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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】バックグラインドテープ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240827BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240827BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240827BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20240827BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H01L21/304 622J
C09J7/38
C09J11/06
C09J4/02
C09J175/04
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021543681
(86)(22)【出願日】2020-08-17
(86)【国際出願番号】 JP2020030939
(87)【国際公開番号】W WO2021044833
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2023-05-16
(31)【優先権主張番号】P 2019162092
(32)【優先日】2019-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100137017
【弁理士】
【氏名又は名称】眞島 竜一郎
(72)【発明者】
【氏名】池谷 達宏
(72)【発明者】
【氏名】中西 健一
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/077726(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/069746(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/061132(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
C09J 7/38
C09J 11/06
C09J 4/02
C09J 175/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の基材と、前記基材の片面に形成された粘着剤層とを有するバックグラインドテープであって、
前記粘着剤層が、粘着剤組成物の硬化物からなり、厚みが50~500μmであり、
前記粘着剤組成物が、ポリウレタン(A)と、(メタ)アクリレートモノマー(B)と、連鎖移動剤(C)と、光重合開始剤(D)と、イオン液体(E)とを含み、
前記ポリウレタン(A)が、ポリオキシアルキレンポリオール由来の構造およびポリイソシアネート由来の構造を含む骨格を有し、複数の末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン(a1)を含み、
前記粘着剤組成物がイオン液体(E)を0.4~6質量%含有することを特徴とするバックグラインドテープ。
【請求項2】
前記粘着剤層が、単層構造である請求項1に記載のバックグラインドテープ。
【請求項3】
前記(メタ)アクリレートモノマー(B)が、単官能(メタ)アクリレートおよび多官能(メタ)アクリレートを含有する、請求項1または2に記載のバックグラインドテープ。
【請求項4】
前記イオン液体(E)が、第四級アンモニウムイオン、イミニウムイオン、およびスルホニウムイオンからなる群から選択される有機カチオンを含む化合物である、請求項1または2に記載のバックグラインドテープ。
【請求項5】
前記イオン液体(E)が、フッ素含有有機アニオンを含む化合物である、請求項1または2に記載のバックグラインドテープ。
【請求項6】
前記イオン液体(E)が、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオンおよび/または4-メチル-1-オクチルピリジニウムカチオンと、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン((FSO)とを含む化合物である請求項1または2に記載のバックグラインドテープ。
【請求項7】
前記連鎖移動剤(C)が、多官能チオールである、請求項1または2に記載のバックグラインドテープ。
【請求項8】
前記粘着剤層のゲル分率が50~65質量%である、請求項1または2に記載のバックグラインドテープ。
【請求項9】
前記粘着剤層の表面抵抗率が1×1011Ω/□未満である、請求項1または2に記載のバックグラインドテープ。
【請求項10】
前記(メタ)アクリレートモノマー(B)の合計を100モル%としたときに、前記単官能(メタ)アクリレートを85~99モル%、前記多官能(メタ)アクリレートを1~15モル%含有する、請求項3に記載のバックグラインドテープ。
【請求項11】
前記粘着剤組成物が、
前記ポリウレタン(A)を20~50質量%、
前記(メタ)アクリレートモノマー(B)を35~79質量%、
前記連鎖移動剤(C)を0.5~8.0質量%、
前記光重合開始剤(D)を0.01~5.0質量%、
前記イオン液体(E)を0.4~6.0質量%含む、請求項1または2に記載のバックグラインドテープ。
【請求項12】
前記粘着剤組成物が、更に脂肪酸エステル(F)を含有する、請求項1または2に記載のバックグラインドテープ。
【請求項13】
前記イオン液体(E)が、有機カチオンと無機アニオン、もしくは有機カチオンと有機アニオンとを組み合わせた、融点が100℃以下の有機塩化合物からなる、請求項1または2に記載のバックグラインドテープ。
【請求項14】
前記ポリウレタン(A)が前記ポリウレタン(a1)のみからなり、
前記ポリウレタン(a1)は全ての末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を含む、請求項1または2に記載のバックグラインドテープ。
【請求項15】
前記粘着剤層の前記基材と反対側の表面に直接設けられた、透明なセパレーターを有し、
前記粘着剤組成物中における溶剤の含有量が0~1.0質量%であり、
前記粘着剤層は、前記セパレーターを介した前記粘着剤組成物への紫外線照射により光硬化された硬化物層である、請求項1または2に記載のバックグラインドテープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ加工用に好適に用いられるバックグラインドテープに関する。
本願は、2019年9月5日に、日本に出願された特願2019-162092号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの薄型化の要求に伴って、半導体デバイスの製造工程において半導体ウエハのバックグラインド工程が行われている。半導体ウエハのバックグラインド工程では、半導体ウエハの表面(正面)をバックグラインドテープで保護した上で、半導体ウエハの裏面を研削し、半導体ウエハを薄型化している。
【0003】
従来、半導体ウエハの表面を保護するために用いられるバックグラインドテープとして、種々のものが提案されている。近年では、はんだ等からなるバンプ(電極)が表面に形成された半導体ウエハなどの、表面に凹凸部分を有する半導体ウエハに対しても、十分な凹凸吸収性を有するバックグラインドテープが求められている。
【0004】
また、従来、バックグラインドテープを半導体ウエハから剥離する際に、剥離帯電と呼ばれる静電気が発生して、半導体ウエハの回路が破壊されたり、半導体ウエハに異物が付着したりする場合があった。このため、バックグラインドテープにおいては、十分な帯電防止性を有することが要求されている。
凹凸吸収性と帯電防止性の両性能を兼ね備えるバックグラインドテープとして、例えば、特許文献1には、基材層と、凹凸吸収性樹脂層と、帯電防止層と、粘着性樹脂層と、をこの順番に備える半導体ウエハ加工用粘着性フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-6540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の半導体ウエハ加工用粘着性フィルムは、各層をそれぞれシート化した後に貼り合わせて製造する必要があるため、製造手順が煩雑である。
また、バックグラインドテープにおいては、半導体ウエハなどの被着体をバックグラインドテープに十分な強度で固定できる粘着力を有することが求められる。しかし、粘着力の高いバックグラインドテープを被着体に貼付してから被着体を加工し、その後にバックグラインドテープを剥離すると、バックグラインドテープの粘着剤層が被着体に転写される糊残りが発生する場合がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、十分な凹凸吸収性、帯電防止性、粘着力を有し、かつバックグラインドテープを剥離した後に糊残りが生じにくく、しかも少ない製造工程で製造可能なバックグラインドテープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様は以下のバックグラインドテープである。
[1] シート状の基材と、前記基材の片面に形成された粘着剤層とを有するバックグラインドテープであって、
前記粘着剤層が、粘着剤組成物の硬化物からなり、厚みが50~500μmであり、
前記粘着剤組成物が、ポリウレタン(A)と、(メタ)アクリレートモノマー(B)と、連鎖移動剤(C)と、光重合開始剤(D)と、イオン液体(E)とを含み、
前記ポリウレタン(A)が、ポリオキシアルキレンポリオール由来の構造およびポリイソシアネート由来の構造を含む骨格を有し、複数の末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン(a1)を含み、
前記粘着剤組成物がイオン液体(E)を0.4~6.0質量%含有することを特徴とするバックグラインドテープ。
【0009】
本発明の第一の態様の上記バックグラインドテープは、次に述べるように、以下の特徴を好ましく含むことができる。以下の特徴は2つ以上を好ましく組み合わせてよい。
[2] 前記粘着剤層が、単層構造である[1]に記載のバックグラインドテープ。
[3] 前記(メタ)アクリレートモノマー(B)が、単官能(メタ)アクリレートおよび多官能(メタ)アクリレートを含有する、[1]または[2]に記載のバックグラインドテープ。
【0010】
[4] 前記イオン液体(E)が、第四級アンモニウムイオン、イミニウムイオン、およびスルホニウムイオンからなる群から選択される有機カチオンを含む化合物である、[1]~[3]のいずれかに記載のバックグラインドテープ。
[5] 前記イオン液体(E)が、フッ素含有有機アニオンを含む化合物である、[1]~[4]のいずれかに記載のバックグラインドテープ。
【0011】
[6] 前記イオン液体(E)が、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオンおよび/または4-メチル-1-オクチルピリジニウムカチオンと、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン((FSO)とを含む化合物である[1]~[5]のいずれかに記載のバックグラインドテープ。
[7] 前記連鎖移動剤(C)が、多官能チオールである、[1]~[6]のいずれかに記載のバックグラインドテープ。
[8] 前記粘着剤層のゲル分率が50~65質量%である、[1]~[7]のいずれかに記載のバックグラインドテープ。
【0012】
[9] 前記粘着剤層の表面抵抗率が1×1011Ω/□未満である、[1]~[8]のいずれかに記載のバックグラインドテープ。
[10] 前記(メタ)アクリレートモノマー(B)の合計を100モル%としたときに、前記単官能(メタ)アクリレートを85~99モル%、前記多官能(メタ)アクリレートを1~15モル%含有する、[3]~[9]のいずれかに記載のバックグラインドテープ。
【0013】
[11] 前記粘着剤組成物が、
前記ポリウレタン(A)を20~50質量%、
前記(メタ)アクリレートモノマー(B)を35~79質量%、
前記連鎖移動剤(C)を0.5~8.0質量%、
前記光重合開始剤(D)を0.01~5.0質量%、
前記イオン液体(E)を0.4~6.0質量%含む、
[1]~[10]のいずれかに記載のバックグラインドテープ。
[12] 前記粘着剤組成物が、更に脂肪酸エステル(F)を含有する、[1]~[11]のいずれかに記載のバックグラインドテープ。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、十分な凹凸吸収性、帯電防止性、粘着力を有し、かつバックグラインドテープを剥離した後に糊残りが生じにくいバックグラインドテープを提供できる。
しかも、本発明のバックグラインドテープは、粘着剤層が粘着剤組成物の硬化物であり、十分な凹凸吸収性、帯電防止性、粘着力を有する。このため、凹凸吸収性を有する層と帯電防止性を有する層と粘着力を有する層とを別々に設けなくてもよく、前記テープは少ない製造工程で製造可能である。
したがって、本発明のバックグラインドテープは、表面にバンプが形成された半導体ウエハなど、表面に凹凸部分を有する被着体のバックグラインド工程を行う際に、表面を保護するために使用されるバックグラインドテープとして好適である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい例である、実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施形態のみに限定されるものではない。本発明の範囲内において、必要に応じて、種類、量、組成、比率、形、及びサイズなどについて、省略、変更、及び/又は追加することも可能である。
【0016】
<バックグラインドテープ>
本実施形態におけるバックグラインドテープ(以下、「BGテープ」とも言う。)は、シート状の基材と、基材の片面に形成された粘着剤層とを有する。粘着剤層は、後述する粘着剤組成物の硬化物からなり、好ましくは単層構造である。なお、ここでいう「テープ」の形状は、帯状のものに限らず、任意の形状であって良く、矩形や円板状のシートも含まれる。
【0017】
(基材)
基材の材質は、適宜選択可能であり、例えば、樹脂材料などが挙げられる。樹脂材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルシート;ポリ塩化ビニル(PVC);ポリイミド(PI);ポリフェニレンサルファイド(PPS);エチレン酢酸ビニル(EVA);ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが挙げられる。これらの樹脂材料の中でも、適度な可撓性を有するシートが得られるため、PE、PP、PETを用いることが好ましい。樹脂材料は、1種のみ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。基材は透明であっても、不透明であってもよい。
【0018】
基材として樹脂材料からなる樹脂シートを用いる場合、樹脂シートは、単層であってもよいし、二層以上の多層構造(例えば三層構造)であってもよい。多層構造を有する樹脂シートにおいて、各層を構成する樹脂材料は、1種のみを単独で含む樹脂材料であってもよいし、2種以上を含む樹脂材料であってもよい。
【0019】
基材としては、帯電防止処理が施されているものを用いても良い。基材に施される帯電防止処理としては、特に限定されないが、基材の少なくとも片面に帯電防止層を設ける方法、基材に帯電防止剤を練り込む方法などを用いることができる。
さらに、基材の粘着剤層が形成される面には、必要に応じて、酸処理、アルカリ処理、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理、オゾン処理等の易接着処理が施されていてもよい。
【0020】
基材の厚さは、基材の材質などに応じて適宜選択できる。BGテープが、表面に凹凸部分を有する半導体ウエハに貼付され、その後に剥離される用途に用いられるものであって、基材として樹脂シートを用いる場合、基材の厚さは、例えば10~1000μmであることが好ましく、好ましくは50~300μmである。基材の厚さが10μm以上であると、BGテープの剛性(コシ)が高くなる。そのため、BGテープを、被着体である半導体ウエハに貼り付けたり剥離したりする際に、BGテープにしわおよび浮きが生じ難くなる傾向がある。また、基材の厚さが1000μm以下であると、半導体ウエハに貼り付けたBGテープを、半導体ウエハから剥離しやすくなり、作業性(取扱い性、ハンドリング)が良好となる。
【0021】
(粘着剤層)
基材の片面には、単層の粘着剤層が形成されている。粘着剤層は、後述する粘着剤組成物の硬化物からなる。BGテープが、表面に凹凸部分を有する半導体ウエハなどの被着体に貼付され、その後に剥離される用途に用いられる場合、粘着剤層は、BGテープを被着体の表面に十分な接着力で固定することにより、バックグラインド工程中の被着体の表面を保護する役割を有する。また、粘着剤層は、被着体表面の凹凸を吸収して平滑にすることにより、すなわち、被着体の凹凸の隙間が粘着剤層により好ましく埋められることで、バックグラインド工程の精度を高める役割を有する。さらに、粘着剤層は、BGテープを被着体から剥離する際に発生する剥離帯電を低減させる。また、本実施形態のBGテープの有する粘着剤層は、BGテープを剥離しても糊残りが生じない。また、本実施形態のBGテープの有する粘着剤層は、BGテープを剥離した後の被着体に、後述するイオン液(E)による汚染が生じ難い。
【0022】
本実施形態の粘着剤層の厚みは任意に選択できるが、好ましくは50~500μmであり、60~400μmであることがより好ましく、70~300μmであることが更に好ましい。粘着剤層の厚みが50μm以上であると、BGテープの凹凸吸収性および粘着力が良好となる。また、粘着剤層の厚みが500μm以下であると、粘着剤層の膜厚制御が容易となる。
【0023】
本実施形態のBGテープが、表面に凹凸部分を有する被着体に貼付されるテープである場合、粘着剤層の厚みは、被着体表面の凹凸部分の高さに大きく依存する。粘着剤層の厚みは、十分な凹凸吸収性が得られるように、表面の凹凸部分の高さ以上とすることが好ましい。したがって、例えば、表面の凹凸が半導体ウエハに形成されたバンプである場合、粘着剤層の厚みをバンプの高さ寸法の2倍以上とすることが好ましい。バンプの高さは通常30~200μmである。例えば、バンプの高さが100μmである場合には、粘着剤層の厚みを200μm以上とすることが好ましく、バンプの高さが200μmである場合には、粘着剤層の厚みを400μm以上とすることが好ましい。
粘着剤層は、単層構造であってもよいし、本実施形態の粘着剤層と、本実施形態の粘着剤層とは異なる1層以上の他の粘着剤層を積層した多層構造であってもよい。他の粘着剤層としては、従来公知の粘着剤層を用いることができる。本実施形態において、粘着剤層が多層構造である場合、本実施形態の粘着剤層が最表面に存在する必要がある。また、本実施形態のBGテープにおいては、粘着剤層の硬化を阻害しない範囲内で、粘着剤層と基材との間に粘着剤層以外の層が存在していても良い。工程短縮の面から、粘着剤層は単層構造であることが好ましい。
【0024】
粘着剤層のゲル分率は任意に選択できるが、50~65質量%であることが好ましい。ゲル分率が50質量%以上であると、被着体に貼付したBGテープを剥離することによる糊残りの発生をより効果的に抑制できる。また、ゲル分率が65質量%以下であると、粘着剤層が十分な流動性を有するものとなり、BGテープの凹凸吸収性がより一層良好となる。粘着剤層のゲル分率は、52質量%以上であることがより好ましい。また、粘着剤層のゲル分率は、63質量%以下であることがより好ましい。
【0025】
(粘着剤層のゲル分率の測定)
粘着剤層のゲル分率の測定は、以下の方法で行うことができる。まず、BGテープから約1gとなるサイズにシートを切り出し、このシートから基材を剥がして測定用サンプルとし、測定用サンプルの質量を測定する。続いて、測定用サンプルを50mlのトルエンに浸漬し、室温で72時間静置する。その後、測定用サンプルをトルエン中から取り出し、80℃で5時間乾燥し、再び質量を測定する。そして、下記式に基づいて、ゲル分率を測定する。
ゲル分率(%)=[A/B]×100
A:トルエンに浸漬した後の測定用サンプルの質量(トルエンの質量は含まない)
B:トルエンに浸漬する前の測定用サンプルの質量
【0026】
粘着剤層の表面抵抗率は、1×1011Ω/□未満であることが好ましく、1×1010Ω/□未満であることがより好ましい。表面抵抗率が1×1011Ω/□未満であると、被着体に貼付したBGテープを剥離した際の剥離帯電が低減され、より一層帯電防止性に優れたBGテープとなる。粘着剤層の表面抵抗率の下限は任意に選択できるが、例えば、1×10Ω/□以上などであってもよい。
【0027】
(セパレーター)
BGテープには、粘着剤層を保護する目的で、粘着剤層の基材と反対側の表面に、透明又は不透明なセパレーターが設けられていてもよい。セパレーターは、粘着剤層の表面に直接ラミネートされていることが好ましい。セパレーターの材料としては任意に選択できるが、例えば、紙、プラスチックフィルムなどを用いることができ、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムを用いることが好ましい。セパレーターとして用いられるプラスチックフィルムとしては、上記した粘着剤層を保護し得るものであれば、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブテンなどが挙げられる。セパレーターの厚さは任意に選択できる。例えば、5~300μmであることが好ましく、10~200μmであることがより好ましく、25μm~100μmであることがさらに好ましい。
【0028】
<粘着剤組成物>
次に、本実施形態のBGテープにおいて、粘着剤層の材料として使用した粘着剤組成物について詳細に説明する。
本実施形態の粘着剤組成物は、ポリウレタン(A)と、(メタ)アクリレートモノマー(B)と、連鎖移動剤(C)と、光重合開始剤(D)と、イオン液体(E)とを含む。なお(メタ)アクリレートモノマーとは、メタアクリレートモノマー、及び/又はアクリレートモノマーを意味して良い。
【0029】
(ポリウレタン(A))
ポリウレタン(A)は、後述のポリウレタン(a1)を含む。ポリウレタン(a1)のみからなってもよいが、ポリウレタン(A)には、ポリウレタン(a1)だけでなく、粘着剤組成物の硬化物における凝集力を調節する目的で、後述するポリウレタン(a2)が含まれていてもよい。ポリウレタン(A)には、ポリウレタン(a1)と、必要に応じて含有されるポリウレタン(a2)以外の成分は含まれないことが好ましい。
【0030】
[ポリウレタン(a1)]
ポリウレタン(a1)は、ポリオキシアルキレンポリオール由来の構造およびポリイソシアネート由来の構造を含む骨格を有する。また、ポリウレタン(a1)は、複数の末端に(メタ)アクリロイル基を有する。全ての末端に(メタ)アクリロイル基を有してもよい。ポリウレタン(a1)の有する末端の(メタ)アクリロイル基は、(メタ)アクリロイルオキシ基の一部であることが好ましい。(メタ)アクリロイル基は、メタアクリロイル基及び/又はアクリロイル基を意味してよい。(メタ)アクリロイルオキシ基は、メタアクリロイルオキシ基、及び/又はアクリロイルオキシ基を意味してよい。
【0031】
本発明において、ポリウレタンの「複数の末端」とは2以上の末端を意味する。「複数の末端」とは、ポリウレタンが直鎖ポリマーである場合、2つの末端であり、ポリウレタンが分岐ポリマーである場合、各分岐鎖の本数と同じ数の末端のうちの2つ以上の末端である。
また、本発明において、(メタ)アクリロイル基とは、化学式CH=CH-CO-で表される官能基、および化学式CH=C(CH)-CO-で表される官能基から選択される一種以上を意味する。
【0032】
[ポリウレタン(a2)]
ポリウレタン(a2)は、ポリウレタン(a1)と同様に、ポリオキシアルキレンポリオール由来の構造およびポリイソシアネート由来の構造を含む骨格を有する。ポリウレタン(a2)は、ポリウレタン(a1)と異なり、1つの末端のみに(メタ)アクリロイル基を有する。ポリウレタン(a2)の有する末端の(メタ)アクリロイル基は、(メタ)アクリロイルオキシ基の一部であることが好ましい。ポリウレタン(a2)の有する(メタ)アクリロイル基を有さない末端は、イソシアナト基、アルキルアルコール由来の構造、アルキルイソシアネート由来の構造から選ばれるいずれかを有することが好ましく、アルキルアルコール由来の構造を有することがより好ましい。
【0033】
「ポリオキシアルキレンポリオール由来の構造」
ポリウレタン(a1)およびポリウレタン(a2)の骨格に含まれるポリオキシアルキレンポリオール由来の構造となるポリオキシアルキレンポリオールとしては、炭素数2~4のアルキレン鎖を有するものであることが好ましい。具体例としては、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシブチレンポリオールなどが挙げられる。
【0034】
ポリオキシアルキレンポリオール由来の構造となるポリオキシアルキレンポリオールは、1種類のアルキレン鎖を含むものであってもよいし、2種類以上のアルキレン鎖を含むものであってもよい。
ポリオキシアルキレンポリオール由来の構造となるポリオキシアルキレンポリオールは、末端に2つまたは3つの水酸基を有するもの(ジオール型またはトリオール型のポリオキシアルキレンポリオール)であることが好ましく、ポリオキシアルキレングリコール(ジオール型)であることがより好ましく、炭素数3のアルキレン鎖を有するポリプロピレングリコールであることが特に好ましい。
【0035】
例えば、ポリオキシアルキレンポリオールが、ポリプロピレングリコールである場合、水酸基価は20~120mgKOH/gであることが好ましく、30~100mgKOH/gであることがより好ましく、40~80mgKOH/gであることがさらに好ましい。ポリプロピレングリコールの具体例としては、例えば、水酸基価が56mgKOH/gの水酸基(ヒドロキシ基)を末端に有するポリプロピレングリコール(アクトコールD-2000;三井化学製、数平均分子量2000、ジオール型)などが挙げられる。
【0036】
ここで、ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価とは、JISK0070にしたがって測定されたポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価である。すなわち、ポリオキシアルキレンポリオール1gをアセチル化させたときの遊離酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数を意味する。具体的には、無水酢酸を用いて試料(ポリオキシアルキレンポリオール)中の水酸基をアセチル化し、その際に生じる遊離酢酸を水酸化カリウム溶液で滴定することにより求めることができる。
【0037】
ポリオキシアルキレンポリオールの数平均分子量は、500~5,000であることが好ましく、800~4,000であることがより好ましく、1,000~3,000であることがさらに好ましい。ポリオキシアルキレンポリオールの数平均分子量が500以上であると、これを用いて合成したポリウレタン(A)を含む粘着剤組成物の硬化物からなる粘着剤層を有するBGテープが、剥離強度の高いものとなる。また、ポリオキシアルキレンポリオールの数平均分子量が5,000以下であると、これを用いて合成したポリウレタン(A)が十分な量のウレタン結合を含むものとなる。このため、ポリウレタン(A)を含む粘着剤組成物を硬化させた硬化物は、凝集力が良好なものとなる。
【0038】
ポリウレタン(a1)およびポリウレタン(a2)の骨格に含まれるポリオキシアルキレンポリオール由来の構造は、それぞれ1種類のみであってもよいし、2種類以上を含む構造であってもよい。
ポリウレタン(a1)およびポリウレタン(a2)は、2種以上の異なるポリオキシアルキレンポリオール由来の構造が、ポリイソシアネート由来の構造を挟んで結合された構造を有していてもよい。
ポリウレタン(a1)の骨格に含まれるポリオキシアルキレンポリオール由来の構造と、ポリウレタン(a2)の骨格に含まれるポリオキシアルキレンポリオール由来の構造とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0039】
「ポリイソシアネート由来の構造」
ポリウレタン(a1)およびポリウレタン(a2)の骨格に含まれるポリイソシアネート由来の構造となるポリイソシアネートとしては、イソシアナト基を複数有する化合物を用いることができ、ジイソシアネートを用いることが好ましい。
ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネートおよびその水素添加物、キシリレンジイソシアネートおよびその水素添加物、ジフェニルメタンジイソシアネートおよびその水素添加物、1,5-ナフチレンジイソシアネートおよびその水素添加物、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
【0040】
これらのポリイソシアネートの中でも、これを用いて合成したポリウレタン(A)の耐光性、およびポリオキシアルキレンポリオールとの反応性の制御の点から、イソホロンジイソシアネートまたはジフェニルメタンジイソシアネートの水素添加物を用いることが好ましく、ポリオキシアルキレンポリオールとの反応性の点で、ジフェニルメタンジイソシアネートの水素添加物を用いることがより好ましい。
【0041】
ポリイソシアネート由来の構造となるポリイソシアネートの具体例としては、ジフェニルメタンジイソシアネートの水素添加物(デスモジュールW、住化コベストロウレタン製)、イソホロンジイソシアネート(デスモジュールI、住化コベストロウレタン製)などが挙げられる。
【0042】
ポリウレタン(a1)およびポリウレタン(a2)の骨格に含まれるポリイソシアネート由来の構造は、それぞれ1種類のみであってもよいし、2種類以上を含む構造であってもよい。
また、ポリウレタン(a1)の骨格に含まれるポリイソシアネート由来の構造と、ポリウレタン(a2)の骨格に含まれるポリイソシアネート由来の構造とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0043】
ポリウレタン(a1)およびポリウレタン(a2)の骨格に含まれるポリイソシアネート由来の構造およびポリオキシアルキレンポリオール由来の構造が同じである場合、ポリウレタン(a1)とポリウレタン(a2)とを同時に合成することができ、ポリウレタン(A)を効率よく製造でき、好ましい。
【0044】
ポリウレタン(A)に含まれるポリウレタン(a1)の割合は、分子数基準でポリウレタン(A)の80~100%であることが好ましく、90~100%がより好ましく、100%がさらに好ましい。
ポリウレタン(A)に含まれるポリウレタン(a2)の割合は、分子数基準でポリウレタン(A)の0~20%であることが好ましく、0~10%がより好ましく、0%がさらに好ましい。
ポリウレタン(A)に含まれるポリウレタン(a1)の割合が80%以上であると、ポリウレタン(A)を含む粘着剤組成物の硬化物が、十分に凝集力の大きいものとなり、好ましい。
【0045】
ポリウレタン(A)に含まれる全ての末端数(ポリウレタン(a1)の末端数と、必要に応じて含有されるポリウレタン(a2)の末端数との合計数)のうち、分子数基準で90~100%に(メタ)アクリロイル基が導入されていることが好ましく、95~100%がより好ましく、100%がさらに好ましい。必要に応じて、90~93%や、93~97%や、97~100%などであってもよい。ポリウレタン(A)に含まれる全ての末端数のうち、(メタ)アクリロイル基の導入量が分子数基準で90%以上であると、ポリウレタン(A)を含む粘着剤組成物を硬化して得られる硬化物の凝集力が十分に高いものとなる。
【0046】
ポリウレタン(A)に含まれる全ての末端数のうち、分子数基準で(メタ)アクリロイル基が導入されている末端数の割合は、赤外線吸収スペクトル(IR)法、核磁気共鳴スペクトル(NMR)法などを用いてポリウレタン(A)を分析した結果を用いて算出できる。
【0047】
ポリウレタン(A)に含まれているポリウレタン(a1)とポリウレタン(a2)の含有量の割合、すなわち、ポリウレタン(A)に含まれる全ての末端数のうち、分子数基準で(メタ)アクリロイル基が導入されている末端数の割合は、後述するポリウレタン(A)の製造方法により調整できる。
【0048】
ポリウレタン(A)の質量平均分子量は、30,000~200,000であることが好ましく、50,000~150,000であることがより好ましく、60,000~100,000であることがさらに好ましい。ポリウレタン(A)の質量平均分子量が30,000以上であると、ポリウレタン(A)を含む粘着剤組成物を硬化して得られる硬化物が、良好な柔軟性を有するものとなる。また、ポリウレタン(A)の質量平均分子量が200,000以下であると、ポリウレタン(A)を含む粘着剤組成物は、取り扱いが容易で、作業性が良好なものとなる。
【0049】
(ポリウレタン(A)の質量平均分子量の測定方法)
ポリウレタン(A)の質量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC-101;昭和電工株式会社製Shodex(登録商標))(以下、GPCという。)により測定されたポリスチレン換算の値である。GPCの測定条件は以下のとおりである。
カラム:LF-804(昭和電工株式会社製)
カラム温度:40℃
試料:ポリウレタン(A)の0.2質量%テトラヒドロフラン溶液
流量:1ml/分
溶離液:テトラヒドロフラン
検出器:RI検出器(示差屈折率検出器)
【0050】
本実施形態の粘着剤組成物中におけるポリウレタン(A)の含有量は任意に選択できるが、20~50質量%であることが好ましく、25~45質量%であることがより好ましく、30~40質量%であることがさらに好ましい。ポリウレタン(A)の含有量が20質量%以上であると、粘着剤組成物を硬化して得られる硬化物は、十分な凝集力を有するものとなり、優れた粘着力が得られる。また、この硬化物を粘着剤層として用いたBGテープは、粘着剤層の柔らかさが適正範囲となり、粘着剤層と被着体との間への気泡の挟み込みが生じにくい。また、ポリウレタン(A)の含有量が50質量%以下であると、粘着剤組成物を硬化して得られる硬化物は、十分な柔軟性を有するものとなる。したがって、この硬化物を粘着剤層として用いたBGテープは、被着体に対する濡れ性が良好である。
【0051】
((メタ)アクリレートモノマー(B))
(メタ)アクリレートモノマー(B)は、ポリウレタン(A)以外であって、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物であればよく、特に限定されない。(メタ)アクリレートモノマー(B)としては、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を、1種のみ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。(メタ)アクリレートモノマー(B)としては、単官能(メタ)アクリレートを用いてもよいし、多官能(メタ)アクリレートを用いてもよいし、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの両方を用いてもよい。なお(メタ)アクリレートは、メタアクリレート、及び/又はアクリレートを意味してよい。
【0052】
本発明において、単官能(メタ)アクリレートにおける「単官能」とは、(メタ)アクリロイルオキシ基の数が、1つのみである(メタ)アクリレートを意味する。
また、本発明において、多官能(メタ)アクリレートにおける「多官能」とは、(メタ)アクリロイルオキシ基の数が、2つ以上である(メタ)アクリレートを意味する。
【0053】
(メタ)アクリレートモノマー(B)としては、粘着剤組成物を硬化して得られる硬化物の凝集力および粘着剤組成物の硬化性の観点から、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを組み合わせて用いることが好ましく、単官能(メタ)アクリレートと3官能以上の(メタ)アクリレートとを含有することがより好ましく、特に、単官能(メタ)アクリレートと、3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する3官能(メタ)アクリレートとを含有することが最も好ましい。
【0054】
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの環状アルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシ(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート、カルボキシ基含有(メタ)アクリレート、フッ素化アルキル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、エポキシ基含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリンなどが挙げられる。
【0055】
これらの単官能(メタ)アクリレートの中でも、粘着剤組成物を硬化させて得られる硬化物の粘着力(剥離力)およびゲル分率が、硬化物をBGテープの粘着剤層として用いた場合に、より適正な範囲となりやすいため、アルキル(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数4~10のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを用いることがより好ましい。具体的には、アルキル(メタ)アクリレートとして、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも特に、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートおよび/またはn-ブチル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0056】
多官能(メタ)アクリレートは、ポリウレタン(A)以外であって、(メタ)アクリロイルオキシ基を複数有している化合物である。多官能(メタ)アクリレートとしては、ポリオール化合物のポリ(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
多官能(メタ)アクリレートとしては、具体的には、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ビス(ヒドロキシエチル)-5,5-ジメチルヒダントインジ(メタ)アクリレート、α,ω-ジ(メタ)アクリルビスジエチレングリコールフタレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジアクリロキシエチルフォスフェート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、多官能(メタ)アクリレートとして、粘着剤組成物の硬化性の観点から、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0057】
(メタ)アクリレートモノマー(B)として、単官能(メタ)アクリレートおよび多官能(メタ)アクリレートの両方を含有する場合、(メタ)アクリレートモノマー(B)の合計を100モル%としたときに、単官能(メタ)アクリレートを85~99モル%、多官能(メタ)アクリレートを1~15モル%含有することが好ましい。この場合、単官能(メタ)アクリレートの含有量は、90~99モル%であることがより好ましく、95~98モル%であることがさらに好ましい。また、多官能(メタ)アクリレートの含有量は、1~10モル%であることがより好ましく、2~5モル%であることがさらに好ましい。
【0058】
単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを含有する場合、単官能(メタ)アクリレートの含有量が85モル%以上であると、粘着剤組成物を硬化して得られる硬化物の流動性が、硬化物をBGテープの粘着剤層として用いた場合に好ましい範囲となる。したがって、この硬化物を粘着剤層として用いたBGテープは、十分な凹凸吸収性が得られ、表面に凹凸部分を有する被着体に貼付した場合に、被着体の凹凸部分との間に空隙が発生しにくく、好ましい。また、単官能(メタ)アクリレートの含有量が99モル%以下であると、粘着剤組成物の硬化物を粘着剤層として用いたBGテープを、被着体から剥離した際に糊残りしにくく、好ましい。
【0059】
単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを含有する場合、多官能(メタ)アクリレートの含有量が1モル%以上であると、粘着剤組成物を硬化して得られる硬化物の流動性が大きくなりすぎず好ましい。また、多官能(メタ)アクリレートの含有量が15モル%以下であると、粘着剤組成物を硬化して得られる硬化物の流動性が、硬化物をBGテープの粘着剤層として用いた場合に好ましい範囲となる。したがって、硬化物を粘着剤層として用いたBGテープが、十分な凹凸吸収性を有するものとなり、表面に凹凸部分を有する被着体に貼付した場合に、被着体の凹凸部分との間に空隙が発生しにくく、好ましい。
【0060】
本実施形態の粘着剤組成物中における(メタ)アクリレートモノマー(B)の含有量は任意に選択できるが、35~79質量%であることが好ましく、40~73質量%であることがより好ましく、40~66質量%であることが更に好ましく、45~65質量%であることが特に好ましい。必要に応じて、45~60質量%や、50~58質量%などであってもよい。(メタ)アクリレートモノマー(B)の含有量が35質量%以上であると、粘着剤組成物の粘度が高くなりすぎることがなく、塗工性に優れるため好ましい。また、(メタ)アクリレートモノマー(B)の含有量が79質量%以下であると、粘着剤組成物の粘度が低くなりすぎることがなく、粘着剤組成物からなる塗膜の厚みを制御し易く、好ましい。
【0061】
(連鎖移動剤(C))
連鎖移動剤(C)は、粘着剤組成物を硬化させた硬化物の凹凸吸収性およびゲル分率を制御する目的で、粘着剤組成物中に含有させる。
連鎖移動剤(C)としては、チオール化合物を用いることが好ましい。特に、多官能チオールを好ましく用いることができる。多官能チオールは、分子内に2個以上のメルカプト基を有する化合物である。
【0062】
多官能チオールとしては、特に限定されないが、例えば、1,2-エタンジチオール、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、ジペンタエチスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)等が挙げられる。連鎖移動剤(C)としては、上記の中でも、粘着剤組成物の反応性の観点から、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)を用いることが好ましい。
【0063】
本実施形態の粘着剤組成物中における連鎖移動剤(C)の含有量は任意に選択できるが、0.5~8.0質量%であることが好ましく、0.7~6.0質量%であることがより好ましく、1.0~5.0質量%であることがさらに好ましく、3.0~4.5質量%であることが特に好ましい。連鎖移動剤(C)の含有量が0.5質量%以上であると、粘着剤組成物を硬化して得られる硬化物の流動性が、硬化物をBGテープの粘着剤層として用いた場合に好ましい範囲となる。したがって、硬化物を粘着剤層として用いたBGテープが、十分な凹凸吸収性を有するものとなり、被着体の凹凸部分との間に空隙が発生しにくく、好ましい。含有量が8.0質量%以下であると、粘着剤組成物の硬化物を粘着剤層として用いたBGテープを、被着体から剥離した際に糊残りしにくく、好ましい。
【0064】
(光重合開始剤(D))
光重合開始剤(D)は、特に限定されるものではないが、光ラジカル重合開始剤が好ましい。光重合開始剤(D)としては、例えば、カルボニル系光重合開始剤、スルフィド系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、キノン系光重合開始剤、スルホクロリド系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤などを用いることができる。これらの光重合開始剤(D)中でも、粘着剤組成物を光硬化させて得られる硬化物の透明性の観点から、カルボニル系光重合開始剤および/またはアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤を用いることが好ましく、具体的には、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド剤および/または1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトンを用いることが好ましい。
【0065】
本実施形態の粘着剤組成物中における光重合開始剤(D)の含有量は、0.01~5.0質量%であることが好ましく、0.05~3.0質量%であることがより好ましく、0.1~2.0質量%であることがさらに好ましい。必要に応じて、0.2~1.5質量%や、0.3~1.2質量%などであってもよい。光重合開始剤(D)の含有量が0.01質量%以上であると、粘着剤組成物の光硬化が十分に進行する。また、光重合開始剤(D)の含有量が5質量%以下であると、粘着剤組成物の光硬化時に低分子量成分が多くなりすぎることがない。このため、粘着剤組成物の硬化物を粘着剤層として用いたBGテープを、被着体から剥離した際に糊残りしにくく、好ましい。
【0066】
(イオン液体(E))
本実施形態におけるイオン液体(E)とは、融点が100℃以下の溶融塩化合物(イオン性化合物)を指す。より好ましくは、融点が室温(25℃)以下の溶融塩化合物である。イオン液体(E)は、1種類の化合物からなるものでもよく、2種類以上の化合物からなるものでもよい。前記イオン液体は、上記温度範囲において液体状態で存在する塩化合物を意味して良く、溶媒は含まなくてよい。
【0067】
イオン液体(E)としては、有機カチオンと、無機アニオンもしくは有機アニオンとを組み合わせた有機塩化合物を用いることが好ましい。
有機カチオンとしては、オニウムが挙げられる。具体的には、第四級窒素原子のアンモニウム(代表構造:Q )、イミニウム(代表構造:Q C=N )、スルホニウム(代表構造:Q )、オキソニウム(代表構造:Q )、第四級リン原子のホスホニウム(代表構造:Q )、ヨードニウム(代表構造:Q )等が挙げられる。
【0068】
上記の有機カチオンの代表構造において、Qはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基等の置換基を表す。Qは水素原子または置換基を表す。分子中の複数のQ、分子中の複数のQ、または分子中のQとQは、互いに結合して環を形成してもよい。さらに、分子中の2つのQまたは2つのQが共同して二重結合の基(例えば、=O、=S、=NQ)を形成してもよい。
【0069】
上記の有機カチオンの中でも、第四級窒素原子のアンモニウム、イミニウム、スルホニウムが好ましい。これらの有機カチオンとしては、例えば、ピリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、テトラヒドロピリミジニウムカチオン、ジヒドロピリミジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン、トリアルキルスルホニウムカチオンなどが挙げられる。これらの有機カチオンの中でも、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオンが好ましく用いられる。
【0070】
有機カチオンとして、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオンを用いたイオン液体(E)を含む粘着剤層は、帯電防止性に優れるため、好ましい。
【0071】
有機カチオンとして用いられるイミダゾリウムカチオンの具体例としては、例えば、1-メチルイミダゾリウムカチオン、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1,2,3-トリメチルイミダゾリウムカチオン等が挙げられる。これらのイミダゾリウムカチオンの中でも、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオンが好ましく用いられる。
【0072】
有機カチオンとして用いられるピリジニウムカチオンの具体例としては、例えば、1-エチルピリジニウムカチオン、1-ブチルピリジニウムカチオン、1-へキシルピリジニウムカチオン、1-ブチル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-ブチル-4-メチルピリジニウムカチオン、1-へキシル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-へキシル-4-メチルピリジニウムカチオン、1-ブチル-3,4-ジメチルピリジニウムカチオン、4-メチル-1-オクチルピリジニウムカチオンなどが挙げられる。これらのピリジニウムカチオンの中でも、1-へキシル-4-メチルピリジニウムカチオン、4-メチル-1-オクチルピリジニウムカチオンなどが好ましく用いられる。
【0073】
無機アニオンとしては、融点が100℃以下の溶融塩化合物を形成できるものであれば特に限定されない。無機アニオンとしては、例えば、Cl、Br、I、AlCl 、AlCl 、BF 、PF 、ClO 、NO 、AsF 、SbF 、NbF 、TaF 、F(HF) (mは0以上の整数である。)、(CN)等が挙げられる。
【0074】
有機アニオンとしては、融点が100℃以下の溶融塩化合物を形成できるものであれば特に限定されない。有機アニオンとしては、例えば、CHCOO、CFCOO、CHSO 、CFSO 、(CFSO、(FSO、(CFSO、CSO 、(CSO、CCOO、(CFSO)(CFCO)N等が挙げられる。
【0075】
無機アニオンもしくは有機アニオンとしては、上記の中でも特に、フッ素原子を含むアニオンを用いることが好ましい。フッ素原子を含むアニオンを用いることで、イオン伝導性に優れるイオン液体(E)となる。そのため、フッ素含有アニオンを含むイオン液体(E)を用いたBGテープは特に帯電防止性に優れるものとなる。帯電防止性の観点からは、フッ素原子を含むアニオンの中でもフッ素含有有機アニオンが好ましく、特に、(FSO、(CFSOを用いることが好ましく、(FSOを用いることがより好ましい。
【0076】
イオン液体(E)としては、市販のものを使用してもよい。中でも、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオンとビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン((FSO)からなるイオン液体(第一工業製薬(株)製、商品名:エレクセル AS-110)、4-メチル-1-オクチル-ピリジニウムカチオンとビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン((FSO)からなるイオン液体(第一工業製薬(株)製、商品名:エレクセル AS-804)が好ましい。イオン液体(E)として、上記AS-110および/またはAS-804を含む粘着剤層は、帯電防止性に優れるため、好ましい。
【0077】
本実施形態の粘着剤組成物中におけるイオン液体(E)の含有量は任意に選択できるが、0.4~6.0質量%であることが好ましく、0.5~5.0質量%であることがより好ましく、1.0~3.0質量%であることがさらに好ましい。必要に応じて、0.4~2.0質量%や、2.0~4.0質量%などであってもよい。イオン液体(E)の含有量が0.4質量%以上であると、粘着剤層の表面抵抗値が十分に低くなる。その結果、粘着剤層を有するBGテープの帯電防止性能が良好になる。イオン液体(E)の含有量が6.0質量%以下であると、BGテープを剥離した後の被着体に、BGテープからブリードアウトしたイオン液体(E)が転写されることによる汚染(被着体表面が濡れた状態)が生じ難い。
【0078】
(脂肪酸エステル(F))
本実施形態の粘着剤組成物は、ポリウレタン(A)と、(メタ)アクリレートモノマー(B)と、連鎖移動剤(C)と、光重合開始剤(D)と、イオン液体(E)とを含み、さらに必要に応じて、脂肪酸エステル(F)を含有してもよい。
脂肪酸エステル(F)は、粘着剤組成物の硬化物を粘着剤層として用いたBGテープにおける粘着力を制御するとともに、粘着剤層のラミネート性(濡れ性)および泡抜け性(被着体にBGシートを貼り合わせ時に挟み込んだ気泡の抜けやすさ)を向上させる目的で粘着剤組成物中に含有させる。
【0079】
脂肪酸エステル(F)としては、脂肪酸とアルキルアルコールとのエステルを用いることができ、他の成分との相溶性の観点から、炭素数8~18の脂肪酸と炭素数3~18の分岐炭化水素基を有する単官能アルコールとのエステル、および/又は、炭素数14~18の不飽和脂肪酸と2~4官能のアルコールとのエステルから選ばれる脂肪酸エステルを用いることが好ましい。
【0080】
炭素数8~18の脂肪酸と炭素数3~18の分岐炭化水素基を有する単官能アルコールとのエステルとしては、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、オレイン酸オクチルドデシル、アジピン酸ジイソステアリル、セバシン酸ジイソセチル、トリメリト酸トリオレイル、およびトリメリト酸トリイソセチル等が挙げられる。これらの中でも、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸2-エチルヘキシルを用いることが好ましく、ミリスチン酸イソプロピルおよび/またはステアリン酸2-エチルヘキシルを用いることが特に好ましい。
【0081】
炭素数14~18の不飽和脂肪酸と2~4官能のアルコールとのエステルとしては、ミリストレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、イソパルミチン酸、およびイソステアリン酸などの不飽和脂肪酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、およびソルビタンなどのアルコールとのエステルが挙げられる。
【0082】
本実施形態の粘着剤組成物中における脂肪酸エステル(F)の含有量は任意に選択できるが、3~18質量%であることが好ましく、5~15質量%であることがより好ましい。
脂肪酸エステル(F)の含有量が3質量%以上であると、粘着剤組成物の硬化物を粘着剤層として用いたBGテープにおける粘着力が好ましい範囲になるとともに、粘着剤層のラミネート性および泡抜け性が良好となる。脂肪酸エステル(F)の含有量が18質量%以下であると、粘着剤組成物の硬化物を粘着剤層として用いたBGテープを、被着体から剥離した際に脂肪酸エステル(F)を含む糊残りが生じにくく、好ましい。
【0083】
(溶剤)
本実施形態の粘着剤組成物は、溶剤を含んでもよいが、溶剤を実質的に含まない無溶剤のものであることがより好ましい。
本実施形態の粘着剤組成物が溶剤を含む場合、例えば、レベリング剤および/または軟化剤として溶剤を用いることができる。
【0084】
本実施形態の粘着剤組成物が無溶剤である場合、これを用いてBGテープの粘着剤層を形成する際に、溶媒を加熱乾燥する工程を省略できるため、優れた生産性が得られる。特に、本実施形態の粘着剤組成物を用いて、厚みが50μmを超える粘着剤層を有するBGテープを製造する場合には、溶媒を加熱乾燥する工程を省略することによる生産性向上効果が顕著となるため、無溶剤であることが好ましい。
【0085】
本発明において、粘着剤組成物が「溶剤を実質的に含まない」の意味は、粘着剤組成物中における溶剤の含有量が0~1.0質量%であることを意味し、好ましくは0~0.5質量%であり、より好ましくは0~0.1質量%である。
【0086】
(その他)
本実施形態の粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、その他の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、表面潤滑剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、ベンゾトリアゾール系等の光安定剤、リン酸エステル系およびその他の難燃剤、染料などが挙げられる。
【0087】
<粘着剤組成物の製造方法>
次に、本実施形態の粘着剤組成物の製造方法について、例を挙げて詳細に説明する。以下、本実施形態の粘着剤組成物に含まれる成分のうち、ポリウレタン(A)については、好ましい合成方法について例を挙げて説明する。本実施形態の粘着剤組成物に含まれる成分のうち、(メタ)アクリレートモノマー(B)、連鎖移動剤(C)、光重合開始剤(D)、イオン液体(E)、脂肪酸エステル(F)など、ポリウレタン(A)を除く各成分については、市販品を容易に購入できるし、各成分として用いる化合物の種類によってそれぞれ合成方法が異なるため、合成方法の説明を省略する。
【0088】
<ポリウレタン(A)の合成方法>
以下、本実施形態の粘着剤組成物に含まれるポリウレタン(A)の好ましい合成方法の一例について説明する。なお、ポリウレタン(A)の合成方法は、以下に示す合成方法に限定されるものではなく、合成に用いる原料および設備などの条件によって、適宜変更可能である。
【0089】
以下に示すポリウレタン(A)の合成方法において、ヒドロキシ基とイソシアナト基との反応は、いずれの工程においても、イソシアナト基に不活性な有機溶媒の存在下で、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキソエート、ジオクチルスズジラウレートなどのウレタン化触媒を用いて行うことができる。また、ヒドロキシ基とイソシアナト基との反応は、いずれの工程においても、30~100℃で1~5時間継続して行うことが好ましい。ウレタン化触媒の使用量は、反応物(原料)の総質量に対して、50~500質量ppmであることが好ましい。
【0090】
ポリウレタン(A)を合成するには、まず、ポリオキシアルキレンポリオールとポリイソシアネートとを、イソシアナト基量(分子数基準、以下同じ)がヒドロキシ基量(分子数基準、以下同じ)より多くなる割合で仕込む。その後、ポリオキシアルキレンポリオールとポリイソシアネートとを反応させて、ポリウレタン(A)の前駆体として、末端にイソシアナト基を有するポリウレタンを合成する。原料として用いられるポリオキシアルキレンポリオールおよびポリイソシアネートの具体的な例は、ポリウレタン(A)の項で例示したとおりである。
【0091】
このとき、原料中に含まれるヒドロキシ基量に対するイソシアナト基量の比を調整することにより、末端にイソシアナト基を有するポリウレタンの分子量(重合度)を調整できる。具体的には、ヒドロキシ基量に対するイソシアナト基量の過剰量が少ないほど、末端にイソシアナト基を有するポリウレタンの分子量は大きくなる。また、ヒドロキシ基量に対するイソシアナト基量の過剰量が多いほど、末端にイソシアナト基を有するポリウレタンの分子量は小さくなる。本実施形態では、末端にイソシアナト基を有するポリウレタンの分子量を調整することにより、目的物であるポリウレタン(A)の質量平均分子量を調整する。
【0092】
次に、末端にイソシアナト基を有するポリウレタンと、ヒドロキシ基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物とを反応させて、ポリオキシアルキレンポリオール由来の構造およびポリイソシアネート由来の構造を含む骨格を有し、複数の末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン(a1)を含むポリウレタン(A)を生成する。生成されたポリウレタン(A)の有する末端の(メタ)アクリロイル基は、(メタ)アクリロイルオキシ基の一部であることが好ましい。
【0093】
ヒドロキシ基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、特に限定されないが、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;1,3-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、3-メチルペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート等の各種ポリオール由来の(メタ)アクリロイル基を有するモノオール等が挙げられる。これらのヒドロキシ基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。これらのヒドロキシ基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物の中でも、末端にイソシアナト基を有するポリウレタンのイソシアナト基との反応性、および粘着剤組成物の光硬化性の点から、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0094】
また、ポリウレタン(A)は、ヒドロキシ基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物とともに、(メタ)アクリロイル基を有さず、ヒドロキシ基を1個有するアルキルアルコールを併用して、末端にイソシアナト基を有するポリウレタンと反応させることにより、生成してもよい。
アルキルアルコールとしては、(メタ)アクリロイル基を有さず、ヒドロキシ基を1個有するものであればよく、直鎖型、分岐型、脂環型のアルキルアルコールなどを用いることができ、特に限定されない。上記アルキルアルコールは、1種のみ単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0095】
ヒドロキシ基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物と、(メタ)アクリロイル基を有さず、ヒドロキシ基を1個有するアルキルアルコールと、末端にイソシアナト基を有するポリウレタンとを反応させて、ポリウレタン(A)を生成させることにより、末端にイソシアナト基を有するポリウレタンに対する(メタ)アクリロイル基の導入量を調整できる。
【0096】
より詳細には、上記反応によれば、ポリウレタン(A)として、末端の(メタ)アクリロイル基の導入量が異なる複数種のポリウレタンを含むものが生成される。複数種のポリウレタンの中には、複数の末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン(a1)が含まれる。さらに、複数種のポリウレタンの中には、ポリウレタン(a1)だけでなく、複数の末端のうち少なくとも一部の末端が上記アルキルアルコール由来の構造を有しているポリウレタンが含まれる。したがって、生成した複数種のポリウレタンの中には、複数の末端のうち少なくとも一部の末端が(メタ)アクリロイル基を有さないポリウレタンが含まれる。さらに、生成した複数種のポリウレタンの中には、1つの末端にのみ(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン(a2)も含まれ得る。
【0097】
<ポリウレタン(A)の合成方法の他の例>
次に、ポリウレタン(A)の好ましい合成方法の他の例について説明する。
以下に示すポリウレタン(A)の合成方法においても上記の合成方法の例と同様に、ヒドロキシ基とイソシアナト基との反応は、いずれの工程においても、イソシアナト基に不活性な有機溶媒の存在下で、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキソエート、ジオクチルスズジラウレートなどのウレタン化触媒を用いて行うことができる。また、ヒドロキシ基とイソシアナト基との反応は、いずれの工程においても、30~100℃で1~5時間継続して行うことが好ましい。ウレタン化触媒の使用量は、反応物(原料)の総質量に対して、50~500質量ppmであることが好ましい。
【0098】
この合成方法を用いてポリウレタン(A)を合成する場合、上記の合成方法の例と異なり、ポリウレタン(A)の前駆体として、末端にヒドロキシ基を有するポリウレタンを合成する。
具体的には、まず、ポリオキシアルキレンポリオールとポリイソシアネートとを、ヒドロキシ基量(分子数基準、以下同じ)がイソシアナト基量(分子数基準、以下同じ)より多くなる割合で仕込む。その後、ポリオキシアルキレンポリオールとポリイソシアネートとを反応させて、ポリウレタン(A)の前駆体として、末端にヒドロキシ基を有するポリウレタンを合成する。
【0099】
このとき、原料中に含まれるイソシアナト基量に対するヒドロキシ基量の比を調整することにより、末端にヒドロキシ基を有するポリウレタンの分子量(重合度)を調整できる。具体的には、イソシアナト基量に対するヒドロキシ基量の過剰量が少ないほど、末端にヒドロキシ基を有するポリウレタンの分子量は大きくなる。また、イソシアナト基量に対するヒドロキシ基量の過剰量が多いほど、末端にヒドロキシ基を有するポリウレタンの分子量の分子量は小さくなる。本実施形態では、末端にヒドロキシ基を有するポリウレタンの分子量の分子量を調整することにより、目的物であるポリウレタン(A)の質量平均分子量を調整する。
【0100】
次に、末端にヒドロキシ基を有するポリウレタンと、イソシアナト基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物とを反応させて、ポリオキシアルキレンポリオール由来の構造およびポリイソシアネート由来の構造を含む骨格を有し、複数の末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン(a1)を含むポリウレタン(A)を生成する。生成されたポリウレタン(A)の有する末端の(メタ)アクリロイル基は、(メタ)アクリロイルオキシ基の一部であることが好ましい。
【0101】
イソシアナト基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、特に限定されないが、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、1,1-ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等が挙げられる。また、イソシアナト基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物の市販品としては、例えば、昭和電工株式会社製のカレンズMOI(登録商標)、カレンズAOI(登録商標)などが例示できる。これらのイソシアナト基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのイソシアナト基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物の中でも、末端にヒドロキシ基を有するポリウレタンのヒドロキシ基との反応性、および粘着剤組成物の光硬化性の点から、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートを用いることが好ましい。
【0102】
また、ポリウレタン(A)は、イソシアナト基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物とともに、(メタ)アクリロイル基を有さず、イソシアナト基を1個有するアルキルイソシアネートを併用して、末端にヒドロキシ基を有するポリウレタンと反応させることにより、生成してもよい。
アルキルイソシアネートとしては、(メタ)アクリロイル基を有さず、イソシアナト基を1個有するものであればよく、直鎖型、分岐型、脂環型のアルキルイソシアネートなどを用いることができ、特に限定されない。上記アルキルイソシアネートは、1種のみ単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0103】
イソシアナト基および(メタ)アクリロイル基を有する化合物と、(メタ)アクリロイル基を有さず、イソシアナト基を1個有するアルキルイソシアネートと、末端にヒドロキシ基を有するポリウレタンとを反応させて、ポリウレタン(A)を生成させることにより、末端にヒドロキシ基を有するポリウレタンに対する(メタ)アクリロイル基の導入量を調整できる。
【0104】
より詳細には、上記反応によれば、ポリウレタン(A)として、末端の(メタ)アクリロイル基の導入量が異なる複数種のポリウレタンを含むものが生成される。複数種のポリウレタンの中には、複数の末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン(a1)が含まれる。さらに、複数種のポリウレタンの中には、ポリウレタン(a1)だけでなく、複数の末端のうち少なくとも一部の末端が上記アルキルイソシアネート由来の構造を有しているポリウレタンが含まれる。したがって、生成した複数種のポリウレタンの中には、複数の末端のうち少なくとも一部の末端が(メタ)アクリロイル基を有さないポリウレタンが含まれる。さらに、生成した複数種のポリウレタンの中には、1つの末端にのみ(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン(a2)も含まれ得る。
【0105】
<粘着剤組成物に含まれる各成分の混合方法>
本実施形態の粘着剤組成物は、上記の合成方法により得られたポリウレタン(A)と、(メタ)アクリレートモノマー(B)と、連鎖移動剤(C)と、光重合開始剤(D)と、イオン液体(E)と、必要に応じて添加される脂肪酸エステル(F)およびその他の添加剤とを混合する方法により製造できる。
本実施形態の粘着剤組成物に含まれる各成分を混合する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、ホモディスパー、パドル翼などの攪拌翼を取り付けた攪拌装置を用いて行うことができる。
【0106】
<BGテープの製造方法>
次に、本実施形態のBGテープの製造方法の例について説明する。
本実施形態のBGテープの製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いて製造できる。
例えば、シート状の基材上に、粘着剤組成物を塗布し、セパレーターをラミネートして積層体とする。その後、セパレーターを介して粘着剤組成物に紫外線を照射し、粘着剤組成物を光硬化させる。このことにより、基材上に、粘着剤組成物の硬化物からなる粘着剤層が形成されたBGテープが得られる。
【0107】
基材に粘着剤組成物を塗布する方法は、特に限定されず、適宜選択可能である。例えば、基材に粘着剤組成物を塗布する方法として、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター、ダイレクトコーター等の各種コーターを用いる方法、スクリーン印刷法等が挙げられる。
【0108】
粘着剤組成物を光硬化させる際の光源としては、ブラックライト、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等が挙げられる。
光の照射強度は、粘着剤組成物を充分に硬化させることができ、かつ硬化物のゲル分率が50~65質量%の範囲内となるような条件であることが好ましく、例えば、50~3000mW/cmであることが好ましい。なお、光の照射強度が弱いと硬化に時間がかかり、生産性が低下する。
【0109】
本実施形態では、透明なセパレーターを介して粘着剤組成物に紫外線を照射したが、基材が透明である場合、基材側から紫外線を照射してもよく、セパレーターとして不透明なものを用いてもよい。
【0110】
<BGテープの用途および求められる性能>
本実施形態のBGテープは、例えば、表面に凹凸部分を有する被着体に貼付され、その後に剥離される用途に用いることができる。具体的には、半導体ウエハのバンプが形成された面に貼付して、半導体ウエハの表面を保護し、所定のウエハ加工工程の後に剥離される半導体ウエハ加工用のバックグラインドテープとして好適に使用できる。
【0111】
本実施形態のBGテープを、表面にバンプが形成された半導体ウエハの表面を保護する用途に用いる場合、BGテープの剥離強度(粘着力)は、例えば、半導体デバイスの加工工程におけるバックグラインド工程において、半導体ウエハにBGテープがしっかりと固定される剥離強度(粘着力)を有する必要がある。一方、BGテープの剥離強度は、所定の加工工程の後、BGテープを半導体ウエハから剥離する際に、半導体デバイスの部品を破損させない程度の強度である必要がある。
【0112】
これらの観点から、上記の用途に用いられるBGテープの剥離強度は、剥離速度が0.3m/min.であって、粘着剤層の厚みが50~200μmである場合、10~300gf/25mmであることが好ましく、15~200gf/25mmであることがより好ましく、20~150gf/25mmであることがさらに好ましい。粘着剤層の厚みが200~500μmである場合、50~500gf/25mmであることが好ましく、60~400gf/25mmであることがより好ましく、70~300gf/25mmであることがさらに好ましい。BGテープの剥離強度の具体的な測定方法は、実施例において後述する。
【0113】
本実施形態のBGテープは、シート状の基材の片面に、本実施形態の粘着剤組成物の硬化物からなる粘着剤層を有する。このため、本実施形態のBGテープは、十分な粘着力を有し、かつBGテープを剥離した後の被着体に粘着剤層が転写される糊残りが生じにくく、しかも凹凸吸収性および帯電防止性に優れる。したがって、本実施形態のBGテープは、表面に凹凸部分を有する被着体に貼付され、その後に剥離される用途に好適である。
【0114】
本実施形態のBGテープは、例えば、表面にバンプからなる凹凸部分を有する半導体ウエハのバックグラインド工程を行う際に貼付され、バックグラインド工程後に剥離されるBGテープとして、好適に用いることができる。この場合、本実施形態のBGテープによって半導体ウエハが十分な粘着力で固定される。しかも、BGテープが十分な凹凸吸収性を有しているため、半導体ウエハに貼付されたBGテープとバンプ周辺との間に空隙が発生しにくい。よって、バックグラインド工程で使用する水が、BGテープとバンプ周辺との間の空隙に侵入して、半導体ウエハが汚染されることを防止できる。また、本実施形態のBGテープは、十分な帯電防止性を有しているため、バックグラインド工程後、半導体ウエハに貼付したBGテープを剥離した際における剥離帯電を抑制できる。さらに、バックグラインド工程後、BGテープを剥離した半導体ウエハのバンプ周辺に、糊残りが発生しにくく、好ましい。
【0115】
本実施形態のBGテープは、粘着剤層が粘着剤組成物の硬化物からなる単層構造とすることができる。この場合、1つの層を形成する工程を行うだけで粘着剤層を形成できる。よって、本実施形態のBGテープは、例えば、凹凸吸収性を有する層と帯電防止性を有する層と粘着力を有する層とが備えられたBGテープを形成する場合と比較して、少ない製造工程で容易に製造できる。
【実施例
【0116】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0117】
<ポリウレタン(A-1)の合成>
温度計、撹拌器、滴下ロート、乾燥管付き冷却管を備えた反応器に、ジフェニルメタンジイソシアネートの水素添加物(デスモジュールW、住化コベストロウレタン製)を0.55kg(2.1mol)と、水酸基価が56mgKOH/gのヒドロキシ基を末端に有するポリプロピレングリコール(アクトコールD-2000;三井化学製、数平均分子量2000)を4.01kg(2.0mol)と、ウレタン化触媒であるジオクチルスズ(ネオスタンU-810、日東化成社製)を0.8gとを仕込んだ。
【0118】
その後、反応器を60℃まで昇温して4時間反応させ、ポリウレタン(A)の前駆体として、イソシアナト基を両末端に有するポリウレタンを得た。続いて、反応器に2-ヒドロキシエチルアクリレート23.22g(0.2mol)を加え、70℃まで昇温して2時間反応させ、質量平均分子量67,000のポリウレタン(A-1)を4.58kg得た。
【0119】
得られたポリウレタン(A-1)を赤外線吸収スペクトル(IR)法を用いて分析した。その結果、イソシアナト基由来のピークが観察されなかった。したがって、ポリウレタン(A-1)は、全ての末端にアクリロイルオキシ基が導入されているポリウレタン(a1)であることが確認できた。
【0120】
<ポリウレタン(A-2)の合成>
ジフェニルメタンジイソシアネートの水素添加物に代えて、イソホロンジイソシアネート(デスモジュールI、住化コベストロウレタン製)2.1molを用いたこと以外は、ポリウレタン(A-1)の合成法と同様にして、質量平均分子量66,000のポリウレタン(A-2)を得た。
【0121】
得られたポリウレタン(A-2)を赤外線吸収スペクトル(IR)法を用いて分析した。その結果、イソシアナト基由来のピークが観察されなかった。したがって、ポリウレタン(A-2)は、全ての末端にアクリロイルオキシ基が導入されているポリウレタン(a1)であることが確認できた。
【0122】
<粘着剤組成物の調製>
このようにして得られたポリウレタン(A)と、表1に示す(メタ)アクリレートモノマー(B)と連鎖移動剤(C)と光重合開始剤(D)とイオン液体(E)と脂肪酸エステル(F)とを、表1に記載の割合で配合し、25℃でディスパーを用いて混合し、実施例1~実施例9および比較例1~比較例4の粘着剤組成物を得た。
【0123】
【表1】
【0124】
表1中に記載の下記記号は、以下に示す化合物である。
2EHA:2-エチルヘキシルアクリレート(東亜合成株式会社製)
BUA:n-ブチルアクリレート(東亜合成株式会社製)
ACMO:アクリロイルモルホリン(新中村化学工業株式会社製)
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート(東亜合成株式会社製)
【0125】
PE1:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(昭和電工株式会社製)
NR1:1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(昭和電工株式会社製)
TPO(Omnirad TPO H):2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(IGM Resins B.V.社製)
184(Omnirad 184):1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン(IGM Resins B.V.社製)
エレクセル AS-110:1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(第一工業製薬株式会社製)
エレクセル AS-804:4-メチル-1-オクチル-ピリジニウム・ビス(フルオロスルホニル)イミド(第一工業製薬株式会社製)
エキセパールIPM:ミリスチン酸イソプロピル(花王株式会社製)
エキセパールEH-S:ステアリン酸2-エチルヘキシル(花王株式会社製)
【0126】
<BGテープの作製>
シート状の基材として、厚さ50μmPETフィルム(東洋紡株式会社製、商品名:エステル(商標)フィルムE5100)を用意した。そして、基材のコロナ処理面上に、アプリケーターを用いて実施例1の粘着剤組成物を、硬化後の厚さが150μmとなるように塗布した。
【0127】
次いで、粘着剤組成物の塗布面に、セパレーターとして、厚さ75μmのシリコーン系の超軽剥離PETフィルム(東洋紡株式会社製、品名:E7006)を、ゴムローラーを使用して貼り合わせた。
その後、セパレーターを介して粘着剤組成物に、紫外線照射装置(アイグラフィックス株式会社製、UV照射装置3kW、高圧水銀ランプ)を使用して、照射距離25cm、ランプ移動速度1.0m/分、照射量1000mJ/cmの条件で紫外線を照射し、粘着剤組成物を光硬化させた。このことにより、基材上に、粘着剤組成物の硬化物である粘着剤層と、セパレーターとが積層された実施例1のBGテープを得た。
【0128】
次に、実施例1の粘着剤組成物に代えて、実施例2~実施例9および比較例1~比較例4の粘着剤組成物をそれぞれ用いて、実施例1のBGテープと同様にして、BGテープを作製した。なお、比較例4については粘着剤組成物の硬化後の厚さが30μmとなるように調整した。その結果、実施例2~実施例9および比較例1~比較例4のBGテープが得られた。
【0129】
次に、実施例1~実施例9および比較例1~比較例4のBGテープについて、以下に示す項目の評価を行った。
<表面抵抗率の測定>
BGテープを縦120mm、横120mmの大きさに切り取り、温度23℃、相対湿度50%RHの環境下に3時間放置して調湿した。その後、剥離PETフィルムを剥がして粘着剤層を露出させ、印加電圧100V×60秒の条件で、高抵抗率計(株式会社三菱化学アナリテック製、ハイレスタ-UX)を使用して、粘着剤層側の表面抵抗率を測定した。そして、以下の基準で評価した。表面抵抗率が小さいほど、半導体ウエハに貼付したBGテープを剥離した際の剥離帯電が発生しにくく、帯電防止性に優れたBGテープであるといえる。
【0130】
評価基準
◎(優):表面抵抗率が1×1010Ω/□未満
○(良):表面抵抗率が1×1010Ω/□以上であり1×1011Ω/□未満
△(可):表面抵抗率が1×1011Ω/□以上であり1×1012Ω/□未満
×(不可):表面抵抗率が1×1012Ω/□以上
【0131】
<剥離力(剥離強度)>
BGテープを縦25mm、横150mmの大きさに切り取り、セパレーターを剥がして粘着剤層を露出させた。その後、露出した粘着剤層の全面を、ガラス板にラミネートして、その上を、質量2kg(荷重19.6N)のゴムローラー(直径:85mm、幅:50mm)を1往復させることにより、測定用サンプルを得た。得られた測定用サンプルを、温度23℃および相対湿度50%RHの環境下に30分間放置した。その後、JIS K 6854-2に準じて、剥離速度0.3m/min.で180°方向の引張試験を行って、ガラス板に対する剥離強度(gf/25mm)を測定した。その結果を表1に示す。
【0132】
<凹凸吸収性>
BGテープを縦25mm、横50mmの大きさに切り取り、セパレーターを剥がして粘着剤層を露出させた。その後、露出した粘着剤層の表面と、バンプ付きウエハ(ウォルツ社製、WALTS-TEG FC150SCJY LF(PI)、バンプ高さ:75μm、バンプサイズ:直径90μm)のバンプとを対向させて設置した。そして、BGテープの基材上に、質量2kg(荷重19.6N)のゴムローラー(直径:85mm、幅:50mm)を、速度10mm/secで3往復させて、BGテープとバンプ付きウエハとを貼り合わせた。
【0133】
BGテープと貼り合わせたバンプ付きウエハを、BGテープの基材側からデジタル光学顕微鏡(株式会社配合ハイロックス社製、RH-2000)により観察し、以下の基準により、バンプへの凹凸吸収性を評価した。その結果を表1に示す。
「基準」
○(良):BGテープの粘着剤層とバンプ付きウエハのバンプ周辺との間に空隙がない。
×(不可):BGテープの粘着剤層とバンプ付きウエハのバンプ周辺との間に空隙がある。
【0134】
<糊残り・イオン液体による汚染>
BGテープを縦25mm、横50mmの大きさに切り取り、セパレーターを剥がして粘着剤層を露出させた。その後、露出した粘着剤層の表面と、バンプ付きウエハ(ウォルツ社製、WALTS-TEG FC150SCJY LF(PI)、バンプ高さ:75μm、バンプサイズ:直径90μm)のバンプと対向させて設置した。そして、BGテープの基材上に、質量2kg(荷重19.6N)のゴムローラー(直径:85mm、幅:50mm)を、速度10mm/secで3往復させて、BGテープとバンプ付きウエハとを貼り合わせた。
【0135】
BGテープと貼り合わされたバンプ付きウエハを、23℃で24時間放置した後、BGテープをおおよそ2m/min.程度の速度で手で剥離した。そして、バンプ付きウエハの表面をデジタル光学顕微鏡(株式会社ハイロックス社製、RH-2000)により観察し、糊残りやイオン液体による汚染の有無を、以下の基準で評価した。その結果を表1に示す。なお、「糊残り」とは、粘着剤層自体がウエハ表面に付着した状態で残り、ウエハ表面がべたついている状態であることを意味する。「イオン液体による汚染」とは、粘着剤層からブリードアウトしたイオン液体がウエハ表面に付着し、ウエハ表面が濡れている状態であることを意味する。
「基準」
○(良):バンプ周辺に糊残りおよびイオン液体による汚染がない。
×(不可):バンプ周辺に糊残りおよび/またはイオン液体による汚染がある。
【0136】
<ゲル分率の測定>
厚さ75μmの剥離PETフィルム(東山フィルム株式会社製、商品名:クリーンセパ(商標)HY-S10-2)上に、アプリケーターを用いて硬化後の厚さが150μmとなるように、粘着剤組成物を塗布した。なお、比較例4については硬化後の厚さが30μmとなるように調整した。次いで、粘着剤組成物の塗布面を、厚さ75μmのシリコーン系の超軽剥離PETフィルム(東洋紡株式会社製、品名:E7006)で覆った。
【0137】
続いて、紫外線照射装置(アイグラフィックス株式会社製、UV照射装置3kW、高圧水銀ランプ)を使用して、照射距離25cm、ランプ移動速度1.0m/分、照射量1000mJ/cmの条件で、超軽剥離PETフィルムを介して紫外線を照射し、粘着剤組成物を硬化させて硬化物(粘着剤層)を得た。
【0138】
次に、硬化物(粘着剤層)を約1gとなるサイズに切り出し、両面のPETフィルムを剥離して測定用サンプルとし、その質量を測定した。続いて、測定用サンプルを50mlのトルエンに浸漬し、室温で72時間静置した。その後、測定用サンプルをトルエン中から取り出し、80℃で5時間乾燥し、再び質量を測定した。そして、下記式に基づいて、ゲル分率を測定した。
ゲル分率(%)=[A/B]×100
A:トルエンに浸漬した後の測定用サンプルの質量(トルエンの質量は含まない)
B:トルエンに浸漬する前の測定用サンプルの質量
【0139】
表1に示すように、イオン液体を0.4~6質量%含有する粘着剤組成物を用いた実施例1~実施例9のBGテープは、いずれも粘着剤層の表面抵抗率が1×1011Ω/□未満であり、帯電防止性に優れていた。また、実施例1~実施例9のBGテープは、いずれも10gf/25mm以上の十分な剥離強度を有し、かつ凹凸吸収性および糊残り・汚染の評価が「〇(良)」であった。
【0140】
これに対し、イオン液体を含有しない粘着剤組成物を用いた比較例1のBGテープは、粘着剤層の表面抵抗率の評価が「×(不可)」であった。また、イオン液体を7.0質量%含有する粘着剤組成物を用いた比較例2のBGテープは、糊残り・汚染の評価が「×(不可)」であった。
また、連鎖移動剤を含有しない粘着剤組成物を用いた比較例3のBGテープおよび粘着剤層の厚みが30μmの比較例4のBGテープは、剥離力が10gf/25mm未満であり、凹凸吸収性の評価が「×(不可)」であった。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明によれば、十分な凹凸吸収性、帯電防止性、粘着力を有し、かつ糊残りが生じにくく、しかも少ない製造工程で製造可能なバックグラインドテープが提供される。該バックグラインドテープは、半導体ウエハ加工工程において、半導体ウエハ表面を保護し、加工工程後に剥離する用途として、好ましく用いることができる。