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特許7544495トレンチ・ゲート構造を有する炭化ケイ素デバイス及び製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】トレンチ・ゲート構造を有する炭化ケイ素デバイス及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20240827BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240827BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H01L29/78 652C
H01L29/78 652T
H01L29/78 652H
H01L29/78 658A
H01L29/78 652B
H01L29/78 652K
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020043370
(22)【出願日】2020-03-12
(65)【公開番号】P2020174175
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-12-21
(31)【優先権主張番号】10 2019 108 062.2
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501209070
【氏名又は名称】インフィネオン テクノロジーズ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】INFINEON TECHNOLOGIES AG
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シーミーニエック, ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ヤンチャー, ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】カマランダー, ダーヴィト
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-107571(JP,A)
【文献】国際公開第2014/103256(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/027540(WO,A1)
【文献】特開2010-147228(JP,A)
【文献】特開2018-107342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/12
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化ケイ素デバイスを製造する方法であって、
炭化ケイ素体(100)を提供することと、
第1の表面(101)から前記炭化ケイ素体(100)まで延在するトレンチ・ゲート構造体(150)を形成することと、
ボディ領域(120)及びソース区域(210)を形成することであって、前記トレンチ・ゲート構造体(150)、前記ボディ領域(120)、及び前記ソース区域(210)を形成した後に、前記ボディ領域(120)及び前記ソース区域(210)が、前記トレンチ・ゲート構造体(150)のアクティブ状態の側壁(151)に接触しており、前記ソース区域(210)が、前記ボディ領域(120)と前記第1の表面(101)との間に配置されることと、
前記ボディ領域(120)の第1のボディ部分(121)にドーパントを注入することであって、前記第1のボディ部分(121)が、前記ソース区域(210)の下に配置され、前記アクティブ状態の側壁(151)から距離を置いており、少なくとも1つの水平面において、前記第1のボディ部分(121)でのドーパント濃度が、前記アクティブ状態の側壁(151)において、前記ボディ領域(120)における前記水平面での基準ドーパント濃度の少なくとも150%であり、前記第1のボディ部分(121)の水平延在寸法(w1)が、前記ボディ領域(120)の水平延在寸法全体(w0)の少なくとも20%であることと、
前記ボディ領域(120)の導電型であり、前記第1の表面(101)から前記炭化ケイ素体(100)まで延在する遮蔽領域(140)を形成することであって、前記遮蔽領域(140)が、ソース領域(110)と前記ボディ領域(120)に横方向から直接隣接し、前記遮蔽領域(140)が、さらなるトレンチ・ゲート構造体(120)の非アクティブ状態の側壁(152)と接触していることと
を含
前記第1のボディ部分(121)に前記ドーパントを注入するための注入軸(451)が、前記第1の表面(101)の垂直方向(104)に対して傾斜しており、前記ドーパントが、前記トレンチ・ゲート構造体(150)のアクティブ状態の側壁の方向に向けられている、方法。
【請求項2】
前記トレンチ・ゲート構造体(150)を形成するのに先立って、前記ドーパントが、前記第1のボディ部分(121)に注入される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記注入軸(451)と前記垂直方向(104)との間の注入角度(β)が、絶対値で少なくとも3°である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ボディ機能強化注入マスク(450)を前記第1の表面(101)上に形成することであって、前記ボディ機能強化注入マスク(450)が、前記ソース区域(210)の少なくとも第1のソース部分(211)を覆い、前記ボディ機能強化注入マスク(450)での開口部(455)が、前記第1の表面(101)の少なくともボディ接触域(126)を露出し、前記ボディ接触域(126)が、前記ソース区域(210)に横方向から直接隣接し、前記第1のソース部分(211)が、前記アクティブ状態の側壁(151)に隣接することと、
前記ボディ機能強化注入マスク(450)での前記開口部(455)を通して、前記第1のボディ部分(121)に前記ドーパントを注入することと
をさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ボディ機能強化注入マスク(450)での前記開口部(455)が、前記ソース区域(210)の第2のソース部分(212)を露出し、前記第2のソース部分(212)が、前記ボディ接触域(126)と前記第1のソース部分(211)との間に配置される、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の表面(101)上にボディ接触注入マスク(430)を形成することであって、前記ボディ接触注入マスク(430)が前記ソース区域(210)を覆い、前記ボディ接触注入マスク(430)での開口部(435)が、前記ボディ接触域(126)を露出することと、
前記ボディ接触注入マスク(430)での前記開口部(435)を通して、前記ボディ領域(120)の導電型のドーパントを注入することと、
前記ボディ接触注入マスク(430)を横方向に凹ませることであって、横方向に凹んだボディ接触注入マスクが、前記ボディ機能強化注入マスク(450)を形成することと
をさらに含む、請求項又はのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
深い注入マスク(440)を前記第1の表面(101)上に形成することであって、前記深い注入マスク(440)が、前記ソース区域(210)の第3のソース部分(213)を覆い、前記深い注入マスク(440)での開口部(445)が、前記ソース区域(210)の第4のソース部分(214)を露出し、前記第4のソース部分(214)が、前記ボディ接触域(126)と前記第3のソース部分(213)との間に配置されることと、
前記深い注入マスク(440)での前記開口部(445)を通して、前記ボディ領域(120)の導電型のドーパントを注入することと
をさらに含む、請求項又はのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記深い注入マスク(440)を横方向に凹ませることをさらに含み、横方向に凹んだ深い注入マスクが、前記ボディ機能強化注入マスク(450)を形成する、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の表面(101)上にボディ接触注入マスク(430)を形成することであって、前記ボディ接触注入マスク(430)が前記ソース区域(210)を覆い、前記ボディ接触注入マスク(430)での開口部(435)が、前記ボディ接触域(126)を露出することと、
前記ボディ接触注入マスク(430)での前記開口部(435)を通して、前記ボディ領域(120)の導電型のドーパントを注入することと、
前記ボディ接触注入マスク(430)を横方向に凹ませて、横方向に凹んだボディ接触注入マスクを設けることであって、前記横方向に凹んだボディ接触注入マスクが、前記深い注入マスク(440)を形成することと
をさらに含む、請求項又はのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ボディ領域(120)の導電型に相補的な導電型のドーパントを前記ソース区域(210)に注入して、前記ソース区域(210)でのドープ済みのソース領域(110)を形成することをさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの水平面において、前記第1のボディ部分(121)の水平延在寸法(w1)が、前記ボディ領域(120)の水平延在寸法全体(w0)の少なくとも50%である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
第1の表面(101)から炭化ケイ素体(100)まで延在するトレンチ・ゲート構造体(150)、前記トレンチ・ゲート構造体(150)のアクティブ状態の側壁(151)と接触しているボディ領域(120)、前記アクティブ状態の側壁(151)と接触しているソース領域(110)であって、前記ボディ領域(120)と前記第1の表面(101)の間に配置されるソース領域(110)、及び前記ボディ領域(120)の導電型の遮蔽領域(140)を含む前記炭化ケイ素体(100)を備える炭化ケイ素デバイス(500)であって、
前記遮蔽領域(140)が、前記第1の表面(101)から前記炭化ケイ素体(100)まで延在し、前記遮蔽領域(140)が、前記ソース領域(110)及び前記ボディ領域(120)に横方向から直接隣接し、前記遮蔽領域(140)が、さらなるトレンチ・ゲート構造体(120)の非アクティブ状態の側壁(152)と接触しており、
前記ボディ領域(120)が、前記ソース領域(110)の下にあり、前記アクティブ状態の側壁(151)から距離を置いている第1のボディ部分(121)を含み、前記第1の表面(101)に平行な少なくとも1つの水平面において、前記第1のボディ部分(121)でのドーパント濃度が、前記アクティブ状態の側壁(151)における前記水平面での前記ボディ領域(120)の基準ドーパント濃度の少なくとも150%であり、前記第1のボディ部分(121)の水平延在寸法(w1)が、前記ボディ領域(120)の水平延在寸法全体(w0)の少なくとも20%であ
前記第1のボディ部分(121)が、マスクされた傾斜注入によって形成された、炭化ケイ素デバイス(500)。
【請求項13】
前記少なくとも1つの水平面において、前記第1のボディ部分(121)の水平延在寸法(w1)が、前記ボディ領域(120)の水平延在寸法全体(w0)の少なくとも20%である、請求項12に記載の炭化ケイ素デバイス。
【請求項14】
前記少なくとも1つの水平面において、前記第1のボディ部分(121)に直接隣接する前記遮蔽領域(140)の一部分での横方向のドーパント分布が、前記第1のボディ部分(121)でのドーパント濃度から±10%以下だけ異なっている、請求項12又は13のいずれか一項に記載の炭化ケイ素デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の各例は、炭化ケイ素デバイス、詳細には、トレンチ・ゲート構造体を有する炭化ケイ素デバイス、及びトレンチ・ゲート構造体を有する炭化ケイ素デバイスを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体デバイスは、通常、電気エネルギーを変換するための電気回路、たとえばDC/ACコンバータ、AC/ACコンバータ、又はAC/DCコンバータでの、また重い誘導負荷を駆動する電気回路、たとえばモータ・ドライバ回路での、スイッチ及び整流器として使用される。シリコンと比較して炭化ケイ素(SiC)の絶縁破壊電界強度は高いので、SiCデバイスは、そのシリコン相当物よりも著しく薄く、またそれよりも低いオン抵抗を示す場合がある。通常、SiCデバイスでは、オン抵抗全体に対するチャネル抵抗の寄与分は、同等のシリコン・デバイスの場合よりも大きい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
炭化ケイ素のデバイス・パラメータを改善する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の一実施形態は、炭化ケイ素デバイスを製造する方法に関する。炭化ケイ素体が提供される。第1の表面から炭化ケイ素体に延在するトレンチ・ゲート構造体が形成される。ボディ領域は、トレンチ・ゲート構造体のアクティブ状態の側壁と接触して形成される。ボディ領域と第1の表面の間に配置されたソース区域が、アクティブ状態の側壁と接触して形成される。ドーパントが、ボディ領域の第1のボディ部分に注入され、この第1のボディ部分は、ソース区域の下に配置され、アクティブ状態の側壁からは距離を置いている。少なくとも1つの水平面において、第1のボディ部分でのドーパント濃度は、アクティブ状態の側壁ボディ領域における水平面でのボディ領域の基準ドーパント濃度の少なくとも150%であり、第1のボディ部分の水平延在部は、ボディ領域の水平延在部全体の少なくとも20%である。
【0005】
本開示の別の実施形態は、炭化ケイ素体を含む炭化ケイ素デバイスに関する。トレンチ・ゲート構造体が、第1の表面から炭化ケイ素体内に延在する。ボディ領域は、トレンチ・ゲート構造体のアクティブ状態の側壁と接触している。ボディ領域と第1の表面の間に配置されたソース領域が、アクティブ状態の側壁と接触している。ボディ領域は、ソース領域の下にあり、アクティブ状態の側壁から距離を置いた第1のボディ部分を含む。第1の表面に平行な少なくとも1つの水平面において、第1のボディ部分でのドーパント濃度は、アクティブ状態の側壁における水平面でのボディ領域の基準ドーパント濃度の少なくとも150%であり、第1のボディ部分の水平延在部は、ボディ領域の水平延在部全体の少なくとも20%である。
【0006】
以下の詳細な説明を読み、添付の図面を見れば、追加の特徴及び利点が当業者には理解されよう。
【0007】
添付図面は、各実施形態をさらに理解できるように添付されており、本明細書に組み込まれ、またその一部分をなす。各図面は、炭化ケイ素デバイス、及び炭化ケイ素デバイスを製造する方法の実施形態を示しており、この説明とともに各実施形態の原理を説明するのに役立つものである。以下の詳細な説明及び特許請求の範囲に、さらなる実施形態が記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】一実施形態による、高濃度ドープのボディ部分を有する炭化ケイ素デバイスを製造する方法を説明するための、炭化ケイ素体の一部分の概略垂直断面図を示す。
図1B】一実施形態による、高濃度ドープのボディ部分を有する炭化ケイ素デバイスを製造する方法を説明するための、炭化ケイ素体の一部分の概略垂直断面図を示す。
図2A】傾斜注入を使用する一実施形態による、炭化ケイ素デバイスを製造する方法を説明するための、炭化ケイ素体の一部分の概略垂直断面図を示す。
図2B】傾斜注入を使用する一実施形態による、炭化ケイ素デバイスを製造する方法を説明するための、炭化ケイ素体の一部分の概略垂直断面図を示す。
図3A】横方向に凹んだ注入マスクを使用する一実施形態による、炭化ケイ素デバイスを製造する方法を説明するための、炭化ケイ素体の一部分の概略垂直断面図を示す。
図3B】横方向に凹んだ注入マスクを使用する一実施形態による、炭化ケイ素デバイスを製造する方法を説明するための、炭化ケイ素体の一部分の概略垂直断面図を示す。
図3C】横方向に凹んだ注入マスクを使用する一実施形態による、炭化ケイ素デバイスを製造する方法を説明するための、炭化ケイ素体の一部分の概略垂直断面図を示す。
図4A】2つ以上の注入マスク凹部を使用する一実施形態による、炭化ケイ素デバイスを製造する方法を説明するための、炭化ケイ素体の一部分の概略垂直断面図を示す。
図4B】2つ以上の注入マスク凹部を使用する一実施形態による、炭化ケイ素デバイスを製造する方法を説明するための、炭化ケイ素体の一部分の概略垂直断面図を示す。
図4C】2つ以上の注入マスク凹部を使用する一実施形態による、炭化ケイ素デバイスを製造する方法を説明するための、炭化ケイ素体の一部分の概略垂直断面図を示す。
図4D】2つ以上の注入マスク凹部を使用する一実施形態による、炭化ケイ素デバイスを製造する方法を説明するための、炭化ケイ素体の一部分の概略垂直断面図を示す。
図5A】別の実施形態による、高濃度ドープのボディ部分を有する炭化ケイ素デバイスの一部分の概略垂直断面図を示す。
図5B図5Aのボディ領域における水平ドーパント勾配を説明するための概略図を示す。
図6A】一実施形態による炭化ケイ素デバイス及び比較デバイスの垂直断面図を示す。
図6B】一実施形態による炭化ケイ素デバイス及び比較デバイスの垂直断面図を示す。
図6C】炭化ケイ素デバイス、及び各実施形態の効果を論じるための図6A図6Bの比較デバイスでの水平及び垂直のドーパント勾配を示す概略図を示す。
図6D】炭化ケイ素デバイス、及び各実施形態の効果を論じるための図6A図6Bの比較デバイスでの水平及び垂直のドーパント勾配を示す概略図を示す。
図6E】炭化ケイ素デバイス、及び各実施形態の効果を論じるための、阻止モードでの図6A図6Bの比較デバイスのボディ領域内に形成される空乏領域の境界を示す。
図6F】炭化ケイ素デバイス、及び各実施形態の効果を論じるための、阻止モードでの図6A図6Bの比較デバイスのボディ領域内に形成される空乏領域の境界を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の詳細な説明では、本明細書の一部を形成し、炭化ケイ素デバイスを実施することのできる具体的な実施形態を例として示す添付図面について述べる。本開示の範囲から逸脱することなく、他の実施形態を利用してもよく、また構造的又は論理的な変更を加えてもよいことを理解されたい。たとえば、一実施形態向けに図示され、又は説明されている特徴を、他の実施形態に使用し、又は他の実施形態とともに使用して、さらなる実施形態を生み出すことができる。本開示は、このような修正形態及び変形形態を含むものである。各例は、具体的な文言を使用して説明してあり、添付特許請求の範囲に記載の範囲を限定するものと解釈すべきではない。各図面はスケール変更されておらず、例示的な目的のためだけにある。別段の記載がなければ、対応する各要素は、様々な図面において同じ参照符号によって示してある。
【0010】
「having」、「containing」、「including」、「comprising」などの用語は排他的ではなく、所定の構造体、要素、又は特徴の存在を示すが、追加の要素又は特徴の存在を排除するものではない。冠詞「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかに他の意味を示すのでない限り、単数のみならず複数をも含む。
【0011】
「電気的に接続された」という用語は、電気的に接続された要素間の永続的な低抵抗接続、たとえば、当該要素間の直接接触、又は金属及び/若しくは高濃度ドープの半導体材料を介した低抵抗接続を表す。「電気的に結合された」という用語は、信号及び/又は電力の伝送用に適合した1つ又は複数の介在要素が、電気的に結合された要素間、たとえば、第1の状態での低抵抗接続、及び第2の状態での高抵抗電気デカップリングを一時的に実現するように制御可能である各要素間で接続されてもよいことを含む。
【0012】
オーム接点は、線形又はほぼ線形の電流/電圧特性を有する非整流電気接合部である。ショットキー接触部は、整流特性を有する金属/半導体接合部であり、金属の仕事関数及び半導体材料のドーパント濃度は、外部から印加される電界が存在しない場合に、金属/半導体接合部に沿って半導体材料内に空乏領域が形成されるように選択される。ショットキー接触部においては、「金属/半導体接合部」という用語は、金属のような半導体と半導体の間の接合部を指す場合もあり、この接合部は、金属/半導体接合部と同じ特性を有する。たとえば、多結晶シリコンと炭化ケイ素の間にショットキー接触部を形成することが可能になる場合がある。2つの構成要素(たとえば、2つの領域)がそれぞれオーム接点又はショットキー接触部を形成する場合、これは、オーム接点又はショットキー接触部が、前記2つの構成要素の間に存在することを意味してもよい。いずれの場合も、前記2つの領域が互いに直接隣接することが可能になる場合がある。しかし、前記2つの構成要素の間にさらなる構成要素が配置されることが可能になる場合もある。
【0013】
安全動作域(SOA)は、半導体デバイスが、自己損傷することなく動作することが予想できる電圧条件及び電流条件を定義する。SOAは、最大連続負荷電流、最大ゲート電圧などのような、デバイス・パラメータでの公開された最大値によって与えられる。
【0014】
各図には、ドーピング・タイプ「n」又は「p」の次に「-」又は「+」を示すことによって、相対的なドーピング濃度が示してある。たとえば、「n-」は「n」ドーピング領域のドーピング濃度よりもドーピング濃度が低いことを意味し、「n+」ドーピング領域は、「n」ドーピング領域よりもドーピング濃度が高い。相対ドーピング濃度が同じドーピング領域は、必ずしも絶対ドーピング濃度が同じわけではない。たとえば、2つの異なる「n」ドーピング領域は、絶対ドーピング濃度が同じでもよく、又は異なっていてもよい。
【0015】
導電型が同じでドーパント濃度が異なる、隣接した2つのドーピング領域は、2つのドーピング領域の間の境界面に沿って、単極接合部、たとえばn/n+又はp/p+の接合部を形成する。単極接合部において、この単極接合部に直交するドーパント濃度プロファイルは、ドーパント濃度プロファイルが凹状から凸状に、又はその逆に変化する段階又は転換点を示す場合がある。
【0016】
物理的寸法に与えられる範囲は境界値を含む。たとえば、a~bのパラメータyの範囲は、a≦y≦bであると解釈する。「せいぜい」及び「少なくとも」のように境界値が1つの範囲にも、同じことが言える。
【0017】
化合物又は合金からの層又は構造体の主成分は、その原子が化合物又は合金を形成するような元素である。たとえば、ニッケル及びケイ素は、ニッケルシリサイド層の主成分であり、銅及びアルミニウムは、銅アルミニウム合金の主成分である。
【0018】
「上」という用語は、「直接上」のみを意味すると解釈すべきではない。むしろ、ある1つの要素が別の要素の「上」に配置される(たとえば、層が別の層の「上」又は基板の「上」にある)場合、さらなる構成要素(たとえば、さらなる層)が、2つの要素間に配置されてもよい(たとえば、層が基板の「上」にある場合、この層と前記基板の間に別の層を配置してもよい)。
【0019】
炭化ケイ素体に形成される構造体及びドープ領域に関しては、第2の領域と、炭化ケイ素体の表側にある第1の表面との間の最小距離が、第1の領域と第1の表面の間の最大距離よりも長い場合、第2の領域は第1の領域の「下方」にある。第2の領域は、第1の領域の「下」にあり、第1の領域及び第2の領域の、第1の表面への垂直投影がオーバラップする。この垂直投影は、第1の表面に直交する投影である。「水平面」は、平坦な第1の表面に平行な平面、又はこの第1の表面の同一平面上にある表面区間に平行な平面である。
【0020】
一実施形態によれば、炭化ケイ素デバイスを製造する方法は、炭化ケイ素体を提供することを含んでもよい。第1の表面から炭化ケイ素体に延在するトレンチ・ゲート構造体が形成されてもよい。ボディ領域及びソース区域は、トレンチ・ゲート構造体のアクティブ状態の側壁と接触して形成されてもよく、このソース区域は、ボディ領域と第1の表面との間に配置される。ソース領域は、トレンチ・ゲート構造体を形成する前後に、ソース区域に形成されてもよい。
【0021】
ボディ領域とソース領域は逆にドープされ、pn接合部を形成する。これ以降、ソース領域の導電型は第1の導電型と呼ばれ、ボディ領域の導電型は第2の導電型と呼ばれる。トレンチ・ゲート構造体を形成する前後、又はトレンチ・ゲート構造体の少なくとも部分的な構造体を形成した後、たとえば、トレンチを形成した後、トレンチ側壁に犠牲層を形成した後、若しくはトレンチ側壁の少なくとも一部分に沿ってゲート誘電体を形成した後に、ボディ領域及びソース領域を規定するドーパントを炭化ケイ素体に導入してもよい。
【0022】
トレンチ・ゲート構造体は、導電性ゲート電極、及び少なくともボディ領域とゲート電極の間にあるゲート誘電体を備える。
【0023】
トレンチ・ゲート構造体を形成する前後に、ドーパントが、ボディ領域の第1のボディ部分に注入されてもよく、この第1のボディ部分は、ソース区域の下に配置され、アクティブ状態の側壁からは距離を置いている。ドーパントは、第2の導電型を有し、第1のボディ部分とアクティブ状態の側壁との間の第2のボディ部分に対して、第1のボディ部分の正味のドーパント濃度を高める。その結果、第1の表面に平行な少なくとも1つの水平面において、第1のボディ部分での平均ドーパント濃度は、基準ドーパント濃度の少なくとも150%でもよく、第1のボディ部分の水平延在部は、ボディ領域の水平延在部全体の少なくとも20%でもよい。基準ドーパント濃度は、同じ水平面でのアクティブ状態の側壁にある、ボディ領域でのドーパント濃度である。
【0024】
第1のボディ部分及び/又は第2のボディ部分内でのドーパント濃度は一定でもよい。これに関連して、「一定」とは、ドーパント濃度が、それぞれ第1のボディ部分及び/又は第2のボディ部分内での平均ドーパント濃度のせいぜい±10%だけ変動することを意味してもよい。
【0025】
第1のボディ部分と第2のボディ部分との間に、遷移領域が配置される。遷移領域内では、水平方向のドーパント勾配は、第1のボディ部分での平均ドーパント濃度の少なくとも90%、及び/又は基準ドーパント濃度の少なくとも130%から、基準ドーパント濃度のせいぜい110%までの減少を示す場合がある。遷移領域は、アクティブ状態の側壁まである一定の距離を有し、このことは、第1のボディ部分がアクティブ状態の側壁から距離を置いていることを意味する。
【0026】
或いは、又はさらに、第1のボディ部分は、ボディ領域の水平延在部全体の少なくとも50%にわたって延在してもよい。
【0027】
炭化ケイ素デバイスのオン状態では、アクティブ状態の側壁に沿って反転チャネルが形成される。反転チャネルは、SOA内の動作時に、非アクティブ状態の側壁に沿って形成されない。各トレンチ・ゲート構造体は、1つ、2つ、3つ、4つ、又は6つのアクティブ状態の側壁を備えてもよい。
【0028】
第1のボディ部分と第2のボディ部分が、単極接合部を形成する。トレンチ・ゲート構造体と単極接合部の間の最小距離は、少なくとも100nm、たとえば少なくとも200nmでもよい。
【0029】
電界効果トランジスタ構造体を有する炭化ケイ素デバイスの阻止モードでは、空間電荷領域(空乏領域)が、ソース区域の反対側から(たとえば、ドリフト構造体から)ボディ領域に浸透する場合がある。空乏領域は、炭化ケイ素デバイスのチャネル領域内に延在してもよく、したがって、ボディ領域と、ソース領域の反対側の領域(たとえば、ドリフト構造体)との間のポテンシャル障壁を低くすることができる。この結果、ゲート閾値電圧の低下(いわゆる「障壁低下」)につながる場合がある。このドレイン誘起障壁低下(DIBL)は、ゲート閾値電圧に著しく影響を及ぼす場合があり、炭化ケイ素デバイスの電気特性を損なう場合がある。
【0030】
第1のボディ部分に、ボディ領域でのドーピング濃度を増加させることによって、空乏領域の広がりを減少させることができる。第1のボディ部分と、チャネル領域及び/又はゲート構造体との差は、一方では、その差が、第1のボディ部分でのドーピング濃度の増加に起因するゲート閾値電圧の有害な上昇を回避するのに十分大きいように選択されてもよく、また他方では、その差が、空乏領域を第1のボディ部分にずらすことを可能にするのに十分小さいように選択されてもよい。第1のボディ部分は、ゲート誘電体を有するトレンチ・ゲート構造体まで十分な距離を有するので、第1のボディ部分での相対的に高いドーパント濃度は、公称のゲート閾値電圧に対しては影響を及ぼさないか、又はほんのわずかの影響しか及ぼさない。第1のボディ部分の形成は、ソース領域の横方向の広がりが影響を受けないようにし、ソース領域の接触抵抗を損なわないか、又はほんのわずかしか損なわない。
【0031】
一実施形態によれば、トレンチ・ゲート構造体を形成するのに先立って、第1のボディ部分を形成するためのドーパントが、第1のボディ部分に注入されてもよい。このようにして、トレンチ・ゲート構造体での各構造に悪影響を及ぼすことなく、たとえば、注入イオンがゲート誘電体に悪影響を及ぼすことなく、第1のボディ部分を形成することができる。
【0032】
一実施形態によれば、第1のボディ部分にドーパントを注入するための注入軸は、炭化ケイ素体の垂直方向に対して傾斜させてもよい。第1のボディ部分でのドーパントが、トレンチ・ゲート構造体のアクティブ状態の側壁に向けて注入されるように、この注入軸を配向してもよい。たとえば、ボディ領域がトレンチ・ゲート構造体に直接隣接する側部から、トレンチ・ゲート構造体へ向けて、ドーパントを注入してもよい。注入軸は、ドーパントを注入するイオン・ビームの方向と平行に延びる。
【0033】
注入軸及び垂直方向は、第1の表面の上方で注入角度をなす。第1の表面の下方では、注入軸及び垂直方向が、負の注入角度をなす。
【0034】
ゲート・トレンチ構造体のアクティブ状態の側壁は、垂直方向に沿って延びてもよく、又は第1の表面において垂直方向とテーパ角度をなしてもよい。いずれの場合でも、ゲート・トレンチ構造体は、少なくとも1つのアクティブ状態の側壁、場合によっては少なくとも2つの対向するアクティブ状態の側壁、又はさらに3つ以上のアクティブ状態の側壁(たとえば、4つ若しくは6つのアクティブ状態の側壁)を備えてもよい。アクティブ状態の側壁それぞれにおいて、注入軸は、前記アクティブ状態の側壁の向きに従って選択されてもよい。アクティブ状態の側壁、又は各アクティブ状態の側壁のうち少なくとも1つが、炭化ケイ素体の主結晶面に沿って実質的に(すなわち、±2°又は±1°の許容範囲内で)延びてもよい。ゲート・トレンチ構造体は、少なくとも1つの非アクティブ状態の側壁をさらに備えてもよく、そこではチャネルが形成されない。
【0035】
先細のトレンチ・ゲート構造体は通常、いわゆる軸外角度を有する炭化ケイ素体の場合に使用される。テーパ角度は、軸外角度とは、絶対値でせいぜい2°、具体的にはせいぜい1°だけ異なる場合がある。他の実施形態では、炭化ケイ素体に軸外角度を設けてもよいが、側壁は依然として垂直方向に沿って延びてもよい。
【0036】
それぞれのアクティブ状態の側壁において、注入軸は、炭化ケイ素体の注入方向、並びにアクティブ状態の側壁及び/又はある1つの主結晶方向(たとえば、c軸)が、同じ相対配向を有するが、絶対値が異なる(たとえば、少なくとも1°又はせいぜい2°、及びせいぜい10°、又はせいぜい8°、又はせいぜい5°異なる)ように選択されてもよい。実施形態によっては、注入角度及びテーパ角度は、符号が同じでもよい(すなわち、両方とも時計回り又は反時計回りの向きでよい)が、絶対値が異なっていてもよい。すなわち、注入軸、並びにアクティブ状態の側壁及び/又はある1つの主要な結晶方向は、相対配向が同じ(たとえば、傾斜方向が同じ)でもよいが、絶対値が異なっていてもよい。
【0037】
一般に(たとえば、テーパ付きの場合、また垂直方向に沿ってアクティブ状態の側壁を有するゲート・トレンチ構造体の場合)、注入軸がアクティブ状態の側壁から離れて傾斜するように、注入角度を選択してもよい。すなわち、注入は、アクティブ状態の側壁に向けられてもよい。注入軸と第1の表面との間の鋭角(すなわち、90°未満の角度)は、アクティブ状態の側壁と第1の表面との間の鋭角よりも(絶対値で)小さくてもよい。
【0038】
注入角度は、注入軸が、炭化ケイ素体の主結晶面(たとえば、あらゆる主結晶面)及び/又は主結晶軸(たとえば、あらゆる主結晶軸)とは異なるように選択されてもよい。通常、注入角度は、絶対値でテーパ角度及び/又は軸外角度よりも大きくなるように選択される。たとえば、注入角度は、少なくとも2°、たとえば少なくとも3°、又は絶対値においてテーパ角度及び/若しくは軸外角度よりも大きく、少なくとも4°でもよい。垂直な側壁を有するトレンチ・ゲート構造体の場合、前述の関係においてテーパ角度は0°と考えられる。
【0039】
一実施形態では、テーパ角度及び/又は軸外角度は、絶対値で少なくとも2°、及びせいぜい6°、たとえば4°でもよい。この場合、注入角度は、絶対値で少なくとも6°(たとえば、少なくとも7°)、及びせいぜい14°(たとえば、せいぜい12°又はぜいぜい11°)でもよい。しかし、実施形態によっては、テーパ付きトレンチ・ゲート構造体の場合での注入角度は、6°未満でもよい。一般に、アクティブ状態の側壁のテーパ角度、及び前記アクティブ状態の側壁に対応する注入の注入角度は、両方とも負(「時計回りの向き」)又は正(「反時計回り」)のいずれかでもよい。
【0040】
傾斜注入を使用することにより、チャネリング効果を低減又は回避することが可能になる場合がある。連続的な格子チャネルを結晶格子がそれに沿って形成する主結晶方向に注入軸が実質的に平行であるとき、チャネリングが通常生じる。チャネリングが発生すると、注入角度のわずかな変化にのみ応答して、注入の深さが大きく変化する場合がある。注入軸と主結晶方向との間での十分に大きい事前設定角度は、注入の深さの変動を大幅に低減することができる。
【0041】
さらに、又は代わりとして、傾斜注入を使用することにより、横方向ストラグリングを低減することができる。半導体材料への垂直注入(すなわち、注入軸が実質的に垂直方向に平行に延びる場合)は、通常、横方向ストラグリングを示し、したがって、マスクされた注入の場合、注入イオンの一部分が開口部の垂直投影の外側に止まることになる。これとは対照的に、ボディ領域の側部から、アクティブ状態の側壁の方向への傾斜注入は、マスクの逆側、すなわち、傾斜注入が離れて向いている側での横方向ストラグリングを低減することができる。
【0042】
第1のボディ部分のドーパント注入をマスキングする注入マスクは、比較的広い開口部、及び各開口間での比較的狭いマスク・バーを備えてもよい。さらに、各マスク・バーは、トレンチ・ゲート構造体とボディ領域との間の境界面に対して、非対称に配置されてもよい。具体的には、ゲート誘電体と、ボディ領域上方のマスク・バーの第1の縁部との間の横方向距離は、ゲート誘電体と、トレンチ・ゲート構造体上方のマスク・バーの第2の縁部との間の横方向距離より長くてもよい。
【0043】
垂直注入の場合、マスク・バーの第2の縁部の側部においてストラグリングが生じると、ゲート誘電体に沿ってドーパント濃度が直ちに増加し、したがってゲート閾値電圧が上昇する場合がある。
【0044】
傾斜注入を使用する場合は、マスク・バーの第2の側部での横方向ストラグリングが、ゲート閾値電圧に影響を及ぼさないか、又はわずかな影響しか及ぼさない可能性がある。
【0045】
注入軸と垂直方向の間の注入角度は、絶対値では、少なくとも3°、たとえば少なくとも7°、たとえば少なくとも、又は正確に11°でもよい。
【0046】
一実施形態によれば、ボディ機能強化注入マスクが、第1の表面に形成されてもよく、ドーパントが、ボディ機能強化注入マスクの開口部を通して第1のボディ部分に注入されてもよい。このボディ機能強化注入マスクは、ソース区域の少なくとも第1のソース部分を覆うことができる。ボディ機能強化注入マスクでの開口部は、第1の表面の少なくともボディ接触域を露出してもよい。ボディ接触域は、横方向から直接ソース区域に隣接する。ボディ接触域では、処理の後期段階において、炭化ケイ素体の表側において、ボディ領域と第1の負荷電極との間に低抵抗オーム接点が形成されてもよい。
【0047】
たとえば、ボディ機能強化注入マスクは、ソース区域全体を覆ってもよく、ボディ機能強化注入マスクでの開口部は、ボディ接触域のみを露出してもよい。このようにして、ボディ機能強化注入はまた、ボディ接触域に高濃度ドープされたボディ接触領域を画定する、ボディ接触注入マスクとしても使用してもよい。
【0048】
たとえば、高濃度ドープのボディ接触領域は、ボディ機能強化注入マスクでの開口部を通してドーパントを低い注入エネルギーで注入することによって形成してもよく、ドーパントの範囲の端のピークは、第1の表面までの距離にあり、この距離は、ソース区域の垂直方向の延在部の範囲内にある。
【0049】
第1のボディ部分を形成することは、少なくとも1つの傾斜注入を含んでもよい。傾斜注入での注入エネルギーは、範囲の端のピークがボディ領域内にあり、ソース区域までの距離にあるように選択されてもよい。ドーパントを第1のボディ部分に注入することは、異なる注入エネルギーでの、1つ、2つ、又は3つ以上の注入を含んでもよい。様々な注入の用量は、同じでもよく、又は異なっていてもよい。ソース領域の下にある第1のボディ部分を画定する1つ又は複数の傾斜注入と、ソース領域に直接隣接したボディ接触部分を画定する注入とにおいて、同じ注入マスクを使用すると、追加の労力が少なくて、第1のボディ部分の形成が容易になる。
【0050】
一実施形態によれば、ボディ機能強化注入マスクの開口部は、ボディ接触域及びソース区域の第2のソース部分を露出してもよく、この第2のソース部分は、ボディ接触域と第1のソース部分との間に配置される。このようにして、第1のボディ部分は、ソース領域に対してさらに大きい横方向の延在部を伴って形成されてもよい。阻止モードでのボディ領域の空乏化部分の延在部が、さらに低減される場合がある。その結果、ソース領域の横方向の延在部を低減させることなく、DIBL効果をさらに減少させてもよい。
【0051】
一実施形態によれば、ボディ接触注入マスクは、第1の表面上に形成されてもよく、このボディ接触注入マスクは、ソース区域を覆ってもよく、ボディ接触注入マスクの開口部がボディ接触域を露出する。ボディ領域の導電型のドーパント、すなわち第2の導電型のドーパントは、ボディ接触注入マスクの開口部を通して注入されてもよい。注入されたドーパントは、横方向からソース区域に隣接する、高濃度ドープのボディ接触領域を形成してもよい。後期段階で形成されてもよい第1の負荷電極との低抵抗オーム接点をボディ接触領域が形成するように、注入用量が十分に高くてもよい。
【0052】
ボディ接触領域を形成した後、ボディ接触注入マスクは、横方向に凹んでもよい。ボディ接触注入マスクは、もっぱら横方向に凹んでいてもよく、開口部のみが広くなる。或いは、この横方向の凹みはまた、同じか又は異なる凹み率で垂直の凹みを備えてもよい。たとえば、等方性エッチングは、ボディ接触注入マスクを横方向及び垂直方向に凹ませてもよく、この凹みはまた、ボディ接触注入マスクの厚さを低減させる。少なくとも横方向に凹んだボディ接触注入マスクは、ボディ機能強化注入マスクを形成してもよい。
【0053】
このようにして、ボディ機能強化注入マスクは、追加のリソグラフィ・プロセスなしで効率的に形成することができる。第1のボディ部分及びボディ接触領域は、自己整合的に形成されてもよい。
【0054】
一実施形態によれば、深い注入マスクが第1の表面上に形成されてもよく、この深い注入マスクは、ソース区域の第3のソース部分を覆ってもよい。深い注入マスクの開口部は、ボディ接触域及びソース区域の第4のソース部分を露出してもよい。第4のソース部分は、ボディ接触域と第3のソース部分との間に配置される。ボディ領域の導電型のドーパント、すなわち第2の導電型のドーパントは、深い注入マスクの開口部を通して注入され、ドーパントの範囲の端のピークは、第1の表面までの距離にあり、この距離は、ボディ領域と第1の表面との間の最大距離よりも長い場合がある。
【0055】
ドーパントは、深い遮蔽部分を形成してもよい。ドーパントを深い遮蔽部分に注入することは、異なる注入エネルギーでの、1つ、2つ、又は3つ以上の注入を含んでもよい。様々な注入の用量は、同じでもよく、又は異なっていてもよい。
【0056】
深い遮蔽部分を形成した後、深い注入マスクは横方向に凹んでもよい。横方向に凹んだ深い注入マスクは、ボディ機能強化注入マスクを形成してもよい。このようにして、ボディ機能強化注入マスクは、追加のリソグラフィ・プロセスなしで効率的に形成することができる。第1のボディ部分は、同じ導電型の深い遮蔽部分に自己整合して形成されてもよく、この深い遮蔽部分は、トレンチ・ゲート構造体をドレイン電極の電位から遮蔽してもよく、且つ/又はボディ・ダイオードを実現してもよい。
【0057】
一実施形態によれば、ボディ接触注入マスクは、第1の表面上に形成されてもよく、このボディ接触注入マスクは、ソース区域を覆い、ボディ接触注入マスクの開口部がボディ接触域を露出する。第2の導電型のドーパントは、ボディ接触注入マスクの開口部を通して注入されて、高濃度ドープのボディ接触部分を形成してもよい。次いで、ボディ接触注入マスクを横方向に凹ませて、横方向に凹んだボディ接触注入マスクを実現することができる。
【0058】
横方向に凹んだボディ接触注入マスクは、深い注入マスクを形成してもよい。第2の導電型のドーパントは、深い注入マスクの開口部を通して注入されて、深い遮蔽部分を形成してもよい。次いで、深い注入マスクを横方向に凹ませて、横方向に凹んだ深い注入マスクを実現することができる。横方向に凹んだ深い注入マスクは、ボディ機能強化注入マスクを形成して、第1のボディ部分を形成してもよい。
【0059】
このようにして、深い遮蔽部分、ボディ接触部分、及び第1のボディ部分が、単一のリソグラフィ・プロセスに基づいて効率的に形成されてもよい。第1のボディ部分、ボディ接触部分、及び深い遮蔽部分は、互いに自己整合的に、すなわちリソグラフィ・オーバレイの変位なしに形成することができる。
【0060】
一実施形態によれば、ボディ領域の導電型に相補的な導電型のドーパント、すなわち第1の導電型のドーパントをソース区域に注入して、ソース区域にドープされたソース領域を形成してもよい。第1のボディ部分を形成する前に、又は第1のボディ部分を形成した後に、ソース領域を形成してもよい。
【0061】
一実施形態によれば、少なくとも1つの水平面での第1のボディ部分の水平延在部は、ボディ領域の水平延在部全体の少なくとも20%である。第1のボディ部分とソース領域とが20%オーバラップすることによって、DIBLが著しく改善される。他の実施形態によれば、第1のボディ部分の水平延在部は、ボディ領域の水平延在部全体の少なくとも40%又はさらには50%でもよく、第1のボディ部分の存在が公称ゲート閾値電圧をもたらすことなく、DIBL効果がさらに低減される。
【0062】
少なくとも1つの別の実施形態によれば、炭化ケイ素デバイスは、トレンチ・ゲート構造体を有する炭化ケイ素体を含んでもよく、このトレンチ・ゲート構造体は、炭化ケイ素体の第1の表面から炭化ケイ素体内に延在する。ボディ領域は、トレンチ・ゲート構造体のアクティブ状態の側壁と接触している。ソース領域は、このアクティブ状態の側壁と接触している。ソース領域は、ボディ領域と第1の表面との間に配置される。ボディ領域は、ソース領域の下にあり、アクティブ状態の側壁から距離を置いた第1のボディ部分を含んでもよい。第1の表面に平行な少なくとも1つの水平面において、第1のボディ部分でのドーパント濃度は、アクティブ状態の側壁における水平面での基準ドーパント濃度の少なくとも150%である。
【0063】
炭化ケイ素デバイスは、IGFET(絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)、たとえば、一例として金属ゲートを有するFET、並びに半導体材料からなるゲートを有するFETを含む、通常の意味でのMOSFET(金属酸化膜半導体FET)、又はMCD(MOS制御ダイオード)でもよく、又はこれらを含んでもよい。
【0064】
第1のボディ部分での追加のドーパントは、空乏領域が障壁高さに及ぼす影響を低減するのに寄与することができる。第1のボディ部分は、ドレイン誘起障壁低下を低減することができ、炭化ケイ素デバイスの電気特性の安定性を改善することができる。
【0065】
一実施形態によれば、少なくとも1つの水平面では、第1のボディ部分の水平延在部は、ボディ領域の水平延在部全体の少なくとも20%である。
【0066】
一実施形態によれば、炭化ケイ素デバイスはさらに、ボディ領域の導電型、すなわち第2の導電型の遮蔽領域を含んでもよい。この遮蔽領域は、第1の表面から炭化ケイ素体内に延在してもよく、ソース領域及びボディ領域に横方向から直接隣接してもよい。
【0067】
たとえば、遮蔽領域は、一方の側でのソース領域及びボディ領域と、他方の側でのさらなるトレンチ・ゲート構造体との間に形成されてもよい。遮蔽領域は、さらなるトレンチ・ゲート構造体から、ソース領域及びボディ領域を分離してもよい。遮蔽領域の垂直方向の延在部は、トレンチ・ゲート構造体の垂直方向の延在部よりも大きくてよい。遮蔽領域は、トレンチ・ゲート構造体の下の部分を含んでもよく、この遮蔽領域は、ドレイン電位に対してトレンチ・ゲート構造体を遮蔽することができ、トレンチ・ゲート構造体の縁部に沿って生じる最大電界強度を低減することができる。
【0068】
一実施形態によれば、少なくとも1つの水平面において、第1のボディ部分に直接隣接する遮蔽領域の一部分での横方向のドーパント分布は、第1のボディ部分でのドーパント濃度に等しくてもよい。遮蔽領域及び第1のボディ部分の少なくとも縦断面は、こうした注入の結果として生じてもよい。
【0069】
別の実施形態によれば、遮蔽領域は、さらなるトレンチ・ゲート構造体の第2の側壁と接触してもよい。
【0070】
一実施形態によれば、第1のボディ部分は、傾斜注入の結果として生じてもよい。一例として、注入角度は、絶対値で3°~11°の範囲内で選択されてきたことがある。傾斜注入は、たとえば、第1のボディ部分の形状から、デバイス内で目に見えることがある。炭化ケイ素半導体材料中のドーパントは、通常は拡散を示すことがない。したがって、ドーパントを活性化した後でも、傾斜注入に起因する非対称の形状が、依然として第1のボディ部分において目に見えることがある。
【0071】
図1A図4Dは、炭化ケイ素デバイスを製造する方法に言及する。炭化ケイ素デバイスは、少なくとも1つの炭化ケイ素体100を含む炭化ケイ素基板から製造することができる。それぞれの炭化ケイ素体100から、ある1つの炭化ケイ素デバイスの少なくとも1つの半導体ダイ(チップ)を得ることができる。
【0072】
たとえば、炭化ケイ素体100は、適切な単結晶ベース上に、エピタキシーによって成長した炭化ケイ素層を含んでもよく、又はそれから構成されてもよい。
【0073】
一例として、炭化ケイ素体100は、ポリタイプ15R-SiC、2H-SiC、4H-SiC、又は6H-SiCでもよい。炭化ケイ素体100は、主成分のシリコン及び炭素に加えて、ドーパント原子、たとえば、窒素N、リンP、ベリリウムBe、ホウ素B、アルミニウムAl、及び/又はガリウムGaを含んでもよい。さらに、炭化ケイ素体100は、たとえば、水素及び/又は酸素といった不要な不純物を含むことがある。
【0074】
炭化ケイ素体100は、表側の第1の表面101、及び裏側の相対する第2の表面102を含む。第1の表面101及び第2の表面102は、互いに平行でもよく、第1の表面101は、平面又は凸凹でもよい。凸凹の第1の表面101の場合、以下で話を簡単にするために、この凸凹の主表面101を通る平均平面は、第1の表面101と見なされる。
【0075】
炭化ケイ素体100は、主延在面に沿って水平方向(以下では、横方向とも呼ばれる)に延在する。垂直方向104で水平方向に対して垂直に、炭化ケイ素体100の厚さは、主延在面に沿って炭化ケイ素体100の延在部と比較してわずかである。以下では、縦方向は、横方向に沿って延びていてもよい。
【0076】
炭化ケイ素体100の垂直方向104は、主格子方向と一致していてもよく、又は主格子方向に対して軸外角度だけ傾斜していてもよく、この軸外角度は、絶対値で2°~8°の範囲内でもよい。炭化ケイ素体100の裏側では、第2の表面102は、平坦な第1の表面101に平行に、又は凸凹の第1の表面101の平均平面に平行に延在してもよい。
【0077】
第1の表面101と第2の表面との間の炭化ケイ素体100の合計の厚さは、製造された炭化ケイ素デバイスの公称阻止能力に関連しており、数百nm~数百μmの範囲になることがある。
【0078】
以下の各実施形態は、nドープのソース領域及びpドープのボディ領域を有するnチャネル・トランジスタ・セルを備える炭化ケイ素デバイスに言及する。したがって、ソース領域の導電型、すなわち第1の導電型はn型であり、ボディ領域の導電型、すなわち第2の導電型はp型である。nチャネル・トランジスタ・セルに関する開示は、変更すべき点を変更して、ソース領域とボディ領域の導電型を逆にすることによって、pチャネル・トランジスタ・セルに適用してもよい。
【0079】
炭化ケイ素体100は、低濃度nドープのドリフト領域131を含むドリフト構造体130を備える。ドリフト構造体130は、場合によっては、第1の表面101とドリフト領域131との間にnドープされた電流拡散領域137を備えてもよく、この電流拡散領域137は、ドリフト領域131に直接隣接してもよい。隣接する各電流拡散領域の間では、pドープされた遮蔽領域140は、炭化ケイ素体100内で、ボディ接触域126からドリフト構造体130まで延在してもよく、このボディ接触域126は、第1の表面101の各区間である。
【0080】
遮蔽領域140及び電流拡散領域137は、ストライプ形状でもよく、この遮蔽領域140及び電流拡散領域137の水平長手軸は、断面と直交して延在する。しかし、トランジスタ・セルの所望の形状(たとえば、ゲート・トレンチの形状)に応じて、他の形状も実現可能とすることができる。
【0081】
第1の表面101と電流拡散領域137との間に配置されたpドープのボディ領域120は、垂直方向において電流拡散領域137に直接隣接してもよい。ボディ領域120での最大ドーパント濃度は、遮蔽領域140での最大ドーパント濃度より低くてもよい。
【0082】
第1の表面101とボディ領域120との間に配置されたソース区域210は、ボディ領域120に直接隣接してもよい。各ソース区域210は、中央に第1のソース部分211を含み、第1のソース部分211と、隣接するボディ接触域126との間に第2のソース部分212を含む。ソース区域210において、高濃度nドープのソース領域110は、以下に説明するp型注入の前後に形成されてもよい。
【0083】
ボディ機能強化注入マスク450が、第1の表面101上に形成され、p型ドーパントが、このボディ機能強化注入マスク450での開口部455を通して注入される。
【0084】
図1Aには、第1のソース部分211を覆う、ボディ機能強化注入マスク450が示してある。ボディ機能強化注入マスク450の開口部455は、ボディ接触域126及び第2のソース部分212を露出する。開口部455は、ストライプ形状でもよく、開口部455の長手軸は、断面に直交して延在する。
【0085】
p型ドーパント・イオンは、1つ又は複数の異なる注入エネルギーで開口部455を通して注入されてもよく、様々な注入エネルギーでの注入は、同じ注入量又は異なる注入量を有してもよい。注入軸は、垂直、すなわち垂直方向104に平行でもよく、又は注入角度βだけ垂直方向104に対して傾斜していてもよい。注入角度βは、開口部455の長手軸に対して横方向での断面にある。注入されたp型ドーパント・イオンは、第2のソース部分212の下に、高濃度ドープの第1のボディ部分121を形成する。
【0086】
ボディ機能強化注入マスク450は、除去してもよい。n型ドーパントをソース区域210に注入して、ソース区域210内にソース領域110を形成してもよい。トレンチ・マスクを第1の表面101上に形成してもよい。トレンチ・マスクは、断面に直交する長手軸を有するストライプ形状の開口部を備えてもよい。トレンチ・マスクでの各開口部は、1つの電流拡散領域137及び1つの遮蔽領域140と、横方向にオーバラップしてもよい。トレンチ・マスクをエッチング・マスクとして使用して、炭化ケイ素体100内にゲート・トレンチをエッチングしてもよい。ゲート・トレンチの少なくとも一部分にライニングを施す、ゲート誘電体159を形成してもよい。1つ又は複数の導体材料を堆積させてもよい。この導電材料は、ゲート・トレンチ内にゲート電極155を形成する。ゲート・トレンチの外側に堆積された、堆積導電材料の各部分を除去してもよい。
【0087】
図1Bには、第1の表面101から炭化ケイ素体100内に延在するトレンチ・ゲート構造体150が示してある。各トレンチ・ゲート構造体150は、導電性ゲート電極155、及びこのゲート電極155と炭化ケイ素体100との間のゲート誘電体159を備える。トレンチ・ゲート構造体150の側壁151、152は、第1の表面101に直交していてもよい。図示した実施形態によれば、両方の側壁151、152が垂直方向104に対して傾斜するように、トレンチ・ゲート構造体150は、第1の表面101までの距離が増加するにつれて先細になる。
【0088】
側壁151、152のうち少なくとも1つは、電荷担体移動度が高い結晶面に平行な、アクティブ状態の側壁でもよい。アクティブ状態の側壁151に沿って、半導体デバイスのオン状態でのボディ領域において、反転チャネルが形成される。半導体デバイスがSOA内で動作する場合、非アクティブ状態の側壁152に沿って、反転チャネルがボディ領域に形成されない。添付の各図は、各トレンチ・ゲート構造体150の左側に1つだけのアクティブ状態の側壁151を有するトレンチ・ゲート構造体150に言及するが、この実施形態はまた、各トレンチ・ゲート構造体の右側に1つだけのアクティブ状態の側壁151を有するトレンチ・ゲート構造体150、又は2つ以上のアクティブ状態の側壁151を有するトレンチ・ゲート構造体150に適用されてもよい。
【0089】
ソース領域110及びボディ領域120は、トレンチ・ゲート構造体150のアクティブ状態の側壁151と接触している。ボディ領域120は、電流拡散領域137からソース領域110を分離する。電流拡散領域137は、ボディ領域120と低濃度ドープのドリフト領域131との間の低抵抗接続部を形成する。
【0090】
高濃度ドープの遮蔽領域140は、ソース領域110、ボディ領域120、及び電流拡散領域137を、隣接するトレンチ・ゲート構造体150から分離する。遮蔽領域140の垂直方向の延在部は、トレンチ・ゲート構造体150の垂直方向の延在部よりも大きくてよい。
【0091】
各ボディ領域120は、1つのソース領域110の下に形成される。ボディ領域120の第1のボディ部分121は、遮蔽領域140に直接隣接し、トレンチ・ゲート構造体150から間隔を空けてある。ボディ領域120の第2のボディ部分122は、第1のボディ部分121とトレンチ・ゲート構造体150との間に配置される。第1のボディ部分121での最大正味ドーパント濃度p1は、たとえば、第2のボディ部分122での最大正味ドーパント濃度p0の少なくとも2倍よりも高い。たとえば、第1のボディ部分121での最大正味ドーパント濃度p1は、第2のボディ部分122での最大正味ドーパント濃度p0の少なくとも10倍の高さでもよい。
【0092】
図2A及び図2Bでは、傾斜注入が、第1のボディ部分121の少なくとも一部分を形成する。
【0093】
図2Aには、第1の表面101と電流拡散領域137との間のボディ層720が示してある。ボディ層720は、電流拡散領域137に直接隣接してもよい。ボディ層720はまた、ボディ接触域126と深い遮蔽部分148との間に形成されてもよく、この深い遮蔽部分148は、隣接する電流拡散領域137を横方向に分離する。ボディ層720は、横方向に連続した層を形成してもよい。ボディ層720を形成することは、マスクされていない注入、p型エピタキシー、又は両方の組合せを含んでもよい。隣接する各ボディ接触域126の間で、ソース区域210は、第1の表面101とボディ層720との間に配置されてもよい。
【0094】
ボディ機能強化注入マスク450は、ボディ接触域126のみを露出する開口部455を備える。すなわち、ボディ機能強化注入マスク450は、ソース区域210を完全に覆い、ここではnドープのソース領域が既に形成されていてもよく、又は後期段階で形成されてもよい。
【0095】
ボディ機能強化注入マスク450は、様々な注入エネルギーで1つ、2つ以上の注入をマスクしてもよく、この注入は、様々な注入角度で実行されてもよい。たとえば、第1の注入エネルギーでの第1の直交注入は、第1の表面101に近接して、ドープ済みの第1の部分領域141を形成してもよい。第2の注入エネルギーでの第2の直交注入は、第1の表面101までの相対的に長い距離で、ドープ済みの第2の部分領域142を形成してもよい。第2の部分領域142は、深い遮蔽部分148と接触していてもよく、又はオーバラップしていてもよい。
【0096】
注入角度βだけ垂直方向104に対して注入軸451が傾斜している状態での傾斜注入と、第1の注入エネルギーよりも大きく、第2の注入エネルギーよりも小さい注入エネルギーとによって、第1の部分領域141と第2の部分領域142との間に、ドープ済みの第3の部分領域143が形成されてもよい。注入角度βに起因して、この第3の注入領域143は、ボディ機能強化注入マスク450での開口部455の中央に対して非対称に形成される。
【0097】
注入マスク450、たとえば横方向の凹みによってボディ機能強化注入マスク450が得られる元の注入マスク、又は、たとえば横方向の凹みによってボディ機能強化注入マスク450から得られる注入マスクを使用してもよい深い注入は、相対的に高い注入エネルギーでp型ドーパントのさらなる注入をマスクして、深い遮蔽部分148を形成するために使用されてもよい。深い遮蔽部分148は、第1、第2、及び第3の部分領域141、142、143を形成する前後に形成されてもよい。図1A図1Cについて説明したように、ボディ機能強化注入マスク450を除去してもよく、トレンチ・ゲート構造体150を形成してもよい。
【0098】
図2Bには、遮蔽領域140からボディ領域120内に延在する隆起部を形成する第1のボディ領域121を有する、ボディ領域120が示してあり、この隆起部の最大の横方向延在部は、ソース領域110までの距離、ドリフト構造体130までの距離で、又はその両方から間隔を空けて配置されてもよい。ボディ接触域126の下方では、第1、第2、及び第3の部分領域141、142、143、並びに深い遮蔽部分148が、前述の通り連続的な遮蔽領域140を形成する。
【0099】
図3A図3Cは、これまでに使用された注入マスクを横方向から凹ませることによって、ボディ機能強化注入マスクを形成する方法に言及する。
【0100】
図3Aには、低濃度nドープのドリフト領域131及びpドープのボディ層720を有する炭化ケイ素体100が示してある。nドープ電流拡散領域137は、ボディ層720からドリフト領域131まで延在してもよい。pドープの深い遮蔽部分148は、隣接する電流拡散領域137を横方向に分離してもよい。高濃度nドープのソース層710は、第1の表面101とボディ層720との間に形成されてもよい。ソース層710及び/又は深い遮蔽部分148はまた、後期段階で形成されてもよい。
【0101】
ボディ接触注入マスク430は、第1の表面101上に形成される。ボディ接触注入マスク430は、第1のマスク開口幅がmw1のマスク開口部435を備える。マスク開口部435は、断面に直交する長手方向の延在部を有し、深い遮蔽部分148の上方に形成される。p型ドーパントは、比較的低い注入エネルギーで、且つ比較的高い注入量で注入されて、第1の表面101に沿って、ドープ済みの第1の部分領域141を形成し、この第1の部分領域141は後に、遮蔽領域及び/又はボディ領域120の接触領域を形成する。
【0102】
注入は、垂直でもよく、又は垂直方向104に対してわずかに傾斜していてもよく、たとえば、絶対値で3°未満の注入角度でもよい。少なくとも1つの、さらなる直交した注入又はわずかに傾斜した注入を、相対的に高い注入エネルギーで実行して、ドープされた埋込み済みの部分領域145を形成してもよい。
【0103】
高濃度ドープの第1の部分領域141は、第1の表面101のボディ接触域126に直接隣接する。第1の部分領域141のドーパント濃度は十分に高くて、第1の部分領域141と、後期段階で第1の表面101上に形成される金属構造体との間に低抵抗オーム接点を形成する。
【0104】
さらなる直交注入、又はほんのわずかに傾斜した注入は、第1の部分領域141のほぼ垂直な投影において、埋込み済みの部分領域145を形成してもよい。この埋込み済の部分領域145は、図に示すように第1の部分領域141から間隔を空けてもよく、又はこの第1の部分領域141と接触していてもよい。埋込み済みの部分領域145は、深い遮蔽部分148内に延在してもよい。注入イオンの横方向ストラグリングに起因して、埋込み済みの部分領域145の横方向の延在部は、第1の表面101までの距離の増加に伴って増加する場合がある。ボディ接触注入マスク430によって覆われたソース層710の各部分は、ソース領域110を形成する。
【0105】
図3Bには、図3Aのボディ接触注入マスク430を横方向に凹ませることによって形成された、ボディ機能強化注入マスク450が示してあり、このボディ機能強化注入マスク450でのストライプ形状の開口部455の第3のマスク開口幅mw3は、図3Aの第1のマスク開口幅mw2より広い。
【0106】
たとえば、ボディ機能強化注入マスク450は、図3Bのボディ接触注入マスク430を横方向に凹ませるウェット・エッチングによって形成されてもよい。ボディ接触域126に加えて、開口部455は、ソース領域110の第2のソース部分212を露出し、第2のソース部分212は、ボディ接触域126に直接隣接する。
【0107】
ボディ機能強化注入マスク450は、幅がw3のマスク・バー456を備える。マスク・バー456は、ソース領域110の第1のソース部分211を覆う。絶対値で少なくとも3°、又はさらには少なくとも10°の注入角度で、垂直方向104に対して傾斜している注入軸に沿って、開口部455を通してp型ドーパントが注入される。このp型ドーパントは、1つ、2つ以上の異なる注入エネルギーで注入されてもよく、その結果、第1の表面101までの距離において、ソース領域110と電流拡散領域137との間に注入ピークが生じる。注入されたドーパントは、ボディ層720において第1のボディ部分121を形成する。ソース領域110の下方にあり、傾斜注入の影響を受けない、図3Aのボディ層720の各区間が、ボディ領域120の第2のボディ部分122を形成する。
【0108】
ボディ接触域126の下方では、図3Aの第1の部分領域141、図3Aの埋込み済みの部分領域145、図3Aの深い遮蔽部分148、及びボディ接触域126の下での傾斜注入によって注入されるドーパントは、連続的な遮蔽領域140を形成する。垂直線に沿って、遮蔽領域140のドーパント型は、絶えずp型である。垂直線に沿った正味のドーパント濃度は、極大値及び極小値をいくつか含んでもよい。
【0109】
このプロセスは、これまでの各図を参照して説明したように、トレンチ・ゲート構造体150を形成することを続けてもよい。
【0110】
図3Cに示すように、第1のボディ部分121の横方向の延在部は、図3Bの第2のソース部分212の幅、(1つ又は複数の)傾斜注入の注入角度、及び(1つ又は複数の)傾斜注入の注入エネルギーによって画定される。
【0111】
図4A図4Dには、炭化ケイ素デバイスの表側において、同じ導電型の様々なドープ領域を画定するために、単一のフォトリソグラフィ・プロセスを使用する方法が示してある。
【0112】
図4Aには、低濃度nドープのドリフト領域131を有する炭化ケイ素体100が示してある。nドープ電流拡散層737は、第1の表面101とドリフト領域131との間に配置され、ドリフト領域131と接触している。第1の表面101と電流拡散層737との間のボディ層720は、電流拡散層737と直接接触していてもよい。第1の表面101とボディ層720との間のソース層710は、ボディ層720及び第1の表面101と直接接触していてもよい。
【0113】
ボディ接触注入マスク430は、第1の表面101上に形成される。図3Aを参照して説明したように、p型ドーパントは、第1のマスク開口幅mw1を有するマスク開口部435を通して注入される。
【0114】
図4Aには、ボディ接触域126と接触している高濃度ドープの第1の部分領域141、及び電流拡散層737内に延在してもよいドープされた埋込み済みの部分領域145が示してある。
【0115】
深い注入マスク440が、第1の表面101上に形成されてもよく、この深い注入マスク440でのストライプ形状の第2のマスク開口部445の第2のマスク開口幅mw2は、図4Aの第1のマスク開口幅mw1よりも広い。
【0116】
たとえば、図4Aのボディ接触注入マスク430を少なくとも横方向に凹ませることによって、深い注入マスク440が形成されてもよい。ボディ接触域126に加えて、第2のマスク開口部445は、ソース区域210の第4のソース部分214を露出し、この第4のソース部分214は、ボディ接触域126に直接隣接する。深い注入マスク440の各区間は、ソース区域210の第3のソース部分213を覆う。第2のマスク開口部445を通してp型ドーパントが注入されて、電流拡散層737に高濃度ドープの深い遮蔽部分148を形成する。
【0117】
図4Bによれば、それぞれの深い遮蔽部分148は、ボディ層720からドリフト領域131まで延在してもよい。隣接する深い各遮蔽部分148間での図4Aの電流拡散層737の各部分は、nドープ電流拡散領域137を形成する。別の例によれば、深い遮蔽部分148は、ドリフト領域131から間隔を空けたままであり、図4Bの電流拡散層737の残留部分は、深い遮蔽部分148とドリフト領域131との間に残されてもよい。
【0118】
図4Bの深い注入マスク440は、図2A図2Bを参照して説明されるように、ボディ機能強化注入マスク450として使用されてもよい。
【0119】
或いは、図4Cに示すように、図4Bの深い注入マスク440を横方向にさらに凹ませることによって、ボディ機能強化注入マスク450が形成され、ボディ機能強化注入マスク450でのストライプ形状の開口部455の第3のマスク開口幅mw3は、図4Bの第2のマスク開口幅mw2よりも広い。
【0120】
たとえば、図4Bの深い注入マスク440を少なくとも横方向に凹ませることによって、ボディ機能強化注入マスク450が形成されてもよい。ボディ接触域126に加えて、開口部455が第2のソース部分212を露出し、この第2のソース部分212は、ボディ接触域126に直接隣接し、図4Bの第4のソース部分214よりも広い。ボディ機能強化注入マスク450の各区間が、第1のソース部分211を覆う。p型ドーパントが、開口部435を通して注入され、垂直方向104に対して注入軸が傾斜する。このp型ドーパントは、1つ、2つ以上の様々な注入エネルギーで注入されてもよい。
【0121】
ボディ接触域126の下方では、図4Cの第1の部分領域141、図4Cの埋込み済みの部分領域145、図4Cの深い遮蔽部分148、及びボディ接触域126の下に傾斜注入が注入するドーパントが、前述の通り連続的な遮蔽領域140を形成する。これまでの各図を参照して説明したように、このプロセスは、トレンチ・ゲート構造体150を形成することを続けてもよい。
【0122】
図4Dには、ソース領域110の横幅の少なくとも50%にわたって、遮蔽領域140からトレンチ・ゲート構造体150の方向に、ボディ領域120に延在する広い隆起部を形成する第1のボディ領域121を有するボディ領域120が示してある。この隆起部の最大の横方向延在部は、ソース領域110までの距離、ドリフト構造体130までの距離で、又はその両方から間隔を空けて配置されてもよい。
【0123】
図1A及び図1B図2A及び図2B図3A図3C、並びに図4A図4Dの任意の図とともに説明される方法を使用して、図5A及び図5B図6A及び図6B、並びに図8A及び図8Bを参照して説明される任意の炭化ケイ素デバイス500を形成してもよい。図5A及び図5B図6A及び図6B、並びに図8A及び図8Bを参照して説明される任意の炭化ケイ素デバイス500は、図1A及び図1B図2A及び図2B図3A図3C、並びに図4A図4Dを参照して説明される任意の方法によって得られてもよい。
【0124】
図5A及び図5Bは、トランジスタ・セルTCを備える炭化ケイ素デバイス500に言及する。炭化ケイ素デバイス500は、図1A図4Dとともに前述したように実現することができる炭化ケイ素体100を含む。
【0125】
トランジスタ・セルTCは、第1の表面101から炭化ケイ素体100に延在する、ストライプ形状のトレンチ・ゲート構造体150に沿って形成される。トレンチ・ゲート構造体150は、炭化ケイ素デバイス500のアクティブ状態の領域を通って長手方向に沿って延在する長いストライプでもよい。他の実施形態では、トレンチ・ゲート構造体150は、たとえば、六角形又は四角形でもよい。隣接するトレンチ・ゲート構造体150の間の炭化ケイ素体100の各部分は、SiCメサを形成する。
【0126】
ドリフト構造体130は、第1の導電型の低濃度ドープのドリフト領域131、及びドリフト領域131と第2の表面102との間にある、第1の導電型の高濃度ドープの接触部分139を含んでもよい。
【0127】
高濃度ドープの接触部分139は、結晶インゴットから得られる基板部分でもよく、若しくはこれを含んでもよく、又はエピタキシーによって形成される層の高濃度ドープ部分を含んでもよい。第2の表面102に沿って、接触部分139でのドーパント濃度は、接触部分139と第2の負荷電極320との間の低抵抗オーム接点を確実なものにするように十分高い。
【0128】
ドリフト領域131は、エピタキシーによって成長した層に形成されてもよい。ドリフト領域131での平均正味ドーパント濃度は、1E15cm-3~5E16cm-3の範囲でもよい。ドリフト領域131は、接触部分139に直接隣接してもよい。或いは、ドリフト領域131と接触部分139の間に、ドリフト領域131との単極接合部を形成するバッファ層が配置されてもよく、一例として、このバッファ層の垂直方向の延在寸法はほぼ1μmでもよく、バッファ層の平均ドーパント濃度は、3E17cm-3~1E18cm-3の範囲でもよい。
【0129】
第1の表面101から炭化ケイ素体100に延在するトレンチ・ゲート構造体150は、高濃度ドープの多結晶シリコン層、及び/若しくは金属含有層を含んでもよく、又はこの層から構成されてもよい導電性ゲート電極155を備える。ゲート電極155は、ゲート端子を形成し、又はゲート端子に電気的に接続若しくは結合されるゲート・メタライゼーションに電気的に接続されてもよい。
【0130】
ゲート誘電体159が、トレンチ・ゲート構造体150の少なくとも片側に沿って、炭化ケイ素体100からゲート電極155を分離する。ゲート誘電体159は、熱成長若しくは堆積された酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、堆積された別の誘電性材料、又はその任意の組合せを含んでもよく、又はそれから構成されてもよい。閾値電圧が1.0V~8Vの範囲内であるトランジスタ・セルTCを得るように、ゲート誘電体159の厚さが選択されてもよい。トレンチ・ゲート構造体150は、ゲート電極155とゲート誘電体159のみを備えてもよく、又はゲート電極155とゲート誘電体159に加えて、導電性及び/若しくは誘電性のさらなる構造体を備えてもよい。
【0131】
トレンチ・ゲート構造体150は、ストライプ形状である。すなわち、横方向の第1の方向に沿った、トレンチ・ゲート構造体150の長さは、この第1の方向に直交する横方向の第2の方向に沿った、トレンチ・ゲート構造体150の幅よりも長い。
【0132】
トレンチ・ゲート構造体150は、間隔を等しく空けてもよく、幅が等しくてもよく、また規則的なストライプのパターンを形成してもよく、トレンチ・ゲート構造体150の中心間距離は、1μm~10μm、たとえば2μm~5μmの範囲でもよい。トレンチ・ゲート構造体150の長さは、数ミリメートルまででもよい。トレンチ・ゲート構造体150の垂直方向の延在寸法は、0.3μm~5μm、たとえば0.5μm~2μmの範囲でもよい。底部では、トレンチ・ゲート構造体150は丸みを帯びていてもよい。
【0133】
各トレンチ・ゲート構造体150の相対する側壁は、実質的に垂直方向104に沿って延びてもよく、又は垂直方向104に対してテーパ角度だけ傾斜してもよい。後者の場合では、トレンチ・ゲート構造体150は、第1の表面101までの距離が増加するにつれて先細になってもよい。結晶軸の配列に従って、且つ/又は軸外角度に従って、第1の表面での側壁と垂直方向104がなすテーパ角度が選択されてもよい。たとえば、第1の側壁と垂直方向がなすテーパ角度の絶対値は、せいぜい±1°だけ軸外角度の絶対値と異なっていてもよい(たとえば、4H-SiCの場合、少なくとも3°~せいぜい5°に及ぶことがある)。しかし、テーパ角度は、配向が軸外角度と異なってもよい。第1の側壁と相対する第2の側壁と垂直方向がなすテーパ角度は、第1の側壁のテーパ角度と相対して配向されてもよい。テーパ角度が大きくなるにつれて、第1の表面から開始するゲート・トレンチ構造体150は狭くなる。
【0134】
一般に、トレンチ・ゲート構造体150のうちの少なくとも第1の側壁は、電荷担体移動度が高い(たとえば、{11-20}又は{1-100}の結晶面のうちの一方である)、炭化ケイ素体の結晶面に沿って実質的に延びてもよい。第1の側壁はアクティブ状態の側壁でもよく、すなわち、チャネル領域が、第1の側壁に沿って延びてもよい。実施形態によっては、(たとえば、垂直方向のトレンチ・ゲート構造体150の場合)、第2の側壁はまた、アクティブ状態の側壁でもよい。他の実施形態では、第2の側壁は非アクティブ状態の側壁でもよい。
【0135】
隣接するトレンチ・ゲート構造体150の間の各SiCメサは、ソース領域110、ボディ領域120、及び遮蔽領域140の少なくとも一部を含む。ソース領域110は、第1の表面100とボディ領域120の間にあり、トレンチ・ゲート構造体150のアクティブ状態の側壁151と直接接触している。
【0136】
ボディ領域120は、ソース領域110とドリフト構造体130を分離する。ボディ領域120及びドリフト構造体130は、第1のpn接合部pn1を形成する。ボディ領域120及びソース領域110は、第2のpn接合部pn2を形成する。ボディ領域120は、第1のトレンチ・ゲート構造体150のアクティブ状態の側壁151に直接隣接する。ボディ領域120の垂直方向の延在寸法は、トランジスタ・セルTCのチャネルの長さに対応し、0.2μm~1.5μmの範囲でもよい。
【0137】
炭化ケイ素体100の表側の第1の負荷電極310は、ソース領域110及びボディ領域120に電気的に接続される。層間絶縁膜250のストライプ形状部分は、トレンチ・ゲート構造体150での第1の負荷電極310とゲート電極155を分離する。第1の負荷電極310は、第1の負荷端子を形成してもよく、又はこれに電気的に接続若しくは結合されてもよく、この端子は、MCDのアノード端子、又はMOSFETのソース端子Sでもよい。
【0138】
接触部分139と低抵抗オーム接点を形成する第2の負荷電極320は、第2の負荷端子を形成してもよく、又はこれに電気的に接続若しくは結合されてもよく、この端子は、MCDのカソード端子、又はMOSFETのドレイン端子Dでもよい。
【0139】
ボディ領域120とトレンチ・ゲート構造体150の非アクティブ状態の側壁152との間に遮蔽領域140の第1の部分が配置される。遮蔽領域140の第2の部分が、第2のトレンチ・ゲート構造体150と垂直方向にオーバラップしてもよい。すなわち、遮蔽領域140の第2の部分は、トレンチ・ゲート構造体150の下、たとえば、トレンチ・ゲート構造体150と第2の表面102の間に形成される。遮蔽領域140は、第1の負荷電極310に電気的に接続又は結合される。
【0140】
遮蔽領域140での最大ドーパント濃度は、ボディ領域120での最大ドーパント濃度よりも高くてもよい。遮蔽領域140での垂直方向のドーパント濃度プロファイルは、トレンチ・ゲート構造体150の下方の位置で極大値を有する。非アクティブ状態の側壁152に沿って、遮蔽領域140でのドーパント濃度は、相対的に高くてもよく、すなわち、アクティブ状態の側壁151に沿って、ボディ領域120でのドーパント濃度よりも少なくとも10倍高くてもよい。
【0141】
遮蔽領域140及びドリフト構造体130は、炭化ケイ素デバイス500に統合フライバック・ダイオード機能を提供することができる第3のpn接合部pn3を形成する。さらに、炭化ケイ素デバイス500の阻止状態では、トレンチ・ゲート構造体150の下方にある遮蔽領域140の第2の部分は、アクティブ状態の側壁151に沿って、第2の負荷電極320に印加される電位から、ゲート誘電体159のアクティブ状態の部分を遮蔽してもよい。
【0142】
図に示した炭化ケイ素デバイス500は、nチャネルのSiC-TMOSFETであり、第1の負荷電極310は、ソース端子Sを形成し、又はこれに電気的に接続若しくは結合され、第2の負荷電極320は、ドレイン端子Dを形成し、又はこれに電気的に接続若しくは結合される。図5Aに示すように、炭化ケイ素デバイス500は、複数のトランジスタ・セルTC、及び複数のトレンチ・ゲート構造体150を備える。トレンチ・ゲート構造体150は、長手軸が断面に直交するストライプ形状である。
【0143】
トランジスタ・セルTCのボディ領域120は、第1のボディ部分121、及び隣接するトレンチ・ゲート構造体150から第1のボディ部分121を分離する第2のボディ部分122を含む。
【0144】
図5Bには、図5Aのボディ領域120を通る線B-Bに沿った水平方向のドーパント勾配420が示してある。横座標では、x1は、ソース領域110と遮蔽領域140の間の横方向pn接合部の位置を指す。x2は、第1のボディ部分と第2のボディ部分の間の単極接合部の位置を示す。x2は、アクティブ状態の側壁の位置を示す。w3は、第1のボディ部分と第2のボディ部分との間の遷移領域423の横方向の延在寸法を示す。
【0145】
ボディ領域120を通る水平方向のドーパント勾配420は、水平方向のドーパント勾配がほぼ一定である第1の区間421を含み、また水平方向のドーパント勾配がほぼ一定ではあるが、第1の区間421においてよりも著しく低い第2の区間422を含む。第1の区間421は、第1のボディ部分121に対応し、遮蔽領域140に直接隣接する。第2の区間422は、第2のボディ部分122に対応し、トレンチ・ゲート構造体150に直接隣接する。線B-Bに沿った断面によって画定される水平面では、第1のボディ部分121の水平延在寸法w1は、ボディ領域120の水平延在寸法w0全体の少なくとも20%である。
【0146】
第1の区間421での平均ドーパント濃度N1は、第2の区間422での平均ドーパント濃度N2の少なくとも10倍の高さである。第1のボディ部分と第2のボディ部分の間の遷移領域423内では、第1の区間421での平均ドーパント濃度N1が、第2の区間422での平均ドーパント濃度N2まで減少する。遷移領域423は、第1のボディ部分の平均正味ドーパント濃度の90%で開始し、第2のボディ部分の基準ドーパント濃度、及び/又は平均正味ドーパント濃度の110%で終了してもよい。遷移領域423内の平均ドーパント濃度の低下は、比較的急峻でもよい。遷移領域の横方向の延在寸法w3は、ソース領域110の横方向の延在寸法よりも著しく小さくてもよい。第1のボディ部分121での平均ドーパント濃度N1は、遮蔽領域140の直接隣接する部分でのドーパント濃度に等しくてもよく、又はこの濃度にほぼ等しくてもよい。
【0147】
図6A及び図6Bには、比較例による炭化ケイ素体900の各部分、及び一実施形態による炭化ケイ素体100の各部分の対応する断面図が示してある。
【0148】
図6Aの比較炭化ケイ素体900には、ソース領域110の下方に、横方向にほぼ均一にドープされたボディ領域120が示してある。図6Bの炭化ケイ素体100では、ボディ領域120は、明らかに比較的高濃度にドープされた第1のボディ部分121、及び第1のボディ部分121とトレンチ・ゲート構造体150の間に比較的低濃度にドープされた第2のボディ部分122を備える。第1のボディ部分121は、ソース領域110の横方向延在部の50%を超えて延在する。
【0149】
図6Cでは、破線は、図6Aの線C-Cに沿った水平ドーパント・プロファイル601を示し、実線は、図6Bの線C-Cに沿った水平ドーパント・プロファイル602を示す。横座標では、x1は、ボディ接触域126とソース領域110の間の横方向pn接合部の位置を指し、x12は、図6Aでの遮蔽領域140とボディ領域120の間の接合部の位置であり、x2は、図6Bでの第1のボディ部分121と第2のボディ部分122との間の単極接合部の位置である。x3及びx4は、トレンチ・ゲート構造体150の縁部を示す。
【0150】
遮蔽領域140の境界面に沿ったドーパント濃度N1は、たとえば、1E+17cm-3~1E+19cm-3の範囲、たとえば、1E+18cm-3~5E+18cm-3の範囲でもよい。トレンチ・ゲート構造体150に沿った第2のボディ部分122のドーパント濃度は、遮蔽領域140における濃度よりも、少なくとも1桁は低くてもよい。線601と線602の間の領域は、阻止モードで形成された空乏領域での静止電荷担体の電荷を補償するのに利用可能な追加の電荷を表す。
【0151】
図6Dでは、破線は、図6Aの線D-Dに沿った垂直方向のドーパント・プロファイル611を示し、実線は、図6Bの線D-Dに沿った垂直方向のドーパント・プロファイル612を示す。横座標では、y2は、図6Aでのソース領域110とボディ領域120の間のpn接合部の位置を示し、y4は、図6Aでのボディ領域120と電流拡散領域137の間のpn接合部の位置を示す。y1は、図6Bでのソース領域110と第1のボディ部分121との間のpn接合部の位置を示し、y3は、図6Bでの第1のボディ部分121と電流拡散領域137の間のpn接合部の位置を示す。
【0152】
図6Bの炭化ケイ素体100では、異なる注入エネルギーでの2つの注入を使用して、比較的一定である垂直方向のドーパント・プロファイル612を有する第1のボディ部分121を形成し、このことは、ボディ領域120の垂直方向の延在部の少なくとも60%にわたって、最大値から50%を下回るドーパントの変化を示す。y1とy4の間にある第1のボディ部分121の垂直方向の平均延在寸法は、第2のボディ部分122の垂直方向の最大延在寸法より大きくてもよい。
【0153】
図6E及び図6Fには、基準阻止電圧で、図6A及び図6Bの炭化ケイ素デバイス500の阻止モードで形成された空乏領域の境界621、622が示してある。
【0154】
図6Aの比較例において空乏化されたボディ領域120の大部分は、図6Bの炭化ケイ素体100では空乏化されず、したがって、ゲート誘電体159において障壁高さを低減する電子によって静止電荷担体を補償する必要が少なくなる。
【符号の説明】
【0155】
100 炭化ケイ素体
101 第1の表面
102 第2の表面
104 垂直方向
110 ソース領域
120 ボディ領域
121 第1のボディ部分
122 第2のボディ部分
126 ボディ接触域
130 ドリフト構造体
131 ドリフト領域
137 電流拡散領域
139 接触部分
140 遮蔽領域
141 第1の部分領域
142 第2の部分領域
143 第3の部分領域
145 埋込み済みの部分領域
148 深い遮蔽部分
150 トレンチ・ゲート構造体
151 側壁
152 側壁
155 ゲート電極
159 ゲート誘電体
210 ソース区域
211 第1のソース部分
212 第2のソース部分
213 第3のソース部分
214 第4のソース部分
250 層間絶縁膜
310 第1の負荷電極
320 第2の負荷電極
420 水平方向のドーパント勾配
421 第1の区間
422 第2の区間
423 遷移領域
430 ボディ接触注入マスク
435 開口部
440 深い注入マスク
445 開口部
450 ボディ機能強化注入マスク
451 注入軸
455 開口部
456 マスク・バー
500 炭化ケイ素デバイス
601 水平ドーパント・プロファイル
602 水平ドーパント・プロファイル
611 垂直方向のドーパント・プロファイル
612 垂直方向のドーパント・プロファイル
621 境界
622 境界
710 ソース層
720 ボディ層
737 電流拡散層
900 炭化ケイ素体
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F