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特許7545113フレキシブルハードコート用硬化性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】フレキシブルハードコート用硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20240828BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20240828BHJP
   C08F 2/46 20060101ALI20240828BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20240828BHJP
   C09C 1/28 20060101ALI20240828BHJP
   C09C 3/12 20060101ALI20240828BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20240828BHJP
   C09D 171/00 20060101ALI20240828BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20240828BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240828BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240828BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20240828BHJP
【FI】
C08F290/06
C08F2/44 Z
C08F2/46
C09D4/02
C09C1/28
C09C3/12
C09D5/00 Z
C09D171/00
C09D7/62
C09D7/63
C09D7/61
C09D7/65
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020571141
(86)(22)【出願日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 JP2020003467
(87)【国際公開番号】W WO2020162323
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2023-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2019020179
(32)【優先日】2019-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】脇田 健吾
(72)【発明者】
【氏名】原口 将幸
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-078341(JP,A)
【文献】国際公開第2016/098823(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/163479(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/016452(WO,A1)
【文献】特開2011-213818(JP,A)
【文献】特開2005-126453(JP,A)
【文献】特開平09-100111(JP,A)
【文献】国際公開第2016/163478(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F290
C08F2
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(a-1)活性エネルギー線硬化性オキシエチレン変性多官能モノマー、及び(a-2)活性エネルギー線硬化性ラクトン変性多官能モノマーからなる群から選択される、活性エネルギー線硬化性多官能モノマー100質量部、
(b)ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含むパーフルオロポリエーテル0.05質量部~10質量部、
(c)含窒素プロトン供与性官能基を有するシランカップリング剤で表面が修飾されたシリカ粒子10質量部~65質量部、及び、
(d)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤1質量部~20質量部
を含み、
前記(b)パーフルオロポリエーテルは、その分子鎖の両末端それぞれにウレタン結合を介して活性エネルギー線重合性基を少なくとも3つ有し、
前記(b)パーフルオロポリエーテルが、下記式[2]で表される化合物であり、
【化1】
(上記式[2]中、Aは下記式[A]~式[A5]で表される構造及びこれらの構造中のアクリロイル基をメタクリロイル基に置換した構造のうちの1つを表し、PFPEは前記ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を表し(ただし、Lと直接結合する側がオキシ末端であり、酸素原子と結合する側がパーフルオロアルキレン末端である。)、Lは、フッ素原子1個~3個で置換された炭素原子数2又は3のアルキレン基を表し、mはそれぞれ独立して1~5の整数を表し、部分構造(A-NHC(=O)O)-は、下記式[B3]で表される構造を表す。)
【化2】
【化3】
前記含窒素プロトン供与性官能基が、アミノ基、ウレア基、チオウレア基、ウレイド基、及びチオウレイド基からなる群から選択される少なくとも1つの基である、
硬化性組成物。
【請求項2】
含窒素プロトン供与性官能基が、アミノ基、ウレア基、チオウレア基、及びウレイド基からなる群から選択される少なくとも1つの基である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記(c)シリカ粒子が、40nm~500nmの平均粒子径を有するシリカ微粒子である、請求項1又は請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基が、繰り返し単位-[OCF]-及び繰り返し単位-[OCFCF]-の双方を有し、これら繰り返し単位をブロック結合、ランダム結合、又は、ブロック結合及びランダム結合にて結合してなる基である、請求項1乃至請求項のうち何れか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記(a-1)活性エネルギー線硬化性オキシエチレン変性多官能モノマーの一部又は全部が、オキシエチレン変性多官能(メタ)アクリレート化合物からなる、請求項1乃至請求項のうち何れか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記(a-1)活性エネルギー線硬化性オキシエチレン変性多官能モノマーは、活性エネルギー線重合性基を1分子中に3以上有するモノマーであって、平均オキシエチレン変性量が該活性エネルギー線重合性基1molに対し3mol未満のモノマーである、請求項1乃至請求項のうち何れか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記(a-1)活性エネルギー線硬化性オキシエチレン変性多官能モノマーは、平均オキシエチレン変性量が前記活性エネルギー線重合性基1molに対し2mol未満のモノマーである、請求項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記(a-2)活性エネルギー線硬化性ラクトン変性多官能モノマーの一部又は全部が、ラクトン変性多官能(メタ)アクリレート化合物からなる、請求項1乃至請求項のうち何れか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記(a-2)活性エネルギー線硬化性ラクトン変性多官能モノマーの一部又は全部が、ε-カプロラクトン変性多官能モノマーである、請求項に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
前記(c)シリカ粒子が、チオウレア基又はウレイド基を有するシランカップリング剤で表面が修飾されたシリカ粒子であり、且つ、
(e)帯電防止剤10質量部~55質量部をさらに含む、請求項1乃至請求項のうち何れか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
前記(e)帯電防止剤として金属酸化物粒子を含む、請求項10に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
前記金属酸化物粒子は、スズ、亜鉛、及びインジウムからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素の酸化物を含む、請求項11に記載の硬化性組成物。
【請求項13】
前記金属酸化物粒子は酸化スズを含む、請求項12に記載の硬化性組成物。
【請求項14】
前記金属酸化物粒子は、リンドープ酸化スズ及び表面が五酸化アンチモンで被覆された酸化スズのうち少なくとも1つを含む、請求項11乃至請求項13のうち何れか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項15】
さらに(f)0.2μm~15μmの平均粒子径を有する微粒子1質量部~40質量部を含む、請求項1乃至請求項14のうち何れか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項16】
前記(f)0.2μm~15μmの平均粒子径を有する微粒子が有機微粒子である、請求項15に記載の硬化性組成物。
【請求項17】
前記有機微粒子がポリメタクリル酸メチル微粒子である、請求項16に記載の硬化性組成物。
【請求項18】
さらに(g)溶媒を含む、請求項1乃至請求項17のうち何れか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項19】
請求項1乃至請求項18のうち何れか一項に記載の硬化性組成物より得られる硬化膜。
【請求項20】
フィルム基材の少なくとも一方の面にハードコート層を備えるハードコートフィルムであって、該ハードコート層が請求項19に記載の硬化膜からなる、ハードコートフィルム。
【請求項21】
前記ハードコート層が1μm~10μmの層厚を有する、請求項20に記載のハードコートフィルム。
【請求項22】
フィルム基材の少なくとも一方の面にハードコート層を備えるハードコートフィルムの製造方法であって、請求項1乃至請求項18のうち何れか一項に記載の硬化性組成物をフィルム基材上に塗布し塗膜を形成する工程と、該塗膜に活性エネルギー線を照射し硬化する工程とを含む、ハードコートフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルディスプレイ等の各種表示素子等の表面に適用されるハードコート層の形成材料として有用な硬化性組成物に関し、耐擦傷性及び延伸性に優れ、さらには帯電防止性及び/又は防眩性をも付与可能なハードコート層を形成可能な硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンは今や最も一般的な携帯電話の形態として普及し、我々の日常生活においてなくてはならないものとなった。スマートフォンの表面には、ディスプレイの傷付き防止のため、カバーガラスが使用されている。近年、上記のディスプレイとして、屈曲可能なディスプレイ、いわゆるフレキシブルディスプレイの開発が行われている。フレキシブルディスプレイは、屈曲及び巻取等の変形が可能なディスプレイとして、幅広い用途が期待されている。しかし一般にガラスは硬く、曲げ戻しが難しいために、フレキシブルディスプレイには応用出来ない。そのため、ガラスに代えて、傷付き防止のための耐擦傷性を有するハードコート層を備えたプラスチックフィルムを、フレキシブルディスプレイの表面に適用することが試みられている。ハードコート層を備えたプラスチックフィルムを表面に適用したフレキシブルディスプレイを、そのディスプレイ側を外側にして(すなわちハードコート層を外側にして)湾曲させた場合、最表面のハードコート層には引張方向の応力が生じることから、該ハードコート層には、一定の延伸性を有することが求められる。
【0003】
また一般にハードコート層に耐擦傷性を付与する手法として、例えば、高密度の架橋構造を形成する、すなわち分子運動性の低い架橋構造を形成することで表面硬度を高め、外力への抵抗性を与える手法が採られる。これらのハードコート層を形成する材料として、現在、ラジカルにより3次元架橋する多官能アクリレート系材料が最も用いられている。しかし、多官能アクリレート系材料は、その高い架橋密度のため、通常、延伸性に劣る。このように、ハードコート層の延伸性と耐擦傷性とはトレードオフの関係にあり、両者の特性を両立させることが課題となる。
【0004】
これまで耐擦傷性を向上させる手法の一つとして、ハードコート層を形成する硬化性組成物にシリコーン又はフッ素系の表面改質剤を混ぜ、硬化膜表面に滑り性を付与する手法が知られている。
また、多官能アクリレートと高硬度なシリカ微粒子とを併用することにより、耐擦傷性と延伸性との両立を図ったハードコート層の技術が報告されている(特許文献1)。
【0005】
一方、ディスプレイのフロント保護材としてハードコートフィルムが用いられる場合、ラミネート時に発生した静電気による埃等の付着抑制、及びディスプレイの誤動作防止のため、帯電防止性の付与が求められることがある。こうした静電気対策としては、表面抵抗値が1010Ω/□程度であることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-131409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これまでに提案された特許文献1に記載のシリカ微粒子添加ハードコート層では、多官能アクリレート及びシリカ微粒子間の物理的相互作用が弱く、十分な耐擦傷性を得ることが困難であり、延伸性も満足行く水準では無かった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、オキシエチレン変性或いはラクトン変性の多官能モノマーと、含窒素プロトン供与性官能基を有するシランカップリング剤で表面が修飾されたシリカ粒子と、表面改質剤としてポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含むパーフルオロポリエーテルとを含む硬化性組成物が、耐擦傷性を維持しつつ、延伸性を向上可能なハードコート層を形成可能であること、さらには帯電防止性能及び/又は防眩性をも付与可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は第1観点として、
(a)(a-1)活性エネルギー線硬化性オキシエチレン変性多官能モノマー、及び(a-2)活性エネルギー線硬化性ラクトン変性多官能モノマーからなる群から選択される、活性エネルギー線硬化性多官能モノマー100質量部、
(b)ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含むパーフルオロポリエーテル0.05質量部~10質量部、
(c)含窒素プロトン供与性官能基を有するシランカップリング剤で表面が修飾されたシリカ粒子10質量部~65質量部、及び、
(d)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤1質量部~20質量部
を含む、硬化性組成物に関する。
第2観点として、含窒素プロトン供与性官能基が、アミノ基、アミド基、ウレア基、チオウレア基、ウレタン基、チオウレタン基、ウレイド基、及びチオウレイド基からなる群から選択される少なくとも1つの基である、第1観点に記載の硬化性組成物に関する。
第3観点として、含窒素プロトン供与性官能基が、アミノ基、ウレア基、チオウレア基、及びウレイド基からなる群から選択される少なくとも1つの基である、第2観点に記載の硬化性組成物に関する。
第4観点として、前記(c)シリカ粒子が、40nm~500nmの平均粒子径を有するシリカ微粒子である、第1観点乃至第3観点のうち何れか一つに記載の硬化性組成物に関する。
第5観点として、前記(b)パーフルオロポリエーテルは、その分子鎖の末端にウレタン結合を介して活性エネルギー線重合性基を有する、第1観点乃至第4観点のうち何れか一つに記載の硬化性組成物に関する。
第6観点として、前記(b)パーフルオロポリエーテルは、その分子鎖の末端にウレタン結合を介して活性エネルギー線重合性基を少なくとも2つ有する、第1観点乃至第5観点のうち何れか一つに記載の硬化性組成物に関する。
第7観点として、前記(b)パーフルオロポリエーテルは、その分子鎖の片末端にウレタン結合を介して活性エネルギー線重合性基を少なくとも2つ有する、第1観点乃至第6観点のうち何れか一つに記載の硬化性組成物に関する。
第8観点として、前記(b)パーフルオロポリエーテルは、その分子鎖の両末端それぞれにウレタン結合を介して活性エネルギー線重合性基を少なくとも3つ有する、第1観点乃至第6観点のうち何れか一つに記載の硬化性組成物に関する。
第9観点として、前記ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基が、繰り返し単位-[OCF]-及び繰り返し単位-[OCFCF]-の双方を有し、これら繰り返し単位をブロック結合、ランダム結合、又は、ブロック結合及びランダム結合にて結合してなる基である、第1観点乃至第8観点のうち何れか一つに記載の硬化性組成物に関する。
第10観点として、前記(b)パーフルオロポリエーテルが、下記式[1]で表される部分構造を有する、第9観点に記載の硬化性組成物に関する。
【化1】
(上記式[1]中、
nは、繰り返し単位-[OCFCF]-の数と、繰り返し単位-[OCF]-の数との総数であって5~30の整数を表し、
前記繰り返し単位-[OCFCF]-と、前記繰り返し単位-[OCF]-は、ブロック結合、ランダム結合、又は、ブロック結合及びランダム結合の何れかにて結合してなる。)
第11観点として、前記(a-1)活性エネルギー線硬化性オキシエチレン変性多官能モノマーの一部又は全部が、オキシエチレン変性多官能(メタ)アクリレート化合物からなる、第1観点乃至第10観点のうち何れか一つに記載の硬化性組成物に関する。
第12観点として、前記(a-1)活性エネルギー線硬化性オキシエチレン変性多官能モノマーは、活性エネルギー線重合性基を1分子中に3以上有するモノマーであって、平均オキシエチレン変性量が該活性エネルギー線重合性基1molに対し3mol未満のモノマーである、第1観点乃至第11観点のうち何れか一つに記載の硬化性組成物に関する。
第13観点として、前記(a-1)活性エネルギー線硬化性オキシエチレン変性多官能モノマーは、平均オキシエチレン変性量が前記活性エネルギー線重合性基1molに対し2mol未満のモノマーである、第12観点に記載の硬化性組成物に関する。
第14観点として、前記(a-2)活性エネルギー線硬化性ラクトン変性多官能モノマーの一部又は全部が、ラクトン変性多官能(メタ)アクリレート化合物からなる、第1観点乃至第13観点のうち何れか一つに記載の硬化性組成物に関する。
第15観点として、前記(a-2)活性エネルギー線硬化性ラクトン変性多官能モノマーの一部又は全部が、ε-カプロラクトン変性多官能モノマーである、第14観点に記載の硬化性組成物に関する。
第16観点として、前記(c)シリカ粒子が、チオウレア基又はウレイド基を有するシランカップリング剤で表面が修飾されたシリカ粒子であり、且つ、
(e)帯電防止剤10質量部~55質量部をさらに含む、第1観点乃至第15観点のうち何れか一つに記載の硬化性組成物に関する。
第17観点として、前記(e)帯電防止剤として金属酸化物粒子を含む、第16観点に記載の硬化性組成物に関する。
第18観点として、前記金属酸化物粒子は、スズ、亜鉛、及びインジウムからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素の酸化物を含む、第17観点に記載の硬化性組成物に関する。
第19観点として、前記金属酸化物粒子は酸化スズを含む、第18観点に記載の硬化性組成物に関する。
第20観点として、前記金属酸化物粒子は、リンドープ酸化スズ及び表面が五酸化アンチモンで被覆された酸化スズのうち少なくとも1つを含む、第17観点乃至第19観点のうち何れか一つに記載の硬化性組成物に関する。
第21観点として、さらに(f)0.2μm~15μmの平均粒子径を有する微粒子1質量部~40質量部を含む、第1観点乃至第20観点のうち何れか一つに記載の硬化性組成物に関する。
第22観点として、前記(f)0.2μm~15μmの平均粒子径を有する微粒子が有機微粒子である、第21観点に記載の硬化性組成物に関する。
第23観点として、前記有機微粒子がポリメタクリル酸メチル微粒子である、第22観点に記載の硬化性組成物に関する。
第24観点として、さらに(g)溶媒を含む、第1観点乃至第23観点のうち何れか一つに記載の硬化性組成物に関する。
第25観点として、第1観点乃至第24観点のうち何れか一つに記載の硬化性組成物より得られる硬化膜に関する。
第26観点として、フィルム基材の少なくとも一方の面にハードコート層を備えるハードコートフィルムであって、該ハードコート層が第25観点に記載の硬化膜からなる、ハードコートフィルムに関する。
第27観点として、前記ハードコート層が1μm~10μmの層厚を有する、第26観点に記載のハードコートフィルムに関する。
第28観点として、フィルム基材の少なくとも一方の面にハードコート層を備えるハードコートフィルムの製造方法であって、該ハードコート層が、第1観点乃至第24観点のうち何れか一つに記載の硬化性組成物をフィルム基材上に塗布し塗膜を形成する工程と、該塗膜に活性エネルギー線を照射し硬化する工程とを含む、ハードコートフィルムの製造方法に関する。
第29観点として、含窒素プロトン供与性官能基を有するシランカップリング剤で表面が修飾されたシリカ粒子に関する。
第30観点として、40nm~500nmの平均粒子径を有する第29観点に記載のシリカ粒子に関する。
第31観点として、前記含窒素プロトン供与性官能基が、チオウレア基又はチオウレタン基である、第29観点又は第30観点に記載のシリカ粒子に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、厚さ1μm~10μm程度の薄膜においても優れた耐擦傷性と高い延伸性とを両立する硬化膜及びハードコート層の形成に有用な硬化性組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、前記硬化性組成物より得られる硬化膜又は該硬化膜より形成されるハードコート層が表面に付与されたハードコートフィルムを提供することができ、耐擦傷性、延伸性に優れるハードコートフィルムを提供することができる。
更に本発明によれば、上記の性能に加え、帯電防止性及び/又は防眩性をも付与した硬化膜及びハードコート層の形成に有用な硬化性組成物、並びにこれら性能に優れるハードコート層が表面に付与されたハードコートフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<硬化性組成物>
本発明の硬化性組成物は、詳細には、
(a)(a-1)活性エネルギー線硬化性オキシエチレン変性多官能モノマー、及び(a-2)活性エネルギー線硬化性ラクトン変性多官能モノマーからなる群から選択される、活性エネルギー線硬化性多官能モノマー100質量部、
(b)ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含むパーフルオロポリエーテル0.05質量部~10質量部、
(c)含窒素プロトン供与性官能基を有するシランカップリング剤で表面が修飾されたシリカ粒子10質量部~65質量部、及び、
(d)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤1質量部~20質量部
を含む、硬化性組成物を含む、硬化性組成物に関する
以下、まず上記(a)~(d)の各成分について説明する。
【0012】
[(a)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー]
本発明では(a)成分の活性エネルギー線硬化性多官能モノマーとして、後述する(a-1)活性エネルギー線硬化性オキシエチレン変性多官能モノマー、又は、(a-2)活性エネルギー線硬化性ラクトン変性多官能モノマーを使用する。これら(a-1)活性エネルギー線硬化性オキシエチレン変性多官能モノマーと(a-2)活性エネルギー線硬化性ラクトン変性多官能モノマーを併用してもよい。
(a)成分は、紫外線等の活性エネルギー線を照射することで重合反応が進行し硬化する活性エネルギー線重合性基を2つ以上有し、且つ、オキシエチレン基又はラクトン由来の基を有する多官能モノマーである。前記活性エネルギー線重合性基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。
【0013】
[(a-1)活性エネルギー線硬化性オキシエチレン変性多官能モノマー]
本発明で使用する(a-1)活性エネルギー線硬化性オキシエチレン変性多官能モノマーは、活性エネルギー線重合性基を2以上有するモノマーである。好ましくは、平均オキシエチレン変性量が前記活性エネルギー線重合性基1molに対し3mol未満のモノマーである。
【0014】
本発明の硬化性組成物において好ましい(a-1)活性エネルギー線硬化性オキシエチレン変性多官能モノマーとしては、活性エネルギー線重合性基を少なくとも3つ有し、平均オキシエチレン変性量が前記活性エネルギー線重合性基1molに対し3mol未満である、オキシエチレン変性多官能(メタ)アクリレート化合物からなる群から選択されるモノマーであり、また例えばオキシエチレン変性多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物からなる群から選択されるモノマーを挙げることができる。
なお、本発明において(メタ)アクリレート化合物とは、アクリレート化合物とメタクリレート化合物の両方をいう。例えば(メタ)アクリル酸は、アクリル酸とメタクリル酸をいう。
【0015】
上記オキシエチレン変性多官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、オキシエチレンで変性されたポリオールの(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
該ポリオールとしては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、デカグリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0016】
また上記(a-1)活性エネルギー線硬化性オキシエチレン変性多官能モノマーにおいて、平均オキシエチレン変性量は、該モノマーが有する活性エネルギー線重合性基1molに対し3mol未満であり、好ましくは、該モノマーが有する活性エネルギー線重合性基1molに対し2mol未満とすることができる。また、前記平均オキシエチレン変性量は、該モノマーが有する活性エネルギー線重合性基1molに対して0molより大きく、好ましくは、該モノマーが有する活性エネルギー線重合性基1molに対して0.1mol以上、より好ましくは0.5mol以上とすることができる。
さらに、(a-1)活性エネルギー線硬化性オキシエチレン変性多官能モノマー1分子に対する、オキシエチレンの付加数は、1~30、好ましくは1~12とすることができる。
【0017】
本発明では、上記(a-1)活性エネルギー線硬化性オキシエチレン変性多官能モノマーとして一種を単独で、或いは二種以上を組合せて使用することができる。
【0018】
[(a-2)活性エネルギー線硬化性ラクトン変性多官能モノマー]
本発明で使用する(a-2)活性エネルギー線硬化性ラクトン変性多官能モノマーとは、紫外線等の活性エネルギー線を照射することで重合反応が進行し、硬化する、ラクトンで変性された多官能モノマーを指す。
本発明の硬化性組成物において好ましい(a)活性エネルギー線硬化性ラクトン変性多官能モノマーとしては、ラクトン変性多官能(メタ)アクリレート化合物からなる群から選択されるモノマーである。
【0019】
上記ラクトン変性多官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等のラクトンで変性された(すなわちラクトンを開環付加又は開環付加重合させた)ポリオール又はポリチオールの(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
該ポリオールとしては、例えば、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、グリセリン、ビスフェノールA、エトキシ化トリメチロールプロパン、エトキシ化ペンタエリスリトール、エトキシ化ジペンタエリスリトール、エトキシ化グリセリン、エトキシ化ビスフェノールA、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール、1,3-アダマンタンジオール、1,3-アダマンタンジメタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジオキサングリコール、ビス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン等が挙げられる。
また、該チオールとしては、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、ビス(4-メルカプトフェニル)スルフィド等が挙げられる。
【0020】
このようなラクトン変性多官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ラクトン変性ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ラクトン変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ラクトン変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ラクトン変性2-ヒドロキシ-1,3-ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン、ラクトン変性2-ヒドロキシ-1-アクリロイルオキシ-3-メタクリロイルオキシプロパン、ラクトン変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、ラクトン変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ラクトン変性エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ラクトン変性エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ラクトン変性エトキシ化ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ラクトン変性エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、ラクトン変性エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ラクトン変性1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ラクトン変性1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ラクトン変性1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ラクトン変性1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ラクトン変性2-メチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、ラクトン変性1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ラクトン変性1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ラクトン変性トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ラクトン変性1,3-アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ラクトン変性1,3-アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ラクトン変性エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ラクトン変性ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ラクトン変性トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ラクトン変性テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ラクトン変性ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ラクトン変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ラクトン変性ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ラクトン変性ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ラクトン変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ラクトン変性ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、ラクトン変性ビス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、ラクトン変性トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ラクトン変性9,9-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン、ラクトン変性9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、ラクトン変性ビス[2-(メタ)アクリロイルチオエチル]スルフィド、ラクトン変性ビス[4-(メタ)アクリロイルチオフェニル]スルフィド等が挙げられる。
【0021】
中でも、変性するラクトンとしてはε-カプロラクトンが好ましく、例えば、上記のラクトン変性多官能(メタ)アクリレート化合物のラクトンがε-カプロラクトンである化合物が好ましい。
より好ましいラクトン変性多官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ε-カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0022】
また、ラクトン変性多官能(メタ)アクリレート化合物として、ラクトン変性多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物を挙げることができる。上記ラクトン変性多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、1分子内に(メタ)アクリロイル基を複数有し、ウレタン結合(-NHCOO-)、及び、例えば、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等のラクトンの開環構造を有する化合物である。
例えば上記ラクトン変性多官能ウレタン(メタ)アクリレートとしては、多官能イソシアネートとラクトンで変性されたヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとの反応により得られるもの、多官能イソシアネートとヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとラクトンで変性されたポリオールとの反応により得られるものなどが挙げられるが、本発明で使用可能なラクトン変性多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0023】
なお上記多官能イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
また上記ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
そして上記ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のジオール類;これらジオール類とコハク酸、マレイン酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸類又はジカルボン酸無水物類との反応生成物であるポリエステルポリオール;ポリエーテルポリオール;ポリカーボネートジオール等が挙げられる。
【0024】
本発明では、上記(a-2)活性エネルギー線硬化性ラクトン変性多官能モノマーとして一種を単独で、或いは二種以上を組合せて使用することができる。
【0025】
[(b)ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含むパーフルオロポリエーテル]
上記ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基におけるアルキレン基の炭素原子数は特に限定されないが、炭素原子数1~4であることが好ましい。すなわち、上記ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基は、炭素原子数1~4の2価のフッ化炭素基と酸素原子が交互に連結した構造を有する基を指し、オキシパーフルオロアルキレン基は炭素原子数1~4の2価のフッ化炭素基と酸素原子が連結した構造を有する基を指す。具体的には、-[OCF]-(オキシパーフルオロメチレン基)、-[OCFCF]-(オキシパーフルオロエチレン基)、-[OCFCFCF]-(オキシパーフルオロプロパン-1,3-ジイル基)、-[OCFC(CF)F]-(オキシパーフルオロプロパン-1,2-ジイル基)等の基が挙げられる。
上記オキシパーフルオロアルキレン基は、一種を単独で使用してもよく、或いは二種以上を組み合わせて使用してもよく、その場合、複数種のオキシパーフルオロアルキレン基の結合はブロック結合及びランダム結合の何れであってもよい。
【0026】
これらの中でも、耐擦傷性が良好となる硬化膜が得られる観点から、ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基として、-[OCF]-(オキシパーフルオロメチレン基)と-[OCFCF]-(オキシパーフルオロエチレン基)の双方を繰り返し単位として有する基を用いることが好ましい。
中でも上記ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基として、繰り返し単位:-[OCF]-と-[OCFCF]-とが、モル比率で[繰り返し単位:-[OCF]-]:[繰り返し単位:-[OCFCF]-]=2:1~1:2となる割合で含む基であることが好ましく、およそ1:1となる割合で含む基であることがより好ましい。これら繰り返し単位の結合は、ブロック結合及びランダム結合の何れであってもよい。
上記オキシパーフルオロアルキレン基の繰り返し単位数は、その繰り返し単位数の総計として5~30の範囲であることが好ましく、7~21の範囲であることがより好ましい。
また、上記ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基のゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量(Mw)は、1,000~5,000、好ましくは1,500~3,000である。
【0027】
本発明では、(b)成分として、ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含むパーフルオロポリエーテルであって、その分子鎖の末端に、ウレタン結合を介して活性エネルギー線重合性基を有するパーフルオロポリエーテル(以降、単に「(b)分子鎖の末端に重合性基を有するパーフルオロポリエーテル」とも称する)を使用することができる。前記パーフルオロポリエーテルの分子鎖の末端は、該分子鎖の全ての末端及び一部の末端、いずれでもよい。前記パーフルオロポリエーテルの分子鎖が直鎖状である場合、前記分子鎖の全ての末端及び一部の末端は、それぞれ該直鎖状の分子鎖の両末端及び片末端である。(b)成分は、前記ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基と前記ウレタン結合との間にポリ(オキシアルキレン)基を有するパーフルオロポリエーテルを除外することができる。(b)成分は、本発明の硬化性組成物を適用するハードコート層における表面改質剤としての役割を果たす。
また、(b)成分は、(a)成分との相溶性に優れ、それにより、ハードコート層が白濁するのを抑制して、透明な外観を呈するハードコート層の形成を可能とする。
【0028】
上記活性エネルギー線重合性基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。
【0029】
(b)分子鎖の末端に重合性基を有するパーフルオロポリエーテルは、1つの活性エネルギー線重合性基を該分子鎖の末端に有するものに限られず、2つ以上の活性エネルギー線重合性基を該分子鎖の末端に有するものであってもよく、例えば、活性エネルギー線重合性基を含む末端構造としては、以下に示す式[A1]~式[A5]の構造、及びこれらの構造中のアクリロイル基をメタクリロイル基に置換した構造が挙げられる。
【0030】
【化2】
【0031】
このような(b)分子鎖の末端に重合性基を有するパーフルオロポリエーテルとしては、例えば、以下の式[2]で表される化合物を挙げることができる。
【化3】
(式[2]中、Aは前記式[A1]~式[A5]で表される構造及びこれらの構造中のアクリロイル基をメタクリロイル基に置換した構造のうちの1つを表し、PFPEは前記ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を表し(ただし、Lと直接結合する側がオキシ末端であり、酸素原子と結合する側がパーフルオロアルキレン末端である。)、Lは、フッ素原子1個~3個で置換された炭素原子数2又は3のアルキレン基を表し、mはそれぞれ独立して1~5の整数を表し、Lは、m+1価のアルコールからOHを除いたm+1価の残基を表す。)
【0032】
上記フッ素原子1個~3個で置換された炭素原子数2又は3のアルキレン基としては、-CHCHF-、-CHCF-、-CHFCF-、-CHCHCHF-、-CHCHCF-、-CHCHFCF-等が挙げられ、-CHCF-が好ましい。
【0033】
上記式[2]で表される化合物における部分構造(A-NHC(=O)O)-としては、以下に示す式[B1]~式[B12]で表される構造等が挙げられる。
【化4】
【化5】
(式[B1]~式[B12]中、Aは前記式[A1]~式[A5]で表される構造及びこれらの構造中のアクリロイル基をメタクリロイル基に置換した構造のうちの1つを表す。)
上記式[B1]~式[B12]で表される構造の中で、式[B1]及び式[B2]がm=1の場合に相当し、式[B3]~式[B6]がm=2の場合に相当し、式[B7]~式[B9]がm=3の場合に相当し、式[B10]~式[B12]がm=5の場合に相当する。
これらの中でも、式[B3]で表される構造が好ましく、特に式[B3]と式[A3]の組合せが好ましい。
【0034】
(b)分子鎖の末端に重合性基を有するパーフルオロポリエーテルのうち特に好ましいものとして、下記式[1]で表される部分構造を有する化合物が挙げられる。
【化6】
式[1]で表される部分構造は、式[2]で表される化合物から、A-NHC(=O)を除いた部分に相当する。
式[1]中のnは、繰り返し単位-[OCFCF]-の数と、繰り返し単位-[OCF]-の数との総数を表し、5~30の範囲の整数が好ましく、7~21の範囲の整数がより好ましい。また、繰り返し単位-[OCFCF]-の数と、繰り返し単位-[OCF]-の数との比率は、2:1~1:2の範囲であることが好ましく、およそ1:1の範囲とすることがより好ましい。これら繰り返し単位の結合は、ブロック結合及びランダム結合の何れであってもよい。
【0035】
本発明において(b)分子鎖の末端に重合性基を有するパーフルオロポリエーテルは、前述の(a)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー100質量部に対して、0.05質量部~10質量部、好ましくは0.1質量部~5質量部の割合で使用する。
(b)分子鎖の末端に重合性基を有するパーフルオロポリエーテルを0.05質量部以上の割合で使用することで、ハードコート層に十分な耐擦傷性を付与することができる。また、(b)分子鎖の末端に重合性基を有するパーフルオロポリエーテルを10質量部以下の割合で使用することにより、(a)活性エネルギー線硬化性多官能モノマーと十分に相溶し、より白濁の少ないハードコート層を得ることができる。
【0036】
上記(b)分子鎖の末端に重合性基を有するパーフルオロポリエーテルは、例えば、下記式[3]
【化7】
(式[3]中、PFPE、L、L及びmは、前記式[2]と同じ意味を表す。)で表される化合物の両末端に存在するヒドロキシ基に対して、重合性基を有するイソシアネート化合物、即ち、前記式[A1]~式[A5]で表される構造及びこれらの構造中のアクリロイル基をメタクリロイル基に置換した構造における結合手にイソシアナト基が結合した化合物(例えば、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1-ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等)を反応させてウレタン結合を形成することにより得ることができる。
【0037】
なお本発明の硬化性組成物の(b)ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含むパーフルオロポリエーテルは、ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含むパーフルオロポリエーテルであって、その分子鎖の片末端(一方の末端)にウレタン結合を介して、活性エネルギー線重合性基を有し、且つその分子鎖の他端(もう一方の末端)にヒドロキシ基を有するパーフルオロポリエーテルや、上記式[3]で表されるような、ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含むパーフルオロポリエーテルであって、その分子鎖の両末端にヒドロキシ基を有するパーフルオロポリエーテル[活性エネルギー線重合性基を有していない化合物]が含まれていてもよい。前記ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基と前記ウレタン結合の間、並びに前記ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基と前記ヒドロキシ基との間にポリ(オキシアルキレン)基を有さないという条件を付加することができる。
【0038】
[(c)含窒素プロトン供与性官能基を有するシランカップリング剤で表面が修飾されたシリカ粒子]
(c)成分は、後述する含窒素プロトン供与性官能基を有するシランカップリング剤で表面が修飾されたシリカ粒子(以下、単に「(c)シリカ粒子」とも称する)である。
本発明の硬化性組成物において、(c)含窒素プロトン供与性官能基を有するシランカップリング剤で表面が修飾されたシリカ粒子は、(a)多官能モノマーとの相互作用により、耐擦傷性を損なうことなく延伸性を付与することができる。
【0039】
上記シリカ粒子自体の形状は特に限定されないが、例えば、ビーズ状の略球形であってもよく、粉末等の不定形のものであってもよいが、略球形のものが好ましく、より好ましくは、アスペクト比が1.5以下の略球形の粒子であり、最も好ましくは真球状粒子である。
【0040】
本発明で使用するシリカ粒子自体の平均粒子径は40nm~500nmの範囲であり、例えば40nm~350nm、好ましくは60nm~250nm、又は70nm~250nmの範囲にあることが好ましい。ここで平均粒子径(nm)とは、Mie理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定して得られる50%体積径(メジアン径)である。前記シリカ粒子の平均粒子径を上記数値範囲内とすることにより耐擦傷性に優れる硬化膜を得ることができる。
なお前記シリカ粒子は、その粒度分布については特に限定されないが、粒子径の揃った単分散の微粒子であることが好ましい。
また、前記シリカ粒子は、その平均粒子径が、後述する本発明の硬化性組成物より得られる硬化膜の膜厚に対して、シリカ微粒子の平均粒子径b/膜厚a=0.01~1.0の範囲を満たすように選択することが好ましい。
【0041】
上記シリカ粒子としては、例えば、上記平均粒子径の値を有するコロイダルシリカを好適に使用でき、該コロイダルシリカとしては、シリカゾルを用いることができる。シリカゾルとしては、ケイ酸ナトリウム水溶液を原料として公知の方法により製造される水性シリカゾル及び該水性シリカゾルの分散媒である水を有機溶媒に置換して得られるオルガノシリカゾルを使用することができる。
また、メチルシリケートやエチルシリケート等のアルコキシシランを、アルコール等の有機溶媒中で触媒(例えば、アンモニア、有機アミン化合物、水酸化ナトリウム等のアルカリ触媒)の存在下において加水分解し、縮合して得られるシリカゾル、又はそのシリカゾルを他の有機溶媒に溶媒置換したオルガノシリカゾルも用いることができる。
【0042】
上述のオルガノシリカゾルにおける有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール、2-プロパノール等の低級アルコール;メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン類;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)等の直鎖アミド類;N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等の環状アミド類;γ-ブチロラクトン等のエーテル類;エチルセロソルブ、エチレングリコール等のグリコール類;アセトニトリル等が挙げられる。
水性シリカゾルの分散媒である水の置換や、目的とする別の有機溶媒への置換は、蒸留法、限外濾過法等による通常の方法により行うことができる。
上記のオルガノシリカゾルの粘度は、20℃で、0.6mPa・s~100mPa・s程度である。
【0043】
上記水性シリカゾル、オルガノシリカゾルの市販品の例としては、例えばシーホスター(登録商標)KEシリーズ[(株)日本触媒製]、スノーテックス(登録商標)シリーズ[日産化学(株)製]等を用いることができる。
【0044】
本発明において、シリカ粒子の表面修飾には、含窒素プロトン供与性官能基を有するシランカップリング剤を用いる。
上記含窒素プロトン供与性官能基としては、アミノ基、アミド基(-C(=O)NH-)、ウレア基(-NHC(=O)NH-)、チオウレア基(-NHC(=S)NH-)、ウレタン基(-NHC(=O)O-)、チオウレタン基(-NHC(=S)S-)、ウレイド基(-NHC(=O)NH)、チオウレイド基(-NHC(=S)NH)などが挙げられ、中でも、アミノ基、ウレア基、チオウレア基、ウレイド基が好ましく、硬化膜の透明性を考慮すると特にウレア基、チオウレア基、ウレイド基が好ましい。
本発明で使用する、シリカ粒子の表面修飾に用いるシランカップリング剤は、上記含窒素プロトン供与性官能基を1以上有していればよく、2以上有していてもよく、或いは複数種の含窒素プロトン供与性官能基を有していてもよい。
【0045】
含窒素プロトン供与性官能基を有するシランカップリング剤で表面が修飾されたシリカ粒子は、上記含窒素プロトン供与性官能基を有するシランカップリング剤とシリカ微粒子とを水分もしくはアルコール存在下で混合させることで調製することができる。含窒素プロトン供与性官能基を有するシランカップリング剤は、加水分解によりシラノール基を生成し、シリカ粒子表面に存在するシラノール基と縮合反応して結合し、含窒素プロトン供与性官能基を有するシランカップリング剤によって表面が修飾された、シリカ粒子が形成されると考えられる。
具体的には、例えば、シリカ粒子のコロイド溶液(シリカゾル)と含窒素プロトン供与性官能基を有するシランカップリング剤とを混合することで、含窒素プロトン供与性官能基を有するシランカップリング剤で表面が修飾されたシリカ粒子を調製することができる。コロイド溶液と該シランカップリング剤の混合は常温で行ってもよく、加熱しながら行ってもよい。反応効率の観点から、混合は加熱しながら行うことが好ましい。混合を加熱しながら行う場合、その加熱温度は溶媒等に応じて適宜選択することができる。加熱温度は例えば、30℃以上とすることができる。
含窒素プロトン供与性官能基を有するシランカップリング剤とシリカ粒子との混合割合は、シリカ粒子の大きさや含窒素プロトン供与性官能基の種類にもよるが、例えばシリカ粒子表面の単位面積(1nm)に対しシランカップリング剤分子が0.01個~5個、好ましくは0.05個~2個、より好ましくは0.1個~1個となる量とすることができる。ここで、シリカ粒子の表面積は、窒素吸着法(BET法)により測定された比表面積より算出する。
【0046】
本発明において(c)シリカ粒子は、前述の(a)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー100質量部に対して、10質量部~65質量部、例えば10質量部~50質量部、好ましくは10質量部~45質量部の割合で使用する。
【0047】
なお、本発明は、含窒素プロトン供与性官能基を有するシランカップリング剤で表面が修飾されたシリカ粒子も対象とする。例えばチオウレア基又はウレイド基を有するシランカップリング剤で表面が修飾されたシリカ粒子は、後述する(e)帯電防止剤と併用したとき、硬化膜に対する耐擦傷性及び延伸性の付与だけでなく、硬化膜の帯電防止性付与と良好な塗膜表面(外観)が得られる観点から好ましい。また、好ましい例として、チオウレア基又はチオウレタン基を有するシランカップリング剤で表面が修飾されたシリカ粒子を挙げることができる。
【0048】
[(d)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤]
本発明の硬化性組成物において好ましい活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤(以下、単に「(d)重合開始剤」とも称する)は、例えば、電子線、紫外線、X線等の活性エネルギー線により、特に紫外線照射によりラジカルを発生する重合開始剤である。
上記(d)重合開始剤としては、例えばベンゾイン類、アルキルフェノン類、チオキサントン類、アゾ類、アジド類、ジアゾ類、o-キノンジアジド類、アシルホスフィンオキシド類、オキシムエステル類、有機過酸化物、ベンゾフェノン類、ビスクマリン類、ビスイミダゾール類、チタノセン類、チオール類、ハロゲン化炭化水素類、トリクロロメチルトリアジン類、及びヨードニウム塩、スルホニウム塩などのオニウム塩類等が挙げられる。これらは一種単独で或いは二種以上を混合して用いてもよい。
中でも本発明では、透明性、表面硬化性、薄膜硬化性の観点から(d)重合開始剤として、アルキルフェノン類を使用することが好ましい。アルキルフェノン類を使用することにより、耐擦傷性がより向上した硬化膜を得ることができる。
【0049】
上記アルキルフェノン類としては、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン等のα-ヒドロキシアルキルフェノン類;2-メチル-1-(4-(メチルチオ)フェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン等のα-アミノアルキルフェノン類;2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン;フェニルグリオキシル酸メチルなどが挙げられる。
【0050】
本発明において(d)重合開始剤は、前述の(a)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー100質量部に対して、1質量部~20質量部、好ましくは2質量部~10質量部の割合で使用する。
【0051】
[(e)帯電防止剤]
本発明の硬化性組成物は、(e)帯電防止剤として更に金属酸化物粒子を含んでいてもよい。なお金属酸化物粒子を含む場合、前記(c)シリカ粒子としてチオウレア基又はウレイド基を有するシランカップリング剤で表面が修飾されたシリカ粒子を用いることにより、該硬化性組成物より形成されるハードコート層における帯電防止性能と良好な塗膜表面(外観)とを両立させることができる。
【0052】
前記金属酸化物粒子は、その一次粒子径が4nm~100nmの微粒子とすることができる。前記金属酸化物粒子はその一次粒子径を上記数値範囲内とすることにより耐擦傷性及び延伸性に影響を与えることなく帯電防止性を付与することができ、また透明性の実現につながる硬化膜を得ることができる。
なお、本発明において、金属酸化物粒子における一次粒子径とは、透過型電子顕微鏡を用いて観察される個々の粒子の粒子径を指す。
【0053】
上記金属酸化物粒子としては、例えばスズ、亜鉛、及びインジウムからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素の酸化物を含むことができる。具体的には酸化スズ(SnO)、スズドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、リンドープ酸化スズ(PTO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AlZO)、アンチモンドープ酸化亜鉛(AZO)、インジウムドープ酸化亜鉛又は酸化亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)、酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)を挙げることができ、中でもリンドープ酸化スズ(PTO)が好ましい。
【0054】
上記金属酸化物粒子としてまた、金属酸化物を核とし、その表面が酸性又は塩基性の酸化物で被覆された表面被覆型金属酸化物粒子を挙げることができる。前記核として、例えば酸化スズ等の上記金属酸化物粒子の他、酸化チタン、酸化チタン-酸化スズ複合体、酸化ジルコニウム-酸化スズ複合体、酸化タングステン-酸化スズ複合体、酸化チタン-酸化ジルコニウム-酸化スズ複合体を挙げることができる。前記酸性又は塩基性の酸化物として、例えば五酸化アンチモン、酸化ケイ素-五酸化アンチモン複合体、酸化ケイ素-酸化スズ複合体が挙げることができる。
【0055】
本発明において(e)金属酸化物粒子を含有する場合、前述の(a)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー100質量部に対して、10質量部~55質量部、好ましくは10質量部~45質量部の割合で含む。
【0056】
[(f)0.2μm~15μmの平均粒子径を有する微粒子]
本発明の硬化性組成物は、更に(f)0.2μm~15μmの平均粒子径を有する微粒子(以下、単に「(f)微粒子」とも称する)を含んでいてもよい。(f)微粒子は、該硬化性組成物より形成されるハードコート層の表面を凹凸形状にして防眩性を付与する。
本発明では上記(f)微粒子として、有機微粒子を使用することが好ましい。有機微粒子は、その屈折率とハードコート層形成材料である硬化性組成物との屈折率との差を制御することで、ハードコート層のヘーズ値を制御する役割をも担うことができる。
前記有機微粒子の形状は特に限定されないが、例えば、ビーズ状の略球形であってもよく、粉末等の不定形のものであってもよいが、略球形のものが好ましく、より好ましくは、アスペクト比が1.5以下の略球形の粒子であり、最も好ましくは真球状粒子である。
【0057】
前記有機微粒子としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル微粒子(PMMA微粒子)、シリコーン微粒子、ポリスチレン微粒子、ポリカーボネート微粒子、アクリルスチレン微粒子、ベンゾグアナミン微粒子、メラミン微粒子、ポリオレフィン微粒子、ポリエステル微粒子、ポリアミド微粒子、ポリイミド微粒子、ポリフッ化エチレン微粒子等があげられる。これらの有機微粒子は、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
なかでも、前記有機微粒子としてポリメタクリル酸メチル微粒子を好適に用いることができる。
【0058】
本発明で使用する前記有機微粒子の平均粒子径は0.2μm~15μmの範囲であり、例えば1μm~10μmの範囲であることが好ましい。ここで平均粒子径(μm)とは、Mie理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定して得られる50%体積径(メジアン径)である。前記有機微粒子の平均粒子径が上記数値範囲より大きくなると、ディスプレイの画像鮮明性が低下し、また上記数値範囲より小さいと、十分な防眩性が得られず、ギラツキも大きくなるという問題が生じやすくなる。なお前記有機微粒子は、その粒度分布については特に限定されないが、粒子径の揃った単分散の微粒子であることが好ましい。
前記有機微粒子は、前記(a)活性エネルギー線硬化性多官能モノマーの硬化物との屈折率差が0~0.20である屈折率を有してなる有機微粒子であることが好ましく、さらに前記屈折率差が0~0.10であることが好ましい。
また、前記有機微粒子は、その平均粒子径が、後述する本発明の硬化性組成物より得られる硬化膜の膜厚に対して、有機微粒子の平均粒子径b/膜厚a=0.1~1.0の範囲を満たすように選択することが好ましい。
【0059】
前記有機微粒子は、市販品を好適に用いることができ、例えば、テクポリマー(登録商標)MBXシリーズ、同SBXシリーズ、同MSXシリーズ、同SMXシリーズ、同SSXシリーズ、同BMXシリーズ、同ABXシリーズ、同ARXシリーズ、同AFXシリーズ、同MBシリーズ、同MBPシリーズ、同MB-Cシリーズ、同ACXシリーズ、同ACPシリーズ[以上、積水化成品工業(株)製];トスパール(登録商標)シリーズ[モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン(同)製];エポスター(登録商標)シリーズ、同MAシリーズ、同STシリーズ、同MXシリーズ[以上、(株)日本触媒製];オプトビーズ(登録商標)シリーズ[日産化学(株)製];フロービーズシリーズ[住友精化(株)製];トレパール(登録商標)PPS、同PAI、同PES、同EP[以上、東レ(株)製];3M(登録商標)ダイニオンTFマイクロパウダーシリーズ[3M社製];ケミスノー(登録商標)MXシリーズ、同MZシリーズ、同MRシリーズ、同KMRシリーズ、同KSRシリーズ、同MPシリーズ、同SXシリーズ、同SGPシリーズ[以上、綜研化学(株)製];タフチック(登録商標)AR650シリーズ、同AR-750シリーズ、同FH-Sシリーズ、同A-20、同YKシリーズ、同ASFシリーズ、同HUシリーズ、同Fシリーズ、同Cシリーズ、同WSシリーズ[以上、東洋紡(株)製];アートパール(登録商標)GRシリーズ、同SEシリーズ、同Gシリーズ、同GSシリーズ、同Jシリーズ、同MFシリーズ、同BEシリーズ[以上、根上工業(株)製];信越シリコーン(登録商標)KMPシリーズ[信越化学工業(株)製]等を用いることができる。
【0060】
本発明において(f)微粒子は、前述の(a)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー100質量部に対して、1質量部~40質量部、例えば5質量部~30質量部、好ましくは5質量部~25質量部の割合で使用する。
【0061】
[(g)溶媒]
本発明の硬化性組成物は、更に(g)溶媒を含んでいてもよく、すなわちワニス(膜形成材料)の形態としてもよい。
上記溶媒としては、前記(a)成分~(d)成分、所望により前記(e)成分、前記(f)成分を溶解・分散し、また後述する硬化膜(ハードコート層)形成にかかる塗工時の作業性や硬化前後の乾燥性等を考慮して適宜選択すればよい。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素類;n-ヘキサン、n-ヘプタン、ミネラルスピリット、シクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素類;塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、o-ジクロロベンゼン等のハロゲン化物類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等のエステル類又はエステルエーテル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジ-n-ブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコール等のアルコール類;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等のアミド類;ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド類、並びにこれらの溶媒のうち2種以上を混合した溶媒が挙げられる。
【0062】
また、塗工後の乾燥時における前記微粒子の分散性を制御する目的で、高沸点の溶媒を使用することもできる。
このような溶媒としては、例えば、酢酸シクロヘキシル、プロピレングリコールジアセテート、1,3-ブチンレングリコールジアセテート、1,4-ブタンジオールジアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシブタノール、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコール-メチル-プロピル-エーテル等が挙げられる。
【0063】
(g)溶媒の使用量は特に限定されないが、例えば本発明の硬化性組成物における固形分濃度が1質量%~70質量%、好ましくは5質量%~50質量%となる濃度で使用する。ここで固形分濃度(不揮発分濃度とも称する)とは、本発明の硬化性組成物の前記(a)成分~(d)成分(及び所望により(e)成分、(f)成分及びその他添加剤)の総質量(合計質量)に対する固形分(全成分から溶媒成分を除いたもの)の含有量を表す。
【0064】
[その他添加物]
また、本発明の硬化性組成物には、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて一般的に添加される添加剤、例えば、重合促進剤、重合禁止剤、光増感剤、レベリング剤、界面活性剤、密着性付与剤、可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、貯蔵安定剤、帯電防止剤、無機充填剤、顔料、染料等を適宜配合してよい。
【0065】
<硬化膜>
本発明の硬化性組成物は、基材上に塗布(コーティング)して塗膜を形成し、該塗膜に活性エネルギー線を照射して重合(硬化)させることにより、硬化膜を形成できる。該硬化膜も本発明の対象である。また後述するハードコートフィルムにおけるハードコート層を該硬化膜からなるものとすることができる。
この場合の前記基材としては、例えば、各種樹脂(ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリウレタン、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS)、ノルボルネン系樹脂等)、金属、木材、紙、ガラス、スレート等を挙げることができる。これら基材の形状は板状、フィルム状又は3次元成形体でもよい。
【0066】
前記基材上への塗布方法は、キャストコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、スプレーコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、印刷法(凸版印刷法、凹版印刷法、平版印刷法、スクリーン印刷法等)等を適宜選択し得、中でもロール・ツー・ロール(roll-to-roll)法に利用でき、また薄膜塗布性の観点から、凸版印刷法、特にグラビアコート法を用いることが望ましい。なお事前に孔径が0.2μm程度のフィルタなどを用いて硬化性組成物を濾過した後、塗布に供することが好ましい。なお塗布する際、必要に応じて該硬化性組成物に溶剤をさらに添加してもよい。この場合の溶剤としては前述の[(g)溶媒]で挙げた種々の溶媒を挙げることができる。
基材上に硬化性組成物を塗布し塗膜を形成した後、必要に応じてホットプレート、オーブン等の加熱手段で塗膜を予備乾燥して溶媒を除去する(溶媒除去工程)。この際の加熱乾燥の条件としては、例えば、40℃~120℃で、30秒~10分程度とすることが好ましい。
乾燥後、紫外線等の活性エネルギー線を照射して、塗膜を硬化させる。活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、X線等が挙げられ、特に紫外線が好ましい。紫外線照射に用いる光源としては、太陽光線、ケミカルランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、UV-LED等が使用できる。
さらにその後、ポストベークを行うことにより、具体的にはホットプレート、オーブン等の加熱手段を用いて加熱することにより重合を完結させてもよい。
なお、形成される硬化膜の厚さは、乾燥、硬化後において、通常0.01μm~50μm、好ましくは0.05μm~20μmである。
【0067】
<ハードコートフィルム>
本発明の硬化性組成物を用いて、フィルム基材の少なくとも一方の面(表面)にハードコート層を備えるハードコートフィルムを製造することができる。該ハードコートフィルムも本発明の対象であり、該ハードコートフィルムは、例えばタッチパネルや液晶ディスプレイ等の各種表示素子等の表面を保護するために好適に用いられる。
【0068】
本発明のハードコートフィルムにおけるハードコート層は、前述の本発明の硬化性組成物をフィルム基材上に塗布し塗膜を形成する工程と、必要に応じて加熱により溶媒を除去する工程と、該塗膜に紫外線等の活性エネルギー線を照射し該塗膜を硬化させる工程を含む方法により形成することができる。これら工程を含むフィルム基材の少なくとも一方の面にハードコート層を備えるハードコートフィルムの製造方法も本発明の対象である。
【0069】
前記フィルム基材としては、前述の<硬化膜>で挙げた基材のうち、光学用途に使用可能な各種の透明な樹脂製フィルムが用いられる。好ましい樹脂製フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、ポリウレタン、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、トリアセチルセルロース(TAC)等のフィルムが挙げられる。
また前記フィルム基材上への硬化性組成物の塗布方法(塗膜形成工程)及び塗膜への活性エネルギー線照射方法(硬化工程)は、前述の<硬化膜>に挙げた方法を用いることができる。また本発明の硬化性組成物に溶媒が含まれる(ワニス形態の)場合、塗膜形成工程の後、必要に応じて該塗膜を乾燥し溶媒除去する工程を含むことができる。その場合、前述の<硬化膜>に挙げた塗膜の乾燥方法(溶媒除去工程)を用いることができる。
こうして得られたハードコート層の層厚(膜厚)は、前記(c)シリカ粒子の平均粒子径に比して1倍~100倍の厚さとなるように設定することが好ましい。たとえば前記ハードコート層の厚さは、好ましくは1μm~20μm、より好ましくは1μm~10μmである。
【実施例
【0070】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例において、試料の調製及び物性の分析に用いた装置及び条件は、以下の通りである。
【0071】
(1)バーコーターによる塗布
装置:(株)エスエムテー製 PM-9050MC
バー:オーエスジーシステムプロダクツ(株)製 A-Bar OSP-22、最大ウエット膜厚22μm(ワイヤーバー#9相当)
塗布速度:4m/分
(2)オーブン
装置:三基計装(株)製 2層式クリーンオーブン(上下式)PO-250-45-D
(3)UV硬化
装置:ヘレウス(株)製 CV-110QC-G
ランプ:ヘレウス(株)製 高圧水銀ランプH-bulb
(4)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
装置:東ソー(株)製 HLC-8220GPC
カラム:昭和電工(株)製 Shodex(登録商標)GPC K-804L、GPC K-805L
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
検出器:RI
(5)耐擦傷性試験
装置:新東科学(株)製 往復摩耗試験機 TRIBOGEAR TYPE:30S
走査速度:5,000mm/分
走査距離:50mm
(6)引張試験
装置:(株)島津製作所製 卓上形精密万能試験機オートグラフAGS-10kNX
つかみ具:1kN手動ねじ式平面形つかみ具
つかみ歯:高強度ラバーコートつかみ歯
引張速度:10mm/分
測定温度:23℃
(7)表面抵抗測定
装置:三菱化学(株)製 高抵抗率計 Hiresta UP MCP-HT450
プローブ:URSプローブ
レジテーブル:UFL
印加電圧:10V
(8)全光線透過率、ヘーズ測定
装置:日本電色工業(株)製 ヘーズメーター NDH5000
(9)光沢度測定
装置:コニカミノルタ(株)製 光沢計 GM-268Plus
測定角度:60度
【0072】
また、略記号は以下の意味を表す。
A1:オキシエチレン変性ジグリセリンテトラアクリレート[東亞合成(株)製 アロニックス(登録商標)M-460、活性エネルギー線重合性基4mol、オキシエチレン基4mol]
A2:カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート[日本化薬(株)製 KAYARAD DPCA-30]
表面改質剤SM-2:分子鎖の片末端に2つの(メタ)アクリロイル基を有するパーフルオロポリエーテル[ダイキン工業(株)製 指紋付着防止剤 オプツール(登録商標)DAC-HP、不揮発分20質量%溶液]
シリカ微粒子s-1:平均粒子径200nmのシリカ微粒子[日産化学(株)製 オルガノシリカゾル MEK-ST-2040(固形分濃度 40質量% MEK分散)]
シリカ微粒子s-2:平均粒子径80nmのシリカ微粒子[日産化学(株)製 オルガノシリカゾル MEK-ST-ZL(固形分濃度 30質量% MEK分散)]
シリカ微粒子s-3:平均粒子径40nmのシリカ微粒子[日産化学(株)製 オルガノシリカゾル MEK-ST-L(固形分濃度 30質量% MEK分散)]
シランカップリング剤c-1:ウレア基を有するトリメトキシシラン[信越化学工業(株)製 信越シリコーン(登録商標)X-12-989MS]
シランカップリング剤c-2:チオウレア基を有するトリメトキシシラン[信越化学工業(株)製 信越シリコーン(登録商標)X-12-1116]
シランカップリング剤c-3:3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン[東京化成工業(株)製、固形分濃度50% アルコール溶液]
シランカップリング剤c-4:N-(2-アミノエチル)-8-アミノオクチルトリメトキシシラン[信越化学工業(株)製 信越シリコーン(登録商標)KBM-6803]
シランカップリング剤c-5:n-ヘキシルトリメトキシシラン[信越化学工業(株)製 信越シリコーン(登録商標)KBM-3063]
シランカップリング剤c-6:3-アクリロイルプロピルトリメトキシシラン[信越化学工業(株)製 信越シリコーン(登録商標)KBM-5103]
PFPE:分子鎖の両末端それぞれにポリ(オキシアルキレン)基を介さずヒドロキシ基を2つ有するパーフルオロポリエーテル[ソルベイスペシャルティポリマーズ社製 Fomblin(登録商標)T4]
BEI:1,1-ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート[昭和電工(株)製 カレンズ(登録商標)BEI]
DOTDD:ジネオデカン酸ジオクチル錫[日東化成(株)製 ネオスタン(登録商標)U-830]
O2959:2-ヒドロキシ-1-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン[IGM Resins社製 OMNIRAD(登録商標)2959]
MEK:メチルエチルケトン
MeOH:メタノール
帯電防止剤e-1:リンドープ酸化スズ20質量%イソプロピルアルコール分散ゾル[日産化学(株)製 セルナックス(登録商標)CX-S204IP、一次粒子径:5nm~20nm、二次粒子径:10nm~20nm]※ここで一次粒子径、及び二次粒子径とは、透過型電子顕微鏡観察によって測定される平均粒子径を指す。粒子径は透過型電子顕微鏡によるゾルを銅メッシュ上に滴下し乾燥させ、透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製 JEM-1020)を用いて加速電圧100kVにて観察し、100個の粒子を測定し平均化した値を平均一次粒子径として求めた。
帯電防止剤e-2:酸化スズを核としてその表面が五酸化アンチモンで被覆された一次粒子径30nm~40nmのコアシェル粒子30質量%メタノール分散ゾル[日産化学(株)製 セルナックス(登録商標)HX-307M1]
FP1:架橋ポリメタクリル酸メチル真球状粒子[積水化成品工業(株)製 テクポリマー(登録商標)SSX-101、平均粒子径1μm]
【0073】
[参考例1]表面改質剤SM-1の製造
スクリュー管に、PFPE 1.19g(0.5mmol)、BEI 0.52g(2.0mmol)、DOTDD 0.017g(PFPE及びBEIの合計質量の0.01倍量)、及びMEK 1.67gを仕込んだ。この混合物を、スターラーチップを用いて室温(およそ23℃)で24時間撹拌して、目的化合物である表面改質剤SM-1の50質量%MEK溶液を得た。得られたSM-1のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量:Mwは3,000、分散度:Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は1.2であった。
【0074】
[参考例2]ウレア基を有するシランカップリング剤で表面が修飾されたシリカ微粒子s-4(MEK分散液)の製造
四つ口フラスコに、シリカ微粒子s-1 35g、シランカップリング剤c-1 0.095g、及び水 0.25gを仕込んだ。この混合物を、スターラーチップを用いて65℃で3時間撹拌して、目的化合物である、ウレア基を有するシランカップリング剤で修飾された平均粒子径200nmのシリカ微粒子s-4の40質量%MEK溶液を得た。
【0075】
[参考例3]チオウレア基を有するシランカップリング剤で表面が修飾されたシリカ微粒子s-5(MEK分散液)の製造
四つ口フラスコに、シリカ微粒子s-1 35g、シランカップリング剤c-2 0.093g、及び水 0.25gを仕込んだ。この混合物を、スターラーチップを用いて65℃で3時間撹拌して、目的化合物である、チオウレア基を有するシランカップリング剤で修飾された平均粒子径200nmのシリカ微粒子s-5の40質量%MEK溶液を得た。
【0076】
[参考例4]ウレイド基を有するシランカップリング剤で表面が修飾されたシリカ微粒子s-6(MEK分散液)の製造
四つ口フラスコに、シリカ微粒子s-1 35g、シランカップリング剤c-3 0.17g、及び水 0.25gを仕込んだ。この混合物を、スターラーチップを用いて65℃で3時間撹拌して、目的化合物である、ウレイド基を有するシランカップリング剤で修飾された平均粒子径200nmのシリカ微粒子s-6の40質量%MEK溶液を得た。
【0077】
[参考例5]アミノ基を有するシランカップリング剤で表面が修飾されたシリカ微粒子s-7(MEK分散液)の製造
四つ口フラスコに、シリカ微粒子s-1 13g、シランカップリング剤c-4 0.03g、MEK 13g、及び水 0.09gを仕込んだ。この混合物を、スターラーチップを用いて65℃で3時間撹拌して、目的化合物である、アミノ基を有するシランカップリング剤で修飾された平均粒子径200nmのシリカ微粒子s-7の20質量%MEK溶液を得た。
【0078】
[参考例6]n-プロピル基を有するシランカップリング剤で表面が修飾されたシリカ微粒子s-8(MEK分散液)の製造
四つ口フラスコに、シリカ微粒子s-1 35g、シランカップリング剤c-5 0.065g、及び水 0.25gを仕込んだ。この混合物を、スターラーチップを用いて65℃で3時間撹拌して、目的化合物である、n-プロピル基を有するシランカップリング剤で修飾された平均粒子径200nmのシリカ微粒子s-8の40質量%MEK溶液を得た。
【0079】
[参考例7]アクリロイル基を有するシランカップリング剤で表面が修飾されたシリカ微粒子s-9(MEK分散液)の製造
四つ口フラスコに、シリカ微粒子s-1 35g、シランカップリング剤c-6 0.065g、及び水 0.25gを仕込んだ。この混合物を、スターラーチップを用いて65℃で3時間撹拌して、目的化合物である、アクリロイル基を有するシランカップリング剤で修飾された平均粒子径200nmのシリカ微粒子s-9の40質量%MEK溶液を得た。
【0080】
[参考例8]チオウレア基を有するシランカップリング剤で表面が修飾されたシリカ微粒子s-10(MEK分散液)の製造
四つ口フラスコに、シリカ微粒子s-2 35g、シランカップリング剤c-2 0.17g、及び水 0.18gを仕込んだ。この混合物を、スターラーチップを用いて65℃で3時間撹拌して、目的化合物である、チオウレア基を有するシランカップリング剤で修飾された平均粒子径80nmのシリカ微粒子s-10の30質量%MEK溶液を得た。
【0081】
[参考例9]チオウレア基を有するシランカップリング剤で表面が修飾されたシリカ微粒子s-11(MEK分散液)の製造
四つ口フラスコに、シリカ微粒子s-3 35g、シランカップリング剤c-2 0.35g、及び水 0.18gを仕込んだ。この混合物を、スターラーチップを用いて65℃で3時間撹拌して、目的化合物である、チオウレア基を有するシランカップリング剤で修飾された平均粒子径40nmのシリカ微粒子s-11の30質量%MEK溶液を得た。
【0082】
[実施例1~実施例8、比較例1~比較例6]
表1の記載に従って以下の各成分を混合し、表1に記載の固形分濃度の硬化性組成物を調製した。なお、ここで固形分とは溶媒以外の成分を指す。また、表1中、[部]とは[質量部]を、[%]は[質量%]を表す。この硬化性組成物を、A4サイズの両面易接着処理PETフィルム[東レ(株)製 ルミラー(商標登録)U403、厚み100μm]上にバーコーターにより塗布し、塗膜を得た。この塗膜を65℃のオーブンで3分間乾燥させ溶媒を除去した。得られた膜を、窒素雰囲気下、露光量300mJ/cmのUV光を照射し露光することで、およそ5μmの層厚(膜厚)を有するハードコート層(硬化膜)を有する、ハードコートフィルムを作製した。
【0083】
【表1】
【0084】
得られたハードコートフィルムの耐擦傷性及び延伸性を評価した。手順を以下に示す。結果を表2にヘーズ値(参考値)と併せて示す。
[耐擦傷性]
ハードコートフィルムのハードコート層表面を、往復摩耗試験機に取り付けたスチールウール[ボンスター(BONSTAR)(登録商標)#0000(超極細)]で500g/cmの荷重を掛けて10往復擦り、傷の程度(本数)を目視で確認し、以下の基準A、B及びCに従い評価した。なおハードコート層として実際の使用を想定した場合、少なくともBであることが求められ、Aであることが望ましい。
A:傷無し(傷0本)
B:傷発生(傷1本~4本)
C:傷発生(傷5本以上)
[延伸性]
ハードコートフィルムを長さ60mm、幅10mmの矩形に切り取り、試験片を作製した。試験片の長手方向の両端から20mmずつを掴むように万能試験機のつかみ具に取り付け、延伸率(=(つかみ具間距離の増加量)÷(つかみ具間距離)×100)が2.5%、5%、7.5%、10%となるように2.5%刻みで引張試験を行った。引張試験後のハードコートフィルムを目視で観察し、試験片のハードコート層にクラックが発生しなかった最大の延伸率を確認した。その後、シリカ微粒子を除いた硬化性組成物(比較例1,比較例6)を用いて作製したハードコートフィルムの延伸率を基準(=100%)として延伸性向上率を算出し、その値を延伸性として、以下の基準A、B及びCに従い評価した。なおハードコート層として実際の使用を想定した場合、少なくともBであることが求められ、Aであることが望ましい。
A:125%以上
B:100%を超え125%未満
C:100%以下
【0085】
【表2】
【0086】
表2に示すように、オキシエチレン変性多官能モノマーA1に、平均粒子径40nm、80nm又は200nmのシリカ微粒子の表面を、含窒素プロトン供与性官能基を有するシランカップリング剤で修飾したシリカ微粒子s-4、s-5、s-6、s-7、s-10又はs-11、表面改質剤として分子鎖の両末端それぞれにウレタン結合を介してアクリロイル基を4つ有するパーフルオロポリエーテルSM-1を、それぞれ用いた実施例1乃至実施例6の硬化性組成物から得られるハードコート層を備えるハードコートフィルムは、シリカ微粒子を未添加とした比較例1の硬化性組成物から得られるハードコート層を備えるハードコートフィルムと比べて明らかなように、耐擦傷性を損なうことなく優れた延伸性を示した。中でも、含窒素プロトン供与性官能基としてウレア基(s-4)、チオウレア基(s-5、s-10)、ウレイド基(s-6)を有するシランカップリング剤で修飾したシリカ微粒子を用いた場合、透明性にも優れることが示された。
また、オキシエチレン変性多官能モノマーA1に、チオウレア基を有するシランカップリング剤で表面が修飾された平均粒子径80nmのシリカ微粒子s-10、表面改質剤として分子鎖の片末端に2つの(メタ)アクリロイル基を有するパーフルオロポリエーテルSM-2を用いた実施例8の硬化性組成物から得られるハードコート層を備えるハードコートフィルムは、シリカ微粒子を未添加とした比較例1の硬化性組成物から得られるハードコート層を備えるハードコートフィルムと比べて明らかなように、耐擦傷性を損なうことなく優れた延伸性を示した。
【0087】
一方、シリカ粒子として表面未修飾のシリカ微粒子s-1を用いた比較例2の硬化性組成物から得られるハードコート層を備えるハードコートフィルムは、耐擦傷性に劣り、アクリレート及びシリカ微粒子間の相互作用が弱いことが示唆される結果となった。同様に、シリカ粒子の表面修飾基としてn-ヘキシル基を採用(シリカ微粒子:s-8)した比較例3の硬化性組成物から得られるハードコート層を備えるハードコートフィルムも、アクリレート及びシリカ微粒子間の相互作用が弱く、耐擦傷性に劣ることが示された。
また、シリカ粒子の表面修飾基としてアクリロイル基を採用(シリカ微粒子:s-9)した比較例4の硬化性組成物から得られるハードコート層を備えるハードコートフィルムは、アクリレート及びシリカ微粒子間の相互作用が強く、耐擦傷性には優れるが延伸性に劣ることが示された。
そして、比較例6の硬化性組成物からなる層厚(膜厚)5μmのハードコート層を備えるハードコートフィルムは、表面改質剤を未添加としたために表面の摩擦係数が高いものとなったとみられ、耐擦傷性に劣ることが示された。
【0088】
さらに、オキシエチレン変性多官能モノマーA1に代えて、ラクトン変性多官能モノマーA2を使用した実施例7の硬化性組成物から得られるハードコート層を備えるハードコートフィルムにあっては、シリカ微粒子未添加の比較例6に比べて、耐擦傷性及び延伸性が向上する結果が得られた。
【0089】
[実施例9~実施例11、参考例10及び参考例11]
表3の記載に従って以下の各成分を混合し、表3に記載の固形分濃度の硬化性組成物を調製した。なお、ここで固形分とは溶媒以外の成分を指す。また、表中、[部]とは[質量部]を、[%]は[質量%]を表す。この硬化性組成物を、A4サイズの両面易接着処理PETフィルム[東レ(株)製 ルミラー(商標登録)U403、厚み100μm]上にバーコーターにより塗布し、塗膜を得た。この塗膜を65℃のオーブンで3分間乾燥させ溶媒を除去した。得られた膜を、窒素雰囲気下、露光量300mJ/cmのUV光を照射し露光することで、およそ5μmの層厚(膜厚)を有するハードコート層(硬化膜)を有する、ハードコートフィルムを作製した。
【0090】
【表3】
【0091】
得られたハードコートフィルムについて、前述の[耐擦傷性]及び[延伸性]の評価に加え、外観及び表面抵抗を評価した。外観及び表面抵抗評価の手順を以下に示す。結果を表4にヘーズ値(参考値)と併せて示す。
[外観]
ハードコートフィルムの外観を目視で確認し、以下の基準A及びCに従い評価した。
A:ハードコート層全面に亘って異物がない
C:ハードコート層全面に亘って異物が多数発生
[表面抵抗]
ハードコート層表面を上にしてハードコートフィルムをレジテーブル上に置き、プローブをハードコートフィルム(ハードコート層)に押し付け10秒後の値をn=3で測定し、平均値を表面抵抗値[Ω/□]とした。
【0092】
【表4】
【0093】
表4に示すように、オキシエチレン変性多官能モノマーA1、表面改質剤として分子鎖の両末端それぞれにウレタン結合を介してアクリロイル基を4つ有するパーフルオロポリエーテルSM-1を含有し、そしてシリカ粒子の表面修飾にチオウレア基(実施例9、実施例11)又はウレイド基(実施例10)を有するシランカップリング剤(s-5、s-10、又はs-6)を用い、帯電防止剤(e-1、e-2)を更に加えた硬化性組成物から得られるハードコート層を備えるハードコートフィルムは、優れた耐擦傷性・延伸性に加え、良好な外観を損なうことなく、優れた帯電防止性を付与できることが示された。
なお、シリカ粒子として、アミノ基を有するシランカップリング剤で表面が修飾されたシリカ微粒子(s-7)を用いた場合(参考例10)には、良好な外観や帯電防止性は付与できたものの、耐擦傷性及び延伸性に悪影響を及ぼすこと、ウレア基を有するシランカップリング剤で表面が修飾されたシリカ微粒子(s-4)を用いた場合(参考例11)には、延伸性と帯電防止性は付与できたものの、耐擦傷性及び外観に影響を及ぼすことが確認された。このように帯電防止性能の付与にあたっては、耐擦傷性及び延伸性、そして硬化膜の表面外観にも悪影響を及ばさないよう、金属酸化物粒子とシリカ粒子の選択が重要になることが示唆される結果となった。
【0094】
[実施例12及び実施例13]
表5の記載に従って以下の各成分を混合し、表5に記載の固形分濃度の硬化性組成物を調製した。なお、ここで固形分とは溶媒以外の成分を指す。また、表中、[部]とは[質量部]を、[%]は[質量%]を表す。この硬化性組成物を、A4サイズの両面易接着処理PETフィルム[東レ(株)製 ルミラー(商標登録)U403、厚み100μm]上にバーコーターにより塗布し、塗膜を得た。この塗膜を65℃のオーブンで3分間乾燥させ溶媒を除去した。得られた膜を、窒素雰囲気下、露光量300mJ/cmのUV光を照射し露光することで、およそ5μmの層厚(膜厚)を有するハードコート層(硬化膜)を有する、ハードコートフィルムを作製した。
【0095】
【表5】
【0096】
得られたハードコートフィルムについて、前述の[表面抵抗]の評価に加え、防眩性を評価した。防眩性評価の手順を以下に示す。結果を表6に、ヘーズ値及び全光透過率(参考値)とともに併せて示す。
[防眩性]
得られたハードコートフィルムを光沢度Gs(60°)が11.8である黒色の台に乗せ、該ハードコートフィルムのハードコート層表面の光沢度Gs(60°)を測定し、以下の基準A、B及びCに従い評価した。なおハードコート層として実際の使用を想定した場合、少なくともBであることが求められ、Aであることが望ましい。
A:Gs(60°)≦120
B:120<Gs(60°)≦125
C:Gs(60°)>125
【0097】
【表6】
【0098】
表6に示すように、多官能モノマーとしてオキシエチレン変性多官能モノマーA1に、平均粒子径80nmのシリカ微粒子の表面を含窒素プロトン供与性官能基としてチオウレア基を有するシランカップリング剤で修飾したs-10のシリカ微粒子、表面改質剤として分子鎖の両末端それぞれにウレタン結合を介してアクリロイル基を4つ有するパーフルオロポリエーテルSM-1、帯電防止剤として金属酸化物粒子であるリンドープ酸化スズe-1、有機微粒子FP1をそれぞれ用いた実施例12及び実施例13の硬化性組成物から得られるハードコートフィルムは、防眩性及び帯電防止性を有することが示された。
【0099】
以上、実施例の結果に示すように、活性エネルギー線硬化性多官能モノマー、表面改質剤としてポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含むパーフルオロポリエーテル、そして含窒素プロトン供与性官能基を有するシランカップリング剤で表面が修飾されたシリカ粒子を組み合わせた硬化性組成物とすることで、耐擦傷性を維持しつつ、延伸性を向上したハードコート層を備えるハードコートフィルムを得ることができる。また含窒素プロトン供与性官能基の選択により、透明性にも優れるハードコート層を備えるハードコートフィルムを得ることができる。
また、上述した組成物に帯電防止剤として金属酸化物粒子を用い、特に含窒素プロトン供与性官能基としてチオウレア基又はウレイド基を有するシランカップリング剤で表面修飾したシリカ粒子を用いることで、耐擦傷性・延伸性を低下させず、かつ良好な外観および優れた帯電防止性を持ったハードコートフィルムを作成することができる。
さらに上述の組成物に、0.2μm~15μmの平均粒子径を有する微粒子を用いることで、防眩性が付与されたハードコートフィルムを作成することができる。