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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-29
(45)【発行日】2024-09-06
(54)【発明の名称】成膜方法及び成膜装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/52 20060101AFI20240830BHJP
   G01N 21/3563 20140101ALI20240830BHJP
   H01L 21/31 20060101ALN20240830BHJP
   H01L 21/318 20060101ALN20240830BHJP
【FI】
C23C16/52
G01N21/3563
H01L21/31 C
H01L21/318 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020104779
(22)【出願日】2020-06-17
(65)【公開番号】P2021195609
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-03-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公開日 令和2年3月16日 https://ald2020.avs.org/online-desktop-planner/Mon,Jun29の「AF-MoP:ALD Fundamentals Poster Session」内の「Infrared Spectroscopy of SiNx Grown by Atomic Layer Deposition on Structured Substrates」(AF-MoP50)
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大槻 友志
(72)【発明者】
【氏名】加賀谷 宗仁
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠介
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-158160(JP,A)
【文献】特開2001-234348(JP,A)
【文献】特開2002-110640(JP,A)
【文献】特開平03-010082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/52
G01N 21/3563
H01L 21/31
H01L 21/318
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を含むパターンが形成された基板をチャンバ内の載置台に準備する準備工程と、
前記載置台を介して対向したチャンバ側壁の一方に設けた照射部から光路差の異なる干渉波の赤外光を前記凹部を含む前記パターンに照射し、前記凹部を含む前記パターンから反射した光路差の異なる干渉波の赤外光をチャンバ側壁の他方に設けた検出部で検出することにより、前記凹部を含む前記パターンの状態を測定する第1の測定工程と、
前記第1の測定工程の後、前記凹部を含む前記パターンに沿って膜を成膜する成膜工程と、
前記成膜工程の後、前記載置台を介して対向したチャンバ側壁の一方に設けた前記照射部から光路差の異なる干渉波の赤外光を前記凹部を含む前記パターンに沿って形成された膜に照射し、前記凹部を含む前記パターンに沿って形成された膜から反射した光路差の異なる干渉波の赤外光をチャンバ側壁の他方に設けた前記検出部で検出することにより、前記凹部を含むパターンに沿って形成された膜の状態を測定する第2の測定工程と、
前記第1の測定工程の測定データと前記第2の測定工程の測定データとの差分データを抽出する抽出工程と、
を有する成膜方法。
【請求項2】
前記抽出工程は、前記第1の測定工程による成膜前の測定データと前記第2の測定工程による成膜後の測定データから、赤外光の波数毎に、赤外光の吸光度をそれぞれ求め、波数毎に、成膜後の赤外光の吸光度から成膜前の赤外光の吸光度を減算して前記膜による波数毎の赤外光の吸光度を差分データとして抽出する
をさらに有する請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記抽出工程により抽出された差分データに基づき、前記成膜工程により前記基板に成膜された膜の状態を表示する表示工程
をさらに有する請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記抽出工程により抽出された差分データに基づき、前記成膜工程のプロセスパラメータを制御する制御工程
をさらに有する請求項1~3の何れか1つに記載の成膜方法。
【請求項5】
前記制御工程は、複数の基板の前記差分データから基板間の差分データの比較に基づいて前記成膜工程のプロセスパラメータを制御する
請求項4に記載の成膜方法。
【請求項6】
前記第1の測定工程及び前記第2の測定工程は、前記基板の面内の複数個所でそれぞれ実施し、
前記制御工程は、前記複数個所のそれぞれで前記第1の測定工程の測定データと前記第2の測定工程の測定データとの差分データを抽出し、抽出した前記複数個所の差分データに基づいてプロセスパラメータを制御する
請求項4に記載の成膜方法。
【請求項7】
前記制御工程は、前記複数個所の差分データから前記基板に成膜された膜の膜厚の分布と膜質を求め、膜厚の分布を均一化しつつ所定の膜質となるようにプロセスパラメータを制御する
請求項6に記載の成膜方法。
【請求項8】
前記成膜工程は、定期的に同じ成膜条件で基板に膜を成膜し、
同じ成膜条件で成膜された複数の基板の前記差分データから基板間の差分データの比較に基づいて前記成膜工程を実施する装置のコンディションを診断する診断工程
をさらに有する請求項1~5の何れか1つに記載の成膜方法。
【請求項9】
凹部を含むパターンが形成された基板を載置する載置台が内部に設けられたチャンバと、
前記載置台に載置された前記基板に成膜を行う成膜部と、
前記載置台を介して対向したチャンバ側壁の一方に設けられた照射部と、チャンバ側壁の他方に設けられた検出部を含み、前記照射部から光路差の異なる干渉波の赤外光を前記凹部を含む前記パターンに照射し、前記凹部を含む前記パターンから反射した光路差の異なる干渉波の赤外光を前記検出部で検出することにより、前記凹部を含む前記パターンの状態を測定する測定部と、
成膜前の前記基板を前記測定部により測定し、前記成膜部により前記凹部を含む前記パターンに沿って膜を成膜し、成膜後の前記基板を前記測定部により測定し、成膜前の前記測定部による測定データと成膜後の前記測定部による測定データとの差分データを抽出する制御を行う制御部と、
を有する成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成膜方法及び成膜装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、成膜用基板とモニタ用基板とを載置して成膜を行い、モニタ用基板に形成された薄膜を赤外分光法により分析し、分析値に基づいて成膜用基板に形成する膜の膜質を適正化する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-56010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、凹部を含むパターンが形成された基板に成膜した膜の状態を検出する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による成膜方法は、第1の測定工程と、成膜工程と、第2の測定工程と、抽出工程とを有する。第1の測定工程は、凹部を含むパターンが形成された基板を赤外分光法により測定する。成膜工程は、第1の測定工程の後、基板に膜を成膜する。第2の測定工程は、成膜工程の後、基板を赤外分光法により測定する。抽出工程は、第1の測定工程の測定データと第2の測定工程の測定データとの差分データを抽出する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、凹部を含むパターンが形成された基板に成膜した膜の状態を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る成膜装置の一例を示す概略断面図である。
図2図2は、実施形態に係るプラズマによる成膜を説明する図である。
図3A図3Aは、TEM-EDXによる分析を説明する図である。
図3B図3Bは、TEM-EDXによる分析を説明する図である。
図4図4は、従来のFT-IR分析を説明する図である。
図5図5は、実施形態に係る成膜方法の流れを説明する図である。
図6図6は、実施形態に係る差分データを説明する図である。
図7図7は、実施形態に係るプラズマALDの処理プロセスの一例を示す図である。
図8A図8Aは、実施形態に係るSiN膜を成膜した基板の一例を示す図である。
図8B図8Bは、比較例に係るSiN膜を成膜したシリコン基板の一例を示す図である。
図9図9は、赤外光の波数毎の吸光度の一例を示す図である。
図10A図10Aは、赤外光の波数毎の吸光度の一例を示す図である。
図10B図10Bは、赤外光の波数毎の吸光度の一例を示す図である。
図10C図10Cは、赤外光の波数毎の吸光度の一例を示す図である。
図11図11は、実施形態に係る成膜装置の他の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本願の開示する成膜方法及び成膜装置の実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態により、開示する成膜方法及び成膜装置が限定されるものではない。
【0009】
半導体デバイスの製造では、凹部を含むパターンが形成された半導体ウエハ等の基板に対して、成膜装置によって成膜が行われる。成膜装置は、所定の真空度にされたチャンバ(処理容器)内に基板を配置し、チャンバ内に成膜原料ガスを供給する共にプラズマを生成して、基板に対して成膜を行う。成膜技術として、例えば、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)、プラズマALD(Atomic Layer Deposition)等が知られている。
【0010】
ところで、基板に形成されるパターンの微細化が進み、プラズマを用いた成膜では、パターンに含まれる凹部の側壁・底部の膜質が悪くなりやすい。そこで、半導体デバイスを製造する実際の基板とは別に、平坦なモニタ用基板に成膜を行い、モニタ用基板に形成した膜を赤外分光法により分析することで、実際の基板に成膜した膜の状態を類推する。
【0011】
しかし、実際の基板とモニタ用基板では、成膜される膜の状態が異なり、モニタ用基板に成膜した膜を赤外分光法で分析しても、実際の基板に成膜された膜の状態を求めることができない。
【0012】
そこで、凹部を含むパターンが形成された基板に成膜した膜の状態を検出する技術が期待されている。
【0013】
[実施形態]
[成膜装置の構成]
次に、実施形態について説明する。最初に、実施形態に係る成膜装置100について説明する。図1は、実施形態に係る成膜装置100の概略構成の一例を示す概略断面図である。成膜装置100は、1つの実施形態において、基板Wに対して成膜を行う装置である。図1に示す成膜装置100は、気密に構成され、電気的に接地電位とされたチャンバ1を有している。このチャンバ1は、円筒状とされ、例えば表面に陽極酸化被膜を形成されたアルミニウム、ニッケル等から構成されている。チャンバ1内には、載置台2が設けられている。
【0014】
載置台2は、例えばアルミニウム、ニッケル等の金属により形成されている。載置台2の上面には、半導体ウエハ等の基板Wが載置される。載置台2は、載置された基板Wを水平に支持する。載置台2の下面は、導電性材料により形成された支持部材4に電気的に接続されている。載置台2は、支持部材4によって支持されている。支持部材4は、チャンバ1の底面で支持されている。支持部材4の下端は、チャンバ1の底面に電気的に接続されており、チャンバ1を介して接地されている。支持部材4の下端は、載置台2とグランド電位との間のインピーダンスを下げるように調整された回路を介してチャンバ1の底面に電気的に接続されていてもよい。
【0015】
載置台2には、ヒータ5が内蔵されており、載置台2に載置される基板Wをヒータ5によって所定の温度に加熱することができる。載置台2は、冷媒を流通させるための流路(図示せず)が内部に形成され、チャンバ1の外部に設けられたチラーユニットによって温度制御された冷媒が流路内に循環供給されてもよい。ヒータ5による加熱と、チラーユニットから供給された冷媒による冷却とにより、載置台2は、基板Wを所定の温度に制御してもよい。なお、ヒータ5を搭載せず、チラーユニットから供給される冷媒のみで載置台2の温度制御を行ってもよい。
【0016】
なお、載置台2には、電極が埋め込まれていてもよい。この電極に供給された直流電圧によって発生した静電気力により、載置台2は、上面に載置された基板Wを吸着させることができる。また、載置台2には、チャンバ1の外部に設けられた図示しない搬送機構との間で基板Wを受け渡すための昇降ピン(図示せず)が設けられている。
【0017】
載置台2の上方であってチャンバ1の内側面には、略円盤状に形成されたシャワーヘッド16が設けられている。シャワーヘッド16は、セラミックス等の絶縁部材45を介して、載置台2の上部に支持されている。これにより、チャンバ1とシャワーヘッド16とは、電気的に絶縁されている。シャワーヘッド16は、例えばニッケル等の導電性の金属により形成されている。
【0018】
シャワーヘッド16は、天板部材16aと、シャワープレート16bとを有する。天板部材16aは、チャンバ1内を上側から塞ぐように設けられている。シャワープレート16bは、天板部材16aの下方に、載置台2に対向するように設けられている。天板部材16aには、ガス拡散空間16cが形成されている。天板部材16aとシャワープレート16bは、ガス拡散空間16cに向けて開口する多数のガス吐出孔16dが分散して形成されている。
【0019】
天板部材16aには、ガス拡散空間16cへ各種のガスを導入するためのガス導入口16eが形成されている。ガス導入口16eには、ガス供給路15aが接続されている。ガス供給路15aには、ガス供給部15が接続されている。
【0020】
ガス供給部15は、成膜に用いる各種のガスのガス供給源にそれぞれ接続されたガス供給ラインを有している。各ガス供給ラインは、成膜のプロセスに対応して適宜分岐し、開閉バルブなどのバルブや、マスフローコントローラなどの流量制御器など、ガスの流量を制御する制御機器が設けられている。ガス供給部15は、各ガス供給ラインに設けられた開閉バルブや流量制御器などの制御機器を制御することにより、各種のガスの流量の制御が可能とされている。
【0021】
ガス供給部15は、ガス供給路15aに成膜に用いる各種のガスを供給する。例えば、ガス供給部15は、成膜の原料ガスをガス供給路15aに供給する。また、ガス供給部15は、パージガスや原料ガスと反応する反応ガスをガス供給路15aに供給する。ガス供給路15aに供給されたガスは、ガス拡散空間16cで拡散されて各ガス吐出孔16dから吐出される。
【0022】
シャワープレート16bの下面と載置台2の上面とによって囲まれた空間は、成膜処理が行われる処理空間をなす。また、シャワープレート16bは、支持部材4およびチャンバ1を介して接地された載置台2と対になり、処理空間に容量結合プラズマ(CCP)を形成するための電極板として構成されている。シャワーヘッド16には、整合器11を介して高周波電源10が接続されており、高周波電源10からシャワーヘッド16を介して処理空間40に供給されたガスに高周波電力(RF電力)が供給されることで、上記のCCPが形成される。なお、高周波電源10は、シャワーヘッド16に接続される代わりに載置台2に接続され、シャワーヘッド16が接地されるようにしてもよい。本実施形態では、シャワーヘッド16、ガス供給部15、高周波電源10などの成膜を実施する部分が本開示の成膜部に対応する。
【0023】
チャンバ1の底部には、排気口71が形成されており、この排気口71には、排気管72を介して排気装置73が接続されている。排気装置73は、真空ポンプや圧力調整バルブを有しており、この真空ポンプや圧力調整バルブを作動させることによりチャンバ1内を所定の真空度まで減圧、調整することができるようになっている。
【0024】
チャンバ1の側壁には、載置台2を介して対向した位置に、窓80a、窓80bが設けられている。窓80a、窓80bは、例えば石英などの赤外光に対して透過性を有する部材がはめ込まれ、封止されている。窓80aの外側には、赤外光を照射する照射部81が設けられている。窓80bの外側には、赤外光を検出可能な検出部82が設けられている。窓80a及び照射部81は、照射部81から照射された赤外光が窓80aを介して基板Wに照射されるように位置が調整されている。また、窓80b及び検出部82は、基板Wで反射された赤外光が窓80bを介して検出部82に入射するように位置が調整されている。また、チャンバ1の窓80a、窓80bと異なる側壁には、基板Wを搬入出するための不図示の搬入出口が設けられている。この搬入出口には、当該搬入出口を開閉するゲートバルブが設けられている。
【0025】
照射部81は、照射した赤外光が窓80aを介して基板Wの中央付近の所定の領域に当たるように配置されている。例えば、照射部81は、基板Wの1~10mm程度の範囲の領域に赤外光を照射する。検出部82は、基板Wの所定の領域で反射された赤外光が窓80bを介して入射するよう配置されている。
【0026】
本実形態に係る成膜装置100は、赤外分光法(IR:infrared spectroscopy)により、基板Wで反射した赤外光の波数毎の吸光度を求めることで、基板Wに成膜された膜の状態を検出する。具体的には、成膜装置100は、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR:Fourier transform Infrared spectroscopy)により、反射した赤外光の波数毎の吸光度を求めることで、基板Wに成膜された膜に含まれる物質を検出する。
【0027】
照射部81は、赤外光を発する光源や、ミラー、レンズ等の光学素子を内蔵し、干渉させた赤外光を照射可能とされている。例えば、照射部81は、光源で発生した赤外光が外部へ出射されるまでの光路の中間部分を、ハーフミラー等で2つの光路に分光し、一方の光路長を、他方の光路長に対して変動させて光路差を変えて干渉させて、光路差の異なる様々な干渉波の赤外光を照射する。なお、照射部81は、光源を複数設け、それぞれの光源の赤外光を光学素子で制御して、光路差の異なる様々な干渉波の赤外光を照射可能としてもよい。
【0028】
検出部82は、基板Wで反射された様々な干渉波の赤外光の信号強度を検出する。本実施形態では、照射部81、検出部82などの赤外分光法の測定を実施する部分が本開示の計測部に対応する。
【0029】
上記のように構成された成膜装置100は、制御部60によって、その動作が統括的に制御される。制御部60には、ユーザインターフェース61と、記憶部62とが接続されている。
【0030】
ユーザインターフェース61は、工程管理者が成膜装置100を管理するためにコマンドの入力操作を行うキーボード等の操作部や、成膜装置100の稼動状況を可視化して表示するディスプレイ等の表示部から構成されている。ユーザインターフェース61は、各種の動作を受け付ける。例えば、ユーザインターフェース61は、プラズマ処理の開始を指示する所定操作を受け付ける。
【0031】
記憶部62には、成膜装置100で実行される各種処理を制御部60の制御にて実現するためのプログラム(ソフトウエア)や、処理条件、プロセスパラメータ等のデータが格納されている。なお、プログラムやデータは、コンピュータで読み取り可能なコンピュータ記録媒体(例えば、ハードディスク、CD、フレキシブルディスク、半導体メモリ等)などに格納された状態のものを利用してもよい。或いは、プログラムやデータは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可能である。
【0032】
制御部60は、例えば、プロセッサ、メモリ等を備えるコンピュータである。制御部60は、ユーザインターフェース61からの指示等に基づいてプログラムやデータを記憶部62から読み出して成膜装置100の各部を制御することで、後述する成膜方法の処理を実行する。
【0033】
制御部60は、データの入出力を行う不図示のインタフェースを介して、照射部81及び検出部82と接続され、各種の情報を入出力する。制御部60は、照射部81及び検出部82を制御する。例えば、照射部81は、制御部60からの制御情報に基づいて、光路差の異なる様々な干渉波を照射する。また、制御部60は、検出部82により検出された赤外光の信号強度の情報が入力する。
【0034】
ところで、半導体デバイスは、微細化が進み、基板Wに形成されるパターンもナノスケールの複雑な形状を有する。プラズマを用いた成膜では、ナノスケールの微細なパターンに含まれる凹部の側壁・底部の膜質が悪くなりやすい。図2は、実施形態に係るプラズマによる成膜を説明する図である。図2には、基板Wが示されている。基板Wには、ナノスケールの凹部90aを含むパターン90が形成されている。プラズマを用いた成膜では、イオンやラジカルが凹部90aの側壁や底部に届きづらく、凹部90aの側壁・底部の膜質が悪くなりやすい。膜質改善するために、凹部90aの側壁・底部の膜の組成を分析する必要がある。
【0035】
成膜した膜を分析する技術としては、例えば、TEM-EDXなどのエネルギー分散型X線分光法(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)や、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR:Fourier transform Infrared spectroscopy)などの赤外分光法が挙げられる。
【0036】
図3A及び図3Bは、TEM-EDXによる分析を説明する図である。図3Aには、凹部90aを有するパターン90にプラズマALDによりSiN膜91を成膜した状態を模式的に示している。凹部90aの底部90b(Bottom)、側壁90c(Side)、パターン90の上面90d(Top)の部分のSiN膜91をそれぞれTEM-EDXによる分析を行った。図3Bには、底部90b(Bottom)、側壁90c(Side)、上面90d(Top)の部分のSiN膜91をそれぞれのTEM-EDXによる分析結果の一例が示されている。TEM-EDXでは、SiN膜91の元素組成を知ることができる。
【0037】
図3Bには、底部90b(Bottom)、側壁90c(Side)、上面90d(Top)においてのN(窒素)、O(酸素)、Si(シリコン)の割合が示されている。Nの割合は、底部90b及び側壁90cよりも上面90dが高い。また、Oの割合は、上面90d、側壁90c、底部90bの順に高くなる。また、Siの割合は、底部90b及び側壁90cよりも上面90dが低い。この結果から底部90b、側壁90c、上面90dにおいて、元素組成に違いがみられることから、より詳細な分析が必要であることが分かった。しかし、TEM-EDXは、元素を検出できるものの、化学結合を検出できない。例えば、NがOとSiのどちらと結合しているかわからない。また、TEM-EDXによる分析では、H(水素)などの軽い原子を検出できない。
【0038】
図4は、従来のFT-IR分析を説明する図である。従来、FT-IR分析は、半導体デバイスを製造する実際の基板Wとは別に、平坦なモニタ用基板に成膜を行い、モニタ用基板に赤外光を照射し、モニタ用基板を透過又は反射した光を分析することで、実際の基板Wに成膜した膜の状態を類推する。図4には、モニタ用として平坦なシリコン基板95にプラズマALDによりSiN膜96を成膜した状態を模式的に示している。図4では、シリコン基板95に赤外光を照射し、シリコン基板95を透過した光を検出器で検出してFT-IR分析を行う。FT-IR分析では、化学結合の情報が得られる。また、FT-IR分析では、水素原子の振動を観測でき、水素などの軽い原子を検出できる。例えば、SiN膜96では、赤外光を吸収して分子が振動するため、FT-IR分析により、SiN、SiO、SiH、NHなどの化学結合を検出できる。
【0039】
しかし、半導体デバイスを製造する実際の基板Wとモニタ用のシリコン基板95では、成膜される膜の状態が異なり、シリコン基板95に成膜したSiN膜96を赤外分光法で分析しても、基板Wに成膜されたSiN膜91の状態を求めることができない。
【0040】
そこで、実施形態に係る成膜装置100では、制御部60が各部を制御して以下の成膜方法の処理を実施して、基板Wに成膜した膜の組成を分析する。
【0041】
図5は、実施形態に係る成膜方法の流れを説明する図である。最初に、成膜前の凹部を含むパターンが形成された基板を赤外分光法により測定する(ステップS10)。例えば、凹部90aを含むパターン90が表面に形成された成膜対象の基板Wが載置台2に載置される。成膜装置100では、制御部60が、照射部81を制御し、成膜前に、照射部81から基板Wに赤外光を照射し、基板Wで反射された赤外光を検出部82で検出して制御部60においてFT-IR分析を行う。
【0042】
次に、プラズマCVD、プラズマALDなどプラズマを用いて基板に膜を成膜する(ステップS11)。例えば、制御部60は、ガス供給部15、高周波電源10を制御し、プラズマALDにより基板Wの表面にSiN膜91を成膜する。
【0043】
次に、成膜後の基板を赤外分光法により測定する(ステップS12)。例えば、成膜装置100では、制御部60が、照射部81を制御し、成膜後に、照射部81から基板Wに赤外光を照射し、基板Wで反射された赤外光を検出部82で検出して制御部60においてFT-IR分析を行う。
【0044】
次に、ステップS10で測定された測定データとステップS12で測定された測定データとの差分データを抽出する(ステップS13)。例えば、制御部60は、成膜後の測定データから成膜前の測定データとの差分データを抽出する。図6は、実施形態に係る差分データを説明する図である。図6には、「成膜前」として、凹部90aを含むパターン90が形成された基板Wが示されている。また、「成膜後」として、パターン90上にSiN膜91が形成された基板Wが示されている。成膜後の測定データから成膜前の測定データとの差分を抽出することで差分データとしてSiN膜91の信号を抽出できる。
【0045】
次に、抽出された差分データに基づき、基板Wに成膜された膜の状態を表示する(ステップS14)。例えば、制御部60は、差分データに基づき、SiN膜91に含まれる化学結合を検出し、検出した化学結合をユーザインターフェース61に表示する。
【0046】
また、抽出された差分データに基づき、成膜のプロセスパラメータを制御する(ステップS15)。例えば、制御部60は、差分データに基づき、SiN膜91に含まれる化学結合を検出し、検出した化学結合に応じてプロセスパラメータを制御する。
【0047】
ここで、具体的な検出結果の一例を説明する。凹部90aを含むパターン90が形成された基板Wに、実施形態に係る成膜方法により、プラズマALDでSiN膜91を成膜した。図7は、実施形態に係るプラズマALDの処理プロセスの一例を示す図である。プラズマALDでは、最初に、DCS(DiChloroSilane:SiHCl)ガスを供給して、基板Wにプリカーサを吸着させた後、DCSガスをパージする。次に、Hガスを供給しつつ、13MHzの高周波電力を供給してプラズマを生成して改質を行う。次に、NHガスを供給しつつ、13MHzの高周波電力を供給してプラズマを生成して窒化を行う。プラズマALDは、このような各工程を繰り返すことにより所望の厚さのSiNの膜を成膜した。
【0048】
図8Aは、実施形態に係るSiN膜91を成膜した基板Wの一例を示す図である。基板Wは、単結晶シリコン(c-Si)に凹部90aを含むパターン90が形成されている。パターン90は、凹部90aの深さと直径のアスペクト比が8とする。基板Wのパターン90上には、SiN膜91が成膜されている。
【0049】
制御部60は、成膜後のFT-IR分析の測定データから成膜前のFT-IR分析の測定データとの差分データを抽出した。例えば、制御部60は、成膜前の測定データと成膜後の測定データから、赤外光の波数毎に、赤外光の吸光度をそれぞれ求める。そして、制御部60は、波数毎に、成膜後の赤外光の吸光度から成膜前の赤外光の吸光度を減算することで、波数毎に、SiN膜91による赤外光の吸光度を差分データとして抽出した。
【0050】
また、比較例として、平坦なシリコン基板に、実施形態に係る成膜方法により、プラズマALDでSiN膜を成膜した。図8Bは、比較例に係るSiN膜96を成膜したシリコン基板95の一例を示す図である。シリコン基板95は、上面がフラットなシリコンウエハであり、上面にSiN膜96が成膜されている。比較例につても同様に、制御部60は、成膜後のFT-IR分析の測定データから成膜前のFT-IR分析の測定データとの差分データを抽出した。例えば、制御部60は、成膜前の測定データと成膜後の測定データから、赤外光の波数毎に、赤外光の吸光度をそれぞれ求める。そして、制御部60は、波数毎に、成膜後の赤外光の吸光度から成膜前の赤外光の吸光度を減算することで、波数毎のSiN膜96による赤外光の吸光度を差分データとして抽出した。
【0051】
図9は、赤外光の波数毎の吸光度の一例を示す図である。図9の横軸は、赤外光の波数である。縦軸は、赤外光の吸光度である。図9には、基板Wのパターン90上に成膜されたSiN膜91の波数ごとの吸光度を示す波形L1が示されている。また、比較例として、平坦なシリコン基板95上に成膜されたSiN膜96の波数ごとの吸光度を示す波形L2が示されている。赤外光は、波長が短いほど波数が大きくなる。また、吸収する赤外光の波数は、物質によって異なる。よって、FT-IR分析は、赤外光の波数からどのような物質が含まれるかを特定できる。また、FT-IR分析は、波数ごとの吸光度から物質の含有量を推定できる。また、FT-IR分析は、波数ごとの吸光度から成膜された膜の堆積(膜厚)を推定できる。
【0052】
図8A、8Bに示したように、SiN膜91は、パターン90の凹部90aの側壁や底部にも成膜されるため、平坦なシリコン基板95上のSiN膜96よりも体積が大きい。このため、SiN膜91の波形L1は、SiN膜96の波形L2よりも吸光度が大きい。波形L1の方が波形L2よりも微弱な信号も検出できるため、波形L1の方が微量の物質も検出できる。
【0053】
SiN膜91は、パターン90の凹部90aのアスペクト比が高くなるほど、凹部90aの側壁のSiNの体積が大きくなる。よって、凹部90aのアスペクト比が高くなるほど、波形L1は、凹部90aの側壁の成分が支配的となる。すなわち、凹部90aのアスペクト比が高くなるほど、波形L1は、凹部90aの側壁の状態を表すようになる。
【0054】
図10A~10Cは、赤外光の波数毎の吸光度の一例を示す図である。図10A~10Cの横軸は、赤外光の波数である。縦軸は、SiN膜の面積で規格化した赤外光の吸光度である。図10A~10Cには、基板Wのパターン90上に成膜されたSiN膜91の波数ごとの吸光度を示す波形L1と、比較例として、平坦なシリコン基板95上に成膜されたSiN膜96の波数ごとの吸光度を示す波形L2が示されている。また、図10A~10Cには、化合物や化学結合ごとに、吸収する赤外光の波数の位置を示している。波形L1、L2が示すように、パターン90上に成膜されたSiN膜91とシリコン基板95上に成膜されたSiN膜96では、状態が異なる。例えば、図10Aに示すように、波形L2は、Si-Nの位置で吸光度が波形L1よりも大きくなっている。一方、波形L1は、Si-N、Si-O、NHのそれぞれの位置で吸光度が波形L2よりも大きくなっている。よって、パターン90上に成膜されたSiN膜91には、Si-Nに加え、Si-O、NHも含まれる。また、図10Bに示すように、波形L2は、NHの位置の吸光度が小さい。一方、波形L2は、NHの位置で吸光度が大きくなっている。よって、パターン90上に成膜されたSiN膜91には、NHも含まれる。また、図10Cに示すように、波形L1は、波形L2よりも、N-Hの位置で吸光度が大きくなっている。よって、パターン90上に成膜されたSiN膜91には、N-Hが多く含まれる。このように、パターン90が形成された基板Wと平坦なシリコン基板95では、成膜されたSiN膜91とSiN膜96の状態が異なる。例えば、図10A~10Cの場合、SiN膜91は、NHが多く、SiOが存在し、NHが存在する。これは、WER(Wet Etching Rate)を悪化させる原因となる。このようにSiN膜91にNH、SiO、NHが存在する理由は、イオンやラジカルが凹部90aの側壁に十分に到達せず、窒化不足になるためである。このように差分データからSiN膜91に含まる物質や化学結合などSiN膜91の状態を求めることができる。例えば、差分データからNH、SiH、Sioなど、SiN膜91の膜質に影響する物質を検出できる。
【0055】
制御部60は、差分データに基づき、基板Wに成膜されたSiN膜91の状態を表示する。例えば、制御部60は、図9図10A~10Cのように、SiN膜91の波数ごとの吸光度を示す波形L1をユーザインターフェース61に表示する。また、例えば、制御部60は、物質や化学結合ごとの吸収される赤外光の波数の位置での吸光度から、SiN膜91に含まれる物質や化学結合を特定し、特定した物質や化学結合をユーザインターフェース61に表示する。なお、制御部60は、波数ごとの吸光度から成膜されたSiN膜91の膜厚を推定し、推定した膜厚をユーザインターフェース61に表示してもよい。
【0056】
また、制御部60は、差分データに基づき、SiN膜91に含まれる化学結合を検出し、検出した化学結合に応じてプロセスパラメータを制御する。例えば、制御部60は、図10A~10CのようにSiN膜91が窒化不足である場合、窒化を促進するように成膜のプロセスパラメータを制御する。例えば、制御部60は、窒化で供給するNHガスの流量が増加し、また、窒化の時間が長くなるようにプロセスパラメータを制御する。これにより、成膜装置100は、以降の成膜において窒化が促進されてパターン90上に成膜されるSiN膜91の膜質を改善できる。
【0057】
なお、本実施形態では、SiN膜91の成膜前と成膜後のFT-IR分析を行う場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。プラズマALDの特定の工程の前後でFT-IR分析を行って測定データをそれぞれ取得し、特定の工程での差分データを抽出してもよい。例えば、図7に示したプラズマALDのプリカーサの吸着工程、改質工程、窒化工程の前後でFT-IR分析を行って測定データを取得し、差分データを抽出してもよい。また、各行程中に常時、FT-IR分析を行い、各工程前のデータと、リアルタイムデータの差分を、リアルタイムモニターしてもよい。これにより、吸着工程、改質工程、窒化工程の差分データから、吸着工程、改質工程、窒化工程の状態をリアルタイムに検出できる。例えば、吸着工程においてプリカーサの吸着の度合い検出でき、所望な量のプリカーサが吸着しているかをリアルタイムに検出できる。また、改質工程において、改質の度合い検出でき、所望な改質が行われているかをリアルタイムに検出できる。また、窒化工程において、窒化の度合いを検出でき、所望なプラズマ窒化が行われているかをリアルタイムに検出できる。制御部60は、差分データに基づき、プロセスパラメータを制御する。例えば、制御部60は、吸着工程、改質工程、窒化工程において、差分データから吸着や、改質、窒化の状態を検出した結果、吸着や、改質、窒化が不足している場合、不足した工程を実施するようにプロセスパラメータを制御する。これにより、吸着や、改質、窒化の不足を抑制でき、成膜されるSiN膜91の膜質を改善できる。また、不必要に長時間処理を行っている場合は、プロセス時間を短くし、生産性を高めることができる。また、例えば、図7に示したプラズマALDの各工程の前又は後でFT-IR分析を行って測定データを取得し、前の工程の測定データからの差分データを抽出することで、各工程の差分データを取得してもよい。これにより、各工程の差分データから各工程の状態をリアルタイムで検出できる。
【0058】
このように、実施形態に係る成膜方法は、第1の測定工程(ステップS10)と、成膜工程(ステップS11)と、第2の測定工程(ステップS12)と、抽出工程(ステップS13)とを有する。第1の測定工程は、凹部90aを含むパターン90が形成された基板Wを赤外分光法により測定する。成膜工程は、第1の測定工程の後、基板Wに膜を成膜する。この成膜工程は、改質工程を含んでもよい。また、成膜工程は、改質工程であってもよい。第2の測定工程は、成膜工程の後、基板Wを赤外分光法により測定する。抽出工程は、第1の測定工程の測定データと第2の測定工程の測定データとの差分データを抽出する。これにより、実施形態に係る成膜方法は、凹部90aを含むパターン90が形成された基板Wに成膜した膜の状態を検出できる。
【0059】
また、抽出工程は、第1の測定工程による成膜前の測定データと第2の測定工程による成膜後の測定データから、赤外光の波数毎に、赤外光の吸光度をそれぞれ求める。抽出工程は、波数毎に、成膜後の赤外光の吸光度から成膜前の赤外光の吸光度を減算して膜による波数毎の赤外光の吸光度を差分データとして抽出する。これにより、実施形態に係る成膜方法は、差分データとして抽出された波数毎に赤外光の吸光度から基板Wに成膜した膜の状態を検出できる。
【0060】
また、実施形態に係る成膜方法は、抽出工程により抽出された差分データに基づき、成膜工程により基板Wに成膜された膜の状態を表示する表示工程(ステップS14)を有する。これにより、実施形態に係る成膜方法は、基板Wに実際に成膜した膜の状態を工程管理者に提示できる。
【0061】
また、実施形態に係る成膜方法は、抽出工程により抽出された差分データに基づき、成膜工程のプロセスパラメータを制御する制御工程(ステップS15)を有する。これにより、実施形態に係る成膜方法は、基板Wに実際に成膜した膜の状態に応じてプロセスパラメータを調整でき、以降の成膜において基板Wに成膜される膜の膜質を改善できる。
【0062】
以上、実施形態について説明してきたが、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上述した実施形態は、多様な形態で具現され得る。また、上述した実施形態は、請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0063】
例えば、上記の実施形態では、基板Wの中央付近で赤外光を反射させて基板Wの中央付近の膜の状態を検出する場合を説明したが、これに限定されない。例えば、チャンバ1内に赤外光を反射するミラー、レンズ等の光学素子を設け、光学素子により基板Wの中央付近、周辺付近など複数の個所に照射し、それぞれの個所で反射された赤外光を検出して基板Wの複数の個所それぞれの膜の状態を検出してもよい。例えば、成膜前と成膜後に、基板Wの面内の複数個所でFT-IR分析を行って測定データを取得する。制御部60は、複数個所のそれぞれについて、成膜後の測定データから成膜前の測定データとの差分データを抽出する。制御部60は、抽出した複数個所の差分データに基づいてプロセスパラメータを制御する。例えば、制御部60は、何れかの個所でSiN膜91が窒化不足である場合、窒化を促進するよういに成膜のプロセスパラメータを制御する。制御部60は、複数個所の差分データに基づいて、基板Wの複数の個所で膜厚を推定して、膜厚の分布を検出してもよい。そして、制御部60は、膜厚の分布を均一化しつつ所定の膜質となるようにプロセスパラメータを制御してもよい。例えば、制御部60は、SiN膜91の膜厚の分布が不均一であり、何れかの個所でSiN膜91が窒化不足である場合、SiN膜91を均一化しつつ窒化を促進するよういに成膜のプロセスパラメータを制御する。
【0064】
また、上記の実施形態では、1つの基板Wの差分データから成膜のプロセスパラメータを制御する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。複数の基板Wの差分データから基板W間の差分データの比較に基づいて成膜工程のプロセスパラメータを制御してもよい。例えば、成膜装置100は、複数の基板Wに成膜を行うと経時的な変化等に伴い、成膜される膜の状態が変化する場合がある。制御部60は、基板W間の差分データの比較に基づいて、膜の状態の変化を抑制するように成膜工程のプロセスパラメータを変更する。例えば、制御部60は、SiN膜91が窒化不足する場合、窒化を促進するよういに成膜のプロセスパラメータを制御する。これにより、複数の基板Wに成膜される膜の状態の変化を抑制できる。
【0065】
また、上記の実施形態では、1つの基板Wの差分データから成膜のプロセスパラメータを制御する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。成膜装置100は経時的にコンディションが変化し、同じ成膜条件(レシピ)で成膜を実施しても成膜される膜の状態が変化する場合がある。そこで、成膜装置100は、数日毎や所定のタイミング毎など定期的に同じ成膜条件で成膜し、成膜前後でFT-IR分析を行い、FT-IR分析の結果から成膜装置100のコンディション診断を行ってもよい。例えば、成膜装置100は、定期的に同じ成膜条件で基板Wに膜を成膜する。制御部60は、同じ成膜条件で成膜された複数の基板Wの差分データから基板W間の差分データの比較に基づいて成膜装置100のコンディションを診断する。これにより、成膜装置100は、同じ成膜条件で成膜された膜の状態の変化からコンディションの変化を検出できる。
【0066】
また、上記の実施形態では、本開示の成膜装置を、チャンバを1つ有するシングルチャンバータイプの成膜装置100とした場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。本開示の成膜装置は、チャンバを複数有するマルチチャンバタイプの成膜装置であってもよい。
【0067】
図11は、実施形態に係る成膜装置200の他の一例を示す概略構成図である。図11に示すように、成膜装置200は、4つのチャンバ201~204を有するマルチチャンバタイプの成膜装置である。成膜装置200では、4つのチャンバ201~204においてそれぞれプラズマALDを実施する。
【0068】
チャンバ201~チャンバ204は、平面形状が七角形をなす真空搬送室301の4つの壁部にそれぞれゲートバルブGを介して接続されている。真空搬送室301内は、真空ポンプにより排気されて所定の真空度に保持される。真空搬送室301の他の3つの壁部には3つのロードロック室302がゲートバルブG1を介して接続されている。ロードロック室302を挟んで真空搬送室301の反対側には大気搬送室303が設けられている。3つのロードロック室302は、ゲートバルブG2を介して大気搬送室303に接続されている。ロードロック室302は、大気搬送室303と真空搬送室301との間で基板Wを搬送する際に、大気圧と真空との間で圧力を制御するものである。
【0069】
大気搬送室303のロードロック室302が取り付けられた壁部とは反対側の壁部には基板Wを収容するキャリア(FOUP等)Cを取り付ける3つのキャリア取り付けポート305が設けられている。また、大気搬送室303の側壁には、基板Wのアライメントを行うアライメントチャンバ304が設けられている。大気搬送室303内には清浄空気のダウンフローが形成されるようになっている。
【0070】
真空搬送室301内には、搬送機構306が設けられている。搬送機構306は、チャンバ201~チャンバ204、ロードロック室302に対して基板Wを搬送する。搬送機構306は、独立に移動可能な2つの搬送アーム307a,307bを有している。
【0071】
大気搬送室303内には、搬送機構308が設けられている。搬送機構308は、キャリアC、ロードロック室302、アライメントチャンバ304に対して基板Wを搬送するようになっている。
【0072】
成膜装置200は、制御部310を有している。成膜装置200は、制御部310によって、その動作が統括的に制御される。
【0073】
このように構成された成膜装置200では、基板Wを赤外分光法により測定する測定部をチャンバ201~チャンバ204以外に設けてもよい。例えば、成膜装置200は、基板Wを赤外分光法により測定する測定部を真空搬送室301又は何れかロードロック室302に設ける。例えば、測定部では、赤外光を照射する照射部と、赤外光を検出する検出部とを上下方向に配置する。成膜装置200は、FT-IR分析を行う場合、搬送機構306により基板Wを測定部に配置する。測定部は、照射部から基板Wに赤外光を照射し、基板Wを透過した赤外光を検出部で検出する。
【0074】
制御部310は、成膜前の基板Wを測定部により測定する。制御部310は、チャンバ201~チャンバ204の何れかにより基板Wに膜を成膜する。制御部310は、成膜後の基板Wを測定部により測定する。制御部310は、成膜前の測定部による測定データと成膜後の測定部による測定データとの差分データを抽出する。これにより成膜装置200においても、凹部を含むパターンが形成された基板Wに成膜した膜の状態を検出できる。
【0075】
上述の通り、成膜工程において本開示の技術を適用して膜の状態を検出する例を説明してきたが、これに限定されるものではない。膜の状態を検出する工程は、成膜工程に限らず、例えば、エッチング工程、レジスト工程など半導体デバイスを製造する半導体製造工程に係る任意の工程であってもよいし、任意の工程の組合せを含む複数工程であってもよい。また、半導体製造工程に係る任意の工程及び/又はその組合せを含む複数工程の観点から、任意の工程や複数工程の前後に本開示の技術を適用することで、本開示の技術を工程内、工程間の診断、監視として適用してもよい。例えば、半導体製造の生産性(稼働率や歩留まりなど)に関わる各種トリガー(パーティクルや面内/面間分布など)に適用してもよい。また、上述の通り、本開示の成膜装置は、シングルチャンバやチャンバを複数有するマルチチャンバタイプの成膜装置を例に開示してきたが、このかぎりではない。例えば、複数枚の基板を一括で処理可能なバッチタイプの成膜装置であってもよいし、カルーセル式のセミバッチタイプの成膜装置であってもよい。
【0076】
なお、今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0077】
W 基板
1 チャンバ
2 載置台
10 高周波電源
15 ガス供給部
16 シャワーヘッド
60 制御部
61 ユーザインターフェース
62 記憶部
80a 窓
80b 窓
81 照射部
82 検出部
90 パターン
90a 凹部
91 SiN膜
95 シリコン基板
96 SiN膜
100 成膜装置
200 成膜装置
201~204 チャンバ
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図10C
図11