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特許7544060含フッ素エーテル化合物、表面処理剤、含フッ素エーテル組成物、コーティング液、物品、及び化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】含フッ素エーテル化合物、表面処理剤、含フッ素エーテル組成物、コーティング液、物品、及び化合物
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/336 20060101AFI20240827BHJP
   C09D 171/00 20060101ALI20240827BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20240827BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C08G65/336
C09D171/00
C09K3/18 102
C09D5/16
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021546959
(86)(22)【出願日】2020-09-17
(86)【国際出願番号】 JP2020035358
(87)【国際公開番号】W WO2021054413
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2019171550
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】高下 隆太
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-044158(JP,A)
【文献】特開2019-070100(JP,A)
【文献】特開平07-278547(JP,A)
【文献】KRECH,F. et al.,Intramolecular Hydrostannation - Cyclic and Bicyclic Stannanes,Zeitschrift fuer Anorganische und Allgemeine Chemie,1988年,Vol.557,pp.143-152
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08G 65/00-67/04
C09D 1/00-10/00
C09D 101/00-201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(A1)又は式(A2)で表される含フッ素エーテル化合物。
-O-(Rf1O)-Rf2[-R-C(-R-T)(-R3-a 式(A1)
[(T-R-)(R-)3-aC-R-]f2-O-(Rf1O)-Rf2[-R-C(-R-T)(-R3-a 式(A2)
ただし、
は、炭素数1~20のフルオロアルキル基であり、
f1は、炭素数1~6のフルオロアルキレン基であり、
f2は、(1+b)価の有機基であり、少なくともRと結合する炭素原子がフッ素原子を有し、Rf2が複数ある場合、当該Rf2は同一であっても異なっていてもよく、
は、炭素数が1~20のアルキレン基であり、Rが複数ある場合、当該Rは同一であっても異なっていてもよく、
は、炭素数~10のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基であり、複数あるRは同一であっても異なっていてもよく、
は、水素原子、又は炭素数1~10のフッ素原子を有していてもよいアルキル基であって、Rが複数ある場合、当該複数あるRは同一であっても異なっていてもよく、
Tは、-Si(R)3-c(L)であって、複数あるTは同一であっても異なっていてもよく、
Rは、アルキル基であり、
Lは、加水分解性基又は水酸基であり、Tにおける2以上のLは同一であっても異なっていてもよく、
mは、1~20の整数であり、
aは、1~3の整数であって、aが複数ある場合、複数あるaは同一であっても異なっていてもよく、
bは、1以上の整数であり、bが複数ある場合、複数あるbは同一であっても異なっていてもよく、
cは、2又は3であり、複数あるcは同一であっても異なっていてもよく、
bが1の場合、aは、2又は3であり、
重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が1.2以下である。
【請求項2】
の炭素数が5~20である、請求項に記載の含フッ素エーテル化合物。
【請求項3】
-CH-の数が8~30である、請求項1又は2に記載の含フッ素エーテル化合物。
【請求項4】
前記加水分解性基が、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、又はイソシアナート基である、請求項1~のいずれか一項に記載の含フッ素エーテル化合物。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の含フッ素エーテル化合物を含む、表面処理剤。
【請求項6】
下式(A1)で表される含フッ素エーテル化合物と、式(A2)で表される含フッ素エーテル化合物とを含有する、含フッ素エーテル組成物。
-O-(Rf1O)-Rf2[-R-C(-R-T)(-R3-a 式(A1)
[(T-R-)(R-)3-aC-R-]f2-O-(Rf1O)-Rf2[-R-C(-R-T)(-R3-a 式(A2)
ただし、
は、炭素数1~20のフルオロアルキル基であり、
f1は、炭素数1~6のフルオロアルキレン基であり、
f2は、(1+b)価の有機基であり、少なくともRと結合する炭素原子がフッ素原子を有し、Rf2が複数ある場合、当該Rf2は同一であっても異なっていてもよく、
は、炭素数が1~20のアルキレン基であり、Rが複数ある場合、当該Rは同一であっても異なっていてもよく、
は、炭素数~10のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基であり、複数あるRは同一であっても異なっていてもよく、
は、水素原子、又は炭素数1~10のフッ素原子を有していてもよいアルキル基であって、Rが複数ある場合、当該複数あるRは同一であっても異なっていてもよく、
Tは、-Si(R)3-c(L)であって、複数あるTは同一であっても異なっていてもよく、
Rは、アルキル基であり、
Lは、加水分解性基又は水酸基であり、Tにおける2以上のLは同一であっても異なっていてもよく、
mは、1~20の整数であり、
aは、1~3の整数であって、aが複数ある場合、複数あるaは同一であっても異なっていてもよく、
bは、1以上の整数であり、bが複数ある場合、複数あるbは同一であっても異なっていてもよく、
cは、2又は3であり、複数あるcは同一であっても異なっていてもよく、
bが1の場合、aは、2又は3であり、
前記式(A1)で表される含フッ素エーテル化合物と、式(A2)で表される含フッ素エーテル化合物はいずれも、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が1.2以下である。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の含フッ素エーテル化合物の1種以上と、他の含フッ素エーテル化合物とを含有する、含フッ素エーテル組成物。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の含フッ素エーテル化合物、若しくは請求項6又は7に記載の含フッ素エーテル組成物と、
液状媒体とを含有する、コーティング液。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載の含フッ素エーテル化合物又は請求項6又は7に記載の含フッ素エーテル組成物から形成された表面層を基材の表面に有する、物品。
【請求項10】
下記式(B1)で表される、化合物。
(CH=CH-R20-)(R-)3-aC-R21-X 式(B1)
ただし、
20は単結合か、又は、炭素数1~8のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基であって、R20が複数ある場合、当該複数あるR20は同一であっても異なっていてもよく、
21は単結合か、炭素数が1~19のアルキレン基であり、
は、水素原子、又は炭素数1~10のフッ素原子を有していてもよいアルキル基であって、Rが複数ある場合、当該複数あるRは同一であっても異なっていてもよく、
Xは塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であり、
aは3である。
【請求項11】
下記式(B1)で表される、化合物。
(CH=CH-R20-)(R-)3-aC-R21-X 式(B1)
ただし、
20は単結合か、又は、炭素数1~8のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基であって、R20が複数ある場合、当該複数あるR20は同一であっても異なっていてもよく、
21は単結合か、炭素数が1~19のアルキレン基であり(ただし、炭素数が1のアルキレン基を除く)
は、水素原子、又は炭素数1~10のフッ素原子を有していてもよいアルキル基であって、Rが複数ある場合、当該複数あるRは同一であっても異なっていてもよく、
Xは塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であり、
aは2である。
【請求項12】
下記式(B2)で表される、化合物。
(CH=CH-R20-)(R-)3-aC-R21-MgX 式(B2)
ただし、
20は単結合か、又は、炭素数1~8のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基であって、R20が複数ある場合、当該複数あるR20は同一であっても異なっていてもよく、
21は単結合か、炭素数が1~19のアルキレン基であり、
は、水素原子、又は炭素数1~10のフッ素原子を有していてもよいアルキル基であって、Rが複数ある場合、当該複数あるRは同一であっても異なっていてもよく、
Xは塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であり、
aは3である。
【請求項13】
下記式(B2)で表される、化合物。
(CH=CH-R20-)(R-)3-aC-R21-MgX 式(B2)
ただし、
20は単結合か、又は、炭素数1~8のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基であって、R20が複数ある場合、当該複数あるR20は同一であっても異なっていてもよく、
21は単結合か、炭素数が1~19のアルキレン基であり(ただし、炭素数が1のアルキレン基を除く)
は、水素原子、又は炭素数1~10のフッ素原子を有していてもよいアルキル基であって、Rが複数ある場合、当該複数あるRは同一であっても異なっていてもよく、
Xは塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であり、
aは2である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素エーテル化合物、表面処理剤、含フッ素エーテル組成物、コーティング液、物品、及び化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ペルフルオロポリエーテル鎖と加水分解性シリル基とを有する含フッ素エーテル化合物は、高い潤滑性、撥水撥油性等を示す表面層を基材の表面に形成できるため、表面処理剤に好適に用いられる。含フッ素エーテル化合物を含む表面処理剤は、表面層が指で繰り返し摩擦されても撥水撥油性が低下しにくい性能(耐摩擦性)及び拭き取りによって表面層に付着した指紋を容易に除去できる性能(指紋汚れ除去性)が長期間維持されることが求められる用途、例えば、タッチパネルの指で触れる面を構成する部材、メガネレンズ、ウェアラブル端末のディスプレイの表面処理剤として用いられる。
【0003】
耐摩擦性及び指紋汚れ除去性に優れる表面層を基材の表面に形成できる含フッ素エーテル化合物としては、ペルフルオロポリエーテル鎖と加水分解性シリル基とを有する含フッ素エーテル化合物が提案されている(特許文献1-3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-037541号公報
【文献】国際公開第2017/022437号
【文献】国際公開第2017/038830号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記表面処理剤は、例えば、スマートフォン、タブレット端末等のディスプレイ面だけでなく、携帯デバイスの裏面(表示画面とは反対側の面)の表面処理などにも用いられることがある。表面処理剤の耐久性のより一層の向上が求められている。
【0006】
本発明は、耐久性に優れた表面層を形成できる含フッ素エーテル化合物、当該含フッ素エーテル化合物を含む表面処理剤、含フッ素エーテル組成物及びコーティング液、耐久性に優れた表面層を有する物品、ならびに含フッ素エーテル化合物の原料として有用な化合物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記[1]~[13]の構成を有する含フッ素エーテル化合物、表面処理剤、含フッ素エーテル組成物、コーティング液、物品、及び含フッ素化合物の原料化合物を提供する。
[1] 下式(A1)又は式(A2)で表される含フッ素エーテル化合物。
-O-(Rf1O)-Rf2[-R-C(-R-T)(-R3-a 式(A1)
[(T-R-)(R-)3-aC-R-]f2-O-(Rf1O)-Rf2[-R-C(-R-T)(-R3-a 式(A2)
ただし、
は、炭素数1~20のフルオロアルキル基であり、
f1は、炭素数1~6のフルオロアルキレン基であり、
f2は、(1+b)価の有機基であり、少なくともRと結合する炭素原子がフッ素原子を有し、Rf2が複数ある場合、当該Rf2は同一であっても異なっていてもよく、
は、炭素数が1~20のアルキレン基であり、Rが複数ある場合、当該Rは同一であっても異なっていてもよく、
は、炭素数2~10のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基であり、複数あるRは同一であっても異なっていてもよく、
は、水素原子、又は炭素数1~10のフッ素原子を有していてもよいアルキル基であって、Rが複数ある場合、当該複数あるRは同一であっても異なっていてもよく、
Tは、-Si(R)3-c(L)であって、複数あるTは同一であっても異なっていてもよく、
Rは、アルキル基であり、
Lは、加水分解性基又は水酸基であり、Tにおける2以上のLは同一であっても異なっていてもよく、
mは、1~20の整数であり、
aは、1~3の整数であって、aが複数ある場合、複数あるaは同一であっても異なっていてもよく、
bは、1以上の整数であり、bが複数ある場合、複数あるbは同一であっても異なっていてもよく、
cは、2又は3であり、複数あるcは同一であっても異なっていてもよく、
bが1の場合、aは、2又は3である。
[2] 複数あるRは、いずれも炭素数が3以上である、[1]の含フッ素エーテル化合物。
[3] Rの炭素数が5~20である、[1]又は[2]の含フッ素エーテル化合物。
[4] -CH-の数が8~30である、[1]~[3]の含フッ素エーテル化合物。
[5] 重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が1.2以下である[1]~[4]の含フッ素エーテル化合物。
[6] 前記加水分解性基が、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、又はイソシアナート基である、[1]~[5]の含フッ素エーテル化合物。
[7] [1]~[6]のいずれかの化合物を含む、表面処理剤。
[8] 前記式(A1)で表される含フッ素エーテル化合物と、前記式(A2)で表される含フッ素エーテル化合物とを含有する、含フッ素エーテル組成物。
-O-(Rf1O)-Rf2[-R-C(-R-T)(-R3-a 式(A1)
[(T-R-)(R-)3-aC-R-]f2-O-(Rf1O)-Rf2[-R-C(-R-T)(-R3-a 式(A2)
ただし、
は、炭素数1~20のフルオロアルキル基であり、
f1は、炭素数1~6のフルオロアルキレン基であり、
f2は、(1+b)価の有機基であり、少なくともRと結合する炭素原子がフッ素原子を有し、Rf2が複数ある場合、当該Rf2は同一であっても異なっていてもよく、
は、炭素数が1~20のアルキレン基であり、Rが複数ある場合、当該Rは同一であっても異なっていてもよく、
は、炭素数2~10のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基であり、複数あるRは同一であっても異なっていてもよく、
は、水素原子、又は炭素数1~10のフッ素原子を有していてもよいアルキル基であって、Rが複数ある場合、当該複数あるRは同一であっても異なっていてもよく、
Tは、-Si(R)3-c(L)であって、複数あるTは同一であっても異なっていてもよく、
Rは、アルキル基であり、
Lは、加水分解性基又は水酸基であり、Tにおける2以上のLは同一であっても異なっていてもよく、
mは、1~20の整数であり、
aは、1~3の整数であって、aが複数ある場合、複数あるaは同一であっても異なっていてもよく、
bは、1以上の整数であり、bが複数ある場合、複数あるbは同一であっても異なっていてもよく、
cは、2又は3であり、複数あるcは同一であっても異なっていてもよく、
bが1の場合、aは、2又は3である。
[9] [1]~[6]の含フッ素エーテル化合物の1種以上と、他の含フッ素エーテル化合物とを含有する、含フッ素エーテル組成物。
[10] [1]~[6]の含フッ素エーテル化合物又は[8]又は[9]の含フッ素エーテル組成物と、
液状媒体とを含有する、コーティング液。
[11] [1]~[6]の含フッ素エーテル化合物、若しくは[8]又は[9]の含フッ素エーテル組成物から形成された表面層を基材の表面に有する、物品。
[12] 下記式(B1)で表される、化合物。
(CH=CH-R20-)(R-)3-aC-R21-X 式(B1)
ただし、
20は単結合か、又は、炭素数1~8のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基であって、R20が複数ある場合、当該複数あるR20は同一であっても異なっていてもよく、
21は単結合か、炭素数が1~19のアルキレン基であり、
は、水素原子、又は炭素数1~10のフッ素原子を有していてもよいアルキル基であって、Rが複数ある場合、当該複数あるRは同一であっても異なっていてもよく、
Xは塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であり、
aは1~3の整数である。
[13] 下記式(B2)で表される、化合物。
(CH=CH-R20-)(R-)3-aC-R21-MgX 式(B2)
ただし、
20は単結合か、又は、炭素数1~8のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基であって、R20が複数ある場合、当該複数あるR20は同一であっても異なっていてもよく、
21は単結合か、炭素数が1~19のアルキレン基であり、
は、水素原子、又は炭素数1~10のフッ素原子を有していてもよいアルキル基であって、Rが複数ある場合、当該複数あるRは同一であっても異なっていてもよく、
Xは塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であり、
aは1~3の整数である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、耐久性に優れた表面層を形成できる含フッ素エーテル化合物、当該含フッ素エーテル化合物を含む表面処理剤、含フッ素エーテル組成物及びコーティング液、耐久性に優れた表面層を有する物品、ならびに含フッ素エーテル化合物の原料として有用な化合物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において、式(A1)で表される化合物を化合物(A1)と記す。他の式で表される化合物等もこれらに準ずる。
本明細書における以下の用語の意味は、以下の通りである。
「反応性シリル基」とは、加水分解性シリル基及びシラノール基(Si-OH)の総称である。反応性シリル基は、例えば式(A1)又は式(A2)中のT、すなわち-Si(R)3-c(L)である。
「加水分解性シリル基」とは、加水分解反応してシラノール基を形成し得る基を意味する。
「表面層」とは、基材の表面に形成される層を意味する。
含フッ素エーテル化合物が、ポリフルオロポリエーテル鎖の鎖長が異なる複数の含フッ素エーテル化合物の混合物である場合、ポリフルオロポリエーテル鎖の「分子量」は、H-NMR及び19F-NMRによって、末端基を基準にしてオキシフルオロアルキレン単位の数(平均値)を求めて算出される数平均分子量である。末端基は、例えば式(A1)中のR又は式(A1)又は式(A2)中のTである。
含フッ素エーテル化合物が、ポリフルオロポリエーテル鎖の鎖長が単一の含フッ素エーテル化合物である場合、ポリフルオロポリエーテル鎖の「分子量」は、H-NMR及び19F-NMRによってRの構造を決定して算出される分子量である。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0010】
[含フッ素エーテル化合物]
本発明の含フッ素エーテル化合物(以下、「本化合物」とも記す。)は、下式(A1)又は式(A2)で表される含フッ素エーテル化合物である。
-O-(Rf1O)-Rf2[-R-C(-R-T)(-R3-a 式(A1)
[(T-R-)(R-)3-aC-R-]f2-O-(Rf1O)-Rf2[-R-C(-R-T)(-R3-a 式(A2)
ただし、
は、炭素数1~20のフルオロアルキル基であり、
f1は、炭素数1~6のフルオロアルキレン基であり、
f2は、(1+b)価の有機基であり、少なくともRと結合する炭素原子がフッ素原子を有し、Rf2が複数ある場合、当該Rf2は同一であっても異なっていてもよく、
は、炭素数が1~20のアルキレン基であり、Rが複数ある場合、当該Rは同一であっても異なっていてもよく、
は、炭素数2~10のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基であり、複数あるRは同一であっても異なっていてもよく、
は、水素原子、又は炭素数1~10のフッ素原子を有していてもよいアルキル基であって、Rが複数ある場合、当該複数あるRは同一であっても異なっていてもよく、
Tは、-Si(R)3-c(L)であって、複数あるTは同一であっても異なっていてもよく、
Rは、アルキル基であり、
Lは、加水分解性基又は水酸基であり、Tにおける2以上のLは同一であっても異なっていてもよく、
mは、1~20の整数であり、
aは、1~3の整数であって、aが複数ある場合、複数あるaは同一であっても異なっていてもよく、
bは、1以上の整数であり、bが複数ある場合、複数あるbは同一であっても異なっていてもよく、
cは、2又は3であり、複数あるcは同一であっても異なっていてもよく、
bが1の場合、aは、2又は3である。
【0011】
上記本化合物は、ポリフルオロポリエーテル鎖[R-O-(Rf1O)-]又は[-O-(Rf1O)-]と、反応性シリル基と、ポリフルオロポリエーテル鎖と反応性シリル基とを連結する特定の連結基-Rf2[-R-C(-R-)とを有する。
化合物(A1)は、「1価のポリフルオロポリエーテル鎖-連結基-反応性シリル基」の構造を有する化合物であり、化合物(A2)は、「反応性シリル基-連結基-2価のポリフルオロポリエーテル鎖-連結基-反応性シリル基」の構造を有する化合物である。
【0012】
本化合物は、ポリフルオロポリエーテル鎖を有する。ポリフルオロポリエーテル鎖を有する本化合物は、表面層の指紋汚れ除去性に優れる。また、本化合物は、少なくとも片側の末端に反応性シリル基を有する。末端に反応性シリル基を有する本化合物は、基材と強固に化学結合するため、表面層の耐摩擦性に優れる。更に本化合物は、上記連結基がエーテル結合(-C-O-C-)を有しない炭素鎖により構成される。そのため、従来広く用いられているエーテル結合を含む連結基に対して化学的安定性が向上している。その結果、本化合物により形成された表面層は、耐摩擦性、耐薬品性、耐光性などの耐久性に優れているという特徴を有する。本化合物は、このように高い潤滑性、撥水撥油性等を示す表面層を基材の表面に形成できるため、表面処理剤に好適に用いられる。
【0013】
は、炭素数1~20のフルオロアルキル基であることにより、表面層の耐摩擦性及び指紋汚れ除去性がさらに優れる。Rのフルオロアルキル基の炭素数は、表面層の耐摩擦性及び指紋汚れ除去性がさらに優れる点から、1~6が好ましく、1~4がより好ましく、1~3が特に好ましい。
のフルオロアルキル基としては、表面層の耐摩擦性及び指紋汚れ除去性がさらに優れる点から、ペルフルオロアルキル基が好ましい。Rがペルフルオロアルキル基である化合物は、末端がCF-となる。末端がCF-である化合物によれば、低表面エネルギーの表面層を形成できるため、表面層の耐摩擦性及び指紋汚れ除去性がさらに優れる。
のフルオロアルキル基としては、例えば、CF-、CFCF-、CFCFCF-、CFCFCFCF-、CFCFCFCFCF-、CFCFCFCFCFCF-、CFCF(CF)-などが挙げられる。
【0014】
(Rf1O)としては、表面層の耐摩擦性及び指紋汚れ除去性がさらに優れる点から、下式(Rf1-1)で表される構造が好ましい。
(Rf11O)m1(Rf12O)m2(Rf13O)m3(Rf14O)m4(Rf15O)m5(Rf16O)m6 式(Rf1-1)
ただし、
f11は、炭素数1のフルオロアルキレン基であり、
f12は、炭素数2のフルオロアルキレン基であり、
f13は、炭素数3のフルオロアルキレン基であり、
f14は、炭素数4のフルオロアルキレン基であり、
f15は、炭素数5のフルオロアルキレン基であり、
f16は、炭素数6のフルオロアルキレン基であり、
m1、m2、m3、m4、m5、m6は、それぞれ独立に0又は1以上の整数を表し、m1+m2+m3+m4+m5+m6は1~200の整数であり、Rf11~Rf16が複数ある場合、当該複数あるRf11~Rf16は同一であっても異なっていてもよい。
なお、式(Rf1-1)における(Rf11O)~(Rf16O)の結合順序は任意である。式(Rf1-1)のm1~m6は、それぞれ、(Rf11O)~(Rf16O)の個数を表すものであり、配置を表すものではない。例えば、(Rf15O)m5は、(Rf15O)の数がm5個であることを表し、(Rf5O)m5のブロック配置構造を表すものではない。同様に、(Rf11O)~(Rf16O)の記載順は、それぞれの単位の結合順序を表すものではない。
【0015】
また、炭素数3~6のフルオロアルキレン基は、直鎖フルオロアルキレン基であってもよく、分岐、又は環構造を有するフルオロアルキレン基であってもよい。
f11の具体例としては、CHF、CFが挙げられる。Rf12の具体例としては、CFCF、CFCHF、CFCHなどが挙げられる。Rf13の具体例としては、CFCFCF、CFCFCHF、CFCHFCF、CFCFCH、CFCHCF、CF(CF)CFなどが挙げられる。Rf14の具体例としては、CFCFCFCF、CFCFCFCH、CHFCFCFCF、CFCHCFCF、CF(CF)CFCF、ペルフルオロシクロブタン-1,2-ジイル基などが挙げられる。Rf15の具体例としては、CFCFCFCFCF、CFCFCFCFCH、CHFCFCFCFCF、CFCFCHCFCFなどが挙げられる。Rf16の具体例としては、CFCFCFCFCFCF、CFCFCFCFCFCH、CFCFCFCFCFCHFなどが挙げられる。
【0016】
f2は、(1+b)価の有機基であり、少なくともRと結合する炭素原子がフッ素原子を有する。即ちRf2は、b個の部分構造「-CQF-*(ただし、Qは水素原子又はフッ素原子であり、-*はRと結合する結合手である。)」を有する有機基である。Rf2の炭素数は1~6が好ましい。当該有機基としては、置換基を有していてもよい炭化水素基が挙げられる。当該炭化水素基としては、直鎖又は分岐のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びこれらの組み合わせが挙げられる。炭化水素基は炭素鎖中に二重結合又は三重結合を有していてもよい。組み合わせとしては、例えばアルキル基とアリール基が結合したものアルキル基とシクロアルキル基が結合したものなどが挙げられる。
炭化水素基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子が好ましく、中でもフッ素原子がより好ましい。製造の容易性などの点から、bは1~10が好ましく、1~6がより好ましい。
【0017】
bが1の場合、Rf2は2価の基である。この場合のRf2としては、置換基を有していてもよく、炭素鎖中にヘテロ原子又は(フルオロ)アルキレン基以外の結合を有していてもよい、フルオロアルキレン基が挙げられる。本化合物の耐久性の点から、bが1の場合のRf2は、中でも、炭素数1~6のフルオロアルキレン基が好ましい。この場合のRf2の具体例としては、-CHF-*、-CF-*、CFCF-*、CFCHF-*、CHCF-*、CFCFCF-*、CFCFCHF-*、CFCHFCF-*、CHCFCF-*、CFCHCF-*、CF(CF)CF-*、CFCFCFCF-*、CHCFCFCF-*、CHFCFCFCF-*、CFCHCFCF-*、CF(CF)CFCF-*、CFCFCFCFCF-*、CHCFCFCFCF-*、CHFCFCFCFCF-*、CFCFCHCFCF-*、CFCFCFCFCFCF-*、CHCFCFCFCFCF-*、CFCFCFCFCFCHF-*、などが挙げられる。
【0018】
bが2以上の場合、Rf2は第3級炭素原子、第4級炭素原子、及び環構造から選ばれる1種以上の分岐点Pを有する(1+b)価の基である。
分岐点を構成する炭素原子は、本化合物を製造やすい点、表面層の耐摩擦性、耐薬品性、耐光性などの耐久性の点から、第3級炭素原子、第4級炭素原子が好ましい。
分岐点を構成する環構造としては、本化合物を製造やすい点、表面層の耐摩擦性、耐薬品性、耐光性などの耐久性の点から、3~8員環の脂肪族環、6~8員環の芳香族環、3~8員環のヘテロ環、及びこれらの環のうちの2つ以上からなる縮合環などが挙げられ、表面層の耐摩擦性、耐薬品性、耐光性などの耐久性の点から、3~8員環の脂肪族環、6~8員環の芳香族環、及びこれらの縮合環より選択される環構造が好ましい。分岐点を構成する環構造としては、下式に示す環構造が挙げられる。下記環構造は、フッ素原子により置換されていてもよい。また環構造は、置換基として、ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリル基等を有してもよい。
【0019】
【化1】
【0020】
f2としては、2個以上の2価のフルオロアルキレン基と1個以上の分岐点Pとの組み合わせが好ましい。
f2が3価以上の場合の好ましい具体例を下記に示す。なお、下式中、Rは、(Rf1O)を表し、R及びRはRf2を構成しない。
【0021】
【化2】
【0022】
は、炭素数が1~20のアルキレン基である。Rは、フッ素原子を有しない。Rがエーテル結合を有しないアルキレン基であることにより、表面層の耐久性及び指紋汚れ除去性がさらに優れる。Rの炭素数は、表面層の耐久性及び指紋汚れ除去性がさらに優れる点から、5~20が好ましく、7~10がより好ましい。また、表面層の耐摩耗性の点からは、Rの炭素数は奇数個が好ましく、3、5、7又は9個であることがより好ましい。
【0023】
は、炭素数2~10のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基である。Rがエーテル結合を有しないアルキレン基であることにより、表面層の耐久性及び指紋汚れ除去性がさらに優れる。Rの炭素数は、表面層の耐久性及び指紋汚れ除去性がさらに優れる点から、3~10が好ましい。表面層の耐久性及び指紋汚れ除去性がさらに優れる点から、複数あるRのうち、少なくとも一つの炭素数が3以上であることが好ましく、複数あるRのいずれも炭素数が3以上であることが好ましい。また、表面層の耐久性などの点から、Rはフッ素原子を有しないアルキレン基が好ましい。
【0024】
また、本化合物においては、分子内の「-CH-」の数、即ちフッ素原子と結合していない炭素原子の数が、8~30が好ましく、10~20が好ましい。特に、RとRに含まれる-CH-の合計が、8~30が好ましく、10~20が好ましい。このような本化合物は、表面層の耐久性及び指紋汚れ除去性がさらに優れる。
【0025】
は、水素原子、又は炭素数1~10のフッ素原子を有していてもよいアルキル基である。Rが水素原子、又はフッ素原子を有していてもよいアルキル基であることにより、表面層の耐久性及び指紋汚れ除去性がさらに優れる。Rは、表面層の耐久性及び指紋汚れ除去性がさらに優れる点から、水素原子、又は炭素数1~8のフッ素原子を有していてもよいアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0026】
Tは、-Si(R)3-c(L)であり、反応性シリル基である。
反応性シリル基は、加水分解性基及び水酸基のいずれか一方又は両方がケイ素原子に結合した基である。
加水分解性基は、加水分解反応によって水酸基となる基である。すなわち、加水分解性シリル基は、加水分解反応によってシラノール基(Si-OH)となる。シラノール基は、さらに分子間で脱水縮合反応してSi-O-Si結合を形成する。また、シラノール基は、基材の表面の水酸基(基材-OH)と脱水縮合反応して、化学結合(基材-O-Si)を形成する。
加水分解性基としては、例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イソシアナート基が挙げられる。アルコキシ基としては、炭素数1~6のアルコキシ基が好ましい。ハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。アシル基としては、炭素数1~6のアシル基が好ましい。アシルオキシ基としては、炭素数1~6のアシルオキシ基が好ましい。
加水分解性基としては、本化合物を製造しやすい点から、アルコキシ基又はハロゲン原子が好ましい。加水分解性基としては、塗布時のアウトガスが少なく、本化合物の保存安定性に優れる点から、炭素数1~4のアルコキシ基が好ましく、本化合物の長期の保存安定性が必要な場合にはエトキシ基が特に好ましく、コーティング後の反応時間を短時間とする場合にはメトキシ基が特に好ましい。
Rのアルキル基の炭素数は、本化合物を製造しやすい点から、1~6が好ましく、1~3がより好ましく、1~2が特に好ましい。
cは、表面層と基材との密着性がより強固になる点から、2又は3が好ましく、3がより好ましい。
複数のTは、同一であっても異なっていてもよい。本化合物を製造しやすい点からは、Tは同一の基であることが好ましい。
【0027】
また、表面層の耐久性の点から、各末端にTは2個以上配置されることが好ましい、このような観点から、bが1の場合、aは2又は3である。
【0028】
本化合物としては、例えば、下式の化合物が挙げられる。下式の化合物は、工業的に製造しやすく、取扱いやすく、表面層の撥水撥油性、耐摩擦性、指紋汚れ除去性、潤滑性、耐薬品性、耐光性及び耐薬品性がさらに優れる。また、本化合物は、耐久性の点から、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が1.2以下であることが好ましい。
【0029】
【化3】
【0030】
【化4】
なお、式中のx1~x16は各々独立に1~100の整数であり、y1~y7は各々独立に1~7の整数である。
【0031】
(化合物(A1)及び化合物(A2)の製造方法)
化合物(A1)は、例えば、下記化合物(A11)と、化合物(1a)とをヒドロシリル化反応させる方法によって製造できる。化合物(A2)は、例えば、下記化合物(A21)と、化合物(1a)とをヒドロシリル化反応させる方法によって製造できる。
-O-(Rf1O)-Rf2[-R-C(-R20-CH=CH(-R3-a 式(A11)
[(CH=CH-R20-)(R-)3-aC-R-]f2-O-(Rf1O)-Rf2[-R-C(-R20-CH=CH(-R3-a 式(A21)
HSi(R)3-c(L) 式(1a)
ただし、式中のR20は単結合か、又は、炭素数1~8のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基であり、R20以外の符号は前記式(A1)又は式(A2)における符号と同一である。
-R20-CH=CHは、ヒドロシリル化後にRとなる。R20としては、Rと同様な基が挙げられ、好ましい形態も同様である。
【0032】
(化合物(A11)及び化合物(A21)の製造方法)
化合物(A11)は、例えば、下記化合物(A12)と、下記化合物(B2)とを反応させる方法によって製造できる。化合物(A21)は、例えば、下記化合物(A22)と、下記化合物(B2)とを反応させる方法によって製造できる。
-O-(Rf1O)-Rf2-CH-L 式(A12)
-CH-Rf2-O-(Rf1O)-Rf2-CH-L 式(A22)
(CH=CH-R20-)(R-)3-aC-R21-MgX 式(B2)
ただし、
はスルホナート基であり、
21は単結合か、炭素数が1~19のアルキレン基であり、
Xは塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であり、
その他の符号は前記式(A11)又は式(A21)における符号と同一である。
【0033】
化合物(A12)又は化合物(A12)のスルホナート基と、化合物(B2)のMgXとは、下記スキーム(1)のように反応する(グリニャール反応)。
【0034】
スキーム(1)
-Rf2-CH-L + XMg-R21- → -Rf2-CH-R21
ただし、スキーム(1)中の各符号は前述のとおりである。
なお、上記反応後のCH-R21が、本化合物のRに相当する。
【0035】
がスルホナート基(-O-SO-R22)であり、グリニャール試薬との反応により脱離する。なおR22は有機基である。Lとしてスルホナート基を選択することにより、上記スキーム(1)の反応を比較的温和な条件で、且つ、高収率で実施することができる。
スルホナート基の具体例としては、トシラート基(OTs)、メシラート基(OMs)、トリフラート基(OTf)、ノナフラート基(ONf)などが挙げられる。中でも、スキーム(1)の反応収率の点から、トリフラート基が好ましい。
【0036】
化合物(A12)又は化合物(A22)は、トリエチルアミンやピリジンなどの有機アミン化合物存在下で、下記化合物(A13)又は化合物(A23)で表される化合物に、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、トシルクロリド、メシルクロリドなどを反応させて、スルホナート化する方法などにより製造できる。
-O-(Rf1O)-Rf2-CH-OH 式(A13)
-CH-Rf2-O-(Rf1O)-Rf2-CH-OH 式(A23)
ただし、式中のA、A及びnは前述のとおりである。
【0037】
化合物(A13)及び化合物(A23)は、例えば、国際公開第2017/038830号などを参照して製造できる。
【0038】
化合物(B2)は、例えば、下記化合物(B1)と金属マグネシウムを反応させる方法により製造できる。
(CH=CH-R20-)(R-)3-aC-R21-X 式(B1)
ただし、式中のR20、R21、R、X及びaは化合物(B2)と同様である。
化合物(B1)は、例えば、不飽和アルコールのヒドロキシ基をハロゲン化することで得られる。不飽和アルコールは合成してもよく、市販品を用いてもよい。
【0039】
化合物(B2)の好適な具体例として、下記のものなどが挙げられる。
【0040】
【化5】
【0041】
スキーム(1)の反応において、化合物(B2)の使用量は、目的物の収率向上の観点から、化合物(A12)又は化合物(A12)が有するスルホナート基Lの総数に対して、1当量から30当量が好ましく、3当量から20当量がより好ましく、5当量から15当量がさらに好ましい。
【0042】
スキーム(1)の反応においては、反応性を向上し、高収率化が可能な点から、触媒として遷移金属化合物を用いることが好ましい。遷移金属化合物はグリニャール反応に用いられる公知の触媒の中から適宜選択して用いることができる。遷移金属化合物としては、遷移金属として周期表3族~12族の元素を含む化合物が好ましく、中でも、8族~11族元素を含む化合物が好ましい。8族~11族元素としては、中でも、銅、ニッケル、パラジウム、コバルト、鉄より選択される1種以上の元素を含むことが好ましく、更に銅を含むことがより好ましい。
【0043】
遷移金属化合物が銅を含む場合、当該銅は0価、1価、2価、3価のいずれの化合物であってもよいが、触媒能の点から中でも1価又は2価の銅の塩又は錯塩が好ましい。更に入手の容易性などの点から、塩化銅がより好ましい。
遷移金属化合物の使用量は、スルホナート基Lの総数に対して、例えば、0.1~50モル%、好ましくは1~30モル%、さらに好ましくは2~20モル%である。
【0044】
また、遷移金属化合物に配位子を組み合わせて用いてもよい。配位子を用いることで目的物の収率が向上する。一方、本製造方法においては配位子を用いなくても十分な収率が得られるため、当該配位子は使用しなくてもよい。
上記配位子としは、例えば、1,3-ブタジエン、フェニルプロピン、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)などが挙げられる。配位子を使用する場合、使用量は目的物の収率向上の点から、スルホナート基Lの総数に対して、0.01~2.0当量用いることが好ましく、0.1~1.2当量がより好ましい。
【0045】
またスキーム(1)の反応は、通常、溶媒中で行われる。溶媒は、前記化合物(A12)、化合物(A13)及び化合物(B2)を溶解し得る溶媒の中から適宜選択して用いることができる。溶媒は、1種単独で又は2種以上を組み合わせた混合溶媒であってもよい。
例えば、化合物(A12)又は化合物(A13)が比較的フッ素原子含有量(化合物分子の分子量に占めるフッ素原子の割合)の低い化合物である場合には、溶媒としては反応に不活性な溶媒であれば特に限定されない。反応に不活性な溶媒としては、中でも、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒が好ましく、テトラヒドロフランがより好ましい。
また、化合物(A12)又は化合物(A13)が比較的フッ素原子含有量の高い化合物である場合には、前記エーテル系溶媒と、フッ素系溶媒とを組み合わせた混合溶媒が好ましい。
フッ素系溶媒としては、例えば、ハイドロフルオロカーボン類(1H,4H-ペルフルオロブタン、1H-ペルフルオロヘキサン、1H-トリデカフルオロヘキサン(AC-2000)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン、2H,3H-ペルフルオロペンタン等)、ハイドロクロロフルオロカーボン類(3,3-ジクロロ-1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン、1,3-ジクロロ-1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン(HCFC-225cb)等)、ハイドロフルオロエーテル類(CFCHOCFCFH(AE-3000)、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタン(AC-6000)、(ペルフルオロブトキシ)メタン、(ペルフルオロブトキシ)エタン等)、ハイドロクロロフルオロオレフィン類((Z)-1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテン(HCFO-1437dycc(Z)体)、(E)-1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテン(HCFO-1437dycc(E)体)、(Z)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HCFO-1233yd(Z)体)、(E)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HCFO-1233yd(E)体)等)、含フッ素芳香族化合物類(ペルフルオロベンゼン、m-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(SR-ソルベント)、p-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等)等が挙げられる。
【0046】
スキーム(1)の反応は、例えば、化合物(A12)又は化合物(A13)を含む溶液を準備し、遷移金属化合物と、必要に応じて配位子を添加した後、別途調製した化合物(B2)溶液を添加することで実施できる。
スキーム(2)の反応温度は、例えば、-20℃~66℃(テトラヒドロフランの沸点)とすればよく、-20℃~40℃が好ましい。
【0047】
本発明の含フッ素化合物含有組成物(以下、「本組成物」とも記す。)は、化合物(A1)と化合物(A2)を含有するものであってもよく、化合物(A1)及び化合物(A2)より選択される1種以上と、他の含フッ素エーテル化合物とを含有するものであってもよい。なお、本組成物は、後述する液状媒体を含まない。
【0048】
他の含フッ素エーテル化合物としては、例えば、本化合物の製造工程で副生する含フッ素エーテル化合物(以下、「副生含フッ素エーテル化合物」とも記す。)、本化合物と同様の用途に用いられる公知の含フッ素エーテル化合物、含フッ素オイルが挙げられる。他の含フッ素化合物としては、本化合物の特性を低下させるおそれが少ない化合物が好ましい。
【0049】
含フッ素オイルとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)が挙げられる。
【0050】
副生含フッ素化合物としては、本化合物の合成時における未反応の含フッ素化合物等が挙げられる。本組成物が副生含フッ素化合物を含む場合、該副生含フッ素化合物を除去、もしくは該副生含フッ素化合物量を低減させるための精製工程を簡略化することができる。
【0051】
公知の含フッ素化合物としては、例えば、下記の文献に記載のものが挙げられる。
日本特開平11-029585号公報に記載のパーフルオロポリエーテル変性アミノシラン、
日本特許第2874715号公報に記載のケイ素含有有機含フッ素ポリマー、
日本特開2000-144097号公報に記載の有機ケイ素化合物、
日本特開2000-327772号公報に記載のパーフルオロポリエーテル変性アミノシラン、
日本特表2002-506887号公報に記載のフッ素化シロキサン、
日本特表2008-534696号公報に記載の有機シリコーン化合物、
日本特許第4138936号公報に記載のフッ素化変性水素含有重合体、
米国特許出願公開第2010/0129672号明細書、国際公開第2014/126064号、日本特開2014-070163号公報に記載の化合物、
国際公開第2011/060047号、国際公開第2011/059430号に記載のオルガノシリコン化合物、
国際公開第2012/064649号に記載の含フッ素オルガノシラン化合物、
日本特開2012-72272号公報に記載のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー、
国際公開第2013/042732号、国際公開第2013/121984号、国際公開第2013/121985号、国際公開第2013/121986号、国際公開第2014/163004号、日本特開2014-080473号公報、国際公開第2015/087902号、国際公開第2017/038830号、国際公開第2017/038832号、国際公開第2017/187775号に記載の含フッ素エーテル化合物、
日本特開2014-218639号公報、国際公開第2017/022437号、国際公開第2018/079743号、国際公開第2018/143433号に記載のパーフルオロ(ポリ)エーテル含有シラン化合物、
日本特開2015-199906号公報、日本特開2016-204656号公報、日本特開2016-210854号公報、日本特開2016-222859号公報に記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シラン、
国際公開第2018/216630号、国際公開第2019/039226号、国際公開第2019/039341号、国際公開第2019/039186号、国際公開第2019/044479号、日本特開2019-44158号公報、国際公開2019/163282に記載の含フッ素エーテル化合物。
また、含フッ素化合物の市販品としては、信越化学工業社製のKY-100シリーズ(KY-178、KY-185、KY-195等)、AGC社製のAfluid(登録商標)S550、ダイキン工業社製のオプツール(登録商標)DSX、オプツール(登録商標)AES、オプツール(登録商標)UF503、オプツール(登録商標)UD509等が挙げられる。
【0052】
本組成物中の本化合物の割合は、100質量%未満であり、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましい。
本組成物が他の含フッ素化合物を含む場合、本組成物中の本化合物及び他の含フッ素化合物の合計に対する他の含フッ素化合物の割合は、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
本組成物中の本化合物及び他の含フッ素化合物の合計の割合は、80質量%以上が好ましく、85質量%以上がより好ましい。
本化合物及び他の含フッ素化合物の含有量が前記範囲内であれば、表面層の撥水撥油性、耐摩擦性、指紋汚れ除去性、潤滑性、外観に優れる。
【0053】
[コーティング液]
本発明のコーティング液(以下、本コーティング液ともいう。)は、本化合物又は本組成物と液状媒体とを含む。本コーティング液は、液状であればよく、溶液であってもよく、分散液であってもよい。
本コーティング液は、本化合物又は本組成物を含んでいればよく、本化合物の製造工程で生成した副生物等の不純物を含んでもよい。
本化合物又は本組成物の濃度は、本コーティング液中、0.001~40質量%が好ましく、0.01~20質量%が好ましく、0.1~10質量%がより好ましい。
【0054】
液状媒体としては、有機溶媒が好ましい。有機溶媒は、フッ素系有機溶媒であってもよく、非フッ素系有機溶媒であってもよく、両溶媒を含んでもよい。
【0055】
フッ素系有機溶媒としては、フッ素化アルカン、フッ素化芳香族化合物、フルオロアルキルエーテル、フッ素化アルキルアミン、フルオロアルコール等が挙げられる。
フッ素化アルカンとしては、炭素数4~8の化合物が好ましい。市販品としては、たとえばC13H(AGC社製、アサヒクリン(登録商標)AC-2000)、C13(AGC社製、アサヒクリン(登録商標)AC-6000)、CCHFCHFCF(ケマーズ社製、バートレル(登録商標)XF)等が挙げられる。
フッ素化芳香族化合物としては、たとえばヘキサフルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、ペルフルオロトルエン、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等が挙げられる。
フルオロアルキルエーテルとしては、炭素数4~12の化合物が好ましい。市販品としては、たとえばCFCHOCFCFH(AGC社製、アサヒクリン(登録商標)AE-3000)、COCH(3M社製、ノベック(登録商標)7100)、COC(3M社製、ノベック(登録商標)7200)、CCF(OCH)C(3M社製、ノベック(登録商標)7300)等が挙げられる。
フッ素化アルキルアミンとしては、たとえばペルフルオロトリプロピルアミン、ペルフルオロトリブチルアミン等が挙げられる。
フルオロアルコールとしては、たとえば2,2,3,3-テトラフルオロプロパノール、2,2,2-トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール等が挙げられる。
非フッ素系有機溶媒としては、水素原子及び炭素原子のみからなる化合物と、水素原子、炭素原子及び酸素原子のみからなる化合物が好ましく、炭化水素系有機溶媒、アルコール系有機溶媒、ケトン系有機溶媒、エーテル系有機溶媒、エステル系有機溶媒が挙げられる。
本コーティング液は、液状媒体を75~99.999質量%含むことが好ましく、85~99.99質量%含むことが好ましく。90~99.9質量%含むことが特に好ましい。
【0056】
本コーティング液は、本化合物又は本組成物と液状媒体の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、それら以外の他の成分を含んでいてもよい。
他の成分としては、たとえば、加水分解性シリル基の加水分解と縮合反応を促進する酸触媒や塩基性触媒等の公知の添加剤が挙げられる。
本コーティング液における、他の成分の含有量は、10質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。
【0057】
本コーティング液の本化合物と他の成分の合計又は本組成物と他の成分の合計の濃度(以下、固形分濃度ともいう。)は、0.001~40質量%が好ましく、0.01~20質量%が好ましく、0.01~10質量%がより好ましく、0.01~1質量%がより好ましい。コーティング液の固形分濃度は、加熱前のコーティング液の質量と、120℃の対流式乾燥機にて4時間加熱した後の質量とから算出する値である。
【0058】
[物品]
本発明の物品(以下、「本物品」とも記す。)は、本化合物又は本組成物から形成された表面層を基材の表面に有する。表面層は、基材の表面の一部に形成されてもよく、基材のすべての表面に形成されてもよい。表面層は、基材の表面に膜状に拡がってもよく、ドット状に点在してもよい。
表面層は、本化合物を、本化合物の加水分解性シリル基の一部又は全部が加水分解反応し、かつシラノール基が脱水縮合反応した状態で含む。
【0059】
表面層の厚さは、1~100nmが好ましく、1~50nmが特に好ましい。表面層の厚さが1nm以上であれば、表面処理による効果が充分に得られやすい。表面層の厚さが100nm以下であれば、利用効率が高い。表面層の厚さは、薄膜解析用X線回折計(RIGAKU社製、ATX-G)を用いて、X線反射率法によって反射X線の干渉パターンを得て、干渉パターンの振動周期から算出できる。
【0060】
基材としては、撥水撥油性の付与が求められている基材が挙げられる。例えば、他の物品(例えばスタイラス)や人の手指を接触させて使用することがある基材、操作時に人の手指で持つことがある基材、他の物品(例えば載置台)の上に置くことがある基材が挙げられる。
基材の材料としては、金属、樹脂、ガラス、サファイア、セラミック、石、これらの複合材料が挙げられる。ガラスは化学強化されていてもよい。基材の表面にはSiO膜等の下地膜が形成されていてもよい。
基材としては、タッチパネル用基材、ディスプレイ用基材、メガネレンズが好適であり、タッチパネル用基材が特に好適である。タッチパネル用基材の材料としては、ガラス又は透明樹脂が好ましい。
また、基材としては、携帯電話(例えばスマートフォン)、携帯情報端末(例えばタブレット端末)、ゲーム機、リモコン等の機器における外装部分(表示部を除く)に使用する、ガラス又は樹脂フィルムも好ましい。
【0061】
[物品の製造方法]
本物品は、例えば、下記の方法で製造できる。
・本化合物又は本組成物を用いたドライコーティング法によって基材の表面を処理して、本化合物又は本組成物から形成された表面層を基材の表面に形成する方法。
・ウェットコーティング法によって本コーティング液を基材の表面に塗布し、乾燥させて、本化合物又は本組成物から形成された表面層を基材の表面に形成する方法。
【0062】
ドライコーティング法としては、真空蒸着、CVD、スパッタリング等の手法が挙げられる。ドライコーティング法としては、化合物1A又は化合物1Bの分解を抑える点、及び装置の簡便さの点から、真空蒸着法が好ましい。真空蒸着時には、鉄、鋼等の金属多孔体に本化合物又は本組成物を含浸させたペレット状物質を用いてもよい。本コーティング液を鉄、鋼等の金属多孔体に含浸させ、液状媒体を乾燥させて、化合物1Aもしくは化合物1B又は本組成物が含浸したペレット状物質を用いてもよい。
【0063】
ウェットコーティング法としては、例えば、スピンコート法、ワイプコート法、スプレーコート法、スキージーコート法、ディップコート法、ダイコート法、インクジェット法、フローコート法、ロールコート法、キャスト法、ラングミュア・ブロジェット法、グラビアコート法が挙げられる。
【0064】
表面層の耐摩擦性を向上させるために、必要に応じて、本化合物と基材との反応を促進するための操作を行ってもよい。該操作としては、加熱、加湿、光照射等が挙げられる。
たとえば、水分を有する大気中で表面層が形成された基材を加熱して、加水分解性基の加水分解反応、基材の表面の水酸基等とシラノール基との反応、シラノール基の縮合反応によるシロキサン結合の生成、等の反応を促進できる。
表面処理後、表面層中の化合物であって他の化合物や基材と化学結合していない化合物は、必要に応じて除去してもよい。具体的な方法としては、たとえば、表面層に溶媒をかけ流す方法、溶媒をしみ込ませた布でふき取る方法等が挙げられる。
【実施例
【0065】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下において「%」は特に断りのない限り「質量%」である。なお、例1~11、13~33、35~41が実施例であり、例12、34が比較例である。
【0066】
なお、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は、下記の条件で、GPC法(ゲル浸透クロマトグラフィー法)により求めた。
装置:HLC-8420GPC(東ソー社製)
移動相:1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン及びアセトンの混合溶媒(80:20(体積比))
分析カラム:PLgel3μm MIXED-E(Agilent Technologies社製)
分子量測定用標準資料:Mw/Mnが1.2以下で、Mnが2000~10000のペルフルオロポリエーテル3種
移動相流速:1.0mL/分
サンプル濃度:10mg/mL
カラム温度:40℃
検出器:蒸発光散乱検出器
【0067】
[合成例1:化合物(1-1)の合成]
国際公開2013/121984号の実施例7に記載の方法に従い、下記化合物(1-1)を得た。
CF-O-(CFCFO-CFCFCFCFO)(CFCFO)-CFCFCF-CHOH ・・・式(1-1)
繰り返し単位数nの平均値は13である。
【0068】
[合成例2:化合物(1-2)の合成]
前記化合物(1-1)(6.80g)、2,6-ルチジン(0.759g),AE-3000(28.0g)を加え、0℃で撹拌した。無水トリフルオロメタンスルホン酸(0.987g)を加えた後、室温で撹拌した。水で洗浄した後、溶媒を留去し、シリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーを行うことで、下記化合物(1-2)を6.81g得た。
CF-O-(CFCFO-CFCFCFCFO)(CFCFO)-CFCFCF-CHOTf ・・・式(1-2)
繰り返し単位数nの平均値は13であり、OTfはトリフラート:-O-S(=O)(-CF)である。
【0069】
化合物(1-2)のNMRスペクトル;
H-NMR(400MHz,Chloroform-d) δ(ppm):4.78(t,J=12.3Hz,2H).
19F-NMR(376MHz,Chloroform-d) δ(ppm):-55.28,-74.11,-82.86,-88.07,-90.20,-119.84,-125.28,-126.16.
【0070】
[合成例3:化合物(B-1)の合成]
DiethylDiallylmalonate(60.0g)、塩化リチウム(23.7g)、水(6.45g)、ジメチルスルホキシド(263g)を加え、160℃で撹拌した。室温まで冷却した後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。ヘキサンを有機層に加え、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、溶媒を留去することで、下記化合物(B-1)を39.5g得た。
【0071】
【化6】
【0072】
化合物(B-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(400MHz,Chloroform-d) δ(ppm):(ddt,J=17.1,10.1,7.0Hz,2H),5.06~4.94(m,4H),4.09(q,J=7.1Hz,2H),2.47(ddd,J=14.0,8.0,6.1Hz,1H),2.33(dt,J=14.9,7.5Hz,2H),2.22(dt,J=14.1,6.5Hz,2H),1.21(t,J=7.1Hz,3H).
【0073】
[合成例4:化合物(B-2)の合成]
テトラヒドロフラン(THF)(260mL)、ジイソプロピルアミン(29.8g)を加えた後、溶液を-78℃まで冷却した。n-ブチルリチウムヘキサン溶液(2.76M,96.6mL)を加え、0℃まで昇温した。撹拌した後、-78℃まで冷却し、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)のTHF溶液を調製した。上記化合物(B-1)(39.5g)をTHF溶液に加え、撹拌した後、臭化アリル(24.1mL)を加えた。0℃に昇温し、1M塩酸(100mL)を加え、THFを減圧留去した。ジクロロメタンで抽出した後、硫酸ナトリウムを加えた。ろ過後、溶媒を留去し、シリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーを行うことで、化合物(B-2)を45.0g得た。
【0074】
【化7】
【0075】
化合物(B-2)のNMRスペクトル;
H-NMR(400MHz,Chloroform-d) δ(ppm):5.74~5.62(m,3H),5.04(dd,J=13.6,1.9Hz,6H),4.10(q,J=7.1Hz,2H),2.29(d,J=7.4Hz,6H),1.22(t,J=7.1Hz,3H).
【0076】
[合成例5:化合物(B-3)の合成]
上記化合物(B-2)(45.0g)をTHF(620mL)に溶解させ、0℃に冷却した。水素化リチウムアルミニウムのTHF溶液(104mL)を加え、撹拌した。水、15%水酸化ナトリウム水溶液を加え、室温で撹拌した後、ジクロロメタンで希釈した。ろ過後、溶媒を留去し、シリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーを行うことで、下記化合物(B-3)を31.3g得た。
【0077】
【化8】
【0078】
化合物(B-3)のNMRスペクトル;
H-NMR(400MHz,Chloroform-d) δ(ppm):5.90~5.76(m,3H),5.10~5.02(m,6H),3.38(s,2H),2.03(dt,J=7.5,1.2Hz,6H),1.45(s,1H).
【0079】
[例1:化合物(B1-1)の合成]
アセトニトリル(380mL)、前記化合物(B-3)(31.3g)、トリフェニルホスフィン(64.3g)、四塩化炭素(33.9g)を加え、90℃で撹拌した。濃縮後、酢酸エチル/ヘキサンを加え撹拌した。ろ過、濃縮後、蒸留によって、下記化合物(B1-1)を28.2g得た。
【0080】
【化9】
【0081】
化合物(B1-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(400MHz,Chloroform-d) δ(ppm):5.83~5.67(m,3H),5.16~5.01(m,6H),3.32(s,2H),2.05(dt,J=7.5,1.1Hz,6H).
【0082】
[例2:化合物(B2-1)の合成]
マグネシウム(2.36g)にTHF(35mL)、ヨウ素(0.180g)を加えて、室温で撹拌した。前記化合物(B1-1)(14.0g)のTHF(35mL)溶液を加え、2時間加熱還流することで、下記化合物(B2-1)の溶液(0.80M)を調製した。
【0083】
【化10】
【0084】
[例3:化合物(B1-2)の合成]
1-ブロモ-3-クロロプロパン(2.90g)、1-フェニル-1-プロピン(0.220g)、CuCl(0.051g)を加え0℃で撹拌した。前記化合物(B2-1)(0.80M,26.0mL)を加え撹拌した。1M塩酸を加え、ジクロロメタンで抽出し、硫酸ナトリウムを加えた。ろ過、濃縮後、蒸留によって、下記化合物(B1-2)を3.29g得た。
【0085】
【化11】
【0086】
化合物(B1-2)のNMRスペクトル;
H-NMR(400MHz,Chloroform-d) δ(ppm):5.76(ddt,J=16.6,10.6,7.4Hz,3H),5.09~4.93(m,6H),3.50(t,J=6.7Hz,2H),1.96(dt,J=7.4,1.2Hz,6H),1.76~1.61(m,2H),1.45~1.29(m,2H),1.24~1.08(m,2H).
【0087】
[例4:化合物(B2-2)の合成]
マグネシウム(0.174g)にTHF(2.6mL)、ヨウ素(12.7mg)を加えて、室温で撹拌した。前記化合物(B1-2)(1.30g)のTHF(2.6mL)溶液を加え、加熱還流することで、下記化合物(B2-2)の溶液(1.0M)を調製した。
【0088】
【化12】
【0089】
[合成例6:化合物(1-3)の合成]
CuCl(7.0mg)、1-フェニル-1-プロピン(0.026g)、1,3-ビストリフルオロメチルベンゼン(23mL)、前記化合物(1-2)(1.52g)を加えた後、前記化合物(B2-2)(4.5mL,1.0M)を加えた。室温で撹拌した後、1M塩酸で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、溶媒を留去し、AC-6000を加えた。N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)で洗浄した後、シリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーを行うことで、下記化合物(1-3)を0.210g得た。
【0090】
【化13】
【0091】
化合物(1-3)のNMRスペクトル;
H-NMR(400MHz,Chloroform-d) δ(ppm):5.80(ddt,J=20.3,9.3,7.4Hz,3H),5.01(dd,J=13.5,1.7Hz,6H),2.13~2.01(m,2H),1.97(d,J=7.5Hz,6H),1.67~1.55(m,2H),1.40~1.27(m,4H),1.27~1.18(m,2H).
19F-NMR(376MHz,Chloroform-d) δ(ppm):-55.25,-82.83,-88.06,-90.16(d,J=8.1 Hz),-114.18,-125.26,-126.59.
【0092】
[例5:化合物(I)の合成]
AC-2000(1.2g)、上記化合物(1-3)(0.200g)、白金/1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(白金含有量2%,7.0mg)、アニリン(1.5mg)、トリメトキシシラン(32.2mg)を加え、40℃で18時間撹拌した後、溶媒を減圧留去することで、下記に示す含フッ素エーテル化合物(I)を0.201g得た。前記GPC法により求めた化合物(I)のMw/Mnは1.07であった。
【0093】
【化14】
繰り返し単位の平均値(n1):13
【0094】
化合物(I)のNMRスペクトル;
H-NMR(400MHz,Chloroform-d) δ(ppm):3.59(s,27H),2.15~1.91(m,2H),1.72~1.54(m,2H),1.52~1.14(m,18H),0.73~0.60(m,6H).
19F-NMR(376MHz,Chloroform-d) δ(ppm):-55.28,-82.30(d,J=22.0Hz),-82.88,-88.10,-90.22,-114.17,-125.30,-126.49.
【0095】
[例6:化合物(B1-3)の合成]
1-ブロモ-4-クロロブタン(2.89g)、1-フェニル-1-プロピン(0.198g)、CuCl(0.049g)を加え0℃で撹拌した。前記化合物(B2-1)(0.80M,24.0mL)を加え撹拌した。1M塩酸を加え、ジクロロメタンで抽出し、硫酸ナトリウムを加えた。ろ過、濃縮後、蒸留によって、下記化合物(B1-3)を3.45g得た。
【0096】
【化15】
【0097】
化合物(B1-3)のNMRスペクトル;
H-NMR(400MHz,Chloroform-d) δ(ppm):5.76(ddt,J=16.8,10.4,7.4Hz,3H),5.07~4.92(m,6H),3.49(t,J=6.8Hz,2H),1.94(dt,J=7.4,1.2Hz,6H),1.79~1.67(m,2H),1.42~1.30(m,2H),1.30~1.20(m,2H),1.20~1.10(m,2H).
【0098】
[例7:化合物(B2-3)の合成]
マグネシウム(0.168g)にTHF(2.6mL)、ヨウ素(14.0mg)を加えて、室温で撹拌した。前記化合物(B1-3)(1.41g)のTHF(2.6mL)溶液を加え、2時間加熱還流することで、下記化合物(B2-3)の溶液(0.74M)を調製した。
【0099】
【化16】
【0100】
[合成例7:化合物(2-1)の合成]
CuCl(9.9mg)、1-フェニル-1-プロピン(0.019g)、1,3-ビストリフルオロメチルベンゼン(23mL)、前記化合物(1-2)(1.50g)を加えた後、前記化合物(B2-3)(4.5mL,1.0M)を加えた。室温で撹拌した後、1M塩酸で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、溶媒を留去し、AC-6000を加えた。DMF、MeOHで洗浄した後、シリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーを行うことで、下記化合物(2-1)を0.246g得た。
【0101】
【化17】
【0102】
化合物(2-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(400MHz,Chloroform-d) δ(ppm):5.90~5.73(m,3H),5.13~4.91(m,6H),2.14~2.01(m,2H),1.97(d,J=7.4Hz,6H),1.69~1.52(m,2H),1.47~1.18(m,8H).
19F-NMR(376MHz,Chloroform-d) δ(ppm):-55.23,-82.35(dt,J=22.8,10.3Hz),-82.81,-87.93,-90.15(d,J=8.4Hz),-114.19,-125.23,-126.58.
【0103】
[例8:化合物(II)の合成]
AC-2000(1.5g)、上記化合物(2-1)(0.246g)、白金/1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(白金含有量2%,8.9mg)、アニリン(1.3mg)、トリメトキシシラン(26.9mg)を加え、40℃で撹拌した後、溶媒を減圧留去することで、下記に示す含フッ素エーテル化合物(II)を0.252g得た。前記GPC法により求めた化合物(II)のMw/Mnは1.06であった。
【0104】
【化18】
繰り返し単位の平均値(n2):14
【0105】
化合物(II)のNMRスペクトル;
H-NMR(400MHz,Chloroform-d) δ(ppm):3.60(s,27H),2.14~1.95(m,2H),1.66~1.54(m,2H),1.52~1.16(m,20H),0.75~0.61(m,6H).
19F-NMR(376MHz,Chloroform-d) δ(ppm):-55.28,-82.33,-82.86,-88.08,-90.18,-114.24,-125.29,-126.51.
【0106】
[例9:化合物(B1-4)の合成]
1-ブロモ-5-クロロブタン(2.89g)、1-フェニル-1-プロピン(0.182g)、CuCl(0.042g)を加え0℃で撹拌した。前記化合物(B2-1)(0.80M,21.5mL)を加え1時間撹拌した撹拌した。1M塩酸を加え、ジクロロメタンで抽出し、硫酸ナトリウムを加えた。ろ過、濃縮後、シリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーを行うことで、下記化合物(B1-4)を2.95g得た。
【0107】
【化19】
【0108】
化合物(B1-4)のNMRスペクトル;
H-NMR(400MHz,Chloroform-d) δ(ppm):5.83~5.68(m,3H),5.06~4.94(m,6H),3.49(t,J=6.8Hz,2H),1.94(dt,J=7.4,1.2Hz,6H),1.80~1.65(m,2H),1.46~1.32(m,2H),1.28~1.09(m,6H).
【0109】
[例10:化合物(B2-4)の合成]
マグネシウム(0.172g)にTHF(2.6mL)、ヨウ素(21.8mg)を加えて、室温で撹拌した。前記化合物(B1-4)(1.47g)のTHF(2.6mL)溶液を加え、2時間加熱還流することで、下記化合物(B2-4)の溶液(0.99M)を調製した。
【0110】
【化20】
【0111】
[合成例8:化合物(3-1)の合成]
CuCl(7.0mg)、1-フェニル-1-プロピン(0.026g)、1,3-ビストリフルオロメチルベンゼン(24mL)、前記化合物(1-2)(1.51g)を加えた後、前記化合物(B2-4)(4.8mL,0.99M)を加えた。室温で撹拌した後、1M塩酸で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、溶媒を留去し、ヘキサンで洗浄しシリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーを行うことで、下記化合物(3-1)を0.213g得た。
【0112】
【化21】
【0113】
化合物(3-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(400MHz,Chloroform-d) δ(ppm):5.87~5.72(m,3H),5.07~4.93(m,6H),2.12~1.99(m,2H),1.97(d,J=7.5Hz,6H),1.64~1.53(m,2H),1.41~1.17(m,10H).
19F-NMR(376MHz,Chloroform-d) δ(ppm):-55.22,-82.77,-87.95(d,J=39.1Hz),-90.12(d,J=8.5Hz),-114.15,-125.19,-126.55.
【0114】
[例11:化合物(III)の合成]
AC-2000(1.3g)、上記化合物(1-7)(0.213g)、白金/1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(白金含有量2%,7.4mg)、アニリン(2.2mg)、トリメトキシシラン(45.9mg)を加え、40℃で撹拌した後、溶媒を減圧留去することで、記に示す含フッ素エーテル化合物(III)を0.225g得た。前記GPC法により求めた化合物(III)のMw/Mnは1.07であった。
【0115】
【化22】
繰り返し単位の平均値(n3):13
【0116】
化合物(III)のNMRスペクトル;
H-NMR(400MHz,Chloroform-d) δ(ppm):3.60(s,27H),2.15~1.94(m,2H),1.66~1.54 (m,2H),1.54~1.13(m,22H),0.75~0.61(m,6H).
19F-NMR(376MHz,Chloroform-d) δ(ppm):-55.26,-82.32(dt,J=23.2,10.6Hz),-82.84,-88.07,-90.17(d,J=8.6Hz),-114.18,-125.24(d,J=16.1Hz),-126.51.
【0117】
[例12:化合物(IV)の合成]
国際公開2017/038830号の実施例7に記載の方法に従い、下記化合物(IV)を得た。
CF-O-(CFCFO-CFCFCFCFO)n4(CFCFO)-CFCFCF-CHOCH-C{CHCHCHSi(OMe))}・・・式(IV)
繰り返し単位数n4の平均値は13である。
【0118】
[合成例9:化合物(5-1)の合成]
CuCl(16.0mg)、1-フェニル-1-プロピン(0.052g)、1,3-ビストリフルオロメチルベンゼン(24mL)、前記化合物(1-2)(4.00g)を加えた後、前記化合物(B2-1)(5.0mL,1.0M)を加えた。室温で撹拌した後、1M塩酸で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、溶媒を留去し、AC-6000を加えた。MeOHで洗浄した後、シリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーを行うことで、下記化合物(5-1)を0.139g得た。
【0119】
【化23】
繰り返し単位の平均値(n5):10
【0120】
化合物(5-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(400MHz,Chloroform-d) δ(ppm):5.77(ddt,J=14.9,10.7,7.4Hz,3H),5.07~4.99(m,6H),2.19~2.05(m,2H),1.97(d,J=7.4Hz,6H),1.59~1.50(m,2H).
19F-NMR(376MHz,Chloroform-d) δ(ppm):-55.29,-82.90,-88.13,-90.24(d,J=8.0Hz),-114.62,-125.34,-126.49.
【0121】
[例13:化合物(V)の合成]
AC-2000(0.89g)、上記化合物(5-1)(0.139g)、白金/1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(白金含有量2%,5.5mg)、アニリン(0.8mg)、トリメトキシシラン(22.7mg)を加え、40℃で撹拌した後、溶媒を減圧留去することで、下記含フッ素エーテル化合物(V)を0.145g得た。前記GPC法により求めた化合物(V)のMw/Mnは1.07であった。
【0122】
【化24】
繰り返し単位の平均値(n5):10
【0123】
化合物(V)のNMRスペクトル;
H-NMR(400MHz,Chloroform-d) δ(ppm):3.60(s,27H),2.23~1.95(m,2H),1.63~1.28(m,14H),0.67(t,J=7.6Hz,6H).
19F-NMR(376MHz,Chloroform-d) δ(ppm):-55.33,-82.95,-88.17,-90.13~-90.40(m),-114.07~-114.32(m),-125.38,-126.04.
【0124】
[例14:化合物(B1-5)の合成]
THF(33mL)、前記化合物(B-3)(1.66g)、トリフェニルホスフィン(2.88g)、四臭化炭素(3.64g)を加え、10℃で撹拌した。ヘキサン(30mL)を加え、ろ過、濃縮後、蒸留して、下記化合物(B1-5)を1.06g得た。
【0125】
【化25】
【0126】
化合物(B1-5)のNMRスペクトル;
H-NMR(400MHz,Chloroform-d) δ(ppm):5.74(ddt,J=16.7,10.5,7.5Hz,3H),5.18~5.01(m,6H),3.24(s,2H),2.06(dt,J=7.5,1.1Hz,6H).
【0127】
前記化合物(B1-1)の代わり上記化合物(B1-5)を用いた以外は、前記例2、前記合成例9、及び前記例13と同様の手順を行うことにより、上記化合物(V)が合成できることを確認した。
【0128】
[合成例10:化合物(B-4)の合成]
パラホルムアルデヒド(0.489g)、THF(9.5mL)を加えた後、前記化合物(B2-1)(20mL,0.9M)を加えた。室温で撹拌した後、1M塩酸を加えた。ジクロロメタン抽出したのち、硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、溶媒を留去し、シリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーを行うことで、下記化合物(OH体)を1.98g得た。
【0129】
【化26】
【0130】
化合物(B-4)のNMRスペクトル;
H-NMR(400MHz,Chloroform-d) δ(ppm):5.80(ddt,J=16.8,10.4,7.4Hz,3H),5.14~4.91(m,6H),3.74~3.60(m,2H),1.99(dt,J=7.4,1.2Hz,6H),1.61~1.45(m,2H).
【0131】
[例15:化合物(B1-6)の合成]
アセトニトリル(22mL)、前記化合物(2-3)(1.98g)、トリフェニルホスフィン(3.75g)、四塩化炭素(2.00g)を加え、90℃で撹拌した。濃縮後、酢酸エチル/ヘキサンを加え撹拌した。ろ過、濃縮後、シリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーを行うことで、下記化合物(B1-6)を1.73g得た。
【0132】
【化27】
【0133】
化合物(B1-6)のNMRスペクトル;
H-NMR(400MHz,Chloroform-d) δ(ppm):5.84~5.69(m,3H),5.12~4.98(m,6H),3.55~3.46(m,2H),1.98(dt,J=7.4,1.2Hz,6H),1.76~1.68(m,2H).
【0134】
[例16:化合物(B2-6)の合成]
マグネシウム(0.099g)にTHF(1.3mL)、ヨウ素(9.0mg)を加えて、室温で撹拌した。前記化合物(B1-6)(0.570g)のTHF(1.3mL)溶液を加え、加熱還流することで、下記化合物(B2-6)の溶液(1.0M)を調製した。
【0135】
【化28】
【0136】
[合成例11:化合物(6-1)の合成]
CuCl(4.0mg)、1-フェニル-1-プロピン(0.116g)、1,3-ビストリフルオロメチルベンゼン(10mL)、前記化合物(1-2)(1.01g)を加えた後、前記化合物(B2-6)(1.6mL,1.0M)を加えた。室温で撹拌した後、1M塩酸で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、溶媒を留去し、AC-6000を加えた。MeOHで洗浄した後、シリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーを行うことで、下記化合物(6-1)を0.110g得た。
【0137】
【化29】
繰り返し単位の平均値(n6):11
【0138】
化合物(6-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(400MHz,Chloroform-d) δ(ppm):5.85~5.71(m,3H),5.07~4.94(m,6H),2.04~1.78(m,8H),1.64~1.38(m,2H),1.32~1.05(m,2H).
19F-NMR(376MHz,Chloroform-d) δ(ppm):-55.28,-82.40,-82.86,-88.09,-90.20(d,J=9.6Hz),-114.25,-125.29,-126.55.
【0139】
[例17:化合物(VI)の合成]
AC-2000(0.89g)、上記化合物(6-1)(0.110g)、白金/1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(白金含有量2%,5.3mg)、アニリン(0.9mg)、トリメトキシシラン(22.7mg)を加え、40℃で撹拌した後、溶媒を減圧留去することで、下記含フッ素エーテル化合物(VI)を0.109g得た。前記GPC法により求めた化合物(VI)のMw/Mnは1.08であった。
【0140】
【化30】
繰り返し単位の平均値(n6):11
【0141】
化合物(VI)のNMRスペクトル;
H-NMR(400MHz,Chloroform-d) δ(ppm):3.58(s,27H),2.23~1.98(m,2H),1.64~1.20(m,16H),0.79~0.58(m,6H).
19F-NMR(376MHz,Chloroform-d) δ(ppm):-55.28,-82.90,-88.13,-90.11~-90.30(m),-114.01~-114.29(m),-125.31,-125.99.
【0142】
[例18:化合物(B1-7)の合成]
THF(44mL)、前記化合物(B-3)(4.00g)、トリフェニルホスフィン(7.64g)、四臭化炭素(8.66g)を加え、0℃で撹拌した。ヘキサン(10mL)を加え、ろ過、濃縮後、シリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーを行うことで、下記化合物(B1-7)を3.36g得た。
【0143】
【化31】
【0144】
化合物(B1-7)のNMRスペクトル;
H-NMR(400MHz,Chloroform-d) δ(ppm):5.79(ddt,J=16.8,10.2,7.4Hz,3H),5.18~4.98(m,6H),3.48~3.29(m,2H),2.05~1.93(m,6H),1.89~1.78(m,2H).
【0145】
前記化合物(B1-6)の代わり上記化合物(B1-7)を用いた以外は、前記例16、前記合成例11、及び前記例17と同様の手順を行うことにより、上記化合物(VI)が合成できることを確認した。
【0146】
[例19:化合物(B1-8)の合成]
1-ブロモ-2-クロロエタン(2.90g)、1-フェニル-1-プロピン(0.235g)、CuCl(0.055g)を加え0℃で撹拌した。前記化合物(B2-1)(0.97M,7.0mL)を加え1時間撹拌した。1M塩酸を加え、ジクロロメタンで抽出し、硫酸ナトリウムを加えた。ろ過、濃縮後、蒸留によって、下記化合物(B1-8)を2.32g得た。
【0147】
【化32】
【0148】
化合物(B1-8)のNMRスペクトル;
H-NMR(400MHz,Chloroform-d) δ(ppm):5.77(ddt,J=16.8,10.4,7.4Hz,3H),5.07~4.96(m,6H),3.45(t,J=6.7Hz,2H),1.96(dt,J=7.4,1.2Hz,6H),1.78~1.65(m,2H),1.33~1.24(m,2H).
【0149】
[例20:化合物(B2-8)の合成]
マグネシウム(0.174g)にTHF(2.6mL)、ヨウ素(0.013g)を加えて、室温で撹拌した。前記化合物(B1-8)(1.21g)のTHF(2.6mL)溶液を加え、加熱還流することで、下記化合物(B2-8)の溶液(1.0M)を調製した。
【0150】
【化33】
【0151】
[合成例12:化合物(7-1)の合成]
CuCl(6.4mg)、1-フェニル-1-プロピン(0.018g)、1,3-ビストリフルオロメチルベンゼン(23mL)、前記化合物(1-2)(1.50g)を加えた後、前記化合物(B2-8)(4.5mL,1.0M)を加えた。室温で撹拌した後、1M塩酸で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、溶媒を留去し、AC-6000を加えた。MeOHで洗浄した後、シリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーを行うことで、下記化合物(7-1)を0.126g得た。
【0152】
【化34】
繰り返し単位の平均値(n7):12
【0153】
化合物(7-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(400MHz,Chloroform-d) δ(ppm):5.87~5.68(m,3H),5.06~4.92(m,6H),2.16~1.92(m,8H),1.62~1.50(m,2H),1.41~1.34(m,2H),1.28~1.19(m,2H)
19F-NMR(376MHz,Chloroform-d) δ(ppm):-55.23,-82.33,-82.78,-88.02,-90.15,-114.17,-125.21,-126.55.
【0154】
[例21:化合物(VII)の合成]
AC-2000(0.89g)、上記化合物(7-1)(0.126g)、白金/1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(白金含有量2%,5.5mg)、アニリン(1.8mg)、トリメトキシシラン(22.7mg)を加え、40℃で撹拌した後、溶媒を減圧留去することで、下記含フッ素エーテル化合物(VII)を0.111g得た。前記GPC法により求めた化合物(VII)のMw/Mnは1.07であった。
【0155】
【化35】
繰り返し単位の平均値(n7):12
【0156】
化合物(VII)のNMRスペクトル;
H-NMR(400MHz,Chloroform-d) δ(ppm):3.59(s,27H),2.18~1.93(m,2H),1.70~1.19(m,18H),0.77~0.61(m,6H).
19F-NMR(376MHz,Chloroform-d) δ(ppm):-55.28,-82.60(d,J=22.0Hz),-82.78,-88.11,-90.21,-114.11,-125.32,-126.11.
【0157】
[合成例13:化合物(8-1)の合成]
FLUOROLINK D4000(ソルベイスペシャルティポリマーズ社製)(4.03g)、2,6-ルチジン(0.759g),AE-3000(28.0g)を加え、0℃で撹拌した。無水トリフルオロメタンスルホン酸(0.987g)を加えた後、室温で撹拌した。水で洗浄した後、溶媒を留去し、シリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーを行うことで、下記化合物(8-1)を3.56g得た。
【0158】
【化36】
ただし、p8の平均値:22,q8の平均値:25
【0159】
化合物(8-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(400MHz,Chloroform-d) δ(ppm):4.89(q,J=8.4Hz,1H).
【0160】
[合成例14:化合物(8-2)の合成]
CuCl(7.0mg)、1-フェニル-1-プロピン(0.026g)、1,3-ビストリフルオロメチルベンゼン(15mL)、前記化合物(8-1)(1.62g)を加えた後、前記化合物(B1-2)(4.0mL,1.0M)を加えた。室温で撹拌した後、1M塩酸で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、溶媒を留去し、AC-6000を加えた。メタノールで洗浄後、シリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーを行うことで、下記化合物(8-2)を0.201g得た。
【0161】
【化37】
ただし、p8の平均値:22,q8の平均値:25
【0162】
化合物(8-2)のNMRスペクトル;
H-NMR(400MHz,Chloroform-d) δ(ppm):5.90~5.66(m,6H),5.07~4.90(m,12H),2.19~1.92(m,16H),1.70~1.10(m,16H).
【0163】
[例21:化合物(VIII)の合成]
AC-2000(1.2g)、上記化合物(8-2)(0.201g)、白金/1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(白金含有量2%,7.0mg)、アニリン(1.4mg)、トリメトキシシラン(51.7mg)を加え、40℃で18時間撹拌した後、溶媒を減圧留去することで、下記含フッ素エーテル化合物(VIII)を0.188g得た。前記GPC法により求めた化合物(VIII)のMw/Mnは1.11であった。
【0164】
【化38】
ただし、p8の平均値:22,q8の平均値:25
【0165】
化合物(VIII)のNMRスペクトル;
H-NMR(400MHz,Chloroform-d) δ(ppm):3.61(s,54H),2.17~1.90(m,4H),1.70~1.14(m,40H),0.74~0.59(m,12H).
【0166】
[合成例15:化合物(9-1)の合成]
国際公開第2017/038830号の例1-6に記載の方法に従い、下記化合物(9-1)を合成した。
CFCFCF-O-(CFCFO)(CFCFO){(CFO)p9(CFCFO)q9}-CF-CHOSOCF ・・・式(9-1)
ただし、p9の平均値:22,q9の平均値:24
【0167】
[合成例16:化合物(9-2)の合成]
CuCl(7.0mg)、1-フェニル-1-プロピン(0.026g)、1,3-ビストリフルオロメチルベンゼン(15mL)、前記化合物(9-1)(4.03g)を加えた後、前記化合物(B1-2)(4.0mL,1.0M)を加えた。50℃で終夜撹拌した後、1M塩酸で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、溶媒を留去し、AC-6000を加えた。メタノールで洗浄後、シリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーを行うことで、下記化合物(9-2)を0.246g得た。
【0168】
【化39】
ただし、p9の平均値:22,q9の平均値:24
【0169】
化合物(9-2)のNMRスペクトル;
1H-NMR(400MHz,Chloroform-d) δ(ppm):5.88~5.67(m,3H),5.06~4.90(m,6H),2.20~1.91(m,8H),1.71~1.07(m,8H).
【0170】
[例22:化合物(IX)の合成]
AC-2000(1.5g)、上記化合物(9-2)(0.246g)、白金/1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(白金含有量2%,3.9mg)、アニリン(1.1mg)、トリメトキシシラン(24.4mg)を加え、40℃で18時間撹拌した後、溶媒を減圧留去することで、下記含フッ素エーテル化合物(IX)を0.244g得た。前記GPC法により求めた化合物(IX)のMw/Mnは1.10であった。
【0171】
【化40】
ただし、p9の平均値:22,q9の平均値:24
【0172】
化合物(IX)のNMRスペクトル;
H-NMR(400MHz,Chloroform-d) δ(ppm):3.60(s,27H),2.18~1.91(m,2H),1.71~1.14(m,20H),0.73~0.60(m,6H).
【0173】
[合成例17:化合物(B-5)の合成]
THF(20mL)、ジイソプロピルアミン(4.2mL)を加えた後、溶液を-78℃まで冷却した。n-ブチルリチウムヘキサン溶液(2.76M,9.9mL)を加え、0℃まで昇温した。撹拌した後、-78℃まで冷却し、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)のTHF溶液を調製した。上記化合物(B-1)(4.00g)をTHF溶液に加え、撹拌した後、4-ブロモ-1-ブテン(3.85g)を加え、室温で終夜撹拌した。0℃に冷却した後、1M塩酸(30mL)を加え、THFを減圧留去した。ジクロロメタンで抽出した後、硫酸ナトリウムを加えた。ろ過後、溶媒を留去し、シリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーを行うことで、化合物(B-5)を4.01g得た。
【0174】
【化41】
【0175】
化合物(B-5)のNMRスペクトル;
H-NMR(400MHz,Chloroform-d) δ(ppm):5.84~5.60(m,3H),5.11~5.03(m,4H),4.99(dq,J=17.1,1.6Hz,1H),4.92(ddt,J=10.1,2.0,1.2Hz,1H),4.13(q,J=7.1Hz,2H),2.40~2.26(m,4H),2.01~1.90(m,2H),1.65~1.58(m,2H),1.24(t,J=7.1Hz,3H).
【0176】
[合成例18:化合物(B-6)の合成]
上記化合物(B-5)(4.01g)をTHF(40mL)に溶解させ、0℃に冷却した。水素化リチウムアルミニウムのTHF溶液(27mL)を加え、40℃で撹拌した。水、15%水酸化ナトリウム水溶液を加え、室温で撹拌した。ろ過後、溶媒を留去することで、下記化合物(B-6)を2.41g得た。
【0177】
【化42】
【0178】
化合物(B-5)のNMRスペクトル;
H-NMR(400MHz,Chloroform-d) δ(ppm):5.91~5.71(m,3H),5.14~5.04(m,4H),5.01(dq,J=17.1,1.6Hz,1H),4.92(ddt,J=10.1,2.2,1.2Hz,1H),3.40(d,J=6.2Hz,2H),2.07~2.00(m,6H),1.37~1.31(m,2H).
【0179】
[例23:化合物(B1-9)の合成]
アセトニトリル(7mL)、前記化合物(B-6)(2.30g)、トリフェニルホスフィン(3.61g)、四塩化炭素(1.87g)を加え、90℃で撹拌した。濃縮後、酢酸エチル/ヘキサンを加え撹拌した。ろ過、濃縮後、蒸留によって、下記化合物(B1-9)を1.85g得た。
【0180】
【化43】
【0181】
化合物(B1-9)のNMRスペクトル;
H-NMR(400MHz,Chloroform-d) δ(ppm):5.87~5.66(m,3H),5.15~5.06(m,4H),5.01(dq,J=17.1,1.7Hz,1H),4.94(ddt,J=10.1,1.9,1.2Hz,1H),3.35(s,2H),2.11~1.98(m,6H),1.42~1.31(m,2H).
【0182】
[例24:化合物(B2-9)の合成]
マグネシウム(0.182g)にTHF(3.8mL)、ヨウ素(0.031g)を加えて、室温で撹拌した。前記化合物(B1-9)(1.12g)のTHF(3.8mL)溶液を加え、2時間加熱還流することで、下記化合物(B2-9)の溶液(0.8M)を調製した。
【0183】
【化44】
【0184】
[合成例19:化合物(10-1)の合成]
CuCl(16.0mg)、1-フェニル-1-プロピン(0.04g)、1,3-ビストリフルオロメチルベンゼン(17mL)、前記化合物(1-2)(4.02g)を加えた後、前記化合物(B2-9)(4.3mL,0.8M)を加えた。50℃で撹拌した後、1M塩酸で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、溶媒を留去し、AC-6000を加えた。MeOHで洗浄した後、シリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーを行うことで、下記化合物(10-1)を0.35g得た。
【0185】
【化45】
繰り返し単位の平均値(n10):11
【0186】
化合物(B1-9)のNMRスペクトル;
H-NMR(400MHz,Chloroform-d) δ(ppm):5.84~5.66(m,3H),5.12~4.81(m,6H),2.19~1.90(m,8H),1.60~1.51(m,2H),1.33~1.26(m,2H).
19F-NMR(376MHz,Chloroform-d) δ(ppm):-55.09(t,J=9.1Hz),-81.95~-82.21(m),-82.59,-87.4~-88.17(m),-89.96(q,J=9.0Hz),-114.25,-124.99,-126.19.
【0187】
[例25:化合物(X)の合成]
AC-2000(1.55g)、上記化合物(10-1)(0.257g)、白金/1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(白金含有量2%,9.9mg)、アニリン(7.4mg)、トリメトキシシラン(36.8mg)を加え、40℃で撹拌した後、溶媒を減圧留去することで、下記含フッ素エーテル化合物(X)を0.253g得た。前記GPC法により求めた化合物(X)のMw/Mnは1.06であった。
【化46】
繰り返し単位の平均値(n10):11
【0188】
化合物(X)のNMRスペクトル;
H-NMR(400MHz,Chloroform-d) δ(ppm):3.59(d,J=2.0Hz,27H),2.19~1.98(m,2H),1.62~1.20(m,16H),0.77~0.58(m,6H).
19F-NMR(376MHz,Chloroform-d) δ(ppm):-55.08(t,J=9.2Hz),-81.77~-82.86(m),-87.43~-88.18(m),-89.81~-90.18(m),-113.67~-114.24(m),-124.67~-125.10(m),-125.81
【0189】
[例26:化合物(B1-10)の合成]
アセトニトリル(60mL)、1,6-Heptadien-4-ol(10.0g)、トリフェニルホスフィン(30.6g)、四塩化炭素(16.0g)を加え、90℃で撹拌した。反応終了後、蒸留によって、化合物(B1-10)を1.86g得た。
【0190】
【化47】
【0191】
化合物(B1-10)のNMRスペクトル;
H-NMR(400MHz,Chloroform-d) δ(ppm):5.84(ddt,J=17.6,9.7,6.9Hz,2H),5.18~5.05(m,4H),3.94(tt,J=7.4,5.4Hz,1H),2.59~2.36(m,4H).
【0192】
[例27:化合物(B2-10)の合成]
マグネシウム(0.424g)にTHF(6.5mL)、ヨウ素(36.0mg)を加えて、室温で撹拌した。前記化合物(B1-10)(1.86g)のTHF(6.5mL)溶液を加え、加熱還流することで、下記化合物(B2-10)の溶液(0.86M)を調製した。
【0193】
【化48】
【0194】
[例28:化合物(B1-11)の合成]
1-ブロモ-3-クロロプロパン(1.60g)、1-フェニル-1-プロピン(0.118g)、CuCl(0.027g)を加え0℃で撹拌した。前記化合物(B2-10)(0.86M,14.0mL)を加え撹拌した。1M塩酸を加え、ジクロロメタンで抽出し、硫酸ナトリウムを加えた。ろ過、濃縮後、シリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーを行った。さらに蒸留を行い、化合物(B1-11)を1.28g得た。
【0195】
【化49】
【0196】
化合物(B1-11)のNMRスペクトル;
H-NMR(400MHz,Chloroform-d) δ(ppm):5.84~5.66(m,2H),5.09~4.96(m,4H),3.51(t,J=6.8Hz,2H),2.15~2.01(m,4H),1.86~1.71(m,2H),1.59~1.47(m,1H),1.45~1.35(m,2H).
【0197】
[例29:化合物(B2-11)の合成]
マグネシウム(0.211g)にTHF(4.5mL)、ヨウ素(39.0mg)を加えて、室温で撹拌した。前記化合物(B1-11)(1.20g)のTHF(4.5mL)溶液を加え、加熱還流することで、下記化合物(B2-11)の溶液(0.63M)を調製した。
【0198】
【化50】
【0199】
[合成例20:化合物(11-1)の合成]
CuCl(27.0mg)、1-フェニル-1-プロピン(0.070g)、1,3-ビストリフルオロメチルベンゼン(29mL)、前記化合物(1-2)(4.30g)を加えた後、前記化合物(B2-11)(9.5mL,0.63M)を加えた。室温で撹拌した後、1M塩酸で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、溶媒を留去した後、シリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーを行うことで、下記化合物(11-1)を0.266g得た。
【0200】
【化51】
繰り返し単位の平均値(n):13
【0201】
[例30:化合物(XI)の合成]
AC-2000(1.55g)、上記化合物(11-1)(0.257g)、白金/1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(白金含有量2%,9.9mg)、アニリン(7.4mg)、トリメトキシシラン(36.8mg)を加え、40℃で撹拌した後、溶媒を減圧留去することで、下記含フッ素エーテル化合物(XI)を0.253g得た。前記GPC法により求めた化合物(XI)のMw/Mnは1.07であった。
【0202】
【化52】
繰り返し単位の平均値(n):13
【0203】
化合物(XI)のNMRスペクトル;
H-NMR(400MHz,Chloroform-d) δ(ppm):5.72(ddt,J=17.3,10.2,7.1Hz,2H),5.06~4.84(m,4H),2.18~1.88(m,6H),1.66~1.14(m,7H).
19F-NMR(376MHz,Chloroform-d) δ(ppm):-56.65(t,J=9.2Hz),-83.60~-83.81(m),-84.14,-89.06~-89.69(m),-91.50(q,J=9.0Hz),-115.54,-126.56,-127.97.
【0204】
[例31~41:物品の製造及び評価]
上記化合物I~XIを用いて基材を表面処理し、例31~41の物品を得た。表面処理方法として、各例について下記のドライコーティング法及びウェットコーティング法をそれぞれ用いた。基材としては化学強化ガラスを用いた。得られた物品について、下記の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0205】
(ドライコーティング法)
ドライコーティングは、真空蒸着装置(ULVAC社製、VTR350M)を用いて行った(真空蒸着法)。各化合物の0.5gを真空蒸着装置内のモリブデン製ボートに充填し、真空蒸着装置内を1×10-3Pa以下に排気した。化合物を配置したボートを昇温速度10℃/分以下の速度で加熱し、水晶発振式膜厚計による蒸着速度が1nm/秒を超えた時点でシャッターを開けて基材の表面への製膜を開始させた。膜厚が約50nmとなった時点でシャッターを閉じて基材の表面への製膜を終了させた。化合物が堆積された基材を、200℃で30分間加熱処理し、ジクロロペンタフルオロプロパン(AGC社製、AK-225)にて洗浄して、基材の表面に表面層を有する物品を得た。
【0206】
(ウェットコーティング法)
各化合物と、媒体としてのCOC(3M社製、ノベック(登録商標)7200)とを混合して、固形分濃度0.05%のコーティング液を調製した。コーティング液に基材をディッピングし、30分間放置後、基材を引き上げた(ディップコート法)。
塗膜を200℃で30分間乾燥させ、AK-225にて洗浄して、基材の表面に表面層を有する物品を得た。
【0207】
(評価方法)
<接触角の測定方法>
表面層の表面に置いた約2μLの蒸留水又はn-ヘキサデカンの接触角を、接触角測定装置(協和界面科学社製、DM-500)を用いて測定した。表面層の表面における異なる5箇所で測定し、その平均値を算出した。接触角の算出には2θ法を用いた。
【0208】
<初期接触角>
表面層について、初期水接触角及び初期n-ヘキサデカン接触角を前記測定方法で測定した。評価基準は下記のとおりである。
・式(A1)で表される含フッ素エーテル化合物の初期水接触角:
〇(良) :115度以上である。
×(不可):115度未満である。
・式(A2)で表される含フッ素エーテル化合物の初期水接触角:
〇(良) :115度以上である。
△(可) :105度以上115度未満である。
×(不可):105度未満である。
【0209】
<耐摩擦性(スチールウール)>
表面層について、JIS L0849:2013(ISO 105-X12:2001)に準拠して往復式トラバース試験機(ケイエヌテー社製)を用い、スチールウールボンスター(♯0000)を圧力:98.07kPa、速度:320cm/分で1万回往復させた後、前記方法により水接触角を測定した。摩擦後の撥水性(水接触角)の低下が小さいほど摩擦による性能の低下が小さく、耐摩擦性に優れる。評価基準は下記のとおりである。
○(良) :1万回往復後の水接触角の変化が5度以下である。
×(不可):1万回往復後の水接触角の変化が5度超である。
【0210】
<耐光性>
表面層に対して、卓上型キセノンアークランプ式促進耐光性試験機(製品名:SUNTEST XLS+、東洋精機社製)を用いて、ブラックパネル温度:63℃にて、光線(650W/m、300~700nm)を500時間照射した後、前記方法により水接触角を測定した。評価基準は下記のとおりである。
○(良) :促進耐光性試験後の水接触角の変化が5度以下である。
×(不可):促進耐光性試験後の水接触角の変化が5度超である。
【0211】
【表1】
【0212】
表1に示される通り、化合物IVであっても初期接触角は良好であったが、摩擦試験後及び耐光試験後における水接触角の低下が確認された。一方、上記連結基にエーテル結合(-C-O-C-)を有しない含フッ素エーテル化合物I~III及びV~XIは、摩擦試験後及び耐光試験後においても水接触角の低下が抑制されており、優れた耐久性を有することが示された。
【0213】
この出願は、2019年9月20日に出願された日本出願特願2019-171550を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。