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  • 特許-易破断フィルム、及び包装体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】易破断フィルム、及び包装体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20240827BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240827BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240827BHJP
   A61J 1/03 20230101ALI20240827BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B27/00 H
B32B27/00 A
B65D65/40 D
A61J1/03 370
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024501875
(86)(22)【出願日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 JP2023026865
(87)【国際公開番号】W WO2024029377
(87)【国際公開日】2024-02-08
【審査請求日】2024-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2022125223
(32)【優先日】2022-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】庄司 賢人
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 康史
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-015750(JP,A)
【文献】特開平11-105217(JP,A)
【文献】特開2000-017088(JP,A)
【文献】特開2012-153420(JP,A)
【文献】特開平11-313870(JP,A)
【文献】特開2006-052292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
B65D 65/40
A61J 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度60℃以上の第1の環状オレフィン樹脂からなる表面樹脂層と、
ガラス転移温度60℃以上の第2の環状オレフィン樹脂及び無機物を含む無機物含有層と、を有する易破断フィルムであって、
前記易破断フィルムの総厚みに対する前記表面樹脂層と前記無機物含有層との合計厚みが、40%以上であり、
前記無機物の含有量が、前記易破断フィルムの総量に対して0.1質量%以上10質量%以下であり、
直径13mmの平板状の先端部を有する治具を用いて押し出した際の押出強度が、20N以下であることを特徴とする易破断フィルム。
【請求項2】
前記第1の環状オレフィン樹脂及び前記第2の環状オレフィン樹脂が、ガラス転移温度75℃以上の環状オレフィン樹脂を含む請求項1に記載の易破断フィルム。
【請求項3】
前記易破断フィルムの総厚みに対する前記無機物含有層の厚みが、15%以上50%以下である請求項1に記載の易破断フィルム。
【請求項4】
前記表面樹脂層とは反対の面側にヒートシール層を更に有する請求項1に記載の易破断フィルム。
【請求項5】
水蒸気及び/又は酸素バリア層を更に有する請求項1に記載の易破断フィルム。
【請求項6】
包装体の蓋材である請求項1に記載の易破断フィルム。
【請求項7】
凹部を有する容器と、蓋材とを有し、
前記蓋材が請求項1からのいずれかに記載の易破断フィルムであることを特徴とする包装体。
【請求項8】
飲食品包装用又は医療用である請求項に記載の包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易破断フィルム、及び包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤、カプセル等の医薬品や食品等の包装には、PTP(Press Through Package)と称される包装形態が利用されている。このPTP包装は、一般的に、樹脂系で構成されるシートに被包装体を収容する凹部を設けたブリスター容器と、この凹部にカプセルなどを収容した後にブリスター容器の裏面から凹部を覆うための蓋材となるアルミニウムフィルムと、で構成されている。
製薬会社においてPTP包装の製品を製造する前に、製造ラインに不具合が無いか、予めPTP包装材のみで試運転を行っているため、試運転時に出た一定量のPTP包装材廃棄物が発生している。廃棄物のうち一部は、リサイクルされているが、樹脂シートと蓋材のアルミニウムが分離しにくく、主に、産業廃棄物として焼却処分されている。
限りある資源の有効活用、温室効果ガス削減の観点から、ブリスター容器と樹脂組成を単一化(モノマテリアル化)させ、分別リサイクル可能な蓋剤が要望される。
【0003】
これまでに、アルミニウム箔が用いられていたPTPのカバーフィルムの代わりに使用することができるPTPカバー用積層フィルムとして、ヒートシール性樹脂(A)層と、環状オレフィン系樹脂(B)層と、ヒートシール耐熱樹脂(C)層とを有し、これらの層が(A)層/(B)層/(C)層の順で積層され、先端直径1mmの金属製針を用いた突き刺し強度が5N未満のPTPカバー用積層フィルムが報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-105217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、優れた易破断を有し、モノマテリアル化した易破断フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 環状オレフィン樹脂を含む基材層をその表面に有する易破断フィルムであって、
前記易破断フィルムの総厚みに対する前記基材層の厚みが、40%以上であることを特徴とする易破断フィルムである。
<2> 前記基材層が、ガラス転移温度60℃以上の環状オレフィン樹脂を含む前記<1>に記載の易破断フィルムである。
<3> 前記基材層が、前記表面側の表面樹脂層と、無機物を含む無機物含有層とからなる前記<1>又は<2>に記載の易破断フィルムである。
<4> 前記無機物の含有量が、前記易破断フィルムの総量に対して0.1質量%以上10質量%以下である前記<3>に記載の易破断フィルムである。
<5> 前記表面とは反対の面側にヒートシール層を更に有する前記<1>から<4>のいずれかに記載の易破断フィルムである。
<6> 直径13mmの平板状の先端部を有する治具を用いて押し出した際の押出強度が、35N以下である前記<1>から<5>のいずれかに記載の易破断フィルムである。
<7> 水蒸気及び/又は酸素バリア層を更に有する前記<1>から<6>のいずれかに記載の易破断フィルムである。
<8> 包装体の蓋材である前記<1>に記載の易破断フィルムである。
<9> 凹部を有する容器と、蓋材とを有し、
前記蓋材が前記<1>から<8>のいずれかに記載の易破断フィルムであることを特徴とする包装体である。
<10> 飲食品包装用又は医療用である前記<9>に記載の包装体である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、優れた易破断を有し、モノマテリアル化した易破断フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の易破断フィルムの一例を示す概略断面図である。
図2図2は、本発明の易破断フィルムの他の一例を示す概略断面図である。
図3図3は、本発明の包装体の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(包装体)
まず、本発明の包装体について説明する。
本発明の包装体は、凹部を有する容器(底材)と、蓋材と、を有し、前記蓋材が、後述する本発明の易破断フィルムである。前記蓋材は、前記容器の開口部に熱接着(ヒートシール)可能である。
前記包装体は、飲食品包装用又は医療用であることが好ましい。
【0010】
前記包装体は、PTP(Press Through Package)であることが好ましく、具体的には、複数の独立した凹部を有する容器(底材)と、蓋材と、を有し、前記凹部の中に被収容物(内容物とも言う)を収容した後、蓋材をかけて、脱気するか不活性ガス等で置換すると共に、容器と蓋材との当接部分をヒートシールした包装形態などが挙げられる。
また、前記包装体は、紙パック、プラスチックカップ等の容器と、ストロー刺し口としての蓋材と、を有する包装体であることが好ましく、具体的には、容器と蓋材との当接部分をヒートシールした包装体を作製した後、容器部分に飲料等の被収容物を収容して密閉した包装形態;容器に飲料等の被収容物を収容した後、蓋材をかけて、脱気するか不活性ガス等で置換すると共に、容器と蓋材との当接部分をヒートシールした包装形態;などが挙げられる。
前記包装体における、前記凹部の形状、及び前記蓋材と前記容器とのシール幅乃至面積としては、包装する被収容物の形状や形態によって様々であり一義的に規定できないが、特に制限はなく目的とする適用形態に応じて適宜選択することができる。
【0011】
前記包装体は、飲食品包装用又は医療用であることが好ましい。
前記医療用に用いる医薬品としては、特に制限はなく目的に応じて、PTP(Press Through Package)の包装形態が適用される医薬品を適宜選択することができ、例えば、錠剤、カプセル剤などが挙げられる。
前記飲食品としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サプリメント、チョコレート、ラムネ、グミなどの錠剤の形状の食品;ストロー刺し口としての蓋材を有する紙パック、プラスチックカップ等の包装体に収容される飲料などが挙げられる。
【0012】
(易破断フィルム)
本発明の易破断フィルムは、環状オレフィン樹脂を含む基材層をその表面に有する易破断フィルムであって、前記易破断フィルムの総厚みに対する前記基材層の厚みが、40%以上である。
前記易破断フィルムは、前記包装体の蓋材として好適に使用できる。
ここで、「易破断」とは、力をかけた際に、フィルムが破れて断ち切られることを意味し、易押し出しであっても、易突き刺しであってもよい。
【0013】
「易押し出し」とは、容器(底材)の外側から、被収容物(例えば、錠剤)を介してフィルムに力をかけた際に、フィルムが破れて被収容物が押し出し可能となることを意味する。
「易押し出し性」は、固定したフィルムを、平板型の先端部(例えば、直径13mmの円状)を有する治具を用いて押し出した際の押出強度を測定することにより評価することができる。
【0014】
直径13mmの円状かつ平板状の先端部を有する治具を用いて押し出した際の、前記易破断フィルムの押出強度としては、35N以下が好ましく、25N以下がより好ましく、20N以下が更に好ましい。前記押出強度が、35N以下であると、良好な易押し出し性を有する。
前記押出強度は、具体的には、中央に孔(直径:55mm)を有する2枚のステンレス鋼の間に、易破断フィルムなどの測定対象のフィルムを固定し、13mmの平板型の先端部を有する治具を前記孔に張られたフィルムに押し出し、フィルムが破断したときにかかる押出強度(圧縮強度)を測定することにより、求めることができる。なお、フィルムが破断せず、例えば、伸びきってしまった場合、又は破断しても前記押出強度が35Nを超える場合には、「易破断フィルム」ではないと判断できる。
【0015】
「易突き刺し」とは、先端部をフィルムに押し付け力をかけた際に、フィルムが破れて先端部がフィルムを貫通可能となることを意味し、前記先端部としては、例えば、斜めに切断された飲料ストロー等の先端部が挙げられる。
「易突き刺し性」は、固定したフィルムを、例えば、先端直径1mmの金属製針を有する治具を用いて押出することにより評価することができる。
【0016】
前記易破断フィルムは、表面に基材層を有し、前記基材層が、表面側の表面樹脂層と、無機物を含む無機物含有層とからなる併用態様であってもよく、表面樹脂層単体であってもよく、無機物含有層単体であってもよい。
前記易破断フィルムは、表面とは反対の面側にヒートシール層を更に有することが好ましい。
また、前記易破断フィルムは、基材層の表面側に、バリア層、印刷層などの他の層を更に有してもよい。
【0017】
前記易破断フィルムの一態様としては、基材層と、ヒートシール層と、を少なくとも有し、基材層/ヒートシール層の順で積層される易破断フィルムである。
前記易破断フィルムの他の態様としては、表面樹脂層(A)と、無機物含有層(B)と、ヒートシール層(C)と、を少なくとも有し、前記表面樹脂層(A)、前記無機物含有層(B)及び前記ヒートシール層(C)が(A)/(B)/(C)の順で積層される易破断フィルムである。
前記基材層、又は表面樹脂層(A)が包装体の外側であり、前記ヒートシール層(C)が包装体の内側であり、前記容器(底材)とのヒートシール面を形成する。
前記易破断フィルムの前記ヒートシール層(C)により前記包装体の前記容器がヒートシール可能である。
前記易破断フィルムは、本発明の包装体用易破断フィルムとして好適に使用することができる。
前記易破断フィルムは、表面樹脂層(A)と、無機物含有層(B)と、ヒートシール層(C)と、を少なくとも有する共押出易破断フィルムであることが好ましい。また、前記易破断フィルムは、前記表面樹脂層(A)側に、バリア層、印刷層などの他の層(α)を有し、(α)/(A)/(B)/(C)の順で積層される易破断フィルムであることが好ましい。
【0018】
<基材層>
前記基材層は、環状オレフィン樹脂を主たる樹脂成分として含有する。前記樹脂成分は、必要に応じて、環状構造を有しないオレフィン樹脂を含有してもよいが、環状オレフィン樹脂からなることが好ましい。
前記基材層が、表面樹脂層と、無機物含有層とからなる併用態様であってもよく、表面樹脂層単体であってもよく、無機物含有層単体であってもよい。
前記基材層は、印刷を設けることができる表面層であってもよい。
【0019】
<<(A)表面樹脂層>>
前記表面樹脂層(A)は、環状オレフィン樹脂を主たる樹脂成分として含有し、必要に応じて、環状構造を有しないオレフィン樹脂を含有してもよいが、環状オレフィン樹脂からなることが好ましい。
前記表面樹脂層(A)は、印刷を設けることができる表面層であってもよい。
【0020】
-環状オレフィン樹脂-
前記環状オレフィン樹脂としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、環状共役ジエン重合体などが挙げられる。
前記ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体(以下、「COP」という。)、ノルボルネン系単量体とエチレン等のオレフィンを共重合したノルボルネン系共重合体(以下、「COC」という。)、COP及びCOCの水素添加物などが挙げられる。
前記環状オレフィン樹脂の中でも、ノルボルネン系重合体が好ましく、COP及びCOCの水素添加物がより好ましい。
前記環状オレフィン樹脂の重量平均分子量としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、5,000~500,000が好ましく、7,000~300,000がより好ましい。
【0021】
前記ノルボルネン系重合体と原料となるノルボルネン系単量体は、ノルボルネン環を有する脂環族系単量体である。
前記ノルボルネン系単量体としては、例えば、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、エチリデテトラシクロドデセン、ジシクロペンタジエン、ジメタノテトラヒドロフルオレン、フェニルノルボルネン、メトキシカルボニルノルボルネン、メトキシカルボニルテトラシクロドデセンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0022】
前記ノルボルネン系共重合体は、前記ノルボルネン系単量体と、前記ノルボルネン系単量体と共重合可能なオレフィンと、を共重合したものである。
前記ノルボルネン系単量体と共重合可能なオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン等の炭素原子数2~20個を有するオレフィン;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロオレフィン;1,4-ヘキサジエン等の非共役ジエンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0023】
前記環状オレフィン樹脂は、市販品であっても、合成品であってもよい。
前記市販品としては、ノルボルネン系モノマーの開環重合体(COP)として、例えば、日本ゼオン株式会社製「ゼオノア(ZEONOR)」等;ノルボルネン系共重合体(COC)として、例えば、三井化学株式会社製「アペル」、ポリプラスチックス株式会社製「トパス(TOPAS)」等;などが挙げられる。
【0024】
前記環状オレフィン樹脂のメルトボリュームレート(MVR)としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、温度230℃、及び荷重2.16kgの測定条件の場合は、1.0cm/10分~50.0cm/10分が好ましく、1.0cm/10分~20.0cm/10分がより好ましく、2.0cm/10分~18.0cm/10分が更に好ましく、2.0cm/10分~15.0cm/10分が特に好ましい。また、温度260℃、及び荷重2.16kgの測定条件において測定した場合は、1.0cm/10分~50.0cm/10分が好ましく、1.0cm/10分~20.0cm/10分がより好ましく、2.0cm/10分~10.0cm/10分が更に好ましく、2.0cm/10分~7.0cm/10分が特に好ましい。
ここで、前記メルトボリュームレート(MVR)は、JISK7210に準拠して、温度230℃又は260℃、荷重2.16kg(21.18N)で測定した値である。
【0025】
前記環状オレフィン樹脂のガラス転移点(Tg)としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、60℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましい。
異なるTgを有する環状オレフィン樹脂2種類以上を併用してもよく、高いTgを有する環状オレフィン樹脂のTgとしては、100℃以上が好ましく、125℃以上がより好ましい。
前記易破断フィルムが、環状オレフィン樹脂を含有する基材層として、無機物含有層を含まず表面樹脂層のみの態様である場合には、前記表面樹脂層における、Tg100℃以上の環状オレフィン樹脂の含有量としては、得られる易破断フィルムの易破断性、剛性が優れる点で、50質量%以上が好ましく、75質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。
前記易破断フィルムにおける前記基材層が、表面樹脂層と、無機物含有層とからなる態様である場合には、前記表面樹脂層、及び前記無機物含有層における、Tg100℃以上の環状オレフィン樹脂の含有量としては、得られる易破断フィルムの易破断性、剛性が優れる点で、30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましい。
【0026】
また、前記環状オレフィン樹脂のガラス転移点(Tg)としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、他の樹脂層との共押出積層法による製造が可能である点と、工業的原料入手容易性の観点から、200℃以下が好ましい。
前記ガラス転移点は、示差走査熱量計(DSC)(例えば、株式会社日立ハイテクサイエンス製、DSC-7020)を用いて測定することができる。
【0027】
高ガラス転移点(例えば、Tg100℃以上)のノルボルネン系共重合体は、引っ張り強度が低く、切れやすく、裂けやすい場合もあるため、成膜性時、スリット時の引き取りや巻き取り適性やラミネート強度とのバランスを考慮し、高Tg品と100℃未満のガラス転移点を有する低Tg品とを併用し、物性バランスを調整してもよい。
【0028】
特に、剛性が高すぎて、輸送時の落下により簡単に裂ける、破袋する等の問題がある場合は、Tg100℃未満のCOCを配合することにより、強度を向上できる。またCOCと相溶性の良い、環状構造を有しないプロピレン樹脂やエチレン樹脂などのオレフィン樹脂を配合してもよい。
【0029】
前記基材層の厚み比率としては、前記易破断フィルムの総厚みに対して、40%以上であり、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましい。
前記基材層の平均厚みとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、5μm~40μmが好ましく、10μm~36μmがより好ましい。
【0030】
前記表面樹脂層(A)の厚み比率としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、前記易破断フィルムの総厚みに対して、基材層が併用態様の場合、10%~90%が好ましく、15%~80%がより好ましく;基材層が表面樹脂層単体の場合、40%~95%が好ましく、50%~90%がより好ましい。
前記表面樹脂層(A)の平均厚みとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、基材層が併用態様の場合、2μm~38μmが好ましく、2.5μm35μmがより好ましく;基材層が表面樹脂層単体の場合、5μm~40μmが好ましく、8μm~36μmがより好ましい。
【0031】
<<(B)無機物含有層>>
前記無機物含有層(B)は、環状オレフィン樹脂を主たる樹脂成分として含有し、無機物を更に含有し、必要に応じて、その他の成分を含む。
前記樹脂成分は、必要に応じて、環状構造を有しないオレフィン樹脂を含有してもよいが、環状オレフィン樹脂からなることが好ましい。
【0032】
-環状オレフィン樹脂-
前記環状オレフィン樹脂としては、基材層及び表面樹脂層(A)において説明した事項を適宜選択することができる。
【0033】
-無機物-
前記無機物としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナ、クレー、酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、珪酸カルシウム、酸化マグネシウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、二酸化マンガン、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等が挙げられる。
前記無機物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、タルク、窒化ホウ素、及び窒化アルミニウムからなる群から選択される1種以上が好ましく、炭酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、及びタルクからなる群から選択される1種以上がより好ましい。
【0034】
前記無機フィラーの粒径、繊維長、繊維径等の形状は、特に限定されず、目的とする用途に応じて適宜調整するとよい。また、前記無機フィラーの表面処理状態も特に限定されず、目的とする用途に応じて、例えば飽和脂肪酸等で表面修飾をしてもよい。
【0035】
前記無機フィラーは、熱可塑性樹脂に予め配合された形で用いてもよく、マスターバッチの形で用いてもよい。
【0036】
前記無機物の含有量としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、前記易破断フィルムの総量に対して、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、1質量%以上5質量%以下がより好ましい。
前記含有量が、0.1質量%以上10質量%以下であると、易破断性に優れ、バリア性、フィルム成形性の点でも良好である。
【0037】
前記無機物含有層(B)の厚み比率としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、前記易破断フィルムの総厚みに対して、基材層が併用態様の場合、10%~90%が好ましく、15%~50%がより好ましく;基材層が無機物含有層単体の場合、40%~95%が好ましく、50%~90%がより好ましい。
前記無機物含有層(B)の平均厚みとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、基材層が併用態様の場合、2μm~38μmが好ましく、2.5μm~35μmがより好ましく;基材層が無機物含有層単体の場合、5μm~40μmが好ましく、8μm~36μmがより好ましい。
【0038】
<<(C)ヒートシール層>>
前記ヒートシール層(C)は、ヒートシール性を付与する公知の熱可塑性樹脂を主たる樹脂成分として含有し、更に必要に応じて、その他の樹脂、成分を含有する。
【0039】
-樹脂-
前記熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく目的に応じて公知の熱可塑性樹脂を適宜選択することができ、例えば、αオレフィン樹脂、スチレン樹脂、エステル樹脂、アクリル樹脂、前記環状オレフィン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、良好なヒートシール性を付与できる点から、αオレフィン樹脂が好ましい。
前記αオレフィン樹脂としては、例えば、αオレフィン単量体の単重合体(ポリエチレン単重合体、ポリプロピレン単重合体等);αオレフィン単量体を主成分とした共重合体(プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体、エチレン-ブテン-1共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体等)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0040】
前記ヒートシール層(C)の厚み比率としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、前記易破断フィルムの総厚みに対して、20%~60%が好ましく、30%~60%がより好ましい。
前記ヒートシール層(C)の平均厚みとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、4μm~28μmが好ましく、6μm~25μmがより好ましい。
【0041】
前記ヒートシール層は、基材層上に、直接又はアンカーコート層等の任意の層を介して配置される。
前記ヒートシール層(C)の形成方法としては、共押出法により前記樹脂などを前記基材層と共に押し出して設けることができる。また、前記樹脂などを溶媒に分散又は溶解したヒートシール剤を塗工して設けることができる。
このようなヒートシール剤としては、市販品のホットメルトシール剤を使用することもできる。ヒートシール剤は、積層体の最外面の所望の面に全面又は部分的に塗工することができる。
【0042】
前記ヒートシール剤としては、特に限定されず、ヒートシール性を有する熱可塑性樹脂を有機溶剤に溶解したタイプ、水又は水性の有機溶剤に溶解したタイプ、水又は水性の有機溶剤中に分散させたエマルジョンタイプなど、いずれの形態のものであってもよい。
【0043】
ヒートシール性を有する樹脂としては、例えば、セラック類、ロジン類、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、硝化綿、酢酸セルロース、セルロースアセチルプロピオネート、セルロースアセチルブチレート、塩化ゴム、環化ゴム、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリアミド樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ケトン樹脂、ブチラール樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化エチレンビニルアセテート樹脂、エチレンビニルアセテート樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エチレン-ビニルアルコール樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、カゼイン、アルキッド樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0044】
有機溶剤としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系の各種有機溶剤;などが挙げられる。
水性の有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系;アセトン、メチルエチルケトン、シクロハキサノン等のケトン系;エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル;などが挙げられる。
前記ヒートシール剤は、他の成分を更に含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、ワックス、フィラーなどの滑剤、消泡剤、可塑剤、レベリング剤、乳化剤、分散安定剤、界面活性剤、粘着性付与剤、防腐剤、抗菌剤、防錆剤、酸化防止剤、架橋剤、硬化剤、硬化触媒、光安定剤、紫外線吸収剤、光触媒性化合物、染料、無機顔料、有機顔料、体質顔料、帯電防止剤などが挙げられる。
【0045】
ワックスとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪酸アミドワックス、カルバナワックス、ポリエチレンワックスやポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックス;パラフィンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、みつろう、マイクロクリスタリンワックス、酸化ポリエチレンワックス、アマイドワックス;ヤシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
ワックスを用いることにより、耐ブロッキング性を向上させることができる。ヒートシール性を低下させずに耐ブロッキング性を向上させることができることから、ポリエチレンワックスを用いることが好ましい。
ワックスの配合量としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、熱可塑性樹脂の総量に対し、0.1質量%~20質量%が好ましく、ヒートシール性と耐ブロッキング性のバランスの観点から、3質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0046】
フィラーとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、タルク、ウレタンビーズ、アクリルビーズ、メラミンビーズなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。シリカ、及びアクリルビーズのいずれか又は両方を用いることが好ましい。
フィラーを用いることにより、耐ブロッキング性を向上させることができる。また、例えば本発明の積層体を高温下で保管した場合にヒートシール層が流れ出し、膜厚が薄くなるのを抑制することもできる。
フィラーの形状としては、特に限定はなく目的に応じて適宜選択することができるが、熱による変形の影響が少なく、塗膜中での分散の様式によらず安定的な耐ブロッキング効果を得られることから球状が好ましい。フィラーの平均粒子径は、用いるフィラーにより適宜調整されるが、一例として0.5μm~10μmである。
【0047】
消泡剤としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸塩類、液体脂肪油硫酸エステル類、脂肪族アミン及び脂肪族アミドの硫酸塩類、脂肪族アルコールリン酸エステル類、二塩基性脂肪酸エステルのスルホン酸塩類、脂肪酸アミドスルホン酸塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類、ホルマリン縮合のナフタリンスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類、アクリル系ポリマー、シルコーン混合アクリル系ポリマー、ビニル系ポリマー、ポリシロキサン化合物などが挙げられる。
【0048】
ヒートシール剤の塗工方法としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グラビアコート法、リバースコート法、キスコート法、エアナイフコート法、メイヤーバーコート法、ロールコート法、ディップコート法などが挙げられる。
ヒートシール層は、積層体の全面に設けられていてもよいし、包装体を作製する際にヒートシールする部分のみに設けられていてもよい。
ヒートシール剤を塗布した後、乾燥させることでヒートシール層が形成される。乾燥温度は50℃~180℃、乾燥時間は0.5秒間~1分間程度である。乾燥方法は特に限定されないが、一例として熱風乾燥が挙げられる。必要に応じ、後処理としてコロナ放電処理などを施してもよい。
ヒートシール剤の塗布量(固形分)としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1.0g/m~15.0g/mであり、2.0g/m~10.0g/mが好ましく、2.0g/m~8.0g/mがより好ましい。
【0049】
ヒートシール層を塗工により設ける場合、ヒートシール層の下にアンカーコート層を設けてもよい。アンカーコート層には、上述のヒートシール層と同様の樹脂を使用できる。また、前記アンカーコート層は、例えば、樹脂を含有する塗布液を基材層上一面に塗布して形成することができる。アンカーコート層の平均厚みとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、1μm~10μmが好ましく、1μm~5μmがより好ましい。
【0050】
基材層、ヒートシール層、及びその他の層には、必要に応じて、防曇剤、帯電防止剤、熱安定剤、造核剤、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、離型剤、紫外線吸収剤、着色剤、押出改質剤等の成分を本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。
【0051】
<<(α)その他の層>>
本発明の易破断フィルムは、水蒸気及び/又は酸素バリア層(以下、「バリア層」と称する場合がある。)、印刷層、OPニス層(「オーバープリントニス層」、「オーバーコート層」、「トップコート層」とも言う。)などのその他の層(α)を有していてもよい。
前記その他の層(α)を有する場合、前記その他の層(α)は、水蒸気及び/又は酸素バリア層であることが、例えば、被収容物が医薬品である場合に、要求される高い保存安定性を担保できる点で、好ましい。
また、前記その他の層(α)は、包装用フィルムの印刷を設けることができる印刷層であってもよい。
【0052】
前記易破断フィルムは、前記基材層の表面側にその他の層(α)を更に有し、(α)/基材層/ヒートシール層の順で積層される易破断フィルムや、(α)/(A)/(B)/(C)の順で積層される易破断フィルムであってもよい。
前記その他の層(α)は、単層であってもよく、複数の層であってもよい。複数の前記その他の層(α)は、互いに同じ組成であってもよく、異なる組成であってもよい。
前記その他の層(α)は、前記基材層及び前記ヒートシール層と共に押し出されて(α)/基材層/ヒートシール層、又は(α)/(A)/(B)/(C)の順で積層される共押出易破断フィルムを形成してもよく、前記その他の層(α)と、基材層/ヒートシール層、又は(A)/(B)/(C)の順で積層される易破断フィルムとを接着して(α)/(A)/(B)/(C)の順で積層されるラミネートフィルムを形成してもよい。また、その他の層(α)を、コーティング剤やインキ組成物を塗工することにより設けてもよい。
【0053】
前記その他の層(α)をラミネートする際の接着方法としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ドライラミネーション、ウエットラミネーション、ノンソルベントラミネーション、押出ラミネーションなどが挙げられる。
前記その他の層(α)としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、共押出用であれば、例えば、プロピレン樹脂などのオレフィン樹脂などが挙げられ、ラミネートフィルム用であれば、無延伸ポリエステル(CPET)、無延伸ナイロン(CNY)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、無延伸ポリエチレン(CPE)、無延伸ポリスチレン(CPS)、発泡ポリスチレン(EPS)、二軸延伸ポリエステル(OPET)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、共押出二軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)をコートした共押出二軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸ナイロンなどが挙げられる。
【0054】
また、その他の層(α)は、基材層とヒートシール層の間に設けてもよいし、基材層の両面に設けてもよい。具体的には、基材層/(α)/ヒートシール層、又は(α)/基材層/(α)/ヒートシール層とすることができる。
具体的には、その他の層(α)としてバリア層、印刷層、OPニス層を設ける構成として以下の構成が挙げられる。
バリア層/文字印刷層/基材層/文字印刷層/ヒートシール層
バリア層/文字印刷層/ベタ印刷層/基材層/文字印刷層/ヒートシール層
バリア層/文字印刷層/ベタ印刷層/基材層/ベタ印刷層/文字印刷層/ヒートシール層
バリア層/文字印刷層/基材層/ベタ印刷層/文字印刷層/ヒートシール層
OPニス層/文字印刷層/基材層/文字印刷層/ヒートシール層
OPニス層/文字印刷層/ベタ印刷層/基材層/文字印刷層/ヒートシール層
OPニス層/文字印刷層/ベタ印刷層/基材層/ベタ印刷層/文字印刷層/ヒートシール層
OPニス層/文字印刷層/基材層/ベタ印刷層/文字印刷層/ヒートシール層
OPニス層/バリア層/文字印刷層/基材層/文字印刷層/ヒートシール層
OPニス層/バリア層/文字印刷層/ベタ印刷層/基材層/文字印刷層/ヒートシール層
OPニス層/バリア層/文字印刷層/ベタ印刷層/基材層/ベタ印刷層/文字印刷層/ヒートシール層
OPニス層/バリア層/文字印刷層/基材層/ベタ印刷層/文字印刷層/ヒートシール層
【0055】
前記その他の層(α)を有する場合、前記その他の層(α)の平均厚み(複数層の場合、合計の平均厚み)としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。
【0056】
-水蒸気及び/又は酸素バリア層(バリア層)-
前記バリア層の形成方法としては、バリア性を有するフィルムを積層する方法、バリア性コーティング剤を塗工して塗膜層を作製する方法などが挙げられる。
これらの中でも、バリア性コーティング剤を塗工した塗膜層を作製する方法が、簡便である点で、好ましい。
前記バリア性コーティング剤としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVOH)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリサッカライド、アクリル酸若しくはメタクリル酸ベースのポリマー、でんぷん若しくはでんぷん派生物、セルロースナノファイバ(CNF)、ナノ結晶セルロース(NCC)、キトサン、又は他のセルロース派生物、ヘミセルロース、ポリビニリデンクロライド(PVDC)等のポリマーを含有するコーティング剤;前記コーティング剤の少なくともいずれかと、無機化合物と、を併用したコーティング剤などが挙げられる。
前記無機物としては、例えば、シリカ、アルミナ、アルミニウムフレーク、ガラスフレークや、含水ケイ酸塩(フィロケイ酸塩鉱物等)、カオリナイト-蛇紋族粘土鉱物(ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライト等、アンチゴライト、クリソタイル等)、パイロフィライト-タルク族(パイロフィライト、タルク、ケロライ等)、スメクタイト族粘土鉱物(モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等)、バーミキュライト族粘土鉱物(バーミキュライト等)、雲母又はマイカ族粘土鉱物(白雲母、金雲母等の雲母、マーガライト、テトラシリリックマイカ、テニオライト等)、緑泥石族(クッケアイト、スドーアイト、クリノクロア、シャモサイト、ニマイト等)、ハイドロタルサイト、板状硫酸バリウム、ベーマイト、ポリリン酸アルミニウム等の板状無機化合物などが挙げられる。
前記バリア性コーティング剤としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のバリア性コーティング剤を使用することができる。公知のバリア性コーティング剤としては、例えば、サンケミカル社製の「Sunbar」シリーズ等や、特許5617831に記載されたポリエステル系のバリアコーティング剤などが挙げられる。
【0057】
--無機蒸着層--
また、前記バリア層は、ガスバリア性を付与する目的で設けることができる無機蒸着層であってもよい。
前記無機蒸着層は、無機物や無機酸化物、各種金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属塩等を用いて形成することができる。
例えば、アルミニウム、アルミナ、シリカ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル等を、単独で用いてもよいし、シリカとアルミナの二元蒸着のように2種以上を併用することができる。無機蒸着層は2層以上設けられていてもよい。無機蒸着層が2層以上設けられている場合、それぞれは同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。ガスバリア性の観点からは、アルミニウムを用いることが好ましい。
【0058】
前記無機蒸着層は、上述の各層上、あるいは別途基材上に、従来公知の方法により設けることができる。無機蒸着層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、およびイオンプレーティング法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法(PVD法))や、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、および光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法(CVD法))等が挙げられる。
【0059】
無機蒸着層の膜厚としては、1nm~200nmが好ましい。無機蒸着層がアルミニウム蒸着層である場合、その膜厚は1nm~100nmがより好ましく、15nm~60nmがより好ましく、10nm~40nmがより好ましい。無機蒸着層がシリカまたはアルミナ蒸着層である場合、その膜厚は1nm~100nmが好ましく、10nm~50nmがより好ましく、20nm~30nmがより好ましい。
【0060】
-印刷層-
前記印刷層としては、被印刷体である本発明の易破断フィルムに、美粧性、被収容物に関する様々な情報、及び機能性を付与するために、インキ等により所望の図柄を形成する層である。
前記印刷層は、バインダー樹脂と着色剤とを含有し、インキを印刷してなる。
前記印刷層は、単層であってもよいし、複数の印刷層があってもよい。前記単層としては、文字や任意のオブジェクトを印刷した文字印刷層であってもよく、ベタ印刷層であってもよい。印刷層が複数ある場合は、ベタ印刷層、又はオブジェクトなどを印刷した印刷層の上に、文字印刷層をオーバープリントした印刷層であってもよく、各印刷層に使用するインキは同一のものであってもよいし、同一の組成で着色剤のみが違うものであってもよいし、異なる組成であってもよい。
【0061】
--インキ--
前記インキは、グラビア印刷インキやフレキソ印刷インキとして使用されるリキッド印刷インキであることが好ましい。前記リキッド印刷インキは、有機溶剤を主溶媒とする有機溶剤型リキッド印刷インキと、水を主溶媒とする水性リキッド印刷インキとに大別されるが、本発明においてはどちらを使用しても構わない。また、いわゆる表刷りインキと、ラミネートが前提の裏刷りインキとがあるが、本発明においてはどちらを使用しても構わない。
ここでは主流である有機溶剤型のリキッド印刷インキについて説明する。
【0062】
前記リキッド印刷インキに使用するバインダー樹脂としては、硝化綿、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)やセルロースアセテートブチロネート(CAB)等セルロース系樹脂等の繊維素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等の塩化ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、石油樹脂等を挙げることができる。
【0063】
また、前記バインダー樹脂に硬化剤を併用してもよい。硬化剤としては有機溶剤系のグラビア印刷インキで汎用の硬化剤を使用すればよいが、最もよく使用されるのはイソシアネート系の硬化剤である。
イソシアネート化合物の添加量としては、硬化効率の観点からリキッド印刷インキ固形分に対し0.3質量%~10.0質量%が好ましく、1.0質量%~7.0質量%がより好ましい。
前記バインダー樹脂は、リキッド印刷インキに対して0.15質量%~50質量%が好ましく、1質量%~40質量%がより好ましい。
【0064】
--溶媒--
前記リキッド印刷インキに使用する溶媒としては、特に制限はないが、例えば、水、トルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系有機溶剤、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系の各種有機溶剤が挙げられる。また水混和性有機溶剤としてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロハキサノン等のケトン系、エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル系の各種有機溶剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0065】
--着色剤--
前記リキッド印刷インキは、着色剤を含み、美粧性等を付与する目的でデザイン印刷等に用いる着色剤を含むリキッド印刷インキとして使用することができる。着色剤としては、一般のインキ、塗料、及び記録剤等に使用されている無機顔料、有機顔料及び染料を挙げることができ、顔料が好ましい。有機顔料としては、溶性アゾ系、不溶性アゾ系、アゾ系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラキノン系、アンサンスロン系、ジアンスラキノニル系、アンスラピリミジン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、フラバンスロン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系、インダンスロン系、カーボンブラック系等の顔料が挙げられる。また、例えば、カーミン6B、レーキレッドC、パーマネントレッド2B、ジスアゾイエロー、ピラゾロンオレンジ、カーミンFB、クロモフタルイエロー、クロモフタルレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンレッド、インダンスロンブルー、ピリミジンイエロー、チオインジゴボルドー、チオインジゴマゼンタ、ペリレンレッド、ペリノンオレンジ、イソインドリノンイエロー、アニリンブラック、ジケトピロロピロールレッド、昼光蛍光顔料等が挙げられる。また未酸性処理顔料、酸性処理顔料のいずれも使用することができる。
無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、リトボン、アンチモンホワイト、石膏等の白色無機顔料が挙げられる。無機顔料の中では酸化チタンの使用が特に好ましい。酸化チタンは白色を呈し、着色力、隠ぺい力、耐薬品性、耐候性の点から好ましく、印刷性能の観点から該酸化チタンはシリカ及び/又はアルミナ処理を施されているものが好ましい。
白色以外の無機顔料としては、例えば、アルミニウム粒子、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、ジルコンが挙げられ、アルミニウムは粉末又はペースト状であるが、取扱い性及び安全性の面からペースト状で使用するのが好ましく、リーフィング又はノンリーフィングを使用するかは輝度感及び濃度の点から適宜選択される。
【0066】
前記顔料の含有量としては、リキッド印刷インキの濃度及び着色力を確保するのに充分な量、すなわちリキッド印刷インキ総質量に対して1質量%~60質量%が好ましく、リキッド印刷インキ中の固形分重量比では10質量%~90質量%が好ましい。また、これらの顔料は、1種単独、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0067】
有機溶剤型リキッド印刷インキは、更に必要に応じて、ワックス、キレート系架橋剤、体質顔料、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤等も含むこともできる。
【0068】
-バイオマスリキッド印刷インキ-
前記リキッド印刷インキにおいて、持続的に発展すべき循環型社会の構築(サステナビリティ)を考慮し、植物由来原料を使用したリキッド印刷インキを使用することが好ましい。
植物由来原料としては、例えば、セルロースアセテートプロピオネート樹脂や硝化綿等の繊維素系樹脂や、大豆油由来、パーム油由来、米糠油由来等天然油に由来するダイマー酸あるいは重合脂肪酸を使用したポリアミド樹脂や、ポリカルボン酸として、コハク酸、無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、グルタル酸、リンゴ酸等、ポリオールとして、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンチレングリコール、1,10-ドデカンジオール、ダイマージオール、イソソルビド等、ポリイソシアネートとして、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、ダイマージイソシアネート等の植物由来原料から合成したバイオマスポリウレタンや、ロジン樹脂等が挙げられる。
【0069】
バイオマスリキッド印刷インキとしては市販品を利用することもできる。市販品としては、一般社団法人日本有機資源協会に記載のインキ等が使用できる。
【0070】
-UVカットインキ-
本発明に使用するリキッド印刷インキにおいて、紫外線遮蔽効果を有するUVカットインキを使用することも好ましい。UVカットインキとしては、酸化亜鉛等を含有する紫外線遮蔽効果の高いインキであれば特に限定されず市販のUVカットインキを使用することができる。
【0071】
-OPニス層-
OPニス層は、蓋材表面を傷や熱から保護するためのコーティングである。
OPニスとしては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂;エポキシ樹脂とアミノ樹脂のブレンド;硝化綿樹脂、酢酸セルロース、セルロースプロピオネート、セルロースブチラート等のセルロース樹脂;フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビスフェノールAのエチレンオキサイド(以下、「EO」と称する場合がある)付加物等のベンゼン環、及び/又はシクロペンタンジオール、ジメチロールトリシクロデカン等の脂環式骨格を有したポリエステル樹脂;ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシネート等の脂環式イソシアネート、及び/又はイソシアヌルトリイソシアネートと、ポリオール、及び/又はトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートを結合したウレタン樹脂等を使用することができる。
また、OPニス層の硬化剤としては、例えば、前述のイソシアネートを使用したポリイソシアネートを使用してもよい。また、スチレン、フェノキシジエチレングリコールアクリレート等のベンゼン環と不飽和二重結合を有する化合物;イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート等の脂環式構造と不飽和二重結合を有する化合物;(メタ)アクリレート;などのラジカル共重合体も好ましく使用できる。
【0072】
OPニス層は、耐熱性を有することが好ましく、前記OPニスの中でも、ポリマーのガラス転移温度(以下、「Tg」と称する場合がある)が100℃以上であるセルロース骨格、ベンゼン環骨格、イソシアヌル環骨格、脂環式骨格などのポリマー骨格を有する樹脂を含有することが好ましい。
また、オレフィンフィルムへの密着性を考慮して、低いTgの樹脂を混ぜて使用してもよい。
【0073】
また、OPニス層は、着色剤を更に含み、着色されていてもよい。
着色剤としては、特に限定はなく、例えば前述の印刷層で使用するような、一般のインキ等に使用されている無機顔料、有機顔料及び染料を挙げることができる。
【0074】
また、OPニス層は、骨材として無機微粒子を更に含むことが、耐熱性に優れるため好ましい。
前記無機微粒子としては、例えば、窒化ホウ素、窒化アルミ、アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化ケイ素、シリカ(石英、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ等)などが挙げられる。
これらの中でも、窒化ホウ素、窒化アルミ、アルミナ、チタニア、マグネシア、酸化亜鉛、酸化ケイ素等が、熱伝導性に優れるため好ましい。
無機微粒子は、1種単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0075】
前記無機微粒子の一次粒子径としては、5nm~200nmが好ましく、10nm~100nmがより好ましい。前記一次粒子径が、5nm以上であると、分散体中の無機微粒子が分散良好となり、200nm以下であれば、硬化物の強度が良好となる。
【0076】
OPニス層に、塗工フィルムの傷つき防止、積層体形成時のブロッキング防止、積層体作成後の製袋時の加工性付与するために、OPニス層は、ワックス、シリコン添加剤、及び有機ビーズの少なくともいずれかを更に含むことができる。
前記ワックスとしては、例えば、アマイドワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、カルナバワックス、ライスワックスなどが挙げられる。前記シリコン添加剤としては、例えば、ジメチルシロキサンのエチレンオキサイド(EO)付加物、シリコン変性物などが挙げられる。前記有機ビーズとしては、例えば、アクリル、ナイロン、ウレタン、又はエポキシからなる有機ビーズが挙げられる。
OPニス層を形成するコーティング剤に使用する溶媒としては、特に制限はなく、前記印刷インキに使用する溶媒と同様の物を使用できる。
【0077】
[易破断フィルムの製造方法]
本発明の易破断フィルムの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、各層に用いる各樹脂又は樹脂混合物を、それぞれ別々の押出機で加熱溶融させ、共押出多層ダイス法やフィードブロック法等の方法により溶融状態で表面樹脂層(A)/無機物含有層(B)/ヒートシール層(C)や、表面樹脂層(A)単体又は無機物含有層(B)単体/ヒートシール層(C)を積層した後、インフレーションやTダイ・チルロール法等によりフィルム状に成形する共押出する方法が挙げられる。共押出法は、各層の厚さの比率を比較的自由に調整することが可能で、衛生性に優れ、コストパフォーマンスにも優れた多層フィルムが得られるので好ましい。融点とTgとの差が大きい樹脂を積層するような場合は、共押出加工時にフィルム外観が劣化したり、均一な層構成形成が困難になったりする場合がある。このような劣化を抑制するためには、比較的高温で溶融押出を行うことができるTダイ・チルロール法が好ましい。
前記ヒートシール剤を用いてヒートシール層を形成する場合には、ヒートシール層以外の積層体、表面樹脂層(A)単体又は無機物含有層(B)単体を得た後、上記の方法によりヒートシール剤を塗工してヒートシール層を設ければよい。
【0078】
さらに、ヒートシール層(C)とは他方の表面に印刷やラミネート等を行なう場合には、印刷インキや接着剤との接着性等を向上させるため、ヒートシール層(C)とは他方の表面に表面処理を施すことが好ましい。このような表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理等の表面酸化処理、あるいはサンドブラスト等の表面凹凸処理などが挙げられる。これらの中でも、コロナ処理が好ましい。
ヒートシール層(C)側の露出面に表面処理を施してもよい。
【0079】
<容器(底材)>
前記容器(底材)としては、特に制限はなく目的に応じて、公知の容器を適宜選択することができ、PTPの態様であれば、樹脂を成形した容器が好ましく、飲料用の容器であれば、ストロー口の蓋材とヒートシール可能な、紙パックやプラスチックカップなどが好ましい。
前記樹脂としては、特に制限はなく目的に応じて、ヒートシール可能な公知のオレフィン樹脂を適宜選択することができる。
【0080】
本発明の包装体は、蓋材と、凹部を有する容器とを有し、前記蓋材は、前記容器の開口部に熱接着(ヒートシール)可能であり、前記蓋材及び前記容器のヒートシールにより、前記凹部に被収容物を収容して密封することができる。
或いは、予め前記蓋材及び前記容器をヒートシールした、飲料用の紙パックなどの包装体の場合には、包装体に被収容物を収容して密封することができる。
前記易破断フィルムの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜公知の方法を選択することができ、例えば、共押出法、ラミネート加工などが挙げられる。
前記共押出法としては、例えば、押出温度(例えば、250℃)でTダイから基材層(又は前記表面樹脂層(A)、及び前記無機物含有層(B))、前記ヒートシール層(C)の各層の厚みが所定の割合になるように押出し、水冷金属冷却ロール(例えば、40℃)で冷却した後、必要に応じてコロナ放電処理を施した後、ロールに巻取、熟成室(例えば、40℃)で熟成(例えば、24時間)させる方法が挙げられる。
【0081】
前記凹部を有する容器の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜公知の方法を選択することができ、例えば、特定形状(例えば、被収容物に即した形状)を有する金型を用いて、シート状のフィルムから、被収容物を収容可能な凹部を有する容器を成型する方法などが挙げられる。
前記包装体における、前記凹部の形状、個数、及び前記蓋材と前記容器とのシール幅乃至面積としては、被収容物の形状や形態によって様々であり一義的に規定できないが、特に制限はなく目的とする適用形態に応じて適宜選択することができる。
【0082】
前記蓋材及び前記容器をヒートシールする方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜公知の方法を選択することができ、例えば、前記容器の凹部の中に被収容物を収容した後、前記蓋材をかけて、脱気するか不活性ガス等で置換すると共に、前記蓋材及び前記容器の当接部分をヒートシールする方法が挙げられる。
前記ヒートシールは、特に制限はなく、目的に応じて適宜公知のヒートシール包装機を用いて行うことができる。前記ヒートシールにおける成型加熱温度、及び成型時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、80℃~180℃、及び0.1秒間~5.0秒間などが挙げられる。
【0083】
本実施形態における易破断フィルム10は、例えば、図1に示すように、表面樹脂層(A)1、無機物含有層(B)2、及びヒートシール層(C)3からなり、(A)/(B)/(C)の順で積層された易破断フィルムである。
また、図2に示すように、他の実施形態における易破断フィルム10は、表面樹脂層(A)1側にその他の層(α)4を更に有し、(α)/(A)/(B)/(C)の順で積層される易破断フィルムであってもよい。その他の層(α)4は、単層であってもよく、複数の層であってもよい。
図3は、本実施形態における包装体の一例を示す概略断面図である。包装体100は、蓋材20と凹部を有する容器30とを有する包装体であり、内容物40(例えば、錠剤など)を独立した複数の凹部に個別に収容することができ、各々の内容物を押し出しにより取り出すことができる。
包装体100は、蓋材20が易破断フィルム10であり、易破断フィルム10のヒートシール層(C)3が、容器30とヒートシールされる。
【実施例
【0084】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
【0085】
(実施例1)
<蓋材用の易破断フィルムの作製>
表面樹脂層(A層)用樹脂として、ノルボルネン系モノマーの開環重合体(以下、「環状オレフィン樹脂(a)」という。MVR:4cm/10分(260℃、2.16kg)、密度:1.02g/cm、ガラス転移温度:158℃)50質量部、及びノルボルネン系モノマーの開環重合体(以下、「環状オレフィン樹脂(b)」という。MVR:12cm/10分(230℃、2.16kg)、密度:1.02g/cm、ガラス転移温度:78℃)50質量部を用いた。
無機物含有層(B層)用樹脂として、A層と同一の環状オレフィン樹脂(a)50質量部、環状オレフィン樹脂(b)30質量部、及び無機物としてタルクを40質量%含有するマスターバッチ20質量部を用いた。
ヒートシール層(C層)用樹脂として、ポリプロピレン(以下、「プロピレン樹脂(a)」という。MFR:6g/10分(230℃、21.18N)、密度:0.89g/cm)100質量部を用いた。
共押出法により、押出温度250℃でTダイから(A)/(B)/(C)の順に積層され、各層の厚みの比率が20%/30%/50%になるように押出し、50℃の水冷金属冷却ロールで冷却した後、表面樹脂層(A)の濡れ張力が40mN/mとなるようにコロナ放電処理を施した後、ロールに巻取、40℃の熟成室で24時間熟成させて、総厚みが30μmの共押出積層フィルムである実施例1の易破断フィルム1を得た。
易破断フィルムの総量に対する、無機物の含有量は、2.4質量%であった。
【0086】
<包装体の作製>
容器(底材)として、成形樹脂シートを真空圧空成形により、錠剤収納用の独立した凹部を有する容器を用いた。
次いで、前記容器の凹部に錠剤を収納した後、易破断フィルム1のヒートシール層(C層)が容器に接するように、両面テープで貼付し底材と固定し、実施例1の包装体1を得た。
【0087】
<評価>
作製した易破断フィルム1、及び包装体1について、以下のように評価した。
【0088】
<<押出強度>>
中央に孔(直径:55mm)を有する2枚のステンレス鋼の間に、易破断フィルム1を固定し、直径13mmの円状かつ平板状の先端部を有する治具を前記孔に張られたフィルムに押し出し、易破断フィルム1が破断したときにかかる押出強度(圧縮強度)を測定した。
なお、フィルムが破断せず、例えば、伸びきってしまった場合、又は破断しても前記押出強度が35Nを超える場合には、「易破断フィルム」ではないと判断した。
結果を表1に示す。
【0089】
<<プッシュスルー性>>
作製した包装体1の容器(底材)を指で押して内容物である錠剤を取り出し、以下の基準により評価した。
[評価基準]
◎:アルミ箔系の市販PTPと同様の押出し力で破れた蓋材に引掛かることなく内容物を取り出せた(開封良好)
○:押出し力が大きいか、引掛かりがあるか、いずれかであったが、内容物を取り出せた(開封可能)
×:押出し力が大きく、かつ引掛かりがあり、内容物を容易に取り出せなかった(開封困難)
【0090】
(実施例2~6)
実施例1において、表1に記載の通り、樹脂組成、及び共押出法による押出の条件を変更して(A)/(B)/(C)の各層の厚みを変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2~6の蓋材用易破断フィルム2~6、及び包装体2~6を作製し、これらの評価を実施した。
なお、無機物含有層(B)の樹脂組成の欄が空欄の実施例及び比較例は、無機物含有層(B)を含まず、(A)/(C)の層構成である。
【0091】
(比較例1~6)
実施例1において、表2に記載の通り、樹脂組成、及び共押出法による押出の条件を変更して(A)/(B)/(C)の各層の厚みを変更したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1~6の蓋材用易破断フィルムa~f、及び包装体a~fを作製し、これらの評価を実施した。
表2中、「プロピレン樹脂(b)」は、MFR:2.5g/10分(230℃、21.18N)、密度:0.90g/cmのポリプロピレンである。
なお、無機物含有層(B)の樹脂組成の欄が空欄の実施例及び比較例は、無機物含有層(B)を含まず、(A)/(C)の層構成である。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【符号の説明】
【0094】
1 表面樹脂層(A)
2 無機物含有層(B)
3 ヒートシール層(C)
4 その他の層(α)
10 易破断フィルム
20 蓋材
30 容器
40 被収容物(内容物)
100 包装体
【0095】
本国際出願は2022年8月5日に出願した日本国特許出願2022-125223号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願2022-125223号の全内容を本国際出願に援用する。

図1
図2
図3