(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-28
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】試料を粒子線で分析および/または処理するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
H01J 37/09 20060101AFI20240829BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20240829BHJP
H01J 37/305 20060101ALI20240829BHJP
H01J 37/317 20060101ALI20240829BHJP
H01J 37/15 20060101ALI20240829BHJP
C23C 16/04 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
H01J37/09 A
H01J37/28 B
H01J37/305 A
H01J37/317 E
H01J37/15
C23C16/04
(21)【出願番号】P 2023517676
(86)(22)【出願日】2021-09-16
(86)【国際出願番号】 EP2021075476
(87)【国際公開番号】W WO2022058424
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-05-08
(31)【優先権主張番号】102020124307.3
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100196612
【氏名又は名称】鎌田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】ホインキス オットマー
(72)【発明者】
【氏名】ギュントナー ヤン
(72)【発明者】
【氏名】リノウ ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】マールバッハ フーベルトゥス
(72)【発明者】
【氏名】アウス ニコル
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/016843(WO,A1)
【文献】特表2007-533089(JP,A)
【文献】特開平11-204395(JP,A)
【文献】特開2018-195592(JP,A)
【文献】特開2008-258149(JP,A)
【文献】特開2017-143147(JP,A)
【文献】特開昭57-080730(JP,A)
【文献】特開2005-109344(JP,A)
【文献】特開2008-112999(JP,A)
【文献】特表2005-518638(JP,A)
【文献】特開平11-072451(JP,A)
【文献】特許第6591681(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
C23C 16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料(10)を粒子線(110)で分析および/または処理するための装置(100)であって、
前記粒子線(110)を供給するための供給ユニット(106)と、
シールド要素(202)が前記試料(10)から最大で100μmの距離にあるときに、前記試料(10)上に蓄積された電荷(Q)によって生成される電界(E)をシールドするためのシールド要素(202)であって、前記粒子線(110)が前記試料(10)に向かって通過するための貫通開口部(206)を有する、シールド要素(202)と、
前記シールド要素(202)の実際の位置を検出するように構成された検出ユニット(112)と、
前記粒子線(110)に対して横断方向(x,y)に前記シールド要素(202)を実際の位置から標的位置へと調整するための調整ユニット(600)と、
前記シールド要素(202)を摩擦ロック方式で固定するための固定デバイス(310)と
を備え、
前記調整ユニット(600)は、前記シールド要素(202)を、摩擦ロックを克服しながら、その実際の位置からその標的位置へと移動させるように構成される、
装置(100)。
【請求項2】
その内部に真空を提供するための真空ハウジング(102)を備え、少なくとも前記シールド要素(202)および前記調整ユニット(600)は、前記真空ハウジング(102)内に配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記検出ユニット(112)は、電子顕微鏡、特に走査型電子顕微鏡を備える、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記調整ユニット(600)は、前記シールド要素(202)に作用的に接続可能である、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
係合要素(602)と受け要素(324)とを更に備え、前記係合要素(602)および前記受け要素(324)は、作用的接続を提供するために、着脱可能な様式で互いに係合可能であり、前記調整ユニット(600)は、前記係合要素(602)および前記受け要素(324)のうちの一方の要素を備え、前記シールド要素(202)または前記シールド要素(202)を保持するホルダ(300)は、前記係合要素(602)および前記受け要素(324)のうちのそれぞれの他方の要素を備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記係合要素(602)は、ピンとして具現化されている、および/または、前記受け要素(324)は、穴として、特に、前記シールド要素(202)もしくは
前記ホルダ(300)にある穴(202)として具現化されている、請求項
5に記載の装置。
【請求項7】
前記調整ユニット(600)と前記シールド要素(202)との間の作用的接続を提供するための力伝達要素(602)を更に備え、前記力伝達要素(602)の機械的安定性は、作用的接続に沿った力の伝達が予め定められた大きさに限定されるように選択され、前記力伝達要素(602)は、特に事前に決定された破断点(506)を有する、および/または、
前記係合要素(602)は、前記力伝達要素を形成する、請求項
5又は6に記載の装置。
【請求項8】
前記受け要素(324)に対する
前記係合要素(602)の位置を検出するように構成された更なる検出ユニット(606)を備える、請求項
5~7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記更なる検出ユニット(606)は、カメラを備える、および/または、偏向ミラー(502)を利用して像を記録する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記係合要素(602)は、
前記偏向ミラー(502)から突出している、請求項
9に記載の装置。
【請求項11】
前記調整ユニット(600)は、前記試料(10)および/またはある試料(10)を保持するための試料ステージ(11)を有する、請求項8~10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
プロセスガスを供給するための循環プレート(316)を備え、前記シールド要素(202)は、その実際の位置および標的位置について、いずれの場合も、着脱可能な様式で前記循環プレート(316)に固定されている、請求項1~
11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
試料(10)を粒子線(110)で分析および/または処理するための装置(100)におけるシールド要素(202)の位置を設定するための方法であって、前記シールド要素(202)は、前記シールド要素(202)が前記試料(10)から最大で100μmの距離にあるときに、前記試料(10)上に蓄積された電荷(Q)によって生成される電界(E)をシールドするためのものであり、前記方法は、
a)前記装置(100)の真空ハウジング(102)内に前記シールド要素(202)を取り付けるステップであって、前記シールド要素は摩擦ロック方式で固定される、ステップと、
b)前記真空ハウジング(102)内で真空を生成するステップと、
c)前記シールド要素(202)の実際の位置を検出するステップと、
d)摩擦ロックを克服しながら
、前記粒子線(110)に対して横断方向(x,y)に、真空の存在下で
、前記シールド要素(202)を実際の位置から標的位置へと調整するステップと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料を粒子線で分析および/または処理するための装置に、ならびに対応する方法に関する。
【0002】
優先権出願DE102020124307.3の内容の全体が、参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
微細構造構成要素、例えば集積回路などを製造するために、マイクロリソグラフィが使用される。マイクロリソグラフィプロセスは、照射系と投影系とを有するリソグラフィ装置を使用して実行される。照射系によって照射されるマスク(レチクル)の像は、この場合、投影系によって、基板の感光性コーティングにマスク構造を転写する目的で、感光性層(フォトレジスト)でコーティングされ、投影系の像面内に配置されている基板、例えばシリコンウエハ上に投影される。
【0004】
マスクまたはリソグラフィマスクは多数回の露光に使用され、したがって、上記マスクに欠陥のないことが非常に重要である。したがって、欠陥がないかリソグラフィマスクを検査するために、および特定された欠陥を修繕するために、多大な労力が払われる。リソグラフィマスクの欠陥の大きさは数ナノメートル範囲のオーダーであり得る。そのような欠陥を修繕するためには、修繕プロセスのための非常に高い空間解像度を提供する装置が必要となる。
【0005】
この目的にとって適切な装置は、粒子線誘起プロセスに基づいて局所的なエッチングまた堆積プロセスを活性化するものである。
【0006】
EP1587128B1には、化学反応プロセスを開始するために荷電粒子のビーム(「粒子線」)、特に電子顕微鏡の電子ビームを使用する、1つのそのような装置が開示されている。試料が導電性を有さないかまたはその導電性がごく僅かである場合、荷電粒子の使用によってその試料が帯電する可能性がある。このことは制御されていないビーム偏向につながる可能性があり、このことによって達成可能なプロセス解像度が制限される。したがって、シールド要素を処理位置の非常に近くに配置し、以って試料の帯電を最小限にし、プロセスの解像度および制御を改善することが提案されている。
【0007】
特に、マスクの上方例えば70~80μmに配備された金属シールド要素の形態のシールド要素を備える電子顕微鏡が知られている。シールド要素は通常は開口部を、例えば円形、矩形、または六角形のメッシュを有し、ホルダによって所望の位置に保持される。ホルダは、静電偏向システムとガス給送部の両方を統合した、上記構成要素の一体の部品である。粒子線は、電子顕微鏡の光軸に沿って、シールド要素の特定の開口部を通して誘導されるように意図されている。これまでこのことには、まず真空を生成し、電子顕微鏡でシールド要素の位置を検出し、真空を解除した後で手動でホルダをグリッドと一緒に変位させるという、シールド要素の複雑な調整が必要であった。このプロセスは対応する開口部が適切な位置に配備されるまで繰り返される。
【発明の概要】
【0008】
この背景に照らして、試料(sample)を粒子線(particle beam)で分析および/または処理するための改善された装置、および改善された方法も提供することが、本発明の目的である。
【0009】
第1の態様によれば、試料を粒子線で分析および/または処理するための装置が提案される。装置は、
粒子線を供給するための供給ユニット(providing unit)と、
試料上に蓄積された電荷によって生成される電界をシールドするためのシールド要素(shielding element)であり、前記粒子線が前記試料に向かって通過するための貫通開口部(through opening)を有する、シールド要素と、
シールド要素の実際の位置を検出するように構成されている検出ユニットと、
シールド要素を実際の位置から標的位置(target position)へと調整するための調整ユニット(adjusting unit)と
を備える。
【0010】
この装置は、調整ユニットによって、シールド要素の位置の部分的なまたは完全な自動調整が可能になるという利点を有する。特にこの結果、手動での調整が不要になる。また真空を解除する必要ももはやなくなる。調整プロセスの全体またはその一部において、検出ユニットを利用してシールド要素の位置を観察できることが特に有利である。その結果、先行技術から知られる反復プロセスが好ましいことに省略される。
【0011】
試料は、例えば、10nm~10μmの範囲内のフィーチャサイズを有するリソグラフィマスクである。これは、例えば、DUVリソグラフィ(DUV:「深紫外」、動作光波長範囲30~250nm)用の透過型リソグラフィマスク、または、EUVリソグラフィ(EUV:「極紫外」、動作光波長範囲1~30nm)用の反射型リソグラフィマスクなどであり得る。分析は特に、粒子線を利用して試料の表面の像を取得することを含む。粒子線を利用して実行される処理には、例えば、材料が試料の表面から局所的に除去されるエッチングプロセス、材料が試料の表面に局所的に適用される堆積プロセス、および/または、パッシベーション層の形成もしくは層の圧縮などの、類似の局所活性化プロセスが含まれる。
【0012】
粒子線は、例えばイオン、電子、または陽電子などの荷電粒子を含む。供給ユニットは、例えば10eV~10keVの範囲内のエネルギーおよび1μA~1pAの範囲内の電流を有する電子ビームを供給可能な、電子カラムである。ただしこれはイオンビームを供給するイオン源であってもよい。粒子線は好ましくは試料の表面上に集束され、例えば1nm~100nmの範囲内の直径を有する照射領域が達成される。電界および磁界によって、荷電粒子から成る粒子線に影響を与える、すなわち例えば加速、方向付け、成形、および/または集束を行うことができる。この目的のために、供給ユニットは、対応する電界および/または磁界を生成するように構成されているいくつかの要素を備え得る。上記要素は特にビーム生成ユニットとシールド要素との間に配置される。
【0013】
シールド要素は、試料上に蓄積された電荷の電界をシールドする、言い換えれば上記電界を、特にシールド要素と試料との間の可能な最小の間隙へと、空間的に限定するタスクを実行する。この目的のために、シールド要素は導電性材料を含む。シールド要素は、例えば貴金属を含む。例として、シールド要素は、金、ニッケル、パラジウム、プラチナ、イリジウムを含むリストから、少なくとも1種の元素を含む。複数の実施形態において、シールド要素は金で形成される。例として、シールド要素に衝突する電荷が放散するように、シールド要素は接地される。粒子線の起点であるシールド要素の上方の空間領域内では、試料上に配された電荷の電界がシールド要素によって効果的にシールドされる。
【0014】
シールド要素自体はシート状の様式で具現化することができ、このシートは、好ましくは、試料を保持するための試料ステージの方向への凸セクションを表面に有する、3次元形状を形成する。凸セクションは好ましくは試料ステージに最も近いセクションを形成する、つまり、試料ステージまたは試料とシールド要素との間の距離が、凸セクションの領域において最も小さい。凸部は、例えば、試料ステージに向かう方向に、少なくとも100μm、好ましくは少なくとも250μm、好ましくは少なくとも500μmの距離にわたって延在する。好ましくは、シールド要素から最も近い地点と試料ステージとの間の距離と、シールド要素から最も遠い点と試料ステージとの間の距離と、の間の差は、少なくとも100μm、好ましくは少なくとも250μm、好ましくは少なくとも500μmである。シールド要素は凸セクション内に貫通開口部を有することができ、そこを粒子線が通過し、試料に入射する。シールド要素は、粒子線が試料上の処理位置まで誘導される供給ユニットの開口部を閉じるような様式で配置することができる、および/または、シールド要素は、ビーム方向において試料ステージに最も近い供給ユニットの構成要素を形成する。
【0015】
例として、シールド要素、特にその凸セクションは、粒子線による試料の分析または処理中に、試料から最大で100μm、好ましくは最大で50μm、好ましくは最大で25μm、より好ましくは最大で10μmの距離にある。距離が小さくなるほど、電気的な干渉場が粒子線に与えることのできる影響は小さくなる。
【0016】
その結果、粒子線を正確に制御することができ、この粒子線は無作為のおよび/または制御不可能な干渉から受ける影響がそれほど大きくはない。この結果、走査型電子顕微鏡の場合などの像取得中、ならびに、粒子線誘起エッチングもしくは堆積プロセス、イオン注入、および/または更なる構造改変プロセスなどの、粒子線を用いて実施される処理方法中の両方で、高い解像度が可能となる。
【0017】
シールド要素は、例えば1mm~50mmの範囲内の長さおよび幅を有する。シールド要素の材料厚さは、例えば、1nm~100μm、好ましくは5μm~15μmの範囲内である。貫通開口部は、例えば、100μm2~2500μm2、好ましくは400μm2~1600μm2、より好ましくは750μm2~1400μm2の範囲内の断面積を有する。貫通開口部は、例えば、10μm~50μm、好ましくは20μm~40μm、より好ましくは25μm~35μmの範囲内の直径を有する。直径は、例えば、貫通開口部の対向して配置されている2つの点の間の距離を指す。
【0018】
検出ユニットにはどのようなセンサも適している。特に、以下に説明するように、電子顕微鏡が関与している。あるいはセンサは、光学式、誘導式、静電容量式のセンサであってもよい。好ましくは、検出ユニットは、調整前の実際の位置と調整後の新しい実際の位置(シールド要素の標的位置、または実際の位置と標的位置との間の中間位置に相当する)の両方を検出する。検出ユニットは、シールド要素のそれぞれの実際の位置を、例えば1Hzよりも大きい、10Hzよりも大きい、または100Hzよりも大きいサンプリング速度でサンプリングするように構成され得る。実際の位置および/または標的位置は、いずれの場合も、供給ユニットの光軸に対して検出され得る。
【0019】
調整ユニットは1つまたは複数のモータまたはアクチュエータを含み得る。モータは電動モータであってもよく、アクチュエータは電磁アクチュエータであってもよい。
【0020】
特に、調整ユニットが、(適切であれば対応するサンプリング時間における)シールド要素の実際の位置に応じて、シールド要素を調整するような方法で、閉ループ制御を行うことができる。
【0021】
更に、本装置は、プロセスガスを間隙内に給送するように構成されているガス給送部を備えることができ、その場合間隙は試料ステージ上に配置された試料とシールド要素とによって形成される。プロセスガスはこの間隙を介して試料上の処理位置まで流れる。供給ユニットは、例えば、粒子線用の開口部を備える循環プレート(circulating plate)を備える。ガスの給送は、例えば、循環プレートを介して行われる。
【0022】
材料の堆積にまたは粒子線と相互作用させて高さのある構造を成長させるのに適した適切なプロセスガスは特に、主族元素、金属、または遷移元素のアルキル化合物である。これらの例は、シクロペンタジエニルトリメチル白金CpPtMe3(Me=CH4)、メチルシクロペンタジエニルトリメチル白金MeCpPtMe3、テトラメチルすずSnMe4、トリメチルガリウムGaMe3、フェロセンCp2Fe、ビス-アリルクロムAr2Cr、ならびに/または、主族元素、金属、もしくは遷移元素のカルボニル化合物、例えば、クロムヘキサカルボニルCr(CO)6、モリブデンヘキサカルボニルMo(CO)6、タングステンヘキサカルボニルW(CO)6、ジコバルトオクタカルボニルCo2(CO)8、トリルテニウムドデカカルボニルRu3(CO)12、鉄ペンタカルボニルFe(CO)5など、ならびに/または、主族元素、金属、もしくは遷移元素のアルコキシド化合物、例えば、テトラエチルオルトシリケートSi(OC2H5)4、テトライソプロポキシチタンTi(OC3H7)4など、ならびに/または、主族元素、金属、もしくは遷移元素のハロゲン化物化合物、例えば、六フッ化タングステンWF6、六塩化タングステンWCl6、四塩化チタンTiCl4、三フッ化ホウ素BF3、四塩化ケイ素SiCl4など、ならびに/または、主族元素、金属、もしくは遷移元素を含む錯体、例えば、銅ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)Cu(C5F6HO2)2、ジメチル金トリフルオロアセチルアセトネートMe2Au(C5F3H4O2)など、ならびに/または、有機化合物、例えば一酸化炭素CO、二酸化炭素CO2、脂肪族および/もしくは芳香族炭化水素、などである。
【0023】
粒子線と相互作用させて材料をエッチングするのに適した適切なプロセスガスは、例えば、二フッ化キセノンXeF2、二塩化キセノンXeCl2、四塩化キセノンXeCl4、水蒸気H2O、重水D2O、酸素O2、オゾンO3、アンモニアNH3、塩化ニトロシルNOCl、および/または以下のハロゲン化物化合物:XNO、XONO2、X2O、XO2、X2O2、X2O4、X2O6、ここでXはハロゲン化物である、のうちの1つである。材料をエッチングするための更なるプロセスガスが、本出願人の米国特許出願第13/0103281号に指定されている。
【0024】
例えば処理プロセスをよりよく制御するためにプロセスガスとある割合で混合できる添加ガスとしては、例えば、過酸化水素H2O2、亜酸化窒素N2O、窒素酸化物NO、二酸化窒素NO2、硝酸HNO3、およびそれ以外の酸素含有ガスなどの酸化ガス、ならびに/または、塩素Cl2、塩化水素HCl、フッ化水素HF、ヨウ素I2、ヨウ化水素HI、臭素Br2、臭化水素HBr、三塩化リンPCl3、五塩化リンPCl5、三フッ化リンPF3、およびそれ以外のハロゲン含有ガスなどのハロゲン化物、ならびに/または、水素H2、アンモニアNH3、メタンCH4、およびそれ以外の水素含有ガスなどの還元ガスが挙げられる。これらの添加ガスは、例えばエッチングプロセスにおいて緩衝ガスとして、パッシベーション媒体として、などで使用され得る。
【0025】
複数の実施形態において、後で更に詳しく説明するシールド要素のおよび/またはホルダの調整によって、処理場所に対するプロセスガスの給送が変化する。
【0026】
一実施形態によれば、装置は、その内部に真空を提供するための真空ハウジングを備え、その場合、少なくともシールド要素および調整ユニットは真空ハウジング内に配置される。
【0027】
このことによって、シールド要素の位置の調整のために真空を解除する必要のない、単純な解決法が提供される。真空の存在下では-特にプロセスガスが存在しないとき-、真空ハウジング内の残留ガス圧は、好ましくは2×10-07~4×10-07mbar、好ましくは3×10-07mbarである。
【0028】
装置は好ましくは試料を保持するための試料ステージを備える。好ましくは、試料ステージは真空ハウジング内に配置される。装置は、例えば、供給ユニットに対して試料ステージを位置決めするための位置決めユニットを有する。位置決めユニットは、例えば、試料ステージを3つの空間軸線に沿って変位させるように構成され得る。更に、位置決めユニットは、試料ステージを上記軸線のうちの少なくとも1つを中心にして、好ましくは上記軸線のうちの少なくとも2つを中心にして、回転させるように構成され得る。試料ステージは好ましくは、保持構造体によって、振動から切り離された様式でおよび/または能動的に制振される様式で保持される。
【0029】
一実施形態によれば、検出ユニットは電子顕微鏡、特に走査型電子顕微鏡を備える。
【0030】
このことにより、シールド要素の位置、特に貫通開口部の位置を正確に検出できる。有利には、試料の分析および/または処理のために提供される装置は同時に、シールド要素の位置を検出するための検出ユニットとしても使用される。
【0031】
一実施形態によれば、摩擦ロック方式で(in a frictionally locking manner)シールド要素を固定するための固定デバイス(securing device)が提供され、その場合調整ユニットは、シールド要素を、摩擦ロックを克服しながら、その実際の位置から、その標的位置へと移動させるように構成される。
【0032】
固定デバイスは供給ユニット上、特にその下端部上に設けることができる。固定デバイスは、供給ユニットと一体にまたはと同じ一部片として具現化され得る。摩擦ロックを克服するためには予め定められた力を用いなければならない。特に、固定デバイスは1つまたは複数のクランプを備えることができ、これによりシールド要素またはシールド要素を保持するホルダが、摩擦面(ここでは「ホルダ対向面」とも呼ばれる)に対してクランプされる。クランプ力は、これに対して垂直な、摩擦面に沿ったシールド要素またはそのホルダの変位を打ち消すように作用する摩擦力をもたらす。摩擦面は、特に試料ステージにおよび/または下向きに面する、供給ユニットの端面であり得る。
【0033】
更なる実施形態によれば、調整ユニットはシールド要素に作用的に(operatively)接続され得る。
【0034】
作用的接続(operative connection)は、調整ユニットがシールド要素に対して間接的または直接的に作用するようなものであり得る。これは更に、永続的なものまたは着脱可能なものとして構成することができる。作用的接続は、特に機械的および/または電磁気的に行うことができる。特に、調整の目的で、調整ユニットは、シールド要素またはシールド要素を保持するホルダに、着脱可能に接続されるかまたは接続可能であり得る。
【0035】
更なる実施形態によれば、装置は、作用的接続を行うために、着脱可能な様式で互いに係合され得る係合要素(engagement element)および受け要素(receiving element)を備え、調整ユニットは係合要素および受け要素のうちの一方の要素を備え、シールド要素またはシールド要素を保持するホルダは、係合要素および受け要素のうちのそれぞれの他方の要素を備える。
【0036】
係合要素および受け要素は、着脱可能に接続可能なポジティブロック嵌合を形成する。このことにより作用的接続を特に簡単に実現することができる。ポジティブロック嵌合は好ましくは、係合要素が受け要素内に垂直方向に移動されることによって生じる。
【0037】
更なる実施形態によれば、係合要素は、ピンとして具現化される、および/または、受け要素は、穴として、特に、シールド要素もしくはホルダにある穴として具現化される。
【0038】
特に、ピンは、ポジティブロック方式で穴の中に係合するために、その長手軸線に沿って移動される。ピンは円形-円筒形の外側輪郭を有し得、その場合穴は対応する円形の内側輪郭を有し得る。
【0039】
更なる実施形態によれば、装置は、調整ユニットとシールド要素との間の作用的接続を提供するための力伝達要素(force transmission element)を更に備え、力伝達要素の機械的安定性は作用的接続に沿った力の伝達が予め定められた大きさ(predefined measure)に限定されるように選択され、力伝達要素は、特に事前に決定された破断点を有する、および/または、係合要素は力伝達要素を形成している。
【0040】
このことにより、調整ユニットによってシールド要素が予め定められた範囲内で変位可能となることを、保証することができる。他方、この範囲の限界(これは特に停止部によって予め定められている)に達し、したがって装置の他の部分が損傷する恐れが生じると、これら他の部分に力が及ぶのが制限される。
【0041】
更なる実施形態によれば、受け要素に対する係合要素の位置を検出するように構成されている更なる検出ユニットが提供される。
【0042】
このことにより係合プロセスを制御された様式で行うことができ、その場合このプロセスをより迅速に、かつ/または装置の他の部分を損傷する可能性なく行うことができる。
【0043】
更なる実施形態によれば、更なる検出ユニットはカメラを備える、および/または、偏向ミラー(deflection mirror)によって像を記録する。
【0044】
このことにより係合要素を特に簡単に観察することができる。
【0045】
更なる実施形態によれば、係合要素は偏向ミラーから突出している。別法として、受け要素を偏向ミラーに成形しても、または受け要素に偏向ミラーを貫通させてもよい。
【0046】
その結果、係合要素の外側の外形および受け要素の内側の外形を偏向ミラーによって観察できるため、係合要素を受け要素内に特に簡単に導入することができる。
【0047】
更なる実施形態によれば、調整ユニットは上記試料および/またはある試料を保持するための試料ステージを有する。
【0048】
有利には、元々備えている試料ステージは同時に調整ユニットとして使用される、つまり、試料ステージはシールド要素に対して直接的または間接的に作用する。任意選択的に、試料ステージによって移動する特別な試料(いわゆるサービス試料)を使用することも可能であり、その場合試料は、シールド要素に対して直接的または間接的に作用する。特に、係合要素または受け要素は、試料ステージまたは試料上に固定的に設けられる。
【0049】
更なる実施形態によれば、調整ユニットは、供給ユニットの光軸に対して横方向にシールド要素を変位させるように構成される。
【0050】
原理的には、実際の位置から標的位置への調整は、最大6自由度(回転方向に3および並進方向に3)でシールド要素を位置決めすることを含み得る。しかしながら、供給ユニットの光軸に対して横方向に、シールド要素のただ機械的に容易に実施可能な変位が行われるのが好ましい。
【0051】
更なる実施形態によれば、プロセスガスを供給するための循環プレートが提供され、その場合シールド要素は、その実際の位置および標的位置について、いずれの場合も、着脱可能な様式で循環プレートに固定される。
【0052】
特に、循環プレートは、シールド要素またはそのホルダを着脱可能に固定するための固定デバイスを備え得る。
【0053】
第2の態様によれば、試料を粒子線で分析および/または処理するための装置におけるシールド要素の位置を設定するための方法が提供される。方法は、
a)装置の真空ハウジング内にシールド要素を取り付けるステップと、
b)真空ハウジング内で真空を生成するステップと、
c)シールド要素の実際の位置を検出するステップと、
d)真空の存在下でシールド要素を実際の位置から標的位置へと調整するステップと
を含む。
【0054】
有利には、ステップc)とd)の実行中に、真空は解除されない。その結果調整の費用がかなり抑えられる。装置は特に、第1の態様に係る装置であり得る。ステップはa)~d)で示した順序で進める必要はない。例として、ステップc)をステップb)の前に実行することができる。
【0055】
本発明の更なる可能な実装形態はまた、例示的な実施形態に関して上記したまたは下記する特徴または実施形態の、明示的に述べられていない組合せも含む。この場合当業者はまた、個々の態様を、本発明のそれぞれの基本形態に対する改善または補足として追加するであろう。
【0056】
本発明の更なる有利な構成および態様は、従属請求項の、また以下に記載する本発明の例示的な実施形態の主題である。以下の本文では、本発明について、添付の図を参照し、好ましい実施形態に基づいて、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】試料を粒子線で分析および/または処理するための装置の第1の例示的な実施形態の概略図である。
【
図2】試料を粒子線で分析および/または処理するための装置の第2の例示的な実施形態の概略図からの抜粋を示す図である。
【
図3】シールド要素の1つの例示的な実施形態を示す平面図である。
【
図4】試料を粒子線で分析および/または処理するための装置の第3の例示的な実施形態の複数の構成要素の斜視図である。
【
図5】
図4の構成要素を装置内に設置した状態で示す図である。
【
図6】更なる実施形態を説明するための、
図5の装置を偏向ミラーに向けられたカメラと共に示す図である。
【
図7】a)およびb)は、
図5の装置の場合におけるシールド要素の異なる位置を例として示す図である。
【
図8】一実施形態に係る複数の方法ステップを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
同一の要素または同一の機能を有する要素には、そうではないと示されていない限り、同じ参照符号を付してある。図中の描写は必ずしも正確な縮尺率では描かれていないことにも留意されたい。
【0059】
図1は、試料10を分析および/または処理するための装置100の、第1の例示的な実施形態の概略図を示す。装置100は真空ハウジング102を備え、その内部は真空ポンプ104によって特定の真空度に保たれている。
【0060】
装置100は、特にリソグラフィマスクの形態の試料10を分析および処理するように、特に構成される。例として、装置は、リソグラフィマスク用の、特にEUV(極紫外を表す)またはDUV(深紫外を表す)リソグラフィ用のリソグラフィマスクの、検証および/または修繕ツールである。この場合、分析または処理されることになる試料10は、真空ハウジング102内の試料ステージ11上に取り付けられる。装置100の試料ステージ11は特に、3つの空間方向においておよび3つの回転軸において、試料10の位置を数ナノメートル単位で正確に設定するように構成される。
【0061】
装置100は、電子カラムの形態の供給ユニット106を備える。この電子カラムは、電子ビーム110(粒子線)を供給するための電子源108と、試料10から後方散乱された電子を検出する電子顕微鏡112と、を更に備える。電子ビーム110の代わりにイオンビームを供給してもよい。2次電子用の更なる検出器を更に設けてもよい(図示せず)。電子カラム106は好ましくは、真空ハウジング102内に専用の真空ハウジング113を有する。真空ハウジング113は、例えば、10-7mbar~10-8mbarの残留ガス圧まで真空引きされる。電子源108からの電子ビーム110はこの真空中を通過して真空ハウジング113の下面から出て、その後試料10に入射する。
【0062】
電子カラム106は給送されるプロセスガスとの相互作用で電子ビーム誘起処理プロセス(EBIP)を実行することができ、このガスは、ガス供給ユニット114によって外部からガスライン116を介して試料10上の電子ビーム110の焦点の領域内に給送される。これは特に、試料10上に材料を堆積させること、および/または試料から材料をエッチングすることを含む。装置100は、電子カラム106、試料ステージ11、および/またはガス供給ユニット114を適切に制御する、制御コンピュータ118を更に有する。
【0063】
図2は、試料10を粒子線110で分析および/または処理するための装置100の、第2の例示的な実施形態の概略図からの抜粋を示す。以下で別様に記載されていなければ、
図2の装置100は
図1の装置100と同じ特徴を有し得る。
【0064】
電子ビーム110用の開口部200は真空ハウジング113の下面に配置されている。開口部200はシールド要素202によって部分的にまたは完全に閉じられる。シールド要素202はシート状の様式で具現化されており、導電性材料、特に金を含む。シールド要素202は凸セクション204を有し得、このセクションは試料ステージ11に対して凸である。凸セクション204は試料ステージ11の方向に湾曲している。凸セクション204(または-そのようなセクションが存在しない場合には-一般にシールド要素202)は、電子ビーム110が通過するための貫通開口部206を有する。シールド要素202と試料ステージ11との間の距離は好ましくは、貫通開口部206の領域において最も小さい。装置100の動作(試料10の分析/処理)中、貫通開口部206と試料10との間の距離は、好ましくは1μm~100μm、好ましくは5μm~30μm、より好ましくは10μmである。
【0065】
シールド要素202は電界Eをシールドするように構成されている。このことを明確にするために、
図2には例として、電界Eを生成する電荷Qが図示されている。電荷Qは、シールド要素202の下方で、装置100の使用中に試料10の処理領域208が配備される領域内に図示されている。特に(少なくとも部分的に)非導電性であるかまたは導電性がごく僅かである試料10の場合、電子ビーム110が試料10に入射するとき、試料10の帯電およびしたがって電界Eの形成が生じる。
図1には例として、電子ビーム110の入射の結果として生じる負電荷Qが示されている。
【0066】
電界Eをシールドする結果として、第1に、試料10上の電子ビーム110の衝突点および集束位置に関する正確度の向上が達成され、このことにより解像度およびプロセス制御が改善される。第2に、電子ビーム110に対向して電子源108の方向に飛行する後方散乱電子および2次電子の飛行軌道はそれほど影響を受けず、このことによって同様に解像度、およびプロセス制御、および更に感度が改善される。
【0067】
この例では、供給ユニット106は、シールド要素202と試料10との間の間隙212内へとプロセスガスPGを給送するように構成されている、ガス給送部210を備える。プロセスガスPGは間隙212に沿って流れ、その結果試料10上の処理位置208に到達する。ガス給送部210によって、したがって第1に、処理位置208に十分なプロセスガスPGが供給されることが保証され、第2に、貫通開口部206を通って供給ユニット106内に入るプロセスガスPGの体積流量が比較的小さくなり、特にプロセスガスPGが上方から処理位置208まで貫通開口部206を通って誘導された場合よりも小さくなる。
【0068】
図3は複数の貫通開口部206を有するシールド要素202の一例を示すが、より明確にするために参照符号で特定したのはそのうちの1つだけである。貫通開口部206はここでは全て六角形の幾何形状を有する。この例では、凸セクション204内に複数の貫通開口部206が、いずれの場合も少なくとも部分的に、同様に配備されている。
【0069】
図4は、試料10を粒子線110で分析および/または処理するための装置100の第3の例示的な実施形態の、複数の構成要素を斜視図で示す。
図5は構成要素を装置100内に設置した状態で示す。
図6は
図5の装置100をカメラと共に示す。以下で別様に記載されていなければ、
図4~
図6の装置100は
図1および
図2の装置100と同じ特徴を有し得る。シールド要素202は
図3におけるように具現化され得る。
【0070】
図4のシールド要素202はホルダ300によって保持されている。この目的のために、シールド要素202をホルダ300に、特にそのリング302に固定することができ、上記リングは隠れた様式でのみ図示されている。例として、固定としては溶接、はんだ付け、または接着結合が適切である。別法として、シールド要素202をホルダ300に統合することができる、つまり、ホルダ300と特に一体に形成することができる。
【0071】
この例示的な実施形態によれば、ホルダ300は、シールド要素202によって閉じられる開口部200(シールド要素202の背後にあるため隠れて示されている)を有する。開口部200は特にリング302内に形成され得る。
【0072】
ホルダ300は、特に開口部または穴304の形態の、ガス給送部210を更に備え得る。この例では4つの穴304が提供されているが、穴の数は特に2~6の間の値をとり得る。プロセスガスPGは穴304(
図2を参照)を介して処理場所208(
図2を参照)へ給送される。穴304は、リング302をホルダ300のセクション308に接続するウェブ306によって形成され得る。ホルダ300は、金属、合金、またはプラスチックから作製することができる。
【0073】
ホルダ300は、1つまたは複数のクランプ310を利用して摩擦ロック方式でクランプされる-ここではそのようなクランプ310が2つ提供されている。クランプ力は特にセクション308に対して作用し得る。例として、クランプ310は、ホルダ300またはセクション308に対して作用するアーム312を有し得る。電子カラム106のあるセクションは-非常に一般的に-クランプ310またはそのアーム312と共にクランプ効果を生じさせるための、ホルダ対向面314として機能し得る。特に、真空ハウジング113の下面がホルダ対向面314として機能する。この例示的な実施形態では、真空ハウジング113の下面に固定されたまたはその領域内にあるプレート、特に循環プレート316が、ホルダ対向面314を有する。循環プレート316は、プロセスガスPGのための接続部500(そのような接続部の1つが例として示されている)を有し、上記接続部は循環プレート316を簡略化して図示した
図5にも示されている。循環プレート316に形成されたチャネル210(
図2を参照)を介して、接続部500は、プロセスガスPGを任意選択的に穴304を介して処理領域208に供給するように構成される。
【0074】
別法としてまたは追加として、循環プレート316(またはプレート)は、そこに固定されたまたはそこに組み込まれたビーム偏向デバイス216を有し得る(
図2を参照)。処理領域208を処理する目的で、ビーム偏向デバイス216を利用して電子ビーム110が偏向される。ビーム偏向デバイス216は、電子カラム106の光軸214の周りに配置された複数の、例えば4~16個、好ましくは6~10個、特に8個の(ビーム偏向デバイス216はしたがって八極子とも呼ばれる)コイルまたは電磁石(隠れているのでいずれも図示されていない)を備える。電流接続部318は、そのうちの1つが
図4に例として示されており、電磁石に電流を供給する。
【0075】
ホルダ300はシールド要素202と共に、実際の位置と標的位置との間で調整可能、すなわち移動可能となるように設けられている。この場合、
図4は実際の位置を示している。実際の位置は、例示的な実施形態では特に走査型電子顕微鏡である電子顕微鏡112によって形成されている、検出ユニットによって検出される。上記顕微鏡は、シールド要素202から後方散乱された電子を検出する。対応する検出像が
図7aに示されており、ここでは206は、電子カラム106の光軸214に対して位置決めされることが意図されている貫通開口部を表す。
図1および
図2において、光軸214は電子ビーム110と共線的に示されている。この場合光軸214は垂直方向に延び、開口部200の中心点と交わる。
【0076】
原理的には、ホルダ300のまたはシールド要素202の全6自由度の位置決めに想到できる。この例示的な実施形態によれば、位置決めは光軸214に対して垂直な平面、つまりここでは水平方向(
図4のx-y平面)内においてのみ行われる。この場合、ホルダ対向面314は、ホルダ300の水平方向への変位を案内する摺動面または担持面として機能する。摺動のためには、ホルダ300とホルダ対向面314との間に作用する摩擦力を克服する必要がある。摩擦力は、クランプ310をホルダ対向面314上に保持するねじ320を利用して設定され得る。ホルダ対向面314は示されているように循環プレート316内へと凹ませることができ、その結果縁部322が得られる。縁部322はx-y平面におけるホルダ300の変位移動を限定する、つまり、上記ホルダの停止端部を形成する。ホルダ300には、ホルダ300上に一体に成形されたラグ326にある穴324の形態の受け要素が設けられている。この穴の面も同じくx-y平面上に配置されている。
【0077】
シールド要素202を伴ったホルダ300の調整は、
図6に示す調整ユニット600(一部が
図5にも示されている)を利用して行われる。この例示的な実施形態によれば、調整ユニット600は試料ステージ11を備え、これに対して、ここでは特に垂直方向上向きに突出するピンとして具体化されている、係合要素602が固定される。ピン602は別法として、この目的のために特に用意された試料10(いわゆるサービス試料)に装着することもでき、上記試料は試料ステージ11上に一時的に(すなわち調整の間だけ)配置される。
【0078】
この例示的な実施形態では、ピン602は偏向ミラー502から突出するように設けられている(
図5を参照)。偏向ミラー502は光軸214に対して斜めに配置されている。この目的のために、上記偏向ミラーは、例えば、くさび形を形成するようにまたはプリズム状に成形されたブロック504上に具現化され得る。そしてブロック504は試料ステージ11または試料10上に固定される。
【0079】
図6に示すように、試料ステージ11と電子カラム106との間の隙間604の外側には、水平方向に、カメラの形態の更なる検出ユニット606が配置されている。カメラ606および偏向ミラー502により、
図6に矢印で示すように、ホルダ300のラグ326上の穴324に対するピン602の位置を観察することが可能である。その場合試料ステージ11は、例えばピン602を穴324に垂直方向に挿入するために、制御コンピュータ118(
図1を参照)を利用して、適切に制御される。その後、試料ステージ11によってピン602が水平面内で変位されるが、このことによって同時に、事前に決定された摩擦力値を超えるとすぐにシールド要素202と一緒にホルダ300が移動することになる。その結果、ホルダ300およびしたがってシールド要素202が変位し、シールド要素202の貫通開口部206は
図7bに示す標的位置まで移動される。
【0080】
例えばピン602の不適切な動きが生じた場合に、これによる装置100の、特にホルダ300またはシールド要素202への損傷を回避するために、上記ピンは、事前に決定された破断点506を備えることができる(
図5を参照)。ピン602は、当該ピンに、特にその自由端に、予め定められた力の限度を超える力が加えられた場合、上記予め定められた破断点で破断する。特にこのことは、ホルダ300がピン602によって縁部322(
図3を参照)に押し付けられ、用いられた力が予め定められた力の限度を超える場合に当てはまる。
【0081】
図8は、一実施形態に係る複数の方法ステップを示すフロー図である。
【0082】
最初に、装置1の新規製造時またはシールド要素202の(任意選択的にホルダ300と同時の)交換時、ホルダ対向面314上に新しいシールド要素202が取り付けられる(
図8のステップS1)。このことは、クランプ310とねじ320の締め付けとを利用して行われる。この時点では真空ハウジング102は開放されている、つまり真空ハウジング102内の真空が解除されている。ホルダ300とシールド要素202の一体の取り付けは、循環プレート316が真空ハウジング102から取り外された状態で行うことができる、つまり、ホルダ300の取り付け後、上記循環プレートは再び真空ハウジング102内に入れられ、電子カラム106上に取り付けられる。別法として、ホルダ300とシールド要素202の一体の取り付けは、真空ハウジング102内で、すなわち電子カラム106に予め取り付けられた循環プレート316上で行われる。
【0083】
続いて、真空ポンプ104を利用して、真空ハウジング102内の真空を再確立する(ステップS2)。その結果、特にホルダ300はシールド要素202と、試料ステージ11とも一緒に、真空中に置かれる。
【0084】
ステップS3は、電子顕微鏡112(
図1を参照)を利用して、光軸214に対するシールド要素202の、特に貫通開口部206の実際の位置を検出することを含む。
【0085】
制御コンピュータ118に提供されるまたは制御コンピュータ118によって計算される、シールド要素202の標的位置から、上記制御コンピュータまたは何らかの他のコンピュータユニットは、ステップS4において、シールド要素202をピン602を利用して適切に移動させるために意図される試料ステージ11の移動の、移動経路を決定する。その後、試料ステージ11またはピン602はそれに応じて移動する(ステップS5)。言い換えれば、ピン602はまず、これを垂直方向におよび任意選択的に水平方向に移動させることによって、穴324内に係合する。次いでピン602は、シールド要素202をx-y平面内で変位させるために、およびそれを実際の位置から標的位置へと運ぶために、水平方向に移動される。現在の実際の位置は、電子顕微鏡112によって、例えば100Hzのサンプリングレートで連続的にサンプリングされる。標的位置に到達するとすぐに、ピン602と穴324の係合は再び解除される。特に、ピン602と穴324の係合およびその解除はカメラ606によって監視され、その場合カメラ606は複数の実施形態において対応する測定データを制御コンピュータ118に渡し、試料ステージ11の移動が閉ループ制御下で行われ得るようにする。
【0086】
その後試料ステージ11は、ピン602と共にブロック504が取り外される変更位置へと移動することができる(ステップS6)。このことは任意選択的に自動ツール変更装置を利用して行うことができる。
【0087】
その後-任意選択的にステップS6を省略して-ステップS7において、処理領域208(
図2)内の試料10の分析および/または処理が開始されるが、このとき任意選択的には、ステップS2で提供された真空はその間解除しない。
【0088】
本発明について例示的な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は様々な方法で修正可能である。
【符号の説明】
【0089】
10 試料
11 試料ステージ
100 装置
102 真空ハウジング
104 真空ポンプ
106 電子カラム
108 電子源
110 電子ビーム
112 電子顕微鏡
113 真空ハウジング
114 ガス供給ユニット
116 ガスライン
118 制御コンピュータ
200 開口部
202 シールド要素
204 凸セクション
206 貫通開口部
208 処理領域
210 ガス給送部
212 間隙
214 光軸
216 ビーム偏向デバイス
300 ホルダ
302 リング
304 穴
306 ウェブ
308 セクション
310 クランプ
312 アーム
314 ホルダ対向面
316 循環プレート
318 電流接続部
320 ねじ
322 縁部
324 穴
326 ラグ
500 接続部
502 偏向ミラー
504 ブロック
506 事前に決定された破断点
600 調整ユニット
602 ピン
604 隙間
606 カメラ
E 電界の線
Q 電荷
x 方向
y 方向