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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】眼鏡レンズ、組成物
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/00 20060101AFI20240830BHJP
   G02B 1/113 20150101ALI20240830BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20240830BHJP
【FI】
G02C7/00
G02B1/113
G02B1/14
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019090983
(22)【出願日】2019-05-13
(65)【公開番号】P2020187240
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】300035870
【氏名又は名称】株式会社ニコン・エシロール
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】伊神 優香
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】竹下 克義
(72)【発明者】
【氏名】青島 貞人
(72)【発明者】
【氏名】金澤 有紘
(72)【発明者】
【氏名】吉木 朋
【審査官】南川 泰裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-046582(JP,A)
【文献】特開2009-287012(JP,A)
【文献】特開2007-063481(JP,A)
【文献】特開2011-113050(JP,A)
【文献】国際公開第2018/221466(WO,A1)
【文献】特開2014-189787(JP,A)
【文献】特開2017-154421(JP,A)
【文献】特開2003-335983(JP,A)
【文献】特開2015-224294(JP,A)
【文献】国際公開第2016/159252(WO,A1)
【文献】特開2009-155593(JP,A)
【文献】特開2014-141649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/00
G02B 1/10-1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡レンズ基材と、
前記眼鏡レンズ基材上に配置される、プライマー層と、
前記プライマー層上に配置される、ハードコート層と、を含み、
前記プライマー層および前記ハードコート層の少なくとも一方が、金属ナノワイヤーおよびカーボンナノチューブからなる群から選択される導電性フィラー、並びに、高分子を含み、
前記高分子が、イオン液体由来の基を有する繰り返し単位、および、イオン液体由来の基を有さない繰り返し単位を有し、
前記イオン液体由来の基が、式(A)、式(B)、および、式(D)で表される基のいずれかである、眼鏡レンズ。
【化1】

式(A)中、Ra1は、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。Ra2~Ra4は、それぞれ独立に、水素原子、または、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。Lは、アルキレン基を表す。Aは、アニオンを表す。*は、結合位置を表す。
式(B)中、Rb1~Rb5は、それぞれ独立に、水素原子、または、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。Lは、アルキレン基を表す。Aは、アニオンを表す。*は、結合位置を表す。
式(D)中、Rd1~Rd3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。Lは、アルキレン基を表す。Aは、アニオンを表す。*は、結合位置を表す。
【請求項2】
前記導電性フィラーが、金属ナノワイヤーである、請求項1に記載の眼鏡レンズ。
【請求項3】
前記イオン液体由来の基を有する繰り返し単位が、式(1)で表される繰り返し単位である、請求項1または2に記載の眼鏡レンズ。
【化2】

式(1)中、Rは、水素原子、または、アルキル基を表す。
は、単結合、または、2価の連結基を表す。
Xは、イオン液体由来の基を表す。
【請求項4】
前記金属ナノワイヤーに含まれる金属が、銀、金、銅、ニッケル、および、白金からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項5】
前記ハードコート層が、前記導電性フィラー、および、前記高分子を含み、
前記ハードコート層が、重合性モノマー、前記導電性フィラー、および、前記高分子を含むハードコート層形成用組成物を用いた形成されたハードコート層である、請求項1~4のいずれか1項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項6】
前記重合性モノマーが、リン酸基、および、スルホン酸基からなる群から選択される基を少なくとも1つ有する(メタ)アクリレートを含む、請求項5に記載の眼鏡レンズ。
【請求項7】
前記重合性モノマーが、ラジカル重合性基を有するシルセスキオキサンを含む、請求項5または6に記載の眼鏡レンズ。
【請求項8】
前記ハードコート層上に配置される反射防止膜を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項9】
金属ナノワイヤーおよびカーボンナノチューブからなる群から選択される導電性フィラー、
イオン液体由来の基を有する繰り返し単位と、イオン液体由来の基を有さない繰り返し単位とを有する高分子、並びに、
重合性モノマーを含み、
前記イオン液体由来の基が、式(A)、式(B)、および、式(D)で表される基のいずれかである、組成物。
【化3】

式(A)中、Ra1は、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。Ra2~Ra4は、それぞれ独立に、水素原子、または、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。Lは、アルキレン基を表す。Aは、アニオンを表す。*は、結合位置を表す。
式(B)中、Rb1~Rb5は、それぞれ独立に、水素原子、または、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。Lは、アルキレン基を表す。Aは、アニオンを表す。*は、結合位置を表す。
式(D)中、Rd1~Rd3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。Lは、アルキレン基を表す。Aは、アニオンを表す。*は、結合位置を表す。
【請求項10】
前記導電性フィラーが、金属ナノワイヤーである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記重合性モノマーが、リン酸基、および、スルホン酸基からなる群から選択される基を少なくとも1つ有する(メタ)アクリレートを含む、請求項または10に記載の組成物。
【請求項12】
前記重合性モノマーが、ラジカル重合性基を有するシルセスキオキサンを含む、請求項9~11のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼鏡レンズ、および、組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ラジカル重合性基を有するシルセスキオキサン化合物を含む硬化性樹脂組成物は、ハードコート剤として有用である(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-224294号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示は、眼鏡レンズ基材と、眼鏡レンズ基材上に配置される、プライマー層と、プライマー層上に配置される、ハードコート層とを含み、プライマー層およびハードコート層の少なくとも一方が、金属ナノワイヤーおよびカーボンナノチューブからなる群から選択される導電性フィラー、並びに、高分子を含み、高分子が、イオン液体由来の基を有する繰り返し単位、および、イオン液体由来の基を有さない繰り返し単位を有する、眼鏡レンズに関する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】眼鏡レンズの第1実施形態の断面図である。
図2】眼鏡レンズの第2実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、本実施形態の眼鏡レンズについて詳述する。
眼鏡レンズとしては、表面抵抗率が低く、外観特性に優れる眼鏡レンズが望まれている。本実施形態の眼鏡レンズでは、上記特性が得られる。また、眼鏡レンズ中の隣接する層同士は、密着性に優れる。
なお、本明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0007】
<第1実施形態>
図1は、眼鏡レンズの第1実施形態の断面図である。
図1に示す眼鏡レンズ10Aは、眼鏡レンズ基材12と、眼鏡レンズ基材12の両面上に配置されたハードコート層14Aとを含む。
なお、図1においては、ハードコート層14Aは眼鏡レンズ基材12に直接接触するように配置されているが、この形態には制限されず、後述するように、眼鏡レンズ基材12とハードコート層14Aとの間に他の層(例えば、プライマー層)が配置されていてもよい。つまり、ハードコート層14Aは、眼鏡レンズ基材12上に直接配置されていてもよいし、他の層を介して間接的に眼鏡レンズ基材12上に配置されていてもよい。
また、図1においては、眼鏡レンズ基材12の両面にハードコート層14Aが配置されているが、眼鏡レンズ基材12の片面のみにハードコート層14Aが配置されていてもよい。
なお、本実施形態においては、ハードコート層14Aに後述する金属ナノワイヤーおよびカーボンナノチューブからなる群から選択される導電性フィラー、並びに、所定の高分子が含まれる。
以下、眼鏡レンズ10Aに含まれる各部材について詳述する。
【0008】
(眼鏡レンズ基材)
眼鏡レンズ基材は、後述するハードコート層を支持する部材である。
眼鏡レンズ基材の種類は特に制限されず、プラスチックまたは無機ガラスなどから構成される通常の眼鏡レンズ基材が挙げられ、取扱い性に優れる点で、プラスチック眼鏡レンズ基材が好ましい。
プラスチック眼鏡レンズ基材の種類は特に制限されないが、例えば、凸面および凹面共に光学的に仕上げ、所望の度数にあわせて成形されるフィニッシュレンズ、凸面のみが光学面(球面、回転対象非球面、累進面など)として仕上げられているセミフィニッシュレンズ、セミフィニッシュレンズの凹面が装用者の処方に合わせて加工研磨されたレンズが挙げられる。
プラスチック眼鏡レンズ基材を構成するプラスチック(いわゆる、樹脂)の種類は特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、チオウレタン系樹脂、アリル系樹脂、エピスルフィド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエ-テルサルホン系樹脂、ポリ4-メチルペンテン-1系樹脂、および、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート系樹脂(CR-39)が挙げられる。
【0009】
プラスチック眼鏡レンズ基材の厚さは特に制限されないが、取り扱い性の点から、1~30mm程度の場合が多い。
プラスチック眼鏡レンズ基材の屈折率は特に制限されない。
また、プラスチック眼鏡レンズ基材は透光性を有していれば透明でなくてもよく、紫外線吸収剤や、可視域から赤外域にかけての特定の波長領域を吸収する染料を含んでいてもよい。
【0010】
(ハードコート層)
ハードコート層は、眼鏡レンズ基材上に配置される層であり、眼鏡レンズ基材に耐傷性を付与する層である。
ハードコート層としては、JIS K5600において定められた試験法による鉛筆硬度で、「H」以上の硬度を示すものが好ましい。
【0011】
第1実施形態中のハードコート層は、金属ナノワイヤーおよびカーボンナノチューブからなる群から選択される導電性フィラー、並びに、イオン液体由来の基を有する繰り返し単位と、イオン液体由来の基を有さない繰り返し単位とを有する高分子(以下、単に「特定高分子」ともいう。)を含む。
特定高分子中のイオン液体由来の基は、導電性フィラーと相互作用しやすい。そのため、ハードコート層中において、特定高分子は導電性フィラーの周囲を被覆するように位置しやすい。つまり、ハードコート層が、導電性フィラーと、導電性フィラーを被覆するように配置された特定高分子とを有する被覆導電性フィラーを含むことが好ましい。結果として、ハードコート層中において導電性フィラーの分散性が向上し、得られる眼鏡レンズの表面抵抗率が低く、かつ、外観特性に優れる。
【0012】
金属ナノワイヤーに含まれる金属の種類は特に制限されないが、眼鏡レンズの表面抵抗率がより低下する点、および、眼鏡レンズの外観特性がより優れる点の少なくとも一方の効果が得られる点(以後、単に「所定の効果がより優れる点」とも称する。)で、銀、金、銅、ニッケル、および、白金からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
なお、金属ナノワイヤーとは、材質が金属であり、形状が針状または糸状であり、直径がナノメートルサイズの導電物質をいう。金属ナノワイヤーは直線状であってもよく、曲線状であってもよい。
【0013】
金属ナノワイヤーの直径は特に制限されないが、所定の効果がより優れる点で、500nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、100nm以下がさらに好ましい。下限としては、10nm以上の場合が多い。
上記金属ナノワイヤーの直径は平均値であり、走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡を用いて、金属ナノワイヤーの断面を観察して、20か所の金属ナノワイヤーの直径を測定して、それらを算術平均して求める。なお、断面が真円状でない場合、長径を直径とする。
【0014】
金属ナノワイヤーの長さは特に制限されないが、所定の効果がより優れる点で、5~1000μmが好ましく、10~500μmがより好ましい。
上記金属ナノワイヤーの長さは平均値であり、走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡を用いて、20個の金属ナノワイヤーの長さを測定して、それらを算術平均して求める。
【0015】
金属ナノワイヤーの直径dと長さLとの比(アスペクト比:L/d)は特に制限されないが、10~100000が好ましく、50~100000がより好ましい。
金属ナノワイヤーの直径および長さの測定方法は、上述した通りである。
【0016】
カーボンナノチューブ(以後、単に「CNT」ともいう。)としては、例えば、1枚の炭素膜(グラフェンシート)が円筒状に巻かれた単層CNT、2枚のグラフェンシートが同心円状に巻かれた2層CNT、及び、複数のグラフェンシートが同心円状に巻かれた多層CNTが挙げられる。CNTとしては、単層CNT、2層CNT、および、多層CNTを各々単独で用いてもよく、2種以上を併せて用いてもよい。
単層CNTは、半導体性のものであっても、金属性のものであってもよく、両者を併せて用いてもよい。また、CNTには金属などが内包されていてもよく、フラーレンなどの分子が内包されたもの(特にフラーレンを内包したものをピーポッドという)を用いてもよい。
【0017】
CNTの直径は特に制限されないが、0.5~4.0nmが好ましく、0.6~3.0nmがより好ましい。
【0018】
CNTの長さは特に制限されないが、所定の効果がより優れる点で、0.01~100μmが好ましく、0.1~50μmがより好ましい。
上記CNTの長さは平均値であり、走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡を用いて、20個のCNTの長さを測定して、それらを算術平均して求める。
【0019】
特定高分子は、イオン液体由来の基を有する繰り返し単位(以後、単に「単位A」ともいう。)と、イオン液体由来の基を有さない繰り返し単位(以後、単に「単位B」ともいう。)とを有する。
【0020】
単位Aは、イオン液体由来の基を有する。
イオン液体由来の基とは、イオン液体から1個の水素原子を除いて形成される基(残基)を意味する。言い換えれば、イオン液体由来の基とは、イオン液体の任意の位置から水素原子が1個引き抜かれて、水素原子が引き抜かれた位置で結合可能な構造の基をいう。
【0021】
イオン液体とは、カチオン(例えば、有機アニオン)とアニオン(例えば、有機アニオンまたは無機アニオン)とからなる塩であって、融点が100℃以下のものをいう。イオン液体としては、単体で、常温(25℃)、常圧で固化せず液体状であるものが好ましい。
【0022】
イオン液体の種類は特に制限されず、所定の効果がより優れる点で、アンモニウム塩、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、ピロリジニウム塩、ホスホニウム塩、および、スルホニウム塩からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、アンモニウム塩、イミダゾリウム塩がより好ましい。
アンモニウム塩(好ましくは、第4級アンモニウム塩)に含まれるカチオンはアンモニウムカチオン(第4級アンモニウムカチオン)である。
イミダゾリウム塩に含まれるカチオンは、イミダゾリウムカチオンである。
ピリジニウム塩に含まれるカチオンは、ピリジニウムカチオンである。
ピロリジニウム塩に含まれるカチオンは、ピロリジニウムカチオンである。
ホスホニウム塩に含まれるカチオンは、ホスホニウムカチオンである。
スルホニウム塩に含まれるカチオンは、スルホニウムカチオンである。
【0023】
イオン液体に含まれるアニオンは特に制限されないが、例えば、ハロゲン化物イオン、シアニドイオン、ジシアノアミンアニオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ノナフルオロブタンスルホン酸イオン、テトラフルオロエタンスルホン酸イオン、乳酸アニオン、サリチル酸イオン、チオサリチル酸イオン、ジブチルリン酸イオン、酢酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、硫酸水素イオン、硫酸イオン、オクチルスルホン酸イオン、テトラクロロアルミン酸イオン、チオシアン酸イオン、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチドイオン、アミノ酢酸イオン、アミノプロピオン酸イオン、ジエチルリン酸イオン、ジメチルリン酸イオン、エチル硫酸イオン、メチル硫酸イオン、水酸化物イオン、ビス(トリメチルペンチル)ホスフィン酸イオン、デカン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、鉄酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、スルホニルアミド、ブタンスルホン酸イオン、メチルスルホン酸イオン、エチルスルホン酸イオン、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオン、ビス(トリフルオロエチルスルホニル)イミドアニオン、および、ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミドアニオンが挙げられる。
【0024】
イオン液体由来の基としては、所定の効果がより優れる点で、式(A)~式(D)で表される基のいずれかが好ましい。式(A)~式(D)中、*は結合位置を表す。
【0025】
【化1】
【0026】
式(A)中、Ra1は、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。Ra2~Ra4は、それぞれ独立に、水素原子、または、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
a1~Ra4で表されるアルキル基の炭素数は特に制限されず、1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~5がさらに好ましく、1~2が特に好ましい。
アルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、環状であってもよい。
a1~Ra4で表されるアルキル基に置換していてもよい置換基の種類は特に制限されないが、例えば、アリール基、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基、および、極性基(例えば、水酸基、メルカプト基、アミノ基、カルボキシル基、スルホキシル基など)が挙げられる。
は、アルキレン基を表す。
アルキレン基の炭素数は特に制限されず、1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~2がさらに好ましい。
アルキレン基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
【0027】
式(B)中、Rb1~Rb5は、それぞれ独立に、水素原子、または、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
アルキル基の炭素数は特に制限されず、1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~5がさらに好ましく、1~2が特に好ましい。
b1~Rb5で表されるアルキル基に置換していてもよい置換基の種類は特に制限されないが、例えば、アリール基、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基、および、極性基(例えば、水酸基、メルカプト基、アミノ基、カルボキシル基、スルホキシル基など)が挙げられる。
アルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、環状であってもよい。
は、アルキレン基を表す。
アルキレン基の炭素数は特に制限されず、1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~2がさらに好ましい。
アルキレン基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
【0028】
式(C)中、Rc1~Rc3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。Rc1~Rc3のうちの2つは互いに結合して、ピペリジン環またはピロリジン環を形成してもよい。
アルキル基の炭素数は特に制限されず、1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~5がさらに好ましく、1~2が特に好ましい。
c1~Rc3で表されるアルキル基に置換していてもよい置換基の種類は特に制限されないが、例えば、アリール基、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基、および、極性基(例えば、水酸基、メルカプト基、アミノ基、カルボキシル基、スルホキシル基など)が挙げられる。
アルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、環状であってもよい。
は、アルキレン基を表す。
アルキレン基の炭素数は特に制限されず、1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~2がさらに好ましい。
アルキレン基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
【0029】
式(D)中、Rd1~Rd3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
アルキル基の炭素数は特に制限されず、1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~5がさらに好ましく、1~2が特に好ましい。
d1~Rd3で表されるアルキル基に置換していてもよい置換基の種類は特に制限されないが、例えば、アリール基、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基、および、極性基(例えば、水酸基、メルカプト基、アミノ基、カルボキシル基、スルホキシル基など)が挙げられる。
アルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、環状であってもよい。
は、アルキレン基を表す。
アルキレン基の炭素数は特に制限されず、1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~2がさらに好ましい。
アルキレン基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
【0030】
式(A)~(D)中、Aは、アニオンを表す。アニオンとしては、上述したイオン液体に含まれるアニオンで例示した基が挙げられる。
【0031】
単位Aとしては、所定の効果がより優れる点で、式(1)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0032】
【化2】
【0033】
は、水素原子、または、アルキル基を表す。アルキル基の炭素数は特に制限されないが、1~3が好ましく、1がより好ましい。
【0034】
は、単結合、または、2価の連結基を表す。2価の連結基としては、例えば、2価の炭化水素基(例えば、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数1~10のアルケニレン基、および、炭素数1~10のアルキニレン基などの2価の脂肪族炭化水素基、アリーレン基などの2価の芳香族炭化水素基)、2価の複素環基、-O-、-S-、-NH-、-N(Q)-、-CO-、または、これらを組み合わせた基(例えば、-O-2価の炭化水素基-、-(O-2価の炭化水素基)-O-(mは、1以上の整数を表す)、および、-2価の炭化水素基-O-CO-など)が挙げられる。Qは、水素原子またはアルキル基を表す。
【0035】
Xは、イオン液体由来の基を表す。イオン液体由来の基の定義は上述した通りである。
【0036】
特定高分子中における単位Aの含有量は特に制限されないが、所定の効果がより優れる点で、特定高分子の全繰り返し単位に対して、1~99モル%が好ましく、5~30モル%がより好ましい。
【0037】
単位Bは、イオン液体由来の基を有さない。イオン液体由来の基の定義は、上述した通りである。
単位Bとしては、所定の効果がより優れる点で、式(2)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0038】
【化3】
【0039】
は、水素原子、または、アルキル基を表す。アルキル基の炭素数は特に制限されないが、1~3が好ましく、1がより好ましい。
【0040】
は、単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基としては、Lで表される2価の連結基で例示した基が挙げられる。
【0041】
Yは、イオン液体由来の基以外の基を表す。
イオン液体由来の基以外の基としては、例えば、ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基が挙げられる。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、および、硫黄原子が挙げられる。
上記炭化水素基に含まれる炭素数は特に制限されず、所定の効果がより優れる点で、1~20が好ましく、2~10がより好ましい。
上記炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、および、芳香族炭化水素基が挙げられる。
脂肪族炭化水素基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、環状であってもよい。
脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、および、アルキニル基が挙げられる。
【0042】
特定高分子中における単位Bの含有量は特に制限されないが、所定の効果がより優れる点で、特定高分子の全繰り返し単位に対して、1~99モル%が好ましく、70~95モル%がより好ましい。
【0043】
特定高分子中において単位Aおよび単位Bの配列は、ランダム状であっても、ブロック状であってもよい。なかでも、所定の効果がより優れる点で、ブロック状であることが好ましい。つまり、特定高分子は、単位Aから構成されるセグメントAと単位Bから構成されるセグメントBとを有するブロックコポリマーであることが好ましい。上記ブロックコポリマーは、セグメントAとセグメントBとを有していればよく、例えば、1つのセグメントAと1つのセグメントBからなるジブロックコポリマー(いわゆる、AB型ブロックコポリマー)であってもよいし、セグメントA-セグメントB-セグメントAまたはセグメントB-セグメントA-セグメントBのような3つのセグメントからなるトリブロックコポリマー(いわゆる、ABA型ブロックコポリマー)であってもよい。なかでも、所定の効果がより優れる点で、ジブロックコポリマーが好ましい。
【0044】
特定高分子の重量平均分子量は特に制限されないが、所定の効果がより優れる点で、1,000~100,000が好ましく、5,000~50,000がより好ましい。
【0045】
上記特定高分子は、公知の方法により合成できる。
【0046】
上述したように、ハードコート層は、導電性フィラーと、導電性フィラーを被覆するように配置された特定高分子とを有する被覆導電性フィラーを含むことが好ましい。被覆導電性フィラーの製造方法は特に制限されないが、後述するように、溶媒中において導電性フィラーおよび特定高分子を先に混合することにより、被覆導電性フィラーを得ることができる。特に、混合を加熱条件下にて実施することが好ましい。
ハードコート層中において、被覆導電性フィラーの存在の確認する方法としては、例えば、ハードコート層に対してエネルギー分散型X線分析(EDX)を行い、導電性フィラーの周囲に特定高分子由来の元素を検出することにより、被覆導電性フィラーの存在を確認する方法が挙げられる。また、他の方法としては、導電性フィラーおよび特定高分子を含む溶液の吸収スペクトルを測定することにより、被覆導電性フィラー由来の吸収特性を確認する方法も挙げられる。
【0047】
ハードコート層中における導電性フィラーの合計含有量は特に制限されないが、所定の効果がより優れる点で、ハードコート層全質量に対して、0.1~20質量%が好ましく、1~15質量%がより好ましく、3~10質量%がさらに好ましい。
【0048】
ハードコート層中における特定高分子の含有量は特に制限されないが、所定の効果がより優れる点で、ハードコート層全質量に対して、0.01~10質量%が好ましく、0.03~5質量%がより好ましく、0.05~1質量%がさらに好ましい。
【0049】
第1実施形態中のハードコート層は、上記導電性フィラーおよび特定高分子以外の他の成分を含んでいてもよい。
他の成分としては、例えば、ハードコート層は、重合性モノマーの重合体(重合性モノマーを重合させて得られる重合体)が挙げられる。
重合性モノマーは特に制限されないが、例えば、後述する、特定(メタ)アクリレートや、ラジカル重合性基を有するシルセスキオキサンや、多官能アクリレートが挙げられる。なかでも、ハードコート層は、特定(メタ)アクリレート、ラジカル重合性基を有するシルセスキオキサン、および、多官能アクリレートの3種を含む重合性モノマーを重合させて得られる重合体を含むことが好ましい。
また、ハードコート層は、後述する金属酸化物粒子を含んでいてもよい。
【0050】
ハードコート層の形成方法は特に制限されず、導電性フィラーおよび特定高分子を含むハードコート層形成用組成物を用いて形成する方法が挙げられる。なかでも、重合性モノマー、導電性フィラー、および、特定高分子を含むハードコート層形成用組成物を用いる方法が好ましい。
ハードコート層形成用組成物の形態は後段で詳述する。
【0051】
ハードコート層の形成方法としては、ハードコート層形成用組成物を眼鏡レンズ基材上に塗布して塗膜を形成し、塗膜に対して光照射処理などの硬化処理を実施する方法が挙げられる。
なお、塗膜を形成した後、必要に応じて、塗膜から溶媒を除去するために、加熱処理などの乾燥処理を実施してもよい。
【0052】
ハードコート層形成用組成物を眼鏡レンズ基材上に塗布する方法は特に制限されず、公知の方法(例えば、ディッピングコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、インクジェットコーティング法、および、フローコーティング法)が挙げられる。例えば、ディッピングコーティング法を用いる場合、ハードコート層形成用組成物に眼鏡レンズ基材を浸漬し、その後、眼鏡レンズ基材を引き上げて乾燥することにより、眼鏡レンズ基材上に所定の膜厚の塗膜を形成できる。
眼鏡レンズ基材上に形成される塗膜の膜厚は特に制限されず、所定のハードコート層の膜厚となるような膜厚が適宜選択される。
【0053】
光照射処理の条件は特に制限されず、使用される重合開始剤の種類によって適した条件が選択される。
光照射の際の光の種類は特に制限されないが、例えば、紫外線および可視光線が挙げられる。光源としては、例えば、高圧水銀灯が挙げられる。
光照射の際の積算光量は特に制限されないが、生産性および塗膜の硬化性の点で、100~5000mJ/cmが好ましく、100~2000mJ/cmがより好ましい。
【0054】
ハードコート層の膜厚は特に制限されないが、1μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、10μm以上がさらに好ましい。なお、膜厚の上限は、例えば、30μm以下とすることができる。
上記膜厚は平均膜厚であり、その測定方法としては、ハードコート層の任意の5点の膜厚を測定し、それらを算術平均して求める。
【0055】
(他の部材)
眼鏡レンズの第1実施形態は、上述した眼鏡レンズ基材およびハードコート層以外の他の部材を含んでいてもよい。
他の部材としては、例えば、プライマー層、および、反射防止膜が挙げられる。
【0056】
プライマー層は、眼鏡レンズ基材とハードコート層との間に配置される層であり、ハードコート層の眼鏡レンズ基材に対する密着性を向上させ、眼鏡レンズ基材に耐衝撃性を付与する層である。
プライマー層を構成する材料は特に制限されず、公知の材料を使用でき、例えば、主に樹脂が使用される。使用される樹脂の種類は特に制限されず、例えば、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ビスマレイミド系樹脂、および、ポリオレフィン系樹脂が挙げられ、ポリウレタン系樹脂が好ましい。
プライマー層は、上記樹脂以外の他の成分を含んでいてもよい。
他の成分としては、例えば、Si、Al、Sn、Sb、Ta、Ce、La、Fe、Zn、W、Zr、In、および、Tiから選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物微粒子またはこれらの複合酸化物微粒子、加水分解性ケイ素化合物および/またはその加水分解縮合物、導電性フィラー、特定高分子、並びに、界面活性剤が挙げられる。
【0057】
プライマー層の形成方法は特に制限されず、公知の方法を採用でき、例えば、所定の樹脂を含むプライマー層形成用組成物を眼鏡レンズ基材上に塗布して、必要に応じて硬化処理を施して、プライマー層を形成する方法が挙げられる。
プライマー層形成用組成物を塗布する方法は特に制限されず、例えば、ハードコート層形成用組成物を眼鏡レンズ基材上に塗布する方法で例示した方法が挙げられる。
プライマー層の厚さは特に制限されないが、0.3~2μmが好ましい。
【0058】
眼鏡レンズは、ハードコート層上に配置される反射防止膜をさらに含んでいてもよい。
反射防止膜は、入射した光の反射を防止する機能を有する層である。具体的には、400~780nmの可視領域全域にわたって、低い反射特性(広帯域低反射特性)を有することができる。
【0059】
反射防止膜の構造は特に制限されず、単層構造であっても、多層構造であってもよい。
反射防止膜としては、無機反射防止膜が好ましい。無機反射防止膜とは、無機化合物で構成される反射防止膜である。
多層構造の場合、低屈折率層と高屈折率層とを交互に積層した構造が好ましい。なお、高屈折率層を構成する材料としては、例えば、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ニオブ、タンタル、または、ランタンの酸化物が挙げられる。また、低屈折率層を構成する材料としては、例えば、シリカの酸化物が挙げられる。
反射防止膜の製造方法は特に制限されないが、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法、および、CVD法などの乾式法が挙げられる。
【0060】
<第2実施形態>
図2は、眼鏡レンズの第2実施形態の断面図である。
図2に示す眼鏡レンズ10Bは、眼鏡レンズ基材12と、眼鏡レンズ基材12の両面上に配置されたプライマー層16と、プライマー層16上に配置されたハードコート層14Bとを含む。
図2においては、眼鏡レンズ基材12の両面にプライマー層16およびハードコート層14Bが配置されているが、眼鏡レンズ基材12の片面のみにプライマー層16およびハードコート層14Bが配置されていてもよい。
なお、本実施形態においては、プライマー層16に上述した導電性フィラーおよび特定高分子が含まれる。ハードコート層14Bには、導電性フィラーおよび特定高分子は含まれない。
以下、眼鏡レンズ10Bに含まれる各部材について詳述する。
【0061】
眼鏡レンズの第2実施形態に含まれる眼鏡レンズ基材は、上述した眼鏡レンズの第1実施形態に含まれる眼鏡レンズと同じであるため、説明を省略する。
また、眼鏡レンズの第2実施形態に含まれるハードコート層と、上述した眼鏡レンズの第1実施形態に含まれるハードコート層とは、眼鏡レンズの第2実施形態に含まれるハードコート層に導電性フィラーおよび特定高分子が含まれない点以外は、同じ形態であるため、説明を省略する。
また、眼鏡レンズの第2実施形態に含まれるプライマー層は、上述した眼鏡レンズの第2実施形態に含まれてもよいプライマー層とは、眼鏡レンズの第2実施形態に含まれるプライマー層に導電性フィラーおよび特定高分子が含まれる点以外は、同じ形態であるため、以下では両者が異なる点のみについて詳述する。
【0062】
眼鏡レンズの第2実施形態のプライマー層には、上述した導電性フィラーおよび特定高分子が含まれる。導電性フィラーおよび特定高分子の説明は、上述した通りである。
【0063】
プライマー層は、導電性フィラーおよび特定高分子以外の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、眼鏡レンズの第1実施形態で説明した樹脂が挙げられる。
【0064】
プライマー層中における導電性フィラーの合計含有量は特に制限されないが、所定の効果がより優れる点で、プライマー層全質量に対して、0.1~20質量%が好ましく、1~15質量%がより好ましく、3~10質量%がさらに好ましい。
【0065】
プライマー層中における特定高分子の含有量は特に制限されないが、所定の効果がより優れる点で、プライマー層全質量に対して、0.01~10質量%が好ましく、0.05~5質量%がより好ましく、0.10~2質量%がさらに好ましい。
【0066】
プライマー層の形成方法は特に制限されず、導電性フィラーおよび特定高分子を含むプライマー層形成用組成物を用いる方法が挙げられる。
【0067】
<組成物>
導電性フィラーおよび特定高分子を含む層(例えば、導電性フィラーおよび特定高分子を含むハードコート層、導電性フィラーおよび特定高分子を含むプライマー層)は、導電性フィラーおよび特定高分子を含む組成物を用いて形成できる。
例えば、導電性フィラーおよび特定高分子を含むハードコート層は、重合性モノマー、導電性フィラー、および、特定高分子を含む組成物(ハードコート層形成用組成物)を用いて形成できる。また、導電性フィラーおよび特定高分子を含むプライマー層は、樹脂、導電性フィラー、および、特定高分子を含む組成物(プライマー層形成用組成物)を用いて形成できる。
以下では、ハードコート層形成用組成物についてより詳細に説明する。
なお、導電性フィラーおよび特定高分子の説明は、上述した通りである。なお、上記組成物(特に、ハードコート層形成用組成物)は、導電性フィラーと、導電性フィラーを被覆するように配置された特定高分子とを有する被覆導電性フィラーを含むことが好ましい。
【0068】
(リン酸基、および、スルホン酸基からなる群から選択される基を少なくとも1つ有する(メタ)アクリレート)
ハードコート層形成用組成物に含まれ得る重合性モノマーとして、リン酸基、および、スルホン酸基からなる群から選択される基(以後、単に「特定基」とも称する。)を少なくとも1つ有する(メタ)アクリレート(以後、単に「特定(メタ)アクリレート」とも称する)が挙げられる。
なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。
特定基としては、リン酸基が好ましい。
特定(メタ)アクリレート中における特定基の数は1以上であればよく、2以上であってもよい。上限としては、例えば、5以下とすることができる。
特定(メタ)アクリレートは、単官能であっても、多官能であってもよい。なお、多官能とは、特定(メタ)アクリレートが2以上の特定基を有することを意味する。
リン酸基は、以下の式で表される基である。*は、結合位置を表す。
【0069】
【化4】
【0070】
スルホン酸基は、以下の式で表される基である。
【0071】
【化5】
【0072】
特定(メタ)アクリレートとしては、式(E)で表される化合物が好ましい。
式(E) CH=CR-COO-L-Z
は、水素原子またはメチル基を表す。
は、ヘテロ原子(例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子)を含んでいてもよい2価の炭化水素基を表す。2価の炭化水素基の炭素数は特に制限されず、1~10が好ましい。2価の炭化水素基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、および、これらの基の組み合わせが挙げられ、ヘテロ原子を含んでいてもよいアルキレン基(例えば、-O-アルキレン基-)が好ましい。
Zは、リン酸基、および、スルホン酸基からなる群から選択される基を表す。
【0073】
(ラジカル重合性基を有するシルセスキオキサン)
ハードコート層形成用組成物に含まれ得る重合性モノマーとして、ラジカル重合性基を有するシルセスキオキサンが挙げられる。
ラジカル重合性基としては、エチレン性不飽和結合を有する基が好ましい。エチレン性不飽和結合を有する基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、および、ビニル基が挙げられる。
なお、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基またはメタアクリロイル基を意味する。
【0074】
なお、一般的に、シルセスキオキサン化合物とは、アルコキシシラン、クロロシラン、および、シラノールなどの3官能性シラン化合物を加水分解することで得られる式(F)で表される基本骨格を有するシラン化合物である。シルセスキオキサン化合物の構造としては、ランダム構造と呼ばれる不規則の形態のほかに、ラダー構造、かご型(完全縮合ケージ型)構造、および、不完全かご型構造(かご型構造の部分開裂構造体であって、かご型構造からケイ素原子のうちの一部が欠けた構造やかご型構造の一部のケイ素-酸素結合が切断された構造のもの)が知られている。
以下式(F)中、Rは有機基を表す。
式(F) R-SiO3/2
【0075】
ラジカル重合性基を有するシルセスキオキサン化合物の構造は特に制限されないが、上記ランダム構造、ラダー構造、かご型構造、および、不完全かご型構造のいずれであってもよく、また、複数種の構造の混合物であってもよい。
【0076】
シルセスキオキサン化合物に含まれるラジカル重合性基当量は特に制限されないが、ハードコート層の硬度がより優れる点で、30~500g/eq.が好ましく、30~150g/eq.がより好ましい。
【0077】
ラジカル重合性基を有するシルセスキオキサン化合物は、公知の方法にて合成してもよいし、市販品を用いてもよい。
【0078】
(多官能アクリレート)
ハードコート層形成用組成物に含まれ得る重合性モノマーとして、特定(メタ)アクリレートおよびラジカル重合性基を有するシルセスキオキサンのいずれとも異なる多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
多官能(メタ)アクリレートとは、(メタ)アクリロイル基を複数有する化合物である。(メタ)アクリロイル基の数は特に制限されないが、2~6個が好ましく、2~3個がより好ましい。
【0079】
多官能(メタ)アクリレートとしては、式(G)で表される化合物が好ましい。
式(G) CH=CRg1-CO-Lg1-CO-CRg2=CH
g1およびRg2は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。
g1は、ヘテロ原子(例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子)を含んでいてもよい2価の炭化水素基を表す。2価の炭化水素基の炭素数は特に制限されず、1~10が好ましい。2価の炭化水素基としては、例えば、ヘテロ原子を含んでいてもよい、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、および、これらの基の組み合わせが挙げられ、ヘテロ原子を含んでいてもよいアルキレン基が好ましい。
なかでも、酸素原子を含むアルキレン基が好ましく、-O-(Lg2-O)-で表される基が好ましい。なお、Lg2は、アルキレン基(好ましくは、炭素数1~3)を表す。pは、1以上の整数を表し、1~10の整数が好ましく、2~5の整数がより好ましい。
【0080】
(金属酸化物粒子)
ハードコート層形成用組成物は、金属酸化物粒子を含んでいてもよい。
金属酸化物粒子の種類は特に制限されず、公知の金属酸化物粒子が挙げられる。金属酸化物粒子としては、例えば、Si、Al、Sn、Sb、Ta、Ce、La、Fe、Zn、W、Zr、In、および、Tiから選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物の粒子が挙げられる。なかでも、取り扱い性の点で、金属酸化物粒子を、Siを含む酸化物の粒子(酸化ケイ素粒子)、Snを含む酸化物の粒子(酸化スズ粒子)、Zrを含む酸化物の粒子(酸化ジルコニウム粒子)、または、Tiを含む酸化物の粒子(酸化チタン粒子)が好ましい。
なお、金属酸化物粒子には、上記に例示した1種の金属(金属原子)のみが含まれていてもよいし、2種以上の金属(金属原子)が含まれていてもよい。
また、Si(ケイ素)は半金属に分類される場合があるが、本明細書ではSiを金属に含めるものとする。
【0081】
金属酸化物粒子の平均粒径は特に制限されないが、例えば、1~200nmが好ましく、5~30nmがより好ましい。上記範囲内であれば、ハードコート層形成用組成物中での金属酸化物粒子の分散安定性がより優れるとともに、硬化物の白色化をより抑制できる。
なお、上記平均粒径は、透過型電子顕微鏡にて20個以上の金属酸化物粒子の直径を測定して、それらを算術平均して求める。なお、金属酸化物粒子が真円状でない場合、長径を直径とする。
【0082】
金属酸化物粒子の表面には、必要に応じて、各種官能基が導入されていてもよい。
【0083】
(その他成分)
ハードコート層形成用組成物は、上述した成分(特定(メタ)アクリレート、ラジカル重合性基を有するシルセスキオキサン化合物、金属酸化物粒子)以外の成分を含んでいてもよい。
【0084】
ハードコート層形成用組成物は、ラジカル重合開始剤を含んでいてもよい。ラジカル重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤および熱ラジカル重合開始剤が挙げられる。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、BASF社製イルガキュア127、184、07、651、1700、1800、819、369、261、TPO、DAROCUR1173、日本シイベルヘグナー社製エザキュアーKIP150、TZT、日本化薬株式会社製カヤキュアBMS、および、カヤキュアDMBIが挙げられる。
【0085】
ハードコート層形成用組成物は、溶媒を含んでいてもよい。
溶媒としては、水であっても、有機溶媒であってもよい。
有機溶媒の種類は特に制限されず、例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、アミド系溶媒、スルホン系溶媒、および、スルホキシド系溶媒が挙げられる。
【0086】
ハードコート層形成用組成物は、必要に応じて、紫外線吸収剤、老化防止剤、塗膜調整剤、光安定剤、酸化防止剤、着色防止剤、染料、充填剤、および、内部離型剤などの種々の添加剤を含んでいてもよい。
【0087】
ハードコート層形成用組成物は、上述した各種成分を含む。
ハードコート層形成用組成物の製造方法は特に制限されず、例えば、上述した成分を一括で混合してもよいし、分割して段階的に各成分を混合してもよい。
【0088】
なかでも、溶媒中において導電性フィラーおよび特定高分子を先に混合して、得られた混合液に他の成分を混合する方法が好ましい。この方法によれば、被覆導電性フィラーを含むハードコート層形成用組成物が得られる。
溶媒中において導電性フィラーおよび特定高分子を混合する際には、加熱条件下にて実施するのが好ましい。
加熱条件は使用される特定高分子の種類により最適な条件が選択されるが、70℃以上の温度で1時間以上加熱することが好ましい。
導電性フィラーと特定高分子との混合質量比(導電性フィラーの質量/特定高分子の質量)は特に制限されないが、0.05~30が好ましく、1~20がより好ましい。
溶媒としては、水、または、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒の種類は特に制限されず、例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、アミド系溶媒、スルホン系溶媒、および、スルホキシド系溶媒が挙げられる。
また、上記方法を実施する際には、必要に応じて、酸の存在下にて実施してもよい。
使用される酸としては、例えば、硝酸、塩酸、および、硫酸が挙げられる。
【0089】
ハードコート層形成用組成物中における導電性フィラーの含有量は特に制限されないが、所定の効果がより優れる点で、ハードコート層形成用組成物中の全固形分(ハードコート層構成成分)に対して、0.1~20質量%が好ましく、1~15質量%がより好ましく、3~10質量%がさらに好ましい。
なお、全固形分(ハードコート層構成成分)とは、硬化処理によりハードコート層を構成する成分であり、上述した、導電性フィラー、特定高分子、特定(メタ)アクリレート、ラジカル重合性基を有するシルセスキオキサン化合物、金属酸化物粒子、多官能(メタ)アクリレート、および、ラジカル重合開始剤などが該当し、溶媒は固形分に含まれない。また、成分が液状であっても、ハードコート層を構成する成分であれば、固形分として計算する。
【0090】
ハードコート層形成用組成物中における特定高分子の含有量は特に制限されないが、所定の効果がより優れる点で、ハードコート層形成用組成物中の全固形分(ハードコート層構成成分)に対して、0.01~10質量%が好ましく、0.03~5質量%がより好ましく、0.05~1質量%がさらに好ましい。
【0091】
ハードコート層形成用組成物中における特定(メタ)アクリレートの含有量は特に制限されないが、所定の効果がより優れる点で、ハードコート層形成用組成物中の全固形分(ハードコート層構成成分)に対して、1~30質量%が好ましく、3~20質量%がより好ましい。
【0092】
ハードコート層形成用組成物中におけるラジカル重合性基を有するシルセスキオキサン化合物の含有量は特に制限されないが、所定の効果がより優れる点で、ハードコート層形成用組成物中の全固形分に対して、5~80質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましい。
【0093】
ハードコート層形成用組成物中における金属酸化物粒子の含有量は特に制限されないが、所定の効果がより優れる点で、ハードコート層形成用組成物中の全固形分に対して、10~90質量%が好ましく、25~75質量%がより好ましい。
【0094】
ハードコート層形成用組成物に多官能(メタ)アクリレートが含まれる場合、多官能(メタ)アクリレートの含有量は特に制限されないが、所定の効果がより優れる点で、ハードコート層形成用組成物中の全固形分に対して、1~20質量%が好ましく、3~15質量%がより好ましい。
【0095】
ハードコート層形成用組成物にラジカル重合開始剤が含まれる場合、ラジカル重合開始剤の含有量は特に制限されないが、所定の効果がより優れる点で、ハードコート層形成用組成物中の全固形分に対して、0.05~5質量%が好ましく、0.1~3質量%がより好ましい。
【実施例
【0096】
以下、上記形態に関して実施例および比較例によりさらに詳しく説明するが、これらの実施例によって何ら制限されるものではない。
なお、実施例および比較例において、ポリマーを含有する液体は溶液と表記し、金属ナノワイヤーを含有する液体は分散液と表記している。また、ポリマーおよび金属ナノワイヤーを含有する液体については、便宜上、溶液と表記している。
【0097】
<ポリマー1の合成>
トルエン(84.9質量部)、1,4-ジオキサン(3.6質量部)、2,6-ジターシャリーブチルピリジン(0.065質量部)、イソブチルビニルエーテル(IBVE)(11.4質量部)、イソブトキシエチルアセテート(IBEA)(0.022質量部)を、乾燥窒素雰囲気下、三方活栓付きガラス容器にて混合した。溶液を氷浴により0℃に恒温化し、同温のEt1.5AlCl1.5(0.042質量部)のトルエン溶液(10質量部)を添加し、溶液を攪拌した。添加から5分後、さらにSnCl(0.088質量部)のトルエン溶液(10質量部)を添加し、重合を開始した。IBVEの重合終期時に、2-クロロエチルビニルエーテル(CEVE)(12.4質量部)を溶液に添加した。なお、重合終期時とは、ガスクロマトグラフィーにより残存するIBVEの量が仕込み量の5質量%を下回った時を意味する。
添加から2時間後に、アンモニア水入りメタノール(20質量部)を溶液に添加して反応を停止した。その後、得られた溶液を希塩酸で洗浄し、次に、水による洗浄で触媒残渣を除き、その後、溶媒などを全て蒸発させて、[IBVE]400[CEVE]100ブロックコポリマーを得た。なお、「400」および「100」は、それぞれ、各繰り返し単位の数を表す。
N-メチルピロリドン(83.0質量部)に[IBVE]400[CEVE]100のブロックコポリマー(4.8質量部)と、1,2-ジメチルイミダゾール(4.8質量部)と、ヨウ化ナトリウム(7.5質量部)とを加え、得られた溶液を80℃で3日間攪拌した。その後、溶液を純水で洗浄した。得られた溶液にテトラフルオロホウ酸ナトリウム(4質量部)を加え、常温で1日攪拌した。その後、得られた溶液をMilliQ水で2回洗浄し、次に、アセトンで1回洗浄し、その後、60℃で6時間加熱して、溶媒を全て蒸発させて、ポリマー1(IBVE400-b-[MeIm][BF100)を得た。なお、「400」および「100」は、それぞれ、各繰り返し単位の数を表す。
ポリマー1の構造式を以下に示す。式中、nが「400」、mが「100」に該当し、ポリマー1はIBVE由来の繰り返し単位から構成されるセグメントと、以下のイオン液体由来の基を有する繰り返し単位から構成されるセグメントとを有するジブロックコポリマーに該当する。
【0098】
【化6】
【0099】
得られたポリマー1(0.5質量部)を酢酸エチル(99.5質量部)に加え、0.5質量%のポリマー1の酢酸エチル溶液(以下、「溶液A」ともいう。)を作製した。
【0100】
<ポリマー2の合成>
[IBVE]400[CEVE]100のブロックコポリマーの代わりに、[IBVE]400[CEVE]50のブロックコポリマーを用いた以外は、上記<ポリマー1の合成>と同様の手順に従って、ポリマー2(IBVE400-b-[MeIm][BF50)を得た。
ポリマー2は、ポリマー1と同様の種類の繰り返し単位を有し、上記式中のnが「400」、mが「50」のポリマーに該当する。
得られたポリマー2(0.5質量部)を酢酸エチル(99.5質量部)に加え、0.5質量%のポリマー2の酢酸エチル溶液(以下、「溶液B」ともいう。)を作製した。
【0101】
<比較例1>
(プライマー層形成)
水系ウレタンディスパージョン(エバファール HA170、日華化学社製、固形分濃度37%)(200質量部)に、純水(289質量部)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(10.6質量部)、界面活性剤としてL77(Momentive製)(0.2質量部)とL7604(Dow Chemical製)(0.2質量部)を加えて撹拌し、固形分濃度14.8質量%のプライマー層形成用組成物1を作製した。
プラスチック眼鏡レンズ基材として、屈折率1.60のレンズ((株)ニコン・エシロール製:ニコンライト3AS生地 S0.00D)を用いた。
上記プラスチック眼鏡レンズ基材をプライマー層形成用組成物1に90mm/minでディッピングし、90℃で20分間焼成し、プライマー層を形成した。
【0102】
(ハードコート層形成)
金属酸化物粒子として二酸化ジルコニウム分散液(関東電化工業社製)(175質量部)(40質量%二酸化ジルコニウムナノ粒子/プロピレングリコールモノメチルエーテル分散液、二酸化ジルコニウム固形分(70質量部))と、ポリエチレングリコールジメタクリレート(ライトアクリレート4EG-A、共栄社化学社製)(10質量部)と、ラジカル重合性基を有するシルセスキオキサンとしてメタクリル系シルセスキオキサン(AC-SQ TA-100、東亞合成社製)(15質量部)と、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート(ホスマーM、ユニケミカル社製)(5質量部)と、イルガキュア127(光重合開始剤、BASF社製)(0.1質量部)とをこの順に混合して、ハードコート層形成用組成物C1を得た。
【0103】
プライマー層上に、ハードコート層形成用組成物C1(1.5mL)を垂らした後、スピンコートにより、ハードコート層形成用組成物C1が塗布されたプラスチック眼鏡レンズ基材を1000rpmで10秒間回転させた。次に、得られたプラスチック眼鏡レンズ基材を90℃で10分間加熱した後、光源として高圧水銀灯(100mW/cm)を用いて、塗膜に対してUV照射(積算光量:1.6J/cm)し、ハードコート層を形成した。
なお、プラスチック眼鏡レンズ基材の他方の表面に対しても上記と同様の処理を施し、プラスチック眼鏡レンズ基材の両面にハードコート層を配置した眼鏡レンズを得た。
【0104】
<比較例2>
溶液A(0.3質量部)と、ハードコート層形成用組成物C1(1.5質量部)を混合して、ハードコート層形成用組成物C2を得た。
ハードコート層形成用組成物C1のかわりに、ハードコート層形成用組成物C2を用いた以外は、比較例1と同様の手順に従って、眼鏡レンズを得た。
【0105】
<比較例3>
溶液B(0.3質量部)と、ハードコート層形成用組成物C1(1.5質量部)を混合して、ハードコート層形成用組成物C3を得た。
ハードコート層形成用組成物C1のかわりに、ハードコート層形成用組成物C3を用いた以外は、比較例1と同様の手順に従って、眼鏡レンズを得た。
【0106】
<比較例4>
Niナノワイヤー(Sigma-Aldrich、745561、直径:200nm、長さ:100~200μm)(0.015質量部)と、ハードコート層形成用組成物C1(1.5質量部)を混合して、ハードコート層形成用組成物C4を得た。
ハードコート層形成用組成物C1のかわりに、ハードコート層形成用組成物C4を用いた以外は、比較例1と同様の手順に従って、眼鏡レンズを得た。
【0107】
<比較例5>
Cuナノワイヤー分散液〔Sigma-Aldrich、807834、直径:100nm、長さ:20~30μm、5mg/mLエタノール分散液(比重:0.8)〕の溶媒を全て蒸発させ、残渣物を得た。
得られた残渣物(0.015質量部)と、ハードコート層形成用組成物C1(1.5質量部)を混合して、ハードコート層形成用組成物C5を得た。
ハードコート層形成用組成物C1のかわりに、ハードコート層形成用組成物C5を用いた以外は、比較例1と同様の手順に従って、眼鏡レンズを得た。
【0108】
<実施例1>
イソプロパノール(8質量部)と、Niナノワイヤー(Sigma-Aldrich、745561、直径:200nm、長さ:100~200μm)(0.15質量部)と、溶液A(1質量部)と、1mol/L硝酸水溶液(1質量部)とをこの順に混合し、得られた溶液を75℃で3時間攪拌して、ポリマー1およびNiナノワイヤーを含む溶液(以下、「混合溶液1」ともいう)を得た。なお、混合溶液1中においては、Niナノワイヤーと、Niナノワイヤーを被覆するように配置されたポリマー1とを有する被覆金属ナノワイヤーが含まれていた。
混合溶液1(2質量部)を、ハードコート層形成用組成物C1(3質量部)に滴下した。その後、溶媒を蒸発させて、固形分60質量%のハードコート層形成用組成物1を得た。
ハードコート層形成用組成物C1のかわりに、ハードコート層形成用組成物1を用いた以外は、比較例1と同様の手順に従って、眼鏡レンズを得た。
【0109】
<実施例2>
イソプロパノール(8質量部)と、Niナノワイヤー(Sigma-Aldrich、745561、直径:200nm、長さ:100~200μm)(0.15質量部)と、溶液A(3質量部)と、1mol/L硝酸水溶液(1質量部)とをこの順に混合し、得られた溶液を75℃で3時間攪拌して、ポリマー1およびNiナノワイヤーを含む溶液(以下、「混合溶液2」ともいう)を得た。なお、混合溶液2中においては、Niナノワイヤーと、Niナノワイヤーを被覆するように配置されたポリマー1とを有する被覆金属ナノワイヤーが含まれていた。
混合溶液2(2.4質量部)とハードコート層形成用組成物C1(3質量部)に滴下した。その後、溶媒を蒸発させて、固形分60質量%のハードコート層形成用組成物2を得た。
ハードコート層形成用組成物C1のかわりに、ハードコート層形成用組成物2を用いた以外は、比較例1と同様の手順に従って、眼鏡レンズを得た。
【0110】
<実施例3>
混合溶液1(5質量部)と、ハードコート層形成用組成物C1(3質量部)に滴下した。その後、溶媒を蒸発させて、固形分50質量%のハードコート層形成用組成物3を得た。
ハードコート層形成用組成物C1のかわりに、ハードコート層形成用組成物3を用いた以外は、比較例1と同様の手順に従って、眼鏡レンズを得た。
【0111】
<実施例4>
溶液Aのかわりに溶液Bを用いた以外は、実施例3と同様の手順に従って、眼鏡レンズを得た。
【0112】
<実施例5>
イソプロパノール(8質量部)と、Cuナノワイヤー分散液〔Sigma-Aldrich、807834、直径:100nm、長さ:20~30μm、5mg/mLエタノール分散液(比重:0.8)〕(24質量部)と、水(10質量部)と、塩酸(0.5質量部)と、溶液A(0.6質量部)とをこの順に混合し、得られた溶液を75℃で10時間攪拌して、ポリマー1およびCuナノワイヤーを含む溶液(以下、「混合溶液3」ともいう)を得た。なお、混合溶液3中においては、Cuナノワイヤーと、Cuナノワイヤーを被覆するように配置されたポリマー1とを有する被覆金属ナノワイヤーが含まれていた。
混合溶液3(4.3質量部)を、ハードコート層形成用組成物C1(1.5質量部)に滴下した。その後、溶媒を蒸発させて、固形分42質量%のハードコート層形成用組成物5を得た。
ハードコート層形成用組成物C1のかわりに、ハードコート層形成用組成物5を用いた以外は、比較例1と同様の手順に従って、眼鏡レンズを得た。
【0113】
<実施例6>
混合溶液3(6.5質量部)を、ハードコート層形成用組成物C1(1.5質量部)に滴下した。その後、溶媒を蒸発させて、固形分42質量%のハードコート層形成用組成物6を得た。
ハードコート層形成用組成物C1のかわりに、ハードコート層形成用組成物6を用いた以外は、比較例1と同様の手順に従って、眼鏡レンズを得た。
【0114】
<実施例7>
イソプロパノール(8質量部)と、Cuナノワイヤー分散液〔Sigma-Aldrich、807834、直径:100nm、長さ:20~30μm、5mg/mLエタノール分散液(比重:0.8)〕(24質量部)と、水(10質量部)と、塩酸(0.5質量部)と、溶液A(1質量部)とをこの順に混合し、得られた溶液を75℃で10時間攪拌して、ポリマー1およびCuナノワイヤーを含む溶液(以下、「混合溶液4」ともいう)を得た。なお、混合溶液4中においては、Cuナノワイヤーと、Cuナノワイヤーを被覆するように配置されたポリマー1とを有する被覆金属ナノワイヤーが含まれていた。
混合溶液4(4.4質量部)を、ハードコート層形成用組成物C1(1.5質量部)に滴下した。その後、溶媒を蒸発させて、固形分42質量%のハードコート層形成用組成物7を得た。
ハードコート層形成用組成物C1のかわりに、ハードコート層形成用組成物7を用いた以外は、比較例1と同様の手順に従って、眼鏡レンズを得た。
【0115】
<実施例8>
混合溶液4(6.5質量部)と、ハードコート層形成用組成物C1(1.5質量部)に滴下して、ハードコート層形成用組成物8を得た。その後、溶媒を蒸発させて、固形分42質量%のハードコート層形成用組成物8を得た。
ハードコート層形成用組成物C1のかわりに、ハードコート層形成用組成物8を用いた以外は、比較例1と同様の手順に従って、眼鏡レンズを得た。
【0116】
<評価>
上記実施例および比較例にて得られた眼鏡レンズを用いて、以下の評価を実施した。なお、結果は、後述する表1にまとめて示す。
【0117】
(表面抵抗率)
表面抵抗率計はハイレスタUP MCP-HT450(ミツビシケミカルアナリテック)を用いた。ハードコート層表面に電極を直角に当て、電圧を500V印加した。30秒間当てた後、30秒目に計測した値を表面抵抗率とした。
【0118】
(密着性1)
JIS-K5600に準じて、クロスカットテープ試験によって密着性を評価した。
具体的には、まず、ナイフを用い、眼鏡レンズのハードコート層表面に1mm間隔にプラスチック眼鏡レンズ基材まで達する切れ目を入れ、マス目を100個形成した。次に、切れ目を入れたハードコート層上へスコッチテープ(3M社製)を強く押しつけた。その後、ハードコート層表面から60°方向へすばやくスコッチテープを荷重4kgにて引っ張り、剥離させた後、プラスチック眼鏡レンズ基材上に残っているマス目の数を数えた。
【0119】
(密着性2)
JIS-K5600に準じて、クロスカットテープ試験によって密着性を評価した。
具体的には、まず、後述する(反射防止膜の形成)の手順に従って、ハードコート層上に反射防止膜を形成して、反射防止膜含有眼鏡レンズを得た。
次に、ナイフを用い、反射防止膜含有眼鏡レンズの反射防止膜表面に1mm間隔にプラスチック眼鏡レンズ基材まで達する切れ目を入れ、マス目を100個形成した。次に、切れ目を入れた反射防止膜上へスコッチテープ(3M社製)を強く押しつけた。その後、反射防止膜表面から60°方向へすばやくスコッチテープを荷重4kgにて引っ張り、剥離させた後、プラスチック眼鏡レンズ基材上に残っているマス目の数を数えた。
【0120】
(反射防止膜の形成)
得られた眼鏡レンズを真空槽内に設けられた回転するドームにセットし、真空槽内の温度を70℃に加熱し、圧力が1.0×10-3Paになるまで排気した。次に、加速電圧500Vおよび加速電流100mAの条件でArイオンビームクリーニングを一方のハードコート層に対して60秒間施した後、クリーニングしたハードコート層上に、順次、第1層SiO(屈折率1.47)を光学的膜厚0.090λ、第2層ZrO(屈折率2.00)を光学的膜厚0.038λ、第3層SiO(屈折率1.47)を光学的膜厚0.393λ、第4層ZrO(屈折率2.00)を光学的膜厚0.104λ、第5層SiO(屈折率1.47)を光学的膜厚0.069λ、第6層ZrO(屈折率2.00)を光学的膜厚0.289λ、および、第7層SiO(屈折率1.47)を光学的膜厚0.263λで積層し、反射防止膜を形成した。なお、λは設計の中心波長で500nmとした。
また、他方のハードコート層に対しても上記と同様の処理を施し、眼鏡レンズの両面に反射防止膜を形成し、反射防止膜含有眼鏡レンズを得た。
【0121】
(鉛筆硬度)
ハードコート層表面に対して斜め60度に鉛筆に位置するように、ハードコート層表面に鉛筆を置き、前に力強くスライドさせて、ハードコート層表面のへこみの有無を確認した。目視でへこみが観察されなければ、使用する鉛筆の鉛筆硬度を一段上げて、同様の試験を実施して、へこみが観察されるまで行った。へこみが観察される測定の1つ前の測定において使用した鉛筆の硬度を鉛筆硬度とし、結果を表1に示す。
【0122】
(外観特性)
得られた眼鏡レンズを顕微鏡(VHX-1000、キーエンス)で観察して、金属ナノワイヤーの凝集物が異物として観察されない場合を「A」、金属ナノワイヤーの凝集物が異物として観察される場合を「B」とした。
【0123】
(視感透過率)
富士光電工業株式会社性LED透過率計、LDM-200を使用し、上記(反射防止膜の形成)で製造した反射防止膜含有眼鏡レンズの視感透過率を測定した。
【0124】
表1中、「ポリマー」欄の「種類」欄は、使用したポリマーを表し、「1」はポリマー1を、「2」はポリマー2を意味する。
表1中、「ポリマー」欄の「濃度(質量%)」欄は、ハードコート層全質量に対するポリマーの含有量(質量%)を表す。
表1中、「金属ナノワイヤー」欄の「種類」欄は、使用した金属ナノワイヤーを示し、NiNWはNi(ニッケル)ナノワイヤーを意味し、CuNWはCu(銅)ナノワイヤーを意味する。
表1中、「金属ナノワイヤー」欄の「濃度(体積%)」欄は、ハードコート層全体積に対するポリマーの含有量(体積%)を表す。
表1中、「金属ナノワイヤー」欄の「濃度(質量%)」欄は、ハードコート層全質量に対するポリマーの含有量(質量%)を表す。
表1中、「膜厚(μm)」は、ハードコート層の膜厚を表す。
【0125】
【表1】
【0126】
表1に示すように、所定の眼鏡レンズであれば、所望の効果が得られることが確認された。
【符号の説明】
【0127】
10A,10B 眼鏡レンズ
12 眼鏡レンズ基材
14A,14B ハードコート層
16 プライマー層
図1
図2