IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ケーエルエー−テンカー コーポレイションの特許一覧

特許7545412X線計量データセット同士を結合させることでパラメタ推定を改善する方法及びシステム
<>
  • 特許-X線計量データセット同士を結合させることでパラメタ推定を改善する方法及びシステム 図1
  • 特許-X線計量データセット同士を結合させることでパラメタ推定を改善する方法及びシステム 図2
  • 特許-X線計量データセット同士を結合させることでパラメタ推定を改善する方法及びシステム 図3
  • 特許-X線計量データセット同士を結合させることでパラメタ推定を改善する方法及びシステム 図4
  • 特許-X線計量データセット同士を結合させることでパラメタ推定を改善する方法及びシステム 図5
  • 特許-X線計量データセット同士を結合させることでパラメタ推定を改善する方法及びシステム 図6
  • 特許-X線計量データセット同士を結合させることでパラメタ推定を改善する方法及びシステム 図7
  • 特許-X線計量データセット同士を結合させることでパラメタ推定を改善する方法及びシステム 図8
  • 特許-X線計量データセット同士を結合させることでパラメタ推定を改善する方法及びシステム 図9
  • 特許-X線計量データセット同士を結合させることでパラメタ推定を改善する方法及びシステム 図10
  • 特許-X線計量データセット同士を結合させることでパラメタ推定を改善する方法及びシステム 図11
  • 特許-X線計量データセット同士を結合させることでパラメタ推定を改善する方法及びシステム 図12
  • 特許-X線計量データセット同士を結合させることでパラメタ推定を改善する方法及びシステム 図13
  • 特許-X線計量データセット同士を結合させることでパラメタ推定を改善する方法及びシステム 図14
  • 特許-X線計量データセット同士を結合させることでパラメタ推定を改善する方法及びシステム 図15
  • 特許-X線計量データセット同士を結合させることでパラメタ推定を改善する方法及びシステム 図16
  • 特許-X線計量データセット同士を結合させることでパラメタ推定を改善する方法及びシステム 図17
  • 特許-X線計量データセット同士を結合させることでパラメタ推定を改善する方法及びシステム 図18
  • 特許-X線計量データセット同士を結合させることでパラメタ推定を改善する方法及びシステム 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】X線計量データセット同士を結合させることでパラメタ推定を改善する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20240828BHJP
【FI】
H01L21/66 N
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021561822
(86)(22)【出願日】2020-04-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-16
(86)【国際出願番号】 US2020028386
(87)【国際公開番号】W WO2020214745
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-12-20
(31)【優先権主張番号】62/836,261
(32)【優先日】2019-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/847,388
(32)【優先日】2020-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リマン クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ジェリノー アントニオ アリオン
(72)【発明者】
【氏名】シェグロフ アンドレイ ブイ
(72)【発明者】
【氏名】ヨー ソンチョル
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-534758(JP,A)
【文献】国際公開第2018/222613(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G01N 21/956
G01N 23/201
G01B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計量システムであって、
X線スキャタロメータであり、
半導体製造プロセスフローの肝要プロセス工程後に、複合的半導体構造の1個又は複数個の後続物に第1群の照明輻射を供給する照明源、並びに
前記第1群の照明輻射に応じ前記複合的半導体構造の前記1個又は複数個の後続物からもたらされる第1群の輻射を検出し、検出した第1群の輻射に応じ第1群の計測データを生成する検出器、
を備えるX線スキャタロメータと、
前記第1群の計測データと、前記製造プロセスフローの前記肝要プロセス工程の前における前記X線スキャタロメータによる前記複合的半導体構造の1個又は複数個の先行物の計測を示す第2群の計測データと、に基づき、その複合的半導体構造の前記1個又は複数個の後続物の注目構造パラメタの値を推定するよう構成された情報処理システムと、
を備える計量システム。
【請求項2】
請求項1に記載の計量システムであって、前記情報処理システムが、更に、
前記第1群の計測データを前記第2群の計測データと結合させることで一群の結合計測データを生成するよう構成されており、前記注目構造パラメタの値の前記推定が、その一群の結合計測データに基づくものである計量システム。
【請求項3】
請求項に記載の計量システムであって、前記情報処理システムが、更に、
前記肝要プロセス工程に影響される1個又は複数個の幾何的特徴を含み且つ当該肝要プロセス工程に影響されない1個又は複数個の幾何的特徴を含まない幾何パラメタ化計測応答モデルを生成するよう構成されており、前記注目構造パラメタの前記推定が、前記一群の結合計測データと当該幾何パラメタ化計測応答モデルからもたらされる模擬導出データセットとの間の差異を含む目的関数の最小化を伴う計量システム。
【請求項4】
請求項2に記載の計量システムであって、前記照明源が、更に、
前記半導体製造プロセスフローの前記肝要プロセス工程後に、前記複合的半導体構造の1個又は複数個の後続物のうち前記注目構造パラメタが既知値であるものに第2群の照明輻射を供給するよう構成されており、
前記検出器が、更に、
前記第2群の照明輻射に応じ前記複合的半導体構造の1個又は複数個の後続物からもたらされる第2群の輻射を検出し、検出した第2群の輻射に応じ実験計画法(DOE)計測データセットを生成するよう構成されており、
前記情報処理システムが、更に、
前記DOE計測データセットを第2群のDOE計測データと結合させることで一群の結合DOE計測データを生成するよう構成されており、但しその第2群のDOE計測データが、前記製造プロセスフローの前記肝要プロセス工程前における前記X線スキャタロメータによる、前記複合的半導体構造の1個又は複数個の先行物のうち前記注目構造パラメタが既知値であるものの計測を示すデータであり、且つ
前記一群の結合DOE計測データと前記注目構造パラメタの前記既知値とに基づき信号応答計量モデルを訓練するよう構成されている計量システム。
【請求項5】
請求項4に記載の計量システムであって、前記一群の結合計測データが、前記訓練済信号応答計量モデルに入力として供給され、その訓練済信号応答計量モデルの出力であり入力として提供された当該一群の結合計測データに対応するものが、前記注目構造パラメタの値である計量システム。
【請求項6】
請求項2に記載の計量システムであって、前記情報処理システムが、更に、
前記第1群及び第2群の計測データそれぞれの計測に係る1個又は複数個のシステムパラメタの値に基づきそれら第1群及び第2群の計測データを正規化するよう構成されている計量システム。
【請求項7】
請求項6に記載の計量システムであって、前記第1群の計測データを前記第2群の計測データと結合させることによる前記一群の結合計測データの生成が、当該第1群の計測データと当該第2群の計測データとの間の差異の画素バイ画素ベースでの判別を伴う計量システム。
【請求項8】
請求項1に記載の計量システムであって、前記第2群の計測データが、前記製造プロセスフローの前記肝要プロセス工程の前における前記X線スキャタロメータによる前記複合的半導体構造の前記1個又は複数個の先行物の計測により、生成される計量システム。
【請求項9】
請求項1に記載の計量システムであって、前記第2群の計測データが、前記第1群の計測データから注目領域を削除し、パッチマッチングアルゴリズムにより生成された信号で以てその被削除注目領域を置換することにより生成される計量システム。
【請求項10】
請求項1に記載の計量システムであって、前記複合的半導体構造の前記1個又は複数個の後続物が1枚又は複数枚のウェハ上に配置される計量システム。
【請求項11】
請求項10に記載の計量システムであって、前記複合的半導体構造の前記1個又は複数個の先行物が、その複合的半導体構造の前記1個又は複数個の後続物のそれとは別の1枚又は複数枚のウェハ上に配置される計量システム。
【請求項12】
請求項10に記載の計量システムであって、前記複合的半導体構造の前記1個又は複数個の先行物が、その上にその複合的半導体構造の前記1個又は複数個の後続物が配置されるものと同じ1枚又は複数枚のウェハ上に配置される計量システム。
【請求項13】
請求項1に記載の計量システムであって、前記照明源が、前記第1群の照明輻射を、前記複合的半導体構造を基準とし相異なる複数通りの向きで供給する計量システム。
【請求項14】
請求項1に記載の計量システムであって、前記肝要プロセス工程がリソグラフィプロセス工程、堆積プロセス工程及びエッチングプロセス工程のうち何れかである計量システム。
【請求項15】
請求項1に記載の計量システムであって、前記注目構造パラメタが堆積プロセス後の膜厚及びエッチングプロセス工程後の素材窪み深さのうち何れかである計量システム。
【請求項16】
請求項1に記載の計量システムであって、前記注目構造パラメタの値の前記推定が、差分項及び正則化項を含む目的関数の最小化を伴い、その差分項が、前記第1群の計測データと、前記肝要プロセス工程の後における前記X線スキャタロメータによる前記複合的半導体構造の前記1個又は複数個の後続物の計測を模擬する第1群の模擬導出計測データと、の間の差異を含み、当該正則化項が、前記肝要プロセス工程の前における前記X線スキャタロメータによる前記複合的半導体構造の前記1個又は複数個の先行物の計測を模擬する第2群の模擬導出計測データを含む計量システム。
【請求項17】
半導体製造プロセスフローの肝要プロセス工程後に、複合的半導体構造の1個又は複数個の後続物に第1群の照明輻射を供給し、
前記第1群の照明輻射に応じ前記複合的半導体構造の前記1個又は複数個の後続物からもたらされる第1群の輻射を検出し、
検出された前記第1群の輻射に応じ第1群の計測データを生成し、且つ
前記第1群の計測データと、前記製造プロセスフローの前記肝要プロセス工程前におけるX線スキャタロメータによる前記複合的半導体構造の1個又は複数個の先行物の計測を示す第2群の計測データと、に基づき、その複合的半導体構造の前記1個又は複数個の後続物の注目構造パラメタの値を推定する方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、更に、
前記第1群の計測データを前記第2群の計測データと結合させることで一群の結合計測データを生成する方法であり、前記注目構造パラメタの値の前記推定がその一群の結合計測データに基づくものであり、当該第1群の計測データを当該第2群の計測データと結合させることによる当該一群の結合計測データの生成が、当該第1群の計測データと当該第2群の計測データとの間の差異の画素バイ画素ベースでの判別を伴う方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法であって、更に、前記第1群及び第2群の計測データそれぞれの計測に係る1個又は複数個のシステムパラメタの値に基づきそれら第1群及び第2群の計測データを正規化する方法。
【請求項20】
計量システムであって、
X線スキャタロメータであり、
半導体製造プロセスフローの肝要プロセス工程後に、複合的半導体構造の1個又は複数個の後続物に第1群の照明輻射を供給する照明源、並びに
前記第1群の照明輻射に応じ前記複合的半導体構造の前記1個又は複数個の後続物からもたらされる第1群の輻射を検出し、検出した第1群の輻射に応じ第1群の計測データを生成する検出器、
を備えるX線スキャタロメータと、
非一時的コンピュータ可読媒体であり
前記第1群の計測データと、前記製造プロセスフローの前記肝要プロセス工程前における前記X線スキャタロメータによる前記複合的半導体構造の1個又は複数個の先行物の計測を示す第2群の計測データと、に基づき、情報処理システムに、その複合的半導体構造の前記1個又は複数個の後続物の注目構造パラメタの値を推定させるコード、
を備える非一時的コンピュータ可読媒体と、
を備える計量システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願記載の諸実施形態は計量システム及び方法に関し、より具体的には、半導体構造の寸法を特徴付けるパラメタの計測方法及びシステムの改善に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願への相互参照)
本件特許出願では、「X線計量データセット同士を結合させることによる重要パラメタのより効率的な抽出」(Combining X-Ray Metrology Data Sets to Extract Critical Parameters More Efficiently)と題する2019年4月19日付米国仮特許出願第62/836261号に基づき米国特許法第119条の規定に基づく優先権を主張するので、参照によりその主題全てを本願に繰り入れることにする。
【0003】
半導体デバイス、例えば論理デバイス及び記憶デバイスを製造する際には、通常、一連の処理工程が試料に適用される。それら処理工程によって、それら半導体デバイスに備わる様々なフィーチャ(外形特徴)及び複数個の構造階層が形成される。例えば、なかでもリソグラフィリソグラフィなる半導体製造プロセスでは半導体ウェハ上にパターンが生成される。半導体製造プロセスの別例には、これに限られるものではないが化学機械研磨、エッチング、堆積及びイオンインプランテーションがある。1枚の半導体ウェハ上に複数個の半導体デバイスを作成した後、それらを個別の半導体デバイスへと分けるようにするとよい。
【0004】
計量プロセスは半導体製造プロセス中の様々な工程にて用いられており、それによりウェハ上の欠陥を検出して歩留まり向上を促進することができる。多数の計量ベース技術、例えばスキャタロメトリ(散乱計測法)及びリフレクトメトリ(反射計測法)の装置並びにそれらに関連する分析アルゴリズムが、限界寸法、膜厚、組成その他、ナノスケール構造のパラメタを解明するため広く用いられている。
【0005】
通例的に、スキャタロメトリ限界寸法(SCD)計測は、薄膜及び/又は反復的周期構造で構成されたターゲットを対象にして実行されている。デバイス製造中には、通常、それらの膜及び周期構造で実デバイス幾何及び素材構造又は中間デザインを表現・代表させる。デバイス(例.論例デバイス及び記憶デバイス)はより小さなナノメートルスケール寸法へと移行しつつあり、それに伴い特性解明・特徴付けが困難化している。デバイスに複雑な三次元幾何が取り入れられ、また多様な物理特性を有する素材が取り入られたことで、特性解明困難性が助長されている。例えば、昨今のメモリ構造は高アスペクト比三次元構造であることが多く、そのために光学輻射が下層へと浸透しにくくなっている。赤外~可視光を利用する光学計量ツールであれば多くの半透明素材層に浸透可能だが、良好な浸透深度がもたらされる長めの波長では小異常に対する十分な感度がもたらされない。加えて、複合的な構造(例.FinFET)の特徴付けに必須なパラメタの個数が増えていることが、パラメタ相関の増大につながっている。結果として、そのターゲットを特徴付ける諸パラメタを、利用可能な計測結果から高信頼分離できないことが、多くなりかねない。
【0006】
一例としては、ポリシリコンがスタック(積層体)内交番素材の一つとして利用される3D-FLASH(登録商標)デバイスに関し、長めの波長(例.近赤外)を採用することで浸透問題を克服する試みがされている。しかしながら、鏡状構造が備わる3D-FLASH(登録商標)では、生来的に、その膜スタック内へとより深く照明が伝搬するにつれ、光強度の低下が発生する。これは深部での感度ロス及び相関問題を引き起こす。この状況にてSCDにより行えるのは、少数組の計量寸法を高感度及び低相関で首尾よく抽出することだけである。
【0007】
別例としては、昨今の半導体構造では不透明高k素材の採用が拡がっている。この種の素材で構成された層には、光学輻射を浸透させえないことが多い。結果として、薄膜スキャタロメトリツール、例えばエリプソメータ(楕円偏向計)やリフレクトメータ(反射計)による計測が、ますます困難になってきている。
【0008】
これらの難題に応ずるべくより複雑な光学計量ツールが開発されてきた。例えば、照明角を複数通りにし、照明波長を短めにし、照明波長域を広めにし、また反射信号からの情報獲得をより無欠にしたツール(例.より在来的な反射率信号やエリプソメトリ(楕円偏向法)信号に加え複数個のミュラー行列要素を計測するもの)が開発されている。しかしながら、これらの手法では、多くの先進ターゲット(例.複合的3D構造、10nm未満の小構造、不透明素材を採用している構造)の計測及び計測アプリケーション(例.ラインエッジ粗さ計測及びライン幅粗さ計測)に関連する基本的難題が、信頼性よく克服されていない。
【0009】
原子間力顕微鏡(AFM)及び走査型トンネリング顕微鏡(STM)は、原子分解能を達成可能であるものの、試料の表面しか探査することができない。加えて、AFM顕微鏡やSTM顕微鏡では長い走査時間が必要となる。走査型電子顕微鏡(SEM)では中間的な分解能水準が達成されるが、十分な深度まで構造に浸透することができない。そのため、高アスペクト比孔を良好に解明することができない。加えて、余儀なき試料帯電が撮像性能に悪影響を及ぼす。X線リフレクトメータも浸透問題、即ち高アスペクト比構造を計測する際のそれらの実効性に限りがある、という問題に悩まされている。
【0010】
浸透深度問題を克服するため、旧来の撮像技術例えばTEM、SEM等々が破壊的標本調製技術、例えば集束イオンビーム(FIB)マシニング、イオンミリング、ブランケットエッチング、選択性エッチング等々と併用されている。例えば透過型電子顕微鏡(TEM)なら高い分解能水準が達成され、また任意深度を探査することができるが、TEMでは試料の破壊的分断が必要となる。素材除去及び計測を数回反復することで、一般には、重要な計量パラメタを三次元構造全体に亘り計測するのに必要な情報がもたらされる。しかし、これらの技術では標本破壊や長々しい処理時間が必須となる。これらの種類の計測を完遂するのは厄介であり時間がかかるので、エッチング工程及び計量工程のドリフトによる多大な不正確性が入り込む。加えて、これらの技術では多数回の反復が必須であるためレジストレーション(位置合わせ)誤差が入り込む。
【0011】
X線スキャタロメトリシステムには、難題を抱える計量アプリケーションに対処できる見込みがある。諸次散乱の計測によりもたらされる信号情報により、幾つかの注目試料特性を判別できるのである。通常は、肝要プロセス工程後にウェハを計測することで小角X線スキャタロメトリ(SAXS)データセットが収集される。そのデータセットのなかには、一通り又は複数通りの入射角での回折パターンの画像が含まれている。そのターゲット構造の単位セル全体の幾何モデルが生成され、計測モデルに組み込まれる。その計測モデルの所与セットの幾何パラメタ値及びシステムパラメタ値に関し、物理学ベースのソルバにより模擬導出回折パターンが生成される。その計測モデルの多数のパラメタを浮動させつつ回帰分析を行うことで、計測された回折パターンとその模擬導出回折パターンとの間の残差が最小になるパラメタ値を見出すことができる。幾何パラメタ値のうちベストフィットをもたらすものが、そのウェハを対象とした計測に係る計測パラメタ値であると見なされる。
【0012】
ウェハ上に作成される構造は、そのウェハが半導体ウェハ製造プロセスフロー内で先に進むにつれますます複雑化していく。結果として、ウェハ上に作成される周期構造の単位セルの幾何モデルが、そのウェハに対し適用されたプロセスの個数が増すにつれますます複雑化していく。
【0013】
通常、複雑な幾何モデルを解くためには、多くのパラメタを同時に当て嵌めねばならない。これによって、計測プロセスが情報処理的に高コストなものとなり、場合によっては情報処理的に手に負えないものとなる。大きく且つ複雑な単位セルであると、その回折パターン中の信号情報全てを勘案するには、多くの回折次数の計測が必要になる。多くの回折次数の処理も、やはり、情報処理的に高コストである。そして、最善の努力を払ったとしても、複合的構造を表す幾何モデルでは、プロセス変動により生じる微細なフィーチャが見失われかねないし、ノミナルな構造を全面的に記述し損ねることもありうる。幾何モデルに不足があると当て嵌めが難事となりうるし、その当て嵌めルーチンによるパラメタ値の推定がひどく不正確となりモデルの不適切さを補償し得なくなりうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】米国特許第7929667号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0110249号明細書
【非特許文献】
【0015】
【文献】“PatchMatch: A Randomized Correspondence Algorithm for Structural Image Editing” by Barnes et al.
【文献】https://gfx.cs.princeton.edu/pubs/Barnes_2009_PAR/patchmatch.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
デバイス性能を更に改善するため、半導体業界では、横方向スケーリングではなく垂直集積(縦集積)が注目され続けている。従って、複雑な全三次元構造を正確に計測することが、実行可能性及び持続的スケーリング改善を図る上で肝要である。将来の計量アプリケーションで現れる計量関連困難事としては、分解能条件の更なる精細化、多パラメタ相関、幾何構造例えば高アスペクト比構造の更なる複雑化、並びに不透明素材使用の増加によるものがある。従って、X線スキャタロメトリ計測方法及びシステムの改善が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0017】
肝要プロセス工程後に複合的半導体構造を計測する方法及びシステムを提示する。1個又は複数個の注目幾何パラメタの推定を、その肝要プロセス工程前後の複合的半導体構造に係る計測データに基づき行う。肝要プロセス工程前後双方の計測データを用いることで、より少ない情報処理労力で以てより高速なモデル生成及びモデル当て嵌めを行うことが可能となる。ある種の例によれば、その概略計測モデルにより、旧来的で複雑なモデル生成及び当て嵌めよりも正確な注目パラメタ推定が可能となる。
【0018】
ある態様では、肝要プロセス工程後複合的半導体構造の計測が、その肝要プロセス工程の前後双方における、その複合的半導体構造に係るX線スキャタロメトリ計測データに基づき行われる。コヒーレンス効果を最小化するのに十分な距離で以て単位セル内の諸形状が空間的に分離されているとの仮定下で、計測回折パターンが、それぞれ別々の形状に係るフーリエ成分同士の線形結合として近似される。その肝要プロセス工程により改変される注目幾何パラメタの推定が、その被計測構造の概略幾何モデルへの結合計測データの当て嵌めに依拠し行われる。ある種の実施形態では、その結合計測データが、その肝要プロセス工程後に計測された回折パターンからの肝要プロセス工程前回折パターンの減算を踏まえ、決定される。ある種の実施形態では、その被計測構造の概略幾何モデルに、その肝要プロセス工程に影響されるフィーチャ(群)のみが組み込まれる。結果として、その概略幾何モデルは、その肝要プロセス工程後に実行される計測で捕捉される完全な幾何構造モデルに比し少数の浮動幾何パラメタを含むものとなる。
【0019】
また、ある態様では、結合X線スキャタロメトリデータに基づく計量に際し、その結合データセットと訓練済の信号応答計量(SRM)モデルとに基づき、標本の寸法が判別される。こうした例では、その限界寸法が、幾何モデル抜きで、その結合データセットに直に関連付けされる。更に、ある態様では、訓練済の信号応答計量モデルを用い、結合計測信号に基づき、未知値を有する注目構造パラメタの値が推定される。
【0020】
また、ある態様では、肝要プロセス工程後複合的半導体構造の1個又は複数個の注目幾何パラメタの推定が、その肝要プロセス工程後複合的半導体構造に係る実X線スキャタロメトリ計測データと、肝要プロセス工程前複合的半導体構造に係る模擬導出X線スキャタロメトリ計測データとに基づき、行われる。
【0021】
以上は概要であり、従って随所に単純化、一般化及び細部省略が含まれているので、本件技術分野に習熟した者(いわゆる当業者)には理解される通り、この概要は専ら例証的なものであり如何様であれ限定的なものではない。本願記載の装置及び/又はプロセスの他の態様、独創的特徴及び長所については、本願中で説明される非限定的詳細記述にて明らかとされよう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本願提示の諸方法例に従い試料の特性を計測する計量ツールの実施形態を描出する概略図である。
図2】複合的半導体構造を特徴付ける1個又は複数個の幾何パラメタの値を肝要プロセス工程前後双方のX線スキャタロメトリ計測データに基づき推定する、モデル構築兼分析エンジンの実施形態を描出する図である。
図3】SRMモデル訓練エンジンを描出する図である。
図4】SRMモデルエンジンを描出する図である。
図5】複合的半導体構造を特徴付ける1個又は複数個の幾何パラメタの値を肝要プロセス工程前後双方のX線スキャタロメトリ計測データに基づき推定する、モデル構築兼分析エンジンの別の実施形態を描出する図である。
図6】一実施形態における肝要プロセス工程前半導体構造の断面を描出する概略図である。
図7図6記載の多層構造の肝要プロセス工程後断面を描出する概略図である。
図8図7記載のライナ構造の断面を描出する図である。
図9】別の実施形態における肝要プロセス工程前半導体構造の断面を描出する図である。
図10図9記載の多層構造のタングステン窪ませプロセス工程後断面を描出する図である。
図11】タングステン窪ませプロセスにより多層構造から除去されたタングステン窪み構造の断面を描出する図である。
図12】別の実施形態における肝要プロセス工程前半導体構造の上面を描出する図である。
図13】ある例にてX線スキャタロメータ(散乱計)による構造の計測でもたらされた回折パターンを描出する画像である。
図14図12記載の構造のスリット除去プロセス工程後の上面を描出する図である。
図15】X線スキャタロメータを用い図12記載の構造を計測することでもたらされた回折パターンを描出する画像である。
図16】スリット構造を有し孔パターンを欠く構造の上面を描出する図である。
図17図15記載の計測済回折パターンからの図13記載の計測済回折パターンの画素バイ画素減算を描出する画像である。
図18】X線スキャタロメータにより構造を計測することでもたらされる回折パターンのシミュレーション(模擬導出)を描出する画像である。
図19】本発明の計量システム、例えば図1に描かれている計量システム100による実施に適した方法を描出する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の背景例及びある種の実施形態を詳細に参照し、またその諸例を添付図面に描出する。
【0024】
本願では、肝要プロセス工程後複合的半導体構造の1個又は複数個の注目幾何パラメタの値を推定する方法及びシステムを提示する。具体的には、肝要プロセス工程前後の複合的半導体構造に係る計測データに基づき1個又は複数個の注目幾何パラメタの推定を行う。肝要プロセス工程前後双方の計測データを用いるので、より少ない情報処理労力で以てより高速なモデル生成及びモデル当て嵌めを行うことが可能である。ある種の例によれば、その概略計測モデルにより、注目パラメタの推定を、旧来的で複雑なモデル生成及び当て嵌めよりも正確に行うことが可能となる。
【0025】
図1には、本願提示の諸方法例に従い試料の特性を計測する計量ツールの実施形態100が描かれている。図1に示す通り、本システム100を用いることで、試料位置決めシステム140上に配置された試料101の計測エリア102に亘り、X線スキャタロメトリ計測を実行することができる。ある種の実施形態ではその計測エリア102のスポットサイズが80μm以下とされる。ある種の実施形態ではその計測エリア102のスポットサイズが50μm以下とされる。ある種の実施形態ではその計測エリア102のスポットサイズが40μm以下とされる。
【0026】
図示実施形態の計量ツール100は、X線スキャタロメトリ計測に適したX線輻射を生成するX線照明源110を有している。ある種の実施形態では、そのX線照明源110にて0.01nm~1nmの波長が生成される。X線照明源110により生成されたX線ビーム117は、試料101の検査エリア102上に入射する。
【0027】
一般に、高スループットインライン計量を実行可能とするのに十分な光束レベルにて高輝度X線を生成しうる好適な高輝度X線照明源は、何れも、本願記載のX線スキャタロメトリ計測向けのX線照明の供給用に想定することができる。ある種の実施形態、なかでもX線源が可調モノクロメータを有している実施形態では、そのX線源から送給されるX線輻射の波長を様々に選択することができる。
【0028】
ある種の実施形態、なかでも15keV超の光子エネルギを有する輻射を発する1個又は複数個のX線源を採用する実施形態では、そのX線源から供給される光を、確と、デバイス全体及びウェハ基板を通じ十分透過させうる波長とすることができる。非限定的な例によれば、粒子加速器線源、液体アノード線源、回動アノード線源、静止固体アノード線源、マイクロフォーカス線源、マイクロフォーカス回動アノード線源及び逆コンプトン線源の何れも、X線照明源110として採用することができる。一例としては、米国カリフォルニア州パロアルト所在のLyncean Technologies,Inc.から入手可能な逆コンプトン線源を想定することができる。逆コンプトン線源には、ある光子エネルギ域に亘りX線を生成でき、ひいてはそのX線源から送給されるX線輻射の波長を様々に選択できる、という付加的長所がある。X線源の例には、固体又は液体ターゲットを砲撃することでX線輻射を誘起するよう構成された電子ビーム式線源がある。ある種の実施形態では、X線照明源110が液体金属式X線照明システムとされる。一種類又は複数種類の元素を含有する液体金属ジェットが生成される。非限定的な例によれば、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スズ、タリウム及びビスマスのうち何れかをその液体金属ジェットに含有させる。電子ビーム源(例.電子銃)から電子流を供給し、それを電子光学系によりその液体金属ジェットへと差し向ける。好適な電子光学系としては、電磁石、永久磁石又は電磁石及び永久磁石の組合せによりその電子ビームを集束させ、そのビームをその液体金属ジェットに差し向けるものがある。それら液体金属ジェット及び電子流が出会うところでX線ビーム117が発生し、それが試料101の検査エリア102上に入射する。こうして、その液体金属ジェットにより、その成分元素に対応するX線ラインが生成される。ある実施形態では、その液体金属ジェットにガリウム及びインジウムの合金を含有させる。
【0029】
高輝度液体金属X線照明生成方法及びシステムが、KLA-Tencor Corp.に対し2011年4月19日付で発行された特許文献1中に記載されているので、参照によりその全容を本願に繰り入れることにする。
【0030】
ある実施形態では、その入射X線ビーム117が、インジウムkα線に当たる24.2keVのビームとされる。そのX線ビームを、X線スキャタロメトリ計測用の多層X線光学系を用い、1mrad未満の発散度まで平行化させる。
【0031】
ある種の実施形態では、X線源・計測下試料間にスクリーンを配置し使用することなく本願記載のX線散乱計測が達成される。こうした実施形態によれば、ある入射角域、複数通りの波長又はその組合せに亘りビーム強度を計測することで十分な情報をもたらし、それによりその被計測構造の所望素材特性(例.複素屈折率、電子密度又は吸収率)の分布マップ(即ち画像)を解明することができる。他方、他のある種の例によれば、X線源・計測下試料間に何であれ不透明なスクリーンを所在させ、その上にピンホールその他のアパーチャを所在させることで、そのX線ビームの平行化具合を改善することができる。回折パターンの強度は、幾通りかのアパーチャ位置に関し計測される。他のある種の実施形態では、疑似乱数アパーチャパターンを有するスクリーンが用いられ、複数枚のスクリーンに関し回折パターンが計測される。これらの手法も、付加的な情報をもたらし、それにより被計測構造の所望素材特性の三次元分布が解明されるものであると、考えることができる。
【0032】
ある種の実施形態では、入射X線ビームのプロファイルが複数個のアパーチャ、スリット又はその組合せにより制御される。更なる実施形態では、そのアパーチャ、スリット又はその双方が、試料の向きと歩調を合わせ回動するよう、ひいては個々の入射角、アジマス角又はその双方に関し入射ビームのプロファイルが最適化されるように構成される。
【0033】
図1記載の通り、X線光学系115は入射X線ビーム117を整形して試料101へと差し向ける。ある種の例、なかでもX線光学系115がX線モノクロメータを有する例では、その試料101上に入射するX線ビームをそれにより単色化することができる。一例としては、結晶モノクロメータ例えばロクスレイ・タナー・ボーエンモノクロメータを用い、そのX線輻射ビームを単色化することができる。ある種の例、なかでもX線光学系115によりX線ビーム117を平行化し、或いは試料101の検査エリア102上へとそのX線ビーム117を集束させる例では、多層X線光学系を用いることで、その発散度を1mrad未満とすることができる。ある種の実施形態では、X線光学系115が、1個又は複数個のX線平行化鏡、X線アパーチャ、X線ビームストップ、屈折性X線光学系、回折光学系例えばゾーンプレート、鏡面X線光学系例えばかすめ入射楕円体鏡、ポリキャピラリ光学系例えば中空キャピラリX線導波路、多層光学系又はシステム、或いはそれらの何らかの組合せを有するものとされる。更なる詳細が特許文献2に記載されているので、参照によりその全容を本願に繰り入れることにする。
【0034】
大略、この照明光学システムの焦平面は計測アプリケーション毎に最適化される。このやり方によれば、計測アプリケーションによってその試料内の異なる深さに焦平面が位置することとなるよう、システム100が構成される。
【0035】
X線検出器116は、試料101から散乱されてきたX線輻射125を収集し、試料101の特性のうち入射X線輻射に対し感応的なものを示す出力信号126を生成する。ある種の実施形態では、角度分解散乱X線が生成されるよう試料位置決めシステム140により試料101を位置決め及び方向決めしつつ、X線検出器116により散乱X線125が収集される。
【0036】
計量システム100は、広いダイナミックレンジ(例.10超)を有する1個又は複数個の光子計数型検出器と、最小限の寄生後方散乱で以て損傷なしに直接ビーム(即ち0次ビーム)を吸収する厚手な高吸収性結晶基板とを有している。フルビームX線スキャタロメトリに適する検出器の例としては、テルル化カドミウム(CdTe)、ゲルマニウム(Ge)及び砒化ガリウム(GaAs)の結晶その他がある。ある種の実施形態では、線源エネルギに対応する狭いエネルギ帯にて高い変換効率がもたらされるよう、検出器素材が選択される。
【0037】
ある種の実施形態では、単一の光子計数型検出器により被検出光子の位置及び個数が検出される。ある種の実施形態では、SNRを改善すべくデュアル閾値検出器が用いられる。
【0038】
X線検出器116は、一通り又は複数通りのX線光子エネルギを分解し、その試料の特性を示すX線エネルギ成分毎の信号を生成する。ある種の実施形態では、そのX線検出器116が、CCDアレイ、マイクロチャネルプレート、フォトダイオードアレイ、マイクロストリップ型比例計数器、気体充填型比例計数管、シンチレータ及び蛍光素材のうち何れかを有するものとされる。
【0039】
この構成では、その検出器におけるX線光子相互作用が、画素位置及び計数値に加えエネルギにより弁別される。ある種の実施形態では、それらX線光子相互作用が、そのX線光子相互作用のエネルギを所定の上閾値及び所定の下閾値と比較することで弁別される。ある実施形態ではこの情報が出力信号126により情報処理システム130に送られ、更なる処理及び格納に供される。
【0040】
高アスペクト比垂直製造構造は、平行化X線ビームを回折させ諸次回折波をもたらす。各次数の回折波は予測可能な特定方向に進行する。諸次回折波間の角度間隔は、その試料の格子定数を波長で除したものに反比例する。諸次回折波は、ウェハから幾ばくかの距離のところに置かれた検出器アレイによって検出される。その検出器の各画素から、その画素に射突した光子の個数を示す信号が出力される。
【0041】
諸次回折波の強度は形式I(m,n,θ,φ,λ)、但し{m,n}は回折次数を示す整数指数、{θ,φ}は入射ビームの仰角及びアジマス角(即ちウェハに固定された座標系を基準とする入射主光線の極座標値)、λはその入射X線の波長、という形式をなしている。
【0042】
照明光は、照明源から出て試料の方へと伝搬する際に、幾つかのノイズ源によって擾乱される。擾乱の例には電子ビーム流ふらつき、温度誘起性光学系ドリフト等々がある。擾乱された入射光束はF(1+n)と表される。
【0043】
ターゲットは、その入射ビームのアジマス角及び仰角に依存する形態でその入射輻射を散乱させる。次数(m,n)への光散乱の効率はSmn(θ,φ)として定義することができる。その回折光が試料から検出器へと伝搬する際に、そのビームが通過する他の散乱媒質により同様に影響され、全ての次数が幾ばくかのばらつき(1+n)及び寄生ノイズ(n)を伴うものとなる。こうしたことから、時刻tにて計測された各次数の総強度Imnを、等式(1)により表すことができる。
【数1】
【0044】
各次数の強度は、多くのやり方で抽出することができる。ある種の実施形態では、諸次回折波が検出器にて空間分離される。こうした実施形態では、諸次回折波が検出器アレイにより個別検出され、同じ回折次数に係る画素出力同士が結合(即ち加算)される。こうして個々別々の回折次数に係る画素の光子計数値が累算され、それにより被検出回折次数が弁別される。この状況が生じやすいのは、比較的小ピッチなフィーチャを計測するときや、発散度が比較的小さなビームで以て計測するときである。
【0045】
他のある種の実施形態、なかでも諸次回折波が検出器にて空間的に重なり合う実施形態では、画素出力を単純に結合させるだけでは個別回折次数に係る強度を決定することができない。こうした実施形態では、諸次回折波を逆畳み込み(デコンボリュート)する計測モデルを用い、各被検出回折次数の計測強度を判別する。この状況が生じやすいのは、比較的大ピッチなフィーチャを計測するときや、発散度が比較的大きなビームで以て計測するときである。
【0046】
図1記載の通り、計量システム100は情報処理システム130を有しており、検出器116により生成された信号126を獲得しその獲得信号に少なくとも部分的に依拠し注目構造の特性を判別するのに、それが用いられている。
【0047】
ある態様では、肝要プロセス工程後複合的半導体構造の1個又は複数個の注目幾何パラメタの推定が、その肝要プロセス工程の前後双方における、その複合的半導体構造に係るX線スキャタロメトリ計測データに基づき行われる。最も単純な物理的X線散乱モデルによれば、回折パターン強度は、単位セル内形状のフォームファクタの二乗に直線比例し、同じくその単位セルのフーリエ変換の二乗にも直線比例する。コヒーレンス効果を最小化するのに十分な距離で以て単位セル内の諸形状が空間分離されているとの仮定の下では、計測された回折パターンを、それぞれ別の形状に係るフーリエ成分同士の線形結合として近似することができる。即ち、肝要プロセス工程後に計測された回折パターンは、その肝要プロセス工程の前における回折パターンと、その肝要プロセス工程にて改変される形状又は形状群に由来する回折パターンとの和になる。このやり方によれば、その肝要プロセス工程にて改変される注目幾何パラメタの推定を、その肝要プロセス工程後に計測された回折パターンからの肝要プロセス工程前回折パターンの減算を踏まえ、行うことができる。
【0048】
図2には、複合的半導体構造を特徴付ける1個又は複数個の幾何パラメタの値を、肝要プロセス工程の前後双方における、その複合的半導体構造に係るX線スキャタロメトリ計測データに基づき推定する、モデル構築兼分析エンジンの実施形態150が描かれている。ある種の実施形態ではX線スキャタロメトリシステム、例えば図1記載の計量システム100により、X線スキャタロメトリデータ126及び127がウェハから収集される。X線スキャタロメトリデータ126は、ウェハ101を対象にして肝要プロセス工程が実行された後に収集され、X線スキャタロメトリデータ127は、ウェハ101を対象にしてその肝要プロセス工程が実行される前に収集される。
【0049】
図6に、一実施形態における肝要プロセス工程前半導体構造の断面を示す。図6記載の多層構造220は、反復する酸化物層221A~C及び窒化物層222A~Bを貫くチャネル孔223を有している。
【0050】
図7に、図6記載の多層構造の肝要プロセス工程後断面を示す。図7記載の実施形態における肝要プロセス工程は、チャネル孔223の側壁へのライナ226及びライナ227の堆積による多層構造225の生成である。
【0051】
図8に、図7記載のライナ226及び227の断面を示す。図6図8記載の実施形態では、ライナ226の厚みCD1とライナ227の厚みCD2とが、注目限界寸法とされている。
【0052】
図7記載の多層構造225から収集されたX線スキャタロメトリデータからのCD1及びCD2の計測は、多層構造220が存在していることで複雑になっている。理想的には、ライナ構造226及び227のみから収集されたX線スキャタロメトリデータから、CD1及びCD2を計測したいものである。しかしながら、複数個の層221及び222内に孔を形成する形成プロセスより後にライナ堆積プロセスが行われるのであるから、ライナ構造226及び227は、実ウェハ上にそれ単体では存在しえない。本願の記載によれば、多層構造220から収集されたX線スキャタロメトリデータが、多層構造225から収集されたX線スキャタロメトリデータから、減算される。こうすることで、計測回折に対する複数個の層221及び222並びに孔223の影響が、多層構造225に係る計測回折から差し引かれることとなる。それによりもたらされる回折パターンは、複数個の層221及び222並びに孔223の影響抜きでのライナ226及び227の散乱応答を、密に表すものとなる。もたらされた回折パターンを分析することで、CD1及びCD2のより正確な推定値が、より少ない情報処理労力で以て得られる。
【0053】
図9に、別の実施形態における肝要プロセス工程前半導体構造の断面を示す。図9記載の多層構造210Aは、垂直パターニング(交番する酸化物層201A~C及びタングステン層209A~B)、チャネル孔207、並びにタングステンで以て充填されたワードラインカット構造208を有している。
【0054】
図10に、図9記載の多層構造のタングステン窪ませプロセス工程後断面を示す。図10記載の実施形態では、酸化物スラブに対しある小距離に亘り各タングステンスラブが窪むこととなるよう、タングステンがエッチングされている。
【0055】
図11に、タングステン窪ませプロセスによりその多層構造210から除去されたタングステン窪み構造211の断面を示す。図9図11記載の実施形態では、窪ませ量CDが注目限界寸法とされている。
【0056】
図10記載の多層構造210Bから収集されたX線スキャタロメトリデータからのCDの計測は、多層構造210Aが存在しているため複雑になっている。理想的には、タングステン窪み構造211のみから収集されたX線スキャタロメトリデータから、CDを計測したいものである。しかしながら、垂直パターニングプロセス、孔形成プロセス及びワードカットプロセスより後にタングステン窪ませプロセスが行われるのであるから、タングステン窪み構造211は、実ウェハ上にそれ単体では存在しえない。本願の記載によれば、多層構造210Aから収集されたX線スキャタロメトリデータが、多層構造210Bから収集されたX線スキャタロメトリデータから、減算される。こうすることで、計測回折に対する複数個の層201及び209、孔207並びにワードカット208の影響が、多層構造210Bに係る計測回折から差し引かれることとなる。それによりもたらされる回折パターンは、複数個の層201及び209、孔207並びにワードカット208の影響抜きでのタングステン窪み構造211の散乱応答を、密に表すものとなる。もたらされた回折パターンを分析することで、CDのより正確な推定値が、より少ない情報処理労力で以て得られる。
【0057】
図12に、別の実施形態における肝要プロセス工程前半導体構造の上面を示す。図12記載の構造205は孔パターン203を有している。
【0058】
図13に、X線スキャタロメータ(例.計量システム100)による構造205の計測でもたらされた回折パターンを表す画像206を示す。
【0059】
図14に、図12記載の構造のスリット除去プロセス工程後の上面を示す。図14記載の実施形態では、スリット204が形成されそれにより構造215Aがもたらされるよう、構造205がエッチングされている。
【0060】
図15に、図12記載の構造205を計測するのに用いられたX線スキャタロメータ(例.計量システム100)により構造215Aを計測することでもたらされた回折パターンを表す画像212を示す。
【0061】
図16に、スリット204を有し孔パターン203を欠く構造215Bの上面を示す。図14及び図16記載の実施形態では、スリット204の幅Wが注目限界寸法とされている。
【0062】
図14記載の多層構造215Aから収集されたX線スキャタロメトリデータからのWの計測は、複数孔パターン203が存在しているため複雑になっている。理想的には、構造215Bのみから収集されたX線スキャタロメトリデータから、Wを計測したいものである。しかしながら、孔形成プロセスより後にスリット除去プロセスが行われるのであるから、スリット204は、実ウェハ上にそれ単体では存在しえない。本願の記載によれば、多層構造205から収集されたX線スキャタロメトリデータが、多層構造215Aから収集されたX線スキャタロメトリデータから、減算される。こうすることで、計測回折に対する孔パターン203の影響が、多層構造215Aに係る計測回折から差し引かれることとなる。それによりもたらされる回折パターンは、孔パターン203の影響抜きでのスリット構造204の散乱応答を、密に表すものとなる。もたらされた回折パターンを分析することで、Wのより正確な推定値が、より少ない情報処理労力で以て得られる。
【0063】
図17に、図15記載の計測済回折パターン212からの図13記載の計測済回折パターン206の画素バイ画素減算を表す画像216を示す。それによりもたらされる回折パターンは、X線スキャタロメータ(例.計量システム100)による理想構造215Bの計測応答を表している。
【0064】
図18に、構造205及び215Aを計測するのに用いられたX線スキャタロメータ(例.計量システム100)により構造215Bを計測することでもたらされる回折パターンについての、シミュレーションを表す画像217を示す。図17及び図18描出の通り、X線スキャタロメータによる計測に対する構造215Bの応答のシミュレーション結果は、図15記載の計測済回折パターン212からの図13記載の計測済回折パターン206の画素バイ画素減算によって、非常に密に近似される。
【0065】
ある種の実施形態では、X線スキャタロメトリデータ126、X線スキャタロメトリデータ127又はその双方が、各データセットに係る計量システム100のシステムパラメタ値を基準にして正規化される。一般に、肝要プロセス工程前後に収集されたデータセット間では、1個又は複数個のシステムパラメタ(例.ビーム強度、ビーム中心、ビームライン方向等)の値に違いが生じやすい。信頼性良くデータセット同士を結合させるため、一方又は双方のデータセットを補正することで、両データセットに係るシステムパラメタ値同士を整合させる。
【0066】
ある種の例では、その計量システム自体から入手できるノミナルなシステムパラメタ値に依拠し、目的とする正規化が行われる。しかしながら、多くの計測状況では、計量システムにより通知されるノミナルなシステムパラメタ値が、十分に正確なものとはならない。そうした例の多くでは、各データセットに係るシステムパラメタ値を、それらシステムパラメタ値を浮動させつつ、計測データのモデル依拠当て嵌めに依拠し決定する。
【0067】
図2記載の通り、正規化モジュール155は、肝要プロセス工程前に収集されたX線スキャタロメトリデータ127、その肝要プロセス工程の後に収集されたX線スキャタロメトリデータ126、並びにその肝要プロセス工程前のX線スキャタロメトリデータ127に係る計測モデル128を受け取る。計測モデル128により予測された計測データ及びX線スキャタロメトリデータ127のモデル依拠当て嵌めを、1個又は複数個のシステムパラメタ値を浮動させつつ実行する。それにより決定されたシステムパラメタ値を、X線スキャタロメトリデータ127に係る実システムパラメタ値として扱う。前述の通り、肝要プロセス工程により作成される複合的半導体構造に係る計測モデルでは、往々にして、正確にモデル化するのが難しい。肝要プロセス工程後の複合的半導体構造の被計測応答を正確にモデル化するよう試みるのではなく、計測モデル128により予測された計測データ及びX線スキャタロメトリデータ126のサブセットのモデル依拠当て嵌めを、1個又は複数個のシステムパラメタ値を浮動させつつ実行する。このモデル依拠当て嵌めは、X線スキャタロメトリデータ126のうち、その複合的半導体構造の存在により最小限しか影響されないサブセットで以て実行する。一例として、X線スキャタロメトリデータ126が、構造215Aを計量システム100により計測することで計測された回折パターンであるとする。この計測済回折パターンを表しているのが図15の画像212である。更に、計量システム100により計測されたかの如く構造215Bからの回折パターンを模擬導出したものが、図18に示されている。この例では、図18記載の画像217のうち非0値を有する画素(例.0超の強度値を有する画素)又は比較的小さい値を有する画素(例.所定の閾値を上回る強度値を有する画素)を特定する。次に、図15記載の画像212中の対応する画素に0値を割り当てる。それによりもたらされる画像(即ちX線スキャタロメトリデータ126のサブセット)並びに計測モデル128により予測された計測データの当て嵌めを、1個又は複数個のシステムパラメタ値を浮動させつつ実行することで、データセット126に係るシステムパラメタ値を特定する。
【0068】
データセット126、127又はその双方を補正することで、両データセットに係るシステムパラメタ値同士を整合させることができる。一例としては、データセット126を補正し、データセット127に係るシステムパラメタ値に整合させる。別例としては、データセット127を補正し、データセット126に係るシステムパラメタ値に整合させる。更に別例としては、データセット126及び127双方を補正し、所定セットのシステムパラメタ値を整合させる。
【0069】
図2記載の通り、データセット126から導出された正規化データセット156、並びにデータセット127から導出された正規化データセット157が、データ差分モジュール158に送られる。データ差分モジュールは、正規化データセット156及び157を結合させることで結合データセット159を生成し、それを当て嵌め分析モジュール160に送る。一例としては、データ差分モジュールにて、データセット156・157間の画素バイ画素差分を結合データセット159として決定する。
【0070】
肝要プロセス工程前後の注目構造の計測に係るX線スキャタロメトリデータを正規化するのが好ましいけれども、一般には、これは必須ではない。その意味では、正規化ブロック155はオプション的なものである。
【0071】
ある種の実施形態では、肝要プロセス工程の前後双方にて、X線スキャタロメトリシステム(例.計量システム100)から実X線スキャタロメトリデータが収集される。これに対し、他のある種の実施形態では、肝要プロセス工程前のX線スキャタロメトリデータが、その肝要プロセス工程の後でX線スキャタロメータシステム(例.計量システム100)から収集された実スキャタロメトリデータに基づき、合成的に生成される。例えばある種の実施形態では、X線スキャタロメトリデータ127が、肝要プロセス工程後にX線スキャタロメトリシステム(例.計量システム100)から収集されたX線スキャタロメトリデータ126に基づき、合成的に生成される。こうした実施形態では、肝要プロセス工程前の模擬導出X線スキャタロメトリデータセットを生成するのに、パターン認識アルゴリズム例えばパッチマッチングアルゴリズムが用いられる。その実X線スキャタロメトリデータ(例.X線スキャタロメトリデータ126)を評価することで、その注目構造、即ちその肝要プロセスにて改変される構造に係る1個又は複数個の領域(例.画素群)を特定することができる。当該1個又は複数個の領域内の計測値を、パッチマッチングアルゴリズムにより特定された値により置換することで、当該1個又は複数個の注目領域外の被計測パターンに対し連続的な回折パターンが生成される。一例として、図15に、X線スキャタロメータ(例.計量システム100)による構造215Aの計測により計測された回折パターンの画像212が示されている。図14記載の通り、構造215Aは孔構造203と注目構造たるスリット構造204を共に有している。図18には、X線スキャタロメータ(例.計量システム100)により計測されたスリット構造204しか含まれていない回折パターンのシミュレーションを表す画像217が示されている。その注目領域内には、画像217の画素のうち計測可能な信号値を有する画素(例.そのX線スキャタロメトリシステムのノイズフロアよりもかなり大きな値を有する画素)がある。画像217に基づき特定された画素が、パッチマッチングアルゴリズムにより図15記載の画像212中で置換される。この置換値により、注目領域外パターンに対し連続的な回折パターンが生成される。更に、それによりもたらされる回折パターンは、孔構造のみを有していてスリット構造を有していない構造の計測応答を表している。もたらされたデータセットを、データ差分モジュール158によりデータセット126から減算することで、当て嵌め分析モジュール160に送られる結合データセット159を生成することができる。こうした実施形態では、肝要プロセス工程前のX線スキャタロメトリデータが、X線スキャタロメータシステムから収集された実スキャタロメトリデータに基づき合成的に生成されるため、正規化は必須でない。好適なパッチマッチングアルゴリズムについての付加的な記述が、論文たる非特許文献1に記載されており、また非特許文献2にてオンラインで利用可能である。
【0072】
更に、ある態様に係るモデル構築兼分析エンジン150は概略構造モデル構築モジュール151を有する。概略構造モデル構築モジュール151は、肝要プロセス工程後に計測された構造の幾何的特徴のサブセットが組み込まれた概略幾何モデル152を生成する。ある種の実施形態では、その肝要プロセス工程により影響される1個又は複数個の特徴のみが、その概略幾何モデル152に組み込まれる。結果として、その概略幾何モデル152は、肝要プロセス工程後に実行される計測にて捕捉される構造の完全な幾何モデルに比べ、少数の浮動幾何パラメタを含むものとなる。
【0073】
一例として、図8に、ライナ226及び227のみを捉える概略幾何モデルが示されている。別例として、図11に、タングステン窪み構造211のみを捉える概略幾何モデルが示されている。更なる別例として、図16に、スリット構造204のみを捉える概略幾何モデルが示されている。
【0074】
概略幾何モデル152はX線スキャタロメトリ応答関数モデル構築モジュール153に送られる。X線スキャタロメトリ応答関数モデル構築モジュール153は、その概略幾何モデル152に基づき概略計測応答モデル154を生成する。概略計測応答モデル154は、X線スキャタロメトリシステム(例.計量システム100)による計測に対するその概略幾何構造の応答を模擬するものである。概略計測応答モデル154は当て嵌め分析モジュール160に送られる。
【0075】
肝要プロセス工程により影響される1個又は複数個の特徴のみをモデル化することにより、その幾何モデル及びX線計測応答モデルをかなり容易に生成することができる。更に、それによりもたらされる概略計測応答モデルは、肝要プロセス工程後の計測により捉えられた被計測構造の幾何的特徴全てを捉えるかなり完全な計測モデルよりも、当て嵌めがかなり容易である。
【0076】
ある種の例では、結合X線スキャタロメトリデータに基づく計量に際し、結合データ(例.結合データセット159)で以て概略計測モデル(例.概略計測応答モデル154)を逆解することにより、標本の寸法が決定される。その計測モデルは、少数の(10個オーダの)可調パラメタを含んでいて、その注目構造の幾何特性及び光学特性と、その計測システムの光学特性とを表すものである。その逆解の方法としては、これに限られるものではないがモデル依拠回帰、トモグラフィ、機械学習並びにそれらの任意の組合せがある。このようにして、結合データ・モデル化結果間の誤差が最小になるパラメタ化計測モデルの値に関し解くことで、ターゲットプロファイルパラメタが推定される。
【0077】
当て嵌め分析モジュール160は、概略計測応答モデル154を用い、結合データセット159を対象にして回帰を実行することで、一通り又は複数通りの限界寸法の値161を推定する。その推定値161がメモリ135内に格納される。注目幾何パラメタを浮動させる。ある種の実施形態によれば、付加的なパラメタ、例えば各独立次数の強度を浮動させることで、その肝要プロセス工程により影響されない特徴(群)の不完全除去をも勘案する。ある種の実施形態では、概略計測応答モデル154を用い、結合データセット159を対象にして最小二乗回帰を実行することで、一通り又は複数通りの限界寸法の値が推定される。
【数2】
【0078】
等式(2)は、ある非限定例における最小二乗回帰の目的関数の例を表している。等式(2)中に現れている項ChangedStructSimは概略計測応答モデルの出力である。これは、肝要プロセス工程により改変される被計測構造の特徴のみに的を当てる概略幾何モデルに基づき、模擬導出された回折信号である。項SubsequentStructMeasは、肝要プロセス工程後にX線スキャタロメータシステムにより計測された回折信号を表しており、項PriorStructMeasは、その肝要プロセス工程の前にX線スキャタロメータシステムにより計測された回折信号を表している。その差分項(SubsequentStructMeas-PriorStructMeas)が結合データセットである。
【0079】
また、ある態様では、結合X線スキャタロメトリデータに基づく計量に際し、結合データセット及び訓練済信号応答計量(SRM)モデルに基づき標本の寸法が決定される。こうした例では、限界寸法が幾何モデル抜きで結合データセットに直に関連付けされる。
【0080】
図3に、SRMモデル訓練エンジン170を表す図を示す。図3記載の訓練データには、肝要プロセス工程後に収集されたX線スキャタロメトリデータ172と、その肝要プロセス工程の前に収集されたX線スキャタロメトリデータ171とが含まれている。データセット171及び172は、1個又は複数個の注目パラメタ179が既知値を有する構造に対応している。データセット171及び172が前述の通り正規化モジュール155により正規化され、正規化データセット173及び174がデータ差分モジュール158に送られる。前述の通り正規化データセット173及び174から、データ差分モジュール158により結合データセット175が生成される。結合データセット175と、対応する1個又は複数個の既知値の注目パラメタ179とが、SRM訓練モジュール176に送られる。SRM訓練モジュールは、その結合データセット175と、それに対応する1個又は複数個の既知値の注目パラメタ179とに基づき、訓練済SRMモデル177を生成する。その訓練済SRMモデル177がメモリ135内に格納される。
【0081】
当該1個又は複数個の注目パラメタ179の既知値は、信頼のおける計測システム、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)、トンネリング電子顕微鏡(TEM)、原子間力顕微鏡(AFM)、或いはX線計測システム例えば小角X線スキャタロメータ(SAXS)、或いはX線蛍光(XRF)システムであり、そのパラメタ値を正確に計測しうるものにより計測される。但し、通常、参照計量システムは、例えばスループットが低いこと、個別サイト計測に係る計測不確定性が高いこと等々から、総じてインライン計量システムとして動作する能力を欠いている。
【0082】
ある好適な実施形態では、そのSRM計測モデルがニューラルネットワークモデルとして実現される。他の諸例によれば、そのSRM計測モデルを、線形モデル、多項式モデル、応答面モデル、決定木モデル、ランダムフォレストモデル、サポートベクタマシンモデルその他の種類のモデルとして実現することもできる。
【0083】
ある種の例では、訓練データセット171及び172が合成的に生成される。例えば、米国カリフォルニア州ミルピタス所在のKLA-Tencor Corporationから入手可能なポジ型レジスト光リソグラフィ(PROLITH)シミュレーションソフトウェア等の、プロセスシミュレータを用いることができる。一般に、どのようなプロセスモデル化技術又はツールであれ、本願の技術的範囲内にあるものと考えてよい(例.米国ノースカロライナ州ケーリー所在のCoventor, Inc.から入手可能なCoventor(登録商標)シミュレーションソフトウェア)。こうした実施形態における結合データセット175は結合合成回折パターンであり、1個又は複数個の注目パラメタ179の既知値が、単に、それら回折パターンの合成に用いられる限界寸法となる。
【0084】
更なる態様では、訓練済信号応答計量モデルを用い、結合計測信号に基づき、未知値を有する注目構造パラメタの値が推定される。
【0085】
図4に、SRMモデルエンジン180を表す図を示す。図4記載の通り、肝要プロセス工程後に収集されたX線スキャタロメトリデータ126と、その肝要プロセス工程の前に収集されたX線スキャタロメトリデータ127とが、前述の通り正規化モジュール155により正規化される。正規化データセット156及び157がデータ差分モジュール158に送られる。前述の通り正規化データセット156及び157から、データ差分モジュール158により結合データセット159が生成される。結合データセット159が訓練済SRM信号応答モデル177に送られる。SRM信号応答モデル177が1個又は複数個の注目パラメタの推定値178を生成する。その推定値178がメモリ135内に格納される。
【0086】
また、ある態様では、肝要プロセス工程後の複合的半導体構造の1個又は複数個の注目幾何パラメタの推定が、その肝要プロセス工程の後におけるその複合的半導体構造に係る実X線スキャタロメトリ計測データと、その肝要プロセス工程の前におけるその複合的半導体構造に係る模擬導出X線スキャタロメトリ計測データとに基づき、行われる。
【0087】
図5に、複合的半導体構造を特徴付ける1個又は複数個の幾何パラメタの値を、肝要プロセス工程前後双方における、その複合的半導体構造に係るX線スキャタロメトリ計測データに基づき推定する、モデル構築兼分析エンジンの実施形態200を示す。
【0088】
図5記載の通り、先行構造モデル構築モジュール190が肝要プロセス工程前の被計測構造の幾何モデル191を生成する。幾何モデル191は先行X線スキャタロメトリ応答関数構築モジュール192に送られ、そこでその幾何モデル191に基づき先行計測応答モデル193が生成される。先行計測応答モデル193は、その肝要プロセス工程の前におけるX線スキャタロメトリシステム(例.計量システム100)による計測に対する、その被計測構造の応答を模擬するものである。先行計測応答モデル193は当て嵌め分析モジュール198に送られる。
【0089】
同様に、後続構造モデル構築モジュール194がその肝要プロセス工程の後におけるその被計測構造の幾何モデル195を生成する。幾何モデル195は後続X線スキャタロメトリ応答関数構築モジュール196に送られ、そこでその幾何モデル195に基づき後続計測応答モデル197が生成される。後続計測応答モデル197は、その肝要プロセス工程の後におけるX線スキャタロメトリシステム(例.計量システム100)による計測に対する、その被計測構造の応答を模擬するものである。後続計測応答モデル197は当て嵌め分析モジュール198に送られる。
【0090】
X線スキャタロメトリデータ126はX線スキャタロメトリシステム、例えば図1記載の計量システム100によりウェハから収集される。X線スキャタロメトリデータ126は、ウェハ101を対象にして肝要プロセス工程が実行された後に収集され、当て嵌め分析モジュール198に送られる。
【0091】
当て嵌め分析モジュール198は、後続計測応答モデル197及び先行計測応答モデル193を用い、計測されたデータセット126を対象にして回帰を実行することで、一通り又は複数通りの限界寸法の値199を推定する。その推定値199がメモリ135内に格納される。注目幾何パラメタは浮動させる。ある種の実施形態では、付加的なパラメタ、例えば各独立次数の強度をも浮動させることで、その肝要プロセス工程により影響されない特徴(群)の不完全除去も勘案する。ある種の実施形態では、当て嵌め分析モジュール198により実行される最小二乗回帰の目的関数に、等式(3)により表される通り、誤差項及び正則化項が共に組み込まれる。
【数3】
【0092】
等式(3)中に現れている項SubsequentStructSimは後続計測応答モデル197の出力であり、項SubsequentStuctMeasは計測データ126である。それらの項の間の差分が誤差項であり、これにより最適化が推進される。項PriorStructSimは先行計測応答モデル193の出力である。係数λはスカラー値の正則化因子であり、これにより正則化項の荷重が実効的に設定される。この最適化においては、正則化項により、先行構造の強度寄与分が減殺される。結果として、その構造のうち肝要プロセス工程により改変される部分、即ち注目幾何パラメタによる強度寄与分が強調される。
【0093】
一般に、肝要プロセス工程前の個別の被計測構造に係る計測は、1枚又は複数枚のウェハを対象にして実行することができる。同様に、肝要プロセス工程後の個別の被計測構造に係る計測も、1枚又は複数枚のウェハを対象にして実行することができる。ある種の実施形態では、好ましいことに、1枚のウェハ(例.「ゴールデン」ウェハ)を対象にして肝要プロセス工程前の個別の構造が計測され、その肝要プロセス工程の後の個別の被計測構造に係る計測が多くの相異なる供試ウェハを対象にして実行される。
【0094】
本願記載の通り、肝要プロセス工程後の複合的半導体構造の1個又は複数個の注目幾何パラメタの推定は、その肝要プロセス工程の前後双方における、その複合的半導体構造に係るX線スキャタロメトリ計測データに基づき行われる。一般に、肝要プロセス工程後の複合的半導体構造の1個又は複数個の注目幾何パラメタの推定は、肝要なもの及び肝要でないものを含め何個かのプロセス工程の前における、その複合的半導体構造に係るX線スキャタロメトリデータと、当該何個かのプロセス工程の後におけるそれとに基づき、行うことができる。
【0095】
例えば、タングステン窪みの計測を、窪みエッチング後に収集された計測データに加え、ワードラインカット前、ワードラインカット後、或いはタングステンによる窒化物の置換後に収集された計測データに基づき、行うことができる。
【0096】
更に、実施形態に係るシステム100は、本願記載の通りX線スキャタロメトリ計測を実行するのに用いられる1個又は複数個の情報処理システム130を有している。当該1個又は複数個の情報処理システム130は検出器116に可通信結合されている。ある態様によれば、当該1個又は複数個の情報処理システム130が、試料101の構造の計測に係る計測データ126を受け取るよう構成される。また、ある態様によれば、当該1個又は複数個の情報処理システム130が、何れか先行するプロセス工程での個別の被計測構造に係る計測データを受け取るよう構成される。
【0097】
認識されるべきことに、本件開示の随所に記載の諸ステップは、単一コンピュータシステム130により実行することも、それに代え複数コンピュータシステム130により実行することもできる。更に、本システム100の諸サブシステム、例えば検出器116やX線源110に、本願記載のステップのうち少なくとも一部分を実行するのに適したコンピュータシステムを組み込んでもよい。従って、上掲の記述は本発明に対する限定事項としてではなく、単なる例証として解されるべきである。更に、当該1個又は複数個の情報処理システム130は、本願記載のどの方法実施形態のどの他ステップ(群)を実行するようにも構成することができる。
【0098】
加えて、コンピュータシステム130を検出器116に可通信結合させる要領を、本件技術分野で既知な何れの要領としてもよい。例えば、前記1個又は複数個の情報処理システム130を、検出器116と連携する情報処理システムに結合させてもよい。また例えば、検出器116を、コンピュータシステム130に結合された単一コンピュータシステムにより直に制御してもよい。
【0099】
本計量システム100のコンピュータシステム130を、本システムの諸サブシステム(例.検出器116等)からのデータ又は情報を伝送媒体、例えば有線及び/又は無線区間を有するそれにより受領及び/又は獲得するよう、構成してもよい。この構成では、その伝送媒体を、コンピュータシステム130と本システム100の他の諸システム又は諸サブシステムとの間の、データリンクとして働かせることができる。
【0100】
本計量システム100のコンピュータシステム130を、他システムからのデータ又は情報(例.計測結果、モデル化入力、モデル化結果等々)を伝送媒体、例えば有線及び/又は無線区間を有するそれにより受領及び/又は獲得するよう、構成してもよい。この構成では、その伝送媒体を、コンピュータシステム130と他システム(例.計量システム100のオンボードメモリ、外部メモリ、プロセスツール、参照計測源又は他の外部システム)との間のデータリンクとして働かせることができる。例えば、データリンクを介し格納媒体(即ちメモリ132又は外部メモリ)から計測データを受け取るよう情報処理システム130を構成してもよい。一例としては、検出器116を用い取得した結果を恒久的又は半恒久的メモリデバイス(例.メモリ132又は外部メモリ)内に格納させることができる。この構成では、その分光結果をオンボードメモリから、或いは外部メモリシステムからインポートすることができる。更に、伝送媒体を介しコンピュータシステム130から他システムにデータを送ってもよい。一例としては、コンピュータシステム130により決定された構造パラメタ値又は計測モデルを送り、外部メモリ(例.メモリ135)内に格納させることができる。この構成では、計測結果を他システムにエキスポートすることができる。
【0101】
情報処理システム130には、これに限られるものではないが、パーソナルコンピュータシステム、メインフレームコンピュータシステム、ワークステーション、イメージコンピュータ、並列プロセッサその他、本件技術分野で既知なあらゆる装置が包含されうる。一般に、語「情報処理システム」は、記憶媒体から得た命令を実行するプロセッサを1個又は複数個有するデバイス全てが包括されるよう、広く定義することができる。
【0102】
方法例えば本願記載のそれを実現するプログラム命令134を、伝送媒体例えばワイヤ、ケーブル又は無線伝送リンク上で伝送させてもよい。例えば、図1に描かれている通り、メモリ132に格納されているプログラム命令を、バス133上を経てプロセッサ131へと伝送させる。コンピュータ可読媒体(例.メモリ132)内にプログラム命令134を格納させる。コンピュータ可読媒体の例としてはリードオンリメモリ、ランダムアクセスメモリ、磁気ディスク、光ディスク及び磁気テープがある。
【0103】
図19には、本発明の計量システム、例えば図1に描かれている計量システム100による実施に適した方法300が描かれている。ある態様によれば、認識頂けるように、予めプログラミングされているアルゴリズムを、情報処理システム130に備わる1個又は複数個のプロセッサ、或いは他の何らかの汎用情報処理システムにより実行することで、方法300の諸データ処理ブロックを実行することができる。本願での認識によれば、計量システム100の具体的な構造的側面で限定事項が表されるわけではなく、それは専ら例証として解されるべきである。
【0104】
ブロック301では、半導体製造プロセスフローの肝要プロセス工程後に、複合的半導体構造の1個又は複数個の後続物に第1群の照明輻射を供給する。
【0105】
ブロック302では、その第1群の照明輻射に応じその複合的半導体構造の1個又は複数個の後続物からもたらされる第1群の輻射を検出する。
【0106】
ブロック303では、検出された第1群の輻射に応じ第1群の計測データを生成する。
【0107】
ブロック304では、第1群の計測データと、前記製造プロセスフローの前記肝要プロセス工程前におけるX線スキャタロメータによる前記複合的半導体構造の1個又は複数個の先行物の計測を示す第2群の計測データと、に基づき、その複合的半導体構造の前記1個又は複数個の後続物の注目構造パラメタの値を推定する。
【0108】
一般に、どのようなスキャタロメトリ計測技術であれ、また二種類以上のスキャタロメトリ計測技術のどのような組合せであれ、本願の技術的範囲内のものと考えることができる。計測技術の例としては、これに限られるものではないが、分光エリプソメトリ、例えばミュラー行列エリプソメトリ、分光リフレクトメトリ、分光スキャタロメトリ、スキャタロメトリオーバレイ、ビームプロファイルリフレクトメトリ、角度分解ビームプロファイルエリプソメトリ、偏向分解ビームプロファイルエリプソメトリ、単一離散波長エリプソメトリ、複数離散波長エリプソメトリ、透過型小角X線スキャタロメータ(TSAXS)、小角X線散乱(SAXS)、かすめ入射小角X線散乱(GISAXS)、広角X線散乱(WAXS)、X線反射率(XRR)、X線回折(XRD)、かすめ入射X線回折(GIXRD)、高分解能X線回折(HRXRD)、X線光電子スペクトロスコーピ(XPS)、X線蛍光(XRF)、かすめ入射X線蛍光(GIXRF)、低エネルギ電子誘起X線放射スキャタロメトリ(LEXES)、X線トモグラフィ及びX線エリプソメトリがある。一般に、画像式計量技術を初め、半導体構造の特性解明に適用可能な計量技術は全て、考慮されうる。付加的なセンサ選択肢としては、非接触式の静電容量/電圧センサや電流/電圧センサ等、そのデバイスをバイアスしもたらされるバイアスを光学センサで以て検出する(又はその逆の)電気的センサや、支援型光学技術、例えばXRD、XRF、XPS、LEXES、SAXS及びポンププローブ技術がある。ある実施形態によれば、二次元ビームプロファイルリフレクトメータ(瞳イメージャ)を用い、小さなスポットサイズにて、角度分解及び/又はマルチスペクトルデータ双方を収集することができる。UVリニック干渉計もミュラー行列スペクトル瞳イメージャとして用いることができる。
【0109】
ある種の例では、本願記載のモデル構築、訓練及び計測方法が、米国カリフォルニア州ミルピタス所在のKLA-Tencor Corporationから入手可能なSpectraShape(商標)光学限界寸法計量システムの一要素として実施される。この構成では、DOEウェハスペクトルがそのシステムにより収集された直後にそのモデルが構築され、使用準備が整う。
【0110】
他のある種の例では、本願記載のモデル構築方法及び訓練方法が、例えば、米国カリフォルニア州ミルピタス所在のKLA-Tencor Corporationから入手可能なAcuShape(登録商標)ソフトウェアを情報処理システムにより実行することで、オフライン実施される。それによりもたらされる訓練済モデルを、計測を実行する計量システムによるアクセスが可能なAcuShape(登録商標)ライブラリの一要素として組み込むことができる。
【0111】
一般に、本願提示の半導体計量実行方法及びシステムは、実デバイス構造に直に適用することも、ダイ内に所在し又はスクライブラインの内輪に所在する専用計量ターゲット(例.プロキシ構造)に適用することもできる。
【0112】
更に、ある態様によれば、本懐記載の計測技術を用い、プロセスツール(例.リソグラフィツール、エッチングツール、堆積ツール等)への能動フィードバックを実行することができる。例えば、本願記載の方法を用い決定された構造パラメタ値をリソグラフィツールに送り、そのリソグラフィシステムを調整することで、所望の出力を達成することができる。同様のやり方で、エッチングパラメタ(例.エッチング時間、拡散率等)や堆積パラメタ(例.時間、濃度等)を計測モデルに組み込み、エッチングツールや堆積ツールそれぞれへの能動フィードバックを実行することができる。
【0113】
一般に、本願記載のシステム及び方法は、専用計量ツールの一部として実施することも、それに代えプロセスツール(例.リソグラフィツール、エッチングツール等)の一部として実施することもできる。
【0114】
本願記載の語「限界寸法」には、構造のあらゆる限界寸法(例.下部限界寸法、中部限界寸法、上部限界寸法、側壁角、格子高さ等々)、任意の2個以上の構造間の限界寸法(例.2個の構造間の距離)、並びに2個以上の構造間のずれ(例.重なり合う格子構造間のオーバレイ位置ずれ等々)が包含される。構造の例としては三次元構造、パターン化構造、オーバレイ構造等々がある。
【0115】
本願記載の語「限界寸法アプリケーション」や「限界寸法計測アプリケーション」にはあらゆる限界寸法計測が包含される。
【0116】
本願記載の語「計量システム」には、計測アプリケーション例えば限界寸法計量、オーバレイ計量、焦点/照射量計量及び組成計量を初め、その態様を問わず試料の特性解明に少なくとも部分的に採用されるシステム全てが包含される。とはいえ、こうした技術用語により本願記載の語「計量システム」の範囲が限定されるわけではない。加えて、計量システムをパターン化ウェハの計測向けに構成しても、及び/又は、無パターンウェハの計測向けに構成してもよい。その計量システムを、LED検査ツール、エッジ検査ツール、背面検査ツール、マクロ検査ツール又はマルチモード検査ツール(1個又は複数個のプラットフォームから同時にデータを得るものを含む)その他、本願記載の計測技術から利を受けるどのような計量又は検査ツールとして構成してもよい。
【0117】
本願には、試料の処理に使用しうる半導体処理システム(例.検査システムやリソグラフィシステム)に関し様々な実施形態が記述されている。本願で用いられている語「試料」は、本件技術分野で既知な手段により処理(例.印刷又は欠陥検査)されうるウェハ、レティクルその他の標本全てを指している。
【0118】
本願中の用語「ウェハ」は、総じて、半導体又は非半導体素材で形成された基板のことを指している。その例としては、これに限られるものではないが、単結晶シリコン、ヒ化ガリウム及び燐化インジウムがある。そうした基板は半導体製造設備にて普通に見出すことができ、及び/又は、処理することができる。場合によっては、ウェハが基板のみで構成されることがある(いわゆるベアウェハ)。そうではなく、ウェハが、基板上に形成された1個又は複数個の異種素材層を有することもある。ウェハ上に形成された1個又は複数個の層が「パターニング」されていることも「未パターニング」なこともありうる。例えば、ウェハ内に複数個のダイがありそれらが可反復パターンフィーチャを有していることがありうる。
【0119】
「レティクル」は、レティクル製造プロセスのどの段階にあるレティクルでもよいし、レティクルの完成品でもよいし、また半導体製造設備での使用向けにリリースされていてもいなくてもよい。レティクル或いは「マスク」は、一般に、その上にほぼ不透明な領域が形成されておりその領域がパターンをなしているほぼ透明な基板として定義される。その基板は、例えば、ガラス素材例えばアモルファスSiOを含有するものとすることができる。レジストで覆われたウェハの上方にレティクルを配してリソグラフィプロセスのうち露出工程を行うことで、そのレティクル上のパターンをそのレジストへと転写することができる。
【0120】
ウェハ上に形成される1個又は複数個の層がパターンをなしていてもよいし、なしていなくてもよい。例えば、ウェハ内の複数個のダイそれぞれが、可反復パターンフィーチャを有していてもよい。そうした素材層の形成及び処理によって、最終的にはデバイスの完成品を得ることができる。ウェハ上には数多くの種類のデバイスを形成しうるので、どのような種類のものであれ本件技術分野で既知なデバイスがその上に作成されるウェハを包括することを意図して、本願では語ウェハが用いられている。
【0121】
1個又は複数個の例示的実施形態では、上述の機能がハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア又はそれらの何らかの組合せの態で実現されうる。ソフトウェアの態で実現する際には、それらの機能が1個又は複数個の命令又はコードとしてコンピュータ可読媒体上に格納され又はその媒体上で伝送されうる。コンピュータ可読媒体にはコンピュータ格納媒体及び通信媒体の双方、例えばコンピュータプログラムをある場所から別の場所へと転送するのに役立つ媒体全てが包含される。格納媒体は、汎用又は専用コンピュータによるアクセスが可能な何れの入手可能媒体ともすることができる。限定としてではなく例として言うなら、そうしたコンピュータ可読媒体は、RAM、ROM、EEPROM、CD-ROMその他の光ディスクストレージ、磁気ディスクストレージその他の磁気格納装置を初め、命令又はデータ構造の形態を採る所望のプログラムコード手段の搬送又は格納に使用することが可能で、且つ汎用又は専用コンピュータ或いは汎用又は専用プロセッサによるアクセスが可能な、あらゆる媒体を以て構成することができる。また、どのような接続であれコンピュータ可読媒体と称して差し支えない。例えば、ソフトウェアをウェブサイト、サーバその他のリモートソースから送信するに当たり同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、ディジタル加入者線(DSL)又は無線テクノロジ例えば赤外線、無線周波数若しくはマイクロ波が用いられるのであれば、それら同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、DSL又は無線テクノロジ例えば赤外線、無線周波数若しくはマイクロ波は媒体の定義に収まる。本願中の用語ディスク(disk/disc)には、コンパクトディスク(CD)、レーザディスク、光ディスク、ディジタルバーサタイルディスク(DVD)、フロッピーディスク及びブルーレイ(登録商標)ディスクを初め、通常はデータが磁気的に再生されるディスク(disk)及びレーザで以てデータが光学的に再生されるディスク(disc)が包含される。上掲のものの組合せもまたコンピュータ可読媒体の範囲内に包含されるべきである。
【0122】
ある特定の諸実施形態を教示目的で上述したが、本件特許出願の教示は一般的な適用可能性を有するものであり、上述の具体的諸実施形態に限定されるものではない。従って、上述の諸実施形態の諸特徴については、特許請求の範囲中で説明されている発明の技術的範囲から離隔することなく、様々な修正、適合化並びに組合せを実施することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19