(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】膜形成用組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 183/06 20060101AFI20240828BHJP
C09D 183/08 20060101ALI20240828BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20240828BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240828BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20240828BHJP
C08G 77/08 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
C09D183/06
C09D183/08
C09D5/00
C09D7/63
C08L83/04
C08G77/08
(21)【出願番号】P 2021509519
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2020013383
(87)【国際公開番号】W WO2020196642
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-03-20
(31)【優先権主張番号】P 2019063878
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴山 亘
(72)【発明者】
【氏名】武田 諭
(72)【発明者】
【氏名】志垣 修平
(72)【発明者】
【氏名】石橋 謙
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宏大
(72)【発明者】
【氏名】中島 誠
【審査官】井上 莉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-019423(JP,A)
【文献】特開2009-030007(JP,A)
【文献】特開2008-081646(JP,A)
【文献】特開2012-180464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
C08L
C08G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基性加水分解触媒の存在下で生成される加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物(A)、
酸性加水分解触媒の存在下で生成される加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物(B)、及び、
溶媒を含む、
膜形成用組成物であって、
前記加水分解縮合物(A)は、
下記式(1)で表される加水分解性シランを含む加水分解性シラン化合物の加水分解縮合の生成物であり、
【化1】
(式(1)中、
R
1
は、ケイ素原子に結合する基であって、脂環式基、ヘテロ環基及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも一種を含む有機基を表し、
R
2
は、Si-C結合によりケイ素原子に結合する基であって、互いに独立して、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいハロゲン化アルキル基、置換されていてもよいハロゲン化アリール基、置換されていてもよいハロゲン化アラルキル基、置換されていてもよいアルコキシアルキル基、置換されていてもよいアルコキシアリール基、置換されていてもよいアルコキシアラルキル基、若しくは置換されていてもよいアルケニル基を表すか、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基、スルホニル基、若しくはシアノ基を含む有機基、又はそれらの組み合わせを表し、
R
3
は、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、互いに独立して、アルコキシ基、ア
ラルキルオキシ基、アシルオキシ基又はハロゲン原子を表し、
aは1の整数を表し、bは0~2の整数を表し、a+bは1~3の整数を表す。)
前記加水分解縮合物(B)は、使用する加水分解シラン化合物の全量に基づいて、4官能の加水分解性シランを50モル%以上含む、加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物である、
膜形成用組成物。
【請求項2】
上記加水分解縮合物(A)と加水分解縮合物(B)との割合は、質量比で、1:1~1:20である、
請求項1に記載の膜形成用組成物。
【請求項3】
上記加水分解縮合物(A)が、該加水分解縮合物のシロキサン結合における少なくとも1つのケイ素原子に、
有機塩構造
を含む有機基を結合してなる、加水分解縮合物である、
請求項1又は請求項2に記載の膜形成用組成物。
【請求項4】
上記塩基性加水分解触媒が、アミノ基を含有する有機基を含む加水分解性シランである、請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載の膜形成用組成物。
【請求項5】
上記加水分解縮合物(A)が、
上記式(1)中のbが0である加水分解性シランを含む、加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物である、請求項
1乃至請求項4のうち何れか一項に記載の膜形成用組成物。
【請求項6】
上記加水分解縮合物(B)が、
下記式(2)で表される加水分解性シラン及び下記式(3)で表される加水分解性シランから選ばれる少なくとも一種を含む加水分解性シラン化合物の、酸性加水分解触媒の存在下での加水分解縮合の生成物である、
請求項1乃至請求項
5のうち何れか一項に記載の膜形成用組成物。
【化2】
(式(2)中、
R
4は、Si-C結合によりケイ素原子に結合する基であって、互いに独立して、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいハロゲン化アルキル基、置換されていてもよいハロゲン化アリール基、置換されていてもよいハロゲン化アラルキル基、置換されていてもよいアルコキシアルキル基、置換されていてもよいアルコキシアリール基、置換されていてもよいアルコキシアラルキル基、若しくは置換されていてもよいアルケニル基を表すか、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基、スルホニル基、若しくはシアノ基を含む有機基、又はそれらの組み合わせを表し、
R
5は、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、互いに独立して、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン原子を表し、
cは、0~3の整数を表す。)
【化3】
(式(3)中、
R
6は、Si-C結合によりケイ素原子に結合する基であって、互いに独立して、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいハロゲン化アルキル基、置換されていてもよいハロゲン化アリール基、置換されていてもよいハロゲン化アラルキル基、置換されていてもよいアルコキシアルキル基、置換されていてもよいアルコキシアリール基、置換されていてもよいアルコキシアラルキル基、若しくは置換されていてもよいアルケニル基を表すか、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基、スルホニル基、若しくはシアノ基を含む有機基、又はそれらの組み合わせを表し、
R
7は、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、互いに独立して、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン原子を表し、
Yは、Si-C結合によりケイ素原子に結合する基であって、互いに独立して、アルキレン基又はアリーレン基を表し、
dは、0又は1の整数を表し、
eは、0又は1の整数を表す。)
【請求項7】
上記加水分解縮合物(B)が、
上記式(2)中のcが0である加水分解性シランを含む、加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物である、請求項
6に記載の膜形成用組成物。
【請求項8】
上記加水分解縮合物(A)の重量平均分子量が、500~1,000,000であり、
上記加水分解縮合物(B)の重量平均分子量が、500~1,000,000である、請求項1乃至請求項
7のうちいずれか一項に記載の膜形成用組成物。
【請求項9】
上記溶媒が水を含む、請求項1乃至請求項
8のうちいずれか一項に記載の膜形成用組成物。
【請求項10】
有機酸を更に含む、請求項1乃至請求項
9のうちいずれか一項に記載の膜形成用組成物。
【請求項11】
光酸発生剤を更に含む、請求項1乃至請求項
10のうちいずれか一項に記載の膜形成用組成物。
【請求項12】
pH調整剤を更に含む、請求項1乃至請求項
11のうちいずれか一項に記載の膜形成用組成物。
【請求項13】
界面活性剤を更に含む、請求項1乃至請求項
12のうちいずれか一項に記載の膜形成用組成物。
【請求項14】
EUVリソグラフィー用レジスト下層膜用である、請求項1乃至請求項
13のうちいずれか一項に記載の膜形成用組成物。
【請求項15】
請求項1乃至請求項
14のうちいずれか一項に記載の膜形成用組成物から得られるレジスト下層膜。
【請求項16】
半導体基板と、請求項
15に記載のレジスト下層膜とを備える半導体加工用基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜形成用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造分野では、基板上に微細なパターンを形成し、このパターンに従ってエッチングを行い、基板を加工する技術が広く用いられている。
リソグラフィー技術の進展に伴い微細パターン化が進み、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザーが用いられ、更に電子線やEUV(Extreme Ultra violet:極端紫外線)を用いた露光技術が検討されている。
【0003】
フォトレジストを用いたリソグラフィーによる微細加工では、シリコンウエハー等の半導体基板上にフォトレジストの薄膜を形成し、その上に半導体デバイスのパターンが描かれたマスクパターンを介して紫外線などの活性光線を照射し、現像し、得られたレジストパターンを保護膜として基板をエッチング処理することにより、基板表面に、上記パターンに対応する微細凹凸を形成する。近年、半導体デバイスの高集積度化が進み、上記のように活性光線が短波長化される傾向にあり、活性光線の半導体基板からの反射の影響が大きな問題となる中、フォトレジストと被加工基板の間に反射防止膜(BottomAnti-ReflectiveCoating、BARC)と呼ばれるレジスト下層膜を設ける方法が広く適用されるようになってきた。
またレジストパターンの微細化の進行に伴い、解像度や寸法精度、パターンの倒壊といった問題が生じる可能性があるため、レジストの薄膜化が望まれてくる。そのため、基板加工に充分なレジストパターン膜厚を得ることが難しく、レジストパターンだけではなく、レジストと加工する半導体基板との間に作成されるレジスト下層膜にも基板加工時のマスクとしての機能を持たせるプロセスが必要になっている。微細化のさらなる進行に伴い、レジスト膜(上層)の下に、シリコン系のレジスト下層膜(中間層)と、さらにその下に有機下層膜(下層)とを形成させる3層プロセスの適用もなされている。
【0004】
近年、最先端半導体デバイスにおいて、レジストの薄膜化・微細化は顕著である。とりわけ上述のレジスト膜、シリコン含有レジスト下層膜、有機下層膜からなる3層プロセスにおいては、シリコン含有レジスト下層膜上におけるレジストのリソグラフィー特性だけでなく、下層膜において高いエッチング速度を有することが必須となってきている。特にEUVリソグラフィーでは、リソグラフィー特性の向上のために、レジスト膜と密着性の高い官能基の大量導入や、解像性を向上させる光酸発生剤の大量添加が必要不可欠である一方、それに伴う有機成分の増大によるエッチング速度の低下が大きな問題となっており、これまでリソグラフィー特性の向上と高いエッチング速度の実現はトレードオフの関係にあるものであった。
このような事情の下、オニウム基を有するシラン化合物を含むレジスト下層膜形成用組成物やアニオン基を有するシラン化合物を含むレジスト下層膜が報告されている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2010/021290号
【文献】国際公開第2010/071155号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、EUVレジストへの良好な密着性と、良好なエッチング加工性とを併せ持つレジスト下層膜を形成できるレジスト下層膜形成用組成物として好適な、膜形成用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、塩基性触媒の存在下で加水分解させた加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物と、酸性触媒の存在下で加水分解させた加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物とを組み合わせた膜形成用組成物から、レジストの下層膜として用いた場合に、パターンの倒壊やスカムの発生が抑制された良好なレジストパターンを形成できる薄膜が得られること、そして高いドライエッチング選択性をも有する薄膜が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、第1観点として、塩基性加水分解触媒の存在下で生成される加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物(A)、酸性加水分解触媒の存在下で生成される加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物(B)、及び、
溶媒を含む、膜形成用組成物に関する。
第2観点として、上記加水分解縮合物(A)と加水分解縮合物(B)との割合は、質量比で、1:1~1:20である、
第1観点に記載の膜形成用組成物に関する。
第3観点として、上記加水分解縮合物(A)が、該加水分解縮合物のシロキサン結合における少なくとも1つのケイ素原子に、脂環式基、ヘテロ環基、及び有機塩構造からなる群から選択される少なくとも一種を含む有機基を結合してなる、加水分解縮合物である、
第1観点又は第2観点に記載の膜形成用組成物に関する。
第4観点として、上記塩基性加水分解触媒が、アミノ基を含有する有機基を含む加水分解性シランである、第1観点乃至第3観点のうちいずれか一項に記載の膜形成用組成物に関する。
第5観点として、上記加水分解縮合物(A)が、
下記式(1)で表される加水分解性シランを含む加水分解性シラン化合物の、塩基性加水分解触媒の存在下での加水分解縮合の生成物である、第1観点乃至第4観点のうち何れか一項に記載の膜形成用組成物に関する。
【化1】
(式(1)中、
R
1は、ケイ素原子に結合する基であって、脂環式基、ヘテロ環基及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも一種を含む有機基を表し、
R
2は、Si-C結合によりケイ素原子に結合する基であって、互いに独立して、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいハロゲン化アルキル基、置換されていてもよいハロゲン化アリール基、置換されていてもよいハロゲン化アラルキル基、置換されていてもよいアルコキシアルキル基、置換されていてもよいアルコキシアリール基、置換されていてもよいアルコキシアラルキル基、若しくは置換されていてもよいアルケニル基を表すか、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基、スルホニル基、若しくはシアノ基を含む有機基、又はそれらの組み合わせを表し、
R
3は、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、互いに独立して、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基又はハロゲン原子を表し、
aは1の整数を表し、bは0~2の整数を表し、a+bは1~3の整数を表す。)
第6観点として、上記加水分解縮合物(A)が、
上記式(1)中のbが0である加水分解性シランを含む、加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物である、第5観点に記載の膜形成用組成物に関する。
第7観点として、上記加水分解縮合物(B)が、
下記式(2)で表される加水分解性シラン及び下記式(3)で表される加水分解性シランから選ばれる少なくとも一種を含む加水分解性シラン化合物の、酸性加水分解触媒の存在下での加水分解縮合の生成物である、
第1観点乃至第6観点のうち何れか一項に記載の膜形成用組成物に関する。
【化2】
(式(2)中、
R
4は、Si-C結合によりケイ素原子に結合する基であって、互いに独立して、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいハロゲン化アルキル基、置換されていてもよいハロゲン化アリール基、置換されていてもよいハロゲン化アラルキル基、置換されていてもよいアルコキシアルキル基、置換されていてもよいアルコキシアリール基、置換されていてもよいアルコキシアラルキル基、若しくは置換されていてもよいアルケニル基を表すか、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基、スルホニル基、若しくはシアノ基を含む有機基、又はそれらの組み合わせを表し、
R
5は、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、互いに独立して、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン原子を表し、
cは、0~3の整数を表す。)
【化3】
(式(3)中、
R
6は、Si-C結合によりケイ素原子に結合する基であって、互いに独立して、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいハロゲン化アルキル基、置換されていてもよいハロゲン化アリール基、置換されていてもよいハロゲン化アラルキル基、置換されていてもよいアルコキシアルキル基、置換されていてもよいアルコキシアリール基、置換されていてもよいアルコキシアラルキル基、若しくは置換されていてもよいアルケニル基を表すか、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基、スルホニル基、若しくはシアノ基を含む有機基、又はそれらの組み合わせを表し、
R
7は、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、互いに独立して、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン原子を表し、
Yは、Si-C結合によりケイ素原子に結合する基であって、互いに独立して、アルキレン基又はアリーレン基を表し、
dは、0又は1の整数を表し、
eは、0又は1の整数を表す。)
第8観点として、上記加水分解縮合物(B)が、
上記式(2)中のcが0である加水分解性シランを含む、加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物である、第7観点に記載の膜形成用組成物に関する。
第9観点として、上記加水分解縮合物(A)の重量平均分子量が、500~1,000,000であり、
上記加水分解縮合物(B)の重量平均分子量が、500~1,000,000である、第1観点乃至第8観点のうちいずれか一項に記載の膜形成用組成物に関する。
第10観点として、上記溶媒が水を含む、第1観点乃至第9観点のうちいずれか一項に記載の膜形成用組成物に関する。
第11観点として、有機酸を更に含む、第1観点乃至第10観点のうちいずれか一項に記載の膜形成用組成物に関する。
第12観点として、光酸発生剤を更に含む、第1観点乃至第11観点のうちいずれか一項に記載の膜形成用組成物に関する。
第13観点として、pH調整剤を更に含む、第1観点乃至第12観点のうちいずれか一項に記載の膜形成用組成物に関する。
第14観点として、界面活性剤を更に含む、第1観点乃至第13観点のうちいずれか一項に記載の膜形成用組成物に関する。
第15観点として、EUVリソグラフィー用レジスト下層膜用である、第1観点乃至第14観点のうちいずれか一項に記載の膜形成用組成物に関する。
第16観点として、第1観点乃至第15観点のうちいずれか一項に記載の膜形成用組成物から得られるレジスト下層膜に関する。
第17観点として、半導体基板と、第16観点に記載のレジスト下層膜とを備える半導体加工用基板に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、塩基性触媒の存在下で加水分解させた加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物と、酸性触媒の存在下で加水分解させた加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物とを組み合わせた膜形成用組成物によって、レジストへの良好な密着性と、高いフッ素系エッチレートを有する良好なエッチング加工性とを有する薄膜を形成できる、膜形成用組成物を提供することができる。
そして、このような本発明の膜形成用組成物を用いることで、パターンの倒壊やスカムの発生が抑制された微細なレジストパターンの形成と、下地基板への高い転写性とが実現できる薄膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
【0011】
本発明の膜形成用組成物は、塩基性加水分解触媒の存在下で生成される加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物(A)と、酸性加水分解触媒の存在下で生成される加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物(B)と、溶媒を含む。
本発明にあっては、加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物(ポリシロキサン)として、塩基性条件下で加水分解したポリシロキサンと、酸性条件下で加水分解したポリシロキサンの双方を含むことを特徴とするものである。
【0012】
上述の構成により、良好なレジストパターンの形成性と高いドライエッチング選択性の実現に至った理由の一つとして、加水分解性シラン化合物を加水分解する際の塩基性/酸性の条件により、得られるポリシロキサンの主鎖構造に相違が生じたことが考えられる。本発明者らは、酸性条件下での加水分解縮合の生成物と比べて、塩基性条件下での加水分解縮合の生成物は、より縮合度合いが高まり易い(架橋構造を有しやすい)ものとなり得、その結果、加水分解縮合物におけるシラノール基の存在割合に差が生じ、これらを混合した場合に両生成物を含む膜中で偏在が生じ得たと考えている。すなわち、両方の生成物を含む組成物を用いて膜を形成すると、より架橋構造を有しやすい塩基性条件下での生成物が、膜の表面に偏在し易いものと考えている。そして、この偏在が、良好なレジストパターンの形成性と高いドライエッチング選択性を実現できた一つの理由として考えられる。
【0013】
上記加水分解縮合物(A)と加水分解縮合物(B)との割合は、質量比で、1:1~1:20とすることができる。本発明の効果をより向上させたり、再現性よく得たりする観点から、(A):(B)=1:3~1:10程度とすることができる。
【0014】
〔(A)塩基性加水分解触媒の存在下で生成される加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物〕
上記加水分解縮合物(A)は、塩基性加水分解触媒の存在下での、加水分解性シラン化合物の加水分解縮合の生成物である。
上記加水分解縮合物(A)は、加水分解性シラン化合物が塩基性条件下で加水分解縮合されて得られる生成物であれば特に限定されるものではない。
【0015】
好ましい態様において、上記加水分解縮合物(A)は、該加水分解縮合物のシロキサン結合(-Si-O-)における少なくとも1つのケイ素原子に、脂環式基、ヘテロ環基、及び有機塩構造からなる群から選択される少なくとも一種を含む有機基を結合してなる。
【0016】
上記脂環式基としては、炭素原子数が3乃至30の単環式、多環式及び架橋環式の環状構造の飽和又は不飽和の脂環式基が挙げられる。具体的には、炭素原子数4以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ、ペンタシクロ構造等を有する、飽和又は不飽和の脂環式基を挙げることができる。
例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基及びシクロデシル基等のシクロアルキル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロへキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基、シクロノネニル基及びシクロデセニル基等のシクロアルケニル基、並びにこれらにおいて架橋構造が形成された基などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
上記ヘテロ環基としては特に限定されない。例えば、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子からなる群から選択される1以上のヘテロ原子を含有する、飽和又は不飽和のヘテロ環基を挙げることができる。好ましくは、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子からなる群から選択されるヘテロ原子を1乃至3個含有し、環形成原子数が5乃至30の、飽和又は不飽和のヘテロ環基を挙げることができる。なお、環形成原子数とは、原子が環状に結合した構造(例えば単環、縮合環、環集合)の化合物(例えば単環化合物、縮合環化合物、架橋環化合物、炭素環化合物、ヘテロ環化合物)の当該環自体を構成する原子の数を表し、環を構成しない原子(例えば環を構成する原子の結合手を終端する水素原子)や、当該環が置換基によって置換される場合の該置換基に含まれる原子は環形成原子数には含まないものとする。
より具体的には、ピロリジン環、ピラゾリジン環、イミダゾリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、ピロール環、ピロリドン環、ピラゾール環、イミダゾール環、イミダゾリン環、ピペリジン環、ピペラジン環、ピリジン環、ピヂラジン環、ピリミジン環、ピラジン環、インドール環、インドリン環、イソインドリン環、カルバゾール環、キノリン環、ベンゾイミダゾール環、トリアゾール環、ベンゾトリアゾール環、トリアジン環、トリアジントリオン環、フラン環、ピラン環、クロマン環、イソクロマン環、チオフェン環、チオピラン環、チオクロマン環、イソチオクロマン環、イソオキサゾリジン環、イソオキサゾール環、イソチアゾリジン環、イソチアゾール環、モルホリン環、チオモルホリン環等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
また上記有機塩構造としては、アニオン構造とカチオン構造が対になって塩構造を有してなるものが挙げられる。
例えば、該加水分解縮合物のシロキサン結合(-Si-O-)における少なくとも1つのケイ素原子に、アンモニウム基、スルホニウム基、ヨードニウム基、ホスホニウム基等のオニウム基(オニウムカチオン:-N+X3、-S+X2、-I+X2、-P+X3等(Xは水素原子や一価の有機基を表し、またそれらが結合する窒素原子、硫黄原子、ヨウ素原子、リン原子と一緒になって環を形成していてもよい))を含む有機基が結合し、該オニウム基が、ハロゲンイオン、アルコキシイオン、ヒドロキシアルコキシイオン、アセトキシイオン、フッ素置換アセトキシイオン、スルホニルイオン、シュウ酸イオン、マレイン酸イオン、フッ素置換スルホニルイオン、ホスホニルイオン、過塩素酸イオン、硝酸イオン、スルホニルイミドイオン等の対アニオンとともにオニウム塩構造を形成してなるものが挙げられる。
また例えば、該加水分解縮合物のシロキサン結合(-Si-O-)における少なくとも1つのケイ素原子に、カルボン酸アニオン、フェノラートアニオン、スルホン酸アニオン、ホスホン酸アニオン等のアニオン基を含む有機基が結合し、該アニオン基が、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン等の対カチオンとともに塩構造を有してなるものが挙げられる。
また、例えば、該加水分解縮合物のシロキサン結合(-Si-O-)における少なくとも1つのケイ素原子に上記のオニウム基を含む有機基が結合し、別のケイ素原子に上記のアニオン基を含む有機基が結合し、これらが塩構造を形成していてもよい。またケイ素原子に結合した有機基において、上記のオニウム基とアニオン基を同時に含んでいてもよい。
なおこれらの有機塩構造は、有機塩構造を含む有機基を有する加水分解性シランを用いて加水分解縮合物を生成させればよい。また、プロトン化によりオニウム基を生じるアミノ基等を含む有機基を有する加水分解性シラン、又は脱プロトン化してアニオン基を生じるカルボン酸基やスルホン酸基等を含む有機基を有する加水分解性シランを用いて加水分解縮合物を生成した後、これらに対カチオン、対アニオンとなる化合物を添加して有機塩構造を形成する、あるいは両者を併用して加水分解縮合物生成時に有機塩構造を同時に形成することもできる。
【0019】
本発明の一態様において、上記加水分解縮合物(A)は、下記式(1)で表される加水分解性シランを含む加水分解性シラン化合物の、塩基性加水分解触媒の存在下での加水分解縮合の生成物とすることができる。
【0020】
【0021】
R1は、ケイ素原子に結合する基であって、脂環式基、ヘテロ環基及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも一種を含む有機基を表す。
このような有機基として、脂環式基、ヘテロ環基、及びアミノ基のそれ自体(すなわち、一価の脂環式基、一価のヘテロ環基、アミノ基)、並びに、アルキル基における1以上の水素原子が、脂環式基、ヘテロ環基、及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも一種で置換された有機基を挙げることができる。
上記脂環式基、ヘテロ環基は、上述と同じものが挙げられる。
【0022】
上記の脂環式基、ヘテロ環基、及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも一種によって水素原子が置換されるアルキル基は特に限定されるものではなく、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、その炭素原子数は、通常40以下、例えば30以下、より例えば20以下、また10以下とすることができる。
【0023】
上記の脂環式基、ヘテロ環基、及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも一種によって水素原子が置換され得る直鎖状又は分岐状アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、n-ヘキシル、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基、1-エチル-2-メチル-n-プロピル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
また上記の脂環式基、ヘテロ環基、及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも一種によって水素原子が置換され得る環状アルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、1-メチル-シクロプロピル基、2-メチル-シクロプロピル基、シクロペンチル基、1-メチル-シクロブチル基、2-メチル-シクロブチル基、3-メチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロプロピル基、2,3-ジメチル-シクロプロピル基、1-エチル-シクロプロピル基、2-エチル-シクロプロピル基、シクロヘキシル基、1-メチル-シクロペンチル基、2-メチル-シクロペンチル基、3-メチル-シクロペンチル基、1-エチル-シクロブチル基、2-エチル-シクロブチル基、3-エチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロブチル基、1,3-ジメチル-シクロブチル基、2,2-ジメチル-シクロブチル基、2,3-ジメチル-シクロブチル基、2,4-ジメチル-シクロブチル基、3,3-ジメチル-シクロブチル基、1-n-プロピル-シクロプロピル基、2-n-プロピル-シクロプロピル基、1-i-プロピル-シクロプロピル基、2-i-プロピル-シクロプロピル基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピル基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピル、2-エチル-3-メチル-シクロプロピル基等のシクロアルキル基、ビシクロブチル基、ビシクロペンチル基、ビシクロヘキシル基、ビシクロヘプチル基、ビシクロオクチル基、ビシクロノニル基、ビシクロデシル基等のビシクロアルキル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
上記の中でも、R1としては、シクロへプテル基、ジアリルイソシアヌレートプロピル基、ジメチルアミノプロピル基等を挙げることができる。
【0025】
式(1)中、R2は、Si-C結合によりケイ素原子に結合する基であって、互いに独立して、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいハロゲン化アルキル基、置換されていてもよいハロゲン化アリール基、置換されていてもよいハロゲン化アラルキル基、置換されていてもよいアルコキシアルキル基、置換されていてもよいアルコキシアリール基、置換されていてもよいアルコキシアラルキル基、若しくは置換されていてもよいアルケニル基を表すか、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基、スルホニル基、若しくはシアノ基を含む有機基、又はそれらの組み合わせを表す。
【0026】
上記アルキル基として、例えば直鎖又は分枝を有する炭素原子数1乃至10のアルキル基が挙げられ、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、n-ヘキシル基、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基及び1-エチル-2-メチル-n-プロピル基等が挙げられる。
また環状アルキル基を用いることもでき、例えば炭素原子数1乃至10の環状アルキル基として、シクロプロピル基、シクロブチル基、1-メチル-シクロプロピル基、2-メチル-シクロプロピル基、シクロペンチル基、1-メチル-シクロブチル基、2-メチル-シクロブチル基、3-メチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロプロピル基、2,3-ジメチル-シクロプロピル基、1-エチル-シクロプロピル基、2-エチル-シクロプロピル基、シクロヘキシル基、1-メチル-シクロペンチル基、2-メチル-シクロペンチル基、3-メチル-シクロペンチル基、1-エチル-シクロブチル基、2-エチル-シクロブチル基、3-エチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロブチル基、1,3-ジメチル-シクロブチル基、2,2-ジメチル-シクロブチル基、2,3-ジメチル-シクロブチル基、2,4-ジメチル-シクロブチル基、3,3-ジメチル-シクロブチル基、1-n-プロピル-シクロプロピル基、2-n-プロピル-シクロプロピル基、1-i-プロピル-シクロプロピル基、2-i-プロピル-シクロプロピル基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピル基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピル基及び2-エチル-3-メチル-シクロプロピル基等が挙げられる。
【0027】
アリール基としては、炭素原子数6乃至20のアリール基が挙げられ、例えばフェニル基、o-メチルフェニル基、m-メチルフェニル基、p-メチルフェニル基、o-クロルフェニル基、m-クロルフェニル基、p-クロルフェニル基、o-フルオロフェニル基、p-メルカプトフェニル基、o-メトキシフェニル基、p-メトキシフェニル基、p-アミノフェニル基、p-シアノフェニル基、α-ナフチル基、β-ナフチル基、o-ビフェニリル基、m-ビフェニリル基、p-ビフェニリル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、4-フェナントリル基及び9-フェナントリル基等が挙げられる。
【0028】
アラルキル基は、アリール基により置換されたアルキル基であり、このようなアリール基及びアルキル基の具体例としては、上述したものと同じものが挙げられる。
アラルキル基の炭素原子数は、特に限定されるものではないが、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、より一層好ましくは20以下である。
アラルキル基の具体例としては、例えばフェニルメチル基(ベンジル基)、2-フェニルエチレン基、3-フェニル-n-プロピル基、4-フェニル-n-ブチル基、5-フェニル-n-ペンチル基、6-フェニル-n-ヘキシル基、7-フェニル-n-ヘプチル基、8-フェニル-n-オクチル基、9-フェニル-n-ノニル基、10-フェニル-n-デシル基等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0029】
ハロゲン化アルキル基は、ハロゲン原子により置換されたアルキル基を指す。
上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、またアルキル基の具体例としては上述したものと同じものが挙げられる。
ハロゲン化アルキル基の炭素原子数は、特に限定されるものではないが、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、より一層好ましくは20以下、更に好ましくは10以下である。
ハロゲン化アルキル基の具体例としては、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ブロモジフルオロメチル基、2-クロロエチル基、2-ブロモエチル基、1,1-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、3-ブロモプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2-イル基、3-ブロモ-2-メチルプロピル基、4-ブロモブチル基、パーフルオロペンチル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
ハロゲン化アリール基は、ハロゲン原子により置換されたアリール基であり、このようなアリール基及びハロゲン原子の具体例としては、上述したものと同じものが挙げられる。
ハロゲン化アリール基の炭素原子数は、特に限定されるものではないが、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、より一層好ましくは20以下である。
ハロゲン化アリール基の具体例としては、2-フルオロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基、2,3-ジフルオロフェニル基、2,4-ジフルオロフェニル基、2,5-ジフルオロフェニル基、2,6-ジフルオロフェニル基、3,4-ジフルオロフェニル基、3,5-ジフルオロフェニル基、2,3,4-トリフルオロフェニル基、2,3,5-トリフルオロフェニル基、2,3,6-トリフルオロフェニル基、2,4,5-トリフルオロフェニル基、2,4,6-トリフルオロフェニル基、3,4,5-トリフルオロフェニル基、2,3,4,5-テトラフルオロフェニル基、2,3,4,6-テトラフルオロフェニル基、2,3,5,6-テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、2-フルオロ-1-ナフチル基、3-フルオロ-1-ナフチル基、4-フルオロ-1-ナフチル基、6-フルオロ-1-ナフチル基、7-フルオロ-1-ナフチル基、8-フルオロ-1-ナフチル基、4,5-ジフルオロ-1-ナフチル基、5,7-ジフルオロ-1-ナフチル基、5,8-ジフルオロ-1-ナフチル基、5,6,7,8-テトラフルオロ-1-ナフチル基、ヘプタフルオロ-1-ナフチル基、1-フルオロ-2-ナフチル基、5-フルオロ-2-ナフチル基、6-フルオロ-2-ナフチル基、7-フルオロ-2-ナフチル基、5,7-ジフルオロ-2-ナフチル基、ヘプタフルオロ-2-ナフチル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
ハロゲン化アラルキル基は、ハロゲン原子により置換されたアラルキル基であり、このようなアラルキル基及びハロゲン原子の具体例としては、上述したものと同じものが挙げられる。
ハロゲン化アラルキル基の炭素原子数は、特に限定されるものではないが、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、より一層好ましくは20以下である。
ハロゲン化アラルキル基の具体例としては、2-フルオロベンジル基、3-フルオロベンジル基、4-フルオロベンジル基、2,3-ジフルオロベンジル基、2,4-ジフルオロベンジル基、2,5-ジフルオロベンジル基、2,6-ジフルオロベンジル基、3,4-ジフルオロベンジル基、3,5-ジフルオロベンジル基、2,3,4-トリフルオロベンジル基、2,3,5-トリフルオロベンジル基、2,3,6-トリフルオロベンジル基、2,4,5-トリフルオロベンジル基、2,4,6-トリフルオロベンジル基、2,3,4,5-テトラフルオロベンジル基、2,3,4,6-テトラフルオロベンジル基、2,3,5,6-テトラフルオロベンジル基、2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンジル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
アルコキシアルキル基は、アルコキシ基により置換されたアルキル基をいう。このようなアルキル基の具体例としては、上述したものと同じものが挙げられる。
【0033】
上記アルコキシ基としては、炭素原子数1乃至20の直鎖、分岐、環状のアルキル部分を有するアルコキシ基が挙げられ、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチロキシ基、1-メチル-n-ブトキシ基、2-メチル-n-ブトキシ基、3-メチル-n-ブトキシ基、1,1-ジメチル-n-プロポキシ基、1,2-ジメチル-n-プロポキシ基、2,2-ジメチル-n-プロポキシ基、1-エチル-n-プロポキシ基、n-ヘキシロキシ基、1-メチル-n-ペンチロキシ基、2-メチル-n-ペンチロキシ基、3-メチル-n-ペンチロキシ基、4-メチル-n-ペンチロキシ基、1,1-ジメチル-n-ブトキシ基、1,2-ジメチル-n-ブトキシ基、1,3-ジメチル-n-ブトキシ基、2,2-ジメチル-n-ブトキシ基、2,3-ジメチル-n-ブトキシ基、3,3-ジメチル-n-ブトキシ基、1-エチル-n-ブトキシ基、2-エチル-n-ブトキシ基、1,1,2-トリメチル-n-プロポキシ基、1,2,2-トリメチル-n-プロポキシ基、1-エチル-1-メチル-n-プロポキシ基及び1-エチル-2-メチル-n-プロポキシ基等が、また環状のアルコキシ基としてはシクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、1-メチル-シクロプロポキシ基、2-メチル-シクロプロポキシ基、シクロペンチロキシ基、1-メチル-シクロブトキシ基、2-メチル-シクロブトキシ基、3-メチル-シクロブトキシ基、1,2-ジメチル-シクロプロポキシ基、2,3-ジメチル-シクロプロポキシ基、1-エチル-シクロプロポキシ基、2-エチル-シクロプロポキシ基、シクロヘキシロキシ基、1-メチル-シクロペンチロキシ基、2-メチル-シクロペンチロキシ基、3-メチル-シクロペンチロキシ基、1-エチル-シクロブトキシ基、2-エチル-シクロブトキシ基、3-エチル-シクロブトキシ基、1,2-ジメチル-シクロブトキシ基、1,3-ジメチル-シクロブトキシ基、2,2-ジメチル-シクロブトキシ基、2,3-ジメチル-シクロブトキシ基、2,4-ジメチル-シクロブトキシ基、3,3-ジメチル-シクロブトキシ基、1-n-プロピル-シクロプロポキシ基、2-n-プロピル-シクロプロポキシ基、1-i-プロピル-シクロプロポキシ基、2-i-プロピル-シクロプロポキシ基、1,2,2-トリメチル-シクロプロポキシ基、1,2,3-トリメチル-シクロプロポキシ基、2,2,3-トリメチル-シクロプロポキシ基、1-エチル-2-メチル-シクロプロポキシ基、2-エチル-1-メチル-シクロプロポキシ基、2-エチル-2-メチル-シクロプロポキシ基及び2-エチル-3-メチル-シクロプロポキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
アルコキシアルキル基の炭素原子数は、特に限定されるものではないが、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、より一層好ましくは20以下、更に好ましくは10以下である。
アルコキシアルキル基の具体例としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、1-エトキシエチル基、2-エトキシエチル基、エトキシメチル基等の低級アルキルオキシ低級アルキル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
アルコキシアリール基は、アルコキシ基が置換したアリール基であり、このようなアルコキシ基及びアリール基の具体例としては、上述したものと同じものが挙げられる。
アルコキシアリール基の炭素原子数は、特に限定されるものではないが、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、より一層好ましくは20以下である。
アルコキシアリール基の具体例としては、例えば、2-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、2-(1-エトキシ)フェニル基、3-(1-エトキシ)フェニル基、4-(1-エトキシ)フェニル基、2-(2-エトキシ)フェニル基、3-(2-エトキシ)フェニル基、4-(2-エトキシ)フェニル基、2-メトキシナフタレン-1-イル基、3-メトキシナフタレン-1-イル基、4-メトキシナフタレン-1-イル基、5-メトキシナフタレン-1-イル基、6-メトキシナフタレン-1-イル基、7-メトキシナフタレン-1-イル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
アルコキシアラルキル基は、アルコキシ基が置換したアラルキル基であり、このようなアルコキシ基及びアラルキル基の具体例としては、上述したものと同じものが挙げられる。
アルコキシアラルキル基の炭素原子数は、特に限定されるものではないが、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、より一層好ましくは20以下である。
アルコキシアラルキル基の具体例としては、3-(メトキシフェニル)ベンジル基、4-(メトキシフェニル)ベンジル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
上記アルケニル基としては炭素原子数2乃至10のアルケニル基が挙げられ、例えばエテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチル-1-エテニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-エチルエテニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-n-プロピルエテニル基、1-メチル-1-ブテニル基、1-メチル-2-ブテニル基、1-メチル-3-ブテニル基、2-エチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、2-メチル-3-ブテニル基、3-メチル-1-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-3-ブテニル基、1,1-ジメチル-2-プロペニル基、1-i-プロピルエテニル基、1,2-ジメチル-1-プロペニル基、1,2-ジメチル-2-プロペニル基、1-シクロペンテニル基、2-シクロペンテニル基、3-シクロペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、1-メチル-1-ペンテニル基、1-メチル-2-ペンテニル基、1-メチル-3-ペンテニル基、1-メチル-4-ペンテニル基、1-n-ブチルエテニル基、2-メチル-1-ペンテニル基、2-メチル-2-ペンテニル基、2-メチル-3-ペンテニル基、2-メチル-4-ペンテニル基、2-n-プロピル-2-プロペニル基、3-メチル-1-ペンテニル基、3-メチル-2-ペンテニル基、3-メチル-3-ペンテニル基、3-メチル-4-ペンテニル基、3-エチル-3-ブテニル基、4-メチル-1-ペンテニル基、4-メチル-2-ペンテニル基、4-メチル-3-ペンテニル基、4-メチル-4-ペンテニル基、1,1-ジメチル-2-ブテニル基、1,1-ジメチル-3-ブテニル基、1,2-ジメチル-1-ブテニル基、1,2-ジメチル-2-ブテニル基、1,2-ジメチル-3-ブテニル基、1-メチル-2-エチル-2-プロペニル基、1-s-ブチルエテニル基、1,3-ジメチル-1-ブテニル基、1,3-ジメチル-2-ブテニル基、1,3-ジメチル-3-ブテニル基、1-i-ブチルエテニル基、2,2-ジメチル-3-ブテニル基、2,3-ジメチル-1-ブテニル基、2,3-ジメチル-2-ブテニル基、2,3-ジメチル-3-ブテニル基、2-i-プロピル-2-プロペニル基、3,3-ジメチル-1-ブテニル基、1-エチル-1-ブテニル基、1-エチル-2-ブテニル基、1-エチル-3-ブテニル基、1-n-プロピル-1-プロペニル基、1-n-プロピル-2-プロペニル基、2-エチル-1-ブテニル基、2-エチル-2-ブテニル基、2-エチル-3-ブテニル基、1,1,2-トリメチル-2-プロペニル基、1-t-ブチルエテニル基、1-メチル-1-エチル-2-プロペニル基、1-エチル-2-メチル-1-プロペニル基、1-エチル-2-メチル-2-プロペニル基、1-i-プロピル-1-プロペニル基、1-i-プロピル-2-プロペニル基、1-メチル-2-シクロペンテニル基、1-メチル-3-シクロペンテニル基、2-メチル-1-シクロペンテニル基、2-メチル-2-シクロペンテニル基、2-メチル-3-シクロペンテニル基、2-メチル-4-シクロペンテニル基、2-メチル-5-シクロペンテニル基、2-メチレン-シクロペンチル基、3-メチル-1-シクロペンテニル基、3-メチル-2-シクロペンテニル基、3-メチル-3-シクロペンテニル基、3-メチル-4-シクロペンテニル基、3-メチル-5-シクロペンテニル基、3-メチレン-シクロペンチル基、1-シクロヘキセニル基、2-シクロヘキセニル基及び3-シクロヘキセニル基等が挙げられ、またビシクロへプテニル基(ノルボルニル基)等の架橋環式のアルケニル基も挙げることができる。
【0038】
上記アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化アラルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシアリール基、アルコキシアラルキル基、アルケニル基における置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化アラルキル基、アルコキシアルキル基、アリールオキシ基、アルコキシアリール基、アルコキシアラルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基等が挙げられ、これらの具体例及びそれらの好適な炭素原子数としては、上述又は後述のものと同じものが挙げられる。
また上記アリールオキシ基は、アリール基が酸素原子(-O-)を介して結合する基であり、このようなアリール基の具体例としては上述したものと同じものが挙げられる。上記アリールオキシ基の炭素原子数は、特に限定されるものではないが、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、より一層好ましくは20以下であり、その具体例としては、フェノキシ基、ナフタレン-2-イルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されない。
また、置換基が2以上存在する場合、置換基同士が結合して環を形成してもよい。
【0039】
上記エポキシ基を含む有機基としては、グリシドキシメチル基、グリシドキシエチル基、グリシドキシプロピル基、グリシドキシブチル基、エポキシシクロヘキシル基等が挙げられるがこれらに限定されない。
上記アクリロイル基を含む有機基としては、アクリロイルメチル基、アクリロイルエチル基、アクリロイルプロピル基等が挙げられるがこれらに限定されない。
上記メタクリロイル基を含む有機基としては、メタクリロイルメチル基、メタクリロイルエチル基、メタクリロイルプロピル基等が挙げられるがこれらに限定されない。
上記メルカプト基を含む有機基としては、エチルメルカプト基、ブチルメルカプト基、ヘキシルメルカプト基、オクチルメルカプト基等が挙げられるがこれらに限定されない。
アミノ基を含む有機基としては、アミノ基、アミノメチル基、アミノエチル基、ジメチルアミノエチル基、ジメチルアミノプロピル基等が挙げられるがこれらに限定されない。
またアミノ基やアミド基を含む有機基としては、例えばシアヌル酸誘導体が挙げられる。
スルホニル基を含む有機基としては、例えばスルホニルアルキル基や、スルホニルアリール基が挙げられるがこれらに限定されない。
シアノ基を含む有機基としては、例えばシアノエチル基、シアノプロピル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
式(1)中、R3は、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、互いに独立して、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基又はハロゲン原子を表す。上記アルコキシ基、ハロゲン原子としては、上述したものと同じものが挙げられる。
【0041】
アラルキルオキシ基は、アラルキルアルコールのヒドロキシ基から水素原子を取り除いて誘導される基であり、このようなアラルキル基の具体例としては、上述したものと同じものが挙げられる。
アラルキルオキシ基の炭素原子数は、特に限定されるものではないが、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、より一層好ましくは20以下である。
アラルキルオキシ基の具体例としては、フェニルメチルオキシ基(ベンジルオキシ基)、2-フェニルエチレンオキシ基、3-フェニル-n-プロピルオキシ基、4-フェニル-n-ブチルオキシ基、5-フェニル-n-ペンチルオキシ基、6-フェニル-n-ヘキシルオキシ基、7-フェニル-n-ヘプチルオキシ基、8-フェニル-n-オクチルオキシ基、9-フェニル-n-ノニルオキシ基、10-フェニル-n-デシルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
アシルオキシ基は、カルボン酸化合物のカルボン酸基から水素原子を取り除いて誘導される基であり、典型的には、アルキルカルボン酸、アリールカルボン酸又はアラルキルカルボン酸のカルボン酸基から水素原子を取り除いて誘導されるアルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基又はアラルキルカルボニルオキシ基が挙げられるが、これらに限定されない。このようなアルキルカルボン酸、アリールカルボン酸及びアラルキルカルボン酸におけるアルキル基、アリール基及びアラルキル基の具体例としては、上述したものと同じものが挙げられる。
アシルオキシ基の具体例としては、炭素原子数1乃至20のアシルオキシ基が挙げられる。例えばメチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n-プロピルカルボニルオキシ基、i-プロピルカルボニルオキシ基、n-ブチルカルボニルオキシ基、i-ブチルカルボニルオキシ基、s-ブチルカルボニルオキシ基、t-ブチルカルボニルオキシ基、n-ペンチルカルボニルオキシ基、1-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、2-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、3-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1,1-ジメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1,2-ジメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、2,2-ジメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1-エチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、n-ヘキシルカルボニルオキシ基、1-メチル-n-ペンチルカルボニルオキシ基、2-メチル-n-ペンチルカルボニルオキシ基、3-メチル-n-ペンチルカルボニルオキシ基、4-メチル-n-ペンチルカルボニルオキシ基、1,1-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1,2-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1,3-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、2,2-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、2,3-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、3,3-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1-エチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、2-エチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1,1,2-トリメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1,2,2-トリメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1-エチル-1-メチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1-エチル-2-メチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基、及びトシルカルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
上記式(1)中、aは1の整数を表し、bは0~2の整数を表し、a+bは1~3の整数を表す。
bは好ましくは0又は1を表し、より好ましくは0である。
すなわち、式(1)で表される加水分解性シランは、R3(ケイ素原子に直接結合するアルコキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子)がケイ素原子に3つ結合してなる(すなわち加水分解性基であるアルコキシシリル基、アラルキルオキシシリル基、アシロキシシリル基、ハロゲン化シリル基を3つ有する)3官能のシランであることが好ましい。
【0044】
上記加水分解縮合物(A)は、塩基性加水分解触媒の存在下での加水分解縮合の生成物であり、塩基性加水分解触媒としては、有機塩基、無機塩基を好適に用いることができる。
【0045】
加水分解触媒としての有機塩基は、例えばピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシド等を挙げることができるが、これらに限定されない。
加水分解触媒としての無機塩基は、例えばアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0046】
また上記塩基性加水分解触媒として、アミノ基を含有する有機基を含む加水分解性シランを使用することもできる。この場合、アミノ基を含有する有機基を含む加水分解性シランと、前述の式(1)で表される加水分解性シランが同一の加水分解性シランであってもよい。
アミノ基を含有する有機基を含む加水分解性シランを塩基性加水分解触媒として使用する場合、後述する加水分解縮合物を得る手順において、アミノ基を含有する有機基を含む加水分解性シラン以外の塩基性加水分解触媒を用いずに水のみを用いて加水分解を行うことができ、また、塩基性加水分解触媒をさらに添加してもよい。
【0047】
なお、本発明の効果を損なわない範囲において、加水分解縮合物(A)は、上記式(1)で表される加水分解性シランに加え、後述する式(2)で表される加水分解性シラン、式(3)で表される加水分解性シラン、さらには、式(4)で表されるオニウム基を分子内に有する加水分解性オルガノシラン、そしてスルホン基を有する加水分解性シランや、スルホンアミド基を有する加水分解性シラン等、その他の加水分解性シランを含む、加水分解性シラン化合物の、塩基性加水分解触媒の存在下での加水分解縮合の生成物とすることができる。
この場合、式(1)で表される加水分解性シラン以外の、その他の加水分解性シランの仕込み量は、全ての加水分解性シラン化合物の仕込み量に対して、例えば0.01~10モル%とすることができる。
また上記式(1)で表される加水分解性シランにおいて、R1がアミノ基を含む有機基であって、加水分解縮合物(A)において該アミノ基がアンモニウムカチオンとなっている場合には、その対アニオンとなる基を含む有機基を分子内に有する加水分解性シランを、加水分解性シラン化合物に含めることができる。
【0048】
なお、式(1)で表される加水分解性シラン以外の、その他の加水分解性シランを含む場合であっても、加水分解性シラン化合物は3官能のシランから選択されること(すなわち加水分解性基であるアルコキシシリル基、アラルキルオキシシリル基、アシロキシシリル基、ハロゲン化シリル基を3つ有する化合物から選択されること)が好ましい。
好ましい態様において、加水分解縮合物(A)は、使用する加水分解シラン化合物の全量に基づいて、3官能の加水分解性シランを50モル%以上、好ましくは60モル%以上、例えば70モル%以上にて含む、加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物とすることができる。また加水分解縮合物(A)は、使用する加水分解シラン化合物の全量に基づいて、4官能の加水分解性シラン(テトラメトキシシラン等)を最大でも50モル%以下とする、加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物であることが好ましい。例えば、加水分解縮合物(A)は、3官能の加水分解性シランのみを含む加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物とすることができる。
【0049】
〔(B)酸性加水分解触媒の存在下で生成される加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物〕
上記加水分解縮合物(B)は、酸性加水分解触媒の存在下での、加水分解性シラン化合物の加水分解縮合の生成物である。
上記加水分解縮合物(B)は、加水分解性シラン化合物が酸性条件下で加水分解縮合されて得られる生成物であれば特に限定されるものではない。
【0050】
本発明の一態様において、上記加水分解縮合物(B)は、下記式(2)で表される加水分解性シラン、及び、下記式(3)で表される加水分解性シランから選ばれる少なくとも一種を含む、加水分解性シラン化合物の、加水分解性シラン化合物が酸性条件下で加水分解縮合されて得られる生成物とすることができる。
【0051】
【化5】
式(2)中、R
4は、Si-C結合によりケイ素原子に結合する基であって、互いに独立して、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいハロゲン化アルキル基、置換されていてもよいハロゲン化アリール基、置換されていてもよいハロゲン化アラルキル基、置換されていてもよいアルコキシアルキル基、置換されていてもよいアルコキシアリール基、置換されていてもよいアルコキシアラルキル基、若しくは置換されていてもよいアルケニル基を表すか、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基、若しくはスルホニル基、若しくはシアノ基を含む有機基、又はそれらの組み合わせを表す。
またR
5は、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、互いに独立して、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン原子を表す。
そしてcは、0~3の整数を表す。
【0052】
上記R4における各基の具体例、及びそれらの好適な炭素原子数としては、R2について上述の基及び炭素原子数を挙げることができる。
上記R5における各基の具体例、及びそれらの好適な炭素原子数としては、R3について上述の基及び炭素原子数を挙げることができる。
またcは好ましくは0又は1を表し、より好ましくは0である。
【0053】
【化6】
式(3)中、R
6は、Si-C結合によりケイ素原子に結合する基であって、互いに独立して、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいハロゲン化アルキル基、置換されていてもよいハロゲン化アリール基、置換されていてもよいハロゲン化アラルキル基、置換されていてもよいアルコキシアルキル基、置換されていてもよいアルコキシアリール基、置換されていてもよいアルコキシアラルキル基、若しくは置換されていてもよいアルケニル基を表すか、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基、若しくはスルホニル基、若しくはシアノ基を含む有機基、又はそれらの組み合わせを表す。
またR
7は、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、互いに独立して、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン原子を表す。
Yは、Si-C結合によりケイ素原子に結合する基であって、互いに独立して、アルキレン基又はアリーレン基を表す。
そして、dは、0又は1の整数を表し、eは、0又は1の整数を表す。
【0054】
上記R6における各基の具体例、及びそれらの好適な炭素原子数としては、R2について上述の基及び炭素原子数を挙げることができる。
上記R7における各基の具体例、及びそれらの好適な炭素原子数としては、R3について上述の基及び炭素原子数を挙げることができる。
また上記Yにおけるアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基等の直鎖状アルキレン基、1-メチルトリメチレン基、2-メチルトリメチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、1-メチルテトラメチレン基、2-メチルテトラメチレン基、1,1-ジメチルトリメチレン基、1,2-ジメチルトリメチレン基、2,2-ジメチルトリメチレン基、1-エチルトリメチレン基等の分岐鎖状アルキレン基等のアルキレン基、メタントリイル基、エタン-1,1,2-トリイル基、エタン-1,2,2-トリイル基、エタン-2,2,2-トリイル基、プロパン-1,1,1-トリイル基、プロパン-1,1,2-トリイル基、プロパン-1,2,3-トリイル基、プロパン-1,2,2-トリイル基、プロパン-1,1,3-トリイル基、ブタン-1,1,1-トリイル基、ブタン-1,1,2-トリイル基、ブタン-1,1,3-トリイル基、ブタン-1,2,3-トリイル基、ブタン-1,2,4-トリイル基、ブタン-1,2,2-トリイル基、ブタン-2,2,3-トリイル基、2-メチルプロパン-1,1,1-トリイル基、2-メチルプロパン-1,1,2-トリイル基、2-メチルプロパン-1,1,3-トリイル基、2-メチルプロパン-1,1,1-トリイル基のアルカントリイル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
またアリーレン基の具体例としては、1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基;1,5-ナフタレンジイル基、1,8-ナフタレンジイル基、2,6-ナフタレンジイル基、2,7-ナフタレンジイル基、1,2-アントラセンジイル基、1,3-アントラセンジイル基、1,4-アントラセンジイル基、1,5-アントラセンジイル基、1,6-アントラセンジイル基、1,7-アントラセンジイル基、1,8-アントラセンジイル基、2,3-アントラセンジイル基、2,6-アントラセンジイル基、2,7-アントラセンジイル基、2,9-アントラセンジイル基、2,10-アントラセンジイル基、9,10-アントラセンジイル基等の縮合環芳香族炭化水素化合物の芳香環上の水素原子を二つ取り除いて誘導される基;4,4’-ビフェニルジイル基、4,4”-パラテルフェニルジイル基の環連結芳香族炭化水素化合物の芳香環上の水素原子を二つ取り除いて誘導される基等が挙げられるが、これらに限定されない。
またdは好ましくは0又は1を表し、より好ましくは0である。
さらにeは好ましくは1である。
【0055】
式(2)で表される加水分解性シランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラクロルシラン、テトラアセトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn-プロポキシシラン、テトラi-プロポキシシラン、テトラn-ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリアミロキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、メチルトリベンジルオキシシラン、メチルトリフェネチルオキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、αーグリシドキシエチルトリメトキシシラン、α-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、α-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、α-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、α-グリシドキシブチルトリエトキシシラン、β-グリシドキシブチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシブチルトリエトキシシラン、δ-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、δ-グリシドキシブチルトリエトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリブトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリフェノキシシラン、γ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、δ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシラン、δ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジメトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジエトキシシラン、α-グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、α-グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、β-グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、β-グリシドキシエチルエチルジメトキシシラン、α-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、α-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β-グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジブトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ-グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルビニルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルビニルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メトキシフェニルトリメトキシシラン、メトキシフェニルトリエトキシシラン、メトキシフェニルトリアセトキシシラン、メトキシフェニルトリクロロシラン、メトキシベンジルトリメトキシシラン、メトキシベンジルトリエトキシシラン、メトキシベンジルトリアセトキシシラン、メトキシベンジルトリクロロシラン、メトキシフェネチルトリメトキシシラン、メトキシフェネチルトリエトキシシラン、メトキシフェネチルトリアセトキシシラン、メトキシフェネチルトリクロロシラン、エトキシフェニルトリメトキシシラン、エトキシフェニルトリエトキシシラン、エトキシフェニルトリアセトキシシラン、エトキシフェニルトリクロロシラン、エトキシベンジルトリメトキシシラン、エトキシベンジルトリエトキシシラン、エトキシベンジルトリアセトキシシラン、エトキシベンジルトリクロロシラン、i-プロポキシフェニルトリメトキシシラン、i-プロポキシフェニルトリエトキシシラン、i-プロポキシフェニルトリアセトキシシラン、i-プロポキシフェニルトリクロロシラン、i-プロポキシベンジルトリメトキシシラン、i-プロポキシベンジルトリエトキシシラン、i-プロポキシベンジルトリアセトキシシラン、i-プロポキシベンジルトリクロロシラン、t-ブトキシフェニルトリメトキシシラン、t-ブトキシフェニルトリエトキシシラン、t-ブトキシフェニルトリアセトキシシラン、t-ブトキシフェニルトリクロロシラン、t-ブトキシベンジルトリメトキシシラン、t-ブトキシベンジルトリエトキシシラン、t-ブトキシベンジルトリアセトキシシラン、t-ブトキシシベンジルトリクロロシラン、メトキシナフチルトリメトキシシラン、メトキシナフチルトリエトキシシラン、メトキシナフチルトリアセトキシシラン、メトキシナフチルトリクロロシラン、エトキシナフチルトリメトキシシラン、エトキシナフチルトリエトキシシラン、エトキシナフチルトリアセトキシシラン、エトキシナフチルトリクロロシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリエトキシシラン、γ-クロロプロピルトリアセトキシシラン、3、3、3-トリフロロプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、β-シアノエチルトリエトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、トリエトキシシリルプロピルジアリルイソシアヌレート、ビシクロ(2,2,1)ヘプテニルトリエトキシシラン、ベンゼンスルホニルプロピルトリエトキシシラン、ベンゼンスルホンアミドプロピルトリエトキシシラン、ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシランや、式(A-1)~(A-41)で表されるシラン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
式(3)で表される加水分解性シランの具体例としては、メチレンビストリメトキシシラン、メチレンビストリクロロシラン、メチレンビストリアセトキシシラン、エチレンビストリエトキシシラン、エチレンビストリクロロシラン、エチレンビストリアセトキシシラン、プロピレンビストリエトキシシラン、ブチレンビストリメトキシシラン、フェニレンビストリメトキシシラン、フェニレンビストリエトキシシラン、フェニレンビスメチルジエトキシシラン、フェニレンビスメチルジメトキシシラン、ナフチレンビストリメトキシシラン、ビストリメトキシジシラン、ビストリエトキシジシラン、ビスエチルジエトキシジシラン、ビスメチルジメトキシジシラン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
これらの中でも、本発明の組成物から得られる膜の架橋密度を向上させて、レジスト膜の成分の当該得られる膜への拡散等を抑制し、当該レジスト膜のレジスト特性の維持・改善する観点等から、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等の4官能の加水分解性シランを必須として用いて得られる加水分解縮合物(B)の使用が好ましい。
好ましい態様において、加水分解縮合物(B)は、使用する加水分解シラン化合物の全量に基づいて、上記の4官能の加水分解性シランを例えば50モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上にて含む、加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物とすることができる。
【0061】
上記加水分解縮合物(B)は、酸性加水分解触媒の存在下での加水分解縮合の生成物であり、酸性加水分解触媒としては、有機酸、無機酸を好適に用いることができる。
【0062】
加水分解触媒としての有機酸は、例えば酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、アジピン酸、セバシン酸、没食子酸、酪酸、メリット酸、アラキドン酸、2-エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p-アミノ安息香酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸等を挙げることができるが、これらに限定されない。
加水分解触媒としての無機酸は、例えば塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0063】
本発明において、加水分解縮合物(B)は、上記式(2)で表される加水分解性シラン及び/又は式(3)で表される加水分解性シランに加え、オニウム基を分子内に有する加水分解性オルガノシランを含む、加水分解性シラン化合物の、酸性加水分解触媒の存在下での加水分解縮合の生成物とすることができる。
【0064】
このようなオニウム基を分子内に有する加水分解性オルガノシランな好適な一例は、式(4)で表される。
【0065】
【0066】
R31は、ケイ素原子に結合する基であって、オニウム基又はそれを含む有機基を表す。
R32は、ケイ素原子に結合する基であって、互いに独立して、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいハロゲン化アルキル基、置換されていてもよいハロゲン化アリール基、置換されていてもよいハロゲン化アラルキル基、置換されていてもよいアルコキシアルキル基、置換されていてもよいアルコキシアリール基、置換されていてもよいアルコキシアラルキル基、若しくは置換されていてもよいアルケニル基を表すか、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基若しくはシアノ基を含む有機基、又はそれらの組み合わせを表す。
R33は、ケイ素原子に結合する基又は原子であって、互いに独立して、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン原子を表す。
fは1又は2を表し、gは0又は1を表し、1≦f+g≦2を満たす。
【0067】
上記のアルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化アラルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシアリール基、アルコキシアラルキル基、アルケニル基、並びに、エポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基又はシアノ基を含む有機基、
アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子の具体例、またアルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化アラルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシアリール基、アルコキシアラルキル基及びアルケニル基の置換基の具体例、及びそれらの好適な炭素原子数としては、R32については、R2に関して上述したものを、R33については、R3に関して上述したものをそれぞれ挙げることができる。
【0068】
より詳述すれば、オニウム基の具体例としては、環状アンモニウム基又は鎖状アンモニウム基が挙げられ、第3級アンモニウム基又は第4級アンモニウム基が好ましい。
すなわち、オニウム基又はそれを含む有機基の好適な具体例としては、環状アンモニウム基若しくは鎖状アンモニウム基又はこれらの少なくとも一方を含む有機基が挙げられ、第3級アンモニウム基若しくは第4級アンモニウム基又はこれらの少なくとも一方を含む有機基が好ましい。
なお、オニウム基が環状アンモニウム基である場合、アンモニウム基を構成する窒素原子が環を構成する原子を兼ねる。この際、環を構成する窒素原子とシリコン原子とが直接又は2価の連結基を介して結合している場合と、環を構成する炭素原子とシリコン原子が直接に又は2価の連結基を介して結合している場合とがある。
【0069】
本発明の好適な態様の一例においては、ケイ素原子に結合する基であるR
31は、下記式(S1)で表されるヘテロ芳香族環状アンモニウム基である。
【化11】
【0070】
式(S1)中、A1、A2、A3及びA4は、互いに独立して、下記式(J1)~(J3)のいずれかで表される基を表すが、A1~A4のうち少なくとも1つは、下記式(J2)で表される基である。上記式(4)におけるケイ素原子がA1~A4のいずれと結合するかに応じて、構成される環が芳香族性を示すように、A1~A4それぞれと、それら各々に隣接し共に環を構成する原子との間の結合が、単結合であるか、二重結合であるかが定まる。
【0071】
【0072】
式(J1)~(J3)中、R30は、互いに独立して、単結合、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化アラルキル基又はアルケニル基を表し、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化アラルキル基及びアルケニル基の具体例及びそれらの好適な炭素原子数としては、上述と同じものが挙げられる。
【0073】
式(S1)中、R34は、互いに独立して、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化アラルキル基、アルケニル基又はヒドロキシ基を表し、R34が2つ以上存在する場合、2つのR34は、互いに結合して環を形成していてもよく、2つのR34が形成する環は架橋環構造であってもよく、このような場合においては、環状アンモニウム基は、アダマンタン環、ノルボルネン環、スピロ環等を有することとなる。
このようなアルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化アラルキル基及びアルケニル基の具体例及びそれらの好適な炭素原子数としては、上述と同じものが挙げられる。
【0074】
式(S1)中、n1は、1~8の整数であり、m1は、0又は1であり、m2は、0又は1から単環若しくは多環に置換可能な最大数までの正の整数である。
m1が0である場合、A1~A4を含む(4+n1)員環が構成される。すなわち、n1が1であるときは5員環、n1が2であるときは6員環、n1が3であるときは7員環、n1が4であるときは8員環、n1が5であるときは9員環、n1が6であるときは10員環、n1が7であるときは11員環、n1が8であるときは12員環が、それぞれ構成される。
m1が1である場合、A1~A3を含む(4+n1)員環とA4を含む6員環とが縮合した縮合環が形成される。
A1~A4は、式(J1)~(J3)のいずれであるか次第で、環を構成する原子上に水素原子を有する場合と、水素原子を有さない場合があるが、A1~A4が、環を構成する原子上に水素原子を有する場合、その水素原子は、R34に置き換わっていてもよい。また、A1~A4中の環構成原子以外の環構成原子に、R34が置換していてもよい。このような事情から、上述の通り、m2は、0又は1から単環若しくは多環に置換可能な最大数までの整数から選択される。
【0075】
上記式(S1)で表されるヘテロ芳香族環状アンモニウム基の結合手は、このような単環又は縮合環に存在する任意の炭素原子又は窒素原子に存在し、ケイ素原子と直接結合するか、又は連結基が結合して環状アンモニウムを含む有機基が構成され、これがケイ素原子と結合する。
このような連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、アルケニレン基等が挙げられるが、これらに限定されない。
アルキレン基及びアリーレン基の具体例及びそれらの好適な炭素原子数としては、上述したものと同じものが挙げられる。
【0076】
またアルケニレン基は、アルケニル基の水素原子を更に一つ取り除いて誘導される2価の基であり、このようなアルケニル基の具体例としては、上述したものと同じものが挙げられる。アルケニレン基の炭素原子数は、特に限定されるものではないが、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、より一層好ましくは20以下である。
その具体例としては、ビニレン、1-メチルビニレン、プロペニレン、1-ブテニレン、2-ブテニレン、1-ペンテニレン、2-ペンテニレン基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
上記式(S1)で表されるヘテロ芳香族環状アンモニウム基を有する式(4)で表される加水分解性オルガノシランの具体例を以下に挙げるが、これらに限定されない。
【化13】
【0078】
【0079】
【0080】
またその他の一例において、上記式(4)中のケイ素原子に結合する基であるR
31は、下記式(S2)で表されるヘテロ脂肪族環状アンモニウム基とすることができる。
【化16】
【0081】
式(S2)中、A5、A6、A7及びA8は、互いに独立して、下記式(J4)~(J6)のいずれかで表される基を表すが、A5~A8のうち少なくとも1つは、下記式(J5)で表される基である。上記式(4)におけるケイ素原子がA5~A8のいずれと結合するかに応じて、構成される環が非芳香族性を示すように、A5~A8それぞれと、それら各々に隣接し共に環を構成する原子との結合が、単結合であるか、二重結合であるかが定まる。
【0082】
【0083】
式(J4)~(J6)中、R30は、互いに独立して、単結合、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化アラルキル基又はアルケニル基を表し、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化アラルキル基及びアルケニル基の具体例及びそれらの好適な炭素原子数としては、上述したものと同じものが挙げられる。
【0084】
式(S2)中、R35は、互いに独立して、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化アラルキル基、アルケニル基又はヒドロキシ基を表し、R35が2つ以上存在する場合、2つのR35は、互いに結合して環を形成していてもよく、2つのR35が形成する環は架橋環構造であってもよく、このような場合においては、環状アンモニウム基は、アダマンタン環、ノルボルネン環、スピロ環等を有することとなる。
アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化アラルキル基及びアルケニル基の具体例及びそれらの好適な炭素原子数としては、上述したものと同じものが挙げられる。
【0085】
式(S2)中、n2は、1~8の整数であり、m3は、0又は1であり、m4は、0又は1から単環若しくは多環に置換可能な最大数までの正の整数である。
m3が0である場合、A5~A8を含む(4+n2)員環が構成される。すなわち、n2が1であるときは5員環、n2が2であるときは6員環、n2が3であるときは7員環、n2が4であるときは8員環、n2が5であるときは9員環、n2が6であるときは10員環、n2が7であるときは11員環、n2が8であるときは12員環が、それぞれ構成される。
m3が1である場合、A5~A7を含む(4+n2)員環とA8を含む6員環とが縮合した縮合環が形成される。
A5~A8は、式(J4)~(J6)のいずれであるか次第で、環を構成する原子上に水素原子を有することと、水素原子を有さないことがあるが、A5~A8が、環を構成する原子上に水素原子を有する場合、その水素原子は、R35に置き換わっていてもよい。また、A5~A8中の環構成原子以外の環構成原子に、R35が置換していてもよい。
このような事情から、上述の通り、m4は、0又は1から単環若しくは多環に置換可能な最大数までの整数から選択される。
【0086】
上記式(S2)で表されるヘテロ脂肪族環状アンモニウム基の結合手は、このような単環又は縮合環に存在する任意の炭素原子又は窒素原子に存在し、ケイ素原子と直接結合するか、又は連結基が結合して環状アンモニウムを含む有機基が構成され、これがケイ素原子と結合する。
このような連結基としては、アルキレン基、アリーレン基又はアルケニレン基が挙げられ、アルキレン基、アリーレン基及びアルケニレン基の具体例及びそれらの好適な炭素原子数としては、上述と同じものが挙げられる。
【0087】
上記式(S2)で表されるヘテロ脂肪族環状アンモニウム基を有する式(4)で表される加水分解性オルガノシランの具体例を以下に挙げるが、これらに限定されない。
【化18】
【0088】
【0089】
さらにその他の一例において、上記式(4)中のケイ素原子に結合する基であるR
31は、下記式(S3)で表される鎖状アンモニウム基とすることができる。
【化20】
【0090】
式(S3)中、R30は、互いに独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化アラルキル基又はアルケニル基を表し、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化アラルキル基及びアルケニル基の具体例及びそれらの好適な炭素原子数としては、上述したものと同じものが挙げられる。
【0091】
式(S3)で表される鎖状アンモニウム基は、ケイ素原子と直接結合するか、又は連結基が結合して鎖状アンモニウム基を含む有機基が構成され、これがケイ素原子と結合する。
このような連結基としては、アルキレン基、アリーレン基又はアルケニレン基が挙げられ、アルキレン基、アリーレン基及びアルケニレン基の具体例としては、上述と同じものが挙げられる。
【0092】
上記式(S3)で表される鎖状アンモニウム基を有する式(4)で表される加水分解性オルガノシランの具体例を以下に挙げるが、これらに限定されない。
【化21】
【0093】
【0094】
また本発明の膜形成用組成物において、加水分解縮合物(B)は、上記式(2)で表される加水分解性シラン及び/又は式(3)で表される加水分解性シランに加え、スルホン基を有する加水分解性シランや、スルホンアミド基を有する加水分解性シランを更に含む、加水分解性シラン化合物の、酸性加水分解触媒の存在下での加水分解縮合の生成物とすることができる。以下、それらの具体例を挙げるが、これらに限定されない。
下記式中、Meはメチル基を、Etはエチル基をそれぞれ表す。
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
また上記の例示以外にも、本発明の効果を損なわない範囲において、上記加水分解性シラン化合物には、上記の例示以外のその他の加水分解性シランを含んでいてよい。
【0099】
加水分解縮合物(B)において、加水分解性シラン化合物として上記式(2)で表される加水分解性シラン及び/又は式(3)で表される加水分解性シランに加え、式(4)で表されるオニウム基を分子内に有する加水分解性オルガノシラン、そしてスルホン基を有する加水分解性シランや、スルホンアミド基を有する加水分解性シラン等、その他の加水分解性シランを用いて加水分解縮合物とする場合、式(2)及び(3)で表される加水分解性シラン以外の、その他の加水分解性シランの仕込み量は、全ての加水分解性シラン化合物の仕込み量に対して、例えば0.01~10モル%とすることができる。
【0100】
上記加水分解縮合物A(ポリシロキサンAともいう)及び加水分解縮合物B(ポリシロキサンBともいう)は、いずれも、その重量平均分子量を例えば500~1,000,000とすることができる。組成物中での加水分解縮合物の析出等を抑制する観点等から、好ましくは重量平均分子量を500,000以下、より好ましくは250,000以下、より一層好ましくは100,000以下とすることができ、保存安定性と塗布性の両立の観点等から、好ましくは700以上、より好ましくは1,000以上とすることができる。
なお、重量平均分子量は、GPC分析によるポリスチレン換算で得られる分子量である。GPC分析は、例えばGPC装置(商品名HLC-8220GPC、東ソー(株)製)、GPCカラム(商品名ShodexKF803L、KF802、KF801、昭和電工(株)製)を用い、カラム温度を40℃とし、溶離液(溶出溶媒)としてテトラヒドロフランを用い、流量(流速)を1.0ml/分とし、標準試料としてポリスチレン(昭和電工(株)製)を用いて、行うことができる。
【0101】
上記の加水分解縮合物A及び加水分解縮合物Bは、上述の加水分解性シラン化合物を上述の塩基性加水分解触媒の存在下(加水分解縮合物A)にて、あるいは、上述の酸性加水分解触媒の存在下(加水分解縮合物B)にて、加水分解及び縮合することで得られる。
本発明で用いる種々の加水分解性シラン化合物は、ケイ素原子に直接結合するアルコキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子を、すなわち加水分解性基であるアルコキシシリル基、アラルキルオキシシリル基、アシロキシシリル基、ハロゲン化シリル基を含む。
これら加水分解性基の加水分解には、加水分解性基の1モル当たり、通常0.5~100モル、好ましくは1~10モルの水を用いる。
上記の塩基性加水分解触媒並びに酸性加水分解触媒は、加水分解性基の1モル当たり、通常0.0001~10モル、好ましくは0.001~1モルにて用いることができる。なお前述したように、アミノ基を含有する有機基を含む加水分解性シランを塩基性加水分解触媒として使用する場合には、アミノ基を含有する有機基を含む加水分解性シラン以外の塩基性加水分解触媒は使用せずともよい。
加水分解と縮合を行う際の反応温度は、通常室温以上、加水分解に用いられ得る有機溶媒の常圧での還流温度以下の範囲であり、例えば20乃至110℃、また例えば20乃至80℃とすることができる。
なお上記の加水分解は完全に加水分解を行う、すなわち、全ての加水分解性基をシラノール基に変えてもよいし、部分加水分解する、即ち未反応の加水分解性基を残してもよい。即ち、加水分解及び縮合反応後に、加水分解縮合物中に未縮合の加水分解物(完全加水分解物、部分加水分解物)や、またモノマー(加水分解性シラン化合物)が残存していてもよい。
【0102】
また加水分解縮合時において、本発明の効果を損なわない範囲において、塩基性加水分解触媒、酸性加水分解触媒に加えて、加水分解触媒として金属キレート化合物を併用してもよい。
加水分解触媒としての金属キレート化合物は、例えばトリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ-n-プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ-i-プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ-n-ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ-sec-ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ-t-ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ-n-プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ-i-プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ-n-ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ-sec-ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ-t-ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ-n-プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ-i-プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ-n-ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ-sec-ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ-t-ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、テトラキス(アセチルアセトナート)チタン、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ-n-プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ-i-プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ-n-ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ-sec-ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ-t-ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ-n-プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ-i-プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ-n-ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ-sec-ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ-t-ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ-n-プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ-i-プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ-n-ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ-sec-ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ-t-ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、テトラキス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)チタン、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)チタン等のチタンキレート化合物;トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ-n-プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ-i-プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ-n-ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ-sec-ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ-t-ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ-n-プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ-i-プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ-n-ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ-sec-ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ-t-ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ-n-プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ-i-プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ-n-ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ-sec-ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ-t-ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ-n-プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ-i-プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ-n-ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ-sec-ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ-t-ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ-n-プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ-i-プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ-n-ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ-sec-ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ-t-ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ-n-プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ-i-プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ-n-ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ-sec-ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ-t-ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、等のジルコニウムキレート化合物;トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム等のアルミニウムキレート化合物等などを挙げることをできるが、これらに限定されない。
【0103】
加水分解をする際、溶媒として有機溶媒を用いてもよく、その具体例としては、例えばn-ペンタン、i-ペンタン、n-ヘキサン、i-ヘキサン、n-ヘプタン、i-ヘプタン、2,2,4-トリメチルペンタン、n-オクタン、i-オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n-プロピルベンセン、i-プロピルベンセン、ジエチルベンゼン、i-ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ-i-プロピルベンセン、n-アミルナフタレン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、2-メチルブタノール、sec-ペンタノール、t-ペンタノール、3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、sec-ヘキサノール、2-エチルブタノール、sec-ヘプタノール、ヘプタノール-3、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、sec-オクタノール、n-ノニルアルコール、2,6-ジメチルヘプタノール-4、n-デカノール、sec-ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec-テトラデシルアルコール、sec-ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェニルメチルカルビノール、ジアセトンアルコール、クレゾール等のモノアルコール系溶媒;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ペンタンジオール-2,4、2-メチルペンタンジオール-2,4、ヘキサンジオール-2,5、ヘプタンジオール-2,4、2-エチルヘキサンジオール-1,3、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、メチル-n-ペンチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジ-i-ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、フェンチョン等のケトン系溶媒;エチルエーテル、i-プロピルエーテル、n-ブチルエーテル、n-ヘキシルエーテル、2-エチルヘキシルエーテル、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、ジオキソラン、4-メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;ジエチルカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸sec-ペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2-エチルブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n-ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸i-アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ-n-ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-ブチル、乳酸n-アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等のエステル系溶媒;N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド、N-メチルピロリドン等の含窒素系溶媒;硫化ジメチル、硫化ジエチル、チオフェン、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3-プロパンスルトン等の含硫黄系溶媒等を挙げることができるが、これらに限定されない。これらの溶媒は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、メチル-n-ペンチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジ-i-ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、フェンチョン等のケトン系溶媒が溶液の保存安定性の点で好ましい。
【0104】
加水分解反応の終了後、反応溶液をそのまま又は希釈若しくは濃縮し、それを中和することで、或いはイオン交換樹脂を用いて処理することで、加水分解に用いた酸や塩基等の加水分解触媒を取り除くことができる。また、このような処理の前又は後に、減圧蒸留等によって、反応溶液から副生成物のアルコールや水、用いた加水分解触媒等を除去することができる。
【0105】
このようにして得られた加水分解縮合物(ポリシロキサン)A、加水分解縮合物(ポリシロキサン)B、は、有機溶媒中に溶解しているポリシロキサンワニスの形態として得られ、これをそのまま後述する膜形成用組成物において用いることができる。得られたポリシロキサンワニスは溶媒置換してもよいし、また適宜溶媒で希釈してもよい。なお得られたポリシロキサンワニスは、その保存安定性が悪くなければ、有機溶媒を留去し、固形分濃度100%とすることもできる。
上記ポリシロキサンワニスの溶媒置換や希釈等に用いる有機溶媒は、加水分解性シラン化合物の加水分解反応に用いた有機溶媒と同じでも異なってもよい。この希釈用溶媒は、特に限定されず、1種でも2種以上でも任意に選択して用いることができる。
【0106】
[膜形成用組成物]
本発明の膜形成用組成物は、上記加水分解縮合物A、上記加水分解縮合物Bと、溶媒とを含む。
膜形成用組成物における固形分の濃度は、当該組成物の全質量に対して、例えば0.1乃至50質量%、0.1乃至30質量%、0.1乃至25質量%、0.5乃至20.0質量%とすることができる。固形分とは、前述したように、当該組成物の全成分から溶媒成分を除いた成分を指す。
上記固形分中に占める加水分解縮合物A及び加水分解縮合物Bの合計割合は20質量%以上であり、上述した本発明の効果を再現性よく得る観点から例えば50乃至100質量%とすることができ、60乃至100質量%、70乃至100質量%、80乃至100質量%、また80乃至99質量%とすることができる。
また該組成物中の上記加加水分解縮合物A及び加水分解縮合物Bの合計濃度は、例えば0.5乃至20.0質量%とすることができる。
【0107】
膜形成用組成物は、上記加水分解縮合物A及び加水分解縮合物Bと、溶媒と、所望によりその他の成分が含まれる場合には当該その他の成分とを混合することで製造できる。この際、加水分解縮合物等を含む溶液を予め準備し、この溶液を、溶媒やその他の成分と混合してもよい。
混合順序は特に限定されるものではない。例えば、加水分解縮合物等を含む溶液に、溶媒を加えて混合し、その混合物にその他の成分を加えてもよく、加水分解縮合物等を含む溶液と、溶媒と、その他の成分を同時に混合してもよい。
必要であれば、最後に更に溶媒を追加で加えたり、溶媒に比較的溶けやすい一部の成分を混合物中に含めずにおき、最後にそれを加えたりしてもよいが、構成成分の凝集や分離を抑制し、均一性に優れる組成物を再現性よく調製する観点から、加水分解縮合物等が良好に溶解した溶液を予め準備し、これを用いて組成物を調製することが好ましい。なお、加水分解縮合物等は、共に混ぜられる溶媒の種類や量、その他の成分の量や性質等によっては、これらが混ぜられた際に凝集又は沈殿する可能性がある点に留意する。また、加水分解縮合物等が溶解した溶液を用いて組成物を調製する場合、最終的に得られる組成物中の加水分解縮合物等が所望の量となるように、加水分解縮合物等の溶液の濃度やその使用量を決める必要がある点も留意する。
組成物の調製において、成分が分解したり変質したりしない範囲で、適宜加熱してもよい。
【0108】
本発明において、膜形成用組成物を製造する途中の段階において、又は全ての成分を混合した後に、サブマイクロメートルオーダーのフィルター等を用いてろ過してもよい。
【0109】
本発明の膜形成用組成物はリソグラフィー工程、特にEUVリソグラフィー工程に使用されるレジスト下層膜形成用の組成物として、好適に用いることができる。
なお、本発明の膜形成用組成物は、上記加水分解縮合物A及び加水分解縮合物Bの他に、未縮合の加水分解物(完全加水分解物、部分加水分解物)や、モノマー(加水分解性シラン化合物)が残存していてもよい。
【0110】
〔溶媒〕
本発明の膜形成用組成物に使用される溶媒は、上記固形分を溶解できる溶媒であれば特に制限なく使用することができる。
このような溶媒は、上記加水分解縮合物A及び加水分解縮合物B、そしてその他の成分を溶解する限り制限されるものではない。
【0111】
その具体例としては、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、メチルイソブチルカルビノール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸イソプロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸イソプロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸アミル、ギ酸イソアミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシ-3-メチル酪酸メチル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メトキシプロピルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、3-メチル-3-メトキシブチルブチレート、アセト酢酸メチル、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、シクロヘキサノン、N、N-ジメチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、4-メチル-2-ペンタノール、γ-ブチロラクトン等を挙げることができ、溶媒は1種単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0112】
また本発明の膜形成用組成物は、溶媒として水を含んでいてもよい。溶媒として水を含む場合、その含有量は、当該組成物が含む溶媒の合計質量に対して、例えば30質量%以下、好ましくは20質量%以下、より一層好ましくは15質量%以下とすることができる。
【0113】
〔その他添加剤〕
本発明の膜形成用組成物には、組成物の用途に応じて種々の添加剤を配合可能である。
上記添加剤としては、例えば、架橋剤、架橋触媒、安定化剤(有機酸、水、アルコール等)、有機ポリマー化合物、酸発生剤、界面活性剤(ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、UV硬化型界面活性剤等)、pH調整剤、レオロジー調整剤、接着補助剤等、レジスト下層膜や、反射防止膜、パターン反転用膜など、半導体装置の製造に使用され得る各種膜を形成する材料(組成物)に配合される公知の添加剤を挙げることができる。
以下に各種添加剤を例示するが、これらに限定されるものではない。
【0114】
<安定化剤>
上記安定化剤は、上記加水分解縮合物A及び加水分解縮合物Bの安定化等の目的のために添加され得、その具体例として、有機酸、水、アルコール、又はそれらの組み合わせを添加することができる。
上記有機酸としては、例えばシュウ酸、マロン酸、メチルマロン酸、コハク酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、フタル酸、クエン酸、グルタル酸、乳酸、サリチル酸等が挙げられる。中でも、シュウ酸、マレイン酸が好ましい。有機酸を添加する場合、その添加量は、加水分解縮合物A及び加水分解縮合物Bの合計質量に対して0.1~5.0質量%とすることができる。これら有機酸はpH調整剤としても働き得る。
上記水としては、純水、超純水、イオン交換水等を用いることができ、使用する場合、その添加量は、膜形成用組成物100質量部に対して1質量部~20質量部とすることができる。
上記アルコールとしては塗布後の加熱により飛散しやすいものが好ましく、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、i-プロパノール、ブタノール等が挙げられる。アルコールを添加する場合、その添加量は、膜形成用組成物100質量部に対して1質量部~20質量部とすることができる。
【0115】
<有機ポリマー>
上記有機ポリマー化合物は、該組成物に添加することにより、該組成物から形成される膜(レジスト下層膜)のドライエッチング速度(単位時間当たりの膜厚の減少量)や、また減衰係数や屈折率等を調整することができる。該有機ポリマー化合物としては特に制限はなく、その添加目的に応じて、種々の有機ポリマー(縮重合ポリマー及び付加重合ポリマー)の中から適宜選択される。
その具体例としては、ポリエステル、ポリスチレン、ポリイミド、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ポリビニルエーテル、フェノールノボラック、ナフトールノボラック、ポリエーテル、ポリアミド、ポリカーボネート等の付加重合ポリマー及び縮重合ポリマーが挙げられる。
本発明においては、吸光部位として機能するベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、トリアジン環、キノリン環、キノキサリン環等の芳香環や複素芳香環を含む有機ポリマーも、そのような機能が必要な場合には、好適に用い得る。そのような有機ポリマー化合物の具体例としては、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルアクリレート、ナフチルアクリレート、アントリルメタクリレート、アントリルメチルメタクリレート、スチレン、ヒドロキシスチレン、ベンジルビニルエーテル及びN-フェニルマレイミド等の付加重合性モノマーをその構造単位として含む付加重合ポリマーや、フェノールノボラック及びナフトールノボラック等の縮重合ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0116】
有機ポリマー化合物として付加重合ポリマーが使用される場合、そのポリマー化合物は、単独重合体、共重合体のいずれであってもよい。
付加重合ポリマーの製造には付加重合性モノマーが使用されるが、そのような付加重合性モノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、アクリルアミド化合物、メタクリルアミド化合物、ビニル化合物、スチレン化合物、マレイミド化合物、マレイン酸無水物、アクリロニトリル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
アクリル酸エステル化合物の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ノルマルヘキシルアクリレート、i-プロピルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェニルアクリレート、アントリルメチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、2,2,2-トリクロロエチルアクリレート、2-ブロモエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2-メチル-2-アダマンチルアクリレート、5-アクリロイルオキシ-6-ヒドロキシノルボルネン-2-カルボキシリック-6-ラクトン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、グリシジルアクリレート等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
メタクリル酸エステル化合物の具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ノルマルヘキシルメタクリレート、i-プロピルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、アントリルメチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,2-トリクロロエチルメタクリレート、2-ブロモエチルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、2-メチル-2-アダマンチルメタクリレート、5-メタクリロイルオキシ-6-ヒドロキシノルボルネン-2-カルボキシリック-6-ラクトン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、グリシジルメタクリレート、2-フェニルエチルメタクリレート、ヒドロキシフェニルメタクリレート、ブロモフェニルメタクリレート等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
アクリルアミド化合物の具体例としては、アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N-ベンジルアクリルアミド、N-フェニルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-アントリルアクリルアミド等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0120】
メタクリルアミド化合物の具体例としては、メタクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、N-ベンジルメタクリルアミド、N-フェニルメタクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N-アントリルアクリルアミド等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0121】
ビニル化合物の具体例としては、ビニルアルコール、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ビニル酢酸、ビニルトリメトキシシラン、2-クロロエチルビニルエーテル、2-メトキシエチルビニルエーテル、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0122】
スチレン化合物の具体例としては、スチレン、ヒドロキシスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、メトキシスチレン、シアノスチレン、アセチルスチレン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0123】
マレイミド化合物としては、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-ヒドロキシエチルマレイミド等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0124】
ポリマーとして縮重合ポリマーが使用される場合、そのようなポリマーとしては、例えば、グリコール化合物とジカルボン酸化合物との縮重合ポリマーが挙げられる。グリコール化合物としてはジエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ブチレングリコール等が挙げられる。ジカルボン酸化合物としては、コハク酸、アジピン酸、テレフタル酸、無水マレイン酸等が挙げられる。また、例えば、ポリピロメリットイミド、ポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリイミドが挙げられるが、これらに限定されない。
有機ポリマー化合物がヒドロキシ基を含む場合は、このヒドロキシ基は、加水分解縮合物等と架橋反応をし得る。
【0125】
上記有機ポリマー化合物の重量平均分子量は、通常1,000~1,000,000でとすることができる。有機ポリマー化合物を配合する場合、ポリマーとしての機能の効果を十分に得つつ、組成物中での析出を抑制する観点から、その重量平均分子量を例えば3,000~300,000、又は5,000~300,000、あるいは10,000~200,000などとすることができる。
このような有機ポリマー化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて用いることができる。
【0126】
本発明の膜形成用組成物が有機ポリマー化合物を含む場合、その含有量は、その有機ポリマー化合物の機能等を考慮して適宜定まるため一概に規定できないが、通常加水分解縮合物A及び加水分解縮合物Bの合計質量に対して、1~200質量%の範囲とすることができ、組成物中での析出を抑制する観点等から、例えば100質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下とすることができ、その効果を十分に得る観点等から、例えば5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上とすることができる。
【0127】
<酸発生剤>
酸発生剤としては、熱酸発生剤や光酸発生剤が挙げられ、光酸発生剤を好ましく用いることができる。
光酸発生剤としては、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、ジスルホニルジアゾメタン化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
また熱酸発生剤としては、例えばテトラメチルアンモニウム硝酸塩などが挙げられるが、これに限定されない。
【0128】
オニウム塩化合物の具体例としては、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフエート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロノルマルブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロノルマルオクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムカンファースルホネート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホネート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート等のヨードニウム塩化合物、
トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロノルマルブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム硝酸塩(ナイトレート)、トリフェニルスルホニウムトリフルオロ酢酸塩、トリフェニルスルホニウムマレイン酸塩、トリフェニルスルホニウムクロリド等のスルホニウム塩化合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0129】
スルホンイミド化合物の具体例としては、N-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(ノナフルオロノルマルブタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ナフタルイミド等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
ジスルホニルジアゾメタン化合物の具体例としては、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p-トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4-ジメチルベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、メチルスルホニル-p-トルエンスルホニルジアゾメタン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0131】
本発明の膜形成用組成物が酸発生剤を含む場合、その含有量は、酸発生剤の種類等を考慮して適宜定まるため一概に規定できないが、通常、加水分解縮合物A及び加水分解縮合物Bの合計質量に対して、0.01~5質量%の範囲であり、組成物中での酸発生剤の析出を抑制する観点等から、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下であり、その効果を十分に得る観点等から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上である。
なお酸発生剤は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができ、また、光酸発生剤と熱酸発生剤とを併用してもよい。
【0132】
<界面活性剤>
界面活性剤は、特に本発明の膜形成用組成物をリソグラフィー用レジスト下層膜形成用組成物として使用する際、基板への塗布時にピンホール、ストレーション等の発生を抑制するのに有効である。上記界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、UV硬化型界面活性剤等が挙げられる。より具体的には、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフエノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフエノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、商品名エフトップEF301、EF303、EF352(三菱マテリアル電子化成(株)(旧(株)トーケムプロダクツ)製)、商品名メガファックF171、F173、R-08、R-30、R-30N、R-40LM(DIC(株)製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム(株)製)、商品名アサヒガードAG710,サーフロンS-382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(AGC(株)製)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマ-KP341(信越化学工業(株)製)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
界面活性剤は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0133】
本発明の膜形成用組成物が界面活性剤を含む場合、その含有量は加水分解縮合物A及び加水分解縮合物Bの合計質量に対して、0.0001~5質量%の範囲とすることができ、又は0.01~1質量%、又は0.01~1質量%とすることができる。
【0134】
<レオロジー調整剤>
上記レオロジー調整剤は、主に膜形成用組成物の流動性を向上させ、特にベーキング工程において、形成される膜の膜厚均一性の向上や、ホール内部への組成物の充填性を高める目的で添加される。具体例としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジi-ブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ブチルi-デシルフタレート等のフタル酸誘導体、ジノルマルブチルアジペート、ジ-i-ブチルアジペート、ジ-i-オクチルアジペート、オクチルデシルアジペート等のアジピン酸誘導体、ジノルマルブチルマレート、ジエチルマレート、ジノニルマレート等のマレイン酸誘導体、メチルオレート、ブチルオレート、テトラヒドロフルフリルオレート等のオレイン酸誘導体、またはノルマルブチルステアレート、グリセリルステアレート等のステアリン酸誘導体を挙げることができる。
これらのレオロジー調整剤が使用される場合、その添加量は、膜形成用組成物の全固形分に対して通常30質量%未満の割合である。
【0135】
<接着補助剤>
上記接着補助剤は、主に基板あるいはレジストと膜形成用組成物から形成される膜(レジスト下層膜)との密着性を向上させ、特に現像においてレジストが剥離しないようにするための目的で添加される。具体例としては、トリメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルジフェニルクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン等のクロロシラン類、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン、N,N’-ビス(トリメチルシリル)ウレア、ジメチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール等のシラザン類、ビニルトリクロロシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γーアミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン類、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、イミダゾール、2-メルカプトベンズイミダゾール、2ーメルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、ウラゾール、チオウラシル、メルカプトイミダゾール、メルカプトピリミジン等の複素環式化合物や、1,1-ジメチルウレア、1,3-ジメチルウレア等の尿素、またはチオ尿素化合物を挙げることができる。
これらの接着補助剤が使用される場合、その添加量は、膜形成用組成物の全固形分に対して通常5質量%未満、好ましくは2質量%未満の割合である。
【0136】
<pH調整剤>
また、pH調整剤として、前述の<安定化剤>として挙げた有機酸などのカルボン酸基を1又は2以上有する酸の他、ビスフェノールS、又はビスフェノールS誘導体を添加することができる。ビスフェノールS、又はビスフェノールS誘導体は、加水分解縮合物A及び加水分解縮合物Bの合計質量100質量部に対して、0.01~20質量部、又は0.01~10質量部、又は0.01~5質量部である。
【0137】
以下、ビスフェノールSやビスフェノールS誘導体の具体例を挙げるが、これらに限定されない。
【化26】
【0138】
[半導体装置の製造方法]
以下、本発明の一態様として、上記膜形成用組成物をレジスト下層膜形成用組成物としての使用した、半導体装置の製造方法について説明する。なお、該組成物から形成されるレジスト下層膜、並びに、半導体装置の製造方法も本発明の対象である。
【0139】
まず、半導体装置の製造に使用される基板(例えば、シリコンウエハー基板、シリコン/二酸化シリコン被覆基板、シリコンナイトライド基板、ガラス基板、ITO基板、ポリイミド基板、及び低誘電率材料(low-k材料)被覆基板等)の上に、スピナー、コーター等の適当な塗布方法により、レジスト下層膜形成用組成物(本発明の膜形成用組成物)を塗布し、その後、焼成することにより、レジスト下層膜を形成する。
焼成する条件としては、焼成温度40℃~400℃、又は80℃~250℃、焼成時間0.3分間~60分間の中から適宜選択される。好ましくは、焼成温度150℃~250℃、焼成時間0.5分間~2分間である。
ここで形成されるレジスト下層膜の膜厚としては、例えば、10nm~1,000nmであり、又は20nm~500nmであり、又は50nm~300nmであり、又は100nm~200nm、または10~100nmである。
【0140】
なお、上記基板上に有機下層膜を形成した後、この上に上記レジスト下層膜を形成した態様とすることができる。ここで使用する有機下層膜としては、特に制限はなく、これまでリソグラフィープロセスにおいて慣用されているものの中から任意に選択して使用することができる。
基板上に、有機下層膜、その上にレジスト下層膜、さらにその上に後述するレジスト膜を設けた態様とすることにより、フォトレジストのパターン幅が狭くなり、パターン倒れを防ぐ為にフォトレジストを薄く被覆した場合でも、後述する適切なエッチングガスを選択することにより基板の加工が可能になる。例えば、フォトレジストに対して十分に早いエッチング速度を有するフッ素系ガスをエッチングガスとして用いて、本発明のレジスト下層膜の加工が可能であり、また本発明のレジスト下層膜に対して十分に早いエッチング速度を有する酸素系ガスをエッチングガスとして用いて、有機下層膜の加工が可能であり、更に有機下層膜に対して十分に早いエッチング速度を有するフッ素系ガスをエッチングガスとして用いて、基板の加工を行うことができる。
【0141】
次いで、本発明のレジスト下層膜の上に、例えばフォトレジストの層(レジスト膜)が形成される。レジスト膜の形成は周知の方法にて、すなわち、レジスト下層膜の上に、レジスト組成物(例えばフォトレジスト)を塗布し焼成することによって行なうことができる。
レジスト膜の膜厚は、例えば10nm~10,000nmであり、又は100nm~2,000nmであり、又は200nm~1,000nmであり、又は30nm~200nmである。
【0142】
上記レジスト下層膜上に形成されるレジスト膜に使用されるフォトレジストとしては、露光に使用される光に感光するものであれば特に限定はない。ネガ型フォトレジスト及びポジ型フォトレジストのいずれも使用できる。例えば、ノボラック樹脂と1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとからなるポジ型フォトレジスト、酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジスト、酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物とアルカリ可溶性バインダーと光酸発生剤とからなる化学増幅型フォトレジスト、及び酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物と光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジスト等がある。
商品として入手可能な具体例としては、シプレー社製商品名APEX-E、住友化学(株)製商品名PAR710、及び信越化学工業(株)製商品名SEPR430等が挙げられるが、これらに限定されない。また、例えば、Proc.SPIE,Vol.3999,330-334(2000)、Proc.SPIE,Vol.3999,357-364(2000)、やProc.SPIE,Vol.3999,365-374(2000)に記載されているような、含フッ素原子ポリマー系フォトレジストを挙げることができる。
【0143】
次に、所定のマスクを通して露光を行う。露光には、KrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)及びF2エキシマレーザー(波長157nm)等を使用することができる。
露光後、必要に応じて露光後加熱(post exposure bake)を行なうこともできる。露光後加熱は、加熱温度70℃~150℃、加熱時間0.3分間~10分間から適宜選択された条件で行われる。
【0144】
また、上記レジスト下層膜上に形成されるレジスト膜には、フォトレジストに替えて電子線リソグラフィー用レジスト(電子線レジストとも称する)、又はEUVリソグラフィー用レジスト(EUVレジストとも称する)を用いることができる。
上記電子線レジストとしては、ネガ型、ポジ型いずれも使用できる。その具体例としては、酸発生剤と酸により分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーからなる化学増幅型レジスト、アルカリ可溶性バインダーと酸発生剤と酸により分解してレジストのアルカリ溶解速度を変化させる低分子化合物からなる化学増幅型レジスト、酸発生剤と酸により分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーと酸により分解してレジストのアルカリ溶解速度を変化させる低分子化合物からなる化学増幅型レジスト、電子線によって分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーからなる非化学増幅型レジスト、電子線によって切断されアルカリ溶解速度を変化させる部位を有するバインダーからなる非化学増幅型レジストなどがある。これらの電子線レジストを用いた場合も、照射源を電子線としてフォトレジストを用いた場合と同様にレジストパターンを形成することができる。
また上記EUVレジストとしては、メタクリレート樹脂系レジストを用いることができる。
【0145】
次いで、現像液によって現像が行なわれる。これにより、例えばポジ型フォトレジストが使用された場合は、露光された部分のフォトレジストが除去され、レジストパターンが形成される。
現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、コリンなどの水酸化四級アンモニウムの水溶液、エタノールアミン、プロピルアミン、エチレンジアミンなどのアミン水溶液等のアルカリ性水溶液(アルカリ現像液)等を例として挙げることができる。
【0146】
また現像液として、有機溶媒を用いることができる。これにより、例えばポジ型フォトレジストが使用された場合は、露光されない部分のフォトレジストが除去され、フォトレジストのパターンが形成される。
現像液として用い得る有機溶媒の具体例としては、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2-メトキシブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、4-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-エチル-3-メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2-エトキシブチルアセテート、4-エトキシブチルアセテート、4-プロポキシブチルアセテート、2-メトキシペンチルアセテート、3-メトキシペンチルアセテート、4-メトキシペンチルアセテート、2-メチル-3-メトキシペンチルアセテート、3-メチル-3-メトキシペンチルアセテート、3-メチル-4-メトキシペンチルアセテート、4-メチル-4-メトキシペンチルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、メチル-3-メトキシプロピオネート、エチル-3-メトキシプロピオネート、エチル-3-エトキシプロピオネート、プロピル-3-メトキシプロピオネート等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0147】
また現像液は、必要に応じて界面活性剤等を含んでいてもよい。
現像の条件としては、温度5℃~50℃、時間10秒~600秒から適宜選択される。
【0148】
そして、このようにして形成されたレジスト膜(上層)のパターンを保護膜としてレジスト下層膜(中間層)の除去が行われる。レジスト下層膜の除去はドライエッチングによって行われ、テトラフルオロメタン(CF4)、パーフルオロシクロブタン(C4F8)、パーフルオロプロパン(C3F8)、トリフルオロメタン、一酸化炭素、アルゴン、酸素、窒素、六フッ化硫黄、ジフルオロメタン、三フッ化窒素、三フッ化塩素、塩素、トリクロロボラン及びジクロロボラン等のガスを使用することができる。
レジスト下層膜のドライエッチングには、ハロゲン系ガスを使用することが好ましい。ハロゲン系ガスによるドライエッチングでは、基本的に有機物質からなるレジスト膜(フォォトレジスト)は除去されにくい。それに対し、ケイ素原子を多く含む本発明のレジスト下層膜はハロゲン系ガスによって速やかに除去される。そのため、レジスト下層膜のドライエッチングに伴うフォトレジストの膜厚の減少を抑えることができる。そして、その結果、フォトレジストを薄膜で使用することが可能となる。従って、レジスト下層膜のドライエッチングはフッ素系ガスによることが好ましく、フッ素系ガスとしては、例えば、テトラフルオロメタン(CF4)、パーフルオロシクロブタン(C4F8)、パーフルオロプロパン(C3F8)、トリフルオロメタン、ジフルオロメタン(CH2F2)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0149】
次いでパターン化されたレジスト膜(上層)とパターン化されたレジスト下層膜(中間層)からなる膜を保護膜として、有機下層膜(下層)の除去が行われる。有機下層膜は酸素系ガスによるドライエッチングによって行なわれることが好ましい。これは、ケイ素原子を多く含む本発明のレジスト下層膜は、酸素系ガスによるドライエッチングでは除去されにくいことによる。
【0150】
最後に、パターン化されたレジスト膜(上層)、パターン化されたレジスト下層膜(中間層)、及びパターン化された有機下層膜(下層)を保護膜として、半導体基板の加工が行なわれる。半導体基板の加工はフッ素系ガスによるドライエッチングによって行なわれることが好ましい。
フッ素系ガスとしては、例えば、テトラフルオロメタン(CF4)、パーフルオロシクロブタン(C4F8)、パーフルオロプロパン(C3F8)、トリフルオロメタン、及びジフルオロメタン(CH2F2)等が挙げられる。
【0151】
またレジスト下層膜の上層には、レジスト膜の形成前に有機系の反射防止膜を形成することができる。そこで使用される反射防止膜組成物としては特に制限はなく、例えば、これまでリソグラフィープロセスにおいて慣用されているものの中から任意に選択して使用することができ、また、慣用されている方法、例えば、スピナー、コーターによる塗布及び焼成によって反射防止膜の形成を行なうことができる。
【0152】
また、本発明の膜形成用組成物からなるレジスト下層膜形成用組成物が塗布される基板は、その表面にCVD法などで形成された有機系又は無機系の反射防止膜を有するものであってもよく、その上に本発明のレジスト下層膜を形成することもできる。
【0153】
本発明のレジスト下層膜はまた、リソグラフィープロセスにおいて使用される光の波長によっては、その光に対する吸収を有することがある。そして、そのような場合には、基板からの反射光を防止する効果を有する反射防止膜として機能することができる。
さらに本発明のレジスト下層膜は、基板とレジスト膜(フォトレジスト等)との相互作用の防止するための層、レジスト膜に用いられる材料又はレジスト膜への露光時に生成する物質の基板への悪作用を防ぐ機能を有する層、加熱焼成時に基板から生成する物質の上層レジスト膜への拡散を防ぐ機能を有する層、及び半導体基板誘電体層によるレジスト膜のポイズニング効果を減少させるためのバリア層等として使用することも可能である。
【0154】
上記レジスト下層膜は、デュアルダマシンプロセスで用いられるビアホールが形成された基板に適用され得、ホールを隙間なく充填することができる穴埋め材(埋め込み材)として使用できる。また、凹凸のある半導体基板の表面を平坦化するための平坦化材として使用することもできる。
また上記レジスト下層膜は、EUVレジストの下層膜として、ハードマスクとしての機能以外にも、例えばEUVレジストとインターミキシングすることなく、EUV露光(波長13.5nm)に際して好ましくない露光光、例えばUV(紫外)光やDUV(深紫外)光(:ArF光、KrF光)の基板又は界面からの反射を防止することができる、EUVレジストの下層反射防止膜として、用いることができる。すなわちEUVレジストの下層で効率的に反射を防止することができる。EUVレジスト下層膜として用いた場合は、そのプロセスはフォトレジスト用下層膜と同様に行うことができる。
【実施例】
【0155】
以下、合成例および実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記に限定されるものではない。
【0156】
[1]加水分解縮合物Bの合成
(合成例1-1)
テトラエトキシシラン21.2g、メチルトリエトキシシラン6.47g、ビシクロヘプテニルトリエトキシシラン1.86g、アセトン44.3gを300mlのフラスコに入れ、混合溶液をマグネチックスターラーにて撹拌しながら0.01M硝酸水溶液26.2gを滴下した。
滴下後、85℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、240分間還流させた。その後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート70gを加え、アセトン、並びに反応副生物である、エタノール、水を減圧留去し、濃縮して加水分解縮合物(ポリマー)水溶液を得た。
さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100%の溶媒比率として140℃における固形残物換算で20質量パーセントとなるように濃度調整した。
得られたポリマーの重量平均分子量は、GPCによるポリスチレン換算でMw2,000であった。
【0157】
(合成例1-2)
テトラエトキシシラン25.2g、メチルトリエトキシシラン7.71g、[4-(1-エトキシエトキシ)フェニル]トリメトキシシラン2.48g、アセトン53.1gを300mlのフラスコに入れ、混合溶液をマグネチックスターラーにて撹拌しながら0.01M硝酸水溶液11.5gを滴下した。
滴下後、85℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、240分間、還流させた。その後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート70gを加え、アセトン、並びに反応副生物であるメタノール、エタノール、水を減圧留去し、濃縮して加水分解縮合物(ポリマー)水溶液を得た。
さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100%の溶媒比率として140℃における固形残物換算で20質量パーセントとなるように濃度調整した。
得られたポリマーの重量平均分子量は、GPCによるポリスチレン換算でMw3,000であった。
【0158】
(合成例1-3)
テトラエトキシシラン24.5g、メチルトリエトキシシラン7.50g、ジアリルイソシアネートプロピルトリエトキシシラン3.48g、アセトン53.3gを300mlのフラスコに入れ、混合溶液をマグネチックスターラーにて撹拌しながら0.01M硝酸水溶液11.2gを滴下した。
滴下後、85℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、240分間、還流させた。その後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート70gを加え、アセトン、並びに反応副生物であるメタノール、エタノール、水を減圧留去し、濃縮して加水分解縮合物(ポリマー)水溶液を得た。
さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100%の溶媒比率として140℃における固形残物換算で20質量パーセントとなるように濃度調整した。
得られたポリマーの重量平均分子量は、GPCによるポリスチレン換算でMw1,800であった。
【0159】
(合成例1-4)
テトラエトキシシラン24.9g、メチルトリエトキシシラン7.61g、ベンゼンスルホニルプロピルトリエトキシシラン2.96g、アセトン53.2gを300mlのフラスコに入れ、混合溶液をマグネチックスターラーにて撹拌しながら0.01M硝酸水溶液11.4gを滴下した。
滴下後、85℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、240分間、還流させた。その後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート70gを加え、アセトン、並びに反応副生物である、エタノール、水を減圧留去し、濃縮して加水分解縮合物(ポリマー)水溶液を得た。
さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100%の溶媒比率として140℃における固形残物換算で20質量パーセントとなるように濃度調整した。
得られたポリマーの重量平均分子量は、GPCによるポリスチレン換算でMw2,200であった。
【0160】
(合成例1-5)
テトラエトキシシラン24.9g、メチルトリエトキシシラン7.61g、ベンゼンスルホンアミドプロピルトリエトキシシラン2.96g、アセトン53.2gを300mlのフラスコに入れ、混合溶液をマグネチックスターラーにて撹拌しながら0.01M硝酸水溶液11.4gを滴下した。
滴下後、85℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、240分間、還流させた。その後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート70gを加え、アセトン、並びに反応副生物である、エタノール、水を減圧留去し、濃縮して加水分解縮合物(ポリマー)水溶液を得た。
さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100%の溶媒比率として140℃における固形残物換算で20質量パーセントとなるように濃度調整した。
得られたポリマーの重量平均分子量は、GPCによるポリスチレン換算でMw2,400であった。
【0161】
(合成例1-6)
テトラエトキシシラン21.2g、メチルトリエトキシシラン6.49g、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン1.79g、アセトン44.3gを300mlのフラスコに入れ、混合溶液をマグネチックスターラーにて撹拌しながら0.01M硝酸水溶液26.2gを滴下した。
滴下後、85℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、240分間、還流させた。その後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート60gを加え、アセトン、並びに反応副生物であるメタノール、エタノール、水を減圧留去し、濃縮して加水分解縮合物(ポリマー)水溶液を得た。
さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100%の溶媒比率として140℃における固形残物換算で20質量パーセントとなるように濃度調整した。
得られたポリマーの重量平均分子量は、GPCによるポリスチレン換算でMw2,500であった。
【0162】
(合成例1-7)
テトラエトキシシラン24.9g、メチルトリエトキシシラン7.61g、トリエトキシ((2-メトキシ-4-(メトキシメチル)フェノキシ)メチル)シラン2.94g、アセトン53.2gを300mlのフラスコに入れ、混合溶液をマグネチックスターラーにて撹拌しながら0.01M硝酸水溶液11.4gを滴下した。
滴下後、85℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、240分間、還流させた。その後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート70gを加え、アセトン、並びに反応副生物である、エタノール、水を減圧留去し、濃縮して加水分解縮合物(ポリマー)水溶液を得た。
さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100%の溶媒比率として140℃における固形残物換算で20質量パーセントとなるように濃度調整した。
得られたポリマーの重量平均分子量は、GPCによるポリスチレン換算でMw2800であった。
【0163】
(合成例1-8)
テトラエトキシシラン22.3g、メチルトリエトキシシラン6.54g、ジアリルイソシアヌレートプロピルトリエトキシシラン3.16g、ジメチルアミノプロピルトリメトキシラン0.32g、アセトン48.4gを300mlのフラスコに入れ、混合溶液をマグネチックスターラーにて撹拌しながら0.2M硝酸水溶液19.3gを滴下した。
滴下後、85℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、240分間、還流させた。その後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート64gを加え、アセトン、並びに反応副生物である、エタノール、水を減圧留去し、濃縮して加水分解縮合物(ポリマー)水溶液を得た。
さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加え、プロピレングリコールモノメチルエーテル100%の溶媒比率として140℃における固形残物換算で20質量パーセントとなるように濃度調整した。
得られたポリマーの重量平均分子量は、GPCによるポリスチレン換算でMw2,500であった。
【0164】
(合成例1-9)
テトラエトキシシラン25.8g、メチルトリエトキシシラン9.5g、アセトン52.9gを300mlのフラスコに入れ、混合溶液をマグネチックスターラーにて撹拌しながら0.01M塩酸水溶液11.8gを混合溶液に滴下した。
滴下後、85℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、240分間、還流させた。その後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート70gを加え、アセトン、並びに反応副生物である、エタノール、水を減圧留去し、濃縮して加水分解縮合物(ポリマー)水溶液を得た。さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、140℃における固形残物換算で20質量パーセントとなるように濃度調整した。
得られたポリマーの重量平均分子量は、GPCによるポリスチレン換算でMw1,800であった。
【0165】
[2]加水分解縮合物Aの合成
(合成例2-1)
水90gを500mlのフラスコに入れ、これをマグネチックスターラーにて撹拌しながらジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン30.0gを滴下した。
滴下後、40℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、240分間、反応させた。その後、反応溶液を室温まで冷却し、反応溶液に1M硝酸144.68g、水179.99gを加え、反応副生物であるメタノール、水を減圧留去し、濃縮して加水分解縮合物(ポリシロキサン)水溶液を得た。
さらに水を加え、水100%の溶媒比率(水のみの溶媒)として、140℃における固形残物換算で20質量パーセントとなるように濃度調整した。
得られたポリマーの重量平均分子量は、GPCによるポリエチレンオキシド換算でMw1,000であった。
【0166】
(合成例2-2)
水90gを500mlのフラスコに入れ、これをマグネチックスターラーにて撹拌しながらジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン30.0gを滴下した。
滴下後、40℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、240分間、反応させた。その後、反応溶液を室温まで冷却し、反応溶液に1M酢酸144.68g、水179.99gを加え、反応副生物であるメタノール、水を減圧留去し、濃縮して加水分解縮合物(ポリシロキサン)水溶液を得た。
さらに水を加え、水100%の溶媒比率(水のみの溶媒)として、140℃における固形残物換算で20質量パーセントとなるように濃度調整した。
得られたポリマーの重量平均分子量は、GPCによるポリエチレンオキシド換算でMw1,000であった。
【0167】
(合成例2-3)
水91.16gを500mlのフラスコに入れ、これをマグネチックスターラーにて撹拌しながらジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン22.23g、トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物8.16gを混合溶液に滴下した。
滴下後、40℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、240分間、反応させた。その後、反応溶液を室温まで冷却し、反応溶液に水91.16gを加え、反応副生物であるメタノール、水を減圧留去し、濃縮して加水分解縮合物(ポリシロキサン)水溶液を得た。
さらに水を加え、水100%の溶媒比率(水のみの溶媒)として、140℃における固形残物換算で20質量パーセントとなるように濃度調整した。
得られたポリマーの重量平均分子量は、GPCによるポリエチレンオキシド換算でMw1,200であった。
【0168】
(合成例2-4)
35質量%濃度のテトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液1.16g、水7.06g、イソプロピルアルコール35.31g、メチルイソブチルケトン70.62gを1,000mlのフラスコに入れ、混合溶液をマグネチックスターラーにて撹拌しながら、ビシクロヘプテニルトリエトキシシラン35.31gを混合溶液に滴下した。
滴下後、40℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、240分間、反応させた。その後、反応溶液に1M硝酸68.86gを加え、さらに40度4時間反応させた。その後、メチルイソブチルケトン211.87g、水105.94gを加え、分液操作にて水層に移行した反応副生物である水、硝酸、テトラエチルアンモニウム硝酸塩を留去し、有機層を回収した。その後、プロピレングリコールモノメチルエーテルを105.94g加え、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、水を減圧留去し、濃縮して加水分解縮合物(ポリマー)水溶液を得た。
さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加え、プロピレングリコールモノメチルエーテル100%の溶媒比率として140℃における固形残物換算で20質量パーセントとなるように濃度調整した。
得られたポリマーの重量平均分子量は、GPCによるポリスチレン換算でMw1,400であった。
【0169】
(合成例2-5)
35質量%濃度のテトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液0.56g、水3.39g、イソプロピルアルコール27.35g、メチルイソブチルケトン54.71gを1000mlのフラスコに入れ、混合溶液をマグネチックスターラーにて撹拌しながら、ジアリルイソシアヌレートプロピルトリエトキシシラン27.35gを混合溶液に滴下した。
滴下後、40℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、240分間、反応させた。その後、反応溶液に1M硝酸33.07gを加え、さらに40度4時間反応させた。その後、メチルイソブチルケトン164.13g、水82.06gを加え、分液操作にて水層に移行した反応副生物である水、硝酸、テトラエチルアンモニウム硝酸塩を留去し、有機層を回収した。その後、プロピレングリコールモノメチルエーテルを82.06g加え、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、水を減圧留去し、濃縮して加水分解縮合物(ポリマー)水溶液を得た。
さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加え、プロピレングリコールモノメチルエーテル100%の溶媒比率として140℃における固形残物換算で20質量パーセントとなるように濃度調整した。
得られたポリマーの重量平均分子量は、GPCによるポリスチレン換算でMw1,000であった。
【0170】
(合成例2-6)
35質量%濃度のテトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液0.75g、水4.58g、イソプロピルアルコール29.94g、メチルイソブチルケトン59.87gを1000mlのフラスコに入れ、混合溶液をマグネチックスターラーにて撹拌しながら、ビシクロヘプテニルトリエトキシシラン11.46g、ジアリルイソシアヌレートプロピルトリエトキシシラン18.48gを混合溶液に滴下した。
滴下後、40℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、240分間、反応させた。その後、反応溶液に1M硝酸44.68gを加え、さらに40度4時間反応させた。その後、メチルイソブチルケトン179.62g、水89.81gを加え、分液操作にて水層に移行した反応副生物である水、硝酸、テトラエチルアンモニウム硝酸塩を留去し、有機層を回収した。その後、プロピレングリコールモノメチルエーテルを89.81g加え、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、水を減圧留去し、濃縮して加水分解縮合物(ポリマー)水溶液を得た。
さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加え、プロピレングリコールモノメチルエーテル100%の溶媒比率として140℃における固形残物換算で20質量パーセントとなるように濃度調整した。
得られたポリマーの重量平均分子量は、GPCによるポリスチレン換算でMw1300であった。
【0171】
[3]レジストパターンに塗布される組成物の調製
上記合成例で得られたポリシロキサン(ポリマー)、添加剤、溶媒を表1に示す割合で混合し、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって、レジストパターンに塗布される組成物をそれぞれ調製した。表1中の各添加量は質量部で示した。
なお、表1中のポリマーの添加割合はポリマー溶液の添加量ではなく、ポリマー自体の添加量を示した。
またDIWは超純水を、PGEEはプロピレングリコールモノエチルエーテルを、PGMEAはプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートを、PGMEはプロピレングリコールモノエチルエーテルをそれぞれ意味する。
さらに、MAはマレイン酸を、TPSNO3はトリフェニルスルホニウム硝酸塩を、TPSTFAはトリフェニルスルホニウムトリフルオロ酢酸塩を、TPSMLはトリフェニルスルホニウムマレイン酸塩をそれぞれ意味する。
【0172】
【0173】
[4]有機レジスト下層膜形成用組成物の調製
窒素下、100mlの四口フラスコにカルバゾール(6.69g、0.040mol、東京化成工業(株)製)、9-フルオレノン(7.28g、0.040mol、東京化成工業(株)製)、パラトルエンスルホン酸一水和物(0.76g、0.0040mol、東京化成工業(株)製)を加え、1,4-ジオキサン(6.69g、関東化学(株)製)を仕込み撹拌し、100℃まで昇温し溶解させ重合を開始した。24時間後、60℃まで放冷した。
冷却した反応混合物に、クロロホルム(34g、関東化学(株)製)を加えて希釈し、希釈した混合物をメタノール(168g、関東化学(株)製)に添加して沈殿させた。
得られた沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で80℃、24時間乾燥し、目的とする式(X)で表されるポリマー(以下PCzFLと略す)9.37gを得た。
なお、PCzFLの
1H-NMRの測定結果は以下の通りであった。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d
6):δ7.03-7.55(br,12H),δ7.61-8.10(br,4H),δ11.18(br,1H)
また、PCzFLの重量平均分子量Mwは、GPCによるポリスチレン換算で2,800、多分散度Mw/Mnは1.77であった。
【化27】
【0174】
PCzFL 20gと、架橋剤としてテトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテック・インダストリーズ(株)(旧 三井サイテック(株))製、商品名パウダーリンク1174)3.0gと、触媒としてピリジニウムパラトルエンスルホネート0.30gと、界面活性剤としてメガファックR-30(DIC(株)製、商品名)0.06gとを混合し、混合物をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート88gに溶解させた。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、更に、孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過して、多層膜によるリソグラフィープロセスに用いる有機レジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0175】
[5]溶剤耐性及び現像液溶解性試験
実施例1~11及び比較例1~3で調製した組成物を、スピナーを用いてシリコンウェハー上にそれぞれ塗布した。ホットプレート上で215℃1分間加熱し、Si含有レジスト下層膜をそれぞれ形成し、得られた下層膜の膜厚を計測した。
その後、各Si含有レジスト下層膜上に、プロピレングリコールモノメチルエーテル/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの混合溶媒(7/3(V/V))を塗布してスピン乾燥した。塗布後の下層膜の膜厚を計測し、混合溶媒の塗布前後での膜厚の変化の有無を評価した。混合溶媒塗布前の膜厚を基準として、塗布後の膜厚変化が1%以下のものを「良好」、膜厚変化が1%以上のものを「硬化せず」と評価した。
また、同様の方法でシリコンウエハー上に作製した各Si含有レジスト下層膜上に、アルカリ現像液(TMAH2.38%水溶液)を塗布してスピン乾燥し、塗布後の下層膜の膜厚を計測し、現像液の塗布前後での膜厚の変化の有無を評価した。現像液塗布前の膜厚を基準として、膜厚変化が1%以下のものを「良好」、膜厚変化が1%以上のものを「硬化せず」とした。
得られた結果を表2に示す
【0176】
【0177】
[6]ドライエッチング速度の測定
ドライエッチング速度の測定では、以下のエッチャー及びエッチングガスを用いた。
Lam2300(ラムリサーチ製):CF4/CHF3/N2 (フッ素系ガス)
RIE-10NR(サムコ製):O2 (酸素系ガス)
実施例1~11及び比較例3で得られた組成物を、スピナーを用いてシリコンウェハー上にそれぞれ塗布し、ホットプレート上で215℃1分間加熱し、Si含有レジスト下層膜(膜厚0.02μmをそれぞれ形成した。
また、同様に上記有機レジスト下層膜形成用組成物を、スピナーを用いてシリコンウェハー上にそれぞれ塗布し、ホットプレート上で215℃1分間加熱し、有機レジスト下層膜を形成した塗膜を形成(膜厚0.20μm)。
得られた各Si含有レジスト下層膜付きシリコンウェハーを用い、エッチングガスとしてCF4/CHF3/N2ガス、O2ガスを使用して、また有機レジスト下層膜付きシリコンウェハーを用い、エッチングガスとしてO2ガスを使用して、ドライエッチング速度を測定した。得られた結果を表3に示す。
【0178】
【0179】
[7]EUV露光によるレジストパターンの形成:ポジ型アルカリ現像
上記有機レジスト下層膜形成用組成物を、スピナーを用いてシリコンウエハー上に塗布し、ホットプレート上で215℃60秒間ベークし、膜厚90nmの有機下層膜(A層)を得た。
その上に、実施例1で得られた組成物をスピンコートし、215℃で1分間加熱することにより、レジスト下層膜(B)層(20nm)を形成した。
更にその上に、EUV用レジスト溶液(メタクリレート樹脂系レジスト)をスピンコートし、130℃で1分間加熱することにより、EUVレジスト層(C)層を形成し、ASML製EUV露光装置(NXE3300B)を用い、NA=0.33、σ=0.67/0.90、Dipoleの条件で露光した。
露光後、露光後加熱(PEB、110℃1分間)を行い、クーリングプレート上で室温まで冷却し、アルカリ現像液(2.38%TMAH水溶液)を用いて60秒現像し、リンス処理をし、レジストパターンを形成した。
同様の手順にて、実施例2~11、比較例1~3で得られた各組成物を用いてレジストパターンを形成した。
そして得られた各パターンについて、40nmピッチ、20nmのラインアンドスペースの形成可否を、パターン断面観察によるパターン形状を確認することで評価した。
パターン形状の観察において、フッティングからアンダーカットの間の形状であり、かつスペース部に著しい残渣がないという状態を「良好」、レジストパターンが剥がれ倒壊しているという好ましくない状態を「倒れ」、レジストパターンの上部もしくは下部同士が接触しているという好ましくない状態を「ブリッジ」と評価した。得られた結果を表4に示す。
【0180】
【0181】
[8]EUV露光によるレジストパターンの形成:ネガ型溶剤現像
上記有機レジスト下層膜形成用組成物を、スピナーを用いてシリコンウエハー上に塗布し、ホットプレート上で215℃60秒間ベークし、膜厚90nmの有機下層膜(A層)を得た。
その上に、実施例1で得られた組成物をスピンコートし、215℃で1分間加熱することにより、レジスト下層膜(B)層(20nm)が形成した。
更にその上に、EUV用レジスト溶液(メタクリレート樹脂系レジスト)をスピンコートし、100℃で1分間加熱することにより、EUVレジスト層(C)層を形成し、ASML製EUV露光装置(NXE3300B)を用い、NA=0.33、σ=0.67/0.90、Dipoleの条件で露光した。
露光後、露光後加熱(PEB、90℃1分間)を行い、クーリングプレート上で室温まで冷却し、有機溶剤現像液(酢酸ブチル)を用いて60秒現像し、リンス処理をし、レジストパターンを形成した。
そして得られた各パターンについて、40nmピッチにて20nmのラインアンドスペースの形成可否を、パターン断面観察によるパターン形状を確認することにより評価した。
パターン形状の観察において、フッティングからアンダーカットの間の形状であり、かつスペース部に著しい残渣がないという状態を「良好」、レジストパターンが剥がれ倒壊しているという好ましくない状態を「倒れ」、レジストパターンの上部もしくは下部同士が接触しているという好ましくない状態を「ブリッジ」と評価した。得られた結果を表5に示す。
【0182】