(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】アンテナ
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/38 20060101AFI20240827BHJP
H01P 1/02 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H01Q1/38
H01P1/02 A
(21)【出願番号】P 2021526123
(86)(22)【出願日】2020-06-10
(86)【国際出願番号】 JP2020022925
(87)【国際公開番号】W WO2020250954
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2019109115
(32)【優先日】2019-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】森本 康夫
(72)【発明者】
【氏名】茂木 健
(72)【発明者】
【氏名】佐山 稔貴
(72)【発明者】
【氏名】小野 元司
(72)【発明者】
【氏名】加賀谷 修
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-332830(JP,A)
【文献】特表2013-511925(JP,A)
【文献】国際公開第2016/063758(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/38
H01P 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の外側に設けられるアンテナ導体と、
シート状の誘電体が折り返されることで形成される第1絶縁部と、前記第1絶縁部と前記筐体との間に設けられる接地導体と、折り返されていないシート状の前記誘電体で形成される第2絶縁部と、前記アンテナ導体に給電する信号線とを有するフレキシブル基板と、
を備え、
前記アンテナ導体は、前記第2絶縁部に設けられずに前記第1絶縁部に設けられ、
前記第1絶縁部は、前記アンテナ導体の法線方向で前記アンテナ導体と前記接地導体との間に位置する部分であり、
前記信号線の先端は、前記第1絶縁部に設けられ、
前記第1絶縁部の厚みが、前記第2絶縁部の厚みよりも厚いアンテナ。
【請求項2】
前記シート状の前記誘電体が折り返される部分に挟み込まれ、前記アンテナ導体から前記接地導体までの距離を広げる絶縁部材を備える請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
筐体の外側に設けられるアンテナ導体と、
シート状の誘電体が折り返されることで形成される第1絶縁部と、前記第1絶縁部と前記筐体との間に設けられる接地導体と、折り返されていないシート状の前記誘電体で形成される第2絶縁部と、前記アンテナ導体に給電する信号線とを有するフレキシブル基板と、
を備え、
前記アンテナ導体は、前記第2絶縁部に設けられずに前記第1絶縁部に設けられ、
前記第1絶縁部の厚みが、前記第2絶縁部の厚みよりも厚
く、
前記シート状の前記誘電体が折り返される部分を跨ぐように互いに離れて設けられる複数の導体パターンを備える、アンテナ。
【請求項4】
複数の前記導体パターンは、前記シート状の前記誘電体が折り返された状態で、互いに接することがない位置に設けられる請求項3に記載のアンテナ。
【請求項5】
前記信号線は、ループアンテナ形状に接続される平衡型伝送路である請求項
3又は4に記載のアンテナ。
【請求項6】
前記信号線は、遅延線路を有する平衡形伝送路である請求項
3又は4に記載のアンテナ。
【請求項7】
前記信号線は、平衡形伝送路であり、
前記アンテナ導体は、前記平衡形伝送路を介して前記フレキシブル基板に設けられる伝送線路に接続されるダイポールアンテナである請求項
3又は4に記載のアンテナ。
【請求項8】
筐体の外側に設けられるアンテナ導体と、
シート状の誘電体が折り返されることで形成される第1絶縁部と、前記第1絶縁部と前記筐体との間に設けられる接地導体と、折り返されていないシート状の前記誘電体で形成される第2絶縁部と、前記アンテナ導体に給電する信号線とを有するフレキシブル基板と、
を備え、
前記アンテナ導体は、前記第2絶縁部に設けられずに前記第1絶縁部に設けられ、
前記第1絶縁部の厚みが、前記第2絶縁部の厚みよりも厚
く、
L字状に折り曲げられた前記フレキシブル基板の内、前記筐体に対して略垂直方向に伸びる部分を保持する支持部材を備え、
前記支持部材の前記筐体側とは反対側に前記第1絶縁部が形成され、
前記支持部材の前記筐体側に前記第2絶縁部が形成され、
前記支持部材は、前記フレキシブル基板の略垂直方向に伸びる部分が挿入される溝状の凹部を有する、アンテナ。
【請求項9】
前記支持部材は、前記フレキシブル基板の略垂直方向に伸びる部分が接する直方体状に形成される請求項
8に記載のアンテナ。
【請求項10】
筐体の外側に設けられるアンテナ導体と、
シート状の誘電体が折り返されることで形成される第1絶縁部と、前記第1絶縁部と前記筐体との間に設けられる接地導体と、折り返されていないシート状の前記誘電体で形成される第2絶縁部と、前記アンテナ導体に給電する
基板一体型導波路とを有するフレキシブル基板と、
を備え、
前記アンテナ導体は、前記第2絶縁部に設けられずに前記第1絶縁部に設けられ、
前記第1絶縁部の厚みが、前記第2絶縁部の厚みよりも厚
く、
前記シート状の前記誘電体が折り返される部分に挟み込まれ、前記アンテナ導体から前記接地導体までの距離を広げる絶縁部材を備え、
前記基板一体型導波路を構成する複数の導体柱の内、前記絶縁部材の角部で折り曲げられる位置を跨ぐように配置される2つの導体柱の配置間隔は、残りの導体柱の配置間隔よりも広い、アンテナ。
【請求項11】
前記フレキシブル基板に接する前記絶縁部材の端部は、湾曲状に形成される請求項2に記載のアンテナ。
【請求項12】
前記絶縁部材は、湾曲状の表面を有する部材又は湾曲状の表面を形成可能なフレキシブル性を持つ部材である、請求項2に記載のアンテナ。
【請求項13】
前記絶縁部材は、複数の種類の絶縁体を含む、請求項2に記載のアンテナ。
【請求項14】
前記絶縁体は、前記筐体の絶縁体部分を含む、請求項
13に記載のアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボット、自動車、列車などには種々の電波を送受するアンテナが搭載されることが知られている。特許文献1に示される車載用平面アンテナ装置は、アンテナ基板と、アンテナ基板の表面を保護するレドームと、アンテナ基板を車の筐体に固定するためのブラケットと、アンテナ基板に給電する給電ケーブルとを備える。ブラケットに対向する地導体と板状の誘電体と放射素子とがこの並びで積層されることで、アンテナ基板が車の筐体に設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示される従来技術では、フレキシブル基板のように板厚が薄い基板が利用される場合、誘電体の厚みが薄くなることで放射素子から地導体までの距離が相対的に短くなり、必要なアンテナ性能を確保することが難しいという課題がある。
【0005】
そこで、本開示は、必要なアンテナ性能を確保できるアンテナを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、筐体の外側に設けられるアンテナ導体と、シート状の誘電体が折り返されることで形成される第1絶縁部と、前記第1絶縁部と前記筐体との間に設けられる接地導体と、折り返されていないシート状の前記誘電体で形成される第2絶縁部と、前記アンテナ導体に給電する信号線とを有するフレキシブル基板と、を備え、前記絶縁部材は、前記アンテナ導体と前記接地導体との間に位置する第1絶縁部の厚みが、前記アンテナ導体と前記接地導体との間に位置しない第2絶縁部の厚みよりも厚いアンテナを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の技術によれば、必要なアンテナ性能を確保できるアンテナを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態に係るアンテナ100を備えた車両1の外観図である。
【
図2】第1構成例に係るアンテナ100-1の第1断面図である。
【
図3】第1構成例に係るアンテナ100-1の第2断面図である。
【
図4】第2構成例に係るアンテナ100-2の断面図である。
【
図5A】第3構成例に係るアンテナ100-3の断面図である。
【
図5B】第3構成例に係るアンテナ100-3をXY平面で平面視した図で折り返し部分を抜き出したものである。
【
図6】第4構成例に係るアンテナ100-4を平面視した図である。
【
図7】第5構成例に係るアンテナ100-5を平面視した図である。
【
図8】第1~第5構成例に係る各アンテナについて、リターンロス係数S11のシミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図9】第6構成例に係るアンテナ100-6の断面図である。
【
図10A】第7構成例に係るアンテナ100-7の斜視図である。
【
図10B】第7構成例に係るアンテナ100-7を平面視した図である。
【
図12】第7構成例に係るアンテナ100-7について、リターンロス係数S11のシミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図13A】第8構成例に係るアンテナ100-8の斜視図である。
【
図13B】第8構成例に係るアンテナ100-8を平面視した図である。
【
図15】第8構成例に係るアンテナ100-8について、リターンロス係数S11のシミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図16】第9構成例に係るアンテナ100-9の断面図で折り返しの部分を抜き出したものである。
【
図17A】第10構成例に係るアンテナ100-10の断面図で折り返しの部分を抜き出したものである。
【
図17B】アンテナ100-10に利用されるフレキシブル基板30の比較例を示す図である。
【
図17C】アンテナ100-10に利用されるフレキシブル基板30の構成例を示す図である。
【
図18】第11構成例に係るアンテナ100-11を平面視した図である。
【
図20】第12構成例に係るアンテナ100-12を平面視した図である。
【
図22】第13構成例に係るアンテナ100-13を平面視した図である。
【
図24A】第14構成例に係るアンテナ100-14の構成例を示す第1図である。
【
図24B】第14構成例に係るアンテナ100-14の構成例を示す第2図である。
【
図24C】第14構成例に係るアンテナ100-14の構成例を示す第3図である。
【
図25A】第15構成例に係るアンテナ100-15の構成例を示す第1図である。
【
図25B】第15構成例に係るアンテナ100-15の構成例を示す第2図である。
【
図25C】第15構成例に係るアンテナ100-15の構成例を示す第3図である。
【
図26A】第16構成例に係るアンテナ100-16の部分拡大図である。
【
図26B】第16構成例に係るアンテナ100-16に利用されるフレキシブル基板30Bを折り曲げる前の状態を示す図である。
【
図27】第17構成例に係るアンテナ100-17の断面図である。
【
図28】第18構成例に係るアンテナ100-18の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本開示に係る実施形態について説明する。なお、平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向には、例えばアンテナが設置される筐体が曲面で構成されている場合など、本発明の効果を損なわない程度のずれが許容される。また、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、それぞれ、X軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向を表す。X軸方向とY軸方向とZ軸方向は、互いに直交する。XY平面、YZ平面、ZX平面は、それぞれ、X軸方向及びY軸方向に平行な仮想平面、Y軸方向及びZ軸方向に平行な仮想平面、Z軸方向及びX軸方向に平行な仮想平面を表す。
【0010】
本開示の一実施形態にアンテナは、マイクロ波やミリ波等の高周波帯(例えば、1GHz超~300GHz)の電波の送受に好適である。本開示の一実施形態におけるアンテナは、例えば、V2X通信システム、第5世代移動通信システム(いわゆる、5G)、車載レーダーシステムなどに適用可能であるが、適用可能なシステムはこれらに限られない。周波数域としては、例えばITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)(5.89GHz)用や、5G(28GHz帯、3.6から6GHz帯、39GHz帯)用、Wi-Fi(2.4GHz、5GHz)用であってよい。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態に係るアンテナ100を備えた車両1の外観図である。車両1は、例えば列車の先頭車両、後尾車両、中間車両などである。車両1の筐体1aにはアンテナ100が設けられている。なお、実施の形態に係るアンテナ100は、列車以外にも、自動車、建築物、ロボット、航空機などにも利用可能である。筐体1aは、例えば車両1の外郭を構成するパネルに限定されず、後述するアンテナ導体120を設置可能な箇所であればよい。筐体1aには、例えば自動車のフロントガラス、自動車のリアガラス、自動車、航空機、自動車等の内張、建築物の窓ガラス、ロボットの外郭を構成するフレームなども含まれる。
【0012】
また、筐体1aがビルの窓ガラスである場合、例えば、ビルの窓ガラスの室内側に後述するアンテナ導体120が設けられ、後述するRFモジュール60はビルの室内の天井の裏側に設けられる。そして、後述するフレキシブル基板30にアンテナ導体120と後述する給電回路110が一体で設けられており、給電回路110によってアンテナ導体120がRFモジュール60に接続される。
【0013】
また、筐体1aが自動車のフロントガラスである場合、アンテナ導体120はフロントガラスの内側に挟み込まれているか、フロントガラスの表面に設けられる。そして、RFモジュール60は自動車のルームミラーの取り付け部に設置され、フレキシブル基板30にアンテナ導体120と後述する給電回路110が一体で設けられており、給電回路110によってアンテナ導体120がRFモジュール60に接続される。
【0014】
また、筐体1aがロボットのボディである場合、アンテナ導体120はロボットのボディの表面(表側)に設けられ、RFモジュール60はロボットのボディの裏側に設置される。フレキシブル基板30にアンテナ導体120と後述する給電回路110が一体で設けられており、給電回路110によってアンテナ導体120がRFモジュール60に接続される。
【0015】
図2は第1構成例に係るアンテナ100-1の第1断面図、
図3は第1構成例に係るアンテナ100-1の第2断面図である。
図2には
図1のII-II矢視断面が示され、
図3には
図2のIII-III矢視断面が示される。アンテナ100-1は、給電回路110-1、アンテナ導体120、RFコネクタ50、及びRFモジュール60を備える。
【0016】
給電回路110-1は、筐体1aの外側面1a1から筐体1aの内側面1a2に渡って設けられるフレキシブル基板30と、アンテナ導体120に接続されるようにフレキシブル基板30に設けられ、電磁波を遮蔽するシールド構造を有する伝送線路20とを備える。また、給電回路110-1は、少なくとも伝送線路20の一部を覆い隠すように伝送線路20の筐体1a側とは反対側(筐体1aの外側)に設けられる意匠部40をさらに備えてもよい。
【0017】
フレキシブル基板30は、筐体1aの曲面部に沿うように曲げることが可能な柔軟性を有し、弱い力で繰り返し変形させることが可能であり、変形した場合にもその電気的特性を維持する特性をもつ単相両面基板である。
【0018】
フレキシブル基板30は、例えば、厚み12μmから300μmの薄膜状の誘電体7(ベースフィルム)の上下面に、厚みが12μm~300μmの導体箔が張り合わされた構造である。薄膜状の誘電体7は、第1絶縁部3-1及び第2絶縁部3-2を構成する。誘電体7には、ソルダーレジスト(レジスト/フォトレジスト)、カバーレイ(Coverlay)と呼ばれる材料で、ポリイミド、ポリエステルなどが使用される。導体箔には、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、白金、クロムなどが用いられる。フレキシブル基板30は、一般的なリジッド基板(総厚300μm~1,600μm)と比較して薄く、加工性に優れるため、複雑な形状加工が可能である。
【0019】
フレキシブル基板30の誘電体7は、可視光を透過する透明な誘電体部材が好ましい。「透明」には、半透明が含まれる。誘電体7が透明であり、導体(アンテナ導体120、信号線21、接地導体22)が細いメッシュ状になることで、可視光領域にてほぼ透明になり、意匠部40で覆わなくとも筐体1aを目視できるようになる。フレキシブル基板30の誘電体7の可視光線透過率は、フレキシブル基板30越しの視野の遮りを抑える点で、例えば、30%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、50%以上がさらに好ましく、60%以上がよりさらに好ましく、80%以上が特に好ましい。また、上限は特に限定されないが、99%以下であってよく、95%以下であってよい。ここで、可視光透過率は、分光光度計により測定された分光透過率の値に、日本工業規格(JIS R3106(1998))により規定された重価係数を乗じて加重平均した値である。
【0020】
フレキシブル基板30の誘電体7は、例えば28GHzにおける誘電正接(いわゆる、tanδ)が0.01以下である。なお、28GHzにおける誘電正接は、GHz帯の周波数における指標の例である。そのため、28GHzにおける誘電正接が0.01以下であれば、例えば、1GHz~100GHzにおいても伝送線路20の伝送損失が抑制されるので、28GHz近傍に限らず、1GHz~100GHzにおける平面アンテナ101のアンテナ利得を向上できる。フレキシブル基板30の誘電体7は、伝送線路20の伝送損失(ひいては、アンテナ利得の低下)を抑制する点で、0.005以下が好ましく、0.004以下がより好ましく、0.003以下がさらに好ましく、0.002以下がさらに好ましく、0.001以下が特に好ましい。フレキシブル基板30の誘電体7の28GHzにおける誘電正接は、0よりも大きければよく、例えば、0.00001以上でもよく、0.0005以上でもよく、0.001以上でもよい。
【0021】
なお、誘電正接(tanδ)は、25℃、28GHzで、日本工業規格(JIS R 1641:2007)に規定されている方法により、空洞共振器及びベクトルネットワークアナライザを用いて測定された値である。
【0022】
フレキシブル基板30は、筐体1aの外側面1a1において筐体1aの平面部10から屈曲部11まで延伸し、さらに屈曲部11の端部で折り返されて、筐体1aの内側面1a2に向かって延伸する。よって、フレキシブル基板30は、厚さ2mm程度の筐体1aの表面から裏面に対して折り返しても問題ないような柔軟性を有することが好ましい。筐体1aの内側面1a2に延伸したフレキシブル基板30にはRFコネクタ50が接続される。RFコネクタ50は、例えば筐体1aの内側面1a2に設けられるRFモジュール60に接続される。RFコネクタ50及びRFモジュール60が筐体1aの内側に設けられることで、RFコネクタ50及びRFモジュール60が筐体1aで目隠しされるため、アンテナ100-1の意匠性が向上する。
【0023】
フレキシブル基板30が筐体1aの曲面に沿って設けられることで、曲面を有する筐体1aにおいても、筐体1aの曲率が変化する部分と平行に伝送線路20を構築できる。そのため、アンテナ100-1の設計の自由度が向上すると共に、伝送線路20が筐体1aから浮き上がるように見えることがなくなり、意匠性が向上する。なお、フレキシブル基板30は、曲面を有さない筐体1aに設けてもよい。フレキシブル基板30が曲面を有さない筐体1aに設けられた場合でも、筐体1aの外側面1a1から内側面1a2に向かって折り返すようにしてフレキシブル基板30を設けることができるため、筐体1aの内側面1a2に設けられるRFモジュール60への接続が容易化され、意匠性が向上すると共にアンテナ100-1の設計の自由度が向上する。
【0024】
アンテナ導体120は、例えば、フレキシブル基板30の折り返し部31に設けられる。フレキシブル基板30の折り返し部31は、シート状のフレキシブル基板30の誘電体7の端部が折り返されることで形成された、Z軸方向の厚みが増加している部分である。アンテナ導体120は、フレキシブル基板30の折り返し部31を介して、筐体1aの外側に設けられる。
【0025】
図2に示す形態では、アンテナ導体120は、その表面がXY平面に平行な導体パターンである。アンテナ導体120は、フレキシブル基板30に形成される導体パターンでもよいし、予め製造された後にフレキシブル基板30に配置される導体シート、導体基板などでもよい。アンテナ導体120には、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、白金、クロムなどが用いられる。
【0026】
フレキシブル基板30の折り返し部31は、誘電体7の内、Z軸方向に並ぶ接地導体22とアンテナ導体120との間に位置する領域(第1絶縁部3-1)に等しい。
【0027】
フレキシブル基板30の折り返し部31以外の部分は、誘電体7の内、アンテナ導体120と筐体1aとの間に位置しない領域(第2絶縁部3-2)に等しい。第2絶縁部3-2は、例えばフレキシブル基板30の折り返し部31と信号線21との境界部から、筐体1aの内側に位置するフレキシブル基板30の端部までの部分に相当する。
【0028】
第1絶縁部3-1のZ軸方向の厚みt1は、第2絶縁部3-2のZ軸方向の厚みt2よりも厚い。厚みt2は、例えば12μm~300μmまでの値に設定され、厚みt1は、例えば厚みt2よりも12~300μm厚いことが好ましい。
【0029】
フレキシブル基板30に折り返し部31を設けることにより、接地導体22からアンテナ導体120までのZ軸方向の距離(離隔距離)を広げることができる。これにより、アンテナ導体120の利得を向上させることができると共に、アンテナ100-1の構造が簡素化されて信頼性が向上する。
【0030】
図3における伝送線路20は、筐体1aの面に沿って設けられ、例えば電磁波を遮蔽するシールド構造を有する基板一体型導波路(Substrate Integrated Waveguide:SIW)であることが好ましい。SIWは、基板内蔵導波路、ポスト壁導波路と称する場合もある。SIWは、
図3に示す通り、フレキシブル基板30の誘電体7と2つの導体層(後述)と、複数の導体柱23とによって構成され、導波管モードで信号を伝達する導波路である。2つの導体層は、フレキシブル基板30の誘電体7に形成される導体パターン(接地導体22)である。導体柱23は、2つの導体層を電気的に接続する中実又は中空の柱状導電体である。導体柱23は、SIW中を伝搬する高周波信号が外部に漏洩しない間隔で複数配列されている。
【0031】
接地導体22には、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、白金、クロムなどが用いられる。接地導体22の厚さは、0.09μm以上が好ましく、0.35μm以上がより好ましい。また、接地導体22の厚さは、110μm以下が好ましい。接地導体22の厚さが上記範囲内であれば、アンテナ導体120のアンテナ利得を高めることができる。
【0032】
図2に示す信号線21は、誘電体7に接続される導体パターンである。信号線21の一端(プラスY軸方向の端部)は、アンテナ導体120と接地導体22との間の領域(折り返し部31においてシート状の誘電体7が重なる部分)に設けられる。信号線21は、例えばアンテナ導体120と非接触で電気的に接続される。信号線21には、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、白金、クロムなどが用いられる。信号線21の厚さは、0.09μm以上が好ましく、0.35μm以上がより好ましい。また、信号線21の厚さは、110μm以下が好ましい。
【0033】
なお、伝送線路20は、SIW以外の伝送線路でもよい。伝送線路20の他の例として、柔軟性のあるストリップ線路、マイクロストリップ線路などがある。
【0034】
意匠部40は、アンテナ導体120及び伝送線路20を覆う目隠しとして機能する。本構成例では、意匠部40のプラスY軸方向側の端部41が、例えば筐体1aの外側面1a1の内、フレキシブル基板30の折り返し部31のプラスY軸方向の端部付近に接している。そして、意匠部40の端部41とは反対側の端部42が、例えば筐体1aの屈曲部11の端部付近まで伸びている。
【0035】
伝送線路20の全体の内、折り返し部分20aから筐体1aの内側に伸びる部分は、当該部分には、意匠部40が設けられていない。当該部分は、筐体1aをプラスZ軸方向から平面視したときに目視し難いためである。この構成により、当該部分を意匠部40で覆わなくとも、アンテナ導体120及び伝送線路20の意匠性を向上させることができる。また、意匠部40を設ける領域を小さくできるため、アンテナ100-1の製造コストの増加を抑制できる。
【0036】
なお、本構成例では、意匠部40がアンテナ導体120及び伝送線路20の双方を覆っているが、意匠部40は、少なくとも伝送線路20の一部を覆い隠す形状であればよい。伝送線路20の一部は、例えば、フレキシブル基板30の折り返し部31と信号線21との境界部から、伝送線路20の折り返し部分20a(筐体1aの屈曲部11の端部付近)までの領域である。この構成により、伝送線路20の一部が意匠部40で覆い隠され、筐体1aの外観の見栄えが低下することを抑制できる。
【0037】
意匠部40は、例えば、筐体の曲面に沿って曲げることができる柔軟性、電波透過性、耐防水性、耐衝撃性などを併せ持つ材料で構成されるシート部材、塗装膜などである。
【0038】
意匠部40がシート部材の場合、意匠部は、表面(おもてめん)すなわち伝送線路20側とは反対側に設けられる透明樹脂層と、裏面(伝送線路20側の面)に設けられる基材層とを備える。透明樹脂層は、耐久性に優れ、高い透明性を有するアクリル樹脂によって構成される、基材層は、アクリロニトル-エチレン-スチレン樹脂(AES樹脂)によって構成される。なお、基材層は、AES樹脂以外の樹脂、例えばABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニルなどでもよい。
【0039】
AES樹脂は、基本的特性がABS樹脂と同等であり、ゴム成分を特殊エチレンプロピレンゴムとすることで、ABS樹脂より光劣化に対して良好な安定性があり、長期屋外使用が可能である。またAES樹脂は、成形加工性にすぐれ、任意な着色が可能である。そのため、AES樹脂は、例えば屋外で利用される自動車、列車などに設置される意匠部40に好適な材料である。
【0040】
ABS樹脂は汎用性の高い樹脂であり、柔軟性があり、丈夫で加工がしやすく、AES樹脂と同様に任意な着色が可能である。その反面、ABS樹脂は、耐候性(工業製品が太陽光、温度、湿度、雨などの屋外環境に耐えられる性質)が低いため、例えば屋内で利用されるロボットの筐体などに設置される意匠部40に好適な材料である。
【0041】
ポリカーボネート樹脂は、任意な着色が可能であり、また高い透明性、自己消火性、耐衝撃性を併せ持つプラスチックである。また、ポリカーボネート樹脂は耐候性が高いため、例えば屋外で利用される自動車、列車などに設置される意匠部40に好適な材料である。
【0042】
ポリ塩化ビニルは、安価で加工性に優れる反面、絶縁性を有するため、伝送線路20の一部を覆う形状の意匠部40を安価に製造できる材料として好適である。
【0043】
意匠部40が塗装膜の場合、例えば電波透過性を有する塗料が用いられる。塗料としては、特に限定はされないが、アクリル系塗料、ウレタン系塗料、エポキシ系塗料、ポリエステル系塗料等を例示できる。塗装方法としては、特に限定はされないが、エアースプレー塗装、エアーレススプレー塗装、浸漬塗装、シャワーコート塗装、ロールコーター塗装等を例示できる。
【0044】
意匠部40がシート状の部材である場合、予め製造した意匠部40を伝送線路20などに張り付けるだけでアンテナ100-1が完成するため、アンテナ100-1の組み立て時間を短縮でき大量生産が可能になる。また、シート状にすることで、フレキシブル基板30の折り返し部31と信号線21との境界部や、フレキシブル基板30の折り返し部31と筐体1aとの境界部などに、段差部が生じても、シート状の意匠部40がその段差部を目立たなくすることができる。従って意匠性をより向上させることができる。またシート状にすることで、意匠部40の取り外しが容易になるため、アンテナ導体120、伝送線路20などのメンテナンスが向上する。
【0045】
また、意匠部40がシート状の部材の場合、フレキシブル基板30の少なくとも一部がシート状の意匠部40により覆われるようにして筐体1aに固定されている構成としてもよい。この構成により、フレキシブル基板30を筐体1aに接着などにより固定する工程を省いても、フレキシブル基板30を筐体1aへ固定できる。従って、フレキシブル基板30を筐体1aに接着するために接着剤などを塗布する作業を省くことができ、アンテナ100-1の製造時間を短縮できる。
【0046】
意匠部40が塗装膜の場合には、アンテナ導体120及び伝送線路20との良好な密着性が得られる。さらに、伝送線路20及びフレキシブル基板30の形状に関わりなく塗装膜を形成できるため、アンテナ100-1の設計の自由度が向上する。
【0047】
なお意匠部40の色は、筐体1aの色と略同じにすることが好ましい。本構成例における略同じ色とは、目視で殆ど区別が付かない色差のことであって、色差計で測定したL*a*b*表示系におけるL*a*b値で、色差ΔEが3以下、好ましくは、色差ΔEが1.5以下をいう。色差ΔEは、模様間の最大配色の色差のことである。
【0048】
ΔE={(L1-L2)2+(a1-a2)2+(b1-b2)2}0.5
L1、a1、b1:筐体1aの測色結果
L2、a2、b2:意匠部40の測色結果
【0049】
意匠部40の色を筐体1aの色と略同じにすることで、例えば白色の筐体1aに白色の意匠部40を貼り合わせた場合に、それぞれの色が厳密には互いに異なるとしても実用上同じ色と見なせるため、アンテナ100-1の意匠性がより向上する。
【0050】
RFコネクタ50は高周波の信号を通し、他の基板や他の線路と接続するためのコネクタである。一般的には同軸線路から構成されるものがある。RFモジュール60は各種機能を持つデバイスが実装された部品である。一般的には増幅器、位相器、ミキサ、信号源、フィルタ、スイッチ、サーキュレータ、AD/DA(Analog to Digital / Digital to Analog)コンバータ、などのデバイスが実装され、入出力インターフェースにRFコネクタおよび電源/制御コネクタが設けられたものがある。
【0051】
図4は第2構成例に係るアンテナ100-2の断面図である。上述のアンテナと同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。
図4に示すアンテナ100-2は、給電回路110-2を備え、給電回路110-2は、
図2に示す構成に加え、絶縁部材70を備える。
【0052】
絶縁部材70は、意匠部40とフレキシブル基板30との間に設けられる。絶縁部材70は、誘電体を主成分とする板状又はシート状のフレキシブルな基材である。例えば、意匠部40が塗装膜で形成された場合、塗装膜は、材料の物性値(比誘電率と誘電正接)を管理し難いため、誘電正接が低下する傾向にある。絶縁部材70を設けることによって、意匠部40からフレキシブル基板30の誘電体までの距離を広げることができるため、塗装膜によるアンテナ利得の低下を抑制できる。絶縁部材70の厚みは、フレキシブル基板30におけるアンテナ導体120と接地導体22との距離、あるいは、信号線21と接地導体22との距離(すなわちフレキシブル基板30の絶縁材厚み)の半分以上であると望ましい。
【0053】
図5Aは第3構成例に係るアンテナ100-3の断面図で折り返し部分を抜き出したものである。
図5Bは第3構成例に係るアンテナ100-3をXY平面で平面視した図で折り返し部分を抜き出したものである。上述のアンテナと同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。
【0054】
図5Aに示すように、点線で示す板状に展開した誘電体7を矢印Aの方向に折り曲げることで、折り返し部31が形成される。折り返し部31は、アンテナ導体120が形成される第1領域3-1aが、信号線21が形成される第2領域3-1bに重なることで形成される。このように構成されるアンテナ100-3では、アンテナ導体120と信号線21の先端開放部21Aとの位置関係がアンテナ特性に大きく影響する。従って、折り返し部31を形成する際、信号線21の先端開放部21Aをアンテナ特性上望ましい位置に設定するためには、誘電体7を折り曲げる位置が重要になる。
【0055】
そこでアンテナ100-3は、
図2に示す構成に加え、誘電体7の折り曲げ位置を設定する手段として、複数の導体パターン4を有する。具体的には、
図5Bに示す板状に展開した誘電体7のマイナスZ軸方向の板面に、複数の導体パターン4が形成される。導体パターン4には、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、白金、クロムなどが用いられる。なお本構成では、4つの導体パターン4が形成されているが、導体パターン4の数は4以上でもよい。
【0056】
例えば、4つの導体パターン4の内、2つの導体パターン4の組が、誘電体7のマイナスX軸方向の端部寄りの箇所に形成され、残りの2つの導体パターン4の組が、誘電体7のプラスX軸方向の端部寄りの箇所に形成されている。そして、各組の2つの導体パターン4は、例えば0.5mm~5.0mm程度の隙間Gが形成されるように、Y軸方向に一定距離離れて配列される。この隙間Gは、折り曲げ箇所のマーキングとして機能する。隙間Gの位置は、折り返し部31の形成時に信号線21の先端開放部21Aがアンテナ特性上望ましい位置となるように設定される。
【0057】
アンテナ100-3によれば、隣接する導体パターン4を設けることで、隙間Gをアンテナ特性上望ましい折り曲げ位置Bに設定できる。従って、折り曲げ位置Bに折り目を付けることで折り返し部31を容易に形成できる。その結果、製造時間を大幅に短縮しながら良好なアンテナ特性を有するアンテナ100-3を得ることができる。
【0058】
図6は第4構成例に係るアンテナ100-4を平面視した図で、
図5の別態様に相当する。上述のアンテナと同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。アンテナ100-3との違いは、アンテナ100-4では、各組の導体パターン4の位置が、折り返し部31の形成時に互いに接することがないように遠ざかる方向(X軸方向)にずれている点である。
【0059】
X軸方向へのずれ量は、折り返し部31の形成時に互いに接することがない寸法、例えば0.5mm~5.0mm程度である。X軸方向に導体パターン4の位置をずらすことで、折り返し部31の形成時に導体パターン4同士が重なることを防止でき、誘電体7のZ軸方向の厚みの管理が容易になる。
【0060】
図7は第5構成例に係るアンテナ100-5を平面視した図で、
図5のさらなる別態様に相当する。上述のアンテナと同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。アンテナ100-3との違いは、アンテナ100-5では、複数の導体パターン4の代わりに、複数の貫通孔6a、6bが誘電体7に形成されている点である。
【0061】
第1領域3-1aには2つの貫通孔6aが形成され、2つの貫通孔6aは、X軸方向に互いに離れて配列される。第2領域3-1bには2つの貫通孔6bが形成され、2つの貫通孔6bは、X軸方向に互いに離れて配列される。
【0062】
誘電体7のマイナスX軸方向の端部寄りの箇所に形成される貫通孔6aと貫通孔6bの位置は、折り返し部31の形成時に信号線21の先端開放部21Aがアンテナ特性上望ましい位置となるように設定される。誘電体7のプラスX軸方向の端部寄りの箇所に形成される貫通孔6aと貫通孔6bの位置も同様である。各貫通孔6a、6bの径は、例えば1.0mm~5.0mm程度である。
【0063】
アンテナ100-5では、シート状の絶縁部材(誘電体7)の端部が折り返される部分(折り曲げ位置B)を跨ぐように互いに離れて設けられる複数の貫通孔6a、6bが、折り曲げ位置Bに対して線対称に配列される。この構成により、Y軸方向に配列される貫通孔6a及び貫通孔6bを見通せるようにしながら、第1領域3-1aを第2領域3-1bに重ねることで、アンテナ特性上望ましい折り曲げ位置Bで折り目を付けることができる。なお、貫通孔6a及び貫通孔6bが見通せる状態で棒状のストッパをこれらの貫通孔に挿入すれば、第1領域3-1aと第2領域3-1bとの位置ずれを防止できる。
【0064】
またアンテナ100-5によれば、穴あけ加工だけで適切な位置に折り目を付けることができるため、導体パターンの設定が不要になり、アンテナ100-5の設計の自由度が向上する。
【0065】
図8は第1構成例に係る各アンテナについて、リターンロス係数S11のシミュレーション結果の一例を示す図である。
【0066】
図8のシミュレーション時の設定値は、
第1絶縁部3-1の厚さt1:400μm
第2絶縁部3-2の厚さt2:200μm(誘電体7の厚さに等しい)
誘電体7の比誘電率:2.0
接地導体22の厚さ:43μm
信号線21の厚さ:43μm
アンテナ導体120の厚さ:43μmとした。
図8のシミュレーションは意匠部40を省いた状態での結果である。
図8より、周波数28GHz付近において、十分なリターンロス特性、アンテナ利得及び放射効率が得られた。通常、アンテナ導体120が幅Wと長さLで決まるマイクロストリップアンテナ(パッチアンテナ)の場合、幅Wの中心から励振することが一般的である。また、幅Wの中心において、両方から励振する場合は逆位相で励振するとマイクロストリップアンテナとして動作する。
図8に示した第1構成例に係る各アンテナにおいては、SIWから一旦は平衡系線路であるパラレルプレート線路に変換している。基板の上側の信号線導体と下側の信号線導体を、YZ面(基板水平面と直交する当該信号線導体の中心面)にて対称に配置しているため、2の信号線導体は同振幅・逆位相(0度と180度)となる。逆位相となった2つの信号線導体がマイクロストリップアンテナの幅Wの中心の両方から、励振されるためマイクロストリップアンテナとして動作することが出来る。
【0067】
図9は第6構成例に係るアンテナ100-6の断面図である。上述のアンテナと同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。アンテナ100-1との違いは、アンテナ100-6では、
図2に示す構成に加え、折り返し部31に挟み込まれるように設けられる絶縁部材80を備える点である。
【0068】
絶縁部材80は、誘電体を主成分とする板状の基材であり、フレキシブルな基材であってもよい。アンテナ100がsub6のアンテナである場合、sub6の周波数帯では接地導体22との距離を稼ぐ必要があるため、絶縁部材80を設けることにより、接地導体22からアンテナ導体120までの距離を広げることができるため、アンテナ利得の低下を抑制する点で好ましい。絶縁部材80は、アンテナ導体120から接地導体22までの距離を広げる機能を有する。絶縁部材80は、絶縁性スペーサの一例である。
【0069】
アンテナ100-6がsub6のアンテナである場合、sub6の周波数帯では接地導体22との距離を稼ぐ必要があるため、絶縁部材80を設けることにより、接地導体22からアンテナ導体120までの距離を広げることができるため、アンテナ利得の向上を図れる点で好ましい。
【0070】
次に絶縁部材80を備えたアンテナ100の信号線及びアンテナ導体の構成例を説明する。
【0071】
図10Aは第7構成例に係るアンテナ100-7の斜視図である。
図10Bは第7構成例に係るアンテナ100-7を平面視した図である。
図11Aは
図10BのA-A’矢視断面図、
図11Bは
図10BのB-B’矢視断面図、
図11Cは
図10BのC-C’矢視断面図、
図11Dは
図10BのD-D’矢視断面図である。アンテナ100-7では、ダイポール形状の信号線21a、21bにパッチアンテナ(アンテナ導体120A)が設けられている。
【0072】
信号線21aは、誘電体7のマイナスZ軸方向の板面に設けられる。信号線21aは、接地導体22からアンテナ導体120Aに向かってマイナスY軸方向に一定距離延伸した後、U字状又はC字状に折り曲げられている。
【0073】
信号線21bは、誘電体7のプラスZ軸方向の板面に設けられる。信号線21bは、接地導体22からアンテナ導体120Aに向かってマイナスY軸方向に一定距離延伸した後、アンテナ導体120Aの中心線に対して、信号線21aとは線対称に折り曲げられている。アンテナ導体120Aの中心線は、例えばアンテナ導体120Aの中心線X軸方向の中心を通り、かつY軸方向に平行な仮想線である。
【0074】
このように形成された信号線21a、21bは、ビア(via)により互いに接続されることでループアンテナを構成する。ループアンテナの中心部に、パッチアンテナであるアンテナ導体120Aが設けられる。信号線21a、21bにより平衡形伝送路(Parallel Plate Transmission Line)が形成され、平衡形伝送路では給電点での互いの位相が0°、180°で励振される。
【0075】
図12は第7構成例に係るアンテナ100-7について、リターンロス係数S11のシミュレーション結果の一例を示す図である。
【0076】
図12のシミュレーション時の設定値は、
第1絶縁部3-1の厚さt1:4mm(絶縁部材80の厚さに等しい)
第2絶縁部3-2の厚さt2:200μm(誘電体7の厚さに等しい)
誘電体7の比誘電率:2.0
接地導体22の厚さ:43μm
信号線21aの厚さ:43μm
信号線21bの厚さ:43μm
アンテナ導体120の厚さ:43μmとした。
図12より、周波数3.7GHz付近において、十分なリターンロス特性、アンテナ利得及び放射効率が得られた。
【0077】
アンテナ100-7は、フレキシブル基板に設けられる伝送線路に接続されるループアンテナ形状の信号線(ループアンテナ形状に接続される平衡型伝送路)を備え、アンテナ導体が信号線を貸して伝送線路に接続されるように構成されている。この構成により、sub6の周波数帯において、偏波面が変動する電波に対してアンテナ利得が高く、また雑音に強い(S/N比が良い)アンテナ100-7を提供できる。
【0078】
図13Aは第8構成例に係るアンテナ100-8の斜視図である。
図13Bは第8構成例に係るアンテナ100-8を平面視した図である。
図14Aは
図13BのA-A’矢視断面図、
図14Bは
図13BのB-B’矢視断面図、
図14Cは
図13BのC-C’矢視断面図、
図14Dは
図13BのD-D’矢視断面図である。上述のアンテナと同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。アンテナ100-7との違いは、アンテナ100-8では、信号線21bに遅延線路を設けている点である。
【0079】
信号線21aは、接地導体22からアンテナ導体120Aに向かってマイナスY軸方向に延伸してアンテナ導体120Aに接続される。信号線21bは、接地導体22からアンテナ導体120Aに向かってマイナスY軸方向に延伸して、アンテナ導体120Aを通過し、アンテナ導体120AのマイナスY軸側の領域で、ビアを介してアンテナ導体120Aに折り返す形状である。信号線21bの折り返し形状部分が遅延線路として機能することで、給電点での互いの位相が0°、180°で励振される。
【0080】
図15は第8構成例に係るアンテナ100-8について、リターンロス係数S11のシミュレーション結果の一例を示す図である。
【0081】
図15のシミュレーション時の設定値は、
第1絶縁部3-1の厚さt1:4mm(絶縁部材80の厚さに等しい)
第2絶縁部3-2の厚さt2:200μm(誘電体7の厚さに等しい)
誘電体7の比誘電率:2.0
接地導体22の厚さ:43μm
信号線21aの厚さ:43μm
信号線21bの厚さ:43μm
アンテナ導体120の厚さ:43μmとした。
図15より、周波数3.7GHz付近において、十分なリターンロス特性、アンテナ利得及び放射効率が得られた。
【0082】
アンテナ100-8は、信号線12a及び信号線12bが遅延線路を有する平衡形伝送路を有する。この構成により、sub6の周波数帯において、ループアンテナよりも簡易な構成でアンテナ利得が高めることができる。
【0083】
図16は第9構成例に係るアンテナ100-9の断面図で折り返しの部分を抜き出したものである。上述のアンテナと同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。アンテナ100-7との違いは、伝送線路20(フレキシブル基板30)が、接地導体22の折り曲げ位置からλ/4に相当する長さLを有する先端短絡のチョーク構造8(先端短絡回路)を備える点である。λは所定の周波数帯の中心波長である。
【0084】
折り返し部31に絶縁部材80が挟み込まれると、絶縁部材80の角部81によって折り曲げられた接地導体22(グランド)が絶縁部材80のP1の面に存在することになる。すなわちアンテナ導体120Aから見て、絶縁部材80のP1の面にグランド(接地導体22)が存在することとなる。従って、アンテナ導体120Aからは、この接地導体22部分でショート状態(短絡状態)となり、波長λの1/4に相当する点ではオープン(開放)になる様に距離Lを設定することが出来る。すなわち、アンテナ100-9では、接地導体22の折り曲げ位置P1からアンテナ導体120Aに向かってλ/4に相当する長さLだけ延伸した位置にチョーク構造(先端短絡回路)が形成されることになる。これにより、接地導体22の折り曲げ位置P1から長さLだけ離れた位置P2がアンテナ導体120Aから見て開放点となり、アンテナ導体120Aの性能が劣化しない効果を奏する。
【0085】
図17Aは第10構成例に係るアンテナ100-10の断面図で折り返しの部分を抜き出したものである。
図17Bはアンテナ100-10に利用されるフレキシブル基板30の比較例を示す図である。
図17Cはアンテナ100-10に利用されるフレキシブル基板30の構成例を示す図である。アンテナ100-7との違いは、アンテナ100-10では、XY平面で平面視した形状がL字状のフレキシブル基板30Aが用いられる点である。
【0086】
図17Bに示すフレキシブル基板30は、最大寸法L1が例えば200mm以上の帯状の基板である。このようなフレキシブル基板30をプリント板の基材(ワーク)から切り出すためには、フレキシブル基板30の最大寸法L1よりも大きなワークが必要になり、ワークサイズに制約が生じ得る。
【0087】
第10構成例に係るアンテナ100-10のフレキシブル基板30Aは、平面回路上で接地導体22がL字状に折り曲げられた構造を有するため、フレキシブル基板30Aの最大寸法L2をフレキシブル基板30の最大寸法L1よりも小さくできる。最大寸法L2は、例えば120mm~190mmまでの値である。従って、例えば200mm角の汎用のワークを利用してフレキシブル基板30Aを製造できるようになり、アンテナ100-10の製造コストを低減できる。
【0088】
図18は第11構成例に係るアンテナ100-11を平面視した図である。
図19Aは
図18BのA-A’矢視断面図、
図19Bは
図18BのB-B’矢視断面図、
図19Cは
図18BのC-C’矢視断面図である。上述のアンテナと同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。アンテナ100-8との違いは、アンテナ100-11では、平衡形伝送路である信号線21a、21bに、ダイポールアンテナであるアンテナ導体120B1及びアンテナ導体120B2が接続されている点である。この構成により、sub6の周波数帯において、構造が簡素化されて信頼性が向上すると共に、偏波面が変動する電波に対してアンテナ利得が高く、また雑音に強い(S/N比が良い)アンテナ100-11を提供できる。
【0089】
図20は第12構成例に係るアンテナ100-12を平面視した図である。
図21Aは
図20BのA-A’矢視断面図、
図21Bは
図20BのB-B’矢視断面図、
図21Cは
図20BのC-C’矢視断面図である。上述のアンテナと同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。アンテナ100-8との違いは、アンテナ100-12では、マイクロストリップ線路である信号線21にモノポールアンテナであるアンテナ導体120Cが接続されている点である。この構成により、sub6の周波数帯において、アンテナエレメントの占有面積を小さくでき、小型で見栄えのよいアンテナ100-12を提供できる。
【0090】
図22は第13構成例に係るアンテナ100-13を平面視した図である。
図23Aは
図22BのA-A’矢視断面図、
図23Bは
図22BのB-B’矢視断面図、
図23Cは
図22BのC-C’矢視断面図である。上述のアンテナと同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。アンテナ100-8との違いは、アンテナ100-13では、マイクロストリップ線路である信号線21にボウタイアンテナであるアンテナ導体120Dが接続されている点である。アンテナ導体120Dは、導体パターンに6辺形のスロット200が形成されることで構成される。アンテナ100-13によれば、小形及び低コストであり、さらに広帯域に渡り高いアンテナ利得を実現できる。
【0091】
図24Aは第14構成例に係るアンテナ100-14の構成例を示す第1図、
図24Bは第14構成例に係るアンテナ100-14の構成例を示す第2図、
図24Cは第14構成例に係るアンテナ100-14の構成例を示す第3図である。
図24Aには、アンテナ100-14をYZ平面でプラスX軸方向に平面視した状態が示される。
図24Bには、アンテナ100-14をXY平面でプラスZ軸方向に平面視した状態が示される。
図24Cには、アンテナ100-14をYZ平面でマイナスX軸方向に平面視した状態が示される。上述のアンテナと同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。アンテナ100-11との違いは、アンテナ100-14では、L字状に折り曲げられたフレキシブル基板30が用いられ、このフレキシブル基板30の筐体1aに対して略垂直方向(プラスZ軸方向)に伸びる部分を保持する支持部材80Aが設けられている点である。略垂直方向には、鉛直方向に直交する水平面に対して、例えば0°から±15°の角度を成す線分と平行な方向も含まれる。
【0092】
支持部材80Aは、例えば絶縁部材80と同様の材料で構成される。支持部材80Aは、X軸、Y軸及びZ軸のそれぞれの方向の厚みが、例えば25~50mmまでの値に設定される。支持部材80Aは、XY平面でプラスZ軸方向に平面視した形状がC字状又はU字状であり、支持部材80Aの中心部には溝状の凹部82が形成される。プラスZ軸方向に延伸するフレキシブル基板30が凹部82に挿入されることで、フレキシブル基板30が支持される。
【0093】
支持部材80AのプラスZ軸方向に、誘電体7に形成された平衡形伝送路である信号線21a及び信号線21bと、ダイポールアンテナであるアンテナ導体120B1及びアンテナ導体120B2とが配置される。これにより、支持部材80Aの筐体1a側とは反対側に第1絶縁部3-1が形成され、支持部材80Aの筐体1a側に第2絶縁部3-2が形成される。第1絶縁部3-1のZ軸方向の厚みt1は、第2絶縁部3-2のZ軸方向の厚みt2よりも厚い。厚みt1は、例えば1~30mmまでの値に設定され、厚みt2は、例えば24μm~300μmまでの値に設定される。
【0094】
アンテナ100-14によれば、支持部材80Aでフレキシブル基板30を覆うようにしながら、アンテナ導体(アンテナ導体120B1及びアンテナ導体120B2)を接地導体22から離すことができる。これにより、アンテナ導体の利得を向上させることができると共に、接地導体22が目隠しされてアンテナ100-14の意匠性が向上する。
【0095】
図25Aは第15構成例に係るアンテナ100-15の構成例を示す第1図、
図25Bは第15構成例に係るアンテナ100-15の構成例を示す第2図、
図25Cは第15構成例に係るアンテナ100-15の構成例を示す第3図である。
図25Aには、アンテナ100-15をYZ平面でプラスX軸方向に平面視した状態が示される。
図25Bには、アンテナ100-15をXY平面でプラスZ軸方向に平面視した状態が示される。
図25Cには、アンテナ100-15をYZ平面でマイナスX軸方向に平面視した状態が示される。上述のアンテナと同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。アンテナ100-14との違いは、アンテナ100-15では、プラスZ軸方向に延伸するフレキシブル基板30が接する直方体状の支持部材80Bが設けられている点である。
【0096】
支持部材80Bは、例えば絶縁部材80と同様の材料で構成される。支持部材80Bは、X軸、Y軸及びZ軸のそれぞれの方向の厚みが、例えば25~50mmまでの値に設定される。プラスZ軸方向に延伸するフレキシブル基板30が支持部材80Bの側面(マイナスY軸方向の外周面)に固定されている。第1絶縁部3-1のZ軸方向の厚みt1は、第2絶縁部3-2のZ軸方向の厚みt2よりも厚い。
【0097】
アンテナ100-15によれば、支持部材80Bでフレキシブル基板30を固定しながら、アンテナ導体を接地導体22から離すことができる。これにより、アンテナ導体の利得を向上させることができると共に、簡素な構造の支持部材80Bを利用することでアンテナ100-15の製造コストの上昇を抑制できる。
【0098】
図26Aは第16構成例に係るアンテナ100-16の部分拡大図である。
図26Bは第16構成例に係るアンテナ100-16に利用されるフレキシブル基板30Bを折り曲げる前の状態を示す図である。上述のアンテナと同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。アンテナ100-16のフレキシブル基板30Bは、折り曲げ位置Bを跨ぐように配置される複数の導体柱23aの配置間隔aが、残りの複数の導体柱23の配置間隔bよりも広い構造を有する。折り曲げ位置Bは、絶縁部材80の角部81で折り曲げられる箇所である。折り曲げ位置Bに導体柱23が存在する場合、導体柱23によってフレキシブル基板30Bが曲げ難くなり、無理に曲げようとすると導体柱23にクラックが発生してしまう。アンテナ100-16によれば、折り曲げ位置Bから導体柱23が取り除かれることで、絶縁部材80の角部81に沿ってフレキシブル基板30Bを綺麗に曲げることができる。なお電気的には、配置間隔aが実効波長に対して十分短ければ性能が劣化しない。
【0099】
図27は第17構成例に係るアンテナ100-17の断面図である。上述のアンテナと同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。アンテナ100-7との違いは、アンテナ100-17では、絶縁部材80Cのフレキシブル基板30を折り曲げる箇所(プラスY軸方向の先端部)が湾曲状に形成されている点である。絶縁部材80Cは、絶縁性スペーサの一例である。
【0100】
絶縁部材80Cは、絶縁部材80と同様に、誘電体を主成分とする板状の基材である。フレキシブル基板30を折り曲げる箇所が湾曲状に形成された絶縁部材80Cを利用することで、フレキシブル基板30が絶縁部材80Cの角部が緩やかな湾曲面となる。フレキシブル基板30を曲げると、フレキシブル基板30の内側と外側で伸び率が異なるため、フレキシブル基板30が小さいR(曲率半径)で曲げられる(すなわち鋭利に曲げる)と、フレキシブル基板30の内側と外側で伸び率の違いが大きくなるため、フレキシブル基板30にクラックが発生し得る。アンテナ100-17によれば、絶縁部材80Cを湾曲状にしたため、フレキシブル基板30を大きいRで曲げることになり、フレキシブル基板3
0の内側と外側で伸び率の差を小さくすることが出来、クラックが生じにくい、という効果を奏する。
【0101】
図28は第18構成例に係るアンテナ100-17の断面図である。上述のアンテナと同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。シート状の誘電体7が折り返される部分に挟み込まれ、アンテナ導体120から接地導体22までの距離を広げる絶縁部材は、複数の種類の絶縁体(誘電体)を含むものでもよい。
図28は、当該絶縁部材が筐体1aの絶縁体部分1a3と絶縁部材80Dとを含む場合を例示している。絶縁部材に筐体1aの一部(絶縁体部分1a3)を利用することで、アンテナの構成部品を削減できる。
【0102】
絶縁部材80(
図9)、絶縁部材80C(
図27)、絶縁部材80D(
図28)又は絶縁体部分1a3等の絶縁部材(誘電体)は、湾曲状の表面を有する部材又は湾曲状の表面を形成可能なフレキシブル性を持つ部材でもよい。フレキシブル性には、例えば、弾性、曲げ性などが含まれる。絶縁部材が湾曲状の表面を有する部材又は湾曲状の表面を形成可能なフレキシブル性を持つ部材であることで、湾曲状の表面に沿って設置されるコンフォーマルアンテナを実現できる。フレキシブル性を持つ部材の具体例として、スポンジ、ゴム、ウレタン等が挙げられる。
【0103】
絶縁部材80等の絶縁部材(誘電体)は、所定の周波数帯域において所定の帯域幅を確保可能にする厚さを有する。例えば、絶縁部材の好適な厚さは、シミュレーション等によって求められる。例えば、絶縁部材は、任意の接着手段(例えば、接着剤、両面テープ等)によって、フレキシブル基板30の表面に接着される。
【0104】
なお、各構成例において、意匠部40が塗装膜である場合、フレキシブル基板30において、シールド構造が形成されている部分には、塗装膜の意匠部40が設けられ、フレキシブル基板30において、シールド構造が形成されていない部分(フレキシブル基板30の誘電体)は、略透明の絶縁部材、又はメッシュ状の絶縁部材で形成される構成としてもよい。シールド構造が形成されていない部分は、例えば
図2に示す信号線21のプラスY軸方向の端部から折り返し部31のプラスY軸方向の端部までの領域である。この構成により、塗装膜の意匠部40が設けられていない部分(伝送線路20の誘電体)を目立たなくすることができ、アンテナ100の意匠性が向上する。
【0105】
なお、各構成例において、アンテナ導体は、フレキシブル基板30に設けられているが、フレキシブル基板30の代わりにリジッド基板に設けてもよい。このように構成した場合、基板厚を厚くすることができるため、前述した絶縁部材80を設ける場合と同様の効果が得られる。
【0106】
なお、各構成例では、筐体1aの裏側(内側面1a2)にRFモジュール60が設置されているが、アンテナ導体120とRFモジュール60が分離されていればよく、例えばRFモジュール60の設置場所は筐体1aの外側面1a1でもよい。
【0107】
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【0108】
本国際出願は、2019年6月11日に出願した日本国特許出願第2019-109115号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願第2019-109115号の全内容を本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0109】
1 :車両
1a :筐体
1a1 :外側面
1a2 :内側面
1a3 :絶縁体部分
3-1 :第1絶縁部
3-1a :第1領域
3-1b :第2領域
3-2 :第2絶縁部
4 :導体パターン
6a :貫通孔
6b :貫通孔
7 :誘電体
8 :チョーク構造
10 :平面部
11 :屈曲部
20 :伝送線路
20a :折り返し部分
21 :信号線
21A :先端開放部
21a :信号線
21b :信号線
22 :接地導体
23 :導体柱
23a :導体柱
30 :フレキシブル基板
31 :折り返し部
40 :意匠部
41 :端部
42 :端部
50 :RFコネクタ
60 :RFモジュール
70 :絶縁部材
80 :絶縁部材
80A :支持部材
80B :支持部材
80C :絶縁部材
81 :角部
82 :凹部
100 :アンテナ
101 :平面アンテナ
110-1 :給電回路
110-2 :給電回路
120 :アンテナ導体
200 :スロット