重量:X3)、下記の計算式にしたがって、固形分濃度を算出した。
固形分濃度(重量%)=(X3-X1)×100/X2
【0095】
<体積基準の粒子径分布>
光散乱回折粒径測定装置(型式「LS-13320」、ベックマンコールター社製)を用いて、ラテックスの体積基準の粒子径の分布を測定した。得られた体積基準の粒子径分布に基づき、体積累積粒径d50を求めた。
【0096】
<発泡時間>
フォームラバー用ラテックス組成物を、スタンドミキサー(エレクトロラックス社製、ESM945)を用いて攪拌することで発泡させ、体積が攪拌前の体積に対して5.0倍に達するまでの時間を求めた。
【0097】
<発泡物82mlの重量>
発泡物82mlを容器に投入し、重量を測定した。
【0098】
<比容積>
次式により、発泡物1gあたりの体積を、比容積として求めた。
比容積(ml/g)=82ml/(発泡物82mlの重量(g))
発泡物の比容積は、フォームラバー用ラテックス組成物の発泡の程度を示し、大きいほど発泡倍率が高いことを意味する。
【0099】
<ゲル化時間>
発泡物に、珪フッ化ナトリウム水分散液(固形分濃度20重量%)を、得られた発泡物中の重合体100部に対する珪フッ化ナトリウムの添加量が1.5部となるように添加し、さらに1分間撹拌することで、ゲル化性発泡物を得た。ゲル化性発泡物を得てから、ゲル化性発泡物を手で触れてもゲル化性発泡物が付着しなくなるまでの時間を求めた。
【0100】
<収縮率>
全ての実施例および比較例において、同じ形状のシャーレを用いた。発泡物に、珪フッ化ナトリウム水分散液(固形分濃度20重量%)を、得られた発泡物中の重合体100部に対する珪フッ化ナトリウムの添加量が1.5部となるように添加し、さらに1分間撹拌することで、ゲル化性発泡物を得た。予め決定した高さ(すなわち架橋前の発泡物の高さ)まで、ゲル化性発泡物をシャーレに流し入れ、110℃で、表1に記載の架橋時間で架橋させ、得られた架橋物の高さを測定し、次式により収縮率を求めた。
収縮率(%)=[(架橋物の高さ)-(架橋前の発泡物の高さ)]/(架橋前の発泡物の高さ)×100
【0101】
<収縮率の評価>
上記により求めた収縮率について、以下の基準で評価した。
LEVEL4:収縮率が0%以下-10%以上であった。
LEVEL3:収縮率が-10%未満-50%以上であった。
LEVEL2:収縮率が-50%未満-70%以上であった。
LEVEL1:収縮率が-70%未満-100%以上であった。
【0102】
<紫外線吸収剤に対する膨潤率>
フォームラバーを、紫外線吸収剤(4-メトキシけい皮酸2-エチルヘキシル、東京化成工業社製)に、23℃で24時間浸漬させ、浸漬前のフォームラバーの体積に対する、浸漬後のフォームラバーの体積の比率(膨潤率(%)=(浸漬後のフォームラバーの体積)/(浸漬前のフォームラバーの体積)×100)を算出した。なお、膨潤率が低いほど、紫外線吸収剤に対する耐油性に優れると判断できる。
【0103】
<流動パラフィンに対する膨潤率>
フォームラバーを、流動パラフィンに、23℃で24時間浸漬させ、浸漬前のフォームラバーの体積に対する、浸漬後のフォームラバーの体積の比率(膨潤率(%)=(浸漬後のフォームラバーの体積)/(浸漬前のフォームラバーの体積)×100)を算出した。なお、膨潤率が低いほど、流動パラフィンに対する耐油性に優れると判断できる。
【0104】
<調製例1(ブチルゴムのラテックスの調製)>
ブチルゴム(製品名「JSR BUTYL365」、JSR社製、ムーニー粘度(ML1+8、125℃):33、不飽和度2.3モル%)100部を、シクロヘキサン550部と混合し、攪拌しながら温度を60℃に昇温させることで、ブチルゴムを溶解させて、ブチルゴムの溶液を得た。
これとは別に、オレイン酸カリウムと水とを混合することで、15重量%のオレイン酸カリウム水溶液を得た。
【0105】
そして、上記にて得られたブチルゴムの溶液と、上記にて調製したオレイン酸カリウム水溶液とを、マルチラインミキサー(製品名「マルチラインミキサーMS26-MMR-5.5L」、佐竹化学機械工業社製)を用いて混合し、これに続いて、乳化装置(製品名「マイルダーMDN310」、太平洋機工社製)を用い、15,000rpmにて混合および乳化させることで、乳化液を得た。
【0106】
次いで、得られた乳化液を700~800hPaの減圧下で75℃に加温することで、シクロヘキサンを留去し、次いで、遠心分離機を用いて、4,000~6,000Gで遠心分離することで濃縮操作を行うことで、軽液として固形分濃度62重量%、体積累積粒径d50:1.72μmのブチルゴムのラテックスを得た。
【0107】
<調製例2(ニトリル基含有共役ジエン系共重合体のラテックスの調製)>
耐圧反応容器に、水200部、オレイン酸カリウム1.5部、アクリロニトリル38部、t-ドデシルメルカプタン0.5部、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.03部、硫酸第一鉄0.003部、エチレンジアミン四酢酸・ナトリウム0.008部を添加し、十分に脱気した後、1,3-ブタジエン45部およびイソプレン17部を添加した。
【0108】
次いで、重合開始剤としてクメンハイドロパーオキサイド0.05部を添加して、反応温度5℃で乳化重合を開始した。重合転化率が95%になった時点で、ジエチルヒドロキシルアミン0.25部および水5部からなる重合停止剤溶液を添加して重合反応を停止させて乳化液を得た。
【0109】
次いで、乳化液に溶剤としての1,3-ブタジエンを80部添加し、系内の温度を15℃にして、パドル型攪拌翼を用いて、回転速度1,000rpm、攪拌時間5時間の条件にて強攪拌することで、粒径肥大化処理を行った。次いで、1,3-ブタジエンを除去した後、-0.05MPa(ゲージ圧)の減圧条件下で、70℃にて濃縮処理を行い、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体のラテックスを得た。
【0110】
得られたラテックスについて、上記方法にしたがって、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体中のエチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合を測定したところ、36重量%であった。また、得られたラテックスの固形分濃度は、66重量%、体積累積粒径d50:0.80μmであった。
【0111】
<実施例1>
調製例1で得られたブチルゴムのラテックスと、調製例2で得られたニトリル基含有共役ジエン系共重合体のラテックスとを、「ブチルゴム:ニトリル基含有共役ジエン系共重合体」の固形分重量比が、67:33となるように混合し、フォームラバー用ラテックスを得た。得られたフォームラバー用ラテックスについて、上記方法にしたがって固形分濃度を測定した。結果を表1に示す。
【0112】
上記により得られたフォームラバー用ラテックスに、フォームラバー用ラテックス中の重合体100部に対して、加硫系水分散液A(コロイド硫黄/ジチオカルバミン酸系架橋促進剤(ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(製品名「ノクセラーEZ」、大内新興化学工業社製))/チアゾール系架橋促進剤(2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩(製品名「ノクセラーMZ」、大内新興化学工業社製))=2/1/1(重量比)、固形分濃度50重量%)8部、酸化亜鉛水分散液(固形分濃度50重量%)6部、気泡安定剤(製品名「トリメンベース」、CromptonCorp社製、エチルクロリド・ホルムアルデヒド・アンモニア反応生成物)1部を添加し、十分に分散させることで、フォームラバー用ラテックス組成物を得た。得られたフォームラバー用ラテックス組成物について、上記方法にしたがって、発泡時間を測定した。結果を表1に示す。
【0113】
フォームラバー用ラテックス組成物を、スタンドミキサー(型式「ESM945」、エレクトロラックス社製)を用いて撹拌して発泡させ、発泡物を得た。得られた発泡物について、上記方法にしたがって、発泡物82mlの重量、比容積、ゲル化時間および収縮率を測定した、結果を表1に示す。
【0114】
次いで、得られた発泡物に、珪フッ化ナトリウム水分散液(固形分濃度20重量%)を、得られた発泡物中の重合体100部に対する珪フッ化ナトリウムの添加量が1.5部となるように添加し、さらに1分間撹拌した後に、成型用型枠(縦15cm×横25cm×高さ1cm)に流し入れ、凝固した後、110℃で表1に記載の時間加熱することで架橋し、その後、型枠から取り出して40℃の水で10分間水洗し、さらに60℃のオーブンで4時間乾燥し、直径3cmの円形に打ち抜くことで、円板状のフォームラバーを得た。そして、得られたフォームラバーについて、上記方法にしたがって、紫外線吸収剤に対する膨潤率および流動パラフィンに対する膨潤率を評価した。結果を表1に示す。
【0115】
<実施例2>
加硫系水分散液Aに代えて、加硫系水分散液B(コロイド硫黄/ジチオカルバミン酸系架橋促進剤(ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(製品名「ノクセラーEZ」、大内新興化学工業社製))/チアゾール系架橋促進剤(2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩(製品名「ノクセラーMZ」、大内新興化学工業社製))/チウラム系加橋促進剤(テトラメチルチウラムジスルフィド(製品名「ノクセラーTT」、大内新興化学工業社製))=1/2/1/1(重量比)、固形分濃度50重量%)20部を用いた以外は、実施例1と同様にして、フォームラバー用ラテックス組成物およびフォームラバーを得て、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0116】
<実施例3>
調製例1で得られたブチルゴムのラテックスと、調製例2で得られたニトリル基含有共役ジエン系共重合体のラテックスとを、「ブチルゴム:ニトリル基含有共役ジエン系共重合体」の固形分重量比が、50:50となるように混合した以外は、実施例2と同様にして、フォームラバー用ラテックス、フォームラバー用ラテックス組成物およびフォームラバーを得て、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0117】
<比較例1>
フォームラバー用ラテックスとして、調製例2で得られたニトリル基含有共役ジエン系共重合体のラテックスを用いた以外は、実施例1と同様にして、フォームラバー用ラテックス組成物およびフォームラバーを得て、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0118】
<比較例2>
調製例1で得られたブチルゴムのラテックスと、調製例2で得られたニトリル基含有共役ジエン系共重合体のラテックスとを、「ブチルゴム:ニトリル基含有共役ジエン系共重合体」の固形分重量比が、90:10となるように混合した以外は、実施例2と同様にして、フォームラバー用ラテックス、フォームラバー用ラテックス組成物およびフォームラバーを得て、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0119】
【表1】
【0120】
表1に示すように、ブチルゴム、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体および水を含み、前記ブチルゴムと前記ニトリル基含有共役ジエン系共重合体との重量比が適切に調整されたフォームラバー用ラテックスと、架橋剤とを含有するフォームラバー用ラテックス組成物は、ゲル化に要する時間が短いものであった。また、得られたフォームラバーは、流動パラフィンに対する膨潤率、および紫外線吸収剤に対する膨潤率がいずれも低く、耐油性に優れるものであった(実施例1~3)。
一方、ブチルゴムを含有しないフォームラバー用ラテックスを用いて得られたフォームラバーは、紫外線吸収剤に対する膨潤率が高く、耐油性に劣るものであった(比較例1)。
また、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体が少なすぎるフォームラバー用ラテックスを用いた場合は、ゲル化に要する時間が長く、得られたフォームラバーは耐油性に劣るものであった(比較例2)。