(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】ダイバーティングエージェント及びこれを用いた坑井の亀裂の閉塞方法
(51)【国際特許分類】
C09K 8/508 20060101AFI20240827BHJP
C09K 8/62 20060101ALI20240827BHJP
E21B 43/26 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C09K8/508
C09K8/62
E21B43/26
(21)【出願番号】P 2020572267
(86)(22)【出願日】2020-02-12
(86)【国際出願番号】 JP2020005303
(87)【国際公開番号】W WO2020166597
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2019023948
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 泰広
(72)【発明者】
【氏名】谷口 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】風呂 千津子
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107286916(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0137906(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0210965(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 8/08
C09K 8/508
E21B 43/26
CAplus/REGISTRY (STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子構造中
、側鎖に一級水酸基を2.3~15モル%含有するポリビニルアルコール系樹脂を含有するダイバーティングエージェント。
【請求項2】
前記ポリビニルアルコール系樹脂が、前記
一級水酸基を2.3~6モル%含有し、かつ粉末状である、請求項1に記載のダイバーティングエージェント。
【請求項3】
前記ポリビニルアルコール系樹脂が、前記
一級水酸基を2.5~15モル%含有し、かつ溶融成形されたものである、請求項1に記載のダイバーティングエージェント。
【請求項4】
30℃以下の水溶液中で用いられる、請求項1~
3のいずれか1項に記載のダイバーティングエージェント。
【請求項5】
坑井に生成された亀裂を一時的に閉塞する方法であって、
請求項1~
4のいずれか1項に記載のダイバーティングエージェントを、坑井内の流体の流れにより亀裂に流入させる、坑井の亀裂の閉塞方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイバーティングエージェント(Diverting Agent)及びこれを用いた坑井の亀裂の閉塞方法に関し、更に詳しくは、水圧破砕法を用いる掘削工法の施工時に用いられるダイバーティングエージェント、及び該ダイバーティングエージェントを用いて坑井の亀裂を閉塞する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油やその他の地下資源の採取のために、地下の頁岩(シェール)層に高圧の水を注入して亀裂を生じさせる水圧破砕法が広く採用されている。水圧破砕法では、まず、ドリルで垂直に地下数千メートルの縦孔(垂直坑井)を掘削し、頁岩層に達したところで水平に直径十から数十センチメートルの横孔(水平坑井)を掘削する。垂直坑井と水平坑井内を流体で満たし、この流体を加圧することにより、坑井から亀裂(フラクチャ、fracture)を生成させ、かかる亀裂から頁岩層にある天然ガスや石油(シェールガス・オイル)等が流出してくるので、それを回収する。このような手法によれば、亀裂の生成により、坑井の資源流入断面が増大し、効率よく地下資源の採取を行うことができる。
【0003】
上記の水圧破砕法においては、流体加圧による亀裂の生成に先立って、水平坑井中でパーフォレーション(Perforation)と呼ばれる予備爆破が行われる。このような予備爆破により、坑井から生産層に穿孔を開ける。この後、この坑井内にフラクチュアリング流体を圧入することにより、これら穿孔に流体が流入し、これら穿孔に負荷が加えられることにより、これら穿孔に亀裂が生じ、資源の採取に好適な大きさの亀裂に成長していくこととなる。
【0004】
水圧破砕法では、既に生成している亀裂をより大きく成長させたり、さらに多くの亀裂を生成させたりするために、既に生成している亀裂の一部をダイバーティングエージェントと呼ばれる添加剤を用いて一時的に塞ぐことがなされる。亀裂の一部をダイバーティングエージェントで一時的に閉塞し、この状態で坑井内に充填されたフラクチュアリング流体を加圧することにより、他の亀裂内に流体が浸入していき、これにより、他の亀裂を大きく成長させるあるいは新たな亀裂を発生させることができる。
【0005】
ダイバーティングエージェントは、上記したように亀裂を一時的に閉塞するために用いられるものであるので、一定期間はその形状を維持でき、天然ガスや石油等を採取する際には加水分解して消失するものが使用される。例えば、ポリグリコール酸やポリ乳酸等の加水分解性樹脂をダイバーティングエージェントとして使用する技術が種々提案されている。
【0006】
特許文献1では、生分解性脂肪族ポリエステル系樹脂の中でも生分解性の高いポリグリコール酸を含有する坑井掘削用一時目止め剤が提案されている。
また、特許文献2では、生分解性樹脂であるポリ乳酸の粒子からなり、目開き500μmの篩にかけた際にパスしない粒子が50質量%以上、且つ、51度以上の安息角を有する粉体が提案されている。
そして、特許文献3では、ポリ乳酸中に該ポリ乳酸の加水分解性を調整するための生分解性の高いポリオキサレートの微細粒子が分布している分散構造を有している加水分解性粒子であって、平均粒径(D50)が300~1000μmの範囲にあり、短径/長径比が0.8以上の真円度を有する加水分解性粒子が提案されている。
そしてまた、特許文献4では、平均粒径(D50)が300~1000μmの範囲にあり、短径/長径比が0.8以上の真円度を有しているポリオキサレート粒子が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2015/072317号
【文献】日本国特開2016-56272号公報
【文献】日本国特開2016-147971号公報
【文献】日本国特開2016-147972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
水圧破砕法で亀裂を大きく成長させたり新たな亀裂を発生させたりするには、既に生成している亀裂を隙間なく塞ぐことが必要であるが、従来のダイバーティングエージェントはポリグリコール酸やポリ乳酸等の非水溶性樹脂を用いており、除去されるまでに時間を要することが問題であった。
【0009】
また、近年、北海等の海底においても水圧破砕法による資源の採取が行われている。その際、資源の採取場所によっては5~30℃の超低温~低温となる場所があるが、従来のダイバーティングエージェントは前記のような超低温~低温域の海水では、除去されるまでにさらに時間を要する。
【0010】
そこで、本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、水圧破砕法を用いる掘削工法において、一定時間(5分~3時間程度)は超低温~低温域(5~30℃)の水及び海水に完全溶解せず、一定時間経過後は速やかに溶解除去されるダイバーティングエージェントを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定量の親水性変性基を含有するポリビニルアルコール系樹脂をダイバーティングエージェントに含有させることにより、上記の課題を解決できることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は下記<1>~<6>に関するものである。
<1>分子構造中に親水性変性基を2.3~15モル%含有するポリビニルアルコール系樹脂を含有するダイバーティングエージェント。
<2>前記ポリビニルアルコール系樹脂が、前記親水性変性基を2.3~6モル%含有し、かつ粉末状である、<1>に記載のダイバーティングエージェント。
<3>前記ポリビニルアルコール系樹脂が、前記親水性変性基を2.5~15モル%含有し、かつ溶融成形されたものである、<1>に記載のダイバーティングエージェント。
<4>前記ポリビニルアルコール系樹脂が、側鎖に一級水酸基を含有するポリビニルアルコール系樹脂である、<1>~<3>のいずれか1つに記載のダイバーティングエージェント。
<5>30℃以下の水溶液中で用いられる、<1>~<4>のいずれか1つに記載のダイバーティングエージェント。
<6>坑井に生成された亀裂を一時的に閉塞する方法であって、<1>~<5>のいずれか1つに記載のダイバーティングエージェントを、坑井内の流体の流れにより亀裂に流入させる、坑井の亀裂の閉塞方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明のダイバーティングエージェントは、水圧破砕法を用いる掘削工法において、一定時間(5分~3時間程度)は超低温~低温域(5~30℃)の水及び海水に完全溶解せず、一定時間経過後は速やかに溶解除去される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳述するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものであり、本発明はこれらの内容に特定されるものではない。
なお、用語「ポリビニルアルコール」は、単に「PVA」ということがある。
また、(メタ)アリルとはアリル又はメタリル、(メタ)アクリルとはアクリル又はメタクリル、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタクリレートをそれぞれ意味する。
また、用語「水」は、淡水を意味する。
【0015】
[PVA系樹脂]
本発明のダイバーティングエージェントが含有するPVA系樹脂は、分子構造中に親水性変性基を2.3~15モル%含有する。
PVA系樹脂中の親水性変性基の含有量が2.3モル%以上であると、親水性変性基によってPVA系樹脂の水との親和性が増し、超低温~低温域であっても一定時間経過後は水に溶解するようになる。また、PVA系樹脂の水との親和性が増したことによって、海水中の塩による塩析を受けにくくなり、海水への溶解性が増すと考えられる。
PVA系樹脂中の親水性変性基の含有量が15モル%以下であると、閉塞性が向上すると考えられる。
【0016】
PVA系樹脂中の親水性変性基の含有量は、水及び海水への溶解性の観点から、2.4~15モル%が好ましく、2.5~13モル%がより好ましく、2.7~10モル%がさらに好ましい。
なお、親水性変性基の含有量(変性率)は、ケン化度100モル%のPVA系樹脂の1H-NMRスペクトル(溶媒:DMSO-d6又はD2O)から求めることができる。
【0017】
変性率を上記範囲にする方法としては、例えば、後述のビニルエステル系モノマー量を調整する方法等が挙げられる。
【0018】
本発明で用いられるPVA系樹脂のケン化度(JIS K 6726:1994に準拠して測定)は、通常60~100モル%である。かかるケン化度が低すぎると水及び海水への溶解性が低下する傾向がある。ケン化度は、亀裂等の隙間に対する閉塞性の観点から、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上がより好ましい。また、ケン化度の上限は99.8モル%以下が好ましく、より好ましくは99.6モル%以下である。
【0019】
本発明で用いるPVA系樹脂の平均重合度(JIS K 6726:1994に準拠して測定)は、好ましくは100~3500であり、より好ましくは150~3000、さらに好ましくは200~2500、特に好ましくは300~2000である。平均重合度が小さすぎるとPVA系樹脂の水及び海水への溶解性が小さくなる傾向がある。平均重合度が大きすぎるとPVA系樹脂の製造が困難となる傾向がある。
【0020】
本発明で用いられるPVA系樹脂の4質量%水溶液粘度は、2.0~85mPa・sであることが好ましく、より好ましくは2.5~80mPa・s、さらに好ましくは3.0~75mPa・s、特に好ましくは3.5~70mPa・sである。4質量%水溶液粘度が低すぎると本発明の効果が出にくくなる傾向がある。4質量%水溶液粘度が高すぎるとPVA系樹脂の製造が困難となる傾向がある。
なお、4質量%水溶液粘度は、PVA系樹脂の4質量%水溶液を調製し、JIS K 6726:1994に準拠して測定した20℃における粘度である。
【0021】
本発明で用いられるPVA系樹脂は、ビニルエステル系モノマーを重合して得られるポリビニルエステル系樹脂をケン化して得られる、ビニルアルコール構造単位を主体とする樹脂であり、ケン化度相当のビニルアルコール構造単位と未ケン化部分の酢酸ビニル構造単位を有するものである。
【0022】
本発明で用いられるPVA系樹脂は、上述のとおり、親水性変性基を含有するものであり、未変性PVAに親水性変性基を主鎖又は側鎖に適宜導入することによって得られる。
本発明の親水性変性基としては、上記の未ケン化部分の酢酸ビニル構造単位を含まず、例えば、水酸基、スルホン酸基、カルボキシル基、アミノ基、リン酸基、アミド基、チオール基等の変性基が挙げられる。
【0023】
親水性変性基を含有するPVA系樹脂としては、水及び海水への溶解性の観点から、側鎖に一級水酸基を有するPVA系樹脂、スルホン酸変性PVA系樹脂、カルボン酸変性PVA系樹脂が好ましい。
これらの中でも、溶融成形性に優れる点で、側鎖に一級水酸基を有するPVA系樹脂が特に好ましい。側鎖に一級水酸基を有するPVA系樹脂における一級水酸基の数は、通常1~5個であり、好ましくは1~2個であり、特に好ましくは1個である。
【0024】
側鎖に一級水酸基を有するPVA系樹脂としては、例えば、側鎖に1,2-ジオール構造単位を有する変性PVA系樹脂、側鎖にヒドロキシアルキル基構造単位を有する変性PVA系樹脂等が挙げられる。中でも、特に下記一般式(1)で表される、側鎖に1,2-ジオール構造単位を含有する変性PVA系樹脂(以下、「側鎖1,2-ジオール構造単位含有変性PVA系樹脂」と称することがある。)を用いることが好ましい。
なお、1,2-ジオール構造単位以外の部分は、通常のPVA系樹脂と同様、ビニルアルコール構造単位と未ケン化部分のビニルエステル構造単位である。
【0025】
【0026】
(式(1)中、R1~R4はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、Xは単結合又は結合鎖を表す。)
【0027】
上記一般式(1)において、R1~R4はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。R1~R4は、すべて水素原子であることが望ましいが、樹脂特性を大幅に損なわない程度の量であれば炭素数1~4のアルキル基であってもよい。当該アルキル基としては特に限定しないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等が好ましく、当該アルキル基は必要に応じてハロゲノ基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい。
【0028】
上記一般式(1)中、Xは単結合又は結合鎖であり、熱安定性の点や高温下や酸性条件下での安定性の点で、単結合であることが好ましいが、本発明の効果を阻害しない範囲であれば結合鎖であってもよい。
かかる結合鎖としては、特に限定されず、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、フェニレン基、ナフチレン基等の炭化水素基(これらの炭化水素基は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子等で置換されていてもよい。)の他、-O-、-(CH2O)m-、-(OCH2)m-、-(CH2O)mCH2-、-CO-、-COCO-、-CO(CH2)mCO-、-CO(C6H4)CO-、-S-、-CS-、-SO-、-SO2-、-NR-、-CONR-、-NRCO-、-CSNR-、-NRCS-、-NRNR-、-HPO4-、-Si(OR)2-、-OSi(OR)2-、-OSi(OR)2O-、-Ti(OR)2-、-OTi(OR)2-、-OTi(OR)2O-、-Al(OR)-、-OAl(OR)-、-OAl(OR)O-等が挙げられる。Rは各々独立して水素原子又は任意の置換基であり、水素原子又はアルキル基(特に炭素数1~4のアルキル基)が好ましい。また、mは自然数であり、好ましくは1~10、特に好ましくは1~5である。結合鎖は、これらのなかでも、製造時の粘度安定性や耐熱性等の点で、炭素数6以下のアルキレン基、特にメチレン基、あるいは-CH2OCH2-が好ましい。
【0029】
上記一般式(1)で表される1,2-ジオール構造単位における特に好ましい構造は、R1~R4がすべて水素原子であり、Xが単結合である。
【0030】
本発明で用いられるPVA系樹脂の製造方法としては、例えば、ビニルエステル系モノマーを重合し、得られたポリビニルエステル重合体をケン化して製造する方法が挙げられる。
【0031】
ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、アジピン酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル、トリフロロ酢酸ビニル等が挙げられ、価格や入手の容易さの観点で、酢酸ビニルが好ましく用いられる。
【0032】
ポリビニルエステル重合体の製造時にビニルエステル系モノマーとの共重合に用いられるモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、α-オクテン、α-ドデセン、α-オクタデセン等のオレフィン類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩、そのモノ又はジアルキルエステル等;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩;アルキルビニルエーテル類;N-アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド;アリルトリメチルアンモニウムクロライド;ジメチルアリルビニルケトン;N-ビニルピロリドン;塩化ビニル;塩化ビニリデン;ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテル等のポリオキシアルキレン(メタ)アリルエーテル;ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート;ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミド等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリルアミド;ポリオキシエチレン[1-(メタ)アクリルアミド-1,1-ジメチルプロピル]エステル;ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテル等のポリオキシアルキレンビニルエーテル;ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプロピレンアリルアミン等のポリオキシアルキレンアリルアミン;ポリオキシエチレンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビニルアミン等のポリオキシアルキレンビニルアミン;3-ブテン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、5-ヘキセン-1-オール等のヒドロキシ基含有α-オレフィン類あるいはそのアシル化物等の誘導体を挙げることができる。
【0033】
また、3,4-ジヒドロキシ-1-ブテン、3,4-ジアシロキシ-1-ブテン、3-アシロキシ-4-ヒドロキシ-1-ブテン、4-アシロキシ-3-ヒドロキシ-1-ブテン、3,4-ジアシロキシ-2-メチル-1-ブテン、4,5-ジヒドロキシ-1-ペンテン、4,5-ジアシロキシ-1-ペンテン、4,5-ジヒドロキシ-3-メチル-1-ペンテン、4,5-ジアシロキシ-3-メチル-1-ペンテン、5,6-ジヒドロキシ-1-ヘキセン、5,6-ジアシロキシ-1-ヘキセン、グリセリンモノアリルエーテル、2,3-ジアセトキシ-1-アリルオキシプロパン、2-アセトキシ-1-アリルオキシ-3-ヒドロキシプロパン、3-アセトキシ-1-アリルオキシ-2-ヒドロキシプロパン、グリセリンモノビニルエーテル、グリセリンモノイソプロペニルエーテル、ビニルエチレンカーボネート、2,2-ジメチル-4-ビニル-1,3-ジオキソラン等のジオールを有する化合物などが挙げられる。
【0034】
ビニルエステル系モノマーの重合又はビニルエステル系モノマーと共重合モノマーとの重合は、公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合などにより行うことができる。なかでも、反応熱を効率的に除去できる溶液重合を還流下で行うことが好ましい。
【0035】
かかる重合で用いられる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロパノール、ブタノール等の炭素数1~4の脂肪族アルコールやアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等が挙げられ、好ましくは炭素数1~3の低級アルコールが用いられる。
【0036】
得られた重合体のケン化についても、従来行われている公知のケン化方法を採用することができる。すなわち、重合体をアルコール又は水/アルコール溶媒に溶解させた状態で、アルカリ触媒又は酸触媒を用いて行うことができる。
前記アルカリ触媒としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、リチウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートを用いることができる。
通常、無水アルコール系溶媒下、アルカリ触媒を用いたエステル交換反応が反応速度の点や脂肪酸塩等の不純物を低減できるなどの点で好適に用いられる。
【0037】
ケン化反応の反応温度は、通常20~60℃である。反応温度が低すぎると、反応速度が小さくなり反応効率が低下する傾向があり、反応温度が高すぎると反応溶媒の沸点以上となる場合があり、製造面における安全性が低下する傾向がある。なお、耐圧性の高い塔式連続ケン化塔などを用いて高圧下でケン化する場合には、より高温、例えば、80~150℃でケン化することが可能であり、少量のケン化触媒も短時間、高ケン化度のものを得ることが可能である。
【0038】
また、側鎖1,2-ジオール構造単位含有変性PVA系樹脂は、公知の製造方法により製造することができる。例えば、日本国特開2002-284818号公報、日本国特開2004-285143号公報、日本国特開2006-95825号公報に記載されている方法により製造することができる。すなわち、(i)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(2)で示される化合物との共重合体をケン化する方法、(ii)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(3)で示されるビニルエチレンカーボネートとの共重合体をケン化及び脱炭酸する方法、(iii)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(4)で示される2,2-ジアルキル-4-ビニル-1,3-ジオキソランとの共重合体をケン化及び脱ケタール化する方法などにより、製造することができる。
【0039】
【0040】
(式(2)中、R1~R4はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、Xは単結合又は結合鎖を表し、R7及びR8は、それぞれ独立して水素原子又はR9-CO-(式中、R9は炭素数1~4のアルキル基である。)を表す。)
【0041】
【0042】
(式(3)中、R1~R4はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、Xは単結合又は結合鎖を表す。)
【0043】
【0044】
(式(4)中、R1~R4はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、Xは単結合又は結合鎖を表し、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。)
【0045】
式(2)~式(4)中のR1~R4及びXの具体例、好ましい例示は、上記式(1)の場合と同様であり、また、R7~R11の炭素数1~4のアルキル基の具体例、好ましい例示も式(1)の場合と同様である。
【0046】
上記方法のうち、共重合反応性及び工業的な取扱いにおいて優れるという点で、(i)の方法が好ましく、特に、上記一般式(2)で示される化合物は、R1~R4が水素原子、Xが単結合、R7、R8がR9-CO-であり、R9が炭素数1~4のアルキル基である3,4-ジアシロキシ-1-ブテンが好ましく、その中でも特にR9がメチル基である3,4-ジアセトキシ-1-ブテンが好ましく用いられる。
【0047】
本発明で用いられるPVA系樹脂は、例えば、粉末状、溶融成形されたもの、フレーク状等の状態で用いることができる。これらの中でも、水及び海水への溶解性の観点から、粉末状で、又は溶融成形されたものとして用いることが好ましい。
【0048】
ここで、粉末状のPVA系樹脂とは、PVA系樹脂の製造工程において、最終的に粉砕して得られたものを意味する。
【0049】
PVA系樹脂が粉末状である場合、その平均粒子径は、好ましくは100~2000μm、より好ましくは200~1500μm、さらに好ましくは400~1300μmである。平均粒子径が小さすぎると飛散するなどして扱いが困難となる傾向がある。平均粒子径が大きすぎると後反応し、変性させる場合に反応が不均一となる傾向がある。
なお、本明細書において平均粒子径とは、乾式ふるい分け試験方法(JIS Z8815:1994参考)で粒径別の体積分布を測定し、積算値(累積分布)が50%になる粒子径のことである。
【0050】
PVA系樹脂が粉末状である場合、親水性変性基の含有量は、水及び海水への溶解性の観点から、2.3~6モル%が好ましく、2.5~5モル%がより好ましく、2.7~4モル%がさらに好ましい。
【0051】
また、PVA系樹脂が溶融成形されたものとは、PVA系樹脂の製造工程において、最終的に溶融成形して得られたものを意味する。溶融成形の方法としては、公知の方法を採用することができ、例えば、押出成形法、射出成形法、ブロー成形法等が挙げられる。
【0052】
PVA系樹脂が溶融成形されたものである場合、PVA系樹脂の粒子の形状は、水及び海水への溶解性の観点から、円柱状(ペレット)であることが好ましい。その場合の当該粒子の粒子径は、坑井内の亀裂の大きさ等を考慮して適宜調整すればよいが、例えば、軸方向と直交する断面の直径が0.5~5.0mmであることが好ましく、より好ましくは1.0~4.5mm、さらに好ましくは1.5~4.0mmであり、厚み(軸方向の長さ)が0.5~5.0mmであることが好ましく、より好ましくは1.0~4.5mm、さらに好ましくは1.5~4.0mmである。
【0053】
PVA系樹脂が溶融成形されたものである場合、親水性変性基の含有量は、水及び海水への溶解性の観点から、2.5~15モル%が好ましく、2.8~13モル%がより好ましく、3.0~10モル%がさらに好ましい。
【0054】
本発明で用いられるPVA系樹脂は、一種類であっても、二種類以上の混合物であってもよい。PVA系樹脂を二種類以上用いる場合としては、例えば、ケン化度、平均重合度、融点などが異なる二種以上のPVA系樹脂の組み合わせ;溶融成形により製造したPVA系樹脂と溶融成形せずに得られたPVA系樹脂の組み合わせ;形状や粒子径などが異なるPVA系樹脂の組み合わせ等が挙げられる。
【0055】
[ダイバーティングエージェント]
本発明のダイバーティングエージェントは、上記のPVA系樹脂を含有するものである。PVA系樹脂の含有量は、ダイバーティングエージェント全体に対して、好ましくは50~100質量%、より好ましくは80~100質量%、さらに好ましくは90~100質量%である。かかる含有量が少なすぎると本発明の効果が得られにくくなる傾向がある。
【0056】
本発明のダイバーティングエージェントには、上記のPVA系樹脂以外に、例えば、砂、鉄、セラミック、その他の生分解性樹脂等の添加剤を配合することができる。
かかる添加剤の配合量は、ダイバーティングエージェント全体に対して、好ましくは50質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0057】
本発明のダイバーティングエージェントは、石油や天然ガスなどの掘削において、水圧破砕法を用いる場合に、坑井に生成された亀裂や割れ目の中に入り、その亀裂や割れ目を一時的に閉塞することにより、新たな亀裂や割れ目を形成することができる。亀裂や割れ目の閉塞方法としては、本発明のダイバーティングエージェントを坑井内の流体の流れにより亀裂に流入させればよい。
【0058】
また、本発明のダイバーティングエージェントは水溶性で、5~30℃の超低温~低温の水中でも用いられることができ、かつ生分解性である。そのため、本発明のダイバーティングエージェントは、使用後は速やかに水及び海水に溶解し除去され、その後生分解され、環境負荷が小さく、非常に有用である。
【実施例】
【0059】
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
なお、例中、「部」、「%」とあるのは、特に断りのない限り、質量基準を意味する。
【0060】
<試験例1>
[実施例1]
還流冷却器、滴下装置、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル25部(全体の25%を初期仕込み)、メタノール18部、及び3,4-ジアセトキシ-1-ブテン1.5部(全体の25%を初期仕込み)を仕込み、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、沸点に到達した後、アセチルパーオキサイドを0.080部投入し、重合を開始した。
【0061】
さらに、重合開始から0.5時間後に酢酸ビニル75部と3,4-ジアセトキシ-1-ブテン4.5部を1.5時間かけて等速滴下した。酢酸ビニルの重合率が97%となった時点で、ヒドロキノンモノメチルエーテルを所定量添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込みつつ蒸留することで未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液を得た。
【0062】
ついで、上記溶液をメタノールで希釈し、固形分濃度を52%に調整して、溶液温度を45℃に保ちながら、水酸化ナトリウム2%メタノール溶液(ナトリウム換算)を共重合体中の酢酸ビニル構造単位及び3,4-ジアセトキシ-1-ブテン構造単位の合計量1モルに対して12ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行すると共にケン化物が析出し、ケーキ状となった時点で、ケーキをベルト上で移動させながら粉砕した。その後、中和用の酢酸を水酸化ナトリウム1.0当量あたり0.3当量添加し、濾別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、粉末状の側鎖1,2-ジオール構造単位含有変性PVA系樹脂(PVA-1)を得た。
【0063】
〔PVA-1の評価〕
(ケン化度)
PVA-1のケン化度を、JIS K 6726:1994に準じて、樹脂中の残存酢酸ビニルおよび3,4-ジアセトキシ-1-ブテンの構造単位の加水分解に要するアルカリ消費量によって求めた。結果を表1に示す。
【0064】
(平均重合度)
PVA-1の平均重合度を、JIS K 6726:1994に準じて分析した。結果を表1に示す。
【0065】
(変性率)
PVA-1中の前記式(1)で表される1,2-ジオール構造単位の含有率(変性率)を、1H-NMR(300MHz プロトンNMR、DMSO-d6溶液、内部標準物質:テトラメチルシラン、50℃)にて測定した積分値より算出した。結果を表1に示す。
【0066】
(平均粒子径)
PVA-1の平均粒子径を、乾式ふるい分け試験方法(JIS Z 8815:1994参考)による積算値が50%になる粒子径として算出した。結果を表1に示す。
【0067】
(30分後溶解率)
140mLの蓋付きガラス容器を2つ用意し、一方に100gの水を入れ、もう一方に100gの海水を入れた。2つのガラス容器を恒温機に入れ、水温を5℃とした。ナイロン製の120メッシュ(目開き125μm、10cm×7cm)の長辺を二つ折りにし、両端をヒートシールし袋状メッシュ(5cm×7cm)を得た。
【0068】
得られた袋状メッシュに1gのPVA-1を入れ、開口部をヒートシールし、PVA-1入りの袋状メッシュを得て、質量を測定した。上記2つのガラス容器中にPVA-1入りの袋状メッシュを浸漬させた。5℃の恒温機内で30分静置後、PVA-1入りの袋状メッシュを上記2つのガラス容器から取り出し、140℃で3時間乾燥させ、かかるPVA-1入りの袋状メッシュの質量を測定し、浸漬前の質量から袋状メッシュ中に残存したPVA-1の質量を算出し、下記式によって、水及び海水におけるPVA-1の30分後溶解率を算出した。結果を表1に示す。
なお、下記式中、PVA系樹脂の固形分率(質量%)は、PVA系樹脂を140℃で3時間乾燥させ、乾燥前後のPVA系樹脂の質量を測定することにより算出できる。
【0069】
【0070】
(24時間後溶解率)
水温を20℃としたこと、及び恒温機内での静置時間を24時間としたこと以外は上記(30分後溶解率)と同様にして、水及び海水におけるPVA-1の24時間後溶解率を算出した。結果を表1に示す。
【0071】
[実施例2]
カッターを調整し、PVA系樹脂の粒子の大きさを大きくした以外は実施例1と同様にして粉末状の側鎖1,2-ジオール構造単位含有変性PVA系樹脂(PVA-2)を得た。
【0072】
PVA-2の評価を、PVA-1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0073】
[実施例3]
酢酸ビニルを100部、メタノールを23部、および3,4-ジアセトキシ-1-ブテンを6部使用した以外は実施例2と同様にして、粉末状の側鎖1,2-ジオール構造単位含有変性PVA系樹脂(PVA-3)を得た。
【0074】
PVA-3の評価を、PVA-1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0075】
[比較例1]
酢酸ビニルを100部、メタノールを32.5部、及び3,4-ジアセトキシ-1-ブテンを2部使用した以外は実施例1と同様にして、粉末状の側鎖1,2-ジオール構造単位含有変性系樹脂(PVA-4)を得た。
【0076】
PVA-4の評価を、PVA-1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0077】
【0078】
表1の結果より、粉末状のPVA系樹脂を含むダイバーティングエージェントにおいて、実施例1~3の本発明のダイバーティングエージェントは、一定時間(5分~3時間程度)は超低温~低温域(5~30℃)の水及び海水に完全溶解せず、一定時間経過後は速やかに溶解除去されることが分かった。
【0079】
<試験例2>
[実施例4]
還流冷却器、滴下装置、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル10部(全体の10%を初期仕込み)、メタノール38部、及び3,4-ジアセトキシ-1-ブテン0.6部(全体の10%を初期仕込み)を仕込み、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、沸点に到達した後、アセチルパーオキサイドを0.08部投入し、重合を開始した。
【0080】
さらに、重合開始から0.5時間後に酢酸ビニル90部と3,4-ジアセトキシ-1-ブテン5.4部を15時間かけて等速滴下した。酢酸ビニルの重合率が96%となった時点で、ヒドロキノンモノメチルエーテルを所定量添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込みつつ蒸留することで未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液を得た。
【0081】
ついで、上記溶液をメタノールで希釈し、固形分濃度を50%に調整して、かかるメタノール溶液をニーダーに仕込み、溶液温度を35℃に保ちながら、水酸化ナトリウム2%メタノール溶液(ナトリウム換算)を共重合体中の酢酸ビニル構造単位及び3,4-ジアセトキシ-1-ブテン構造単位の合計量1モルに対して6.8ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行すると共にケン化物が析出し、粒子状となった時点で、さらに水酸化ナトリウム2%メタノール溶液(ナトリウム換算)を酢酸ビニル構造単位及び3,4-ジアセトキシ-1-ブテン構造単位の合計量1モルに対して6ミリモル追加しケン化を行った。その後、中和用の酢酸を水酸化ナトリウム1.0当量あたり0.8当量添加し、濾別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、側鎖に1,2-ジオール構造を有するPVA系樹脂(PVA-5α)を得た。
【0082】
PVA-5αのケン化度は、JIS K 6726:1994に準じて、樹脂中の残存酢酸ビニルおよび3,4-ジアセトキシ-1-ブテンの構造単位の加水分解に要するアルカリ消費量にて分析したところ、99.0モル%であった。また、PVA-5αの平均重合度は、JIS K 6726:1994に準じて分析したところ、300であった。
【0083】
また、PVA-5α中の前記式(1)で表される1,2-ジオール構造単位の含有量(変性率)は、1H-NMR(300MHz プロトンNMR、DMSO-d6溶液、内部標準物質:テトラメチルシラン、50℃)にて測定した積分値より算出したところ、3.0モル%であった。
【0084】
PVA-5αとPVA-1を、PVA-5α/PVA-1=42/58(質量比)で混合し、押出機に投入し、さらにステアリン酸マグネシウム500ppmと12-ヒドロキシステアリン酸マグネシウム500ppmを混合し下記の条件で溶融混練し、空冷させることにより凝固させた後、カッターを用いてカッティングした(ストランドカッティング方式)。その後、乾燥し、直径2.6mm、軸方向長さ3mmの円柱状のPVA系樹脂粒子(PVA-5)を得た。
【0085】
(溶融混練条件)
押出機:テクノベル社製 15mmφ L/D=60
回転数:200rpm
吐出量:1.2~1.5kg/h
押出温度:C1/C2/C3/C4/C5/C6/C7/C8/D=90/170/200/215/215/220/225/225/225℃
【0086】
PVA-5の評価を、平均粒子径を算出しなかった以外は、PVA-1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0087】
[実施例5]
酢酸ビニルを100部(全体の40%を初期仕込み)、メタノールを27部、及び3,4-ジアセトキシ-1-ブテンを12部(全体の40%を初期仕込み)使用し、重合率が96%となった時点で重合を終了し、水酸化ナトリウム2%メタノール溶液(ナトリウム換算)の使用割合を6ミリモルとした以外は実施例1と同様にして、側鎖1,2-ジオール構造単位含有変性PVA系樹脂を得た。
【0088】
上記で得られたPVA系樹脂を実施例4と同様の溶融混練条件で成形し、直径2.6mm、軸方向長さ3mmの円柱状のPVA系樹脂粒子(PVA-6)を得た。
【0089】
PVA-6の評価を、PVA-5と同様に行った。結果を表2に示す。
【0090】
[実施例6]
酢酸ビニルを100部(全体の14%を初期仕込み)、メタノールを27部、及び3,4-ジアセトキシ-1-ブテンを16部(全体の14%を初期仕込み)使用し、重合率が93%となった時点で重合を終了し、水酸化ナトリウム2%メタノール溶液(ナトリウム換算)の使用割合を8ミリモルとした以外は実施例1と同様にして、側鎖1,2-ジオール構造単位含有変性PVA系樹脂を得た。
【0091】
上記で得られたPVA系樹脂を実施例4と同様の溶融混練条件で成形し、直径2.6mm、軸方向長さ3mmの円柱状のPVA系樹脂粒子(PVA-7)を得た。
【0092】
PVA-7の評価を、PVA-5と同様に行った。結果を表2に示す。
【0093】
[比較例2]
酢酸ビニルを100部(全体の20%を初期仕込み)、メタノールを32.5部、及び3,4-ジアセトキシ-1-ブテンを4部(全体の20%を初期仕込み)使用し、重合率が91%となった時点で重合を終了した以外は実施例1と同様にして、側鎖1,2-ジオール構造単位含有変性PVA系樹脂を得た。
【0094】
上記で得られたPVA系樹脂を実施例4と同様の溶融混練条件で成形し、直径2.6mm軸方向長さ3mmの円柱状のPVA系樹脂粒子(PVA-8)を得た。
【0095】
PVA-8の評価を、PVA-5と同様に行った。結果を表2に示す。
【0096】
【0097】
表2の結果より、溶融成形されたPVA系樹脂を含むダイバーティングエージェントにおいて、実施例4~6の本発明のダイバーティングエージェントは、一定時間(5分~3時間程度)は超低温~低温域(5~30℃)の水及び海水に完全溶解せず、一定時間経過後は速やかに溶解除去されることが分かった。
【0098】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2019年2月13日出願の日本特許出願(特願2019-23948)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。