(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】検体搬送装置、検体分析システムおよび検体前処理装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/04 20060101AFI20240828BHJP
B65G 54/02 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
G01N35/04 G
B65G54/02
(21)【出願番号】P 2020136653
(22)【出願日】2020-08-13
【審査請求日】2023-02-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】青山 康明
(72)【発明者】
【氏名】金子 悟
(72)【発明者】
【氏名】小林 啓之
(72)【発明者】
【氏名】玉腰 武司
(72)【発明者】
【氏名】星 遼佑
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 洋
(72)【発明者】
【氏名】鬼澤 邦昭
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-532870(JP,A)
【文献】国際公開第2020/158264(WO,A1)
【文献】特開昭61-127104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/04
B65G 54/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石が設けられた検体と、
前記永久磁石を介して前記検体を搬送する搬送路と、
前記搬送路の前記検体を搬送する面と反対側の面に設けられた複数のコイルと、
前記コイルに電流を流す駆動回路と、を備え、
前記駆動回路は、前記永久磁石を停止させる位置の直下にある第1のコイルに流す電流によって、前記永久磁石の垂直方向にかかる力を調整し、
前記第1のコイルに隣接する第2のコイルに流す電流によって、前記永久磁石の水平方向にかかる力を調整し、前記第1のコイルおよび前記第2のコイルに同時に電流を流すことで前記永久磁石の停止位置を調整
し、
前記永久磁石の中心と、前記第1のコイルの中心までの距離d/2としたときに、
前記永久磁石の中心が、±d/2の区間にあるときにおいて、前記駆動回路が前記第1のコイルに前記永久磁石の極性と反発する磁束を生じさせる電流を流すことにより前記永久磁石の停止位置を調整することを特徴とする検体搬送装置。
【請求項2】
永久磁石が設けられた検体と、
前記永久磁石を介して前記検体を搬送する搬送路と、
前記搬送路の前記検体を搬送する面と反対側の面に設けられた複数のコイルと、
前記コイルに電流を流す駆動回路と、を備え、
前記駆動回路は、前記
永久磁石を停止させる位置の直下にある第1のコイルに
流す電流によって、前記永久磁石の垂直方向にかかる力を調整し、
前記第1のコイルに隣接する第2のコイルに流す電流によって、前記永久磁石の水平方向にかかる力を調整し、前記第1のコイルおよび前記第2のコイルに同時に電流を流すことで前記永久磁石の停止位置を調整し、
前記コイルは、磁性体からなるコアと、前記コアの外周に巻かれた巻線と、を有し、
前記永久磁石の径Dが、前記第1のコイルのコアの径dより大きく、
前記永久磁石の中心が、±(D-d)/2の範囲にあるときにおいて、前記駆動回路が前記第1のコイルに前記永久磁石の極性と反発する磁束を生じさせる電流を流すことによ
り前記永久磁石の停止位置を調整することを特徴とす
る検体搬送装置。
【請求項3】
永久磁石が設けられた検体と、
前記永久磁石を介して前記検体を搬送する搬送路と、
前記搬送路の前記検体を搬送する面と反対側の面に設けられた複数のコイルと、
前記コイルに電流を流す駆動回路と、を備え、
前記駆動回路は、前記永久磁石を停止させる位置の直下にある第1のコイルに流す電流によって、前記永久磁石の垂直方向にかかる力を調整し、
前記第1のコイルに隣接する第2のコイルに流す電流によって、前記永久磁石の水平方向にかかる力を調整し、前記第1のコイルおよび前記第2のコイルに同時に電流を流すことで前記永久磁石の停止位置を調整し、
前記コイルは、磁性体からなるコアと、前記コアの外周に巻かれた巻線と、を有し、
前記永久磁石の径Dが、前記第1のコイルのコアの径dより小さく、
前記永久磁石の中心が、±(d-D)/2の範囲にあるときにおいて、前記駆動回路が前記第1のコイルに前記永久磁石の極性と反発する磁束を生じさせる電流を流すことにより前記永久磁石の停止位置を調整することを特徴とす
る検体搬送装置。
【請求項4】
永久磁石が設けられた検体と、
前記永久磁石
を介して前記検体を搬送する搬送路と、
前記
搬送路の前記検体を搬送する面と反対側の面に設けられた複数のコイルと、
前記コイルに電流を流す駆動回路と、を備え、
前記駆動回路は、前記永久磁石を停止させる位置の直下にある第1のコイルに流す電流によって、前記永久磁石の垂直方向にかかる力を調整し、
前記第1のコイルに隣接する第2のコイルに流す電流によって、前記永久磁石の水平方向にかかる力を調整し、前記第1のコイルおよび前記第2のコイルに同時に電流を流すことで前記永久磁石の停止位置を調整し、
前記第1のコイルの
巻線を挟み込むように配置した前記第2のコイルの巻線と第3のコイルの巻線を有し、前記永久磁石の極性と反発する磁束を生じさせる電流を前記第1のコイルの巻線に流し、前記永久磁石の極性と吸引する磁束を生じさせる電流を前記第2のコイルの巻線と前記第3のコイルの巻線に流すことを特徴とする検体搬送装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の検体搬送装置を備えたことを特徴とす
る検体
分析システム。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の検体搬送装置を備えたことを特徴とする検体前処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体搬送装置、検体分析システムおよび検体前処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査のための検体分析システムでは、血液、血漿、血清、尿、その他の体液等の検体(サンプル)に対し、指示された分析項目の検査を実行する。この検体分析システムでは、複数の機能の装置をつなげ、自動的に各工程を処理することができる。つまり、検査室の業務合理化のために、生化学や免疫など複数の分析分野の分析部や分析に必要な前処理を行う前処理部を搬送ラインで接続して、1つのシステムとして運用している。
【0003】
従来の検体分析システムで用いられている搬送ラインは、主にベルト駆動方式がメインである。このようなベルト駆動方式では、搬送途中でなんらかの異常により搬送が停止してしまうと、それより下流側の装置に検体を供給できなくなる、との問題がある。このため、ベルトの摩耗について十分に注意を払う必要があった。
【0004】
近年、医療の高度化及び高齢化社会の進展により、検体処理の重要性が高まってきている。そこで、検体分析システムの分析処理の能力の向上のために、検体の高速搬送や大量同時搬送、および複数方向への搬送が望まれている。そのような搬送を実現する技術の一例として、特許文献1に記載の技術がある。
【0005】
特許文献1には、各々が少なくとも1つの磁気的活性デバイス、好ましくは少なくとも1つの永久磁石を備え、試料を含む試料容器を運ぶように適合されたいくつかの容器キャリア(1)と、複数の容器キャリアを運ぶように適合された搬送平面と、搬送平面の下方に静止して配置されたいくつかの電磁アクチュエータであって、容器キャリアに磁力を印加することによって搬送平面の上で容器キャリアを移動させるように適合された電磁アクチュエータと、搬送平面と、研究室ステーション、好ましくは分析前ステーション、分析ステーション、および/または分析後ステーションとの間で試料品を移送するように配置された少なくとも1つの移送デバイスであって、試料品が、容器キャリア、試料容器、試料の一部、および/または試料一式である、移送デバイスとを備える研究室試料配送システムが記載されている。特許文献2には、試料容器を搭載した容器キャリアを磁気的な力によって搬送する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1に記載の技術では、容器キャリアの位置に応じて、ステップ状に電磁アクチュエータを起動することが記載されている。しかしながら、特許文献2のシステムでは、容器キャリアの位置に応じて起動する電磁アクチュエータを切り替えるのみである。すなわち、容器キャリアの永久磁石を運びたい位置にある電磁アクチュエータに電流を印加し、永久磁石と電磁アクチュエータの吸引力によって目標の位置に停止させているが、電磁アクチュエータの吸引力は永久磁石を運びたい方向の力(推力)と永久磁石を搬送面に押し付ける力(垂直力)を発生させる。が、永久磁石が電磁アクチュエータの真上に来た場合は、推力はほぼゼロになるのに対し、垂直力は小さくならない。つまり、永久磁石が目的とする位置に近づくほど、永久磁石を横方向に移動させようとする力である推力が小さく、垂直力により永久磁石と搬送面間の摩擦力が相対的に大きくなり、永久磁石の停止位置精度が低下するといった課題があった。
【0008】
さらに、永久磁石が静止した状態から微小な位置を変えようとした場合、推力に対して大きな摩擦力があり、摩擦力が静摩擦から動摩擦に状態が変化し、微小な永久磁石の位置精度を得ることが困難であるといった課題があった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、検体の停止時の位置精度が高く、停止時の微小な位置を調整可能とした検体搬送装置、検体分析システムおよび検体前処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため、本発明に係る検体搬送装置の第1の態様は、永久磁石が設けられた検体と、前記永久磁石を介して前記検体を搬送する搬送路と、前記搬送路の前記検体を搬送する面と反対側の面に設けられた複数のコイルと、前記コイルに電流を流す駆動回路と、を備え、前記駆動回路は、前記永久磁石を停止させる位置の直下にある第1のコイルに流す電流によって、前記永久磁石の垂直方向にかかる力を調整し、前記第1のコイルに隣接する第2のコイルに流す電流によって、前記永久磁石の水平方向にかかる力を調整し、前記第1のコイルおよび前記第2のコイルに同時に電流を流すことで前記永久磁石の停止位置を調整し、前記永久磁石の中心と、前記第1のコイルの中心までの距離d/2としたときに、前記永久磁石の中心が、±d/2の区間にあるときにおいて、前記駆動回路が前記第1のコイルに前記永久磁石の極性と反発する磁束を生じさせる電流を流すことにより前記永久磁石の停止位置を調整することを特徴とする。
また、本発明に係る検体搬送装置の第1の態様は、永久磁石が設けられた検体と、前記永久磁石を介して前記検体を搬送する搬送路と、前記搬送路の前記検体を搬送する面と反対側の面に設けられた複数のコイルと、前記コイルに電流を流す駆動回路と、を備え、前記駆動回路は、前記永久磁石を停止させる位置の直下にある第1のコイルに流す電流によって、前記永久磁石の垂直方向にかかる力を調整し、前記第1のコイルに隣接する第2のコイルに流す電流によって、前記永久磁石の水平方向にかかる力を調整し、前記第1のコイルおよび前記第2のコイルに同時に電流を流すことで前記永久磁石の停止位置を調整し、前記コイルは、磁性体からなるコアと、前記コアの外周に巻かれた巻線と、を有し、前記永久磁石の径Dが、前記第1のコイルのコアの径dより大きく、前記永久磁石の中心が、±(D-d)/2の範囲にあるときにおいて、前記駆動回路が前記第1のコイルに前記永久磁石の極性と反発する磁束を生じさせる電流を流すことにより前記永久磁石の停止位置を調整することを特徴とする。
また、本発明に係る検体搬送装置の第1の態様は、永久磁石が設けられた検体と、前記永久磁石を介して前記検体を搬送する搬送路と、前記搬送路の前記検体を搬送する面と反対側の面に設けられた複数のコイルと、前記コイルに電流を流す駆動回路と、を備え、前記駆動回路は、前記永久磁石を停止させる位置の直下にある第1のコイルに流す電流によって、前記永久磁石の垂直方向にかかる力を調整し、前記第1のコイルに隣接する第2のコイルに流す電流によって、前記永久磁石の水平方向にかかる力を調整し、前記第1のコイルおよび前記第2のコイルに同時に電流を流すことで前記永久磁石の停止位置を調整し、前記コイルは、磁性体からなるコアと、前記コアの外周に巻かれた巻線と、を有し、前記永久磁石の径Dが、前記第1のコイルのコアの径dより小さく、前記永久磁石の中心が、±(d-D)/2の範囲にあるときにおいて、前記駆動回路が前記第1のコイルに前記永久磁石の極性と反発する磁束を生じさせる電流を流すことにより前記永久磁石の停止位置を調整することを特徴とする。
また、本発明に係る検体搬送装置の第1の態様は、永久磁石が設けられた検体と、前記永久磁石を介して前記検体を搬送する搬送路と、前記搬送路の前記検体を搬送する面と反対側の面に設けられた複数のコイルと、前記コイルに電流を流す駆動回路と、を備え、 前記駆動回路は、前記永久磁石を停止させる位置の直下にある第1のコイルに流す電流によって、前記永久磁石の垂直方向にかかる力を調整し、前記第1のコイルに隣接する第2のコイルに流す電流によって、前記永久磁石の水平方向にかかる力を調整し、前記第1のコイルおよび前記第2のコイルに同時に電流を流すことで前記永久磁石の停止位置を調整し、前記第1のコイルの巻線を挟み込むように配置した前記第2のコイルの巻線と第3のコイルの巻線を有し、前記永久磁石の極性と反発する磁束を生じさせる電流を前記第1のコイルの巻線に流し、前記永久磁石の極性と吸引する磁束を生じさせる電流を前記第2のコイルの巻線と前記第3のコイルの巻線に流すことを特徴とする。
【0011】
本発明の第2の態様は、上述した本発明の検体搬送装置を有する検体分析システムである。
【0012】
本発明の第3の態様は、上述した本発明の検体搬送装置を有する検体前処理装置である。
【0013】
本発明のより具体的な構成は、特許請求の範囲に記載される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、検体の停止時の位置精度が高く、停止時の微小な位置を調整可能とした検体搬送装置、検体分析システムおよび検体前処理装置を提供することができる。
【0015】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図5】永久磁石をA位置からB位置に移動させた場合の各位置における推力(X方向に働く力)を示すグラフ
【
図10】実施例5の永久磁石10およびコア20の形状を示す模式図である。
【
図11】実施例6の搬送装置の概略構成を示す断面図
【
図13】実施例8の検体分析システムの概略構成を示す模式図
【
図14】実施例9の検体前処理システムの概略構成を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の搬送装置、検体分析システムおよび検体前処理装置の実施例を、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は実施例1の搬送装置の概略構成を示す斜視図であり、
図2および
図3は実施例1の搬送装置の概略構成を示す断面図である。
図1~3に示すように、本実施例の検体搬送装置1aは、永久磁石10が設けられた検体(図示せず)と、永久磁石10を介して検体を搬送する搬送路15(
図2)と、搬送路15の検体を搬送する面と反対側の面に設けられた複数のコイルと、コイルに電流を流す駆動回路と(図示せず)とを備える。永久磁石10は被搬送体である検体の容器等に設けられ、永久磁石10とともに検体が搬送路15を移動する。コイルは、磁性体からなるコア20と、コア20の外周に巻かれた巻線30とを有する。
【0019】
図1は、磁性体からなるコア20の周りに巻線30を配置したコイルを5つ配置した搬送装置の例である。巻線30に流した電流により生じる磁極によって、検体に設けられた永久磁石10を搬送する。つまり、移動したい方向(進行方向)のコア20に磁極を生じさせ、その磁極によって永久磁石10を引っ張ることで被搬送体を進行方向に搬送する。本実施例では、5つのコア20において、被搬送体の永久磁石10の検体10を搭載する側と反対側(―Z軸方向側)で磁性体のヨーク40で磁気的に結合されている。このようにすることで、複数のコア20を保持することができ、また、コア20の位置の精度も得られると同時に、永久磁石10に作用する磁束も大きくできる利点がある。本実施例では、5つのコア20を十字状に配列しており、永久磁石10をX軸方向およびY軸方向に移動させることができる。なお、本実施例のコア20の数は5つであるが、この数に限定されるわけではない。コア20を被搬送したい領域に敷き詰めることで、広範囲の搬送を可能にするものである。
【0020】
図1において、永久磁石10はコア20のZ軸方向に、コア20と対向するように配置され、搬送路上を移動する。永久磁石10は、進行したい方向の巻線30に電流を流し、進行したい方向のコア20に、永久磁石10の磁極を吸引する磁極を生じさせ、その位置に移動させるものである。本実施例においては、コア20の永久磁石側に平板状の搬送路15が配置される。被搬送体に設けられた永久磁石10は、搬送面の上をすべるように移動する。
【0021】
図3を用いて、永久磁石10をX軸方向にA位置からB位置に移動し、B位置に停止させる場合の永久磁石10の停止方法について説明する。本図では搬送路は図示しない。例えば、Bの位置で試薬の滴下や、分注作業のためにロボットなどが検体を保持しようとする場合や、搬送面上で分注や試薬の滴下を行う場合、被搬送体となる検体等の位置がばらつくと検体や試液がこぼれてしまったり、場合によっては、開栓している検体が倒れてしまい、検体が搬送面上にこぼれてしまう場合がある。つまり、搬送面上の位置精度のばらつきによって作業ミスが生じていた。
【0022】
本発明は、コア20の狙った位置に精度よく検体停止させることを目的としている。B位置に永久磁石10を停止させようとした場合、X方向のB位置近傍では、永久磁石10と、永久磁石10の直下のコア20Bと吸引力が働く。つまり、永久磁石10に-Z方向に力が生じる。この-Z方向に生じる力は、永久磁石10を搬送面に押し付ける力となり、永久磁石10が移動する際の摩擦力になる。そこで、永久磁石10の直下のコア20Bに巻かれた巻線30Bに永久磁石10の磁極に反発する磁極を発生させる電流を流すことで、この-Z方向の力を軽減できる。
【0023】
図4はB位置付近のZ軸方向に働く力を示すグラフである。
図4は、巻線30Bに永久磁石10の磁極に反発する磁極を発生させる電流と永久磁石10に働くZ方向の力を示している。反発させる磁極を発生させる電流の増加に伴い、Z方向の力は減少し、おおむね0.3A~0.35A程度の電流でZ方向の力を0近くにできる(
図4の位置0がB位置に永久磁石10がある場合のZ方向に働く力)。ここで、巻線30Bに反発する磁極を発生させる電流を流さない場合は、-Z方向に1.7N以上の力が発生し、これが、永久磁石10を搬送面に押し付ける摩擦力が発生する。
【0024】
図5は永久磁石をA位置からB位置に移動させた場合の各位置における推力(X方向に働く力)を示すグラフである。
図5は、巻線30Bに永久磁石10を吸引させる電流を流した場合の、永久磁石10のX方向の位置がA(位置-1.0)からB(位置0.0)に移った場合の永久磁石10に作用するX方向の力(推力)を示す。従来の方法は、この目的とする場所に移動停止させようとする場合、永久磁石10がAの位置にあれば、コア20Bに吸引する磁極を生じるように、B位置の巻線30Bに電流を流すことで、B位置に引き込んで停止させていた。しかし、その場合の推力と位置の特性は、永久磁石10がA位置からB位置に行くにしたがって一度は徐々に大きくなっていくが、中間を超えた付近から減少していき、B位置ではほぼ推力がゼロになる。つまり、永久磁石10が目標とするB位置の近傍に近づくと、X方向に移動させることのできる推力がほぼ0になってしまう。このため、目標のB位置近傍での位置決め精度が悪化する。
【0025】
さらに、
図4に示したように、永久磁石10に働く-Z方向の力は、大きく変化しないため推力に対し、相対的に摩擦力が大きくなり、摩擦力に打ち勝つ推力を発生できなくなるため、B位置に正確に止めるのが困難であった。また、目標のB位置からずれた場所で一度止まってしまうと、静摩擦力が生じ、再度動かすのに十分な推力が発生できないことや、隣接するコアで引き込んだ場合も静摩擦から動摩擦に変化するタイミングで急峻に被搬送体が動くため微小な位置決めが困難であった。
【0026】
そこで、少なくとも2つ以上の、コイルを有し、永久磁石を停止させる位置の永久磁石に対向する位置にある第1のコイル(コア20Bにまかれた第1の巻線30B)と、コア20Bにまかれた第1のコイルの巻線30Bと隣り合う第2のコイル(コア20Cに巻かれた巻線30C)に電流を流すことにより、第1のコイル(第1の巻線30B)により主にZ方向の力(摩擦力)を調整し、第2のコイル(第2の巻線)30Cにより主にX方向の力(推力)を調整することにより、摩擦力の影響を軽減し、位置決めの精度を向上できる。巻線に電流を流すことにより、X方向およびZ方向の両方の力が生じるが、永久磁石10の直下の第1の巻線30Bを励磁した場合、推力<吸引力であり、第1の巻線30Bに隣り合う第2の巻線30Cを励磁した場合、推力>吸引力となるため、少なくとも2つの巻線に同時に電流を流すことにより、推力と吸引力を調整することが可能になり、目標の位置で停止させる精度が向上する。
【実施例2】
【0027】
図6は実施例2の搬送装置の概略構成を示す断面図である。実施例6の検体搬送装置1bの基本的な構成は
図1に示した検体搬送装置1aと同様である。
【0028】
永久磁石10の目標停止位置となるコア20BのX軸方向の中心に対し、永久磁石10までの距離をx1とする。ここで、永久磁石10の径をD、コア20Bの径をdとする。仮に、停止させようとする位置のコア中心と、永久磁石10までの距離x1が、永久磁石10の半径D/2、コア20Bの半径d/2より短い場合、永久磁石10とコア20Bが搬送路15を介して対向する。この対向する面積が大きくなると、-Z方向の力が大きくなる。つまり、永久磁石10とコア20Bの間の摩擦力が大きくなる。したがって、この範囲で、第1のコイル(コア20Bに巻かれた巻線30B)に、永久磁石10と反発する磁極を発生させることで、摩擦力を低減できる。このとき、永久磁石10搬送方向の先にある第2のコイルの20には、永久磁石10を吸引させる磁極を発生させる、あるいは、永久磁石10の慣性力によってX方向に移送させる。つまり、x1≦(D/2+d/2)の区間において、永久磁石の極性と反発する磁束を生じさせる電流を前第1の巻線20Bに流すことにより、摩擦力を軽減でき、位置決めの精度を向上できる。
【0029】
また、永久磁石10がある速度で移動している際は、X方向の移動は被搬送体の慣性力で行い、x1≦(D/2+d/2)の区間のみで直下の巻線20Bで反発力を発生させ、摩擦力を軽減することも可能である。
【実施例3】
【0030】
図7は実施例3の搬送装置の概略構成を示す断面図である。本実施例7の検体搬送装置1cの基本的な構成は
図1に示した検体搬送装置1aと同様である。
【0031】
図7において、永久磁石10の径をD、コア20Bの径をdとする。永久磁石10の中心が、前記永久磁石を停止させる位置の永久磁石に対向する位置にあるコア20Bの中心に対して±d/2の範囲にあるときにおいては、永久磁石10がコア20Bによって-Z方向に作用する力が大きくなり、摩擦力が急激に大きくなる。さらに、永久磁石10のコア20Bへの流入量の変化量が大きく変化しないため、磁束の変化量で推力が決まるため推力も小さい領域となる。したがって、この領域では摩擦力が大きく、推力が小さくなる範囲であり、永久磁石10の極性と反発する磁束を生じさせる電流を第1の巻線20Bに流すことにより永久磁石10へ作用する推力と摩擦力の比、つまり推力/摩擦力を大きくできるため、実効的な推力が向上し、停止位置の精度が向上する。
【実施例4】
【0032】
図8および
図9は実施例4の搬送装置の概略構成を示す断面図である。本実施例8の検体搬送装置1dの基本的な構成は
図1に示した搬送装置1と同様である。
【0033】
図8において、永久磁石10の径をD、コア20Bの径をdとする。
図8は、永久磁石10の径Dが永久磁石10を停止させる位置の永久磁石10に対向する位置にあるコア20Bの径dより大きい。このとき、永久磁石10の中心が永久磁石10を停止させる位置の永久磁石10に対向する位置にあるコアの中心に対して±(D-d)/2の範囲にあるとき、小さい径側のコア20Bは常に永久磁石10と対向しており、対向面積も大きくなり、その範囲を移動する際において、対向面積の変化が小さい。つまり、永久磁石10とコア20Bの-Z方向の力が大きく、推力が小さい範囲である。このとき、永久磁石10の極性と反発する磁束を生じさせる電流を第1の巻線20Bに流すことにより、永久磁石10に作用する推力を大きく、摩擦力を小さくできる。
【0034】
ここで、永久磁石10およびコア20の形状は円柱状に限定されるものではなく、同様の効果が得られれば良い。
【0035】
図9において、永久磁石10の径をD、コア20Bの径をdとする。
図9は、永久磁石10の径Dが永久磁石10を停止させる位置の永久磁石10に対向する位置にあるコア20Bの径dより小さい。このとき、永久磁石10の中心が永久磁石10を停止させる位置の永久磁石10に対向する位置にあるコアの中心に対して±(d-D)/2の範囲にあるとき、小さい径側のコア20Bは常に永久磁石10と対向しており、対向面積も大きくなり、その範囲を移動する際において、対向面積の変化が小さい。つまり、永久磁石10とコア20Bの-Z方向の力が大きく、推力が小さい範囲である。このとき、永久磁石10の極性と反発する磁束を生じさせる電流を第1の巻線20Bに流すことにより、永久磁石10に作用する推力を大きく、摩擦力を小さくできる。
【実施例5】
【0036】
図10は永久磁石10およびコア20の形状を示す模式図である。本実施例では、検体に設けられた永久磁石10と、コア20の形状例について説明する。
図10の(a)、(b)、(c)および(d)の各図は、永久磁石10と、コア20を搬送面(XY平面)に投影した図である。
【0037】
図10(a)は、円柱の永久磁石10と、円柱のコア20の場合であり、永久磁石10の径が円柱のコア20の径よりも小さいケースである。この場合、円柱のコア20のXY面の投影領域内に、永久磁石10のXY面の投影領域が収まる範囲において、永久磁石10の極性と反発する磁束を生じさせる電流を第1の巻線20に流すことにより、永久磁石10に作用する推力を大きく、摩擦力を小さくできる。
【0038】
図10(b)は、円柱の永久磁石10と、円柱のコア20の場合であり、永久磁石10の径が円柱のコア20の径よりも大きいケースである。この場合、永久磁石10のXY面の投影領域内に、円柱のコア20のXY面の投影領域が収まる範囲において、永久磁石10の極性と反発する磁束を生じさせる電流を第1の巻線20に流すことにより、永久磁石10に作用する推力を大きく、摩擦力を小さくできる。
【0039】
図10(c)は、矩形の永久磁石10と、矩形のコア20の場合であり、永久磁石10の面積が円柱のコア20の面積よりも小さいケースであり、この場合、矩形のコア20のXY面の投影領域内に、矩形の永久磁石10のXY面の投影領域が収まる範囲において、永久磁石10の極性と反発する磁束を生じさせる電流を第1の巻線20に流すことにより、永久磁石10に作用する推力を大きく、摩擦力を小さくできる。
【0040】
図10(d)は、円柱の永久磁石10と、矩形のコア20の場合であり、永久磁石10の面積が円柱のコア20の面積よりも小さいケースであり、この場合、矩形のコア20のXY面の投影領域内に、円柱の永久磁石10のXY面の投影領域が収まる範囲において、永久磁石10の極性と反発する磁束を生じさせる電流を第1の巻線20に流すことにより、永久磁石10に作用する推力を大きく、摩擦力を小さくできる。
【実施例6】
【0041】
図11は実施例6の搬送装置の概略構成を示す断面図である。基本的な構成・作用は他の実施例と同様であるが、コア20の永久磁石10に対向する側の形状が大きくなっており、巻線30の内側のコア断面より大きい(T字形状)。このとき、巻線に流した電流によって生じる磁束が大きくなり、また、永久磁石10とコア20の対向面積も大きくできるため、搬送区間における永久磁石10に作用する推力のピークを大きくできる(
図5に示した推力のピークが増加する)。しかし、コア20の直上のでは推力がゼロになるため、コア20のX方向の近辺では推力がほぼゼロになる。その一方で、永久磁石10とコア20の対向面積が大きくなり、-Z方向の力、すなわち摩擦力が大きくなってしまう。このように、コア20の形状をT字形状にすることで大きなピーク推力が得られ、コア20の直上の摩擦力を小さくすることで、搬送能力および搬送のための推力が大きく、摩擦力が小さい搬送装置を提供できる。
【実施例7】
【0042】
図12は実施例7の検体搬送装置の模式図である。本実施例では、実施例1~6で説明した検体搬送装置の周辺の構成をより詳細に説明する。実施例7の検体搬送装置100は、3つのコア20A,20B,20Cを有し、その各コア周りに巻線30A,30B,30Cを配置したものである。各巻線にはそれぞれ駆動回路50が設けられ、個別に各巻線の電流値を制御できる。その電流値は、永久磁石10の位置を検出する位置または速度検出部60を有しており、その情報を基に電流指令演算部55で算出される。このように構成することで、各巻線の電流値を永久磁石10の位置に基づき調整することにより、微小な位置の位置決めが可能となり、搬送位置の精度を向上できる。
【実施例8】
【0043】
図13は実施例8の検体分析システムの模式図である。本実施例では、本発明の検体搬送装置を備えた検体分析システムについて説明する。
【0044】
図13に示すように、検体分析システム200aは、反応容器に検体と試薬を各々分注して反応させ、この反応させた液体を測定する装置であり、搬入部101、緊急ラック投入口113、搬送ライン102、バッファ104、分析部105、収納部103、表示部118および制御部120を備える。
【0045】
搬入部101は、血液や尿などの生体試料を収容する検体容器122が複数収納された検体ラック111を設置する場所である。緊急ラック投入口113は、標準液を搭載した検体ラック(キャリブラック)や緊急で分析が必要な検体が収容された検体容器122を収納する検体ラック111を装置内に投入するための場所である。
【0046】
バッファ104は、検体ラック111中の検体の分注順序を変更可能なように、搬送ライン102によって搬送された複数の検体ラック111を保持する。
【0047】
分析部105は、バッファ104からコンベアライン106を経由して搬送された検体を分析する。その詳細は後述する。
【0048】
収納部103は、分析部105で分析が終了した検体を保持する検体容器122が収容された検体ラック111を収納する。
【0049】
搬送ライン102は、搬入部101に設置された検体ラック111を搬送するラインであり、上述した実施例1~実施例6で説明した本発明の検体搬送装置の構成を有する。本実施例では、磁性体、好適には永久磁石は検体ラック111の裏面側に設けられている。
【0050】
分析部105は、コンベアライン106、反応ディスク108、検体分注ノズル107、試薬ディスク110、試薬分注ノズル109、洗浄機構112、試薬トレイ114、試薬IDリーダー115、試薬ローダ116、分光光度計121等により構成される。
【0051】
コンベアライン106は、バッファ104中の検体ラック111を分析部105に搬入するラインであり、上述した実施例1~実施例6で説明した本発明の検体搬送装置の構成を有する。
【0052】
反応ディスク108は、複数の反応容器を備えている。検体分注ノズル107は、回転駆動や上下駆動により検体容器122から反応ディスク108の反応容器に検体を分注する。試薬ディスク110は、複数の試薬を架設する。試薬分注ノズル109は、試薬ディスク110内の試薬ボトルから反応ディスク108の反応容器に試薬を分注する。洗浄機構112は、反応ディスク108の反応容器を洗浄する。分光光度計121は、光源(図示省略)から反応容器の反応液を介して得られる透過光を測定することにより、反応液の吸光度を測定する。
【0053】
試薬トレイ114は、検体分析システム200a内への試薬登録を行う場合に、試薬を設置する部材である。試薬IDリーダー115は、試薬トレイ114に設置された試薬に付された試薬IDを読み取ることで試薬情報を取得するための機器である。試薬ローダ116は、試薬を試薬ディスク110へ搬入する機器である。
【0054】
表示部118は、血液や尿等の液体試料中の所定の成分の濃度の分析結果を表示するための表示機器である。
【0055】
制御部120は、コンピュータ等から構成され、検体分析システム200a内の各機構の動作を制御するとともに、血液や尿等の検体中の所定の成分の濃度を求める演算処理を行う。
【0056】
以上が検体分析システム200aの全体的な構成である。
【0057】
上述のような検体分析システム200aによる検体の分析処理は、一般的に以下の順に従い実行される。
【0058】
まず、検体ラック111が搬入部101または緊急ラック投入口113に設置され、搬送ライン102によって、ランダムアクセスが可能なバッファ104に搬入される。
【0059】
検体分析システム200aは、バッファ104に格納されたラックの中で、優先順位のルールに従い、最も優先順位の高い検体ラック111をコンベアライン106によって、分析部105に搬入する。
【0060】
分析部105に到着した検体ラック111は、さらにコンベアライン106によって反応ディスク108近くの検体分取位置まで移送され、検体分注ノズル107によって検体を反応ディスク108の反応容器に分取される。検体分注ノズル107により、当該検体に依頼された分析項目に応じて、必要回数だけ検体の分取を行う。
【0061】
検体分注ノズル107により、検体ラック111に搭載された全ての検体容器122に対して検体の分取を行う。全ての検体容器122に対する分取処理が終了した検体ラック111を、再びバッファ104に移送する。さらに、自動再検を含め、全ての検体分取処理が終了した検体ラック111を、コンベアライン106および搬送ライン102によって収納部103へと移送する。
【0062】
また、分析に使用する試薬を、試薬ディスク110上の試薬ボトルから試薬分注ノズル109により先に検体を分取した反応容器に対して分取する。続いて、撹拌機構(図示省略)で反応容器内の検体と試薬との混合液の撹拌を行う。
【0063】
その後、光源から発生させた光を撹拌後の混合液の入った反応容器を透過させ、透過光の光度を分光光度計121により測定する。分光光度計121により測定された光度を、A/Dコンバータおよびインターフェイスを介して制御部120に送信する。そして制御部120によって演算を行い、血液や尿等の液体試料中の所定の成分の濃度を求め、結果を表示部118等にて表示させたり、記憶部(図示省略)に記憶させたりする。
【0064】
なお、
図13に示すように、検体分析システム200aは、上述したすべての構成を備えている必要はなく、前処理用のユニットを適宜追加したり、一部ユニットや一部構成を削除したりすることができる。また、分析部105は生化学分析用に限られず、免疫分析用であってもよい、更に1つである必要はなく、2以上備えることができる。この場合も、分析部105と搬入部101との間を搬送ライン102により接続し、搬入部101から検体ラック111を搬送する。
【実施例9】
【0065】
図14は検体前処理システムの模式図である。本実施例では、検体前処理装置150の全体構成について
図14を用いて説明する。
【0066】
図14において、検体前処理装置150は、検体の分析に必要な各種前処理を実行する装置である。
図14中左側から右側に向けて、閉栓ユニット152、検体収納ユニット153、空きホルダスタッカー154、検体投入ユニット155、遠心分離ユニット156、液量測定ユニット157、開栓ユニット158、子検体容器準備ユニット159、分注ユニット165、移載ユニット161を基本要素とする複数のユニットと、これら複数のユニットの動作を制御する操作部PC163とから構成されている。
【0067】
検体前処理装置150で処理された検体の移送先として、検体の成分の定性・定量分析を行うための検体分析システム200aが接続されている。
【0068】
検体投入ユニット155は、検体が収容された検体容器122を検体前処理装置150内に投入するためのユニットである。遠心分離ユニット156は、投入された検体容器122に対して遠心分離を行うためのユニットである。液量測定ユニット157は、検体容器122に収容された検体の液量測定を行うユニットである。開栓ユニット158は、投入された検体容器122の栓を開栓するユニットである。子検体容器準備ユニット159は、投入された検体容器122に収容された検体を次の分注ユニット165において分注するために必要な準備を行うユニットである。分注ユニット165は、遠心分離された検体を、検体分析システムなどで分析するために小分けを行うとともに、小分けされた検体容器122、子検体容器122にバーコード等を貼り付けるユニットである。移載ユニット161は、分注された子検体容器122の分類を行い、検体分析システムへの移送準備を行うユニットである。閉栓ユニット152は、検体容器122や子検体容器122に栓を閉栓するユニットである。検体収納ユニット153は、閉栓された検体容器122を収納するユニットである。
【0069】
これら各ユニット間や検体前処理装置150と検体分析システム200aとの間で検体容器122を保持する検体ホルダや検体ラックを搬送する機構として実施例1乃至実施例6のいずれかの搬送装置を用いる。
【0070】
なお、検体前処理装置150は、上述したすべての構成を備えている必要はなく、更にユニットを追加したり、一部ユニットや一部構成を削除したりすることができる。
【0071】
また、本実施例の検体分析システムは、
図14に示すような検体前処理装置150と検体分析システム200aから構成された検体分析システム200であってもよい。この場合は、各システム内だけではなく、システムとシステムとの間を上述した実施例1~実施例3の検体送装置にて接続し、検体容器122を搬送することができる。
【0072】
本発明の実施例7の検体分析システム200aや検体前処理装置150は、前述した実施例1の搬送装置1aを備えていることにより、高効率で検体容器122を搬送先まで搬送することができ、分析結果が得られるまでの時間を短くすることができる。また搬送トラブルも少なく、検査技師の負担を軽減することができる。
【0073】
なお、本実施例は、検体が収容された検体容器122を5本保持する検体ラック111を搬送対象として搬送する場合について例示したが、検体容器122を5本保持する検体ラック111以外にも、検体容器122を2本保持する検体ホルダを搬送対象として搬送することができる。
【0074】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0075】
また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0076】
例えば、実施例1~実施例8では、搬送装置で搬送する被搬送物が検体ラック111や検体ホルダである場合について説明したが、被搬送物は検体容器122を保持するラック、ホルダ等に限られず、大規模に搬送することが求められる様々な物体を搬送対象とすることができる。
【符号の説明】
【0077】
1a,1b,1c,1d,1e…検体搬送装置、10…永久磁石、15…搬送路、20,20A,20B,20C…コア(磁極)、30,30A,30B,30C…巻線、40…ヨーク、50…駆動回路、55…電流指令演算部、60…位置または速度検出部、100…検体分析システム、101…搬入部、102…搬送ライン、103…収納部、104…バッファ、105…分析部、106…コンベアライン、107…検体分注ノズル、108…反応ディスク、109…試薬分注ノズル、110…試薬ディスク、111…検体ラック(被搬送物)、112…洗浄機構、113…緊急ラック投入口、114…試薬トレイ、115…リーダー、116…試薬ローダ、118…表示部、120…制御部、121…分光光度計、122…検体容器、150…検体前処理装置、152…閉栓ユニット、153…検体収納ユニット、154…ホルダスタッカー、155…検体投入ユニット、156…遠心分離ユニット、157…液量測定ユニット、158…開栓ユニット、159…子検体容器準備ユニット、161…移載ユニット、163…操作部PC、165…分注ユニット、200a…検体分析システム。