(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】半導体装置用基板
(51)【国際特許分類】
H01L 23/13 20060101AFI20240827BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20240827BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20240827BHJP
H05K 3/38 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H01L23/12 C
H01L23/12 J
H05K1/02 F
H05K3/38 Z
(21)【出願番号】P 2022559005
(86)(22)【出願日】2021-10-14
(86)【国際出願番号】 JP2021038150
(87)【国際公開番号】W WO2022091808
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2022-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2020181366
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391039896
【氏名又は名称】NGKエレクトロデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】市岡 裕晃
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/114126(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/13
H01L 23/12
H05K 1/02
H05K 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及び第2面を有するセラミックス基板と、
前記セラミックス基板の第1面に接合されている
銅からなる回路パターンと、
前記セラミックス基板の第2面に接合されている
銅からなる放熱板と、
を備え、
前記回路パターンは、複数の部位により形成され、
前記セラミックス基板と前記回路パターンとの界面に存在する1cm
2当たりの直径1mm以下のボイド数をF、前記セラミックス基板と前記放熱板との界面に存在する1cm
2当たりの直径1mm以下のボイド数をBとしたとき、F/B>1を充足
し、
前記セラミックス基板と前記回路パターンとの界面に存在する1cm
2
当たりの直径1mmより大きいボイドの数が、前記Fの数%であり、前記セラミックス基板と前記放熱板との界面に存在する1cm
2
当たりの直径1mmより大きいボイドの数が、前記Bの数%である、半導体装置用基板。
【請求項2】
F/B≧8を充足する、請求項1に記載の半導体装置用基板。
【請求項3】
10≦F/B≦30を充足する、請求項
2に記載の半導体装置用基板。
【請求項4】
0.2≦F≦2.5である、請求項1
から3のいずれかに記載の半導体装置用基板。
【請求項5】
B≦0.1である、請求項1から
4のいずれかに記載の半導体装置用基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
パワートランジスタモジュールなどに用いる半導体装置用基板として、セラミックス基板の両面に、金属からなる回路パターン及び放熱板をそれぞれ接合したDBOC基板(Direct Bonding of Copper Substrate)が知られている(例えば、特許文献1~4)。これらの特許文献では、セラミックス基板と回路パターン及び放熱板との間に生じるボイドを減少させ、これによって、セラミックス基板と回路パターン及び放熱板との接合強度を確保することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-283671号公報
【文献】特開平10-154774号公報
【文献】特開2001-48671号公報
【文献】特開2013-207236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような半導体装置用基板では、回路パターンが複数の部位によって構成されているため、熱応力が集中しやすい角部が放熱板よりも回路パターンの方に多く含まれている。そのため、セラミックス基板において回路パターンが接合されている面では、熱応力により、回路パターンの剥がれが生じやすいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、回路パターンの剥がれを抑制することができる、半導体装置用基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
項1.第1面及び第2面を有するセラミックス基板と、
前記セラミックス基板の第1面に接合されている金属からなる回路パターンと、
前記セラミックス基板の第2面に接合されている金属からなる放熱板と、
を備え、
前記回路パターンは、複数の部位により形成され、
前記セラミックス基板と前記回路パターンとの界面に存在する1cm2当たりの直径1mm以下のボイド数をF、前記セラミックス基板と前記放熱板との界面に存在する1cm2当たりの直径1mm以下のボイド数をBとしたとき、F/B>1を充足する、半導体装置用基板。
【0007】
項2.10≦F/B≦30を充足する、項1に記載の半導体装置用基板。
【0008】
項3.0.2≦F≦2.5である、項1または2に記載の半導体装置用基板。
【0009】
項4.B≦0.1個/cm2である、項1から3のいずれかに記載の半導体装置用基板。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、回路パターンの剥がれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る半導体装置用基板を有する半導体装置の一実施形態を示す断面図である。
【
図3A】実施例1~5における回路パターン側の半導体装置用基板の平面図である。
【
図3B】実施例1~5における放熱板側の半導体装置用基板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る半導体装置用基板の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る半導体装置用基板を有する半導体装置の断面図である。
【0013】
<1.半導体装置の概要>
本実施形態に係る半導体装置は、例えば、自動車、空調機、産業用ロボット、業務用エレベータ、家庭用電子レンジ、IH電気炊飯器、発電(風力発電、太陽光発電、燃料電池など)、電鉄、UPS(無停電電源)などの様々な電子機器においてパワーモジュールとして用いられる。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る半導体装置1は、半導体装置用基板2、第1接合材5、第2接合材5'、半導体チップ6、ボンディングワイヤ7、及びヒートシンク8を備えている。
【0015】
半導体装置用基板2は、いわゆるDBOC基板(Direct Bonding of Copper Substrate)であり、絶縁体である板状のセラミックス基板3と、その上面(第1面)に接合された回路パターン4と、下面(第2面)に接合された放熱板4'と、を備えている。
【0016】
セラミックス基板3は、例えば、酸化アルミニウム質セラミックス、酸化ジルコニウムを添加した酸化アルミニウム質セラミックス等のセラミックスにより形成することができる。セラミックス基板3の厚みは、特には限定されないが、例えば、0.20~1.00mmであることが好ましく、0.25~0.64mmであることがさらに好ましい。
【0017】
回路パターン4には、例えば、伝送回路が形成されている。すなわち、回路パターン4は、互いに電気的に絶縁された複数の部位によって構成されている。回路パターン4を形成する材料は、例えば、銅、アルミニウム等の金属とすることができる。また、回路パターン4の厚みは、特には限定されないが、例えば、0.10~0.60mmであることが好ましく、0.20~0.50mmであることがさらに好ましい。一方、放熱板4'は、平板状に形成されており、セラミックス基板3の下面のほぼ全面に接合されている。放熱板4'は、回路パターン4と同様の材料及び厚みにより形成することができる。
【0018】
このような形成された半導体装置用基板2の上面、つまり回路パターン4の上面の一部には、第1接合材5を介して半導体チップ6が接合されている。また、ボンディングワイヤ7により、半導体チップ6と回路パターン4とが接続されている。
【0019】
一方、半導体装置用基板2の下面、つまり放熱板4'の下面には、第2接合材5'を介してヒートシンク8が接合されている。ヒートシンク8は、公知のものであり、例えば銅などの金属によって構成することができる。
【0020】
次に、上述した半導体装置用基板2の製造方法の一例について説明する。以下では、回路パターン4及び放熱板4'を構成する金属材料として銅を用いた場合の例について説明する。まず、セラミックス基板3の上面及び下面に、金属板として銅板を配置した積層体を形成する。ここで用いられる各銅板の表面は酸化されている。次に、この積層体を1065℃~1083℃の窒素雰囲気条件下で10分程度加熱する。これによって、セラミックス基板3と各銅板とが接合する界面(以下、「接合界面」と総称する。)にCu-O共晶液相が生成され、セラミックス基板3の各面が濡れる。続いて、この積層体を冷却することによってCu-O共晶液相が固化されて、セラミックス基板3の両面に銅板がそれぞれ接合される。
【0021】
続いて、セラミックス基板3の上面の銅板に対して、例えば、エッチング法によって回路パターン4を形成する。一方、下面の銅板は放熱板4'となる。こうして、半導体装置用基板2が形成される。
【0022】
<2.セラミックス基板の表面のボイド>
上記のように、セラミックス基板3の両面には銅板等の金属板が接合されるが、このときに、セラミックス基板3と各金属板との界面にはボイド(気泡)が生じる。一般的には、ボイドが多くなると、接合強度が低くなるため、好ましくないが、回路パターン4とセラミックス基板3との界面においては、ある程度のボイドが生じることが好ましいことが、本発明者により見出された。
【0023】
放熱板4'は平板により形成されているが、回路パターン4は、複数の部位によって構成されているため、放熱板4'よりも含まれる角部が多い(例えば、後述の
図3A及び
図3B参照)。角部には銅板4,4'とセラミックス基板
3の熱膨張係数の違いにより生じる熱応力が集中しやすい。そのため、回路パターン4とセラミックス基板
3との接合界面付近に生じる熱応力により、回路パターン4が剥がれやすいという問題があった。これに対し、本発明者は、セラミックス基板
3と回路パターン4との界面における1cm
2当たりの直径1mm以下のボイド数Fと、セラミックス基板
3と放熱板
4'との界面における1cm
2当たりの直径1mm以下のボイド数Bとが、以下の式(1)を充足するとき、回路パターン4の剥がれを抑制できることを見出した。なお、F,Bは、それぞれ測定されたボイドの数を、それぞれ、回路パターン4の面積及び放熱板4'の面積で割ることで算出している。
F/B>1 (1)
【0024】
すなわち、回路パターン4側のボイド数Fが、放熱板4'側のボイド数Bよりも多いことで、回路パターン4とセラミックス基板3の第1面との接合界面付近に生じる熱応力を緩和でき、これによって、回路パターン4の剥がれを抑制できることが分かった。これは、回路パターン4とセラミックス基板3との接合界面にCu-O共晶液相が固化されて形成される接合層が、ボイドにより変形しやすくなり、熱応力を緩和する作用があるためであると推測される。一方、放熱板4'側のボイド数Bが少ないと、接合強度の低下、及び放熱性能の低下を抑制することができる。また、F/Bは、より大きいことが好ましく、3以上が好ましく、5以上であることがさらに好ましく、8以上であることがより好ましく、10以上であることが特に好ましい。一方、F/Bが大きすぎると、回路パターン4側のボイド数Fが多くなりすぎるため、例えば、30以下であることが好ましく、20以下であることがさらに好ましい。具体的には、F/Bは、接合強度および放熱性の観点から30以下であることが好ましく、20以下であることがさらに好ましい。
【0025】
具体的には、ボイド数Fは、0.2個/cm2以上であることが好ましく、0.5個/cm2以上であることがさらに好ましく、1.0個/cm2以上であることが特に好ましい。一方、ボイド数Fは、2.5個/cm2以下であることが好ましく、2.0個/cm2以下であることがより好ましく、1.5個/cm2以下であることがさらに好ましい。具体的には、ボイド数Fは接合強度及び放熱性の観点から、2.0個/cm2以下であることが好ましく、1.5個/cm2以下であることがさらに好ましい。一方でボイド数Fが2.5個/cm2を超えると回路パターン4の剥離が生じやすくなり好ましくない。また、ボイド数Bは、接合強度及び放熱性の観点からできるだけ少ないことが好ましく、0.1個/cm2以下であることが好ましく、0.07個/cm2以下であることがさらに好ましく、0.05個/cm2以下であることが特に好ましい。
【0026】
ボイド数の測定方法は、例えば、以下のように行うことができる。まず、超音波映像装置により銅板とセラミックス基板の接合界面を撮影する。超音波映像装置の例として、日立パワーソリューションズ社製超音波映像装置(Scanning Acoustic Tomograph, SAT FS100III)が挙げられる。このとき、銅板とセラミックス基板の接合界面においてボイドが生じている部分が白くなるように撮影画像に二値化処理を行う。そして、回路パターン側と放熱板側で直径が1mm以下のボイドの数をそれぞれ測定し、単位面積当たりのボイド数を、それぞれF,Bとする。
【0027】
ボイドの直径は、以下のように定義している。まず、超音波映像装置により銅板とセラミックス基板の接合界面を撮影する。超音波映像装置の例として、日立パワーソリューションズ社製超音波映像装置(Scanning Acoustic Tomograph, SAT FS100III)が挙げられる。このとき、銅板とセラミックス基板の接合界面においてボイドが生じている部分が白くなるように撮影画像に二値化処理を行う。ボイドの形状には円、楕円、不定形などがある。そのため、
図2に示すように、ボイド10を収納できる最小の長方形20を設定し、その長辺の寸法を直径とする。例えば、ボイド10が楕円形状の場合、長辺寸法は楕円の長軸寸法と一致する。
【0028】
白色部と黒色部とを特定するための二値化処理は、撮影画像に基づいて、縦軸が出現画素数、横軸が0から255の256階調のグレーレベル(濃度値)となる濃度ヒストグラム図を作成し、グレーレベルの閾値を135に設定し、グレーレベルが135未満の画素を黒色、グレーレベルが135以上の画素を白色と判定することにより行った。回路パターン4及び放熱板4’とセラミックス基板3との接合界面に多数のボイドが生じている場合、グレーレベルが0~135の範囲における出現画素数はほぼ0であり、グレーレベルが135~255の範囲において出現画素数のピークが見られた。そのため撮影画像のほぼ全面が白色となった。一方、回路パターン4及び放熱板4’とセラミックス基板3との接合界面においてボイドがほぼ生じていない場合、グレーレベルが135~255の範囲における出願画素数はほぼ0であり、グレーレベルが0~135の範囲において出現画素数のピークが見られた。そのため撮影画像のほぼ全面が黒色となった。
【0029】
なお、ボイド数B,Fが上記式(1)を充足するためには、例えば、金属板(銅板)の接合工程において、以下のパラメータを調整すればよい。
・金属板の表面の酸化量(mg/cm2)
・接合温度(℃)
・炉内窒素雰囲気中の酸素濃度(ppm)
・金属板を載せたセラミックス基板を載置するためのセッターの材質(例えば、アルミナ、SiCを用いることができる)
【実施例】
【0030】
以下、本発明の実施例について説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0031】
<1.実施例の作製>
以下の回路パターン、セラミックス基板、及び放熱板により実施例1~5に係る半導体装置用基板を、以下の通り作製した。半導体装置用基板の概ねの作製方法は、上述したとおりである。
【0032】
まず、大型の半導体装置用基板を作製した。すなわち、大型セラミックス基板の両面に、それとほぼ同サイズの大型銅板をそれぞれ接合した。一方の銅板は回路パターン用、もう一方の銅板は放熱板用である。具体的な寸法は以下の通りである。
・大型セラミックス基板:厚み0.32mm、約127mm×178mmの長方形
この大型セラミックス基板は、アルミナ80質量%、ジルコニア20質量%を含有している。
・大型銅板 :厚み0.30mm、約125mm×176mmの長方形
【0033】
実施例1~5に係る半導体装置用基板の銅板接合条件は、以下の表1のようであった。
【表1】
【0034】
次に、エッチング法により、回路パターンに相当する側の大型銅板に縦5個×横4個の20個の回路パターンを形成した。続いて、分割加工することで下記のような個片サイズの半導体装置用基板を作製した。
・回路パターン:厚み0.3mm、
図3Aの形状
長方形からなる外形は約24mm×43mm。すなわち、5つの部位で構成される回路パターンを1つの長方形とみなしたとき、その長方形からなる外形は約24mm×43mm。セラミックス基板の面積に対する、回路パターンの総面積の割合は70~80%。
・セラミックス基板:厚み0.32mm、25mm×44mmの長方形
・放熱板:厚み0.3mm、約24mm×43mmの長方形、
図3Bの形状
【0035】
セラミックス基板は、アルミナ80質量%、ジルコニア20質量%を含有している。そして、実施例1~5の個片サイズの半導体装置用基板は、測定の結果、以下のボイド数F,Bを有していた。表2の実施例1~5のボイド数F,Bは、個片サイズの半導体用基板をそれぞれ240個ずつ測定した結果の平均値である。
【表2】
【0036】
ボイド数F,Bの測定には、上述した日立パワーソリューションズ社製超音波映像装置(Scanning Acoustic Tomograph, SAT FS100III)を用いた。
【0037】
実施例1~5では、例えば、
図4に示すように、直径が0.2mm未満のボイド11、直径が0.2mm以上1mm以下であるボイド12、直径が1mmよりも大きいボイド13がそれぞれ測定された。直径が0.2mm未満のボイド11は超音波映像装置での明瞭な撮影および二値化が極めて困難のため、ボイド数F,Bに含めなかった。よって、本願明細書中における直径が1mm以下のボイドとは、直径が0.2mm以上1mm以下のボイド12を指す。また、直径が1mmよりも大きいボイド13の数は、直径0.2mm以上1mm以下のボイド12の数に対し数%程度であった。本発明の効果に対する影響は軽微であると考えられるため、直径が1mmよりも大きいボイド13はボイド数F,Bに含めなかった。
【0038】
<2.信頼性評価試験>
上記のように作製された実施例1~5に係る半導体装置用基板に対し(各50個)、信頼性評価試験を行った。信頼性評価試験では、実施例1~5の半導体装置用基板を恒温槽に配置し、大気中で-40℃の環境下に15分間置いた後、150℃まで昇温し、この環境下で15分間置いた。そのあと再び-40℃まで降温させた。これを1500サイクル繰り返し、0回、150回、300回、600回、900回、1200回、1500回の各サイクルにおいて、各実施例を恒温槽から取り出し、回路パターンに剥がれが発生した半導体装置用基板の数を、日立パワーソリューションズ社製超音波映像装置(Scanning Acoustic Tomograph, SAT FS200III)を用いて測定した。この試験では、回路パターンの剥がれの面積が1mm
2以上であるときに、剥がれの数にカウントした。剥がれは銅板の縁から始まり、とくに角部が起点になることが多かった。すなわち、
図3Aにおいて、剥がれは銅板で構成される回路パターン4の縁から始まり、特に角部9が起点になることが多かった。
【0039】
結果は、
図5及び
図6に示すとおりである。
図5に示すように、実施例1では、150サイクルまでは回路パターンの剥がれが生じておらず、300サイクルの時点で剥がれが確認された。具体的には300サイクルの時点で剥がれが確認されたのは2個であった。残り48個に対し信頼性評価を継続した。これ以降、剥がれが確認されると、そのサンプルは除いて信頼性評価を継続した。この点は、実施例3でも同様である。一方、
図6に示すように、実施例3で、900サイクルまでは回路パターンの剥がれが生じておらず、1200サイクルの時点で剥がれが確認された。具体的には1200サイクルの時点で剥がれが確認されたのは7個であった。残り43個に対し信頼性評価を継続した。したがって、実施例1,3のいずれも150サイクルまでは回路パターンの剥がれがないため、F/B>1であることが有効であることが分かった。また、実施例1,3のいずれにおいても、50個のサンプルのうち、1500サイクルを超えても回路パターンの剥がれがないものがあった。具体的には1500サイクルを超えても回路パターンの剥がれがないものは、実施例1では7個、実施例3では38個であった。
【0040】
また、
図5及び
図6の結果からすると、F/Bが大きくなるにしたがって、回路パターンの剥がれが少なくなっていることが分かった。なお、F/Bが実施例1,3の間の値である実施例2では、300サイクルまでは回路パターンの剥がれが生じておらず、600サイクルの時点で剥がれが確認され、実施例1,3と同様の傾向を示すことが確認された。さらに、F/Bが実施例3よりも大きい値である実施例4,5も実施例3と同様に900サイクルまでは回路パターンの剥がれが生じておらず、1200サイクルの時点で剥がれが確認された。したがって、実施例1~5のいずれも150サイクルまでは回路パターンの剥がれがないため、F/B>1であれば、回路パターンの剥がれ防止に有効であることが分かった。また、実施例2~5のように、10≦F/B≦30であれば、回路パターンの剥がれ防止により有効であることがわかった。
【0041】
なお、
図3A,
図3Bに示す回路パターン及び放熱板の形状は、一例であり、これに限定されない。回路パターンは、より多くの複数の部位で構成されていても良い。あるいは、回路パターンは、より少ない複数の部位で構成されていても良い。また、放熱板も一枚板に限定されず、複数の部位で構成されていても良い。
【符号の説明】
【0042】
1…半導体装置
2…半導体装置用基板
3…セラミックス基板
4…回路パターン
4'…放熱板
5…第1接合材
5'…第2接合材
6…半導体チップ
7…ボンディングワイヤ
8…ヒートシンク
9…角部
10…ボイド
11…直径が0.2mm未満のボイド
12…直径が0.2mm以上1mm以下のボイド
13…直径が1mmより大きいボイド