(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】ウェーハ加工方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20240828BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20240828BHJP
【FI】
H01L21/78 B
B23K26/53
(21)【出願番号】P 2020127269
(22)【出願日】2020-07-28
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】田母神 崇
(72)【発明者】
【氏名】島貫 隆
(72)【発明者】
【氏名】林 博和
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-165229(JP,A)
【文献】特開2013-152967(JP,A)
【文献】特開2014-192215(JP,A)
【文献】特開2014-072475(JP,A)
【文献】特開2019-149409(JP,A)
【文献】特開2019-220548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面にデバイス層が積層されたウェーハの基板の内部に、前記ウェーハの分割予定ラインに沿って
、ボイド及びボイド上方領域を含むレーザ加工領域を形成するレーザ加工ステップと、
前記ウェーハの裏面を研削して前記ウェーハの厚みをターゲット厚にし、前記ウェーハを個々のチップに分割する研削ステップとを備え、
前記レーザ加工ステップは、
前記レーザ加工領域の前記ウェーハの厚み方向の位置を、前記ターゲット厚の位置に設定する位置設定ステップと、
前記ウェーハの内部にレーザ光を集光させることにより、前記位置設定ステップにおいて設定した位置に
前記ボイド上方領域が位置するように前記研削ステップで生じる研削屑を捕集可能な凹凸を有する前記レーザ加工領域を形成するレーザ加工領域形成ステップと、
を備えるウェーハ加工方法。
【請求項2】
前記研削ステップは、前記ボイド上方領域のうちの一部を研削して、前記ウェーハの裏面側及び側壁に前記ボイド上方領域を露呈させることを含む、請求項1に記載のウェーハ加工方法。
【請求項3】
前記レーザ加工領域形成ステップでは、前記ウェーハの厚み方向に複数層のレーザ加工領域を形成し、
前記位置設定ステップでは、前記複数層のレーザ加工領域のうち、最も裏面側のレーザ加工領域を前記ターゲット厚の位置に設定する、請求項
2に記載のウェーハ加工方法。
【請求項4】
前記位置設定ステップでは、前記ターゲット厚の位置が、前記レーザ加工領域の裏面側から3分の1までの範囲の領域に重なるように、前記レーザ加工領域の位置を設定する、
請求項
2又は
3に記載のウェーハ加工方法。
【請求項5】
前記位置設定ステップでは、前記ターゲット厚の位置が、前記レーザ加工領域のうち下端のボイドを除く領域の裏面側から3分の1までの範囲の領域に重なるように、前記レーザ加工領域の位置を設定する、請求項
2又は
3に記載のウェーハ加工方法。
【請求項6】
基板の表面にデバイス層が積層されたウェーハの基板の内部に、前記ウェーハの分割予定ラインに沿って
、ボイド及びボイド上方領域を含むレーザ加工領域を形成するレーザ加工装置と、
前記ウェーハの裏面を研削して前記ウェーハの厚みをターゲット厚にし、前記ウェーハを個々のチップに分割する研削装置とを備え、
前記レーザ加工装置は、
前記レーザ加工領域の前記ウェーハの厚み方向の位置を、前記ターゲット厚の位置に設定する位置設定部と、
前記ウェーハの内部にレーザ光を集光させることにより、前記位置設定部によって設定した位置に
前記ボイド上方領域が位置するように前記研削で生じる研削屑を捕集可能な凹凸を有する前記レーザ加工領域を形成するレーザ加工部と、
を備えるウェーハ加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウェーハ加工方法及びシステムに係り、ウェーハの内部に形成されたレーザ加工領域を起点としてウェーハを分割するウェーハ加工方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコン等のウェーハの内部に集光点を合わせてレーザ光を分割予定ラインに沿って照射し、分割予定ラインに沿ってウェーハの内部に切断の起点となるレーザ加工領域を形成するレーザ加工装置(レーザダイシング装置ともいう。)が知られている。レーザ加工領域が形成されたウェーハは、その後、エキスパンド又はブレーキングといった割断プロセスによって分割予定ラインで割断されて個々のチップに分割される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウェーハの割断プロセスでは、研削機(グラインダー)を用いてウェーハの裏面側を研削するときにウェーハに加わる荷重(圧力)を利用して、レーザ加工領域からの亀裂を進展させてウェーハを割断する。
【0005】
図8は、ウェーハの割断プロセスを示す一部断面図であり、
図8(a)は研削前のウェーハW、
図8(b)は研削時の荷重によりウェーハWの内部でクラックが進展した状態、
図8(c)はクラックに沿ってウェーハWが割断した状態を示している。
図9は、
図8(c)の領域XIの一部拡大図である。
【0006】
まず、
図8(a)に示すように、ウェーハWは、電子回路等のデバイスが形成された表面Waにバックグラインドテープ(
図8では不図示。
図10のBG)が貼着された後、不図示の吸着ステージ上に表面Waを下側にして載置されて吸着保持される。ウェーハWの内部には、レーザ加工によりレーザ加工領域R1及びR2が形成される。レーザ加工領域R1及びR2は、ウェーハWの内部の亀裂Kの起点となるものであり、ウェーハWの深さ方向(Z方向)の異なる位置に2段形成されている。なお、レーザ加工領域R1及びR2は、ウェーハWの分割予定ラインに沿って複数形成されるが、
図8では2つに簡略化して示している。
【0007】
次に、研削機50によりウェーハWの裏面Wbが研削される。研削機50の回転研削盤52には砥石54が取り付けられており、ウェーハWの裏面Wbに砥石54を当接させて回転研削盤52を回転させることにより、ウェーハWの研削を行う。
【0008】
ウェーハWの研削の進行に伴い、砥石54を介してウェーハWの裏面Wbに加えられる荷重により、
図8(b)に示すように、亀裂KがウェーハWの深さ方向に進展する。そして、ウェーハWの表面Wa及び裏面Wbに到達した後、
図8(c)に示すように、ウェーハWが分割予定ラインに沿って割断して、割断したチップC1及びC2の間が押し広げられて微小な間隙Gapが生じる。
【0009】
図9に拡大して示すように、研削により生じた研削屑(スラッジともいう。)SLは、チップC1及びC2の間の間隙Gapに侵入し、チップC1及びC2の表面に到達する場合がある(
図10参照)。
【0010】
図10は、割断後のチップをピックアップした後のバックグラインドテープの表面を示す画像である。
図10に示すように、バックグラインドテープBGの表面には、ウェーハWの分割予定ラインに沿って略格子状に研削屑SLが付着している。このような研削屑SLは、チップC1及びC2の表面に形成されたデバイスの汚染の原因になる。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ウェーハ割断後にチップの間に生じる間隙への研削屑の侵入を抑制することが可能なウェーハ加工方法及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係るウェーハ加工方法は、基板の表面にデバイス層が積層されたウェーハの基板の内部に、ウェーハの分割予定ラインに沿ってレーザ加工領域を形成するレーザ加工ステップと、ウェーハの裏面を研削してウェーハの厚みをターゲット厚にし、ウェーハを個々のチップに分割する研削ステップとを備え、レーザ加工ステップは、レーザ加工領域のウェーハの厚み方向の位置を、ターゲット厚の位置に設定する位置設定ステップと、ウェーハの内部にレーザ光を集光させることにより、位置設定ステップにおいて設定した位置にレーザ加工領域を形成するレーザ加工領域形成ステップとを備える。
【0013】
本発明の第2の態様に係るウェーハ加工方法は、第1の態様のレーザ加工領域形成ステップにおいて、ウェーハの厚み方向に複数層のレーザ加工領域を形成し、位置設定ステップにおいて、複数層のレーザ加工領域のうち、最も裏面側のレーザ加工領域をターゲット厚の位置に設定する。
【0014】
本発明の第3の態様に係るウェーハ加工方法は、第1又は第2の態様の位置設定ステップにおいて、ターゲット厚の位置が、レーザ加工領域の裏面側から3分の1までの範囲の領域に重なるように、レーザ加工領域の位置を設定する。
【0015】
本発明の第4の態様に係るウェーハ加工方法は、第1又は第2の態様の位置設定ステップにおいて、ターゲット厚の位置が、レーザ加工領域のうち下端のボイドを除く領域の裏面側から3分の1までの範囲の領域に重なるように、レーザ加工領域の位置を設定する。
【0016】
本発明の第5の態様に係るウェーハ加工システムは、基板の表面にデバイス層が積層されたウェーハの基板の内部に、ウェーハの分割予定ラインに沿ってレーザ加工領域を形成するレーザ加工装置と、ウェーハの裏面を研削してウェーハの厚みをターゲット厚にし、ウェーハを個々のチップに分割する研削装置とを備え、レーザ加工装置は、レーザ加工領域のウェーハの厚み方向の位置を、ターゲット厚の位置に設定する位置設定部と、ウェーハの内部にレーザ光を集光させることにより、位置設定部によって設定した位置にレーザ加工領域を形成するレーザ加工部とを備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ウェーハのターゲット厚に応じてレーザ加工領域を形成することにより、ウェーハの割断後に研削屑がチップの間隙に侵入することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、ウェーハを分割した後のチップの加工断面を示す画像である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係るウェーハ加工システムのうちレーザ加工装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係るウェーハ加工システムのうち研削装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、レーザ加工領域とターゲット厚Htとの関係を示す断面図である。
【
図5】
図5は、チップの加工断面を示す画像である。
【
図6】
図6は、研削加工後のチップの加工断面を示す画像である。
【
図7】
図7は、割断後のチップをピックアップした後のバックグラインドテープの表面を示す画像である。
【
図8】
図8は、ウェーハの割断プロセスを示す一部断面図である。
【
図10】
図10は、割断後のチップをピックアップした後のバックグラインドテープの表面を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面に従って本発明に係るウェーハ加工方法及びシステムの実施の形態について説明する。
【0020】
[実施形態の概要]
図1は、ウェーハを分割した後のチップの加工断面を示す画像である。
【0021】
図1に示すように、ウェーハWを分割した後のチップCの加工断面(側壁)CWにレーザ加工領域R1及びR2を残した場合、研削加工により生じる研削屑(スラッジ)SLは、上方(+Z側、ウェーハWの裏面Wb(
図2参照)側)のレーザ加工領域R2に捕集され、レーザ加工領域R2よりも表面Wa側に侵入しないことがわかる。このことから、レーザ加工領域R1及びR2には、ウェーハWの研削加工される面側から侵入した研削屑SLを網のように捕集する機能があると考えられる。具体的には、レーザ加工領域R1及びR2の表面は、レーザ加工領域R1及びR2から進展した亀裂により割断された面と比較して凹凸が多いため、この凹凸が研削屑SLを捕集する網の機能をもつと考えられる。
【0022】
本実施形態では、ウェーハWの裏面Wb側のレーザ加工領域R2のZ方向位置を、チップCの厚みの目標値(以下、ターゲット厚という。)Htに対応させることにより、研削屑SLがレーザ加工領域R2よりも表面Wa側に侵入することを防止する(
図4参照)。
【0023】
[ウェーハ加工システム]
本実施形態に係るウェーハ加工システム10は、レーザ加工装置10-1(
図2参照)と、研削装置10-2(
図3参照)とを備える。レーザ加工装置10-1は、ウェーハWの分割予定ラインに沿って、ウェーハWの内部にレーザ加工領域を形成する(レーザ加工ステップ)。研削装置10-2は、ウェーハWの裏面Wbに研削加工を行ってウェーハWの厚みをターゲット厚Htにし、かつ、研削加工時にウェーハWに加えられる荷重を利用してウェーハWを個々のチップCに分割する(研削ステップ)。
【0024】
(レーザ加工)
図2は、本発明の一実施形態に係るウェーハ加工システムのうちレーザ加工装置の構成を示すブロック図である。
【0025】
図2に示すように、レーザ加工装置10-1は、制御部12、ウェーハ移動部14及びレーザ加工部16を備える。
【0026】
制御部12は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ(例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等)、ストレージ(例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等)及び入出力回路部等を有しており、レーザ加工装置10-1の各部の動作を制御する。制御部12は、例えば、パーソナルコンピュータ又はワークステーションにより実現される。
【0027】
ウェーハ移動部14は、ウェーハWを吸着保持する吸着ステージT1と、レーザ加工装置10-1の本体ベース(不図示)に設けられ、吸着ステージT1をXYZθ方向に移動させるXYZθテーブルとを備える。
【0028】
ウェーハWは、例えば、シリコン製の円板状の半導体ウェーハである。ウェーハWの基板の表面Waは、例えば、XY方向に伸びる複数の分割予定ラインにより格子状の領域に区画されており、この格子状の領域には、それぞれ電子回路等のデバイス(デバイス層)が形成(積層)されている。
【0029】
ウェーハWを個々のチップCに分割する際には、まず、ウェーハWの表面Waにバックグラインドテープ(保護テープ)BGを貼着し、レーザ加工装置10-1のテーブルTの保持面に、表面Waを下側にして載置する。そして、吸着ステージT1により、ウェーハWが吸着保持される。なお、バックグラインドテープBGを貼着せずにウェーハWを吸着保持してもよい。
【0030】
レーザ加工部16は、レーザ光源、コンデンスレンズ等の光学素子及びレーザ光LをウェーハWに対してZ方向に微小移動させる駆動手段等を含んでいる。レーザ光源としては、例えば、半導体レーザ励起Nd:YAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザが用いられる。レーザ光源から出射されたレーザ光Lは、コンデンスレンズによりウェーハWの内部に集光される。これにより、ウェーハWの内部にレーザ加工領域R1及びR2が形成される。
【0031】
ここで、レーザ加工領域R1及びR2とは、レーザ光の照射によってウェーハWの内部の密度、屈折率、機械的強度等の物理的特性が周囲と異なる状態となり、周囲よりも強度が低下する領域のことをいう。レーザ加工領域R1及びR2は、例えば、クラック領域を含む。
【0032】
ウェーハWにレーザ加工領域R1及びR2を形成する場合、レーザ加工部16からレーザ光Lが出射され、コンデンスレンズ等の光学系を経由してウェーハWに照射される。照射されるレーザ光Lの集光点FPのZ方向位置は、XYZθテーブルによるウェーハWのZ方向位置調整、及びコンデンスレンズの位置制御によって、ウェーハWの内部の所定位置に正確に設定される。
【0033】
この状態でXYZθテーブルがダイシング方向であるX方向に加工送りされる。これにより、ウェーハWの分割予定ラインに沿ってレーザ加工領域R1及びR2が1ライン形成される。そして、分割予定ラインに沿ってレーザ加工領域R1及びR2が1ライン形成されると、XYZθテーブルがY方向に1ピッチ割り出し送りされ、次の分割予定ラインにもレーザ加工領域R1及びR2が形成される。次に、すべてのX方向の分割予定ラインに沿ってレーザ加工領域R1及びR2が形成されると、XYZθテーブルがZ軸回りに90°回転され、回転後のX方向の分割予定ラインにも同様にしてレーザ加工領域R1及びR2が形成される。
【0034】
なお、レーザ加工領域R1及びR2を形成する手順は特に限定されない。例えば、
図2に示すように、1層目のレーザ加工領域R1をウェーハWの全面に形成した後に、2層目(ウェーハWの裏面Wb側)のレーザ加工領域R2を形成してもよい。この場合、レーザ加工領域R1及びR2を形成する際のレーザ加工条件は相互に異なっていてもよいし、同一であってもよい。あるいは、レーザ光Lを分岐させる分岐部(例えば、ビームスプリッター等)を設けて、ウェーハWの内部においてZ方向の位置(深さ)が異なる2つの集光点に集光させることにより、1回のスキャンで2層のレーザ加工領域R1及びR2を形成するようにしてもよい。
【0035】
レーザ加工領域R1及びR2が形成されたウェーハWは、レーザ加工装置10-1から研削装置10-2に搬送され、ウェーハWの裏面が研削されて、裏面側のレーザ加工領域R2の一部が除去され、個々のチップに分割される(
図3参照)。
【0036】
(研削加工)
図3は、本発明の一実施形態に係るウェーハ加工システムのうち研削装置の構成を示すブロック図である。
図3は、ウェーハWの裏面WbがWb1まで研削された状態を示している。
【0037】
図3に示すように、本実施形態に係る研削装置10-2は、研削制御部18、厚み測定部20、ウェーハ移動部22及び研削機(グラインダー)50を備える。研削機50は、回転研削盤52と、回転研削盤52に取り付けられた砥石54とを備える。
【0038】
研削制御部18は、回転研削盤52をシャフトの周りに回転させるためのモータを含んでいる。研削制御部18は、制御部12からの指令に応じて、不図示のスラリー供給口からスラリーをウェーハWの裏面Wbに供給しながら、回転研削盤52のZ方向位置を調整して、ウェーハWの裏面Wbに砥石54を当接させて回転させる。
【0039】
ウェーハ移動部22は、ウェーハWを吸着保持するチャックテーブルT2と、研削装置10-2内において、チャックテーブルT2をXY方向に移動させるXYテーブル(不図示)とを備える。
【0040】
ウェーハWは、レーザ加工装置10-1においてレーザ加工領域R1及びR2が形成された後、研削装置10-2に搬送される。そして、ウェーハWは、チャックテーブルT2の保持面に表面Waを下側にして載置され、チャックテーブルT2により吸着保持される。次に、ウェーハ移動部22によりチャックテーブルT2をXY方向に移動させながら、研削制御部18によりウェーハWの裏面Wbに砥石54を当接させて回転させることにより、ウェーハWの裏面Wbの全面が研削される。
【0041】
厚み測定部20は、ウェーハWの厚みを測定する手段である。厚み測定部20は、ウェーハWの裏面Wbの研削中に、in-situでウェーハWの厚みを測定可能となっている。厚み測定部20としては、接触式のハイトゲージをウェーハWの裏面Wbに接触させて測定する接触式の手段を用いてもよい。また、厚み測定部20としては、レーザ光源(例えば、半導体レーザ)からのレーザ光をウェーハWの裏面Wbに照射してウェーハWの裏面Wbまでの距離を測定する非接触式の手段(例えば、ToF(Time-of-Flight)方式)を用いてもよい。
【0042】
研削制御部18は、厚み測定部20からの出力に基づいてウェーハWの厚みを算出しながら、ウェーハWの裏面Wbの研削を行う。これにより、ウェーハWの厚みをターゲット厚Htにすることができる。
【0043】
なお、
図3に示す例では、研削装置10-2はレーザ加工装置10-1と同じ制御部12により制御されるようになっているが、レーザ加工装置10-1とは別の制御部(例えば、パーソナルコンピュータ又はワークステーション等)により制御されるようにしてもよい。すなわち、レーザ加工装置10-1と研削装置10-2とは別個独立の装置であってもよい。この場合、研削装置10-2の制御部は、レーザ加工装置10-1の制御部12からレーザ加工領域R1及びR2の位置及びサイズに関する情報と、ウェーハWの厚みのターゲット厚Htに関する情報を、通信回線又はストレージデバイス等を介して共有するようにしてもよい。
【0044】
[レーザ加工領域]
次に、レーザ加工領域R2と、チップCのターゲット厚Htとの関係について説明する。
図4は、レーザ加工領域とターゲット厚Htとの関係を示す断面図であり、
図5は、チップの加工断面を示す画像である。なお、
図4では、簡単のため、ウェーハWの裏面Wb側のレーザ加工領域R2のみを図示している。
【0045】
図4に示すように、レーザ加工領域R2は、その下端に位置するボイドR20と、ボイドR20の上方(裏面側)に形成されたボイド上方領域R22とを含んでいる。
【0046】
例えば、レーザ光Lがパルスレーザである場合、ウェーハWの内部で集光されたレーザ光Lは、集光点FP及びその近傍のレーザ光吸収領域で局所的に吸収される。このとき、集光点FP及びその近傍のレーザ光吸収領域の温度が瞬間的に上昇し(一例で、約10,000K)、レーザ光吸収領域のシリコンが一気に気化することにより、ボイド(空孔)R20が形成される。
【0047】
次に、ボイドR20上方側、すなわちレーザ光Lの照射側に熱衝撃波として急速に高温部が伸びていく。このとき、高温部とその周囲の低温部との温度差が非常に大きくなり、高温部の熱膨張が周囲の低温部により押え込まれ、高温部は非常に強い圧縮を受ける。このため、高温部は、溶融することなく、高転位密度層が形成される。
【0048】
その後、次のパルス波が照射されることで、高温部の高転位密度層内の転位が核となってボイド上方領域R22から単結晶の低温部へと亀裂Kが進展する。
【0049】
なお、ボイド上方領域R22とは、ボイドR20の上方においてレーザ加工痕(高転位密度層ないし微小クラックなど)が確認できる領域のことをいう。
【0050】
上記のように、レーザ加工領域R1及びR2には、ウェーハWの研削加工される面側から侵入した研削屑SLを網のように捕集する機能があると考えられる。このため、レーザ加工領域R2の一部を研削して、チップCの裏面側及び側壁CWにレーザ加工領域R2を露呈させることが考えられる。
【0051】
この点に関して、本願発明の発明者は、レーザ加工領域R2の一部を研削する場合において、レーザ加工領域R2のボイドR20付近まで研削を行った場合、チップCの裏面側(図中上側)にデブリ及び蛇行が発生しやすいということを発見した。このため、本実施形態では、レーザ加工領域R2のボイド上方領域R22のうちの一部を研削して(ボイドR20付近を研削することなく)、チップCの裏面側及び側壁CWにボイド上方領域R22を露呈させる。これにより、チップCの裏面側にデブリ及び蛇行を発生させることなく、レーザ加工領域R20により研削屑SLを捕集する機能を高めることができる。
【0052】
したがって、本実施形態では、
図4に示すように、チップCの表面Waからターゲット厚Htの位置に、レーザ加工領域R2のボイド上方領域R22が形成されるようにレーザ加工を行う。
【0053】
制御部12は、レーザ加工部16のレーザ加工条件を調整して、レーザ加工領域R2(ボイドR20及びボイド上方領域R22)の位置及びサイズを設定する(位置設定ステップ)。具体的には、まず、ウェーハWの材質ごとに、かつ、レーザ加工時の集光点FPの位置並びにレーザ光Lの強度、周波数、開口数及び照射時間等のレーザ加工条件ごとに、レーザ加工領域R2(ボイドR20及びボイド上方領域R22)の位置及びサイズのレーザ加工用データを、あらかじめ実験的に又はシミュレーションにより求めておく。そして、制御部12は、ウェーハWの材質及びターゲット厚Htと、レーザ加工用データに基づいて、ターゲット厚Htの位置に、レーザ加工領域R2のボイド上方領域R22が重なるように、レーザ加工時の集光点FPの位置並びにレーザ光Lの強度、周波数、開口数及び照射時間等のレーザ加工条件を調整する。ここで、制御部12は、位置設定部として機能する。
【0054】
レーザ加工部16は、制御部12からの指令にしたがい、ウェーハWの分割予定ラインに沿って、ウェーハWの内部にレーザ加工領域R2を形成する(レーザ加工領域形成ステップ)。
【0055】
ここで、ウェーハWがターゲット厚Htになるまで研削したときに、レーザ加工領域R2の上端部の一部(例えば、レーザ加工領域R2の上(裏面側)から約3分の1までの範囲の領域)が研削されるように、レーザ加工領域R2の形成位置を設定することが好ましい。より具体的には、レーザ加工領域R2のZ方向の寸法をH1としたときに、レーザ加工領域R2の図中上端部からターゲット厚Htの位置までの距離Δが、0<Δ≦H1/3となるようにレーザ加工条件を調整することが好ましい。
【0056】
あるいは、ウェーハWがターゲット厚Htになるまで研削したときに、レーザ加工領域R2の上端部の一部(例えば、レーザ加工領域R2のボイド上方領域R22の上(裏面側)から約3分の1までの範囲の領域)が研削されるように、レーザ加工領域R2の形成位置を設定してもよい。すなわち、レーザ加工領域R2のボイド上方領域R22のZ方向の寸法をH2としたときに、レーザ加工領域R2のボイド上方領域R22の図中上端部からターゲット厚Htの位置までの距離Δが、0<Δ≦H2/3となるようにレーザ加工条件を調整してもよい。
【0057】
なお、本実施形態では、レーザ加工領域をR1及びR2の2層としたが、本発明はこれに限定されない。レーザ加工領域は、1層のみ又は3層以上の複数層形成してもよい。レーザ加工領域を3層以上形成する場合、レーザ加工領域のうち、最も裏面側の(ウェーハWの裏面Wbに最も近い)レーザ加工領域がターゲット厚Htの位置を重なるように形成すればよい。
【0058】
図6は、研削加工後のチップの加工断面を示す画像であり、
図7は、割断後のチップをピックアップした後のバックグラインドテープの表面を示す画像である。
【0059】
図6に示すように、レーザ加工領域R2の上(裏面側)から3分の1程度で研削を終了させて、ウェーハWの分割を行った場合、
図7に示すように、バックグラインドテープBGの表面から研削屑SLがほぼ検出されなかった。
【0060】
本実施形態によれば、レーザ加工領域R2をターゲット厚Htの位置に重なるように形成することにより、ウェーハW割断後に研削屑SLがチップCの間隙Gapに侵入することを抑制することができる。
【0061】
[その他]
なお、研削加工を行う際には、6000番以上もしくはポリッシュ等の細かい番手を用いると、面焼けが発生しやすい。一方、粗い番手を用いると、チッピング又は小さなデブリが発生しやすい。このため、3600番等の粗い番手を用いることが好ましい。
【符号の説明】
【0062】
10…ウェーハ加工システム、10-1…レーザ加工装置、10-2…研削装置、12…制御部、14…ウェーハ移動部、16…レーザ加工部、18…研削制御部、20…厚み測定部、22…ウェーハ移動部、50…研削機、52…回転研削盤、54…砥石、T1…吸着ステージ、T2…チャックテーブル