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特許7544158半導体基板用プライマーおよびパターン形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】半導体基板用プライマーおよびパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20240827BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20240827BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20240827BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
G03F7/11 503
G03F7/11 502
H01L21/302 105A
H01L21/30 563
G03F7/20 521
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023000076
(22)【出願日】2023-01-04
(62)【分割の表示】P 2020513401の分割
【原出願日】2019-04-09
(65)【公開番号】P2023052183
(43)【公開日】2023-04-11
【審査請求日】2023-01-04
(31)【優先権主張番号】P 2018077668
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】志垣 修平
(72)【発明者】
【氏名】武田 諭
(72)【発明者】
【氏名】柴山 亘
(72)【発明者】
【氏名】中島 誠
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-083849(JP,A)
【文献】特開2017-068049(JP,A)
【文献】特開2016-074774(JP,A)
【文献】特開2016-018051(JP,A)
【文献】特開2013-214041(JP,A)
【文献】特開2016-179982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
H01L 21/3065
H01L 21/027
G03F 7/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記平均組成式(1)で示される加水分解縮合物の少なくとも1種を含む基板表面改質剤を基板上又は基板上のシリコンハードマスク層上に塗布し、ベークして、0.1nmから8nmの膜厚を有する、基板表面改質被膜を形成する工程、及び
前記基板表面改質被膜上にフォトレジスト組成物を塗布し、パターニングを行い、基板上に0.10μm以下の膜厚を有するレジストパターンを形成する工程
を含む、パターン形成方法
【化47】

(式中、Rは一般式:-(CHY で表される一価の有機基であり、
Yは水素原子、アセトキシ基、γ―ブチロラクトン基、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1~C6カルビノール基、ノルボルネン基、トルイル基、C1~C3アルコキシフェニル基、ハロゲン原子若しくはC1~C3アルコキシシリル基で置換されていてもよいC6~C30アリール基、酸素原子で中断されていてもよいC1~C4アルキル基、フェニルスルホンアミド基、C1~C3アルキル基若しくはC2~C5アルケニル基で置換されていてもよい環状アミドに由来する一価の基、C1~C3アルキル基若しくはC2~C5アルケニル基で置換されていてもよい環状イミドに由来する一価の基、C1~C3アルキル基若しくはC2~C5アルケニル基で置換されていてもよいC3~C6環状アルケニル基、フェニルスルホン基、p-トリルスルホニル基、p-トルエンスルホニル基又は下記式(1-1)若しくは(1-2)で表される一価の基を示し、
【化48】

【化49】

nは0~4の整数であり、
Xは水素原子又はC1~4の一価炭化水素基を示し、
aは1、
bは0、
cは0である。)
【請求項2】
前記基板表面改質被膜が、1~50Åの膜厚を有する、請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記基板表面改質被膜が、1~46Åの膜厚を有する、請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
が、アセトキシ基、γ―ブチロラクトン基、ジ(トリフルオロメチル)ヒドロキシメチル基、シクロヘキセニル基、トルイル基、C1~C3アルコキシフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、フェナントレニル基、C1~C3アルコキシシリルフェニル基、フェニルスルホンアミド基、又は下記式(1-1)、(1-2)若しくは(1-3)で表される一価の基
【化50】

【化51】

【化52】

のいずれかであることを特徴とする請求項1~3何れか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項5】
前記基板表面改質剤が、下記(式-1)~(式-22)からなる群より選択される化合物の少なくとも1種の加水分解縮合物又は(式-23)で表されるポリマーを含む、請求項1~3何れか1項に記載のパターン形成方法。
【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

【化32】

【化33】

【化34】

【化35】

【化36】

【化37】

【化38】

【化39】

【化40】

【化41】

【化42】

【化43】

【化44】

【化45】
【請求項6】
前記基板表面改質剤が、前記(式-1)~(式-22)からなる群より選択される1種の化合物の加水分解縮合物又は(式-23)で表されるポリマーを含む、請求項5に記載のパターン形成方法。
【請求項7】
前記基板表面改質剤が、下記(式-24)で示される化合物の加水分解縮合物を更に含む、請求項1~6何れか1項に記載のパターン形成方法。
【化46】
【請求項8】
基板上に0.05μm以下の膜厚を有するレジストパターンを形成する、請求項1~7何れか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項9】
上記基板が、金属又は無機系反射防止膜基板である、請求項~8何れか1項に記載のパターン形成方法
【請求項10】
上記基板が、Si、SiN、SiON、TiSi、TiN又はCr蒸着されていてもよいガラスを含む、請求項~9何れか1項に記載のパターン形成方法
【請求項11】
上記パターニングが、ArF、EUV又はEBにて露光する工程を含む、請求項1~10何れか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項12】
請求項1~9何れか1項に記載のパターン形成方法によりレジストパターンを形成し、次いで基板をエッチングする工程を含む、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジストパターン用表面改質剤である半導体基板用プライマー、基板上に表面改質剤とレジストパターンとが順に積層した積層基板、パターン形成方法および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から半導体デバイスの製造において、レジスト組成物を用いたリソグラフィープロセスが行われている。近年、半導体デバイスの高集積化に伴い、配線などのパターンの微細化が求められている。パターンの微細化に伴い、より波長の短い遠紫外線光、真空紫外線光、電子線(EB)、X線などが光源として使用されるようになってきている。特に最近では、KrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)のような短波長光を採用し、レジストパターンを形成することが行われている。
【0003】
これに伴い、活性光線の半導体基板からの乱反射や定在波の影響が大きな問題となり、そこでこの問題を解決すべく、レジストと半導体基板の間に反射防止膜(Bottom Anti-Reflective Coating:BARC)を設ける方法が広く検討されてきている。かかる反射防止膜としては、その使用の容易さなどから、吸光基(クロモフォア)を有するポリマーを含む組成物から形成される有機反射防止膜について数多くの検討が行われている(例えば、特許文献1)。
【0004】
一方、さらなる微細加工技術に適用されるEUV(極端紫外線、波長13.5nm)では、半導体基板からの反射の問題は生じないが、パターン微細化に伴うレジストパターン倒れが問題となるため、レジストとの高い密着性を有するレジスト下層膜の検討が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2008-501985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のレジスト下層膜には、エッチング工程におけるサイドエッチングなどのエッチング不良が起こりやすいという問題がある。したがって、従来の下層膜と比較して膜厚の薄いプライマー層によって基板表面の改質が可能になれば、サイドエッチングなどのエッチング不良を発生することなく、フォトレジストの密着性が改善され、先端リソグラフィープロセスにおけるフォトレジスト解像性が改善されることが期待できる。
【0007】
本発明は、上記事情を改善するためになされたものであり、レジスト膜との密着性が高く、薄膜で良好なレジストパターンの形成が可能な、新規なレジストパターン用表面改質剤である半導体基板用プライマー、基板上に表面改質剤とレジストパターンとが順に積層した積層基板、パターン形成方法および半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下を包含する。
[1] 基板上に0.10μm、好ましくは0.05μm以下のレジストパターンを形成する前に基板に塗布して基板とレジストパターンとの密着を増強させるレジストパターン用表面改質剤であって、
下記平均組成式(1)で示される化合物、
下記平均組成式(1)で示される化合物の加水分解物、又は
下記平均組成式(1)で示される化合物の加水分解縮合物
の少なくとも1種を含むことを特徴とするレジストパターン用表面改質剤。
【化1】

(式中、Rは一般式:-(CHY で表される一価の有機基であり、
Yは水素原子、アセトキシ基、γ―ブチロラクトン基、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1~C6カルビノール基、ノルボルネン基、トルイル基、C1~C3アルコキシフェニル基、ハロゲン原子若しくはC1~C3アルコキシシリル基で置換されていてもよいC6~C30アリール基、酸素原子で中断されていてもよいC1~C4アルキル基、フェニルスルホンアミド基、C1~C3アルキル基若しくはC2~C5アルケニル基で置換されていてもよい環状アミドに由来する一価の基、C1~C3アルキル基若しくはC2~C5アルケニル基で置換されていてもよい環状イミドに由来する一価の基、C1~C3アルキル基若しくはC2~C5アルケニル基で置換されていてもよいC3~C6環状アルケニル基、フェニルスルホン基、p-トリルスルホニル基、p-トルエンスルホニル基又は下記式(1-1)若しくは(1-2)で表される一価の基を示し、
【化2】

【化3】

nは0~4の整数であり、
はC1~4の一価炭化水素基であり、
Xは水素原子又はC1~4の一価炭化水素基を示し、
aは1~2、
bは0~1、
cは0~2の数であり、
a+b+c≦4である。)
[2] Rが、アセトキシ基、γ―ブチロラクトン基、ジ(トリフルオロメチル)ヒドロキシメチル基、シクロヘキセニル基、トルイル基、C1~C3アルコキシフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、フェナントレニル基、C1~C3アルコキシシリルフェニル基、フェニルスルホンアミド基、又は下記式(1-1)、(1-2)若しくは(1-3)で表される一価の基
【化4】

【化5】

【化6】

のいずれかであることを特徴とする[1]に記載の表面改質剤。
[3] 上記基板が、金属又は無機系反射防止膜基板である、[1]又は[2]記載の表面改質剤。
[4] 上記基板が、Si、SiN、SiON、TiSi、TiN又はCr蒸着されていてもよいガラスを含む、[1]~[3]何れか1項に記載の表面改質剤。
[5] 基板上に、[1]~[4]何れか1項に記載の表面改質剤、次いでレジストパターンが順に積層した積層基板。
[6] 上記基板上に、シリコンハードマスク層をさらに有する、[5]に記載の積層基板。
[7] [1]~[4]何れか1項に記載の表面改質剤を基板上に塗布し、ベークした後、フォトレジスト組成物を塗布し、パターニングを行うことを特徴とするパターン形成方法。
[8] 上記パターニングが、ArF、EUV又はEBにて露光する工程を含む、[7]に記載のパターン形成方法。
[9] [1]~[4]何れか1項に記載の表面改質剤を基板上に塗布し、ベークした後、フォトレジスト組成物を塗布し、パターニングを行い、次いで基板をエッチングする工程を含む、半導体装置の製造方法。
[10] 上記基板上に、スピンオンカーボン又はアモルファスカーボン、次いでシリコンハードマスク層をさらに有する、[5]に記載の積層基板。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シランカップリング剤によるウェハ表面の改質によりフォトレジストの密着性が改善され、先端リソグラフィープロセスにおけるフォトレジスト解像性が改善される。また、シランカップリング剤の膜厚が従来の下層膜と比較して薄いため、エッチング工程におけるサイドエッチングなどのエッチング不良が起こりにくいという利点がある。
【0010】
すなわち、従来の有機系プライマーは、基板との結合、及びプライマー同士間の結合が弱く、水分により分解しやすかったが、本発明に係る平均組成式(1)で示される化合物、その加水分解物、又はその加水分解縮合物はSi系であるため、基板との結合、及びプライマー同士間の結合が強く、水分により分解しにくい。その結果、本発明に係る表面改質剤は、基板との強い密着性、プライマー同士の架橋による密着性の改善により、高い表面改質能力を発揮する。
【0011】
本発明において、平均組成式(1)で示される化合物を含む表面改質剤を適用した場合には、塗布膜を形成した後に加水分解や加水分解縮合に供することができる。また、平均組成式(1)で示される化合物の加水分解物を含む表面改質剤を適用した場合には、塗布膜を形成した後に加水分解縮合に供することができる。一般にこれらは、平均組成式(1)で示される化合物の加水分解縮合物を含む表面改質剤を適用した場合に比較して、ベーキング後の膜をより薄いものとすることができる。
【0012】
更に、いずれの表面改質剤から得られる塗布膜も、ベーキング条件の変更、溶剤による除去等により最終の膜厚や表面改質の程度を制御することができる。また、いずれの表面改質剤から得られる塗布膜も、塗布直後の膜厚の厚薄いかんに拘わらず、溶剤除去後は同じように基板表面に残留し、膜厚均一性が良好であり、優れたリソグラフィー特性を発揮する。
本願の塗布膜は、平均組成式(1)で示される化合物の単分子膜であってもよい。
【0013】
このため、本発明によれば、例えば0.1nm~5nm(1~50Å)程度の膜厚で表面処理が可能となる。
【0014】
本発明に係る表面改質剤は、基板との強い密着性、プライマー同士の架橋による密着性の改善を通じて、レジスト倒れを防止する効果を奏するほか、平均組成式(1)におけるRを適宜選択することにより更に種々の効果を付与することができる。例えば、Rとして光分解により酸を発生する基を選択することにより、レジストの形状を変化させることが可能である。また、Rとして光分解又は熱分解により親水化する基を選択することによっても、レジストの形状を変化させることが可能である。また、Rとして光分解により塩基を発生する基を選択することにより、レジスト倒れ防止効果を強化することが可能である。更に、Rとして基板を疎水化する基を選択することにより、パターン倒れを防止する効果を得ることができる。
【0015】
本発明に係る表面改質剤による表面改質の程度は、例えば実施例に記載の方法による水接触角を測定することによって評価することができる。塗布前後で各々の水接触角の差が大きいほど、表面改質度合いが大きいことになる。
【0016】
本発明に係る表面改質剤は、半導体基板のエッチングマスクとして機能する膜としても、表面処理剤としても使用が可能である。
【0017】
本発明に係る表面改質剤は、ガラス基板のみならず、Bare-Siその他、SiO、SiN、SiON、TiNなど酸化膜、窒化膜、金属基板上に適用することができ、更に塗布型もしくは蒸着型SiHM(シリコンハードマスク)上、BARC上、塗布型SOC(スピンオンカーボン、炭素含有量が高い膜)上又は蒸着型カーボン膜(アモルファスカーボン膜等)上にも適用が可能である。
【0018】
本発明に係る表面改質剤は、ArF、電子線(EB)、極端紫外線(EUV)等の短波長光によるレジストパターン形成に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】SiON上にプライマー層及びフォトレジストを形成し、EUV露光機を用いて露光し、パターニングした結果を示すSEM写真である。
図2】SiON上にプライマー層及びフォトレジストを形成し、EUV露光機を用いて露光し、パターニングした結果を示すSEM写真である。
図3】SiON上にプライマー層を形成することなく、フォトレジストを形成し、EUV露光機を用いて露光し、パターニングした結果を示すSEM写真である。
図4】SiON上にプライマー層及びフォトレジストを形成し、EUV露光機を用いて露光し、EB描画機を用いて描画を行った結果を示すSEM写真である。
図5】SiON上にプライマー層及びフォトレジストを形成し、EB描画機を用いて描画を行った結果を示すSEM写真である。
図6】SiON上にプライマー層を形成することなく、フォトレジストを形成し、EB描画機を用いて描画を行った結果を示すSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[表面改質剤]
本発明は、基板上に0.1μm以下、好ましくは0.05μm以下のレジストパターンを形成する前に基板に塗布して基板とレジストパターンとの密着を増強させるレジストパターン用表面改質剤に関する。
【0021】
本発明に係る表面改質剤は、下記平均組成式(1)で示される化合物、下記平均組成式(1)で示される化合物の加水分解物、又は下記平均組成式(1)で示される化合物の加水分解縮合物の少なくとも1種を含む。
【化7】

(式中、Rは-(CHY基であり、
Yは水素原子、アセトキシ基、γ―ブチロラクトン基、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1~C6カルビノール基、ノルボルネン基、トルイル基、C1~C3アルコキシフェニル基、ハロゲン原子若しくはC1~C3アルコキシシリル基で置換されていてもよいC6~C30アリール基、酸素原子で中断されていてもよいC1~C4アルキル基、フェニルスルホンアミド基、C1~C3アルキル基若しくはC2~C5アルケニル基で置換されていてもよい環状アミド基、C1~C3アルキル基若しくはC2~C5アルケニル基で置換されていてもよい環状イミド基、C1~C3アルキル基若しくはC2~C5アルケニル基で置換されていてもよいC3~C6環状アルケニル基、フェニルスルホン基、トルイルスルホン基又は下記式(1-1)若しくは(1-2)で表される一価の基を示し、
【化8】

【化9】

nは0~4の整数であり、
はC1~4の一価炭化水素基であり、
Xは水素原子又はC1~4の一価炭化水素基を示し、
aは1~2、
bは0~1、
cは0~2の数であり、
a+b+c≦4である。)
【0022】
平均組成式(1)で示される化合物の分子量は、例えば100~999である。
【0023】
上記「酸素原子で中断されていてもよいC1~C4アルキル基」、「C1~C3アルキル基若しくはC2~C5アルケニル基で置換されていてもよい環状アミド基」、「C1~C3アルキル基若しくはC2~C5アルケニル基で置換されていてもよい環状イミド基」、「C1~C3アルキル基若しくはC2~C5アルケニル基で置換されていてもよい環状アルケニル基」における典型的なアルキル基としては直鎖又は分枝を有する炭素数1~3又は1~4のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基等が挙げられる。また環状アルキル基を用いることもでき、例えば、シクロプロピル基等が挙げられる。
【0024】
酸素原子で中断されているC1~C4アルキル基としては、メトキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基などが挙げられる。
【0025】
C2~C5アルケニル基としては、アリル基、ビニル基(エテニル基)、プロぺニル基及びブテニル基が挙げられるが、好ましくはアリル基である。
【0026】
環状アミドに由来する一価の基としては、α-ラクタム(三員環)、β-ラクタム(四員環)、γ-ラクタム(五員環)、δ-ラクタム(六員環)に由来する一価の基が挙げられる。
【0027】
環状イミドに由来する一価の基としては、例えばイソシアヌル基である。本願の環状イミドに由来する一価の基として好ましくは、2,4位の窒素原子上の置換基が水素原子、メチル基、又はC2~C5アルケニル基であるイソシアヌル基である。
さらに好ましくは、下記の式(1-3)の構造を有する一価の基である。
【化10】
【0028】
上記「C1~C3アルキル基若しくはC2~C5アルケニル基で置換されていてもよいC3~C6環状アルケニル基」における典型的な環状アルケニル基としては、1-シクロペンテニル基、2-シクロペンテニル基、3-シクロペンテニル基、1-メチル-2-シクロペンテニル基、1-メチル-3-シクロペンテニル基、2-メチル-1-シクロペンテニル基、2-メチル-2-シクロペンテニル基、2-メチル-3-シクロペンテニル基、2-メチル-4-シクロペンテニル基、2-メチル-5-シクロペンテニル基、2-メチレン-シクロペンチル基、3-メチル-1-シクロペンテニル基、3-メチル-2-シクロペンテニル基、3-メチル-3-シクロペンテニル基、3-メチル-4-シクロペンテニル基、3-メチル-5-シクロペンテニル基、3-メチレン-シクロペンチル基、1-シクロヘキセニル基、2-シクロヘキセニル基及び3-シクロヘキセニル基等が挙げられる。
「C1~C3アルキル基若しくはC2~C5アルケニル基で置換されていてもよい環状アルケニル基」としては、例えば1つの水素原子が、上記C1~C3アルキル基若しくはC2~C5アルケニル基で置換された上記環状アルケニル基などが挙げられる。
【0029】
上記「ハロゲン原子若しくはC1~C3アルコキシシリル基で置換されていてもよいC6~C30アリール基」における典型的なアリール基としては炭素数6~30のアリール基が挙げられ、例えばフェニル基、o-メチルフェニル基、m-メチルフェニル基、p-メチルフェニル基、o-クロルフェニル基、m-クロルフェニル基、p-クロルフェニル基、o-フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、p-メルカプトフェニル基、o-メトキシフェニル基、p-メトキシフェニル基、p-アミノフェニル基、p-シアノフェニル基、α-ナフチル基、β-ナフチル基、o-ビフェニリル基、m-ビフェニリル基、p-ビフェニリル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、4-フェナントリル基、9-フェナントリル基及び4-トリエトキシシリルフェニル基等が挙げられる。
【0030】
上記「C1~C3アルコキシフェニル基」、「ハロゲン原子若しくはC1~C3アルコキシシリル基で置換されていてもよいC6~C30アリール基」における典型的なアルコキシ基としては、炭素数1~3の直鎖、分岐、環状のアルキル部分を有するアルコキシ基が挙げられ、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基等が、また環状のアルコキシ基としてはシクロプロポキシ基等が挙げられる。
「C1~C3アルコキシフェニル基」としては、例えば4-メトキシフェニル基、4-エトキシフェニル基、4-(メトキシメトキシ)フェニル基、4-(1-メトキシエトキシ)フェニル基などが挙げられる。
【0031】
上記「ハロゲン原子で置換されていてもよいC1~C6カルビノール基」、「ハロゲン原子若しくはC1~C3アルコキシシリル基で置換されていてもよいC6~C30アリール基」における典型的なハロゲン原子としてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0032】
ハロゲン原子で置換されていてもよいC1~C6カルビノール基としては、ジ(トリフルオロメチル)ヒドロキシメチル基、1,1-ジ(トリフルオロメチル)-1-ヒドロキシエチル基などが挙げられる。
【0033】
好ましいRとしては、アセトキシ基、γ―ブチロラクトン基、ジ(トリフルオロメチル)ヒドロキシメチル基、シクロヘキセニル基、トルイル基、C1~C3アルコキシフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、フェナントレニル基、C1~C3アルコキシシリルフェニル基、フェニルスルホンアミド基、又は下記式(1-1)、(1-2)若しくは(1-3)で表される一価の基
【化11】

【化12】

【化13】

が挙げられる。
【0034】
はC1~4の一価炭化水素基であり、具体的には直鎖又は分枝を有する炭素数1~4のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基等が挙げられる。
【0035】
平均組成式(1)で示される化合物、その加水分解物、又はその加水分解縮合物のそれぞれは一種又は二種以上とすることができ、化合物、その加水分解物、又はその加水分解縮合物を各一種又は二種以上混合して使用することもできる。好ましくは一種又は二種である。
【0036】
二種を組み合わせる場合、例えば、
(1a)Yがトルイル基、C1~C3アルコキシフェニル基、ハロゲン原子若しくはC1~C3アルコキシシリル基で置換されていてもよいC6~C30アリール基、フェニルスルホンアミド基、C1~C3アルキル基若しくはC2~C5アルケニル基で置換されていてもよい環状アミドに由来する一価の基、C1~C3アルキル基若しくはC2~C5アルケニル基で置換されていてもよい環状イミドに由来する一価の基を有する上記平均組成式(1)で示される化合物と、
(2a)Yがフェニルスルホンアミド基、フェニルスルホン基、p-トリルスルホニル基、p-トルエンスルホニル基又は下記式(1-1)若しくは(1-2)で表される一価の基を有する上記平均組成式(1)で示される化合物との組み合わせである。
【化14】

【化15】

二種以上を組み合わせる場合、例えば、
(1a)YがC2~C5アルケニル基で置換されていてもよい環状アミドに由来する一価の基を有する上記平均組成式(1)で示される化合物と、
(2a)Yがフェニルスルホンアミド基、フェニルスルホン基、p-トリルスルホニル基、p-トルエンスルホニル基又は下記式(1-1)若しくは(1-2)で表される一価の基を有する上記平均組成式(1)で示される化合物との組み合わせである。
【化16】

【化17】

二種以上を組み合わせる場合、例えば、
(1a)YがC2~C5アルケニル基であるイソシアヌル基を有する上記平均組成式(1)で示される化合物と、
(2a)Yがフェニルスルホンアミド基、フェニルスルホン基、p-トリルスルホニル基、p-トルエンスルホニル基又は下記式(1-1)若しくは(1-2)で表される一価の基を有する上記平均組成式(1)で示される化合物との組み合わせである。
【化18】

【化19】

二種以上を組み合わせる場合、例えば、
(1a)上記Rが、γ―ブチロラクトン基、ジ(トリフルオロメチル)ヒドロキシメチル基、シクロヘキセニル基、トルイル基、C1~C3アルコキシフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、フェナントレニル基、C1~C3アルコキシシリルフェニル基、フェニルスルホンアミド基又は下記式(1-3)で表される一価の基を有する上記平均組成式(1)で示される化合物と、
【化20】

(2a)上記Rが、フェニルスルホンアミド基又は、下記式(1-1)若しくは(1-2)で表される一価の基を有する上記平均組成式(1)で示される化合物との組み合わせである。
【化21】

【化22】
【0037】
[加水分解物]
平均組成式(1)で示される化合物の加水分解物は、一般的には公知の方法で加水分解して得ることができる。最も広く知られている方法としては、平均組成式(1)で示される化合物を溶媒に溶解した溶液に、純水又は純水と溶媒の混合溶媒を滴下などの方法で加え、温度40℃以上で数時間以上加熱、攪拌する加水分解法である。この方法において用いる純水の量は、完全加水分解及び部分加水分解の目的に応じて任意に選択される。平均組成式(1)で示される化合物の全アルコキシ基に対して通常0.5~100モル、好ましくは1~10モルの水を用いる。加水分解は加水分解触媒を用いることが出来るが、加水分解触媒を用いずに行うこともできる。加水分解触媒を用いる場合は、加水分解性基の1モル当たり0.001~10モル、好ましくは0.001~1モルの加水分解触媒を用いることができる。加水分解と縮合を行う際の反応温度は、通常2~150℃である。加水分解は完全に加水分解を行うことも、部分加水分解することでも良い。即ち、加水分解縮合物中に加水分解物やモノマーが残存していても良い。
【0038】
上記加水分解物は、平均組成式(1)で示される化合物、その加水分解物、又はその加水分解縮合物のそれぞれは一種又は二種以上とすることができ、化合物、その加水分解物、又はその加水分解縮合物を各一種又は二種以上混合して使用することもできる。好ましくは一種又は二種である。
【0039】
上記加水分解物の二種の組み合わせの具体例としては、上述した平均組成式(1)で示される化合物の組み合わせが挙げられる。
【0040】
上記の加水分解法においては、加水分解反応を促進するために、酸触媒又はアルカリ触媒を使用することが一般的である。加水分解触媒としては、酸又は塩基を用いることができる。また、加水分解触媒としては、金属キレート化合物、有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基を挙げることができる。
【0041】
加水分解触媒としての金属キレート化合物は、例えばトリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ-n-プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ-i-プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ-n-ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ-sec-ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ-t-ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ-n-プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ-i-プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ-n-ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ-sec-ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ-t-ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ-n-プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ-i-プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ-n-ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ-sec-ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ-t-ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、テトラキス(アセチルアセトナート)チタン、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ-n-プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ-i-プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ-n-ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ-sec-ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ-t-ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ-n-プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ-i-プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ-n-ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ-sec-ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ-t-ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ-n-プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ-i-プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ-n-ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ-sec-ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ-t-ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、テトラキス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)チタン、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)チタン、等のチタンキレート化合物;トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ-n-プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ-i-プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ-n-ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ-sec-ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ-t-ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ-n-プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ-i-プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ-n-ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ-sec-ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ-t-ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ-n-プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ-i-プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ-n-ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ-sec-ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ-t-ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ-n-プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ-i-プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ-n-ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ-sec-ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ-t-ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ-n-プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ-i-プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ-n-ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ-sec-ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ-t-ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ-n-プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ-i-プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ-n-ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ-sec-ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ-t-ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、等のジルコニウムキレート化合物;トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム等のアルミニウムキレート化合物;などを挙げることができる。
【0042】
加水分解触媒としての有機酸は、例えば酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、アジピン酸、セバシン酸、没食子酸、酪酸、メリット酸、アラキドン酸、2-エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p-アミノ安息香酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸等を挙げることができる。
【0043】
加水分解触媒としての無機酸は、例えば塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸等を挙げることができる。
【0044】
加水分解触媒としての有機塩基は、例えばピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等を挙げることができる。無機塩基としては、例えばアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等を挙げることができる。これら触媒の内、金属キレート化合物、有機酸、無機酸が好ましく、これらは1種あるいは2種以上を同時に使用しても良い。
【0045】
加水分解に用いられる有機溶媒としては、例えばn-ペンタン、i-ペンタン、n-ヘキサン、i-ヘキサン、n-ヘプタン、i-ヘプタン、2,2,4-トリメチルペンタン、n-オクタン、i-オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、i-プロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、i-ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ-i-プロピルベンセン、n-アミルナフタレン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、2-メチルブタノール、sec-ペンタノール、t-ペンタノール、3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、sec-ヘキサノール、2-エチルブタノール、sec-ヘプタノール、ヘプタノール-3、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、sec-オクタノール、n-ノニルアルコール、2,6-ジメチルヘプタノール-4、n-デカノール、sec-ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec-テトラデシルアルコール、sec-ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェニルメチルカルビノール、ジアセトンアルコール、クレゾール等のモノアルコール系溶媒;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ペンタンジオール-2,4、2-メチルペンタンジオール-2,4、ヘキサンジオール-2,5、ヘプタンジオール-2,4、2-エチルヘキサンジオール-1,3、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、メチル-n-ペンチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジ-i-ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、フェンチョン等のケトン系溶媒;エチルエーテル、i-プロピルエーテル、n-ブチルエーテル、n-ヘキシルエーテル、2-エチルヘキシルエーテル、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、ジオキソラン、4-メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;ジエチルカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸sec-ペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2-エチルブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n-ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸i-アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ-n-ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-ブチル、乳酸n-アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等のエステル系溶媒;N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド、N-メチルピロリドン等の含窒素系溶媒;硫化ジメチル、硫化ジエチル、チオフェン、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3-プロパンスルトン等の含硫黄系溶媒等を挙げることができる。これらの溶媒は1種又は2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0046】
特に、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、メチル-n-ペンチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジ-i-ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、フェンチョン等のケトン系溶媒が溶液の保存安定性の点で好ましい。
【0047】
加熱温度及び加熱時間は、適宜必要に応じて選択できる。例えば、50℃で24時間、加熱、攪拌する方法、還流下で8時間加熱、攪拌するなどの方法が挙げられる。なお、平均組成式(1)で示される化合物が加水分解する限りにおいては、加熱せずに、室温下で攪拌する方法も使用可能である。
【0048】
[加水分解縮合物]
平均組成式(1)で示される化合物の加水分解縮合物は、平均組成式(1)で示される化合物を、水を含有する溶剤に溶解させ、触媒の存在下、加水分解縮合反応を行った後、水を含有する溶剤、触媒等を減圧留去して得ることができる。好ましい触媒として、例えば、塩酸、硝酸等の無機酸、及びギ酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、氷酢酸、無水酢酸、プロピオン酸、n-酪酸等の有機酸を挙げることができる。使用する触媒の量は、平均組成式(1)で示される化合物の全質量に対して、例えば0.001質量%乃至1質量%である。上記加水分解縮合反応は、例えば、30℃乃至80℃の温度条件にて実施される。上記加水分解縮合反応時のpHは特に限定されないが、通常2以上5未満である。また、本発明の効果を損なわない限りにおいて、平均組成式(1)で示される化合物以外の化合物を添加し、加水分解共縮合物とすることもできる。
【0049】
上記加水分解縮合物は、平均組成式(1)で示される化合物、その加水分解物、又はその加水分解縮合物のそれぞれは一種又は二種以上とすることができ、化合物、その加水分解物、又はその加水分解縮合物を各一種又は二種以上混合して使用することもできる。好ましくは一種又は二種である。
【0050】
上記加水分解縮合物の二種の組み合わせの具体例としては、上述した平均組成式(1)で示される化合物の組み合わせが挙げられる。
【0051】
上記加水分解縮合物の重量平均分子量(Mw)は1,000~50,000である。好ましい重量平均分子量は、1,200~20,000である。重量平均分子量1,000~50,000の縮合物を得ることができる。また、上記加水分解縮合物の重量平均分子量が、例えば300~999、例えば300~1,000、例えば300~2,000、例えば300~3,000のオリゴマーであってもよい。重量平均分子量はGPC分析によるポリスチレン換算で得られる分子量である。GPCの測定条件は、例えばGPC装置(商品名HLC-8220GPC、東ソー株式会社製)、GPCカラム(商品名ShodexKF803L、KF802、KF801、昭和電工製)、カラム温度は40℃、溶離液(溶出溶媒)はテトラヒドロフラン、流量(流速)は1.0ml/分、標準試料はポリスチレン(昭和電工株式会社製)を用いて行うことができる。
【0052】
〔塗布液の調製〕
本発明に係る表面改質剤の塗布液は、平均組成式(1)で示される化合物、平均組成式(1)で示される化合物の加水分解物、又は平均組成式(1)で示される化合物の加水分解縮合物、及び必要に応じてその他の成分を含有し、それらを適当な溶媒に溶解することによって調製することができる。本発明においては、かかる塗布液が得られる限り、その調製方法は限定されない。例えば、各成分を、使用する溶媒中に順次、添加し混合してもよい。この場合、各成分の添加順序は特に限定されない。また、各成分をそれぞれ使用する溶媒中に溶解した溶液を混合してもよい。
【0053】
また、本発明の塗布液には、そのpHの調整を目的として、上記溶液に予め酸を混合することができる。酸の量は、平均組成式(1)で示される化合物のケイ素原子の1モルに対して0.01~2.5モルが好ましく、より好ましくは0.1~2モルである。
上記で用いる酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸の無機酸;ギ酸、酢酸、リンゴ酸等のモノカルボン酸類;シュウ酸;クエン酸、プロピオン酸、コハク酸等の多価カルボン酸類等の有機酸が挙げられる。これらのうち、溶液状態の酸はそのまま用いることができるが、塗布液に含有される溶媒で希釈して用いるのが好ましい。それ以外の酸は、塗布液の溶媒に適当な濃度で溶解して用いることが好ましい。
【0054】
溶媒は、平均組成式(1)で示される化合物、平均組成式(1)で示される化合物の加水分解物、又は平均組成式(1)で示される化合物の加水分解縮合物を調製する際に用いられる有機溶媒や、これらの溶液の濃縮、希釈又は他の溶媒に置換する際に用いる溶媒を用いることができる。溶媒は、一種でも複数種でも任意に選択して用いることができる。
【0055】
本発明の塗布液から硬化膜を作製する際、本発明の塗布液は、平均組成式(1)で示される化合物、平均組成式(1)で示される化合物の加水分解物、又は平均組成式(1)で示される化合物の加水分解縮合物と上述の溶媒とを含む形態であるため、そのまま基板への塗布に用いることができる。また、濃度調整、塗膜の平坦性の確保、塗布液の基板への濡れ性の向上、塗布液の表面張力、極性、沸点の調整等の目的で、上述の溶媒、更にはその他種々の溶媒を添加し、塗布液として用いてもよい。
【0056】
[その他の成分]
表面改質剤に含まれていても良いその他の成分について以下に説明する。
【0057】
本発明の表面改質剤は硬化触媒を含有することができる。硬化触媒は、加水分解縮合物を含有する塗布膜を加熱し硬化させる時に硬化触媒の働きをする。硬化触媒としては、アンモニウム塩、ホスフィン類、ホスホニウム塩、スルホニウム塩を用いることができる。具体例はWO2017/145809に記載されているとおりである。
【0058】
その中でも硬化触媒としては窒素含有シラン化合物が好ましい。窒素含有シラン化合物としてはN-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール(IMIDTEOS)等のイミダゾール環含有シラン化合物が挙げられる。
【0059】
平均組成式(1)で示される化合物を溶媒中で触媒を用いて加水分解し、縮合して得られる加水分解縮合物(ポリマー)は、減圧蒸留等により副生成物のアルコールや用いた加水分解触媒や水を同時に除去することができる。また、加水分解に用いた酸や塩基触媒を中和やイオン交換により取り除くことができる。そして本発明の表面改質剤には、その加水分解縮合物を含む表面改質剤の安定化のために有機酸、水、アルコール、又はそれらの組み合わせを添加することができる。
【0060】
上記有機酸としては、例えばシュウ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、マロン酸、メチルマロン酸、コハク酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、フタル酸、クエン酸、グルタル酸、クエン酸、乳酸、サリチル酸等が挙げられる。中でも、シュウ酸、マレイン酸等が好ましい。加える有機酸は、平均組成式(1)で示される化合物の加水分解縮合物100質量部に対して0.1~5.0質量部である。また加える水は純水、超純水、イオン交換水等を用いることができ、その添加量は表面改質剤100質量部に対して1~20質量部とすることができる。また加えるアルコールとしては塗布後の加熱により飛散しやすいものが好ましく、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等が挙げられる。加えるアルコールは表面改質剤100質量部に対して1~20質量部とすることができる。
【0061】
従って、表面改質剤は、水、酸、及び硬化触媒からなる群から選ばれた一つ以上を含むことができる。本発明の表面改質剤は、上記の成分の他、必要に応じて有機ポリマー化合物、光酸発生剤及び界面活性剤等を含むことができる。
【0062】
有機ポリマー化合物を使用することにより、本発明の表面改質剤から形成される膜のドライエッチング速度(単位時間当たりの膜厚の減少量)、減衰係数及び屈折率等を調整することができる。
【0063】
本発明の表面改質剤に含まれる光酸発生剤としては、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、及びジスルホニルジアゾメタン化合物等が挙げられる。オニウム塩化合物としてはジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロノルマルブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロノルマルオクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムカンファースルホネート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホネート及びビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート等のヨードニウム塩化合物、及びトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロノルマルブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート及びトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート等のスルホニウム塩化合物等が挙げられる。
【0064】
スルホンイミド化合物としては、例えばN-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(ノナフルオロノルマルブタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド及びN-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ナフタルイミド等が挙げられる。
【0065】
ジスルホニルジアゾメタン化合物としては、例えば、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p-トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4-ジメチルベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、及びメチルスルホニル-p-トルエンスルホニルジアゾメタン等が挙げられる。
【0066】
光酸発生剤は一種または二種以上を組み合わせて使用することができる。光酸発生剤が使用される場合、その割合としては、平均組成式(1)で示される化合物の加水分解縮合物100質量部に対して、0.01~15質量部、または0.1~10質量部、または0.5~1質量部である。
【0067】
界面活性剤は、本発明の表面改質剤を基板に塗布した際に、ピンホール及びストレーション等の発生を抑制するのに有効である。本発明の表面改質剤に含まれる界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、エフトップ(登録商標)EF301、EF303、EF352((株)トーケムプロダクツ製)、メガファック(登録商標)F171、F173、R-08、R-30、R-30N、R-40LM(DIC(株)製)、フロラード(登録商標)FC430、FC431(住友スリーエム(株)製)、アサヒガード(登録商標)AG710、サーフロン(登録商標)S-382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤、及びオルガノシロキサンポリマ-KP341(信越化学工業(株)製)等を挙げることができる。これらの界面活性剤は単独で使用してもよいし、また二種以上の組み合わせで使用することもできる。界面活性剤が使用される場合、その割合としては、平均組成式(1)で示される化合物の加水分解縮合物100質量部に対して0.0001~5質量部、または0.001~1質量部、または0.01~1質量部である。
【0068】
また、本発明の表面改質剤には、レオロジー調整剤及び接着補助剤等を添加することができる。レオロジー調整剤は、表面改質剤の流動性を向上させるのに有効である。接着補助剤は、半導体基板またはレジストと下層膜の密着性を向上させるのに有効である。
【0069】
本発明の表面改質剤に使用される溶媒としては、前記の固形分を溶解できる溶媒であれば、特に制限なく使用することができる。そのような溶媒としては、例えば、水(イオン交換水、超純水)、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、メチルイソブチルカルビノール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエテルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸イソプロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸イソプロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸アミル、ギ酸イソアミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシ-3-メチル酪酸メチル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メトキシプロピルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、3-メチル-3-メトキシブチルブチレート、アセト酢酸メチル、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、シクロヘキサノン、N、N-ジメチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、4-メチル-2-ペンタノール、及びγ-ブチロラクトン等を挙げることができる。これらの溶媒は単独で、または二種以上の組み合わせで使用することができる。
【0070】
好ましくは、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、超純水である。
【0071】
本発明に係る表面改質剤は、Bare-Si他、SiO、SiN、SiON、TiNなど酸化膜、窒化膜、金属基板上に適用することができる。好ましくは、上記基板は金属又は無機系反射防止膜基板である。好ましくは、上記基板は、Si、SiN、SiON、TiSi、TiN又はCr蒸着されていてもよいガラスである。
【0072】
更に、本発明に係る表面改質剤は、塗布型又は蒸着型SiHM上、BARC上、塗布型SOC(スピンオンカーボン、炭素含有量が高い膜)、蒸着型のアモルファスカーボン上にも適用が可能である。
【0073】
[積層基板]
基板上に、本発明に係る表面改質剤、次いでレジストパターンが順に積層した積層基板とすることができる。好ましくは、当該積層基板は、基板上にシリコンハードマスク層をさらに有する。上記シリコンハードマスク層の下に、さらに上記スピンオンカーボン層やアモルファスカーボン層が形成される場合もある。
シリコンハードマスク層、スピンオンカーボン層及びアモルファスカーボン層の膜厚は、例えば5nm~2000nmである。
【0074】
[レジストパターン形成方法、半導体装置の製造方法]
本発明に係る表面改質剤を基板上に塗布し、ベークした後、フォトレジスト組成物を塗布し、パターニングを行うことによってパターンを形成することができる。好ましくは上記ベーク後、フォトレジスト組成物の塗布前に溶剤で改質する工程をさらに含む。好ましくは、上記パターニングは、ArF、EUV又はEBにて露光する工程を含む。より好ましくはEUV(波長13.5nm)又はEB(電子線)であり、最も好ましくはEUV(波長13.5nm)である。
【0075】
上記パターンとして好ましいのは、レジストパターンである。
【0076】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、本発明に係る表面改質剤を基板上に塗布し、ベークした後、フォトレジスト組成物を塗布し、パターニングを行い、次いで基板をエッチングする工程を含む、半導体装置の製造方法である。
【0077】
本発明に係る表面改質剤を基板上に塗布することにより塗布膜を作製する。塗布方法はスピンコート法等の常法によって行われる。この膜をベークした後、その上にフォトレジスト組成物を塗布してレジストを形成する工程を行うことができる。ベーク温度、時間は通常80~300℃、0.5~5分間である。
本願の表面改質剤の塗布膜形成後、さらにフォトレジスト組成物の塗布前に溶剤で処理する工程を含んでもよい。本目的で使用される溶媒は、フォトレジスト組成物に使用される溶媒が用いられるが、例えばメチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、メチルイソブチルカルビノール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエテルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸イソプロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸イソプロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸アミル、ギ酸イソアミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシ-3-メチル酪酸メチル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メトキシプロピルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、3-メチル-3-メトキシブチルブチレート、アセト酢酸メチル、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、シクロヘキサノン、N、N-ジメチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、4-メチル-2-ペンタノール、及びγ-ブチロラクトンが用いられるが、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びシクロヘキサノンが好ましい。溶媒をスピンコート法等の常法で塗布後、80℃~200℃に加熱して溶媒を乾燥させてもよい。
また、本発明に係る表面改質剤を基板上に塗布することにより塗布膜を作製し、この膜をベークした後、その上にケイ素のハードマスクを形成し、その上にレジストを形成させることもできる。
【0078】
本発明に係る表面改質剤は、半導体基板上に膜厚1nm~1,000nmの被膜を形成することができる。膜厚は例えば1nm~500nm、0.1nm~500nm、0.1nm~300nm、0.1nm~200nm、0.1nm~100nm、0.1nm~50nm、0.1nm~30nm、0.1nm~20nm、0.1nm~10nmであり、最も好ましくは0.1nm~8nmである。
【0079】
上記ケイ素のハードマスクとしては、加水分解性シランを加水分解して得られたポリシロキサンを用いることができる。例えば、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、及びフェニルトリエトキシシランを加水分解し得られるポリシロキサンを例示することができる。これらは本発明に係る表面改質剤の塗布膜の上に膜厚5~200nmで被膜を形成することができる。
【0080】
上記フォトレジスト組成物としては露光に使用される光に感光するものであれば特に限定はない。ネガ型フォトレジスト及びポジ型フォトレジストのいずれも使用できる。ノボラック樹脂と1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとからなるポジ型フォトレジスト、酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジスト、酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物とアルカリ可溶性バインダーと光酸発生剤とからなる化学増幅型フォトレジスト、及び酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物と光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジストなどがある。例えば、シプレー社製商品名APEX-E、住友化学工業(株)製商品名PAR710、及び信越化学工業(株)製商品名SEPR430等が挙げられる。また、例えば、Proc.SPIE,Vol.3999,330-334(2000)、Proc.SPIE,Vol.3999,357-364(2000)、やProc.SPIE,Vol.3999,365-374(2000)に記載されているような、含フッ素原子ポリマー系フォトレジストを挙げることができる。
【0081】
また、電子線レジストとしてはネガ型、ポジ型いずれも使用できる。酸発生剤と酸により分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーからなる化学増幅型レジスト、アルカリ可溶性バインダーと酸発生剤と酸により分解してレジストのアルカリ溶解速度を変化させる低分子化合物からなる化学増幅型レジスト、酸発生剤と酸により分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーと酸により分解してレジストのアルカリ溶解速度を変化させる低分子化合物からなる化学増幅型レジスト、電子線によって分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーからなる非化学増幅型レジスト、電子線によって切断されアルカリ溶解速度を変化させる部位を有するバインダーからなる非化学増幅型レジストなどがある。これらの電子線レジストを用いた場合も照射源を電子線としてフォトレジストを用いた場合と同様にレジストパターンを形成することができる。
【0082】
レジスト溶液は塗布した後に焼成温度70~150℃で、焼成時間0.5~5分間行い、レジスト膜厚は10~1,000nmの範囲で得られる。例えばEUV光(波長13.5nm)又は電子線用では10~50nm、ArFエキシマレーザー(波長193nm)用では50~200nm、好ましくは100~150nmとすることができる。本発明に係る表面改質剤、レジスト溶液、現像液等は、スピンコート、ディップ法、スプレー法等で被覆できるが、特にスピンコート法が好ましい。レジストの露光は所定のマスクを通して露光が行なわれる。露光には、KrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)及びEUV光(波長13.5nm)、電子線等を使用することができる。露光後、必要に応じて露光後加熱(PEB:Post Exposure Bake)を行なうこともできる。露光後加熱は、加熱温度70℃~150℃、加熱時間0.3~10分間から適宜、選択される。
【0083】
次いで、現像液によって現像を行うことができる。これにより、例えばポジ型フォトレジストが使用された場合は、露光された部分のフォトレジストが除去され、フォトレジストのパターンが形成される。
【0084】
現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、コリンなどの水酸化四級アンモニウムの水溶液、エタノールアミン、プロピルアミン、エチレンジアミンなどのアミン水溶液等のアルカリ性水溶液を例として挙げることができる。さらに、これらの現像液に界面活性剤などを加えることもできる。現像の条件としては、温度5~50℃、時間10~600秒から適宜選択される。また、本発明では現像液として有機溶剤を用いることができる。
【0085】
有機溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2-メトキシブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、4-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-エチル-3-メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2-エトキシブチルアセテート、4-エトキシブチルアセテート、4-プロポキシブチルアセテート、2-メトキシペンチルアセテート、3-メトキシペンチルアセテート、4-メトキシペンチルアセテート、2-メチル-3-メトキシペンチルアセテート、3-メチル-3-メトキシペンチルアセテート、3-メチル-4-メトキシペンチルアセテート、4-メチル-4-メトキシペンチルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、メチル-3-メトキシプロピオネート、エチル-3-メトキシプロピオネート、エチル-3-エトキシプロピオネート、プロピル-3-メトキシプロピオネート等を例として挙げることができる。
【0086】
レジストパターンはエッチング除去してパターンを反転させることができる。ドライエッチングはテトラフルオロメタン、パーフルオロシクロブタン(C)、パーフルオロプロパン(C)、トリフルオロメタン、一酸化炭素、アルゴン、酸素、窒素、六フッ化硫黄、ジフルオロメタン、三フッ化窒素及び三フッ化塩素等のガスを用いて行うことができる。特に酸素系のガスによりドライエッチングが行われることが好ましい。
【0087】
上記のようにパターンが形成されたフォトレジスト膜(上層)を保護膜として、本発明の表面改質剤の下層に形成されたシリコンハードマスク(中間層)をエッチング等により除去してパターン化が行われ、次いでパターン化されたフォトレジスト膜(上層)及びシリコンハードマスク(中間層)からなる膜を保護膜として、スピンオンカーボン又はアモルファスカーボン等の有機膜(下層)を除去してパターン化が行われる。最後に、パターン化されたシリコンハードマスク(中間層)及び上記有機膜(下層)を保護膜として、半導体基板の加工が行なわれる。
また、基板上に上記有機膜を形成していない場合は、パターン化されたフォトレジスト及び上記有機膜(中間層)からなる膜を保護膜として、半導体基板の加工が行なわれる。
【0088】
フォトレジスト膜がパターン化された後、まず、フォトレジスト膜が除去された部分のシリコンハードマスク(中間層)をドライエッチングによって取り除き、上記有機膜(下層)を露出させる。シリコンハードマスクのドライエッチングにはテトラフルオロメタン(CF)、パーフルオロシクロブタン(C)、パーフルオロプロパン(C)、トリフルオロメタン、一酸化炭素、アルゴン、酸素、窒素、六フッ化硫黄、ジフルオロメタン、三フッ化窒素及び三フッ化塩素、塩素、トリクロロボラン及びジクロロボラン等のガスを使用することができる。シリコンハードマスクのドライエッチングにはハロゲン系ガスを使用することが好ましい。ハロゲン系ガスによるドライエッチングでは、基本的に有機物質からなるフォトレジスト膜、上記有機膜は除去されにくい。それに対し、ケイ素原子を多く含むシリコンハードマスクはハロゲン系ガスによって速やかに除去される。そのため、シリコンハードマスクのドライエッチングに伴うフォトレジストの膜厚の減少を抑えることができる。そして、その結果、フォトレジストを薄膜で使用することが可能となる。
シリコンハードマスクのドライエッチングはフッ素系ガスによることが好ましく、フッ素系ガスとしては、例えば、テトラフルオロメタン(CF)、パーフルオロシクロブタン(C)、パーフルオロプロパン(C)、トリフルオロメタン、及びジフルオロメタン(CH)等が挙げられる。
【0089】
その後、パターン化されたフォトレジスト膜及びシリコンハードマスクからなる膜を保護膜として有機下層膜の除去が行われる。上記有機膜(下層)は酸素系ガスによるドライエッチングによって行なわれることが好ましい。ケイ素原子を多く含むシリコンハードマスクは、酸素系ガスによるドライエッチングでは除去されにくいからである。
【0090】
また、レジストパターンを除去し、本発明に係る表面改質剤に含まれていた平均組成式(1)で示される化合物、その加水分解物、又はその加水分解縮合物によるリバースパターン(反転パターン)を形成することもできる。
【実施例
【0091】
以下に実施例等を参照しつつ本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の態様に限定されるものではない。
【0092】
〔塗布液の調製〕
式-1から式-22に記載のSi含有モノマーまたは式23に記載のSi含有ポリマー(Mw=2300)を、表1に記載の割合で溶媒に溶解し、調製例1-23の調製液を得た。
【0093】
【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】
【0094】
【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

【化32】

【化33】

【化34】

【化35】

【化36】
【0095】
【化37】
【0096】
【化38】
【0097】
【化39】

【化40】
【0098】
【化41】

【化42】
【0099】
【化43】

【化44】
【0100】
【化45】
【0101】
表1中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートはPGMEA、プロピレングリコールモノエチルエーテルはPGEE、プロピレングリコールモノメチルエーテルはPGME、超純水はDIWと略した。また、各成分の含有割合は質量部で表す。
【0102】
【表1】
【0103】
次に、表2のように各調製例に対してpH調整剤および硬化触媒を添加して塗布液1-23を得た。pH調整剤はマレイン酸、硬化触媒は下記の式―24に示すものを用いた。各成分の含有割合は質量部で表す。
【0104】
【化46】
【0105】
【表2】
【0106】
以下に本願発明の塗布液を用いた評価結果を示す。
【0107】
〔基板表面付着〕
Bare-Siウェハに対し塗布液1-23を塗布した。具体的には、CLEANTRACK(登録商標)ACT8(東京エレクトロン)を用い、塗布液1-23の各々を1mlウェハに塗布、1500rpmで60秒間スピンコートした後、110℃で焼成した。塗布液1-23の各々の塗布膜を形成したBare-Si基板の膜厚を測定することで、材料の基板表面への付着を評価した。材料膜厚はエリプソ式膜厚測定装置RE-3100(SCREEN)を用いて測定した。また、比較例1として、Bare-Siウェハ上の自然酸化膜の膜厚を比較として測定した。測定結果を下記表3に記載する。
【0108】
【表3】
【0109】
〔基板表面改質〕
Bare-SiおよびSiON(50nm)に対し、塗布液1-23の各々を塗布した。具体的には、CLEANTRACK(登録商標)ACT8(東京エレクトロン)を用い、塗布液1-23の各々を1mlウェハに塗布、1500rpmで60秒間スピンコートした後、110℃で焼成した。塗布液1-23の各々の塗布膜を形成したBare-Si基板に対し、水の接触角を測定した。水接触角の測定は、恒温恒湿環境(23℃±2℃、45%RH±5%)において、全自動接触角計DM-701(協和界面科学(株)製)を使用し、液量3μl、着液後5秒間静止してから測定した。測定結果を下記表4に記載する。
【0110】
【表4】
【0111】
〔EUVパターニング〕
SiON(50nm)に対し塗布液16を塗布し、塗布液16の膜が形成されたウェハ上にフォトレジストを形成させた。フォトレジストはJSR製のEUV―PR(EUV―フォトレジスト)を使用した。EUV露光機を用いたパターニング評価を実施した。NXE3300(ASML製)を用いて露光を行い、SEM(CG4100、HITACHI製)による観察を行った。評価結果を表5に示す。表5中には、SEM観察においてフォトレジストがパターン倒れを起こしている場合はパターン倒れ、フォトレジストがパターン倒れを起こさず、目的のパターンが形成されているものを良好と記載する。また表中の比較例4はSiONウェハに対しHMDS処理を100℃、60秒の条件で実施した後にEUV露光機を用いたパターニングを実施した結果である。
【0112】
【表5】
【0113】
〔EBパターニング〕
SiON(50nm)に対し塗布液19および20を塗布し、塗布液19および20の膜が形成されたウェハ上にフォトレジスト層を形成させた。フォトレジストはTOK製のEUV―PRを使用した。EB描画機ELS―G130(エリオニクス製)を用いて描画を行い、SEM(CG4100、HITACHI製)による観察を行った。評価結果を表6に示す。表6中には、SEM観察においてフォトレジストがパターン倒れを起こしている場合はパターン倒れ、目的のパターンが形成されているものを良好と記載する。また表中の比較例5はSiONウェハに対しHMDS処理を100℃、60秒の条件で実施した後にEUV露光機を用いたパターニングを実施した結果である。
【0114】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0115】
シランカップリング剤によるウェハ表面の改質によりフォトレジストの密着性が改善され、先端リソグラフィープロセスにおけるフォトレジスト解像性が改善される。またシランカップリング剤の膜厚が従来の下層膜と比較して薄いため、エッチング工程におけるサイドエッチングなどのエッチング不良が起こりにくいという利点がある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6