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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
B41J2/165 301
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020214404
(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022100442
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 洋平
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-40975(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0060711(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2001/0024216(US,A1)
【文献】特開2014-172383(JP,A)
【文献】特開2013-32025(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2004-0006066(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出面を保持する液体吐出面保持部材を有する液体吐出ユニットと、
前記液体吐出面に接触して前記液体吐出面を清掃する清掃部材を有する清掃装置と
を備えた液体吐出装置において、
前記清掃装置は、
ベース部材と、
前記ベース部材を昇降可能に保持する昇降手段と、
前記清掃部材を備えるとともに、前記ベース部材に対して上下動可能な清掃部材支持部材と、
前記清掃部材支持部材を前記ベース部材から離す方向へ付勢する第1の弾性部材と、
前記液体吐出面保持部材と前記清掃部材支持部材との間に介在するとともに、前記ベース部材に対して上下動可能な前記清掃部材をカバーするカバー部材と、
前記カバー部材を前記ベース部材から離す方向へ付勢する第2の弾性部材と、
前記清掃部材支持部材と前記カバー部材との間に設置し、前記カバー部材に対する前記清掃部材支持部材の位置を調整する調整手段と
を有することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記調整手段は、前記カバー部材または前記清掃部材支持部材に設けた調整ネジを含み、前記調整ネジは、前記カバー部材または前記清掃部材支持部材に対して突出量の調整が可能であることを特徴とする請求項1記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記カバー部材は、前記ベース部材に対する前記カバー部材の上下動を案内する支持ロッドを有し、前記支持ロッドを、前記ベース部材に設けた、前記支持ロッドの径よりも大きい開口部に挿通することを特徴とする請求項1または2記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記清掃部材支持部材は、前記ベース部材に対する前記清掃部材支持部材の上下動を案内する支持ロッドを有し、前記支持ロッドを、前記ベース部材に設けた、前記支持ロッドの径よりも大きい開口部に挿通することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記液体吐出面保持部材は、前記液体吐出面に対して前記液体吐出面保持部材の奥側の厚さが、手前側の厚さよりも厚いことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、吐出ヘッド421のヘッド下面425に接する清掃ユニット61と、清掃ユニット61を清掃方向に移動するユニット移動機構とを備えたインクジェットプリンタを開示している。清掃ユニット61は、ベース部611と、ベース部611から上方に突出する洗浄液吐出部612と、一対の位置決定部613とを備える。一対の位置決定部613が、洗浄液吐出部612の両側においてヘッド固定ブロック422のブロック下面426に接することにより、洗浄液吐出部612とヘッド下面425との間に、洗浄液を保持するヘッド下間隙427が維持される。一対の位置決定部613は、洗浄液吐出部612から離間しているため、ヘッド下間隙427から周囲へと広がる洗浄液等が、位置決定部613を介してブロック下面426に付着することを防止することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、清掃部材の液体吐出面に対する位置調整が容易でなく、作業者によって調整にバラツキが生じるという課題に鑑みたものであり、液体吐出面に接触する清掃部材の位置調整が容易な液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、液体吐出面を保持する液体吐出面保持部材を有する液体吐出ユニットと、前記液体吐出面に接触して前記液体吐出面を清掃する清掃部材を有する清掃装置とを備えた液体吐出装置において、前記清掃装置は、ベース部材と、前記ベース部材を昇降可能に保持する昇降手段と、前記清掃部材を備えるとともに、前記ベース部材に対して上下動可能な清掃部材支持部材と、前記清掃部材支持部材を前記ベース部材から離す方向へ付勢する第1の弾性部材と、前記液体吐出面保持部材と前記清掃部材支持部材との間に介在するとともに、前記ベース部材に対して上下動可能な前記清掃部材をカバーするカバー部材と、前記カバー部材を前記ベース部材から離す方向へ付勢する第2の弾性部材と、前記清掃部材支持部材と前記カバー部材との間に設置し、前記カバー部材に対する前記清掃部材支持部材の位置を調整する調整手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、液体吐出面に接触する清掃部材の位置調整が容易な液体吐出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の液体吐出装置の一例を示す全体斜視図。
図2】ワイプ機構の概略外観図。
図3】ワイプ機構のワイパと液体吐出ヘッドとの関係を示した模式図。
図4】ワイプ機構の動作説明図。
図5】ワイパの高さ調整の説明図。
図6】変形例の説明図。
図7】調整ネジ周りの構成説明図。
図8】ガイドブッシュの構成説明図。
図9】インク垂れ防止の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
【0008】
図1は、液体吐出装置の一例としてのインクジェット記録装置の全体構成を示す斜視図である。
【0009】
インクジェット記録装置1は、キャリッジ2と、記録媒体を載置するステージ3とを備える。キャリッジ2は、複数の液体吐出ヘッドを備えたインクジェット方式のキャリッジである。液体吐出ヘッドは、それぞれ複数のノズルを備えたノズル面を有しており、キャリッジ2は、このノズル面がステージ3の上面に対向するように液体吐出ヘッドを保持している。
【0010】
また、本例では、使用する液体が紫外線硬化性を有する液体のため、キャリッジ2の両側には紫外線を照射する光源である照射ユニット4a、4bを備えている。照射ユニット4a、4bは、液体吐出ヘッドのノズルから吐出した液体が硬化する波長の光を照射する。左右の側板5a、5bは、ガイドロッド6を支持している。ガイドロッド6は、キャリッジ2をX方向(主走査方向)へ移動可能に保持している。
【0011】
なお、本発明は、紫外線硬化性を有する液体を用いる液体吐出装置に限るものではない。紫外線硬化性を有しない液体を用いる液体吐出装置の場合は、照射ユニット4a、4bは省略してよい。
【0012】
また、インクジェット記録装置1は、ステージ3の上面(記録媒体の載置面)から外れた位置にメンテナンス装置7を備えている。
【0013】
メンテナンス装置7は、パージ受け機構71、ワイプ機構72およびキャップ機構73等を備え、メンテナンス装置7上にキャリッジ2が位置した状態で液体吐出ヘッドに対してメンテナンスを実施する。例えば、パージ受け機構71では液体吐出ヘッドの空吐出を実行する。ワイプ機構72では液体吐出ヘッドの液体吐出面をワイパなどの清掃部材で清掃する。キャップ機構73では液体吐出ヘッドのノズル内に残留したインクなどを吸い出す。
【0014】
また、キャリッジ2、照射ユニット4a、4b、ガイドロッド6、側板5a、5bおよびメンテナンス装置7は、これらが一体となってステージ3の下部に設けたガイドレール8に沿ってY方向(副走査方向)に移動する。さらに、キャリッジ2および照射ユニット4a、4bは、Z方向(上下方向)にも移動可能となっている。
【0015】
上記の構成により、インクジェット記録装置1は、ステージ3上に載置した記録媒体に対してキャリッジ2および照射ユニット4a、4bをX-Y方向に動かし、記録媒体に画像などを記録する。ここで、キャリッジ2は液体吐出ユニットの一例であり、ワイプ機構72は清掃装置の一例である。以下、ワイプ機構72について詳細に説明する。
【0016】
図2は、ワイプ機構の一例を示した概略外観図である。
【0017】
ワイプ機構72は、ハウジング721と、ハウジング721の上面から突出したワイパ722a、722b、722cと、ワイパ722a、722b、722cを支持したワイパ支持板723を備える。ここで、ワイパ722a、722b、722cは清掃部材の一例であり、ワイパ支持板723は清掃部材支持部材の一例である。なお、以下の説明において、これら複数のワイパを総称する場合は、ワイパ722と記す。ワイパ支持板723は、正転/逆転の切り換えが可能な駆動ベルト724と連結しており、駆動ベルト724の回転方向を切り換えることにより、ワイパ722はY方向正側およびY方向負側へ移動する。
【0018】
また、ハウジング721は、昇降装置725に連結しており、昇降装置725の駆動により、ハウジング721はZ方向正側およびZ方向負側へ移動する。昇降装置725の昇降機構は、スクリューシャフトを用いる構成、偏心カムを用いる構成、リンク機構を用いる構成等、種々の周知技術で構成することができる。ここで、昇降装置725は昇降手段の一例である。
【0019】
以上の構成により、液体吐出ヘッドのノズル面を清掃する場合は、昇降装置725によりハウジング721をZ方向負側へ動かし、ワイパ722を液体吐出ヘッドに近づける。次に駆動ベルト724によりワイパ722をY方向負側へ動かし、ワイパ722により液体吐出ヘッドのノズル面を拭き取り清掃する。
【0020】
図3は、ワイプ機構のワイパと液体吐出ヘッドとの関係を示した模式図である。
【0021】
キャリッジ2は、4個のヘッドモジュール91、92、93、94を備える。各ヘッドモジュール91、92、93、94は、それぞれ3個の液体吐出ヘッドで構成している。例えばヘッドモジュール91は、液体吐出ヘッド91a、液体吐出ヘッド91bおよび液体吐出ヘッド91cの3個の液体吐出ヘッドを段ちがい状に配置して構成している。各液体吐出ヘッド91a~94cは、インクを吐出するノズル902を複数備えたノズル面901を有し、複数のノズル902はX方向(主走査方向)に4列のノズル列を形成している。ここで、ノズル902は液体吐出口の一例であり、ノズル面901は液体吐出面の一例である。
【0022】
本例において、ヘッドモジュール91は、液体吐出ヘッド91a、91b、91cすべてからホワイトインクを吐出する。ヘッドモジュール92は、液体吐出ヘッド92aが有する4列のノズル列のうち左2列はシアンインク、右2列はマゼンタインクを吐出する。液体吐出ヘッド92bおよび液体吐出ヘッド92cも液体吐出ヘッド92aと同じく、左2列からシアンインク、右2列からマゼンタインクを吐出する。
【0023】
また、ヘッドモジュール93は、液体吐出ヘッド93aが有する4列のノズル列のうち左2列はイエローインク、右2列はブラックインクを吐出する。
【0024】
液体吐出ヘッド93bおよび液体吐出ヘッド93cも液体吐出ヘッド93aと同じく、左2列からイエローインク、右2列からブラックインクを吐出する。さらに、ヘッドモジュール94は、液体吐出ヘッド94aおよび液体吐出ヘッド94bからクリアインクを吐出し、液体吐出ヘッド94cからはプライマ(下地剤)を吐出する。
【0025】
キャリッジ2に設けた液体吐出ヘッド91a~94cのノズル面901を清掃する場合は、図示のごとくワイプ機構72のワイパ722が各液体吐出ヘッドに対応するようにキャリッジ2の位置を制御する。その後、ワイパ722をY方向負側へ動かして各ノズル面901を拭き取り清掃する。1つ目のヘッドモジュールの清掃が完了したのであれば、キャリッジ2をX方向へ所定距離だけ動かし、次のヘッドモジュールの清掃を行う。
【0026】
なお、各液体吐出ヘッドで用いるインクの色の種類や数は、上記に限るものではない。例えば、1つの液体吐出ヘッドで3色(3種)以上のインクを吐出してもよい。あるいは、すべての液体吐出ヘッドで同色(1種)のインクを吐出してもよい。
【0027】
また、ノズル面901のノズル902の数や配置は、上記に限るものではない。本例では4列のノズル列を備えた液体吐出ヘッドを例示したが、3列以下でもよく、また5列以上でもよい。また、列をなさずに単一ノズルの液体吐出ヘッドであってもよい。
【0028】
さらに、ワイプ機構72のワイパ722の数や配置についても、上記に限るものではない。本例では3個のワイパを備えたワイプ機構を例示したが、液体吐出ヘッドのノズル配置等に基づき、適宜変更が可能である。
【0029】
図4は、ワイプ機構の動作説明図であり、図4(a)は非清掃時の状態、図4(b)は清掃時の状態を示している。
【0030】
本図では、ワイパ722a、722b、722cが、液体吐出ヘッド91a、91b、91cに対向している状態を例示する。ヘッドプレート21は、液体吐出ヘッド91a、91b、91cのノズル面が下向きになるようにして、液体吐出ヘッド91a、91b、91cを保持している。このヘッドプレート21は、例えば前述のヘッドモジュール91の一部であったり、キャリッジ2の一部からなる。ここで、ヘッドプレート21は、液体吐出面保持部材の一例である。
【0031】
ワイプ機構72は、ベースプレート728と、このベースプレート728を昇降可能に保持する昇降装置725を備える。ベースプレート728は、ワイパ722a、722b、722cを備えたワイパ支持板723を支持している。
【0032】
ワイパ支持板723は支持ロッド723aを有し、支持ロッド723aにはワイパ支持板723をベースプレート728から離す方向(Z方向負側)に付勢する圧縮バネ723bを装着している。また、支持ロッド723aの上端部は、ワイパ支持板723にネジ留め等により固定している。支持ロッド723aの下端部は、ベースプレート728に設けた貫通穴に通して、ベースプレート728の下に抜けることが可能な構成になっている。
【0033】
ヘッドプレート21とワイパ支持板723との間には、非清掃時にワイパ722を保護する目的などで設けたワイパカバー726が介在している。ベースプレート728は、このワイパカバー726も支持している。
【0034】
ワイパカバー726もワイパ支持板723と同様に支持ロッド726aを有し、支持ロッド726aにはワイパカバー726をベースプレート728から離す方向(Z方向負側)に付勢する圧縮バネ726bを装着している。また、支持ロッド726aの上端部は、ワイパカバー726にネジ留め等により固定している。支持ロッド726aの下端部は、ベースプレート728に設けた貫通穴に通して、ベースプレート728の下に抜けることが可能な構成になっている。
【0035】
さらに、ワイパカバー726は、ワイパ支持板723に向けて突出量の調整が可能な調整ネジ727a、727bを備えている。この調整ネジ727a、727bにより、図4(b)に示すようにワイパ支持板723の上昇時におけるワイパカバー726に対する位置を調整することができる。
【0036】
ここで、ヘッドプレート21は液体吐出面保持部材の一例である。また、ベースプレート728はベース部材の一例、ワイパ支持板723は清掃部材支持部材の一例、圧縮バネ723bは第1の弾性部材の一例である。また、ワイパカバー726はカバー部材の一例、圧縮バネ726bは第2の弾性部材の一例である。さらに、調整ネジ727aおよび調整ネジ727bは調整手段の一例である。
【0037】
以上の構成により、液体吐出ヘッド91a~91cのノズル面清掃時には、昇降装置725によりベースプレート728が上昇する。このベースプレート728の上昇に伴い、最初にワイパカバー726の上面がヘッドプレート21の下面に当たり、ワイパカバー726はこれ以上は上昇しなくなる。ベースプレート728がさらに上昇を続けるとワイパ支持板723が上昇し、ワイパ支持板723は、ワイパカバー726の下面から突出した調整ネジ727a、727bに突き当たるまで上昇して停止する。
【0038】
なお、ワイパ支持板723が調整ネジ727a、727bに突き当たったことの検知は、例えば昇降装置725に設けたスクリューシャフトの送り量に基づき判断している。
【0039】
従って、ヘッドプレート21に対してワイプ機構72が若干傾いていたとしても、ワイパカバー726、ワイパ支持板723の順でその傾きに倣うようになり、ワイパのノズル面に対しての平行度を維持することができる。
【0040】
なお、本例では、調整手段としての調整ネジ727a、727bをワイパカバー726に設けたが、これに限るものではない。例えば、調整ネジをワイパ支持板723側からワイパカバー726に向けて突出するように、ワイパ支持板723に設けてもよい。また、調整はネジに限らず、偏心カムのようなカム面を用いて突き当て面の位置(高さ)を調整できるようにしてもよい。
【0041】
図5は、ワイプの高さ調整の説明図である。
【0042】
ワイプ機構72は、メンテナンス装置7に実装した際に、所望の清掃を実行できるようにするため、予めワイパ722の高さ(ノズル面に対するワイパの喰い込み量L1)を適切な値にしておく必要がある。
【0043】
本例のワイプ機構72の場合は、調整ネジ727a、727bの突出量を調整することで、ワイパカバー726から突出するワイパの量(高さ)を一定値に合わせている。調整ネジは、本図では2箇所(調整ネジ727a、727b)を図示しているが、奥にも1箇所、図示しない調整ネジ727cが調整手段として存在する(調整ネジ727cは後述の図6で説明する)。すなわち、ワイパカバー726には3箇所に調整ネジを備えている。
【0044】
本ワイプ機構によれば、ワイパの突出量(高さ)を測定しながら調整ネジ727a、727b、727cにより微調整を行うことにより、ワイプ機構単体での精度を出すだけでヘッドプレート21に対しての平行度を出すことができる。そのため、ワイパの高さ調整作業において、作業者のスキル差を生じにくくすることができる。
【0045】
上述のように、本実施形態は、ノズル面901を保持するヘッドプレート21を有するキャリッジ2と、ノズル面901に接触してノズル面901を清掃するワイパ722を有するワイプ機構72とを備えたインクジェット記録装置1において、ワイプ機構72は、ベースプレート728と、ベースプレート728を昇降可能に保持する昇降装置725と、ワイパ722を備えるとともに、ベースプレート728に対して上下動可能なワイパ支持板723と、ワイパ支持板723をベースプレート728から離す方向へ付勢する圧縮バネ723bと、ヘッドプレート21とワイパ支持板723との間に介在するとともに、ベースプレート728に対して上下動可能なワイパ722をカバーするワイパカバー726と、ワイパカバー726をベースプレート728から離す方向へ付勢する圧縮バネ726bと、ワイパ支持板723とワイパカバー726との間に設置し、ワイパカバー726とワイパ支持板723の位置を調整する調整ネジ727a、727b、727cとを有する。
【0046】
これにより、ワイパカバー726およびワイパ支持板723がヘッドプレート21を基準にして倣うようになり、ワイパ722のノズル面901に対する平行度を維持することができる。その結果、ノズル面901に接触するワイパ722の位置調整が容易なインクジェット記録装置を提供することができる。
【0047】
また、上述のように、調整ネジ727a、727b、727cは、ワイパカバー726またはワイパ支持板723に対して突出量の調整が可能である。
【0048】
これにより、ワイプ機構72単体での精度を出しておくだけでヘッドプレート21に対しての平行度を出すことができる。そのため、ワイパの高さ調整作業において、作業者のスキル差を生じにくくすることができる。
【0049】
図6は、ワイプ機構の変形例を示した説明図である。なお、既に説明した部材と同一または同等の部材には同一符号を付し、説明を省略する。
【0050】
前述した3箇所の調整ネジ727a、727b、727cは図示のように配置しており、3つ目の調整ネジ727cは、調整ネジ727a、727bとは反対側(Y方向負側)に設けている。
【0051】
本変形例では、調整ネジ727a、727b、727cの先端をワイパ支持板723の上面に直接突き当てずに、ワイパ支持板723に設けたピン723dに突き当てるようにしている(詳細は後述する)。
【0052】
また、本変形例では、ベースプレート728の、ワイパ支持板723の支持ロッド723aを通す部位、およびワイパカバー726の支持ロッド726aを通す部位に、ガイドブッシュ723c、726cを設けている。
【0053】
ガイドブッシュ723c、726cを設けることにより、支持ロッド723aや支持ロッド726aに斜め方向の負荷がかかった場合の「かじり」を防ぐようにしている(詳細は後述する)。ここでの「かじり」とは、ロッドを通す部位で発生した摩擦熱によって部材同士が密着して動かなくなる状態などを指す。
【0054】
図7は、調整ネジ周りの構成説明図である。図7は、図6のA部を拡大したものであるが、他の2箇所(調整ネジ727a、727b)も同じ構成である。
【0055】
調整ネジ727cの先端は、ワイパ支持板723に設けたピン723dの上面に突き当たる。調整ネジ727cに近いワイパカバー726の側面には、調整ネジ727cに通じる横穴726dを設けている。この横穴726dにセットピース727dを挿入し、固定ネジ727eを締めてセットピース727dを調整ネジ727cへ押し付ける。これにより、微調整後の調整ネジ727cは緩みにくくなる。
【0056】
なお、セットピース727dと固定ネジ727eに代えて、横穴726dから接着剤を注入してもよい。
【0057】
図8は、ガイドブッシュの構成説明図である。
【0058】
上述のようにベースプレート728の、ワイパ支持板用の支持ロッド723aを通す部位、およびワイパカバー用の支持ロッド726aを通す部位には、ガイドブッシュ723cおよびガイドブッシュ726cを設けている。
【0059】
昇降装置725によりベースプレート728をヘッドプレート21側へ動かして行った場合、ワイパカバー726の上面はヘッドプレート21の下面に当たり、ワイパカバー726はそれ以上は上昇しなくなる。このときワイパカバー726の姿勢は、ヘッドプレート21の下面に倣う状態となる。
【0060】
従って、ヘッドプレート21が水平でなかった場合は、ワイパカバー726の下面から突出した支持ロッド726aも傾いてしまい、支持ロッド726aの軸が鉛直でなくなる。そのため、支持ロッド726aを通す部位を、支持ロッドの径に合わせた円形の貫通穴として設けた場合は、支持ロッド726aに斜め方向の負荷がかかる。
【0061】
その結果、支持ロッド726aとベースプレート728との間で「かじり」が生じ、昇降動作に支障が起き、ワイパ722を正しく突出することができなくなる。なお、この問題はワイパ支持板を支持する支持ロッド723aとベースプレート728との間でも同様に発生する。
【0062】
そこで本例では、ベースプレート728の各支持ロッド723a、726aを通す部位に、支持ロッドの径よりも大きい開口を備えたガイドブッシュ723c、726cを設けている。各ガイドブッシュ723c、726cの開口は、図示のように四角形状をしている。
【0063】
また、各支持ロッド723a、726aは、ワイパカバー726を水平にした状態において、図示のように各ガイドブッシュ723c、726cの四角形状の開口に対して一番内側の位置を取るように位置決めしている。
【0064】
これにより、ワイパカバー726が水平な状態の場合は、各ガイドブッシュ723c、726cの四角形状の開口の内側二辺の面が各支持ロッド723a、726aを位置決め保持しながら昇降移動を案内する。
【0065】
一方、ワイパカバー726が水平でなく、傾いている場合には、各ガイドブッシュ723c、726cの四角形状の開口内の隙間によって「かじり」をキャンセルすることが可能になる。
【0066】
上述のように、ワイパカバー726は、ベースプレート728に対するワイパカバー726の上下動を案内する支持ロッド726aを有し、支持ロッド726aを、ベースプレート728に設けた、支持ロッド726aの径よりも大きい開口部に挿通する。
【0067】
また、上述のように、ワイパ支持板723は、ベースプレート728に対するワイパ支持板723の上下動を案内する支持ロッド723aを有し、支持ロッド723aを、ベースプレート728に設けた、支持ロッド723aの径よりも大きい開口部に挿通する。
【0068】
これにより、ワイパカバー726またはワイパ支持板723が傾いている場合でも、かじりが生じることなく、ベースプレート728に対しワイパカバー726またはワイパ支持板723を上下にスムーズに動かすことができる。
【0069】
図9は、インク垂れ防止の説明図である。図9(a)はインク垂れ防止構成の概略側面図、図9(b)はインク垂れ防止構成の他の実施例を示した概略側面図である。
【0070】
図9(a)において、液体吐出ヘッド91aのノズル面901に対してワイパ722をY方向負側へ動かし、ワイパ722でノズル面901を拭き取る。この場合、ワイパ722がノズル面901を拭き切った瞬間にワイパ722の弾性力によってインク10が跳ねてしまう。そして、跳ねたインク10はヘッドプレート21の下面や、ワイプ機構72の奥に付着して堆積する。特にヘッドプレート21の下面に付着したインク10が堆積するとインク垂れが起き、画像記録中に記録媒体上にインク10が落下し、記録物を不良品にしてしまうことがある。
【0071】
このようなインク垂れを防ぐため、本例ではヘッドプレート21の奥側(液体吐出ヘッド91aに対してY方向負側)の厚さTを手前側(液体吐出ヘッド91aに対してY方向正側)の厚さtよりも厚くしている。
【0072】
このようにすることで、ヘッドプレート21奥側の下面の位置をワイパ722側へ下げる。なお、本例ではヘッドプレート21奥側の下面とノズル面901との距離L2を0.1mm~2.0mmとしている。これにより、液体吐出ヘッド91aの奥側に跳ねたインク10に対してもワイパ722が届くようになり、インク垂れを未然に防ぐことができる。
【0073】
また、ヘッドプレート21の奥側と手前側との厚さの差は、図9(a)のようにヘッドプレート21自体を加工して設けてよいし、また、図9(b)のように仲介部材を介して設けてもよい。
【0074】
図9(b)では、液体吐出ヘッド91とヘッドプレート21との間に仲介部材としてのブラケット211を用いている。すなわち、前述の奥側と手前側との厚さの差をブラケット211に形成しておく。本構成の場合にも、図9(a)の構成と同様に機能し、インク垂れを未然に防ぐことができる。
【0075】
上述のように、ヘッドプレート21は、ノズル面901に対してヘッドプレート21の奥側の厚さTを、手前側の厚さtよりも厚くする。
【0076】
これにより、液体吐出ヘッド91aの奥側に跳ねたインク10に対してもワイパ722が届くようになり、インク垂れを未然に防ぐことができる。
【0077】
なお、本発明において、液体は、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどでもよい。これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0078】
以上説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
【0079】
(態様1)
態様1は、液体吐出面(例えばノズル面901)を保持する液体吐出面保持部材(例えばヘッドプレート21)を有する液体吐出ユニット(例えばキャリッジ2)と、前記液体吐出面に接触して前記液体吐出面を清掃する清掃部材(例えばワイパ722)を有する清掃装置(例えばワイプ機構72)とを備えた液体吐出装置(例えばインクジェット記録装置1)において、前記清掃装置は、ベース部材(例えばベースプレート728)と、前記ベース部材を昇降可能に保持する昇降手段(例えば昇降装置725)と、前記清掃部材を備えるとともに、前記ベース部材に対して上下動可能な清掃部材支持部材(例えばワイパ支持板723)と、前記清掃部材支持部材を前記ベース部材から離す方向へ付勢する第1の弾性部材(例えば圧縮バネ723b)と、前記液体吐出面保持部材と前記清掃部材支持部材との間に介在するとともに、前記ベース部材に対して上下動可能な前記清掃部材をカバーするカバー部材(例えばワイパカバー726)と、前記カバー部材を前記ベース部材から離す方向へ付勢する第2の弾性部材(例えば圧縮バネ726b)と、前記清掃部材支持部材と前記カバー部材との間に設置し、前記カバー部材と前記清掃部材支持部材の位置を調整する調整手段(例えば調整ネジ727a、727b、727c)とを有することを特徴とするものである。
【0080】
態様1によれば、液体吐出面に接触する清掃部材の位置調整が容易な液体吐出装置を提供することができる。
【0081】
(態様2)
態様2は、態様1において、前記調整手段(例えば調整ネジ727a、727b、727c)は、前記カバー部材(例えばワイパカバー726)または前記清掃部材支持部材(例えばワイパ支持板723)に設けた調整ネジを含み、前記調整ネジは、前記カバー部材または前記清掃部材支持部材に対して突出量の調整が可能であることを特徴とするものである。
【0082】
態様2によれば、清掃装置単体での精度を出しておくだけで液体吐出面保持部材に対しての平行度を出すことができ、清掃部材の高さ調整作業において、作業者のスキル差を生じにくくすることができる。
【0083】
(態様3)
態様3は、態様1または態様2において、前記カバー部材(例えばワイパカバー726)は、前記ベース部材(例えばベースプレート728)に対する前記カバー部材の上下動を案内する支持ロッド(例えば支持ロッド726a)を有し、前記支持ロッドを、前記ベース部材に設けた、前記支持ロッドの径よりも大きい開口部に挿通することを特徴とするものである。
【0084】
(態様4)
態様4は、態様1乃至3のいずれかにおいて、前記清掃部材支持部材(例えばワイパ支持板723)は、前記ベース部材(例えばベースプレート728)に対する前記清掃部材支持部材の上下動を案内する支持ロッド(例えば支持ロッド723a)を有し、前記支持ロッドを、前記ベース部材に設けた、前記支持ロッドの径よりも大きい開口部に挿通することを特徴とするものである。
【0085】
態様3および態様4によれば、カバー部材または清掃部材支持部材が傾いている場合でも「かじり」が生じることなく、ベース部材に対しカバー部材または清掃部材支持部材を上下にスムーズに動かすことができる。
【0086】
(態様5)
態様5は、態様1乃至4のいずれかにおいて、前記液体吐出面保持部材(例えばヘッドプレート21)は、前記液体吐出面(例えばノズル面901)に対して前記液体吐出面保持部材の奥側の厚さが、手前側の厚さよりも厚いことを特徴とするものである。
【0087】
態様5によれば、液体吐出面の奥側に跳ねた液体に対しても清掃部材が届くようになり、液体の落下(垂れ)を未然に防ぐことができる。
【符号の説明】
【0088】
21 ヘッドプレート(液体吐出面保持部材)
91a、91b、91c 液体吐出ヘッド
72 ワイプ機構(清掃装置)
722a、722b、722c ワイパ(清掃部材)
723 ワイパ支持板(清掃部材支持部材)
723a、726a 支持ロッド
723b 圧縮バネ(第1の弾性部材)
725 昇降装置(昇降手段)
726 ワイパカバー(カバー部材)
726b 圧縮バネ(第2の弾性部材)
727a、727b、727c 調整ネジ
728 ベースプレート(ベース部材)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0089】
【文献】特開2014-172383号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9