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特許7545126ノボラック樹脂を剥離層として含む積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】ノボラック樹脂を剥離層として含む積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/42 20060101AFI20240828BHJP
   B32B 7/06 20190101ALI20240828BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240828BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
B32B27/42 101
B32B7/06
H01L21/304 622J
H01L21/68 N
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2023064328
(22)【出願日】2023-04-11
(62)【分割の表示】P 2019550416の分割
【原出願日】2018-10-30
(65)【公開番号】P2023086789
(43)【公開日】2023-06-22
【審査請求日】2023-05-08
(31)【優先権主張番号】P 2017212007
(32)【優先日】2017-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】西巻 裕和
(72)【発明者】
【氏名】柄澤 涼
(72)【発明者】
【氏名】新城 徹也
(72)【発明者】
【氏名】上林 哲
(72)【発明者】
【氏名】森谷 俊介
(72)【発明者】
【氏名】奥野 貴久
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-050332(JP,A)
【文献】国際公開第2015/190438(WO,A1)
【文献】特開2017-069541(JP,A)
【文献】特開2014-103229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
H01L 21/304、21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と被加工物との間に剥離可能に接着した中間層を有し被加工物を加工するための積層体であり、該中間層は少なくとも支持体側に接した剥離層を含み、
該剥離層が下記(C1-1)単位構造、(C1-2)単位構造、(C1-3)単位構造、又はそれらの単位構造の組み合わせ:
【化1】
(上記式中、(C1)は窒素原子を含む芳香族化合物に由来する基、(C2)は第2級炭素原子、第4級炭素原子、又は芳香族環を側鎖に有する第3級炭素原子を形成する基、(C3)は脂肪族多環化合物に由来する基、(C4)はフェノール、ビスフェノール、ナフトール、ビフェノール、又はそれらの組み合わせに由来する基である。)を含むポリマー(C)を含み、
そして、該ポリマー(C)が支持体を介して照射される波長190nm~600nmの光を吸収し変質するノボラック樹脂であり、
ヒドロシリル化反応により硬化する成分(A)とポリジメチルシロキサンを含む成分(B)とを含む接着層を前記中間層に含み、
前記成分(B)が1000mm /s~2000000mm /sの粘度を有するポリジメチルシロキサンである、
上記積層体。
【請求項2】
支持体と樹脂で固定された複数のチップの再配線層との間に剥離可能に接着した中間層を有し、支持体を剥離した後に樹脂で固定化された再配線層付チップを複数個のチップから少数個のチップに切断するための積層体であって、該中間層は少なくとも支持体側に接
した剥離層を含み、
該剥離層が下記(C1-1)単位構造、(C1-2)単位構造、(C1-3)単位構造、又はそれらの単位構造の組み合わせ:
【化2】
(上記式中、(C1)は窒素原子を含む芳香族化合物に由来する基、(C2)は第2級炭素原子、第4級炭素原子、又は芳香族環を側鎖に有する第3級炭素原子を形成する基、(C3)は脂肪族多環化合物に由来する基、(C4)はフェノール、ビスフェノール、ナフトール、ビフェノール、又はそれらの組み合わせに由来する基である。)を含むポリマー(C)を含み、
そして、該ポリマー(C)が支持体を介して照射される波長190nm~600nmの光を吸収し変質するノボラック樹脂であり、
ヒドロシリル化反応により硬化する成分(A)とポリジメチルシロキサンを含む成分(B)とを含む接着層を前記中間層に含み、
前記成分(B)が1000mm /s~2000000mm /sの粘度を有するポリジメチルシロキサンである、
上記積層体。
【請求項3】
支持体とウェハーの回路面との間に剥離可能に接着した中間層を有しウェハーの裏面を研磨するための積層体であり、該中間層はウェハー側に接した接着層と支持体側に接した剥離層を含み、
該剥離層が下記(C1-1)単位構造、(C1-2)単位構造、(C1-3)単位構造、又はそれらの単位構造の組み合わせ:
【化3】
(上記式中、(C1)は窒素原子を含む芳香族化合物に由来する基、(C2)は第2級炭素原子、第4級炭素原子、又は芳香族環を側鎖に有する第3級炭素原子を形成する基、(C3)は脂肪族多環化合物に由来する基、(C4)はフェノール、ビスフェノール、ナフトール、ビフェノール、又はそれらの組み合わせに由来する基である。)を含むポリマー(C)を含み、
そして、該ポリマー(C)が支持体を介して照射される波長190nm~600nmの光を吸収し変質するノボラック樹脂であり、
ヒドロシリル化反応により硬化する成分(A)とポリジメチルシロキサンを含む成分(B)とを含む接着層を前記中間層に含み、
前記成分(B)が1000mm /s~2000000mm /sの粘度を有するポリジメチルシロキサンである、
上記積層体。
【請求項4】
支持体と被加工物との間に剥離可能に接着した中間層を有し被加工物を加工するための積層体であり、該中間層は少なくとも支持体側に接した剥離層を含み、
該剥離層が下記(C1-1)単位構造、(C1-2)単位構造、(C1-3)単位構造、又はそれらの単位構造の組み合わせ:
【化4】
(上記式中、(C1)はカルバゾール、又はフェニルナフチルアミンに由来する基、(C2)は第2級炭素原子、第4級炭素原子、又は芳香族環を側鎖に有する第3級炭素原子を形成する基、(C3)は脂肪族多環化合物に由来する基、(C4)はフェノール、ビスフェノール、ナフトール、ビフェノール、又はそれらの組み合わせに由来する基である。)を含むポリマー(C)を含み、
そして、該ポリマー(C)が支持体を介して照射される波長190nm~600nmの光を吸収し変質するノボラック樹脂であ上記積層体。
【請求項5】
支持体と樹脂で固定された複数のチップの再配線層との間に剥離可能に接着した中間層を有し、支持体を剥離した後に樹脂で固定化された再配線層付チップを複数個のチップから少数個のチップに切断するための積層体であって、該中間層は少なくとも支持体側に接した剥離層を含み、
該剥離層が下記(C1-1)単位構造、(C1-2)単位構造、(C1-3)単位構造、又はそれらの単位構造の組み合わせ:
【化5】
(上記式中、(C1)はカルバゾール、又はフェニルナフチルアミンに由来する基、(C2)は第2級炭素原子、第4級炭素原子、又は芳香族環を側鎖に有する第3級炭素原子を形成する基、(C3)は脂肪族多環化合物に由来する基、(C4)はフェノール、ビスフェノール、ナフトール、ビフェノール、又はそれらの組み合わせに由来する基である。)を含むポリマー(C)を含み、
そして、該ポリマー(C)が支持体を介して照射される波長190nm~600nmの光を吸収し変質するノボラック樹脂である上記積層体。
【請求項6】
支持体とウェハーの回路面との間に剥離可能に接着した中間層を有しウェハーの裏面を研磨するための積層体であり、該中間層はウェハー側に接した接着層と支持体側に接した剥離層を含み、
該剥離層が下記(C1-1)単位構造、(C1-2)単位構造、(C1-3)単位構造、又はそれらの単位構造の組み合わせ:
【化6】
(上記式中、(C1)はカルバゾール、又はフェニルナフチルアミンに由来する基、(C2)は第2級炭素原子、第4級炭素原子、又は芳香族環を側鎖に有する第3級炭素原子を形成する基、(C3)は脂肪族多環化合物に由来する基、(C4)はフェノール、ビスフェノール、ナフトール、ビフェノール、又はそれらの組み合わせに由来する基である。)を含むポリマー(C)を含み、
そして、該ポリマー(C)が支持体を介して照射される波長190nm~600nmの光を吸収し変質するノボラック樹脂である上記積層体。
【請求項7】
支持体と被加工物との間に剥離可能に接着した中間層を有し被加工物を加工するための積層体であり、該中間層は少なくとも支持体側に接した剥離層を含み、
該剥離層が下記(C1-1)単位構造、(C1-2)単位構造、(C1-3)単位構造、又はそれらの単位構造の組み合わせ:
【化7】
(上記式中、(C1)は窒素原子を含む芳香族化合物に由来する基、(C2)は1-ナフトアルデヒド、1-ピレンカルボキシアルデヒド、又は4-(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒドに由来する基、(C3)はジシクロペンタジエンに由来する基、(C4)はフェノール、ビスフェノール、ナフトール、ビフェノール、又はそれらの組み合わせに由来する基である。)を含むポリマー(C)を含み、
そして、該ポリマー(C)が支持体を介して照射される波長190nm~600nmの光を吸収し変質するノボラック樹脂である上記積層体。
【請求項8】
支持体と樹脂で固定された複数のチップの再配線層との間に剥離可能に接着した中間層を有し、支持体を剥離した後に樹脂で固定化された再配線層付チップを複数個のチップから少数個のチップに切断するための積層体であって、該中間層は少なくとも支持体側に接した剥離層を含み、
該剥離層が下記(C1-1)単位構造、(C1-2)単位構造、(C1-3)単位構造、又はそれらの単位構造の組み合わせ:
【化8】
(上記式中、(C1)は窒素原子を含む芳香族化合物に由来する基、(C2)は1-ナフトアルデヒド、1-ピレンカルボキシアルデヒド、又は4-(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒドに由来する基、(C3)はジシクロペンタジエンに由来する基、(C4)はフェノール、ビスフェノール、ナフトール、ビフェノール、又はそれらの組み合わせに由来する基である。)を含むポリマー(C)を含み、
そして、該ポリマー(C)が支持体を介して照射される波長190nm~600nmの光を吸収し変質するノボラック樹脂である上記積層体。
【請求項9】
支持体とウェハーの回路面との間に剥離可能に接着した中間層を有しウェハーの裏面を研磨するための積層体であり、該中間層はウェハー側に接した接着層と支持体側に接した
剥離層を含み、
該剥離層が下記(C1-1)単位構造、(C1-2)単位構造、(C1-3)単位構造、又はそれらの単位構造の組み合わせ:
【化9】
(上記式中、(C1)は窒素原子を含む芳香族化合物に由来する基、(C2)は1-ナフトアルデヒド、1-ピレンカルボキシアルデヒド、又は4-(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒドに由来する基、(C3)はジシクロペンタジエンに由来する基、(C4)はフェノール、ビスフェノール、ナフトール、ビフェノール、又はそれらの組み合わせに由来する基である。)を含むポリマー(C)を含み、
そして、該ポリマー(C)が支持体を介して照射される波長190nm~600nmの光を吸収し変質するノボラック樹脂である上記積層体。
【請求項10】
剥離層の光透過率が波長190nm~600nmの範囲で1~90%である請求項1乃至請求項の何れか1項に記載の積層体。
【請求項11】
上記波長の光の吸収により生ずる変質が、ノボラック樹脂の光分解である請求項1乃至請求項10の何れか1項に記載の積層体。
【請求項12】
成分(A)が、SiOで表されるシロキサン単位(Q単位)、RSiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位)、RSiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)、及びRSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)からなる群より選ばれるポリシロキサン(但しR乃至RはそれぞれSi-C結合又はSi-H結合によりケイ素原子に結合しているものである。)を含み、R乃至Rで示される1価化学基がそれぞれ炭素原子数1~10のアルキル基と炭素原子数2~10のアルケニル基を含むポリオルガノシロキサン(a1)と、R乃至Rで示される1価化学基がそれぞれ炭素原子数1~10のアルキル基と水素原子を含むポリオルガノシロキサン(a2)とを含むポリシロキサン(A1)と、白金族金属系触媒(A2)とを含むものである請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の積層体。
【請求項13】
成分(A)が更に抑制剤(A3)を含む請求項1乃至請求項3及び請求項12の何れか1項に記載の積層体。
【請求項14】
成分(B)が10000mm/s~1000000mm/sの粘度を有するポリジメチルシロキサンである請求項1乃至請求項3、請求項12及び請求項13の何れか1項に記載の積層体。
【請求項15】
接着剤中の成分(A)と成分(B)が質量%で80:20~50:50の割合である請求項1乃至請求項3及び請求項12乃至請求項14のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項16】
ウェハーの回路面に請求項1乃至請求項3及び請求項10乃至請求項15の何れか1項に記載の接着層を形成するための接着剤を塗布し接着層を形成する工程と、支持体上に請求項乃至請求項15の何れか1項に記載の剥離層を形成するための剥離層形成組成物を塗布し剥離層を形成する工程と、接着層と剥離層が接するように貼り合わせ120℃~300℃で加熱して接合する工程とを含む請求項3、請求項6、請求項9乃至請求項11
何れか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項17】
上記貼り合わせが10Pa~10000Paの減圧下で行われる請求項16に記載の積層体の製造方法。
【請求項18】
支持体がガラス基板であり、支持体側から波長190nm~400nmの光を照射する請求項1乃至請求項11の何れか1項に記載の支持体と被加工物の剥離方法。
【請求項19】
請求項18に記載の被加工物がウェハーであり、支持体とウェハーの剥離後、支持体又はウェハーから接着層又は剥離層をテープにより取り除く除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体と被加工物との間に剥離可能に接着した中間層を有し被加工物を加工するための積層体であり、中間層を紫外線照射により分離するための仮接着剤に関する。特にウェハー裏面の研磨時にウェハーを支持体に固定するための仮接着剤とそれを用いた積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来2次元的な平面方向に集積してきた半導体ウェハーは、より一層の集積化を目的に平面を更に3次元方向にも集積(積層)する半導体集積技術が求められている。この3次元積層はシリコン貫通電極(TSV:through silicon via)によって結線しながら多層に集積していく技術である。多層に集積する際に、集積されるそれぞれのウェハーは形成された回路面とは反対側(即ち、裏面)を研磨によって薄化し、薄化された半導体ウェハーを積層する。
【0003】
薄化前の半導体ウェハー(ここでは単にウェハーとも呼ぶ)を、研磨装置で研磨するために支持体に接着される。その際の接着は研磨後に容易に剥離されなければならないため、仮接着と呼ばれる。この仮接着は支持体から容易に取り外されなければならず、取り外しに大きな力を加えると薄化された半導体ウェハーは、切断されたり変形することがあり、その様なことが生じない様に、容易に取り外される。しかし、半導体ウェハーの裏面研磨時に研磨応力によって外れたりずれたりすることは好ましくない。従って、仮接着に求められる性能は研磨時の応力に耐え、研磨後に容易に取り外されることである。
【0004】
例えば研磨時の平面方向に対して高い応力(強い接着力)を持ち、取り外し時の縦方向に対して低い応力(弱い接着力)を有する性能が求められる。
【0005】
この様な接着と分離プロセスのためにレーザー照射による方法が開示されている(特許文献1、特許文献2を参照)。
【0006】
しかし、これらの接着と分離プロセスに用いられる仮接着剤はレーザーの照射により発熱が生じガスの発生もあるのでウェハーへのダメージも大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2004-64040
【文献】特開2012-106486
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は支持体と被加工物との間に剥離可能に接着した中間層を有し、被加工物を切断等により分離する事や、ウェハー裏面研磨等の加工を行うための積層体であり、該中間層は少なくとも支持体側に接した剥離層を含み、剥離層が支持体を介して照射される190nm~400nm、又は190nm~600nmの光を吸収し変質するノボラック樹脂を含むものであり、機械的な付加を加える事なく分離する材料及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は第1観点として、支持体と被加工物との間に剥離可能に接着した中間層を有し被加工物を加工するための積層体であり、該中間層は少なくとも支持体側に接した剥離層
を含み、剥離層が支持体を介して照射される波長190nm~600nmの光を吸収し変質するノボラック樹脂を含む上記積層体、
【0010】
第2観点として、支持体と樹脂で固定された複数のチップの再配線層との間に剥離可能に接着した中間層を有し、支持体を剥離した後に樹脂で固定化された再配線層付チップを複数個のチップから少数個のチップに切断するための積層体であって、該中間層は少なくとも支持体側に接した剥離層を含み、剥離層が支持体を介して照射される波長190nm~600nmの光を吸収し変質するノボラック樹脂を含む上記積層体、
【0011】
第3観点として、支持体とウェハーの回路面との間に剥離可能に接着した中間層を有しウェハーの裏面を研磨するための積層体であり、該中間層はウェハー側に接した接着層と支持体側に接した剥離層を含み、剥離層が支持体を介して照射される波長190nm~600nmの光を吸収し変質するノボラック樹脂を含む上記積層体、
【0012】
第4観点として、剥離層の光透過率が波長190nm~600nmの範囲で1~90%である第1観点乃至第3観点の何れか一つに記載の積層体、
【0013】
第5観点として、上記波長の光の吸収により生ずる変質が、ノボラック樹脂の光分解である第1観点乃至第4観点の何れか一つに記載の積層体、
【0014】
第6観点として、ヒドロシリル化反応により硬化する成分(A)とポリジメチルシロキサンを含む成分(B)とを含む接着層を中間層に含む第3観点乃至第5観点の何れか一つに記載の積層体、
【0015】
第7観点として、成分(A)が、SiOで表されるシロキサン単位(Q単位)、RSiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位)、RSiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)、及びRSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)からなる群より選ばれるポリシロキサン(但しR乃至RはそれぞれSi-C結合又はSi-H結合によりケイ素原子に結合しているものである。)を含み、R乃至Rで示される1価化学基がそれぞれ炭素原子数1~10のアルキル基と炭素原子数2~10のアルケニル基を含むポリオルガノシロキサン(a1)と、R乃至Rで示される1価化学基がそれぞれ炭素原子数1~10のアルキル基と水素原子を含むポリオルガノシロキサン(a2)とを含むポリシロキサン(A1)と、白金族金属系触媒(A2)とを含むものである第6観点に記載の積層体、
【0016】
第8観点として、成分(A)が更に抑制剤(A3)を含む第6観点又は第7観点に載の積層体、
【0017】
第9観点として、成分(B)が1000mm/s~2000000mm/sの粘度を有するポリジメチルシロキサンである第6観点乃至第8観点の何れか一つに記載の積層体、
【0018】
第10観点として、成分(B)が10000mm/s~1000000mm/sの粘度を有するポリジメチルシロキサンである第6観点乃至第8観点の何れか一つに記載の積層体、
【0019】
第11観点として、接着剤中の成分(A)と成分(B)が質量%で80:20~50:50の割合である第6観点乃至第10観点のいずれか一つに記載の積層体、
【0020】
第12観点として、剥離層が下記(C1-1)単位構造、(C1-2)単位構造、(C
1-3)単位構造、又はそれらの単位構造の組み合わせ:
【化1】
(上記式中、(C1)は窒素原子を含む芳香族化合物に由来する基、(C2)は第2級炭素原子、第4級炭素原子、又は芳香族環を側鎖に有する第3級炭素原子を形成する
基、(C3)は脂肪族多環化合物に由来する基、(C4)はフェノール、ビスフェノール、ナフトール、ビフェニル、ビフェノール、又はそれらの組み合わせに由来する基である。)を含むポリマー(C)を含む第1観点乃至第11観点のいずれか一つに記載の積層体、
【0021】
第13観点として、窒素原子を含む芳香族化合物に由来する基(C1)がカルバゾール、又はフェニルナフチルアミンに由来する基である第12観点に記載の積層体、
【0022】
第14観点として、(C2)が1-ナフトアルデヒド、1-ピレンカルボキシアルデヒド、又は4-(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒドに由来する基であり、(C3)がジシクロペンタジエンに由来する基である第12観点又は第13観点に記載の積層体、
【0023】
第15観点として、ウェハーの回路面に第6観点乃至第11観点の何れか一つに記載の接着層を形成するための接着剤を塗布し接着層を形成する工程と、支持体上に第12観点乃至第14観点の何れか一つに記載の剥離層を形成するための剥離層形成組成物を塗布し剥離層を形成する工程と、接着層と剥離層が接するように貼り合わせ120℃~300℃で加熱して接合する工程とを含む第3観点乃至第5観点の何れか一つに記載の積層体の製造方法、
【0024】
第16観点として、上記貼り合わせが10Pa~10000Paの減圧下で行われる第15観点に記載の積層体の製造方法、
【0025】
第17観点として、支持体がガラス基板であり、支持体側から波長190nm~600nmの光を照射する第1観点乃至第5観点の何れか一つに記載の支持体と被加工物の剥離方法、及び
【0026】
第18観点として、第17観点に記載の被加工物がウェハーであり、支持体とウェハーの剥離後、支持体又はウェハーから接着層又は剥離層をテープにより取り除く除去方法である。
【発明の効果】
【0027】
本発明は支持体と被加工物との間の剥離層を含む中間層を紫外線レーザーの照射により剥離層を変質(光分解)し、支持体と被加工物とを分離するものである。
【0028】
即ち、支持体と被加工物との間に剥離可能に接着した中間層を有し被加工物を加工するための積層体であり、該中間層は少なくとも支持体側に接した剥離層を含み、剥離層が支持体を介して照射される190nm~400nm、又は190nm~600nm、の光を吸収し変質するノボラック樹脂を含む上記積層体である。
【0029】
より具体的には支持体(ガラス基板)上の剥離層に再配線層(RDL)を形成し、再配
線層に複数個のチップを接続し、該チップを樹脂等で固定(モールディング)を行い、支持体から紫外線レーザーを照射し剥離層を光分解し、樹脂で固定されたチップと支持体とを分離した後に、樹脂で固定された複数個のチップを樹脂と共に数個又は単一のチップに切断する工程に用いることができる。
【0030】
即ち、支持体と再配線層を有し且つ樹脂で固定された複数のチップとの間に剥離可能に接着した中間層を有し、該チップを少数のチップに切断するための積層体であり、該中間層は少なくとも支持体側に接した剥離層を含み、剥離層が支持体を介して照射される190nm~400nm、又は190nm~600nmの光を吸収し変質するノボラック樹脂を含む上記積層体である。上記中間層は少なくとも支持体側に接した剥離層を含んでいるものであり、中間層はその他の層を含んでいても良い。中間層がその他の層を含まず剥離層のみの場合は剥離層が支持体と被加工物に接するものである。
【0031】
また、本発明は三次元実装においてウェハーの薄化のためにウェハー裏面の研磨に使用する事ができる。
【0032】
本発明は支持体とウェハーの回路面との間に剥離可能に接着した中間層を有しウェハーの裏面を加工するための積層体であり、中間層はウェハー側に接した接着層と支持体側に接した剥離層を含んでいる。
【0033】
接着層はヒドロシリル化反応により架橋硬化する成分(A)と、非架橋性のポリジメチルシロキサンを含む成分(B)とを含んでいて、剥離層は支持体を介して照射される190nm~400nm、又は190nm~600nmの光を吸収し変質するノボラック樹脂(C)を含むものである。支持体を介して照射される紫外光によりノボラック樹脂は変質を生じる。この変質は紫外光によるノボラック樹脂の分解であると考えられる。ノボラック樹脂の分解により剥離層は接着層との界面、支持体との界面、又は剥離層の内部で分離は生じるものである。本発明ではウェハーの裏面加工後に支持体からウェハーを分離する際に190nm~400nm、又は190nm~600nmの紫外光によるレーザー照射で容易に分離可能となるため、ウェハーに機械的な応力がかかりウェハーの反りや変形等のダメージを生じることがない。
【0034】
また、ウェハーの裏面を加工(研磨)後にウェハーと支持体を剥離し、ウェハーの回路面に残っている成分(A)と成分(B)を含む接着層は、成分(B)がウェハーとの剥離作用を有するためテープ等により容易に除去が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は支持体とウェハーの回路面との間に剥離可能に接着した中間層を有しウェハーの裏面を加工するための積層体であり、該中間層はウェハー側に接した接着層と支持体側に接した剥離層を含み、剥離層が支持体を介して照射される190nm~400nm、又は190nm~600nmの光を吸収し変質するノボラック樹脂を含む上記積層体である。
【0036】
剥離層の光透過率が190nm~400nm、又は190nm~600nmの範囲で1~85%、又は1~90%とすることができる。
【0037】
本発明で接着層は、接着剤によって形成される。接着剤は成分(A)と成分(B)とを含み、更にその他の添加物を含むことができる。
成分(A)が、SiOで表されるシロキサン単位(Q単位)、RSiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位)、RSiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)、及びRSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)からなる群
より選ばれるポリシロキサン(但しR乃至RはそれぞれSi-C結合又はSi-H結合によりケイ素原子に結合しているものである。)を含み、R乃至Rで示される1価化学基がそれぞれ炭素原子数1~10のアルキル基と炭素原子数2~10のアルケニル基を含むポリオルガノシロキサン(a1)と、R乃至Rで示される1価化学基がそれぞれ炭素原子数1~10のアルキル基と水素原子を含むポリオルガノシロキサン(a2)とを含むポリシロキサン(A1)と、白金族金属系触媒(A2)とを含むものである。
【0038】
ポリシロキサン(A1)はポリオルガノシロキサン(a1)とポリオルガノシロキサン(a2)を含む。ポリオルガノシロキサン(a1)が炭素原子数1~10のアルキル基と炭素原子数2~10のアルケニル基を含んでいて、ポリオルガノシロキサン(a2)が炭素原子数1~10のアルキル基と水素原子を含んでいる。アルケニル基とSi-H基が白金族金属系触媒(A2)によりヒドロシリル化反応によって架橋構造を形成し硬化する。
【0039】
ポリオルガノシロキサン(a1)はQ単位、M単位、D単位、T単位から選ばれるが、例えば(Q単位とM単位)と(D単位とM単位)との組み合わせ、(T単位とM単位)と(D単位とM単位)との組み合わせ、(Q単位とT単位とM単位)と(T単位とM単位)との組み合わせ、(T単位とM単位)の組み合わせ、(Q単位とM単位)の組み合わせによって形成することができる。
【0040】
ポリオルガノシロキサン(a2)はQ単位、M単位、D単位、T単位から選ばれるが、例えば(M単位とD単位)の組み合わせ、(Q単位とM単位)の組み合わせ、(Q単位とT単位とM単位)の組み合わせによって形成することができる。
【0041】
上記炭素原子数2~10のアルケニル基は、例えばエテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチル-1-エテニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-エチルエテニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-n-プロピルエテニル基、1-メチル-1-ブテニル基、1-メチル-2-ブテニル基、1-メチル-3-ブテニル基、2-エチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、2-メチル-3-ブテニル基、3-メチル-1-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-3-ブテニル基、1,1-ジメチル-2-プロペニル基、1-i-プロピルエテニル基、1,2-ジメチル-1-プロペニル基、1,2-ジメチル-2-プロペニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、1-メチル-1-ペンテニル基、1-メチル-2-ペンテニル基、1-メチル-3-ペンテニル基、1-メチル-4-ペンテニル基、1-n-ブチルエテニル基、2-メチル-1-ペンテニル基、2-メチル-2-ペンテニル基、2-メチル-3-ペンテニル基、2-メチル-4-ペンテニル基、2-n-プロピル-2-プロペニル基、3-メチル-1-ペンテニル基、3-メチル-2-ペンテニル基、3-メチル-3-ペンテニル基、3-メチル-4-ペンテニル基、3-エチル-3-ブテニル基、4-メチル-1-ペンテニル基、4-メチル-2-ペンテニル基、4-メチル-3-ペンテニル基、4-メチル-4-ペンテニル基、1,1-ジペンテニルメチル-2-ブテニル基、1,1-ジメチル-3-ブテニル基、1,2-ジメチル-1-ブテニル基、1,2-ジメチル-2-ブテニル基、1,2-ジメチル-3-ブテニル基、1-メチル-2-エチル-2-プロペニル基、1-s-ブチルエテニル基、1,3-ジメチル-1-ブテニル基、1,3-ジメチル-2-ブテニル基、1,3-ジメチル-3-ブテニル基、1-i-ブチルエテニル基、2,2-ジメチル-3-ブテニル基、2,3-ジメチル-1-ブテニル基、2,3-ジメチル-2-ブテニル基、2,3-ジメチル-3-ブテニル基、2-i-プロピル-2-プロペニル基、3,3-ジメチル-1-ブテニル基、1-エチル-1-ブテニル基、1-エチル-2-ブテニル基、1-エチル-3-ブテニル基、1-n-プロピル
-1-プロペニル基、1-n-プロピル-2-プロペニル基、2-エチル-1-ブテニル基、2-エチル-2-ブテニル基、2-エチル-3-ブテニル基、1,1,2-トリメチル-2-プロペニル基、1-t-ブチルエテニル基、1-メチル-1-エチル-2-プロペニル基、1-エチル-2-メチル-1-プロペニル基、1-エチル-2-メチル-2-プロペニル基、1-i-プロピル-1-プロペニル基及び1-i-プロピル-2-プロペニル基等が挙げられる。特に、エテニル基、即ちビニル基、2-プロペニル基、即ちアリル基を好ましく用いることができる。
【0042】
上記炭素原子数1~10のアルキル基は、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、n-ヘキシル基、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基及び1-エチル-2-メチル-n-プロピル基等が挙げられる。特にメチル基を好ましく用いることができる。
【0043】
ポリオルガノシロキサン(a1)は炭素原子数1~10のアルキル基と炭素原子数2~10のアルケニル基で構成され、炭素原子数1~10のアルキル基がメチル基であり、炭素原子数2~10のアルケニル基がエテニル基、即ちビニル基であって、アルケニル基がR乃至Rで表す全置換基中に0.1モル%~50.0モル%、好ましくは0.5モル%~30.0モル%とすることができ、残りのR乃至Rはアルキル基とすることができる。
【0044】
また、ポリオルガノシロキサン(a2)は炭素原子数1~10のアルキル基と水素原子で構成され、炭素原子数1~10のアルキル基がメチル基であり、水素原子はSi-Hの構造を形成する。水素原子、即ちSi-H基がR乃至Rで表す全置換基中に0.1モル%~50.0モル%、好ましくは10.0モル%~40.0モル%とすることができ、残りのR乃至Rはアルキル基とすることができる。
【0045】
ポリオルガノシロキサン(a1)とポリオルガノシロキサン(a2)は、アルケニル基とSi-H基で示される水素原子がモル比で、2.0:1.0好ましくは1.5:1.0の範囲に含有することができる。
【0046】
上記ポリオルガノシロキサン(a1)及びポリオルガノシロキサン(a2)は、それぞれ重量平均分子量が500~1000000、又は5000~50000の範囲で用いることができる。また、ポリオルガノシロキサン(a1)及びポリオルガノシロキサン(a2)は粘度として、10mPa・s~1000000mPa・s、又は10mPa・s~100000mPa・s、又は10mPa・s~10000mPa・sの範囲で用いることができる。これらの粘度はE型回転粘度計によって25℃で測定して求めることができる。
【0047】
成分(A)は白金族金属系触媒(A2)を含有する。白金系の金属触媒はアルケニル基とSi-H基とのヒドロシリル化付加反応を促進するための触媒であり、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と1価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒が用いられる。白金とオレフィン
類との錯体としては、例えばジビニルテトラメチルジシロキサンと白金との錯体が挙げられる。白金触媒の添加量はポリオルガノシロキサン(a1)及びポリオルガノシロキサン(a2)の合計量に対して白金金属として、1.0~500.0ppm、又は1.0~50.0ppmの範囲で添加することができる。
【0048】
成分(A)は更にヒドロシリル化反応の進行を抑える抑制剤(A3)としてアルキニルアルコールを添加することができる。抑制剤としては例えば、1-エチニル-1-シクロヘキサノール等が挙げられる。これら抑制剤はポリオルガノシロキサン(a1)及びポリオルガノシロキサン(a2)の合計量に対して500.0~100000.0ppm、又は1000.0~10000.0ppmの範囲で添加することができる。
【0049】
本発明の成分(B)に用いられるポリオルガノシロキサンは、RRSiO2/2(但しRはそれぞれSi-C結合によりケイ素原子に結合している。)で表されるシロキサン単位(D単位)を含み、Rは炭素原子数1~10のアルキル基であり、上述の例示を挙げることができる。好ましくはメチル基であり、ポリジメチルシロキサンを挙げることができる。
【0050】
成分(B)に用いられるポリシロキサンは、シロキサン単位(D単位)を含むが、Q単位、M単位、T単位を含んでいても良い。例えば、D単位のみからなる場合、D単位とQ単位の組み合わせの場合、D単位とM単位の組み合わせの場合、D単位とT単位の組み合わせの場合、D単位とQ単位とM単位の組み合わせの場合、D単位とM単位とT単位の組み合わせの場合、D単位とQ単位とM単位とT単位の組み合わせの場合等が挙げられる。
【0051】
成分(B)は1000mm/s~2000000mm/sの粘度を有するポリジメチルシロキサンとすることができる。
【0052】
また、成分(B)が10000mm/s~1000000mm/sの粘度を有するポリジメチルシロキサンとすることができる。成分(B)はポリジメチルシロキサンからなるジメチルシリコーンオイルである。上記粘度の値は動粘度で示され、センチストークス(cSt)=mm/sである。動粘度は動粘度計により測定することができる。また、粘度(mPa・s)を密度(g/cm)で割って求めることもできる。即ち、25℃で測定したE型回転粘度計による粘度と密度から求めることができる。動粘度(mm/s)=粘度(mPa・s)/密度(g/cm)、から算出することができる。
【0053】
本発明の接着剤は、接着剤中の成分(A)と成分(B)の割合は任意の割合で用いることができる。
【0054】
接着性においては、接着剤中の成分(A)と成分(B)の割合は任意の割合とすることが可能である。更に剥離性が良好であるためには、接着剤中の成分(A)と成分(B)の割合が質量%で80:20~20:80とすることができる。更に、剥離面をコントロールする場合には、接着剤中の成分(A)と成分(B)の割合が質量%で80:20~50:50にすることが好ましい。
【0055】
剥離層が支持体を介して照射される190nm~400nm、又は190nm~600nmの光を吸収し変質するノボラック樹脂とすることができる。
【0056】
上記剥離層は剥離層形成組成物を塗布して乾燥、硬化によって剥離層が形成される。
剥離層形成組成物はポリマー(C)と溶剤を含む。更に、架橋剤、酸触媒、界面活性剤を含むことができる。
【0057】
この組成物の固形分は0.1~70質量%、または0.1~60質量%である。固形分は剥離層形成組成物から溶剤を除いた全成分の含有割合である。固形分中に上記ポリマーを1~100質量%、または1~99.9質量%、または50~99.9質量%の割合で含有することができる。
【0058】
本発明に用いられるポリマーは、重量平均分子量が600~1000000、又は600~200000である。
【0059】
剥離層が(C1-1)単位構造、(C1-2)単位構造、(C1-3)単位構造、又はそれらの単位構造の組み合わせを含むポリマー(C)を含むものである。
【0060】
【化2】
【0061】
上記式中、(C1)は窒素原子を含む芳香族化合物に由来する基、(C2)は第2級炭素原子、第4級炭素原子、若しくは芳香族環を側鎖に有する第3級炭素原子を形成する基、(C3)は脂肪族多環化合物に由来する基、(C4)はフェノール、ビスフェノール、ナフトール、ビフェニル、ビフェノール、若しくはそれらの組み合わせに由来する基である。
【0062】
即ち、窒素原子を含む芳香族化合物(C1)と第2級炭素原子、第4級炭素原子、若しくは芳香族環を側鎖に有する第3級炭素原子(C2)との結合を有する単位構造、窒素原子を含む芳香族化合物(C1)と脂肪族多環化合物(C3)との結合を有する単位構造、フェノール、ビスフェノール、ナフトール、ビフェニル、ビフェノール、若しくはそれらの構造を有する化合物(C4)と第2級炭素原子、第4級炭素原子、若しくは芳香族環を側鎖に有する第3級炭素原子(C2)との結合を有する単位構造、又はそれらの単位構造の組み合わせを含むポリマー(C)を含むことができる。
【0063】
そして、剥離層が窒素原子を含む芳香族化合物(C1)と芳香族環を側鎖に有する第3級炭素原子(C2)との結合を有する単位構造、又は窒素原子を含む芳香族化合物(C1)と脂肪族多環化合物(C3)との結合を有する単位構造を含むポリマー(C)を含むことができる。
【0064】
剥離層を形成するための窒素原子を含む芳香族化合物(C1)がカルバゾール、又はフェニルナフチルアミンに由来するものとすることができる。
【0065】
剥離層を形成するための(C2)が1-ナフトアルデヒド、1-ピレンカルボキシアルデヒド、4-(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒド、又はアセトアルデヒドに由来するものとすることができ、(C3)がジシクロペンタジエンに由来するものとすることができる。
【0066】
剥離層を形成するための(C4)がフェノール、ビスフェノール、ナフトール、ビフェニル、若しくはビフェノールに由来するものとすることができる。
【0067】
ポリマー(C)は例えば下記式(C1-1)の単位構造の例として以下を例示すること
ができる。
【化3】
【0068】
式(C1-1-1)中、R及びRはそれぞれ水素原子、ハロゲン基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~40のアリール基、又はエーテル結合、ケトン結合、若しくはエステル結合を含んでいても良いそれらの組み合わせである。Rは水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~40のアリール基、又はエーテル結合、ケトン結合、若しくはエステル結合を含んでいても良いそれらの組み合わせである。Rは水素原子又はハロゲン基、ニトロ基、アミノ基又は水酸基で置換されていても良い炭素原子数6~40のアリール基であり、Rは水素原子、又はハロゲン基、ニトロ基、アミノ基、若しくは水酸基で置換されていても良い炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数6~40のアリール基である。n1及びn2はそれぞれ1~3の整数である。
【0069】
アルキル基、アルケニル基の例示は上述の例示を挙げることができる。
【0070】
上記炭素原子数6~40のアリール基としてはフェニル基、o-メチルフェニル基、m-メチルフェニル基、p-メチルフェニル基、o-クロルフェニル基、m-クロルフェニル基、p-クロルフェニル基、o-フルオロフェニル基、p-フルオロフェニル基、o-メトキシフェニル基、p-メトキシフェニル基、p-ニトロフェニル基、p-シアノフェニル基、α-ナフチル基、β-ナフチル基、o-ビフェニリル基、m-ビフェニリル基、p-ビフェニリル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、4-フェナントリル基及び9-フェナントリル基が挙げられる。
【0071】
式(C1-1-1)の具体的な例示として以下に示すことができる。
【化4】
【0072】
ポリマー(C)は例えば下記式(C1-1)の単位構造の例として以下を例示することができる。
【化5】
【0073】
式(C1-1-2)中、Ar及びArはそれぞれベンゼン環、又はナフタレン環を示し、R及びRはそれぞれ水素原子の置換基でありハロゲン基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~40のアリール基、及びそれらの組み合わせからなる群より選択され、かつ、該アルキル基、該アルケニル基、及び該アリール基は、エーテル結合、ケトン結合、若しくはエステル結合を含んでいても良い有機基を表し、
【0074】
は水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~40のアリール基、及びそれらの組み合わせからなる群より選択され、かつ、該アルキル基、該アルケニル基、及びアリール基は、エーテル結合、ケトン結合、若しくはエステル結合を含んでいても良い有機基を表し、
【0075】
は炭素原子数6~40のアリール基及び複素環基からなる群より選択され、かつ、該アリール基、及び該複素環基は、ハロゲン基、ニトロ基、アミノ基、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数6~40のアリール基、ホルミル基、カルボキシル基、又は水酸基で置換されていても良い有機基を表し、
【0076】
は水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数6~40のアリール基、及び複素環基からなる群より選択され、かつ、該アルキル基、該アリール基、及び該複素環基は、ハロゲン基、ニトロ基、アミノ基、若しくは水酸基で置換されていても良い有機基であり、そしてRとRは互いに環を形成していても良い。n1及びn2はそれぞれ1~3の整数である。
【0077】
アルキル基、アルケニル基、アリール基等は上述の例示を挙げることができる。
【0078】
式(C1-1-2)の具体的な例示として以下に示すことができる。
【化6】
【0079】
ポリマー(C)は例えば下記式(C1-2)の単位構造の例として以下を例示することができる。
【化7】
【0080】
上記式中、R~Rは水素原子の置換基であり、それぞれハロゲン基、ニトロ基、アミノ基若しくは水酸基、又はそれらの基で置換されていても良い炭素原子数1~10のアルキル基若しくは炭素原子数6~40のアリール基であり、n1、n2、n5、及びn6はそれぞれ0~3の整数であり、n3、n4、n7、及びn8はそれぞれ0~4の整数である。
【0081】
これらの具体的な例示として以下に挙げることができる。
【化8】
【0082】
ポリマー(C)は例えば下記式(C1-3)の単位構造の例として以下を例示することができる。
【化9】
【0083】
本発明に用いられるカルバゾール類としては、例えばカルバゾール、1,3,6,8-テトラニトロカルバゾール、3,6-ジアミノカルバゾール、3,6-ジブロモ-9-エチルカルバゾール、3,6-ジブロモ-9-フェニルカルバゾール、3,6-ジブロモカルバゾール、3,6-ジクロロカルバゾール、3-アミノ-9-エチルカルバゾール、3-ブロモ-9-エチルカルバゾール、4,4’ビス(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル、4-グリシジルカルバゾール、4-ヒドロキシカルバゾール、9-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イルメチル)-9H-カルバゾール、9-アセチル-3,6-ジヨードカルバゾール、9-ベンゾイルカルバゾール、9-ベンゾイルカルバゾール-6-ジカルボキシアルデヒド、9-ベンジルカルバゾール-3-カルボキシアルデヒド、9-メチルカルバゾール、9-フェニルカルバゾール、9-ビニルカルバゾール、カルバゾールカリウム、カルバゾール-N-カルボニルクロリド、N-エチルカルバゾール-3-カルボキシアルデヒド、N-((9-エチルカルバゾール-3-イル)メチレン)-2-メチル-1-インドリニルアミン等が挙げられ、これらを単独で用いることも2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0084】
本発明のポリマーの製造に用いられるアルデヒド類としてはホルムアルデヒド、パラホ
ルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、カプロンアルデヒド、2-メチルブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ウンデカンアルデヒド、7-メトキシ-3、7-ジメチルオクチルアルデヒド、シクロヘキサンアルデヒド、3-メチル-2-ブチルアルデヒド、グリオキザール、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジピンアルデヒド等の飽和脂肪族アルデヒド類、アクロレイン、メタクロレイン等の不飽和脂肪族アルデヒド類、フルフラール、ピリジンアルデヒド等のヘテロ環式アルデヒド類、ベンズアルデヒド、ナフチルアルデヒド、アントリルアルデヒド、フェナントリルアルデヒド、サリチルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、3-フェニルプロピオンアルデヒド、トリルアルデヒド、(N,N-ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド、アセトキシベンズアルデヒド等の芳香族アルデヒド類等が挙げられる。特に芳香族アルデヒドを好ましく用いることができる。
【0085】
また、本発明のポリマーの製造に用いられるケトン類としてはジアリールケトン類であり、例えばジフェニルケトン、フェニルナフチルケトン、ジナフチルケトン、フェニルトリルケトン、ジトリルケトン等が挙げられる。
【0086】
本発明に用いられるポリマーは、カルバゾール類とアルデヒド類又はケトン類とを縮合して得られるノボラック樹脂である。この縮合反応ではカルバゾール類のフェニル基1当量に対して、アルデヒド類又はケトン類を0.1~10当量の割合で用いることができる。
【0087】
上記縮合反応で用いられる酸触媒としては、例えば硫酸、リン酸、過塩素酸等の鉱酸類、p-トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸一水和物等の有機スルホン酸類、蟻酸、シュウ酸等のカルボン酸類が使用される。酸触媒の使用量は、使用する酸類の種類によって種々選択される。通常、カルバゾール類、又はカルバゾール類とトリフェニルアミン類の合計の100質量部に対して、0.001~10000質量部、好ましくは、0.01~1000質量部、より好ましくは0.1~100質量部である。
【0088】
上記の縮合反応は無溶剤でも行われるが、通常溶剤を用いて行われる。溶剤としては反応を阻害しないものであれば全て使用することができる。例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類が挙げられる。また、使用する酸触媒が例えば蟻酸のような液状のものであるならば溶剤としての役割を兼ねさせることもできる。
【0089】
縮合時の反応温度は通常40℃~200℃である。反応時間は反応温度によって種々選択されるが、通常30分~50時間程度である。
【0090】
以上のようにして得られる重合体の重量平均分子量Mwは、通常600~1000000、又は600~200000である。
【0091】
上記ポリマーは他のポリマーを全ポリマー中に30質量%以内で混合して用いることができる。
【0092】
それらポリマーとしてはポリアクリル酸エステル化合物、ポリメタクリル酸エステル化合物、ポリアクリルアミド化合物、ポリメタクリルアミド化合物、ポリビニル化合物、ポリスチレン化合物、ポリマレイミド化合物、ポリマレイン酸無水物、及びポリアクリロニトリル化合物が挙げられる。
【0093】
架橋剤成分を含むことができる。その架橋剤としては、メラミン系、置換尿素系、またはそれらのポリマー系等が挙げられる。好ましくは、少なくとも2個の架橋形成置換基を
有する架橋剤であり、メトキシメチル化グリコールウリル、ブトキシメチル化グリコールウリル、メトキシメチル化メラミン、ブトキシメチル化メラミン、メトキシメチル化ベンゾグワナミン、ブトキシメチル化ベンゾグワナミン、メトキシメチル化尿素、ブトキシメチル化尿素、メトキシメチル化チオ尿素、またはブトキシメチル化チオ尿素等の化合物である。また、これらの化合物の縮合体も使用することができる。
【0094】
また、上記架橋剤としては耐熱性の高い架橋剤を用いることができる。耐熱性の高い架橋剤としては分子内に芳香族環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環)を有する架橋形成置換基を含有する化合物を好ましく用いることができる。
【0095】
この化合物は下記式(4)の部分構造を有する化合物や、下記式(5)の繰り返し単位を有するポリマー又はオリゴマーが挙げられる。
【0096】
式(4)中、R及びR10はそれぞれ水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基、又は炭素原子数6~20のアリール基であり、n6は1~4の整数であり、n7は1~(5-n6)の整数であり、(n6+n7)は2~5の整数を示す。
【0097】
式(5)中、R11は水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基であり、R12は炭素原子数1~10のアルキル基であり、n8は1~4の整数であり、n9は0~(4-n8)であり、(n8+n9)は1~4の整数を示す。オリゴマー及びポリマーは繰り返し単位構造の数が2~100、又は2~50の範囲で用いることができる。
【0098】
これらのアルキル基及びアリール基は、上記アルキル基及びアリール基を例示することができる。
【化10】
【0099】
式(4)、式(5)の化合物、ポリマー、オリゴマーは以下に例示される。
【化11】
【化12】
【化13】
【0100】
上記化合物は旭有機材工業(株)、本州化学工業(株)の製品として入手することができる。例えば上記架橋剤の中で式(4-21)の化合物は旭有機材工業(株)、商品名TM-BIP-Aとして入手することができる。
【0101】
架橋剤の添加量は、使用する塗布溶剤、使用する下地基板、要求される溶液粘度、要求される膜形状などにより変動するが、全固形分に対して0.001~80質量%、好ましくは 0.01~50質量%、さらに好ましくは0.05~40質量%である。これら架橋剤は自己縮合による架橋反応を起こすこともあるが、本発明の上記のポリマー中に架橋性置換基が存在する場合は、それらの架橋性置換基と架橋反応を起こすことができる。
【0102】
本発明では上記架橋反応を促進するための酸触媒として、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ピリジニウムp-トルエンスルホン酸、サリチル酸、スルホサリチル酸、クエン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、ナフタレンカルボン酸等の酸性化合物又は/及び2,4,4,6-テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイントシレート、2-ニトロベンジルトシレート、その他有機スルホン酸アルキルエステル等の熱酸発生剤を配合する事が出来る。配合量は全固形分に対して、0.0001~20質量%、好ましくは0.0005~10質量%、好ましくは0.01~3質量%である。
【0103】
界面活性剤を配合することができる。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレン
ラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフエノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフエノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロツクコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、エフトツプEF301、EF303、EF352((株)トーケムプロダクツ製、商品名)、メガファックF171、F173、R-30、R-30N(DIC(株)製、商品名)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム(株)製、商品名)、アサヒガードAG710、サーフロンSー382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子(株)製、商品名)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)等を挙げることができる。これらの界面活性剤の配合量は、本発明に用いる剥離層形成組成物の全固形分に対して通常2.0質量%以下、好ましくは1.0質量%以下である。これらの界面活性剤は単独で添加してもよいし、また2種以上の組合せで添加することもできる。
【0104】
上記のポリマー及び架橋剤成分、架橋触媒等を溶解させる溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2ーヒドロキシプロピオン酸エチル、2ーヒドロキシー2ーメチルプロピオン酸エチル、エトシキ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2ーヒドロキシー3ーメチルブタン酸メチル、3ーメトキシプロピオン酸メチル、3ーメトキシプロピオン酸エチル、3ーエトキシプロピオン酸エチル、3ーエトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等を用いることができる。これらの有機溶剤は単独で、または2種以上の組合せで使用される。
【0105】
支持体に剥離層形成組成物をスピンコーター等で塗布し、塗布後ベーキングする条件としては80~350℃で0.5~120分間である。
【0106】
本発明ではウェハーの回路面に上記接着層を形成するための接着剤を塗布し接着層を形成し、支持体上に上記剥離層を形成するための剥離層形成組成物を塗布し剥離層を形成し、接着層と剥離層が接するように貼り合わせ120℃~300℃で加熱して接合することによって積層体を製造することができる。
【0107】
ウェハーとしては例えば直径300mm、厚さ770μm程度のシリコンウェハーが挙げられる。
【0108】
支持体(キャリア)としては例えば直径300mm、厚さ700mm程度のガラスウェハーやシリコンウェハーを挙げることができる。
【0109】
接着剤をスピンコーターによりウェハーの裏面を下にして回路面に接着剤を付着させ接着層を形成し、剥離層を形成した支持体は接着剤を挟むように貼り合わせ、120~260℃の温度で加熱して接着剤を硬化させ積層体を形成することができる。加熱温度は120℃程度から接着剤の硬化が始まり、260℃以上の温度にすることも可能であるが、ウェハーの回路面(デバイス面)の耐熱性の観点から260℃以下が好ましく、例えば150℃~230℃程度、又は190℃~200℃程度とすることができる。加熱時間は例えば、1分間~30分間、接着剤の硬化の進行度の観点から3分以上、スループットの観点から10分間以下であることが好ましい。
【0110】
また、接着剤は粘度調整のため溶剤を添加することができる。その溶剤は例えば、イソパラフィン、p-メンタン、ヘキサン、ウンデカン等の炭化水素系や、トルエン、メシチレン、p-シメン等の芳香族炭化水素系、酢酸ブチル等のエステル系、クロロホルム等のハロゲン系溶媒が挙げられる。その添加量は接着剤に対して任意の割合で含有することができる。
【0111】
加熱はホットプレートを用いて、ウェハー側、支持体側のいずれか一方から加熱することができる。
【0112】
剥離層と接着層を挟むように形成する支持体とウェハーは、これら物体を減圧下(例えば、10Pa~10000Paの減圧状態)に合体させ積層体を形成させることができる。支持体とウェハーを合体させるときは減圧下に下面のみ加熱して合体させることができ、加熱は例えば、120℃~260℃で行うこともできる。この加熱により接着層が硬化する。
【0113】
上記の接着剤を塗布して形成された接着層の膜厚は5~500μm、又は10~200μm、又は20~150μm、又は30~120μm、又は30~70μmとすることができる。
【0114】
また、剥離層形成組成物を塗布して形成された剥離層の厚さは5~10,000nm、又は10~5,000nm、又は50~1,000nm、又は100~500nmとすることができる。
【0115】
ウェハーの回路面の反対側の加工とは、研磨によるウェハーの薄化が挙げられる。その後、シリコン貫通電極(TSV)等の形成を行い、その後に支持体から薄化ウェハーを剥離してウェハーの積層体を形成し、3次元実装化される。また、それに前後してウェハー裏面電極等の形成も行われる。ウェハーの薄化とTSVプロセスには支持体に接着された状態で250~350℃の熱が付加されるが、本発明に用いられる仮接着剤としての積層体はそれらの耐熱性を有している。
【0116】
例えば直径300mm、厚さ770μm程度のウェハーは、回路面とは反対の裏面を研磨して、厚さ80μm~4μm程度まで薄化することができる。
【0117】
接着し、裏面の加工(研磨)を行った後に、支持体とウェハーを剥離する。剥離方法は支持体側からのレーザー照射による剥離が行われる。レーザー光の波長は190nm~400nm、又は190nm~600nmの波長(例えば、308nm、355nm、532nm)の紫外光を用いて行われる。
【0118】
剥離は、パルスレーザーの加工エネルギー密度を50~500mJ/cm程度とすることで行うことができる。
【0119】
上記剥離後は、支持体側には剥離層はほとんど付着していないが、支持体を溶剤等のクリーナーで洗浄することはできる。クリーナーは例えばフッ化第4級アンモニウム等のフッ化物塩と、ジアザビシクロウンデセン等の有機塩基と、有機溶剤とを含有するクリーナー液を用いることができる。
【0120】
ウェハー側の接着剤の分離には溶剤による分離や、テープによる剥離法等が用いられる。ウェハーと接着剤の分離は、例えばウェハー上の接着剤表面に市販のテープを付着させ、ウェハー面に対して60度~180度の角度で引きはがしウェハーと接着剤を分離するテープピーリング法を用いることができる。
【実施例
【0121】
(接着層を形成するための接着剤Aの作製)
自転公転ミキサー((株)シンキー製、ARE―500)専用600mL撹拌容器にポリシロキサン(a1)とビニル基含有のMQ樹脂(ワッカーケミ(株)製)95g、希釈溶媒としてp-メンタン(日本テルペン化学(株)製)93.4gおよび1,1-ジフェニル-2-プロピン-1-オール(東京化成工業(株)製)0.41gを添加し、自転公転ミキサー((株)シンキー製、ARE―500)で5分間撹拌した。得られた混合物に対して、ポリシロキサン(a2)として粘度100mPa・sのSiH基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ(株)製)、ポリシロキサン(a2)として粘度200mPa・sのビニル基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ(株)製)29.5g、成分(B)として粘度1000000mm/sのポリオルガノシロキサン(ワッカーケミ社製、商品名AK1000000)、(A3)として1-エチニルシクロヘキサノール(ワッカーケミ(株)製)0.41gを添加し、再度、自転公転ミキサー((株)シンキー製、ARE―500)で5分間撹拌した。別途、スクリュー管50mL(アズワン)に(A2)として白金触媒(ワッカーケミ(株)製)0.20gとポリシロキサン(a2)として粘度1000mPa・sのビニル基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ(株)製)17.7gを自転公転ミキサー((株)シンキー製、ARE―500)で5分間撹拌して得られた混合物から14.9gを上記混合物に添加し、自転公転ミキサー((株)シンキー製、ARE―500)で5分間撹拌した。最後にナイロンフィルター300メッシュでろ過し、接着剤(A)を得た。接着剤の粘度を回転粘度計(東機産業(株)社製 TVE-22H)を用いて測定したところ、2400mPa・sであった。
【0122】
(剥離層に含まれるポリマーの合成)
(合成例1)
窒素下、100mL四口フラスコにカルバゾール(東京化成工業(株)製)8g、1-ナフトアルデヒド(東京化成工業(株)製)7.55g、パラトルエンスルホン酸一水和物(関東化学(株)製)0.95gを加え、1,4-ジオキサン(関東化学(株)製)8g、を加え、撹拌し、100℃まで昇温し溶解させ重合を開始した。4時間後60℃まで放冷後、クロロホルム(関東化学(株)製)40gを加え希釈し、メタノール200gへ再沈殿させた。得られた沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で60℃、10時間さらに120℃、24時間乾燥し、目的とするポリマー(式(C1-1-1-1)の単位構造を有するポリマー)を得た。以下PCzNAと略す)10.03gを得た。
PCzNAのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは2600であった。
【0123】
(合成例2)
窒素下、300mL四口フラスコに2,2’-ビフェノール(東京化成工業(株)製)15.00g、1-ピレンカルボキシアルデヒド(アルドリッチ社製)18.55g及びパラトルエンスルホン酸一水和物(東京化成工業(株)製)33.210gを加え、さら
にプロピレングリコールモノメチルエーテル(関東化学(株)製)44.93gを加え、撹拌し、120℃まで昇温して溶解させ、重合を開始した。24時間後室温まで放冷し、メタノール1800g中へ再沈殿させた。得られた沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で50℃、10時間乾燥し、目的とするポリマー(式(C1-3-1-4)の単位構造を有するポリマーを得た。以下、PBPPCAと略称する。)19.08gを得た。PBPPCAによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは2200であった。
【0124】
(合成例3)
カルバゾール(東京化成工業(株)製)9.00gと1,5-ジヒドロキシナフタレン(東京化成工業(株)製)2.16g、1-ピレンカルボキシアルデヒド(アルドリッチ製)15.63g、p-トルエンスルホン酸一水和物(東京化成工業(株)製)0.54gをパラキシレン40.98gに入れた後、窒素気流下約5時間還流撹拌した。反応終了後、テトラヒドロフラン66.15gで希釈した。反応溶液を冷却後、メタノール/28%アンモニア水(700g/7g)混合溶液中に滴下し、再沈殿させた。得られた沈殿物を吸引ろ過し、得られた粉末を85℃で一晩減圧乾燥した。その後目的とするポリマー(式(C1-1-1-1)の単位構造と式(C1-3-1-5)の単位構造を有するポリマーを得た。以下、PCzNPと略称する)で表されるポリマー21.41gを得た。得られたポリマーの重量平均分子量はポリスチレン換算で5900であった。
【0125】
(合成例4)
窒素下、フラスコにカルバゾール(東京化成工業(株)製)13.0g、ジシクロペンタジエン(東京化成工業(株)製)10.3gとトルエンを加え、トリフルオロメタンスルホン酸(東京化成工業(株)製)0.12gを加えて撹拌し、120℃まで昇温し溶解させ重合を開始した。21時間後室温まで放冷後、クロロホルム(関東化学(株)製)30gを加え希釈し、不溶物をろ過で取り除いた後にメタノール(関東化学(株)製)1500gへ再沈殿させた。得られた沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で60℃、20時間乾燥し、目的とするポリマー(式(C1-2-1-1)の単位構造を有するポリマーを得た。以下、PCzHDCと略称する)11.6gを得た。
得られたポリマーのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは2000であった。
【0126】
(合成例5)
1-フェニルナフチルアミン56.02g、1-ピレンカルボキシアルデヒド(丸善化学工業(株)製)50.00g、4-(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒド6.67g、メタンスルホン酸2.46gに1,4-ジオキサン86.36g、トルエン86.36gを加え、窒素雰囲気下、18時間還流撹拌した。反応終了後、テトラヒドロフラン96gで希釈し、希釈液をメタノール中に滴下させることで沈殿物を得た。得られた沈殿物をろ過し、メタノールで洗浄し、60℃で減圧乾燥することで、ノボラック樹脂72.12gを得た(式(C1-1-2-1)の単位構造と式(C1-1-2-2)の単位構造を有するポリマーを得た。以下、PPNAPCA-Fと略称する)。GPCより標準ポリスチレン換算で測定される重量平均分子量は1100であった。
【0127】
(剥離層形成組成物の調整)
(剥離層形成組成物1)
市販のクレゾールノボラック樹脂20g(式(C1-3-1-1)、群栄化学社)に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート80gに溶解させ溶液とした。その後、孔径0.2μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、レーザーデボンド(レーザー照射による支持体とウェハーの剥離)に用いる剥離層形成組成物1の溶液を調製した。
【0128】
(剥離層形成組成物2)
市販のビフェニルノボラック樹脂30g(式(C1-3-1-3)、日本化薬社製)に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート331gに溶解させ溶液とした。その後、孔径0.2μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、レーザーデボンドに用いる剥離層形成組成物2の溶液を調製した。
【0129】
(剥離層形成組成物3)
市販のナフトールノボラック樹脂10g(式(C1-3-1-2)、旭有機材(株)社)に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート88gに溶解させ溶液とした。その後孔径0.2μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、レーザーデボンドに用いる剥離層形成組成物3の溶液を調製した。
【0130】
(剥離層形成組成物4)
合成例2(PBPPCA)で得られたポリマー33gをシクロヘキサノン477gに溶解させ、孔径0.2μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、レーザーデボンドに用いる剥離層形成組成物4の溶液を調製した。
【0131】
(剥離層形成組成物5)
合成例1(PCzNA)で得られたポリマー60gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート849gに溶解させ、孔径0.2μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、レーザーデボンドに用いる剥離層形成組成物5の溶液を調製した。
【0132】
(剥離層形成組成物6)
合成例1(PCzNA)で得られたポリマー9.2gに、架橋剤としてテトラメトキシメチルグリコールウリル0.4g、酸触媒としてピリジニウムパラトルエンスルホネート0.04g、界面活性剤としてR-30N(大日本インキ化学(株)製)3mgを混合し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート15.3g、プロピレングリコールモノメチルエーテル7.2g、シクロヘキサノン7.2gに溶解させ溶液とした。その後、孔径0.2μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、レーザーデボンドに用いる剥離層形成組成物6の溶液を調製した。
【0133】
(剥離層形成組成物7)
合成例3(PCzNP)で得た樹脂2.0gに、界面活性剤としてR-30N(大日本インキ化学(株)製)を0.006g混合し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート3.97g、プロピレングリコールモノメチルエーテル2.16g、シクロヘキサノン18.84に溶解させ溶液とした。その後、孔径0.2μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、レーザーデボンドに用いる剥離層形成組成物7の溶液を調製した。
【0134】
(剥離層形成組成物8)
上記合成例4(PCzHDC)で得た高分子化合物1.0gに、架橋剤としてテトラメトキシメチルグリコールウリル0.2g、酸触媒としてピリジニウムパラトルエンスルホネート0.02g、界面活性剤としてR-30N(大日本インキ化学(株)製、商品名)0.003g、プロピレングリコールモノメチルエーテル2.3g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート4.6g、シクロヘキサノン16.3gを混合して溶液とした。その後、孔径0.2μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、レーザーデボンドに用いる剥離層形成組成物8の溶液を調製した。
【0135】
(剥離層形成組成物9)
合成例5(PPNAPCA-F)で得られた樹脂60gをプロピレングリコールモノメ
チルエーテルアセテート849gに溶解させ、孔径0.2μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、レーザーデボンドに用いる剥離層形成組成物9の溶液を調製した。
【0136】
(剥離層形成組成物10)
合成例5(PPNAPCA-F)で得た樹脂20gに、架橋剤としてTMOM-BP(本州化学工業(株)製、商品名)4.0g、酸触媒としてピリジニウムパラトルエンスルホネート0.60g、界面活性剤としてR-30N(大日本インキ化学(株)製、商品名)0.06gを混合し、プロピレングリコールモノメチルエーテル100.8g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100.8gに溶解させ溶液とした。その後、孔径0.2μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、レーザーデボンドに用いる剥離層形成組成物10の溶液を調製した。
【0137】
(比較用の剥離層形成組成物1)
比較例として市販のポリスチレン3g(シグマアルドリッチ社)に、シクロヘキサノン97gに溶解させ溶液とした。その後、孔径0.2μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、比較例の用剥離層形成組成物1の溶液を調製した。
【0138】
(実施例1) 剥離層の透過率測定
石英基板上にスピンコーターで各剥離層形成組成物を塗布し、ホットプレート上で250℃の温度で1分間加熱し、各剥離層(膜厚0.2μm)を形成した。その後、レーザーデボンド用の剥離層として適用可能かを判断するために紫外可視分光光度計((株)島津製作所製、UV2550)を用いて波長308nmおよび355nmの光における透過率を測定した。結果を表1、表2に示した。
【0139】
〔表1〕
表1 波長308nmの光における透過率測定
―――――――――――――――――――――――
308nmにおける透過率[%]
剥離層(1) 73.9
剥離層(2) 57.3
剥離層(3) 10.0
剥離層(4) 16.6
剥離層(5) 3.4
剥離層(6) 6.3
剥離層(7) 8.7
剥離層(8) 31.0
剥離層(9) 13.4
剥離層(10) 15.3
比較剥離層(1) 96.4
―――――――――――――――――――――――
【0140】
透過率測定の結果では、剥離層(1)、(2)では、剥離層としては透過率が高めであるが、剥離層(3)~(10)においては、透過率は低く良好な結果が得られた。比較剥離層例(1)の透過率は非常に高い数値を示した。
続いて、355nmの光における透過率を表2に示す。
【0141】
〔表2〕
表2 波長355nmの光における透過率測定
―――――――――――――――――――――――
355nmにおける透過率[%]
剥離層(1) 87.5
剥離層(2) 79.5
剥離層(3) 25.3
剥離層(4) 2.8
剥離層(5) 68.2
剥離層(6) 69.2
剥離層(7) 2.2
剥離層(8) 72.1
剥離層(9) 2.0
剥離層(10) 5.2
比較剥離層(1) 99.2
―――――――――――――――――――――――
【0142】
透過率測定の結果では、剥離層(1)、(2)、(5)、(6)、(8)では透過率は高めであるが、剥離層(4)、(7)、(9)、(10)においては、透過率は低く良好な結果が得られた。比較剥離層例(1)の透過率は非常に高い数値を示した。
【0143】
(実施例2) 308nmレーザー照射試験 最適照射量の確認
キャリア側のウェハー(支持体)として100mmガラスウェハー(EAGLE-XG、コーニング社製、厚さ500μm)に剥離層形成組成物(1)~(8)、および比較剥離層形成組成物(1)をスピンコーターで塗布し、ホットプレート上で250℃の温度で1分間加熱し、剥離層(1)~(8)、比較剥離層(1)を形成した。
【0144】
デバイス側のウェハーとして100mmシリコンウェハー(厚さ:500μm)にスピンコーターで接着剤Aを塗布し、120℃で1分間加熱したのち接着層Aを形成し、予め作製しておいたレーザー剥離層付きのガラスウェハー(キャリア側のウェハー)を、剥離層および接着層Aを挟むように真空貼り合わせ装置(ズースマイクロテック(株)製、マニュアルボンダー)内で貼り合わせ、積層体を作製した。その後、ホットプレート上でデバイス側ウェハーを下にして200℃で10分間加熱処理を行い、接着層Aを硬化させた。得られた積層体にレーザー照射装置(丸文(株)製、M-3T)を使って、ガラスウェハー側からレーザーを照射し、出力80~400mJ/cmの範囲にて剥離が生じる最低のDoseを最適照射量とした。結果を表3に示した。
【0145】
〔表3〕
表3 308nmレーザー照射試験
―――――――――――――――――――――――――――
最適照射量[mJ/cm
剥離層(1) 360
剥離層(2) 320
剥離層(3) 160
剥離層(4) 200
剥離層(5) 160
剥離層(6) 140
剥離層(7) 120
剥離層(8) 160
比較剥離層(1) 剥離せず (400以上)
―――――――――――――――――――――――――――
【0146】
透過率の低い剥離層(3)~(8)を用いた積層体において低い照射量にて剥離が確認
された。剥離層(1)、(2)を用いた積層体においては高い照射量が必要ではあるものの、剥離の発生は確認された。
【0147】
(実施例3) 308nmレーザーデボンド試験
キャリア側のウェハー(支持体)として100mmガラスウェハー(コーニング社製、EAGLE-XG、厚さ500μm)に剥離層形成組成物(1)~(8)、および比較剥離層形成組成物(1)をスピンコーターで塗布し、ホットプレート上で250℃の温度で1分間加熱し、剥離層(1)~(8)、及び比較剥離層(1)を形成した。
【0148】
デバイス側のウェハーとして100mmシリコンウェハー(厚さ:500μm)にスピンコーターで接着剤Aを塗布し、120℃で1分間加熱したのち接着層Aを形成し、予め作製しておいたレーザー剥離層付きのガラスウェハー(キャリア側のウェハー)を、剥離層および接着層Aを挟むように真空貼り合わせ装置(ズースマイクロテック(株)製、マニュアルボンダー)内で貼り合わせ、積層体を作製した。その後、ホットプレート上でデバイス側ウェハーを下にして200℃で10分間加熱処理を行い、接着層Aを硬化させた。得られた積層体にレーザー照射装置(丸文(株)製、M-3T)を使用し、ガラスウェハー側から308nmレーザーをウェハーの全面に照射し、ガラスウェハーが剥離可能かを確認した。この際、レーザーの出力は表3で求めた条件を使用し、レーザーは前後左右にオーバーラップしない様に照射した。レーザー照射後、容易に剥離が可能であった場合を「○」、剥離出来なかった場合を「×」表記した。結果を表4に示す。
【0149】
〔表4〕
表4 308nmレーザーデボンド試験
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
最適照射量[mJ/cm] 剥離性
剥離層(1) 360 ○
剥離層(2) 320 ○
剥離層(3) 160 ○
剥離層(4) 200 ○
剥離層(5) 160 ○
剥離層(6) 140 ○
剥離層(7) 120 ○
剥離層(8) 160 ○
比較剥離層(1) 400 ×
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0150】
剥離層(1)~(8)を用いた積層体の場合は、レーザーを照射後、ガラスウェハー(キャリア側)を容易に剥離できることを確認した。一方、比較剥離層(1)を用いた積層体は、容易に剥離することができなかった。
【0151】
(実施例4) (シリコンウェハーに剥離層を形成し308nmレーザー照射による発熱の確認1)
100mmシリコンウェハー(厚さ:500μm)に剥離性が良好であった剥離層形成組成物(5)~(8)をスピンコーターで塗布し、ホットプレート上で250℃の温度で1分間加熱し、剥離層(5)~(8)を形成した。レーザー照射時に剥離層の発熱の有無を確認するため、剥離層を形成したシリコンウェハーの裏面には、サーモラベル(Wahl社製、商品名:テンプ・プレート76℃から260℃対応、最低検知温度76℃)を貼り付けた。その後、剥離層を形成した側からレーザー照射装置(丸文(株)製、M-3T)を使って、レーザーを照射し、サーモラベルで発熱が検知されたかどうかを確認した。この際、レーザーの出力は表3で求めた条件を適用した。
またサーモラベル以外の手法でレーザー照射後に発熱があったかどうかを確認するために、赤外放射温度計((株)テストー製)を使ってレーザー照射直後の剥離層の温度を測定した。なお、レーザー照射前の剥離層の温度は、24℃付近であった。結果を表5に示した。
【0152】
〔表5〕
表5 308nmレーザー照射による発熱の有無の確認検討1
―――――――――――――――――――――――――――――――――
サーモラベル 赤外線温度計
剥離層(5) 発熱は検知されず 24.7℃
剥離層(6) 発熱は検知されず 23.5℃
剥離層(7) 発熱は検知されず 23.5℃
剥離層(8) 発熱は検知されず 23.8℃
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0153】
308nmレーザー照射後にサーモラベルを確認したところ、発熱は検知されなかった、すなわち剥離層の温度上昇は76℃未満であることが確認された。一方で、308nmレーザー照射後に赤外線温度計による確認を行ったところ、温度上昇は全く見られなかったことからレーザー照射による発熱はないと判断した。
【0154】
(実施例5) (ガラスウェハーに剥離層を形成し308nmレーザー照射による発熱の確認2)
ガラスウェハーに剥離性が良好であったレーザー剥離層形成組成物(5)~(8)をスピンコーターで塗布し、ホットプレート上で250℃の温度で1分間加熱し、剥離層(5)~(8)を形成した。レーザー照射時の発熱の有無を確認するため、形成した剥離層には、直接サーモラベル(Wahl社製、商品名:テンプ・プレート76℃から260℃対応、最低検知温度76℃)を貼り付けた。その後、ガラスウェハー側からレーザー照射装置(丸文(株)製、M-3T)を使って、レーザーを照射し、サーモラベルで発熱が検知されたかどうかを確認した。この際、レーザーの出力は表3で求めた条件を適用した。
【0155】
またサーモラベル以外の手法でレーザー照射後に発熱があったかどうかを確認するために、接触式温度計として熱電対温度計(安立計器(株)製、商品名:ハンディ温度計)を使ってレーザー照射直後のガラスウェハーの温度を測定、さらに非接触式温度計として赤外放射温度計((株)テストー製)を使ってレーザー照射直後の剥離層の温度を測定した。なお、レーザー照射前のウェハーの温度は、熱電対式、赤外線式ともに24℃付近であった。結果を表6に示した。
【0156】
〔表6〕
表6 308nmレーザー照射による発熱の有無の確認検討2
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
サーモラベル 熱電対温度計 赤外線温度計
剥離層(5) 発熱は検知されず 24.2℃ 24.1℃
剥離層(6) 発熱は検知されず 24.2℃ 24.1℃
剥離層(7) 発熱は検知されず 24.2℃ 24.4℃
剥離層(8) 発熱は検知されず 24.4℃ 24.4℃
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0157】
レーザー照射後にサーモラベルを確認したところ、発熱は検知されなかった、すなわち剥離層の温度上昇は76℃未満であることが確認された。一方で、レーザー照射後に直ちに赤外線温度計および熱電対式温度計による確認を行ったところ、いずれの場合も温度上
昇は全く確認されなかった。以上のことから、308nmレーザー照射による発熱はないと判断した。
【0158】
(実施例6) (355nmレーザー照射試験 最適照射量の確認)
キャリア側のウェハー(支持体)として100mmガラスウェハー(EAGLE-XG、コーニング社製、厚さ500μm)に剥離層形成組成物(1)~(8)、および比較剥離層形成組成物(1)をスピンコーターで塗布し、ホットプレート上で250℃の温度で1分間加熱し、剥離層(1)~(8)、及び比較剥離層(1)を形成した。
デバイス側のウェハーとして100mmシリコンウェハー(厚さ:500μm)にスピンコーターで接着剤Aを塗布し接着層Aを形成し、120℃で1分間加熱したのち、予め作製しておいたレーザー剥離層付きのガラスウェハー(キャリア側のウェハー)を、レーザー剥離層および接着層Aを挟むように真空貼り合わせ装置(ズースマイクロテック(株)製、マニュアルボンダー)内で貼り合わせ、積層体を作製した。その後、ホットプレート上でデバイス側ウェハーを下にして200℃で10分間加熱処理を行い、接着層Aを硬化させた。得られた積層体にレーザー照射装置((株)オプトピア製、LSL-10)を使って、ガラスウェハー側からレーザーを照射し、出力80~400mJ/cmの範囲にて剥離が生じる最低のDoseを最適照射量とした。結果を表7に示した。
【0159】
〔表7〕
表7 355nmレーザー照射試験
――――――――――――――――――――――――――――――
最適照射量[mJ/cm
剥離層(1) 380
剥離層(2) 400
剥離層(3) 100
剥離層(4) 80
剥離層(5) 160
剥離層(6) 160
剥離層(7) 100
剥離層(8) 160
剥離層(9) 100
剥離層(10) 100
比較剥離層(1) 剥離せず (400以上)
――――――――――――――――――――――――――――――
【0160】
透過率の低い剥離層(3)~(10)を用いた積層体において低い照射量にて剥離が確認された。剥離層(1)、(2)を用いた積層体においては高い照射量が必要ではあるものの、剥離の発生は確認された。
【0161】
(実施例7) 355nmレーザーデボンド試験
キャリア側のウェハー(支持体)として100mmガラスウェハー(コーニング社製、EAGLE-XG、厚さ500μm)に剥離層形成組成物(1)~(8)、および比較剥離層形成組成物(1)をスピンコーターで塗布し、ホットプレート上で250℃の温度で1分間加熱し、剥離層(1)~(8)及び比較剥離層(1)を形成した。
【0162】
デバイス側のウェハーとして100mmシリコンウェハー(厚さ:500μm)にスピンコーターで接着剤Aを塗布し、120℃で1分間加熱し接着層Aを形成し、予め作製しておいたレーザー剥離層付きのガラスウェハー(キャリア側のウェハー)を、レーザー剥離層および接着層Aを挟むように真空貼り合わせ装置(ズースマイクロテック(株)製、マニュアルボンダー)内で貼り合わせ、積層体を作製した。その後、ホットプレート上で
デバイス側ウェハーを下にして200℃で10分間加熱処理を行い、接着層Aを硬化させた。得られた積層体にレーザー照射装置((株)オプトピア製、LSL-10)を使用し、ガラスウェハー側から308nmレーザーをウェハーの全面に照射し、ガラスウェハーが剥離可能かを確認した。この際、レーザーの出力は表3で求めた条件を使用し、レーザーは前後左右に50%オーバーラップするように照射した。レーザー照射後、容易に剥離が可能であった場合を「○」、剥離出来なかった場合を「×」表記した。結果を表8に示す。
【0163】
〔表8〕
表8 355nmレーザーデボンド試験
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
最適照射量[mJ/cm] 剥離性
剥離層(1) 380 ○
剥離層(2) 400 ○
剥離層(3) 100 ○
剥離層(4) 80 ○
剥離層(5) 160 ○
剥離層(6) 160 ○
剥離層(7) 100 ○
剥離層(8) 160 ○
剥離層(9) 100 ○
剥離層(10) 100 ○
比較剥離層(1) 400 ×
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0164】
剥離層(3)~(10)を用いた積層体の場合は、レーザーを照射後、ガラスウェハー(キャリア側)を容易に剥離できることを確認した。剥離層(1)、(2)を用いた場合は高い照射量が必要であるが、一方、比較剥離層(1)を用いた積層体は、容易に剥離することができなかった。
【0165】
(実施例8) (シリコンウェハーに剥離層を形成し355nmレーザー照射による発熱の確認1)
100mmシリコンウェハー(厚さ:500μm)に剥離性が良好であった剥離層形成組成物(4)~(10)をスピンコーターで塗布し、ホットプレート上で250℃の温度で1分間加熱し、剥離層(4)~(10)を形成した。レーザー照射時に剥離層の発熱の有無を確認するため、剥離層を形成したシリコンウェハーの裏面には、サーモラベル(Wahl社製、商品名:テンプ・プレート76℃から260℃対応、最低検知温度76℃)を貼り付けた。その後、剥離層を形成した側からレーザー照射装置((株)オプトピア製、LSL-10)を使って、レーザーを照射し、サーモラベルで発熱が検知されたかどうかを確認した。この際、レーザーの出力は表7で求めた条件を適用した。
またサーモラベル以外の手法でレーザー照射後に発熱があったかどうかを確認するために、非接触式温度計として赤外放射温度計((株)テストー製)を使ってレーザー照射直後の剥離層の温度を測定、さらに、接触式温度計として熱電対温度計(安立計器(株)製、商品名:ハンディ温度計)を使ってレーザー照射直後のガラスウェハーの温度を測定した。なお、レーザー照射前の剥離層の温度は、熱電対式、赤外線式ともに28℃付近であった。結果を表9に示した。
【0166】
〔表9〕
表9 355nmレーザー照射による発熱の有無の確認検討1
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
サーモラベル 熱電対式温度計 赤外線温度計
剥離層(4) 発熱は検知されず 27.9℃ 25.4℃
剥離層(5) 発熱は検知されず 27.7℃ 27.2℃
剥離層(6) 発熱は検知されず 28.2℃ 26.9℃
剥離層(7) 発熱は検知されず 27.9℃ 25.5℃
剥離層(8) 発熱は検知されず 27.9℃ 25.5℃
剥離層(9) 発熱は検知されず 28.2℃ 26.3℃
剥離層(10) 発熱は検知されず 27.9℃ 25.5℃
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0167】
レーザー照射後にサーモラベルを確認したところ、いずれのサンプルも発熱は検知されなかった、すなわち剥離層の温度上昇は76℃未満であることが確認された。一方で、レーザー照射後に直ちに赤外線温度計および熱電対式温度計による確認を行ったところ、いずれの場合も温度上昇は全く確認されなかった。以上のことから、355nmレーザー照射による発熱はないと判断した。
【0168】
(実施例9) (ガラスウェハーに剥離層を形成し355nmレーザー照射による発熱の確認2)
ガラスウェハーに剥離性が良好であった剥離層形成組成物(4)~(10)をスピンコーターで塗布し、ホットプレート上で250℃の温度で1分間加熱し、剥離層(4)~(10)を形成した。レーザー照射時の発熱の有無を確認するため、形成した剥離層には直接サーモラベル(Wahl社製、商品名:テンプ・プレート76℃から260℃対応、最低検知温度76℃)を貼り付けた。その後、ガラスウェハー側からレーザー照射装置((株)オプトピア製、LSL-10)を使ってレーザーを照射し、サーモラベルで発熱が検知されたかどうかを確認した。この際、レーザーの出力は表7で求めた条件を適用した。
【0169】
またサーモラベル以外の手法でレーザー照射後に発熱があったかどうかを確認するために、赤外放射温度計((株)テストー製)を使ってレーザー照射直後の剥離層の温度を測定した。なお、レーザー照射前の剥離層の温度は、27℃付近であった。結果を表10に示した。
【0170】
〔表10〕
表10 355nmレーザー照射による発熱の有無の確認検討2
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
サーモラベル 赤外線温度計
剥離層(4) 発熱は検知されず 28.1℃
剥離層(5) 発熱は検知されず 27.6℃
剥離層(6) 発熱は検知されず 27.6℃
剥離層(7) 発熱は検知されず 26.8℃
剥離層(8) 発熱は検知されず 27.3℃
剥離層(9) 発熱は検知されず 27.3℃
剥離層(10) 発熱は検知されず 26.5℃
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0171】
レーザー照射後にサーモラベルを確認したところ、発熱は検知されていなかった、すなわち剥離層の温度上昇は76℃未満であることが確認された。一方で、レーザー照射後に直ちに赤外線温度計による確認を行ったところ、いずれの場合も温度上昇は全く確認されなかった。以上のことから、355nmレーザー照射による発熱はないと判断した。
【0172】
(実施例10) 12インチウェハーを用いたレーザー照射によるデボンド評価
キャリア側のウェハー(支持体)として301mmガラスウェハー(EAGLE-XG、コーニング社製、厚さ700μm)に剥離層形成組成物(6)をスピンコーター(ズースマイクロテック(株)製、Delta 12RC)で塗布し、ホットプレート上で250℃の温度で1分間加熱し、剥離層(6)を形成した。デバイス側のウェハーには構造物のないウェハーとしてシリコンウェハー、TEGウェハーとして清川メッキ工業株式会社製Cuピラー300mmのウェハー(厚さ:770μm、チップサイズ:10mm、Cuピラー直径:40μm、Cuピラー高さ:25μm、バンプピッチ:100μm、下地:SiN)を用いて、それぞれのウェハーにスピンコーター(ズースマイクロテック(株)製、XBS300)を用いて接着剤Aを塗布し、120℃で1分間加熱し接着層Aを形成したのち、予め作製しておいた剥離層付きの301mmガラスウェハー(キャリア側のウェハー)を、剥離層および接着層Aを挟むように真空貼り合わせ装置(ズースマイクロテック(株)製、XBS300)内でボンディングし、積層体を作製した。その後、ホットプレート上で200℃にて10分間加熱処理を行い、接着層Aを硬化させた。得られた積層体のデバイス側のウェハーを高剛性研削盤((株)東京精密製 HRG300)で50μmまで薄化した。その後、オーブンにて250℃の温度で1時間、高温処理を行った後、ダイシングテープ(日東電工(株)製、DU-300)にマウントした。レーザー照射装置(コヒレント(株)製 Lambda SX)を用いて波長308nmのレーザーをガラスウェハー側から照射し、剥離に必要な最適照射量を求めた後、同照射量にてレーザーをウェハーの全面に照射し、ガラスウェハーの剥離性を確認した。容易に剥離できた場合を「○」、剥離できない場合を「×」で示した。結果を表11に示した。
【0173】
〔表11〕
表11 12インチウェハーを用いたレーザーデボンド試験
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
デバイス側ウェハー種 最適照射量[mJ/cm] 剥離性
実施例(10-1) シリコンウェハー 150 ○
実施例(10-2) Cuピラーウェハー 150 ○
実施例(10-3) Cuピラーウェハー 150 ○
実施例(10-4) Cuピラーウェハー 150 ○
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0174】
レーザー照射後はキャリアウェハーが容易に剥離できることを確認した。また、TEGウェハーを用いた場合も再現性良く剥離することが確認された。
【0175】
(実施例11) レーザー照射によるデボンド(剥離)後のテープピーリング(接着層の引きはがし)検討
キャリア側のウェハー(支持体)として301mmガラスウェハー(EAGLE-XG、コーニング社製、厚さ700μm)に剥離層形成組成物(6)をスピンコーター(ズースマイクロテック(株)製、Delta 12RC)で塗布し、ホットプレート上で250℃の温度で1分間加熱し、剥離層(6)を形成した。デバイス側のウェハーには構造物のないウェハーとしてシリコンウェハー、TEGウェハーとして清川メッキ工業株式会社製Cuピラー300mmのウェハー(厚さ:770μm、チップサイズ:10mm、Cuピラー直径:40μm、Cuピラー高さ:25μm、バンプピッチ:100μm、下地:SiN)を用いて、それぞれのウェハーにスピンコーター(ズースマイクロテック(株)製、XBS300)を用いて接着剤Aを塗布し、120℃で1分間加熱し接着層Aを形成したのち、予め作製しておいた剥離層付きの301mmガラスウェハー(キャリア側のウェハー)を、剥離層および接着剤Aを挟むように真空貼り合わせ装置(ズースマイクロテック(株)製、XBS300)内でボンディングし、積層体を作製した。その後、ホットプレート上で200℃にて10分間加熱処理を行い、接着剤Aを硬化させた。得られた積層体のデバイス側のウェハーを高剛性研削盤((株)東京精密製 HRG300)で50
μmまで薄化した。その後、オーブンにて250℃の温度で1時間、高温処理を行った後、ダイシングテープ(日東電工(株)製、DU-300)にマウントした。レーザー照射装置(コヒレント(株)製 Lambda SX)を用いて波長308nmのレーザーを照射量150mJ/cmでガラスウェハー側からウェハーの全面に照射し、ガラスウェハーを剥離した。その後、デバイス側に残存した接着剤Aで形成された仮接着層および剥離層をピーリング用テープ(Microcontrol electronic社製 DLO330MA)およびテープピーリング装置(ズースマイクロテック(株)製、DT300)を用いてテープピーリング法により、テープを60~180°の範囲で引きはがし、デバイス側のウェハーから仮接着層を分離した。テープピーリングにより残渣なく分離できた場合を良好と評価し「○」で示し、できなかったものを「×」で示した。結果を表12に示した。
【0176】
〔表12〕
表12 テープピーリングの検討
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
デバイス側ウェハー種 テープピーリング性
実施例(11-1) シリコンウェハー 〇
実施例(11-2) Cuピラーウェハー 〇
実施例(11-3) Cuピラーウェハー 〇
実施例(11-4) Cuピラーウェハー 〇
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0177】
(実施例12) 剥離層の透過率測定
石英基板上にスピンコーターで各剥離層形成組成物を塗布し、ホットプレート上で250℃1分間、250℃5分間、300℃2分間、350℃2分間、400℃2分間のいずれかで加熱し、各剥離層(膜厚0.2μm)を形成した。その後、レーザーデボンド用の剥離層として適用可能かを判断するために紫外可視分光光度計((株)島津製作所製、UV2550)を用いて波長532nmの光における透過率を測定した。結果を表13に示した。続いて、532nmの光における透過率を表13に示す。
【0178】
〔表13〕
表13 波長532nmの光における透過率測定
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
加熱温度 [℃] 加熱時間 [分] 532nmにおける透過率[%]
剥離層(9) 400 2 57.8
剥離層(10) 250 5 81.3
300 2 71.3
350 2 53.4
400 2 56.9
比較剥離層(1) 250 1 98.5
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0179】
透過率測定の結果では、剥離層(9)、(10)について加熱温度が低い場合では透過率は高めであるが、加熱温度が高くなるにつれて、透過率は低く良好な結果が得られた。比較剥離層例(1)の透過率は非常に高い数値を示した。
【0180】
(実施例13) 532nmレーザー照射試験 最適照射量の確認
キャリア側のウェハー(支持体)として100mmガラスウェハー(EAGLE-XG、コーニング社製、厚さ500μm)に剥離層形成組成物(9)(10)、および比較剥離層形成組成物(1)をスピンコーターで塗布し、ホットプレート上で250℃5分間、
300℃2分間、350℃2分間、400℃2分間のいずれかで加熱し、剥離層(9)(10)、比較剥離層(1)を形成した。
デバイス側のウェハーとして100mmシリコンウェハー(厚さ:500μm)にスピンコーターで接着剤Aを塗布し、120℃で1分間加熱したのち接着層Aを形成し、予め作製しておいたレーザー剥離層付きのガラスウェハー(キャリア側のウェハー)を、剥離層および接着層Aを挟むように真空貼り合わせ装置(ズースマイクロテック(株)製、マニュアルボンダー)内で貼り合わせ、積層体を作製した。その後、ホットプレート上でデバイス側ウェハーを下にして200℃で10分間加熱処理を行い、接着層Aを硬化させた。得られた積層体にレーザー照射装置(Lotus-TII製、LT-2137)を使って、ガラスウェハー側からレーザーを照射し、出力20~500mJ/cmの範囲にて剥離が生じる最低のDoseを最適照射量とした。結果を表14に示した。
【0181】
〔表14〕
表14 532nmレーザー照射試験
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
加熱温度 [℃] 加熱時間 [分] 最適照射量[mJ/cm
剥離層(9) 400 2 300
剥離層(10) 250 5 500
300 2 300
350 2 200
400 2 200
比較剥離層(1) 250 1 剥離無し(500以上)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0182】
剥離層(9)(10)ともに焼成温度が高くなるにつれて、低い照射量にて剥離が確認された。焼成温度が低い場合では高い照射量が必要ではあるものの、剥離の発生は確認された。比較剥離層(1)では剥離は確認されなかった。
【0183】
(実施例14) 532nmレーザーデボンド試験
キャリア側のウェハー(支持体)として100mmガラスウェハー(コーニング社製、EAGLE-XG、厚さ500μm)に剥離層形成組成物(9)(10)、および比較剥離層形成組成物(1)をスピンコーターで塗布し、ホットプレート上で250℃5分間、300℃2分間、350℃2分間、400℃2分間のいずれかの条件で加熱し、剥離層(9)(10)、及び比較剥離層(1)を形成した。
【0184】
デバイス側のウェハーとして100mmシリコンウェハー(厚さ:500μm)にスピンコーターで接着剤Aを塗布し、120℃で1分間加熱したのち接着層Aを形成し、予め作製しておいたレーザー剥離層付きのガラスウェハー(キャリア側のウェハー)を、剥離層および接着層Aを挟むように真空貼り合わせ装置(ズースマイクロテック(株)製、マニュアルボンダー)内で貼り合わせ、積層体を作製した。その後、ホットプレート上でデバイス側ウェハーを下にして200℃で10分間加熱処理を行い、接着層Aを硬化させた。得られた積層体にレーザー照射装置(Lotus-TII製、LT-2137)を使用し、ガラスウェハー側から532nmレーザーをウェハーの全面に照射し、ガラスウェハーが剥離可能かを確認した。この際、レーザーの出力は表14で求めた条件を使用し、レーザーは前後左右にオーバーラップしない様に照射した。レーザー照射後、容易に剥離が可能であった場合を「○」、剥離出来なかった場合を「×」表記した。結果を表15に示す。
【0185】
〔表15〕
表15 532nmレーザーデボンド試験
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
加熱温度 [℃] 加熱時間 [分] 最適照射量 剥離性
[mJ/cm
剥離層(9) 400 2 300 ○
剥離層(10) 350 2 200 ○
400 2 200 ○
比較剥離層(1) 250 1 500以上 ×
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0186】
剥離層(9)(10)を用いた積層体の場合は、レーザーを照射後、ガラスウェハー(キャリア側)を容易に剥離できることを確認した。一方、比較剥離層(1)を用いた積層体は、容易に剥離することができなかった。
【0187】
(実施例15) (ガラスウェハーに剥離層を形成し532nmレーザー照射による発熱の確認)
100mmガラスウェハー(EAGLE-XG、コーニング社製、厚さ500μm)に剥離性が良好であった剥離層形成組成物(9)(10)をスピンコーターで塗布し、ホットプレート上で250℃5分間、300℃2分間、350℃2分間、400℃2分間のいずれかで加熱し、剥離層(9)(10)を形成した。レーザー照射時に剥離層の発熱の有無を確認するため、赤外放射温度計((株)テストー製)を使ってレーザー照射直後の剥離層の温度を測定した。剥離層を形成した側からレーザー照射装置(Lotus-TII製、LT-2137)を使って、レーザーを照射し、赤外放射温度計で発熱が検知されたかどうかを確認した。この際、レーザーの出力は表14で求めた条件を適用した。なお、レーザー照射前の剥離層の温度は、21℃付近であった。結果を表16に示した。
【0188】
〔表16〕
表16 532nmレーザー照射による発熱の有無の確認検討
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
加熱温度 [℃] 加熱時間 [分] 最適照射量 赤外温度計
[mJ/cm] [℃]
剥離層(9) 400 2 300 21.2℃
剥離層(10) 350 2 300 22.4℃
350 2 200 20.3℃
400 2 200 22.3℃
比較剥離層(1) 250 1 500以上 20.6℃
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0189】
532nmレーザー照射後に赤外線温度計による確認を行ったところ、温度上昇は全く見られなかったことからレーザー照射による発熱はないと判断した。
【0190】
(実施例16) レーザー照射によるデボンド(剥離)後のテープピーリング(接着層の引きはがし)検討
キャリア側のウェハー(支持体)として100mmガラスウェハー(EAGLE-XG、コーニング社製、厚さ500μm)に剥離層形成組成物(9)(10)をスピンコーターで塗布し、ホットプレート上で250℃5分間、300℃2分間、350℃2分間、400℃2分間のいずれかで加熱し、剥離層(9)(10)を形成した。デバイス側のウェハーとして100mmシリコンウェハー(厚さ:500μm)にスピンコーターで接着剤Aを塗布し、120℃で1分間加熱したのち接着層Aを形成し、予め作製しておいたレーザー剥離層付きのガラスウェハー(キャリア側のウェハー)を、剥離層および接着層Aを挟むように真空貼り合わせ装置(ズースマイクロテック(株)製、マニュアルボンダー)
内で貼り合わせ、積層体を作製した。その後、ホットプレート上でデバイス側ウェハーを下にして200℃で10分間加熱処理を行い、接着層Aを硬化させた。レーザー照射装置(Lotus-TII製、LT-2137)を用いて波長532nmのレーザーをガラスウェハー側からウェハーの全面に照射し、ガラスウェハーを剥離した。その後、デバイス側に残存した接着剤Aで形成された仮接着層および剥離層をピーリング用テープ(日東電工(株)社製 N300)を用いて引きはがし、デバイス側のウェハーから仮接着層を分離した。テープピーリングにより残渣なく分離できた場合を良好と評価し「○」で示し、できなかったものを「×」で示した。結果を表17に示した。
【0191】
〔表17〕
表17 テープピーリングの検討
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
加熱温度 [℃] 加熱時間 [分] 最適照射量 テープピーリング性
[mJ/cm
剥離層(9) 400 2 300 ○
剥離層(10) 350 2 200 ○
400 2 200 ○
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0192】
(実施例17) 12インチウェハーを用いたレーザー照射によるデボンド評価
キャリア側のウェハー(支持体)として301mmガラスウェハー(EAGLE-XG、コーニング社製、厚さ700μm)に剥離層形成組成物(5)、(6)、(9)、(10)をスピンコーター(ズースマイクロテック(株)製、Delta 12RC)で塗布し、ホットプレート上で200℃、250℃のいずれかで1分間加熱し、剥離層(6)を形成した。デバイス側のウェハーにはシリコンウェハーを用いて、それぞれのウェハーにスピンコーター(ズースマイクロテック(株)製、XBS300)を用いて接着剤Aを塗布し、120℃で1分間加熱し接着層Aを形成したのち、予め作製しておいた剥離層付きの301mmガラスウェハー(キャリア側のウェハー)を、剥離層および接着層Aを挟むように真空貼り合わせ装置(ズースマイクロテック(株)製、XBS300)内でボンディングし、積層体を作製した。その後、ホットプレート上で170℃にて7分間、その後190℃にて7分間加熱処理を行い、接着層Aを硬化させた。得られた積層体のデバイス側のウェハーを高剛性研削盤((株)東京精密製 HRG300)で50μmまで薄化した。その後、オーブンにて200℃の温度で1時間、高温処理を行った後、ダイシングテープ(日東電工(株)製、DU-300)にマウントした。レーザー照射装置(ズースマイクロテック(株)製、ELD300)を用いて波長308nmのレーザーをガラスウェハー側から照射し、剥離に必要な最適照射量を求めた後、同照射量にてレーザーをウェハーの全面に照射し、ガラスウェハーの剥離性を確認した。ウェハーにダメージなく容易に剥離できた場合を「○」、剥離できない場合を「×」で示した。結果を表18に示した。
【0193】
〔表18〕
表18 12インチウェハーを用いたレーザーデボンド試験
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
剥離層の加熱温度 [℃] 最適照射量[mJ/cm] 剥離性
剥離層(5) 200 200 ○
剥離層(6) 250 190 ○
剥離層(9) 200 180 ○
剥離層(10) 250 170 ○
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0194】
レーザー照射後はキャリアウェハーが容易に剥離できることを確認した。
【0195】
(実施例18) レーザー照射によるデボンド(剥離)後のテープピーリング(接着層の引きはがし)検討
実施例(17)で作製した薄化ウェハーに残存した接着剤Aで形成された仮接着層および剥離層をテープ(日東電工社製 N-300)およびテープピーリング装置(ズースマイクロテック(株)製、DT300)を用いてテープピーリング法により、テープを60°で引きはがし、デバイス側のウェハーから仮接着層を分離した。テープピーリングにより残渣なく分離できた場合を良好と評価し「○」で示し、できなかったものを「×」で示した。またウェハーにダメージが無かった場合を良好として「○」、クラック等が確認された場合を不良として「×」とした。結果を表19に示した。
【0196】
〔表19〕
表19 テープピーリングの検討
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ピーリング性 ウェハーのダメージ
剥離層(5) ○ ○
剥離層(6) ○ ○
剥離層(9) ○ ○
剥離層(10) ○ ○
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【0197】
すべてのサンプルにおいて、残渣およびウェハーのダメージなくテープピリングされたことを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0198】
本発明は支持体と被加工物との間に剥離可能に接着した中間層を有し、被加工物を切断等により分離する事や、ウェハー裏面研磨等の加工を行うための積層体であり、該中間層は少なくとも支持体側に接した剥離層を含み、剥離層が支持体を介して照射される190nm~400nm、又は190nm~600nmの光を吸収し変質するノボラック樹脂を含むものであり、機械的な付加を加える事なく分離する材料及び方法である。