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特許7545303フィルム成形用樹脂材料、フィルム状成形体、溶融袋、及びフィルムの製造方法
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  • 特許-フィルム成形用樹脂材料、フィルム状成形体、溶融袋、及びフィルムの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】フィルム成形用樹脂材料、フィルム状成形体、溶融袋、及びフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/06 20060101AFI20240828BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20240828BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240828BHJP
   B29C 48/08 20190101ALI20240828BHJP
   B29C 48/285 20190101ALI20240828BHJP
   B29C 48/395 20190101ALI20240828BHJP
   B29C 48/53 20190101ALI20240828BHJP
   B29C 48/625 20190101ALI20240828BHJP
【FI】
C08L23/06
C08L23/08
C08J5/18 CES
B29C48/08
B29C48/285
B29C48/395
B29C48/53
B29C48/625
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020195051
(22)【出願日】2020-11-25
(65)【公開番号】P2022083626
(43)【公開日】2022-06-06
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100211100
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 直樹
(72)【発明者】
【氏名】北川 翔
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-105252(JP,A)
【文献】特開平08-113660(JP,A)
【文献】特開2000-001556(JP,A)
【文献】特開2004-203936(JP,A)
【文献】特開2005-219818(JP,A)
【文献】特開2004-002581(JP,A)
【文献】特開2002-338704(JP,A)
【文献】特開2012-207175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/14
C08K 3/00 - 13/08
C08J 5/18
B29C 48/00 - 48/96
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)低密度ポリエチレンと、
(B)エチレン系共重合体と、を含む、フィルム成形用樹脂材料であって、
JIS K7210-1995に規定された方法に従い、荷重21.18N、温度190℃の条件で測定される前記エチレン系共重合体のメルトフローレートが2g/10分未満であり、
前記エチレン系共重合体が、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、飽和カルボン酸ビニルエステル及び不飽和カルボン酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種のカルボン酸系モノマーを、モノマー単位として、エチレン系共重合体の全質量を基準として、15質量%以上含有し、
前記エチレン系共重合体のメルトフローレートに対する、JIS K7210-1995に規定された方法に従い、荷重21.18N、温度190℃の条件で測定される前記低密度ポリエチレンのメルトフローレートの比が20超150以下であり、
前記低密度ポリエチレンの含有量が、当該フィルム成形用樹脂材料の全質量を基準として、50~80質量%である、フィルム成形用樹脂材料。
【請求項2】
JIS K7210-1995に規定された方法に従い、荷重21.18N、温度190℃の条件で測定される前記フィルム成形用樹脂材料のメルトフローレートが10g/10分以下である、請求項1に記載のフィルム成形用樹脂材料。
【請求項3】
前記カルボン酸系モノマーが、(メタ)アクリル酸アルキルエステルである、請求項1又は2に記載のフィルム成形用樹脂材料。
【請求項4】
前記低密度ポリエチレンが、高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレンである、請求項1~3のいずれか一項に記載のフィルム成形用樹脂材料。
【請求項5】
前記エチレン系共重合体が、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体である、請求項1~4のいずれか一項に記載のフィルム成形用樹脂材料。
【請求項6】
当該フィルム成形用樹脂材料が、前記低密度ポリエチレンを含有する第1のペレットと、前記エチレン系共重合体を含有する第2のペレットと、を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のフィルム成形用樹脂材料。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項のフィルム成形用樹脂材料のフィルム状成形体。
【請求項8】
請求項7に記載のフィルム状成形体からなる、溶融袋。
【請求項9】
第1のペレット及び第2のペレットを含む予備混合物を製膜することでフィルムを形成する製膜工程を備え、
前記第1のペレットが、(A)低密度ポリエチレンを含み、
前記第2のペレットが、(B)エチレン系共重合体を含み、
JIS K7210-1995に規定された方法に従い、荷重21.18N、温度190℃の条件で測定される前記エチレン系共重合体のメルトフローレートが2g/10分未満であり、
前記エチレン系共重合体が、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、飽和カルボン酸ビニルエステル及び不飽和カルボン酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種のカルボン酸系モノマーを、モノマー単位として、エチレン系共重合体の全質量を基準として、15質量%以上含有し、
前記エチレン系共重合体のメルトフローレートに対する、JIS K7210-1995に規定された方法に従い、荷重21.18N、温度190℃の条件で測定される前記低密度ポリエチレンのメルトフローレートの比が20超150以下であり、
前記低密度ポリエチレンの含有量が、前記第1のペレット及び前記第2のペレットの合計質量を基準として、50~80質量%である、フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記製膜工程前に、前記第1のペレット及び前記第2のペレットを予備混合する工程を含む、請求項9に記載のフィルムの製造方法。
【請求項11】
スクリューを有する押出機を備える製膜機によって、前記第1のペレット及び前記第2のペレットの予備混合物を製膜する、請求項9又は10に記載のフィルムの製造方法。
【請求項12】
前記スクリューのスクリュー直径に対するスクリュー有効長さの比が5以上50以下である、請求項11に記載のフィルムの製造方法。
【請求項13】
前記スクリューが、単軸スクリューである、請求項11又は12に記載のフィルムの製造方法。
【請求項14】
前記スクリューがフルフライトスクリューである、請求項11~13のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム成形用樹脂材料、フィルム状成形体、溶融袋、及びフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融袋は、接着剤等の内容物を包装した状態で、そのまま高温容器に投入可能な袋である。例えば、溶融袋として、融点110℃以下、密度0.915~0.922、メルトフローレート15~35の低密度ポリエチレン樹脂からなる溶融袋等が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-177284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
溶融袋の形成に用いられるフィルムには、耐ブロッキング性、溶融性及びインフレーション製膜性といった物性に優れていることが望ましい。
【0005】
本発明の目的は、耐ブロッキング性、溶融性及びインフレーション製膜性のすべてに優れるフィルムを形成可能なフィルム成形用樹脂材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、(A)低密度ポリエチレンと、(B)エチレン系共重合体と、を含む、フィルム成形用樹脂材料であって、前記エチレン系共重合体のメルトフローレートが2g/10分未満であり、前記エチレン系共重合体が、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、飽和カルボン酸ビニルエステル及び不飽和カルボン酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種のカルボン酸系モノマーを、モノマー単位として、エチレン系共重合体の全質量を基準として、15質量%以上含有し、前記エチレン系共重合体のメルトフローレートに対する、前記低密度ポリエチレンのメルトフローレートの比が20超150以下であり、前記低密度ポリエチレンの含有量が、当該フィルム成形用樹脂材料の全質量を基準として、50~80質量%である、フィルム成形用樹脂材料に関する。
【0007】
本発明の別の一側面は、前記フィルム成形用樹脂材料のフィルム状成形体に関する。本発明の別の一側面は、前記フィルム状成形体からなる、溶融袋に関する。
【0008】
本発明の別の一側面は、第1のペレット及び第2のペレットを含む予備混合物を製膜することでフィルムを形成する製膜工程を備え、前記第1のペレットが、(A)低密度ポリエチレンを含み、前記第2のペレットが、(B)エチレン系共重合体を含み、前記エチレン系共重合体のメルトフローレートが2g/10分未満であり、前記エチレン系共重合体が、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、飽和カルボン酸ビニルエステル及び不飽和カルボン酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種のカルボン酸系モノマーを、モノマー単位として、エチレン系共重合体の全質量を基準として、15質量%以上含有し、前記エチレン系共重合体のメルトフローレートに対する、前記低密度ポリエチレンのメルトフローレートの比が20超150以下であり、前記低密度ポリエチレンの含有量が、前記第1のペレット及び前記第2のペレットの合計質量を基準として、50~80質量%である、フィルムの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一側面によれば、耐ブロッキング性、溶融性及びインフレーション製膜性のすべてに優れるフィルムを形成可能なフィルム成形用樹脂材料を提供することが可能となる。本発明の一側面によれば、フィルム成形用樹脂材料を用いたフィルム及び溶融袋を提供することが可能となる。本発明の一側面によれば、耐ブロッキング性、溶融性及びインフレーション製膜性のすべてに優れるフィルムの製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】インフレーション法による製膜に用いられる製膜機の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
一実施形態に係るフィルム成形用樹脂材料は、(A)低密度ポリエチレンと、(B)エチレン系共重合体と、を含有する。
【0013】
(A)低密度ポリエチレン
低密度ポリエチレンは、密度930kg/m未満のポリエチレンである。ポリエチレンの密度は、JIS K6760の方法によって測定される。低密度ポリエチレンの密度は、例えば、850~928kg/m又は910~925kg/mであってもよい。
【0014】
低密度ポリエチレンのメルトフローレート(MFR)は、1.0~100g/10分、2.0~75g/10分、又は5.0~40g/10分であってよい。本明細書において、メルトフローレート(MFR)は、JIS K7210-1995に規定された方法に従い、荷重21.18N、温度190℃の条件で測定されるものである。
【0015】
低密度ポリエチレンは、例えば、高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレンであってよい。高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレンは、高圧ラジカル重合法によって製造される低密度ポリエチレンである。高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレンは、例えば、有機過酸化物又は酸素等を重合開始剤とし、通常、重合圧力100~300MPa程度、重合温度130~300℃程度の条件下でエチレンをラジカル重合させることにより得られる。
【0016】
低密度ポリエチレンとして、例えば、スミカセン G801、スミカセン L705、スミカセン G806、スミカセン F200-0(いずれも住友化学株式会社製であり、スミカセンは登録商標である。)等が挙げられる。
【0017】
低密度ポリエチレンの含有量は、フィルム成形用樹脂材料の全質量を基準として、50~80質量%であり、55~78質量%、又は60~75質量%であってもよい。
【0018】
(B)エチレン系共重合体
エチレン系共重合体は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、飽和カルボン酸ビニルエステル及び不飽和カルボン酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種のカルボン酸系モノマーと、エチレンと、をモノマー単位として有する共重合体である。
【0019】
エチレン系共重合体は、エチレンをモノマー単位として、エチレン系共重合体の全質量を基準として、50質量%以上、55質量%以上、又は60質量%以上含有していてよく、85質量%以下、80質量%以下、又は75質量%以下含有していてよい。
【0020】
エチレン系共重合体は、カルボン酸系モノマーを、モノマー単位として、エチレン系共重合体の全質量を基準として、15質量%以上含有する。モノマー単位として含まれるカルボン酸系モノマーの含有量は、溶融性により一層優れる観点から、エチレン系共重合体の全質量を基準として、16質量%以上、又は17質量%以上であってもよい。モノマー単位として含まれるカルボン酸系モノマーの含有量は、エチレン系共重合体の全質量を基準として、50質量%以下、45質量%以下、又は40質量%以下であってもよい。
【0021】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、メタクリル酸又はアクリル酸を意味する。
【0022】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、メタクリロイルオキシ基又はアクリロイルオキシ基に、アルキル基が直接結合した化合物である。(メタ)アクリル酸アルキルエステル中のアルキル基の炭素数は、例えば、1~20又は1~10であってよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートが挙げられる。
【0023】
飽和カルボン酸ビニルエステルは、飽和炭化水素基と当該飽和炭化水素基に結合したカルボキシ基とからなる化合物のビニルエステルである。飽和カルボン酸ビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ブタン酸ビニル、安息香酸ビニルが挙げられる。
【0024】
不飽和カルボン酸無水物は、不飽和炭化水素基と2個のカルボキシ基とを有する化合物が分子内で脱水縮合して得られる化合物である。不飽和カルボン酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸が挙げられる。
【0025】
エチレン系共重合体は、例えば、エチレンと、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとをモノマー単位として有するエチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体であってよい。エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体は、エチレン及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外のモノマー単位を含んでいても、含んでいなくてもよい。エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体中のエチレン及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外のモノマー単位の割合は、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の全質量を基準として、35質量%以下、又は25質量%以下であってよい。エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体は、エチレンと、メタクリル酸メチルとをモノマー単位として有するエチレン-メタクリル酸メチル共重合体(エチレンメチルメタクリレート)であってよい。
【0026】
エチレン系共重合体としては、例えば、アクリフト WH102、アクリフト WH206-F、アクリフト WD106(いずれも住友化学株式会社製であり、アクリフトは登録商標である。)等が挙げられる。
【0027】
エチレン系共重合体のメルトフローレートは、2g/10分未満であり、耐ブロッキング性がより一層向上する観点、及びインフレーション製膜性がより一層向上する観点から、1.5g/10分以下、1.0g/10分以下、0.80g/10分以下、0.60g/10分以下、0.40g/10分以下、又は0.30g/10分以下であってよく、0.1g/10分以上、又は0.2g/10分以上であってもよい。
【0028】
エチレン系共重合体の含有量は、フィルム成形用樹脂材料の全質量を基準として、21質量%以上、22質量%以上、又は25質量%以上であってよく、45質量%以下、40質量%以下、又は35質量%以下であってもよい。
【0029】
エチレン系共重合体のメルトフローレートに対する(B)、低密度ポリエチレン(A)のメルトフローレートの比(A/B)は、20超150以下である。A/Bは、耐ブロッキング性がより一層向上する観点、及びインフレーション製膜性がより一層向上する観点から、140以下、130以下、120以下、110以下、100以下、90以下、又は85以下であってよい。A/Bは、溶融性により一層優れる観点から、25以上、30以上、40以上、50以上、60以上、70以上又は75以上であってよい。
【0030】
一実施形態に係るフィルム成形用樹脂材料は、低密度ポリエチレン及びエチレン系共重合体以外の他の成分を更に含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、アンチブロッキング剤(AB剤)・滑剤マスターバッチ(MB)、酸化防止剤MB、帯電防止剤MB等が挙げられる。他の成分の含有量は、フィルム成形用樹脂材料の全質量を基準として、10質量%以下、又は5質量%以下であってよく、0.1質量%以上、又は0.5質量%以上であってもよい。
【0031】
フィルム成形用樹脂材料のメルトフローレートは、10g/10分以下であってよく、9g/10分以下、又は8g/10分以下であってよい。フィルム成形用樹脂材料のメルトフローレートは、例えば、1g/10分以上又は2g/10分以上であってもよい。フィルム成形用樹脂材料のメルトフローレートは、後述する実施例に記載の方法によって測定される。
【0032】
低密度ポリエチレン及びエチレン系共重合体それぞれは、ペレット状であってもよい。フィルム成形用樹脂材料は、低密度ポリエチレンを含む第1のペレットと、エチレン系共重合体を含む第2のペレットとを含んでいてよい。低密度ポリエチレン及びエチレン系共重合体は、混合されていてもよく、混合されていなくてもよい。
【0033】
フィルム成形用樹脂材料のフィルム状成形体(フィルム)は、溶融袋に用いることができる。フィルム成形用樹脂材料は、上述したフィルム成形用樹脂材料をフィルム形状に成形することによって得られる。フィルム状成形体は、上述したフィルム成形用樹脂材料からなる、単層のフィルムであってよい。
【0034】
フィルム状成形体の厚さは、例えば、10~500μm、又は20~250μmであってよい。
【0035】
フィルム状成形体のブロッキング強度は、例えば、0.80以下、0.60以下、0.40以下、0.20以下、又は0.10以下であってよい。フィルム状成形体のブロッキング強度は、後述する実施例に記載の方法によって測定される強度である。
【0036】
フィルム状成形体の溶解熱量(ΔH)は、例えば、125未満、120以下、又は115以下であってよい。フィルムの溶解熱量(ΔH)は、後述する実施例に記載の方法によって測定される。
【0037】
本実施形態に係るフィルムの製造方法は、第1のペレット及び第2のペレットの予備混合物を製膜することでフィルムを形成する製膜工程を備える。製膜工程では、スクリューを有する押出機を備える製膜機によって、第1のペレット及び第2のペレットの予備混合物を製膜してよい。第1のペレットは、(A)低密度ポリエチレンを含み、第2のペレットは、(B)エチレン系共重合体を含む。(A)成分及び(B)成分の詳細は、上述したとおりであってよい。各成分の含有量は、第1のペレット及び第2のペレットの合計質量を基準として、上述した数値範囲内であってよい。
【0038】
以下、インフレーション法によって、本実施形態に係るフィルムを製造する方法を説明する。図1は、インフレーション法で用いられる製膜機の一例を示す。図1に示す製膜機10は、スクリュー11を有する押出機1、ダイス2、ホッパー3、ピンチロール5a,5b、ガイドロール6a,6b及び巻取機7を備えている。
【0039】
押出機1は、シリンダー12及びシリンダー内に設けられたスクリュー11を有する。押出機1は、スクリューが1本である単軸押出機及びスクリューが2本ある二軸押出機のいずれでもよいが、単軸押出機を好適に用いることができる。スクリュー11は、単軸スクリューであってよい。
【0040】
スクリューは、通常、フィード部(供給部)、コンプレッション部(圧縮部)及びメタリング部(計量部)からなる。スクリュー11は、フィード部及びコンプレッション部がシングルフライトで構成されたものである。スクリューとしては、メタリング部の一部がサブフライト(バリアフライト)又はミキシングで、他の部位がシングルフライトでそれぞれ構成されたスクリュー、又はメタリング部全体がシングルフライトで構成されたフルフライトスクリュー(フルシングルフライトスクリュー)が挙げられる。これらのなかでも、スクリューは、フルフライトスクリューであることが好ましい。
【0041】
スクリュー直径(D)に対する、スクリュー有効長さ(L)の比(L/D)は、5以上50以下であってよい。L/Dは、8以上45以下、10以上40以下、又は15以上30以下であってよい。スクリュー直径は、スクリューの呼び外径寸法、すなわち、スクリュー先端におけるスクリューの外径の基準寸法である。スクリュー有効長さは、スクリューの溝の軸方向長さ、すなわち、スクリューにおいて溝が設けられている部分の軸方向の長さである。
【0042】
押出機1は、原料を添加(供給)するためのホッパー3、及び、ダイス2と接続している。ホッパー3から、第1及び第2のペレットの予備混合物が供給される。第1及び第2のペレットの予備混合は、例えば、ヘンシェルミキサー、タンブルミキサー、又は樹脂袋中での手動でのミキシングにより、ペレットを混合したドライブレンドや、例えば、単軸混練機、又は二軸混練機を用いるメルトブレンドで実施されてよい。
【0043】
押出機1では、供給された第1及び第2のペレットの予備混合物が回転するスクリュー11によって移動しながら溶融混練される。溶融混練により形成された溶融樹脂は、定量で押し出されて、ダイス2に供給される。
【0044】
ダイス2としては、インフレーション法に用いられる通常のダイスを用いることができる。押出機1から押し出された溶融樹脂は、ダイス2からチューブ状に押し出される。次いで、押し出された溶融樹脂の内側に空気を供給することによって、膨張させて、チューブ状の溶融樹脂であるチューブフィルム4が形成される。空気は、図1中の矢印に示す方向に沿って供給される。チューブフィルム4は、ピンチロール5a,5bで挟み込みながら引っ張り、更に、ガイドロール6a,6bを介して巻取機7に巻き取る。これによって、ロール状のフィルムが製造される。
【0045】
一実施形態に係る溶融袋は、フィルム状成形体からなる。溶融袋は、例えば、フィルムを常法によって製袋する工程を含む方法によって製造することができる。
【0046】
溶融袋の形態は、特に限定されず、例えば、例えば、例えば、四方シール袋、三方シール袋、二方シール袋、ガセット包装袋、又はピロー包装袋等であることができる。
【0047】
溶融袋の大きさは、例えば、縦1~1000cm×横1~1000cmの範囲内であってよい。
【0048】
溶融袋で包装される対象は、例えば、接着剤(ホットメルト接着剤等)であってよい。溶融袋で包装される対象は、例えば、合成ゴム、及びタッキファイヤを含有するホットメルト接着剤であってよい。
【0049】
一実施形態に係る包装接着剤は、上述した溶融袋及び当該溶融袋で包装された接着剤からなる。包装ホットメルト接着剤は、例えば、溶融袋の開口部からホットメルト接着剤を入れ、当該開口部をシールすることを含む方法によって製造することができる。包装接着剤は、接着剤を溶融袋から取り出すことなく、包装接着剤を丸ごと溶融させることにより、接着剤として使用できる。
【実施例
【0050】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0051】
<原料>
(A)低密度ポリエチレン(LDPE)
(A1)製品名:スミカセン(登録商標)G801(住友化学株式会社製)
(A2)製品名:スミカセン(登録商標)L705(住友化学株式会社製)
(A3)製品名:スミカセン(登録商標)G806(住友化学株式会社製)
(A4)製品名:スミカセン(登録商標)F200-0(住友化学株式会社製)
(B)エチレン系共重合体
(B1)エチレンメチルメタクリレート(EMMA)、製品名:アクリフト(登録商標) WH102(住友化学株式会社製)
(B2)エチレンメチルメタクリレート、製品名:アクリフト(登録商標) WH206-F(住友化学株式会社製)
(B3)エチレンメチルメタクリレート、製品名:アクリフト(登録商標) WD106(住友化学株式会社製)
【0052】
その他、アンチブロッキング剤(AB剤)・滑剤MBとして、A-27(住友化学株式会社製)を用いた。
【0053】
<メルトフローレート(MFR)(単位:g/10分)>
MFRは、JIS K7210-1995に規定された方法に従い、荷重21.18N、温度190℃の条件で測定した。(B)成分のMFR、及び(B)成分のMFRに対する(A)成分のMFRの比を表1に示す。表1には、(A)成分及び(B)成分を含む混合物のペレット(フィルム成形用樹脂材料)のMFRも示す。当該ペレットは、次に示す方法で調製した。
主フィーダー及び副フィーダーと、押出機側に設けられたノズルヘッドとを有する同方向二軸混練押出機(KZW20TW、テクノベル社製)を準備した。この二軸混練押出機は、ホッパー側から押出方向に沿って設けられた9個のバレルC1~C9を有する。各バレルの温度を以下のように設定した。
C1:50℃
C2:100℃
C3~C9:170℃
二軸混練押出機のバレルC1に設けられたホッパー口に、主フィーダーからは(A)成分を、副フィーダーからは(B)成分、アンチブロッキング剤(AB剤)・滑剤MBを投入した。ノズルヘッドの温度を170℃に、スクリューの回転数を300rpmに、吐出量を5kg/時間にそれぞれ設定し、(A)成分と(B)成分とアンチブロッキング剤(AB剤)・滑剤MBを溶融混練した。二軸押出機から吐出された溶融混練物をペレタイザで切断して、(A)成分と(B)成分とアンチブロッキング剤(AB剤)・滑剤MBの混合物のペレットを得た。
【0054】
<フィルム加工>
製膜機として、プラコー社製インフレーションフィルム成形機(フルフライトタイプスクリューの単軸押出機(径:30mm、L/D=28)、及び、ダイス(ダイス径:50mm、リップギャップ:0.8mm))を用い、加工温度:140℃、押出量:5.5kg/hr、フロストラインディスタンス(FLD):200mm、ブロー比:1.8の加工条件で、フィルム加工(製膜)を実施した。表1に示す組成となるように(A)成分、(B)成分及びアンチブロッキング剤(AB剤)・滑剤MBを用いて製膜することにより、厚み:60μmのインフレーションフィルムを作製した。
【0055】
フィルム加工(製膜)には、(A)成分、(B)成分及びアンチブロッキング剤(AB剤)・滑剤MBの予備混合物を用いた。予備混合は、次に示す方法1(ペレブレ)、方法2(単軸プレ混錬)又は方法3(二軸プレ混錬)に記載の方法によって実施された。
【0056】
方法1:ペレブレ
ポリエチレン袋に、(A)成分、(B)成分、及び、アンチブロッキング剤(AB剤)・滑剤MBを投入し、袋を複数回回転させることで撹拌することで、ペレブレされたペレットを得た。
【0057】
方法2:単軸プレ混錬
主フィーダーと押出機側に設けられたノズルヘッドとを有する単軸混練押出機(ユニオンプラスチック社製)を準備した。この単軸混練押出機の各バレルの温度を以下のように設定した。
ホッパー下:100℃
その他:170℃
単軸混練押出機のホッパーより、事前にポリエチレン袋中で(A)成分、(B)成分、アンチブロッキング剤(AB剤)・滑剤MBをペレブレしたペレットを投入し、ノズルヘッドの温度を170℃に、スクリューの回転数を80rpmにそれぞれ設定し、(A)成分と(B)成分とアンチブロッキング剤(AB剤)・滑剤MBを溶融混練した。単軸押出機から吐出された溶融混練物をペレタイザで切断して、(A)成分と(B)成分とアンチブロッキング剤(AB剤)・滑剤MBの混合物のペレットを得た。
【0058】
方法3:二軸プレ混錬
主フィーダー及び副フィーダーと、押出機側に設けられたノズルヘッドとを有する同方向二軸混練押出機(KZW20TW、テクノベル社製)を準備した。この二軸混練押出機は、ホッパー側から押出方向に沿って設けられた9個のバレルC1~C9を有する。各バレルの温度を以下のように設定した。
C1:50℃
C2:100℃
C3~C9:170℃
二軸混練押出機のバレルC1に設けられたホッパー口に、主フィーダーからは(A)成分を、副フィーダーからは(B)成分、アンチブロッキング剤(AB剤)・滑剤MBを投入した。ノズルヘッドの温度を170℃に、スクリューの回転数を300rpmに、吐出量を5kg/時間にそれぞれ設定し、(A)成分と(B)成分とアンチブロッキング剤(AB剤)・滑剤MBを溶融混練した。二軸押出機から吐出された溶融混練物をペレタイザで切断して、(A)成分と(B)成分とアンチブロッキング剤(AB剤)・滑剤MBの混合物のペレットを得た。
【0059】
<せん断ブロッキング(BL)>
120mm×30mmのフィルムを用いて、フィルム同士を重ね合わせ、500g/40mm×30mmの荷重下で50℃、24時間状態調整を行った。その後、23℃、湿度50%雰囲気下に30分以上放置し、200mm/分の速度でせん断引張試験を行ない、試料の剥離に要する強度(ブロッキング強度)を測定した。強度の数値が小さい方が、耐ブロッキング性が優れることを示す。強度が0.80以下であると、耐ブロッキング性に優れていると評価される。表1中の耐ブロッキング性の評価基準は次に示すとおりである。
〇:ブロッキング強度0.80以下
×:ブロッキング強度0.80超
【0060】
<融解熱量(ΔH)>
融解熱量は、熱分析装置 示差走査熱量計(Diamond DSC パーキンエルマー社製)を用いて下記の方法で測定した。窒素雰囲気下で、約10mgの試料を封入したアルミニウムパンを、(1)150℃で5分間保持し、(2)10℃/分で150℃から-80℃まで降温し、(3)0℃で5分間保持し、(4)10℃/分で-80℃から150℃程度まで昇温したときの、(2)の測定で得られた示差走査熱量測定曲線を結晶化曲線とし、(4)の測定で得られた示差走査熱量測定曲線が融解曲線とした。結晶化ピーク温度は、結晶化曲線からブランクラインを引いた曲線において、最も発熱量が多い温度である。融解ピーク温度は、融解曲線からブランクラインを引いた曲線において、最も吸熱量が多い温度である。複数の結晶化ピークが存在する場合は、もっとも低温側に存在するピークの温度を結晶化ピーク温度とする。
ΔH(J/g)は、融解曲線からブランクラインを引いた曲線の積分値を熱量に換算し、測定に供した試料の重量で割ることによって求めた。
【0061】
表1中の溶融性の評価基準は、次に示すとおりである。
〇:ΔH120以下
×:ΔH120超
【0062】
<インフレーション製膜性(バブルの振れ)>
フィルム加工実施中に、バブルが蛇行するか、バブルが揺れていないかを目視で評価した。
【0063】
インフレーション製膜性の評価基準は、次に示すとおりである。
〇:振れなし
×:振れあり
【0064】
【表1】

【符号の説明】
【0065】
1…押出機、2…ダイス、3…ホッパー、4…チューブフィルム、5a,5b…ピンチロール、6a,6b…ガイドロール、7…巻取機、10…製膜機,11…スクリュー、12…シリンダー。

図1