(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】テープ剥離装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240827BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/304 622J
(21)【出願番号】P 2020195916
(22)【出願日】2020-11-26
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 邦重
【審査官】小山 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-142245(JP,A)
【文献】特開2019-110189(JP,A)
【文献】特開2006-143351(JP,A)
【文献】特開平11-016862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に保護テープを貼着したウェーハの下面を保持する保持面を有する保持テーブルと、帯状の剥離テープをロール状に巻いたロールテープを回転可能に支持する少なくとも2つのロール支持部と、該ロールテープの外周から引き出された該剥離テープを把持する把持部と、該把持部が把持する該剥離テープを該保護テープの外周部分に貼着する貼着部と、を備え、該保護テープの外周部分に貼着した該剥離テープを把持した該把持部とウェーハとを互いが離間する方向に相対的に移動させ該保護テープを剥離するテープ剥離装置であって、
該把持部が把持可能に一方の該ロール支持部に支持された一方の該剥離テープと他方の該ロール支持部に支持された他方の該剥離テープとを切り替える切り替え手段を備え、
該切り替え手段は、
該ロール支持部と、該ロール支持部から引き出された該剥離テープを保持するテープ保持部と、該テープ保持部と該貼着部との間で該剥離テープを切断するカッターと、を備える剥離テープ供給部を少なくとも2つ配置するプレートと、
該テープ保持部が保持している該剥離テープの端を該把持部が把持可能に該プレートを移動させる移動手段と、を備えるテープ剥離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハから保護テープを剥離するテープ剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示されているテープ剥離装置は、剥離テープをウェーハの一方の面の全面を保護するために貼着している保護テープ(BGテープ)の表面の外周部分に貼着させ、剥離テープの端を把持してウェーハから相対的に離間する方向に引っ張ることによって、ウェーハから保護テープを剥離している。
【0003】
このような剥離テープは、例えば、熱によって貼着可能な状態にするヒートシールを用いたり、粘着層を一方の面に備える粘着テープを用いたりすることがある。そして、このように貼着方法が異なる剥離テープを、保護テープの種類によって使い分けることがある。また、貼着方法が同じ別種のヒートシールを用いる場合において、保護テープの種類、又はウェーハのデバイスによって加える熱の温度を変えたい事があり、加える熱の温度を異なる熱の温度としても保護テープを剥離可能に貼着できるように、別種のヒートシールを使い分けることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような品種の異なる剥離テープの切り替えは、作業者が手作業で行っており、作業者の負担が大きく、また、切り替え作業中のテープ剥離装置の停止時間が長くなってしまうという問題がある。
したがって、テープ剥離装置においては、作業者による剥離テープの切り替え作業を無くすという解決課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明は、上面に保護テープを貼着したウェーハの下面を保持する保持面を有する保持テーブルと、帯状の剥離テープをロール状に巻いたロールテープを回転可能に支持する少なくとも2つのロール支持部と、該ロールテープの外周から引き出された該剥離テープを把持する把持部と、該把持部が把持する該剥離テープを該保護テープの外周部分に貼着する貼着部と、を備え、該保護テープの外周部分に貼着した該剥離テープを把持した該把持部とウェーハとを互いが離間する方向に相対的に移動させ該保護テープをウェーハから剥離するテープ剥離装置であって、該把持部が把持可能に一方の該ロール支持部に支持された一方の該剥離テープと他方の該ロール支持部に支持された他方の該剥離テープとを切り替える切り替え手段を備え、該切り替え手段は、該ロール支持部と、該ロール支持部から引き出された該剥離テープを保持するテープ保持部と、該テープ保持部と該貼着部との間で該剥離テープを切断するカッターと、を備える剥離テープ供給部を少なくとも2つ配置するプレートと、該テープ保持部が保持している該剥離テープの端を該把持部が把持可能に該プレートを移動させる移動手段と、を備えるテープ剥離装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るテープ剥離装置は、把持部が把持可能に一方のロール支持部に支持された一方の剥離テープと他方のロール支持部に支持された他方の剥離テープとを切り替える切り替え手段を備え、切り替え手段は、ロール支持部と、ロール支持部から引き出された剥離テープを保持するテープ保持部と、テープ保持部と貼着部との間で剥離テープを切断するカッターと、を備える剥離テープ供給部を少なくとも2つ配置するプレートと、テープ保持部が保持している剥離テープの端を把持部が把持可能にプレートを移動させる移動手段と、を備えることで、例えば予め保護テープの品種と剥離テープの品種との対応表、又はデバイスと剥離テープの品種との対応表等を装置に記憶させおくことにより、テープ剥離装置自体が、使用する剥離テープをウェーハに貼着されている保護テープ、またはデバイスに対応した適切な剥離テープに切り替えることができる。そのため、作業者による剥離テープの切り替え作業を無くすことができ、テープ剥離装置を作業者による切り替え作業のために長時間停止させる必要もなくなる。また、保護テープと剥離テープ、又はデバイスと剥離テープとの対応していない組み合わせが生じて、デバイスを破損させたり、貼着力が弱く保護テープを剥離できなかったりするという事態が発生することを抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】第1剥離テープを切断する際の第1テープ保持部の状態を説明する側面図である。
【
図3】第1剥離テープを把持部で把持させる際の第1テープ保持部の状態を説明する側面図である。
【
図4】第2剥離テープを把持部が把持する状態を説明する側面図である。
【
図5】第2剥離テープを把持した把持部が、ウェーハの保護テープに第2剥離テープを貼着する貼着位置までX軸方向において移動する場合を説明する側面図である。
【
図6】テープ剥離装置において保護テープに貼着する剥離テープを第2剥離テープから第1剥離テープに切り替えるために、第2剥離テープを第2カッター及び第2テープ保持部を用いて切断している状態を説明する側面図である。
【
図7】切断された第2剥離テープが第2テープ保持部で吸引保持された状態を説明する側面図である。
【
図8】切り替え手段のプレートを移動手段によって下降させて、把持部が第1テープ保持部で保持されている第1剥離テープの端を把持可能な状態にする場合を説明する側面図である。
【
図9】第2剥離テープから第1剥離テープに切り替えて、把持部が第1剥離テープを把持した状態を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示すウェーハ90は、例えば、シリコンを母材とする外形が円形の半導体ウェーハであり、その上面900は、直交差する複数の分割予定ラインで格子状に区画されており、格子状に区画された各領域にはIC等のデバイスがそれぞれ形成されている。
ウェーハ90の上面900全面を覆うように貼着されている保護テープ91は、本実施形態においては、例えば、樹脂(例えば、ポリオレフィン系樹脂等)からなる基材層と基材層下の粘着層(糊層)とを備えている。
なお、ウェーハ90はシリコン以外にガリウムヒ素、サファイア、セラミックス、樹脂、窒化ガリウム又はシリコンカーバイド等で構成されていてもよいし、保護テープ91も上記例に限定されるものではない。
【0010】
例えば、ウェーハ90は上面900の反対面である下面901にウェーハ90よりも大径の支持テープ93が貼着されている。そして、支持テープ93の糊層の外周部がリングフレーム94にも貼着されていることで、ウェーハ90は、支持テープ93を介してリングフレーム94に支持され、リングフレーム94によるハンドリングが可能である。なお、ウェーハ90は、リングフレーム94によって支持されていなくてもよい。
【0011】
図1に示す本発明に係るテープ剥離装置1は、帯状の第1剥離テープ83、又は帯状の第2剥離テープ84を用いて、ウェーハ90の
図1における上面900に貼着されている保護テープ91を剥離するテープ剥離装置の一例であり、上面900に保護テープ91を貼着したウェーハ90の下面901を保持する保持面302を有する保持テーブル30と、帯状の第1剥離テープ83をロール状に巻いた第1ロールテープ85、帯状の第2剥離テープ84をロール状に巻いた第2ロールテープ86をそれぞれ回転可能に支持する少なくとも2つの第1ロール支持部113、第2ロール支持部114と、第1ロールテープ85の外周から引き出された第1剥離テープ83、又は第2ロールテープ86の外周から引き出された第2剥離テープ84を把持する把持部60と、把持部60が把持する例えば第2剥離テープ84を保護テープ91の外周部分に貼着する貼着部66と、を備えている。
【0012】
第1剥離テープ83は、例えば、保護テープ91の外周部分に熱を加えて接着される接着剤層と基材とからなる2層構造のヒートシールである。基材の材質は、例えばポリエチレンテレフタレート等の樹脂からなる。ホットメルトと呼ばれ加熱されることで粘着力を発現する接着剤層は、例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂で構成されている。第1剥離テープ83の保護テープ91に対する粘着力は、保護テープ91のウェーハ90に対する粘着力よりも強く設定されている。かかる第1剥離テープ83は、内側(引き出された状態における下面側)に接着剤層が位置する状態で、円筒855に巻回されて第1ロールテープ85となっている。
【0013】
なお、第1剥離テープ83は、ヒートシールに限定されない。また、第1剥離テープ83は、例えば、一層のポリオレフィン系の樹脂テープであり、保護テープ91を貼着させる糊層を備えないものであってもよい。この場合、室温では第1剥離テープ83は、保護テープ91に貼着できないが、ポリオレフィン系の樹脂テープは熱可塑性を有するため、所定の圧力を印加し押圧しながら保護テープ91と接合させた状態で融点近傍の温度まで加熱すると、部分的に溶融して保護テープ91に接着できる。
【0014】
例えば、第1剥離テープ83を、品種1の剥離テープとする。また、第2剥離テープ84を、品種2の剥離テープとする。品種2の第2剥離テープ84は、例えば、品種1の第1剥離テープ83とホットメルトである接着剤層の種類が異なり、保護テープ91に対する熱接着の際に加えられる熱の温度が異なる。第2剥離テープ84が円筒866に巻回されてなる第2ロールテープ86は、上記相違点以外は第1ロールテープ85と同様の構成となっている。
【0015】
テープ剥離装置1は、把持部60が把持可能に一方の第1ロール支持部113に支持された一方の第1剥離テープ83と他方の第2ロール支持部114に支持された他方の第2剥離テープ84とを切り替える切り替え手段11を備えている。そして、切り替え手段11は、
図1に示す例えば矩形状の大きなプレート110を備えている。
Z軸方向に水平に延在するプレート110の紙面手前側の前面には、第1剥離テープ83がロール状に巻回されている円筒855に挿入するシャフトである第1ロール支持部113、及び第2剥離テープ84がロール状に巻回されている円筒866に挿入するシャフトである第2ロール支持部114が上下に二本並べて配設されており、第1ロール支持部113(第2ロール支持部114)は、図示しない回転手段によってそれぞれY軸方向の回転軸を軸に回転可能となっている。
【0016】
プレート110は、
図1に示す第1テープ保持部71(第2テープ保持部72)が保持している第1剥離テープ83(第2剥離テープ84)の端を把持部60が把持可能にプレート110を例えばZ軸方向に上下動させる移動手段117を備えている。移動手段117は、例えば、電動スライダー等である。
【0017】
プレート110の前面には、第1ロール支持部113(第2ロール支持部114)が支持している第1ロールテープ85(第2ロールテープ86)の残量を検出する第1残量検出部115(第2残量検出部116)が配設されている。第1残量検出部115(第2残量検出部116)は、例えば、受光部と投光部とからなる透過型の光センサ等であり、受光部と投光部とがX軸方向において第1ロールテープ85(第2ロールテープ86)を挟むように配設されている。例えば第1ロールテープ85が減っていくことで、第1ロールテープ85の直径が小さくなっていき、投光部が照射した検知光の受光部における受光量が第1ロールテープ85により遮られずに増加することで、第1残量検出部115は第1ロールテープ85の残量が所定量以下になった事を検出する。
【0018】
プレート110の前面の第1ロール支持部113(第2ロール支持部114)から見てテープ送り出し方向となる-X方向側の近傍位置には、一対のガイドローラ14(一対のガイドローラ15)がそれぞれ配設されており、第1ロールテープ85(第2ロールテープ86)から引き出された第1剥離テープ83(第2剥離テープ84)を挟み込んだ状態で、第1テープ保持部71(第2テープ保持部72)に向かってテンションをかけつつガイドして送り出すことができる。
【0019】
第1テープ保持部71と第2テープ保持部72とは、同一の構成となっているため、以下に第1テープ保持部71の構成についてのみ説明する。
図2、
図3に示すように、第1テープ保持部71は、例えば、ポーラス部材等からなり第1剥離テープ83を吸着する吸着部710と、吸着部710を支持する枠体711とを備える。吸着部710は、エジェクター機構又は真空発生装置等の吸引源79に連通し、吸引源79が吸引することで生み出された吸引力が、吸着部710の下面である保持面712に伝達されることで、第1テープ保持部71は保持面712で第1剥離テープ83を吸引保持することができる。
【0020】
例えば、第1テープ保持部71の枠体711には、第1剥離テープ83を
図1に示す第1カッター17で切断する際の切り台としての機能も有する回動部材74が取り付けられている。回動部材74は、例えば側面視略L字状に形成されており、一端側がベアリング及び回動軸741を介して枠体711の側面側に取り付けされており、他端側を第1剥離テープ83の上面に当接させた状態で、
図1に示す第1カッター17が回動部材74の外側面に沿って例えば上昇することで回動部材74を切り台として機能させて第1剥離テープ83を切断面が回動部材74の外側面と略面一になるように適切に切断することが可能となる。
また、
図3に示すように、第1剥離テープ83を切断した後、回動部材74を持ち上げるように回動させて第1剥離テープ83から回動部材74の他端側を離間させることで、第1テープ保持部71の枠体711のテープの送り方向側(-X方向側)に第1剥離テープ83の先端側を把持部60によって把持可能に所定長さ飛び出させた状態にすることができる。
【0021】
図1に示すように、プレート110の前面には、第1テープ保持部71(第2テープ保持部72)と貼着部66との間で第1剥離テープ83(第2剥離テープ84)を切断する第1カッター17(第2カッター18)が、電動スライダー等によって上下動可能に配設されている。また、第1カッター17(第2カッター18)は、例えば、Z軸方向の回転軸回りに回転可能となっており、-X方向において貼着部66に対向する状態と、+X方向において第1テープ保持部71(第2テープ保持部72)に対向する状態とを切り替えることが可能となっていてもよい。
なお、第1カッター17(第2カッター18)は、Y軸方向に移動して第1カッター17(第2カッター18)を切断しても良い。
なお、切り替え手段11は、第1カッター17のみを備えており、第1カッター17が第1剥離テープ83に加えて第2剥離テープ84も切断可能となっていてもよい。
【0022】
上記のように説明してきた第1ロール支持部113、第1テープ保持部71、及び第1カッター17によって第1剥離テープ供給部21が形成され、第2ロール支持部114、第2テープ保持部72、及び第2カッター18によって第2剥離テープ供給部22が形成され、切り替え手段11は、第1剥離テープ供給部21及び第2剥離テープ供給部22が配置されたプレート110と、プレート110を上下動させる移動手段117とを備えている。
【0023】
図1に示すように貼着部66のX軸方向における前方には、貼着用カッター68が配設されている。貼着用カッター68は、鋭利な刃先を有しているとともに、該刃先を下端としてY軸方向(紙面奥側方向)に直線的に第1剥離テープ83や第2剥離テープ84の幅以上の長さで延在しており、アクチュエータ等によってZ軸方向に昇降可能となっている。
なお、貼着用カッター68の刃先が入り込む逃げ溝を備え第1剥離テープ83を支持する切り台を貼着用カッター68の下方に配置してもよいし、貼着用カッター68がY軸方向に移動しつつ第1剥離テープ83を切断する構成となっていてもよい。
【0024】
貼着部66は、例えば、所定の金属等からなり外形が略直方体状に形成されており、Y軸方向に直線的に第1剥離テープ83や第2剥離テープ84の幅以上の長さで延在しており、アクチュエータ等によってZ軸方向に昇降可能となっている。貼着部66が下降することで、その下面から第1剥離テープ83に所定の押圧力を加えつつ保護テープ91に熱接着することができる。
【0025】
貼着部66の例えば両脇には、一対のヒータ667が配設されている。例えば、一対のヒータ667は、図示しない電源から所定の電圧が印加され発熱体に電流が流れることで赤外線を放射し発熱する赤外線ヒータであり、セラミックヒータ又はハロゲンヒータ等であってもよく、貼着部66の下部、すなわち、第1剥離テープ83との接触部を短時間で均等に加熱できる。
なお、ヒータ667が、貼着部66に内蔵されていてもよい。
【0026】
把持部60は、例えば、
図1に示す把持部移動手段16によって、X軸方向に往復移動可能となっている。把持部移動手段16は、X軸方向に延在するガイドレール164と、把持部60が固定されガイドレール164においてX軸方向にスライド移動可能なスライダー165と、スライダー165を移動させる図示しないボールネジ機構とにより構成されている。
【0027】
把持部60は、例えば、側面視略コの字状の固定台602と、固定台602のコの字状の内部空間に配設され固定台602の内部下面に対して接近又は離間可能な昇降爪603とを備えている。昇降爪603をアクチュエータ605によって固定台602に対して接近させることにより、例えば第1テープ保持部71が吸引保持する第1剥離テープ83の先端をその間に把持させることができる。
【0028】
把持部60の移動経路下方には、ウェーハ90及びリングフレーム94を保持する保持手段3がX軸方向に往復移動可能に配設されている。本実施形態において、保持手段3は、ウェーハ90を吸引保持する保持テーブル30と、リングフレーム94を例えば挟持固定するリングフレーム保持部31とを備えている。
【0029】
リングフレーム保持部31は、平面視円環状であり、その平坦な上面に載置されたリングフレーム94を回動可能なクランプ318と共に挟持固定できる。クランプ318は、例えば、リングフレーム保持部31の周方向に90度間隔を空けて4つ配設されている。
例えば、リングフレーム保持部31及びクランプ318は、アクチュエータ33によって上下動可能となっている。なお、リングフレーム保持部31、クランプ318、及びアクチュエータ33は無くてもよい。
【0030】
リングフレーム保持部31に囲繞されリングフレーム94の開口内でウェーハ90を吸引保持する保持テーブル30は、平面視円形状であり、その平坦な上面はポーラス部材等からなり図示しない吸引源に連通する保持面302となる。
【0031】
保持テーブル30及びリングフレーム保持部31等は、その下方に配設された保持手段移動手段34によってX軸方向に直動移動可能となっている。保持手段移動手段34は、X軸方向に延在するガイドレール341と、ガイドレール341に沿ってX軸方向に移動可能な移動基台342と、移動基台342を移動させる図示しないボールネジ機構等とを備えている。
【0032】
把持部60の移動経路の-X方向端側の下方の位置には、例えば第1剥離テープ83と共にウェーハ90から剥離した保護テープ91を廃棄するゴミ箱19が配置されている。ゴミ箱19は、上側が開口している。ゴミ箱19の上部には、例えば、ゴミ箱19が保護テープ91等で満杯になったことを検知する光センサ等が配設されていてもよい。ゴミ箱19が満杯になったか否かは、重量センサで検知してもよいし、作業者が確認してもよい。
【0033】
例えば、
図1に示すように、テープ剥離装置1は、装置全体の制御を行う制御手段5を備えている。CPU等で構成される制御手段5は、テープ剥離装置1の各構成要素に電気的に接続されている。制御手段5は、一例として、プレート110を上下移動させる移動手段117、及び第1残量検出部115(第2残量検出部116)等に電気的に接続されており、制御手段5による制御の下で、プレート110の上下動動作が実施され、また、制御手段5に第1残量検出部115(第2残量検出部116)から検出信号が送られてくる。
【0034】
例えば、制御手段5のメモリ等からなる記憶媒体には、保護テープ91の品種ごとの基材層に対する剥離テープの熱接着の際の加熱温度の違い等に基づく対応する剥離テープの品種を予め定めた保護テープ用対応表50、及びウェーハ90に形成されたデバイスごとの剥離テープの熱接着の際の加熱温度の違い等に基づく対応する剥離テープの品種を予め定めたデバイス用対応表51が記憶されている。
【0035】
以下に、
図1に示すテープ剥離装置1の動作例について説明する。
まず、例えば作業者が、ウェーハ90に貼着されている例えば保護テープ91の品種を選択して、図示しない入力手段(テープ剥離装置1付属のタッチパネルやキーボード)を介して該品種の情報を制御手段5に入力する。制御手段5は、保護テープ用対応表50を参照して、保護テープ91の品種に対応する剥離テープが、例えば、第2剥離テープ84であると選択する。
【0036】
図1に示すように、ウェーハ90が保持手段3の保持テーブル30に互いの中心を略合わせて載置されるとともに、図示しない吸引源が作動し、保持テーブル30の保持面302でウェーハ90が吸引保持される。並行して、リングフレーム保持部31とクランプ318とによって、ウェーハ90を支持するリングフレーム94が挟持固定される。
【0037】
例えば、
図4に示すように、予め、図示しない回転手段により第2ロール支持部114により支持されている第2ロールテープ86を正転方向(例えば、紙面手前から見て時計回り方向)に回転させながら、帯状となった第2剥離テープ84が一対のガイドローラ15の間に通され、一対のガイドローラ15によって-X方向に送り出される。そして、吸引源79から吸引力が伝達された第2テープ保持部72の保持面722で、第2剥離テープ84の先端が吸引保持された状態となっている。また、第2テープ保持部72の回動部材74が持ち上げられており、第2テープ保持部72の保持面722から第2剥離テープ84の先端が所定長さはみ出た状態になっている。
同様に、第1剥離テープ83も第1ロールテープ85から引き出されて、先端が第1テープ保持部71によって吸引保持された状態になっている。
【0038】
まず、
図4に示す移動手段117がZ軸方向にプレート110を移動させて、第2テープ保持部72で保持されている第2剥離テープ84の先端の高さ位置が固定台602の内部下面の高さ位置に略合致するように、把持部60と第2剥離テープ84とのZ軸方向における位置合わせが行われる。
【0039】
次いで、又は上記Z軸方向における高さ位置合わせ動作と並行して、把持部移動手段16によって把持部60が+X方向に移動して、第2剥離テープ84の先端が固定台602の内部下面上に所定長さ載るように、把持部60と第2剥離テープ84とのX軸方向における位置合わせが行われる。そして、把持部60の昇降爪603が下降することで、第2剥離テープ84の先端を昇降爪603と固定台602との間で把持する。
【0040】
把持部60が第2剥離テープ84の先端を把持した後、第2テープ保持部72が第2剥離テープ84の吸引保持を解除する。そして、
図5に示すように、第2ロール支持部114が所定の回転速度で第2ロールテープ86を回転させつつ、回転自在の一対のガイドローラ15が把持部60と第2ロールテープ86との間の第2剥離テープ84にテンションをかけつつ-X方向に送り出し、把持部移動手段16が把持部60を-X方向へと移動させていき第2ロールテープ86から第2剥離テープ84を-X方向へと引き出していく。
【0041】
図5に示す第2剥離テープ84を引き出す把持部60が
図1、
図5に示す貼着位置P1まで移動した後、X軸方向における把持部60の移動が一度停止される。また、
図1に示すウェーハ90を吸引保持した保持テーブル30が+X方向に移動して、例えば、ウェーハ90に貼着された保護テープ91の+X方向側の外周部分の上方に+X方向側から順番に貼着用カッター68と、貼着部66及び一対のヒータ667と、第2剥離テープ84の先端側を把持した把持部60とが位置付けられた状態になる。
【0042】
一対のヒータ667に所定の電圧が印加されて電流が流されて一対のヒータ667が発熱し、貼着部66が、一対のヒータ667によって加熱される。一対のヒータ667は、
図1、
図5においては貼着部66に接触していないが、貼着部66に接触していてもよい。一対のヒータ667による貼着部66の加熱中においては、貼着部66に内蔵されている図示しない温度センサが貼着部66の温度を計測する。貼着部66の温度が、予め設定された保護テープ91に対する第2剥離テープ84の好適な熱接着温度に達する。また、制御手段5の制御の下で、アクチュエータによって貼着部66が下降していく。
【0043】
図1、
図5に示す貼着部66を下降させ、貼着部66が保護テープ91の+X方向側の外周部分の上方において延在する第2剥離テープ84を下方に押し動かし、第2剥離テープ84の接着剤層を保護テープ91の上面の外周部分に接触させ、押し付けていく。予め熱接着温度まで加熱されている貼着部66により、第2剥離テープ84の接着剤層の粘着性を最適な状態で発現させて、第2剥離テープ84の先端側の接着剤層を、保持テーブル30に保持されたウェーハ90の保護テープ91の上面の外周部分に貼着する。
【0044】
次いで、
図1、
図5に示す貼着用カッター68が下降して、貼着用カッター68の刃先が第2剥離テープ84の貼着部分よりも後方の部分に切り込み、第2剥離テープ84を切断し帯状にする。貼着用カッター68が第2剥離テープ84を切断した後、貼着用カッター68及び貼着部66は、上昇して第2剥離テープ84から退避する。なお、貼着用カッター68下方の図示しない切り台上に切断側が先端となる第2剥離テープ84が載置された状態になっており、後述する新たなウェーハ90の保護テープ91に新たな第2剥離テープを貼着する際に、第2剥離テープ84の先端を把持部60によって把持可能となる。
【0045】
次に、
図1に示す保持手段移動手段34が保持手段3を+X方向に移動させていくとともに、把持部移動手段16が、保護テープ91の上面の+X方向側の外周部分に貼着された第2剥離テープ84の先端を把持した把持部60を-X方向へと移動させていく。即ち、保護テープ91の外周部分に貼着した第2剥離テープ84を把持した把持部60とウェーハ90とを互いが離間するX軸方向に相対的に移動させる。よって、第2剥離テープ84及び保護テープ91に付与される張力と、加熱された第2剥離テープ84の接着剤層の保護テープ91に対する粘着力とがウェーハ90の上面900に貼着される保護テープ91の貼着力より大きいことにより、ウェーハ90の上面900から保護テープ91をウェーハ90の+X方向側の外周部分から中心に向けて剥離していく。なお、保持手段3、又は把持部60のどちらか一方を固定して、保持手段3、又は把持部60をX軸方向に移動させることで、ウェーハ90から保護テープ91を剥離してもよい。
【0046】
ウェーハ90の上面900全面から保護テープ91が剥離された後、剥離した保護テープ91及び第2剥離テープ84を把持した把持部60がゴミ箱19の上方まで移動して、第2剥離テープ84の把持を解除して、ゴミ箱19に剥離した保護テープ91ごと落下させる。
【0047】
図示しない搬送手段が保護テープ91が剥離されたウェーハ90を保持テーブル30上から搬出するとともに、保護テープ91が上面900に貼着された新たなウェーハ90を保持テーブル30上に載置し、貼着用カッター68下方の図示しない切り台上に先端側が載置された第2剥離テープ84の把持部60による把持を起点とし上記と同様の工程を繰り返して、ウェーハ90の上面900から保護テープ91を剥離していくことで、テープ剥離動作が滞りなく行われていき、複数枚のウェーハ90の各保護テープ91を次々に剥離していくことができる。
【0048】
複数枚のウェーハ90の各保護テープ91を次々に剥離した後、例えば、テープ剥離装置1の保持テーブル30上に搬送されるウェーハ90が、保護テープ91が貼着されているウェーハ90から、保護テープ91とは別種の
図1に示す保護テープ96が貼着されているウェーハ90に切り替わることがある。該切り替え情報は、例えば、作業者からテープ剥離装置1に入力される。なお、ウェーハ90の貼着されている該保護テープ91が保護テープ96に切り替えられたことの認識は、テープ剥離装置1自体が特開2018-049913号公報等に開示されている技術を用いて行ってもよい。例えば、保護テープ96は、保護テープ91に比べて、剥離テープを貼着させる際に熱を多く加えることができない種類のテープであり、保護テープ96に対する剥離テープの好適な熱接着温度は、保護テープ91に対する第2剥離テープ84の好適な熱接着温度よりも数度~数十度低い温度である。
【0049】
テープ剥離装置1の保持テーブル30上に新たに搬送されたウェーハ90に貼着されている保護テープが保護テープ91から保護テープ96に切り替わったことを認識した制御手段5は、保護テープ用対応表50を参照して、保護テープ96の品種に対応する剥離テープが、例えば、第1剥離テープ83であると選択する。
【0050】
そして、切り替え手段11が、把持部60が把持可能に一方の第2ロール支持部114に支持された一方の第2剥離テープ84とこれから使用する他方の第1ロール支持部113に支持された他方の第1剥離テープ83とを切り替える。
具体的には、
図6に示すように、第2テープ保持部72に配設された回動部材74が下がるように回動して自由端である他端側を第2剥離テープ84の上面に当接させる。そして、第2カッター18が、回転し第2テープ保持部72に対向する状態になった後、第2カッター18が回動部材74の外側面に沿って上昇することで回動部材74を切り台として機能させて第2剥離テープ84を適切に切断する。
【0051】
把持部60が先端を把持する第2剥離テープ84は、後端側が上記のように切断された後、ゴミ箱19の上方まで移動した把持部60によってゴミ箱19に廃棄される。
図7に示すように、第2剥離テープ84は、第2テープ保持部72によって吸引保持された状態が維持され、例えば、次に再び使用される際に第1剥離テープ83からの切り替えがスムーズに行えるようにされる。
【0052】
図8に示すように、移動手段117が-Z方向にプレート110を下降させて、第1テープ保持部71で保持されている第1剥離テープ83の先端の高さ位置が固定台602の内部下面の高さ位置に略合致するように、把持部60と第1剥離テープ83とのZ軸方向における位置合わせが行われる。また、第1テープ保持部71に配設された回動部材74が持ち上げられるように回動して、第1テープ保持部71の保持面712から、第1剥離テープ83の先端が所定長さ-X方向にはみ出た状態になる。
なお、Z軸方向に移動するプレート110は、第1テープ保持部71と第2テープ保持部72とを配置して、把持部60が第1剥離テープ83又は第2剥離テープ84を把持可能にZ軸方向に移動させてもよい。
【0053】
次いで、又は上記Z軸方向における位置合わせ動作と並行して、
図9に示すように、把持部移動手段16によって把持部60が+X方向に移動して、第1剥離テープ83の先端が固定台602の内部下面上に所定長さ載るように、把持部60と第1剥離テープ83とのX軸方向における位置合わせが行われる。そして、把持部60の昇降爪603が下降することで、第1剥離テープ83の先端を昇降爪603と固定台602との間で把持する。
【0054】
図9に示すように把持部60が第1剥離テープ83の先端を把持した後、第1テープ保持部71が第1剥離テープ83の吸引保持を解除する。そして、第1ロール支持部113が所定の回転速度で第1ロールテープ85を回転させつつ、回転自在の一対のガイドローラ14が把持部60と第1ロールテープ85との間の第1剥離テープ83にテンションをかけつつ-X方向に送り出し、把持部移動手段16が把持部60を-X方向へと移動させていき、第1ロールテープ85から第1剥離テープ83を-X方向へと引き出していく。
【0055】
その後の第1剥離テープ83のウェーハ90に貼着された保護テープ96への接着は、先に説明した第2剥離テープ84の場合と略同様に行われる。なお、保護テープ96に対する剥離テープの好適な熱接着温度は、保護テープ91に対する第2剥離テープ84の好適な熱接着温度よりも数度~数十度低い温度であるため、貼着部66の温度が、予め設定された保護テープ96に対する第1剥離テープ83の好適な熱接着温度に設定される。そして、先に説明した第2剥離テープ84を介した把持部60による保護テープ91の剥離と略同様に、第1剥離テープ83を介した把持部60による保護テープ96の剥離が実施されていく。
【0056】
上記のように本発明に係るテープ剥離装置1は、把持部60が把持可能に一方の第2ロール支持部114に支持された一方の第2剥離テープ84と他方の第1ロール支持部113に支持された他方の第1剥離テープ83とを切り替える切り替え手段11を備え、切り替え手段11は、第1ロール支持部113(第2ロール支持部114)と、第1ロール支持部113(第2ロール支持部114)から引き出された第1剥離テープ83(第2剥離テープ84)を保持する第1テープ保持部71(第2テープ保持部72)と、第1テープ保持部71(第2テープ保持部72)と貼着部66との間で第1剥離テープ83(第2剥離テープ84)を切断する第1カッター17(第2カッター18)と、を備える第1剥離テープ供給部21(第2剥離テープ供給部22)を配置するプレート110と、第1テープ保持部71(第2テープ保持部72)が保持している第1剥離テープ83(第2剥離テープ84)の端を把持部60が把持可能にプレート110を移動させる移動手段117と、を備えることで、例えば予め保護テープの品種と第1剥離テープ83(第2剥離テープ84)の品種との保護テープ用対応表50、又はデバイスと第1剥離テープ83(第2剥離テープ84)の品種とのデバイス用対応表51等を装置の制御手段5に記憶させおくことにより、テープ剥離装置1自体が、使用する第1剥離テープ83(第2剥離テープ84)をウェーハ90に貼着されている保護テープ、またはデバイスに対応した適切な第1剥離テープ83(第2剥離テープ84)に切り替えることができる。そのため、作業者による例えば第2剥離テープ84から第1剥離テープ83への切り替え作業を無くすことができ、テープ剥離装置1を作業者による切り替え作業のために長時間停止させる必要も無くなる。また、保護テープと第1剥離テープ83(第2剥離テープ84)、又はデバイスと第1剥離テープ83(第2剥離テープ84)との対応していない組み合わせが生じて、デバイスを破損させたり、貼着力が弱く保護テープを剥離できなかったりするという事態が発生することを抑止できる。
【0057】
なお、本発明に係るテープ剥離装置1は上記実施形態に限定されるものではなく、また、添付図面に図示されているテープ剥離装置1の各構成の形状等についても、これに限定されず、本発明の効果を発揮できる範囲内で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0058】
90:ウェーハ 900:ウェーハの上面 901:ウェーハの下面
91:保護テープ 93:支持テープ 94:リングフレーム 96:保護テープ
1:テープ剥離装置
11:切り替え手段 110:プレート 117:移動手段
21:第1剥離テープ供給部
113:第1ロール支持部
85:第1ロールテープ 83:第1剥離テープ 855:円筒 14:一対のガイドローラ 115:第1残量検出部 17:第1カッター
71:第1テープ保持部 710:吸着部 712:保持面 711:枠体 79:吸引源 74:回動部材 741:回動軸
22:第2剥離テープ供給部
114:第2ロール支持部
86:第2ロールテープ 84:第2剥離テープ 866:円筒 15:一対のガイドローラ 116:第2残量検出部 18:第2カッター
72:第2テープ保持部 回動部材74
60:把持部 602:固定台 603:昇降爪 605:アクチュエータ
16:把持部移動手段
66:貼着部 667:一対のヒータ 68:貼着用カッター
3:保持手段 30:保持テーブル 302:保持面
31:リングフレーム保持部 318:クランプ 33:アクチュエータ
34:保持手段移動手段 341:ガイドレール 342:移動基台
19:ゴミ箱
5:制御手段 50:保護テープ用対応表 51:デバイス用対応表