(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】変倍光学系および光学機器
(51)【国際特許分類】
G02B 15/20 20060101AFI20240827BHJP
G02B 13/18 20060101ALN20240827BHJP
【FI】
G02B15/20
G02B13/18
(21)【出願番号】P 2023122241
(22)【出願日】2023-07-27
(62)【分割の表示】P 2019157434の分割
【原出願日】2019-08-29
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【氏名又は名称】並木 敏章
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩史
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/194775(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/121966(WO,A1)
【文献】特開2019-008031(JP,A)
【文献】国際公開第2018/185867(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に光軸上に並んで配置された、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、3又は4のレンズ群から構成される後続レンズ群とからなり、
広角端から望遠端への変倍時に、隣り合う前記レンズ群の間隔が変化し、
前記後続レンズ群は、正の屈折力を有する第1合焦レンズ群と、前記第1合焦レンズ群よりも像側に配置され、正の屈折力を有する第2合焦レンズ群とを有し、
無限遠から近距離への合焦に際して、前記第1合焦レンズ群および前記第2合焦レンズ群が前記光軸方向に移動し、
前記後続レンズ群のうち、最も像面側に配置されたレンズ群は
、物体側から順に、1つの単レンズと、1つの接合レンズ
とからなり、
以下の条件式を満足する変倍光学系。
0.10<(-f1)/f2<1.10
0.20<ff1/ff2<1.70
但し、f1:第1レンズ群の焦点距離
f2:第2レンズ群の焦点距離
ff1:第1合焦レンズ群の焦点距離
ff2:第2合焦レンズ群の焦点距離
【請求項2】
以下の条件式を満足する請求項1に記載の変倍光学系。
0.15<(-f1)/ff1<1.30
【請求項3】
以下の条件式を満足する請求項1もしくは2に記載の変倍光学系。
0.10<(-f1)/ff2<0.95
【請求項4】
前記第1合焦レンズ群は、無限遠から至近への変倍の際、物体側へ移動する請求項1~3のいずれかに記載の変倍光学系。
【請求項5】
前記第2合焦レンズ群は、無限遠から至近への変倍の際、像側へ移動する請求項1~4のいずれかに記載の変倍光学系。
【請求項6】
以下の条件式を満足する請求項1~5のいずれかに記載の変倍光学系。
0.01<(-MVF1)/MVF2<30.00
但し、MVF1:無限遠物体から近距離物体への合焦の際の前記第1合焦レンズ群の移動量
MVF2:無限遠物体から近距離物体への合焦の際の前記第2合焦レンズ群の移動量
なお、像側への移動を正とする
【請求項7】
前記第2合焦レンズ群は1枚の凸レンズからなる請求項1~6のいずれかに記載の変倍光学系。
【請求項8】
前記第1合焦レンズ群は凸レンズと凹レンズの接合レンズからなる請求項1~7のいずれかに記載の変倍光学系。
【請求項9】
前記第1レンズ群は、物体側から順に、3枚の負レンズを有する請求項1~8のいずれかに記載の変倍光学系。
【請求項10】
以下の条件式を満足する請求項1~9のいずれかに記載の変倍光学系。
-0.80<βWF1<0.80
但し、βWF1:広角端状態における無限遠物体合焦時の前記第1合焦レンズ群の横倍率
【請求項11】
以下の条件式を満足する請求項1~10のいずれかに記載の変倍光学系。
-0.80<βWF2<0.80
但し、βWF2:広角端状態における無限遠物体合焦時の前記第2合焦レンズ群の横倍率
【請求項12】
以下の条件式を満足する請求項1~11のいずれかに記載の変倍光学系。
(βWF1+(1/βWF1))
-2 <0.25
但し、βWF1:広角端状態における無限遠物体合焦時の前記第1合焦レンズ群の横倍率
【請求項13】
以下の条件式を満足する請求項1~12のいずれかに記載の変倍光学系。
(βWF2+(1/βWF2))
-2 <0.25
但し、βWF2:前記第2合焦レンズ群の広角端状態における無限遠物体合焦時の横倍率
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに記載の変倍光学系を搭載して構成される光学機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変倍光学系およびこれを用いた光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、写真用カメラ、電子スチルカメラ、ビデオカメラ等に適した変倍光学系が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。しかしながら、従来の変倍光学系にあっては、合焦レンズ群の軽量化が不十分であり、無限遠物体から近距離物体への合焦時の球面収差をはじめとする諸収差の変動を抑えることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本発明に係る変倍光学系は物体側から順に光軸上に並んで配置された、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、3又は4のレンズ群から構成される後続レンズ群とからなり、広角端から望遠端への変倍時に、隣り合う前記レンズ群の間隔が変化し、前記後続レンズ群は、正の屈折力を有する第1合焦レンズ群と、前記第1合焦レンズ群よりも像側に配置され、正の屈折力を有する第2合焦レンズ群とを有し、無限遠から近距離への合焦に際して、前記第1合焦レンズ群および前記第2合焦レンズ群が前記光軸方向に移動し、前記後続レンズ群のうち、最も像面側に配置されたレンズ群は、物体側から順に、1つの単レンズと、1つの接合レンズとからなり、以下の条件式を満足する。
0.10<(-f1)/f2<1.10
0.20<ff1/ff2<1.70
但し、f1:第1レンズ群の焦点距離
f2:第2レンズ群の焦点距離
ff1:第1合焦レンズ群の焦点距離
ff2:第2合焦レンズ群の焦点距離
【0005】
本発明に係る光学機器は、上記変倍光学系を搭載して構成される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施例に係る変倍光学系のレンズ構成を示す図である。
【
図2】
図2(A)、
図2(B)、および
図2(C)はそれぞれ、第1実施例に係る変倍光学系の広角端状態、中間焦点距離状態、望遠端状態における無限遠合焦時の諸収差図である。
【
図3】
図3(A)、
図3(B)、および
図3(C)はそれぞれ、第1実施例に係る変倍光学系の広角端状態、中間焦点距離状態、望遠端状態における近距離合焦時の諸収差図である。
【
図4】第2実施例に係る変倍光学系のレンズ構成を示す図である。
【
図5】
図5(A)、
図5(B)、および
図5(C)はそれぞれ、第2実施例に係る変倍光学系の広角端状態、中間焦点距離状態、望遠端状態における無限遠合焦時の諸収差図である。
【
図6】
図6(A)、
図6(B)、および
図6(C)はそれぞれ、第2実施例に係る変倍光学系の広角端状態、中間焦点距離状態、望遠端状態における近距離合焦時の諸収差図である。
【
図7】第3実施例に係る変倍光学系のレンズ構成を示す図である。
【
図8】
図8(A)、
図8(B)、および
図8(C)はそれぞれ、第3実施例に係る変倍光学系の広角端状態、中間焦点距離状態、望遠端状態における無限遠合焦時の諸収差図である。
【
図9】
図9(A)、
図9(B)、および
図9(C)はそれぞれ、第3実施例に係る変倍光学系の広角端状態、中間焦点距離状態、望遠端状態における近距離合焦時の諸収差図である。
【
図10】第4実施例に係る変倍光学系のレンズ構成を示す図である。
【
図11】
図11(A)、
図11(B)、および
図11(C)はそれぞれ、第4実施例に係る変倍光学系の広角端状態、中間焦点距離状態、望遠端状態における無限遠合焦時の諸収差図である。
【
図12】
図12(A)、
図12(B)、および
図12(C)はそれぞれ、第4実施例に係る変倍光学系の広角端状態、中間焦点距離状態、望遠端状態における近距離合焦時の諸収差図である。
【
図13】第5実施例に係る変倍光学系のレンズ構成を示す図である。
【
図14】
図14(A)、
図14(B)、および
図14(C)はそれぞれ、第5実施例に係る変倍光学系の広角端状態、中間焦点距離状態、望遠端状態における無限遠合焦時の諸収差図である。
【
図15】
図15(A)、
図15(B)、および
図15(C)はそれぞれ、第5実施例に係る変倍光学系の広角端状態、中間焦点距離状態、望遠端状態における近距離合焦時の諸収差図である。
【
図16】本実施形態に係る変倍光学系を備えたカメラの構成を示す図である。
【
図17】本実施形態に係る変倍光学系の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明に係る好ましい実施形態について説明する。まず、本実施形態に係る変倍光学系を備えたカメラ(光学機器)を
図16に基づいて説明する。このカメラ1は、
図16に示すように、本体2と本体2に装着される撮影レンズ3により構成される。本体2は、撮像素子4と、デジタルカメラの動作を制御する本体制御部(不図示)と、液晶操作画面5を備える。撮影レンズ3は、複数のレンズ群からなる光学系ZLと、各レンズ群の位置を制御するレンズ位置制御機構(不図示)を備える。レンズ位置制御機構は、レンズ群の位置を検出するセンサ、レンズ群を光軸に沿って前後に移動させるモーター、モーターを駆動する制御回路などにより構成される。
【0008】
被写体からの光は、撮影レンズ3の光学系ZLにより集光されて、撮像素子4の像面I上に到達する。像面Iに到達した被写体からの光は、撮像素子4により光電変換され、デジタル画像データとして不図示のメモリに記録される。メモリに記録されたデジタル画像データは、ユーザの操作に応じて液晶画面5に表示することが可能である。なお、このカメラは、ミラーレスカメラでも、クイックリターンミラーを有した一眼レフタイプのカメラであっても良い。
【0009】
次に、本実施形態に係る変倍光学系(撮影レンズ)について説明する。本実施形態に係る変倍光学系(ズームレンズ)ZLの一例としての変倍光学系ZL(1)は、
図1に示すように、物体側から順に光軸上に並んで配置された、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、後続レンズ群GRとを有し、広角端から望遠端への変倍時に、隣り合う前記レンズ群の間隔が変化する。後続レンズ群GRは、正の屈折力を有する第1合焦レンズ群(例えば、第3レンズ群G3から構成される)と正の屈折力を有する第2合焦レンズ群(例えば、第5レンズ群G5から構成される)とを有し、無限遠から近距離への合焦に際して、第1合焦レンズ群および第2合焦レンズ群が前記光軸方向に移動する。
【0010】
このように無限遠から近距離への合焦に際して、第1合焦レンズ群および第2合焦レンズ群が光軸方向に移動するように構成することにより、合焦レンズ群を大型化することなく無限遠から近距離への合焦(フォーカシング)の際に発生する像面湾曲を良好に補正することができる。
【0011】
この変倍光学系は、以下の条件式(1)を満足することが好ましい。
0.10<(-f1)/f2<1.20 ・・・(1)
【0012】
上記条件式(1)は、後続レンズ群の構成を規定した上で、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の焦点距離の比を規定するものであるが、条件式(1)を満足することにより、広角端から望遠端への変倍の際の球面収差を初めとする諸収差を良好に補正することができる。本実施形態の効果を確実なものとするためには、条件式(1)の上限値を、例えば、1.15、1.10、1.05、1.00、0.95、0.90、0.85、0.80、0.75、0.73、さらに0.70に設定することが好ましい。また、条件式(1)の下限値を、例えば、0.15、0.20、0.23、0.27、0.30、0.32、さらに0.35に設定することが好ましい。
【0013】
また、上記変倍光学系は、以下の条件式(2)を満足することが好ましい。
0.20<ff1/ff2<1.70 ・・・(2)
但し、ff1:第1合焦レンズ群の焦点距離
ff2:第2合焦レンズ群の焦点距離
【0014】
上記条件式(2)は、二つの合焦レンズ群の焦点距離の比を規定するものであるが、条件式(2)を満足することにより、無限遠から近距離への合焦の際に発生する像面湾曲を良好に補正することができる。本実施形態の効果を確実なものとするためには、条件式(2)の上限値を、例えば、1.65、1.60、1.55、1.50、1.40、1.30、1.20、1.15、1.10、1.05、1.00、さらに0.97に設定することが好ましい。また、条件式(2)の下限値を、例えば、0.23、0.25、0.28、0.30、0.33、0.35、0.38、0.40、0.42、さらに0.44に設定することが好ましい。
【0015】
また、上記変倍光学系は、以下の条件式(3)を満足することが好ましい。
0.15<(-f1)/ff1<1.30 ・・・(3)
但し、f1:第1レンズ群の焦点距離
【0016】
上記条件式(3)は、第1レンズ群G1と第1合焦レンズ群の焦点距離の比を規定するものであるが、条件式(3)を満足することにより、所定の撮影距離を確保しつつ、無限遠から近距離への合焦の際に発生する像面湾曲を良好に補正することができる。本実施形態の効果を確実なものとするためには、条件式(3)の上限値を、例えば、1.25、1.20、1.15、1.10、1.05、1.00、0.95、0.90、0.85、0.80、0.75、0.70、0.68、0.65、さらに0.63に設定することが好ましい。また、条件式(3)の下限値を、例えば、0.18、0.20、0.23、0.25、0.28、0.30、0.33、0.35、さらに0.38に設定することが好ましい。
【0017】
また、上記変倍光学系は、以下の条件式(4)を満足することが好ましい。
0.10<(-f1)/ff2<0.95 ・・・(4)
【0018】
上記条件式(4)は、第1レンズ群G1と第2合焦レンズ群の焦点距離の比を規定する
ものであるが、条件式(4)を満足することにより、所定の撮影距離を確保しつつ、無限遠から近距離への合焦の際に発生する像面湾曲を良好に補正することができる。本実施形態の効果を確実なものとするためには、条件式(4)の上限値を、例えば、0.90、0.80、0.75、0.70、0.65、0.60、0.58、0.55、0.53、さらに0.50に設定することが好ましい。また、条件式(4)の下限値を、例えば、0.13、0.15、0.18、0.20、0.21、さらに0.23に設定することが好ましい。
【0019】
上記変倍光学系において、第1合焦レンズ群は、無限遠から至近への変倍の際、物体側へ移動する構成であることが好ましい。このように構成することにより、無限遠から近距離への合焦(フォーカシング)の際に発生する像面湾曲をより良好に補正することができる。
【0020】
さらに上記変倍光学系において、第2合焦レンズ群は、無限遠から至近への変倍の際、像側へ移動する構成であることが好ましい。このように構成することにより、無限遠から近距離への合焦(フォーカシング)の際に発生する像面湾曲をより良好に補正することができる。
【0021】
また、上記変倍光学系は、以下の条件式(5)を満足することが好ましい。
0.01<(-MVF1)/MVF2<30.0 ・・・(5)
但し、MVF1:無限遠物体から近距離物体への合焦の際の前記第1合焦レンズ群の移動量
MVF2:無限遠物体から近距離物体への合焦の際の前記第2合焦レンズ群の移動量
なお、像側への移動を正とする
【0022】
上記条件式(5)は、合焦時における二つの合焦レンズ群の移動距離の比を規定するものであるが、条件式(5)を満足することにより、所定の撮影距離を確保しつつ、無限遠から近距離への合焦時に発生する像面湾曲を良好に補正することができる。本実施形態の効果を確実なものとするためには、条件式(5)の上限値を、例えば、28.00、25.00、23.00、20.00、18,00、15.00、13.00、10.00、8.00、5.00、3.00、2.00、1.80、1.50、1.20、さらに1.00に設定することが好ましい。また、条件式(5)の下限値を、例えば、0.05、0.10、0.15、0.18、0.20、0.25、0.28、0.30、0.33、0.35、さらに0.38に設定することが好ましい。
【0023】
上記変倍光学系において、第2合焦レンズ群は1枚の凸レンズからなる構成とすることが好ましい。このように構成することで、合焦レンズ群を大型化することなく、無限遠から近距離への合焦の際に発生する像面湾曲を良好に補正することができる。
【0024】
上記変倍光学系において、第1合焦レンズ群は凸レンズと凹レンズの接合レンズからなる構成とすることが好ましい。このように構成することで、合焦レンズ群を大型化することなく、無限遠から近距離への合焦の際に発生する倍率色収差を良好に補正することができる。
【0025】
上記変倍光学系において、第1レンズ群は、物体側から順に、3枚の負レンズを有する構成とすることが好ましい。このように構成することで、広角端状態におけるコマ収差や像面湾曲を良好に補正することができる。
【0026】
また、上記変倍光学系は、以下の条件式(6)を満足することが好ましい。
-0.80<βWF1<0.80 ・・・(6)
但し、βWF1:広角端状態における無限遠物体合焦時の第1合焦レンズ群の横倍率
【0027】
条件式(6)は、広角端状態における無限遠物体合焦時の第1合焦レンズ群の横倍率の範囲を規定したものである。条件式(6)を満足することで、無限遠物体から近距離物体への合焦の際の球面収差をはじめとする諸収差の変動を抑えることができる。
条件式(6)の対応値が規定された範囲を外れると、軸上光線の偏角が大きくなり、球面収差の補正が困難になる。また、主光線に対して対称性が悪い場合には、歪曲収差やコマ収差の補正が困難になる。
【0028】
本実施形態の効果を確実なものとするためには、条件式(6)の上限値を、例えば0.78、0.75、0.73、0.70、0.68、0.65、0.63、0.60、0.58、さらに0.55に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、条件式(6)の下限値を、例えばー0.75、-0.70、-0.65、-0.60、-0.55、-0.50、-0.45、-0.40、-0.38、-0.35、-0.33、-0.31、-0.25、-0.20、さらに-0.10に設定することで、本実施形態の効果をより確実なもととすることができる。
【0029】
また、上記変倍光学系は、以下の条件式(7)を満足することが好ましい。
-0.80<βWF2<0.80 ・・・(7)
但し、βWF2;広角端状態における無限遠物体合焦時の第2合焦レンズ群の横倍率
【0030】
条件式(7)は、広角端状態における無限遠物体合焦時の第2合焦レンズ群の横倍率の範囲を規定したものである。第2合焦レンズ群の横倍率が、条件式(7)を満足することで、無限遠物体から近距離物体への合焦の際の球面収差をはじめとする諸収差の変動を抑えることができる。
条件式(7)の対応値が規定された範囲を外れると、軸上光線の偏角が大きくなり、球面収差の補正が困難になる。また、主光線に対して対称性が悪い場合には、歪曲収差やコ収差の補正が困難になる。
【0031】
本実施形態の効果を確実なものとするためには、条件式(7)の上限値を、例えば0.78、0.75、0.73、0.70、0.68、0.65、0.63、0.60、0.58、0.55.0.53、さらに0.50に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、条件式(7)の下限値を、例えば-0.78、-0.75、-0.73、-0.70、-0.50、-0.40、-0.30、-0.20、さらに-0.10に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0032】
また、上記変倍光学系は、以下の条件式(8)を満足することが好ましい。
(βWF1+(1/βWF1))-2 <0.25 ・・・(8)
但し、βWF1:広角端状態における無限遠物体合焦時の第1合焦レンズ群の横倍率
【0033】
条件式(8)は、広角端状態における無限遠物体合焦時の第1合焦レンズ群の横倍率の範囲を、条件式(6)とは異なる形で規定したものである。第1合焦レンズ群の横倍率が、条件式(8)を満足することで、無限遠物体から近距離物体への合焦の際の球面収差をはじめとする諸収差の変動を抑えることができる。
条件式(8)の対応値が規定された範囲を外れると、軸上光線の偏角が大きくなり、球面収差の補正が困難になる。また、主光線に対して対称性が悪い場合には、歪曲収差やコマ収差の補正が困難になる。
【0034】
本実施形態の効果を確実なものとするためには、条件式(8)の上限値を、例えば0.24、0.23、0.22、0.20、0.18、さらに0.16に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0035】
また、上記変倍光学系は、以下の条件式(9)を満足することが好ましい。
(βWF2+(1/βWF2))-2 <0.25 ・・・(9)
但し、βWF2:広角端状態における無限遠物体合焦時の第2合焦レンズ群の横倍率
【0036】
条件式(9)は、広角端状態における無限遠物体合焦時の第2合焦レンズ群の横倍率の範囲を、条件式(7)とは異なる形で規定したものである。第2合焦レンズ群の横倍率が、条件式(9)を満足することで、無限遠物体から近距離物体への合焦の際の球面収差をはじめとする諸収差の変動を抑えることができる。
条件式(9)の対応値が規定された範囲を外れると、軸上光線の偏角が大きくなり、球面収差の補正が困難になる。また、主光線に対して対称性が悪い場合には、歪曲収差やコマ収差の補正が困難になる。
【0037】
本実施形態の効果を確実なものとするためにが、条件式(9)の上限値を、例えば0.24、0.23、0.22、0.20、0.18、さらに0.16に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。
【0038】
続いて、
図17を参照しながら、上記光学系の製造方法について概説する。この製造方法においては、まず、鏡筒内に、物体側から順に光軸上に並んで、負の屈折力を有する第1レンズ群と正の屈折力を有する第2レンズ群と後続レンズ群とを配置する(ステップST1)。なおこのとき、後続レンズ群は正の屈折力を有する第1合焦レンズ群と正の屈折力を有する。次に、広角端から望遠端への変倍時に、隣り合う前記レンズ群の間隔が変化するように構成する(ステップST2)。さらに、無限遠から近距離への合焦に際して、前記第1合焦レンズ群および前記第2合焦レンズ群が光軸方向に移動するように構成する(ステップST3)。
【0039】
以上説明した本実施形態に係る変倍光学系およびこの変倍光学系を備えたカメラ(光学機器)ならびに上記製造方法により製造された変倍光学系によれば、合焦用レンズ群を小型軽量化することが可能であり、これにより、鏡筒を大型化することなく高速なAF、AF時の静粛性を実現し、さらに、広角端状態から望遠端状態への変倍時の収差変動、ならびに無限遠物体から近距離物体への合焦時の収差変動を良好に抑えることができる。
【実施例】
【0040】
以下、上記実施形態の具体的な実施例に係る変倍光学系ZLを図面に基づいて説明する。
図1、
図4、
図7、
図10、
図13は、第1~第5実施例に係る変倍光学系ZL{ZL(1)~ZL(5)}の構成及び屈折力配分を示す断面図である。各断面図には、広角端状態(W)から望遠端状態(T)に変倍する際の各レンズ群の光軸に沿った移動方向を矢印で示している。さらに、合焦レンズ群が無限遠から近距離物体に合焦する際の移動方向を、「合焦」という文字とともに矢印で示している。
【0041】
これらの図(
図1、
図4、
図7、
図10、
図13)において、各レンズ群を符号Gと数字の組み合わせにより、各レンズを符号Lと数字の組み合わせにより、それぞれ表している。この場合において、符号、数字の種類および数が大きくなって煩雑化するのを防止するため、実施例毎にそれぞれ独立して符号と数字の組み合わせを用いてレンズ群等を表している。このため、実施例間で同一の符号と数字の組み合わせが用いられていても、同一の構成であることを意味するものでは無い。
【0042】
図2および
図3、
図5および
図6、
図8および
図9、
図11および
図12、
図14および
図15において、FNOはFナンバー、NAは開口数、Yは像高を示す。球面収差図では最大口径に対応するFナンバーまたは開口数の値を示し、非点収差図及び歪曲収差図では像高の最大値を示し、コマ収差図では各像高の値を示す。dはd線(λ=587.6nm)、gはg線(λ=435.8nm)を示す。非点収差図において、実線はサジタル像面、破線はメリディオナル像面を示す。歪曲収差図ではd線を基準とした歪曲収差を示し、倍率色収差図では、g線を基準とした倍率色収差を示す。
【0043】
以下に表1~表5を示すが、この内、表1は第1実施例、表2は第2実施例、表3は第3実施例、表4は第4実施例、表5は第5実施例における各諸元データを示す表である。各実施例では収差特性の算出対象として、d線(波長λ=587.6nm)、g線(波長λ=435.8nm)を選んでいる。
【0044】
[全体諸元]の表において、焦点距離(f)はレンズ全系の焦点距離を広角端(fw)および望遠端(ft)において示す。F.NОはFナンバー、2ωは画角(単位は°(度)で、ωが半画角である)を示す。TLは無限遠合焦時の光軸上でのレンズ最前面からレンズ最終面までの距離にBFを加えた距離を空気換算長で示し、BFは無限遠合焦時の光軸上でのレンズ最終面から像面Iまでの空気換算距離(バックフォーカス)を示す。なお、これらの値は、広角端(W)、中間焦点距離(M)、望遠端(T)の各変倍状態におけるそれぞれについて示している。
【0045】
[レンズ諸元]の表において、面番号(面という文字で示す欄の番号)は光線の進行する方向に沿った物体側からの光学面の順序を示し、Rは各光学面の曲率半径(曲率中心が像側に位置する面を正の値としている)、Dは各光学面から次の光学面(又は像面)までの光軸上の距離である面間隔、ndは光学部材の材質のd線に対する屈折率、νdは光学部材の材質のd線を基準とするアッベ数を、それぞれ示す。曲率半径の「∞」は平面又は開口を、(絞りS)は開口絞りを、それぞれ示す。空気の屈折率nd=1.00000の記載は
省略している。レンズ面が非球面である場合には面番号に*印を付して曲率半径Rの欄には近軸曲率半径を示している。
【0046】
[非球面データ]の表には、[レンズ諸元]に示した非球面について、その形状を次式(A)で示す。X(y)は非球面の頂点における接平面から高さyにおける非球面上の位置までの光軸方向に沿った距離(ザグ量)を、Rは基準球面の曲率半径(近軸曲率半径)を、κは円錐定数を、Aiは第i次の非球面係数を示す。「E-n」は、「×10-n」を示す。例えば、1.234E-05=1.234×10-5である。なお、2次の非球面係数A2は0であり、その記載を省略している。
【0047】
X(y)=(y2/R)/{1+(1-κ×y2/R2)1/2}+A4×y4+A6×y6+A8×y8+A10×y10+A12×y12 ・・・(A)
【0048】
[レンズ群データ]の表には、各レンズ群のそれぞれの始面(最も物体側の面)と、各レンズ群それぞれの焦点距離を示す。
【0049】
[可変間隔データ]の表には、[レンズ諸元]を示す表において面間隔が「可変」となっている面番号での面間隔を示す。ここでは無限遠および近距離に合焦させたときのそれぞれについて、広角端(W)、中間焦点距離(M)、望遠端(T)の各変倍状態における面間隔を、通常距離に合焦する場合と至近距離に合焦する場合とに分けて示す。なお、第1行に各変倍状態における全体焦点距離f(通常距離に合焦する場合)もしくは横倍率β(至近距離に合焦する場合)を示している。最終行には面間隔が「Bf」としている部分の面間隔を示している。
【0050】
[倍率]の表には、第1合焦レンズ群の横倍率βF1と第2合焦レンズ群の横倍率βF2を、広角端(W)、中間焦点距離(M)、望遠端(T)の各変倍状態について、通常距離に合焦する場合と至近距離に合焦する場合とに分けて示す。[その他諸元]の表には、第1合焦レンズ群の焦点距離(ff1)と第2合焦レンズ群の焦点距離(ff2)を示す。さらに、広角端状態において無限遠物体から近距離物体(最も近距離の物体)へ合焦する際の第1合焦レンズ群の移動量(MVF1)および第2合焦レンズ群の移動量(MVF2)を示す。
【0051】
[条件式対応値]の表を全実施例(第1~第5実施例)の説明の最後に設けている。この表には、各条件式に対応する値を、全実施例(第1~第5実施例)について纏めて示す。
【0052】
以下、全ての諸元値において、掲載されている焦点距離f、曲率半径R、面間隔D、その他の長さ等は、特記のない場合一般に「mm」が使われるが、光学系は比例拡大又は比例縮小しても同等の光学性能が得られるので、これに限られるものではない。
【0053】
ここまでの表の説明は全ての実施例において共通であり、以下での重複する説明は省略する。
【0054】
(第1実施例)
第1実施例について、
図1~
図3および表1を用いて説明する。
図1は、第1実施例に係る変倍光学系のレンズ構成を示す図である。第1実施例に係る変倍光学系ZL(1)は、物体側から順に並んだ、負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、開口絞りSと、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、負の屈折力を有する第4レンズ群G4と、正の屈折力を有する第5レンズ群G5と、正の屈折力を有する第6レンズ群G6とから構成される。広角端状態(W)から望遠端状態(T)に変倍する際、第1~第6レンズ群G1~G6がそれぞれ
図1の矢印で示す方向に移動し、隣り合う各レンズ群の間隔が変化する。第3~第6レンズ群G3~G6からなるレンズ群は、後続レンズ群GRに該当する。各レンズ群記号に付けている符号(+)もしくは(-)は各レンズ群の屈折力を示し、このことは以下の全ての実施例でも同様である。
【0055】
第1レンズ群G1は、物体側から順に並んだ、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL11と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL12と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL13と、両凸形状の正レンズL14とから構成される。
【0056】
負メニスカスレンズL11は、ガラス製レンズ本体L11aの像側の面に樹脂層L11bが設けられて構成されるハイブリッド型のレンズである。樹脂層L11bの像側の面が非球面であり、負メニスカスレンズL11は複合型の非球面レンズである。後述の[レンズ諸元]欄において、面番号1がレンズ本体L11aの物体側の面、面番号2がレンズ本体L11aの像側の面および樹脂層L11bの物体側の面(両者が接合する面)、面番号3が樹脂層L11bの像側の面を示す。
【0057】
負メニスカスレンズL12も、ガラス製レンズ本体L12aの物体側の面に樹脂層L12bが設けられて構成されるハイブリッド型のレンズである。樹脂層L12bの物体側の面が非球面であり、負メニスカスレンズL12も複合型の非球面レンズである。後述の[レンズ諸元]欄において、面番号4が樹脂層L12baの物体側の面、面番号5が樹脂層L12bの像側の面およびレンズ本体L12aの物体側の面(両者が接合する面)、面番号6がレンズ本体L12aの像側の面を示す。
【0058】
第2レンズ群G2は、物体側から順に並んだ、物体側に凸面を向けた正メニスカスレン
ズL21および物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL22の接合レンズと、両凸形状の正レンズL23とから構成される。開口絞りSは、第2レンズ群G2の像側近傍に設けられ、変倍の際、第2レンズ群G2とともに移動する。
【0059】
第3レンズ群G3は、両凸形状の正レンズL31および物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL32の接合レンズから構成される。
【0060】
第4レンズ群G4は、両凹形状の負レンズL41から構成される。
【0061】
第5レンズ群G5は、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL51から構成される。
【0062】
第6レンズ群G6は、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL61と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL62および両凸形状の正レンズL63の接合レンズから構成される。なお、正メニスカスレンズL61の像側の面が非球面である。
【0063】
本実施例では、第3レンズ群G3が第1合焦レンズ群を構成し、第5レンズ群G5が第2合焦レンズ群を構成している。遠距離物体(無限遠物体)への合焦状態から近距離物体への合焦状態への変化に応じて、第3レンズ群G3が物体側に、第5レンズ群G5が像側に移動する。
【0064】
以下の表1に、第1実施例に係る変倍光学系の諸元の値を掲げる。
【0065】
(表1)
[全体諸元]
焦点距離(f) 10.3(fw) - 21.5(ft)
W M T
F.NO 4.58461 4.97276 5.66887
2ω 55.20233 47.83147 32.93905
空気換算TL 121.30256 111.17694 103.94431
空気換算BF 22.07112 26.72635 37.73788
[レンズ諸元]
面 R D nd νd
1 66.0078 2.40 1.77250 49.61
2 17.8896 0.20 1.56093 36.64
*3 13.0203 10.39 1.00000
*4 69.5573 0.20 1.55389 38.09
5 74.5519 1.50 1.77250 49.61
6 25.3147 4.66 1.00000
7 120.000 1.30 1.77250 49.61
8 31.6192 3.48 1.00000
9 32.2527 4.63 1.71736 29.58
10 -749.923 可変 1.00000
11 16.9525 2.04 1.72825 28.38
12 55.8636 0.80 1.91082 35.25
13 12.8077 1.51 1.00000
14 14.4747 2.31 1.51680 63.88
15 -90.0426 1.86 1.00000
16 0 可変 1.00000 絞りS
17 23.0619 2.94 1.53172 48.78
18 -15.5169 0.90 1.90366 31.27
19 -26.4746 可変 1.00000
20 -831.453 0.80 1.91082 35.25
21 25.1602 可変 1.00000
22 16.4236 1.61 1.51680 63.88
23 30.0899 可変 1.00000
24 -59.9852 1.35 1.53110 55.91
*25 -33.4579 0.50 1.00000
26 78.9399 0.80 1.91082 35.25
27 19.5552 4.48 1.48749 70.24
28 -44.7036 可変 1.00000
29 0 2.00 1.51680 63.88
30 0 Bf 1.00000
像面(I) ∞
[非球面データ]
第3面
κ=0.0944
A4=-9.40E-06 A6=-1.18E-08 A8=3.95E-11 A10=5.57E-13
第4面
κ=-25.413
A4=-4.18E-06 A6=2.67E-08 A8=1.51E-10 A10=-2.82E-13
第25面
κ=1.00
A4=6.81E-05 A6=4.87E-07 A8=-4.55E-09 A10=5.03E-11
[レンズ群データ]
群 始面 焦点距離
G1 1 -18.7654
G2 11 51.03682
G3 17 30.51806
G4 20 -26.8004
G5 22 67.26356
G6 24 123.1616
[可変間隔データ]
W M T W至近 M至近 T至近
f(β) 10.30 13.01 21.50 -0.08318 -0.14416 -0.19832
d10 32.8753 20.3228 2.00000 32.8753 20.3228 2.00000
d16 5.0342 3.80869 2.76786 4.55905 3.16979 1.63154
d19 1.49446 1.80677 3.48694 1.96961 2.44567 4.62326
d21 0.69387 0.29529 2.00441 1.77009 1.77881 4.32648
d23 8.45918 7.54262 5.2728 7.38297 6.0591 2.95073
d28 20.65256 25.30779 36.31931 20.65256 25.30779 36.31931
Bf 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1
[倍率]
W M T W至近 M至近 T至近
βF1 0.18476 0.12404 -0.04382 0.17725 0.11351 -0.0685
βF2 0.37405 0.2813 0.0176 0.39005 0.30335 0.05212
[その他諸元]
ff1 30.518
ff2 67.264
MVF1w -0.475
MVF2w 1.07621
【0066】
図2(A)、(B)および(C)はそれぞれ、第1実施例に係る変倍光学系の広角端状態、中間焦点距離状態、望遠端状態における無限遠合焦時の諸収差図である。
図3(A)、(B)および(C)はそれぞれ、第1実施例に係る変倍光学系の広角端状態、中間焦点距離状態、望遠端状態における近距離合焦時の諸収差図である。
【0067】
図2(A)~(C)の各収差図において、FNOはFナンバー、Yは像高をそれぞれ示す。球面収差図では最大口径に対応するFナンバーの値を示し、非点収差図および歪曲収差図では像高の最大値をそれぞれ示し、横収差図では各像高の値を示す。
図3(A)~(C)の各収差図において、NAは開口数、Yは像高をそれぞれ示す。球面収差図では最大口径に対応する開口数の値を示し、非点収差図および歪曲収差図では像高の最大値をそれぞれ示し、コマ収差図では各像高の値を示す。また、各収差図において、dはd線(波長
λ=587.6nm)、gはg線(波長λ=435.8nm)をそれぞれ示す。非点収差
図において、実線はサジタル像面、破線はメリディオナル像面をそれぞれ示す。なお、以下に示す各実施例の収差図においても、本実施例と同様の符号を用い、重複する説明は省略する。
【0068】
各諸収差図より、第1実施例に係る変倍光学系は、広角端状態から望遠端状態にわたって諸収差を良好に補正し優れた結像性能を有しており、さらに近距離合焦時にも優れた結像性能を有していることがわかる。
【0069】
(第2実施例)
第2実施例について、
図4~
図6および表2を用いて説明する。
図4は、第2実施例に係る変倍光学系のレンズ構成を示す図である。第2実施例に係る変倍光学系ZL(2)は、物体側から順に並んだ、負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、開口絞りSと、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、負の屈折力を有する第4レンズ群G4と、正の屈折力を有する第5レンズ群G5と、正の屈折力を有する第6レンズ群G6とから構成される。広角端状態(W)から望遠端状態(T)に変倍する際、第1~第6レンズ群G1~G6がそれぞれ
図4の矢印で示す方向に移動し、隣り合う各レンズ群の間隔が変化する。第3~第6レンズ群G3~G6からなるレンズ群は、後続レンズ群GRに該当する。
【0070】
第1レンズ群G1は、物体側から順に並んだ、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL11と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL12と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL13と、両凸形状の正レンズL14とから構成される。
【0071】
負メニスカスレンズL11は、ガラス製レンズ本体L11aの像側の面に樹脂層L11bが設けられて構成されるハイブリッド型のレンズである。樹脂層L11bの像側の面が非球面であり、負メニスカスレンズL11は複合型の非球面レンズである。後述の[レンズ諸元]欄において、面番号1がレンズ本体L11aの物体側の面、面番号2がレンズ本体L11aの像側の面および樹脂層L11bの物体側の面(両者が接合する面)、面番号3が樹脂層L11bの像側の面を示す。
【0072】
負メニスカスレンズL12も、ガラス製レンズ本体L12aの物体側の面に樹脂層L12bが設けられて構成されるハイブリッド型のレンズである。樹脂層L12bの物体側の面が非球面であり、負メニスカスレンズL12も複合型の非球面レンズである。後述の[レンズ諸元]欄において、面番号4が樹脂層L12baの物体側の面、面番号5が樹脂層L12bの像側の面およびレンズ本体L12aの物体側の面(両者が接合する面)、面番号6がレンズ本体L12aの像側の面を示す。
【0073】
第2レンズ群G2は、物体側から順に並んだ、両凸形状の正レンズL21および両凹形状の負レンズL22の接合レンズと、両凸形状の正レンズL23とから構成される。開口絞りSは、第2レンズ群G2の像側近傍に設けられ、変倍の際、第2レンズ群G2とともに移動する。
【0074】
第3レンズ群G3は、両凸形状の正レンズL31および物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL32の接合レンズから構成される。
【0075】
第4レンズ群G4は、両凹形状の負レンズL41から構成される。
【0076】
第5レンズ群G5は、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL51から構成される。
【0077】
第6レンズ群G6は、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL61と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL62および両凸形状の正レンズL63の接合レンズから構成される。なお、正メニスカスレンズL61の像側の面が非球面である。
【0078】
本実施例では、第3レンズ群G3が第1合焦レンズ群を構成し、第5レンズ群G5が第2合焦レンズ群を構成している。遠距離物体(無限遠物体)への合焦状態から近距離物体への合焦状態への変化に応じて、第3レンズ群G3が物体側に、第5レンズ群G5が像側に移動する。
【0079】
以下の表2に、第2実施例に係る変倍光学系の諸元の値を掲げる。
【0080】
(表2)
[全体諸元]
焦点距離(f) 10.3(fw) - 19.32(ft)
W M T
F.NO 4.6301 5.23998 5.83553
2ω 56.39754 44.87543 37.36057
空気換算TL 125.91266 113.62769 107.76397
空気換算BF 20.44108 26.46282 35.19053
[レンズ諸元]
面 R D nd νd
1 66.922 2.40 1.77250 49.61
2 17.7951 0.20 1.56093 36.64
*3 13.0065 10.96 1.00000
*4 44.9602 0.20 1.55389 38.09
5 46.0476 1.50 1.77250 49.61
6 20.8512 5.49 1.00000
7 120.000 1.30 1.77250 49.61
8 36.1878 5.92 1.00000
9 37.0286 3.92 1.71736 29.58
10 -749.889 可変 1.00000
11 51.0535 2.05 1.72825 28.38
12 -32.8904 0.80 1.91082 35.25
13 40.7464 1.22 1.00000
14 22.0824 2.28 1.51680 63.88
15 -35.2067 1.63 1.00000
16 0 可変 1.00000 絞りS
17 28.7991 2.69 1.53172 48.78
18 -15.1315 0.90 1.90366 31.27
19 -34.7347 可変 1.00000
20 -79.1048 0.80 1.91082 35.25
21 55.1803 可変 1.00000
22 18.6322 1.56 1.51680 63.88
23 31.533 可変 1.00000
24 -60.0021 1.43 1.53110 55.91
*25 -33.4796 0.50 1.00000
26 49.3873 0.80 1.91082 35.25
27 15.8208 5.23 1.48749 70.24
28 -53.1349 可変 1.00000
29 0 2.00 1.51680 63.88
30 0 Bf 1.00000
像面(I) ∞
[非球面データ]
第3面
κ=0.1002
A4=-9.02E-06 A6=-1.45E-08 A8=8.99E-11 A10=4.58E-13
第4面
κ=-4.6078
A4=-6.39E-06 A6=4.84E-08 A8=1.53E-10 A10=-2.96E-13
第25面
κ=1.0000
A4=4.61E-05 A6=2.921E-07 A8=-3.00E-09 A10=2.17E-11
[レンズ群データ]
群 始面 焦点距離
G1 1 -20.0295
G2 11 40.65621
G3 17 50.20726
G4 20 -35.5873
G5 22 84.63536
G6 24 121.5811
[可変間隔データ]
W M T W至近 M至近 T至近
f(β) 10.29984 12.99976 19.31945 -0.05582 -0.0664 -0.0967
d10 32.5917 18.1044 2.00000 32.5917 18.1044 2.0000
d16 2.94702 2.78457 4.11328 2.3937 2.02381 2.79333
d19 1.5000 1.54877 2.3198 2.05332 2.30953 3.63975
d21 3.20723 1.00000 1.50000 3.95327 1.98746 3.21594
d23 11.4491 9.9506 8.86383 10.70306 8.96314 7.14789
d28 19.02252 25.04425 33.77196 19.03768 25.06574 33.81755
Bf 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1
[倍率]
W M T W至近 M至近 T至近
βF1 0.42189 0.37491 0.28287 0.41447 0.36447 0.26369
βF2 0.48041 0.38803 0.21395 0.48897 0.39928 0.23315
[その他諸元]
ff1 50.207
ff2 84.635
MVF1w -0.568
MVF2w 0.73087
【0081】
図5(A)、
図5(B)、および
図5(C)はそれぞれ、第2実施例に係る変倍光学系の広角端状態、中間焦点距離状態、望遠端状態における無限遠合焦時の諸収差図である。
図6(A)、
図6(B)、および
図6(C)はそれぞれ、第2実施例に係る変倍光学系の広角端状態、中間焦点距離状態、望遠端状態における近距離合焦時の諸収差図である。各諸収差図より、第2実施例に係る変倍光学系は、広角端状態から望遠端状態にわたって諸収差を良好に補正し優れた結像性能を有しており、さらに近距離合焦時にも優れた結像性能を有していることがわかる。
【0082】
(第3実施例)
第3実施例について、
図7~
図9および表3を用いて説明する。
図7は、第3実施例に係る変倍光学系のレンズ構成を示す図である。第3実施例に係る変倍光学系ZL(3)は、物体側から順に並んだ、負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、開口絞りSと、負の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4と、正の屈折力を有する第5レンズ群G5とから構成される。広角端状態(W)から望遠端状態(T)に変倍する際、第1~第5レンズ群G1~G5がそれぞれ
図7の矢印で示す方向に移動し、隣り合う各レンズ群の間隔が変化する。第3~第5レンズ群G3~G5からなるレンズ群は、後続レンズ群GRに該当する。
【0083】
第1レンズ群G1は、物体側から順に並んだ、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL11と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL12と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL13と、両凸形状の正レンズL14とから構成される。
【0084】
負メニスカスレンズL11は、ガラス製レンズ本体L11aの像側の面に樹脂層L11bが設けられて構成されるハイブリッド型のレンズである。樹脂層L11bの像側の面が非球面であり、負メニスカスレンズL11は複合型の非球面レンズである。後述の[レンズ諸元]欄において、面番号1がレンズ本体L11aの物体側の面、面番号2がレンズ本体L11aの像側の面および樹脂層L11bの物体側の面(両者が接合する面)、面番号3が樹脂層L11bの像側の面を示す。
【0085】
負メニスカスレンズL12も、ガラス製レンズ本体L12aの物体側の面に樹脂層L12bが設けられて構成されるハイブリッド型のレンズである。樹脂層L12bの物体側の面が非球面であり、負メニスカスレンズL12も複合型の非球面レンズである。後述の[レンズ諸元]欄において、面番号4が樹脂層L12baの物体側の面、面番号5が樹脂層L12bの像側の面およびレンズ本体L12aの物体側の面(両者が接合する面)、面番号6がレンズ本体L12aの像側の面を示す。
【0086】
第2レンズ群G2は、物体側から順に並んだ、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL21と、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL23および物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL24の接合レンズとから構成される。開口絞りSは、第2レンズ群G2の像側近傍に設けられ、変倍の際、第2レンズ群G2とともに移動する。
【0087】
第3レンズ群G3は、両凸形状の正レンズL31および物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL32の接合レンズと、両凹形状の負レンズL33とから構成される。第3レンズ群G3においては、正レンズL31および負メニスカスレンズL32の接合レンズが前側レンズ群G3Aを構成し、負レンズL33が後側レンズ群G3Bを構成する。そして、前側レンズ群G3Aが第1合焦レンズ群を構成する。
【0088】
第4レンズ群G4は、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL41から構成される。この第4レンズ群G4が第2合焦レンズ群を構成している。
【0089】
第5レンズ群G5は、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL51と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL52および両凸形状の正レンズL53とから構成される。なお、正メニスカスレンズL51の像側の面が非球面である。
【0090】
本実施例では、第3レンズ群G3の像側の一部(前側レンズ群G3A)が第1合焦レンズ群を構成し、第4レンズ群G4が第2合焦レンズ群を構成している。そして、遠距離物体(無限遠物体)への合焦状態から近距離物体への合焦状態への変化に応じて、第3レンズ群G3の像側の一部(前側レンズ群G3A)が物体側に、第4レンズ群G4が像側に移動する。
【0091】
以下の表3に、第3実施例に係る変倍光学系の諸元の値を掲げる。
【0092】
(表3)
[全体諸元]
焦点距離(f) 11.3(fw) - 19.3(ft)
W M T
F.NO 4.61296 5.00943 5.68446
2ω 52.82737 44.07011 36.15833
空気換算TL 120.87241 108.97567 108.40436
空気換算BF 16.52159 24.01249 31.04985
[レンズ諸元]
面 R D nd νd
1 42.2613 2.40 1.77250 49.61
2 16.1746 0.20 1.56093 36.64
*3 13.0027 10.79 1.00000
*4 99.2765 0.20 1.55389 38.09
5 91.8259 1.50 1.77250 49.61
6 21.4633 4.89 1.00000
7 120.0000 1.30 1.77250 49.61
8 59.6747 7.41 1.00000
9 43.1309 3.59 1.71736 29.58
10 -750.0000 可変 1.00000
11 23.8089 1.88 1.51680 63.88
12 101.019 2.23 1.00000
13 -114.581 0.80 1.91082 35.25
14 -40.4733 1.43 1.72825 28.38
15 -52.685 1.28 1.00000
16 0 可変 1.00000 絞りS
17 26.5144 2.55 1.53172 48.78
18 -14.8795 0.90 1.90366 31.27
19 -32.8111 可変 1.00000
20 -1986.21 0.80 1.91082 35.25
21 21.4616 可変 1.00000
22 19.6202 1.79 1.51680 63.88
23 103.813 可変 1.00000
24 -59.9998 1.56 1.53110 55.91
*25 -33.5052 0.50 1.00000
26 34.3198 0.80 1.91082 35.25
27 15.1432 5.39 1.48749 70.24
28 -259.404 可変 1.00000
29 0 2.00 1.51680 63.88
30 0 BF 1.00000
像面(I) ∞
[非球面データ]
第3面
κ=0.2869
A4=1.03E-05 A6=2.72E-08 A8=-1.10E-10 A10=8.60E-13
第4面
κ=12.1204
A4=1.25E-06 A6=-1.11E-08 A8=1.38E-10 A10=-2.23E-13
第25面
κ=1.0000
A4=2.71E-05 A6=7.25E-08 A8=-6.06E-10 A10=6.36E-12
[レンズ群データ]
群 始面 焦点距離
G1 1 -22.49113
G2 11 38.13818
G3 17 -58.34838
G4 22 46.47508
G5 24 126.00073
[可変間隔データ]
W M T W至近 M至近 T至近
f(β) 11.2996 14.8995 19.3194 -0.05898 -0.07401 -0.09672
d10 30.4632 13.8849 2.0000 30.4632 13.8849 2.0000
d16 2.76367 2.80224 4.56673 2.11089 2.09423 3.56283
d19 1.5000 1.5000 1.5000 2.15278 2.20801 2.5039
d21 1.80903 2.00882 6.09908 2.7882 2.78763 7.10298
d23 13.6245 10.5768 8.99828 12.64533 9.79799 7.99438
d28 15.10303 22.59384 29.63121 15.10303 22.59384 29.63121
Bf 0.1 0.10008 0.10008 0.1 0.10008 0.10008
[倍率]
W M T W至近 M至近 T至近
βF1 0.43161 0.38253 0.32802 0.42303 0.37074 0.30964
βF2 0.11541 -0.06604 -0.30118 0.13648 -0.04929 -0.27958
[その他諸元]
ff1 44.31219
ff2 46.47508
MVF1w -0.6528
MVF2w 0.97917
【0093】
図8(A)、
図8(A)、および
図8(C)はそれぞれ、第3実施例に係る変倍光学系の広角端状態、中間焦点距離状態、望遠端状態における無限遠合焦時の諸収差図である。
図9(A)、
図9(B)、および
図9(C)はそれぞれ、第3実施例に係る変倍光学系の広角端状態、中間焦点距離状態、望遠端状態における近距離合焦時の諸収差図である。各諸収差図より、第3実施例に係る変倍光学系は、広角端状態から望遠端状態にわたって諸収差を良好に補正し優れた結像性能を有しており、さらに近距離合焦時にも優れた結像性
能を有していることがわかる。
【0094】
(第4実施例)
第4実施例について、
図10~
図12および表4を用いて説明する。
図10は、第4実施例に係る変倍光学系のレンズ構成を示す図である。第4実施例に係る変倍光学系ZL(4)は、物体側から順に並んだ、負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有しするとともに中間に開口絞りSを有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4とから構成される。広角端状態(W)から望遠端状態(T)に変倍する際、第1~第4レンズ群G1~G4がそれぞれ
図10の矢印で示す方向に移動し、隣り合う各レンズ群の間隔が変化する。第3~第4レンズ群G3~G4からなるレンズ群は、後続レンズ群GRに該当する。
【0095】
第1レンズ群G1は、物体側から順に並んだ、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL11と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL12と、両凹形状の負レンズL13と、両凸形状の正レンズL14とから構成される。
【0096】
負メニスカスレンズL11は、ガラス製レンズ本体L11aの像側の面に樹脂層L11bが設けられて構成されるハイブリッド型のレンズである。樹脂層L11bの像側の面が非球面であり、負メニスカスレンズL11は複合型の非球面レンズである。後述の[レンズ諸元]欄において、面番号1がレンズ本体L11aの物体側の面、面番号2がレンズ本体L11aの像側の面および樹脂層L11bの物体側の面(両者が接合する面)、面番号3が樹脂層L11bの像側の面を示す。
【0097】
負メニスカスレンズL12も、ガラス製レンズ本体L12aの物体側の面に樹脂層L12bが設けられて構成されるハイブリッド型のレンズである。樹脂層L12bの物体側の面が非球面であり、負メニスカスレンズL12も複合型の非球面レンズである。後述の[レンズ諸元]欄において、面番号4が樹脂層L12baの物体側の面、面番号5が樹脂層L12bの像側の面およびレンズ本体L12aの物体側の面(両者が接合する面)、面番号6がレンズ本体L12aの像側の面を示す。
【0098】
第2レンズ群G2は、物体側から順に並んだ、両凸形状の正レンズL21および両凹形状の負レンズL22の接合レンズと、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL23と、両凸形状の正レンズL24および物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL25の接合レンズとから構成される。開口絞りSは、正メニスカスレンズL23と正レンズL24との間に位置して第2レンズ群G2の内部に設けられ、変倍の際、第2レンズ群G2とともに移動する。なお、図示するように、第2レンズ群G2は、前側レンズ群G2A(正レンズL21および負レンズL22の接合レンズから構成)と、中間レンズ群G2B(正メニスカスレンズL23から構成)と、後側レンズ群G2C(正レンズL24および負メニスカスレンズL25の接合レンズから構成)とから構成される。
【0099】
第3レンズ群G3は、両凹形状の負レンズL31および物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL32とから構成される。なお、図示するように、第3レンズ群G3は、前側レンズ群G3A(負レンズL31から構成)と、後側レンズ群G3B(正メニスカスレンズL32から構成)とから構成される。
【0100】
第4レンズ群G4は、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL41と、両凹形状の負レンズL42および両凸形状の正レンズL43の接合レンズとから構成される。なお、正メニスカスレンズL41の像側の面が非球面である。
【0101】
本実施例では、第2レンズ群G2の後側レンズ群G2Cが第1合焦レンズ群を構成し、
第3レンズ群G3の後側レンズ群G3Bが第2合焦レンズ群を構成している。遠距離物体(無限遠物体)への合焦状態から近距離物体への合焦状態への変化に応じて、第1合焦レンズ群(後側レンズ群G2C)が物体側に、第2合焦レンズ群(後側レンズ群G3B)が像側に移動する。
【0102】
また、第2レンズ群G2を構成する中間レンズ群G2B(正メニスカスレンズL23)は、光軸に垂直な方向の成分を持つように移動され、手ブレなどによる像ブレを補正する防振レンズ群となっている。
【0103】
以下の表4に、第4実施例に係る変倍光学系の諸元の値を掲げる。
【0104】
(表4)
[全体諸元]
焦点距離(f) 10.3(fw) - 19.4(ft)
W M T
F.NO 4.6301 5.23998 5.83553
2ω 56.39754 44.87543 37.36057
空気換算TL 127.19237 118.45802 118.27894
空気換算BF 38.11835 45.70695 53.49651
[レンズ諸元]
面 R D nd νd
1 72.1955 2.40 1.77250 49.62
2 18.1031 0.20 1.56093 36.64
*3 12.8098 13.50 1.00000
*4 38.7281 0.20 1.55389 38.09
5 33.8000 1.50 1.80610 40.97
6 15.4815 6.41 1.00000
7 -213.939 1.30 1.69680 55.52
8 48.4224 0.10 1.00000
9 25.7571 4.15 1.71736 29.57
10 -228.544 可変 1.00000
11 25.4457 2.55 1.72825 28.38
12 -15.8585 0.80 1.91082 35.25
13 28.6288 1.92 1.00000
14 -195.244 1.58 1.51680 63.88
15 -24.949 1.45 1.00000
16 0 可変 1.00000 絞りS
17 21.5531 3.28 1.53172 48.78
18 -15.0486 0.90 1.91082 35.25
19 -23.5039 可変 1.00000
20 -112.948 0.80 1.91082 35.25
21 28.2311 可変 1.00000
22 18.6211 1.83 1.51680 63.88
23 77.6694 可変 1.00000
24 -59.8503 1.36 1.53110 55.91
*25 -34.4312 0.60 1.00000
26 -136.828 0.80 1.91082 35.25
27 21.0189 5.60 1.48749 70.31
28 -15.2735 可変 1.00000
29 0 2.00 1.51680 63.88
30 0 Bf 1.00000
像面(I) ∞
[非球面データ]
第3面
κ=0.0387
A4=-1.10E-05 A6=-2.98E-08 A8=1.59E-10 A10=2.68E-13
第4面
κ=0.2082
A4=-3.60E-06 A6=8.87E-08 A8=2.10E-10 A10=-2.30E-13
第25面
κ=1.0000
A4=5.63E-05 A6=4.89E-08 A8=-2.05E-09 A10=3.5E-11
[レンズ群データ]
群 始面 焦点距離
G1 1 -16.3772
G2 11 24.84907
G3 20 -56.2908
G4 24 70.2103
[可変間隔データ]
W M T W至近 M至近 T至近
F(β) 10.31023 15.00257 19.4 -0.05436 -0.07709 -0.10236
d10 26.1646 9.84165 1.87301 26.1646 9.84165 1.87301
d16 1.80195 1.80195 1.80195 1.32479 1.00051 0.20687
d19 1.45964 2.6478 3.18161 1.9368 3.44925 4.77669
d21 0.6974 0.6974 0.6974 1.89031 1.73928 1.97347
d23 5.72006 4.5319 3.99809 4.52716 3.49002 2.72203
d28 36.69978 44.28838 52.07794 36.69978 44.28838 52.07794
Bf 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1
[倍率]
W M T W至近 M至近 T至近
βF1 -0.29802 -0.49787 -0.68391 -0.31172 -0.53124 -0.75951
βF2 -0.67094 -1.34785 -2.55372 -0.64551 -1.32564 -2.52651
[その他諸元]
ff1 26.66669
ff2 46.89864
MVF1w -0.477
MVF2w 1.1929
【0105】
図11(A)、
図11(B)、および
図11(C)はそれぞれ、第4実施例に係る変倍光学系の広角端状態、中間焦点距離状態、望遠端状態における無限遠合焦時の諸収差図である。
図12(A)、
図12(B)、および
図12(C)はそれぞれ、第4実施例に係る変倍光学系の広角端状態、中間焦点距離状態、望遠端状態における近距離合焦時の諸収差図である。各諸収差図より、第4実施例に係る変倍光学系は、広角端状態から望遠端状態にわたって諸収差を良好に補正し優れた結像性能を有しており、さらに近距離合焦時にも優れた結像性能を有していることがわかる。
【0106】
(第5実施例)
第5実施例について、
図13~
図15および表5を用いて説明する。
図13は、第5実施例に係る変倍光学系のレンズ構成を示す図である。第5実施例に係る変倍光学系ZL(5)は、物体側から順に並んだ、負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を
有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、開口絞りSと、正の屈折力を有する第4レンズ群G4と、負の屈折力を有する第5レンズ群G5と、正の屈折力を有する第6レンズ群G6と、正の屈折力を有する第7レンズ群G7とから構成される。広角端状態(W)から望遠端状態(T)に変倍する際、第1~第7レンズ群G1~G7がそれぞれ
図13の矢印で示す方向に移動し、隣り合う各レンズ群の間隔が変化する。第3~第7レンズ群G3~G7からなるレンズ群は、後続レンズ群GRに該当する。
【0107】
第1レンズ群G1は、物体側から順に並んだ、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL11と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL12と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL13と、両凸形状の正レンズL14とから構成される。
【0108】
負メニスカスレンズL11は、ガラス製レンズ本体L11aの像側の面に樹脂層L11bが設けられて構成されるハイブリッド型のレンズである。樹脂層L11bの像側の面が非球面であり、負メニスカスレンズL11は複合型の非球面レンズである。後述の[レンズ諸元]欄において、面番号1がレンズ本体L11aの物体側の面、面番号2がレンズ本体L11aの像側の面および樹脂層L11bの物体側の面(両者が接合する面)、面番号3が樹脂層L11bの像側の面を示す。
【0109】
負メニスカスレンズL12も、ガラス製レンズ本体L12aの物体側の面に樹脂層L12bが設けられて構成されるハイブリッド型のレンズである。樹脂層L12bの物体側の面が非球面であり、負メニスカスレンズL12も複合型の非球面レンズである。後述の[レンズ諸元]欄において、面番号4が樹脂層L12baの物体側の面、面番号5が樹脂層L12bの像側の面およびレンズ本体L12aの物体側の面(両者が接合する面)、面番号6がレンズ本体L12aの像側の面を示す。
【0110】
第2レンズ群G2は、両凸形状の正レンズL21および両凹形状の負レンズL22の接合レンズから構成される。
【0111】
第3レンズ群G3は、両凸形状の正レンズL31から構成される。開口絞りSは、第3レンズ群G3の像側近傍に設けられ、変倍の際、第3レンズ群G3とともに移動する。
【0112】
第4レンズ群G4は、両凸形状の正レンズL41および物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL42の接合レンズから構成される。
【0113】
第5レンズ群G5は、両凹形状の負レンズL51から構成される。
【0114】
第6レンズ群G6は、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL61から構成される。
【0115】
第7レンズ群G7は、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL71と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL72および両凸形状の正レンズL73の接合レンズから構成される。なお、正メニスカスレンズL71の像側の面が非球面である。
【0116】
本実施例では、第4レンズ群G4が第1合焦レンズ群を構成し、第6レンズ群G6が第2合焦レンズ群を構成している。遠距離物体(無限遠物体)への合焦状態から近距離物体への合焦状態への変化に応じて、第1合焦レンズ群(第4レンズ群G4)が物体側に、第2合焦レンズ群(第6レンズ群G6)が像側に移動する。
【0117】
以下の表5に、第5実施例に係る変倍光学系の諸元の値を掲げる。
【0118】
(表5)
[全体諸元]
焦点距離(f) 10.3(fw) - 19.3(ft)
W M T
F.NO 4.6683 4.96374 5.80239
2ω 55.25456 48.20506 35.45169
空気換算TL 121.01438 108.39582 103.93683
空気換算BF 16.95795 23.02697 29.43842
[レンズ諸元]
面 R D nd νd
1 58.6074 2.40 1.77250 49.61
2 17.5078 0.20 1.56093 36.64
*3 13.0042 9.90 1.00000
*4 50.3458 0.20 1.55389 38.09
5 56.8198 1.50 1.77250 49.61
6 21.5929 5.45 1.00000
7 119.999 1.30 1.77250 49.61
8 39.5142 7.63 1.00000
9 41.6577 3.67 1.71736 29.58
10 -749.999 可変 1.00000
11 37.7166 1.91 1.72825 28.38
12 -96.4635 0.80 1.91082 35.25
13 32.6266 可変 1.00000
14 18.8176 2.29 1.51680 63.88
15 -41.5207 1.71 1.00000
16 0 可変 1.00000 絞りS
17 28.3401 2.69 1.53172 48.78
18 -14.0687 0.90 1.90366 31.27
19 -34.3736 可変 1.00000
20 -67.0447 0.80 1.91082 35.25
21 45.6913 可変 1.00000
22 18.0512 1.59 1.51680 63.88
23 34.0298 可変 1.00000
24 -60.0006 1.35 1.53110 55.91
*25 -33.4648 0.91 1.00000
26 42.1746 0.80 1.91082 35.25
27 15.6452 4.94 1.48749 70.24
28 -103.065 29.88 1.00000
29 0 2.00 1.51680 63.88
30 0 0.10 1.00000
像面(I) ∞
[非球面データ]
第3面
κ=0.1402
A4=-5.51E-06 A6=-1.51E-08 A8=2.32E-11 A10=6.51E-13
第4面
κ=-5.3009
A4=-9.86E-06 A6=3.87E-08 A8=1.40E-10 A10=-2.96E-13
第25面
κ=1.0000
A4=6.04E-05 A6=5.21E-07 A8=-5.53E-09 A10=4.16E-11
[レンズ群データ]
群 始面 焦点距離
G1 1 -20.6289
G2 11 -103.51107
G3 14 25.38363
G4 17 53.4659
G5 20 -29.73283
G6 22 71.94709
G7 24 150.4283
[可変間隔データ]
W M T W至近 M至近 T至近
F(β) 10.29989 12.99987 19.31936 -0.05435 -0.06458 -0.09437
d10 32.0027 12.9451 2.0000 32.0027 12.9451 2.0000
d13 1.21092 3.95802 1.07653 1.21092 3.95802 1.07653
d16 2.7494 2.86437 3.6529 2.29199 2.33306 2.65189
d19 1.5000 0.40476 2.07238 1.95741 0.93607 3.07339
d21 2.39681 1.0000 1.5000 2.83592 1.31879 2.31081
d23 11.2541 9.43894 8.26897 10.81499 9.12015 7.45816
d28 15.53939 22.84512 29.83997 15.55377 22.86546 29.88341
Bf 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1
[倍率]
W M T W至近 M至近 T至近
βF1 0.52437 0.50057 0.42462 0.51772 0.49189 0.4088
βF2 0.45968 0.34278 0.20627 0.46552 0.3468 0.21654
[その他諸元]
ff1 53.4659
ff2 71.94709
MVF1w -0.4718
MVF2w 0.42473
【0119】
図14(A)、
図14(B)、および
図14(C)はそれぞれ、第5実施例に係る変倍光学系の広角端状態、中間焦点距離状態、望遠端状態における無限遠合焦時の諸収差図である。
図15(A)、
図15(B)、および
図15(C)はそれぞれ、第5実施例に係る変倍光学系の広角端状態、中間焦点距離状態、望遠端状態における近距離合焦時の諸収差図である。各諸収差図より、第5実施例に係る変倍光学系は、広角端状態から望遠端状態にわたって諸収差を良好に補正し優れた結像性能を有しており、さらに近距離合焦時にも優れた結像性能を有していることがわかる。
【0120】
最後に、[条件式対応値]の表を下記に示す。この表には、各条件式(1)~(5)に対応する値を、全実施例(第1~第5実施例)について纏めて示す。
条件式(1) 0.10<(-f1)/f2<1.20
条件式(2) 0.20<ff1/ff2<1.70
条件式(3) 0.15<(-f1)/ff1<1.30
条件式(4) 0.10<(-f1)/ff2<0.95
条件式(5) 0.01<(-MVF1)/MVF2<30.0
条件式(6) -0.80<βWF1<0.80
条件式(7) -0.80<βWF2<0.80
条件式(8) (βWF1+(1/βWF1))-2 <0.25
条件式(9) (βWF2+(1/βWF2))-2 <0.25
【0121】
[条件式対応値]
条件式 第1実施例 第2実施例 第3実施例 第4実施例 第5実施例
(1) 0.368 0.493 0.590 0.659 -0.199
(2) 0.454 0.593 0.953 0.569 0.743
(3) 0.615 0.399 0.508 0.614 0.386
(4) 0.279 0.237 0.484 0.349 0.287
(5) 0.442 0.778 0.667 0.400 1.111
(6) 0.185 0.422 0.432 -0.298 0.524
(7) 0.374 0.480 0.115 -0.671 0.460
(8) 0.032 0.128 0.132 0.075 0.169
(9) 0.108 0.152 0.013 0.214 0.144
【0122】
上述の第1~第5実施例は本実施形態の一具体例を示しているものであり、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0123】
なお、以下の内容は、本実施形態に係る変倍光学系の光学性能を損なわない範囲で適宜採用することが可能である。
【0124】
変倍光学系の数値実施例として4群構成、5群構成、6群構成および7群構成のものを示したが、本願はこれに限られず、その他の群構成(例えば、8群等)の変倍光学系を構成することもできる。具体的には、変倍光学系の最も物体側や最も像面側に、レンズまたはレンズ群を追加した構成でも構わない。なお、レンズ群とは、変倍時に変化する空気間隔で分離された、少なくとも1枚のレンズを有する部分を示す。
【0125】
レンズ面は、球面または平面で形成されても、非球面で形成されても構わない。レンズ面が球面または平面の場合、レンズ加工および組立調整が容易になり、加工および組立調整の誤差による光学性能の劣化を防げるので好ましい。また、像面がずれた場合でも描写性能の劣化が少ないので好ましい。
【0126】
レンズ面が非球面の場合、非球面は、研削加工による非球面、ガラスを型で非球面形状に形成したガラスモールド非球面、ガラスの表面に樹脂を非球面形状に形成した複合型非球面のいずれでも構わない。また、レンズ面は回折面としても良く、レンズを屈折率分布型レンズ(GRINレンズ)あるいはプラスチックレンズとしても良い。
【0127】
開口絞りは、開口絞りとしての部材を設けずに、レンズの枠でその役割を代用しても良い。
【0128】
各レンズ面には、フレアやゴーストを軽減し、コントラストの高い光学性能を達成するために、広い波長域で高い透過率を有する反射防止膜を施しても良い。これにより、フレアやゴーストを軽減し、高コントラストの高い光学性能を達成することができる。
【符号の説明】
【0129】
G1 第1レンズ群 G2 第2レンズ群
G3 第3レンズ群 G4 第4レンズ群
G5 第5レンズ群 G6 第6レンズ群
G7 第7レンズ群
I 像面 S 開口絞り