(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】ジオポリマーフォーム配合物用レオロジー改質剤
(51)【国際特許分類】
C04B 28/26 20060101AFI20240828BHJP
C04B 12/04 20060101ALI20240828BHJP
C04B 24/26 20060101ALI20240828BHJP
C04B 24/12 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
C04B28/26
C04B12/04
C04B24/26 B
C04B24/26 F
C04B24/12 A
(21)【出願番号】P 2021544267
(86)(22)【出願日】2020-01-29
(86)【国際出願番号】 EP2020052153
(87)【国際公開番号】W WO2020157123
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2023-01-27
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】ベアンハート ファイヒテンシュラーガー
(72)【発明者】
【氏名】マキシム プルキン
(72)【発明者】
【氏名】サルナス トゥルツィンスカス
(72)【発明者】
【氏名】タチアナ ミトキナ
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-534965(JP,A)
【文献】国際公開第2017/174560(WO,A1)
【文献】特表2007-529583(JP,A)
【文献】特表2016-533403(JP,A)
【文献】特表2004-505127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 28/26
C04B 38/00-38/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン性コポリマー(i)が、
少なくとも1つのカチオン性基を有する少なくとも1つのカチオン性構造単位(I)と
、
少なくとも1つのポリオキシアルキレン基を有する少なくとも1つのマクロモノマー構造単位(II)と
を有する、ジオポリマーフォーム配合物中のレオロジー改質剤としての、少なくとも1種のカチオン性コポリマー(i)の使用
であって、
前記カチオン性コポリマー(i)が
a)式(I)
【化1】
[ここで、
R
1
は、水素および/またはメチルを表し、
R
2
は、
【化2】
からなる群から選択され、
ここで、
R
3
、R
4
およびR
5
は、それぞれ独立して、水素、1~20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5~8個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6~14個の炭素原子を有するアリールおよび/またはポリエチレングリコール(PEG)基を表し、
lは、0~2の整数を表し、
mは、0または1を表し、
nは、0~10の整数を表し、
Yは、不存在基、酸素、NH、および/またはNR
3
を表し、
Vは、-(CH
2
)
x
-、
【化3】
を表し、
ここで、
xは、1~6の整数を表し、かつ
Xは、ハロゲン原子、C
1
~C
4
-アルキルスルファート、C
1
~C
4
-アルキルスルホナート、C
6
~C
14
-(アルキル)アリールスルホナートおよび/またはスルファート、ジスルファート、ジホスファート、トリホスファートおよび/またはポリホスファートから選択される多価アニオンの一価当量を表す]
のカチオン性構造単位3~97mol%と、
b)式(II)
【化4】
[ここで、
R
6
は、以下の式(IIa)
【化5】
のポリオキシアルキレン基を表し
ここで、
oは、1~300の整数を表し、かつ
R
1
、R
3
、l、m、Y、V、およびxは、上述の意味を有し、
または、
R
6
は、ピロリドンおよび/またはカプロラクタムであり、l、m、YおよびVは、0または不存在基である]
のマクロモノマー構造単位97~3mol%と
を有する、
使用。
【請求項2】
前記カチオン性コポリマー(i)の前記構造単位(I)を形成するモノマー成分(A)が、前記少なくとも1つのカチオン性基を有するエチレン性不飽和モノマーからなる群から選択され、
前記カチオン性コポリマー(i)の前記構造単位(II)を形成するモノマー成分(B)が、前記少なくとも1つのポリオキシアルキレン基を有するエチレン性不飽和モノマーからなる群から選択される、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記少なくとも1つのカチオン性基が、第四級アンモニウム基、イミニウム基またはN-アルキル化ヘテロアリール基である、請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
前記少なくとも1種のカチオン性コポリマー(i)が、前記カチオン性構造単位(I)10~90mol%と前記マクロモノマー構造単位(II)90~10mol%、好ましくは前記カチオン性構造単位(I)25~75mol%と前記マクロモノマー構造単位(II)75~25mol%、より好ましくは前記カチオン性構造単位(I)40~60mol%と前記マクロモノマー構造単位(II)60~40mol%を有する、請求項1から
3までのいずれか1項記載の使用。
【請求項5】
請求項1から
4までのいずれか1項に定義された前記少なくとも1種のカチオン性コポリマー(i)と、
(ii)以下の
(iia)潜在水硬性バインダー、ポゾラン性バインダーおよびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の無機バインダー、および
(iib)アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ活性剤
を有する少なくとも1種の無機バインダー混合物と、
(iii)水と
を有する、ジオポリマーフォーム配合物。
【請求項6】
前記ジオポリマーフォーム配合物がさらに
、充填剤、促進剤、遅延剤、更なるレオロジー改質剤、高性能減水剤、繊維、顔料およびアニオン性界面活性剤、更なるカチオン性界面活性剤および/または非イオン性界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を有する、請求項
5記載のジオポリマーフォーム配合物。
【請求項7】
前記ジオポリマーフォーム配合物がさらに
、非イオン性界面活性
剤である少なくとも1種の添加剤を有する、請求項
5または
6記載のジオポリマーフォーム配合物。
【請求項8】
前記ジオポリマーフォーム配合物がさらに、更なるレオロジー改質
剤である少なくとも1種の添加剤を有する、請求項
5から
7までのいずれか1項記載のジオポリマーフォーム配合物。
【請求項9】
(1)前記少なくとも1種のカチオン性コポリマー(i)を、
(ii)以下の
(iia)潜在水硬性バインダー、ポゾラン性バインダーおよびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の無機バインダー、および
(iib)アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ活性剤
を有する少なくとも1種の無機バインダー混合物と
(iii)水と
(iv)場合により少なくとも1種の添加剤と
混合することにより、請求項
5から
8までのいずれか1項に定義されたジオポリマーフォーム配合物を製造するステップと、
(2)得られたジオポリマーフォーム配合物を、化学的、物理的および/または機械的起泡により起泡するステップと
を有するジオポリマーフォームの製造方法。
【請求項10】
成分として、請求項1から
4までのいずれか1項に定義された少なくとも1種のカチオン性コポリマー(i)と、
(ii)以下の
(iia)潜在水硬性バインダー、ポゾラン性バインダーおよびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の無機バインダー、および
(iib)アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ活性剤
を有する少なくとも1種の無機バインダー混合物とを有し、
ここで、
前記成分は、別々に存在するか;または
前記成分は、混合物の形で存在する、ジオポリマーフォーム配合物を製造するための組成物。
【請求項11】
前記組成物がさらに、請求項
6から
8までのいずれか1項に定義された少なくとも1種の添加剤を有する、請求項
10記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジオポリマーフォーム配合物中のレオロジー改質剤としてのカチオン性コポリマーの使用、カチオン性コポリマーを有するジオポリマーフォーム配合物、ジオポリマーフォームの製造方法、カチオン性コポリマーを有するジオポリマーフォームおよびジオポリマーフォーム配合物を製造するための組成物に関する。
【0002】
ジオポリマーフォームは、遮断材料、例えば断熱材、遮音材または吸音材、ならびに低密度を有する建設材料として使用することができる。有機ポリマーを基礎とするフォームとは対照的に、この材料は、環境に優しく、頑丈であり、不燃性である。後者は、防火の分野での用途を開拓することもできる。フォームは、一般に、界面活性剤または粒子の使用により安定化することができる。
【0003】
一般的に、ジオポリマーフォームの製造方法は、基本的に二つのステップであり、フレッシュフォームを混合し、機械的エネルギーを使用してフレッシュフォームにする第一のステップと、製造したてのフォームを硬化させる第二のステップである。第二のステップでは、フレッシュフォームは、典型的には、フォームの硬化が始まるまで混合せずにただ放置する。第一のステップで、起泡プロセスをスムーズに行うことができ(良好なワーカビリティーおよび起泡性)、第二のステップでは、フォームは安定したままであるべきであることが重要であり、この安定したままとは、バインダー系が硬化し始めるまで、フォームは(部分的に)崩壊したり、不均一になったりすべきではないことを意味する。例えば、ジオポリマーフォームを垂直面に適用する際に、ならびに開いた空洞をジオポリマーフォームで充填する際に、フレッシュジオポリマーフォームがまだ比較的流動性である場合、フォームは単に流れ去ることがあり、(フォーム崩壊および不均一になる可能性があるという問題に加えて)意図した適用箇所に留まらないため、特に不利である。要約すると、第一のステップの間に、良好な起泡性およびワーカビリティーを保証するために水性懸濁液系の比較的低粘度が必要であるが、第二のステップでは、フォームの安定性を保証するために粘度は比較的高くなるべきである。最終的に必要であるのは、ジオポリマーフォームのチキソトロピー挙動である。
【0004】
さらに、硬化したサンプルの収縮により引き起こされることがある硬化したサンプルの亀裂の発生がしばしば問題となる。機械特性および遮断特性への不利な影響を避けるために、硬化したサンプルの亀裂を避けるかまたは低減する必要がある。
【0005】
本発明の課題は、前述の効果を達成するために、特に起泡プロセスの間に(混合の間に)ジオポリマーフォームの良好なワーカビリティーおよび混合後に硬化が始まるまでの静止期間の間にフォームの良好な安定性を可能にするために、チキソトロピー特性を有する起泡系を提供することである。さらに、本発明の課題は、硬化したジオポリマーフォームの亀裂形成を可能な限り避けることである。
【0006】
国際公開第2015/062860号は、ジオポリマーフォーム配合物に関し、前記配合物は、とりわけフォームの安定化のための添加剤を付加的に含むことができる。これは、フォームの安定化のために、ヒュームドシリカ、タンパク質、レオロジー改質剤、例えばデンプン(とりわけ、キサンタンガム、ジウタンガム)、加工デンプン、スルホ基および/または四級化アンモニウム基を有するポリ(メタ)アクリラートおよびポリ(メタ)アクリルアミドおよびそれらの混合物からなる群からの添加剤を使用することが可能であることを開示している。スルホ基を有しかつ/または四級化アンモニウム基を有するポリ(メタ)アクリラートおよびポリ(メタ)アクリルアミドは、国際公開第2008/151878号、国際公開第2007/017286号、国際公開第2005/090424号および国際公開第02/10229号に記載されている。このタイプの(コ)ポリマーは、超吸収性ポリマー(SAP)または塩非敏感性超吸収性ポリマー(SISA)とも言われる。関連する材料は、一般的に、レオロジー改質剤であり、増粘剤であり、かつそれぞれ保水剤である。
【0007】
国際公開第2015043805号は、カチオン性コポリマー、そのカチオン性コポリマーの製造方法およびジオポリマーバインダー系用の分散剤としてのそのカチオン性コポリマーの使用に関する。
【0008】
意外にも、上記の課題は、以下に記載される本発明により達成することができることが見出された。特に、本発明による少なくとも1種のカチオン性コポリマー(i)をジオポリマーフォーム配合物中のレオロジー改質剤として使用することにより、起泡プロセス(混合)の間に良好なワーカビリティーを有するジオポリマーフォームを得ることができることが見出された。この段階でこの系の粘度は、比較的低い。起泡プロセス(混合)後に、製造したてのフォームは安定であり、混合プロセス後に製造したてのフォームの比較的高い粘度のために、このフォームは崩壊せず、均一なままであり、無制御に流出しない。
【0009】
カチオン性コポリマー(i)の形の本発明のレオロジー改質剤は、起泡系中の水の低減を可能にする。カチオン性コポリマー(i)の形の本発明のレオロジー改質剤は、起泡系にチキソトロピー特性の導入も可能にする。レオロジー改質剤は、チキソトロピー剤としても機能する。好ましくは、レオロジー改質剤の用語は、減水剤および/またはチキソトロピー剤を意味する。
【0010】
一実施形態では、本発明は、ジオポリマーフォーム配合物中のレオロジー改質剤としての、少なくとも1種のカチオン性コポリマー(i)の使用に関し、ここで、カチオン性コポリマー(i)は、
少なくとも1つのカチオン性基を有する少なくとも1つの構造単位(I)と、場合により少なくとも1つのポリオキシアルキレン基を有する少なくとも1つのマクロモノマー構造単位(II)と
を有する。
【0011】
さらに、少なくとも1つのポリオキシアルキレン基を有する少なくとも1つの構造単位(II)を少なくとも1種のカチオン性コポリマー(i)中に強制的に組み込む場合、より費用対効果の高いカチオン性コポリマー(i)を得ることができ、その結果、良好なワーカビリティーおよび良好な安定性を有する費用対効果の高いジオポリマーフォームが生じ、有利なレオロジー改質効果は維持される。換言すると、ポリオキシアルキレン基を有する本発明によるカチオン性コポリマー(i)は、所望のレオロジー改質効果を示し、同時に比較的少ないカチオン性基(カチオン性モノマーの低いモル分率)を有し、したがって費用対効果がより高いことが見出された。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、本発明による少なくとも1種のカチオン性コポリマー(i)と、
(ii)以下の
(iia)潜在水硬性バインダー、ポゾラン性バインダーおよびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の無機バインダー、および
(iib)アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ活性剤と
を有する少なくとも1種の無機バインダー混合物と
(iii)水と
を有するジオポリマーフォーム配合物に関する。
【0013】
さらに別の実施形態では、本発明は、
(1)少なくとも1種のカチオン性コポリマー(i)を、
(ii)以下の
(iia)潜在水硬性バインダー、ポゾラン性バインダーおよびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の無機バインダー、および
(iib)アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ活性剤
を有する少なくとも1種の無機バインダー混合物と
(iii)水と
(iv)場合により少なくとも1種の添加剤と
混合することにより本発明によるジオポリマーフォーム配合物を製造するステップと、
(2)得られたジオポリマーフォーム配合物を、化学的、物理的および/または機械的起泡により起泡するステップと
を有するジオポリマーフォームの製造方法に関する。
【0014】
さらに別の実施形態では、本発明は、本発明による方法により得ることができるジオポリマーフォームに関する。
【0015】
さらに別の実施形態では、本発明は、本発明による方法による少なくとも1種のカチオン性コポリマー(i)と、
(ii)以下の
(iia)潜在水硬性バインダー、ポゾラン性バインダーおよびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の無機バインダー、および
(iib)アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ活性剤
を有する少なくとも1種の無機バインダー混合物と
(iii)水と
を有するジオポリマーフォームに関する。
【0016】
さらに別の実施形態では、本発明は、成分として、本発明による少なくとも1種のカチオン性コポリマー(i)と、
(ii)以下の
(iia)潜在水硬性バインダー、ポゾラン性バインダーおよびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の無機バインダー、および
(iib)アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ活性剤
を有する少なくとも1種の無機バインダー混合物とを有し、
ここで、
これらの成分は、別々に存在するか、または
これらの成分は、混合物の形で存在する
ジオポリマーフォーム配合物を製造するための組成物に関する。
【0017】
本発明は、ジオポリマーフォーム配合物中の亀裂低減剤としての少なくとも1種のカチオン性コポリマー(i)の使用にも関し、ここでカチオン性コポリマー(i)は、少なくとも1つのカチオン性基を有する少なくとも1つのカチオン性構造単位(I)と、場合により少なくとも1つのポリオキシアルキレン基を有する少なくとも1つのマクロモノマー構造単位(II)とを有する。
【0018】
好ましくは、カチオン性コポリマー(i)の構造単位(I)を形成するモノマー成分(A)は、少なくとも1つのカチオン性基を有するエチレン性不飽和モノマーからなる群から選択され、カチオン性コポリマー(i)の構造単位(II)を形成するモノマー成分(B)は、少なくとも1つのポリオキシアルキレン基を有するエチレン性不飽和モノマーからなる群から選択される。好ましくは、少なくとも1つのカチオン性基は、第四級アンモニウム基、イミニウム基またはN-アルキル化ヘテロアリール基である。
【0019】
好ましくは、亀裂低減剤として使用するためのカチオン性コポリマー(i)は、
a)式(I)
【化1】
[ここで、
R
1は、それぞれの場合に同じまたは異なり、水素および/またはメチルを表し、
R
2は、それぞれの場合に同じまたは異なり、
【化2】
からなる群から選択され、
ここで、
R
3、R
4およびR
5は、それぞれの場合に同じまたは異なり、それぞれ独立して、水素、1~20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素部分、5~8個の炭素原子を有する脂環式炭化水素部分、6~14個の炭素原子を有するアリールおよび/またはポリエチレングリコール(PEG)部分を表し、
lは、それぞれの場合に同じまたは異なり、0~2の整数を表し、
mは、それぞれの場合に同じまたは異なり、0または1を表し、
nは、それぞれの場合に同じまたは異なり、0~10の整数を表し、
Yは、それぞれの場合に同じまたは異なり、不存在基(an absent group)、酸素、NH、および/またはNR
3を表し、
Vは、それぞれの場合に同じまたは異なり、-(CH
2)
x-、
【化3】
を表し、
ここで、
xは、それぞれの場合に同じまたは異なり、1~6の整数を表し、かつ
Xは、それぞれの場合に同じまたは異なり、ハロゲン原子、C
1~C
4-アルキルスルファート、C
1~C
4-アルキルスルホナート、C
6~C
14-(アルキル)アリールスルホナートおよび/またはスルファート、ジスルファート、ジホスファート、トリホスファートおよび/またはポリホスファートから選択される多価アニオンの一価当量を表す]
のカチオン性構造単位3~97mol%と、場合により
b)式(II)
【化4】
[ここで、
R
6は、それぞれの場合に同じまたは異なり、以下の式(IIa)
【化5】
のポリオキシアルキレン基を表し
ここで、
oは、それぞれの場合に同じまたは異なり、1~300の整数を表し、
かつ
R
1、R
3、l、m、Y、V、およびxは、上述の意味を有する]
のマクロモノマー構造単位97~3mol%と
を有する。
【0020】
好ましくは、亀裂低減剤として使用するためのカチオン性コポリマー(i)は、
a)式(I)
【化6】
[ここで、
R
1は、それぞれの場合に同じまたは異なり、水素および/またはメチルを表し、
R
2は、それぞれの場合に同じまたは異なり、
【化7】
からなる群から選択され、
ここで、
R
3、R
4およびR
5は、それぞれの場合に同じまたは異なり、それぞれ独立して、水素、1~20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素部分、5~8個の炭素原子を有する脂環式炭化水素部分、6~14個の炭素原子を有するアリールおよび/またはポリエチレングリコール(PEG)部分を表し、
lは、それぞれの場合に同じまたは異なり、0~2の整数を表し、
mは、それぞれの場合に同じまたは異なり、0または1を表し、
nは、それぞれの場合に同じまたは異なり、0~10の整数を表し、
Yは、それぞれの場合に同じまたは異なり、不存在基、酸素、NH、および/またはNR
3を表し、
Vは、それぞれの場合に同じまたは異なり、-(CH
2)
x-、
【化8】
を表し、
ここで、
xは、それぞれの場合に同じまたは異なり、0~6の整数を表し、かつ
Xは、それぞれの場合に同じまたは異なり、ハロゲン原子、C
1~C
4-アルキルスルファート、C
1~C
4-アルキルスルホナート、C
6~C
14-(アルキル)アリールスルホナートおよび/またはスルファート、ジスルファート、ジホスファート、トリホスファートおよび/またはポリホスファートから選択される多価アニオンの一価当量を表す]
のカチオン性構造単位3~97mol%と、場合により
b)式(II)
【化9】
[ここで、
R
6は、それぞれの場合に、ピロリドンおよび/またはカプロラクタムであり、l、m、YおよびVは、Oまたは不存在基である]
のマクロモノマー構造単位97~3mol%と
を有する。
【0021】
好ましくは、亀裂低減剤として使用するための少なくとも1種のカチオン性コポリマー(i)は、カチオン性構造単位(I)10~90mol%とマクロモノマー構造単位(II)90~10mol%、好ましくはカチオン性構造単位(I)25~75mol%とマクロモノマー構造単位(II)75~25mol%、より好ましくはカチオン性構造単位(I)40~60mol%とマクロモノマー構造単位(II)60~40mol%とを有する。
【0022】
本発明の文脈において、以下の定義が適切である。
【0023】
「wt%」または「質量%」(質量分率とも言う)の用語は、他に述べられていない限り、全ての成分の質量による合計に対するそれぞれの成分のパーセンテージを示す。「vol%」または「体積%」の用語は、他に述べられていない限り、全ての成分の体積による合計に対する割合でのそれぞれの成分のパーセンテージを指す。さらに、組成物の特定のおよび非特定の成分の全てのパーセンテージの合計は、常に100%である。
【0024】
「有する(comprising)」の用語は、言及された特定の特徴に加えてさらに、明確に言及されていない特徴が存在してよいことを意味する。「含む(containing)」の用語も、同様に理解されるべきである。「からなる(consisting of)」の用語は、言及された特定の特徴だけが含まれることを意味する。
【0025】
ポリマーの文脈での「形成する」の用語は、ラジカル共重合による形成を意味する。
【0026】
一般に、「ジオポリマーフォーム配合物」の用語と、「ジオポリマーフォーム」の用語とは区別される。ジオポリマーフォーム配合物は、水と場合により少なくとも1種の添加剤との添加により、本明細書で定義されたようなジオポリマーフォーム配合物を製造するための適切な組成物から得ることができる。ジオポリマーフォーム配合物は、次いで、機械的、物理的または化学的に起泡させることによりジオポリマーフォームを製造するために使用することができる。製造したてのジオポリマーフォームは、硬化されたジオポリマーフォーム、すなわち製造したてのジオポリマーフォームから硬化され、場合により乾燥させることにより得ることができる多孔質材料とは区別されるべきである。他に指摘しない限り、本明細書で使用されるような「ジオポリマーフォーム」の用語は、製造したてのジオポリマーフォームを指し、「多孔質材料」の用語は、硬化され、場合により乾燥されたジオポリマーフォームを指す。
【0027】
本発明の目的のために、「カチオン性ポリマー」および「カチオン性コポリマー」の用語は、交換可能に使用される。
【0028】
ジオポリマーフォームは、一つの相がガス状であり、一つの相が液状であり、一つの相が固体状である三相系である。したがって、ジオポリマーフォームはガスを有することが理解される。気相は、液相および気相から得られる気泡壁により隔てられた微細なガス気泡として存在する。気泡壁は、エッジで互いに接触し、このエッジは、ノードで互いに接触し、それによりフレームワークを形成する。ジオポリマーフォーム中の気相の含有率は、20~99体積%、好ましくは50~98体積%の範囲内で変化してよい。液相は、好ましくは水相であるので、ジオポリマーフォームは、典型的には水も含む。しかしながら、水は、乾燥時に部分的に除去されてよい。ジオポリマーフォームの固相は、無機バインダーを有する。ジオポリマーフォームは、連続気泡フォームであるか独立気泡フォームであることができる。独立気泡フォームにおいては、ガスは、気泡壁により完全に取り囲まれている。典型的には、同じ密度で、独立気泡フォームは、連続気泡フォームよりも頑丈である。したがって、独立気泡フォームが、改善された機械的安定性のために好ましい。
【0029】
多孔質材料は、ジオポリマーフォームを硬化し、場合により乾燥させることにより、ジオポリマーフォームから得ることができる。
【0030】
本明細書で使用されるような「水」の用語は、純水、脱イオン水または0.1質量%まで不純物および/または塩を含む水、例えば通常の水道水を指してよい。
【0031】
フォーム中に存在する気相は、機械的、物理的または化学的起泡により導入することができる。ガスの非限定的な例は、空気、窒素、希ガス、二酸化炭素、炭化水素、水素、酸素、およびそれらの混合物を有する。
【0032】
フォーム中に存在する気相は、それぞれのガスの存在下で機械的起泡により導入することができる。機械的起泡は、ミキサの使用によるか、振動プロセスによるか、ステータ-ロータプロセスにより実施されてよい。
【0033】
気相は、物理的または化学的起泡によりフォームに導入することもでき、ここで、物理的または化学的起泡プロセスは、ガスを遊離させるために適している。好ましくは、ガスを遊離させるために、蒸発、分解または水および/または酸と反応する発泡剤が使用される。発泡剤の非限定的な例は、過酸化物、例えば過酸化水素、ジベンジルペルオキシド、ペルオキソ安息香酸、ペルオキソ酢酸、アルカリ金属過酸化物、過塩素酸、ペルオキソ一硫酸、ジクミルペルオキシドまたはクミルヒドロペルオキシド;イソシアナート、炭酸塩および炭酸水素塩、例えばCaCO3、Na2CO3、およびNaHCO3であり、これらは、好ましくは、酸、例えば鉱酸;金属粉末、例えばアルミニウム粉;アジ化物、例えば、メチルアジド;ヒドラジド、例えばp-トルエンスルホニルヒドラジド;ヒドラジンと組み合わせて使用される。
【0034】
化学的起泡は、触媒の使用により促進することができる。適切な触媒は、好ましくは、Mn2+、M4+、Mn7+またはFe3+カチオンを有する。あるいは、酵素カタラーゼを触媒として使用してよい。適切な触媒の非限定的な例は、MnO2およびKMnO4である。このような触媒は、好ましくは過酸化物発泡剤と組み合わせて使用される。
【0035】
本発明の好ましい実施形態を下記に説明する。好ましい実施形態は、単独でも、互いに組み合わせても好ましい。
【0036】
既に上述したように、本発明は、ジオポリマーフォーム配合物中のレオロジー改質剤としての少なくとも1種のカチオン性コポリマー(i)の使用に関し、ここで、カチオン性コポリマー(i)は、
少なくとも1つのカチオン性基を有する少なくとも1つの構造単位(I)と、場合により少なくとも1つのポリオキシアルキレン基を有する少なくとも1つのマクロモノマー構造単位(II)とを有する。
【0037】
好ましい実施形態では、カチオン性コポリマー(i)の構造単位(I)を形成するモノマー成分(A)は、少なくとも1つのカチオン性基を有するエチレン性不飽和モノマーからなる群から選択され、
カチオン性コポリマー(i)の構造単位(II)を形成するモノマー成分(B)は、少なくとも1つのポリオキシアルキレン基を有するエチレン性不飽和モノマーからなる群から選択される。
【0038】
好ましくは、少なくとも1つのカチオン性基は、第四級アンモニウム基、イミニウム基またはN-アルキル化ヘテロアリール基である。
【0039】
カチオン性モノマー(A)は、好ましくは、四級化N-ビニルイミダゾール(1)、四級化N-アリルイミダゾール(2)、四級化4-ビニルピリジン(3)、四級化1-[2-(アクリロイルオキシ)エチル]-1H-イミダゾール(4)、1-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]-1H-イミダゾール(5)、およびそれらの混合物から選択される。これらの好ましいカチオン性モノマー(四級化されていない形)の図式的表現を、以下に示す:
【化10】
【0040】
カチオン性モノマー(B)はさらに、少なくとも1つのポリオキシアルキレン基(IIa)を有する少なくとも1つのマクロモノマー構造単位(II)を有する。好ましいポリオキシアルキレン基は、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、およびこれらの組合せを含む。特に、ポリオキシアルキレン基のオキシアルキレン単位は、好ましくは、エチレンオキシド基および/またはプロピレンオキシド基から選択され、これらの基は、ポリオキシアルキレン基内でランダムに、交互に、漸増的におよび/またはブロック状に配列されてよい。
【0041】
さらに別の好ましい実施形態では、少なくとも1つのポリオキシアルキレン基(IIa)は、ポリオキシエチレン基またはポリオキシプロピレン基であり、かつ/またはここで、それぞれのポリオキシアルキレン基(IIa)は、1~300、好ましくは5~300、より好ましくは10~200、特に20~100のオキシアルキレン単位を有する。
【0042】
別の実施形態では、カチオン性コポリマー(i)は、
a)式(I)
【化11】
[ここで、
R
1は、それぞれの場合に同じまたは異なり、水素および/またはメチルを表し、
R
2は、それぞれの場合に同じまたは異なり、
【化12】
からなる群から選択され、
ここで、
R
3、R
4およびR
5は、それぞれの場合に同じまたは異なり、それぞれ独立して、水素、1~20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素部分、5~8個の炭素原子を有する脂環式炭化水素部分、6~14個の炭素原子を有するアリールおよび/またはポリエチレングリコール(PEG)部分を表し、
lは、それぞれの場合に同じまたは異なり、0~2の整数を表し、
mは、それぞれの場合に同じまたは異なり、0または1を表し、
nは、それぞれの場合に同じまたは異なり、0~10の整数を表し、
Yは、それぞれの場合に同じまたは異なり、不存在基、酸素、NH、および/またはNR
3を表し、
Vは、それぞれの場合に同じまたは異なり、-(CH
2)
x-、
【化13】
を表し、
ここで、
xは、それぞれの場合に同じまたは異なり、1~6の整数を表し、
かつ
Xは、それぞれの場合に同じまたは異なり、ハロゲン原子、C
1~C
4-アルキルスルファート、C
1~C
4-アルキルスルホナート、C
6~C
14-(アルキル)アリールスルホナートおよび/またはスルファート、ジスルファート、ジホスファート、トリホスファートおよび/またはポリホスファートから選択される多価アニオンの一価当量を表す]
のカチオン性構造単位3~97mol%と、場合により
b)式(II)
【化14】
[ここで、
R
6は、それぞれの場合に同じまたは異なり、以下の式(IIa)
【化15】
のポリオキシアルキレン基を表し
ここで、
oは、それぞれの場合に同じまたは異なり、1~300の整数を表し、
かつ
R
1、R
3、l、m、Y、V、およびxは、上述の意味を有する]
のマクロモノマー構造単位97~3mol%と
を有する。
【0043】
別の実施形態では、カチオン性コポリマー(i)は、
a)式(I)
【化16】
[ここで、
R
1は、それぞれの場合に同じまたは異なり、水素および/またはメチルを表し、
R
2は、それぞれの場合に同じまたは異なり、
【化17】
からなる群から選択され、
ここで、
R
3、R
4およびR
5は、それぞれの場合に同じまたは異なり、それぞれ独立して、水素、1~20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素部分、5~8個の炭素原子を有する脂環式炭化水素部分、6~14個の炭素原子を有するアリールおよび/またはポリエチレングリコール(PEG)部分を表し、
lは、それぞれの場合に同じまたは異なり、0~2の整数を表し、
mは、それぞれの場合に同じまたは異なり、0または1を表し、
nは、それぞれの場合に同じまたは異なり、0~10の整数を表し、
Yは、それぞれの場合に同じまたは異なり、不存在基、酸素、NH、および/またはNR
3を表し、
Vは、それぞれの場合に同じまたは異なり、-(CH
2)
x-、
【化18】
を表し、
ここで、
xは、それぞれの場合に同じまたは異なり、0~6の整数、好ましくは0であり、ただし、Yは、xが0のとき不存在基を表すものとし、
かつXは、それぞれの場合に同じまたは異なり、ハロゲン原子、C
1~C
4-アルキルスルファート、C
1~C
4-アルキルスルホナート、C
6~C
14-(アルキル)アリールスルホナートおよび/またはスルファート、ジスルファート、ジホスファート、トリホスファートおよび/またはポリホスファートから選択される多価アニオンの一価当量を表す]
のカチオン性構造単位3~97mol%と、場合により
b)式(II)
【化19】
[ここで、
R
6は、それぞれの場合に、ピロリドンおよび/またはカプロラクタムであり、つまり、l、m、YおよびVは、Oまたは不存在基である]
のマクロモノマー構造単位97~3mol%と
を有する。
【0044】
本発明の文脈において、「ピロリドン」の用語は、2-ピロリドンおよび3-ピロリドンを包含する。
【0045】
好ましくは、ピロリドンおよび/またはカプロラクタムは、それぞれの窒素原子を介して結合している。
【0046】
R
6がピロリドンおよび/またはカプロラクタムである式(II)のマクロモノマー構造単位の例示的な構造は、以下の通りである:
【化20】
【0047】
式(I)のカチオン性構造単位の例示的な構造は、以下の通りである:
【化21】
【0048】
本発明の目的のために、「カチオン性コポリマー」は、ポリマーの「骨格」または主鎖に結合したカチオン性基(側鎖として)を有するコポリマーである。十分な静電反発力を示すために、本発明のカチオン性コポリマーは、非吸着性ポリオキシアルキレン側鎖、すなわち式(IIa)のポリオキシアルキレン基も有する。したがって、本発明のカチオン性コポリマーは、櫛状構造を形成し、したがって櫛型ポリマーと言われてよい。好ましくは、式(I)および(II)の構造単位は、ポリマー主鎖内でランダムに、交互に、漸増的におよびブロック状に配列されてよい。
【0049】
本発明のカチオン性コポリマーにおいて、式(I)および(II)の構造単位に対応するモノマー成分の骨格は、好ましくは、ビニルエーテル、ビニルオキシC
1-6-アルキルエーテル、特にビニルオキシブチルエーテル、アリルエーテル、メタリルエーテル、3-ブテニルエーテル、イソプレニルエーテル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、およびそれらの混合物から選択される。換言すると、式(I)および(II)の構造単位に対応するモノマーの好ましい骨格は、以下の部分構造を含むが、これらに限定されるものではない:
【化22】
【0050】
アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリルアミド等は、対応する不飽和ジカルボン酸誘導体、例えばマレイン酸誘導体により部分的に置換されていてよいが、ただし、遊離酸官能基を有しないものとし、ビニルエーテル等は、対応するジエン誘導体により部分的に置換されてよいが、この誘導体は、ラジカル共重合可能であるものとする。
【0051】
本発明のカチオン性コポリマー中で、「o」は、好ましくは5~300、より好ましくは10~200、特に20~100である。
【0052】
本発明のカチオン性コポリマーにおいて、式(IIa)のポリオキシアルキレン基のオキシアルキレン単位は、好ましくは、エチレンオキシド基および/またはプロピレンオキシド基から選択され、これらの基は、ポリオキシアルキレン基内で、ランダムに、交互に、漸増的におよび/またはブロック状に配列されていてよい。さらに、式(IIa)のポリオキシアルキレン基は、好ましくは、特定の定義内で、「o」について異なる値を有する混合形である。
【0053】
本発明のカチオン性コポリマーは、好ましくはカチオン性構造単位10~90mol%とマクロモノマー構造単位90~10mol%、より好ましくはカチオン性構造単位25~75mol%とマクロモノマー構造単位75~25mol%、特にカチオン性構造単位40~60mol%とマクロモノマー構造単位60~40mol%とを有する。
【0054】
カチオン性コポリマーは、好ましくは、1000~500000、より好ましくは2000~150000、特に4000~100000g/molの範囲内の分子量を有する。
【0055】
本発明はさらに、本発明による少なくとも1種のカチオン性コポリマー(i)と、
(ii)以下の
(iia)潜在水硬性バインダー、ポゾラン性バインダーおよびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の無機バインダー、および
(iib)アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ活性剤
を有する少なくとも1種の無機バインダー混合物と、
(iii)水と
を有するジオポリマーフォーム配合物に関する。
【0056】
さらに、本発明は、本発明による少なくとも1種のカチオン性コポリマー(i)と、
(ii)以下の
(iia)潜在水硬性バインダー、ポゾラン性バインダーおよびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の無機バインダー、および
(iib)アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ活性剤
を有する少なくとも1種の無機バインダー混合物と、
(iii)水と
を有するジオポリマーフォームに関する。
【0057】
本発明の目的のために、「ジオポリマーフォーム配合物」の表現は、この組成物が、ジオポリマーフォームを提供するために必要な全ての成分、すなわち、無機バインダー、アルカリ活性剤、水、場合により界面活性剤および気相を有することを意味することを意図する。更なる任意成分、例えば添加剤を有していてよい。これらの成分は、プレミックスの形を採ることもでき、「パーツキット(kit of parts)」として公知のように別々の形であることもできる。水およびアルカリ活性剤は、他の成分とは別々に提供することができるか、またはアルカリ活性剤は、他の成分と一緒に乾燥した形であることができるので、次いで、水を添加し、起泡を行う必要があるだけである。もちろん、ジオポリマーフォーム配合物が、レディーフォームド(ready-foamed)形であることも可能である。
【0058】
本発明によるジオポリマーフォームまたはジオポリマーフォーム配合物は、少なくとも1種の無機バインダーを有する。
【0059】
無機バインダー系は、水性アルカリ環境で硬化するAl2O3と会合したSiO2を基礎とする反応性不溶性化合物を基礎とすることができることは周知である。このタイプのバインダー系は、とりわけ「ジオポリマー」と言われ、例示的に、米国特許第4,349,386号明細書、国際公開第85/03699号および米国特許第4,472,199号明細書に記載されている。ここで反応性酸化物または反応性酸化物混合物として使用することができる材料は、とりわけ、マイクロシリカ、メタカオリン、アルミノケイ酸塩、フライアッシュ、活性白土、ポゾランまたはそれらの混合物である。バインダーを活性化するために使用されるアルカリ環境は、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属フッ化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルミン酸塩および/またはアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液、例えば可溶性水ガラスを含む。ジオポリマーは、ポルトランドセメントよりも安価でかつより頑丈であることができ、より有利なCO2エミッションバランスを有することができる。「フォーム」の用語に関連して、本明細書の導入部が参照される。
【0060】
本発明の目的のために、「潜在水硬性バインダー」は、好ましくは、(CaO+MgO):SiO2のモル比が0.8~2.5、特に1.0~2.0であるバインダーである。一般的に、上述の潜在水硬性バインダーは、工業スラグおよび/または合成スラグから、特に高炉スラグ、電熱リンスラグ、鋼スラグおよびそれらの混合物から選択することができ、「ポゾランバインダー」は、一般に、非晶質シリカ、好ましくは沈降シリカ、ヒームドシリカおよびマイクロシリカ、粉末ガラス、メタカオリン、アルミノケイ酸塩、フライアッシュ、好ましくは褐炭フライアッシュおよび硬質炭フライアッシュ、天然ポゾラン、例えば凝灰岩、トラスおよび火山灰、天然および合成ゼオライトおよびそれらの混合物から選択することができる。
【0061】
本明細書で使用されるような、「スラグ」の用語は、製錬プロセスの副産物、または合成スラグを指す。製錬プロセスの主な使用は、鉱石、スクラップまたは多様な金属を含む材料混合物を、所望な金属を金属層として掬い取ることができ、不所望な金属酸化物、例えばケイ酸塩、アルミナ等をスラグとして残すことができる形に変換することである。
【0062】
高炉スラグ(BFS)は、高炉で鉄鉱石の製錬の間に副産物として形成される。他の材料は、造粒高炉スラグ(GBFS)および粉砕造粒高炉スラグ(GGBFS)であり、これは微粉化された造粒高炉スラグである。粉砕造粒高炉スラグは、粉砕の細かさおよび粒度分布の観点により異なり、起源や処理法に依存し、かつ粉砕の細かさが、ここで反応性に影響を及ぼす。ブレーン値(Blaine value)は、粉砕の細かさについてのパラメータとして使用され、典型的には、200~1000m2kg-1、好ましくは300~500m2kg-1の大きさの程度を有する。より微細な磨砕は、より高い反応性を付与する。しかしながら、本発明の目的のために、「高炉スラグ」の表現は、言及された処理、磨砕、および品質のレベルの全てから生じる材料(すなわち、BFS、GBFSおよびGGBFS)を有することを意図する。高炉スラグ、一般に、CaOを30~45質量%、MgOを約4~17質量%、SiO2を約30~45質量%、Al2O3を約5~15質量%有し、典型的には、CaOを約40質量%、MgOを約10質量%、SiO2を約35質量%およびAl2O3を約12質量%有する。
【0063】
非晶質シリカは、好ましくはX線非晶質シリカ、すなわち粉末回折法が結晶化度を示さないシリカである。本発明の非晶質シリカ中のSiO2含有率は、有利に少なくとも80質量%、好ましくは少なくとも90質量%である。沈降シリカは、水ガラスから開始する沈降プロセスにより工業規模で得られる。いくつかの製造プロセスからの沈降シリカは、シリカゲルとも言われる。
【0064】
マイクロシリカは、主に非晶質SiO2粉末を有する微粉末であり、シリコン製造またはフェロシリコン製造の副産物である。粒子は、約100nmの直径および約15~約30m2g-1の比表面積を有する。
【0065】
ヒュームドシリカは、水素/酸素炎内でのクロロシラン、例えば四塩化ケイ素の反応を介して製造される。ヒュームドシリカは、5~50nmの粒径、50~600m2g-1の比表面積を有する非晶質SiO2粉末である。
【0066】
メタカオリンは、カオリンが脱水される場合に製造される。100~200℃でカオリンは物理結合水を放出し、500~800℃で、格子構造の崩壊およびメタカオリン(Al2Si2O7)の形成と共に脱ヒドロキシルが起こる。したがって、純粋なメタカオリンは、SiO2を約54質量%、Al2O3を約46質量%有する。
【0067】
アルミノケイ酸塩は、アルミニウム、ケイ素、および酸素を有する鉱物であり、これは、SiO2およびAl2O3含有率を参照して表してもよい。このアルミノケイ酸塩は、カオリンおよび他の粘土鉱物の主成分である。アンダルサイト、キアナイト、およびシリマナイトは、Al2SiO5の組成を有する天然に産するアルミノケイ酸塩鉱物である。
【0068】
フライアッシュは、とりわけ発電所で石炭の燃焼の間に製造され、多様な組成の微粒子を有する。フライアッシュの主成分は、酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよび酸化カルシウムである。クラスCフライアッシュ(褐炭フライアッシュ)は、国際公開第08/012438号によると、CaOを約10wt%有し、クラスFフライアッシュ(硬質炭フライアッシュ)は、CaOを8質量%未満、好ましくは4質量%未満、典型的には3質量%未満有する。
【0069】
焼成頁岩、特に焼成油質頁岩は、天然頁岩の約800℃の温度での燃焼および引き続く磨砕により得られる。
【0070】
電熱リンスラグは、電熱リン生産の廃棄物である。この電熱リンスラグは、高炉スラグよりも反応性が低く、CaOを約45~50質量%、MgOを約0.5~3質量%、SiO2を約38~43質量%、Al2O3を約2~5質量%、Fe2O3を約0.2~3質量%を有し、フッ化物およびリン酸塩も有する。鋼スラグは、顕著に変化する組成での多様な鋼製造プロセスの廃棄物である。
【0071】
ジオポリマー用に適した原材料の概要は、例として、Cajon Shi, Pavel V. Krivenko, Della Roy, Alkali-Activated Cements and Concretes, Taylor & Francis, London & New York, 2006, pp. 6-63に記されている。
【0072】
さらに適切なジオポリマーフォーム、ジオポリマーフォーム配合物およびその製造方法は、国際公開第2015/062860号に記載されている。
【0073】
「粒度(Dx)」の用語は、粒子分布の直径を指し、ここで、粒子のx%は、より小さな直径を有する。したがって、D50粒度は、中位粒径である。Dx粒径は、例えばレーザー回折法または動的光散乱(DLS)法により測定することができる。本発明によると、ISO22412:2008による動的光散乱(DLS)が、有利に使用される。ときには準弾性高散乱(QELS)と言われる動的光散乱(DLS)は、典型的にはサブミクロン領域での分子および粒子のサイズおよびサイズ分布を測定するための非侵襲的な十分に確立した技術である。本発明において、粒子は、液体、好ましくは水またはエタノール中に分散されて特性決定される。懸濁液中の粒子または分子のブラウン運動は、レーザー光が多様な強度で散乱を引き起こす。これらの強度変動の分析は、ブラウン運動の速度、次いでストークス-アインシュタイン関係を使用して粒子サイズを得る。分布は、体積分布(Dv)、表面分布(Ds)、または個数分布(Dn)であることができる。本出願の文脈において、Dx値は、個数分布に関し、ここで、粒子のx(個数)%は、より小さな直径を有する。
【0074】
好ましい実施形態では、少なくとも1種の有機バインダーは、高炉スラグ、マイクロシリカ、メタカオリン、アルミノケイ酸塩、フライアッシュ、およびそれらの混合物からなる群から選択される。特に好ましい実施形態では、少なくとも1種の有機バインダーは、メタカオリン、フライアッシュおよびそれらの混合物から選択される。
【0075】
上述のアルカリ活性剤は、無機バインダー、すなわちジオポリマーバインダーの活性化のためのアルカリ環境を確立するために必要であるので、潜在水硬性バインダーは水硬性になる。アルカリ活性剤は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩およびそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0076】
式MOHのアルカリ金属水酸化物および式mSiO2×nM2Oのアルカリ金属ケイ酸塩からアルカリ活性剤を選択するのが好ましく、ここで、Mは、アルカリ金属、好ましくはLi、NaまたはKまたはそれらの混合物であり、かつモル比m:nは≦4.0、好ましくは≦3.0、さらに好ましくは≦2.0、特に≦1.70である。
【0077】
アルカリ金属ケイ酸塩は、好ましくは、水ガラス、特に好ましくは水性水ガラス、特にナトリウム水ガラスまたはカリウム水ガラスである。しかしながら、リチウム水ガラスまたはアンモニウム水ガラスまたは言及された水ガラスの混合物を使用することも可能である。上述のm:n比(「率」とも言われる)は、好ましくは超えてはならない、そうではないと、成分の反応は不完全になりかねないためである。極めて小さい率、例えば約0.2を使用することも可能である。より高い率を有する水ガラスは、適切な水性アルカリ金属水酸化物の使用により、使用前に本発明の範囲内の率に調節すべきである。
【0078】
好ましい実施形態では、少なくとも1種のアルカリ活性剤は、水ガラスである。
【0079】
「水ガラス」の用語は、水溶性であるアルカリ金属ケイ酸塩を指す。水ガラスは、アルカリ金属炭酸塩と石英砂(二酸化ケイ素)との反応により得ることができる。しかしながら、水ガラスは、反応性シリカと適切な水性アルカリ金属水酸化物との混合物から製造することもできる。水ガラスの非限定的な例は、Na2SiO3、K2SiO3、およびLi2SiO3を有する。無水物の形に加えて、水ガラスの多様な水和物も同様に存在する。典型的な微量不純物は、元素Al、Ca、Cr、Cu、Fe、Mg、およびTiに基づく。アルカリ金属のケイ酸塩に対する比率は変化することができる。この比率は、上述のように、mSiO2のnM2Oに対するモル比の用語で定義される。比m:nについての典型的な値は、4未満、3未満、2未満の値、または1.7付近の値である。
【0080】
有利な率の範囲内のカリウム水ガラスは、極めて吸湿性であるために、主に水溶液として市販されている;有利な率の範囲のナトリウム水ガラスも、固体として市場で入手可能である。水ガラス水溶液の固形分は、一般に、20質量%~60質量%、好ましくは40~60質量%である。
【0081】
アルカリ活性剤の好ましい量は、1~55wt%、特に10~50wt%である。
【0082】
好ましい実施形態では、少なくとも1種の無機バインダー混合物(ii)はさらに、少なくとも1種の付加的無機バインダー、好ましくはセメントおよび/または硫酸カルシウムを有する。特に好ましい実施形態では、少なくとも1種の無機バインダー混合物は、ポルトランドセメント、アルミン酸カルシウムセメント、スルホアルミン酸カルシウムセメント、硫酸カルシウムおよびそれらの混合物から選択される少なくとも1種の付加的無機バインダーを有する。存在する場合に、付加的無機バインダーの量は、無機バインダー(iia)を基準として、30wt%未満、好ましくは25wt%未満、より好ましくは10wt%未満でなければならない。
【0083】
セメントは、微細に磨砕された水硬性無機バインダーである。異なるタイプのセメントは、DIN EN197-1(11/2011)に従って、カテゴリーCEM I-Vに分類されている。これらの異なるセメントは、多様な腐食に対するその安定性において互いに異なり、したがって、これらのセメントは異なる用途を有する。
【0084】
CEM Iセメントは、ポルトランドセメントとも言われ、CaOおよびMgOを約70wt%、SiO2を約20wt%、Al2O3およびFe2O3を約10wt%含む。このセメントは、石灰石、チョークおよび粘土を磨砕し、焼成することにより得られる。CEM IIセメントは、付加的成分の量が低い(約6~約20wt%)のポルトランドセメントまたはその量が中程度(約20~約35wt%)のポルトランドセメントである。このセメントはさらに、高炉スラグ、ヒュームドシリカ(最大10wt%)、天然ポゾラン、天然焼成ポゾラン、フライアッシュ、焼成頁岩、またはそれらの混合物を含んでよい。CEM IIIセメントは、高炉セメントとも言われ、ポルトランドセメントを有し、スラグを36~85wt%含む。CEM IVセメントは、ポゾランセメントとも言われ、ポルトランドセメントに次いで、ポゾラン、シリカヒューム、フライアッシュの混合物を11~65%含む。CEM Vセメントは、複合セメントとも言われ、ポルトランドセメントに次いで、スラグ、または天然ポゾレン、焼成ポゾラン、およびフライアッシュの混合物を18~50wt%含む。さらに、セメントの異なるタイプは、付加的な微細に磨砕された無機鉱物化合物を5wt%含んでいてよい。
【0085】
「アルミン酸カルシウムセメント」の用語は、主にCaO×Al2O3を有するセメントを指す。このアルミン酸カルシウムセメントは、例えば、酸化カルシウム(CaO)または石灰石(CaCO3)およびボーキサイトまたはアルミン酸塩を一緒に溶融することにより得ることができる。アルミン酸カルシウムセメントは、CaOを約20~40質量%、SiO2を約5質量%まで、Al2O3を約35~80質量%、Fe2O3を約20質量%まで有する。アルミン酸カルシウムセメントは、DIN EN14647(01/2006)に従って定義される。
【0086】
「スルホアルミン酸カルシウムセメント」の用語は、イーリマイトならびに硫酸カルシウムを含むセメントを指す。硫酸カルシウムは、硫酸カルシウム二水和物(CaSO4×2H2O)、硫酸カルシウム半水和物(CaSO4×1/2H2O)および硫酸カルシウム無水物(CaSO4)として提供されてよい。天然産石膏はCaSO4×2H2Oである。しかしながら、焼成石膏は、一般式CaSO4×nH2O(式中0≦n≦2)に従って水和状態が変化することができる。
【0087】
さらに、本発明により、多様な添加剤を使用してよい。好ましい実施形態では、少なくとも1種の添加剤は、pH調整剤、充填剤、促進剤、遅延剤、更なるレオロジー改質剤、高性能減水剤、繊維、顔料およびアニオン性界面活性剤、さらにカチオン性界面活性剤および/または非イオン性界面活性剤、触媒、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0088】
ジオポリマーフォーム配合物またはジオポリマーフォームは、場合により、さらに、少なくとも1種の添加剤を有する。有利な添加剤は、充填剤、促進剤、遅延剤、レオロジー改質剤、高性能減水剤、繊維、および界面活性剤からなる群から選択される。
【0089】
その点で、ピッカリングフォームは同等であり、同じ効果を有する。ピッカリングフォームは、独立気泡ポリマーフォームの気泡構造により特徴付けられる。
【0090】
ジオポリマーフォーム配合物またはジオポリマーフォームは、場合により、さらに、少なくとも1種の添加剤を有し、この添加剤は界面活性剤である。好ましくは、界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、より好ましくはアルキルポリグリコシド界面活性剤である。
【0091】
ジオポリマーフォーム配合物またはジオポリマーフォームは、場合により、さらに、少なくとも1種の添加剤を有し、この添加剤は更なるレオロジー改質剤である。更なるレオロジー改質剤は、好ましくはポリマーディスパージョン、さらに好ましくは、酢酸ビニルから形成される構造単位と少なくとも1種の更なるエチレン性不飽和モノマーから形成される構造単位とを有する少なくとも1種のコポリマーを有するポリマーディスパージョンである。更なるレオロジー改質剤は、好ましくは、カチオン性構造を含まない。
【0092】
レオロジー改質剤は、粘度を、つまり流動挙動を調整し、コンシステンシー、耐久性および適用特性の間の良好なバランスを保証する。これらの改質剤は、合成ポリマー(例えばアクリルポリマー)、セルロース、シリカ、デンプンまたは粘土に基づくことができる。
【0093】
高性能減水剤は、粒子の分離を避ける分散剤として機能し、かつ懸濁液のレオロジーおよびそのワーカビリティーを改善するポリマーである。高性能減水剤は、一般に、四つのカテゴリーに分けることができる:リグノスルホナート、メラミンスルホナート、ナフタレンスルホナート、および櫛型ポリマー(例えば、ポリカルボン酸エーテル、ポリ芳香族エーテルおよびそれらの混合物)。
【0094】
ジオポリマーフォームの凝結時間は、遅延剤/促進剤と言われる特定の化合物の添加により延長/短縮することができる。遅延剤は、リグノスルホナート、セルロース誘導体、ヒドロキシルカルボン酸、オルガノホスファート、合成遅延剤、および無機化合物の群に分けることができる。遅延剤の非限定的な例は、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、グルコへプトナート、無水マレイン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)コポリマー、ホウ砂、ホウ酸、およびZnOである。促進剤の非限定的な例は、CaCl2、KCl、Na2SiO3、NaOH、Ca(OH)2、およびCaO×Al2O3、ケイ酸リチウム、ケイ酸カリウム、およびアルミニウム塩、例えば硫酸アルミニウムである。
【0095】
繊維(または安定化繊維)は、フォームの安定性をさらに高めるために、起泡プロセスの間に添加することができる。このような繊維は、多様な材料、例えば岩(例えば玄武岩)、ガラス、炭素、有機ポリマー(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、およびポリビニルアルコール)、セルロース、リグノセルロース、金属(例えば、鉄または鋼)、およびそれらの混合物から作製されてよい。有機繊維が好ましい。繊維の量は、少なくとも1種の無機バインダー混合物を基準として、3wt%まで、好ましくは0.1~2wt%、より好ましくは0.1~1.5wt%、さらにより好ましくは0.1~1wt%、特に0.2~0.7wt%であることができる。繊維は、好ましくは、200mmまで、または120mmまで、好ましくは100mmまで、より好ましくは50mmまで、最も好ましくは25mmまで、特に20mmまでの長さ、および100μmまでの直径を有する。
【0096】
「充填剤」の用語は、第一に、フォームの特性を損なうことなく体積を増大させるために添加することができる材料を指す。言及された充填剤は、石英砂または粉末石英、炭酸カルシウム、岩粉、低密度充填剤(例えば、バーミキュライト、パーライト、ケイソウ土、雲母、タルク粉末、酸化マグネシウム、発泡ガラス、中空球、発泡砂、粘土、ポリマー粒子)、顔料(例えば、二酸化チタン)、高密度充填剤(例えば、硫酸バリウム)、金属塩(例えば、亜鉛塩、カルシウム塩等)、およびそれらの混合物からなる群から選択することができる。ここで適切な粒子サイズは、特に500μmまでである。平均粒子サイズが300μmまで、好ましくは150μmまでであることが特に好ましい。
【0097】
本明細書で定義されたような両親媒性化合物に加えて使用されてよい界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、およびタンパク質またはこれらの合成ポリマー混合物を含む。
【0098】
非イオン性界面活性剤は、脂肪アルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、およびセトステアリルアルコール(主にセチルアルコールおよびステアリルアルコールを含む)、およびオレイルアルコールを含む。更なる例は、ポリエチレングリコールアルキルエーテル(Brij)CH3-(CH2)10-16-(O-C2H4)1-25-OH、例えばオクタエチレングリコールモノドデシルエーテルまたはペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル;ポリプロピレングリコールアルキルエーテルCH3-(CH2)10-16-(O-C3H6)1-25-OH;グルコシドアルキルエーテルCH3-(CH2)10-16-(O-グルコシド)1-3-OH、例えばデシルグルコシド、ラウリルグルコシド、オクチルグルコシド;ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテルC8H17-(C6H4)-(O-C2H4)1-25-OH、例えばTriton X-100;ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテルC9H19-(C6H4)-(O-C2H4)1-25-OH、例えばノノキシノール-9;グリセロールアルキルエステル、例えばグリセリルラウラート;ポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル、例えばポリソルベート;ソルビタンアルキルエステル、例えばスパン;コカミドMEA、コカミドDEA;ドデシルジメチルアミンオキシド;ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのブロックコポリマー、例えばポロキサマー;ポリエトキシル化タローアミン(POEA)を含む。好ましい非イオン界面活性剤は、アルキルポリグルコシドも含む。アルキルポリグルコシドは、一般に、式H-(C6H10O5)m-O-R1を有し、ここで、(C6H10O5)は、グルコース単位であり、R1は、C6~C22-アルキル基、好ましくはC8~C16-アルキル基、特にC8~C12-アルキル基であり、m=1~5である。
【0099】
アニオン性界面活性剤は、その頭部にアニオン性官能基、例えばスルファート、スルホナート、ホスファート、およびカルボキシラートを含む。傑出したアルキルスルファートは、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸ナトリウム(ドデシル硫酸ナトリウム、SLS、またはSDS)、および関連するアルキルエーテルスルファートのラウレス硫酸ナトリウム(ラウリルエーテル硫酸ナトリウムまたはSLES)およびミレス硫酸ナトリウムを含む。他には、ドクサート(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)、ペルフルオロオクタンスルホナート(PFOS)、ペルフルオロブタンスルホナート、アルキル-アリールエーテルホスファート、アルキルエーテルホスファートを含む。好ましいカルボキシラートは、アルキルカルボン酸塩、例えばステアリン酸ナトリウムを含む。より特別な種は、ラウリルサルコシン酸ナトリウムおよびカルボキシラートベースのフルオロ界面活性剤、例えばペルフルオロノナノアート、ペルフルオロオクタノアート(PFOAまたはPFO)を含む。
【0100】
カチオン性界面活性剤は、pHに依存して、第一級、第二級、または第三級アミンを含み:第一級および第二級アミンは、pH<10で正に帯電する。例は、オクテニジン二塩酸塩である。さらに、カチオン性界面活性剤は、常に帯電した第四級アンモニウム塩、例えば臭化セトリモニウム(CTAB)、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化ベンザルコニウム(BAC)、塩化ベンゼトニウム(BZT)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロリド、ジオクタデシルジメチルアンモニウムブロミド(DODAB)を含む。
【0101】
両性イオン(両性)界面活性剤は、同じ分子に結合したカチオン中心とアニオン中心との両方を有する。カチオン部分は、第一級、第二級、または第三級アミンまたは第四級アンモニウムカチオンを基礎とする。アニオン部分は、より可変であることができ、スルタインのCHAPS(3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアミノ]-1-プロパンスルホナート)およびコカミドプロピルヒドロキシスルタインの場合のように、スルホナートを含む。ベタイン、例えばコカミドプロピルベタインは、アンモニウムを有するカルボキシラートを有する。最も一般的な生物学的な両性界面活性剤は、アミンまたはアンモニウムを有するホスファートアニオン、例えばリン脂質のホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、およびスフィンゴミエリンを有する。タンパク質の非限定的な例は、ウシ血清アルブミン、卵オボアルブミン、ミルクカゼインまたはベータ-ラクトグロブリンである。
【0102】
界面活性剤の割合は、広範囲にわたって変化することができる。界面活性剤は、ジオポリマーフォーム配合物の全質量を基準として、2.5wt%まで、好ましくは1.5wt%までの量で存在してよい。ジオポリマーフォーム配合物の全質量は、好ましくは、バインダー、活性剤、水、場合により界面活性剤および場合により更なる配合成分、例えば充填剤、繊維、高性能減水剤、更なるレオロジー改質剤、触媒等の合計である。
【0103】
添加剤として使用してもよい触媒は、化学的起泡剤と組み合わせて使用してよい触媒である。適切な触媒は、発泡剤の文脈で、上述および後述される。
【0104】
本発明により使用されるような成分の量に関する更なる詳細は、以下に定義される。
【0105】
カチオン性コポリマーは、ジオポリマーフォーム配合物の全質量を基準として、ジポリマーフォーム配合物中で0.01質量%~20.0質量%、好ましくは0.1質量%~10.0質量%、より好ましくは0.2質量%~5.0質量%、最も好ましくは0.3~2質量%の範囲内で有する。ジオポリマーフォーム配合物の全質量は、好ましくは、バインダー、活性剤、水、場合により界面活性剤および場合により更なる配合成分、例えば充填剤、繊維、高性能減水剤、更なるレオロジー改質剤、触媒等の合計である。
【0106】
添加剤の適切な量は、広範囲にわたり変化してよく、添加剤のタイプにも依存する。典型的には、少なくとも1種の添加剤は、ジオポリマーフォーム配合物の全質量を基準として、0.0003~30wt%、または0.03~25wt%の質量パーセント量で提供される。しかしながら、充填剤は、より高い量で使用されてもよい。特に、充填剤は、無機バインダーと同量で存在してもよい。好ましくは、充填剤の、少なくとも1種の無機バインダー混合物に対する質量比は、2:1~1:100、好ましくは1:1~1:10であってよい。
【0107】
さらに、本発明は、
(1)少なくとも1種のカチオン性コポリマー(i)を、
(ii)以下の
(iia)潜在水硬性バインダー、ポゾラン性バインダーおよびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の無機バインダー、および
(iib)アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ活性剤
を有する少なくとも1種の無機バインダー混合物と、
(iii)水と、
(iv)場合により、少なくとも1種の添加剤、好ましくは界面活性剤、より好ましくは非イオン性界面活性剤、最も好ましくはアルキルポリグルコシド
と混合することにより本発明によるジオポリマーフォーム配合物を製造するステップと、
(2)得られたジオポリマーフォーム配合物を、化学的、物理的および/または機械的起泡により起泡するステップと
を有するジオポリマーフォームの製造方法に関する。
【0108】
本発明はさらに、ジオポリマーフォームを製造するための上述のプロセスにより得られるジオポリマーフォームに関する。
【0109】
本発明はさらに、ジオポリマーフォームを製造するための上述のプロセスにより得られるジオポリマーフォームを硬化および場合により乾燥することにより得られる多孔質材料に関する。
【0110】
本発明はさらに、成分として、本発明による少なくとも1種のカチオン性コポリマー(i)と、
(ii)以下の
(iia)潜在水硬性バインダー、ポゾラン性バインダーおよびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の無機バインダー、および
(iib)アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ活性剤
を有する少なくとも1種の無機バインダー混合物と
を有し、
ここで、
これらの成分は、別々に存在するか;または
これらの成分は、混合物の形で存在する
ジオポリマーフォーム配合物を製造するための組成物に関する。
【0111】
ジオポリマーフォーム配合物を製造するための組成物は、場合により、さらに、少なくとも1種の添加剤を有する。有利な添加剤は、充填剤、促進剤、遅延剤、レオロジー改質剤、高性能減水剤、繊維、および界面活性剤からなる群から選択される。
【0112】
ジオポリマーフォーム配合物を製造するための組成物は、場合により、さらに、少なくとも1種の添加剤を有し、この添加剤は、界面活性剤である。好ましくは、界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、より好ましくはアルキルポリグリコシド界面活性剤である。
【0113】
ジオポリマーフォーム配合物を製造するための組成物は、場合により、さらに、少なくとも1種の添加剤を有し、この添加剤は、更なるレオロジー改質剤である。更なるレオロジー改質剤は、好ましくはポリマーディスパージョン、さらに好ましくは、酢酸ビニルから形成される構造単位と少なくとも1種の更なるエチレン性不飽和モノマーから形成される構造単位とを有する少なくとも1種のコポリマーを有するポリマーディスパージョンである。
【0114】
本発明はさらに、以下の実施例により説明される。
【0115】
カチオン性ポリマーの例
P-1:
MPEG475-MA:1-ビニル-3-メチルイミダゾリウムメチルスルファートから1:6のモル比で構成されたカチオン性櫛型ポリマー、Mw=4.0kDa、Mn=1.7kDa:
MPEG475-MA=475g/molのMnを有するメタクリル酸のメチルポリエチレングリコール(MPEG)エステル
【0116】
P-2:
側鎖を有しておらず、1-ビニル-3-メチルイミダゾリウムクロリド:N-ビニルピロリドンから95:5の質量比で構成されたカチオン性コポリマー、モル質量40kDa。
【0117】
P-3:
側鎖を有しておらず、1-ビニル-3-メチルイミダゾリウムクロリド:N-ビニルピロリドンから50:50の質量比で構成されたカチオン性コポリマー、モル質量80kDa。
【0118】
適用例
異なるバインダー系を有する二つのセットの実験を行い、実験の各セットは、表1および2による基本配合物に関連している。以下の表は、各配合物の成分(促進剤、(水)、界面活性剤および無機バインダー、例えばメタカオリンまたはフライアッシュ)を含む。
【0119】
【0120】
【0121】
一般的な手順
未起泡懸濁液の製造
第一のステップでは、上述の表(界面活性剤なしであるが、例P-1~P-3のカチオン性ポリマーありまたはなしで)の各々の成分をそれぞれ混合することにより、未起泡懸濁液を得た。得られた未起泡懸濁液の密度を、それぞれの場合に、表3にまとめる。
【0122】
フレッシュな鉱物フォームの製造
第二のステップでは、界面活性剤のGlucopon 225DKを、第一のステップで得られた未起泡懸濁液に添加し、この混合物をさらに30秒間混合した。この懸濁液を、ロータステータ原理に従って動作する、液体および低粘度ペーストの連続起泡用の全自動起泡装置(Magromix+ from Heitec Auerbach GmbH)内にホースを介してポンプ圧送した。このプロセスパラメータは、以下の通りである:混合ヘッド回転速度 300rpm、システム空気圧 約2bar、材料スループット 120リットル/時間。
【0123】
得られた起泡懸濁液の空気含有率は、ここでは、DIN EN1015-6に基づく方法により、未起泡懸濁液と比較した体積変化によって決定した。湿潤状態の起泡サンプルの密度を、表3にまとめる。
【0124】
いくつかの例を、表1および2に言及されているのと同じ基本配合物で、上述の本文に説明されているのと同じツーステップの手順(未起泡懸濁液を製造する第一のステップとフォームを製造する第二のステップ)で、カチオン性ポリマーありまたはなしで製造した。詳細を表3に示す。
【0125】
鉱物フォームの硬化
硬化のために、サンプルを室温で50%の湿度で1日間保存した。
【0126】
試験方法:
手始めに、次章で試験方法およびその技術的意味を簡単に説明する。評価は、ほとんどの場合に比較的簡単な目視試験法により、未起泡懸濁液の製造と、フレッシュな鉱物フォームの製造と、鉱物フォームの硬化との、上述の三つのステップの間またはその後に行った。
【0127】
一般的な所見として、一方では、起泡プロセスの間の懸濁液の良好なワーカビリティーおよび起泡性を得ることが望ましい。起泡プロセスの間に、機械エネルギーが混合プロセスにより系内に導入される。一方では、スムーズで効果的な起泡プロセスを可能にするために、懸濁液の比較的低い粘度が望ましい。他方では、起泡プロセスが完了した後(混合が完了した後)、起泡サンプルは、安定したままで、無機バインダー系の凝結(硬化)が行われるまで崩壊しないことが望まれる。
【0128】
混合の間の系の比較的低い粘度、それに続き、起泡サンプルがもはや混合されない場合の比較的高い粘度は、典型的なチキソトロピー挙動である。チキソトロピー効果は、一方でスムーズですぐに作業可能な起泡プロセスを可能にし、他方ではチキソトロピー効果は、無機バインダー系の硬化が行われるまでのフレッシュな起泡サンプルを十分に安定に(フレッシュフォームの崩壊なしに)保つためにかなり役立つため、大いに望ましい。以下の本文では、各試験方法を詳細に説明する。
【0129】
ワーカビリティー試験(混合プロセスの間での観察による起泡性試験)
この試験では、フォームのワーカビリティーを、起泡懸濁液を得るために、未起泡懸濁液を界面活性剤と混合する間に評価する。基本的に、フレッシュな起泡懸濁液の所望な密度が得られるまでの時間を測定する。全ての例において、試験条件は、フレッシュな起泡懸濁液の所望な目標密度を得るまでの時間が妥当な範囲内(約5分)であるように選択された。懸濁液の粘度は、ワーカビリティーにとって重要であり、この粘度は、スムーズな起泡プロセスを保証するために高すぎるべきではないと考えられる。
【0130】
安定性試験(ST)(ビーカー法)
フレッシュフォームサンプルの安定性試験は、以下のように確立された:250mLビーカーをフォームで満たし、90°の角度で傾ける。液状のフォームが凝結前にビーカーの外に流出しない場合に、最良の結果が観察され、ゆっくりと部分的に流出することは、かなり早く流れることと比較して、かなりの改善である。特に上述のワーカビリティー試験と組み合わせた安定性試験は、チキソトロピーのための試験である。混合の間のスラリー粘度は、どちらかと言えば低いことが望ましいが、硬化が始まるまでのフォームに対する安定性を保証するために、混合を停止した後に間もなく、フォームは流動性でなくなるかまたは僅かにだけ流動性であるべきである。
【0131】
滴下試験(スパチュラ法)
滴下試験は、安定性試験(ビーカー法)と同様の試験である。この滴下試験は、フォームのチキソトロピーを評価するための試験でもある。この滴下試験は、製造したてのフォーム内にスパチュラを導入しかつスパチュラをフォームから取り出すことにより行われる。理想的な場合に、このフォームは、フォームがスパチュラに付着し、スパチュラから滴り落ちないほど粘性である。
【0132】
亀裂(収縮)についての目視観察試験(VOT)
得られたサンプルは、硬化後に目視観察により、亀裂について評価した。硬化条件は、室温で50%の湿度で1日間サンプルを貯蔵することであった。主に収縮が亀裂形成の原因であると考えられている。
【0133】
試験結果
全ての実験および結果の概要を、以下の表3に示す。上述のように、全ての例のワーカビリティー(起泡性)は、十分に作業可能な適切な範囲内に選択された。
【0134】
いくつかの場合では、硬化フォームの遮断特性は、ラムダ値(mW/m*K)を測定することにより決定され、このラムダ値は、マクロ構造レベルおよびミクロ構造レベルでの硬化フォームの均一性についての更なる指標である。
【0135】
表3の実験および結果は、カチオン性ポリマーを添加しない例と比較して、フォームの安定性のかなりの改善(安定性試験および滴下試験の結果)を達成することができることを示す。混合(起泡)の間のサンプルのワーカビリティーは、満足な範囲内であり、混合の停止後に、良好なチキソトロピー効果を観察することができた。これらのサンプルは、良好なフォーム安定性を有することが判明した。
【0136】
チキソトロピー効果およびワーカビリティーに関して不利な影響なしに、水の量(例1a-4および1b)を10質量%低減することも可能であった。同時に、亀裂は、許容範囲内であった。
【0137】
目視観察試験(亀裂)においても、比較例と比較して、本発明によるサンプルについてはるかに良好な結果を得ることができた。亀裂の数は、表が示すように、かなり減少した。
【0138】
【0139】
1)wt%で示す適用量表示は、表1または2の成分(水ガラス、NaOH、水、界面活性剤およびそれぞれの無機バインダー)の質量を基準とするカチオン性ポリマー(乾燥ポリマー)の質量を指す。
【0140】
2)数値1は、フォームがほとんどまたは全く流出しない優秀な結果を意味し、2は、中程度の量のフォームが流出する良好な結果を意味し、3は、大量のフォームが試験ビーカーから比較的早くに流出する不満足な結果を意味する。
【0141】
3)安定性試験と同様に、数値1は、フォームの全てまたはほぼ全てがスパチュラに付着する優秀な結果を意味し、2は、多少のフォームがスパチュラから滴り落ちる中程度の結果を意味し、3は、大量のフォームがスパチュラから滴り落ちる不満足な結果である。
【0142】
4)数値1は、亀裂が観察されないかまたは極めて僅かで小さな亀裂だけが観察される良好な結果を意味し、2は、まだ許容可能な亀裂が観察されるまだ良好な結果を意味し、3は、大量の亀裂が観察される不満足な結果である。
【0143】
5)水の量が10wt%低減された、このことは、例1a-4および例1bの場合では、水13.81gの代わりに、12.43gだけを使用したことを意味する。
本開示は以下も包含する。
[1]
カチオン性コポリマー(i)が、
少なくとも1つのカチオン性基を有する少なくとも1つのカチオン性構造単位(I)と、場合により
少なくとも1つのポリオキシアルキレン基を有する少なくとも1つのマクロモノマー構造単位(II)と
を有する、ジオポリマーフォーム配合物中のレオロジー改質剤としての、少なくとも1種のカチオン性コポリマー(i)の使用。
[2]
前記カチオン性コポリマー(i)の前記構造単位(I)を形成するモノマー成分(A)が、前記少なくとも1つのカチオン性基を有するエチレン性不飽和モノマーからなる群から選択され、
前記カチオン性コポリマー(i)の前記構造単位(II)を形成するモノマー成分(B)が、前記少なくとも1つのポリオキシアルキレン基を有するエチレン性不飽和モノマーからなる群から選択される、態様1記載の使用。
[3]
前記少なくとも1つのカチオン性基が、第四級アンモニウム基、イミニウム基またはN-アルキル化ヘテロアリール基である、態様1または2記載の使用。
[4]
前記カチオン性コポリマー(i)が
a)式(I)
【化1】
[ここで、
R
1
は、それぞれの場合に同じまたは異なり、水素および/またはメチルを表し、
R
2
は、それぞれの場合に同じまたは異なり、
【化2】
からなる群から選択され、
ここで、
R
3
、R
4
およびR
5
は、それぞれの場合に同じまたは異なり、それぞれ独立して、水素、1~20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5~8個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6~14個の炭素原子を有するアリールおよび/またはポリエチレングリコール(PEG)基を表し、
lは、それぞれの場合に同じまたは異なり、0~2の整数を表し、
mは、それぞれの場合に同じまたは異なり、0または1を表し、
nは、それぞれの場合に同じまたは異なり、0~10の整数を表し、
Yは、それぞれの場合に同じまたは異なり、不存在基、酸素、NH、および/またはNR
3
を表し、
Vは、それぞれの場合に同じまたは異なり、-(CH
2
)
x
-、
【化3】
を表し、
ここで、
xは、それぞれの場合に同じまたは異なり、1~6の整数を表し、かつ
Xは、それぞれの場合に同じまたは異なり、ハロゲン原子、C
1
~C
4
-アルキルスルファート、C
1
~C
4
-アルキルスルホナート、C
6
~C
14
-(アルキル)アリールスルホナートおよび/またはスルファート、ジスルファート、ジホスファート、トリホスファートおよび/またはポリホスファートから選択される多価アニオンの一価当量を表す]
のカチオン性構造単位3~97mol%と、場合により
b)式(II)
【化4】
[ここで、
R
6
は、それぞれの場合に同じまたは異なり、以下の式(IIa)
【化5】
のポリオキシアルキレン基を表し
ここで、
oは、それぞれの場合に同じまたは異なり、1~300の整数を表し、かつ
R
1
、R
3
、l、m、Y、V、およびxは、上述の意味を有する]
のマクロモノマー構造単位97~3mol%と
を有する、態様1から3までのいずれかの使用。
[5]
前記カチオン性コポリマー(i)が
a)式(I)
【化6】
[ここで、
R
1
は、それぞれの場合に同じまたは異なり、水素および/またはメチルを表し、
R
2
は、それぞれの場合に同じまたは異なり、
【化7】
からなる群から選択され、
ここで、
R
3
、R
4
およびR
5
は、それぞれの場合に同じまたは異なり、それぞれ独立して、水素、1~20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5~8個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6~14個の炭素原子を有するアリールおよび/またはポリエチレングリコール(PEG)基を表し、
lは、それぞれの場合に同じまたは異なり、0~2の整数を表し、
mは、それぞれの場合に同じまたは異なり、0または1を表し、
nは、それぞれの場合に同じまたは異なり、0~10の整数を表し、
Yは、それぞれの場合に同じまたは異なり、不存在基、酸素、NH、および/またはNR
3
を表し、
Vは、それぞれの場合に同じまたは異なり、-(CH
2
)
x
-、
【化8】
を表し、
ここで、
xは、それぞれの場合に同じまたは異なり、0~6の整数を表し、かつ
Xは、それぞれの場合に同じまたは異なり、ハロゲン原子、C
1
~C
4
-アルキルスルファート、C
1
~C
4
-アルキルスルホナート、C
6
~C
14
-(アルキル)アリールスルホナートおよび/またはスルファート、ジスルファート、ジホスファート、トリホスファートおよび/またはポリホスファートから選択される多価アニオンの一価当量を表す]
のカチオン性構造単位3~97mol%と、場合により
b)式(II)
【化9】
[ここで、
R
6
は、それぞれの場合に、ピロリドンおよび/またはカプロラクタムであり、l、m、YおよびVは、Oまたは不存在基である]
のマクロモノマー構造単位97~3mol%と
を有する、態様1から3までのいずれかの使用。
[6]
前記少なくとも1種のカチオン性コポリマー(i)が、前記カチオン性構造単位(I)10~90mol%と前記マクロモノマー構造単位(II)90~10mol%、好ましくは前記カチオン性構造単位(I)25~75mol%と前記マクロモノマー構造単位(II)75~25mol%、より好ましくは前記カチオン性構造単位(I)40~60mol%と前記マクロモノマー構造単位(II)60~40mol%を有する、態様1から5までのいずれかの使用。
[7]
態様1から6までのいずれかに定義された前記少なくとも1種のカチオン性コポリマー(i)と、
(ii)以下の
(iia)潜在水硬性バインダー、ポゾラン性バインダーおよびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の無機バインダー、および
(iib)アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ活性剤
を有する少なくとも1種の無機バインダー混合物と、
(iii)水と
を有する、ジオポリマーフォーム配合物。
[8]
前記ジオポリマーフォーム配合物がさらに、好ましくは、充填剤、促進剤、遅延剤、更なるレオロジー改質剤、高性能減水剤、繊維、顔料およびアニオン性界面活性剤、更なるカチオン性界面活性剤および/または非イオン性界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を有する、態様7記載のジオポリマーフォーム配合物。
[9]
前記ジオポリマーフォーム配合物がさらに、界面活性剤、好ましくは非イオン性界面活性剤、さらに好ましくはアルキルポリグルコシド界面活性剤である少なくとも1種の添加剤を有する、態様7または8記載のジオポリマーフォーム配合物。
[10]
前記ジオポリマーフォーム配合物がさらに、更なるレオロジー改質剤、好ましくはエチレン性不飽和モノマーから形成されたポリマーディスパージョンである少なくとも1種の添加剤を有する、態様7から9までのいずれか記載のジオポリマーフォーム配合物。
[11]
(1)前記少なくとも1種のカチオン性コポリマー(i)を、
(ii)以下の
(iia)潜在水硬性バインダー、ポゾラン性バインダーおよびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の無機バインダー、および
(iib)アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ活性剤
を有する少なくとも1種の無機バインダー混合物と
(iii)水と
(iv)場合により少なくとも1種の添加剤と
混合することにより、態様7から10までのいずれかに定義されたジオポリマーフォーム配合物を製造するステップと、
(2)得られたジオポリマーフォーム配合物を、化学的、物理的および/または機械的起泡により起泡するステップと
を有するジオポリマーフォームの製造方法。
[12]
態様11記載の方法により得ることができるジオポリマーフォーム。
[13]
成分として、態様1から6までのいずれかに定義された少なくとも1種のカチオン性コポリマー(i)と、
(ii)以下の
(iia)潜在水硬性バインダー、ポゾラン性バインダーおよびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の無機バインダー、および
(iib)アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ活性剤
を有する少なくとも1種の無機バインダー混合物とを有し、
ここで、
前記成分は、別々に存在するか;または
前記成分は、混合物の形で存在する、ジオポリマーフォーム配合物を製造するための組成物。
[14]
前記組成物がさらに、態様8から10までのいずれかに定義された少なくとも1種の添加剤を有する、態様13記載の組成物。