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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】接合装置、及び接合方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20240827BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H01L21/02 B
H01L21/68 N
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020193289
(22)【出願日】2020-11-20
(65)【公開番号】P2022082007
(43)【公開日】2022-06-01
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】和田 憲雄
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 英二
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-129286(JP,A)
【文献】特表2016-526299(JP,A)
【文献】特開2018-190817(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0210057(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0323089(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板の接合面と第2基板の接合面とを向かわせて接合し、前記第1基板と前記第2基板を含む重合基板を製造する、接合装置であって、
前記第1基板を上方から保持する第1保持部と、
前記第2基板を下方から保持する第2保持部と、
前記第2基板と間隔をおいて配置された前記第1基板の中心を押し下げ前記第2基板に接触させる押動部と、
接合前に、前記第1基板又は前記第2基板の温度分布を調節する温度調節部と、
接合前における前記第1基板と前記第2基板のそれぞれの反り、及び接合後に前記第1基板と前記第2基板の間に生じる歪みの少なくとも1つに基づき、前記温度調節部を制御する制御部と、を備え、
接合前における前記第1基板又は前記第2基板の反りを測定する測定部を備える、接合装置。
【請求項2】
前記測定部は、前記第1基板又は前記第2基板の前記接合面の各測定点までの距離を測定するセンサを含む、請求項に記載の接合装置。
【請求項3】
前記測定部の前記センサは、カメラ又は変位計を含む、請求項に記載の接合装置。
【請求項4】
第1基板の接合面と第2基板の接合面とを向かわせて接合し、前記第1基板と前記第2基板を含む重合基板を製造する、接合装置であって、
前記第1基板を上方から保持する第1保持部と、
前記第2基板を下方から保持する第2保持部と、
前記第2基板と間隔をおいて配置された前記第1基板の中心を押し下げ前記第2基板に接触させる押動部と、
接合前に、前記第1基板又は前記第2基板の温度分布を調節する温度調節部と、
接合前における前記第1基板と前記第2基板のそれぞれの反り、及び接合後に前記第1基板と前記第2基板の間に生じる歪みの少なくとも1つに基づき、前記温度調節部を制御する制御部と、を備え、
接合前における前記第1基板又は前記第2基板が線対称な反りを有する場合、前記制御部は、前記温度調節部を制御し、前記第1基板又は前記第2基板の温度分布を線対称な分布に制御する、接合装置。
【請求項5】
第1基板の接合面と第2基板の接合面とを向かわせて接合し、前記第1基板と前記第2基板を含む重合基板を製造する、接合装置であって、
前記第1基板を上方から保持する第1保持部と、
前記第2基板を下方から保持する第2保持部と、
前記第2基板と間隔をおいて配置された前記第1基板の中心を押し下げ前記第2基板に接触させる押動部と、
接合前に、前記第1基板又は前記第2基板の温度分布を調節する温度調節部と、
接合前における前記第1基板と前記第2基板のそれぞれの反り、及び接合後に前記第1基板と前記第2基板の間に生じる歪みの少なくとも1つに基づき、前記温度調節部を制御する制御部と、を備え、
接合前における前記第1基板又は前記第2基板が同心円状の反りを有する場合、前記制御部は、前記温度調節部を制御し、前記第1基板又は前記第2基板の温度分布を同心円状の分布に制御する、接合装置。
【請求項6】
第1基板の接合面と第2基板の接合面とを向かわせて接合し、前記第1基板と前記第2基板を含む重合基板を製造する、接合装置であって、
前記第1基板を上方から保持する第1保持部と、
前記第2基板を下方から保持する第2保持部と、
前記第2基板と間隔をおいて配置された前記第1基板の中心を押し下げ前記第2基板に接触させる押動部と、
接合前に、前記第1基板又は前記第2基板の温度分布を調節する温度調節部と、
接合前における前記第1基板と前記第2基板のそれぞれの反り、及び接合後に前記第1基板と前記第2基板の間に生じる歪みの少なくとも1つに基づき、前記温度調節部を制御する制御部と、を備え、
接合後に前記第1基板と前記第2基板の間に生じる歪みが線対称である場合、前記制御部は、前記温度調節部を制御し、前記第1基板又は前記第2基板の温度分布を線対称な分布に制御する、接合装置。
【請求項7】
第1基板の接合面と第2基板の接合面とを向かわせて接合し、前記第1基板と前記第2基板を含む重合基板を製造する、接合装置であって、
前記第1基板を上方から保持する第1保持部と、
前記第2基板を下方から保持する第2保持部と、
前記第2基板と間隔をおいて配置された前記第1基板の中心を押し下げ前記第2基板に接触させる押動部と、
接合前に、前記第1基板又は前記第2基板の温度分布を調節する温度調節部と、
接合前における前記第1基板と前記第2基板のそれぞれの反り、及び接合後に前記第1基板と前記第2基板の間に生じる歪みの少なくとも1つに基づき、前記温度調節部を制御する制御部と、を備え、
接合後に前記第1基板と前記第2基板の間に生じる歪みが同心円状である場合、前記制御部は、前記温度調節部を制御し、前記第1基板又は前記第2基板の温度分布を同心円状の分布に制御する、接合装置。
【請求項8】
前記温度調節部は、前記第1基板又は前記第2基板を局所的に加熱又は冷却する複数の素子を含み、
複数の前記素子は、面状に並んでおり、
前記制御部は、複数の前記素子を個別に制御する、請求項1~のいずれか1項に記載の接合装置。
【請求項9】
第1基板の接合面と第2基板の接合面とを向かい合わせることと、前記第2基板の上方に前記第2基板と間隔をおいて配置された前記第1基板の中心を押し下げ前記第2基板に接触させることと、前記第1基板の接合面全体と前記第2基板の接合面全体とを接触させ、前記第1基板と前記第2基板とを含む重合基板を製造することと、を含む、接合方法であって、
接合前における前記第1基板と前記第2基板のそれぞれの反り、及び接合後に前記第1基板と前記第2基板の間に生じる歪みの少なくとも1つに基づき、接合前の前記第1基板又は前記第2基板の温度分布を調節することを含み、
接合前における前記第1基板又は前記第2基板が線対称な反りを有する場合、接合前の前記第1基板又は前記第2基板の温度分布を線対称な分布に制御する、接合方法。
【請求項10】
第1基板の接合面と第2基板の接合面とを向かい合わせることと、前記第2基板の上方に前記第2基板と間隔をおいて配置された前記第1基板の中心を押し下げ前記第2基板に接触させることと、前記第1基板の接合面全体と前記第2基板の接合面全体とを接触させ、前記第1基板と前記第2基板とを含む重合基板を製造することと、を含む、接合方法であって、
接合前における前記第1基板と前記第2基板のそれぞれの反り、及び接合後に前記第1基板と前記第2基板の間に生じる歪みの少なくとも1つに基づき、接合前の前記第1基板又は前記第2基板の温度分布を調節することを含み、
接合前における前記第1基板又は前記第2基板が同心円状の反りを有する場合、接合前の前記第1基板又は前記第2基板の温度分布を同心円状の分布に制御する、接合方法。
【請求項11】
第1基板の接合面と第2基板の接合面とを向かい合わせることと、前記第2基板の上方に前記第2基板と間隔をおいて配置された前記第1基板の中心を押し下げ前記第2基板に接触させることと、前記第1基板の接合面全体と前記第2基板の接合面全体とを接触させ、前記第1基板と前記第2基板とを含む重合基板を製造することと、を含む、接合方法であって、
接合前における前記第1基板と前記第2基板のそれぞれの反り、及び接合後に前記第1基板と前記第2基板の間に生じる歪みの少なくとも1つに基づき、接合前の前記第1基板又は前記第2基板の温度分布を調節することを含み、
接合後に前記第1基板と前記第2基板の間に生じる歪みが線対称である場合、接合前の前記第1基板又は前記第2基板の温度分布を線対称な分布に制御する、接合方法。
【請求項12】
第1基板の接合面と第2基板の接合面とを向かい合わせることと、前記第2基板の上方に前記第2基板と間隔をおいて配置された前記第1基板の中心を押し下げ前記第2基板に接触させることと、前記第1基板の接合面全体と前記第2基板の接合面全体とを接触させ、前記第1基板と前記第2基板とを含む重合基板を製造することと、を含む、接合方法であって、
接合前における前記第1基板と前記第2基板のそれぞれの反り、及び接合後に前記第1基板と前記第2基板の間に生じる歪みの少なくとも1つに基づき、接合前の前記第1基板又は前記第2基板の温度分布を調節することを含み、
接合後に前記第1基板と前記第2基板の間に生じる歪みが同心円状である場合、接合前の前記第1基板又は前記第2基板の温度分布を同心円状の分布に制御する、接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接合装置、及び接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の接合装置は、第1保持部と、第2保持部と、ストライカーと、移動部と、温度調節部とを備える。第1保持部は、第1基板を上方から吸着保持する。第2保持部は、第2基板を下方から吸着保持する。ストライカーは、第1基板の中心部を上方から押圧して第2基板に接触させる。移動部は、第1保持部と対向しない非対向位置と第1保持部と対向する対向位置との間で第2保持部を移動させる。温度調節部は、非対向位置に配置された第2保持部と対向し、第2保持部に吸着保持された第2基板の温度を局所的に調節する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-190817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一態様は、反りのある基板を接合した後に生じる基板間の歪みを低減する、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る接合装置は、第1基板の接合面と第2基板の接合面とを向かわせて接合し、前記第1基板と前記第2基板を含む重合基板を製造する。前記接合装置は、第1保持部と、第2保持部と、押動部と、温度調節部と、制御部と、を備える。前記第1保持部は、前記第1基板を上方から保持する。前記第2保持部は、前記第2基板を下方から保持する。前記押動部は、前記第2基板と間隔をおいて配置された前記第1基板の中心を押し下げ前記第2基板に接触させる。前記温度調節部は、接合前に、前記第1基板又は前記第2基板の温度分布を調節する。前記制御部は、接合前における前記第1基板と前記第2基板のそれぞれの反り、及び接合後に前記第1基板と前記第2基板の間に生じる歪みの少なくとも1つに基づき、前記温度調節部を制御する。前記接合装置は、接合前における前記第1基板又は前記第2基板の反りを測定する測定部を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、反りのある基板を接合した後に生じる基板間の歪みを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態に係る接合装置を示す平面図である。
図2図2は、図1の接合装置の正面図である。
図3図3は、第1基板及び第2基板の一例を示す側面図である。
図4図4は、一実施形態に係る接合方法を示すフローチャートである。
図5図5は、第1位置調節装置の一例を示す側面図である。
図6図6(A)は第1温度調節装置の一例を示す側面図であり、図6(B)は図6(A)の第1温度調節装置の基板保持面を下方から見た図である。
図7図7は、接合モジュールの一例を示す平面図である。
図8図8は、図7の接合モジュールの側面図である。
図9図9は、上チャック及び下チャックの一例を示す断面図である。
図10図10は、図4のステップS109の詳細を示すフローチャートである。
図11図11(A)はステップS112における動作の一例を示す側面図であり、図11(B)は図11(A)に続く動作を示す側面図であり、図11(C)は図11(B)に続く動作を示す側面図である。
図12図12(A)はステップS113における動作の一例を示す断面図であり、図12(B)はステップS114における動作の一例を示す断面図であり、図12(C)は図12(B)に続く動作を示す断面図である。
図13図13(A)は反りの一例を示す斜視図であり、図13(B)は図13(A)の反りによって接合後に生じた歪みを示す平面図であり、図13(C)は図13(B)の歪みを低減するための温度制御を示す平面図であり、図13(D)は図13(C)の温度制御によって生じる応力を示す平面図である。
図14図14(A)は反りの別の一例を示す斜視図であり、図14(B)は図14(A)の反りによって接合後に生じた歪みを示す平面図であり、図14(C)は図14(B)の歪みを低減するための温度制御を示す平面図であり、図14(D)は図14(C)の温度制御によって生じる応力を示す平面図である。
図15図15(A)は下ウェハの反りの一例を示す斜視図であり、図15(B)は下ウェハの吸着圧力分布の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。また、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は互いに垂直な方向であり、X軸方向及びY軸方向は水平方向、Z軸方向は鉛直方向である。
【0009】
先ず、図1及び図2を参照して、本実施形態に係る接合装置1について説明する。接合装置1は、図3に示すように、第1基板W1と第2基板W2とを接合し、重合基板Tを作製する。第1基板W1及び第2基板W2の少なくとも1つは、例えばシリコンウェハや化合物半導体ウェハなどの半導体基板に複数の電子回路が形成された基板である。第1基板W1及び第2基板W2の1つは、電子回路が形成されていないベアウェハであってもよい。第1基板W1と第2基板W2とは、略同径を有する。化合物半導体ウェハは、特に限定されないが、例えばGaAsウェハ、SiCウェハ、GaNウェハ、又はInPウェハである。
【0010】
以下、第1基板W1を「上ウェハW1」と記載し、第2基板W2を「下ウェハW2」、重合基板Tを「重合ウェハT」と記載する場合がある。図3に示すように、上ウェハW1の板面のうち、下ウェハW2と接合される側の板面を「接合面W1j」と記載し、接合面W1jとは反対側の板面を「非接合面W1n」と記載する。また、下ウェハW2の板面のうち、上ウェハW1と接合される側の板面を「接合面W2j」と記載し、接合面W2jとは反対側の板面を「非接合面W2n」と記載する。
【0011】
図1に示すように、接合装置1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2及び処理ステーション3は、X軸正方向に沿って、搬入出ステーション2及び処理ステーション3の順番で並べて配置される。また、搬入出ステーション2及び処理ステーション3は、一体的に接続される。
【0012】
搬入出ステーション2は、載置台10と、搬送領域20とを備える。載置台10は、複数の載置板11を備える。各載置板11には、複数枚(例えば、25枚)の基板を水平状態で収容するカセットC1,C2,C3がそれぞれ載置される。カセットC1は上ウェハW1を収容するカセットであり、カセットC2は下ウェハW2を収容するカセットであり、カセットC3は重合ウェハTを収容するカセットである。なお、カセットC1,C2において、上ウェハW1及び下ウェハW2は、それぞれ接合面W1j,W2jを上面にした状態で向きを揃えて収容される。
【0013】
搬送領域20は、載置台10のX軸正方向側に隣接して配置される。かかる搬送領域20には、Y軸方向に延在する搬送路21と、この搬送路21に沿って移動可能な搬送装置22とが設けられる。搬送装置22は、X軸方向にも移動可能かつZ軸周りに旋回可能であり、載置台10上に載置されたカセットC1~C3と、後述する処理ステーション3の第3処理ブロックG3との間で、上ウェハW1、下ウェハW2及び重合ウェハTの搬送を行う。
【0014】
なお、載置台10上に載置されるカセットC1~C3の個数は、図示のものに限定されない。また、載置台10上には、カセットC1,C2,C3以外に、不具合が生じた基板を回収するためのカセット等が載置されてもよい。
【0015】
処理ステーション3には、例えば3つの処理ブロックG1,G2,G3が設けられる。例えば処理ステーション3の背面側(図1のY軸正方向側)には、第1処理ブロックG1が設けられ、処理ステーション3の正面側(図1のY軸負方向側)には、第2処理ブロックG2が設けられる。また、処理ステーション3の搬入出ステーション2側(図1のX軸負方向側)には、第3処理ブロックG3が設けられる。
【0016】
また、第1処理ブロックG1~第3処理ブロックG3に囲まれた領域には、搬送領域60が形成される。搬送領域60には、搬送装置61が配置される。搬送装置61は、例えば鉛直方向、水平方向及び鉛直軸周りに移動自在な搬送アームを有する。
【0017】
搬送装置61は、搬送領域60内を移動し、搬送領域60に隣接する第1処理ブロックG1、第2処理ブロックG2及び第3処理ブロックG3内の所定の装置に上ウェハW1、下ウェハW2及び重合ウェハTを搬送する。
【0018】
第1処理ブロックG1には、例えば、表面改質装置33と、表面親水化装置34と、が配置される。表面改質装置33は、上ウェハW1の接合面W1j及び下ウェハW2の接合面W2jを改質する。表面親水化装置34は、改質された上ウェハW1の接合面W1j及び下ウェハW2の接合面W2jを親水化する。
【0019】
例えば、表面改質装置33は、接合面W1j,W2jにおけるSiOの結合を切断し、Siの未結合手を形成し、その後の親水化を可能にする。表面改質装置33では、例えば減圧雰囲気下において処理ガスである酸素ガスが励起されてプラズマ化され、イオン化される。そして、酸素イオンが、上ウェハW1の接合面W1j及び下ウェハW2の接合面W2jに照射されることにより、接合面W1j、W2jがプラズマ処理されて改質される。処理ガスは、酸素ガスには限定されず、例えば窒素ガスなどでもよい。
【0020】
表面親水化装置34は、例えば純水等の親水化処理液によって上ウェハW1の接合面W1j及び下ウェハW2のW2jを親水化する。表面親水化装置34は、接合面W1j,W2jを洗浄する役割も有する。表面親水化装置34では、例えばスピンチャックに保持された上ウェハW1又は下ウェハW2を回転させながら、当該上ウェハW1又は下ウェハW2上に純水を供給する。これにより、純水が接合面W1j,W2j上を拡散し、Siの未結合手にOH基が付き、接合面W1j,W2jが親水化される。
【0021】
第2処理ブロックG2には、例えば、接合モジュール41と、第1温度調節装置42と、第2温度調節装置43と、が配置される。接合モジュール41は、親水化された上ウェハW1と下ウェハW2とを接合し、重合ウェハTを作製する。第1温度調節装置42は、接合前、つまり、下ウェハW2との接触前に、上ウェハW1の温度分布を調節する。第2温度調節装置43は、接合前、つまり、上ウェハW1との接触前に、下ウェハW2の温度分布を調節する。なお、本実施形態では、第1温度調節装置42及び第2温度調節装置43は、接合モジュール41とは別に設けられるが、接合モジュール41の一部として設けられてもよい。
【0022】
第3処理ブロックG3には、例えば、上方から下方に向けて、第1位置調節装置51、第2位置調節装置52、及びトランジション装置53,54がこの順で積層されて配置される(図2参照)。なお、第3処理ブロックG3における各装置の配置場所は、図2に示す配置場所には限定されない。第1位置調節装置51は、上ウェハW1の水平方向の向きを調節し、また、上ウェハW1を上下反転し、上ウェハW1の接合面W1jを下向きにする。第2位置調節装置52は、下ウェハW2の水平方向の向きを調節する。トランジション装置53には、上ウェハW1が一時的に載置される。また、トランジション装置54には、下ウェハW2や重合ウェハTが一時的に載置される。
【0023】
接合装置1は、制御装置90を備える。制御装置90は、例えばコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)91と、メモリ等の記憶媒体92とを備える。記憶媒体92には、接合装置1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御装置90は、記憶媒体92に記憶されたプログラムをCPU91に実行させることにより、接合装置1の動作を制御する。
【0024】
次に、図4を参照して、本実施形態の接合方法について説明する。図4に示すステップS101~S109は、制御装置90による制御下で実施される。
【0025】
先ず、複数枚の上ウェハW1を収容したカセットC1、複数枚の下ウェハW2を収容したカセットC2、及び空のカセットC3が、搬入出ステーション2の載置台10上に載置される。
【0026】
次に、搬送装置22が、カセットC1内の上ウェハW1を取り出し、処理ステーション3の第3処理ブロックG3のトランジション装置53に搬送する。その後、搬送装置61が、トランジション装置53から上ウェハW1を取り出し、第1処理ブロックG1の表面改質装置33に搬送する。
【0027】
次に、表面改質装置33が、上ウェハW1の接合面W1jを改質する(ステップS101)。接合面W1jの改質は、接合面W1jを上に向けた状態で実施される。その後、搬送装置61が、表面改質装置33から上ウェハW1を取り出し、表面親水化装置34に搬送する。
【0028】
次に、表面親水化装置34が、上ウェハW1の接合面W1jを親水化する(ステップS102)。接合面W1jの親水化は、接合面W1jを上に向けた状態で実施される。その後、搬送装置61が、表面親水化装置34から上ウェハW1を取り出し、第3処理ブロックG3の第1位置調節装置51に搬送する。
【0029】
次に、第1位置調節装置51が、上ウェハW1の水平方向の向きを調節し、上ウェハW1の上下を反転する(ステップS103)。その結果、上ウェハW1のノッチが所定の方位に向けられ、上ウェハW1の接合面W1jが下に向けられる。その後、搬送装置61が、第1位置調節装置51から上ウェハW1を取り出し、第2処理ブロックG2の第1温度調節装置42に搬送する。
【0030】
次に、第1温度調節装置42が、上ウェハW1の温度を調節する(ステップS104)。上ウェハW1の温調は、上ウェハW1の接合面W1jを下に向けた状態で実施される。その後、搬送装置61が、第1温度調節装置42から上ウェハW1を取り出し、接合モジュール41に搬送する。
【0031】
上ウェハW1に対する上記の処理と並行して、下ウェハW2に対する下記の処理が実施される。先ず、搬送装置22が、カセットC2内の下ウェハW2を取り出し、処理ステーション3の第3処理ブロックG3のトランジション装置54に搬送する。その後、搬送装置61が、トランジション装置54から下ウェハW2を取り出し、第1処理ブロックG1の表面改質装置33に搬送する。
【0032】
次に、表面改質装置33が、下ウェハW2の接合面W2jを改質する(ステップS105)。接合面W2jの改質は、接合面W2jを上に向けた状態で実施される。その後、搬送装置61が、表面改質装置33から下ウェハW2を取り出し、表面親水化装置34に搬送する。
【0033】
次に、表面親水化装置34が、下ウェハW2の接合面W2jを親水化する(ステップS106)。接合面W2jの親水化は、接合面W2jを上に向けた状態で実施される。その後、搬送装置61が、表面親水化装置34から下ウェハW2を取り出し、第3処理ブロックG3の第2位置調節装置52に搬送する。
【0034】
次に、第2位置調節装置52が、下ウェハW2の水平方向の向きを調節する(ステップS107)。その結果、下ウェハW2のノッチが所定の方位に向けられる。その後、搬送装置61が、第2位置調節装置52から下ウェハW2を取り出し、第2処理ブロックG2の第2温度調節装置43に搬送する。
【0035】
次に、第2温度調節装置43が、下ウェハW2の温度を調節する(ステップS108)。下ウェハW2の温調は、下ウェハW2の接合面W2jを上に向けた状態で実施される。その後、搬送装置61が、第2温度調節装置43から下ウェハW2を取り出し、接合モジュール41に搬送する。
【0036】
次に、接合モジュール41が、上ウェハW1と下ウェハW2を接合し、重合ウェハTを製造する(ステップS109)。その後、搬送装置61が、接合モジュール41から重合ウェハTを取り出し、第3処理ブロックG3のトランジション装置54に搬送する。
【0037】
最後に、搬送装置22が、トランジション装置54から重合ウェハTを取り出し、載置台10上のカセットC3に搬送する。これにより、一連の処理が終了する。
【0038】
次に、図5を参照して、第1位置調節装置51の一例について説明する。なお、第2位置調節装置52は、基台反転部51dを有しない点を除き、第1位置調節装置51と同様に構成されるので、説明を省略する。
【0039】
第1位置調節装置51は、基台51aと、上ウェハW1を吸着保持して回転させる保持部51bと、上ウェハW1及び下ウェハW2のノッチの位置を検出する検出部51cと、を有する。保持部51bが上ウェハW1を吸着保持して回転させながら、検出部51cが上ウェハW1のノッチの位置を検出することで、ノッチの位置が調節され、上ウェハW1の水平方向の向きが調節される。
【0040】
また、第1位置調節装置51は、基台51aを反転させる基台反転部51dを有する。基台反転部51dは、例えばモータなどを備え、基台51aを上下反転させ、保持部51bに保持された上ウェハW1を上下反転させる。これにより、上ウェハW1の接合面W1jが下向きになる。
【0041】
次に、図6を参照して、第1温度調節装置42の一例について説明する。なお、第2温度調節装置43は、下ウェハW2を下方から保持する点を除き、第1温度調節装置42と同様に構成されるので、説明を省略する。
【0042】
第1温度調節装置42は、図6(A)に示すように、上ウェハW1を上方から保持する温調プレート42aを有する。温調プレート42aは、上ウェハW1の接合面W1jを下に向けて、上ウェハW1を上方から水平に保持する。
【0043】
温調プレート42aは、図6(B)に示すように、上ウェハW1を局所的に加熱又は冷却する複数の素子42bを含む。素子42bは、特に限定されないが、例えばペルチェ素子である。ペルチェ素子は、電流の供給によって、吸熱又は発熱する。吸熱と発熱は、電流の向きで切り替えられる。また、吸熱量と発熱量は、電流の大きさで制御される。なお、上ウェハW1に温度差が生じればよく、素子42bとして、吸熱のみ、又は発熱のみを行うものが用いられてもよい。
【0044】
複数の素子42bは、温調プレート42aの基板保持面である下面に面状に配列される。複数の素子42bは、それぞれ、円周方向に並べられると共に、同心円状に多段に並べられる。但し、素子42bの配置は、特に限定されない。例えば、複数の素子42bは、碁盤の目状に並べられてもよい。
【0045】
制御装置90は、複数の素子42bを個別に制御することにより、上ウェハW1の接合面W1jを複数の領域に分けて個別に温調する。その結果、上ウェハW1の接合面W1jの温度分布を制御できる。
【0046】
次に、図7図9を参照して、接合モジュール41の一例について説明する。図7に示すように、接合モジュール41は、内部を密閉可能な処理容器210を有する。処理容器210の搬送領域60側の側面には搬入出口211が形成され、当該搬入出口211には開閉シャッタ212が設けられる。上ウェハW1、下ウェハW2及び重合ウェハTは、搬入出口211を介して搬入出される。
【0047】
図8に示すように、処理容器210の内部には、上チャック230と下チャック231
とが設けられる。上チャック230は、上ウェハW1の接合面W1jを下に向けて、上ウェハW1を上方から保持する。また、下チャック231は、上チャック230の下方に設けられ、下ウェハW2の接合面W2jを上に向けて、下ウェハW2を下方から保持する。
【0048】
上チャック230は、処理容器210の天井面に設けられた支持部材280に支持される。一方、下チャック231は、当該下チャック231の下方に設けられた第1下チャック移動部291に支持される。
【0049】
第1下チャック移動部291は、後述するように下チャック231を水平方向(Y軸方向)に移動させる。また、第1下チャック移動部291は、下チャック231を鉛直方向に移動自在、かつ鉛直軸回りに回転可能に構成される。
【0050】
第1下チャック移動部291は、当該第1下チャック移動部291の下面側に設けられ、水平方向(Y軸方向)に延伸する一対のレール295に取り付けられる。第1下チャック移動部291は、レール295に沿って移動自在に構成される。レール295は、第2下チャック移動部296に設けられる。
【0051】
第2下チャック移動部296は、当該第2下チャック移動部296の下面側に設けられ、水平方向(X軸方向)に延伸する一対のレール297に取り付けられる。第2下チャック移動部296は、レール297に沿って移動自在に、即ち下チャック231を水平方向(X軸方向)に移動させるように構成される。なお、一対のレール297は、処理容器210の底面に設けられた載置台298上に設けられる。
【0052】
第1下チャック移動部291と、第2下チャック移動部296とで、移動機構290が構成される。移動機構290は、上チャック230と下チャック231の相対位置を、基板受渡位置と、接合位置との間で移動させる。
【0053】
基板受渡位置は、上チャック230が上ウェハW1を搬送装置61から受け取り、また、下チャック231が下ウェハW2を搬送装置61から受け取り、下チャック231が重合ウェハTを搬送装置61に渡す位置である。基板受渡位置は、n(nは1以上の自然数)回目の接合で作製された重合ウェハTの搬出と、n+1回目の接合で接合される上ウェハW1及び下ウェハW2の搬入とが連続して行われる位置である。基板受渡位置は、例えば図7及び図8に示す位置である。
【0054】
搬送装置61は、上ウェハW1を上チャック230に渡す際に、上チャック230の真下に進入する。また、搬送装置61は、重合ウェハTを下チャック231から受け取り、下ウェハW2を下チャック231に渡す際に、下チャック231の真上に進入する。搬送装置61が進入しやすいように、上チャック230と下チャック231とは横にずらされており、上チャック230と下チャック231の鉛直方向の間隔も大きい。
【0055】
一方、接合位置は、上ウェハW1と下ウェハW2とを所定の間隔をおいて向かい合わせ、接合する位置である。接合位置は、例えば図9に示す位置である。接合位置では、基板受渡位置に比べて、鉛直方向における上ウェハW1と下ウェハW2との間隔が狭い。また、接合位置では、基板受渡位置とは異なり、鉛直方向視にて上ウェハW1と下ウェハW2とが重なる。
【0056】
移動機構290は、上チャック230と下チャック231の相対位置を、水平方向(X軸方向及びY軸方向の両方向)と、鉛直方向とに移動させる。なお、移動機構290は、本実施形態では下チャック231を移動させるが、下チャック231と上チャック230のいずれを移動させてもよく、両者を移動させてもよい。また、移動機構290は、上チャック230又は下チャック231を鉛直軸周りに回転させてもよい。
【0057】
図9に示すように、上チャック230は、複数(例えば3つ)の領域230a,230b,230cに区画される。これら領域230a,230b,230cは、上チャック230の中心部から周縁部に向けてこの順で設けられる。領域230aは平面視において円形状を有し、領域230b,230cは平面視において環状形状を有する。
【0058】
各領域230a,230b,230cには、吸引管240a,240b,240cがそれぞれ独立して設けられる。各吸引管240a,240b,240cには、異なる真空ポンプ241a,241b,241cがそれぞれ接続される。上チャック230は、各領域230a,230b,230c毎に、上ウェハW1を真空吸着可能である。
【0059】
上チャック230には、鉛直方向に昇降自在な複数の保持ピン245が設けられる。複数の保持ピン245は、真空ポンプ246に接続され、真空ポンプ246の作動によって上ウェハW1を真空吸着する。上ウェハW1は、複数の保持ピン245の下端に真空吸着される。複数の保持ピン245の代わりに、リング状の吸着パッドが用いられてもよい。
【0060】
複数の保持ピン245は、下降することで、上チャック230の保持面から突出する。その状態で、複数の保持ピン245は、上ウェハW1を真空吸着し、搬送装置61から受け取る。その後、複数の保持ピン245が上昇し、上ウェハW1が上チャック230の保持面に接触させられる。続いて、上チャック230は、真空ポンプ241a,241b,241cの作動によって、各領域230a,230b,230cにおいて上ウェハW1を水平に真空吸着する。
【0061】
また、上チャック230の中心部には、当該上チャック230を鉛直方向に貫通する貫通孔243が形成される。貫通孔243には、後述する押動部250が挿通される。押動部250は、下ウェハW2と間隔をおいて配置された上ウェハW1の中心を押し下げ、下ウェハW2に接触させる。
【0062】
押動部250は、押動ピン251と、当該押動ピン251の昇降ガイドである外筒252とを有する。押動ピン251は、例えばモータを内蔵した駆動部(図示せず)によって、貫通孔243に挿通され、上チャック230の保持面から突出し、上ウェハW1の中心を押し下げる。
【0063】
下チャック231は、複数(例えば2つ)の領域231a、231bに区画される。これら領域231a、231bは、下チャック231の中心部から周縁部に向けてこの順で設けられる。そして、領域231aは平面視において円形状を有し、領域231bは平面視において環状形状を有する。
【0064】
各領域231a、231bには、吸引管260a、260bがそれぞれ独立して設けられる。各吸引管260a、260bには、異なる真空ポンプ261a、261bがそれぞれ接続される。下チャック231は、各領域231a、231b毎に、下ウェハW2を真空吸着可能である。
【0065】
下チャック231には、鉛直方向に昇降自在な複数の保持ピン265が設けられる。下ウェハW2は、複数の保持ピン265の上端に載置される。なお、下ウェハW2は、複数の保持ピン265の上端に真空吸着されてもよい。
【0066】
複数の保持ピン265は、上昇することで、下チャック231の保持面から突出する。その状態で、複数の保持ピン265は、下ウェハW2を搬送装置61から受け取る。その後、複数の保持ピン265が下降し、下ウェハW2が下チャック231の保持面に接触させられる。続いて、上チャック230は、真空ポンプ261a,261bの作動によって、各領域231a,231bにおいて下ウェハW2を水平に真空吸着する。
【0067】
次に、図10図12を参照して、図4のステップS109の詳細について説明する。先ず、搬送装置61が、接合モジュール41に対する上ウェハW1と下ウェハW2の搬入を行う(ステップS111)。ステップS111の際、上チャック230と下チャック231の相対位置は、図7及び図8に示す基板受渡位置である。
【0068】
次に、移動機構290が、上チャック230と下チャック231の相対位置を、図7及び図8に示す基板受渡位置から、図9に示す接合位置に移動する(ステップS112)。ステップS112では、上ウェハW1と下ウェハW2の位置合わせが行われる。位置合わせには、図11に示すように第1カメラS1と第2カメラS2が用いられる。
【0069】
第1カメラS1は、上チャック230に対して固定されており、下チャック231に保持された下ウェハW2を撮像する。下ウェハW2の接合面W2jには、予め複数の基準点B1~B3が形成される。基準点B1~B3としては、電子回路等のパターンが用いられる。基準点の数は、任意に設定可能である。
【0070】
一方、第2カメラS2は、下チャック231に対して固定されており、上チャック230に保持された上ウェハW1を撮像する。上ウェハW1の接合面W1jには、予め複数の基準点A1~A3が形成されている。基準点A1~A3としては、電子回路等のパターンが用いられる。基準点の数は、任意に設定可能である。
【0071】
先ず、図11(A)に示すように、移動機構290が、第1カメラS1と第2カメラS2の相対的な水平方向位置の調節を行う。具体的には、第2カメラS2が第1カメラS1の略真下に位置するように、移動機構290が下チャック231を水平方向に移動させる。そして、第1カメラS1と第2カメラS2とが共通のターゲットXを撮像し、第1カメラS1と第2カメラS2の水平方向位置が一致するように、移動機構290が第2カメラS2の水平方向位置を微調節する。
【0072】
次に、図11(B)に示すように、移動機構290が、下チャック231を鉛直上方に移動させ、続いて、上チャック230と下チャック231の水平方向位置を調節する。具体的には、移動機構290が下チャック231を水平方向に移動させながら、第1カメラS1が下ウェハW2の基準点B1~B3を順次撮像すると共に、第2カメラS2が上ウェハW1の基準点A1~A3を順次撮像する。なお、図11(B)は、第1カメラS1が下ウェハW2の基準点B1を撮像すると共に、第2カメラS2が上ウェハW1の基準点A1を撮像する様子を示している。
【0073】
第1カメラS1及び第2カメラS2は、撮像した画像データを、制御装置90に送信する。制御装置90は、第1カメラS1で撮像した画像データと第2カメラS2で撮像した画像データとに基づいて移動機構290を制御し、鉛直方向視にて上ウェハW1の基準点A1~A3と下ウェハW2の基準点B1~B3とが合致するように下チャック231の水平方向位置を調節する。
【0074】
次に、図11(C)に示すように、移動機構290が下チャック231を鉛直上方に移動させる。その結果、下ウェハW2の接合面W2jと上ウェハW1の接合面W1jとの間隔G(図9参照)は、予め定められた距離、例えば80μm~200μmになる。間隔Gの調節には、第1変位計S3と、第2変位計S4とが用いられる。
【0075】
第1変位計S3は、第1カメラS1と同様に、上チャック230に対して固定されており、下チャック231に保持された下ウェハW2の厚みを測定する。第1変位計S3は、例えば下ウェハW2に対して光を照射し、下ウェハW2の上下両面で反射された反射光を受光し、下ウェハW2の厚みを測定する。その厚みの測定は、例えば移動機構290が下チャック231を水平方向に移動させる際に実施される。第1変位計S3の測定方式は、例えば共焦点方式、分光干渉方式、又は三角測距方式等である。第1変位計S3の光源は、LED又はレーザーである。
【0076】
一方、第2変位計S4は、第2カメラS2と同様に、下チャック231に対して固定されており、上チャック230に保持された上ウェハW1の厚みを測定する。第2変位計S4は、例えば上ウェハW1に対して光を照射し、上ウェハW1の上下両面で反射された反射光を受光し、上ウェハW1の厚みを測定する。その厚みの測定は、例えば移動機構290が下チャック231を水平方向に移動させる際に実施される。第2変位計S4の測定方式は、例えば共焦点方式、分光干渉方式、又は三角測距方式等である。第2変位計S4の光源は、LED又はレーザーである。
【0077】
第1変位計S3及び第2変位計S4は、測定したデータを、制御装置90に送信する。制御装置90は、第1変位計S3で測定したデータと第2変位計S4で測定したデータとに基づいて移動機構290を制御し、間隔Gが設定値になるように下チャック231の鉛直方向位置を調節する。
【0078】
次に、真空ポンプ241aの作動が停止され、図12(A)に示すように、領域230aにおける上ウェハW1の真空吸着が解除される。その後、押動部250の押動ピン251が下降し、上ウェハW1の中心を押し下げ、下ウェハW2に接触させる(ステップS113)。その結果、上ウェハW1と下ウェハW2の中心同士が接合される。
【0079】
上ウェハW1の接合面W1jと下ウェハW2の接合面W2jはそれぞれ改質されているため、まず、接合面W1j,W2j間にファンデルワールス力(分子間力)が生じ、当該接合面W1j,W2j同士が接合される。さらに、上ウェハW1の接合面W1jと下ウェハW2の接合面W2jはそれぞれ親水化済みであるので、親水基(例えばOH基)が水素結合し、接合面W1j,W2j同士が強固に接合される。
【0080】
次に、真空ポンプ241bの作動が停止され、図12(B)に示すように、領域230bにおける上ウェハW1の真空吸着が解除される。続いて、真空ポンプ241cの作動が停止され、図12(C)に示すように、領域230cにおける上ウェハW1の真空吸着が解除される。
【0081】
このように、上ウェハW1の中心から周縁に向けて、上ウェハW1の真空吸着が段階的に解除され、上ウェハW1が下ウェハW2に段階的に落下して当接する。そして、上ウェハW1と下ウェハW2の接合は、中心から周縁に向けて順次進行する(ステップS114)。その結果、上ウェハW1の接合面W1jと下ウェハW2の接合面W2jとが全面で当接し、上ウェハW1と下ウェハW2とが接合され、重合ウェハTが得られる。その後、押動ピン251は、元の位置まで上昇させられる。
【0082】
次に、移動機構290が、上チャック230と下チャック231の相対位置を、図9に示す接合位置から、図7及び図8に示す基板受渡位置に移動する(ステップS115)。例えば、移動機構290は、先ず下チャック231を下降させ、下チャック231と上チャック230の鉛直方向の間隔を広げる。続いて、移動機構290は、下チャック231を横に移動させ、下チャック231と上チャック230を横にずらす。
【0083】
次に、搬送装置61が、接合モジュール41に対する重合ウェハTの搬出を行う(ステップS116)。具体的には、先ず、下チャック231が、重合ウェハTの保持を解除する。続いて、複数の保持ピン265が、上昇し、重合ウェハTを搬送装置61に渡す。その後、複数の保持ピン265が、元の位置まで下降する。
【0084】
次に、図13を参照して、下ウェハW2の反りによって接合後に生じる歪みと、接合前に行われる温度分布の制御の一例について説明する。接合後に生じる歪みとは、例えば上ウェハW1の基準点(例えば図11の基準点A1~A3)と下ウェハW2の基準点(例えば図11の基準点B1~B3)とのずれのことである。図13(B)に示す矢印の大きさと向きは、下ウェハW2の基準点に対する、上ウェハW1の基準点のずれの大きさと向きを示す。基準点は、上ウェハW1と下ウェハW2のそれぞれに複数ずつ設定される。
【0085】
なお、本実施形態では、上ウェハW1の反りが下ウェハW2の反りに比べて無視できる程度に小さい場合について説明するが、上ウェハW1の反りが下ウェハW2の反りと同程度であってもよい。この場合も、接合前に上ウェハW1又は下ウェハW2の温度分布を調節することで、接合後に生じる歪みを低減できる。
【0086】
図13(A)に示すように、下ウェハW2が反ることがある。下ウェハW2の反りは、例えば、シリコンウェハ等の半導体基板の上に、複数の膜が積層されることで生じる。各膜は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、ALD(Atomic Layer Deposition)法、又はスピンオン法等で成膜される。成膜時に熱膨張差によって応力が生じ、下ウェハW2が反る。
【0087】
下ウェハW2の接合面W2jは、接合面W2jの中心で直交する2つの基準線L1、L2を挟んで対称な反り、つまり、線対称な反りを有することが多い。シリコンウェハ等の半導体基板のヤング率、ポアソン比、及びせん断弾性係数が90°周期で変化するからである。基準線L1、L2は、半導体基板の特定の結晶方位に延びている。
【0088】
図13(A)に示すように、基準線L1が直線であり、基準線L2が上に凸の曲線であるように、下ウェハW2が反ることがある。この場合、下チャック231が下ウェハW2を吸着する際に、基準線L2が縮みY軸方向に平行になる。これは、下ウェハW2のY軸方向両端が吸着された後で、下ウェハW2のY軸方向中心が吸着されるからである。
【0089】
下ウェハW2の基準線L2が縮んだ状態で、上ウェハW1と下ウェハW2の接合が行われることがある。その結果、図13(B)に示すように、接合後に上ウェハW1と下ウェハW2の間に歪みが生じる。具体的には、基準線L2上では、下ウェハW2の基準点に対して、上ウェハW1の基準点が径方向外方にずれる。
【0090】
接合後に、下チャック231が下ウェハW2の吸着を解除すると、下ウェハW2の基準線L2が元の長さに戻ろうとする。その結果、上ウェハW1の基準線L2に引張応力が作用し、応力のバランスが釣り合うように、上ウェハW1の基準線L1に圧縮応力が作用する。従って、基準線L1上では、下ウェハW2の基準点に対して、上ウェハW1の基準点が径方向内方にずれる。
【0091】
そこで、制御装置90は、接合前における上ウェハW1と下ウェハW2のそれぞれの反り、及び接合後に上ウェハW1と下ウェハW2の間に生じる歪みの少なくとも1つに基づき、第1温度調節装置42又は第2温度調節装置43を制御する。接合前、つまり、上ウェハW1と下ウェハW2との接触前に、上ウェハW1又は下ウェハW2の温度分布、ひいてはその寸法及び形状を調節でき、接合後に生じる歪みを低減できる。
【0092】
図13(A)及び図13(B)に示すように、接合前における下ウェハW2の接合面W2jが線対称な反りを有する場合、接合後における上ウェハW1と下ウェハW2の間の歪みも線対称になる。反り又は歪みが線対称になる場合、制御装置90は上ウェハW1又は下ウェハW2の温度分布を線対称な分布に制御すればよい。
【0093】
例えば、図13(C)に示すように、上ウェハW1を温調する複数の素子42bは、複数のグループGa~Gc毎に制御される。グループGaとグループGbとは、円周方向に交互に並べられ、上ウェハW1の2つの基準線L1、L2を挟んで対称、つまり、線対称に並べられる。グループGcは、温調プレート42aの中心に円形に設定される。
【0094】
接合前における下ウェハW2の基準線L2が縮んだ状態である場合、上ウェハW1の基準線L2も同程度縮んだ状態となるように、基準線L2上のグループGbの素子42bが吸熱し、上ウェハW1を局所的に冷却する。一方、基準線L1上のグループGaの素子42bは、発熱し、上ウェハW1を局所的に加熱する。グループGcの素子42bは、発熱も、吸熱もしなくてもよい。
【0095】
その結果、図13(D)に白抜き矢印で示すように、上ウェハW1の寸法及び形状が変化する。従って、接合後に上ウェハW1と下ウェハW2の間に生じる歪みを低減できる。
【0096】
なお、制御装置90は、上ウェハW1の温度分布を調節する代わりに、下ウェハW2の温度分布を調節し、下ウェハW2の寸法及び形状を調節してもよい。例えば、制御装置90は、下ウェハW2の吸着前に、下ウェハW2の基準線L2の長さを、上ウェハW1の基準線L2の長さよりも長くしておく。その後、下チャック231が下ウェハW2を吸着し、下ウェハW2の基準線L2が縮むと、上ウェハW1の基準線L2と同程度の長さになる。下ウェハW2を温調する複数の素子42bは、例えば下記のように制御される。基準線L2上のグループGbの素子42bが発熱し、下ウェハW2を局所的に加熱する。一方、基準線L1上のグループGaの素子42bは吸熱し、下ウェハW2を局所的に冷却する。グループGcの素子42bは、発熱も、吸熱もしなくてもよい。
【0097】
次に、図14を参照して、下ウェハW2の反りによって接合後に生じる歪みと、接合前に行われる温度分布の制御の別の一例について説明する。図14(A)に示すように、下ウェハW2の接合面W2jは、同心円状の反りを有することがある。なお、図14(A)等に示す2つの基準線L1、L2は、図13(A)等に示す2つの基準線L1、L2に相当するものであり、半導体基板の特定の結晶方位に延びている。
【0098】
図14(A)に示すように、基準線L1が上に凸の曲線であり、基準線L2も上に凸の曲線であるように、下ウェハW2が反ることがある。この場合、下チャック231が下ウェハW2を吸着する際に、基準線L1が縮みX軸方向に平行になると共に基準線L2が縮みY軸方向に平行になり、下ウェハW2が同心円状に縮む。これは、下ウェハW2の周縁が吸着された後で、下ウェハW2の中心が吸着されるからである。
【0099】
下ウェハW2の2つの基準線L1、L2が縮んだ状態、つまり、下ウェハW2が同心円状に縮んだ状態で、上ウェハW1と下ウェハW2の接合が行われることがある。その結果、図14(B)に示すように、接合後に上ウェハW1と下ウェハW2の間に歪みが生じる。具体的には、下ウェハW2の基準点に対して、上ウェハW1の基準点が同心円状にずれる。そのずれの大きさは、径方向外方ほど、大きい。
【0100】
図14(A)及び図14(B)に示すように、接合前における下ウェハW2の接合面W2jが同心円状の反りを有する場合、接合後における上ウェハW1と下ウェハW2の間の歪みも同心円状になる。反り又は歪みが同心円状になる場合、制御装置90は上ウェハW1又は下ウェハW2の温度分布を同心円状の分布に制御すればよい。
【0101】
例えば、図14(C)に示すように、上ウェハW1を温調する複数の素子42bは、複数のグループGa~Gc毎に制御される。グループGaとグループGbとは、同心円状に並べられる。グループGbは、グループGaの径方向外方に設定される。グループGcは、温調プレート42aの中心に円形に設定される。
【0102】
接合前に下ウェハW2が同心円状に縮んだ状態である場合、上ウェハW1も同程度同心円状に縮んだ状態となるように、2つのグループGa、Gbの素子42bが吸熱し、上ウェハW1を局所的に冷却する。2つのグループGa、Gbで冷却温度は同じでもよいし、一方の冷却温度が他方の冷却温度よりも低くてもよい。グループGcの素子42bは、発熱も、吸熱もしなくてもよい。
【0103】
その結果、図14(D)に白抜き矢印で示すように、上ウェハW1の寸法及び形状が変化する。従って、接合後に上ウェハW1と下ウェハW2の間に生じる歪みを低減できる。
【0104】
なお、制御装置90は、上ウェハW1の温度分布を調節する代わりに、下ウェハW2の温度分布を調節し、下ウェハW2の寸法及び形状を調節してもよい。例えば、制御装置90は、下ウェハW2の吸着前に、下ウェハW2の直径を、上ウェハW1の直径よりも長くしておく。その後、下チャック231が下ウェハW2を吸着し、下ウェハW2が同心円状に縮むと、下ウェハW2が上ウェハW1と同程度の直径になる。下ウェハW2を温調する複数の素子42bは、例えば下記のように制御される。2つのグループGa、Gbの素子42bが発熱し、下ウェハW2を局所的に加熱する。グループGcの素子42bは、発熱も、吸熱もしなくてもよい。
【0105】
グループの分け方、及び吸熱と発熱の選択は、接合前における上ウェハW1と下ウェハW2のそれぞれの反り、及び接合後に上ウェハW1と下ウェハW2の間に生じる歪みの少なくとも1つに応じて適宜変更される。
【0106】
上ウェハW1及び下ウェハW2のそれぞれの反りは、例えば、図1に示す反り測定装置5によって測定する。反りの測定は、全数検査でもよいし、抜き取り検査でもよい。例えば、下ウェハW2の積層構造が同じ場合、下ウェハW2の反りが同じになりやすい。従って、反りの測定は、抜き取り検査でも十分である。
【0107】
下ウェハW2の反りは、本実施形態では下ウェハW2の温度分布が均一な状態で測定されるが、不均一な状態で測定されてもよい。反り測定時の温度分布が不均一であっても、その温度分布が分かっていれば、接合前における温度分布の補正が可能である。上ウェハW1の反りも、同様に測定される。
【0108】
反り測定装置5は、例えば、非接触式の三次元測定機等であり、測定したデータを制御装置90に送信する。制御装置90は、反り測定装置5の測定データを基に、第1温度調節装置42又は第2温度調節装置43を制御する。反り測定装置5は、図1では接合装置1とは別に設けられるが、接合装置1の一部として設けられてもよい。
【0109】
なお、下ウェハW2の反りは、図11に示す第1カメラS1又は第1変位計S3によって測定することも可能である。これらのセンサS1、S3は、下ウェハW2の接合面W2jの各測定点までの距離を測定可能である。その測定は、例えば3本の保持ピン265の上に下ウェハW2を摺動自在に載せ、下ウェハW2を下チャック231から浮かせた状態で行われる。その際、3本の保持ピン265は、下ウェハW2を吸着しない。
【0110】
例えば、移動機構290が下チャック231を水平方向に移動させながら、第1カメラS1の焦点が下ウェハW2の接合面W2jに合うように制御装置90が第1カメラS1の焦点距離の調節を繰り返す。制御装置90は、第1カメラS1の焦点距離の変化を基に、接合面W2jの高さ分布を測定でき、接合面W2jの反りを測定できる。
【0111】
あるいは、移動機構290が下チャック231を水平方向に移動させながら、第1変位計S3が下ウェハW2の接合面W2jの高さの測定を繰り返す。制御装置90は、第1変位計S3によって接合面W2jの高さ分布を測定でき、接合面W2jの反りを測定できる。
【0112】
なお、下ウェハW2の反りは、下チャック231による下ウェハW2の吸着圧力の分布を基に測定することも可能である。下ウェハW2の反りが小さく、下ウェハW2と下チャック231の隙間が小さく、密着性が高いほど、吸着圧力である負圧の大きさ(絶対値)が大きくなる。
【0113】
例えば、下ウェハW2の反りが図15(A)に示すものである場合、下ウェハW2の吸着圧力の分布は図15(B)に示すものになる。図15(B)に記載の負圧(単位:kPaの数値は、一例である。下ウェハW2と下チャック231の隙間が大きいほど、負圧の大きさ(絶対値)が小さくなる。
【0114】
従って、制御装置90は、下チャック231による下ウェハW2の吸着圧力の分布を基に、下ウェハW2の反りを測定できる。吸着圧力の大きさは、不図示の圧力センサによって計測する。
【0115】
同様に、上ウェハW1の反りは、第2カメラS2又は第2変位計S4によって測定することも可能である。これらのセンサS2、S4は、上ウェハW1の接合面W1jの各測定点までの距離を測定可能である。その測定は、例えば上ウェハW1の中心部のみを吸着し、上ウェハW1を上チャック230よりも下方に吊り下げた状態で行われる。3本の保持ピン265(又はリング状の吸着パッド)は、できるだけ上ウェハW1の中心近傍を吸着することが好ましい。なお、上ウェハW1の反りは、上チャック230による上ウェハW1の吸着圧力の分布を基に測定することも可能である。
【0116】
接合後に生じる歪みは、図1に示す歪み測定装置6によって測定する。歪みの測定も、全数検査でもよいし、抜き取り検査でもよい。例えば、下ウェハW2の積層構造が同じ場合、下ウェハW2の反りが同じになりやすく、その結果、接合後に生じる歪みも同じになりやすい。従って、歪みの測定は、抜き取り検査でも十分である。
【0117】
歪み測定装置6は、例えば、KLA-Tencor社製のPWG(Patterned Wafer Geometry)パターン付きウェハ平坦度測定装置(商品名:WaferSight)等であり、測定したデータを制御装置90に送信する。制御装置90は、歪み測定装置6の測定データを基に、第1温度調節装置42又は第2温度調節装置43を制御する。歪み測定装置6は、図1では接合装置1とは別に設けられるが、接合装置1の一部として設けられてもよい。
【0118】
以上、本開示に係る接合装置、及び接合方法の実施形態等について説明したが、本開示は上記実施形態等に限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0119】
1 接合装置
90 制御装置(制御部)
230 上チャック(第1保持部)
231 下チャック(第2保持部)
250 押動部
W1 上ウェハ(第1基板)
W2 下ウェハ(第2基板)
T 重合基板
図1
図2
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図15