(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】現像液及びリンス液を用いた樹脂製レンズの製造方法、並びにそのリンス液
(51)【国際特許分類】
G03F 7/32 20060101AFI20240828BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20240828BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20240828BHJP
B29C 39/22 20060101ALI20240828BHJP
G02B 5/18 20060101ALN20240828BHJP
【FI】
G03F7/32 501
H01L21/30 502D
G03F7/32
G02B3/00
B29C39/22
G02B5/18
(21)【出願番号】P 2023014752
(22)【出願日】2023-02-02
(62)【分割の表示】P 2021555939の分割
【原出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2019207325
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 朋哉
(72)【発明者】
【氏名】安達 勲
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-134350(JP,A)
【文献】特開2006-098985(JP,A)
【文献】特開平01-112730(JP,A)
【文献】特開2008-007641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/32
H01L 21/027
G02B 3/00
B29C 39/22
G02B 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製レンズの製造におけるリンス処理するリンス工程に使用されるリンス液であって、前記リンス液は
、置換基としてメチル基又はエチル基を少なくとも1つ有するシクロヘキサン誘導体、及
び環状構造を有し且つエーテル結合を有してもよい炭素原子数5又は6のアルコールを含むリンス液。
【請求項2】
樹脂製レンズの製造におけるリンス処理するリンス工程に使用されるリンス液であって、前記リンス液は、置換基としてメチル基又はエチル基を少なくとも1つ有するシクロヘキサン誘導体、及び環状構造を有し且つエーテル結合を有してもよい炭素原子数5又は6のアルコールを含み、該シクロヘキサン誘導体及び該炭素原子数5又は6のアルコールの合計100質量%に対し該シクロヘキサン誘導体を少なくとも50質量%含
むリンス液。
【請求項3】
樹脂製レンズの製造におけるリンス処理するリンス工程に使用されるリンス液であって、前記リンス液は、乳酸エステル、炭素原子数1乃至5の直鎖又は分岐鎖アルコール、置換基としてメチル基又はエチル基を少なくとも1つ有するシクロヘキサン誘導体、及び炭素原子数4乃至8のハイドロフルオロカーボンからなる群から選ばれる化合物、並びに環状構造を有し且つエーテル結合を有してもよい炭素原子数5又は6のアルコールを含み、前記シクロヘキサン誘導体及び前記炭素原子数5又は6のアルコールの合計100質量%に対し該シクロヘキサン誘導体を少なくとも50質量%含
むリンス液。
【請求項4】
前記リンス処理するリンス工程は、樹脂製レンズの製造における光硬化物を形成する現像工程の後にリンス処理するリンス工程である、請求項1
乃至請求項3のいずれか一項に記載のリンス液。
【請求項5】
前記シクロヘキサン誘導体はメチルシクロヘキサンであり、前記炭素原子数5又は6のアルコールはテトラヒドロフルフリルアルコール又はシクロヘキサノールである、請求項1
乃至請求項4のいずれか一項に記載のリンス液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の有機溶剤を採用した現像液及びリンス液を用いた、樹脂製レンズの製造方法に関する。本発明はさらに、前記リンス液に関する。
【0002】
カメラモジュール等の受光素子を有する電子デバイスには、集光効率の向上及び光路補正を目的として、マイクロレンズ及びモジュールレンズ等の光学レンズが搭載されている。また近年、LiDAR(Light Detection and Ranging)センサー及びTOF(Time of Flight)センサー等のセンシングデバイスにも、高性能化及び精度向上を目的として光学レンズを搭載する試みがなされてきている。光を屈折、収束、又は散乱させるために、様々な表面形状を有する光学レンズが開発されている。光学レンズは、その表面形状により、球面形状レンズ、非球面形状レンズ、シリンドリカルレンズ、トロイダルレンズ、フレネルレンズ、屈折率分布レンズ、及び回折レンズに分類される。また光学レンズの材質は、ガラスと樹脂とに大別される。近年はスマートフォン及びタブレット端末等のモバイル端末向けに樹脂製レンズの需要が増加してきている。
【0003】
光学レンズの成型方法は、光学レンズの材質により適宜選択される。樹脂製レンズでは、金型(モールド)を使用したウエハレベル成型及びフォトリソグラフィーによる成型方法が知られている。ウエハレベル成型は、ガラス基板等の支持体上に、複数の微細なレンズパターンを同時に形成する方法である。フォトリソグラフィーによる成型方法の場合、光硬化性樹脂組成物等の感光性樹脂組成物を用い、その感光性樹脂組成物を露光後、不要な感光性樹脂組成物を除去するために、現像液による現像工程及びリンス液によるリンス工程を経て、目的のレンズ形状にパターニングするのが一般的である。
【0004】
感光性樹脂組成物は、その組成物中に含まれる化合物の化学的構造の種類によって、感光した部分が現像液に可溶化するポジ型と、感光した部分が現像液に不溶化するネガ型とに大別される。ネガ型感光性樹脂組成物は、例えば、アクリロイル基又はメタクリロイル基(以下、本明細書では(メタ)アクリロイル基と略称する。)を有する化合物を組成物中に含む、光ラジカル硬化型が挙げられる。ネガ型感光性樹脂組成物は、有機溶剤を用いた現像工程では、ポジ型感光性樹脂組成物と比較して現像時の溶解性コントラストが小さいことがある。
【0005】
一方、感光性樹脂組成物から形成される膜の膜厚は重要なファクターであり、目的の用途によって膜厚が選択される。光学レンズ用途の場合、通常100μm以上の膜厚が必要であるが、一般的に報告されている感光性樹脂組成物であるレジスト組成物は、形成される膜の膜厚が100μm未満である。有機溶剤を用いた現像工程を含むパターニングで、膜厚が100μm以上の厚膜(レンズパターン)を形成する報告例は確認できない。
【0006】
感光性樹脂組成物は目的の用途によって、種々の組成物が報告されている。感光性樹脂組成物を構成する成分は、有機化合物と無機化合物とに大別される。前記有機化合物の例として(メタ)アクリロイル基を有する化合物、前記無機化合物の例として酸化物微粒子が挙げられる。特許文献1に記載の光硬化性組成物は、光学レンズの作製を目的とし、酸化物微粒子として表面修飾されたシリカ粒子を含有する。
【0007】
しかしながら、特許文献1には、有機溶剤を用いた現像工程を含むパターニングで、膜厚が100μm以上の厚膜(レンズパターン)を形成する際の課題は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これまで、本願の発明者らは、(メタ)アクリロイル基を少なくとも1つ有する化合物、表面修飾されたシリカ粒子及び光ラジカル重合開始剤を含むネガ型感光性樹脂組成物の、有機溶剤を用いた現像工程による膜厚が100μm以上の厚膜(レンズパターン)を形成するパターニングを鋭意検討してきた。前記膜厚が100μm以上の厚膜(レンズパターン)を形成するパターニングの場合、未露光部の不要なネガ型感光性樹脂組成物の選択的な除去性を向上させるために、該ネガ型感光性樹脂組成物に対する溶解性が高い現像液が好適である。
【0010】
しかしながら、前記ネガ型感光性樹脂組成物に対する溶解性が高い現像液は、該ネガ型感光性樹脂組成物の露光部への浸入が著しく、光硬化したパターンの膨潤及び収縮により、該パターンの裾部にクラックが発生する場合があることが分かってきた。前記パターンの裾部に発生するクラックは、該パターンを電子デバイスに搭載するための工程(以下、後工程という。)の際に、該パターンがガラス基板等の支持体から剥がれる原因となる可能性があり、好ましくない。このクラックが発生しないようにするため、ネガ型感光性樹脂組成物に対して溶解性が低い現像液を選択すると、未露光部のネガ型感光性樹脂組成物を除去しきれず、残渣として残ってしまう。この残渣は、前記後工程の際に基板から脱離し、パーティクル発生の原因となることから好ましくない。
【0011】
前記ネガ型感光性樹脂組成物は、マスクを介した露光により感光した部分が光硬化部、及び感光していない部分(未露光部)が未硬化部に分かれる。前記光硬化部と前記未硬化部とは、現像液に対する溶解性に大きな差が生じるため、その現像液で現像することで該未硬化部が選択的に溶解する。その結果、前記光硬化部から成る所望のパターンが形成される。前記所望のパターンは、光硬化物である。前記光硬化部では、(メタ)アクリロイル基が任意の割合で有機物三次元架橋構造を形成し、表面修飾されたシリカ粒子が該有機物三次元架橋構造中に保持された状態である。現像液として有機溶剤を用いた現像工程において、その有機溶剤は、前記光硬化部と接液すると、該光硬化部へ浸入する。前記有機溶剤の浸入により、前記有機物三次元架橋構造は、該有機溶剤との親和性により一定の膨潤が発生する。一方、前記表面修飾されたシリカ粒子は殆ど膨潤しないため、該表面修飾されたシリカ粒子と前記有機物三次元架橋構造との界面で膨潤量に差が生じ、歪みによる応力が発生する。この状態で、前記光硬化部中から有機溶剤が放出される際、該有機溶剤の放出速度が速いと、応力の緩和が前記光硬化部の形状変化(収縮)に間に合わず、残留応力を発散させるために該光硬化部にクラックが発生してしまう。特に、形状の急峻なパターンの裾部に応力が溜まり易く、該パターンの裾部においてクラックが発生し易い。
【0012】
前記ネガ型感光性樹脂組成物の、有機溶剤を用いた現像工程による膜厚が100μm以上の厚膜(レンズパターン)を形成するパターニングの課題は、パターンの裾部におけるクラックの発生と、前記未硬化部における残渣の発生との両方を抑制することである。
【0013】
本発明では前記の事情に基づいてなされたものであり、その解決しようとする課題は、ネガ型感光性樹脂組成物に好適な現像液及びリンス液を選定し、パターン作製後の裾部クラック及び残渣が発生しない、パターンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第一態様は、
開口部を有するパターンが形成された支持体上に、ネガ型感光性樹脂組成物を塗布する工程、前記ネガ型感光性樹脂組成物と、目的のレンズ形状の反転パターン及び遮光膜を有するモールドとを接触させるインプリント工程、
前記インプリント工程の後、前記モールドを介して前記ネガ型感光性樹脂組成物を露光して前記開口部に光硬化部を形成する光硬化工程、
前記光硬化部と前記モールドとを分離する離型工程、
前記離型工程の後、前記ネガ型感光性樹脂組成物の未硬化部をγ-ブチロラクトンを含む現像液を用いて除去し前記光硬化部を露出させ光硬化物を形成する現像工程、
前記現像工程の後、乳酸エステル、炭素原子数1乃至5の直鎖又は分岐鎖アルコール、置換基としてメチル基又はエチル基を少なくとも1つ有するシクロヘキサン誘導体、及び炭素原子数4乃至8のハイドロフルオロカーボンからなる群から選ばれる化合物を含むリンス液を用いてリンス処理するリンス工程、
前記リンス液を除去する乾燥工程、及び
前記乾燥工程の後、前記光硬化物の全面を露光する工程を有する樹脂製レンズの製造方法である。
【0015】
前記光硬化工程の後、前記離型工程の前、中途又は後に、前記光硬化部を加熱する工程をさらに有してもよい。
【0016】
前記光硬化物の全面を露光する工程の後、該光硬化物を加熱するポストベーク工程をさらに有してもよい。
【0017】
前記光硬化物の全面を露光する工程の後、該光硬化物の表面に反射防止膜を形成する工程をさらに有してもよい。
【0018】
前記乾燥工程の後、前記光硬化物の全面を露光する工程の前に、前記現像工程、前記リンス工程及び前記乾燥工程をさらに有してもよい。
【0019】
前記現像液又は前記リンス液は環状構造を有し且つエーテル結合“-O-”を有してもよい炭素原子数5又は6のアルコールをさらに含むことができる。該炭素原子数5又は6のアルコールは、例えばテトラヒドロフルフリルアルコール又はシクロヘキサノールである。
【0020】
前記リンス液は、例えば、置換基としてメチル基又はエチル基を少なくとも1つ有するシクロヘキサン誘導体及び前記炭素原子数5又は6のアルコールを含み、該シクロヘキサン誘導体及び該炭素原子数5又は6のアルコールの合計100質量%に対し該シクロヘキサン誘導体を少なくとも50質量%含む。
【0021】
前記ネガ型感光性樹脂組成物は、例えば、1分子中に(メタ)アクリロイル基を少なくとも1つ有する化合物、表面修飾されたシリカ粒子及び光ラジカル重合開始剤を含む。
【0022】
本発明の第二態様は、置換基としてメチル基又はエチル基を少なくとも1つ有するシクロヘキサン誘導体、及び環状構造を有し且つエーテル結合“-O-”を有してもよい炭素原子数5又は6のアルコールを含む、樹脂製レンズの製造に使用されるリンス液である。
【0023】
前記シクロヘキサン誘導体は例えばメチルシクロヘキサンであり、前記炭素原子数5又は6のアルコールは例えばテトラヒドロフルフリルアルコール又はシクロヘキサノールである。
【0024】
前記リンス液は、例えば、前記シクロヘキサン誘導体及び前記炭素原子数5又は6のアルコールの合計100質量%に対し該シクロヘキサン誘導体を少なくとも50質量%含む。
【発明の効果】
【0025】
前記ネガ型感光性樹脂組成物の未硬化部では、(メタ)アクリロイル基を少なくとも1つ有する化合物に表面修飾されたシリカ粒子が分散している状態である。現像液として有機溶剤を用いた現像工程において、その有機溶剤は、前記未硬化部と接液すると、前記(メタ)アクリロイル基を少なくとも1つ有する化合物を溶解し、前記表面修飾されたシリカ粒子と共に除去される。前記(メタ)アクリロイル基を少なくとも1つ有する化合物に対して溶解性が高い現像液を選択すると、前記現像工程によって除去される前記未硬化部に残渣が残り難く、該化合物に対して溶解性が低い現像液を選択すると、前記現像工程によって除去されるはずの前記未硬化部に残渣が残り易い。従って、本発明は、ネガ型感光性樹脂組成物との適切な親和性を持ち、且つ前記光硬化部中から放出される速度の遅い現像液を選択したことで、膜厚が100μm以上の厚膜(レンズパターン)を形成するパターニングであっても、パターンの裾部におけるクラック発生を抑制し、前記未硬化部の残渣も抑制することができる。
【0026】
本発明に使用する現像液に含まれるγ-ブチロラクトンは、脂環式構造であるため有機化合物との高い親和性を有する一方で、水とも混和するという特異的な溶解性を示すため、感光した光硬化部への特異的な浸入が発生する。さらにγ-ブチロラクトンは、200℃以上の高沸点を有することにより、前記光硬化部中からの放出速度が遅いため、前記歪みによる応力を緩和させることができる。従って、γ-ブチロラクトンを含む現像液を用いることで、パターンの裾部におけるクラック発生を抑制することが可能となる。
【0027】
本発明のリンス液は、前記ネガ型感光性樹脂組成物にダメージを与えず、かつ前記γ-ブチロラクトンを含む現像液を洗い流す効能を有する。即ち、本発明のリンス液は、前記ネガ型感光性樹脂組成物との親和性が低く、且つ前記γ-ブチロラクトンを含む現像液と混和する機能を有する。また、本発明のリンス液は、前記現像工程の後に残留する前記表面修飾されたシリカ粒子、及び前記現像工程の後に前記1分子中に(メタ)アクリロイル基を少なくとも1つ有する化合物が残留する場合は該化合物も、前記γ-ブチロラクトンを含む現像液と共に洗い流すことができる。前記ネガ型感光性樹脂組成物は、γ-ブチロラクトンを含む現像液による現像工程により、一定量のγ-ブチロラクトンを含む現像液を前記光硬化部中に含む。その後、本発明のリンス液を用いることで、前記光硬化部中から徐々にγ-ブチロラクトンを含む現像液を除去することができる。さらに、本発明のリンス液は比較的高い揮発性を有するため、形成されたパターン中及び該パターンの周辺に残存する該リンス液を少なくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明について詳細を説明する。
<塗布工程>
本発明の樹脂製レンズの製造方法は、開口部を有するパターンが形成された支持体上にネガ型感光性樹脂組成物を塗布する工程を有する。前記開口部を有するパターンは、ネガ型感光性樹脂組成物又はポジ型感光性樹脂組成物をパターニングして形成され、該パターンの形状は例えば格子状である。前記支持体は、例えば、酸化珪素膜で被膜されたシリコン等の半導体基板、窒化珪素膜又は酸化窒化珪素膜で被膜されたシリコン等の半導体基板、窒化珪素基板、石英基板、ガラス基板(無アルカリガラス、低アルカリガラス、結晶化ガラスを含む)、ITO膜が形成されたガラス基板が挙げられる。その上に、ディスペンサー、スピナー等の適当な塗布方法により、前記ネガ型感光性樹脂組成物を塗布する。前記ネガ型感光性樹脂組成物は、1分子中に(メタ)アクリロイル基を少なくとも1つ有する化合物、表面修飾されたシリカ粒子、光ラジカル重合開始剤、及び任意でその他添加剤を
含み、例えば前記特許文献1に記載のインプリント用光硬化性組成物が挙げられる。
【0029】
<インプリント工程>
本発明の樹脂製レンズの製造方法は、前記ネガ型感光性樹脂組成物と、目的のレンズ形状の反転パターン及び遮光膜を有するモールドとを接触させるインプリント工程を有する。ここで、前記目的のレンズ形状が凹レンズである場合、前記反転パターンは凸レンズパターンである。前記モールドの材料は、後述する光硬化工程で使用する紫外線等の光を透過する材料である限り限定されないが、例えば、ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)樹脂、石英、硼珪酸ガラス及びフッ化カルシウムが挙げられる。前記モールドの材料が樹脂である場合、非感光性樹脂、感光性樹脂いずれであってもよい。前記感光性樹脂として、例えば、国際公開第2019/031359号に開示されているインプリント用レプリカモールド材料が挙げられる。また、前記遮光膜の材料は、後述する光硬化工程で使用する紫外線等の光を透過しない限り限定されないが、例えば、アルミニウム、クロム、ニッケル、コバルト、チタン、タンタル、タングステン及びモリブデンが挙げられる。前記モールドは、後述する離型工程のために、離型剤を塗布し乾燥することで離型処理した後に使用することが望ましい。前記離型剤は、市販品として入手が可能であり、例えば、Novec(登録商標)1700、Novec(登録商標)1710、Novec(登録商標)1720(以上、スリーエムジャパン(株)製)、フロロサーフ(登録商標)FG-5084、フロロサーフ(登録商標)FG-5093(以上、(株)フロロテクノロジー製)、デュラサーフ(登録商標)DP-500、デュラサーフ(登録商標)DP-200、デュラサーフ(登録商標)DS-5400、デュラサーフ(登録商標)DH-100、デュラサーフ(登録商標)DH-405TH、デュラサーフ(登録商標)DH-610、デュラサーフ(登録商標)DS-5800、デュラサーフ(登録商標)DS-5935(以上、(株)ハーベス製)、ポリフロン(登録商標)PTFE TC-7105GN、ポリフロン(登録商標)PTFE TC-7109BK、ポリフロン(登録商標)PTFE TC-7113LB、ポリフロン(登録商標)PTFE TC-7400CR、ポリフロン(登録商標)PTFE TC-7405GN、ポリフロン(登録商標)PTFE TC-7408GY、ポリフロン(登録商標)PTFE TC-7409BK、ポリフロン(登録商標)PTFE TC-7609M1、ポリフロンPTFE TC-7808GY、ポリフロンPTFE TC-7809BK、ポリフロン(登録商標)PTFE TD-7139BD、オプツール(登録商標)DAC-HP、オプツール(登録商標)DSX-E、オプトエース(登録商標)WP-140、ダイフリー(登録商標)GW-4000、ダイフリー(登録商標)GW-4010、ダイフリー(登録商標)GW-4500、ダイフリー(登録商標)GW-4510、ダイフリー(登録商標)GW-8000、ダイフリー(登録商標)GW-8500、ダイフリー(登録商標)MS-175、ダイフリー(登録商標)GF-700、ダイフリー(登録商標)GF-750、ダイフリー(登録商標)MS-600、ダイフリー(登録商標)GA-3000、ダイフリー(登録商標)GA-9700、ダイフリー(登録商標)GA-9750(以上、ダイキン工業(株)製)、メガファック(登録商標)F-553、メガファック(登録商標)F-555、メガファック(登録商標)F-558、メガファック(登録商標)F-561(以上、DIC(株)製)、及びSFE-DP02H、SNF-DP20H、SFE-B002H、SNF-B200A、SCV-X008、SFE-X008、SNF-X800、SR-4000A、S-680、S-685、MR F-6441-AL、MR F-6711-AL、MR F-6758-AL、MR F-6811-AL、MR EF-6521-AL(以上、AGCセイミケミカル(株)製)が挙げられる。前記離型剤として、上記市販品以外に、例えば国際公開第2019/031312号に開示されているモールド用離型剤が挙げられる。
【0030】
<光硬化工程>
本発明の樹脂製レンズの製造方法は、前記インプリント工程の後、前記モールドを介して
前記ネガ型感光性樹脂組成物を露光して前記開口部に光硬化部を形成する光硬化工程を有する。前記ネガ型感光性樹脂組成物に対する露光に使用する光は、前記光硬化部を形成することができる限り特に限定されないが、例えば、波長436nmのg線、波長405nmのh線、波長365nmのi線、ghi線(ブロードバンド)及び波長248nmのKrFエキシマレーザーを使用することができる。前記光硬化部の膜厚は、通常1μm乃至2000μmであり、好ましくは100μm乃至1000μmであり、より好ましくは300μm乃至700μmである。前記モールドは、紫外線等の光を透過する材料から作製され、且つ該紫外線等の光を透過しない遮光膜を有するため、本工程ではマスクとして使用される。
【0031】
<離型工程>
本発明の樹脂製レンズの製造方法は、前記光硬化部と前記モールドとを分離する離型工程を有する。離型方法は、前記光硬化部が損傷及び変形することなく、前記モールドから完全に分離することができる限り、特に限定されない。前記モールドは、前記離型剤を塗布し乾燥する離型処理によって、前記光硬化部と該モールドとの分離が容易となる。前記光硬化工程の後、本離型工程の前、中途又は後に、前記光硬化部を加熱する工程をさらに有してもよく、その場合、該光硬化部の加熱条件は、例えば、加熱温度80℃乃至100℃、及び加熱時間30秒乃至60分の範囲から適宜選択される。
【0032】
<現像工程>
本発明の樹脂製レンズの製造方法は、前記離型工程の後、前記ネガ型感光性樹脂組成物の未硬化部をγ-ブチロラクトンを含む現像液を用いて除去し前記光硬化部を露出させ光硬化物を形成する現像工程を有する。現像方法は本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、ディップ法、パドル法、スプレー法、ダイナミックディスペンス法及びスタティックディスペンス法が挙げられる。現像の条件は、例えば、現像温度5℃乃至50℃、現像時間10秒乃至300秒の範囲から適宜選択される。
【0033】
前記γ-ブチロラクトンを含む現像液は、環状構造を有し且つエーテル結合を有してもよい炭素原子数5又は6のアルコールをさらに含んでいてもよい。前記炭素原子数5又は6のアルコールとして、例えば、テトラヒドロフルフリルアルコール、3-フランメタノール、5-ヒドロキシメチル-2-フルアルデヒド、5-(ヒドロキシメチル)フラン-2-カルボン酸、シクロペンタノール、2-シクロヘキセン-1-オール、1-シクロプロピルエタノール、シクロブタンメタノール、シクロペンタンメタノール、3-エチル-3-オキセタンメタノール、4-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)-2-シクロペンテン-1-オン、1-メチルシクロペンタノール、3-メチル-3-オキセタンメタノール、テトラヒドロピラン-4-メタノール及びシクロヘキサノールが挙げられる。なお、γ-ブチロラクトンと前記炭素原子数5又は6のアルコールとの混合比としては、γ-ブチロラクトン/前記炭素原子数5又は6のアルコール=10質量%乃至90質量%/90質量%乃至10質量%とすることが好ましい。
【0034】
<リンス工程>
本発明の樹脂製レンズの製造方法は、前記現像工程の後、乳酸エステル、炭素原子数1乃至5の直鎖又は分岐鎖アルコール、置換基としてメチル基又はエチル基を少なくとも1つ有するシクロヘキサン誘導体、及び炭素原子数4乃至8のハイドロフルオロカーボンからなる群から選ばれる化合物を含むリンス液を用いてリンス処理するリンス工程を有する。リンス方法は本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、ディップ法、パドル法、スプレー法、ダイナミックディスペンス法及びスタティックディスペンス法が挙げられる。リンスの条件は、リンス温度5℃乃至50℃、リンス時間10秒乃至300秒の範囲から適宜選択される。
【0035】
前記乳酸エステルとして、例えば、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸イソプロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸ペンチル及び乳酸ヘキシルが挙げられる。前記炭素原子数1乃至5の直鎖又は分岐鎖アルコールとして、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール、tert-アミルアルコール及びイソアミルアルコールが挙げられる。前記置換基としてメチル基又はエチル基を少なくとも1つ有するシクロヘキサン誘導体として、例えば、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、1,2-ジメチルシクロヘキサン、1,3-ジメチルシクロヘキサン及び1,4-ジメチルシクロヘキサンが挙げられる。前記炭素原子数4乃至8のハイドロフルオロカーボンとして、例えば、バートレル(登録商標)XF、バートレル(登録商標)XF-UP、バートレル(登録商標)XF-Select、バートレル(登録商標)XE、バートレル(登録商標)X-E10(以上、三井・ケマーズフロロプロダクツ(株)製)、及びNovec(登録商標)7000、Novec(登録商標)7100、Novec(登録商標)7200、Novec(登録商標)7300(以上、スリーエムジャパン(株)製)が挙げられる。
【0036】
前記リンス液は、前記γ-ブチロラクトンを含む現像液と同様に、環状構造を有し且つエーテル結合を有してもよい炭素原子数5又は6のアルコールをさらに含んでいてもよい。前記炭素原子数5又は6のアルコールの例は、前記のとおりである。前記リンス液は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。前記リンス液が前記シクロヘキサン誘導体及び前記炭素原子数5又は6のアルコールを含む場合、これらの成分の合計100質量%に対し該シクロヘキサン誘導体を少なくとも50質量%含むことが好ましい。
【0037】
[界面活性剤]
本発明の樹脂製レンズの製造方法において使用する現像液及びリンス液は、前記光硬化部に対する濡れ性を向上させ現像及びリンスを効率的に進行させる目的で、界面活性剤をさらに含有することもできる。前記界面活性剤として、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、エフトップ(登録商標)EF301、エフトップ(登録商標)EF303、エフトップ(登録商標)EF352(以上、三菱マテリアル電子化成(株)製)、メガファック(登録商標)F-171、メガファック(登録商標)F-173、メガファック(登録商標)R-30、メガファック(登録商標)R-40、メガファック(登録商標)R-40-LM、メガファック(登録商標)R-41(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、フロラードFC431(以上、スリーエムジャパン(株)製)、アサヒガード(登録商標)AG710、サーフロン(登録商標)S-382、サーフロン(登録商標)SC101、サーフロン(登録商標)SC102、サーフロン(登録商標)SC103、サーフロン(登録商標)SC104、サーフロン(登録商標)SC105、サーフロン(登録商標)SC106(以上、AGC(株)製)、BYK-302、BYK-307、BYK-322、BYK-323、BYK-33
1、BYK-333、BYK-377、BYK-378(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製)、FTX-206D、FTX-212D、FTX-218、FTX-220D、FTX-230D、FTX-240D、FTX-212P、FTX-220P、FTX-228P、FTX-240G、DFX-18等フタージェントシリーズ((株)ネオス製)等のフッ素系界面活性剤、及びオルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)を挙げることができる。
【0038】
前記界面活性剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、前記界面活性剤が使用される場合、前記現像液又はリンス液におけるその含有量は、該現像液又リンス液の全質量に対して、0.001質量%乃至5質量%であり、好ましくは0.01質量%乃至3質量%であり、より好ましくは0.05質量%乃至1質量%である。
【0039】
[その他添加剤]
本発明の樹脂製レンズの製造方法において使用するネガ型感光性樹脂組成物、現像液及びリンス液は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、酸化防止剤をその他添加剤として含むことができる。前記酸化防止剤は、市販品として入手が可能であり、例えば、IRGANOX(登録商標)245、IRGANOX(登録商標)1010、IRGANOX(登録商標)1035、IRGANOX(登録商標)1076、IRGANOX(登録商標)1135、IRGAFOS(登録商標)168(以上、BASFジャパン(株)製)、スミライザー(登録商標)GA-80、スミライザー(登録商標)GP、スミライザー(登録商標)MDP-S、スミライザー(登録商標)BBM-S、スミライザー(登録商標)WX-R(以上、住友化学(株)製)、及びアデカスタブ(登録商標)AO-20、アデカスタブ(登録商標)AO-30、アデカスタブ(登録商標)AO-40、アデカスタブ(登録商標)AO-50、アデカスタブ(登録商標)AO-60、アデカスタブ(登録商標)AO-80、アデカスタブ(登録商標)AO-330、アデカスタブ(登録商標)PEP-36、アデカスタブ(登録商標)PEP-8、アデカスタブ(登録商標)HP-18、アデカスタブ(登録商標)HP-10、アデカスタブ(登録商標)2112、アデカスタブ(登録商標)2112RG、アデカスタブ(登録商標)1178、アデカスタブ(登録商標)1500、アデカスタブ(登録商標)C、アデカスタブ(登録商標)135A、アデカスタブ(登録商標)3010、アデカスタブ(登録商標)TPP(以上、(株)ADEKA製)が挙げられる。
【0040】
<乾燥工程>
本発明の樹脂製レンズの製造方法は、前記リンス液を除去する乾燥工程を有する。前記支持体をスピナー、コーター等のスピン乾燥可能な装置により回転させることにより、本工程を実施することができる。乾燥条件は特に限定されないが、例えば、回転数200rpm乃至3000rpm、10秒乃至10分の範囲から適宜選択される。
【0041】
本発明の樹脂製レンズの製造方法は、前記乾燥工程の後、後述する全面露光工程の前に前記現像工程、前記リンス工程及び前記乾燥工程をさらに有することができる。前記現像工程、前記リンス工程及び前記乾燥工程を繰り返すことにより、工程数の増加により樹脂製レンズの生産性は低下するが、除去しきれない前記未硬化部の残渣を完全に除去することができる。
【0042】
<全面露光工程>
本発明の樹脂製レンズの製造方法は、前記乾燥工程の後、前記光硬化物の全面を露光する工程を有する。本工程に使用する光は、前記光硬化工程で使用可能なg線、h線、i線、及びKrFエキシマレーザーを使用することができる。さらに、本工程の前であって前記乾燥工程の後又は本工程の後に、前記光硬化物に対しホットプレート等の加熱手段を用いてポストベーク工程を行ってもよい。ポストベークの条件は、例えば、加熱温度80℃乃
至100℃、加熱時間30秒乃至60分の範囲から適宜選択される。前記ポストベークを行うことにより、前記光硬化物に前記現像液及びリンス液が残留している場合、該現像液及びリンス液を該光硬化物から完全に放出できると共に、該光硬化物の着色を脱色することができる。
【0043】
<反射防止膜形成工程>
前記光硬化物の全面を露光する工程の後、前記ポストベーク工程を行う場合は該ポストベーク工程の後、該光硬化物の表面に反射防止膜を形成する工程をさらに有することができる。前記反射防止膜は、前記光硬化物に入射する光の反射を抑制し、透過率を向上させるために、該光硬化物の表面に形成される。前記反射防止膜の形成方法として、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、CVD法、ミスト法、スピンコート法、ディップコート法及びスプレーコート法が挙げられる。また、前記反射防止膜として、フッ化マグネシウム、二酸化ケイ素等の無機膜、及びポリシロキサン等の有機膜が挙げられる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、下記実施例及び比較例において、試料の調製及び物性の分析に用いた装置及び条件は、以下の通りである。
【0045】
(1)撹拌脱泡機
装置:(株)シンキー製 自転・公転ミキサー あわとり練太郎(登録商標)ARE-310
(2)UV露光
装置1:シーシーエス(株)製 バッチ式UV-LED照射装置(波長365nm)
装置2:岩崎電気(株)製 UV-LED照射装置LHPUV365/2501
(3)現像装置
装置:アクテス京三(株)製 小型現像装置ADE-3000S
(4)光学顕微鏡(裾部クラック及び残渣の観察)
装置:オリンパス(株)製 光学顕微鏡MX61A
条件:明視野、対物10倍
【0046】
以下に記載の各製造例、及びネガ型感光性樹脂組成物の調製において使用した化合物の供給元は以下の通りである。
UA-4200:新中村化学工業(株)製 商品名:NKオリゴ UA-4200
V#260:大阪有機化学工業(株)製 商品名:ビスコート#260
SA1303P:アドバンスト・ソフトマテリアルズ(株)製 商品名:セルム(登録商標)スーパーポリマーSA1303P
APG-100:新中村化学工業(株)製 商品名:NKエステル APG-100
4HBA:東京化成工業(株)製 化合物名:4-ヒドロキシブチルアクリレート
I184:IGM Resins製 商品名:OMNIRAD(登録商標)184(旧IRGACURE(登録商標)184)
I245:BASFジャパン(株)製 商品名:IRGANOX(登録商標)245
AO-503:(株)ADEKA製 商品名:アデカスタブ(登録商標)AO-503
PEPT:SC有機化学(株)製 商品名:PEPT
【0047】
[製造例1]
500mLナスフラスコに、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2つ有するウレタン(メタ)アクリレート化合物UA-4200を40.9g秤量し、メタノール50.0gにて溶解させた。その後、(メタ)アクリロイル基を有する官能基で表面修飾された一次粒子径20nm乃至25nmのシリカ粒子(固形分40質量%のメタノール分散液)125
gを加え、撹拌して均一化した。その後、エバポレーターを用いて、60℃、減圧度133.3Pa以下の条件でメタノールを留去し、(メタ)アクリロイル基を有する官能基で表面修飾されたシリカ粒子のUA-4200分散液(該表面修飾されたシリカ粒子の含有量55質量%)を得た。
【0048】
[製造例2]
500mLナスフラスコに、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2つ有する二官能(メタ)アクリレート化合物V#260を20.0g秤量した。その後、ポリロタキサンSA1303P(シクロデキストリンからなる環状分子の側鎖にアクリロイル基を有するポリロタキサン、固形分50質量%のメチルエチルケトン分散液)40.0gを加え、撹拌して均一化した。その後、エバポレーターを用いて、50℃、減圧度133.3Pa以下の条件でメチルエチルケトンを留去し、ポリロタキサンのV#260溶液(該ポリロタキサンの含有量50質量%)を得た。
【0049】
[ネガ型感光性樹脂組成物の調製]
(メタ)アクリロイル基を有する官能基で表面修飾されたシリカ粒子として製造例1で得た前記UA-4200分散液の固形分20.9g、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2つ有する二官能(メタ)アクリレート化合物V#260を14.8g及びAPG-100を2.5g、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2つ有するウレタン(メタ)アクリレート化合物UA-4200を1.3g、1分子中に(メタ)アクリロイル基を1つ有する単官能(メタ)アクリレート化合物4HBAを1.0g、ポリロタキサンとして製造例2で得た前記V#260溶液の固形分7.0g、光ラジカル重合開始剤としてI184を0.5g、並びに酸化防止剤としてI245を0.35g及びAO-503を0.25g配合した。その後、配合物を50℃で15時間振とうさせ混合した後、多官能チオール化合物PEPTを2.5g添加し、攪拌脱泡機を用いて2分間攪拌脱泡することで、ネガ型感光性樹脂組成物を調製した。
【0050】
<実施例1乃至実施例7及び比較例1乃至比較例3>
Novec(登録商標)1720(スリーエムジャパン(株)製)を塗布し乾燥することで離型処理したフォトマスク基板(開口部1cm角)上に、前記ネガ型感光性樹脂組成物を適量滴下した。その後、500μm厚のシリコーンゴム製スペーサーを介して、無アルカリガラス基板(10cm角、0.7mm厚)で、前記離型処理したフォトマスク基板上の前記ネガ型感光性樹脂組成物を挟み込んだ。前記無アルカリガラス基板は、信越化学工業(株)製接着補助剤(製品名:KBM-5803)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで10質量%に希釈した溶液を塗布し乾燥することで、密着処理したものである。この挟み込んだネガ型感光性樹脂組成物を、前記岩崎電気(株)製UV-LED照射装置を用いて、前記離型処理したフォトマスク基板を介して140mW/cm2で3.2秒間UV露光し、光硬化部を形成した。
【0051】
前記光硬化部が密着した無アルカリガラス基板を、前記離型処理したフォトマスク基板から剥離した後、前記現像装置を用いて回転数200rpmで前記無アルカリガラス基板を回転しながら、下記表1の実施例1乃至実施例7及び比較例1乃至比較例3に記載の現像液(23℃)を200mL/分の流量で10秒間スプレー吐出し、現像を行った。その後、前記現像装置を用いて回転数300rpmで前記無アルカリガラス基板を回転しながら、下記表1の実施例1乃至実施例7及び比較例1乃至比較例3に記載のリンス液(23℃)を200mL/分の流量で20秒間スプレー吐出し、リンスを行った。その後、前記現像装置を用いて3000rpmで前記無アルカリガラス基板を30秒間回転し、乾燥を行った。その後、前記現像装置を用いて、現像/リンス/乾燥を上記方法と同様の方法で再度行った。次いで、23℃の温度条件下にて2時間静置した後、前記シーシーエス(株)製UV-LED装置を用いて50mW/cm2で111秒間UV露光し、さらに100℃
のホットプレートで10分間加熱を行った。その結果、前記密着処理した無アルカリガラス基板上に、1cm角、厚さ0.5mmの光硬化物が作製された。作製された1cm角、厚さ0.5mmの光硬化物の天面は、表1に示すように平面形状である。
【0052】
<実施例8>
前記離型処理したフォトマスク基板を、離型処理した遮光膜付き樹脂製モールド(約100μm厚の反転レンズ形状)に変更し、前記500μm厚のシリコーンゴム製スペーサーを600μm厚のシリコーンゴム製スペーサーに変更し、現像液及びリンス液を下記表1の実施例8に記載の現像液及びリンス液に変更した以外は、前記1cm角、厚さ0.5mmの光硬化物の作製方法と同様の方法で、レンズ形状を有する光硬化物を作製した。作製されたレンズ形状を有する光硬化物の天面は、表1に示すように曲面形状である。前記遮光膜付き樹脂製モールドの離型処理方法は、前記フォトマスク基板の離型処理方法と同様である。
【0053】
[裾部クラック評価]
前記天面が平面形状の光硬化物及び前記天面が曲面形状の光硬化物をそれぞれ、前記光学顕微鏡にて該光硬化物の裾部を観察した。前記光硬化物の裾部にクラックが確認される場合を“×”と判定し、該光硬化物の裾部にクラックが確認されない場合を“○”と判定し、その結果を下記表2に示す。
【0054】
[残渣評価]
前記密着処理した無アルカリガラス基板上に作製された光硬化物の周辺を、前記光学顕微鏡にて観察した。前記光硬化物の周辺に残渣が確認される場合を“×”と判定し、該光硬化物の周辺に残渣が確認されない場合を“○”と判定し、その結果を合わせて下記表2に示す。
【0055】
【0056】
上記表1において、GBLはγ-ブチロラクトンを表し、THFAはテトラヒドロフルフリルアルコールを表し、IPEはジイソプロピルエーテルを表し、ELは乳酸エチルを表し、EtOHはエタノールを表し、MCHはメチルシクロヘキサンを表し、バートレルXFはバートレル(登録商標)XF(三井・ケマーズフロロプロダクツ(株)製)を表す。現像液又はリンス液が混合溶剤の場合、その混合比率を質量比で表す。
【0057】
【0058】
上記表2に示す結果より、実施例1乃至実施例8に記載の現像液及びリンス液をレンズ製造時の現像工程及びリンス工程に適用することで、作製された光硬化物の裾部におけるクラックを抑制し、且つ残渣を抑制することができる。