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  • 特許-接合体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 5/06 20060101AFI20240827BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C09J5/06
C09J163/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022202511
(22)【出願日】2022-12-19
(65)【公開番号】P2024087602
(43)【公開日】2024-07-01
【審査請求日】2023-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 信行
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/172863(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/209116(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/014503(WO,A1)
【文献】特開昭55-12147(JP,A)
【文献】特開2019-73663(JP,A)
【文献】特開2013-256037(JP,A)
【文献】特開2011-195794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基材Aと、熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂から選択される少なくとも一種である非晶性熱可塑性樹脂を含むフィルムと、金属基材Bを、この順で接合してなる接合体の製造方法であって、
前記非晶性熱可塑性樹脂の含有量は、前記フィルム中の樹脂成分のうち、80質量%以上であり、
フィルムの全量100体積%中における樹脂成分の含有量が、50体積%以上であり、
前記熱可塑性エポキシ樹脂が、(a)2官能エポキシ樹脂モノマーもしくはオリゴマーと(b)フェノール性水酸基、カルボキシル基、メルカプト基、イソシアネート基及びシアネートエステル基からなる群より選ばれる同一の又は異なる2つの官能基を有する2官能性化合物との重合体であり(ただし、ビスフェノール類と、エピクロルヒドリンより合成されるポリヒドロキシポリエーテルは除く)、
フェノキシ樹脂が、ビスフェノール類と、エピクロルヒドリンより合成されるポリヒドロキシポリエーテルであり、
前記フィルム、前記金属基材A及び前記金属基材Bを、各々別々に準備し、
ここで準備された前記フィルムは、厚さが10μm~1mmであり、次いで、
前記フィルムを前記金属基材Aに接面させた状態で、前記フィルムを溶融後固化させることにより、前記金属基材Aと前記フィルムを接合する第1の接合工程と、
前記金属基材Aに接合した前記フィルムを金属基材Bに接面させた状態で、前記フィルムを溶融後固化させることにより、前記金属基材Aと前記金属基材Bを接合する第2の接合工程を有し、
前記樹脂成分が、エポキシ当量1,600g/eq.以上もしくはエポキシ基を含まず、かつ、融解熱が15J/g以下である、接合体の製造方法。
【請求項2】
前記第1の接合工程において、前記フィルムを、100~300℃の接合温度で溶融後固化させる、請求項1に記載の接合体の製造方法。
【請求項3】
前記第2の接合工程において、前記フィルムを、接触加熱、温風加熱、熱プレス、赤外線加熱、熱板溶着、超音波溶着、振動溶着及び高周波誘導溶着からなる群より選ばれる少なくとも1種により溶融後固化させる、請求項1に記載の接合体の製造方法。
【請求項4】
前記第2の接合工程において、前記フィルムの融点以上の温度で前記フィルムを溶融後固化させる、請求項1に記載の接合体の製造方法。
【請求項5】
前記第2の接合工程において、加熱温度100~400℃、及び0.01~20MPaの加圧下で前記フィルムを溶融後固化させる、請求項1に記載の接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異種の金属材であっても強固に接合する用途に好適な、接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製品の軽量化及び高性能化等の観点より、自動車部品、医療機器、家電製品等、各種分野で部品のマルチマテリアル化が進んでいる。マルチマテリアル化とは、機能や材質の異なる材料(以下、異種材という)を併用することで材料の軽量化や高強度化を図る手法である。マルチマテリアル化の実現には、異種材を強固に接合する技術が不可欠である。
【0003】
異種材を強固に接合する手段として、液状型接着剤である熱硬化型エポキシ樹脂系接着剤(特許文献1等)が広く使用されている。
液状型接着剤を用いた接合は、液状の樹脂組成物を塗布する塗布工程と、塗布後に前記樹脂組成物を重合反応させて硬化させる硬化工程が必要となる。
このため、液状型接着剤を用いて接合を行う場合、塗布工程においては樹脂組成物の塗布に時間がかかり、硬化工程においては重合反応に時間がかかり(すなわち、接合プロセス時間が長く)、利便性に欠けるという問題がある。
本明細書において、接合プロセス時間とは、接合体を構成する少なくとも一種の基材とフィルムの接触時を始点、接合体の作製の完了時を終点として、始点から終点までの時間を意味する。例えば基材に対してフィルムを載せる工程、基材同士を接合する(例えば、フィルムを硬化させる)のに要する時間を含む。
【0004】
エポキシ樹脂組成物を基材に含浸又は塗工後、半硬化(Bステージ化)させ、Bステージ状の接着剤層付き積層体として、接合体の製造に用いる技術も開示されている(特許文献2等)。
しかし、Bステージ状の接着剤を用いた接合も、半硬化状態の接着剤層を重合反応させて硬化させる硬化工程が必要となり、接合プロセス時間が長いという問題がある。
また、Bステージ状の接着剤は、貯蔵安定性が悪く、常温での長期保管ができず、低温での保管が必要であり、オープンタイムが短く利便性に欠けるという問題がある。
本明細書においてオープンタイムとは、金属基材Aの上に接合剤を塗布もしくは載せた後、金属基材Bを載せ終えるまでの制限時間を意味する。オープンタイム内であれば、接合剤の接着力が低下せず、十分な接着力で金属基材Aと金属基材Bを貼り合わせることができる。オープンタイムが長いほど、金属基材Aの上に接合剤を塗布もしくは載せた後、金属基材Bを載せ終えるまでの制限時間が長くなり、利便性が高い。
【0005】
異種材を接合する手段として、熱可塑性接着剤組成物(以下、ホットメルト接着剤)も使用されている(特許文献3等)。ホットメルト接着剤を用いることにより、具体的には、ホットメルト接着剤は重合反応を伴わない相変化を利用して接着を行うものであるため、塗布工程は不要であって、硬化時間が早く(すなわち、接合プロセス時間が短く)、利便性に優れる。また、常温での長期保管も可能であって、オープンタイムが長い点においても利便性に優れる。
【0006】
しかし、従来のホットメルト接着剤は、溶融粘度を低くするために、結晶性の樹脂からなるか、もしくは、結晶性の樹脂を含む樹脂からなるため、接着樹脂内の凝集力が高く、基材への十分な相互作用を持つことができない。また、溶融して接着する際に、高温においては低粘度になり、接着面から流出しやすく、また粘度の制御がしにくいので膜厚が安定しない。これらの要因により、従来のホットメルト接着剤では高い接着力を安定して得ることができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2019-157018号公報
【文献】特開平10-17685号公報
【文献】特開平10-168417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、異種の金属材であっても強固に接合する用途に好適な、接合体の製造方法であって、接合プロセス時間が短く、オープンタイムが長く、かつ、接合性に優れる接合体を製造し得る、接合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は鋭意検討の結果、所定のフィルムを金属基材Aに接面させた状態で、前記フィルムを溶融後固化させることにより、前記金属基材Aと前記フィルムを接合する第1の接合工程と、前記金属基材Aに接合した前記フィルムを金属基材Bに接面させた状態で、前記フィルムを溶融後固化させることにより、前記金属基材Aと前記金属基材Bを接合する第2の接合工程を有することで、上記課題が解決できることを見出した。本発明は、当該知見に基づくものである。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[5]を提供するものである。
[1] 金属基材Aと、熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂から選択される少なくとも一種である非晶性熱可塑性樹脂を含むフィルムと、金属基材Bを、この順で接合してなる接合体の製造方法であって、
前記フィルムを前記金属基材Aに接面させた状態で、前記フィルムを溶融後固化させることにより、前記金属基材Aと前記フィルムを接合する第1の接合工程と、
前記金属基材Aに接合した前記フィルムを金属基材Bに接面させた状態で、前記フィルムを溶融後固化させることにより、前記金属基材Aと前記金属基材Bを接合する第2の接合工程を有し、
前記非晶性熱可塑性樹脂が、エポキシ当量1,600g/eq.以上もしくはエポキシ基を含まず、かつ、融解熱が15J/g以下である、接合体の製造方法。
[2] 前記第1の接合工程において、前記フィルムを、100~300℃の接合温度で溶融後固化させる、[1]に記載の接合体の製造方法。
[3] 前記第2の接合工程において、前記フィルムを、接触加熱、温風加熱、熱プレス、赤外線加熱、熱板溶着、超音波溶着、振動溶着及び高周波誘導溶着からなる群より選ばれる少なくとも1種により溶融後固化させる、[1]又は[2]に記載の接合体の製造方法。
[4] 前記第2の接合工程において、前記フィルムの融点以上の温度で前記フィルムを溶融後固化させる、[1]~[3]のいずれかに記載の接合体の製造方法。
[5] 前記第2の接合工程において、加熱温度100~400℃、及び0.01~20MPaの加圧下で前記フィルムを溶融後固化させる、[1]~[3]のいずれかに記載の接合体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、接合プロセス時間が短く、オープンタイムが長く、かつ、接合性に優れる接合体を製造し得る、接合体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態における接合体の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本明細書において、接合とは、物と物とを繋合わせることを意味し、接着及び溶着はその下位概念である。接着とは、テープや接着剤の様な有機材(熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等)を介して、2つの被着材(接着しようとするもの)を接合状態とすることを意味する。溶着とは、熱可塑性樹脂等の表面を熱によって溶融し、冷却することにより、分子拡散による絡み合いを生じさせて接合状態とすることを意味する。
【0014】
[接合体の製造方法]
本実施形態に係る接合体の製造方法は、金属基材Aと、熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂から選択される少なくとも一種である非晶性熱可塑性樹脂を含むフィルムと、金属基材Bを、この順で接合してなる接合体の製造方法であって、前記フィルムを前記金属基材Aに接面させた状態で、前記フィルムを溶融後固化させることにより、前記金属基材Aと前記フィルムを接合する第1の接合工程と、前記金属基材Aに接合した前記フィルムを金属基材Bに接面させた状態で、前記フィルムを溶融後固化させることにより、前記金属基材Aと前記金属基材Bを接合する第2の接合工程を有する。そして、前記金属基材Aは、金属及び無機物の少なくとも一種であり、前記非晶性熱可塑性樹脂が、エポキシ当量1,600g/eq.以上もしくはエポキシ基を含まず、かつ、融解熱が15J/g以下である。
フィルムは、樹脂成分を50質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上含むことがより好ましく、80質量%以上含むことが更に好ましく、90質量%以上含むことが特に好ましい。
【0015】
当該製造方法によると、前記金属基材Aと前記金属基材Bの接合は、熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂から選択される少なくとも一種である非晶性熱可塑性樹脂を含むフィルムの相変化(固体~液体~固体)を利用したものであり、化学反応を伴わないため、従来の熱硬化型のエポキシ樹脂よりも短時間で接合を完了することができ、また、オープンタイムも長い。
また、フィルムに含まれる熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂は、樹脂内の凝集力が低く、かつ水酸基を有しているため、基材との相互作用が強く、従来の結晶性のホットメルト接着剤よりも高い接合力で異種材を接合することができる。
また、当該製造方法は、第1の接合工程と第2の接合工程に工程を分けて接合する。このように分けることで、接合界面に適した温度で接合することができ、接合性に優れる接合体を製造することができる。また、加熱温度制御も工程を分けない場合に比べて容易となる。さらに、予め金属基材Aにフィルムを接合することで、金属基材Aと金属基材Bを精度よく接合することができ、接合箇所にズレが生じることを抑制することができる。
【0016】
<第1の接合工程>
第1の接合工程は、前記フィルムを前記金属基材Aに接面させた状態で、前記フィルムを溶融後固化させることにより、前記金属基材Aと前記フィルムを接合する工程である。
第1の接合工程で、金属基材Aと前記フィルムを予め接合することで、金属基材Aと金属基材Bを精度よく接合することができる。
なお、本明細書において、「固化」とは、常温で固体、即ち23℃の加圧のない状態下において流動性が無いことを意味する。ただし、第1の接合工程後のフィルムには、タック性があってもよい。
【0017】
前記フィルムを溶融させる方法としては、接触加熱、温風加熱、熱プレス、熱板溶着、赤外線加熱、超音波溶着、振動溶着及び高周波誘導溶着からなる群より選ばれる少なくとも1種の方法が挙げられる。中でも、製造容易性及び接合プロセス短縮の観点から、赤外線加熱が好ましい。
【0018】
フィルムを加熱により溶融させる場合、金属基材Aのフィルムとの接合面の温度を、100~300℃の温度で溶融させることが好ましく、より好ましくは120~250℃、更に好ましくは150℃~220℃である。100~300℃の温度とすることにより、前記フィルムが効率よく変形、溶融し接合面に有効に濡れ広がるため高い接合力が得られる。
【0019】
溶融したフィルムを固化させる方法としては、常温で放冷する方法又は冷却装置を用いて放冷する方法が挙げられる。なお、「常温」とは、5~30℃の範囲内の一般的な室温を意味する。中でも、製造容易性の観点から、常温で放冷する方法が好ましい。
【0020】
(フィルム)
フィルムは、熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂から選択される少なくとも一種である非晶性熱可塑性樹脂であって、エポキシ当量が1,600以上であり、融解熱が15J/g以下である非晶性熱可塑性樹脂を含む。
なお、本明細書において、「フィルム」とは、厚さが10μm~3mmのシート状物を意味する。
また、本実施の形態における非晶性熱可塑性樹脂とは、示差走査熱量計(DSC)を用いた測定において、融解熱が15J/g以下となる樹脂を意味する。ただし、融解に伴う吸熱ピークが検出限界以下、もしくはノイズと同等以下で分化できない場合も含む。
融解熱は、DSC(示差走査熱量計)の吸熱ピークの面積と、熱可塑性樹脂成分の重量から算出する。無機充填剤等がフィルム中に含まれる場合には、無機充填剤は除いた、熱可塑性樹脂成分の重量から算出する。具体的には、試料を2-10mg秤量し、アルミ製パンに入れ、DSC(株式会社リガク製DSC8231)を用いて23℃から10℃/minで200℃以上まで昇温してDSCカーブを得、次いでそのDSCカーブから求めた融解時の吸熱ピークの面積と、前記秤量値から算出することができる。
【0021】
フィルムに非晶性熱可塑性樹脂の特性を十分に付与する点から、前記非晶性熱可塑性樹脂の含有量は、フィルム中の樹脂成分のうち、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。
【0022】
非晶性熱可塑性樹脂の融解熱は、15J/g以下であり、11J/g以下であることが好ましく、7J/g以下であることがより好ましく、4J/g以下であることが更に好ましく、融解ピークが検出限界以下であることが最も好ましい。
非晶性熱可塑性樹脂のエポキシ当量は、1,600以上であり、2,000以上であることが好ましく、5,000以上であることがより好ましく、9,000以上であることが更に好ましく、検出限界以上であってエポキシ基が実質的に検出されないことが最も好ましい。なお、エポキシ当量が検出限界以上とは、後述のJIS K 7236:2001に基づきエポキシ当量を測定した際に、エポキシ基が検出されないことを意味する。
【0023】
エポキシ当量が1,600以上であり、融解熱が15J/g以下である非晶性熱可塑性樹脂を含むフィルムとして用いることにより、加熱時に、従来のホットメルト接着剤で見られるような急激な粘度低下は起こらず、200℃を超える高温度領域においても低粘度(0.001~100Pa・s)状態には至らない。このため当該フィルムは溶融した状態でも積層体から流れ出すことはなく、フィルムが溶融後固化して形成された接合層の厚みが安定して確保でき、高い接合力を安定して得ることができる。
【0024】
ここで言うエポキシ当量(エポキシ基1モルが含まれる前記熱可塑性樹脂の重量)は、接合前のフィルムに含まれる熱可塑性樹脂のエポキシ当量の値であり、JIS-K7236:2001に規定された方法で測定された値(単位「g/eq.」)である。具体的には、電位差滴定装置を用い、臭素化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液を加え、0.1mol/L過塩素酸-酢酸溶液を用い、溶媒希釈品(樹脂ワニス)は、不揮発分から固形分換算値としての数値を算出した値である。なお、2種以上の樹脂の混合物の場合はそれぞれの含有量とエポキシ当量から算出することもできる。
【0025】
フィルムに含まれる非晶性熱可塑性樹脂が融点を有する場合、融点は50~400℃であることが好ましく、60℃~350℃であることがより好ましく、70℃~300℃であることが更に好ましい。50~400℃の範囲に融点があることにより、前記フィルムが加熱により効率よく変形及び溶融し、接合面に有効に濡れ広がるため高い接合力が得られる。
本明細書において、熱可塑性樹脂の融点とは、DSCで測定される融解ピーク温度を意味する。なお、融解ピークが得られない場合や、融解熱が15J/g以下である場合は、ガラス転移点に70℃を足した温度を融点とする。ガラス転移点は、DSCで200℃まで昇温後、40℃以下に冷却し、さらに200℃まで加熱した2サイクル目のDSCカーブの降下開始時の温度を意味する。具体的には、実施例に記載の方法で測定される値である。
【0026】
従来の熱硬化性の接着剤では、接合体を解体することが困難であり、接合体を構成する異種材を分別してリサイクルすることが難しく(すなわち、リサイクル性に劣り)、また、接合体の製造工程において接合箇所のズレ等があった際や内容物や被着体に欠陥があり交換が必要な場合に貼り直しが難しく(すなわち、リペア性に劣り)、利便性に欠けるという問題があったが、前記フィルムは、熱で軟化・溶融させることができ、容易に剥離できるため、リサイクル性に優れる。また、前記フィルムは熱可塑性であるため、可逆的に軟化・溶融と硬化を繰り返すことができ、リペア性にも優れる。
【0027】
《熱可塑性エポキシ樹脂》
熱可塑性エポキシ樹脂は、(a)2官能エポキシ樹脂モノマーもしくはオリゴマーと(b)フェノール性水酸基、カルボキシル基、メルカプト基、イソシアネート基及びシアネートエステル基からなる群より選ばれる同一の又は異なる2つの官能基を有する2官能性化合物との重合体であることが好ましい。
かかる化合物を使用することにより、直鎖状のポリマーを形成する重合反応が優先的に進行して、所望の特性を具備する熱可塑性エポキシ樹脂を得ることが可能となる。
【0028】
前記(a)2官能エポキシ樹脂モノマーもしくはオリゴマーとは、分子内にエポキシ基を2個有するエポキシ樹脂モノマーもしくはオリゴマーをいう。
前記(a)の具体例として、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、2官能のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、2官能のナフタレン型エポキシ樹脂、2官能の脂環式エポキシ樹脂、2官能のグリシジルエステル型エポキシ樹脂(例えばジグリシジルフタレート、ジグリシジルテトラヒドロフタレート、ダイマー酸ジグリシジルエステルなど)、2官能のグリシジルアミン型エポキシ樹脂(例えばジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジンなど)、2官能の複素環式エポキシ樹脂、2官能のジアリールスルホン型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂(例えばヒドロキノンジグリシジルエーテル、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテルなど)、2官能のアルキレングリシジルエーテル系化合物(例えばブタンジオールジグリシジルエーテル、ブテンジオールジグリシジルエーテル、ブチンジオールジグリシジルエーテルなど)、2官能のグリシジル基含有ヒダントイン化合物(例えば1,3-ジグリシジル-5,5-ジアルキルヒダントイン、1-グリシジル-3-(グリシドキシアルキル)-5,5-ジアルキルヒダントインなど)、2官能のグリシジル基含有シロキサン(例えば1,3-ビス(3-グリシドキシプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、α,β-ビス(3-グリシドキシプロピル)ポリジメチルシロキサンなど)及びそれらの変性物などが挙げられる。これらのうち、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂が、反応性及び作業性の点から好ましい。
前記(b)のフェノール水酸基を持つ2官能性化合物としては、例えばカテコール、レゾルシン、ヒドロキノンなどのベンゼン環を1個有する一核体芳香族ジヒドロキシ化合物類、ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(ビスフェノールAD)などのビスフェノール類、ジヒドロキシナフタレンなどの縮合環を有する化合物、ジアリ
ルレゾルシン、ジアリルビスフェノールA、トリアリルジヒドロキシビフェニルなどのアリル基を導入した2官能フェノール化合物、ジブチルビスフェノールAなどが挙げられる。
前記(b)のカルボキシル基含有化合物の具体例としては、アジピン酸、コハク酸、マロン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸などが挙げられる。
前記(b)のメルカプト基を持つ2官能性化合物としては、例えば、エチレングリコールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオプロピオネートなどが挙げられる。
前記(b)のイソシアネート基含有の2官能性化合物の具体例としては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、へキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、及びトリレンジイソシアネート(TDI)などが挙げられる。
前記(b)のシアネートエステル基含有の2官能性化合物の具体例としては、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)エタン、及びビス(4-シアナトフェニル)メタンなどが挙げられる。
前記(b)のなかでもフェノール水酸基を持つ2官能性化合物が熱可塑性の重合物を得る観点から好ましく、フェノール性水酸基を2つ持ち、ビスフェノール構造もしくはビフェニル構造を持つ2官能性化合物が耐熱性及び接合性の観点から好ましく、ビスフェノールA、ビスフェノールFもしくはビスフェノールSが耐熱性及びコストの観点から好ましい。
【0029】
前記(a)がビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂であり、前記(b)がビスフェノールA、ビスフェノールFもしくはビスフェノールSである場合、前記(a)と(b)の重合により得られるポリマーは、パラフェニレン構造とエーテル結合を主骨格とし、それらをアルキレン基で連結した主鎖と、重付加により生成した水酸基が側鎖に配置された構造を有する。
パラフェニレン骨格からなる直鎖状の構造により、重合後のポリマーの機械的強度を高めることができるとともに、側鎖に配置された水酸基により、基材への密着性を向上させることができる。この結果、熱硬化性樹脂の作業性を維持しながら、高い接合強度を実現することができる。さらに、熱可塑性樹脂である場合は、熱で軟化・溶融させることによってリサイクル及びリペアが可能となり、熱硬化性樹脂における問題点であるリサイクル性及びリペア性を改善することができる。
【0030】
《フェノキシ樹脂》
フェノキシ樹脂は、ビスフェノール類と、エピクロルヒドリンより合成されるポリヒドロキシポリエーテルであり、熱可塑性を有する。フェノキシ樹脂の製造には、二価フェノール類とエピクロルヒドリンの直接反応による方法、二価フェノール類のジグリシジルエーテルと二価フェノール類の付加重合反応による方法が知られているが、本発明に用いられるフェノキシ樹脂はいずれの製法により得られるものであってもよい。二価フェノール類とエピクロルヒドリンの直接反応の場合は、二価フェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビフェノール、ビフェニレンジオール、フルオレンジフェニル等のフェノール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等の脂肪族グリコールが挙げられる。中でも、コストや接合性、粘度、耐熱性の観点から、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSが好ましい。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
フェノキシ樹脂は、エポキシ樹脂に類似の化学構造をもち、パラフェニレン構造とエーテル結合を主骨格とし、それらを連結した主鎖と、水酸基が側鎖に配置された構造を有する。
【0031】
《熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂の物性》
前記熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂は、GPC(ゲル・パーミエ―ション・クロマトグラフィー)測定によるポリスチレン換算の値である重量平均分子量が10,000~500,000であることが好ましく、18,000~300,000であることがより好ましく、20,000~200,000であることが更に好ましい。重量平均分子量はGPCによって検出される溶出ピーク位置から算出され、それぞれ標準ポリスチレン換算での分子量の値である。重量平均分子量がこの値の範囲であると熱可塑性と耐熱性のバランスが良く、効率よく溶融によって接合体が得られ、その耐熱性も高くなる。重量平均分子量が10,000以上であると耐熱性に優れ、500,000以下であると溶融時の粘度が低く、接合性が高くなる。
【0032】
《フィルム中における樹脂成分以外の成分》
必要に応じて、本発明の目的を阻害しない範囲で、フィルムは、樹脂成分以外の成分として、フィラーや添加剤を含有してもよく、含有しなくてもよい。
【0033】
フィラーとしては、無機フィラー及び有機フィラー(樹脂粉体)が挙げられる。
無機フィラーとしては、例えば、球状溶融シリカ、鉄などの金属の金属粉、珪砂、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、酸性白土、珪藻土、カオリン、石英、酸化チタン、シリカ、フェノール樹脂マイクロバルーン、ガラスバルーン等が挙げられる。
フィルムがフィラーを含有する場合、フィルムの全量100体積%中におけるフィラーの含有量は、50体積%以下であることが好ましく、30体積%以下であることがより好ましく、20体積%以下であることが更に好ましく、10体積%以下であることが最も好ましい。なお、フィラーの体積は、フィルム中に含有されるフィラーの重量をフィラーの真比重で除して求めることができる。
フィルムの全量100体積%中における樹脂成分の含有量は、好ましくは10体積%以上、より好ましくは20体積%以上、更に好ましくは30体積%以上、より更に好ましくは50体積%以上、一態様では80体積%以上、別の態様では90体積%以上、別の態様では99体積%以上である。
【0034】
添加剤としては、例えば、消泡剤、シランカップリング剤等のカップリング剤、顔料等を挙げることができ、これらは1種又は2種以上含有していてもよい。
フィルム中における添加剤の含有量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
フィルム中における樹脂成分の含有量は、好ましく10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、より更に好ましくは50質量%以上、一態様では80質量%以上、別の態様では90質量%以上、別の態様では99質量%以上である。
【0035】
《フィルムの形態》
フィルムは、厚さが10μm~3mmのシート状物である。
フィルムの厚さは、短い接合プロセス時間で接合性に優れた接合体を得る観点から、1mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であることがより好ましく、0.3mm以下であることが更に好ましく、0.2mm以下であることがより更に好ましく、0.1mm以下であることが最も好ましい。
そのような範囲のサイズであると金属基材Aと金属基材Bの間に挟み、加熱や加圧等によって効率よく接合面に広がることができ、高い接合力が得られる。
【0036】
当該フィルムは単層であってもよく複数層からなる積層体であってもよいが、製造容易性の観点及び接合力の向上の観点から単層であることが好ましい。
また、フィルムは、接合力やその耐熱性を阻害しない範囲で、タック性があってもよい。
【0037】
《フィルムの製造方法》
フィルムの製造方法は特に限定されないが、例えば、2官能エポキシ化合物のモノマーもしくはオリゴマーを加熱して重合させることで樹脂組成物を得、得られた樹脂組成物に必要に応じて溶媒を加え、離型フィルム等に塗布し、硬化・乾燥、必要に応じて加圧することによりフィルムを得てもよい。
【0038】
<第2の接合工程>
第2の接合工程は、前記金属基材Aに接合した前記フィルムを金属基材Bに接面させた状態で、前記フィルムを溶融後固化させることにより、前記金属基材Aと前記金属基材Bを接合するする工程である。
【0039】
高い接合力を得る観点から、第2の接合工程では、フィルムの融点以上の温度でフィルムを溶融後固化させることが好ましい。
【0040】
前記フィルムを溶融させる方法としては、接触加熱、温風加熱、熱プレス、赤外線加熱、熱板溶着、超音波溶着、振動溶着及び高周波誘導溶着からなる群より選ばれる少なくとも1種の方法が挙げられる。中でも、熱プレス、超音波溶着、及び高周波誘導溶着が好ましい。
【0041】
熱プレスを行う場合の条件については特に限定はない。
例えば、温度は、100~400℃が好ましく、120~350℃がより好ましく、150℃~300℃が更に好ましい。100~400℃で加熱することにより、前記フィルムが効率よく変形、溶融し接合面に有効に濡れ広がるため高い接合力が得られる。
前記熱プレスにおける加圧力は0.01~20MPaが好ましく、0.1~10MPaがより好ましく、0.2~5MPaが更に好ましい。このような圧力範囲であると、前記フィルムが効率よく変形し接合面に有効に濡れ広がるため高い接合力が得られる。
【0042】
超音波溶着を行う場合の条件に付いては特に限定は無い。
例えば、発信周波数は、好ましくは10~70kHz、より好ましくは15~40kHzである。
超音波印可時間は、接着性と外観性の観点から、好ましくは0.1~3秒、より好ましくは0.2~2秒である。
超音波印可時に金属基材Aと金属基材Bとを加圧する場合、加圧力は0.01~20MPaが好ましく、0.1~10MPaがより好ましく、0.2~5MPaが更に好ましい。このような圧力範囲であると、前記固形接合剤が効率よく変形し接着面に有効に濡れ広がるため高い接着力が得られる。
【0043】
超音波溶着を行う場合の条件に付いては特に限定は無い。
例えば、発振周波数は、1~1500kHzの範囲が挙げられる。金属基材A及び金属基材Bの大きさや種類に応じて、適切な発振周波数に調整すればよい。
出力は、100~5000Wの範囲が挙げられる。
発振時間は、金属基材A及び金属基材Bの大きさや種類に応じて調整すればよく、例えば、好ましくは1.0~10.0秒であり、より好ましくは1.5~8.0秒である。
【0044】
金属基材Aと金属基材Bの接合は、上述のとおり、フィルムの相変化(固体~液体~固体)を利用したものであり、化学反応を伴わないため、従来の熱硬化型のエポキシ樹脂よりも短時間で接合を完了することができる。
【0045】
[接合体]
図1に、本発明の接合体の一実施形態を示す。図1に示す接合体1は、熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂から選択される少なくとも一種である非晶性熱可塑性樹脂からなるフィルムが溶融後固化した接合層2を介して、金属基材A(3)と金属基材B(4)が、接合一体化されたものである。本発明の接合体は、異種材の接合体でも、優れた接合強度を示す。接合強度は、接合層と金属基材A及び接合層と金属基材Bとの間に働く界面相互作用の強さの他に、接合層の厚さ、フィルムを構成するポリマーの分子量や化学構造、力学的特性、粘弾性的特性など数多くの因子に影響を受けるため、本発明の接合体が優れた接合強度を示す機構の詳細は明らかではないが、接合層2を構成する非晶性熱可塑性樹脂内の凝集力が低いことと、樹脂内に水酸基が存在し、接合層と金属基材A、及び、接合層と金属基材Bの界面で水素結合やファンデルワールス力などの化学結合や分子間力を形成することが主な要因であると推測される。しかしながら、前記接合体において、前記接合体の前記界面の状態又は特性はナノメーターレベル以下のごく薄い化学構造であり、分析が困難であり、それを特定することにより、フィルムの使用によらないものと区別すべく表現することは、現時点の技術において、不可能又は非実際的である。
【0046】
接合層が熱可塑性樹脂からなる本発明の接合体は、リサイクル性及びリペア性に優れ、接合体を加熱することで、容易に金属基材Aと金属基材Bに解体することができる。
【0047】
(金属基材A、金属基材B)
本発明は異種の金属基材を強固に接合する用途に好適であるが、金属基材Aと金属基材Bの組み合わせは特に限定されない。同種の金属基材の接合にも適用することができる。
金属基材A及び金属基材Bを構成する金属は特に限定されるものではない。例えば、鉄、アルミニウム、銅、マグネシウム、チタン等が挙げられる。これらのうち、軽量性及び加工容易性等の観点から、アルミニウム、銅が、特に好適に用いられる。なお、本発明において、「アルミニウム」の語は、アルミニウム及びその合金を含む意味で用いられる。同様に、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、チタンも、これらの単体及びその合金(ステンレススチール、ジュラルミン等)を含む意味で用いるものとする。
【0048】
金属基材A及び金属基材Bの形状も特に限定されないが、それぞれの厚さは0.1mm以上であることが好ましく、0.3mm以上であることがより好ましく、0.5mm以上であることがさらに好ましく、1mm以上であることが特に好ましい。0.1mm以上であると強固な接合体が得られる。金属基材A及び金属基材Bのそれぞれの厚さは10mm以下であることが好ましく、8mm以下であることがより好ましく、6mm以下であることがさらに好ましく、4mm以下であることが特に好ましい。10mm以下であると効率的に加熱し易く製造が容易となる。
【0049】
(前処理)
金属基材A及び金属基材Bは、いずれも表面の汚染物の除去、及び/又は、アンカー効果を目的として、表面に前処理を施すことが好ましい。
前処理としては、例えば、脱脂処理、UVオゾン処理、ブラスト処理、研磨処理、プラズマ処理、コロナ放電処理、レーザー処理、エッチング処理、フレーム処理等が挙げられる。
前処理としては、基材の表面を洗浄する前処理又は表面に凹凸を付ける前処理が好ましい。具体的には、基材がアルミニウム、ガラス、セラミック、又は鉄からなる場合、脱脂処理、UVオゾン処理、ブラスト処理、研磨処理、プラズマ処理、エッチング処理からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、基材がFRP、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミド、又はポリブチレンテレフタレートからなる場合、脱脂処理、UVオゾン処理、ブラスト処理、研磨処理、プラズマ処理及びコロナ放電処理からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
前処理は、1種のみであってもよく、2種以上を施してもよい。これらの前処理の具体的な方法としては、公知の方法を用いることができる。
通常、FRPの表面には樹脂や補強材に由来する水酸基が存在し、ガラスやセラミック表面には元々水酸基が存在すると考えられるが、前記の前処理によって新たに水酸基が生成され、基材の表面の水酸基を増やすことができる。
【0050】
前記脱脂処理とは、基材表面の油脂などの汚れをアセトン、トルエン等の有機溶剤等で溶かして除去する方法である。
【0051】
前記UVオゾン処理とは、低圧水銀ランプから発光する短波長の紫外線の持つエネルギーとそれにより発生するオゾン(O)の力で、表面を洗浄したり改質する方法である。ガラスの場合、表面の有機系不純物の除去を行う表面洗浄法の一つとなる。一般に、低圧水銀ランプを用いた洗浄表面改質装置は、「UVオゾンクリーナー」、「UV洗浄装置」、「紫外線表面改質装置」などと呼ばれている。
【0052】
前記ブラスト処理としては、例えば、ウェットブラスト処理、ショットブラスト処理、サンドブラスト処理等が挙げられる。中でも、ウェットブラスト処理は、ドライブラスト処理と比べより緻密な面が得られるため、好ましい。
【0053】
前記研磨処理としては、例えば、研磨布を用いたバフ研磨や、研磨紙(サンドペーパー)を用いたロール研磨、電解研磨等が挙げられる。
【0054】
前記プラズマ処理とは、高圧電源とロッドでプラズマビームを作り素材表面にぶつけて分子を励起させて官能状態とするもので、素材表面に水酸基や極性基を付与できる大気圧プラズマ処理方法等が挙げられる。
【0055】
前記コロナ放電処理とは、高分子フィルムの表面改質に施される方法が挙げられ、電極から放出された電子が高分子表面層の高分子主鎖や側鎖を切断し発生したラジカルを起点に表面に水酸基や極性基を発生させる方法である。
【0056】
前記レーザー処理とは、レーザー照射によって基材の表面のみを急速に加熱、冷却して、表面の特性を改善する技術で表面の粗面化に有効な方法である。公知のレーザー処理技術を使用することができる。
【0057】
前記エッチング処理としては、例えば、アルカリ法、リン酸-硫酸法、フッ化物法、クロム酸-硫酸法、塩鉄法等の化学的エッチング処理、また、電解エッチング法等の電気化学的エッチング処理等が挙げられる。
【0058】
前記フレーム処理とは、燃焼ガスと空気の混合ガスを燃やすことで空気中の酸素をプラズマ化させ、酸素プラズマを処理対象物に付与することで表面の親水化を図る方法である。公知のフレーム処理技術を使用することができる。
【実施例
【0059】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0060】
[フィルムの製造]
<製造例1>
撹拌機、環流冷却器、ガス導入管、及び温度計を付した反応装置に、jER(登録商標)1007(三菱ケミカル株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、重量平均分子量約10,000)1.0等量(203g)、ビスフェノールS1.0等量(12.5g)、トリフェニルホスフィン2.4g、及びメチルエチルケトン1,000gを仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら100℃まで昇温した。目視で溶解したことを確認し、40℃まで冷却して固形分約20質量%の樹脂組成物を得た。これから溶剤を除去して固体を得た。プレス機の上板及び下板に非粘着フッ素樹脂フィルム(ニトフロン(登録商標)No.900UL、日東電工株式会社製)を設置し、下板の非粘着フッ素樹脂フィルム上に上記固体を配置した後、上記プレス機を160℃に加熱し、上記樹脂組成物を2時間加熱圧縮して固形分100質量%、厚さ100μmのフィルムP-1を得た。得られたフィルムP-1の重量平均分子量、エポキシ当量、融点、及び融解熱の測定結果は、表1に示すとおりである。なお、重量平均分子量の測定については、得られたフィルムをテトラヒドロフランに溶解させ測定した。
また、後述する他の製造例により得られたフィルム及び接合剤についても同様の測定を行い、その結果も表1及び2に示す。
【0061】
<製造例2>
撹拌機、環流冷却器、ガス導入管、及び温度計を付した反応装置に、エノトート(登録商標)YP-50S(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、フェノキシ樹脂、重量平均分子量約50,000)20g、シクロヘキサノン80gを仕込み、撹拌しながら60℃まで昇温し、目視で溶解したことを確認し、40℃まで冷却して固形分20質量%の樹脂組成物を得た。これから溶剤を除去して固形分100質量%、厚さ100μmのフィルムP-2を得た。
【0062】
<製造例3>
前記フィルムP-2と結晶性エポキシ樹脂YSLV-80XY(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)をそれぞれ粉砕して98対2の質量比で混合し、万力でプレスし、50℃に加熱することで固形分100質量%、厚さ100μmのフィルムP-3を得た。
【0063】
<製造例4>
前記フィルムP-2と結晶性エポキシ樹脂YSLV-80XY(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)をそれぞれ粉砕して94対6の質量比で混合し、万力でプレスし、50℃に加熱することで固形分100質量%、厚さ100μmのフィルムP-4を得た。
【0064】
<製造例5>
前記フィルムP-2と結晶性エポキシ樹脂YSLV-80XY(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)をそれぞれ粉砕して89対11の質量比で混合し、万力でプレスし、50℃に加熱することで固形分100質量%、厚さ100μmのフィルムP-5を得た。
<製造例6>
撹拌機、還流冷却器、ガス導入管、及び温度計を備えた反応装置に、jER(登録商標)1007(三菱ケミカル株式会社株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、分子量約4060) 203g(1.0等量)、ビスフェノールS(分子量250) 12.5g(0.6等量)、トリフェニルホスフィン2.4g、及びメチルエチルケトン1,000gを仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら100℃まで昇温した。目視で溶解したことを確認し、40℃まで冷却して固形分約20質量%の樹脂組成物を得た。樹脂組成物から溶剤を除去して160℃で2時間加熱し、固形分100質量%の厚さ100μmのフィルム状の固形接合剤(P-6)を得た。
【0065】
<比較製造例1>
熱硬化性液状エポキシ接着剤E-250(コニシ株式会社製、ビスフェノール型エポキシ樹脂とアミン硬化剤の2液タイプ)の2液を混合し、離型フィルムに塗布し、100℃で1時間硬化させたあと、冷却し、離型フィルムから剥がして、厚さ100μmのフィルムQ-1を得た。
フィルムQ-1においては、DSC測定で融解熱ピークは検出されず、エポキシ当量及び重量平均分子量は溶媒に不溶の為測定できなかった。
【0066】
<比較製造例2>
非晶性のポリカーボネートフィルム(ユーピロン(登録商標)FE2000、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、厚さ100μm)をカットして、フィルムQ-2を得た。
フィルムQ-2においては、DSC測定で融解熱ピークは検出されず、エポキシ当量及び重量平均分子量は溶媒に不溶の為測定できなかった。
【0067】
<比較製造例3>
結晶性エポキシ樹脂YSLV-80XY(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)を、室温でプレスすることでシートを得て、その後、カットして、厚さ100μmのフィルムQ-3を得た。
得られたフィルムQ-3の重量平均分子量、エポキシ当量、及び融解熱の測定結果は、表2に示すとおりである。
【0068】
<比較製造例4>
熱硬化性液状エポキシ接着剤E-250(コニシ株式会社製、ビスフェノール型エポキシ樹脂とアミン硬化剤の2液タイプ)を、そのまま液状の接合剤Q-4とした。
接合剤Q-4においては、DSC測定で融解熱ピークは検出されず、エポキシ当量及び重量平均分子量は溶媒に不溶の為測定できなかった。
【0069】
<比較製造例5>
フラスコに、jER(登録商標)1007(三菱ケミカル株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、重量平均分子量約10,000)1.0等量(203g)、ビスフェノールS1.0等量(12.5g)、トリフェニルホスフィン2.4g、及びメチルエチルケトン1,000gを仕込み、常温で撹拌することで固形分約20質量%の液状の接合剤Q-5を得た。
なお、接合剤Q-5においては、後述の比較例5において樹脂Aの表面に形成した熱可塑性エポキシ樹脂重合物を用いて、重量平均分子量、エポキシ当量、融解熱、及び融点を測定した。
【0070】
<比較製造例6>
撹拌機、環流冷却器、ガス導入管、及び温度計を付した反応装置に、フエノトート(登録商標)YP-50S(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、フェノキシ樹脂、重量平均分子量約50,000)20g、シクロヘキサノン80gを仕込み、撹拌しながら60℃まで昇温し、目視で溶解したことを確認し、40℃まで冷却して固形分20質量%の液状の接合剤Q-6を得た。
なお、接合剤Q-6においては、後述の比較例6において樹脂Aの表面に形成したフェノキシ樹脂コーティング層を用いて、重量平均分子量、エポキシ当量、融解熱、及び融点を測定した。
接合剤Q-6においては、DSC測定で融解熱ピークは検出されず、エポキシ当量は検出限界以上であった。
【0071】
<比較製造例7>
結晶性のポリアミド系ホットメルト接着剤フィルムNT-120(日本マタイ株式会社製、厚さ100μm)をカットして、厚さ100μmのフィルムQ-7を得た。
フィルムQ-7においては、溶媒に不溶の為エポキシ当量及び重量平均分子量は測定できなかった。融解熱の測定結果は、表2に示すとおりである。
【0072】
<評価方法>
フィルム及び接合剤の重量平均分子量、融解熱及びエポキシ当量を、それぞれ以下のように求めた。また、フィルムの厚さを、以下の方法により測定した。
【0073】
(重量平均分子量)
フィルム及び接合剤をテトラヒドロフランに溶解し、Prominence 501(昭和サイエンス株式会社製、Detector:Shodex(登録商標) RI-501(昭和電工株式会社製))を用い、以下の条件で測定した。
カラム:昭和電工株式会社製 LF-804×2本
カラム温度:40℃
試料:樹脂の0.4質量%テトラヒドロフラン溶液
流量:1ml/分
溶離液:テトラヒドロフラン
較正法:標準ポリスチレンによる換算
【0074】
(融解熱及び融点)
フィルム及び接合剤を2~10mg秤量し、アルミ製パンに入れ、DSC(株式会社リガク製DSC8231)で23℃から10℃/minで200℃まで昇温し、DSCカーブを得た。そのDSCカーブの融解時の吸熱ピークの面積と前記秤量値から融解熱を算出した。また、得られたDSCカーブの融解ピーク温度を融点とした。なお、融解ピークが得られない場合や、融解熱が15J/g以下である場合は、ガラス転移点に70℃を足した温度を融点とした。ガラス転移点は、DSCで200℃まで昇温後、40℃以下に冷却し、さらに200℃まで加熱した2サイクル目のDSCカーブの降下開始時の温度とした。なお、加熱により溶融しない熱硬化性樹脂については、融点は無しとした。
【0075】
(エポキシ当量)
JIS K-7236:2001で測定し、樹脂固形分としての値に換算した。また、反応を伴わない単純混合物の場合はそれぞれのエポキシ当量と含有量から算出した。
【0076】
(フィルムの厚さ)
フィルムの厚さは、23℃、湿度50%の雰囲気中に24時間放置後、株式会社ミツトヨ製のMDC-25MXを用いて測定した。
【0077】
[接合体の製造]
<金属基材A>
金属基材Aとして、以下の基材を使用した。
《アルミニウム》
A6061-T6の表面をブラスト処理し、幅18mm、長さ45mm、厚さ1.6mmの試験片を得た。
《銅》
C1100の表面をブラスト処理し、幅18mm、長さ45mm、厚さ1.6mmの試験片を得た。
【0078】
<金属基材B>
金属基材Bとして、以下の基材を使用した。
《鉄》
SPCC-SDの表面をブラスト処理し、幅10mm、長さ45mm、厚さ3.0mmの試験片を得た。
【0079】
<実施例1-1>
金属基材Aとしてアルミニウム、金属基材Bとして鉄を用い、金属基材Aの上に、10×15mmの大きさに裁断した前記フィルムP-1を配置し、フィルムの温度が200℃となるように加熱し、フィルムを溶融させた後、常温にて1分放冷して、フィルムを固化し、金属基材Aとフィルムを接合した。
続いて、金属基材Aに接合したフィルムに金属基材Bを接面させた。これらの基材同士の重なりは幅10mm、奥行き5mmとした。前記フィルムP-1は前記基材同士の重なり領域をすべて覆うように配置した。つまり、前記金属基材Aと金属基材B同士は、直接触れず、その間に前記フィルムが介在した状態として、金属基材Bとフィルムは未接合の積層体を準備した。
高周波誘導溶着機(精電舎電子工業株式会社製、発振器UH-2.5K、プレスJIIP30S)を用いて高周波誘導により金属を発熱させ、加熱・加圧により試験片同士を接合した。加圧力は110N(圧力2.2MPa)、発振周波数は900kHzとした。発振時間は2秒とした。
また、オープンタイム評価用として、前記金属基材Aにフィルムを接合した状態で3日間静置した後、金属基材Aに接合したフィルムに金属基材Bを接面させ、金属基材Aと金属基材Bを接合したこと以外は同様にして接合体を作製した。
【0080】
<実施例1-2>
金属基材Aとして銅、金属基材Bとして鉄を用い、<実施例1-1>と同様の操作にて接合体を得た。
【0081】
<実施例2~5、比較例1~3>
フィルムとして、表1及び表2のものを使用した以外は実施例1と同様にして、接合体を作製した。
【0082】
<比較例4>
金属基材Aとしてアルミニウム、金属基材Bとして鉄を用いた。
熱硬化性液状エポキシ接着剤E-250(コニシ株式会社製、ビスフェノール型エポキシ樹脂とアミン硬化剤の2液タイプ)の2液を混合した接合剤Q-4を、金属基材A及び金属基材Bの表面の各々に、縦10mm×横18mmの領域にわたって塗布し、1分以内に貼り合わせをした。その後、クリップにて固定した状態で100℃のオーブン内に1時間静置することで接合剤を硬化させた。その後、室温まで冷却した。このようにして、接合体を作製した。接着剤層の厚みは0.1mmであった。
また、オープンタイム評価用として、金属基材Aと金属基材Bの各々に接合剤Q-4を塗布し、3日間静置した後、金属基材Aと金属基材Bを重ね合わせクリップにて固定した状態で100℃のオーブン内に1時間静置したこと以外は<実施例1-1>と同様にして、オープンタイム評価用の接合体を作製した。
【0083】
<比較例5>
金属基材Aとしてアルミニウム、金属基材Bとして鉄を用いた。
金属基材Aの上に液状接合剤Q-5をバーコート塗布し、室温で30分乾燥させた後に、160℃のオーブンに2時間静置することで、縦20mm×横18mm×厚さ50μmの固形の熱可塑性エポキシ樹脂重合物コーティング層を金属基材Aの表面上に形成した。
続いて、金属基材Aと金属基材Bを重ね合わせた後、<実施例1-1>と同様にして超音波溶着で接合体を得た。
また、オープンタイム評価用として、上記熱可塑性エポキシ樹脂重合物コーティング層を表面に形成した金属基材Aを3日間静置した後、当該金属基材Aと金属基材Bを重ねたこと以外は<実施例1-1>と同様にして、オープンタイム評価用の接合体を作製した。
【0084】
<比較例6>
金属基材Aとしてアルミニウム、金属基材Bとして鉄を用いた。
金属基材Aの上に、前記液状樹脂組成物をバーコート塗布し、70℃のオーブンに30分静置することで、20mm×横18mm×厚さ50μmのフェノキシ樹脂コーティング層を金属基材Aの表面上に形成した。
金属基材A上のコーティング層と金属基材Bを重ね合わせたこと以外は比較例5と同様にして、接合体を作製した。
また、オープンタイム評価用として、上記フェノキシ樹脂コーティング層を表面に形成した金属基材Aを3日間静置した後、当該金属基材Aと金属基材Bとを重ね合わせこと以外は<実施例1-1>と同様にして、オープンタイム評価用の接合体を作製した。
【0085】
<比較例7>
フィルムとしてフィルムQ-7を用いたこと以外は<実施例1-1>と同様にして、接合体及びオープンタイム評価用の接合体を作製した。
【0086】
<比較例8~11>
金属基材Aとフィルムを接合せずに、金属基材Aと、フィルムと、金属基材Bをこの順で積層して積層体を準備したこと以外は実施例1と同様にして、接合体及びオープンタイム評価用の接合体を作製した。
【0087】
<接合体評価方法>
得られた接合体について、以下の評価を行った。その評価結果を表1及び2に示す。
【0088】
(せん断接合力)
実施例及び比較例で得られた接合体を測定温度(23℃もしくは80℃)で30分以上静置後、ISO19095に準拠して、引張試験機(万能試験機オートグラフ「AG-X plus」(株式会社島津製作所製);ロードセル10kN、引張速度10mm/min)にて、23℃及び80℃雰囲気での引張りせん断接合強度試験を行い、接合強度を測定した。測定結果を表1及び2に示す。
【0089】
(接合プロセス時間)
接合プロセス時間は、接合体を構成する少なくとも一種の基材と接合剤の接触時を始点、接合体の作製の完了時を終点として、始点から終点までの時間を測定した。測定結果を表1及び2に示す。
【0090】
(リサイクル性)
接合体を200℃のホットプレートに置いて1分加熱した後、1N以下の力で容易に剥離できるかで判断した。剥離できれば良好(A)で、剥離できなければ不適(B)とした。評価結果を表1及び2に示す。
【0091】
(リペア性)
実施例及び比較例によって作製された接合体の各々について、前記引張りせん断強度試験の23℃での試験によって接合が解除された基材A及び基材Bを用いて、各実施例及び各比較例と同様の操作により再度接合体を作製することにより、リペア接合体を得た。
当該リペア接合体の23℃のせん断接合力を前記試験方法と同様に測定し、1回目のせん断接合力の80%以上であれば良好(A)、80%未満ならば不適(B)とした。測定結果を表1及び2に示す。
【0092】
(オープンタイム評価)
オープンタイム評価用接合体を用いて、前記引張りせん断接合強度試験を23℃で実施した。前記実施例及び比較例の方法で作成した試験片と比べてせん断接合力が80%以上であれば良好(A)で、80%未満であれば不適(B)とした。オープンタイム評価が良好(A)とは、オープンタイムが長く、利便性に優れることを意味する。測定結果を表1及び2に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の方製造法で得た接合体は、例えば、ドアサイドパネル、ボンネットルーフ、テールゲート、ステアリングハンガー、Aピラー、Bピラー、Cピラー、Dピラー、クラッシュボックス、パワーコントロールユニット(PCU)ハウジング、電動コンプレッサー部材(内壁部、吸入ポート部、エキゾーストコントロールバルブ(ECV)挿入部、マウントボス部等)、リチウムイオン電池(LIB)スペーサー、電池ケース、LEDヘッドランプ等の自動車用部品や、スマートフォン、ノートパソコン、タブレットパソコン、スマートウォッチ、大型液晶テレビ(LCD-TV)、屋外LED照明の構造体等として用いられるが、特にこれら例示の用途に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0096】
1 接合体
2 接合層
3 金属基材A
4 金属基材B
図1