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特許7545418炭素質材料およびその製造方法、電気二重層キャパシタ用電極材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】炭素質材料およびその製造方法、電気二重層キャパシタ用電極材料
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/24 20130101AFI20240828BHJP
   H01G 11/42 20130101ALI20240828BHJP
   H01G 11/32 20130101ALI20240828BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20240828BHJP
   C01B 32/318 20170101ALI20240828BHJP
【FI】
H01G11/24
H01G11/42
H01G11/32
H01G11/86
C01B32/318
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021567308
(86)(22)【出願日】2020-12-15
(86)【国際出願番号】 JP2020046776
(87)【国際公開番号】W WO2021131910
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2019234865
(32)【優先日】2019-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019234873
(32)【優先日】2019-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019234874
(32)【優先日】2019-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】人見 充則
(72)【発明者】
【氏名】松下 稔
(72)【発明者】
【氏名】西浪 裕之
(72)【発明者】
【氏名】西田 光▲徳▼
(72)【発明者】
【氏名】山田 隆之
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/207769(WO,A1)
【文献】特開2008-195559(JP,A)
【文献】特開平6-99065(JP,A)
【文献】特開2001-240407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/24
H01G 11/42
H01G 11/32
H01G 11/86
C01B 32/318
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素吸着法によるBET比表面積が1750m/g以上2100m/g以下であり、かつ、下記(1)、(2)および(3):
(1)窒素吸着法による吸着等温線に基づきHK法により算出される細孔容積が0.76cm/g以上0.91cm/g以下であり、粉体導電率が13S/cm以上22S/cm以下であり、表面官能基量が0.22meq/g以上0.29meq/g以下であり、水素含有量が0.41質量%以下である;
(2)二酸化炭素吸脱着法による吸脱着等温線に基づきNLDFT法により算出される細孔容積が0.37cm/g以上0.41cm/g以下であり、表面官能基量が0.22meq/g以上0.29meq/g以下であり、水素含有量が0.41質量%以下である;および、
(3)水蒸気吸着法による吸着等温線に基づきHK法により算出される細孔容積(A)が0.48cm/g以上0.64cm/g以下であり、水蒸気吸着法による吸着等温線に基づきHK法により算出される細孔径1.2nm以下の細孔容積(B)が0.14cm/g以上0.30cm/g以下であり、細孔容積(A)に対する細孔容積(B)の割合が25%以上59%以下である
のいずれかの条件を満たす、炭素質材料。
【請求項2】
前記(2)または(3)の条件を満たし、かつ、粉体導電率が13S/cm以上22S/cm以下である、請求項1に記載の炭素質材料。
【請求項3】
前記(3)の条件を満たし、かつ、表面官能基量が0.22meq/g以上0.29meq/g以下である、請求項1または2に記載の炭素質材料。
【請求項4】
前記(3)の条件を満たし、かつ、水素含有量が0.41質量%以下である、請求項1~3のいずれかに記載の炭素質材料。
【請求項5】
BJH法により測定される細孔径4nm以上の細孔容積が0.07cm/g以上0.18cm/g以下である、請求項1~4のいずれかに記載の炭素質材料。
【請求項6】
アルカリ金属の含有量が40ppm以下である、請求項1~5のいずれかに記載の炭素質材料。
【請求項7】
炭素質材料がヤシ殻由来の炭素前駆体に由来する、請求項1~6のいずれかに記載の炭素質材料。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の炭素質材料を含む電気二重層キャパシタ用電極材料。
【請求項9】
炭素前駆体を炭化後、賦活して得られる活性炭をアルカリ性溶液中でアルカリ洗浄する工程、および、
前記アルカリ洗浄後の活性炭を酸洗浄した後、1100℃以上1300℃以下で熱処理する工程
を含む、請求項1~7のいずれかに記載の炭素質材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素質材料およびその製造方法、並びに、前記炭素質材料を含む電気二重層キャパシタ用電極材料に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学デバイスの1つである電気二重層キャパシタは、化学反応を伴わず物理的なイオンの吸脱着のみから得られる容量(電気二重層容量)を利用しているため、電池と比較して出力特性および寿命特性に優れている。近年では、このような電気二重層キャパシタの優れた特性と、環境問題への早急な対策といった点から、補助電源、回生エネルギーの貯蔵用途として電気自動車(EV)やハイブリッド自動車(HV)への搭載などでも注目されている。このような車載用の電気二重層キャパシタには、より高エネルギー密度であることだけでなく、民生用途と比較して厳しい使用条件下(たとえば厳しい温度環境下)における高い耐久性や安全性が求められている。
【0003】
このような要求に対し、電気二重層キャパシタの耐久性を改善させるための方法が種々検討されている。例えば、特許文献1には、活性炭表面に存在する表面官能基に加えて、骨格内酸素量を制御することによりガスの発生を抑制し、電気二重層キャパシタの耐久性を向上させることを目的として、賦活処理により得られた活性炭を粉砕および分級後に高温下で熱処理する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/200769号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載されるように、活性炭表面の官能基量や骨格内酸素量を制御することは電気二重層キャパシタにおける充放電時のガスの発生量の低減に一定の効果をもたらす。しかしながら、電極材料である活性炭表面の官能基量や骨格内酸素量を適切に制御していても、経時的なガスの発生を抑制することは難しく、かかるガス発生量の変化に伴い容量維持率が低下することがあり、活性炭表面の官能基量および骨格内酸素量のみを制御することによる電気二重層キャパシタの耐久性の向上には限界があった。
【0006】
本発明は、充放電時のガス発生抑制効果に優れ、長期間にわたり高い容量維持率を実現し得る、電気二重層キャパシタの電極材料として好適な炭素質材料およびその製造方法、並びに、前記炭素質材料を用いた電気二重層キャパシタ用電極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決するために、炭素質材料およびその製造方法について詳細に検討を重ねた結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下の好適な態様を包含する。
[1]窒素吸着法によるBET比表面積が1750m/g以上2100m/g以下であり、かつ、下記(1)、(2)および(3):
(1)窒素吸着法による吸着等温線に基づきHK法により算出される細孔容積が0.76cm/g以上0.91cm/g以下であり、粉体導電率が13S/cm以上22S/cm以下であり、表面官能基量が0.22meq/g以上0.29meq/g以下であり、水素含有量が0.41質量%以下である;
(2)二酸化炭素吸脱着法による吸脱着等温線に基づきNLDFT法により算出される細孔容積が0.37cm/g以上0.41cm/g以下であり、表面官能基量が0.22meq/g以上0.29meq/g以下であり、水素含有量が0.41質量%以下である;および、
(3)水蒸気吸着法による吸着等温線に基づきHK法により算出される細孔容積(A)が0.48cm/g以上0.64cm/g以下であり、水蒸気吸着法による吸着等温線に基づきHK法により算出される細孔径1.2nm以下の細孔容積(B)が0.14cm/g以上0.30cm/g以下であり、細孔容積(A)に対する細孔容積(B)の割合が25%以上59%以下である
のいずれかの条件を満たす、炭素質材料。
[2]前記(2)または(3)の条件を満たし、かつ、粉体導電率が13S/cm以上22S/cm以下である、前記[1]に記載の炭素質材料。
[3]前記(3)の条件を満たし、かつ、表面官能基量が0.22meq/g以上0.29meq/g以下である、前記[1]または[2]に記載の炭素質材料。
[4]前記(3)の条件を満たし、かつ、水素含有量が0.41質量%以下である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の炭素質材料。
[5]BJH法により測定される細孔径4nm以上の細孔容積が0.07cm/g以上0.18cm/g以下である、前記[1]~[4]のいずれかに記載の炭素質材料。
[6]アルカリ金属の含有量が40ppm以下である、前記[1]~[5]のいずれかに記載の炭素質材料。
[7]炭素質材料がヤシ殻由来の炭素前駆体に由来する、前記[1]~[6]のいずれかに記載の炭素質材料。
[8]前記[1]~[7]のいずれかに記載の炭素質材料を含む電気二重層キャパシタ用電極材料。
[9]炭素前駆体を炭化後、賦活して得られる活性炭をアルカリ性溶液中でアルカリ洗浄する工程、および、
前記アルカリ洗浄後の活性炭を酸洗浄した後、1100℃以上1300℃以下で熱処理する工程
を含む、前記[1]~[7]のいずれかに記載の炭素質材料の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、充放電時のガス発生抑制効果に優れ、長期間にわたり高い容量維持率を実現し得る、電気二重層キャパシタの電極材料として好適な炭素質材料およびその製造方法、並びに、前記炭素質材料を用いた電気二重層キャパシタ用電極を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】シート状の電極組成物を示す図である。
図2】導電性接着剤が塗布された集電体(エッチングアルミニウム箔)を示す図である。
図3】シート状の電極組成物と集電体を接着しアルミニウム製タブを超音波溶接した分極性電極を示す図である。
図4】袋状の外装シートを示す図である。
図5】電気化学デバイスを示す図である。
図6】実施例および比較例における容量維持率変化率を示すグラフである。
図7】実施例および比較例におけるガス発生量変化率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更をすることができる。
【0011】
<炭素質材料>
本発明の炭素質材料は、窒素吸着法によるBET比表面積が1750m/g以上2100m/g以下であり、窒素吸着法による吸着等温線に基づきHK法により算出される細孔容積が0.76cm/g以上0.91cm/g以下であり、粉体導電率が13S/cm以上22S/cm以下であり、表面官能基量が0.22meq/g以上0.29meq/g以下であり、かつ、水素含有量が0.41質量%以下である。
【0012】
本発明の炭素質材料の窒素吸着法によるBET比表面積(以下、「BET比表面積」ともいう)は1750m/g以上であり、好ましくは1800m/g以上、より好ましくは1850m2/g以上である。BET比表面積が1750m/g未満であると、単位質量あたりの静電容量が小さくなり、容量維持率も低下しやすくなる。また、平均細孔径が相対的に小さくなるため、大電流下における充放電時に細孔内での非水系電解質イオンの拡散抵抗によると思われる抵抗が増加する傾向にある。一方、本発明の炭素質材料のBET比表面積は2100m2/g以下であり、好ましくは2050m2/g以下である。BET比表面積が2100m/gを超えると、炭素質材料の微細孔が多くなる傾向にあり、ガス発生量自体が増加しやすくなるとともに、経時的にガスが発生しやすくなる。これにより、電気二重層キャパシタに用いた場合に容量維持率が低下しやすくなる。また、得られる電極の嵩密度が低下し、単位体積あたりの静電容量が低下する傾向にあり、電気二重層キャパシタに用いた場合にその性能が低下することがある。
なお、本発明において、BET比表面積は窒素吸着法により算出することができ、例えば、後述の実施例に記載の方法により算出することができる。
【0013】
従来、電気二重層キャパシタの初期容量を大きくするための有効な手段として、炭素質材料に微細孔を設けて細孔容積を大きくすることが知られている。一方、微細孔内には水分が吸着して存在しやすくなる。このような水分は微細孔内に強く固着していることが多く、例えば炭素質材料から電極を形成する際に十分な乾燥工程を経ても完全に除去することは難しい。このため、微細孔内に残存する微量の水分が時間の経過とともに電解液中に流出したり、水自体が分解したりすることによりガスが発生しやすくなり、かかるガス発生量の変化に伴い電気二重層キャパシタの容量が低下しやすくなる。
本発明の炭素質材料は、主にミクロ孔領域の細孔容積を特定の範囲に制御し、該細孔容積の測定/算出方法に応じて、適切な指標となる物性(例えば、粉体伝導率や表面官能基量等)を前記細孔容積の制御との組み合わせにおいて制御することによって、電気二重層キャパシタの高い初期容量を確保するとともに、水分が固着しやすい微細孔の存在を低減することでガス発生量の経時的な変化が生じにくく、長期間にわたり高い容量維持率を実現し得るものである。
【0014】
本発明の一態様において、本発明の炭素質材料は、上記BET比表面積を有し、かつ、窒素吸着法による吸着等温線に基づきHK法により算出される細孔容積が0.76cm/g以上0.91cm/g以下であり、粉体導電率が13S/cm以上22S/cm以下であり、表面官能基量が0.22meq/g以上0.29meq/g以下であり、水素含有量が0.41質量%以下である。以下、該態様の炭素質材料を、本発明の第一態様の炭素質材料という。また、本明細書において、単に本発明の炭素質材料という場合は、原則として前記第一態様、並びに、後述する第二態様および第三態様をまとめていうものとする。
【0015】
窒素吸着法による吸着等温線に基づきHK法により算出される、主にミクロ孔領域の細孔容積(以下、「細孔容積(N)」ともいう)を0.76cm/g以上の範囲に制御することによって、比表面積を大きくすることで電気二重層キャパシタの高い初期容量を確保するとともに、0.91cm/g以下の範囲に制御することにより、水分が固着しやすい微細孔の存在を低減することでガス発生量の経時的な変化が生じにくく、長期間にわたり高い容量維持率を実現し得る炭素質材料を得ることができる。長期間にわたるガス発生の抑制効果およびより高い容量維持率を得るために、本発明の第一態様の炭素質材料における上記細孔容積(N)は、好ましくは0.78cm/g以上、より好ましくは0.80cm/g以上、さらに好ましくは0.82cm/g以上であり、また、好ましくは0.90cm/g以下、より好ましくは0.89cm/g以下、さらに好ましくは0.88cm/g以下である。
ここで、HK法とは、一般にミクロ孔(2nm未満の細孔)の解析に用いられる計算方法であり、Horvath Kawazoeらによって提唱された方法である。本発明において、窒素吸着法によって測定した窒素吸着等温線に対し、HK法を適用することによって、上記細孔容積(N)を算出することができる。
【0016】
本発明の第一態様の炭素質材料の粉体導電率は13S/cm以上22S/cm以下である。粉体導電率が上記上限値以下であると、炭素質材料の炭素結晶構造の過度な発達を抑制することができ、それに伴う炭素質材料の細孔の収縮を抑制できるため、重量当たりの初期静電容量が大きくなる。また、粉体導電率が上記下限値以上であると、炭素質材料の炭素結晶構造が十分に発達した状態にあり結晶性が高くなることにより、炭素自身の電気伝導度が向上することで、充放電時の電流漏れによる抵抗増加を抑制でき、容量維持率を向上させることができる。上記効果をより高めるために、粉体導電率は好ましくは13.5S/cm以上、より好ましくは14S/cm以上であり、また、好ましくは21.5S/cm以下である。
なお、本発明において炭素質材料の粉体導電率は、荷重12kNにおける粉体抵抗測定により測定することができ、例えば、後述の実施例に記載の方法に従い算出することができる。
【0017】
本発明の第一態様の炭素質材料において、表面官能基量は0.22meq/g以上0.29meq/g以下である。炭素質材料の表面に存在する表面官能基(酸性官能基)量が上記上限以下であると、電気二重層キャパシタにおけるガス発生をより効果的に抑制することができ、電気二重層キャパシタの容量維持率の向上が期待できる。このため、電気二重層キャパシタの耐久性、特にガス発生量の低減および容量維持率向上の観点からは、炭素質材料の表面官能基量は少ないほどよく、好ましくは0.28meq/g以下である。一方、表面官能基量が少なくなりすぎると電極の成形性が低くなる傾向にあるため、表面官能基量の下限は、好ましくは0.23meq/g以上、より好ましくは0.24meq/g以上である。
なお、本発明において表面官能基とは、主に、酸素を含有し、塩基性物質を吸着する酸性官能基を意味し、例えば、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、ラクトン基等が挙げられる。これらの表面官能基量は、例えば、後述の実施例に記載の方法に従い測定することができる。
【0018】
本発明の第一態様の炭素質材料における水素含有量は0.41質量%以下である。炭素質材料における水素含有量が上記上限以下であると、炭素結晶構造が十分に発達した状態にあり結晶性が高くなる傾向にある。したがって、炭素質材料における水素含有量は、好ましくは0.40質量%以下、より好ましくは0.35質量%以下、さらに好ましくは0.30質量%以下である。炭素質材料における水素含有量が低いほど結晶性は高くなる傾向にあり、電気二重層キャパシタ用電極材料に用いた場合に容量維持率の向上をもたらしやすい。したがって、炭素質材料における水素含有量は低いほど好ましく、その下限値は特に限定されるものではないが、製造効率の観点からは通常0.05質量%以上であり、好ましくは0.10質量%以上である。
本発明において、炭素質材料の水素含有量は、例えば、後述の実施例に記載の方法に従い測定することができる。
【0019】
本発明の別の一態様において、本発明の炭素質材料は、上記BET比表面積を有し、かつ、二酸化炭素吸脱着法による吸脱着等温線に基づきNLDFT法により算出される細孔容積が0.37cm/g以上0.41cm/g以下であり、表面官能基量が0.22meq/g以上0.29meq/g以下であり、水素含有量が0.41質量%以下である。以下、該態様の炭素質材料を、本発明の第二態様の炭素質材料という。
【0020】
二酸化炭素吸脱着法による吸脱着等温線に基づきNLDFT法(非局在化密度汎関数法、Non Localized Density Functional Theory)により算出される、主にミクロ孔領域の細孔容積(以下、「細孔容積(C)」ともいう)を0.37cm/g以上の範囲に制御することによって、比表面積を大きくすることで電気二重層キャパシタの高い初期容量を確保するとともに、0.41cm/g以下の範囲に制御することにより、水分が固着しやすい微細孔の存在を低減することでガス発生量の経時的な変化が生じにくく、長期間にわたり高い容量維持率を実現し得る炭素質材料を得ることができる。二酸化炭素吸脱着法を用いることにより、炭素質材料における細孔容積の測定に従来広く用いられる窒素吸着法を用いた場合には検出され難いより小さなサイズの微細孔(例えば、0.31~1.47nmの細孔)の存在を確認することができる。水分が固着しやすく、かつ、その水分を除去することが難しいこのような小さなサイズの微細孔の存在を制御することにより、電極材料とした場合に、高い初期容量および容量維持率を実現し、かつ、長期間にわたりガス発生を抑制する効果に優れる炭素質材料を得ることができる。本発明の第二態様の炭素質材料における上記細孔容積(C)は、好ましくは0.40cm/g以下、より好ましくは0.39cm/g以下である。
二酸化炭素吸脱着法による吸脱着等温線に基づくNLDFT法による細孔容積(C)の測定および算出は、例えば実施例に記載の方法に従い行うことができる。
【0021】
本発明の第二態様の炭素質材料において、表面官能基量は0.22meq/g以上0.29meq/g以下である。表面官能基(酸性官能基)量が上記上限以下であると、電気二重層キャパシタにおけるガス発生をより効果的に抑制することができ、電気二重層キャパシタの容量維持率の向上が期待できる一方、表面官能基量が少なくなりすぎると電極の成形性が低くなる傾向にある。本発明の第二態様の炭素質材料における表面官能基(酸性官能基)量の好適な範囲は、先に記載の第一態様の炭素質材料における表面官能基量の好適な範囲と同じである。
【0022】
本発明の第二態様の炭素質材料における水素含有量は0.41質量%以下である。炭素質材料における水素含有量が上記上限以下であると、炭素結晶構造が十分に発達した状態にあり結晶性が高くなる傾向にあり、水素含有量が低いほど結晶性は高くなる傾向にあって、電気二重層キャパシタ用電極材料に用いた場合に容量維持率の向上をもたらしやすい。本発明の第二態様の炭素質材料における水素含有量の好適な範囲は、先に記載の第一態様の炭素質材料における水素含有量の好適な範囲と同じである。
【0023】
本発明の第二態様の炭素質材料の粉体導電率は13S/cm以上22S/cm以下であることが好ましい。粉体導電率が上記上限値以下であると、炭素質材料の炭素結晶構造の過度な発達を抑制することができ、それに伴う炭素質材料の細孔の収縮を抑制できるため、重量当たりの初期静電容量が大きくなりやすく、粉体導電率が上記下限値以上であると、炭素質材料の炭素結晶構造が十分に発達した状態にあり結晶性が高くなることにより、炭素自身の電気伝導度が向上することで、充放電時の電流漏れによる抵抗増加を抑制でき、容量維持率を向上させることができる。本発明の第二態様の炭素質材料における粉体導電率のより好適な範囲は、先に記載の第一態様の炭素質材料における粉体導電率の好適な範囲と同じである。
【0024】
本発明の別の一態様において、本発明の炭素質材料は、上記BET比表面積を有し、かつ、水蒸気吸着法による吸着等温線に基づきHK法により算出される細孔容積(A)が0.48cm/g以上0.64cm/g以下であり、水蒸気吸着法による吸着等温線に基づきHK法により算出される細孔径1.2nm以下の細孔容積(B)が0.14cm/g以上0.30cm/g以下であり、細孔容積(A)に対する細孔容積(B)の割合が25%以上59%以下である。以下、該態様の炭素質材料を、本発明の第三態様の炭素質材料という。
【0025】
水蒸気吸着法による吸着等温線に基づきHK法により算出される、主にミクロ孔領域の細孔容積(以下、「細孔容積(A)」ともいう)を0.48cm/g以上の範囲に制御することにより、比表面積を大きくすることで電気二重層キャパシタの高い初期容量を確保するとともに、0.64cm/g以下の範囲に制御することによって、水分が固着しやすい微細孔の存在を低減することでガス発生量の経時的な変化が生じにくく、長期間にわたり高い容量維持率を実現し得る炭素質材料を得ることができる。水蒸気吸着法を用いることにより、炭素質材料における細孔容積の測定に従来広く用いられる窒素吸着法を用いた場合には検出され難い非常に小さなサイズの微細孔(例えば、0.31~1.94nmの細孔)の存在を確認することができる。水分が固着しやすく、かつ、その水分を除去することが難しいこのような小さなサイズの微細孔の存在を制御することにより、電極材料とした場合に、高い初期容量および容量維持率を実現し、かつ、長期間にわたりガス発生を抑制する効果に優れる炭素質材料を得ることができる。本発明の第三態様の炭素質材料における上記細孔容積(A)は、好ましくは0.49cm/g以上、より好ましくは0.50cm/g以上、さらに好ましくは0.54cm/g以上であり、また、好ましくは0.62cm/g以下、より好ましくは0.60cm/g以下である。
水蒸気吸着法による吸着等温線に基づくHK法による細孔容積の測定および算出は、例えば実施例に記載の方法に従い行うことができる。
【0026】
本発明の第三態様の炭素質材料においては、水蒸気吸着法による吸着等温線に基づきHK法により算出される細孔径1.2nm以下の細孔容積(以下、「細孔容積(B)」ともいう)が0.14cm/g以上0.30cm/g以下である。水蒸気吸着法により検出される細孔径1.2nm以下の細孔容積(B)が0.14cm/g以上であることにより、電極材料として用いる際に十分な初期容量を確保しやすく、かつ、0.30cm/g以下であることにより、水分が固着しやすく水分の除去が困難となる極小さな微細孔の存在が低減され、経時的なガス発生を効果的に抑制することができる。これにより、長期間にわたり高い容量維持率を実現し得る炭素質材料を得ることができる。本発明の第三態様の炭素質材料において、細孔容積(B)は、好ましくは0.15cm/g以上であり、また、好ましくは0.29cm/g以下、より好ましくは0.28cm/g以下である。
【0027】
本発明の第三態様の炭素質材料において、細孔容積(A)に対する細孔容積(B)の割合〔(B)/(A)×100〕は25%以上59%以下である。細孔容積(A)に対する細孔容積(B)の割合が上記範囲であると、ガス発生の原因となり得る水分が吸着しやすい微細孔が低減する一方で、電極材料として要求される高い初期容量や容量維持率を確保するために有利となる細孔が適度に存在するため、電極材料として用いる際に、高い初期容量を実現するために重要となる電極密度の向上と、細孔容積の増大に伴い生じやすくなる微細孔に吸着した水分に起因する経時的なガス発生の抑制とを両立しやすくなる。本発明の第三態様の炭素質材料において、細孔容積(A)に対する細孔容積(B)の割合は、好ましくは55%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは45%以下、特に好ましくは43%以下である。
【0028】
本発明の第三炭素質材料の粉体導電率は、好ましくは13S/cm以上22S/cm以下である。粉体導電率が上記上限値以下であると、炭素質材料の炭素結晶構造の過度な発達を抑制することができ、それに伴う炭素質材料の細孔の収縮を抑制できるため、重量当たりの初期静電容量が大きくなりやすく、粉体導電率が上記下限値以上であると、炭素質材料の炭素結晶構造が十分に発達した状態にあり結晶性が高くなることにより、炭素自身の電気伝導度が向上することで、充放電時の電流漏れによる抵抗増加を抑制でき、容量維持率を向上させることができる。本発明の第三態様の炭素質材料における粉体導電率のより好適な範囲は、先に記載の第一態様の炭素質材料における粉体導電率の好適な範囲と同じである。
【0029】
本発明の第三態様の炭素質材料において、表面官能基量は、好ましくは0.22meq/g以上0.29meq/g以下である。表面官能基(酸性官能基)量が上記上限以下であると、電気二重層キャパシタにおけるガス発生をより効果的に抑制することができ、電気二重層キャパシタの容量維持率の向上が期待できる一方、表面官能基量が少なくなりすぎると電極の成形性が低くなる傾向にある。本発明の第三態様の炭素質材料における表面官能基(酸性官能基)量の好適な範囲は、先に記載の第一態様の炭素質材料における表面官能基量の好適な範囲と同じである。
【0030】
本発明の第三態様の炭素質材料における水素含有量は0.41質量%以下であることが好ましい。炭素質材料における水素含有量が上記上限以下であると、炭素結晶構造が十分に発達した状態にあり結晶性が高くなる傾向にあり、水素含有量が低いほど結晶性は高くなる傾向にあって、電気二重層キャパシタ用電極材料に用いた場合に容量維持率の向上をもたらしやすい。本発明の第三態様の炭素質材料における水素含有量の好適な範囲は、先に記載の第一態様の炭素質材料における水素含有量の好適な範囲と同じである。
【0031】
本発明の上記第一態様、第二態様および第三態様の炭素質材料において、BJH法により測定される細孔径4nm以上の細孔容積(以下、「細孔容積(BJH)」ともいう)は、好ましくは0.07cm/g以上、より好ましくは0.08cm/g以上、さらに好ましくは0.09cm/g以上であり、また、好ましくは0.18cm/g以下、より好ましくは0.17cm/g以下、さらに好ましくは0.16cm/g以下である。細孔径4nm以上の細孔容積(BJH)が上記下限値以上であると、電気二重層キャパシタに用いた際にガス発生の原因となる、比較的水分が固着しやすい微細孔の少ない炭素質材料となりやすく、電気二重層キャパシタの容量維持率や耐久性の向上につながる。一方、細孔径4nm以上の細孔容積(BJH)が上記上限値以下であると、高い初期容量を確保することができ、また、電極の嵩密度が向上し、単位容積当たりの静電容量が高くなる傾向にある。
ここで、BJH法とは、CI法、DH法と同様に、一般にメソ孔(2nm以上50nm以下の細孔)の解析に用いられる計算方法であり、Barrett, Joyner, Halendaらによって提唱された方法である。本発明において、窒素吸着法によって測定した窒素吸着等温線に対し、BJH法を適用することによって、上記細孔容積を算出することができる。
【0032】
本発明の上記第一態様、第二態様および第三態様の炭素質材料のアルカリ金属含有量は、好ましくは40ppm以下、より好ましくは35ppm以下、さらに好ましくは30ppm以下である。炭素質材料に含有され得るアルカリ金属種としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムが挙げられる。特に、ナトリウムやカリウムは、一般に炭素質材料中に比較的多く存在するため、これらの含有量を制御することは、炭素質材料の品質向上に有利である。複数種のアルカリ金属が含まれる場合、各アルカリ金属の含有量が上記上限値以下であることが好ましく、全アルカリ金属の含有量の合計が上記上限値以下であることがより好ましい。アルカリ金属含有量が上記上限以下であると、アルカリ金属元素が電解液中に溶出し難くなり再析出による短絡が起きにくくなる。また、アルカリ金属による炭素質材料の細孔の閉塞が起こりにくいため、充放電容量が高くなる傾向にある。本発明の炭素質材料のアルカリ金属含有量の下限値は特に限定されるものではなく、少なければ少ないほど好ましいが、通常、1ppm以上であり、例えば3ppm以上であってよい。炭素質材料のアルカリ金属含有量は、例えば、後述の本発明の炭素質材料の製造方法において、アルカリ洗浄や酸洗浄によって上記量に調整できる。本発明の炭素質材料のアルカリ金属含有量は、例えば、後述の実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0033】
<炭素質材料の製造方法>
本発明の第一態様、第二態様および第三態様の炭素質材料は、それぞれ、例えば、
炭素前駆体を炭化後、賦活して得られる活性炭をアルカリ性溶液中でアルカリ洗浄する工程(以下、「アルカリ洗浄工程」ともいう)、および、
前記アルカリ洗浄後の活性炭を酸洗浄した後、1100℃以上1300℃以下で熱処理する工程(以下、「熱処理工程」ともいう)
を含む方法により製造することができる。
【0034】
また、上記製造方法は、上記工程に加えて、例えば、
(i)酸洗浄した後、500~1000℃の酸化性ガス雰囲気下で脱酸する工程(以下、「脱酸工程」ともいう)、
(ii)原料となる炭素前駆体を賦活処理して活性炭を得る工程(以下、「賦活工程」ともいう)、および/または
(iii)活性炭および/または炭素質材料の粉砕および/または分級工程
を含んでいてもよい。
【0035】
本発明の炭素質材料の原料となる炭素前駆体は、炭化後、賦活することによって活性炭を形成するものであれば特に制限されず、植物由来の炭素前駆体、鉱物由来の炭素前駆体、天然素材由来の炭素前駆体および合成素材由来の炭素前駆体などから広く選択することができる。有害不純物を低減する観点、環境保護の観点および商業的な観点からは、本発明の炭素質材料は、植物由来の炭素前駆体に基づくものであることが好ましく、言い換えると、本発明の炭素質材料の原料となる炭素前駆体が植物由来であることが好ましい。
【0036】
鉱物由来の炭素前駆体としては、例えば石油系および石炭系ピッチ、コークスが挙げられる。天然素材由来の炭素前駆体としては、例えば木綿、麻などの天然繊維、レーヨン、ビスコースレーヨンなどの再生繊維、アセテート、トリアセテートなどの半合成繊維の炭化物が挙げられる。合成素材由来の炭素前駆体としては、例えばナイロンなどのポリアミド系、ビニロンなどのポリビニルアルコール系、アクリルなどのポリアクリロニトリル系、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系、ポリウレタン、フェノール系樹脂、塩化ビニル系樹脂の炭化物が挙げられる。
【0037】
植物由来の炭素前駆体としては、特に限定されないが、例えば木材、木炭、もみ殻、ヤシ殻、パーム殻などの果実殻、珈琲豆、茶葉、サトウキビ、果実(例えば、みかん、バナナ)、藁、籾殻、広葉樹、針葉樹、竹が例示されるが、これらに限定されない。この例示は、本来の用途に供した後の廃棄物(例えば、使用済みの茶葉)、あるいは植物原料の一部(例えば、バナナやみかんの皮)を包含する。これらの植物原料を、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの植物原料の中でも、入手が容易で種々の特性を有する炭素質材料を製造できることから、ヤシ殻が好ましい。
【0038】
ヤシ殻としては、特に限定されないが、例えばパームヤシ(アブラヤシ)、ココヤシ、サラク、オオミヤシ等のヤシ殻が挙げられる。これらのヤシ殻を、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。ヤシを、食品、洗剤原料、バイオディーゼル油原料等として利用した後に大量に発生するバイオマス廃棄物であるココヤシおよびパームヤシのヤシ殻が、入手容易性の観点から特に好ましい。
【0039】
ヤシ殻を仮焼成してチャー(ヤシ殻チャー)の形態で入手することが可能で、これを素原料として使用することが好ましい。ここで、チャーとは、一般的には石炭を加熱した際に溶融軟化しないで生成する炭素分に富む粉末状の固体をいうが、ここでは有機物を加熱し、溶融軟化しないで生成する炭素分に富む粉末状の固体も指すこととする。ヤシ殻からチャーを製造する方法は、特に限定されるものではなく、当該分野において既知の方法を用いて製造することができる。例えば、原料となるヤシ殻を、例えば、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、一酸化炭素もしくは燃料排ガスなどの不活性ガス、これら不活性ガスの混合ガス、またはこれら不活性ガスを主成分とする他のガスとの混合ガスの雰囲気下、400~800℃程度の温度で焼成する(炭化処理)することによって製造することができる。
【0040】
<賦活工程>
本発明の炭素質材料の製造において好適な原料であるヤシ殻由来の活性炭は、例えば、炭化処理した上記炭素前駆体やヤシ殻チャーを賦活処理することにより得ることができる。賦活処理とは、炭素前駆体の表面に細孔を形成し多孔質の炭素質物質に変える処理であり、これにより大きな比表面積および細孔容積を有する活性炭を得ることができる。賦活処理を行わず、炭素前駆体をそのまま用いた場合には、得られる炭素質物質の比表面積や細孔容積が十分でなく、電極材料に用いた場合に、十分に高い初期容量を確保することが困難となる。賦活処理は、当該分野において一般的な方法により行うことができ、主に、ガス賦活処理と薬剤賦活処理の2種類の処理方法を挙げることができる。
【0041】
ガス賦活処理としては、例えば、水蒸気、二酸化炭素、空気、酸素、燃焼ガス、またはこれらの混合ガスの存在下、炭素前駆体を加熱する方法が知られている。また、薬剤賦活処理としては、例えば、塩化亜鉛、塩化カルシウム、リン酸、硫酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの賦活剤を炭素前駆体と混合し、不活性ガス雰囲気下で加熱する方法が知られている。本発明においては、薬剤賦活は残留する薬剤を取り除く工程が必要となり製造方法が煩雑となるため、ガス賦活処理を用いることが好ましい。
【0042】
ガス賦活処理として水蒸気賦活を採用する場合、効率良く賦活を進行させる観点から、炭化処理の際に用いたものと同様の不活性ガスと水蒸気との混合物を用いることが好ましく、その際の水蒸気の分圧は10~60%の範囲であることが好ましい。水蒸気分圧が10%以上であると賦活を十分に進行させやすく、60%以下であると、急激な賦活反応を抑制し、反応をコントロールしやすい。
【0043】
水蒸気賦活において供給する賦活ガスの総量は、炭素前駆体100質量部に対して、好ましくは50~10000質量部以上、より好ましくは100~5000質量部以上、さらに好ましくは200~3000質量部以上である。供給する賦活ガスの総量が上記範囲内であると、賦活反応をより効率よく進行させることができる。
【0044】
活性炭の比表面積や細孔容積は、炭素前駆体の賦活処理方法およびその条件等を変えることにより制御することができる。例えば、水蒸気賦活処理により活性炭を得る場合、用いるガスや加熱温度および時間等により制御することができる。水蒸気賦活処理において、得られる活性炭の比表面積や細孔径は、加熱温度が低いと小さくなる傾向にあり、加熱温度が高いと大きくなる傾向にある。本発明において、水蒸気賦活処理により活性炭を得る場合、その加熱温度(賦活温度)は用いるガスの種類にもよるが、通常700~1100℃であり、800~1000℃であることが好ましい。また、加熱時間や昇温速度は特に限定されるものではなく、加熱温度、所望する活性炭の比表面積等に応じて適宜決定すればよい。
【0045】
賦活処理により得られる活性炭のBET比表面積や細孔容積は、賦活処理の条件等により適宜調整することができる。活性炭のBET比表面積や細孔容積を適宜調整しておくことにより、その後に続くアルカリ洗浄工程および熱処理工程を経て得られる炭素質材料のBET比表面積や細孔容積を本発明の炭素質材料として適切な範囲に制御しやすくなる。
【0046】
所望の比表面積および細孔容積を得るために、必要に応じて、賦活処理は1回または2回以上実施してもよい。賦活処理を2回以上実施する場合、例えば、1回目の賦活(以下、「一次賦活」ともいう)後の活性炭を、酸を用いて洗浄する工程を含んでいてもよい。一次賦活後に酸洗浄を施すことにより炭素質材料に含まれるアルカリ金属類やアルカリ土類金属類などの不純物を低減または除去することができ、賦活処理による細孔径の過度な発達を抑制することができる。また、不純物を一次賦活後にいったん除去してからさらなる賦活(以下、「二次賦活」ともいう)を行うことにより、体積あたりの静電容量を低下させやすいメソ細孔が多くなりすぎることを防止することができる。二次賦活を行うことによって、アルカリ洗浄におけるアルカリ濃度やアルカリ洗浄時および/または加熱処理時の温度を低くし得る場合があり、作業性やエネルギー効率等の面において有利となり得る。
【0047】
一次賦活後の酸洗浄は、一次賦活後の活性炭を、酸を含む洗浄液に浸漬すること等によって行うことができる。酸洗浄後、残留した酸を除去するためにイオン交換水で十分に洗浄して乾燥後、再度賦活処理することで二次賦活した活性炭が得られる。
【0048】
前記賦活後の酸洗浄の条件は、特に限定されるものでなく、用いる酸の種類、濃度、洗浄温度や洗浄時間等は適宜決定すればよく、後述するアルカリ洗浄後の酸洗浄工程におけるものと同様の条件等を採用し得る。また、2回目以降の賦活の条件も特に限定されるものでなく、一次賦活と同様に、加熱温度や加熱時間等は所望する活性炭の比表面積や細孔容積等に応じて適宜決定すればよい。
【0049】
<アルカリ洗浄工程>
本発明の炭素質材料の製造方法は、賦活後の活性炭をアルカリ性溶液で洗浄する工程を含む。アルカリ洗浄工程は、前記活性炭をアルカリ性洗浄液で洗浄することにより、アルカリに溶解する金属類成分や微量に存在する固定化されていない炭素(炭化水素類)を除去し活性炭の炭素純度を向上するための工程である。また、アルカリ洗浄することで活性炭中に含まれるケイ素元素等の不純物を除去することができる。これにより、電気二重層キャパシタ用の電極として用いた場合に電解液と反応する活性点が少なくなり、電解液の分解反応を抑制することができるため、充放電時のガス発生量をより効果的に低減することができる。アルカリ洗浄工程は、賦活後に得られた活性炭をアルカリ性洗浄液に浸漬する方法、賦活後の活性炭をアルカリと気相で反応させる方法等によって行うことができるが、工程の簡略化や操作性、コストの観点から、アルカリ性洗浄液に浸漬する方法が好ましい。
【0050】
アルカリ性洗浄液に用い得るアルカリ性物質としては、例えばアルカリ金属水酸化物が挙げられ、アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。中でも、工程の操作性やコスト等の観点から、水酸化ナトリウムが好ましい。これらのアルカリ性物質は単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。上記アルカリ性物質を溶解する溶媒としては、特に限定されないが、水が好ましい。
【0051】
洗浄液中のアルカリ性物質の濃度は特に限定されるものではなく、用いるアルカリ性物質の種類、洗浄温度や時間、活性炭量に対する液量の比率等に応じて適宜調整してよい。洗浄液のアルカリ濃度は、好ましくは0.001mol/l以上10mol/l以下であり、より好ましくは0.01mol/l以上2mol/l以下である。アルカリ洗浄濃度が上記範囲内であると、微量炭化水素や金属類が除去され、アルカリ金属の残留量を少なくできる。
【0052】
アルカリ洗浄の洗浄液のpHは、特に限定されるものではなく、用いる洗浄液の種類等に応じて適宜調節してよいが、通常10以上であり、好ましくは12以上である。
【0053】
アルカリ洗浄を行う際の温度は、特に限定されるものではなく、用いるアルカリ性物質の種類、アルカリ濃度、アルカリ洗浄方法、アルカリ洗浄時間等に応じて適宜決定すればよい。例えば、アルカリ性洗浄液による洗浄温度は、例えば5℃以上であってよく、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上である。また、例えば110℃以下であってよく、好ましくは100℃以下、より好ましくは98℃以下、さらに好ましくは95℃以下である。アルカリ洗浄液の温度が上記範囲内であると、微量の炭化水素や金属類を除去しやすくなる。
【0054】
アルカリ洗浄の時間は、特に限定されるものではなく、用いるアルカリ性物質の種類、アルカリ濃度、アルカリ洗浄方法、アルカリ洗浄温度等に応じて適宜決定すればよい。アルカリ洗浄時間は、通常、5分以上であり、好ましくは10分以上、より好ましくは15分以上である。また、例えば300分以下であってよく、好ましくは180分以下、より好ましくは120分以下である。アルカリ洗浄時間が上記範囲内であると、微量の炭化水素や金属類を除去しやすくなる。
【0055】
活性炭をアルカリ性洗浄液に浸漬することによりアルカリ洗浄を行う場合、その方法としては、洗浄容器内に入れた洗浄液中に活性炭を所定の時間浸漬した後、全てのまたは一部の洗浄液を脱液し、新たに洗浄液を添加して浸漬-脱液を繰り返す方法であっても、洗浄容器内へ連続的に供給される新しい洗浄液中で活性炭を所定の時間浸漬する行う方法であってもよい。
【0056】
アルカリ洗浄を行う活性炭に対するアルカリ性洗浄液の割合は、用いるアルカリ性物質の種類、アルカリ濃度、アルカリ洗浄温度および時間等に応じて適宜決定すればよい。例えば、洗浄液の質量に対する、浸漬させる活性炭の質量は、通常3~50質量%であり、好ましくは5~30質量%である。上記範囲内であれば、洗浄液に溶出した不純物が洗浄液から析出しにくく、活性炭への再付着を抑制しやすく、また、容積効率が適切となるため経済性の観点から望ましい。
【0057】
アルカリ洗浄を行う雰囲気は特に限定されず、例えば、大気雰囲気中でも、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下でもよい。
【0058】
活性炭をアルカリ洗浄後、残留した洗浄液を除去するため、活性炭を水洗してもよい。
【0059】
<酸洗浄工程>
本発明の炭素質材料の製造方法は、アルカリ洗浄後の活性炭を酸、好ましくは酸性溶液で洗浄することを含む。アルカリ洗浄後の活性炭を酸洗浄することにより、活性炭中に含まれる金属成分等の不純物を低減、除去することができる。アルカリ洗浄後の酸洗浄は、酸を含む洗浄液にアルカリ洗浄後の活性炭を浸漬すること等によって行うことができる。酸洗浄工程では、原料活性炭を酸(例えば塩酸)で洗浄後、水洗してもよく、酸洗と水洗を繰り返すなど、水洗と酸洗を適宜組合せてもよい。
【0060】
酸洗浄液には、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸および酒石酸、クエン酸等の飽和カルボン酸、安息香酸およびテレフタル酸等の芳香族カルボン酸等の有機酸を用いることが好ましく、中でも、活性炭を酸化することがない塩酸による洗浄がより好ましい。酸洗浄液として塩酸を用いる場合、塩酸の濃度は0.1~3.0%であることが好ましく、0.3~1.0%であることがより好ましい。塩酸濃度が低過ぎると、不純物を除去するために酸洗回数を増やす必要があり、逆に高過ぎると、残留する塩酸が多くなることから、上記範囲の濃度とすることにより、効率よく酸洗浄工程を行うことができ、生産性の面から好ましい。
【0061】
酸洗や水洗をする際の液温度は特に限定されるものではないが、好ましくは0~98℃であり、より好ましくは10~95℃であり、さらに好ましくは15~90℃である。原料活性炭を浸漬する際の洗浄液の温度が上記範囲内であれば、実用的な時間かつ装置への負荷を抑制した洗浄の実施が可能となるため望ましい。
【0062】
酸洗浄を行う雰囲気は特に限定されず、例えば、大気雰囲気中でも、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下でもよい。
【0063】
<脱酸工程>
本発明の炭素質材料の製造方法は、酸洗浄後の活性炭に残留する酸洗浄液に由来する酸(例えば、塩酸等)を除去するための脱酸工程を含んでいてもよい。脱酸工程は、例えば、酸洗浄後の活性炭を酸化性ガス雰囲気下で短時間加熱し、活性炭と酸化性ガスを短時間接触させることにより、残留する酸を除去することにより行うことができる。
【0064】
酸化性ガスとしては、酸素、水蒸気、炭酸ガス、灯油やプロパンを燃焼して得られる燃焼ガスなどが挙げられる。これらの酸化性ガスは混合して使用しても構わないし、不活性ガスで希釈して使用しても構わない。なかでも、灯油やプロパンを燃焼して得られる燃焼ガス、燃焼ガスにスチームを添加したガスは、熱源としても利用できることからより好ましい。酸化性ガスの濃度は、用いるガスの種類によって適宜決定すればよいが、スチームを添加した場合は、通常1~40%であり、炭酸ガスを添加した場合は2%以上が好ましい。
【0065】
酸化性ガスと活性炭を接触させるための処理温度としては、500~1000℃が好ましく、650~850℃がより好ましい。上記温度範囲内であると、活性炭の細孔構造に大きな変化を与えることなく脱酸工程を実施できるため好ましい。酸化性ガスと接触させる時間は、上記接触温度によって異なるが、通常30分~3時間程度である。
【0066】
<熱処理工程>
本発明の炭素質材料の製造方法は熱処理工程を含む。前記アルカリ洗浄工程後に酸洗浄した活性炭を熱処理することによって、炭素構造を発達させるとともに、表面官能基を低減させることができる。熱処理温度としては1100℃以上1300℃以下が好ましい。熱処理温度が低すぎると炭素構造の発達が不十分となり、また表面官能基を十分に取り除くことができない。したがって本発明において熱処理温度は、より好ましくは1100℃を超え、さらに好ましくは1150℃以上、特に好ましくは1200℃以上である。また、高すぎると表面官能基は減少するが、活性炭の細孔収縮による比表面積の減少や活性炭エッジ面の減少によって十分な容量が得られなくなる。本発明の炭素質材料の製造方法においては、アルカリ洗浄工程を経てアルカリ金属類等を除去した活性炭に加熱処理を施すことにより、微細孔の収縮が促進しやすくなってガス発生の原因となり得る水分が吸着しやすい微細孔を低減させることができるとともに、上記特定の温度範囲内で加熱を行うことにより、電極材料として要求される高い初期容量や容量維持率を確保するために有利となる細孔を形成することができると考えられ、ガス発生抑制効果、並びに、初期容量および容量維持率の向上においてバランスよく機能し得る微細孔の形成および分布を実現し得る。
【0067】
熱処理時間は、熱処理温度、加熱方法、使用設備等に応じて適宜決定すればよく、通常0.1~10時間であり、好ましくは0.3時間以上、より好ましくは0.5時間以上であり、また、好ましくは8時間以下、より好ましくは5時間以下である。前記範囲内において、熱処理温度や時間を選択、調整することにより、得られる炭素質材料が有するBET比表面積、細孔容積、粉体導電率および表面官能基量等を制御することができる。
【0068】
熱処理は、不活性ガス条件下、あるいは酸素または空気を遮断し、活性炭から発生するガス雰囲気下で行うことが好ましい。熱処理に用いられる不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等が挙げられる。これらのガスは、1種のみを単独で用いてもよく、また、2種以上を混合した混合ガスとして用いてもよい。
【0069】
熱処理に用いる炉としては、例えばロータリキルン、流動層炉、固定層炉、移動層炉、移動床炉等各種形式の炉を使用することができ、原料の投入、製品の取り出しを連続的に行う連続炉、間欠的に行うバッチ炉の双方とも適用することができる。加熱手段としては所定の温度まで加熱可能な手段であれば問題なく、電気加熱やガス燃焼型加熱、高周波誘導加熱、通電加熱などが適用できる。また、これら加熱手段は単独で使用してもよいし、併用しても構わない。
【0070】
<粉砕工程>
本発明の炭素質材料の製造方法は粉砕工程を含んでいてもよい。粉砕工程は、最終的に得られる炭素質材料の形状や粒径を所望する形状や粒径に制御するための工程である。最終的に所望する形状や粒径の炭素質材料が得られる限り、炭素質材料のいずれの段階で粉砕工程を行ってもよい。本発明の炭素質材料の粒子径は、特に限定されないが、電気二重層キャパシタ用途に使用する場合、平均粒子径は好ましくは1~15μm、より好ましくは2~10μmとなるよう炭素質材料を粉砕することが好ましい。
【0071】
粉砕に用いる粉砕機は、特に限定されるものではなく、例えば、コーンクラッシャー、ダブルロールクラッシャー、ディスククラッシャー、ロータリークラッシャー、ボールミル、遠心ロールミル、リングロールミル、遠心ボールミル、ジェットミルなどの公知の粉砕機を、単独でまたは組み合わせて用いることができる。
【0072】
<分級工程>
本発明の炭素質材料の製造方法は分級工程を含んでもよい。活性炭中の小粒子や大粒子を分級により取り除くことで、炭素質材料の粒子サイズを制御し、狭い粒度分布幅を有する炭素質材料を得ることが可能となる。このような微粒子除去により、電極構成時のバインダー量を少なくすることが可能となる。分級方法は、特に制限されないが、例えば篩を用いた分級、湿式分級、乾式分級を挙げることができる。湿式分級機としては、例えば重力分級、慣性分級、水力分級、遠心分級等の原理を利用した分級機を挙げることができる。乾式分級機としては、沈降分級、機械的分級、遠心分級等の原理を利用した分級機を挙げることができる。経済性の観点から、乾式分級機を用いることが好ましい。
【0073】
粉砕と分級とを、1つの装置を用いて実施することもできる。例えば、乾式の分級機能を備えたジェットミルを用いて、粉砕および分級を実施することができる。さらに、粉砕機と分級機とが独立した装置を用いることもできる。この場合、粉砕と分級とを連続して行うこともできるが、粉砕と分級とを不連続に行うこともできる。
【0074】
<電気二重層キャパシタ用電極材料>
本発明の第一態様、第二態様および第三態様の炭素質材料は、それぞれ、各種電池デバイスの極材等として好適に用いることができる。特に、電気二重層キャパシタ用の電極材料として好適であり、本発明の炭素質材料を用いることにより、充放電時のガス発生量が低く、かつ、長期間にわたりガス発生量の変化が少ないことにより、長期間にわたり高い容量を維持することのできる電気二重層キャパシタを製造し得る。したがって、本発明の一実施態様においては、本発明の炭素質材料を含んでなる電気二重層キャパシタ用電極材料を提供することができる。この電気二重層キャパシタ用電極材料を用いて、電気二重層キャパシタ用電極や電気二重層キャパシタを提供することもできる。
【0075】
本発明の電気二重層キャパシタ用電極材料は、本発明の炭素質材料から製造することができる。例えば、本発明の炭素質材料と、導電性付与剤、バインダー、溶剤等の成分を混錬し、混錬物を塗工・乾燥等することにより本発明の電極材料得ることができる。また、前記電極材料に溶剤を添加してペーストを調製し、前記ペーストをアルミ箔等の集電板に塗布した後、溶媒を乾燥除去し、前記ペーストを金型に入れプレス成形する方法などによって、電気二重層キャパシタ用電極を製造することができる。
【0076】
電極材料に使用される導電性付与剤としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等を用いることができる。バインダーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系高分子化合物や、カルボキシメチルセルロース、スチレン-ブタジエンゴム、石油ピッチ、フェノール樹脂等を用いることができる。また、溶剤としては、例えば、水、メタノール、エタノールなどのアルコール類、ヘキサン、ヘプタンなどの飽和炭化水素、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素、アセトン、エチルメチルケトンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミドなどのアミド類、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドンなどの環状アミド類等を用いることができる。
【0077】
さらに、上記電気二重層用電極を用いて、電気二重層キャパシタを製造し得る。電気二重層キャパシタは、一般に、電極、電解液、およびセパレータを主要構成とし、一対の電極間にセパレータを配置した構造となっている。電解液としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、メチルエチルカーボネート等の有機溶剤にアミジン塩を溶解した電解液、過塩素酸の4級アンモニウム塩を溶解した電解液、4級アンモニウムやリチウム等のアルカリ金属の四フッ化ホウ酸塩や六フッ化リン酸塩を溶解した電解液、4級ホスホニウム塩を溶解した電解液等が挙げられる。また、セパレータとしては、例えば、セルロース、ガラス繊維、または、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンを主成分とした不織布、クロス、微孔フィルムが挙げられる。電気二重層キャパシタは、例えば、これらの主要な構成を、従来当該分野において一般的な方法により配置することにより製造することができる。
【0078】
本発明の炭素質材料を含んでなる電気二重層キャパシタは、炭素質材料表面に存在する細孔の大きさや微細孔の量が制御されており、微細孔に起因して経時的に生じる水分の分解や電解液中への流出が抑制されているうえに、表面官能基量が低減されているため電解液との反応性が低く、充放電時のガス発生抑制効果が高い。これにより、高い耐久性、特に容量維持率を実現し、長期使用によっても優れたキャパシタ性能を発揮することができる。
【実施例
【0079】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に述べるが、以下の実施例は、本発明を限定するものではない。実施例および比較例における各物性値は以下の方法により測定した。
【0080】
実施例中の物性値の測定は以下に記載の方法に従って行った。
【0081】
<ナトリウム元素およびカリウム元素の含有量>
ナトリウム元素およびカリウム元素の含有量は、以下の方法により測定した。まず、既知濃度の標準液からナトリウム元素およびカリウム元素含有量についての検量線を作成する。ついで、粉砕した測定試料を115℃で3時間乾燥した後、分解容器に0.1g入れ、硝酸10mlを加え混ぜた後、マイクロウェーブ試料前処理装置(CEM社製「MARS6」)を用いて試料を溶解した。その溶解液を取り出し、25mlにメスアップして測定溶液を調製した後、ICP発光分光分析装置((株)島津製作所製「ICPE-9820」)にて分析した。得られた値と先に作成した検量線より各濃度を求め、下記の式より各元素含有量を求め、それらの合計量をアルカリ金属量とした。
【0082】
【数1】
【0083】
<粉体導電率>
(株)三菱化学アナリテック社製、粉体抵抗率測定ユニット「MCP-PD51」を使用し、炭素質材料の導電率を測定した。導電率の測定は、荷重を12kNかけた際の活性炭ペレットの厚みが3.5~4.5mmとなる量の試料を使用し、荷重を12kNかけた状態での活性炭ペレットの導電率を測定した。
【0084】
<表面官能基量>
表面官能基量は、H.P.Boehm,Advan.Catal.,1966,16,179等により公知の塩酸滴定法によって測定した。具体的には、(株)高純度化学研究所製のナトリウムエトキシドを用いて、0.1Nのエタノール溶液を測定溶液として調製した。この測定溶液25mlに、試料となる炭素質材料を0.5g加え、25℃で24時間撹拌した。撹拌後、遠心分離にて測定溶液と炭素質材料とを分離し、当該測定溶液10mlを採取し、スイスMetrohm社製「888Titrando」を用いて、0.1Nの塩酸でpH4.0となる点を滴定終点として中和滴定を行い、試料滴定量を求めた。一方、試料を含まない溶液で空試験を行い、空試験滴定量も求め、下記式により表面官能基量を算出した。
表面官能基量(meq/g)=
{空試験滴定量(mL)-試料滴定量(mL)}×0.1×f(塩酸ファクター)/
使用した炭素質材料重量(g)×25(mL)/10(mL)
【0085】
<窒素吸着等温線>
マイクロトラック・ベル(株)製のBELSORP-MAXを使用し、試料となる炭素質材料を減圧下(真空度:0.1kPa以下)にて300℃で5時間加熱した後、77Kにおける炭素質材料の窒素吸着等温線を測定した。
【0086】
<4nm以上の細孔容積(BJH)>
得られた窒素吸着等温線に対し、BJH法を用いて相対圧P/P=0.99以下の範囲で算出される4nm以上の細孔径を有する細孔の細孔容積を求めた。なお、BJH法での解析にあたってはマイクロトラック・ベル(株)から提供された基準t曲線「NGCB-BEL.t」を解析に用いた。
【0087】
<BET比表面積>
得られた窒素吸着等温線からBET式により多点法による解析を行い、得られた曲線の相対圧P/P=0.01~0.1の領域での直線から比表面積を算出した。
【0088】
<HK法による細孔容積(N)>
得られた窒素吸着等温線をHK法により解析した。解析条件は吸着質分子量を28.010、吸着質密度を0.808g/cm、ファイルデータ補間方法を直線、パラメータ設定をN2-C(77K).HKSとした。
【0089】
<二酸化炭素吸脱着法による細孔容積(C)>
ガス吸着測定装置(Quantachrome社製、AUTOSORB-iQ MP-XR)を用い、273Kでの二酸化炭素の吸脱着を0.00075から0.030までの相対圧(p/p0)で測定することにより、二酸化炭素吸脱着等温線を得た。
前記方法により得られた二酸化炭素吸脱着等温線に対し、Calculation modelとして「CO2 at 273K on carbon(NLDFT model)」を適用してNLDFT法により解析を行い、細孔径分布を求め、全細孔容積を算出した。
【0090】
<水蒸気吸着法による細孔容積(A)>
ガス吸着測定装置(Quantachrome社製、AUTOSORB-iQ MP-XR)を用い、298Kでの水蒸気の吸着を0.00から1.00までの相対圧(p/p0)で測定することにより、吸着等温線を得た。
前記方法により得られた水蒸気吸着等温線に対し、HK法により細孔径分布の解析を行い、細孔径分布を求め、全細孔容積を算出した。
【0091】
<水蒸気吸着法による細孔容積(B)>
前記方法により得られた水蒸気吸着等温線に対し、HK法により細孔径分布の解析を行い、細孔径分布を求め、細孔直径1.2nm以下の細孔の細孔容積を算出した。
【0092】
上記で算出された細孔容積(A)と細孔容積(B)の値から、細孔容積(A)に対する細孔容積(B)の割合を算出した。
【0093】
<粒度分布>
炭素質材料の粒径はレーザー回折測定法により測定した。すなわち、測定対象である炭素質材料を界面活性剤と共にイオン交換水中に入れ、EMERSON社製のBRANSONIC M2800-Jを用いて超音波振動を与え均一分散液を作製し、マイクロトラック・ベル(株)製のMicrotrac MT3200を用いて透過法にて測定した。均一分散液の炭素質材料濃度は同装置で表示される測定濃度範囲に収まるように調整した。また、均一分散を目的に使用される界面活性剤には、富士フィルム和光純薬株式会社製の「ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(Triton X-100)」を用いた。界面活性剤は、均一分散させることが可能であり、測定に影響を与える気泡等が発生しない適当量を添加した。分析条件を以下に示す。
【0094】
(分析条件)
測定回数:1回
測定時間:30秒
分布表示:体積
粒径区分:標準
計算モード:MT3000
溶媒名:WATER
測定上限:1408μm、測定下限:0.243μm
残分比:0.00
通過分比:0.00
残分比設定:無効
粒子透過性:透過
粒子屈折率:1.81
粒子形状:非球形
溶媒屈折率:1.333
DV値:0.0150~0.0500
透過率(TR):0.750~0.920
流速:50%
【0095】
以下、本実施例において、炭素質材料の平均粒子径は、体積積算粒度分布表示における体積率50%における粒子径の値を示す。
【0096】
<水素含有量>
株式会社堀場製作所製、元素分析装置EMGA-930を用いて元素分析を行った。
当該装置の検出方法は、水素:不活性ガス溶融-非分散型赤外線吸収法(NDIR)であり、前処理として250℃、約10分で水分量を測定した試料20mgをNiカプセルに取り、元素分析装置内で30秒脱ガスした後に測定した。試験は3検体で分析し、平均値を分析値とした。
【0097】
1.第一態様の炭素質材料に関する実験例
<実施例1>
フィリピン産ココナツのヤシ殻を原料とするチャー(比表面積:370m/g)に対し、プロパン燃焼ガス+水蒸気(水蒸気分圧:25%)を用いて、850℃で一次賦活を行い、BET比表面積2117m/g、HK法による細孔容積:0.92cm/gの活性炭を得た。得られた活性炭に対し、水酸化ナトリウム水溶液(濃度:1mol/l、希釈液:イオン交換水)を用いて、25℃で30分間洗浄した後、残留した塩基を除去するため、イオン交換水で十分に水洗した。次いで塩酸(濃度:1mol/l、希釈液:イオン交換水)を用いて、温度100℃で30分酸洗した後、イオン交換水で十分に水洗、乾燥し、窒素ガス+水蒸気(水蒸気分圧3%)雰囲気下、700℃で脱酸処理を実施して残留した酸を除去して、アルカリおよび酸洗浄活性炭を得た。更に得られたアルカリおよび酸洗浄活性炭を磁性ボートに入れ、窒素気流下、1220℃(昇温速度:室温~600℃;10℃/分、600~900℃;5℃/分、900℃~1100℃;2.5℃/分、1100~1220℃;2℃/分、1220℃で30分間保持)で熱処理した後、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料について、BET比表面積、HK細孔容積(N)、粉体導電率、表面官能基量、水素含有量、4nm以上細孔容積(BJH)およびアルカリ金属量を測定・算出した。結果を表1に示す。
【0098】
<実施例2>
実施例1で得られたアルカリおよび酸洗浄活性炭を磁性ボートに入れ蓋をし、窒素気流下、1220℃(昇温速度:室温~600℃;10℃/分、600~900℃;5℃/分、900℃~1100℃;2.5℃/分、1100~1220℃;2℃/分、1220℃で30分間保持)で熱処理した後、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例1と同様に測定・算出した。結果を表1に示す。
【0099】
<実施例3>
実施例1で得られたアルカリおよび酸洗浄活性炭を磁性ボートに入れ、窒素気流下、1220℃(昇温速度:室温~600℃;10℃/分、600~900℃;5℃/分、900℃~1100℃;2.5℃/分、1100~1220℃;2℃/分、1220℃で60分間保持)で熱処理した後、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例1と同様に測定・算出した。結果を表1に示す。
【0100】
<実施例4>
実施例1で得られたアルカリおよび酸洗浄活性炭を磁性ボートに入れ蓋をし、窒素気流下、1220℃(昇温速度:室温~600℃;10℃/分、600~900℃;5℃/分、900℃~1100℃;2.5℃/分、1100~1220℃;2℃/分、1220℃で60分間保持)で熱処理した後、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例1と同様に測定・算出した。結果を表1に示す。
【0101】
<実施例5>
フィリピン産ココナツのヤシ殻を原料とするチャー(比表面積:370m/g)に対し、プロパン燃焼ガス+水蒸気(水蒸気分圧:25%)を用いて、850℃で一次賦活を行い、BET比表面積が1185m/gの一次賦活活性炭を得た。その後、塩酸(濃度:0.5N、希釈液:イオン交換水)を用いて、温度85℃で30分洗浄した後、残留した酸を除去するため、イオン交換水で十分に水洗、乾燥して、カリウム元素含有量が150ppmの一次洗浄活性炭を得た。この一次洗浄活性炭を、プロパン燃焼ガス(水蒸気分圧15%)を用い、950℃で二次賦活し、BET比表面積1912m/g、HK法による細孔容積:0.83cm/gの二次賦活活性炭を得た。得られた二次賦活活性炭に対し、水酸化ナトリウム水溶液(濃度:1mol/l、希釈液:イオン交換水)を用いて、100℃で30分間アルカリ洗浄した後、残留した塩基を除去するため、イオン交換水で十分に水洗した。次いで塩酸(濃度:1mol/l、希釈液:イオン交換水)を用いて、温度100℃で30分酸洗した後、イオン交換水で十分に水洗、乾燥した後、窒素+水蒸気(水蒸気分圧3%)気流下700℃で60分間脱酸処理を実施して残留した酸を除去して、アルカリおよび酸洗浄活性炭を得た。更に得られたアルカリおよび酸洗浄活性炭を磁性ボートに入れ、窒素気流下、1100℃(昇温速度:室温~600℃;10℃/分、600~900℃;5℃/分、900℃~1100℃;2.5℃/分、1100℃で60分間保持)で熱処理した後、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例1と同様に測定・算出した。結果を表1に示す。
【0102】
<実施例6>
実施例5で得られたアルカリおよび酸洗浄活性炭を磁性ボートに入れ、窒素気流下、1200℃(昇温速度:室温~600℃;10℃/分、600~900℃;5℃/分、900℃~1200℃;2.5℃/分、1200℃で60分間保持)で熱処理した後、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例1と同様に測定・算出した。結果を表1に示す。
【0103】
<実施例7>
フィリピン産ココナツのヤシ殻を原料とするチャー(比表面積:370m/g)に対し、プロパン燃焼ガス+水蒸気(水蒸気分圧:25%)を用いて、850℃で一次賦活を行い、BET比表面積2117m/g、HK法による細孔容積:0.92cm/gの活性炭を得た。得られた活性炭に対し、水酸化ナトリウム水溶液(濃度:1mol/l、希釈液:イオン交換水)を用いて、100℃で30分間アルカリ洗浄した後、残留した塩基を除去するため、イオン交換水で十分に水洗した。次いで塩酸(濃度:1mol/l、希釈液:イオン交換水)を用いて、温度100℃で30分酸洗した後、イオン交換水で十分に水洗、乾燥した後、窒素+水蒸気(水蒸気分圧3%)気流下700℃で60分間脱酸処理を実施して残留した酸を除去して、アルカリおよび酸洗浄活性炭を得た。更に、得られたアルカリおよび酸洗浄活性炭を磁性ボートに入れ、窒素気流下、1150℃(昇温速度:室温~600℃;10℃/分、600~900℃;5℃/分、900℃~1100℃;2.5℃/分、1100~1150℃;2℃/分、1150℃で60分間保持)で熱処理した後、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例1と同様に測定・算出した。結果を表1に示す。
【0104】
<実施例8>
実施例7で得られたアルカリおよび酸洗浄活性炭を磁性ボートに入れ、窒素気流下、1200℃(昇温速度:室温~600℃;10℃/分、600~900℃;5℃/分、900℃~1100℃;2.5℃/分、1100~1200℃;2℃/分、1200℃で60分間保持)で熱処理した後、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例1と同様に測定・算出した。結果を表1に示す。
【0105】
<比較例1>
フィリピン産ココナツのヤシ殻を原料とするチャー(比表面積:370m/g)に対し、プロパン燃焼ガス+水蒸気(水蒸気分圧:25%)を用いて、850℃で一次賦活を行い、BET比表面積2117m/g、HK法による細孔容積:0.92cm/gの活性炭を得た。得られた活性炭に対し、塩酸(濃度:1mol/l、希釈液:イオン交換水)を用いて、温度100℃で30分酸洗した後、イオン交換水で十分に水洗、乾燥し、窒素ガス+水蒸気(水蒸気分圧3%)雰囲気下、700℃で脱酸処理を実施して残留した酸を除去した後、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例1と同様に測定・算出した。結果を表1に示す。
【0106】
<比較例2>
フィリピン産ココナツのヤシ殻を原料とするチャー(比表面積:370m/g)に対し、プロパン燃焼ガス+水蒸気(水蒸気分圧:25%)を用いて、850℃で一次賦活を行い、BET比表面積が1185m/gの一次賦活活性炭を得た。その後、塩酸(濃度:0.5N、希釈液:イオン交換水)を用いて、温度85℃で30分洗浄した後、残留した酸を除去するため、イオン交換水で十分に水洗、乾燥して、カリウム元素含有量が150ppmの一次洗浄活性炭を得た。この一次洗浄活性炭を、プロパン燃焼ガス(水蒸気分圧15%)を用い、950℃で二次賦活し、BET比表面積1912m/g、HK法による細孔容積:0.83cm/gの二次賦活活性炭を得た。得られた二次賦活活性炭に対し、塩酸(濃度:1mol/l、希釈液:イオン交換水)を用いて、温度100℃で30分酸洗した後、イオン交換水で十分に水洗、乾燥した後、窒素+水蒸気(水蒸気分圧3%)気流下700℃で60分間脱酸処理を実施して残留した酸を除去した後、粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例1と同様に測定・算出した。結果を表1に示す。
【0107】
<比較例3>
フィリピン産ココナツのヤシ殻を原料とするチャー(比表面積:370m/g)に対し、プロパン燃焼ガス+水蒸気(水蒸気分圧:25%)を用いて、850℃で一次賦活を行い、BET比表面積が1185m/gの一次賦活活性炭を得た。その後、塩酸(濃度:0.5N、希釈液:イオン交換水)を用いて、温度85℃で30分洗浄した後、残留した酸を除去するため、イオン交換水で十分に水洗、乾燥して、カリウム元素含有量が150ppmの一次洗浄活性炭を得た。この一次洗浄活性炭を、プロパン燃焼ガス(水蒸気分圧15%)を用い、950℃で二次賦活し、BET比表面積1912m/g、HK法による細孔容積:0.83cm/gの二次賦活活性炭を得た。得られた二次賦活活性炭に対し、水酸化ナトリウム水溶液(濃度:1mol/l、希釈液:イオン交換水)を用いて、100℃で30分間アルカリ洗浄した後、残留した塩基を除去するため、イオン交換水で十分に水洗した。次いで塩酸(濃度:1mol/l、希釈液:イオン交換水)を用いて、温度100℃で30分酸洗した後、イオン交換水で十分に水洗、乾燥した後、窒素+水蒸気(水蒸気分圧3%)気流下700℃で60分間脱酸処理を実施して残留した酸を除去して、アルカリおよび酸洗浄活性炭を得た。これを、粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例1と同様に測定・算出した。結果を表1に示す。
【0108】
<比較例4>
比較例3で得られたアルカリおよび酸洗浄活性炭を窒素気流下、1000℃(昇温速度:室温~600℃;10℃/分、600~900℃;5℃/分、900℃~1000℃;2.5℃/分、1000℃で60分間保持)で熱処理した後、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例1と同様に測定・算出した。結果を表1に示す。
【0109】
<比較例5>
比較例1と同様のチャーに対し、プロパン燃焼ガス+水蒸気(水蒸気分圧:25%)を用いて、900℃で賦活を行い、BET比表面積が1886m/g、HK法による細孔容積:0.78cm/gの活性炭を得た。得られた活性炭を、塩酸(濃度:1mol/l、希釈液:イオン交換水)を用いて、温度100℃で30分酸洗した後、イオン交換水で十分に水洗、乾燥した後、窒素ガス+水蒸気(水蒸気分圧3%)雰囲気下、700℃で脱酸処理を実施して残留した酸を除去して、酸洗浄活性炭を得た。そして、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例1と同様に測定・算出した。結果を表1に示す。
【0110】
<比較例6>
比較例1と同様のチャーに対し、プロパン燃焼ガス+水蒸気(水蒸気分圧:25%)を用いて、850℃で一次賦活を行い、BET比表面積が1185m/gの一次賦活活性炭を得た。その後、塩酸(濃度:0.5N、希釈液:イオン交換水)を用いて、温度85℃で30分洗浄した後、残留した酸を除去するため、イオン交換水で十分に水洗、乾燥して、カリウム元素含有量が150ppmの一次洗浄活性炭を得た。この一次洗浄活性炭を、プロパン燃焼ガス(水蒸気分圧15%)を用い、950℃で二次賦活し、BET比表面積2117m/g、HK法による細孔容積:0.92cm/gの二次賦活活性炭を得た。得られた活性炭に対し、塩酸(濃度:1mol/l、希釈液:イオン交換水)を用いて、温度100℃で30分酸洗した後、イオン交換水で十分に水洗、乾燥した後、窒素ガス+水蒸気(水蒸気分圧3%)雰囲気下、700℃で脱酸処理を実施して残留した酸を除去して、酸洗浄活性炭を得た。得られた酸洗浄活性炭を磁性ボートに入れ、窒素気流下、1000℃(昇温速度:室温~600℃;10℃/分、600~900℃;5℃/分、900℃~1000℃;2.5℃/分、1000℃で60分間保持)で熱処理した後、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例1と同様に測定・算出した。結果を表1に示す。
【0111】
<比較例7>
比較例6で得られた酸洗浄活性炭を磁性ボートに入れ、窒素気流下、1100℃(昇温速度:室温~600℃;10℃/分、600~900℃;5℃/分、900℃~1100℃;2.5℃/分、1100℃で60分間保持)で熱処理した後、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例1と同様に測定・算出した。結果を表1に示す。
【0112】
<比較例8>
比較例6で得られた酸洗浄活性炭を磁性ボートに入れ、窒素気流下、1200℃(昇温速度:室温~600℃;10℃/分、600~900℃;5℃/分、900℃~1200℃;2.5℃/分、1200℃で60分間保持)で熱処理した後、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例1と同様に測定・算出した。結果を表1に示す。
【0113】
【表1】
【0114】
<試験用電極の作製>
電極構成部材である炭素質材料(電気二重層キャパシタ用電極活物質)、導電助材およびバインダーを、事前に120℃、減圧(0.1kPa以下)の雰囲気にて16時間以上減圧乾燥を行い使用した。
【0115】
炭素質材料、導電助材およびバインダーをそれぞれ0.81g、0.09g、および0.1g秤量し、混錬した。上記導電助材としては、デンカ(株)製の導電性カーボンブラック「デンカブラック粒状」を使用し、上記バインダーとしては、三井・デュポン フロロケミカル(株)製のポリテトラフルオロエチレン「6J」を使用した。混錬した後、さらに均一化を図る為、1mm角以下のフレーク状にカットし、コイン成形機にて400kg/cmの圧力を与え、コイン状の二次成形物を得た。得られた二次成形物をロールプレス機により160μm±5%(8μm)の厚みのシート状に成形した後、所定の大きさ(30mm×30mm)に切り出し、図1に示すような電極組成物1を作製した。そして、得られた電極組成物1を120℃、減圧雰囲気下で16時間以上乾燥した後、質量、シート厚みおよび寸法を計測し、以下の測定に用いた。
【0116】
<測定電極セルの作製>
図2に示すように、宝泉(株)製のエッチングアルミニウム箔3に日立化成工業(株)製の導電性接着剤2「HITASOL GA-703」を塗布時の厚みが100μmになるように塗布した。次いで、図3に示すように、導電性接着剤2が塗布されたエッチングアルミニウム箔3と、先にカットしておいたシート状の電極組成物1とを接着した。さらに、宝泉(株)製のアルミニウム製のシーラント5付きタブ4をエッチングアルミニウム箔3に超音波溶接機を用いて溶接した。溶接後、120℃で真空乾燥し、アルミニウム製の集電体を備える分極性電極6を得た。
【0117】
図4に示すように、宝泉(株)製のアルミニウム積層樹脂シートを長方形(縦200mm×横60mm)に切り出し2つ折にして、1辺(図4中の(1))を熱圧着して残る2辺が開放された袋状外装シート7を準備した。ニッポン高度紙工業(株)製のセルロース製セパレータ「TF-40」(図示せず)を介して上記の分極性電極6を2枚重ね合わせた積層体を作製した。この積層体を外装シート7に挿入して、タブ4が接する1辺(図5中の(2))を熱圧着して分極性電極6を固定した。次いで、120℃、減圧雰囲気下で16時間以上真空乾燥させた後、アルゴン雰囲気(露点-90℃以下)のドライボックス内で電解液を注入した。電解液としては、キシダ科学(株)製の1.0mol/Lのテトラエチルアンモニウム・テトラフルオロボレートのアセトニトリル溶液を使用した。外装シート7内で積層体に電解液を含侵させた後、外装シート7の残る1辺(図5中の(3))を熱圧着して図5に示す電気二重層キャパシタ8を作製した。
【0118】
<静電容量測定>
得られた電気二重層キャパシタ8を菊水電子工業(株)製の「CAPACITOR TESTER PFX2411」を用いて、-30℃において、到達電圧3.0Vまで、電極表面積あたり50mAで定電流充電し、さらに、3.0Vで30分、定電圧下補充電し、補充電完了後、25mAで放電した。得られた放電曲線データをエネルギー換算法で算出し静電容量(F)とした。具体的には、充電の後電圧がゼロになるまで放電し、このとき放電した放電エネルギーから静電容量(F)を計算した。そして、電極体積あたりで割った静電容量(F/cc)を求めた。
【0119】
<耐久性試験>
耐久性試験は先に記述した測定電極セルを60℃の恒温槽中にて3.0Vの電圧を印加しながら任意の時間保持した後で、上記と同様にして-30℃において静電容量測定を行った。任意の保持時間は、0、25、200、400、600時間とした。また、下記の式に従い容量維持率を求めた。保持時間0時間を耐久性試験前とし、600時間保持した後を耐久性試験後とした。結果を表2に示す。
【0120】
【数2】
【0121】
耐久時間200時間、400時間、600時間の静電容量測定によって得られる各時間の容量維持率と耐久時間の関係から得られる傾きを容量維持率変化率とした。結果を表2および図6に示す。
【0122】
【表2】
【0123】
<ガス発生量の測定>
先に記述した静電容量測定後、測定電極セルの乾燥重量と水中の質量を測り、発生した浮力および水の密度からセル体積を求め、耐久性試験前後のセル体積の変化から算出したガス体積量を測定時の温度差で補正し、求めた。すなわち、ガス発生量は下記の式に従って求めた。なお、式中、セル質量Aとは空気中でのセル質量(g)を表し、セル質量Wとは水中でのセル質量(g)を表す。
ガス発生量(cc)=
{(耐久試験後のセル質量A-耐久試験後のセル質量W)
-(耐久試験前のセル質量A-耐久試験前のセル質量W)}/
(273+耐久試験後の測定温度(℃))/(273+耐久試験前の測定温度(℃))
上記のガス発生量をさらに電極組成物を構成する炭素質材料の質量で割った値を、炭素質材料質量あたりのガス発生量(cc/g)とした。結果を表3に示す。
【0124】
また、容量維持率と同様に、耐久時間200時間、400時間、600時間の各耐久時間におけるガス発生量からガス発生量変化率を求めた。結果を表3および図7に示す。
【0125】
【表3】
【0126】
実施例1~4、7および8においては、アルカリ洗浄と高温熱処理を組み合わせることによって比表面積、HK法による細孔容積、粉体導電率、表面官能基量、水素含有量が本発明の第一態様で規定している範囲内に入り、耐久時間600時間における容量維持率が高く、かつ、ガス発生量、容量維持率変化率およびガス発生量変化率が低い電極材料となり得ることが確認された。
【0127】
2段賦活を行った活性炭にアルカリ洗浄と高温熱処理を実施した実施例5および6では、アルカリ濃度やアルカリ洗浄時の温度、高温熱処理の温度を実施例1~4より低くしても、炭素質材料の物性値が本発明の第一態様の範囲内にあり、耐久時間600時間における容量維持率が高く、ガス発生量、容量維持率変化率およびガス発生量変化率が低い電極材料となり得ることが確認された。
【0128】
アルカリ洗浄および高温熱処理を施さない場合(比較例1および2)には、実施例1または5で用いたのと同じ賦活活性炭を用いても、本発明の第一態様に従う全ての物性値を満足する炭素質材料を得ることができず、得られる炭素質材料においては、耐久時間600時間における容量維持率が低く、ガス発生量、容量維持率変化率およびガス発生量変化率が高いことが確認された。
【0129】
比較例2と同様の賦活活性炭を用い、アルカリ洗浄のみ行った比較例3では、本発明の第一態様に従う全ての物性値を満足する炭素質材料を得ることができず、得られる炭素質材料においては、ガス発生量は低いものの、耐久時間600時間における容量維持率が低く、容量維持率変化率およびガス発生量変化率が高くなることが確認された。
【0130】
比較例3で得られた活性炭を窒素気流下1000℃で熱処理した比較例4では、本発明の第一態様に従う全ての物性値を満足する炭素質材料を得ることができず、得られる炭素質材料においては、耐久時間600時間におけるガス発生量が低く、ガス発生量変化率も低いものの、容量維持率が低く、容量維持率変化率が高いことが確認された。
【0131】
賦活の程度が低く、アルカリ洗浄および高温熱処理を行っていない活性炭を用いた比較例5では、本発明の第一態様に従う全ての物性値を満足する炭素質材料を得ることができず、得られる炭素質材料においては、耐久時間600時間における容量維持率が低く、ガス発生量、容量維持率変化率およびガス発生量変化率が高くなることが確認された。
【0132】
比較例2の活性炭を用いて、アルカリ洗浄は行わず、1000℃、1100℃または1200℃で熱処理した比較例6~8では、本発明の第一態様に従う全ての物性値を満足する炭素質材料を得ることができず、容量維持率、容量維持率変化率、ガス発生量、ガス発生量変化率のすべてを満足するものが得られないことが確認された。
【0133】
2.第二態様の炭素質材料についての実験例
<実施例9>
フィリピン産ココナツのヤシ殻を原料とするチャー(比表面積:370m/g)に対し、プロパン燃焼ガス+水蒸気(水蒸気分圧:25%)を用いて、850℃で一次賦活を行い、BET比表面積2117m/gの活性炭を得た。得られた活性炭に対し、水酸化ナトリウム水溶液(濃度:1mol/l、希釈液:イオン交換水)を用いて、25℃で30分間洗浄した後、残留した塩基を除去するため、イオン交換水で十分に水洗した。次いで塩酸(濃度:1mol/l、希釈液:イオン交換水)を用いて、温度100℃で30分酸洗した後、イオン交換水で十分に水洗、乾燥し、窒素ガス+水蒸気(水蒸気分圧3%)雰囲気下、700℃で脱酸処理を実施して残留した酸を除去して、アルカリおよび酸洗浄活性炭を得た。更に得られたアルカリおよび酸洗浄活性炭を磁性ボートに入れ、窒素気流下、1220℃(昇温速度:室温~600℃;10℃/分、600~900℃;5℃/分、900℃~1100℃;2.5℃/分、1100~1220℃;2℃/分、1220℃で30分間保持)で熱処理した後、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料について、BET比表面積、二酸化炭素吸着細孔容積(C)、粉体導電率、表面官能基量、水素含有量、4nm以上細孔容積(BJH)およびアルカリ金属量を測定・算出した。結果を表4に示す。
【0134】
<実施例10>
実施例9で得られたアルカリおよび酸洗浄活性炭を磁性ボートに入れ蓋をし、窒素気流下、1220℃(昇温速度:室温~600℃;10℃/分、600~900℃;5℃/分、900℃~1100℃;2.5℃/分、1100~1220℃;2℃/分、1220℃で30分間保持)で熱処理した後、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例9と同様に測定・算出した。結果を表4に示す。
【0135】
<実施例11>
実施例9で得られたアルカリおよび酸洗浄活性炭を磁性ボートに入れ、窒素気流下、1220℃(昇温速度:室温~600℃;10℃/分、600~900℃;5℃/分、900℃~1100℃;2.5℃/分、1100~1220℃;2℃/分、1220℃で60分間保持)で熱処理した後、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例9と同様に測定・算出した。結果を表4に示す。
【0136】
<実施例12>
実施例9で得られたアルカリおよび酸洗浄活性炭を磁性ボートに入れ蓋をし、窒素気流下、1220℃(昇温速度:室温~600℃;10℃/分、600~900℃;5℃/分、900℃~1100℃;2.5℃/分、1100~1220℃;2℃/分、1220℃で60分間保持)で熱処理した後、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例9と同様に測定・算出した。結果を表4に示す。
【0137】
<実施例13>
フィリピン産ココナツのヤシ殻を原料とするチャー(比表面積:370m/g)に対し、プロパン燃焼ガス+水蒸気(水蒸気分圧:25%)を用いて、850℃で一次賦活を行い、BET比表面積が1185m/gの一次賦活活性炭を得た。その後、塩酸(濃度:0.5N、希釈液:イオン交換水)を用いて、温度85℃で30分洗浄した後、残留した酸を除去するため、イオン交換水で十分に水洗、乾燥して、カリウム元素含有量が150ppmの一次洗浄活性炭を得た。この一次洗浄活性炭を、プロパン燃焼ガス(水蒸気分圧15%)を用い、950℃で二次賦活し、BET比表面積1912m/gの二次賦活活性炭を得た。得られた二次賦活活性炭に対し、水酸化ナトリウム水溶液(濃度:1mol/l、希釈液:イオン交換水)を用いて、100℃で30分間アルカリ洗浄した後、残留した塩基を除去するため、イオン交換水で十分に水洗した。次いで塩酸(濃度:1mol/l、希釈液:イオン交換水)を用いて、温度100℃で30分酸洗した後、イオン交換水で十分に水洗、乾燥した後、窒素+水蒸気(水蒸気分圧3%)気流下700℃で60分間脱酸処理を実施して残留した酸を除去して、アルカリおよび酸洗浄活性炭を得た。更に得られたアルカリおよび酸洗浄活性炭を磁性ボートに入れ、窒素気流、1100℃(昇温速度:室温~600℃;10℃/分、600~900℃;5℃/分、900℃~1100℃;2.5℃/分、1100℃で60分間保持)で熱処理した後、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例9と同様に測定・算出した。結果を表4に示す。
【0138】
<実施例14>
実施例13で得られたアルカリおよび酸洗浄活性炭を磁性ボートに入れ、窒素気流下、1200℃(昇温速度:室温~600℃;10℃/分、600~900℃;5℃/分、900℃~1200℃;2.5℃/分、1200℃で60分間保持)で熱処理した後、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例9と同様に測定・算出した。結果を表4に示す。
【0139】
<実施例15>
フィリピン産ココナツのヤシ殻を原料とするチャー(比表面積:370m/g)に対し、プロパン燃焼ガス+水蒸気(水蒸気分圧:25%)を用いて、850℃で一次賦活を行い、BET比表面積2117m/gの活性炭を得た。得られた活性炭に対し、水酸化ナトリウム水溶液(濃度:1mol/l、希釈液:イオン交換水)を用いて、100℃で30分間アルカリ洗浄した後、残留した塩基を除去するため、イオン交換水で十分に水洗した。次いで塩酸(濃度:1mol/l、希釈液:イオン交換水)を用いて、温度100℃で30分酸洗した後、イオン交換水で十分に水洗、乾燥した後、窒素+水蒸気(水蒸気分圧3%)気流下700℃で60分間脱酸処理を実施して残留した酸を除去して、アルカリおよび酸洗浄活性炭を得た。更に、得られたアルカリおよび酸洗浄活性炭を磁性ボートに入れ、窒素気流下、1150℃(昇温速度:室温~600℃;10℃/分、600~900℃;5℃/分、900℃~1100℃;2.5℃/分、1100~1150℃;2℃/分、1150℃で60分間保持)で熱処理した後、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例9と同様に測定・算出した。結果を表4に示す。
【0140】
<実施例16>
実施例15で得られたアルカリおよび酸洗浄活性炭を磁性ボートに入れ、窒素気流下、1200℃(昇温速度:室温~600℃;10℃/分、600~900℃;5℃/分、900℃~1100℃;2.5℃/分、1100~1200℃;2℃/分、1200℃で60分間保持)で熱処理した後、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例9と同様に測定・算出した。結果を表4に示す。
【0141】
<比較例9>
フィリピン産ココナツのヤシ殻を原料とするチャー(比表面積:370m/g)に対し、プロパン燃焼ガス+水蒸気(水蒸気分圧:25%)を用いて、850℃で一次賦活を行い、BET比表面積2117m/gの活性炭を得た。得られた活性炭に対し、塩酸(濃度:1mol/l、希釈液:イオン交換水)を用いて、温度100℃で30分酸洗した後、イオン交換水で十分に水洗、乾燥し、窒素ガス+水蒸気(水蒸気分圧3%)雰囲気下、700℃で脱酸処理を実施して残留した酸を除去した後、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例9と同様に測定・算出した。結果を表4に示す。
【0142】
<比較例10>
フィリピン産ココナツのヤシ殻を原料とするチャー(比表面積:370m/g)に対し、プロパン燃焼ガス+水蒸気(水蒸気分圧:25%)を用いて、850℃で一次賦活を行い、BET比表面積が1185m/gの一次賦活活性炭を得た。その後、塩酸(濃度:0.5N、希釈液:イオン交換水)を用いて、温度85℃で30分洗浄した後、残留した酸を除去するため、イオン交換水で十分に水洗、乾燥して、カリウム元素含有量が150ppmの一次洗浄活性炭を得た。この一次洗浄活性炭を、プロパン燃焼ガス(水蒸気分圧15%)を用い、950℃で二次賦活し、BET比表面積1912m/gの二次賦活活性炭を得た。得られた二次賦活活性炭に対し、塩酸(濃度:1mol/l、希釈液:イオン交換水)を用いて、温度100℃で30分酸洗した後、イオン交換水で十分に水洗、乾燥した後、窒素+水蒸気(水蒸気分圧3%)気流下700℃で60分間脱酸処理を実施して残留した酸を除去した後、粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例9と同様に測定・算出した。結果を表4に示す。
【0143】
<比較例11>
フィリピン産ココナツのヤシ殻を原料とするチャー(比表面積:370m/g)に対し、プロパン燃焼ガス+水蒸気(水蒸気分圧:25%)を用いて、850℃で一次賦活を行い、BET比表面積が1185m/gの一次賦活活性炭を得た。その後、塩酸(濃度:0.5N、希釈液:イオン交換水)を用いて、温度85℃で30分洗浄した後、残留した酸を除去するため、イオン交換水で十分に水洗、乾燥して、カリウム元素含有量が150ppmの一次洗浄活性炭を得た。この一次洗浄活性炭を、プロパン燃焼ガス(水蒸気分圧15%)を用い、950℃で二次賦活し、BET比表面積1912m/gの二次賦活活性炭を得た。得られた二次賦活活性炭に対し、水酸化ナトリウム水溶液(濃度:1mol/l、希釈液:イオン交換水)を用いて、100℃で30分間アルカリ洗浄した後、残留した塩基を除去するため、イオン交換水で十分に水洗した。次いで塩酸(濃度:1mol/l、希釈液:イオン交換水)を用いて、温度100℃で30分酸洗した後、イオン交換水で十分に水洗、乾燥した後、窒素+水蒸気(水蒸気分圧3%)気流下700℃で60分間脱酸処理を実施して残留した酸を除去して、アルカリおよび酸洗浄活性炭を得た。これを、粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例9と同様に測定・算出した。結果を表4に示す。
【0144】
<比較例12>
比較例11で得られたアルカリおよび酸洗浄活性炭を窒素気流下、1000℃(昇温速度:室温~600℃;10℃/分、600~900℃;5℃/分、900℃~1000℃;2.5℃/分、1000℃で60分間保持)で熱処理した後、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例9と同様に測定・算出した。結果を表4に示す。
【0145】
<比較例13>
比較例9と同様のチャーに対し、プロパン燃焼ガス+水蒸気(水蒸気分圧:25%)を用いて、900℃で賦活を行い、比表面積が1886m/gの活性炭を得た。得られた活性炭を、塩酸(濃度:1mol/l、希釈液:イオン交換水)を用いて、温度100℃で30分酸洗した後、イオン交換水で十分に水洗、乾燥した後、窒素ガス+水蒸気(水蒸気分圧3%)雰囲気下、700℃で脱酸処理を実施して残留した酸を除去して、酸洗浄活性炭を得た。そして、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例9と同様に測定・算出した。結果を表4に示す。
【0146】
<比較例14>
比較例9と同様のチャーに対し、プロパン燃焼ガス+水蒸気(水蒸気分圧:25%)を用いて、850℃で一次賦活を行い、BET比表面積が1185m/gの一次賦活活性炭を得た。その後、塩酸(濃度:0.5N、希釈液:イオン交換水)を用いて、温度85℃で30分洗浄した後、残留した酸を除去するため、イオン交換水で十分に水洗、乾燥して、カリウム元素含有量が150ppmの一次洗浄活性炭を得た。この一次洗浄活性炭を、プロパン燃焼ガス(水蒸気分圧15%)を用い、950℃で二次賦活し、BET比表面積2117m/gの二次賦活活性炭を得た。得られた活性炭に対し、塩酸(濃度:1mol/l、希釈液:イオン交換水)を用いて、温度100℃で30分酸洗した後、イオン交換水で十分に水洗、乾燥した後、窒素ガス+水蒸気(水蒸気分圧3%)雰囲気下、700℃で脱酸処理を実施して残留した酸を除去して、酸洗浄活性炭を得た。得られた酸洗浄活性炭を磁性ボートに入れ、窒素気流下、1100℃(昇温速度:室温~600℃;10℃/分、600~900℃;5℃/分、900℃~1100℃;2.5℃/分、1100℃で60分間保持)で熱処理した後、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例9と同様に測定・算出した。結果を表4に示す。
【0147】
<比較例15>
比較例14で得られた酸洗浄活性炭を磁性ボートに入れ、窒素気流下、1200℃(昇温速度:室温~600℃;10℃/分、600~900℃;5℃/分、900℃~1200℃;2.5℃/分、1200℃で60分間保持)で熱処理した後、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例9と同様に測定・算出した。結果を表4に示す。
【0148】
【表4】
【0149】
実施例9~16および比較例9~15の炭素質材料を用いて、実施例1と同様の方法にて、試験用の電気二重層キャパシタを作製し、静電容量測定および耐久性試験、並びに、ガス発生量の測定を行い、ガス発生量変化率を算出した。結果を表5および表6に示す。
【0150】
【表5】
【0151】
【表6】
【0152】
実施例9~12、15および16においては、アルカリ洗浄と高温熱処理を組み合わせることによって比表面積、二酸化炭素吸脱着法による細孔容積、表面官能基量および水素含有量が本発明の第二態様で規定している範囲内に入り、耐久時間600時間における容量維持率が高く、かつ、ガス発生量、容量維持率変化率およびガス発生量変化率が低い電極材料となり得ることが確認された。
【0153】
2段賦活を行った活性炭にアルカリ洗浄と高温熱処理を実施した実施例13および14では、アルカリ濃度やアルカリ洗浄時の温度、高温熱処理の温度を実施例9~12より低くしても、炭素質材料の各物性値が本発明の第二態様の範囲内にあり、耐久時間600時間における容量維持率が高く、ガス発生量、容量維持率変化率およびガス発生量変化率が低い電極材料となり得ることが確認された。
【0154】
アルカリ洗浄および高温熱処理を施さない場合(比較例9および10)には、実施例9または13で用いたのと同じ賦活活性炭を用いても、本発明の第二態様に従う全ての物性値を満足する炭素質材料を得ることができず、得られる炭素質材料においては、耐久時間600時間における容量維持率が低く、ガス発生量、容量維持率変化率およびガス発生量変化率が高いことが確認された。
【0155】
比較例10と同様の賦活活性炭を用い、アルカリ洗浄のみ行った比較例11では、本発明の第二態様に従う全ての物性値を満足する炭素質材料を得ることができず、得られる炭素質材料においては、ガス発生量は低いものの、耐久時間600時間における容量維持率が低く、容量維持率変化率およびガス発生量変化率が高くなることが確認された。
【0156】
比較例11で得られた活性炭を窒素気流下1000℃で熱処理した比較例12では、本発明の第二態様に従う全ての物性値を満足する炭素質材料を得ることができず、得られる炭素質材料においては、耐久時間600時間におけるガス発生量が低く、ガス発生量変化率も低いものの、容量維持率が低く、容量維持率変化率が高いことが確認された。
【0157】
賦活の程度が低く、アルカリ洗浄および高温熱処理を行っていない活性炭を用いた比較例13では、本発明の第二態様に従う全ての物性値を満足する炭素質材料を得ることができず、得られる炭素質材料においては、耐久時間600時間における容量維持率が低く、ガス発生量、容量維持率変化率およびガス発生量変化率が高くなることが確認された。
【0158】
比較例10の活性炭を用いて、アルカリ洗浄は行わず、1100℃または1200℃で熱処理した比較例14および15では、本発明の第二態様に従う全ての物性値を満足する炭素質材料を得ることができず、容量維持率、容量維持率変化率、ガス発生量、ガス発生量変化率のすべてを満足するものが得られないことが確認された。
【0159】
3.第三態様の炭素質材料についての実験例
<実施例17>
フィリピン産ココナツのヤシ殻を原料とするチャー(比表面積:370m/g)に対し、プロパン燃焼ガス+水蒸気(水蒸気分圧:25%)を用いて、850℃で一次賦活を行い、BET比表面積2117m/gの活性炭を得た。得られた活性炭に対し、水酸化ナトリウム水溶液(濃度:1mol/l、希釈液:イオン交換水)を用いて、25℃で30分間洗浄した後、残留した塩基を除去するため、イオン交換水で十分に水洗した。次いで塩酸(濃度:1mol/l、希釈液:イオン交換水)を用いて、温度100℃で30分酸洗した後、イオン交換水で十分に水洗、乾燥し、窒素ガス+水蒸気(水蒸気分圧3%)雰囲気下、700℃で脱酸処理を実施して残留した酸を除去して、アルカリおよび酸洗浄活性炭を得た。更に得られたアルカリおよび酸洗浄活性炭を磁性ボートに入れ、窒素気流下、1220℃(昇温速度:室温~600℃;10℃/分、600~900℃;5℃/分、900℃~1100℃;2.5℃/分、1100~1220℃;2℃/分、1220℃で30分間保持)で熱処理した後、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料について、水蒸気吸着法細孔容積(A)、(B)および(A)に対する(B)の割合、粉体導電率、表面官能基量、水素含有量、4nm以上細孔容積(BJH)およびアルカリ金属量を測定・算出した。結果を表7に示す。
【0160】
<実施例18>
実施例17で得られたアルカリおよび酸洗浄活性炭を磁性ボートに入れ蓋をし、窒素気流下、1220℃(昇温速度:室温~600℃;10℃/分、600~900℃;5℃/分、900℃~1100℃;2.5℃/分、1100~1220℃;2℃/分、1220℃で30分間保持)で熱処理した後、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例17と同様に測定・算出した。結果を表7に示す。
【0161】
<実施例19>
実施例17で得られたアルカリおよび酸洗浄活性炭を磁性ボートに入れ、窒素気流下、1220℃(昇温速度:室温~600℃;10℃/分、600~900℃;5℃/分、900℃~1100℃;2.5℃/分、1100~1220℃;2℃/分、1220℃で60分間保持)で熱処理した後、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例17と同様に測定・算出した。結果を表7に示す。
【0162】
<実施例20>
実施例17で得られたアルカリおよび酸洗浄活性炭を磁性ボートに入れ蓋をし、窒素気流下、1220℃(昇温速度:室温~600℃;10℃/分、600~900℃;5℃/分、900℃~1100℃;2.5℃/分、1100~1220℃;2℃/分、1220℃で60分間保持)で熱処理した後、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例17と同様に測定・算出した。結果を表7に示す。
【0163】
<実施例21>
フィリピン産ココナツのヤシ殻を原料とするチャー(比表面積:370m/g)に対し、プロパン燃焼ガス+水蒸気(水蒸気分圧:25%)を用いて、850℃で一次賦活を行い、BET比表面積が1185m/gの一次賦活活性炭を得た。その後、塩酸(濃度:0.5N、希釈液:イオン交換水)を用いて、温度85℃で30分洗浄した後、残留した酸を除去するため、イオン交換水で十分に水洗、乾燥して、カリウム元素含有量が150ppmの一次洗浄活性炭を得た。この一次洗浄活性炭を、プロパン燃焼ガス(水蒸気分圧15%)を用い、950℃で二次賦活し、BET比表面積1912m/gの二次賦活活性炭を得た。得られた二次賦活活性炭に対し、水酸化ナトリウム水溶液(濃度:1mol/l、希釈液:イオン交換水)を用いて、100℃で30分間アルカリ洗浄した後、残留した塩基を除去するため、イオン交換水で十分に水洗した。次いで塩酸(濃度:1mol/l、希釈液:イオン交換水)を用いて、温度100℃で30分酸洗した後、イオン交換水で十分に水洗、乾燥した後、窒素+水蒸気(水蒸気分圧3%)気流下700℃で60分間脱酸処理を実施して残留した酸を除去して、アルカリおよび酸洗浄活性炭を得た。更に得られたアルカリおよび酸洗浄活性炭を磁性ボートに入れ、窒素気流下、1100℃(昇温速度:室温~600℃;10℃/分、600~900℃;5℃/分、900℃~1100℃;2.5℃/分、1100℃で60分間保持)で熱処理した後、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例17と同様に測定・算出した。結果を表7に示す。
【0164】
<実施例22>
実施例21で得られたアルカリおよび酸洗浄活性炭を磁性ボートに入れ、窒素気流下、1200℃(昇温速度:室温~600℃;10℃/分、600~900℃;5℃/分、900℃~1200℃;2.5℃/分、1200℃で60分間保持)で熱処理した後、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例17と同様に測定・算出した。結果を表7に示す。
【0165】
<実施例23>
フィリピン産ココナツのヤシ殻を原料とするチャー(比表面積:370m/g)に対し、プロパン燃焼ガス+水蒸気(水蒸気分圧:25%)を用いて、850℃で一次賦活を行い、BET比表面積2117m/gの活性炭を得た。得られた活性炭に対し、水酸化ナトリウム水溶液(濃度:1mol/l、希釈液:イオン交換水)を用いて、100℃で30分間アルカリ洗浄した後、残留した塩基を除去するため、イオン交換水で十分に水洗した。次いで塩酸(濃度:1mol/l、希釈液:イオン交換水)を用いて、温度100℃で30分酸洗した後、イオン交換水で十分に水洗、乾燥した後、窒素+水蒸気(水蒸気分圧3%)気流下700℃で60分間脱酸処理を実施して残留した酸を除去して、アルカリおよび酸洗浄活性炭を得た。更に、得られたアルカリおよび酸洗浄活性炭を磁性ボートに入れ、窒素気流下、1150℃(昇温速度:室温~600℃;10℃/分、600~900℃;5℃/分、900℃~1100℃;2.5℃/分、1100~1150℃;2℃/分、1150℃で60分間保持)で熱処理した後、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例17と同様に測定・算出した。結果を表7に示す。
【0166】
<実施例24>
実施例23で得られたアルカリおよび酸洗浄活性炭を磁性ボートに入れ、窒素気流下、1200℃(昇温速度:室温~600℃;10℃/分、600~900℃;5℃/分、900℃~1100℃;2.5℃/分、1100~1200℃;2℃/分、1200℃で60分間保持)で熱処理した後、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例17と同様に測定・算出した。結果を表7に示す。
【0167】
<比較例16>
フィリピン産ココナツのヤシ殻を原料とするチャー(比表面積:370m/g)に対し、プロパン燃焼ガス+水蒸気(水蒸気分圧:25%)を用いて、850℃で一次賦活を行い、BET比表面積2117m/gの活性炭を得た。得られた活性炭に対し、塩酸(濃度:1mol/l、希釈液:イオン交換水)を用いて、温度100℃で30分酸洗した後、イオン交換水で十分に水洗、乾燥し、窒素ガス+水蒸気(水蒸気分圧3%)雰囲気下、700℃で脱酸処理を実施して残留した酸を除去した後、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例17と同様に測定・算出した。結果を表7に示す。
【0168】
<比較例17>
フィリピン産ココナツのヤシ殻を原料とするチャー(比表面積:370m/g)に対し、プロパン燃焼ガス+水蒸気(水蒸気分圧:25%)を用いて、850℃で一次賦活を行い、BET比表面積が1185m/gの一次賦活活性炭を得た。その後、塩酸(濃度:0.5N、希釈液:イオン交換水)を用いて、温度85℃で30分洗浄した後、残留した酸を除去するため、イオン交換水で十分に水洗、乾燥して、カリウム元素含有量が150ppmの一次洗浄活性炭を得た。この一次洗浄活性炭を、プロパン燃焼ガス(水蒸気分圧15%)を用い、950℃で二次賦活し、BET比表面積1912m/gの二次賦活活性炭を得た。得られた二次賦活活性炭に対し、塩酸(濃度:1mol/l、希釈液:イオン交換水)を用いて、温度100℃で30分酸洗した後、イオン交換水で十分に水洗、乾燥した後、窒素+水蒸気(水蒸気分圧3%)気流下700℃で60分間脱酸処理を実施して残留した酸を除去した後、粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例17と同様に測定・算出した。結果を表7に示す。
【0169】
<比較例18>
フィリピン産ココナツのヤシ殻を原料とするチャー(比表面積:370m/g)に対し、プロパン燃焼ガス+水蒸気(水蒸気分圧:25%)を用いて、850℃で一次賦活を行い、BET比表面積が1185m/gの一次賦活活性炭を得た。その後、塩酸(濃度:0.5N、希釈液:イオン交換水)を用いて、温度85℃で30分洗浄した後、残留した酸を除去するため、イオン交換水で十分に水洗、乾燥して、カリウム元素含有量が150ppmの一次洗浄活性炭を得た。この一次洗浄活性炭を、プロパン燃焼ガス(水蒸気分圧15%)を用い、950℃で二次賦活し、BET比表面積1912m/gの二次賦活活性炭を得た。得られた二次賦活活性炭に対し、水酸化ナトリウム水溶液(濃度:1mol/l、希釈液:イオン交換水)を用いて、100℃で30分間アルカリ洗浄した後、残留した塩基を除去するため、イオン交換水で十分に水洗した。次いで塩酸(濃度:1mol/l、希釈液:イオン交換水)を用いて、温度100℃で30分酸洗した後、イオン交換水で十分に水洗、乾燥した後、窒素+水蒸気(水蒸気分圧3%)気流下700℃で60分間脱酸処理を実施して残留した酸を除去して、アルカリおよび酸洗浄活性炭を得た。これを、粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例17と同様に測定・算出した。結果を表7に示す。
【0170】
<比較例19>
比較例18で得られたアルカリおよび酸洗浄活性炭を窒素気流下、1000℃(昇温速度:室温~600℃;10℃/分、600~900℃;5℃/分、900℃~1000℃;2.5℃/分、1000℃で60分間保持)で熱処理した後、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例17と同様に測定・算出した。結果を表7に示す。
【0171】
<比較例20>
比較例16と同様のチャーに対し、プロパン燃焼ガス+水蒸気(水蒸気分圧:25%)を用いて、900℃で賦活を行い、BET比表面積が1886m/gの活性炭を得た。得られた活性炭を、塩酸(濃度:1mol/l、希釈液:イオン交換水)を用いて、温度100℃で30分酸洗した後、イオン交換水で十分に水洗、乾燥した後、窒素ガス+水蒸気(水蒸気分圧3%)雰囲気下、700℃で脱酸処理を実施して残留した酸を除去して、酸洗浄活性炭を得た。そして、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例17と同様に測定・算出した。結果を表7に示す。
【0172】
<比較例21>
比較例16と同様のチャーに対し、プロパン燃焼ガス+水蒸気(水蒸気分圧:25%)を用いて、850℃で一次賦活を行い、BET比表面積が1185m/gの一次賦活活性炭を得た。その後、塩酸(濃度:0.5N、希釈液:イオン交換水)を用いて、温度85℃で30分洗浄した後、残留した酸を除去するため、イオン交換水で十分に水洗、乾燥して、カリウム元素含有量が150ppmの一次洗浄活性炭を得た。この一次洗浄活性炭を、プロパン燃焼ガス(水蒸気分圧15%)を用い、950℃で二次賦活し、BET比表面積2117m/gの二次賦活活性炭を得た。得られた活性炭に対し、塩酸(濃度:1mol/l、希釈液:イオン交換水)を用いて、温度100℃で30分酸洗した後、イオン交換水で十分に水洗、乾燥した後、窒素ガス+水蒸気(水蒸気分圧3%)雰囲気下、700℃で脱酸処理を実施して残留した酸を除去して、酸洗浄活性炭を得た。得られた酸洗浄活性炭を磁性ボートに入れ、窒素気流下、1100℃(昇温速度:室温~600℃;10℃/分、600~900℃;5℃/分、900℃~1100℃;2.5℃/分、1100℃で60分間保持)で熱処理した後、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例17と同様に測定・算出した。結果を表7に示す。
【0173】
<比較例22>
比較例21で得られた酸洗浄活性炭を磁性ボートに入れ、窒素気流下、1200℃(昇温速度:室温~600℃;10℃/分、600~900℃;5℃/分、900℃~1200℃;2.5℃/分、1200℃で60分間保持)で熱処理した後、平均粒子径が6μmになるように微粉砕してキャパシタ電極用の炭素質材料を得た。得られた炭素質材料の物性を実施例17と同様に測定・算出した。結果を表7に示す。
【0174】
【表7】
【0175】
実施例17~24および比較例16~22の炭素質材料を用いて、実施例1と同様の方法にて、試験用の電気二重層キャパシタを作製し、静電容量測定および耐久性試験、並びに、ガス発生量の測定を行い、ガス発生量変化率を算出した。結果を表8および表9に示す。
【0176】
【表8】
【0177】
【表9】
【0178】
実施例17~20、23および24においては、アルカリ洗浄と高温熱処理を組み合わせることによって比表面積、水蒸気吸着法による細孔容積(A)、細孔容積(B)および細孔容積(A)に対する(B)の割合が本発明の第三態様で規定している範囲内に入り、耐久時間600時間における容量維持率が高く、かつ、ガス発生量、容量維持率変化率およびガス発生量変化率が低い電極材料となり得ることが確認された。
【0179】
2段賦活を行った活性炭にアルカリ洗浄と高温熱処理を実施した実施例21および22では、アルカリ濃度やアルカリ洗浄時の温度、高温熱処理の温度を実施例17~20より低くしても、炭素質材料の物性値が本発明の第三態様の範囲内にあり、耐久時間600時間における容量維持率が高く、ガス発生量、容量維持率変化率およびガス発生量変化率が低い電極材料となり得ることが確認された。
【0180】
アルカリ洗浄および高温熱処理を施さない場合(比較例16および17)には、実施例17または21で用いたのと同じ賦活活性炭を用いても、本発明の第三態様に従う全ての物性値を満足する炭素質材料を得ることができず、得られる炭素質材料においては、耐久時間600時間における容量維持率が低く、ガス発生量、容量維持率変化率およびガス発生量変化率が高いことが確認された。
【0181】
比較例17と同様の賦活活性炭を用い、アルカリ洗浄のみ行った比較例18では、本発明の第三態様に従う全ての物性値を満足する炭素質材料を得ることができず、得られる炭素質材料においては、ガス発生量は低いものの、耐久時間600時間における容量維持率が低く、容量維持率変化率およびガス発生量変化率が高くなることが確認された。
【0182】
比較例18で得られた活性炭を窒素気流下1000℃で熱処理した比較例19では、本発明の第三態様に従う全ての物性値を満足する炭素質材料を得ることができず、得られる炭素質材料においては、耐久時間600時間におけるガス発生量が低く、ガス発生量変化率も低いものの、容量維持率が低く、容量維持率変化率が高いことが確認された。
【0183】
賦活の程度が低く、アルカリ洗浄および高温熱処理を行っていない活性炭を用いた比較例20では、本発明の第三態様に従う全ての物性値を満足する炭素質材料を得ることができず、得られる炭素質材料においては、耐久時間600時間における容量維持率が低く、ガス発生量、容量維持率変化率およびガス発生量変化率が高くなることが確認された。
【0184】
比較例17の活性炭を用いて、アルカリ洗浄は行わず、1100℃または1200℃で熱処理した比較例21および22では、本発明の第三態様に従う全ての物性値を満足する炭素質材料を得ることができず、容量維持率、容量維持率変化率、ガス発生量、ガス発生量変化率のすべてを満足するものが得られないことが確認された。
【符号の説明】
【0185】
1 電極組成物
2 導電性接着剤
3 エッチングアルミニウム箔
4 タブ
5 シーラント
6 分極性電極
7 袋状外装シート
8 電気二重層キャパシタ
(1) 熱圧着された一辺
(2) タブが接する一辺
(3) 袋状外装シートの残る一辺
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7