(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】二成分水系ラミネート接着剤、及び基材とフォームを接着するためのその使用
(51)【国際特許分類】
C09J 5/06 20060101AFI20240828BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
C09J5/06
C09J175/04
(21)【出願番号】P 2021557357
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 US2020024811
(87)【国際公開番号】W WO2020198407
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】201941011911
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】スミス‐へーベラー、 エミリー
(72)【発明者】
【氏名】コザウェード、 サンディープ
(72)【発明者】
【氏名】クマール、 ギーダリー
(72)【発明者】
【氏名】ヒレケルー、 アビジット
(72)【発明者】
【氏名】ハーカル、 ウメシュ
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-502753(JP,A)
【文献】米国特許第05494960(US,A)
【文献】特表2016-534185(JP,A)
【文献】特表2014-503620(JP,A)
【文献】特表2018-522096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-5/10、9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟なシート材料を基材に接着する方法であって:
主面、前記主面に角度をつけて配置された周面、及び前記主面と前記周面とを接続するエッジを有する基材を提供すること;
第1の部分から延びる第2の部分を有する柔軟なシート材料を提供すること;
水系二成分ポリウレタン分散接着剤の第1成分を提供すること;
水系二成分ポリウレタン分散接着剤の第2成分を提供すること;
前記第1成分と前記第2成分を混合して、混合水系二成分ポリウレタン分散接着剤を形成すること;
前記混合接着剤を、前記主面の一部、並びに前記周面及び前記エッジの一部に塗布すること;
適用された前記接着剤を乾燥させて、前記主面、並びに前記周面及び前記エッジに、乾燥ポリウレタン接着剤層を形成すること;
第1の加熱サイクルを適用して、前記主面上の前記ポリウレタン接着剤層を活性化すること;
前記柔軟なシート材料の前記第1の部分を、前記主面上の活性化接着剤上に配置し、前記材料の前記第1の部分を前記主面に接着すること;
任意で、前記ポリウレタン接着剤及び前記基材表面を接着剤活性化温度以下に冷却すること;
第2の加熱サイクルを適用して、前記エッジ及び前記周面上のポリウレタン接着剤層を再活性化温度以上に加熱し、前記エッジ及び前記周面上の接着剤を再活性化すること;
前記柔軟なシート材料の第2の部分を、前記エッジ及び前記周面上の加熱及び再活性化された接着剤上に配置し、前記材料の第2の部分を前記エッジ及び前記周面に接着させること;並びに
任意で、前記ポリウレタン接着剤及び前記基材表面を接着剤活性化温度以下に冷却すること;
を含む、方法。
【請求項2】
前記基材が高分子である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基材がポリプロピレン(PP)又はアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)から構成される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記柔軟なシート材料が、柔軟なポリウレタンフォーム材料を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の加熱サイクルを適用する工程が、主面及び前記主面上に配置された柔軟なシート材料の第1の部分を60℃~80℃で2~4分間加熱することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の加熱サイクルを適用する工程が、主面及び前記主面上に配置された加熱された柔軟なシート材料の第1の部分を60℃~80℃で2~4分間の加熱することを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記加熱及び再活性化された接着剤上に柔軟なシート材料の第2の部分を配置する工程が、前記柔軟なシート材料の固定されていない部分を、エッジ及び周面に巻き付けることを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の加熱サイクルを適用する工程、及び前記加熱及び再活性化された接着剤上に第2の部分を適用する工程が、周面を200℃~300℃の温度に30秒以下さらし、続いて、前記材料の第2の部分をエッジ及び加熱された周面に巻き付けることを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の加熱サイクルを適用する工程、及び前記材料の第2の部分をエッジ及び周面に配置する工程が、前記材料の配置された第2の部分及び周面を60℃~80℃で15秒~30秒間加熱すること、続いて前記加熱された周面の周りに材料の層を巻き付けることを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の加熱サイクルを適用する工程が、周面を55℃~85℃の温度にさらすことを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1成分が、少なくとも1つのポリウレタン樹脂分散液を含み、前記第2成分が、無溶媒及び無水液体脂肪族ポリイソシアネート架橋剤を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記接着剤の塗布前に前記第1成分及び前記第2成分を混合すると、架橋反応が開始する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水系二成分ポリウレタン分散接着剤、及びポリウレタンフォーム等の柔軟なシート材料を、基材、特に自動車内装に見られるような高分子基材に接着するためのこの接着剤の使用に関する。特に、本開示は、再活性化され得る水系二成分ポリウレタン接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の内装等の自動車トリム用途は、多くの場合、フォーム、皮革基材等の柔軟なシート材料を、ポリプロピレン(PP)又はアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)等の高分子基材に接着することを含む。このような用途のための水系接着剤は、揮発性有機化合物(VOC)が少ない又はゼロである可能性がある。また、水系接着剤は、加工が容易で放熱性が良好である可能性があり、生産工場での製造に便利である。
【0003】
多くの自動車トリム用途では、フォームのような柔軟なシート材料を、基材表面上、基材エッジの周囲、及び基材の周面上に配置する必要がある。多くの場合、周面は主面に対して角度を付けて配置される。水性接着剤は、典型的には、こうした基材表面及びエッジ上に配置され、続いて、例えば、表面、エッジ及び周面上に柔軟なシート材料の単一片を巻き付けるか又は部分的に巻き付けることによって、これらの基材表面及びエッジ上に柔軟なシート材料を配置する。水性接着剤の乾燥及び硬化中にフォームと基材表面及びエッジとの適切な接触が維持されない限り、フォームは基材表面の1つ及び/又はエッジから分離し、破損を引き起こす。水性接着剤に必要な長い乾燥時間及び硬化時間に対して十分な接触を維持することは、特に、複雑で変化するエッジ形状を有する基材の場合、しばしば困難である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
開示された水性二成分ポリウレタン接着剤分散液は、優れた構造的接着特性を提供するだけでなく、再活性化温度以上に加熱することによって接着剤を1回以上再活性化する能力も提供する。接着剤の再活性化により、顧客の仕様に従って、現在使用されている接着剤の欠点なしに、ポリウレタンフォームのような高分子フォームを含有するフォームのような柔軟なシート材料の層を、基材上、基材のエッジの周り、及び基材の周面に、エッジラッピングすることができる。
【0005】
本発明の1つの態様では、柔軟なシート材料を基材に接着する方法は、
主面、前記主面に角度をつけて配置された周面、及び前記主面と前記周面とを接続するエッジを有する基材を提供すること;
第1の部分及び第2の部分を有する単一の柔軟なシート材料を提供すること;
水系二成分ポリウレタン分散液を提供すること;
前記水系ポリウレタン分散液を前記主面の一部又は全部に塗布し、任意で基材の前記周面の一部又は全部に塗布すること;
適用された前記水系ポリウレタン分散液から水を除去し、乾燥したポリウレタン接着剤層を表面に形成すること;
第1の加熱サイクルを適用して、前記主面上の前記ポリウレタン接着剤層を活性化すること;
前記柔軟なシート材料の前記第1の部分を、前記主面上の前記活性化接着剤上に配置し、前記材料の前記第1の部分を前記主面に接着すること;
任意で、前記ポリウレタン接着剤及び前記基材表面を接着剤活性化温度以下に冷却すること;
第2の加熱サイクルを適用して、前記エッジ及び/又は前記周面上のポリウレタン接着剤層を再活性化温度以上に加熱し、前記エッジ及び/又は前記周面上の接着剤を再活性化すること;
前記材料の層の前記第2の部分を、前記エッジ及び/又は前記周面上の加熱及び再活性化された接着剤上に配置し、前記材料の前記第2の部分を前記エッジ及び前記周面に接着させること;並びに
任意で、前記ポリウレタン接着剤及び前記基材表面を接着剤活性化温度以下に冷却すること;
を包含する。
【0006】
1つの実施形態では、基材は、ポリプロピレン(PP)又はアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)含有基材のようなプラスチック又はプラスチック含有基材であってよい。
【0007】
1つの実施形態では、柔軟なシート材料は、ポリウレタンフォーム材料、柔軟な皮革シート、高分子フィルム又はシート、布及びそれらの組み合わせのような柔軟なシートフォーム材料を含むことができる。
【0008】
1つの実施形態では、材料の第1の部分が主面上に配置された後に、第1の加熱サイクルを行うことができる。
【0009】
1つの実施形態では、第1の加熱サイクルは、ポリウレタン接着剤層及び主面を約60℃~約80℃のオーブンで約2~約4分間加熱することを含むことができる。
【0010】
1つの実施形態では、第2の加熱サイクルは、エッジ及び周面上の加熱及び再活性化された接着剤上に、材料の層の第2の部分を配置する前に、基材のエッジ及び周面、並びにエッジ及び周面上のポリウレタン接着剤層を、約200℃~約300℃の温度に約30秒又は30秒未満さらすことを包含することができる。
【0011】
1つの実施形態では、第2の加熱サイクルは、基材のエッジ及び周面、基材のエッジ及び周面上のポリウレタン接着剤層、並びに基材のエッジ及び周面上の材料の第2の部分を、約2秒~約4秒で約200℃~約300℃の温度にさらすことを包含することができる。
【0012】
1つの実施形態では、第2の加熱サイクルは、材料の第2の部分及び基材の周面を約60℃~約80℃のオーブンで約15秒~約30秒加熱することを包含することができる。
【0013】
1つの実施形態では、第2の加熱サイクルは、ポリウレタン接着剤層を約55℃~約85℃、又は好ましくは約55℃~約65℃の温度で加熱することを包含することができる。
【0014】
1つの実施形態では、水系二成分ポリウレタン分散接着剤の1つの成分は:
無溶媒液体脂肪族ポリイソシアネート架橋剤;
アニオン性ポリエステルポリウレタン樹脂;
水;及び
任意で1つ以上の添加剤
を含むことができる。
【0015】
第2の加熱サイクル後、硬化したポリウレタン接着剤は、約4kgf(キログラム重)~約5kgfの剥離強度を有することができる。
【0016】
1つの実施形態では、水系二成分ポリウレタン分散接着剤の一成分は、無溶媒及び無水液体脂肪族ポリイソシアネート架橋剤、及び任意で1つ以上の添加剤を含むことができる。無溶媒及び無水液体脂肪族ポリイソシアネート架橋剤は、ヘキサメチレンジイソシアネート又は1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体(HDI-ビウレット)を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
複数の図で同様の要素が等しく番号付けされている図面を参照する。
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態の構造的接着工程段階及び再活性化接着工程段階を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
数値に関連して本明細書で使用する用語「約」又は「およそ」は、±10%、好ましくは±5%、より好ましくは±1%以下の数値を表す。
【0020】
ポリプロピレンのような第1の高分子基材を、ポリウレタンフォームのような柔軟なシート材料に接着するための、水系二成分ポリウレタン分散接着剤の新しい種類の配合物及び性能が本明細書に記載されている。開示された接着剤は、改善された構造的接着特性を提供するだけでなく、その後の加熱の際に1回又は複数回再活性化する能力も与える。接着剤の再活性化は、エッジラッピング等の用途に必要な重要な特性である。
【0021】
一般に、プラスチック基材の表面エネルギーが低い(約30ダイン/cm未満)ため、プラスチック基材への接着は困難である。水の表面張力(ST)(約72ダイン/cm)がプラスチック基材の表面エネルギーよりも大きいため、水性接着剤の接着はさらに困難である。ヤングの式によると、接触角(Q)が90°未満であれば、接着剤は基材の表面を濡らすことができる。水性接着剤の表面張力をプラスチック表面の表面張力よりも低くすると、通常、接触角が小さくなり、濡れ性が向上する。水系二成分ポリウレタン分散接着剤の表面張力は、界面活性剤を使用して低減できる。未処理のポリプロピレンの表面エネルギーは低い。こうした低エネルギープラスチック基材の表面エネルギーは、火炎処理、コロナ処理、プラズマ処理、化学エッチング等のような様々な表面処理方法によって増加させることができる。このように、水系ポリウレタン分散液は、ポリプロピレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン等のようなプラスチック基材を接着するために有用である可能性がある。
【0022】
本明細書に記載の二成分水系ポリウレタン分散接着剤は、例えば、柔軟なシートポリウレタン(PU)フォーム材料を、処理されたPP基材を包含するポリプロピレン(PP)基材に接着してもよい。二成分水系ポリウレタン分散接着剤は、望ましくは、車両のドアトリム領域で重要なエッジラッピング用途等で、二度目の加熱時に追加の接着を行う可能性がある再活性化特性を有する。例えば、ドアトリムの用途には、しばしば2つの加熱サイクルが包含され、1つは柔軟なフォーム材料を部品(基材)の平らな表面に接着するためのもので、もう1つは柔軟なフォーム材料をその基材のエッジの周り及び周面に接着するためのものである。
【0023】
本明細書に記載のポリウレタン接着剤分散液は、ドアトリム用途等でポリウレタンフォームをポリプロピレン基材に接着するのに特に有用である。この有用性は、接着剤が2回目以降の加熱で再活性化する能力によって強化される。再活性化とは、接着剤が、冷却された非粘着性又は非接着性の状態から、加熱された粘着性又は接着性の状態に移行する能力である。一旦、接着剤が架橋すると、再活性化することはできなくなる。
【0024】
ポリウレタンフォームを、処理したポリプロピレンに接着するための典型的な現在の水系製品は、以下の欠点を有する。
1.再活性化特性(1回又は複数回)がないため、エッジラッピング用途には適していない。
2.Nーメチルー2-ピロリドン(NMP)及びエタノールのような有機溶媒を配合物に使用すると、揮発性有機化合物が発生するため、望ましくない環境問題が生じる。
【0025】
開示された組成物は、水系であり、好ましくは実質的に無溶媒であり、再加熱することによって複数回再活性化することができる。1つの実施形態では、接着剤は、Nーメチルー2-ピロリドン(NMP)及びエタノール及び他の揮発性有機化合物のような有機溶媒を実質的に含まない二成分(2K)の水系ポリウレタン接着剤である。本明細書で使用される場合、実質的に含まないとは、個々の成分及び混合接着剤分散液が、それぞれ、個々の成分又は混合分散液の重量に基づいて1重量%未満の有機溶媒、好ましくは0.1重量%未満の有機溶媒、より好ましくは有機溶媒を含まない(0重量%)ことを意味する。
開示された組成物はパートA及びパートBを含む。パートAは水系ポリウレタン分散液配合物である。パートBは架橋剤配合物である。
【0026】
1つの実施形態では、パートA成分は、1つ以上のポリウレタン分散液及び水を含む。パートA成分は、任意で、界面活性剤、コポリマー、着色剤、染料、殺生物剤、消泡剤、及びレオロジー調整剤から選択される添加剤を含むことができる。表1は、パートA組成物の1つの実施形態のいくつかの特性を説明する。
【0027】
【0028】
1つの実施形態では、パートB成分は、パートA成分と反応する架橋剤を含む。パートBは、1つ以上の脂肪族ポリイソシアネートを含むことができる。1つの実施形態では、パートB成分は、無溶媒液体脂肪族ポリイソシアネート架橋剤を含むことができる。1つの実施形態では、パートB成分は、ヘキサメチレンジイソシアネート又は1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体(HDI-ビウレット)を含むことができる。表2は、パートB成分のいくつかの特性を説明する。
【0029】
【0030】
パートAとパートBが混合され、水系ポリウレタン分散液が形成される。パートAとパートBを混合すると、架橋又は硬化反応が開始する。この反応は、主な硬化反応である。開示されたポリウレタン分散接着剤は、湿気硬化性接着剤ではなく、湿気硬化性ホットメルト接着剤でもない。パートA成分及びパートB成分の相対量は、所望の特性を達成するために必要に応じて変えることができるが、80~99重量%のパートA成分及び1~20重量%のパートB成分の範囲内であることができる。好ましくは、パートA成分及びパートB成分の相対量は、93~97重量%のパートA及び3~7重量%のパートBの範囲内である。表3は、パートAとパートBを混合した直後の水系ポリウレタン分散接着剤の特性を示す。
【0031】
【0032】
混合された分散液は、接着すべき基材主面、エッジ及び周面の一部又は全部に配置することができる。基材上の分散液から水が除去され、基材表面及びエッジ上にポリウレタン接着層が形成される。ポリウレタン接着層は、非粘着性状態に冷却され、所望に応じて保存することができる。
【0033】
第1の加熱サイクルが行われ、基材主面及び任意で基材周面及びエッジ上のポリウレタン接着剤層が加熱される。いくつかの変形例では、第1の加熱サイクルはまた、適用された接着剤から水を乾燥する。典型的なポリウレタン接着剤層は、55℃~85℃の範囲内で加熱される。ポリウレタン接着剤層を加熱すると、接着剤が粘着性になる活性化を引き起こす。柔軟なシート材料の一部は、活性化ポリウレタン接着剤層及び基材主面上に配置される。1つの変形例では、材料(PUフォーム)は、粘着性ポリウレタン接着剤層及び主基材表面上に配置される。この変形例では、接着剤を主基材及び接着剤層と共に加熱して接着剤を活性化し、材料複合材を粘着性ポリウレタン接着剤の上に配置する。ポリウレタン接着剤層を冷却すると、材料が基材表面に接着する。第1の加熱サイクルの完了後、基材の周面及びエッジは、典型的に、材料がなく、材料に接着されていない。
【0034】
1つの変形例では、主基材と共に接着剤が加熱されて、PU接着剤を活性化する。材料複合材(PUフォーム)もまた加熱され、粘着性ポリウレタン接着剤の上に配置される。ポリウレタン接着剤層を冷却すると、材料が基材表面に接着する。
【0035】
主面に材料が接着した後、基材の周面及びエッジを二次加熱(第2の加熱サイクル)にさらし、その上のポリウレタン接着剤層が再活性化される。手で押すだけで、エッジや周面に材料を巻き付けることができる。接着剤を冷却した後、主面からエッジを越えて基材の周面に材料が接着する。次に、二次加熱中にフォームがエッジに巻き付けられ、接着剤が再活性化されて、基材の周囲に強力な接着が作成される。
【0036】
第1の加熱サイクル後、第2の加熱サイクルを10~30分間行うことができる。必要に応じて、ポリウレタン接着剤層を3回以上再活性化することができる。
【0037】
この接着剤の実施形態は、既知の接着剤に対して以下の利点の一部又は全部を示すが、これらに限定されない。
1. 開示された組成物は、水性接着剤であり、環境に優しい。
2. 開示された組成物は、有機溶媒を含まないため、低VOCを有する。
3. 開示された組成物は、混合され、室温(約20℃)で適用され、これは、使用者にエネルギー節約を提供する。
4. 開示されたパートA及びパートBは、室温での単純な攪拌によって混合してよく、それにより調製が容易になる。
5. 開示された組成物は、接着剤を1回又は複数回再活性化することにより、エッジラッピング用途に使用できる。
6. 開示された接着剤は、溶剤ベースの接着剤の迅速な初期粘着性及び結合までの短い接触時間を提供すると同時に、再活性化により、水系接着剤の低VOC、低エネルギー使用、及び環境に優しい利点を組み合わせることができる。
7. 再活性化により、接着剤を基材に適用し、その成分を保存することができる。保存された成分は後で再活性化され、再活性化された接着剤の上に柔軟なシート材料が配置される。
【0038】
パートAの調製
最初に、以下のプレミックスを作成した。
【0039】
A. プレミックスアルカリ:1リットルのメスフラスコに50gのNaOHを添加し、水で希釈して5%のアルカリNaOHを調製した。
B. プレミックス消泡剤:0.05%の消泡剤をアニオン性高分子量ポリエステルポリウレタン分散液に添加し、10分間撹拌した。
C. プレミックスカラー:0.07%の水系の青色カラーを水に添加し、10分間撹拌した。
【0040】
オーバーヘッドスターラーを備えた2リットルの円筒形フラスコに、アニオン性高分子量ポリエステルポリウレタンの水分散液及びアニオン性高分子量ポリエステルポリウレタンの水分散液を入れ、10分間撹拌した。この混合物に2%の水を添加し、10分間撹拌した。泡形成を回避するために、非発泡性非イオン性界面活性剤を、低速でこの混合物に添加し、10分間撹拌した。酢酸ビニル-エチレンベースのコポリマーをゆっくりと(少なくとも30分間かけて)添加した。この工程では、pHは望ましくは約8.0超過に維持される。プレミックスアルカリ(A)を添加することによりpHを調整した。殺生物剤を混合物に加え、10分間混合した。プレミックスカラー(C)を混合物に添加し、10分間混合した。プレミックス消泡剤(B)を混合物に添加して混合した。5000~9000cPの範囲で得られるブルックフィールド粘度が達成されるまで、レオロジー調整剤を添加した。最終pHを約8~約9に調整した。
【0041】
パートBの調製
パートBは、脂肪族ポリイソシアネートのみを包含し、受け取ったままの状態で使用した。パートBは湿気に敏感であるため、湿気を排除するために、適切なシーリングとN2ブランケットで保存した。
【0042】
柔軟なポリウレタンフォームの薄いシートを柔軟なシート材料として使用した。この材料は、自動車の内装パネルを覆うためにしばしば使用される。ポリプロピレン構造を主基材、エッジ、及び周辺基材として使用した。ポリプロピレン基材接着面の表面エネルギーは、火炎処理又はコロナ処理のいずれかによって増加した。
【0043】
混合ポリウレタン接着剤分散液を基材上に適用する方法
混合
接着剤を適用する前に、パートBをパートAに混合して接着剤生成物を作成する。典型的に、100重量部の樹脂分散液、例えばパートAに、5重量部の硬化剤、例えばパートBが添加される。室温でパートA樹脂にパートB硬化剤を単純に攪拌しながら直接添加することによって、均一な混合が達成された。
【0044】
接着剤の接着方法及び温度
混合生成物は、接着される1つの基材の1つの表面に噴霧してもよいし、両方の基材の接着する表面に噴霧してもよい。
【0045】
混合生成物を接着面に適用した後、適用した生成物を水の蒸発により乾燥させる。乾燥は、水分が除去されるまで、室温で行うか、IRオーブン又はおよそ40℃のオーブンに入れて加速することができる。乾燥したポリウレタン接着剤層には水が含まれていてはならない。
【0046】
基材及び被覆物は、約60℃~約80℃のオーブンで約2分~約4分間加熱してもよい(第1の加熱サイクル)。
【0047】
基材の加熱接着面を一緒に押し付けて接着した。0.6~1.0N/mm2の接着圧力が有用である。
【0048】
再活性化工程(第2の加熱サイクル)
接着剤の再活性化は、任意の適切な加熱方法によって、例えば、ホットエアーガンで加熱するか、又はオーブン内で加熱することによって行うことができるが、これらに限定されない。前者の場合、部分を約200℃~約300℃で約2~約4秒のような非常に短時間さらし、後者の場合、約60℃~約80℃で約15秒~約30秒加熱する。ポリウレタンフォームは、接着剤でコーティングされたPP又はABS(主)基材のエッジに巻き付けられた。再活性化工程では、ボンドライン温度は約55℃~約65℃であることが観察された。
【0049】
接着剤破損強度
接着剤破損強度を24時間後に測定した。十字を作ることによってフォーム基材を切断し、続いてイマダプッシュプルゲージで剥がした。基材に残っているフォームの付着は、顕著な基材破損である。フォームが「破損」した、例えば、裂けたり分離したりしたが、接着剤が破損しなかったため、これは良好な結果である。望ましくない結果は、フォームが「破損」しなかった、例えば、裂けたり分離したりしなかったが、試験条件下で接着剤が成分を固定できなかった接着不良である。接着性を、硬化/曲げ表面でもチェックした。表5は、配合物F1及びF4の接着性の比較を示している。配合物F2及びF3は破損の混合モードを有した。100%基材破損があった唯一の配合物は、配合物F1及びF4であった。しかしながら、配合物F4では再活性化を達成できなかった。構造的接着及び再活性化のボンドライン温度は約55℃~約65℃であった。
【0050】
以下の表4に示すように、様々な樹脂分散液(パートA)を調製した。組成は重量%である。
【0051】
【0052】
(A)残余
1 (ディスパーコルU53)(コベストロから)
2 ディスパーコルU56(コベストロから入手可能)
3 (サーフィノール440)(エボニック(以前はエアプロダクツ)から)
4 ビンナパスEP605A(ワッカーケミーAGから入手可能)
5 (アクリゾールASE60)(ダウから)
【0053】
試料材料のパートB成分の特性を以下の表5に示す。
【0054】
【0055】
1 デスモジュールDN(コベストロから入手可能)
各配合物の剥離強度、破損モード及び再活性化可能性を以下の表6に示す。
【0056】
【0057】
パートA F1と5%及び4%のパートBとの混合生成物の剥離強度及び破損モードを以下の表7に示す。
【0058】
【符号の説明】
【0059】
図1の実施形態を参照すると、以下の要素が示される:
2 基材
4 基材主面
6 混合接着剤
8 柔軟なシート材料(PUフォーム)
10 基材周面
【0060】
図1の実施形態を参照して、以下の工程を示す。接着剤パートA及びパートBを混合し、混合水系二成分ポリウレタン分散接着剤6を形成する。主面、主面に角度をつけて配置された周面10、及び主面4と周面10とを接続するエッジを有する基材2を提供する。任意で、1つ以上の表面4、10を前処理することができる。混合した水系二成分ポリウレタン分散接着剤6を基材表面4、10及びエッジに適用する。接着剤6を乾燥して水を除去し、乾燥した活性化ポリウレタン接着剤層を、基材表面4、10及びエッジに形成する。柔軟なシート材料8の単一片の第1の部分を、主面4上の活性化された接着剤6の上に配置し、材料8の第1の部分を主面4に接着する。任意で、接着剤6及び基材表面4、10を接着剤活性化温度以下に冷却することができる。基材エッジ及び周面10に熱を加えて、エッジ及び周面10上の反応性接着剤6を再活性化する。柔軟なシート材料8の第2の部分を、基材表面4から、基材エッジ上の加熱及び再活性化された接着剤上並びに周面10上に巻き付け、材料8の第2の部分を基材エッジ及び周面10に接着する。基材、接着剤、及び接着された柔軟なシート材料を、接着剤活性化温度未満に冷却する。
【0061】
本明細書では、本発明技術の様々な実施形態が具体的に図示及び/又は説明されるが、本発明技術の精神及び意図範囲から逸脱することなく、当業者が本技術の修正及び変更を達成し得ることが理解される。さらに、請求項又は明細書に記載されている発明の実施形態又は態様は、制限なく相互に使用され得る。
【0062】
さらに、本明細書に記載される発明又は発明技術の実施形態又は態様は、任意の様式及び組み合わせでも組み合わされてよく、本発明の範囲内であってよい。