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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】支持ガラス基板
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/091 20060101AFI20240827BHJP
   C03C 3/085 20060101ALI20240827BHJP
   C03C 3/062 20060101ALI20240827BHJP
   C03C 3/064 20060101ALI20240827BHJP
   C03C 3/068 20060101ALI20240827BHJP
   C03C 3/087 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C03C3/091
C03C3/085
C03C3/062
C03C3/064
C03C3/068
C03C3/087
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021536640
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(86)【国際出願番号】 JP2020022363
(87)【国際公開番号】W WO2021019911
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2019/029695
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 誠二
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 康成
(72)【発明者】
【氏名】玉井 喜芳
(72)【発明者】
【氏名】小野 和孝
(72)【発明者】
【氏名】小林 悠波
(72)【発明者】
【氏名】長野 幹雄
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/088563(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/018275(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 3/091
C03C 3/083
C03C 3/062
C03C 3/064
C03C 3/068
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヤング率ε(GPa)の密度d(g/cm)に対する比率ε/d(GPa・cm/g)が、37.0(GPa・cm/g)以上であり、組成から算出されるヤング率(GPa)の密度(g/cm)に対する比率である比率算出値α(GPa・cm/g)に対する、比率ε/d(GPa・cm/g)の比率である構造因子Mが1.1以上であり、かつ、組成から算出される充填密度Vt(cm/mol)が13.8未満であって
モル%で、SiO とAl との合計含有量が60%以上75%未満、MgOの含有量が11%以上35%以下、かつ、CaOの含有量が7%以上15%以下であること、
又は、モル%で、SiO とAl との合計含有量が70%以上75%未満、かつ、MgOの含有量が25%より大きく30%以下であること、
を満たす、
支持ガラス基板。
比率算出値α(GPa・cm/g)は、以下の式で表される。
α=2・Σ{(V・G)/M)・X
充填密度Vtは、以下の式で表される。
Vt=Σ(V・X
ここで、Vは、前記支持ガラス基板に含まれる金属酸化物の充填パラメータであり、Gは、前記支持ガラス基板に含まれる金属酸化物の解離エネルギーであり、Mは、前記支持ガラス基板中に含まれる金属酸化物の分子量であり、Xは、前記支持ガラス基板中に含まれる金属酸化物のモル比である。
【請求項2】
比率ε/d(GPa・cm/g)>比率算出値α(GPa・cm/g)+2.0(GPa・cm/g)の関係を満たす、請求項1に記載の支持ガラス基板。
【請求項3】
比率ε/d(GPa・cm/g)>比率算出値α(GPa・cm/g)+4.0(GPa・cm/g)の関係を満たす、請求項2に記載の支持ガラス基板。
【請求項4】
比率ε/d(GPa・cm/g)が、40.0(GPa・cm/g)以上となる、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の支持ガラス基板。
【請求項5】
組成から算出されるヤング率(GPa)の密度(g/cm)に対する比率である比率算出値α(GPa・cm/g)が31.6以上であり、かつ、組成から算出される充填密度Vt(cm/mol)が13.8未満である、
モル%で、SiO とAl との合計含有量が60%以上75%未満、MgOの含有量が11%以上35%以下、かつ、CaOの含有量が7%以上15%以下であること、
又は、モル%で、SiO とAl との合計含有量が70%以上75%未満、かつ、MgOの含有量が25%より大きく30%以下であること、
を満たす、
支持ガラス基板。
比率算出値α(GPa・cm/g)は、以下の式で表される。
α=2・Σ{(V・G)/M)・X
充填密度Vtは、以下の式で表される。
Vt=Σ(V・X
ここで、Vは、前記支持ガラス基板に含まれる金属酸化物の充填パラメータであり、Gは、前記支持ガラス基板に含まれる金属酸化物の解離エネルギーであり、Mは、前記支持ガラス基板中に含まれる金属酸化物の分子量であり、Xは、前記支持ガラス基板中に含まれる金属酸化物のモル比である。
【請求項6】
MgO、CaO、及びYからなる群から選択される1以上の成分の合計含有量が、モル%で、前記支持ガラス基板の全量に対し、15%~50%の範囲である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の支持ガラス基板。
【請求項7】
厚みが0.1mm~0.5mmの範囲である、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の支持ガラス基板。
【請求項8】
非晶質のガラスである、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の支持ガラス基板。
【請求項9】
ファンアウトウェハレベルパッケージ及びファンアウトパネルレベルパッケージの少なくとも一方の製造用の支持ガラス基板である、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の支持ガラス基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持ガラス基板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化に伴い、これらの電子機器に用いられる半導体デバイスを高密度で実装する技術の要望が高まっている。近年では、半導体デバイスを高密度で実装する技術として、例えば、ファンアウトウェハレベルパッケージ(Fan Out Wafer Level Package:FOWLP)やファンアウトパネルレベルパッケージ(Fan Out Panel Level Package:FOPLP)が提案されている。以下、FOWLPとFOPLPを合わせて、FOWLP等という。
【0003】
FOWLP等においては、半導体デバイスが積層される加工基板のたわみを抑制するために、加工基板を支持する支持ガラス基板を用いる場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6443668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
FOWLP等用の支持ガラス基板などの、部材を支持するために用いられる支持ガラス基板は、たわみを抑えることと共に、軽量化も求められる。支持ガラス基板は、たわみを抑えるために厚みを厚くした場合に質量が増加し、軽量化するために厚みを薄くするとたわみが生じやすくなる。そのため、たわみの抑制と軽量化とを両立させることが、困難な場合がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、たわみの抑制と軽量化とを実現可能な支持ガラス基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る支持ガラス基板は、ヤング率ε(GPa)の密度d(g/cm)に対する比率ε/d(GPa・cm/g)が、37.0(GPa・cm/g)以上であり、かつ、組成から算出されるヤング率(GPa)の密度(g/cm)に対する比率である比率算出値α(GPa・cm/g)よりも大きい値である。比率算出値α(GPa・cm/g)は、以下の式で表される。
α=2・Σ{(V・G)/M)・X
ここで、Vは、前記支持ガラス基板に含まれる金属酸化物の充填パラメータであり、Gは、前記支持ガラス基板に含まれる金属酸化物の解離エネルギーであり、Mは、前記支持ガラス基板中に含まれる金属酸化物の分子量であり、Xは、前記支持ガラス基板中に含まれる金属酸化物のモル比である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、たわみの抑制と軽量化とを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係る支持ガラス基板の模式図である。
図2図2は、本実施形態に係る支持ガラス基板の性能を説明するためのグラフである。
図3図3は、実施例及び比較例におけるたわみの測定方法を示す模式図である。
図4図4は、実施例及び比較例の支持ガラス基板の特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0011】
図1は、本実施形態に係る支持ガラス基板の模式図である。図1に示すように、本実施形態に係る支持ガラス基板10は、半導体パッケージの製造用のガラス基板として用いられるものであり、より具体的には、FOWLP等の製造用の支持ガラス基板である。ただし、支持ガラス基板10の用途は、FOWLP等の製造用に限られず任意であり、部材を支持するために用いられるガラス基板であってよい。なお、FOWLP等とは、上述のように、FOWLPとFOPLPとを含むものである。
【0012】
支持ガラス基板10は、密度dに対するヤング率εの比率ε/dを高くすることで、たわみの抑制と軽量化とを両立可能にしている。具体的には、支持ガラス基板10は、比率ε/dが、32.0(GPa・cm/g)以上となり、かつ、以下の式(1)を満たすものとなっている。式(1)における比率算出値αは、支持ガラス基板10の組成から算出された、支持ガラス基板10の密度に対するヤング率の比率の算出値であるが、詳細については後述する。
【0013】
ε/d>α ・・・(1)
【0014】
比率ε/dは、支持ガラス基板10のヤング率εの測定値と、支持ガラス基板10の密度dの測定値とを用いて算出された値である。
支持ガラス基板10のヤング率εは、本実施形態では、OLYMPUS社製の38DL PLUSを用いて超音波の伝搬に基づいて測定された際の値である。また、支持ガラス基板10の密度dは、本実施形態ではアルキメデス法を用いて測定された際の値である。比率ε/dは、このように実測されたヤング率εを、実測された密度dで除することにより、算出される。なお、ヤング率εの単位はGPaであり、密度dの単位はg/cmであり、比率ε/dの単位はGPa・cm/gである。
【0015】
比率ε/dが測定値を用いた値であるのに対し、比率算出値αは、ヤング率εと密度dとの測定値を用いずに、支持ガラス基板10の組成から算出した値である。ガラスは、その組成からヤング率を算出できることが分かっているため、支持ガラス基板10の密度に対するヤング率の比率算出値αを、支持ガラス基板10の組成から算出できる。ここでの支持ガラス基板10の組成とは、支持ガラス基板10に含まれる組成物を金属酸化物として換算した際の組成を指す。
より詳しくは、比率算出値αは、金属酸化物のイオンの大きさと結合力とを乗じた値にイオンの重さを除した値を、金属酸化物毎に合計して、2を乗じた値に相当する。具体的には、比率算出値αは、次の式(2)により算出される。
【0016】
α=2・Σ(P・X)=2・Σ{(V・G)/M)・X} ・・・(2)
【0017】
ここで、Pは、(V・G/M)である。V(cm/mol)は、支持ガラス基板10に含まれる金属酸化物の充填パラメータであり、G(kJ/cm)は、支持ガラス基板10に含まれる金属酸化物の解離エネルギーであり、M(g/mol)は、支持ガラス基板10に含まれる金属酸化物の分子量であり、Xは、支持ガラス基板10に含まれる金属酸化物の、支持ガラス基板10全体に対するモル比である。Xの単位は無次元である。式(2)に示すように、比率算出値αは、支持ガラス基板10に含まれる金属酸化物のそれぞれについて算出した値{(V・G)/M)・X}を、支持ガラス基板10に含まれる金属酸化物の全てについて合計して、2を乗じた値である。なお、比率算出値αの単位は、GPa・cm/gである。
【0018】
また、Vは、次の式(3)で算出され、Gは、次の式(4)で算出される。
【0019】
=6.02・1023・(4/3)・π・(x・r +y・r ) ・・・(3)
=d/M・{x・ΔHf(Mgas)+y・ΔHf(Ogas)-ΔHf(Mycrystal)-(x+y)・RT} ・・・(4)
【0020】
ここで、支持ガラス基板10に含まれる金属酸化物を、Mとする。
Mは、金属元素であり、Oは酸素元素であり、xは金属元素Mの価数であり、yは酸素元素Oの価数である。
は、金属酸化物Mにおける金属元素Mのシャノンのイオン半径であり、rは、金属酸化物Mにおける酸素元素Oのシャノンのイオン半径である。また、dは、金属酸化物Mの密度である。
ΔHf(Mgas)は、気体状態の金属元素Mの標準生成エンタルピーであり、ΔHf(Ogas)は、気体状態の酸素元素Oの標準生成エンタルピーであり、ΔHf(Mycrystal)は、金属酸化物Mの標準生成エンタルピーである。また、Rは、気体定数であり、Tは、絶対温度である。
【0021】
支持ガラス基板10は、比率ε/dが、32.0(GPa・cm/g)以上であり、かつ、組成に基づき算出した比率算出値αよりも大きな値となっている。
すなわち、支持ガラス基板10は、実測によって求められたヤング率と密度との比率ε/dが、組成に基づき算出されたヤング率と密度との比率である比率算出値αよりも、大きな値となる部材であるといえる。
支持ガラス基板10の比率ε/dを32.0(GPa・cm/g)以上にすることで、支持ガラス基板10を薄くして軽量にしても高剛性となるため、たわみを抑制することと、薄くして軽量にすることとを、両立できる。さらに、支持ガラス基板10は、比率ε/dが、組成に基づき算出された比率算出値αよりも大きな値となっており、言い換えれば、単位密度あたりのヤング率が、組成に基づき予期した値より大きくなっている。
従って、支持ガラス基板10は、たわみの抑制と軽量化とを、予期した以上の度合いで実現できる。
【0022】
図2は、本実施形態に係る支持ガラス基板の性能を説明するためのグラフである。図2は、以上説明した比率ε/dの範囲をグラフで示したものであり、横軸が比率算出値αであり、縦軸が比率ε/dである。線分L1aは、比率ε/d=32.0(GPa・cm/g)となる境界線であり、線分L2aは、比率ε/d=比率算出値αとなる境界線である。図2においては、支持ガラス基板10は、比率ε/dが、線分L1a及び線分L2aよりも、縦軸方向において上側にプロットされるといえ、言い換えれば、比率ε/dが図2の斜線の領域内にプロットされるといえる。
【0023】
なお、支持ガラス基板10は、比率ε/dが、37.0(GPa・cm/g)以上であることがより好ましく、40.0(GPa・cm/g)以上であることがさらに好ましい。比率ε/dが37.0(GPa・cm/g)以上となることで、たわみの抑制と軽量化とを、より好適に実現でき、比率ε/dが40.0(GPa・cm/g)以上となることで、たわみの抑制と軽量化とを、さらに好適に実現できる。
図2においては、線分L1bが、比率ε/d=37.0(GPa・cm/g)となる境界線であり、線分L1cが、比率ε/d=40.0(GPa・cm/g)となる境界線である。
【0024】
また、支持ガラス基板10は、比率ε/dが以下の式(5)を満たすことがより好ましく、式(6)を満たすことがさらに好ましい。式(5)を満たすことで、たわみの抑制と軽量化とを、より好適に実現でき、式(6)を満たすことで、たわみの抑制と軽量化とを、さらに好適に実現できる。
【0025】
ε/d>α+2.0(GPa・cm/g) ・・・(5)
ε/d>α+4.0(GPa・cm/g) ・・・(6)
【0026】
図2においては、線分L2bが、ε/d=α+2.0(GPa・cm/g)となる境界線であり、線分L2cが、ε/d=α+4.0(GPa・cm/g)となる境界線である。
【0027】
また、支持ガラス基板10は、充填密度Vtが13.8(cm/mol)未満であることが好ましく、13.6(cm/mol)未満であることがより好ましく、13.3(cm/mol)未満であることが更に好ましい。充填密度Vtがこの範囲となることで、分子を密に充填して、たわみの抑制と軽量化とを好適に実現できる。ここで、充填密度Vtは、分子の充填度合いを指し、本実施形態では支持ガラス基板10に含まれる金属酸化物の充填度合いを指す。充填密度Vtは、支持ガラス基板10の組成に基づき算出される値である。充填密度Vtは、次の式(7)から算出される。
【0028】
Vt=Σ(V・X)・・・(7)
【0029】
式(7)のVは、上述のように、支持ガラス基板10に含まれる金属酸化物の充填パラメータであり、式(7)のXは、上述のように、支持ガラス基板10に含まれる金属酸化物の、支持ガラス基板10全体に対するモル比である。すなわち、充填密度Vtは、金属酸化物毎に算出した充填パラメータとモル比とを乗じた値を、支持ガラス基板10に含まれる全ての金属酸化物で合計した値となる。
【0030】
支持ガラス基板10は、比率算出値αが31.6(GPa・cm/g)以上であり、かつ、充填密度Vtが13.8(cm/mol)未満であることが好ましい。また、支持ガラス基板10は、比率算出値αが32.8(GPa・cm/g)以上であり、かつ、充填密度Vtが13.8未満であることがより好ましく、比率算出値αが33.1(GPa・cm/g)以上であり、かつ、充填密度Vtが13.6(cm/mol)未満であることが更に好ましく、比率算出値αが33.5(GPa・cm/g)であり、かつ、充填密度Vtが13.3(cm/mol)未満であることが更に好ましい。比率算出値αと充填密度Vtとがこのような関係となる支持ガラス基板10を用いることで、たわみの抑制と軽量化とを好適に実現できる。
【0031】
また、比率算出値αに対する比率ε/dの比率を、すなわち比率ε/dを比率算出値αで除した値を、構造因子Mとする。すなわち、構造因子Mは、組成から算出した比弾性率に対する、比弾性率の測定値の比率を指す。この場合、支持ガラス基板10は、構造因子Mが1より大きいことが好ましいといえ、1.1以上であることがより好ましく、1.12より大きいことが更に好ましい。構造因子Mがこの範囲となることで、たわみの抑制と軽量化とを好適に実現できる。
【0032】
また、支持ガラス基板10の、密度dに対する平均分子量Vの比率を、すなわち平均分子量Vを密度dで除した値を、分子容Vm(cm/mol)とする。平均分子量Vは、支持ガラス基板10の平均分子量の算出値であり、支持ガラス基板10の組成に基づき算出される。例えば、Alがモル比で50%、SiOがモル比で50%含まれている支持ガラス基板は、平均分子量Vが、(101.96×0.5)+(60.08×0.5)となる。分子容Vmは、密度dの測定値に対する、組成から算出された平均分子量の比率であるといえる。支持ガラス基板10は、分子容Vmが、24.1(cm/mol)未満であることが好ましく、23.2(cm/mol)未満であることがより好ましく、22.7(cm/mol)未満であることが更に好ましい。分子容Vmがこの範囲となることで、分子が密に詰まって、たわみの抑制を好適に実現できる。
【0033】
次に、支持ガラス基板10の組成について説明する。本実施形態では、支持ガラス基板10は、以降で説明する組成で構成することにより、比率ε/dを、32.0(GPa・cm/g)以上、かつ、比率算出値αより大きくできるが、以降で説明する組成は一例である。支持ガラス基板10は、比率ε/dが、32.0(GPa・cm/g)以上、かつ、比率算出値αより大きくなるものであれば、任意の組成であってよい。
【0034】
支持ガラス基板10は、母材料と添加材料とを含む。支持ガラス基板10は、母材料として、SiO及びAlを含むことが好ましい。支持ガラス基板10は、酸化物基準のモル%表示で、SiO及びAlの合計含有量が、50%~85%であることが好ましく、60%~75%であることがより好ましい。なお、ここでの50%~85%とは、支持ガラス基板10の全量のモル%を100%とした場合に、50%以上85%以下であることを指し、以降でも同様である。
また、支持ガラス基板10は、母材料として、SiO及びAlに加え、Bを含んでもよい。Bの含有量は、酸化物基準のモル%表示で、1%~30%であることが好ましく、3%~10%であることがより好ましい。母材料の含有率をこのような範囲とすることで、比率ε/dを高くして、たわみの抑制と軽量化とを好適に実現できる。また、支持ガラス基板10は、母材料として、P、Ga、AlN及びSiの少なくとも1つを含んでもよい。
【0035】
添加材料は、金属酸化物である。支持ガラス基板10は、添加材料として、MgOとCaOとYとの少なくとも1つを含む。支持ガラス基板10は、添加材料の含有量、言い換えればMgO、CaO、及びYからなる群から選択される1以上の成分の合計含有量が、酸化物基準のモル%表示で、15%~50%の範囲であることが好ましく、20%~45%であることがより好ましい。
支持ガラス基板10は、添加材料としてMgOとCaOとYとのうち、MgOのみを含むこと、MgO及びCaOのみを含むこと、MgOとCaOとYとの全てを含むこと、又は、Yのみを含むことが、好ましい。支持ガラス基板10は、酸化物基準のモル%表示で、MgOを11%~35%含むことが好ましく、20%~30%含むことがより好ましい。また、支持ガラス基板10は、酸化物基準のモル%表示で、CaOを7%~32%含むことが好ましく、8%~15%含むことがより好ましい。また、支持ガラス基板10は、酸化物基準のモル%表示で、Yを2.8%~20%含むことが好ましい。添加材料の含有率をこれらの範囲とすることで、比率ε/dを高くして、たわみの抑制と軽量化とを好適に実現できる。また、支持ガラス基板10は、添加材料として、MgO、CaO、及びYからなる群から選ばれる少なくとも1つに加えて、ZrO、TiO、LiO、及びZnOからなる群から選ばれる少なくとも1つを含んでよい。
【0036】
さらに言えば、支持ガラス基板10は、酸化物基準のモル%表示で、SiOの含有量が40%~60%であり、Alの含有量が20%~30%であり、MgOの含有量が20%~30%であることが好ましい。この場合、支持ガラス基板10は、不可避的不純物を除き、SiO、Al、及びMgO以外を含まないことが好ましい。
【0037】
支持ガラス基板10の好ましい組成についてさらに具体的に説明する。なお、支持ガラス基板10は、比率ε/d、構造因子M、及び分子容Vmなどのパラメータが、上述で規定する範囲となることが好ましく、組成について特に限定されない。すなわち、任意の組成で様々な支持ガラス基板を製造し、製造した支持ガラス基板に対して、比率ε/d、構造因子M、及び分子容Vmなどのパラメータを測定、算出して、算出したパラメータが上述で規定する範囲となったものを、支持ガラス基板10として採用すればよい。
【0038】
支持ガラス基板10は、酸化物基準のモル%表示で、SiOの含有量が20%~66%であり、Alの含有量が、6%~30%であり、かつ、MgOの含有量が25%~30%であることが好ましい。又は、支持ガラス基板10は、酸化物基準のモル%表示で、SiOの含有量が20%~66%であり、Alの含有量が、6%~30%であり、かつ、MgOとCaOとの合計含有量が19%~46%であることが好ましい。又は、支持ガラス基板10は、酸化物基準のモル%表示で、SiOの含有量が20%~66%であり、Alの含有量が、6%~30%であり、かつ、BとYとの合計含有量が5.8%~50%であることが好ましく、BとYとの合計含有量が25%~50%であることがより好ましい。
【0039】
(第1組成)
支持ガラス基板10の好ましい組成の一例を、第1組成とする。第1組成の支持ガラス基板10は、SiOの含有量が、48%~52%であり、Alの含有量が、20%~25%であり、MgOの含有量が、25%~30%であり、不可避的不純物を除き、SiO、Al、及びMgO以外を含まないものであることが好ましい。
【0040】
(第2組成)
支持ガラス基板10の好ましい組成の一例を、第2組成とする。第2組成の支持ガラス基板10は、SiOの含有量が、43%~58%であり、Alの含有量が、12%~17%であり、MgOの含有量が、14%~27%であり、CaOの含有量が、7%~32%であり、不可避的不純物を除き、SiO、Al、MgO、及びCaO以外を含まないものであることが好ましい。
【0041】
(第3組成)
支持ガラス基板10の好ましい組成の一例を、第3組成とする。第3組成の支持ガラス基板10は、SiOの含有量が、64%~68%であり、Alの含有量が、10%~14%であり、MgOの含有量が、9%~13%であり、CaOの含有量が、6%~10%であり、Bの含有量が、1%~5%であり、不可避的不純物を除き、SiO、Al、MgO、CaO、及びB以外を含まないものであることが好ましい。
【0042】
(第4組成)
支持ガラス基板10の好ましい組成の一例を、第4組成とする。第4組成の支持ガラス基板10は、SiOの含有量が、55.7%~59.7%であり、Alの含有量が、15%~19%であり、MgOの含有量が、13%~17%であり、CaOの含有量が、7%~11%であり、SrOの含有量が、0.1%~1%であり、不可避的不純物を除き、SiO、Al、MgO、CaO、及びSrO以外を含まないものであることが好ましい。
【0043】
(第5組成)
支持ガラス基板10の好ましい組成の一例を、第5組成とする。第5組成の支持ガラス基板10は、SiOの含有量が、58%~59%であり、Alの含有量が、13%~14%であり、MgOの含有量が、17%~19%であり、CaOの含有量が、7%~8%であり、TiOの含有量が、2%~4%であり、不可避的不純物を除き、SiO、Al、MgO、CaO、及びTiO以外を含まないものであることが好ましい。
【0044】
(第6組成)
支持ガラス基板10の好ましい組成の一例を、第6組成とする。第6組成の支持ガラス基板10は、SiOの含有量が、58%~62%であり、Alの含有量が、11%~15%であり、MgOの含有量が、15%~19%であり、CaOの含有量が、6%~10%であり、ZrOの含有量が、0.5%~2%であり、不可避的不純物を除き、SiO、Al、MgO、CaO、及びZrO以外を含まないものであることが好ましい。
【0045】
(第7組成)
支持ガラス基板10の好ましい組成の一例を、第7組成とする。第7組成の支持ガラス基板10は、SiOの含有量が、48%~50%であり、Alの含有量が、6%~10%であり、MgOの含有量が、12%~16%であり、CaOの含有量が、7%~11%であり、Yの含有量が、0.8%~4.8%であり、TiOの含有量が、0%~4%であり、ZrOの含有量が、0%~3%であり、LiOの含有量が、2%~6%であり、ZnOの数値範囲が、4%~8%であり、不可避的不純物を除き、SiO、Al、MgO、CaO、Y、TiO、ZrO、LiO、及びZnO以外を含まないものであることが好ましい。
【0046】
(第8組成)
支持ガラス基板10の好ましい組成の一例を、第8組成とする。第8組成の支持ガラス基板10は、SiOの含有量が、20%~50%であり、Alの含有量が、20%~30%であり、Bの含有量が、5%~30%であり、Yの含有量が、19%~20%であり、不可避的不純物を除き、SiO、Al、B、及びY以外を含まないものであることが好ましい。
【0047】
(第9組成)
支持ガラス基板10の好ましい組成の一例を、第9組成とする。第9組成の支持ガラス基板10は、SiOの含有量が、38%~42%であり、Alの含有量が、18%~22%であり、Bの含有量が、16%~20%であり、Yの含有量が、18%~22%であり、Pの含有量が、0%~4%であり、不可避的不純物を除き、SiO、Al、B、Y、及びP以外を含まないものであることが好ましい。
【0048】
(第10組成)
支持ガラス基板10の好ましい組成の一例を、第10組成とする。第10組成の支持ガラス基板10は、SiOの含有量が、38%~42%であり、Alの含有量が、13%~15%であり、Bの含有量が、18%~22%であり、Yの含有量が、18%~22%であり、Gaの含有量が、3%~7%であり、不可避的不純物を除き、SiO、Al、B、Y、及びGa以外を含まないものであることが好ましい。
【0049】
なお、支持ガラス基板10は、焼結体を含まない。すなわち、支持ガラス基板10は、焼結体でないガラスである。ここでの焼結体とは、複数の粒子を融点より低い温度で加熱して、粒子同士を結合させた部材を指す。焼結体は、空孔を含むため気孔率がある程度高くなるが、支持ガラス基板10は、焼結体でないため、気孔率が低く、通常0%である。ただし、不可避な微量な気孔を含むことは許容される。ここでの気孔率は、いわゆる真の気孔率であり、外部に連通する気孔(空孔)及び外部に連通しない気孔(空孔)との容積の和を、全容積(見かけの容積)で除した値を指す。気孔率は、例えばJIS R 1634に従って測定できる。
【0050】
また、支持ガラス基板10に使用されるガラスは通常非晶質のガラス、すなわち非晶質固体である。またこのガラスは表面や内部に結晶を含む結晶化ガラスであってもよいが、密度の観点から非晶質のガラスが好ましい。焼結体(セラミックス)は透過率が低く、密度が大きくなるため使用できない。
【0051】
次に、支持ガラス基板10の形状について説明する。図1に示すように、支持ガラス基板10は、一方の表面である第1表面12と、他方の表面である第2表面14と、側面16とを含む板状のガラス基板である。第2表面14は、第1表面12と反対側の表面であり、例えば第1表面12と平行である。側面16は、支持ガラス基板10の側面であり、第1表面12と第2表面14を連結する端面であるともいえる。
支持ガラス基板10は、平面視で、すなわち第1表面12に直交する方向から見た場合に、円形となる円板形状である。ただし、支持ガラス基板10は、円板形状に限られず任意の形状であってよく、例えば矩形などの多角形状の板であってもよい。
【0052】
また、支持ガラス基板10の厚みD2、すなわち第1表面12と第2表面14との間の長さは、0.1mm~2.0mmであることが好ましく、0.1mm~0.5mmであることがさらに好ましい。厚みD2を0.1mm以上とすることで、支持ガラス基板10が薄くなり過ぎることを抑えて、たわみや衝撃による破損を抑制できる。厚みD2を2.0mm以下とすることで、重くなることを抑制でき、厚みD2を0.5mm以下とすることで、重くなることをさらに好適に抑制できる。
【0053】
支持ガラス基板10の製造方法は、特に限定されず任意であるが、例えば、支持ガラス基板10に含まれる化合物の原料となる、珪砂やソーダ灰などの各種原料を、連続溶融炉に投入して、1500℃~1600℃で加熱溶融し、清澄した後、成形装置に供給し、供給された溶融ガラスを板状に成形し、徐冷することで、支持ガラス基板10を製造してよい。なお、支持ガラス基板10の製造は種々の方法を採用可能であり、例えば溶融キャスト法、ダウンドロー法(例えば、オーバーフローダウンドロー法、スロットダウン法及びリドロー法など)、フロート法、ロールアウト法及びプレス法などが挙げられる。
【0054】
次に、支持ガラス基板10を、FOWLP製造に用いた場合の製造工程の一例について説明する。FOWLP製造においては、支持ガラス基板10上に、複数の半導体チップを貼り合わせて、半導体チップを封止材で覆って素子基板を形成する。そして、支持ガラス基板10と素子基板とを分離して、素子基板の半導体チップと反対側を、例えば別の支持ガラス基板10上に貼り合わせる。そして、半導体チップ上に配線や半田バンプなどを形成して、素子基板と支持ガラス基板10とを再度分離する。そして、素子基板を半導体チップ毎に切断して個片化することで、半導体デバイスが得られる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態に係る支持ガラス基板10は、比率ε/dが、32.0(GPa・cm/g)以上となり、かつ、比率算出値αよりも大きい値となる。比率ε/dは、支持ガラス基板10の、ヤング率εの密度dに対する比率である。比率算出値αは、支持ガラス基板10の組成から算出されるヤング率の密度に対する比率であり、上記の式(2)で表される。
【0056】
ガラス基板は、たわみの抑制と軽量化とを両立することが求められる場合がある。しかし、通常、たわみを抑えるには、厚みを厚くする必要があるが、軽量化するためには厚みを薄くする必要があるため、たわみの抑制と軽量化との両立は困難である。それに対し、本実施形態に係る支持ガラス基板10は、支持ガラス基板10の比率ε/dを、32.0(GPa・cm/g)以上にすることで、軽量化のために支持ガラス基板10を薄くしても、ヤング率が高いためたわみを抑えることが可能となり、たわみの抑制と軽量化との両立を実現できる。
さらに、支持ガラス基板10は、比率ε/dが、組成に基づき算出された比率算出値αよりも大きな値となっており、言い換えれば、単位密度あたりのヤング率が、組成に基づき予期した値より大きくなっている。従って、支持ガラス基板10は、たわみの抑制と軽量化とを、予期した以上の度合いで実現できる。
【0057】
また、支持ガラス基板10は、比率ε/dが、37.0(GPa・cm/g)以上となり、構造因子Mが1.1以上であり、充填密度Vtが13.8(cm/mol)未満であることが好ましい。このような条件を満たす支持ガラス基板10は、たわみの抑制と軽量化とを、予期した以上の度合いで実現できる。
【0058】
また、支持ガラス基板10は、比率算出値αが31.6(GPa・cm/g)以上であり、かつ、充填密度Vtが13.8(cm/mol)未満であることが好ましい。比率算出値αと充填密度Vtとをこの範囲とすることで、たわみの抑制と軽量化とを、予期した以上の度合いで実現できる。
【0059】
また、支持ガラス基板10は、比率ε/d>比率算出値α+2.0(GPa・cm/g)の関係を満たすことが好ましく、比率ε/d>比率算出値α+4.0(GPa・cm/g)を満たすことがより好ましい。これらの関係を満たすことで、たわみの抑制と軽量化とを、より好適に実現できる。
【0060】
また、支持ガラス基板10は、比率ε/dが37.0(GPa・cm/g)以上となることが好ましく、比率ε/dが40.0(GPa・cm/g)以上となることがより好ましい。比率ε/dがこの値となることで、たわみの抑制と軽量化とを、より好適に実現できる。
【0061】
また、支持ガラス基板10は、MgO、CaO、及びYからなる群から選択される1以上の成分の合計含有量が、モル%で、支持ガラス基板10の全量に対し、15%~50%の範囲であることが好ましい。支持ガラス基板10は、このような材料を、このような量含むことで、ヤング率εを想定より高くして、たわみの抑制と軽量化とを、より好適に実現できる。
【0062】
また、支持ガラス基板10は、SiOとAlとの合計含有量が、モル%で、支持ガラス基板10の全量に対し、50%~85%の範囲であることが好ましい。支持ガラス基板10は、このような組成となることで、ヤング率εを想定より高くして、たわみの抑制と軽量化とを、より好適に実現できる。
【0063】
また、支持ガラス基板10は、厚みD2が、0.1mm~0.5mmの範囲であることが好ましい。厚みD2をこの範囲とすることで、たわみや衝撃による破損を抑制しつつ、軽量化できる。
【0064】
また、支持ガラス基板10は、焼結体ではないガラスである。支持ガラス基板10は、焼結体でないため、密度が高くなり過ぎることを抑制して軽量化でき、また、焼結体が有するような気孔により光が散乱されることがないため、光透過率を確保できる。
【0065】
また、支持ガラス基板10は、非晶質のガラスであることが好ましい。支持ガラス基板10は、非晶質のガラスであるため、密度が高くなり過ぎることを抑制して軽量化できる。
【0066】
支持ガラス基板10は、FOWLP等、言い換えればファンアウトウェハレベルパッケージ及びファンアウトパネルレベルパッケージの少なくとも一方の製造用の支持ガラス基板であることが好ましい。この支持ガラス基板10をファンアウトウェハレベルパッケージ製造及びファンアウトパネルレベルパッケージ製造の少なくとも一方に用いることで、半導体パッケージの製造を好適に行う事ができる。
【0067】
(実施例)
次に、実施例について説明する。尚、発明の効果を奏する限りにおいて実施態様を変更しても構わない。
実施例及び比較例においては、組成が異なる支持ガラス基板を作製した。そして、それぞれの支持ガラス基板について、比率算出値αを算出し、ヤング率ε及び密度dを測定して比率ε/dを算出した。また、それぞれの支持ガラス基板について、たわみ量及び質量も測定して、たわみ量及び質量に基づき評価を行った。以下、より詳細に説明する。
【0068】
表1は、実施例及び比較例における支持ガラス基板に用いた材料を示す表である。表1は、実施例1から実施例17までと、比較例1から比較例11までとの支持ガラス基板についての、支持ガラス基板の作製に用いた材料の、酸化物基準のモル%表示での含有量を示している。また、表2は、実施例18から実施例26までの支持ガラス基板についての、支持ガラス基板の作製に用いた材料の、酸化物基準のモル%表示での含有量を示している。
実施例及び比較例においては、それぞれ表1及び表2に記載の組成で溶融キャスト法を用いて、直径が320mmで厚みが6mmの素板を製造した。次に、素板の中心から直径が300mmで厚みが3mmの板を、複数枚切り出した。これらの板の両面を、酸化セリウムを研磨材として用いて両面研磨を行い、それぞれ厚み0.4mm、0.7mm、1.3mm、2.0mmになるよう調整して、支持ガラス基板を作製した。
このようにして作製した支持ガラス基板をサンプルとして、評価を行った。
【0069】
【表1】
【表2】
【0070】
実施例及び比較例においては、サンプルとして作製した支持ガラス基板のそれぞれについて、表1に示した材料組成に基づき、比率算出値αを算出した。そして、サンプルとして作製した支持ガラス基板のそれぞれについて、OLYMPUS社製の38DL PLUSを用いてヤング率εを測定し、アルキメデス法により密度dを測定して、測定したヤング率ε及び密度dに基づき、比率ε/dを算出した。
【0071】
図3は、実施例及び比較例におけるたわみの測定方法を示す模式図である。実施例及び比較例においては、サンプルとして作製した支持ガラス基板のそれぞれについて、自重によるたわみを測定した。具体的には、図3に示すように、サンプルとした支持ガラス基板の第2表面14を支持部Bで3点支持した際の、第1表面12の中央部分(図3の矢印箇所)におけるたわみ量を、神津精機製のDyvoceで測定した。なお、支持部Bの直径は、1.6mmであり、支持部Bを、支持ガラス基板の外周部から径方向内側に5.0mmの箇所に中心位置が重なるように配置した。また、サンプルとして作製した支持ガラス基板のそれぞれについて、質量を測定した。
【0072】
表3は、実施例及び比較例の評価結果を示す表である。図4は、実施例及び比較例の支持ガラス基板の特性を示すグラフである。表3は、サンプルとした支持ガラス基板毎の、比率算出値α、ヤング率ε、密度d、比率ε/d、厚みD2毎のたわみ量、厚みが2.0mmのサンプルの質量、たわみ及び質量の判定結果、及び、総合判定結果を示している。
表3に示すように、実施例1から実施例17では、比率ε/dが32.0(GPa・cm/g)以上となり、かつ、比率ε/dが比率算出値αより大きくなっている。一方、比較例1から比較例11では、比率ε/dが32.0(GPa・cm/g)以上という条件と、比率ε/dが比率算出値αより大きいという条件との、少なくとも一方を満たしてない。
図4は、サンプルとした支持ガラス基板の、比率ε/dと比率算出値αとの関係をプロットしたグラフである。図4の黒丸が、実施例1から実施例17の支持ガラス基板であり、バツが、比較例1から比較例11の支持ガラス基板を示している。図4においても、実施例1から実施例17の支持ガラス基板が、比率ε/dが32.0(GPa・cm/g)以上となり、かつ、比率ε/dが比率算出値αより大きくなっており、比較例1から比較例11の支持ガラス基板が、それらの条件の少なくとも一方を満たしていないことが分かる。図4によると、本実施例においては、比率ε/dが算出値である比率算出値αから逸脱しているが、比較例においては、特に比率ε/dが高めのサンプルの比率ε/dが、算出値である比率算出値αから逸脱していないことが分かる。
【0073】
【表3】
【0074】
また、表3のたわみ量の判定では、
たわみ量が0.8mm未満の場合を二重丸とし、
たわみ量が0.8mm以上0.9mm未満の場合を丸とし、
たわみ量が0.9mm以上1.0mm未満の場合を三角とし、
たわみ量が1.0mm以上の場合をバツとした。
二重丸、丸、三角を、合格として判定した。
また、表3の質量の判定では、
質量が400g未満の場合を二重丸とし、
質量が400g以上430g未満の場合を丸とし、
質量が430g以上500g未満の場合を三角とし、
質量が500g以上の場合をバツとした。
二重丸、丸、三角を、合格として判定した。
そして、たわみ量及び質量の両方が二重丸の場合、総合判定を二重丸とし、
たわみ量及び質量の両方が丸以上かつ、少なくとも一方が丸の場合、総合判定を丸とし、
たわみ量及び質量の両方が三角以上かつ、少なくとも1方が三角の場合、総合判定を三角とし、
たわみ量及び質量の少なくとも一方がバツの場合、総合判定をバツとした。
総合判定においても、二重丸、丸、三角を、合格として判定した。
【0075】
表3に示すように、実施例1から実施例17に係る支持ガラス基板は、たわみ量及び質量の判定が、合格となっている。一方、比較例1から比較例11に係る支持ガラス基板は、たわみ量及び質量の少なくとも一方の判定が、不合格となっている。すなわち、比率ε/dが32.0(GPa・cm/g)以上となり、かつ、比率ε/dが比率算出値αより大きくなる本実施例の支持ガラス基板は、たわみの抑制と軽量化を両立できることが分かる。
【0076】
表4は、実施例18から実施例27の比率算出値α、比率ε/dの測定結果を示している。表4に示すように、実施例18から実施例27においても、比率ε/dが32.0(GPa・cm/g)以上となり、かつ、比率ε/dが比率算出値αより大きくなっている。
【0077】
【表4】
【0078】
表5は、実施例及び比較例の支持ガラス基板についての、比率ε/dと、構造因子Mと、分子容Vmと、比率算出値αと、充填密度Vtとを示している。表5に示すように、実施例1、3-4、6-9、20-26においては、比率ε/dが、37.0(GPa・cm/g)以上となり、比率算出値αよりも大きい値となり、構造因子Mが1.1以上となり、分子容Vmが24.1未満となっていることが分かる。また、表5に示すように、実施例2、4、6-9、20-27においては、比率算出値αが31.6(GPa・cm/g)以上であり、かつ、充填密度Vtが13.8(cm/mol)未満となっていることが分かる。
【0079】
【表5】
【0080】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0081】
10 支持ガラス基板
d 密度
α 比率算出値
ε ヤング率
ε/d 比率
図1
図2
図3
図4